説明

パーフルオロカーボン可溶性化合物

本発明は一般式R−L−X又はR−L−X−L−R、式中Rはパーフロロカーボン基、Xは親水性部分、及びLは一般構造-CO-NH-のアミド結合である。本発明はPFC形成性油相、水又は水溶液形成水相、及びHFB(親水性基対親フルオロ基バランス)価が約7〜約13のPEGベースのフルオロ界面活性剤を包含するマイクロエマルジョンをも提供する。本発明はフルオロ化合物のアミド化法も提供する。この方法は、一般式C2n+1COClのパーフルオロ酸塩化物と一般式R-NHのアミン基含有化合物とを一般式C2n+1-CONH-Rを有する生成物を得ることができる条件下で混合することを包含する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
この出願は、2004年4月30日に出願されたUS仮特許出願60/567,282号及び2004年12月10日に出願されたUS仮特許出願60/635,161号
の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、パーフルオロカーボン(PFC)可溶性弗素化化合物、その合成法及びその用途に関する。本発明は、弗素化界面活性剤で調製されたPFC乳濁液及びマイクロエマルジョンにも関する。
【0003】
背景技術
この出願を通して各種の文献を括弧内で引用する。これらの刊行物の開示は全体として引用によってこの出願に導入され、この出願に関する技術状態を詳細に記載する。これらの引用文献の詳細なデータはこの出願の末尾に見出される。
【0004】
高度に弗素化した有機化合物及び材料は、パーフルオロカーボン(PFC)化合物を含んで、高度に腐食環境に対する高度の性能及び/又は抵抗性が求められる場合に、化学、電子、核、磁気媒体、及び航空宇宙産業において多くの用途を見出した(Riess,2001)。パーフルオロカーボンは、高い安定性及び優れた気体溶解能力を極度の化学的及び生物学的不活性と結合し、広範囲のバイオ医学的用途に望ましくしている(Ceschin,1985)。例えば、PFCsは造影剤、心臓発作、及び他の血管閉塞の処置における酸素移送剤又は「人工血液」、血管形成術における補助剤、医薬及び遺伝子配布剤、眼科学、網膜補修、ガラス液の交換、酸素網膜補修、眼への酸素供給の改良、診断及び潤滑、精子の保存を含む細胞組織の保存、及び癌照射措置及び化学療法において用いることができると示唆されている(米国特許第5,502,094号;LoNostro,1999;Krafft,2001;Lowe,1998;Riess,2002)。
【0005】
このような用途に有用であるといわれるPFCsは、僅かをあげただけでもパーフルオロデカリン、パーフルオロトリメチル ビシクロ[3.3.1]ノナン、パーフルオロメチル アダマンタン、パーフルオロジメチル アダマンタン、パーフルオロ-2,2,4,4-テトラメチルペンタン;9−12Cパーフルオロアミン、例えばパーフルオロトリプロピル アミン、パーフルオロトリブチル アミン、パーフルオロ-1-アザトリシクリック アミン、ブロモフルオロカーボン化合物、例えばパーフルオロオクチル ブロミド及びパーフルオロオクチル ジブロミド;F-4-メチル オクチルヒドロキノリジジン及び塩素化パーフルオロ環状エーテルを含むパーフルオロエーテルがある(米国特許第5,502,094号)。
【0006】
PFCsは全ての温度で完全に水不溶性なので、静脈投与の前に水中PFC乳濁液として水ベースの生物適合性システムに変える必要がある(LeNostro,1999)。水中PFC乳濁液は、鉱物塩、代謝生成物及び生物学的に重要な他の成分の同時移送を必要とする液体呼吸及び人工血液用途に望ましい(Ceschin,1985)。安定なPFC中水マイクロエマルジョンも部分液体排気を用いる肺のMRIを含む一定の用途に望ましい(Huang,2002)。PFC中水マイクロエマルジョンも連続PFC層内の水溶性薬物処理の安定化に有用である。
【0007】
濁っているように見え場合によって分離している乳濁液とは異なり、マイクロエマルジョンは光学的に透明で流体で熱力学的に安定である(Ceschin,1985;Lawrence,2000)。水中PFC及びPFC中水(以後共に「PFCマイクロエマルジョン」という)は、適当な界面活性剤を、しばしば共界面活性剤と組合せて、水及びPFCの非混和性混合物に添加して自発的に形成される(Ceschin,1985)。
【0008】
PFC乳濁液及びマイクロエマルジョンを形成するために用いる界面活性剤は、PFCsに高度に可溶性でなければならない。弗素化界面活性剤(又はフルオロ界面活性剤、即ちフルオロカーボン部分を包含する疎水性尾を有する界面活性剤)は、極めて低いPFC/水界面圧力を提供できるのでPFCsを乳化するための論理的選択である(Riess,2001)。数種のF-アルキル化ポロクサマー(poloxamer)及びアミン酸化物誘導体が調査された(Riess,2001)。モジュラー構造設計のフルオロ界面活性剤の範囲が合成され、ポリオール、モノ-及びジサッカリド、アミノ酸、アミンオキシド、ホスホルアミド、リピド等を含む極頭の各種のタイプの分子を含む(Riess,2001)。然しながら、広範囲の弗素化界面活性剤の使用が高コストのために妨げられた(Kraft,2001)。
【0009】
疎水性であることに加えて、PFCsは疎油性でもあり有機液体に良く溶解しない。パーフルオロアルキルアルカンC2m+1(CHHのような、フルオロカーボン/炭化水素ジブロックスは、両親媒性の性格(fluorophilic/lipophilic)を有し、PFC/水又はPFC/炭化水素界面において界面活性剤系の部分の役割を果たし得る(Riess,2001)。その有機液体における溶解度は広範囲に研究された(Rabolt etal,1984;Russel etal.,1986;Turberg and Brady,1988)。分離した-CF2-CH2-結合の存在のため、これらの化合物はフロロカーボン又は炭化水素のいずれよりも一層極性である。パーフルオロアルキルアルカンは両炭化水素及びフロロカーボンにおいてミセルを形成することが示された(Kraft,2001)。これらの若干は、相対的に所定の高い濃度において、炭化水素(Twieg etal.,1985)及びパーフルオロオクタン及びイソオクタンの混合物(Ku etal.,1997)を含む若干の液体に溶解してゲル相を生じ得る。パーフルオロアルキルアルカンは沃化パーフルオロアルキルの末端オレフィンへの遊離基開始付加によって調製される(Bargigia etal.,1982;Brace,1979)。関与する手順は単純ではなく収量は比較的に低い。
【0010】
従って、弗素化した界面活性剤の合成の改良法についての需要がある。
【0011】
発明の概要
上述したように、PFCは水不混和性液体であり薬剤分子に対して貧溶媒である。この障害を克服するために、アプローチの1つは、フルオロ界面活性剤の助けで連続PFC相に分散したナノ粒子内に関心のある医薬又は遺伝子を閉込み得るPFC-中-水マイクロエマルジョンを創りだすことである。然し、PFC-中-水マイクロエマルジョン系の分野の報告された文献は限られている。また、多くの医学用途において、水-中-FTCマイクロエマルジョン系は、その生体適合性を確保するのに極めて望ましい。両システムは界面活性剤を必要とする。
【0012】
市場で入手できる界面活性剤は高価であり、極めて安定でなく、安定なマイクロエマルジョンを形成しないので、安定で経済的なフルオロ界面活性剤を提供することは本発明の目的である。そのような界面活性剤を合成する単純な方法を開発することは本発明の他の目的である。
【0013】
これらの及び他の目的は、一般式R−L−X又はR−L−X−L−R、(式中、Rはパーフルオロカーボン基であり、Xは親水性部分であり、及びLは一般構造−CO−NH−のアミド結合である)を有する本発明のフルオロ界面活性剤によって達成される。一の態様では、親水性部分はポリオール、モノ-及びポリサッカリド、ポリエチレングリコール(PEGs)、アミノ酸、ペプチド、アルギネート、アミンオキサイド、フォスフォルアミド、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる。
【0014】
他の観点では、本発明は一般構造R−L−Rのパーフルオロアルカンアミド(式中、Rはパーフルオロカーボン基であり、Lは一般構造−CO−NH−であり、及びR=C2m+1)を提供する。
【0015】
他の観点では、本発明は、油相形成PFC、水又は水性相形成水溶液及びPEGベースのフルオロ界面活性剤を包含するマイクロエマルジョンを提供する。フルオロ界面活性剤は、約7〜約13のHFB(親水性基対親フルオロ性基のバランス)価を有する。HFB価は、HFB=(モル%親水性基)/5として計算される。
【0016】
更に他の観点では、本発明はフルオロ化合物のアミド化(amidification)法を提供する。この方法は、一般式C2n+1COClのパーフルオロ酸塩化物をアミン基を含み一般構造NHを有する化合物と、一般式C2n+1CONH-Rを有する生成物を得るに十分な反応条件下で混合することを包含する。
【0017】
最後の観点では、本発明は、
(a)式: HFB=(モル%親水性基)/5 を用いてフルオロ界面活性剤のHFB価を計算し、
(b)約6〜約13の範囲のHFBの界面活性剤候補を選定し、
(c)選択したフルオロ界面活性剤を水溶液又は水及びPFCと混合することを包含するPFC-中-水又は水-中-PFC乳濁液を調製する方法を提供する。
【0018】
一の態様において、工程(b)は、分子量、構造、又は分子量及び構造の両者がPFCのものと類似であるC2n+1基のフルオロ界面活性剤を選定する工程を更に包含する。
【0019】
本発明は、従来の界面活性剤及びその合成法より多くの利点を提供する。一般式C2m+1(CO)HのZONYLTMフルオロ界面活性剤(デュポンTM)のような市場で入手可能なフルオロ界面活性剤とは対照的に、本発明のフルオロ界面活性剤は、有利には一層単分散して実質的により安定なPFCマイクロエマルジョンを生じ、少なくとも1月以上の期間25℃に維持できる。更に、前記の研究者が製造したパーフルオロアルキル化PEG表面活性剤に比較して、本発明のR-CONH-PEG表面活性剤の収率は実質的に高い(95%以上)。高収率に加えて、本発明のR-CONH-PEG表面活性剤は、水性相に溶解した場合、多分その頑健なアミド結合のために、極めて安定である(Challis,1979)。
【0020】
更に、本発明が提供する利点は、1)大きな範囲のパーフルオロカーボン-中-水マイクロエマルジョンが本発明のパーフロロカーボン可溶性界面活性剤が助けで調製できる;及び2)ペジル化(pegylated)医薬(例えば蛋白質、サイトカイン)のパーフロロカーボンへの溶解度はエチレンオキサイド鎖からなるフルオロ界面活性剤の高いパーフルオロカーボン溶解度によって本発明で増大する。
【0021】
従って、本発明の界面活性剤及びミクロエマルジョンは、多くのバイオ医学及び安定で安価なPFC-中-水及び水-中-PFCマイクロエマルジョンを求める他の用途に用いるのに適している。
【0022】
本発明の上記の及び他の特徴及びそれを得る方法は、添付の図面と共に次の説明を参照して明らかになり、よく理解されよう。これらの図は本発明の典型的態様を示すだけであって、その範囲を限定するものではない。
【0023】
発明の詳細な説明
PFCsは水素原子の殆んど又は全てが弗素で置換された炭化水素である(Lowe,1998)。PFCマイクロエマルジョン(水-中-PFC及びPFC-中-水マイクロエマルジョンを含む)は、優れた安定性及び生体適合性と組合された高い安定性及び酸素及び二酸化炭素を溶解する能力に基づいて、多くのバイオ医学用途で検討されてきた(Reiss,2001;Winslow,2002)。PFCsは水性媒体に混和しないので、PFCマイクロエマルジョンを作るために界面活性剤が求められる。透明なPFCマイクロエマルジョンはPFCと水との間の界面応力を零価に近く下げる能力によりフロロアルキル化界面活性剤の助けによってのみ製造できると報告されている(Prince,1967)。
【0024】
2m+1CH-(OCOHの構造を有するポリ(オキシエチレン)パーフルオロアルキル界面活性剤の合成は、反応剤としてフルオロアルコール(C2m+1CHOH)及びエチレンオキサイドを用いてウイリアムソンタイプの反応によって作られる(Seleve,1983;Mathis,1984)。然しながら、このタイプの反応はエチレンオキサイドの制御できないポリ付加及び各種のランクnのオリゴマーの広い分布を生じる。従って、m=6又は7及びn=4〜7のフルオロ界面活性剤の全体の収率は10〜40%にわたる。このような低い収率はフロロアルコールが熱に不安定で単離が困難であるからである(Banus,1951;Lovelace,1958)。
【0025】
最近では70%収率でエステル結合を有するパーフルオロアルキル化PEG界面活性剤が、パーフルオロカルボン酸(C2n+1COOH)をMPEGと反応させることによって合成された(LoNosttro,1999)。収率は改良されたが、R-PEGのエステル結合は、水溶液で容易に加水分解される(Hsu,2001)。一般式C2m+1(CO)HのZONYLTM非イオンフルオロ界面活性剤(デュポンTM)は、PFC乳濁液の製造にパーフルオロカーボンの可溶化に広く用いられた(Mathis,1984)。然しながら、界面活性剤のこのシリーズの多様性により(m及びnの値は広い分布を有する)、ZONYLTMフルオロ界面活性剤は極めて安定なマイクロエマルジョンは形成できない(Schubert,1994)。
【0026】
従って、一の観点では、本発明は一連の新規な一般式 R−L−X (式中、Rはパーフルオロ炭素基であり、Lは一般構造-CO-NH-のアミド結合を表し、Xは親水性部分である) を有するフルオロ界面活性剤を提供する。本発明のフルオロ界面活性剤は、有利には一層安定であり及び一層安定なPFCミクロエマルジョンを形成する。
【0027】
パーフルオロ炭素基Rは次の一般式:C2n+1を有する。一の態様では、nは3〜17の範囲内にある。一の態様では、7〜13の範囲内である。
【0028】
本発明に用いることができる親水性部分のタイプには、アミド結合を介してパーフロロ炭素基に付くことができる限り制限はない。このような親水性部分の例には、限定されるものではないが、ポリオール、モノ-及びポリサッカリド(シトサンを含む)、ポリエチレングリコール(PFGs)、アミノ酸、ペプチド、アルギネート、アミンオキシド、ホスホルアミド、及びそれらの誘導体が含まれる。一の態様では親水性部分はPEGを包含する。PEGはバイオコンパチブルであるので、特に医薬用途に特に適した親水性部分である。
【0029】
ポリエチレングリコールは、「n」がオキシエチレン基の平均数を示す一般式HO-(CH-CH-O)n-Hのエチレンオキシドの重合体である。PEGsは典型的にはエチレンオキサイドの塩基触媒開環重合によって製造される。反応は、水酸化カリウムを触媒としてエチレングリコールへのエチレンオキサイドの付加によって開始される。この方法は、所定の範囲の分子量を有するポリエチレングリコール重合体の多分散混合物を生じる。ポリエチレングリコールは200〜8000ダルトンの範囲の平均分子量で、平均分子量を示す番号を指定して市場において入手できる。一の態様では、PEGの平均分子量は約200から約1000ダルトンである。
【0030】
他の態様では、親水性部分は、ポリエチレングリコールメチルエーテルとも称されるメトキシ-ポリエチレングリコール(MPEG)を包含する。MPEGsはポリエチレングリコールの構造及び命名法に類似した高分子量重合体であり、「n」がオキシエチレン基の平均数を示す一般式CHO-(CH-CH-O)n-Hで表すことができる。MPEGsは平均分子量範囲350〜5000で市場で入手できる。一の態様では、350〜750の範囲の平均分子量のMPEGsが用いられる。
【0031】
一の観点では、本発明は、油層を形成するPFC、水層を形成する水溶液(以後水と言及する)及び本発明のフルオロ界面活性剤を包含する乳濁液を提供する。本発明の乳濁液に存在するPFC、水、及びフルオロ界面活性剤の量は広範囲に変り得る。各成分の量は、調製する乳濁液のタイプ(水-中-PFC、PFC-中-水、乳濁液又はマイクロエマルジョン)及び他の二成分の相対量に依存する。所定のセットの成分についての許容できる乳濁液を製造するための実際の濃度は、各種PFC、水及びフルオロ界面活性剤濃度における乳濁液の安定性の調製及び試験の単純な技術を用いて容易に定められる。一の態様では、三相ダイアグラムが、フルオロ界面活性剤、PFC及び水の割合を定めて、PFC中水乳濁液、水中PFC乳濁液、PFC中水マイクロエマルジョン、水中PFCマイクロエマルジョンを生じる。
【0032】
一の態様では、乳濁液は安定で、透明なマイクロエマルジョンである。本発明の目的のために、「安定なマイクロエマルジョン」の語は、マイクロエマルジョンが透明であって、室温での保存の間に相分離を示さないことを意味する。一の態様では、マイクロエマルジョンは25℃で少なくとも1月間安定である。
【0033】
本発明は用いるPFCのタイプに制限を課さない。然し、PFCの化学構造はマイクロエマルジョンの領域の大きさに優勢の影響を有し得るので、PFCの選択は、マイクロエマルジョン領域の所望の大きさに依存する応用の間にあり得る。
【0034】
PFCsは直鎖、分岐鎖、又は環状、又はこれらの構造の組合せを有する。PFCの骨格鎖は、炭素原子にのみ結合した、2価の酸素、3価の窒素、又は6価の硫黄のような、1以上の骨格へテロ原子を含み得る。一の態様では、PFC化合物は約5〜約12炭素原子を有する。米国特許第6,297,308;4,742,050;及び5,502,094号は、引用によってここに挿入し、各種の用途に用いられた各種のPFC化合物を記載する。PFCsは、限定するものではないが、パーフルオロデカリン、パーフルオロインダン、パーフルオロトリメチルビシクロ[3,3,1]ノナン、パーフルオロメチルアダマンタン、パーフルオロジメチルアダマンタン、パーフルオロ-2,2,4,4-テトラメチルペンタン;9-12Cパーフルオロアミン、例えば、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロ-1-アザトリ環状アミン;ブロモフルオロ炭素化合物、例えば、パーフルオロオクチルブロミド及びパーフルオロオクチルジブロミド;F-4-メチルオクタヒドロキノリジジン及びパーフロロエーテル、塩素化パーフルオロ環状エーテル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロー4−メチルモリフォリン、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロ-2-エチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロペンタン、パーフルオロ(2-メチルペンタン)、パーフルオロへキサン、パーフルオロ-4-イソプロピルモルフォリン、パーフルオロジブチルエーテル、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロノナン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロジヘキシルエーテル、パーフルオロ[2-(ジエチルアミノ)エチル-2-(N-モルホリノ)エチル]エーテル、n-パーフルオロテトラデカヒドロフェナンスレン、及びそれらの混合物である。これらの及び他のPFCsは本発明の界面活性剤と共に用いることができる。
【0035】
一の態様では、PFCは、パーフルオロオクチルブロミド(C17Br、PFOB)又はパーフルオロポリエーテル(HFC-(OC-(OCFOCFH、GaldenTMZT85、PFPE)である。PFOBは安定で、十分に寛容で身体から迅速に消滅できる。これはX線、CTスキャニング、超音波及び核磁気共鳴用に一般的対照剤として用いられるだけではなく治療用酸素キャリヤーとしても利用される(Long,1988)。PFPEは高い化学的及び熱的安定性を保証する分子鎖に沿ったC−C結合に結合した最大電子陰性原子(O,F)が存在する既知の流体である。結果として、PFPE流体は極めて荒い条件下でも極めて信頼性のある潤滑剤としての効能の特異な組合せを提供する(Caporiccio,1986)。更に、PFPEベースの材料は、視覚上、血管系、及び整形外科の分野におけるバイオ物質の開発に用いる潜在能力を示す(Johnson,1999)。
【0036】
水相は水単独又は緩衝剤、塩又は他の生成溶液を生理学的に許容性にする試薬を含む水溶液であり得る。例えば、Ringer's又はTyrode's溶液のような血液と等張の塩溶液を用いることができる。水溶液は、水溶性医薬、遺伝子含有組成物及び栄養剤に限定されるわけではないが治療剤を含むことができる。
【0037】
医薬調合に一般に用いられ当業者の調合者に用いられる他の物質も本願発明の乳濁液に添加することができる。これらには、粘度調整剤、安定剤(例えば、凍結又は汚染による劣化に対して)、凍結防止剤、希釈剤、コード化剤等を含むことができる。これらの添加剤の中にはグリセリン、ジメチルスルホキサイド(DMSO)、天然及び合成の各種のゼラチン、ソルビトールのようなポリオールを挙げることができる。
【0038】
共界面活性剤を用いることなくPFCマイクロエマルジョンを得るためには、界面活性剤は十分に親水性及び親フルオロ性の両者であるべきであると信じられている(Ceschin,1985)。当業者は、グリフィン(Griffin,1954)が推論した親水性-親油性バランス(HLB)式を用いて、どの非イオン性界面活性剤がマイクロエマルジョンを形成することができるかを予測するために用いている(Myers,1988;Seleve,1983)。HLB価3−6の界面活性剤は油-中-水マイクロエマルジョンの形成に有利であり、及び8−18のHLB価は水-中-油マイクロエマルジョンの形成に好ましいと考えられる(Lawrence,2000)。
【0039】
HLBとの類推で、本発明者等はPEG含有フルオロ界面活性剤のHFB(親水性基対親フロロ基バランス)価を計算するための実験式を開発した。
【0040】
HFB=(モル%親水性基)/5。
本発明者等は予想外に7〜13の範囲のHFB価を有するPEGベースのフルオロ界面活性剤は、第2界面活性剤の助けなしでPFCマイクロエマルジョンを安定にすることができることを見出した。
【0041】
従って、他の観点では、本発明は、フルオロ界面活性剤が親水性基対親フロロ基バランス(HFB)価が7〜13の範囲にあるときに、PFC化合物、水、及びPEGベースのフルオロ界面活性剤を包含するマイクロエマルジョンを提供する。一の態様では、フルオロ界面活性剤は、C15CONH-PEG350-OCH(HFB=8.8)、C15CONH-PEG550-OCH(HFB=11.2)、及びC15CONH-PEG750-OCH(HFB=12.7)からなる群から選ばれる。他の態様においては、フルオロ界面活性剤は約350〜約750ダルトンの分子量を有するMPEGを包含する。
【0042】
他の態様では、フルオロ界面活性剤は第1パーフルオロカーボン基を包含し、及び第2パーフルオロカーボン基を包含し、及びフルオロ界面活性剤は第1及び第2パーフルオロカーボン基の構造が類似した構造を有するように選定される。当業者は2つのパーフルオロカーボン基の構造をどのように比較するかを知っている。例えば、骨格鎖の長さ及び形状(直鎖、分岐、環状等)、骨格ヘテロ原子の存在及び量、分子量及び他の化学的、物理的及び構造特性が評価される。他の態様では、第1及び第2パーフルオロカーボン基が類似の分子量を有する。然しながら、PFC及びフルオロ界面活性剤のパーフルオロカーボン基が構造及び分子量において異なっている乳濁液及びマイクロエマルジョンも本発明の範囲内である。
【0043】
他の観点で、本発明は、一般的に、アミド化フルオロ化合物、及びアミド結合を有するパーフルオロアルキル化PEG界面活性剤、及び特にパーフルオロアルカンアミドの高収量合成を提供する。
【0044】
上述したように、十分に親水性及び親フロロ性の両者であるフルオロ界面活性剤は、安定なマイクロエマルジョンを調製するときに望ましい。親水性部分はパーフルオロカーボン基に化学的にグラフトして末端官能性パーフルオロアルキル化界面活性剤を形成できる。一の態様では、ポリ(エチレングリコール)は、医学用途のためにバイオ適合性のために親水性部分として選定された。次の一般反応スキームA及びBは、4種の末端官能性パーフルオロアルキル化ポリ(エチレングリコール)界面活性剤の例を提供する。
【化1】

【0045】
次の反応スキームI及びIIは、本発明のアミド化法の詳細を示す。スキームIは、図式的にパーフルオロアルキル化PEGベースの界面活性剤の合成を示す。
【0046】
スキームIIは、図式的にパーフルオロアルカンアミドの合成を示す。
【化2】

【0047】
より一般的には、本発明はフルオロ化合物のアミド化方法を提供する。この方法は、一般式C2n+1COClのパーフルオロ酸塩化物を、一般構造R-NHを有しアミノ基を含有する化合物と、一般式C2n+1-CONH-Rを有する生成物を得るに十分な反応条件下で混合することを包含する。例3及び9に記載したような若干の態様では、パーフルオロ酸塩化物をアミノ変性化合物と混合する前に、パーフルオロ酸をヘキサンに溶解して第1混合物を得る。例3の態様では、ジクロロメタンをアミノ変性化合物と混合して第1の反応混合物と一緒にする前に第2混合物を形成する。
【0048】
本発明の目的のためには、生成物の製造を容易にするのであれば、反応条件は十分である。このような反応条件は、限定するものではないが、培養時間及び温度、成分を一緒にする態様(注ぎ、滴下添加、等)及び成分の濃度を含む。適当な条件の選定は、当業者の技術の範囲内であり、使用するアミノ変性化合物の特定のタイプ及び所望の製品収率による。
【0049】
例えば、本発明の一の態様において、反応条件は、氷上4℃で6時間のインキュベーションを包含する(例3)が、他の態様では反応条件は反応条件は室温で30分間のインキュベーション、続いて60℃で6時間のインキュベーションを包含する。他の態様では、反応条件は、ジクロロメタン及びアミノ変性化合物を含有するフラスコ内へのパーフルオロ酸塩化物及びヘキサンの混合物の滴下添加を包含する。他の態様では、反応条件は、アミノ基含有化合物及びパーフルオロ酸塩化物を1:1.1のモル比で一緒にすることを包含する。本明細書の教示及び基礎化学の知識に基づいて当業者は他の適当な反応条件を過度の実験なく選定できる。
【実施例】
【0050】
材料
分子量が350、550及び750のメトキシポリエチレングリコール(MPEG)をUnion Carbide(Danbury,CT)から得た、パーフルオロオクタン酸(C15COOH)、パーフルオロデカン酸(C15COOH)、パーフルオロドデカン酸(C1123COOH)及びパーフルオロテトラデカン酸(C1327COOH)はAldrich(Milwaukee,WI)から、パーフルオロオクチルブロミド(PFOB)はChem-surf(Sebastopol,CA)から及びポリフルオロポリエーテルGaldenTMZTS5をSolvay Solexis,Inc.(Thorofare,NJ)から得た。パーフルオロヘプタン酸(C13COOH,97.6%)、パーフルオロオクタン酸(C15COOH,98%)及びパーフルオロナノン酸(C17COOH,98%)をP&M Company(ロシア)から得た。ドデシルアミン(C1225−NH,98%)及びオクチルアミン(C17−NH,98%)はFluka(USA)から購入した。CF-76は、3M(USA)から受理した。特に特定しない他の化学品はSigma又はAldrichから購入した。これらの材料は全て更に精製することなく受理したまま用いた。
【0051】
例1
パーフルオロ酸塩化物の合成
スキームI及びスキームIIの工程(1)
1モル比のパーフルオロカルボン酸(C13COOH、C15COOH、C17COOH、C1123COOH又はC1827COOH)を先ず窒素雰囲気下で100mlの乾燥ベンゼンに溶解した。次いで、2モル比の塩化チオニル(SOCl)及び0.5モル比のピリジンを加えた。混合物を還流コンデンサ、乾燥管、撹拌棒及びN-入口を備えた250mlの3-首丸底フラスコに入れた。反応は直ちに始まりHClの放出による煙の外観を伴った。内容物は60℃で6時間連続的に還流した。過剰の塩化チオニル及び反応溶媒の痕跡を80℃の真空下で蒸発させた。残留物は、次のアミノ-MPEG(例3)、ドデシルアミン(C1225-NH)又はオクチルアミン(C17-NH)(例9)による次のアミド化に直接用いた。
【0052】
例2
フルオロ界面活性剤のHFB価の計算
PEGベースのフルオロ界面活性剤のHFB価を次の式を用いて計算した。
【0053】
HFB=(モル%親水性基)/5
表1に挙げた一連のパーフルオロアルキル化MPEG界面活性剤を合成してPFCマイクロエマルジョンを形成する能力を調べ、及びそのHFB価を計算した。
【表1】

【0054】
例3
パーフルオロアルキル化PEG界面活性剤の合成
スキームIの工程(2)及び(3)
MPEGの末端水酸基を2工程重合体類似反応(スキームIの工程(2))によってアミノ基に変換した。MPEG-OH[(CH-(OCH-CH-OH]をトルエンに溶解し、共沸蒸留で乾燥した。次いでピリジンの数滴を、10gのMPEG-OH及び150mlのトルエンを含む250mlの3首丸底フラスコに加えた。キノリンから新たに蒸留した塩化チオニルを一時間かけて反応フラスコに滴下した。MPEG-OH対SOClのモル比は2:3であった。混合物を65℃に4時間加熱し、次いで室温に冷却した。ピリジン塩化水素を濾過し、及び80℃の真空下で過剰の塩化チオニルを含むトルエンを蒸発した後、残留物をCHClに溶解し、無水KCO上で乾燥し濾過した。CHO-(CHCHO)n-1-CHCHClの生成物を次いでジエチルエーテルに沈殿した。次いで、CHO-(CHCHO)n-1-CHCHClを過剰のアンモニアで飽和したエタノール溶液に溶解し、70℃に加熱し、反応フラスコ内で24時間高圧を維持した。生成する生成物、MPEG-NH(CHO-(CHCHO)n-1-CHCHNH)を乾燥ジエチルエーテルに沈殿させ、真空下で乾燥した。
【0055】
パーフルオロアルキル化MPEG界面活性剤の合成をスキームIの工程(3)に従って実施した。反応混合物におけるアミノ-MPEGとパーフルオロ酸塩化物のモル比は1:1.1であった。特に合成に用いた還流コンデンサーを備えた250mlの2首丸底フラスコを4℃に維持した活性エステル反応を確保するため氷を含む槽内に浸漬した。第1に、親水性試薬(即ち、ポリ(エチレングリコール))の0.05モルを含むCHClの20mlの量をフラスコ内に注ぎ磁気撹拌機で混合した。エステル反応で発生した塩化水素を除くために、0.05モルのNaCOを予めHClを吸収するために溶液に添加した。
【0056】
次いで、0.05モルの疎水性試薬(即ち、RCOCl)を滴下漏斗を通してフラスコに滴加した。反応剤及び生成物の酸化を防ぐために、窒素ガスを反応フラスコに注入して合成中酸素を一掃した。全ての親水性試薬を徐々にフラスコ内に添加するのに約1時間かかった。その後、反応を更に5時間継続した。反応は全体で6時間4℃で行った。生成物混合物は濾紙を通して濾過しNaCO粒子を除いた。濾過した溶液は減圧下で60℃に加熱されたロータリー蒸発機に移しCHClを除いた。冷却後、残留生成物はパーフルオロアルキル化ポリ(エチレングリコール)界面活性剤であった。
【0057】
例4
パーフルオロアルキル化PEG界面活性剤の特性化
合成した界面活性剤の分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって定めた。GPCシステムは、Shodex OHPak KB-806M カラム(Showa Denko,東京、日本)、ウオータース410示差屈折計(Waters Associates Inc.,Milford,MA)及びカラムを通して移動相をポンプするWatersU6-K多溶媒分配システム(Waters Associates Inc.,MA)からなる。カラム温度は40℃に維持した。移動相はテトラヒドロフラン(THF)であり、流速は1.00mL/分であった。合成したフルオロ界面活性剤はTHFに溶解し、系内に注入する前に0.2μmシリンジフィルター(Gelman,AnnArbor,MI)を通して濾過した。単分散ポリエチレングリコール試料(WatersAssociatesInc.,Milford,MA)を較正標準として用いた。Fourier Transform Infrared(FT-IR,NicoletMagma-IR860トランスミッションモードのスペクトロメータ、対照として純粋シリコンウエファ、スキャン数100、解像4cm-1)を、合成パーフルオロアルキル化MPEG界面活性剤のアミド(-CO-NH-)結合を検出するのに用いた。入った光は離れる前にSi内で数回反射できるので楔止めシリコンウエファ(Harrick Scientific Corp,州)を用いた。光は被覆材料と数回相互作用することができるので信号が極めて高められる。
【0058】
例5
合成したフルオロ界面活性剤の分析
図1において、底のスペクトル(a)は合成したパーフルオロ酸塩化物(C15COCl)のFT-IR測定である。C−F結合のピーク吸収は1150から1250cm-1に延び、CFCOCl基の延伸振動は1805cm-1で検出された。C1123COCl及びC1327COClのIRスペクトルはC15COClの一方に類似しており、示していない。合成したアミノ-MPEG350は(b)のように標識されている。アミノ-MPEG350の-NH2基ピーク吸収は1625cm−1あたりに検出された。合成パーフルオロアルキル化MPEG350m界面活性剤(c)のスペクトルは、1625cm-1及び1545cm−1にそれぞれアミドI及びIIのN-H屈曲振動を示す。アミド結合(-CONH-)のカルボニル伸張振動を表す1720cm-1において吸着はピークとなった。合成フルオロ界面活性剤の純度及び収量は全て95%までである(クロマトグラフはここに示さない)。
【0059】
例5
合成したフルオロ界面活性剤の分析
図1において、底のスペクトルは、合成したパーフルオロ酸塩化物(C15COCl)のFT−IR測定である。C-F結合伸張のピーク吸収は1150から1250cm-1に延び、-CFCOCl基の伸張振動は1805cm-1で検出された。C1123COCl及びC1327COClのIRスペクトルはC15COClの1つと類似であり、ここには示さない。合成アミノ-MPEG350のスペクトルは(b)として標識した。アミノ-MPEG350の-NH基ピーク吸収は1625cm-1の近傍に検出された。合成パーフルオロアルキル化MPEG界面活性剤(c)のスペクトルは、それぞれ1645cm-1及び1545cm-1でアミドI及びIIのN-屈曲振動を示す。吸収は1720cm-1のピークとなり、アミド結合(-CONH-)のカルボニル伸張振動を示す。合成したフルオロ界面活性剤の純度及び収率は全て95%までである(クロマトグラム)はここに示さない)。
【0060】
例6
PFC/水/フルオロ界面活性剤の混合物の相挙動
水-中-PFC乳濁液の形成はPFCを界面活性剤安定化マイクロ滴として水性相に分散するのに高エネルギーを必要とする。一方、熱力学的安定なPFCマイクロエマルジョンについては、関連フルオロ界面活性剤の助けで、2の非混和性液体相は単に温和な混合によって光学的等方性溶液になり得る。図2に示されたように、異なる量のPFOB液体で水溶液中に溶解したC15CONH-MPE350界面活性剤の各種濃度をタイターすることによって異なる相挙動が作られる。PFOBの比重は水の密度より大きい1.94であるので、乳状の水-中-PFOB乳濁液がガラス瓶の底に落ち着く(図2A)。
【0061】
図2Bで示されたバイ連続中間層は過剰の水及びPFOBと共に少量のフルオロ界面活性剤がガラス瓶に示されている。添加したPFOBの量が水の量より多い場合には、PFOB-中-水乳濁液が乳状外観で上部に現れる(2C)。図2Dに示された一相の水-中-PFOB乳濁液の形成が、PFOBと水の容積比が単一に近づくと表われる。PFCの組成、水及びフルオロ界面活性剤が正しい割合の場合に、全透明外観(図2E参照)の水-中-PFCマイクロエマルジョンに達した。
【0062】
例7
相ダイアグラムの組立て
所定量のフルオロ界面活性剤を含む水溶液にPFCを次第に添加し、サーモスタット水浴を25℃にセットした。各添加の後、溶液の外観を、数、性質、及び相の概略の量と共に記録した。混合した溶液は観察を完了する前に1月放置した。可能性帯を作るために、生成するPFCマイクロエマルジョンを透明外観で定義した。三相ダイアグラムを次いでプロットして異なる相の間の境界を区別し、PFCマイクロエマルジョンを形成する三成分(水、フルオロ界面活性剤、及びPFC)の割合を定量するために用いた。
【0063】
例8
PFCマイクロエマルジョンの相ダイアグラム
図3に示した三元相ダイアグラムは、水、PFOB、及びR-MPEG350の重量留分で定めた。FOBマイクロエマルジョンの領域は、■で示されたテストポイントの領域であると定めた。□の記号は結晶性ゲル状特徴を有するPFOBマイクロエマルジョンを示す。▲の記号で表される水-中-PFOB乳濁液は図2Aに示される。●記号は図2Cで示されるPFOB-中-水の乳濁液を形成する組成物を示す。記号○及び△は、それぞれ1相PFOB乳濁液(図2Dで示す)及び(2bで示す)PFOB乳濁液の2連続相の領域を示す。図3の左渦領域の近くの■記号は(P/Wとして指定)、水が連続相である水-中-PFOBマイクロエマルジョンの領域を表す。分散相が水である(W/Pとして指定)PFOB-中-水の領域は多量のフルオロ界面活性剤を伴う右渦領域の近くに位置する。PFOB乳濁液の均質相(○の記号で示す)を含有する領域について、PFOBの水に対する容量比の範囲は0.0〜1.3であった。
【0064】
図4において、一連の三元ダイアグラムにおいて定められたPFOBマイクロエマルジョン領域は、350、550及び750の3つのMPEGMWのC15-MPEGと組合せた2つのPFCs(PFOB及びZT85)から設立された。両PFCsについて、R-MPEGを合成するために用いたMPEGの低級MW、大きいサイズのマイクロエマルジョン領域が得られた。表I(即ち、R部分=C1123、C1327)に示した残りのフルオロ表面活性剤について、透明PFCマイクロエマルジョンは設立された三元ダイアグラムから検出されなかった。
【0065】
議論
図4に示したPFCマイクロエマルジョンを得るために用いたR-MPEGのHFB価は、それぞれ8.8、11.2及び12.7として計算された。3相ダイアグラムにおいて確立したRFCマイクロエマルジョンの領域から、HFB価が低くなればPFCマイクロエマルジョンの一層大きいゾーンが形成できるようにみえる。更に、PFOB又はZT85中のC15-MPEGの溶解度はMPEGのMWの増加分と共に低下することも認識された(即ち、C15-MPEG350>C15-MPEG550>C15-MPEG750)ので、C15-MPEG350が最大のPFCマイクロエマルジョン領域を提供する観察に基づいて、この因子も重要な役割を果たし得る。図4(a)-(c)と(d)-(f)とを比較して、PFOBマイクロエマルジョンの領域は、ZT-85マイクロエマルジョンのものより極めて延伸された。
【0066】
理論に拘束されることは望まないが、PFCマイクロエマルジョンの形成におけるHFC価の影響及びRF-MPEGの溶解度とは別に、PFOBのパーフルオロカーボン基(C17-)は、ZT-85のパーフルオロカーボン基よりはPEGベースの界面活性剤のパーフルオロアルキル化部分(C15-)により類似した分子結合構造を有する。これはPFOBマイクロエマルジョン領域が対応するZT-85マイクロエマルジョン領域より広いのが理由であり得る。更に、C1123-MPEGもC1327-MPEGフルオロ界面活性剤もPFOB又はZT85マイクロエマルジョンを形成するために用いることができるから、PFCマイクロエマルジョンを形成するためにその親フルオロ基の分子量がPFCのものに近い(PFOB及びZT-85のMWはそれぞれ499及び353g/モルである)界面活性剤を選ぶことが必要である。然しながら、PFC及びフルオロ界面活性剤のパーフルオロカーボン基が構造及び分子量において異なる乳濁液も本発明の範囲内である。
【0067】
例9
パーフルオロアルカンアミドの合成
スキームIIの工程(2)
パーフルオロアルカンアミド-タイプ界面活性剤の合成は、次の工程で行った。先ず、パーフルオロカルボン酸をパーフルオロ酸塩化物(工程(1))に変換した。次いで、ヘキサンに溶解しピリジン数滴を伴ったC1225-NH(又はC17-NH)を、NaCOの存在下でパーフルオロ酸塩化物(C2n+1COCl、n=6〜8)と反応させた。反応混合物中のC1225-NH(又はC17-NH)のパーフルオロ酸塩化物に対するモル比は1:1.1であった。混合物を撹拌棒及びN2-入口を備えた3-首丸底フラスコ中に置いた。反応は30分間室温で行った。30分の反応の後、温度を60℃に上げ還流コンデンサーで6時間おいた。反応混合物をNa2CO3から濾過し減圧下で乾燥した。残留物をアセトンに溶解し次いで真空下で乾燥した。最終生成物であるアミド結合を通じたフルオロ界面活性剤C2n+1-CONH-C1225(又はC2n+1-CONH-C17)を脱イオン化水で2回洗浄し40℃のオーブンで乾燥した。
【0068】
例10
FT−IR分析
フリエトランスホーム赤外(FT-IR、Nicolet Magna-IR860スペクトロメータイントランスミッションモード、参照として純粋シリコンウエファー、スキャン番号1000、解像4cm-1)を合成したパーフルオロアルカンアミドのアミド結合(-CO-NH-)を検出するのに用いた。入力光が出る前に数回Si内で反射できるので、ウエッジしたシリコンウエファー(Harrick Scientific corp,州)を用いた。光は被覆材料で数回相互作用できるので、信号は極めて向上される。
【0069】
例11
パーフルオロアルカンアミドの特徴付
図5は、合成したパーフルオロアルカンアミド(CF13-CO-NH-C1225)のスペクトルを示す。アミドI及びIIのN-H屈曲振動は、それぞれ1645cm-1及び1540cm-1でピークであった。C-F結合伸張のピーク吸収は1150〜1250cm-1の範囲にある。H-C-Hの特徴的吸収ピークは2800〜2950cm-1及び1470cm-1に位置する。吸着は、アミド結合(-CONH-)のカルボニル伸張振動を表す約1700cm-1でピークになった。
【0070】
例12
溶媒溶解度
合成したパーフルオロアルカンアミドの種々の温度における各種溶媒への溶解度を表1に示す。本発明のパーフルオロアルカンアミドは室温でアセトン内で容易にミセルを形成できることが明らかである。短いパーフルオロアルキル基(即ち、C13-)で、パーフルオロアルカンアミドは全ての試験炭化水素溶媒に室温で溶解できるが、フルオロカーボン内では沈殿する。
【0071】
理論に拘束されることは望まないけれども、本発明者は、CF76内のパーフルオロアルカンアミドの溶解度はパーフルオロアルキル基の鎖長が増加し及びアルキル基の鎖長が減少する場合に増大すると信じる。この理論は、室温におけるCF76でのC17CONH-C17の溶解度の観察と一致する。
【表2】

【0072】
本発明は、本質的特徴を外れることなく他の特定の形態で具体化できる。記載した態様は全ての観点で単なる説明であると考えるべきで限定するものではない。本発明の範囲は上記の説明よりは請求の範囲によって示されるべきである。本発明は、添付の請求の範囲及びその均等物の範囲内にある本発明の変形及び変更を包含することを意図するものである。
【参考文献】
【0073】




【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】合成した(a)C15COCl、(b)NH-MPEG350、及び(c)C15CONH-MPEG350のFT-IR吸収スペクトルを示す図。
【図2】PFOB/HO/C15-MPEG350の相挙動を示す図。5の瓶は異なる相を示す。(A)水-中-PFOB乳濁液、(B)バイ連続相、(C)PFOB-中-水乳濁液、(D)均質PFOB/水乳濁液(PFOBと水の容積比は1に近い)及び(E)水-中-PFCマイクロエマルジョンを示す図。
【図3】PFOB/HO/C15-MPEG350の三元相ダイアグラム。各種領域が同定された。PFOBマイクロエマルジョン(■)、結晶ゲル状PFOBマイクロエマルジョン(□)、水中PFOB乳濁液(▲)、PFOB-中-水乳濁液(●)、バイ連続層を有するPFOB乳濁液(△)、及び均質相を有するPFOB乳濁液(○)を示す図。
【図4】それぞれR-MPEG350、R-MPEG550、R-MPEG750で調製したPFOB及びZT85マイクロエマルジョンの指定点(■で指定)を有する三元相ダイアグラムを示す図。
【図5】C13-CO-NH-C1225フルオロ界面活性剤のFT-IR吸収スペクトルを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式を有するフルオロ界面活性剤。
−L−X 又は R−L−X−L−R
式中、Rはパーフルオロカーボン基であり、Xは親水性部分であり及びLは一般構造-CO-NH-のアミド結合である。
【請求項2】
親水性部分がポリオール、モノ-及びポリサッカライド、ポリエチレングリコール(PEGs)、アミノ酸、ペプチド、アルギネート、アミンオキサイド、ホスホルアミド、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる請求項1に記載のフルオロ界面活性剤。
【請求項3】
親水性部分が約200乃至約8000ダルトンの分子量を有するPEG又は約350乃至約5000ダルトンの分子量を有するメトキシ−PEG(MPEG)である請求項1に記載のフルオロ界面活性剤。
【請求項4】
親水性部分が約200乃至約1000ダルトンの分子量を有するPEG又は約350乃至約750ダルトンの分子量を有するMPEGである請求項1に記載のフルオロ界面活性剤。
【請求項5】
パーフルオロカーボン基が約3〜約17炭素原子を有する骨格鎖を有する請求項1に記載のフルオロ界面活性剤。
【請求項6】
骨格鎖が約7炭素原子を有する請求項5に記載のフルオロ界面活性剤。
【請求項7】
油性相を形成するパーフルオロカーボン(PFC)、水性相を形成する水溶液、及び請求項1に記載のフルオロ界面活性剤を包含する乳濁液。
【請求項8】
水溶液が水及び緩衝材、塩、水溶性医薬、遺伝子含有組成物、及び栄養素からなる群から選ばれる少なくとも1の追加成分を包含する請求項7に記載の乳濁液。
【請求項9】
水溶液が水である請求項7に記載の乳濁液。
【請求項10】
PFCがパーフルオロオクチル ブロミド(PFOB)又はパーフルオロポリエーテル(PFPE)を包含する請求項7に記載の乳濁液。
【請求項11】
FTC、水性溶液、及びフルオロ界面活性剤を、熱力学的に安定で透明なマイクロエマルジョンが得られる量で混合した請求項7に記載の乳濁液。
【請求項12】
マイクロエマルジョンが水中PFCマイクロエマルジョン又はPFC中水マイクロエマルジョンである請求項11に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項13】
マイクロエマルジョンが25℃で少なくとも1月間安定性及び透明性を維持する請求項11に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項14】
フルオロ界面活性剤のパーフルオロカーボン基及びPFCのパーフルオロカーボン基が類似の構造を有する請求項11に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項15】
フルオロ界面活性剤のパーフルオロカーボン基及びPFCのパーフルオロカーボン基が類似の分子量を有する請求項11に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項16】
HFB=(モル%親水性基)/5
である、油層を形成するPFC、水又は水層を形成する水溶液、及びHFB価が約7〜約13のPFGベースのフルオロ界面活性剤を包含するマイクロエマルジョン。
【請求項17】
フルオロ界面活性剤が約9のHFB価を有する請求項16に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項18】
フルオロ界面活性剤が、C15CONH-PEG350-OCH、C15CONH-PEG550-OCH、及びC15CONH-PEG750−OCHからなる群から選ばれる請求項16に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項19】
フルオロ界面活性剤が約350乃至約750ダルトンの分子量を有するMPEGを包含する請求項16に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項20】
フルオロ界面活性剤が第1パーフルオロカーボン基を包含し、PFCが第2パーフルオロカーボン基を包含し、第1及び第2パーフルオロカーボン基が類似の構造を有する請求項16に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項21】
第1及び第2パーフルオロカーボン基が類似の分子量を有する請求項20に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項22】
PFCがPFOB又はPFPEである請求項16に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項23】
一般式C2n+1COClのパーフルオロ酸クロリドを、一般式C2n+1-CONH-Rを有する生成物を得るに十分な反応条件下で、一般式R-NHのアミン基含有化合物と混合することを包含する方法を包含するフルオロ化合物のアミド化方法。
【請求項24】
パーフルオロ酸クロリドをアミノ変性化合物と混合する前にパーフルオロ酸クロリドをヘキサンに溶解して第1混合物を得る工程を更に包含する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第1混合物と一緒にする前にジクロロメタンをアミノ変性化合物と混合して第2混合物を形成する工程を更に包含する請求項24に記載の方法。
【請求項26】
反応条件が第1反応混合物を第2反応混合物に滴加することを包含する請求項25に記載の方法。
【請求項27】
氷浴中で約4℃において混合した成分をインキュベートする条件を更に包含する請求項23に記載の方法。
【請求項28】
反応条件がアミノ変性化合物及びパーフルオロ酸クロリドを1:1.1モル比で一緒にすることを包含する請求項23に記載の方法。
【請求項29】
n=6〜13である請求項23に記載の方法。
【請求項30】
R-NH化合物がMPEG−NHである請求項23に記載の方法。
【請求項31】
MPEGが約350〜約750の分子量を有する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(a)MPEG−OHと塩化チオニル及びピリジンの混合物を加熱してMPEG−Clを得る工程、及び
(b)過剰のアンモニアで飽和させたエタノール溶液中のMPEG−Clの混合物を加熱してMPEG−NHを得る工程
を更に包含する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
R-NH化合物がアミノ−アルカンである請求項23に記載の方法。
【請求項34】
アミノ−アルカンがドデシルアミン又はオクチルアミンである請求項33に記載の方法。
【請求項35】
条件が室温で30分間に続き60℃で6時間を包含する請求項23又は33に記載の方法。
【請求項36】
R−NH化合物がアミノ変性化合物又は天然にアミン基を含有する化合物である請求項23に記載の方法。
【請求項37】
アミノ変性化合物がポリオール、モノ-及びポリサッカリド、PEGs、アミノ酸、ペプチド、アルギネート、アミンオキシド、ホスホルアミド、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる請求項36に記載の方法。
【請求項38】
(a)式
HLB=(モル%親水性基)/5
を用いて請求項1のフルオロ界面活性剤のHFB価を計算し、
(b)約6乃至約13の範囲のHFB価を有するフルオロ界面活性剤候補を選定し、
(c)選定したフルオロ界面活性剤を水溶液又は水及びPFCと混合する
ことを包含する水中PFC又はPFC中水を調製する方法。
【請求項39】
乳濁液が安定で透明なマイクロエマルジョンである請求項38に記載の方法。
【請求項40】
工程(b)が、分子量、構造又は分子量及び構造の両者がPFCのものと類似であるC2n+1基を有するフルオロ界面活性剤を選定する工程を更に包含する請求項38に記載の方法。
【請求項41】
はパーフルオロカーボン基であり、Lは一般構造−CO−NH−のアミド結合であり、R=C2m+1である、一般構造R−L−Rのパーフルオロアルカンアミド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−535613(P2007−535613A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511097(P2007−511097)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/015348
【国際公開番号】WO2005/107764
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(301040556)ユニヴァーシティー オブ サザン カリフォルニア (15)
【Fターム(参考)】