説明

パーティション

【課題】パーティションブースの外部に漏出する音声を軽減するという課題と、パーティションブース内において音声を適度に吸音するという課題とを、同時に解決する。
【解決手段】パーティション10は、床面に立設される。パーティション10は、第1の領域110と、パーティション10が床面に立設されたときに、第1の領域110より下方に位置する第2の領域120とを備える。第2の領域120は、第1の領域110よりも高い吸音率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来のパーティション構造に対する反射音の伝搬経路の一例を示す図である。図7に示す室内700には、パーティション702A、パーティション702B、およびパーティション702Cが設置されている。これにより、室内700には、空間712、空間714、空間716、空間718が形成されている。たとえば、これらのパーティションは、スチール板、アルミ板などの平板状の部材で表面が覆われている。このため、伝搬経路732が示すように、空間714の人物722から発せられ、パーティション702Bの下方に向かう音声は、パーティション702Bの下方、天井、および室内700の壁面で反射され、空間712の人物724まで伝搬してしまう。また、伝搬経路734が示すように、人物722から発せられ、天井に向かう音声は、天井およびパーティション702Cの下方で反射され、空間716の人物726まで伝搬しまう。また、伝搬経路736が示すように、人物722から発せられ、床面に向かう音声は、床面、天井、およびパーティション702Cの下方で反射され、人物726まで伝搬してしまう。同様の原理から、人物724から発せられた音声は、人物722および人物726に伝搬してしまい、人物726から発せられた音声は、人物722および人物724まで伝搬してしまう。このように、空間712、空間714、空間716、空間718のいずれかの空間から発せられた音声は、少なくとも、パーティションが設置されている空間全体(空間712〜718)に面する天井で反射されて、さらに別の空間に伝搬する。
【0003】
特許文献1には、パーティション本体を回り込む回折音を除去することを目的として、パーティション本体の縁部に振動板を有する吸音機構を設けることが記載されている。特許文献2には、騒音を吸収することを目的として、衝立内に吸音材層を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−266012号公報
【特許文献2】特開昭63−073600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、音声が天井を反射して外部に漏出することを抑制することができない。また、特許文献2に記載の技術では、衝立の全面に亘って吸音材層が設けられているため、音声を過度に吸音してしまい、無響室にいるかのような違和感を、パーティションブース内のユーザーに感じさせてしまうなどの問題が生じる。このように、従来技術では、音声が天井で反射されて外部に漏出することを抑制するという課題と、パーティションブース内の音声を過度に吸音しないという課題とを、同時に解決することができない。
そこで、本発明は、パーティションブースの外部に漏出する音声を軽減するという課題と、パーティションブース内において音声を過度に吸音しないという課題とを、同時に解決することができる、パーティション構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、床面に立設されるパーティションを備え、前記パーティションは、第1の領域と、前記第1の領域よりも高い吸音率を有し、当該パーティションが床面に立設されたときに前記第1の領域よりも前記床面に近くなる位置に設けられた第2の領域とを有することを特徴とするパーティション構造を提供する。前記第2の領域は、前記パーティションに挟まれた第1の空間から発せられ、当該第1の空間以外の第2の空間に伝搬する音声の伝搬経路上の領域であり、前記伝搬経路は、前記パーティションが立設されている空間に面する天井を反射面として含む伝搬経路であってもよい。また、前記第2の領域は、前記パーティションに挟まれた第1の空間以外の第2の空間から発せられ、当該第1の空間に伝搬する音声の伝搬経路上の領域であり、前記伝搬経路は、前記パーティションが立設されている空間に面する天井を反射面として含む伝搬経路であってもよい。また、前記パーティションに挟まれた空間に隣接する空間の壁面よりも高い吸音率を有する吸音手段であって、当該壁面において、前記パーティションの前記第2の領域と同じ高さの位置に設けられた吸音手段をさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パーティションブースの外部に漏出する音声を軽減するという課題と、パーティションブース内において音声を適度に吸音するという課題とを、同時に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るパーティション10の外観を示す。
【図2】パーティション10の断面を示す。
【図3(a)】パーティション構造の設置例を示す。
【図3(b)】パーティション構造の設置例を示す。
【図4】パーティションブースの減音性能のシミュレーション結果を示す。
【図5】パーティション構造の他の構成例を示す。
【図6(a)】パーティション構造の他の設置例を示す。
【図6(b)】パーティション構造の他の設置例を示す。
【図7】従来のパーティション構造に対する音響シミュレーションの結果を示す。
【図8】変形例における各領域を説明する図である。
【図9】(a)は、変形例1に係るパネルの例を示す斜視図である。(b)は、(a)に示すパネルの断面図である。
【図10】変形例1における会話音声及びマスキング音の伝搬経路を説明する図である。
【図11】(a)は、変形例2に係るパネルの例を示す斜視図である。(b)は、(a)に示すパネルの断面図である。
【図12】変形例2における会話音声及びマスキング音の伝搬経路を説明する図である。
【図13】変形例3に係るパネルの例を示す断面図である。
【図14】(a)は、変形例4に係るパネルの例を示す断面図である。(b)は、(a)に示すパネルの断面図である。
【図15】(a)は、変形例5に係るパネルの例を示す断面図である。(b)は、変形例6に係るパネルの例を示す側面図である。
【図16】変形例7に係るパネルの例を示す斜視図である。
【図17】変形例8に係るパネルの例を示す断面図である。
【図18】変形例9に係るパネルの例を示す断面図である。
【図19】(a)〜(c)は、変形例10に係るパネルの例を示す断面図である。
【図20】変形例11に係る放音制御装置とスピーカの構成を示すブロック図である。
【図21】変形例12のスピーカの設置例を説明する図である。
【図22】変形例12のパーティション10の平面図及び縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係るパーティション10の外観を示す。パーティション10は平板状の本体部100を備える。パーティション10は、本体部100および脚部130を備える。本体部100は、上部の面である上面140、端部の面である端面150及び側方の面である側面160を有する。端面150は2つあり、上面140の短手方向の各辺を上面140と共有している。同様に、側面160も2つあり、上面140の長手方向の各辺を上面140と共有している。側面160は、第1の領域110および第2の領域120を有する。脚部130は、床面に立設された状態(立てて設けられた状態)の本体部100を支持する。パーティション10は、床面に立設されることで、空間を複数の空間(区画)に分割する。第2の領域120は、パーティション10が床面に立設されたときに、第1の領域110より下方の、床面により近いところに位置する。この第2の領域120は、第1の領域110よりも高い吸音率を有する。吸音率が異なる複数の領域によって第1の領域110が構成されている場合、これら複数の領域の吸音率の平均値を、第1の領域110の吸音率としてもよい。同様に、吸音率が異なる複数の領域によって第2の領域120が構成されている場合、これら複数の領域の吸音率の平均値を、第2の領域120の吸音率としてもよい。第2の領域120は、少なくとも音声帯域(250−500Hz)について、第1の領域110よりも高い吸音率を有することが好ましい。脚部130は、床面から例えば6cmの位置までの、本体部100を支持して立設するために必要な高さ方向の範囲を有する。第2の領域120は、例えば床面から6cmの位置から、床面から30cmの位置までの高さ方向の範囲を有する。第1の領域110は例えば、床面から30cmの位置から、床面から180cmの位置までの高さ方向の範囲を有する。
本実施形態では、脚部130の吸音率は第2の領域120よりも低いが、この場合、パーティション10において最も高い吸音率を有する領域(つまり第2の領域120)が、床面に最も近い位置に設けられているといえる。なお、脚部130の吸音率が仮に第2の領域120と同じであれば、この脚部130は第2の領域120として機能することになり、この場合においても、パーティション10において最も高い吸音率を有する領域(第2の領域)が、床面に最も近い位置に設けられていることになる。また仮に、脚部130の吸音率が第2の領域120よりも高い場合であっても、この脚部130は第1の領域110よりも吸音率が高い領域、つまり第2の領域120に相当することになる。よって、この場合においても、パーティション10において最も高い吸音率を有する領域(第2の領域)が、床面に最も近い位置に設けられていることになる。
なお、第1の領域110及び第2の領域120の大きさは上記の例に限定されるものではなく、これら第1の領域110と第2の領域120との境界の位置は、パーティション10によって区画された空間に必要とされる音響特性に応じて決められる。
【0010】
図2は、パーティション10の断面を示す。第1の領域110は、平板状の芯材114を有する。また、第1の領域110は、平板状の表面部材112を有する。芯材114は、一対の表面部材112に挟持される。第2の領域120は、吸音材124を有する。また、第2の領域120は、平板状の表面部材122を有する。吸音材124は、一対の表面部材122に挟まれた空間に充填される。表面部材112は、当該表面部材112に対して発せられた音に対して、少なくとも表面部材122よりも高い反射性を有する。すなわち、表面部材122は、当該表面部材122に向けて発せられた音に対して、少なくとも表面部材112よりも高い透過性を有する。図2に示す例では、表面部材112に、スチール板、さらに具体的にはスチール板に複数の開口部が形成されたパンチングメタルを用いている。吸音材124は、表面部材122を透過した音を吸音する。図2に示す例では、吸音材124に、グラスウールを用いている。なお、表面部材122は、当該表面部材112に対して発せられた音に対して、少なくとも表面部材112よりも高い透過性を有するものであればよく、パンチングメタルに限らない。たとえば、表面部材122は、メッシュ材、穴あき石膏ボードなどであってもよい。また、表面部材122は、開口部が形成されており当該開口部から音を透過するものであってもよい。また、表面部材122は、素材自体を音が透過するものであってもよい。吸音材124は、表面部材122を透過した音を吸音するものであればよく、グラスウールに限らない。たとえば、吸音材124は、フエルト、ウレタン、スポンジ、発泡材などの多孔質吸音材または繊維質吸音材であってもよい。この図2のようにパーティション10に吸音材124を内蔵する場合には、例えば後述する図5の構造に比べて、パーティション10の表面が全体的に平坦になり、シンプルな意匠になる。なお、図2において第2の領域120の内部構造は、表面部材122と吸音材124のみであるが、さらに、パーティション10で区画された隣の空間との遮音性を向上させたい場合には、吸音材124の中央部分に、鉛直方向に延び、遮音性を有する遮音部材、例えばスチール板(1.6mm程度)を設けてもよい。
【0011】
図3(a)、図3(b)は、パーティション構造の設置例を示す。図3(a)、図3(b)のいずれにおいても、室内20には、パーティション構造として、パーティション10A、パーティション10B、およびパーティション10Cが設置されている。以下の説明では、これらのパーティション10をまとめて「各パーティション10」と示す。室内20の床面22には、各パーティション10が並べて立設されている。これにより、室内20には、パーティション10Aとパーティション10Bとに挟まれた空間であるパーティションブース30が形成されている。また、室内20には、パーティション10Bとパーティション10Cとに挟まれた空間であるパーティションブース32が形成されている。また、室内20には、パーティション10Aと、パーティション10Aと対向する壁面26とに挟まれた空間であって、パーティションブース30に隣接する空間40が形成されている。また、室内20には、パーティション10Cと、パーティション10Cと対向する壁面28とに挟まれた空間であって、パーティションブース32に隣接する空間42が形成されている。床面22から天井24までの高さは、各パーティション10の高さよりも高い。このため、各パーティション10と天井24との間には、隣接する空間への音漏れの経路となり得る隙間が形成されている。
【0012】
パーティションブース30は、隣接する空間40との隔壁として、第2の領域120に吸音材が設けられたパーティション10Aを用いている。このため、図3(a)の実線矢印S1で示すように、パーティションブース30内で発せられ、パーティション10Aの第2の領域120に向かう音声は、パーティション10Aの第2の領域120に設けられた吸音材124に吸音される。このようにパーティション10Aの第2の領域120に向かう音声を吸音材124で吸音することができるので、当該音声が、パーティション10A、床面22および天井24で反射されて、パーティション10Bの上端部と天井24との隙間から、隣接するパーティションブース32に漏出すること(点線矢印S1’)を抑制することができる。更に、パーティションブース32は、パーティションブース30と同様の構成を有する。このため、実線矢印S2で示すように、パーティションブース32内で発せられ、パーティション10Cの第2の領域120に向かう音声は、パーティション10Cの第2の領域120に設けられた吸音材124に吸音される。つまり、パーティションブース32内で発せられ、パーティション10Cの第2の領域120に向かう音声が、パーティション10C、床面22および天井24で反射されて、パーティション10Bの上端部と天井24との隙間から、隣接するパーティションブース30に漏出すること(点線矢印S2’)を抑制することができる。
【0013】
また、パーティションブース30は、隣接するパーティションブース32との隔壁として、第2の領域120に吸音材が設けられたパーティション10Bを用いている。図3(a)の実線矢印S3で示すように、パーティションブース30内で発せられ、パーティション10Bの第2の領域120に向かう音声は、パーティション10Bの第2の領域120に設けられた吸音材124に吸音される。このようにパーティション10Bの第2の領域120に向かう音声を吸音材124で吸音することができるので、当該音声が、パーティション10B、床面22および天井24で反射されて、パーティション10Aの上端部と天井24との隙間から、隣接する空間40に漏出すること(点線矢印S3’)を抑制することができる。更に、パーティションブース32は、パーティションブース30と同様の構成を有する。このため、実線矢印S4で示すように、パーティションブース32内で発せられ、パーティション10Bの第2の領域120に向かう音声は、パーティション10Bの第2の領域120に設けられた吸音材124に吸音される。つまり、パーティションブース32内で発せられ、パーティション10Bの第2の領域120に向かう音声が、パーティション10B、床面22および天井24で反射されて、パーティション10Cの上端部と天井24との隙間から、隣接する空間42に漏出すること(点線矢印S4’)を抑制することができる。
図3(a)に示したように、第2の領域120は、各パーティションに挟まれた空間(第1の空間)から発せられ、その第1の空間以外の空間(第2の空間)に伝搬する音声の伝搬経路上の領域である。そして、ここでいう音声の伝搬経路は、パーティションが立設されている室内20の空間に面する天井を少なくとも反射面として含む伝搬経路である。
【0014】
また、パーティションブース30内で発せられ、天井24に向かう音声は、天井24で反射されて、隣接するパーティションブース32内に漏出する。そして、パーティションブース32内に漏出した音声は、パーティションブース30と対向するパーティション10Cの第2の領域120に入射する。パーティション10Cの第2の領域120には、吸音材124が設けられている。したがって、図3(b)の実線矢印S5で示すように、パーティションブース30から発せられ、天井24で反射されて、パーティションブース32内に漏出した音声は、パーティション10Cの第2の領域120に設けられている吸音材124に吸音される。このようにパーティションブース30内で発せられ、天井24で反射されて、隣接するパーティションブース32に漏出した音声を、パーティション10Cの吸音材124で吸音することができるので、当該音声がパーティションブース32内の人物に聞き取られてしまうこと(点線矢印S5’)を抑制することができる。更に、パーティションブース30は、パーティションブース32と同様の構成を有する。このため、パーティションブース32内で発せられ、天井24で反射されて、隣接するパーティションブース30に漏出した音声を、図3(b)の実線矢印S6で示すようにパーティション10Aの吸音材124で吸音することができる。よって、当該音声がパーティションブース30内の人物に聞き取られてしまうこと(点線矢印S6’)を抑制することができる。
図3(b)に示したように、第2の領域120は、各パーティション10に挟まれた空間(第1の空間)以外の空間(第2の空間)から発せられ、その第1の空間に伝搬する音声の伝搬経路上の領域である。そして、ここでいう音声の伝搬経路は、各パーティションが立設されている室内20の空間に面する天井を少なくとも反射面として含む伝搬経路である。
【0015】
パーティションブース30を形成するパーティション10Aおよびパーティション10Bの各第1の領域110には、吸音材124のような吸音手段が設けられていない。たとえば、パーティション10Bの第1の領域110に向かう音声は、第1の領域110の表面に対して、パーティション10Bの第2の領域120に向かう音声よりも垂直に近い角度で入射される。このため、パーティション10Bの第1の領域110に向けて発せられた音声は、その殆どがパーティションブース30内で反響する。よって、パーティションブース30内で音声の適度な響きを確保することができる。また、パーティション10Bの第1の領域110の上方に向かう音声は、パーティション10Aの上端と天井24との隙間からほぼ水平方向に漏出する音声となるが、パーティション10Aの回折効果(いわゆる塀の遮音効果)により減衰するので、隣接する空間への漏出は少ない。このように、図3(a)、図3(b)に示すパーティション構造によれば、パーティションブース30内で発せられた音声のうち、隣接する空間への漏れに関連する成分を第2の領域120で吸音する一方、漏れに関連しない成分は第1の領域110ではあまり吸音しないため、無響室にいるかのような違和感をユーザーに与えたりすることがない。また、パーティションブース30内で発せられた音声のうち、天井に向かって反響し、隣接する空間に漏れやすい成分を、第2の領域120という吸音手段で吸音するため、パーティションブース30内の音声を適度に吸音することができる。同様に、パーティションブース32を形成するパーティション10Bおよびパーティション10Cの各第1の領域110には、吸音材124のような吸音手段が設けられていない。このため、図3(a)、図3(b)に示すパーティション構造によれば、無響室にいるかのような違和感をユーザーに与えたりすることがないよう、パーティションブース32内の音声を適度に吸音することができる。
【0016】
図4は、パーティションブースの減音性能のシミュレーション結果を示す。グラフ400は、パーティションブースによる減音量を周波数ごとに示したものである。グラフ400において、丸形のプロットは、従来のパーティション、すなわち第2の領域に吸音材が設けられていないパーティションを用いたパーティションブースにおける減音性能を示す。三角形のプロットは、本実施形態のパーティション10を用いたパーティションブースにおける減音性能を示す。なお、グラフ400において、最も左側にある丸形のプロット及び三角形のプロットは、周波数ごとではなく全帯域でみたときの、A特性音圧レベルの減音量を表している。
【0017】
たとえば、音声帯域である250Hzの音については、パーティション10を用いたパーティションブースは、従来のパーティションを用いたパーティションブースよりも、およそ1.5dB多く減音することができる。また、音声帯域である500Hzの音については、パーティション10を用いたパーティションブースは、従来のパーティションを用いたパーティションブースよりも、およそ3dB多く減音することができる。また、全帯域でみたA特性音圧レベルについては、パーティション10を用いたパーティションブースは、従来のパーティションを用いたパーティションブースよりも、およそ2dB多く減音することができる。
【0018】
図5は、パーティション構造の他の構成例を示す。図5に示すパーティション構造は、パーティション50および第1の吸音手段60を備える。パーティション50は、床面に立設される。パーティション50は平板状の本体部500および脚部530を備える。脚部530は、立設された状態の本体部500を支持する。パーティション50は、立設されることで、空間を複数の空間に分割する。本体部500は、平板状の表面部材502、および表面部材502によって両表面が覆われている芯材504を有する。図5に示す例では、表面部材502に、スチール板を用いている。
【0019】
本体部500の第2の領域520となる領域の両表面には、第1の吸音手段60が設けられている。これにより、本体部500には、第1の領域510と第2の領域520とが形成されている。第2の領域520は、パーティション50が立設されたときに、第1の領域510より下方、つまり床面に近いところに位置する。第2の領域520は、第1の吸音手段60が設けられたことにより、第1の領域510よりも高い吸音率を有する。
【0020】
第1の吸音手段60は、第2の領域520の吸音率を、第1の領域510より高めるものであれば、その形状、構成は問わない。たとえば、第1の吸音手段60は、フエルト、グラスウール、発泡剤などの吸音材を有する。第1の吸音手段60は、吸音材の表面を覆う表面部材を有してもよい。たとえば、第1の吸音手段60は、グラスウールと、当該グラスウールの表面を覆うパンチングメタルとによって構成されてもよい。第1の吸音手段60は、第2の領域520として機能するものであれば、その設置方法は問わない。たとえば、第1の吸音手段60は、図6に示すように、本体部500の表面に貼付されるものであってもよい。また、第1の吸音手段60は、本体部500の表面を覆うように、床面に立設されるものであってもよい。また、第1の吸音手段60は、本体部500の表面に密着するものでなくてもよい。
【0021】
図6(a)、図6(b)は、パーティション構造の他の設置例を示す。図6(a)、図6(b)のいずれにおいても、室内20には、パーティション構造として、パーティション50A、パーティション50B、およびパーティション50Cが設置されている。以下の説明では、これらのパーティション50をまとめて「各パーティション50」と示す。室内20の床面22には、各パーティション50が並べて立設されている。これにより、室内20には、パーティション50Aとパーティション50Bとに挟まれた空間であるパーティションブース80が形成されている。また、室内20には、パーティション50Bとパーティション50Cとに挟まれた空間であるパーティションブース82が形成されている。また、室内20には、パーティション50Aと、パーティション50Aと対向する壁面26とに挟まれた空間であって、パーティションブース80に隣接する空間90が形成されている。また、室内20には、パーティション50Cと、パーティション50Cと対向する壁面28とに挟まれた空間であって、パーティションブース82に隣接する空間92が形成されている。床面22から天井24までの高さは、各パーティション50の高さよりも高い。このため、各パーティション50と天井24との間には、隣接する空間への音漏れの経路となり得る隙間が形成されている。
【0022】
パーティション50Aの第2の領域520のパーティションブース80側の表面、すなわち、パーティションブース80の一方の側面の第2の領域520には、第1の吸音手段60Aが設けられている。具体的には、第1の吸音手段60Aは、パーティションブース80内で発せられ、パーティション50Aおよび天井24で反射されて、隣接するパーティションブース82に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。また、第1の吸音手段60Aは、隣接するパーティションブース82内で発せられ、天井24およびパーティション50Aで反射されて、パーティションブース80に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。
【0023】
また、パーティション50Bの第2の領域520のパーティションブース80側の表面、すなわち、パーティションブース80の他方の側面の第2の領域520には、第1の吸音手段60Bが設けられている。具体的には、第1の吸音手段60Bは、パーティションブース80内で発せられ、パーティション50Bおよび天井24で反射されて、隣接する空間90に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。また、第1の吸音手段60Bは、隣接する空間90から発せられ、天井24およびパーティション50Bで反射されて、パーティションブース80に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。
【0024】
また、パーティション50Bの第2の領域520のパーティションブース82側の表面、すなわち、パーティションブース82の一方の側面の第2の領域520には、第1の吸音手段60Cが設けられている。具体的には、第1の吸音手段60Cは、パーティションブース82内で発せられ、パーティション50Bおよび天井24で反射されて、隣接する空間92に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。また、第1の吸音手段60Cは、隣接する空間92から発せられ、天井24およびパーティション50Bで反射されて、パーティションブース82に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。
【0025】
また、パーティション50Cの第2の領域520のパーティションブース82側の表面、すなわち、パーティションブース82の他方の側面の第2の領域520には、第1の吸音手段60Dが設けられている。具体的には、第1の吸音手段60Dは、パーティションブース82内で発せられ、パーティション50Cおよび天井24で反射されて、隣接するパーティションブース80に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。また、第1の吸音手段60Cは、隣接するパーティションブース80内で発せられ、天井24およびパーティション50Cで反射されて、パーティションブース82に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。
【0026】
また、空間90の壁面26においては、パーティション50の第2の領域520と同じ高さの位置に第2の吸音手段70Aが設けられている。これにより、壁面26には、パーティション50と同じように、第1の領域510と第2の領域520とが形成されていることになる。第2の領域520は、第1の領域510より下方、つまり床面22に近いところに位置する。第2の領域520は、第2の吸音手段70Aが設けられたことにより、第1の領域510よりも高い吸音率を有する。具体的には、第2の吸音手段70Aは、空間90から発せられ、壁面26および天井24で反射されて、隣接するパーティションブース80に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。また、第2の吸音手段70Aは、隣接するパーティションブース80内で発せられ、天井24および壁面26で反射されて、空間90に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。
【0027】
また、空間92の壁面28においては、パーティション50の第2の領域520と同じ高さの位置に第2の吸音手段70Bが設けられている。これにより、壁面28には、パーティション50と同じように、第1の領域510と第2の領域520とが形成されている。第2の領域520は、第1の領域510より下方、つまり床面22に近いところに位置する。第2の領域520は、第2の吸音手段70Bが設けられたことにより、第1の領域510よりも高い吸音率を有する。具体的には、第2の吸音手段70Bは、空間92から発せられ、壁面28および天井24で反射されて、隣接するパーティションブース82に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。また、第2の吸音手段70Bは、隣接するパーティションブース82内で発せられ、天井24および壁面28で反射されて、空間92に漏出する音声の伝搬経路上において、当該伝搬経路を遮断するような形状および大きさを有して設けられている。
【0028】
第2の吸音手段70は、第2の領域520の吸音率を、第1の領域510より高めるものであれば、その形状および構成は問わない。たとえば、第2の吸音手段70は、フエルト、グラスウール、発泡剤などの吸音材を有する。また、第2の吸音手段70は、吸音材の表面を覆う表面部材を有してもよい。たとえば、第2の吸音手段70は、グラスウールと、グラスウールの表面を覆うパンチングメタルとによって構成されてもよい。第2の吸音手段70は、壁面26および壁面28において、パーティション50の第2の領域520と同じ高さに設けることができるものであれば、その設置方法は問わない。たとえば、第2の吸音手段70は、壁面26および壁面28に貼付されるものであってもよい。また、第2の吸音手段70は、壁面26および壁面28の表面を覆うように、床面に立設されるものであってもよい。また、第2の吸音手段70は、壁面26および壁面28に密着するものでなくてもよい。
【0029】
パーティションブース80は、隣接する空間90との隔壁として、パーティション50Aを用いている。パーティション50Aにおいて、第2の領域520のパーティションブース80側の表面には、第1の吸音手段60Aが設けられている。図6(a)の実線矢印S7で示すように、パーティションブース80内で発せられ、パーティション50Aの第2の領域520に向かう音声は、パーティション50Aの第2の領域520のパーティションブース80側の側面に設けられた第1の吸音手段60Aに吸音される。このようにパーティション50Aの第2の領域520に向かう音声を第1の吸音手段60Aで吸音することができるので、当該音声が、パーティション50A、床面22および天井24で反射されて、パーティション50Bの上端部と天井24との隙間から、パーティションブース82に漏出すること(点線矢印S7’)を抑制することができる。パーティションブース82は、パーティションブース80と同様の構成を有する。このため、実線矢印S8で示すように、パーティションブース82内で発せられ、パーティション50Cの第2の領域520に向かう音声は、パーティション50Cの第2の領域520のパーティションブース82側の側面に設けられた第1の吸音手段60Dに吸音される。つまり、パーティションブース82内で発せられ、パーティション50Cの第2の領域520に向かう音声が、パーティション50C、床面22および天井24で反射されて、パーティション50Bの上端部と天井24との隙間から、隣接するパーティションブース80に漏出すること(点線矢印S8’)を抑制することができる。
【0030】
また、パーティションブース80は、隣接するパーティションブース82との隔壁として、パーティション50Bを用いている。パーティション50Bの第2の領域520のパーティションブース80側の側面には、第1の吸音手段60Bが設けられている。図6(a)の実線矢印S9で示すように、パーティションブース80内で発せられ、パーティション50Bの第2の領域520に向かう音声は、パーティション50Bの第2の領域520に設けられた第1の吸音手段60Bに吸音される。このようにパーティションブース80内でパーティション50Bの第2の領域520に向かう音声を第1の吸音手段60で吸音することができるので、当該音声が、パーティション50B、床面22および天井24で反射されて、パーティション50Aの上端部と天井24との隙間から、空間90に漏出すること(点線矢印S9’)を抑制することができる。パーティションブース82は、パーティションブース80と同様の構成を有する。このため、実線矢印S10で示すように、パーティションブース82内で発せられ、パーティション50Bの第2の領域520に向かう音声は、パーティション50Bの第2の領域520のパーティションブース82側の表面に設けられた第1の吸音手段60Cに吸音される。つまり、パーティションブース82内で発せられ、パーティション50Bの第2の領域520に向かう音声が、パーティション50B、床面22および天井24で反射されて、パーティション50Cの上端部と天井24との隙間から、隣接する空間92に漏出すること(点線矢印S10’)を抑制することができる。
【0031】
また、パーティションブース80内で発せられ、天井24に向かう音声は、天井24で反射されて、隣接するパーティションブース82内に漏出する。そして、パーティションブース82内に漏出した音声は、パーティションブース80と対向するパーティション50Cの第2の領域520に入射する。パーティション50Cの第2の領域520の側面には、第1の吸音手段60Dが設けられている。したがって、図6(b)の実線矢印S11で示すように、パーティションブース80内で発せられ、天井24で反射されて、パーティションブース82内に漏出した音声は、パーティション50Cの第2の領域520の側面に設けられている第1の吸音手段60Dに吸音される。よって、パーティションブース80内でパーティションブース82に漏出してしまった音声が、パーティションブース82内の人物に聞き取られてしまうこと(点線矢印S11’)を抑制することができる。パーティションブース80は、パーティションブース82と同様の構成を有する。このため、実線矢印S12で示すように、パーティションブース82内で発せられ、パーティション60Aの第2の領域520に向かう音声は、パーティション60Aの第2の領域520のパーティションブース80側の表面に設けられた第1の吸音手段60Aに吸音される。つまり、パーティションブース82内で発せられ、パーティションブース80に漏出してしまった音声が、パーティションブース80内のユーザーに聞き取られてしまうこと(点線矢印S12’)を抑制することができる。
【0032】
パーティションブース80内で発せられ、天井24に向かう音声は、天井24で反射されて、隣接する空間90内に漏出する。そして、空間90内に漏出した音声は、パーティションブース80と対向する壁面26の第2の領域520に入射する。壁面26の第2の領域520には、第2の吸音手段70Aが設けられている。したがって、図6(b)の実線矢印S13で示すように、パーティションブース80内で発せられ、天井24で反射されて、空間90内に漏出した音声は、壁面26の第2の領域520に設けられている第2の吸音手段70Aに吸音される。つまり、パーティションブース80内で空間90に漏出してしまった音声が、空間90内の人物に聞き取られてしまうこと(点線矢印S13’)を抑制することができる。空間92は、空間90と同様の構成を有する。このため、実線矢印S14で示すように、パーティションブース82内で発せられ、天井24で反射されて、空間92内に漏出した音声は、壁面28の第2の領域520に設けられている第2の吸音手段70Bに吸音される。よって、パーティションブース82内で発せられ空間92に漏出してしまった音声が、空間92内のユーザーに聞き取られてしまうこと(点線矢印S14’)を抑制することができる。
【0033】
パーティションブース80を形成するパーティション50Aおよびパーティション50Bのそれぞれの第1の領域510には、第1の吸音手段60A〜60Dのような吸音手段が設けられていない。たとえば、パーティション50Bの第1の領域510に向かう音声は、第1の領域510の表面に対して、パーティション50Bの第2の領域520に向かう音声よりも垂直に近い角度で入射される。このため、パーティション50Bの第1の領域510に向かう音声は、その殆どがパーティションブース80内で反響する。よって、パーティションブース80内で音声の適度なの響きを確保することができる。また、パーティション50Bの第1の領域510の上方に向かう音声は、パーティション50Aの上端と天井24との隙間からほぼ水平方向に漏出する音声となるが、パーティション50Aの回折効果による減衰するので、隣接する空間への漏出は少ない。このように、図6(a)、図6(b)に示したパーティション構造によれば、パーティションブース80内で発せられた音声のうち、隣接する空間への漏れに関連する成分のみを第2の領域520で吸音する一方、漏れに関連しない成分は第1の領域510ではあまり吸音しないため、無響室にいるかのような違和感をユーザーに与えたりすることがない。同様に、パーティションブース82を形成するパーティション50Bおよびパーティション50Cのそれぞれの第1の領域510には、第1の吸音手段60A〜60Dのような吸音手段が設けられていない。このため、図6(a)、図6(b)に示したパーティション構造によれば、無響室にいるかのような違和感をユーザーに与えたり、音声が不鮮明になったりすることがないように、パーティションブース82内の音声を適度に吸音することができる。
【0034】
同様に、空間90を形成する壁面26の第1の領域510には、第2の吸音手段70Aのような吸音手段が設けられていない。このため、図6(a)、図6(b)に示したパーティション構造によれば、無響室にいるかのような違和感をユーザーに与えたりすることがないように、空間90内の音声を適度に吸音することができる。同様に、空間92を形成する壁面28の第1の領域510には、第2の吸音手段70Bのような吸音手段が設けられていない。このため、図6(a)、図6(b)に示したパーティション構造によれば、無響室にいるかのような違和感をユーザーに与えたりすることがないように、空間92内の音声を適度に吸音することができる。
【0035】
パーティション構造は、図3(a)、図3(b)に示したパーティション構造に、第2の吸音手段70A、70Bをさらに備えて構成であってもよい。また、パーティション構造は、パーティション10と、パーティション50とが混在する構成であってもよい。図6(a)、図6(b)に示したパーティション構造は、第1の吸音手段60および第2の吸音手段70の双方を備えているが、これに限らない。たとえば、パーティション構造は、第1の吸音手段60および第2の吸音手段70のいずれか一方を備える構成であってもよい。第1の吸音手段60は、パーティション50に限らず、たとえば、床面22または天井24の、天井24で反射されて隣室へ漏出する音声の伝搬系路上、または天井24で反射されて隣室から漏出される音声の伝搬系路上に設けてもよい。また、第2の吸音手段70は、壁面26および壁面28に限らず、床面22または天井24の、天井24で反射されて隣室へ漏出する音声の伝搬系路上、または天井24で反射されて隣室から漏出される音声の伝搬系路上に設けてもよい。
【0036】
第1の吸音手段60は、少なくとも天井24で反射されて当該空間から隣室空間へ漏出する音声または天井24で反射されて隣室空間から当該空間へ漏出される音声を、減衰させる条件を満たすものであればよい。この条件には、第1の吸音手段60の位置や音響特性などが満たすべき内容が含まれる。したがって、第1の吸音手段60は、上記音声を吸音する構成に限らず、上記音声を散乱させる構成であってもよい。第2の吸音手段70は、少なくとも天井24で反射されて当該空間から隣室空間へ漏出する音声または天井24で反射されて隣室空間から当該空間へ漏出される音声を、減衰させる条件を満たすものであればよい。この条件には、第2の吸音手段70の位置や音響特性などが満たすべき内容が含まれる。したがって、第2の吸音手段70は、上記音声を吸音する構成に限らず、上記音声を散乱させる構成であってもよい。
【0037】
天井24で反射されて隣室へ漏出する音声の伝搬経路、および天井24で反射されて隣室から漏出される音声の伝搬経路は、パーティションの配置位置、パーティションの形状、パーティションのサイズ、空間の形状、空間のサイズ、障害物の有無、天井24の材質、床面22の材質、壁面26および壁面28の材質など、パーティション構造の設置条件によって変化する。このため、パーティション構造の設置条件に応じて、パーティション10における第2の領域120の構成、材質、形状、大きさ、および位置の少なくともいずれか一つを異ならせてもよい。また、パーティション構造の設置条件に応じて、第1の吸音手段60の構成、材質、形状、大きさ、および位置の少なくともいずれか一つを異ならせてもよい。また、パーティション構造の設置条件に応じて、第2の吸音手段70の構成、材質、形状、大きさ、および位置の少なくともいずれか一つを異ならせてもよい。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形してもよい。
(変形例1)
(変形例1−1)
会話音声が天井面を介してブース外へ漏れないように音声をマスキングする構成を、ブース外の空間42と接するパーティションに設けるようにしてもよい。以下、図2のパーティション10Cに音声をマスキングする構成を設けたパーティション10Dの構成を例に挙げて説明する。
図8は、各領域を説明する図であり、図9(a)は、パーティション10Dの斜視図を示しており、図9(b)は、図9(a)のパーティション10Dを矢印X方向の側面から見た断面図を示している。図9(a)に示すように、パーティション10Dの表面部材112は、ブース外の空間42の側に位置する表面部材112aと、パーティションブース32の側に位置する表面部材112bとで構成されている。表面部材112b側の床面22からの高さは、表面部材112a側の床面22からの高さに対して、より高くなるように構成されており、図9(b)の破線部で示すパーティション10Dの上方の部分が開口されている。表面部材112bにおいて表面部材112aより高くなっている部分が、会話が行われる領域からパーティション10Dを介して隣接する空間に向かう音の伝搬経路を遮蔽する位置に設けられた、音の遮蔽部として機能する。なお、表面部材112aと表面部材112bとの間にある側壁2cの床面22からの高さは、表面部材112aの床面22からの高さと同じとしてもよいが、側壁2cを介したマスキング音の伝搬経路を遮断する必要がある場合には、表面部材112bの高さと同じとすればよい。
【0039】
また、パーティション10Dの内部には、表面部材112aの上端の高さの位置に、放音手段であるスピーカ101を設置する設置台2dが設けられており、設置台2dの上に2台のスピーカ101が設けられている。表面部材112aは、パーティションブース32に居る会話者の口と略同じ高さとなっており、設置台2dは、表面部材112aの上端部から表面部材112bに向かって水平に設置されている。スピーカ101は、マスキング音を放音するものである。スピーカ101は、マスキング音の放音方向が真上又は斜め上の方向となるように設置され、スピーカ101から放音されるマスキング音の直接音が天井24に入射するようになっている。図9では、スピーカ101の指向性の軸が天井24の方向を向くようにスピーカ101が設置されている。なお、スピーカ101が無指向性のものの場合には、マスキング音の放射方向が天井24の方向(真上又は斜め上の方向)となるように、スピーカ101の放音部に、反射板等の物理的に指向性を制御する部材を設けた放音手段を構成するようにしてもよい。
【0040】
スピーカ101からマスキング音を放音した場合のマスキング音と、パーティションブース32内で発せられた音声とが、空間42に至る伝搬経路について、図10を用いて説明する。例えば、パーティションブース32におけるXの高さの位置から会話者が音声を発した場合、音声の伝搬経路は図10の破線矢印に示す伝搬経路となる。なお、上記の各実施形態では、吸音材124が会話者から発せられた音を吸音していたが、会話者から発せられた音の全てが吸音材124によって吸音されるわけではないから、図10では、その吸音できなかった音の伝搬経路を示している。つまり、ブース32内の音声のうち吸音材124によって吸音されなかった音声は、大別すると、パーティション10Bで反射されて天井24に向かい、天井24で反射されて空間42に向かう伝搬経路A1と、天井24に向かい、天井24で反射されて空間42に向かう伝搬経路A2と、パーティション10Dの表面部材112bの方向に向かい、表面部材112bの上端部分で回折して空間42に向かう伝搬経路A3とにより、空間42の受音点(受音者の位置)Yの位置に伝達される。
【0041】
一方、スピーカ101から放音されたマスキング音の伝搬経路は、図10の実線矢印に示す伝搬経路となる。つまり、マスキング音は、大別すると、表面部材112bの内側の面(パーティション10Dの内部側の面)で反射されて天井24の方向に向かい、天井24で反射されて空間42に向かう伝搬経路B1と、天井24に向かい、天井24で反射されて空間42に向かう伝搬経路B2とにより、空間42のYの受音点位置に伝達される。
【0042】
このように、スピーカ101が表面部材112bの上端より低い位置に設置されているので、スピーカ101から放音されたパーティションブース32内へ向かうマスキング音の伝搬経路は、表面部材112bの内側の面(遮蔽部)により遮蔽され、パーティションブース32側へのマスキング音の伝搬が抑制される。そのため、パーティションブース32内の会話者がマスキング音によって互いの音声を聞き取りにくくなるということがない。なお、マスキング音は、パーティションブース32側の空間において少なくともパーティションブース32側の上部空間7aを除く空間に伝搬しないように、遮蔽されていればよい。
また、天井24で反射した会話音声が空間42に伝搬する方向(A1、A2)と、天井24でマスキング音が反射して空間42に伝搬する方向(B1、B2)とがほぼ同じ方向であり、会話音声とマスキング音の減衰性状(周波数特性)が略同じになるので、会話音声とマスキング音の親和性が高くなる。そのため、空間42の受音点Yの位置ではパーティションブース32からの会話音声とマスキング音とが融合して知覚されて、受音点Y付近にいる人にとってはパーティションブース32内の会話音声が聞き取りにくくなる。
【0043】
また、会話者とスピーカ101が表面部材112bを挟んで対称な位置関係となるときには、スピーカ101がパーティションブース32内の会話者の口と略同じ高さとなるようにパーティション10Dの内部に設けられていることで、スピーカ101が床面22に近い低い位置に設けられる場合と比べて、会話音声とマスキング音の伝搬経路がほぼ同じ方向となり、空間42に放音されるマスキング音のマスキング効率が更に向上する。
つまり、パーティション10D内の床面22に近い高さにスピーカ101が設置される場合には、表面部材112a、表面部材112b、側壁2cに囲まれた空間によってマスキング音の上方への指向性が強くなる。そのため、パーティションブース32だけではなく空間42へのマスキング音の伝搬が抑制され、空間42において表面部材112aから離れるほどマスキング音が届きにくくなる。従って、会話者が発した空間42へ向かう会話音声とマスキング音の伝搬方向が同じ方向とならないので、会話音声が効率良くマスキングされない。一方、パーティションブース32内の会話者の口と略同じ高さにスピーカ101が設けられている場合は、音の伝搬方向や、距離減衰及び響きなどの、音の伝送特性に関して、スピーカ101からのマスキング音と会話者が発した会話音声の類似性(親和性)が高くなるため、会話音声が効率良くマスキングされる。
以上のような音声をマスキングする構成は、図3のパーティション10Aや、図6のパーティション50A,50Cにも設けられる。
【0044】
(変形例1−2)
図11(a)は、本変形例に係るパーティション10Eの斜視図を示しており、図11(b)は、図11(a)のパーティション10Eを矢印X方向から見たときの断面図を示している。本変形例に係るパーティション10Eは、空間42側に位置する表面部材112aに対し、パーティションブース32側に位置する表面部材112bの床面からの高さが高くなっている点で、変形例1−1と共通し、表面部材112aの上端部より床面22に近い所定の位置に設けられた設置台2dにスピーカ101が設けられている点で、変形例1−1と異なっている。つまり、本変形例では、変形例1−1の場合よりも表面部材112aの上端より下方の位置にスピーカ101が設置されている。以下、本変形例のパーティション10Eの構成において、スピーカ101からのマスキング音とパーティションブース32内の会話音声とが空間42に至る伝搬経路について、図12を用いて説明する。
【0045】
変形例1−1と同様にパーティションブース32のXの位置で会話者が音声を発した場合、図12の破線矢印に示す伝搬経路で空間42の側へ音声が伝搬される。つまり、パーティションブース32内の会話音声は、大別すると、パーティション10Bで反射されて天井24に向かい、天井24で反射されて空間42に向かう伝搬経路A1と、天井24に向かい、天井24で反射されて空間42に向かう伝搬経路A2と、パーティション10Eの表面部材112bの方向に向かい、表面部材112bの上端部分で回折して空間42に向かう伝搬経路A3とにより、空間42の受音点Yの位置に伝達される。
一方、スピーカ101から放音されたマスキング音は、図12の実線矢印で示す伝搬経路で伝搬される。つまり、マスキング音は、大別すると、表面部材112bの内側の面で反射されて天井24の方向に向かい、天井24で反射されて空間42に向かう伝搬経路B1と、天井24の方向に向かい、天井24で反射されて空間42に向かう伝搬経路B2と、表面部材112aの上端部分で回折して空間42へ向かう伝搬経路B3とによって、空間42の受音点Yの位置に伝達される。
【0046】
伝搬経路B1で示すように、スピーカ101から放音されたマスキング音のうちパーティションブース32内へ向かうマスキング音の伝搬経路は表面部材112bの内側の面によって遮蔽されるためパーティションブース32内の会話者はマスキング音によって互いの音声が聞き取りにくくならない。また、本変形例では、伝搬経路A1及びA2で空間42に伝搬される会話音声と伝搬経路B1及びB2で空間42に伝搬されるマスキング音とは伝搬方向及び周波数特性が略同じであり、伝搬経路A3で空間42に伝搬される会話音声と伝搬経路B3で空間42に伝搬されるマスキング音とは伝搬方向及び周波数特性が略同じになる。よって、空間42に漏出された会話音声がマスキング音によって効率良くマスキングされ、空間42にいる人に会話音声を聞き取られないようにすることができる。また、スピーカ101が表面部材112aの上端部より下方の位置に設けられることで、表面部材112a及び表面部材112bで挟まれた空間に一旦マスキング音が放音され、パーティション10Eの上方の開口部分よりマスキング音が空間42に放音されるので、スピーカ101の数が少ない場合でも、マスキング音がスピーカ101の位置に定位する感覚が小さくなり、パーティション10Eの上方の開口部全体からマスキング音が聞こえるような効果を得ることができる。また、スピーカ101の数を減らすことができるので、装置構成を簡略化することができると共に、コストを削減することができる。
【0047】
なお、本変形例では、スピーカ101の放音方向が天井24の方向となるようにスピーカ101をパーティション10E内に配置したが、スピーカ101が、表面部材112aの上端より下方の位置に設けられる場合には、スピーカ101の放音方向が表面部材112a、表面部材112b、又は側壁2cの方向となるようにスピーカ101が設置されていてもよい。このように配置しても、スピーカ101からのマスキング音は、表面部材112a、表面部材112b、及び側壁2cによって反射されて、その反射音が天井24の方向に向かう。従って、パーティションブース32内の会話音声が空間42に伝搬する方向と同じ方向となるようにマスキング音が放音されるので、空間42にいる人にとって会話音声が聞き取りにくくなる。また、このようにスピーカ101を配置することで、表面部材112a、表面部材112b及び側壁2cで囲まれた空間に放音されたマスキング音が、パーティション10Eの上方の開口部全体から空間42に放音されるので、スピーカ101の位置におけるマスキング音の定位感をより小さくすることができる。
【0048】
(変形例1−3)
次に、本発明の変形例1−3に係るパーティション10Fについて説明する。図13は、本変形例に係るパーティション10Fの断面図を示している。本変形例におけるパーティション10Fは、空間42側に位置する表面部材112aとパーティションブース32側に位置する表面部材112bの床面22からの高さが同じである点と、パーティション10Fの内部には、表面部材112a及び表面部材112bの上端より高くなるように遮蔽部材21cが設けられている点において、変形例1−2のパーティション10Eと異なっている。この遮蔽部材21cは、スピーカ101を設置する設置部211と脚部212と遮蔽部213とを有し、表面部材112aと表面部材112bとの間に挟持されている。
設置部211は、表面部材112aの上端より下方にスピーカ101が設置されるように所定の高さの位置に設けられ、スピーカ101の放音方向が天井24の方向となるようにスピーカ101が設置部211に設置されている。この点で、変形例1−2と共通である。
【0049】
本変形例において、スピーカ101からマスキング音が放音された場合、パーティションブース32内部へ向かうマスキング音は、遮蔽部213で遮蔽され、遮蔽部213で反射されて天井24の方向へ向かい、天井24で反射されて空間42の方向へ伝搬される。また、天井24の方向に向かうマスキング音は、天井24で反射されて空間42へ伝搬され、空間42の方向に向かうマスキング音は、表面部材112aの上端部分で回折して空間42へ伝搬される。また、パーティションブース32内で発せられた会話音声のうちパーティション10Bに向かう音声は、パーティション10Bで反射されて天井24に向かい、天井24で反射されて空間42に伝搬される。また、天井24に向かう音声は、天井24で反射されて空間42に向かい、パーティション10Fの表面部材112bの方向に向かう音声は、遮蔽部213の上端部分で回折されて空間42に伝搬される。このように、本変形例に係るパーティション10Fを用いた場合も、パーティションブース32内で発せられた音声の伝搬方向と、スピーカ101から放音されたマスキング音の伝搬方向が略同じ方向となり、空間42にいる人にパーティションブース32から漏出した音声を聞き取られないように効率良くマスキングすることができる。
【0050】
(変形例1−4)
次に、本発明の変形例1−4に係るパーティション10Gについて説明する。図14(a)及び(b)は、本変形例に係るパーティション10Gの断面図を示している。本変形例におけるパーティション10Gは、空間42側に位置する表面部材112aとパーティションブース32側に位置する表面部材112bが同じ高さで構成されている点で、変形例1−3に係るパーティションと共通する。そして、パーティション10Gを構成する表面部材112a及び表面部材112bの内側の面には、表面部材112a及び表面部材112bの上端から一定の範囲にフック又はループ状の面ファスナー等の接着部材が貼り付けられており、脚部を備えず、表面部材112a及び表面部材112bに設けられた面ファスナーに対して着脱自在の遮蔽部材22cが設けられている点で、変形例1−3と異なっている。
【0051】
遮蔽部材22cは、図14(a)に示すように、スピーカ101を設置する設置部221とスピーカ101から放音されるマスキング音を遮蔽するための遮蔽部222とを有するL字形状の部材で構成されている。表面部材112a又は表面部材112bに接する遮蔽部材22cの面には、表面部材112a及び表面部材112bの内側の各面に貼り付けられた面ファスナーと貼り合せるためのフック又はループ状の面ファスナーが貼り付けられている(図示省略)。
なお、本変形例では、面ファスナーを用いて遮蔽板22cをパーティション10Gの内壁に貼り合せる例について説明するが、遮蔽部材22cがパーティション10Gの内壁に着脱自在である構成であれば、両面テープや磁石等の接着部材を用いてパーティション10Gの内壁に遮蔽部材22cを取り付けるようにしてもよい。
【0052】
本変形例におけるパーティション10Gは着脱自在な遮蔽板22cを備えているので、パーティションブース32の側にマスキング音が伝搬しないように遮蔽する場合には、図14(a)のように、遮蔽板22cを表面部材112bの内側の面に貼り付けるようにすればよい。また、例えば、表面部材112aが位置する側にもブースが形成されている場合に、各ブースの利用状況に応じて遮蔽板22cを図14(b)に示すように表面部材112bの内側の面に貼り付けてもよい。このように、遮蔽板22cを表面部材112a又は表面部材112bの内側に自在に貼り付けることができるので、パーティション10Gによって仕切られた空間の利用状況に応じてマスキング音を遮蔽する方向を容易に切替えることができる。
【0053】
(変形例1−5)
上述の各変形例では、パーティション内に放音手段としてスピーカ101を設置する例について説明したが、一部が開口された箱の内部にスピーカ101を設置した放音手段を、パーティションの内部に設けるように構成してもよい。図15(a)は、本変形例に係るパーティション10Hの断面図である。
図15(a)に示すように、本変形例に係るパーティション10Hは、箱23cがパーティション10H内に設けられている点以外では変形例1−2と共通している。本変形例では、箱23cの上面の少なくとも一部が開口されると共に、表面部材112a及び表面部材112bの各内側の面と対向する箱23c側面の一部が開口している。箱23cの内部には、スピーカ101の放音方向が、箱23cの開口部が設けられている面と異なる面方向、即ち、パーティション10Hの表面部材112a及び112bを除く側壁の方向となるようにスピーカ101が設置されている。つまり、箱23cからマスキング音が出射する方向とスピーカ101の放音方向(指向軸)とが一致しないように構成され、少なくともスピーカ101の放音方向又は箱23cの開口部のいずれかが上方を向いていなければよい。
【0054】
箱23c内で放音されて上面の開口部から出射したマスキング音は、天井24の方向へ向かう。また、箱23c内で放音されて側面の開口部から放射されたマスキング音は表面部材112a及び表面部材112bと箱23cの側面との間で反射されながら天井24の方向に向かう。天井24で反射されたマスキング音は、上述の各変形例と同様、パーティションブース32内から会話音声が空間42に伝搬する方向と略同じ方向で空間42に伝搬される。本変形例では、箱23cの開口部とスピーカ101の放音方向(指向軸)とが一致しないように構成されているため、パーティション10Hの内部におけるスピーカ101から放音されるマスキング音の直接音がパーティション10Hの外部に対して直接的に放音されない。そのため、スピーカ101の位置におけるマスキング音の定位感が小さくなり、表面部材112a近くにいる人にマスキング音の違和感を与えることなく、パーティションブース32から伝搬された会話音声を効率的にマスキングすることができる。
【0055】
(変形例1−6)
変形例1−5では、スピーカ101が設けられた箱23cをパーティション内部に設ける例について説明したが、図15(b)に示すように、パーティション10Jの一方の表面部材112aに外付けして設置してもよい。この場合には、表面部材112aの上端部より低い位置に、箱23cの開口部が天井24の方向となるように箱23cを設置し、当該開口部が設けられた面を除く箱23cの他の面には開口部を設けないように構成する。表面部材112aの上端部より低い位置にスピーカ101が設置された箱23cを設けることにより、箱23cの位置から表面部材112aの上端までの部分が遮蔽部として機能する。
箱23c内部に設けられたスピーカ101からのマスキング音が放音された場合、箱23cの上面に設けられた開口部から共鳴されたマスキング音が放音され、表面部材112bの方向、即ち、パーティションブース32の内側に向かうマスキング音は表面部材112aによって遮蔽される。この場合には、空間42に対してはマスキング音が伝搬されるように、表面部材112aの上端部より床面に近い位置に、箱23cを設置するためのフック又はループ状の面ファスナー等の接着部材を設けて箱23cを設置する。また、この場合には、表面部材112aと表面部材112bの上端部の高さは同じでもよく、パーティション10Jの上面部分が開口されている必要はない。また、スピーカ101を箱23cに入れずに、スピーカ101の放音方向が天井24の方向となるように、スピーカ101そのものをパーティション10Jの表面部材112aに外付けするように構成してもよい。
【0056】
(変形例1−7)
また、上述の各変形例では、パーティションに2つのスピーカ101を設け、パーティションの一方の壁面側のみへのマスキング音の放音方向を遮蔽する例について説明したが、図16に示すパーティション10Kのように構成してもよい。図16に示すパーティション10Kは、床面からの高さが同じ表面部材112a、表面部材112b及び側壁112cを有し、表面部材112a、表面部材112b及び側壁112cの上部には、スピーカ101L、101Rを設置する設置台241が設けられている。
また、設置台241の長手方向の両側の上端部と中間位置には、側壁112cと同じ幅を有する3枚の仕切板241cが側壁112cと平行に設置されている。そして、各仕切板241cの間には、表面部材112bと表面部材112aの各々に沿うように遮蔽部24d1及び遮蔽部24d2が設けられている。また、図16に示すように、遮蔽部24d1と表面部材112bの上端部分は開口し、遮蔽部24d2と表面部材112aの上端部分が開口している。
遮蔽部24d1は、遮蔽部24d1側に設けられたスピーカ101Rからの表面部材112a側へ向かうマスキング音の伝搬経路を遮蔽し、遮蔽部24d2は、遮蔽部24d2側に設けられたスピーカ101Lからの表面部材112b側へのマスキング音の伝搬経路を遮蔽する。
このような構成により、表面部材112aと24bのいずれの方向にもマスキング音を放音することができるため、パーティション10Kの設置後にレイアウトの変更があったとしてもパーティション10Kの向きを変えることなく所望するいずれかの方向にマスキング音を放音させることができる。また、パーティション10Kを用いて複数のパーティションブース32が形成される場合には、隣接する各ブースに対してマスキング音を放音させてもよいし、隣接するブースの利用状況に応じて一方のブースの方向にマスキング音を放音するように、いずれか一方の遮蔽部の側に設けられたスピーカからマスキング音を放音するようにしてもよい。
なお、スピーカ101Lとスピーカ101Rに放音させるマスキング音を変えて、一枚のパーティション10Kから複数のマスキング音を放音させてもよい。
【0057】
(変形例1−8)
上述した変形例1−2では、パーティション10Eの上面部分が開口されている例について説明したが、図17に示すように、パーティション10Lの表面部材112aに複数のスリット部Sまたは開口部Sを設けるように構成してもよい。このような構成によって、パーティション10Eの上面の開口部分から伝搬されるマスキング音とスリット部Sまたは開口部Sから伝搬されるマスキング音とが混在することで、スリット部S又は開口部Sから発せられるマスキング音の定位感を和らげることができ、空間42に対してマスキング音を違和感なく放音させることができる。
【0058】
(変形例1−9)
上述した各変形例では、スピーカ101の放音方向が天井24の方向となるようにパーティションに設置する例について説明したが、パーティション内部にスピーカ101を設置する場合、スピーカ101のマスキング音がパーティション内部からパーティション外部へ出力される方向が天井24に向かう方向であれば、スピーカ101の放音方向が天井面の方向と異なる方向にスピーカ101の向きを設定してもよい。例えば、図18に示すように、上面部分が開口されたパーティション10M内の表面部材112aの内側の面(または表面部材112bの内側の面)に、スピーカ101の放音方向が表面部材112b(または表面部材112a)の方向(矢印T)となるように設置してもよい。そして、表面部材112aの上端は表面部材112bの上端よりも低くなっている。このようにスピーカ101を設置した場合には、スピーカ101から放音されたマスキング音は、表面部材112a及び表面部材112bの内側の面で反射を繰り返して、表面部材112aの上端の上方を通って天井方向へと出力され、さらに空間42へと放音される。
【0059】
(変形例1−10)
上述した変形例1−3では、着脱自在なL字形状の遮蔽部材22cをパーティションに設ける例について説明したが、スピーカ101からのマスキング音を遮蔽する遮蔽方向を規制することができる構成であればこれに限らない。
このようなパーティションの例について図19を用いて説明する。図19は、本変形例に係るパーティションの断面図を示している。図19(a)に示すように、パーティション10N内部の所定位置にスピーカ101を設け、パーティション10Nの上面部分を覆う遮蔽部材27cを設ける。この遮蔽部材27cは、表面部材112a及び表面部材112bの各上端部分において着脱できるように構成されている。例えば、遮蔽部材27cを表面部材112aの上端部分に装着した状態で、遮蔽部材27cを天井面方向に持ち上げると、図19(b)に示すように、パーティション27の上面部分(破線部)が開口する。このとき、遮蔽部材27cは表面部材112aの上端部に配置されて表面部材112aの側が表面部材112bより高くなり、表面部材112aの側へ向かうマスキング音の伝搬経路を遮蔽部材27cにより遮蔽することができる。また、遮蔽部材27cを表面部材112bの上端部分に装着した状態で、遮蔽部材27cを天井面方向に持ち上げると、図19(c)に示すように、パーティション27の上面部分(破線部)が開口する。このとき、遮蔽部材27cは表面部材112bの上端部に配置されて表面部材112bの側が表面部材112aより高くなり、表面部材112bの側へ向かうマスキング音の伝搬経路を遮蔽部材27cにより遮蔽することができる。
【0060】
(変形例1−11)
なお、上述した各変形例において、パーティションに設けられたスピーカ101にマスキング音を放音させる場合、例えば、パーティションの内部又は外部に、スピーカ101にマスキング音を放音させる放音制御装置を設置し、各スピーカ101と放音制御装置とを有線又は無線により接続してもよい。この場合における放音制御装置とスピーカ101の構成例を図20に示す。図20に示すように、放音制御装置30は、音源301、操作部302、信号処理部303、及び制御部304を含んで構成されている。
【0061】
音源301は、制御部304の制御の下、予め定められたマスキング音を生成または読み出して音信号を出力する機能を有し、操作部302は、放音制御装置30の電源のオンオフを切替える操作ボタン、スピーカ101に放音させるマスキング音のボリューム値の変更操作等を行う操作ボタン等を有し、ユーザーから受付けたスイッチ操作を示す操作信号を制御部304へ出力する機能を有する。
【0062】
信号処理部303は、制御部304の制御の下、音源301によって出力されたマスキング音を示す信号に所定の信号処理を施し、そのマスキング音の信号とマスキング音のボリューム値を示す情報とを各スピーカ101に送出する機能を有する。
また、制御部304は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んで構成されており、制御部304と接続されている各部を制御する機能を有する。
スピーカ101は、アンプを含んで構成されており、放音制御装置30から送出されたマスキング音の音信号に所定の増幅処理を施して放音する。
【0063】
放音制御装置30の制御部304は、ユーザーが操作部302の電源ボタンをオンにする操作を行うと、音源301においてマスキング音を生成または読み出して信号処理部303へ出力し、信号処理部303において信号処理が施されたマスキング音の音信号を各スピーカ101へ出力する。各スピーカ101は、放音制御装置30から出力されたマスキング音の音信号に所定の増幅処理を施してマスキング音を放音する。
また、放音制御装置30の制御部304は、ユーザーによって操作部302の電源ボタンをオフにする操作が行われると、音源301におけるマスキング音の生成を停止し、信号処理部303から各スピーカ101への音信号の出力を停止する。
【0064】
(変形例1−12)
上述した各変形例では、パーティションに設けられるスピーカ101の放音方向が天井方向となるように配置する例を説明したが、スピーカ101は、例えば、図21に示すように、パーティション10Pにおいて、スピーカ101から発するマスキング音の放音方向が天井24側となるようにスピーカ101を表面部材112aまたは表面部材112bの面方向(鉛直方向)に対して傾けて配置し、且つ放音方向(スピーカ101の指向軸)が天井24側となる(天井24に交差する)ように配置すればよい。図21のように、パーティションブース32内から発せられる音声が空間42に向かう伝搬経路Aの方向と、マスキング音の伝搬経路B方向とがほぼ重なりつつ、スピーカ101を鉛直方向から所定角度傾けて伝搬経路Bの方向とスピーカ101の指向軸の方向とを一致させるように配置することで、受音点Yに至る天井面の反射点に向かうマスキング音のレベルが増大し、空間42においてパーティションブース32内の会話音声をより聞き取りにくくすることができる。また、複数のスピーカによって、スピーカ101をスピーカアレイとして構成してもよい。この場合においては、スピーカアレイの音響ビームの方向(放音方向)が天井側を向いていればよい。さらに、スピーカ101を単一のスピーカあるいはスピーカアレイを用いて構成する場合において、複数の放音方向が設定される場合はいずれかの放音方向が天井側を向いていればよい。
【0065】
(変形例1−13)
音声をマスキングする構成を設けたパーティションの構造の一例を説明する。図22は、パーティション10Qの平面図及び縦断面図を示している。
図において、芯材114はペーパーハニカムコアである。表面部材112はスチール板にクロス材が貼られたものである。吸音材124は、グラスウールである。表面部材112は、スチール板にクロス材が貼られたものであり、複数のスリットが設けられている。第1の領域110の上部においては、スチール板からなる筐体190にグラスウール191が充填されて空間が形成されており、その空間にスピーカ101が設けられている。第1の領域の上端部200には開口部が設けられているとともに、その開口部に近いほうの筐体190の上端がその開口部から遠いほうの筐体190の上端よりも低くなっている。スピーカ101から放音された音は、矢印tで示すように、開口部及びこの開口部に近いほうの筐体190の上端の上方を通って空間42へと向かう。脚部130は、床面22から、床面より50mmの位置までの高さ方向の範囲を有する。第2の領域120は、床面から50mmの位置から、床面から350mmの位置までの高さ方向の範囲を有する。第1の領域110は、床面から350mmの位置から、床面から1800mmの位置までの高さ方向の範囲を有する。
【0066】
(変形例2)
上記実施形態及び各変形例において、各パーティションや壁面は第1の領域及び第2の領域という2つの領域を有していたが、3つ以上の領域を有していてもよい。この場合、3つのうちのいずれか2つの領域が、“その2つの領域のうち一方の領域が、他方の領域よりも高い吸音率を有し、パーティションが床面に立設されたときに上記他方の領域よりも床面に近くなる位置に設けられている”という条件を満たすのであれば、本発明の内容に含まれることになる。また、各パーティションや壁面が、床面に近づくに従って連続的に吸音率が高くなるような領域を備えている場合であっても、“連続的に吸音率が高くなるような領域中の一部分の領域が、他の部分の領域よりも高い吸音率を有し、パーティションが床面に立設されたときに上記他の部分の領域よりも床面に近くなる位置に設けられている”という条件を満たすのであれば、本発明の内容に含まれることになる。
【符号の説明】
【0067】
10,50…パーティション、60…第1の吸音手段、70…第2の吸音手段、100,500…本体部、110,510…第1の領域、112,122,502…表面部材、114,504…芯材、120,520…第2の領域、124…吸音材、130…脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に立設されるパーティションを備え、
前記パーティションは、
第1の領域と、
前記第1の領域よりも高い吸音率を有し、当該パーティションが床面に立設されたときに前記第1の領域よりも前記床面に近くなる位置に設けられた第2の領域と
を有することを特徴とするパーティション構造。
【請求項2】
前記第2の領域は、
前記パーティションに挟まれた第1の空間から発せられ、当該第1の空間以外の第2の空間に伝搬する音声の伝搬経路上の領域であり、
前記伝搬経路は、
前記パーティションが立設されている空間に面する天井を反射面として含む伝搬経路である
ことを特徴とする請求項1に記載のパーティション構造。
【請求項3】
前記第2の領域は、
前記パーティションに挟まれた第1の空間以外の第2の空間から発せられ、当該第1の空間に伝搬する音声の伝搬経路上の領域であり、
前記伝搬経路は、
前記パーティションが立設されている空間に面する天井を反射面として含む伝搬経路である
ことを特徴とする
請求項1に記載のパーティション構造。
【請求項4】
前記パーティションに挟まれた空間に隣接する空間の壁面よりも高い吸音率を有する吸音手段であって、当該壁面において、前記パーティションの前記第2の領域と同じ高さの位置に設けられた吸音手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパーティション構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3(a)】
image rotate

【図3(b)】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6(a)】
image rotate

【図6(b)】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−188904(P2012−188904A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55679(P2011−55679)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】