説明

パーキング機構の組み付け方法

【課題】駆動ユニットのケーシングに対する組み付け工程を容易化できるパーキング機構の組み付け方法を提供すること。
【解決手段】このパーキング機構1の組み付け方法は、ディテント構造を構成するディテントレバー6と、このディテントレバー6に連結されるマニュアルシャフト5とを備えると共に、駆動ユニットのケーシング10に組み付けられるパーキング機構1の組み付け方法に関する。このパーキング機構1の組み付け方法では、ディテントレバー6とマニュアルシャフト5とを組み立ててアセンブリを形成するステップと、このアセンブリ5、6をケーシング10の内側からケーシング10の内部に取り付けるステップとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パーキング機構の組み付け方法に関し、さらに詳しくは、駆動ユニットのケーシングに対する組み付け工程を容易化できるパーキング機構の組み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動ユニットのケーシングに組み付けられるパーキング機構は、一般に、ディテント構造を構成するディテントレバーと、このディテントレバーに連結されるマニュアルシャフトとを備えている。このようなパーキング機構では、駆動ユニットのケーシングに対する組み付け工程が容易であることが好ましい。かかる課題に関するパーキング機構の組み付け方法として、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−205578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、駆動ユニットのケーシングに対する組み付け工程を容易化できるパーキング機構の組み付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかるパーキング機構の組み付け方法は、ディテント構造を構成するディテントレバーと、前記ディテントレバーに連結されるマニュアルシャフトとを備えると共に、駆動ユニットのケーシングに組み付けられるパーキング機構の組み付け方法であって、前記ディテントレバーと前記マニュアルシャフトとを組み立ててアセンブリを形成するステップと、前記アセンブリを前記ケーシングの内側から前記ケーシングの内部に取り付けるステップとを含むことを特徴とする。
【0006】
このパーキング機構の組み付け方法では、まず、ディテントレバーとマニュアルシャフトとが組み立てられてアセンブリが形成され、その後に、このアセンブリがケーシングの内側からケーシングの内部に取り付けられて配置される。かかる構成では、(1)ディテントレバーおよびマニュアルシャフトがケーシング内に個別に持ち込まれてケーシング内にてアセンブリ化される構成と比較して、ディテントレバーとマニュアルシャフトとのアセンブリ化が容易となる。また、(2)マニュアルシャフトがケーシングの内部に設置されたディテントレバーに対してケーシングの外部から取り付けられる構成と比較して、マニュアルシャフトの取り付けが容易である。これらにより、パーキング機構の組み付け工程が容易化される利点がある。
【0007】
また、この発明にかかるパーキング機構の組み付け方法は、前記ディテントレバーを支持するディテントスプリングと、前記マニュアルシャフトを支持する支持部とを有すると共に、前記アセンブリが前記マニュアルシャフトの端部を前記ケーシングの挿入孔に挿入されて配置されるときに、前記アセンブリの設置状態における前記マニュアルシャフトの長手方向に対して、前記ディテントスプリングが前記支持部よりも前記ケーシングの内部側に位置する。
【0008】
このパーキング機構の組み付け方法では、ケーシング内部でのアセンブリの取り付け作業がさらに容易化される利点がある。
【発明の効果】
【0009】
この発明にかかるパーキング機構の組み付け方法では、まず、ディテントレバーとマニュアルシャフトとが組み立てられてアセンブリが形成され、その後に、このアセンブリがケーシングの内側からケーシングの内部に取り付けられて配置される。かかる構成では、(1)ディテントレバーおよびマニュアルシャフトがケーシング内に個別に持ち込まれてケーシング内にてアセンブリ化される構成と比較して、ディテントレバーとマニュアルシャフトとのアセンブリ化が容易となる。また、(2)マニュアルシャフトがケーシングの内部に設置されたディテントレバーに対してケーシングの外部から取り付けられる構成と比較して、マニュアルシャフトの取り付けが容易である。これらにより、パーキング機構の組み付け工程が容易化される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明の実施例にかかる駆動ユニットのパーキング機構を示す構成図である。
【図2】図2は、図1に記載したパーキング機構の組み付け工程を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図1に記載したパーキング機構の組み付け工程を示す説明図である。
【図4】図4は、図1に記載したパーキング機構の組み付け工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施例に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【実施例】
【0012】
図1は、この発明の実施例にかかる駆動ユニットのパーキング機構を示す構成図である。図2〜図4は、図1に記載したパーキング機構の組み付け工程を示すフローチャート(図2)ならびに説明図(図3および図4)である。
【0013】
[駆動ユニットのパーキング機構]
この駆動ユニットのパーキング機構1は、例えば、車両のトランスアクスルに配置されて、車両停車時における回転軸11の回転を規制する。例えば、この実施例では、トランスアクスルのケーシング10内に変速機構(図示省略)および回転軸11が配置されており、駆動力源(図示省略)の動力が変速機構を介して回転軸11に伝達されている。そして、このケーシング10内に配置されたパーキング機構1により、車両停車時における回転軸11の回転が規制されている。
【0014】
パーキング機構1は、パーキングギア2と、パーキングポール3と、ポールシャフト4と、マニュアルシャフト5と、ディテントレバー6と、パーキングロッド7と、カム8と、ディテントスプリング9とを備える(図1参照)。パーキングギア2は、凹部および凸部から成る外歯を有し、回転軸11と一体となって回転する。パーキングポール3は、ポールシャフト4を中心軸として回転可能に支持される。このパーキングポール3が回転変位してパーキングギア2の外歯と噛み合うことにより、回転軸11の回転が規制される。マニュアルシャフト5は、ケーシング10内にて回転可能に配置され、その軸方向にてシフトレバー(図示省略)側のアクチュエータ(シフトバイワイヤ・アクチュエータ)12もしくはアウターレバー(図示省略)に連結される。
【0015】
ディテントレバー6は、パーキング機構1内にてディテント構造を構成するレバー状部材である。このディテントレバー6は、V字形状に屈曲しており、その屈曲部分にてマニュアルシャフト5に連結される。また、ディテントレバー6は、各シフトポジションに対応する凹部を有する節度山を一方の端部に備える。ディテントレバー6は、この節度山とケーシング10内に配置されたロックピン(図示省略)とを係合(離脱)させることによりロック(ロック解除)される。また、ディテントレバー6は、ケーシング10内にてディテントスプリング9により支持される。また、ディテントレバー6は、他方の端部にてパーキングロッド7に相対回転可能に連結される。また、パーキングロッド7の自由端には、ストッパ(図示省略)が形成される。カム8は、パーキングロッド7に連結される。カム8とパーキングロッド7とは、パーキングロッド7の長手方向に相対移動できる。
【0016】
このパーキング機構1では、シフトレバーが操作されてシフトポジションが切り替えられると、アクチュエータ12が駆動されてパーキングポール3が変位する。すると、パーキングポール3とパーキングギア2との係合が操作されて、回転軸11の回転が許容あるいは防止される。これにより、変速機構の変速比の制御範囲が変更される。なお、この実施例では、例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、B(ブレーキ)ポジションなどを相互に切り替えできる。
【0017】
例えば、シフトポジションとしてDポジションが選択されている状態では、ディテントレバー6およびパーキングロッド7が所定の位置にあり、カム8とパーキングポール3とが非接触状態にある。この状態では、パーキングポール3とパーキングギア2とが係合しておらず、回転軸11の回転が許容される。
【0018】
次に、シフトポジションがDポジションからPポジションに切り替えられると、マニュアルシャフト5およびディテントレバー6が回転して、パーキングロッド7が駆動される。すると、カム8が変位し、パーキングポール3が押圧されてパーキングギア2に係合する。また、このとき、パーキングロッド7が変位してカム8が保持される。これにより、パーキングギア2が固定されて、回転軸11の回転が防止される。
【0019】
[パーキング機構の組み付け工程]
ここで、パーキング機構1は、トランスアクスルのケーシング10に対して以下のように組み付けられる(図2〜図4参照)。まず、ディテントレバー6とマニュアルシャフト5とが組み立てられてアセンブリ5、6が形成される(アセンブリ化ステップST1)。このアセンブリ化ステップST1では、マニュアルシャフト5がディテントレバー6の孔に挿入され、ディテントレバー6のピン穴とマニュアルシャフト5のピン穴とにピンが圧入され、さらに、その上からピンの抜け止めを防止するためのスペーサが嵌め合わされる(図示省略)という方法や、マニュアルシャフト5がディテントレバー6の孔に圧入されるといった方法によりアセンブリ化される。また、これらの作業は、ケーシング10の外部にて行われる。これにより、ディテントレバー6とマニュアルシャフト5との組み立て作業が容易化される。
【0020】
次に、アセンブリ5、6がケーシング10の内側からケーシング10の内部に取り付けられる(アセンブリ組み付けステップST2)。例えば、この実施例では、ケーシング10の内部にディテントレバー6を支持するディテントスプリング9が配置されている(図1参照)。また、ケーシング10の内部にカム8を保持するためのカム保持部81が設けられており、このカム保持部81がマニュアルシャフト5を支持するための支持部を有している。また、ケーシング10に挿入孔が開けられている。そして、アセンブリ5、6が、ディテントレバー6側にてディテントスプリング9に支持され、マニュアルシャフト5側にてカム保持部81の支持部に支持されて配置される。また、このとき、マニュアルシャフト5の端部がケーシング10の内側からケーシング10の挿入孔に差し込まれて配置される。なお、このマニュアルシャフト5の端部と、ケーシング10外部のアクチュエータ12もしくはアウターレバーとが連結される。これらの作業は、ケーシング10の内側から行われる。その後に、パーキングポール3、ポールシャフト4、カム8などが配置される(ST3)。
【0021】
[効果]
以上説明したように、このパーキング機構1の組み付け方法では、まず、ディテントレバー6とマニュアルシャフト5とが組み立てられてアセンブリ5、6が形成され、その後に、このアセンブリ5、6がケーシング10の内側からケーシング10の内部に取り付けられて配置される(図2〜図4参照)。かかる構成では、(1)ディテントレバーおよびマニュアルシャフトがケーシング内に個別に持ち込まれてケーシング内にてアセンブリ化される構成と比較して、ディテントレバー6とマニュアルシャフト5とのアセンブリ化が容易となる。また、(2)マニュアルシャフトがケーシングの内部に設置されたディテントレバーに対してケーシングの外部から取り付けられる構成と比較して、マニュアルシャフト5の取り付けが容易である。これらにより、パーキング機構1の組み付け工程が容易化される利点がある。
【0022】
また、かかる構成では、ディテントレバー6とマニュアルシャフト5とを予めアセンブリ化することにより、これらの結合部品を省略できる利点がある。また、部品の組み付けスペースを小さくできるので、ケーシング10を小型化できる利点がある。さらに、ケーシング10を小型化することによる衝突スペースの確保、車両などへの搭載性の向上、重量の軽減、製造コストの低減などが実現できる利点がある。
【0023】
なお、この実施例では、上記のように、ディテントレバー6を支持するディテントスプリング9と、マニュアルシャフト5を支持する支持部(カム保持部81)とが設けられている(図1参照)。そして、ディテントレバー6とマニュアルシャフト5とを組み立てて成るアセンブリ5、6が、マニュアルシャフト5の端部をケーシング10の挿入孔に挿入されて配置されている。このとき、ディテントスプリング9がカム保持部81(カム8)よりもケーシング10の内部側に位置している。言い換えると、アセンブリ5、6の設置状態におけるマニュアルシャフト5の長手方向に対して、ディテントスプリング9がカム保持部81よりもケーシング10の内部側に位置している。かかる構成により、ケーシング10内部でのアセンブリ5、6の取り付け作業が容易化されている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、この発明にかかるパーキング機構の組み付け方法は、駆動ユニットのケーシングに対する組み付け工程を容易化できる点で有用である。
【符号の説明】
【0025】
1 パーキング機構
2 パーキングギア
3 パーキングポール
4 ポールシャフト
5 マニュアルシャフト
6 ディテントレバー
7 パーキングロッド
8 カム
81 カム保持部
9 ディテントスプリング
10 ケーシング
11 回転軸
12 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディテント構造を構成するディテントレバーと、前記ディテントレバーに連結されるマニュアルシャフトとを備えると共に、駆動ユニットのケーシングに組み付けられるパーキング機構の組み付け方法であって、
前記ディテントレバーと前記マニュアルシャフトとを組み立ててアセンブリを形成するステップと、前記アセンブリを前記ケーシングの内側から前記ケーシングの内部に取り付けるステップとを含むことを特徴とするパーキング機構の組み付け方法。
【請求項2】
前記ディテントレバーを支持するディテントスプリングと、前記マニュアルシャフトを支持する支持部とを有すると共に、前記アセンブリが前記マニュアルシャフトの端部を前記ケーシングの挿入孔に挿入されて配置されるときに、
前記アセンブリの設置状態における前記マニュアルシャフトの長手方向に対して、前記ディテントスプリングが前記支持部よりも前記ケーシングの内部側に位置する請求項1に記載のパーキング機構の組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−174914(P2010−174914A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15169(P2009−15169)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】