説明

パン・焼菓子類の製造方法

【課題】パン・焼菓子類の製造に用いる油脂組成物であり、特定量の飽和脂肪酸組成を含み、うちパルミチン酸の含有量が特定であり、且つ、不飽和脂肪酸組成のうちオレイン酸の含有量が特定であり、且つ、トランス型不飽和脂肪組成が特定量である油脂組成物を用い、冷却速度を特定速度でコントロールする事で、焼成後の食感が長期的にほとんど変らない焼菓子類、焼成後のパン類が得られる方法を提供する。
【解決手段】 パン・焼菓子類の製造において、油脂組成物全体中、飽和脂肪酸組成を15重量%〜70重量%含み、飽和脂肪酸組成のうちパルミチン酸が50重量%〜100重量%であり、且つ、不飽和脂肪酸組成のうちオレイン酸が60重量%〜100重量%であり、且つ、トランス型不飽和脂肪酸組成がパルミチン酸の3.5倍(重量比)を超えない油脂組成物を用い、パン・焼菓子焼成後、冷却速度を3℃/分以下にコントロールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製菓・製パン特性が良好で焼成後におけるパン・焼菓子類の食感の変化が少なく、フレッシュ感が持続するパン・焼菓子類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーキ、クッキー、ビスケット、パイ、パン、デニッシュペストリーなど、小麦粉を主成分とし、生地を焼成することで製品となる一般にパン・焼菓子類と呼ばれている食品は、従来から非常に人気の高い食品の一つである。これらパン・焼菓子類には食感を滑らかにし、口当たりをシットリとさせる為に通常マーガリンやショートニングといった油脂加工食品が用いられている。通常はこれら油脂を練り込んだ小麦粉を主とする生地あるいはバッターと呼ばれるものを焼成することでこれらを膨化、固化させることにより焼菓子類・パン類が製造される。焼き上げられた製品は生産の効率化を測る為、通常はファンなどにより冷却された後、袋詰め等をされ最終製品となる。
【0003】
これら焼菓子、パン類に用いられる油脂としては風味増強はもとより、口当たりをソフトにする為になるべく口溶けの良いものが好まれるが、その様な油脂は一般に生地においては練り込み性などの作業性悪化、べたつきや吸卵性、含気性に悪影響を及ぼすことが多い。これらの欠点を解消する為に、圧力晶析を用いて焼成前は高融点の油脂の挙動をとりながら焼成後は口溶けの良い低融点の挙動をとる油脂の開発がなされている(特許文献1)。また、コンパウンド結晶を有する油脂を用いることで特別な温度管理をしなくても安定結晶を含有し、ソフトな食感を有する焼菓子を製造することが出来るとの技術開示もなされている(特許文献2)。さらに、パーム系固体脂およびラウリン系油脂を、ある配合でリパーゼ処理することにより、生地物性を改良し、焼成後の焼菓子の食感が改良されるとの報告もある(特許文献3)。しかしながらこれらは全て、生地改良による製菓性、製パン性の向上と焼成直後の食感改良について効果があるものの、焼菓子類においては長期間保存した場合、どうしても徐々にソフトさを失い、硬さが増加し、食感がパサついたりシットリ感がなくなってしまうことは避けられないものであり、またパン類においても同様にパン焼成後、硬さの経時変化が発生し、食感がパサついたりシットリ感、フレッシュ感がなくなってしまう。
【特許文献1】特開2001−252005号公報
【特許文献2】特開2003−169601号公報
【特許文献3】特開平10−165093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、製菓・製パン性に優れ、かつ焼成後もその食感を維持し、美味しさが持続する焼菓子・パン類の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、焼菓子・パン類を製造した後の食感の経日変化は、従来から言われている澱粉の老化だけでなく、油脂の固化挙動が大きく関与していることを見出した。即ち、焼成後パン・焼菓子類中の油脂が再結晶し、保存中徐々に安定形に転移することでパン・焼菓子類全体の食感が硬く変化する事を見出した。
【0006】
従って、焼成後油脂が再結晶しても、その後の油脂結晶の変化が少なければ焼菓子の経日変化も少なくなると考え、パン・焼菓子類の製造に用いる油脂組成物であって、特定量の飽和脂肪酸組成を含み、飽和脂肪酸組成のうちパルミチン酸の含有量が特定であり、且つ、不飽和脂肪酸組成のうちオレイン酸の含有量が特定であり、且つ、トランス型不飽和脂肪酸組成が特定量である油脂組成物を用い、パン・焼菓子焼成後、冷却速度を特定速度でコントロールすることで、焼成後の食感が長期的にほとんど変わらない焼菓子類、また焼成後の食感硬さ経時変化が少ないパン類を得られる事を見出した。以上より、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、パン・焼菓子類の製造に用いる油脂組成物であって、油脂組成物全体中、飽和脂肪酸組成を15重量%〜70重量%含み、飽和脂肪酸組成のうちパルミチン酸が50重量%〜100重量%であり、且つ、不飽和脂肪酸組成のうちオレイン酸が60重量%〜100重量%であり、且つ、トランス型不飽和脂肪酸組成がパルミチン酸の3.5倍(重量比)を超えない油脂組成物を用い、パン・焼菓子焼成後、冷却速度を3℃/分以下にコントロールすることを特徴とするパン・焼菓子類の製造方法に関する。好ましい実施態様は、油脂組成物を圧力晶析することを特徴とする上記記載のパン・焼菓子類の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、製菓・製パン性に優れ、且つ焼成後もその食感を長く維持し、美味しさが持続する焼菓子・パン類、及びその製造法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明で用いる油脂組成物は、油中水型乳化油脂組成物或いは水を含まない油脂組成物であり、その原料は、一般にマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングに用いられている材料であれば特に限定は無く、油脂、乳化剤、着色料、酵素類などの素材が例示できる。
【0010】
本発明に用いられる油脂としては前記原料であれば特に問題ないが、油脂中の飽和脂肪酸組成含量が油脂組成物全体中15重量%〜70重量%であり、油脂中の不飽和脂肪酸組成含量が油脂組成物全体中85重量%〜30重量%であることが好ましい。また前記飽和脂肪酸組成のうちパルミチン酸が50重量%〜100重量%であり、且つ、前記不飽和脂肪酸のうちオレイン酸が60重量%〜100重量%であり、且つ、前記不飽和脂肪酸のうちトランス型不飽和脂肪酸組成がパルミチン酸の3.5倍(重量比)を超えない油脂であることがより好ましい。さらに好ましくは、前記飽和脂肪酸組成含量が油脂組成物全体中25重量%〜40重量%であり、油脂中の不飽和脂肪酸組成含量が油脂組成物全体中85重量%〜30重量%である。また前記飽和脂肪酸組成のうちパルミチン酸が80重量%〜100重量%であり、且つ、前記不飽和脂肪酸組成のうちオレイン酸が65重量%〜100重量%であり、且つ、前記不飽和脂肪酸のうちトランス型不飽和脂肪酸組成がパルミチン酸の1/3以下(重量比)の油脂であることが特に好ましい。この様な油脂は、前記の様な組成であれば、高融点成分としてパルミチン酸を多く含み、低融点成分としてオレイン酸を多く含むことで、冷却速度が3℃/分以下で徐冷された場合に、結晶成分が液油成分に影響されることなく安定な結晶となり、結晶化後の経日変化が殆ど無いものとなると推定される。しかしながら、トランス型不飽和脂肪酸がパルミチン酸の量よりも3.5倍以上(重量比)含まれると、トランス型不飽和脂肪酸により結晶成分と液油成分がお互いに影響されるようになり、経日変化が起き易い結晶となってしまう場合がある。飽和脂肪酸組成が15重量%未満であると、結晶成分が少ない為に保形性が良く作業性良好な製品が製造しづらく、また製造したとしても製菓製パン時のマーガリン、ショートニング練り込み時にうまく練りこめなかったりして良好な製パン、製菓性が得られない場合がある。また、飽和脂肪酸組成が70重量%を超えると全体に占める不飽和脂肪酸組成が少なすぎ、硬く作業性の悪い製品しかできないし、菓子やパンも硬くなり、商品性が大幅に低下する場合がある。また、飽和脂肪酸組成のうちパルミチン酸が50重量%未満であると、結晶の経時変化が起き易くなり、パン、菓子の経時変化が起こる場合がある。不飽和脂肪酸組成のうちオレイン酸が60重量%未満であっても同様に、結晶の経時変化が起き易くなり、パン、菓子の経時変化が起こる場合がある。トランス型不飽和脂肪酸組成がパルミチン酸の3.5倍(重量比)を超えると油脂全体の相互溶解性が向上し、徐冷した場合においても高融点結晶が析出せず、結果として油脂結晶の経日変化が起こり、パンや焼菓子の食感が悪化する場合がある。パーム油由来油を主体としなくとも、飽和脂肪酸組成を15重量%〜70重量%含み、飽和脂肪酸組成のうちパルミチン酸が50重量%〜100重量%であり、且つ、不飽和脂肪酸組成のうちオレイン酸が60重量%〜100重量%であり、且つ、トランス型不飽和脂肪酸組成がパルミチン酸の3.5倍(重量比)を超えない油脂組成物であれば本発明で用いる油脂組成物として使用出来る。
【0011】
前記油脂としては具体的には、パーム油のようにその脂肪酸組成にパルミチン酸とオレイン酸を多く含むものが例示される。その他、例えば大豆油、綿実油、ナタネ油、パーム油、サル脂、カカオ脂、テンカワン脂、ヤシ油、落花生油、コーン油、ホホバ油、クヘヤ油、魚油、牛脂、豚脂、乳脂といった動植物油脂及びそれらの硬化油、エステル交換油、分別油等を必要に応じて使用出来る。これらは目的に応じて少なくとも1種を使用することができる。中でも硬化パーム油/パーム油/植物油=40〜70/0〜30/20〜50などのパーム油由来油を主体とした油脂が好ましい。
【0012】
本発明の油脂組成物に用いられる乳化剤としては、食品用途であれば特に限定は無いが、グリセリン脂肪酸エステル、それらの有機酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセロール縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤を少なくとも1種を使用しても良い。
【0013】
本発明の油脂組成物を製造する方法は、下記に示す方法等を挙げることができるが、特にこれらの製造方法に限定されるものではない。即ち、所定の油脂を加熱溶解したものを油相部とする。その際、必要に応じて油相部には、乳化剤、香料、着色料などを添加してもよい。一方、水に蛋白質素材、呈味剤、香料、乳化剤等を加え加熱溶解殺菌したものを水相部とする事が出来る。水相を加える場合は、こうした水相部を油相部に徐々に加え乳化した後、掻き取り式熱交換器を用いて冷却捏和することで製造することが出来る。この工程は、通常のマーガリン類製造方法と同様である。更に望ましくはマーガリン、ショートニングの製造の際に冷却捏和に加えて加圧し圧力晶析されることにより、油脂結晶が微細で安定となり、生地に対して分散性、乳化性、吸卵性の良い、より品質の優れた油脂組成物が得られる。
【0014】
これらの油脂組成物を用い、パン・焼菓子類を製造する際、生地を準備してから常法に従って焼成し、焼成後50℃程度まではファンなどの冷却装置を用いて通常通り冷却しても良いが、その後は例えば40℃の恒温槽で1時間、引き続き30℃の恒温槽で1時間その後室温に放置するなどして、3℃/分以下の冷却速度で冷却することで長期間食感の変化の無いパン・焼菓子類を製造することが出来る。ここで、50℃程度まではファンなどの冷却装置を用いて通常通り冷却しても良いのは、50℃程度までは通常油脂結晶が析出しないからである。もし、使用する油脂組成物が50℃より高温で油脂結晶が析出するのであれば、焼成後のパン・焼菓子類が少なくともその結晶析出温度以下になれば、3℃/分以下の冷却速度で徐冷することが必要である。その逆に50℃以下でないと油脂結晶が析出し始めない油脂組成物を使用しているのであれば、その温度まではファンなどの冷却装置を用いて冷却しても良い。焼成後のパン・焼菓子類が少なくともその油脂結晶析出温度以下になれば冷却速度は3℃/分以下であれば遅いほど良いが、生産性とのバランスにより適宜決定される。
【0015】
本発明のパン・焼菓子類の製造法を用いてパン・焼菓子類を製造すると、ボリューム、食感などパン・焼菓子類としての必要な特性は保ったまま、焼成後の経日変化が起こり難く、食感が焼き立てのままフレッシュ感が維持されるパン・菓子類が得られる。
【実施例】
【0016】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。尚、実施例中の配合は特に断らない限り対小麦粉重量あたりのベーカーズ%で示す。
【0017】
<中種法製パン工程>
下記の条件、工程に従い、製パンを行った。
[中種作製工程]
ミキシング :低速3分、中速2分(捏ね上げ温度25℃)
中種発酵時間:4時間(28℃下)
[本捏ね工程]
ミキシング :低速2分、中速2分、高速3分後、
油脂を添加して更に低速2分、中速2分、高速3分
(捏ね上げ温度27℃)
フロアタイム:20分
[生地作製後、焼成までの工程]
分割 :230グラムずつ
成型 :モルダーにて成型、プルマン型に230g×6個
発酵 :38℃、湿度85%のホイロ内で45分間発酵
焼成 :200℃、35分
【0018】
<四同割バターケーキ シュガーバッター製法>
下記の工程に従い、バターケーキを作製した。
(1)<シュガーバッター>低速30秒 中速1.5分(生地比重0.85)の条件で、 材料をミキシングした。
(2)全卵を3回に分けて投入、完全に乳化させた。(生地比重0.80)
(3)薄力粉を投入し、低速で1分間攪拌した。(最終生地比重0.90)
(4)得られた生地を280グラム/個に分割した。
(5)180℃で45分間焼成した。
【0019】
<パン評価方法>
得られたパンを20℃下で保存し、焼成翌日及び三日後に、食感を10名のパネラーにより官能評価した。評価基準は以下の通りであり、◎〜○が実際の商品性として好ましい。◎:すごくソフト、○:ソフト、△:やや硬い、×:硬い。
【0020】
<バターケーキ評価方法>
得られたバターケーキを20℃下で保存し、翌日、一週間後、一ヵ月後の食感を10名のパネラーにより官能評価した。評価基準は以下の通りであった。◎:すごくソフト、○:ソフト、△:やや硬い、×:硬い。
【0021】
(製造例1) 油脂組成物の作製
表1の配合に従い、60℃の調合油4kgを作成し、かきとり式熱交換機にて急冷捏和、可塑化した後、24時間テンパリング処理しショートニング状の油脂組成物1を得た。同様に処理し、油脂組成物2〜8を得た。
【0022】
【表1】

【0023】
(製造例2) 圧力晶析を利用した油脂組成物の作製
表1、油脂組成物1の配合に従い60℃の調合油4Kgを冷却ジャケット付きの圧力容器にて50MPaに加圧しながら10℃まで圧力晶析を行った。その後3本ロールにて油脂を捏和し、可塑化した後、24時間テンパリング処理しショートニング状の「油脂組成物1A」を得た。
【0024】
(実施例1〜8、比較例1〜7) 製パン評価
表2の配合に基づき、且つ前記中種法製パン工程に従って、プルマン型を用いて製パンした。得られたパンは、40℃の恒温槽にて2時間冷却後、30℃の恒温槽にて2時間冷却、その後ビニール袋に入れ20℃にて試験に供するまで保管した。その後、前記パン評価方法に従って評価をした。その評価結果については、表3にまとめる。
【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
製パン試験の結果、表3に示すように、従来処方である全ての比較例においてパン作成3日後にはパンが老化して固くなっていた。比較例3で用いた油脂組成物7の全飽和脂肪酸組成は15%以下であり、非常に軟らかい準液状のショートニングだったため、生地作成時、油脂の練り込み性が悪く生地がすべりきちんとした生地作成が困難であった。それに老化防止剤としての乳化剤製剤を併用した比較例5、6においては、ソフトでもくちゃついた食感なのに対し、実施例1〜5ではソフトさしっとりさが維持されていた。特に実施例6、7のように乳化剤製剤を併用した場合、ソフトでしっとりという良好な食感の維持に大きく貢献している。通常乳化剤製剤を用いることでくちゃついた食感となるが、実施例6、7においては、もともと本発明の油脂が持つ口ごなれの良さで、悪影響がかなり軽減されている。更に、実施例8では圧力晶析油脂を用いることでソフトさ、しっとりさと持ちながら口ごなれの良い、従来にない高い商品性が具現化されている。また、比較例2、3、4では、それぞれ油脂組成物6、7、8に対応しており、油脂組成物6は不飽和脂肪酸組成のうちオレイン酸が58.3重量%と、60重量%未満であり、油脂組成物7は全飽和脂肪酸組成が13.2重量%と、15重量%未満であり、油脂組成物8はパルミチン酸、オレイン酸の量比も請求項範囲外であり、トランス酸がパルミチン酸の4.65倍と、3.5倍を超えるものである。何れもD+3でのパンの品質は良くなかった。比較例7では、使用油脂は油脂組成物1であるが、パン焼成後の冷却を急冷とすることで不安定結晶が析出し、パンの品質が実施例1に比べ悪いものとなった。
【0028】
(実施例9〜14、比較例8〜12) バターケーキ評価方法
表4の配合に基づき、且つ前記四同割バターケーキ シュガーバッター製法に従って、バターケーキを作製した。得られたバターケーキは、その後、前記パン評価方法に従って評価をした。その評価結果については、表5にまとめる。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
製菓試験の結果、表5に示すように従来処方である比較例8〜11に対し、実施例は何れも良好なバターケーキ商品性を維持していることがわかる。更に、実施例14では圧力晶析油脂を用いることで生地が良く膨らみボリューム感に富み、ソフトさ、しっとりさを持ちながら口ごなれの良い、従来にない高い商品性が具現化されている。比較例10はソフトでしっとりした食感を保ったが、ここで用いた油脂組成物7の全飽和脂肪酸組成が15%以下であり、非常に軟らかい準液状のショートニングであったため、ケーキ生地作成時、比重が下がらず、作業性悪く目が詰まった重たい食感の生地になった。比較例12では、使用油脂は油脂組成物1であるが、バターケーキ焼成後の冷却を急冷とすることで不安定結晶が析出し、バターケーキの品質維持が実施例1に比べ悪いものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン・焼菓子類の製造に用いる油脂組成物であって、油脂組成物全体中、飽和脂肪酸組成を15重量%〜70重量%含み、飽和脂肪酸組成のうちパルミチン酸が50重量%〜100重量%であり、且つ、不飽和脂肪酸組成のうちオレイン酸が60重量%〜100重量%であり、且つ、トランス型不飽和脂肪酸組成がパルミチン酸の3.5倍(重量比)を超えない油脂組成物を用い、パン・焼菓子焼成後、冷却速度を3℃/分以下にコントロールすることを特徴とするパン・焼菓子類の製造方法。
【請求項2】
油脂組成物を圧力晶析することを特徴とする請求項1に記載のパン・焼菓子類の製造方法。

【公開番号】特開2006−141370(P2006−141370A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339867(P2004−339867)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】