説明

パン様食品素材およびこれを用いたパン様食品

【課題】ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくとを主成分とし、前記ふすま又は前記ぬか又はこれらの混合物特有の食感の悪さを解消した食品素材を提供することにある。
【解決手段】ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品素材およびこれを用いた食品に関する。
【背景技術】
【0002】
米、小麦粉など糖質を主成分としたデンプン食品の摂取を極力抑えることで肥満や糖尿病や高脂血症などの生活習慣病を予防できることが知られている。糖質の含有量を抑制した食品として、例えば、焙煎ふすま又は焙煎ぬかと、グルテンおよびおおばこ種皮(サイリウム)粉末を主成分とした食品素材が知られている(特許文献1参照)。一方、小麦粉と、焙煎した処理した小麦ふすまとを含有するパン(特許文献2参照)や、小麦粉と、粉状ふすまと、粒状ふすまとを含有するパン用ミックス粉(特許文献3参照)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特許第3687049号公報
【特許文献2】特開昭62−22540号公報
【特許文献3】特許第3692199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の食品素材では、ふすま又はぬかを焙煎することで特有の穀物臭をマスキングする作用があるものの、パンなどイーストによる発酵プロセスが関与するものについては、発酵中に腰が折れたり焼成時にブレイキング不足により腰が伸びなかったりするなど小麦粉を含まないことによるボディー形成が不十分となってしまい出来上がりの外観が良くなかった。さらに、食感の点でも市販のパンとはかけ離れていた。また、特許文献2に記載のパンや特許文献3に記載のパン用ミックス粉は、満足いく品質のものではなかった。また、小麦粉ベースの食品へふすまを添加するものであり、多量の小麦粉を含有しており、糖質の含有量を抑制することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくとを主成分とし、前記ふすま又は前記ぬか又はこれらの混合物特有の食感の悪さを解消した食品素材およびこれを用いた食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する第1の発明に係る食品素材は、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有したことを特徴とする。
前記増粘安定剤は、一定の粘性力を持ち、高い冷水膨潤性を示す物質を含む。
【0007】
上述した課題を解決する第2の発明に係る食品素材は、第1の発明に係る食品素材であって、前記増粘安定剤が、ジェランガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カラヤガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのうち少なくとも一種を含有することを特徴とする。
【0008】
上述した課題を解決する第3の発明に係る食品素材は、第1または第2の発明に係る食品素材であって、ファイバーを含有することを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決する第4の発明に係る食品素材は、第3の発明に係る食品素材であって、前記ファイバーがシトラスファイバーであることを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第5の発明に係る食品素材は、第1乃至第4の発明の何れか1に係る食品素材であって、乳酸発酵種をさらに含有することを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する第6の発明に係る食品素材は、第5の発明に係る食品素材であって、前記乳酸発酵種が、酵母サッカロミセス・エグジギューズ、乳酸菌ラクトバチルス・サンフランシスコが属する微生物を小麦粉生地培地にて培養後、乾燥し粉末化してなることを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第7の発明に係る食品は、第1乃至第6の発明の何れか1に係る食品素材を用い、これにゴマペーストを添加し、生地を作り焼成してなるパンまたは菓子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る食品素材によれば、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有したことにより、食感、ボリュームにおいて優れたパンなどの食品が得られる。さらに、前記食品素材は基本的に糖質(デンプン、小麦粉、米粉など)を含有しないため、糖質制限食としての栄養的価値があり、糖尿病をはじめとした肥満、高脂血症などの生活習慣病を予防する食品に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る食品素材およびこれを用いた食品を実施するための最良の形態を具体的に説明する。
【0015】
本発明の最良の実施形態に係る食品素材は、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有することを特徴とするものである。具体的には、この食品素材は、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくとが主成分であり、前記ふすまおよびぬかにごく少量付着している小麦粉および大麦粉などを除き基本的に糖質を含まないものである。これら成分のみからなる食品素材では、小麦粉又は大麦粉又はでんぷんを加えない生地であるため、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種が多くなると、水和力および弾力性が劣り生地形成が不十分となり、取り込んだ水を容易に吐き出してしまう。また、これらを用いて作り上げた製品は硬くてパサついた食感になる。一方、小麦たんぱくが多くなると、粘性不足の硬い弾力のある塊となり、結果的にグルテンによるしなやかな網目構造(ネットワーク)が達成されない。また、特許文献1に示されているような焙煎ふすままたは焙煎ぬかと、グルテンおよびおおばこ種皮(サイリウム)粉末を主成分とした食品素材では、保水性としっとり感は得られるもののグルテンによるしなやかな網目構造が達成されているとはいい難い。そこで、前記成分を含有する食品素材に増粘安定剤を配合することで、この食品素材からなる生地の粘性と保水性が向上し、しっとり感が得られ、さらに、グルテンの結合をサポートして、網目構造の形成が助けられる。増粘安定剤の中でも、一定の粘性力を持ち、高い冷水膨潤性を示す物質、例えば、ジェランガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カラヤガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのうち少なくとも一種を使用すると生地の水和力とゲル強度が一段と高まりしっかりとしたグルテンの網目構造が形成され、ボリューム、釜伸び、保湿性(パサつきがなく、ソフトな食感)などが改善される。さらに、これに粘性力が高いキサンタンガムなどの増粘安定剤を併用すれば、しなやかな網目構造を形成し、保湿効果が一層高まる。
【0016】
ファイバー、好ましくはシトラスファイバーの粉末を配合することでこの食品素材からなる生地の吸水力、保水力が大幅に向上する。その上、前記食品素材に乳酸発酵種を加えることにより、種中の微生物によって産生された酵素が作用し、生地の伸展性を改善しグルテンの網目構造を強化する。また、グルテンなどのたんぱく質がペプチド、アミノ酸まで分解して旨みが向上する。
【0017】
前記小麦たんぱくは、グルテンと呼ばれ、グリアジンとグルテニンが主な構成成分である。ふすまとは、小麦またはライ麦の表皮部分をいう。ぬかとは、小麦やライ麦を除く穀物、例えば、米、大麦、オーツ麦、ハト麦、裸麦などを精白する際に出る表皮、胚芽、細胞壁などの部分をいう。ただし、本発明では、糖質制限食としての観点から、ぬかに含まれる糖質(デンプン、米粉、大麦粉など)は、分級、篩い分けなどの工程を経て予め分離される。
【0018】
通常のふすまおよびぬかには、細菌、酵母、カビなどの微生物およびポリフェノールオキシダーゼなどの酸化酵素が含まれており、このままでは食品用には適さない。したがって、上述したふすまおよびぬかは、微生物の殺菌および酵素を失活させたものである。乾燥方法としては熱風乾燥、冷風乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。また、乾燥の工程によっては、ふすまおよびぬかの不快なにおいが残り最終製品に影響をあたえることから、焙煎工程を経ることが好ましい。焙煎は、通常100℃以上で行われるが、温度や時間などの条件は特に限定されない。このような処理をすることにより、微生物の殺菌、酵素の失活、特有の穀物臭をマスキングすることができる。前述したふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種は、乾燥後粉砕機などにより粉砕して粉末状にしたものであれば良い。
【0019】
ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくとの割合は特に限定されるものではない。ただし、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種の割合が80を超えて大きくなると、食品素材からなる生地を焼成した場合に、腰が落ち、扁平状になってしまう。また、小麦たんぱくの割合が80を越えて大きくなると、食品素材からなる生地の弾力性が必要以上に増し硬くなってしまう。よって、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種の割合が80以下であり、且つ小麦たんぱくの割合が80以下であれば良く、本発明において特に限定されるものではない。
【0020】
ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくとからなる混合物100重量部に対して、増粘安定剤およびファイバーの量はそれぞれ0.01重量部以上10重量部以下が好ましい。ファイバーは、0.01重量部未満にすると保水性を発現することができず、10重量部より多くなると、吸水量が多くなりすぎ全体の成分構成のバランスを欠き適切な食品とは言い難くなってしまう。また、増粘安定剤は、0.01重量部未満にすると粘性を発現することができず、10重量部より多くなると、粘性が高くなりすぎ、逆に生地のまとまりを欠き、適正なコンシステンシー(生地の硬さ)が得られない。よって、このような配合比とすることで、保水性を発現させることができ、粘性を向上させることができる。
【0021】
増粘安定剤としては、グァーガム、タラガム、カシアガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、コンニャクマンナンなどの植物種子粘質物、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガティガムなどの植物樹脂粘質物、ペクチン、アラビノガラクタンなどの植物果実粘質物、キサンタンガム、プルラン、デキストラン、ジェランガム等の微生物産生粘質物、カラギナン、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、アルギン酸プロピレングリコール、ファーセレラン、寒天、カードランなどの海草多糖類、セルロース系のカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、微小繊維状セルロース、海草セルロースなどが挙げられる。
【0022】
ジェランガムはSphingomonas elodeaという微生物が菌体外に産生する多糖類である。また、これは構造的には直鎖状のヘテロ多糖類であり、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースの4個の糖を1ユニットとして構成し、グルクロン酸由来のカルボキシル基を有する。ジェランガムには、脱アシル型と高アシル型の2タイプがあり、どちらも本発明において目的とする効果を有するが好ましくは高アシル型が適する。脱アシル型が微生物の発酵プロセスを経て脱アセチル化したものを回収するものであるのに対して、高アシル型は脱アセチル化前の段階の発酵物を回収するものであり、脱アシル型ジェランガムの主鎖のグルコースにグリセリル基とアセチル基がついたものである。高アシル型ジェランガムは、ケルコ社にて商品化された商品名「ケルコゲル(登録商標)HM」、「ケルコゲル(登録商標)HT」、「ケルコゲル(登録商標)LT100」などが該当する。これらは、離水性、透明性、至適PHなどの違いにより品名が異なるが全て本発明の目的に合致するものである。また、高アシル型ジェランガムはネイティブ型ジェランガムとも呼称されるが、同一のものである。通常、高アシル型ジェランガムおよび脱アシル型ジェランガムは、冷水に不溶であり、ゲル化させるには80℃以上に予め加熱、溶解させる必要がある。これらをゲル化した時の特徴は、高アシル型ジェランガムではゼラチンのようなソフトな弾力性を発現するのに対して、脱アシル型ジェランガムでは寒天のような硬くてもろいゲルを形成すると報告されている。このような特徴は、最終焼成(加熱)後の製品のボリューム、触感(食感)に影響を及ぼすものの本発明の根幹を成すものではない。本発明の根幹を成す特徴として、高アシル型ジェランガムおよび脱アシル型ジェランガムは共に冷水不溶であるが、極めて特徴的である冷水膨潤性を示すことを発見した。その上、高アシル型ジェランガムの冷水膨潤性が脱アシル型ジェランガムより非常に高いことが分かった。この冷水膨潤性がふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくの混合物に水を加えミキシングする際、水を生地内に取り込み易くさせ、グルテンの網目構造の形成を助け、最終製品のボリュームに大きく関与することが分かった。また、脱アシル型ジェランガムにはない高アシル型ジェランガムの特徴の一つである凍結解凍耐性、離水防止効果は、最終焼成後の製品を冷凍保存する際に非常に有効であり本発明の目的に寄与する。
【0023】
ガラクトマンナンは、1,4結合のβ-D-マンノース主鎖にα-D-ガラクトースの側鎖が1,6位で結合した多糖類である。ガラクトマンナンの代表的増粘安定剤としてグァーガム、タラガム、ローカストビーンガムがある。グァーガムは主に南アジアで栽培されるマメ科植物であるグァーを原料とし、タラガムはペルーなどの南アメリカに生育するマメ科植物タラ(Caesalpina spinosa)を原料とし、ローカストビーンガムは乾燥した気温の高い地中海沿岸にのみ生育する常緑樹であるカロブ樹の種子を原料とし、それぞれ胚乳部分を精製して粉末化して製造される。ガラクトマンナンは、前述の通り1,4結合のβ-D-マンノース主鎖にα-D-ガラクトースの側鎖が1,6位で結合した多糖類であり、グァーガムがマンノース2個に対してガラクトース1個の割合で結合したものであり、タラガムがマンノース3個に対してガラクトース1個の割合で結合したものであり、ローカストビーンガムがマンノース4個に対してガラクトース1個の割合で結合したものである。グルコマンナンは蒟蒻の主成分であり、構造的にはD-グルコースとD-マンノースがβ-1,4結合によって多数結合した複合多糖類である。グルコマンナンの水溶液は、ガラクトマンナンに比べより高い粘度を呈する。これらは容易に冷水に溶解し非常に高い膨潤性と保水性をもっており、前述のジェランガムと同様、グルテンの網目構造の形成、最終製品のボリューム、食感などの改善に寄与する。ローカストビーンガムについては、単独では冷水膨潤性が劣るが、カッパカラギナンやキサンタンガムを併用することで相乗効果を発現し、グァーガム、タラガムと同様に冷水で膨潤し、ゲル形成を行う。
【0024】
カラヤガムとしては、中央および北インドに生育するSterculiaccae科(アオギリ科)カラヤ(Sterculia vrens)の木の樹液であるステルキュリアガムなどが知られている。この構造は、主鎖にガラクトース、ラムノース、ガラクツロン酸があり、側鎖にグルクロン酸が結合する多糖類である。また、アセチル基を含む構造は高アシル型ジェランガムと類似しており、同様の冷水膨潤性と高ゲル化性を示す。1%溶液の粘度は約3,300mPa・sだがpHをアルカリにすると更に高粘度になる。わずかに酢酸臭をもつことから、添加量の制限と酢酸臭緩和処理が必要であるが、ジェランガム、タラガムと同様、グルテンの網目構造の形成、最終製品のボリューム、食感などの改善に寄与する。また、カラヤガムと同じ粘質物系増粘安定剤にトラガントガムがある。これはマメ科植物トラガントの分泌液を乾燥して得られる多糖類であり保型性を与える。これらは、通常、シュガークラフトの保型剤、シュガーペーストなどデコレーション用に使用される食品添加物であるが、本発明の目的に合致し使用できる。
【0025】
メチルセルロースは、天然に広く分布するセルロース(パルプ)を原料とし、これを苛性ソーダで処理した後、塩化メチル、エーテル化剤と反応させて作られる非イオン性の水溶性セルロースエーテルで、無味・無臭の白色繊維状粉末である。同類の物質にカルボキシメチルセルロースナトリウム(およびカルシウム)、繊維素グリコール酸ナトリウム(およびカルシウム)、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム(食品の0.2%以下使用基準あり)なども本発明の増粘安定剤に該当する。
【0026】
セルロースは、親水性基である多くの水酸基(-OH)を持っているが、これは分子間で水酸基同士が強い水素結合を作り結晶構造となっているため、セルロース分子間に水が入り込めずそのままでは水に溶けない。メチルセルロースはセルロースの水酸基の水素原子の一部をメチル基で置換したものであり、カルボキシメチルセルロースは同様にカルボキシメチル基で置換したものである。何れも同じ性状を有しこれらの一種以上を組み合わせることで本発明の目的に合致する。すなわち、冷水に容易に溶解し、水溶液をある温度以上に加熱するとゲル化し冷却すると元の溶液の状態に戻る。この冷水溶解性と高粘性、さらには高い保水力をもつ性状はグルテンの網目構造の形成、釜伸び、最終製品のボリュームに大きく寄与する。メチルセルロースには、粘度によってグレードが異なるが何れも本発明の目的に使用することができ、2%水溶液の粘度(mPa・s)が100以上のものが好ましい。この粘度が100未満となる場合、ゲル化、保水力が劣り、グルテン膜形成力、ボディー形成力、釜伸び、ボリュームが低下する。また、メチルセルロースおよび前述の類似物質の使用量の和が食品の2%以下でなければならないという使用基準が設定されている。また、前述と同様な性状を有するセルロースにヒドロキシプロピルメチルセルロースがある。これは日本国内では保健機能食品たるカプセル剤および錠剤以外の食品に使用することができないが、米国では一般の食品に使用できる。
【0027】
ジェランガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カラヤガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの少なくとも一種によってもたらされる冷水膨潤力とゲル化力、水和し易い性状は、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と小麦たんぱくのみからなる食品において、本発明を実施する上で際立った効果を発現する。すなわち、これらの物質が介入することで、前述のふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種における水和力不足、さらには小麦たんぱくによる硬い弾力性が修復され、逆に柔らかい弾力性および水和し易い性状を引き出させる結果になる。その上、これらの物質の作用は、前述した粘性力の高い増粘安定剤との併用で一層の効果を発現する。ここで、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくとを含有する食品素材へのこれらの物質の添加量は、0.01重量部以上10重量部以下が好ましい。但し、水溶液の粘度(mPa・s)がグレードによって様々であり、一概に添加量の範囲を限定するものではない。この添加量が0.01重量部より少なくなると、一定のコンシステンシー(生地の硬さ)および水和し易い性状を発現することができず、前記添加量が10重量部より多くなると、ゲル強度が増して硬くなってしまう。よって、ジェランガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カラヤガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの少なくとも一種の添加量を上述した範囲に設定することで、製パン・製菓に適したコンシステンシーを発現することができる。
【0028】
ファイバーとしては、上述したシトラスファイバー以外にも、グアファイバー、リンゴファイバー、小麦ファイバー、大麦ファイバー、ライ麦ファイバー、ビートファイバー、大豆ファイバー、ニンジンファイバー、オレンジファイバー、竹ファイバー、綿実ファイバー、トマトファイバー、オーツファイバー、セルロースなど食物繊維全てが挙げられる。
【0029】
ここで、上記シトラスファイバーは、オレンジなどの柑きつ類を圧搾後絞り液からジュースを除き、粉末化後の細胞壁に高衝撃を与えたものである。そのため、このシトラスファイバーは、細胞のミセル構造が壊れポーラスな構造となり、吸水力が著しく向上すると同時に、水との結合性が高まり、結果的に取り込まれた水の保水力を向上させる。具体的には、1g当たりの吸水量がオーツファイバーでは2.32mLとなり、大豆ファイバーでは2.48mLとなり、小麦ファイバーでは4.86mLとなるのに対してシトラスファイバーでは9.95mLとなり高い吸水力を示す。また、シトラスファイバーは小麦ファイバーなどとは異なり保水力が高く、また、油脂との結合性が高いことから、米国では脂肪代替品としてドーナツ、マフィンなどの菓子、吸水性を向上させた殻粒パンへの利用が報告されているが、本発明では、糖質(デンプン、小麦粉、米粉など)を含有しない製パンなどの食品において、ボディー形成に必要な糖質の代替としてシトラスファイバーが関与することを見出した。さらに、上記増粘安定剤にシトラスファイバーを併用することで吸水力と保水力が一段とアップし、グルテンの形成をスムースに進行させる働きがある。例えば、シトラスファイバー1gだけの場合には吸水量が9.95mLとなるが、これにグァーガムを0.5g添加することで13.35mLまで増加する。
【0030】
乳酸発酵種は、サッカロミセス・エグジギューズ(Saccharomyces exiguus)という酵母とラクトバチルス・サンフランシスコ(Lactobacillus sanfrancisco)などの数種の乳酸菌が共生した微生物によって醸し出される。この酵母及び乳酸菌によって分泌される酵素の働きによりグルテンの網目構造が強化されて生地伸びが向上する。また、この強力な酵素はグルテンなどのたんぱく質をペプチド、アミノ酸まで分解し旨みが向上する。したがって、イーストと併用することで熟成発酵力が相乗的に高まり、風香味の改善に繋がる。同時にガス発生力が高まりボリュームのあるパンなどの発酵食品に仕上げる効果も有する。乳酸発酵種は、小麦粉100重量部に対して水50重量部および上述した元種を加え生地にし、これを発酵させて作られる。このようにして作られた発酵種は、目的に応じて凍結乾燥を行い、酵母および乳酸菌を生きたままの状態で保存することが可能である。また、乳酸発酵種中の小麦粉含有量は67%であり、食品素材への発酵種5%添加は食品素材への小麦粉3.35%添加を意味する。このように発酵種の添加量を調整した食品素材を用いた食品とすることで、糖質制限食としての栄養的価値があり、糖尿病をはじめとした肥満、高脂血症などの生活習慣病を予防できる食品に利用することができる。ここで、食品素材への乳酸発酵種の添加量は、1重量部以上10重量部以下である。この添加量が10重量部より多い場合にはこの添加量に応じて乳酸発酵種による改善効果は高くなる(グルテンの網目構造を強化したり、旨みが向上したりする)ものの、糖質の摂取量を極力抑制するという糖質制限食としての効果が低下し、前記添加量が1重量部未満の場合には乳酸発酵種の添加による、グルテンの網目構造を強化したり、旨みが向上したりする効果が低下してしまう。よって、上述した乳酸発酵種の添加量とすることにより、グルテンの網目構造を強化したり、旨みが向上したりする効果と、糖質制限食としての効果とをバランス良く発現することができる。
【0031】
ここで、前記ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤、好適には増粘安定剤の一種としてジェランガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カラヤガム、メチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースとを併用することで、糖質(デンプン)を含まない製パン工程の問題、つまり、ミキシング時のグルテン形成力が落ち、その後の機械耐性にも悪影響を及ぼし、製造ラインで移送する製造に適さず、発酵の最終段階での腰折れや焼成時のブレイキング不足によりボリュームが低下するという問題を改善できることが分かった。さらに、これら成分からなる食品素材にシトラスファイバーを併用することで、発酵の最終段階での腰折れや焼成時のブレイキング不足によるボリュームの低下をさらに改善できることが分かった。その上、これら成分からなる食品素材に乳酸発酵種を併用することにより、グルテンの網目構造を強化したり、旨みが向上したりすることが分かった。
【0032】
更に、風香味と栄養学的な観点を踏まえた改善策としてゴマぺーストの添加が大きな効果をもたらすことを見出した。胡麻は、抗酸化成分であるゴマリグナンを初めとして豊富な栄養素を含んでおりアンチエイジング対策には最適な健康素材である。また、胡麻を加えることで風香味が増し、ふすまおよびぬかのいやな匂いをマスキングするのに適する。その上、胡麻に含まれる糖質が5.9%であり、これは穀類、豆類、ナッツ類の中でも糖質含量が少ない。例えば、健康素材として良く利用される国産小麦全粒粉の糖質は61.4%であり、国産大豆の糖質は11.1%である(日本食品標準成分表、2002年改訂版参照)。
【0033】
上述した、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有する食品素材、前記増粘安定剤がジェランガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カラヤガム、メチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースのうち少なくとも一種を含む食品素材、これらに新たにファイバーを含有する食品素材、またはこれらにさらに新たに乳酸発酵種を含有する食品素材を用い、これにパン用イースト、水を加えたり、さらにゴマペーストを加えたりしてパン生地を作り、通常の製パン法に従い焼成などして製造すれば容易に本発明に係るパン様食品を得ることができる。パン類としては、例えば食パン、バターロール、ハードロール、クロワッサンなど多種多様なバラエティーに富むパンが挙げられる。パンの製造方法としては、中種法、ストレート法などが挙げられる。ストレート法を用いた場合には、ミキシング、フロア、分割、ベンチ、成型、ホイロ、焼成の処理を同手順にて実施することでパン類を容易に製造できる。
【0034】
上記では、ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有する食品素材を用いて説明したが、このようなふすまやぬかの代わり、または新たに追加して、大豆や小豆などの豆類のうちの少なくとも一種の表皮、胚芽などの部分またはぶどうや、オレンジやゆずなどの柑きつ類のうちの少なくとも一種の果皮、種子などの部分と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有する食品素材としても良い。このような食品素材であっても、上述した最良の実施形態に係る食品素材と同様な作用効果を奏する。
【0035】
以下に、本発明に係る食品素材およびこれを用いた食品を実施例及び比較例にて具体的に説明する。
【実施例1】
【0036】
下記表1に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすま(焙煎したふすま)を50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤としてキサンタンガムを0.4%添加して食品素材Aを得た。この食品素材A100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0037】
食品素材A 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0038】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例2】
【0039】
下記表1に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまを50:50の割合で混合し、これに高アシル型ジェランガムを0.3%添加して食品素材Bを得た。この食品素材B100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0040】
食品素材B 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0041】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例3】
【0042】
下記表1に示すように、小麦たんぱくと焙煎大麦ぬか(焙煎した大麦ぬか)を50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤としてキサンタンガムを0.4%添加し、高アシル型ジェランガムを0.3%添加し、シトラスファイバーを0.8%添加して食品素材Cを得た。この食品素材C100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0043】
食品素材C 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0044】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例4】
【0045】
下記表1に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまを50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤としてキサンタンガムを0.4%添加し、高アシル型ジェランガムを0.3%添加し、シトラスファイバーを0.8%添加し、乳酸発酵種を5%添加して食品素材Dを得た。この食品素材D100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0046】
食品素材D 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0047】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例5】
【0048】
下記表1に示すように、実施例4の方法によるロールパンの配合に新たにゴマペーストを添加し、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0049】
食品素材D 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
ゴマペースト 10重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0050】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例6】
【0051】
下記表1に示すように、実施例2の方法にて得られた食品素材B100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってクロワッサンを得た。
【0052】
食品素材B 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
ロールインバター 50重量部
水 155重量部
【0053】
バター以外の材料を低速2分、中速3分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分混合して捏ね上げ温度24℃に冷却する。続いて、3つ折り3回ロールイン後70gに分割し、30℃、湿度75%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例7】
【0054】
下記表1に示すように、実施例2の方法にて得られた食品素材Bにキサンタンガムを0.4%添加し、これにシトラスファイバーを2%添加し、乳酸発酵種を3%添加して食品素材Eを得た。この食品素材E100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってクロワッサンを得た。
【0055】
食品素材E 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
ロールインバター 50重量部
水 155重量部
【0056】
バター以外の材料を低速2分、中速3分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分混合して捏ね上げ温度24℃に冷却する。続いて、3つ折り3回ロールイン後70gに分割し、30℃、湿度75%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例8】
【0057】
下記表1に示すように、実施例7の方法によるクロワッサンの配合に新たにゴマペーストを添加し、以下の作業を行ってクロワッサンを得た。
【0058】
食品素材E 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
ゴマペースト 10重量部
生イースト 3重量部
ロールインバター 50重量部
水 155重量部
【0059】
バター以外の材料を低速2分、中速3分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分混合して捏ね上げ温度24℃に冷却する。続いて、3つ折り3回ロールイン後70gに分割し、30℃、湿度75%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例9】
【0060】
下記表1に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまを50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤としてキサンタンガムを0.4%添加し、高アシル型ジェランガムを0.3%添加し、シトラスファイバーを0.1%添加し、乳酸発酵種を1%添加して食品素材Fを得た。この食品素材F100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってクッキーを得た。
【0061】
食品素材F 100重量部
全卵 100重量部
バター 90重量部
ゴマペースト 20重量部
ドロマイト 1重量部
スクラロース 0.06重量部
アセスルファムカリウム 0.06重量部
【0062】
液状の全卵、バター、ゴマペーストを混ぜ合わせ、これにその他の材料を加え合わせ完全にミキシングし生地にする。この生地を平たく延ばし、所定の型(15g/個)で抜き取る。約1時間ベンチを取り、180℃で25分焼成した。
【実施例10】
【0063】
下記表1に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまを50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤としてキサンタンガムを0.4%添加し、高アシル型ジェランガムを0.3%添加し、シトラスファイバーを2.5%添加して食品素材Gを得た。この食品素材G100重量部に対して、食塩水(8%濃度)を55重量部加え、下記製法にて生うどん(麺)を得た。
【0064】
製法
ミキシング 10分
複合
熟成 30分
圧延
切り出し ♯12(角)、幅:2.5mm、厚み:1.6mm
【0065】
【表1】

【実施例11】
【0066】
下記表2に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまを50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤としてタラガムを0.3%添加して食品素材Hを得た。この食品素材H100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0067】
食品素材H 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0068】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例12】
【0069】
下記表2に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまを50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤としてカラヤガムを0.3%添加して食品素材Jを得た。この食品素材J100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0070】
食品素材J 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0071】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例13】
【0072】
下記表2に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまを50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤としてメチルセルロース(2%溶液粘度4000mPa・s)を0.6%添加して食品素材Kを得た。この食品素材K100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0073】
食品素材K 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0074】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例14】
【0075】
下記表2に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまを50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤としてキサンタンガムを0.4%、タラガムを0.3%添加して食品素材Lを得た。この食品素材L100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0076】
食品素材L 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0077】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【実施例15】
【0078】
下記表2に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまを50:50の割合で混合し、これに増粘安定剤として高アシル型ジェランガムを0.1%、タラガムを0.1%、メチルセルロース(2%溶液粘度4000mPa・s)を0.2%添加して食品素材Mを得た。この食品素材M100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0079】
食品素材M 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0080】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【0081】
【表2】

【0082】
[比較例1]
比較例1として、上記実施例2の食品素材Bを、下記表3に示すように、小麦たんぱくと生ふすまとを50:50の割合で混合したものに置き換えて食品素材aを得た。この食品素材a100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0083】
食品素材a 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0084】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【0085】
[比較例2]
比較例2として、上記実施例2の食品素材Bを、下記表3に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまとを50:50の割合で混合したものに置き換えて食品素材bを得た。この食品素材b100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0086】
食品素材b 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0087】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【0088】
[比較例3]
比較例3として、上記実施例2の食品素材Bを、下記表3に示すように、小麦たんぱくと焙煎ふすまとを50:50の割合で混合したもの1kgにおおばこ種皮粉末3gを加えたものに置き換えて食品素材cを得た。この食品素材c100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってロールパンを得た。
【0089】
食品素材c 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
水 155重量部
【0090】
バター以外の材料を低速2分、中速3分、高速1分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分、高速3分混合して捏ね上げ温度27℃とした。続いて、35℃にて30分発酵させ、70gに分割し、ベンチタイム25分とった後、38℃、湿度85%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【0091】
[比較例4]
比較例4として、下記表3に示すように、上記比較例3の食品素材c100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってクロワッサンを得た。
【0092】
食品素材c 100重量部
全卵 10重量部
バター 5重量部
生イースト 3重量部
ロールインバター 50重量部
水 155重量部
【0093】
バター以外の材料を低速2分、中速3分混合し、続いてバターを添加し低速1分、中速3分混合して捏ね上げ温度24℃に冷却した。続いて、3つ折り3回ロールイン後70gに分割し、30℃、湿度75%で60分ホイロをとり、210℃で10分焼成した。
【0094】
[比較例5]
比較例5として、下記表3に示すように、上記比較例3の食品素材c100重量部に対して、以下の配合の材料を加え、以下の作業を行ってクッキーを得た。
【0095】
食品素材c 100重量部
全卵 100重量部
バター 90重量部
ドロマイト 1重量部
スクラロース 0.06重量部
アセスルファムカリウム 0.06重量部
【0096】
液状の全卵、バター、ゴマペーストを混ぜ合わせ、これにその他の材料を加え合わせ完全にミキシングし生地にする。この生地を平たく延ばし、所定の型(15g/個)で抜き取る。約1時間ベンチを取り、180℃で25分焼成した。
【0097】
[比較例6]
比較例6として、下記表3に示すように、上記比較例3の食品素材c100重量部に対して、食塩水(8%濃度)を45重量部加え、下記製法にて生うどん(麺)を得た。
【0098】
製法
ミキシング 10分
複合
熟成 30分
圧延
切り出し ♯12(角)、幅:2.5mm、厚み:1.6mm
【0099】
【表3】

【0100】
[評価]
実施例1〜8,11〜15及び比較例1〜4で製造したロールパン、クロワッサンを外観、内相、味、風味、香り、食感、製パン性の各項目について8名のパネラーにて評価を行った。各項目にて、最高評価を5とし最低評価を1とした。各項目において、各々8名の平均値を数値で示した。結果を表4、表5に示す。
【0101】
【表4】

【0102】
【表5】

【0103】
実施例9および比較例5で製造したクッキーを外観、内相、味、風味、香り、食感、製菓適性の各項目について8名のパネラーにて評価を行った。各項目にて、最高評価を5とし最低評価を1とした。各項目において、各々8名の平均値を数値で示した。結果を表6に示す。
【0104】
【表6】

【0105】
実施例10および比較例6で製造した生うどん(麺)を沸騰したお湯で約5分間茹で上げ、外観、内相、味、風味、香り、食感、製麺性の各項目について8名のパネラーにて評価を行った。各項目にて、最高評価を5とし最低評価を1とした。各項目において、各々8名の平均値を数値で示した。結果を表7に示す。
【0106】
【表7】

【0107】
以上の結果より、実施例1〜8,11〜15によるパンは、比較例1〜4によるパンと比べて、外観、内相、香り、食感、味、製パン性の何れもが向上したことが分かった。また、実施例9によるクッキーは、比較例5によるクッキーと比べて、外観、内相、香り、食感、味、製菓性の何れもが向上したことが分かった。さらに、実施例10による生うどん(麺)は、比較例6による生うどん(麺)と比べて、外観、内相、香り、食感、味、製麺性の何れもが向上したことが分かった。さらに、上述した食品は、小麦粉を主体としこれに焙煎ふすまなどを添加した食品、例えば、焙煎処理した小麦ふすまを添加する製パン法による食品(特許文献2参照)、パン用ミックス粉及びこれを用いたパン類の製造方法(特許文献3参照)とは明らかに異なる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、食品素材およびこれを用いた食品に利用することが可能であり、特にふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有する一方、糖質を含有しない食品素材、およびこの食品素材を用いて作られるパン、クッキー、パウンドケーキ、スポンジケーキ、うどん、そば、パスタなどの健康食品に利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ふすまおよびぬかのうちの少なくとも一種と、小麦たんぱくと、増粘安定剤とを含有した
ことを特徴とする食品素材。
【請求項2】
請求項1に記載された食品素材であって、
前記増粘安定剤が、ジェランガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カラヤガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのうち少なくとも一種を含有する
ことを特徴とする食品素材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された食品素材であって、
ファイバーを含有する
ことを特徴とする食品素材。
【請求項4】
請求項3に記載された食品素材であって、
前記ファイバーがシトラスファイバーである
ことを特徴とする食品素材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載された食品素材であって、
乳酸発酵種をさらに含有する
ことを特徴とする食品素材。
【請求項6】
請求項5に記載された食品素材であって、
前記乳酸発酵種は、酵母サッカロミセス・エグジギューズ、乳酸菌ラクトバチルス・サンフランシスコが属する微生物を小麦粉生地培地にて培養後、乾燥し粉末化してなる
ことを特徴とする食品素材。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載された食品素材を用い、これにゴマペーストを添加し、生地を作り焼成してなるパンまたは菓子である
ことを特徴とする食品。

【公開番号】特開2008−136460(P2008−136460A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330437(P2006−330437)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【特許番号】特許第3977409号(P3977409)
【特許公報発行日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(592019947)鳥越製粉株式会社 (8)
【Fターム(参考)】