説明

ヒアルロン酸合成促進による内膜肥厚及びその利用

【課題】ヒアルロン酸の減少又は欠乏が伴う障害や疾患を治療すること。従来法に比べ、より生理的であり、副作用が少ない動脈管開存症治療法を確立すること。
【解決手段】ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを含む、医薬組成物。ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを含む、内膜肥厚促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸合成促進による内膜肥厚及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、β-D-N-アセチルグルコサミンとβ-D-グルクロン酸が交互に結合してできた直鎖状の多糖であり、ヒトの皮膚、関節、目などの様々な部位に存在し、体内で、「保湿・保水」という重要な働きをする。老化によりヒアルロン酸が減少すると、肌の乾燥や肌老化が起ったり、リウマチや関節炎が引き起こされたり、眼の水分が減少して、機能障害が生じたりする。
【0003】
ところで、動脈管(DA)は、胎児の肺動脈と下大動脈とを接続する動脈であり、胎児の生命維持に不可欠である。DAは出生後すぐに閉鎖するが、ある胎児においては開存したままとなり、このような病態は動脈開存症(PDA)として知られている。PDAは、出生時の体重が1500 g以下の乳幼児に40%以上の有病率で早産児に高頻度で悪影響を及ぼす1(非特許文献1)。PDAは早産児の死亡の原因となり、脳室内出血、気管支肺形成異常及び壊死性全腸炎の合併を増加させる1,2(非特許文献1及び2)。血管拡張性脂質メディエータのプロスタグランジンE (PGE)ファミリーは、DAの開存性の維持に主要な役割を果たすので、インドメタシンを含むシクロオキシゲーゼ(COX)インヒビター(これは、主として、プロスタグランジンの産生を制御する)は、PDAの治療に広く使われてきた3-5(非特許文献3〜5)。しかしながら、COXインヒビター無効例も多く存在し、それにより外科的な結紮が行われなくてはならないことがある3,4(非特許文献3及び4)。
【0004】
PGE1及びPGE2の両方とも、DAにおけるサイクリックAMP(cAMP)の細胞内濃度を上昇させ、DAにおける最も強い血管拡張性因子であることが知られている5(非特許文献5)。しかしながら、驚くべきことに、既報の研究により、PGE特異的レセプターEP4の遺伝的破壊は、マウス胎仔にPDAをもたらすことが実証されている6,7(非特許文献6及び7)。さらに、COX-1とCOX-2を破壊した二重変異マウスもまたPDAを示す8(非特許文献8)。さらにまた、母体にCOXインヒビターを投与すると、新生児、特に早産児におけるPDAの発生率が上昇することがいくつかの臨床研究で示された9,10(非特許文献9及び10)。しかしながら、これらの逆説的な結果の生物学的機序は満足のゆくように説明されてはいない。
【0005】
DAの閉塞は2つの時期に起る。新生児期間にある出生後の最初の数時間の間に、DAの平滑筋収縮の結果として、急性の機能的閉塞がある。これは、酸素張力の増加及び循環するプロスタグランジンの減少が引き金となる5(非特許文献5)。重要なことは、これに先立って、血管内腔を閉塞する内膜クッション形成を通して解剖学的な管腔の狭小化が発生し、永続的な閉塞を起こす11,12(非特許文献11及び12)。平滑筋細胞(SMC)遊走及び増殖、内皮層下のヒアルロン酸(HA)産生、並びにエラスチン線維配列の減少といった多くの細胞プロセスにより、DAの内膜クッションが形成される5, 11-13(非特許文献11〜13)。これに関して、ヒトPDA患者及びPDAの動物モデルにおける内膜クッション形成は貧弱である14-16(非特許文献14〜16)。DAは妊娠期間大量のPGE2にさらされており、PGE-cAMP-PKAシグナルカスケードが血管再構築を制御することが示されている17-19(非特許文献17〜19)。
【0006】
【非特許文献1】Cotton, R.B., Stahlman, M.T., Kovar, I. &Catterton, W.Z. Medical managementof small preterm infants with symptomatic patent ductus arteriosus. J Pediatr 92,467-73 (1978).
【非特許文献2】Gomez, R. et al. Management of patent ductus arteriosus in preterm babies. AnnThorac Surg 29, 459-63 (1980).
【非特許文献3】Friedman, W.F., Hirschklau, M.J., Printz, M.P., Pitlick, P.T. & Kirkpatrick, S.E.Pharmacologic closure of patent ductus arteriosus in the premature infant. NEngl J Med 295, 526-9 (1976).
【非特許文献4】Heymann, M.A., Rudolph, A.M. & Silverman, N.H. Closure of the ductusarteriosus in premature infants by inhibition of prostaglandin synthesis. N Engl JMed 295, 530-3 (1976).
【非特許文献5】Smith, G.C. The pharmacology of the ductus arteriosus. Pharmacol Rev 50,35-58 (1998).
【非特許文献6】Segi, E. et al. Patent ductus arteriosus and neonatal death in prostaglandinreceptor EP4-deficient mice. Biochem Biophys Res Commun 246, 7-12 (1998).
【非特許文献7】Nguyen, M. et al. The prostaglandin receptor EP4 triggers remodelling of thecardiovascular system at birth. Nature 390, 78-81 (1997).
【非特許文献8】Loftin, C.D. et al. Failure of ductus arteriosus closure and remodeling inneonatal mice deficient in cyclooxygenase-1 and cyclooxygenase-2. Proc Natl Acad Sci U S A 98, 1059-64 (2001).
【非特許文献9】Norton, M.E., Merrill, J., Cooper, B.A., Kuller, J.A. & Clyman, R.I. Neonatalcomplications after the administration of indomethacin for preterm labor. N EnglJ Med 329, 1602-7 (1993).
【非特許文献10】Hammerman, C. et al. Indomethacin tocolysis increases postnatal patent ductusarteriosus severity. Pediatrics 102, E56 (1998).
【非特許文献11】Gittenberger-de Groot, A.C. Morphology of the normal human ductus arteriosus.in The ductus arteriosus, report of the 75th Ross Conference on PediatricResearch (eds. Heymann, M.A. & Rudolph, A.M.) pp. 3-9 (Ross Laboratories,Columbus, Ohio, 1977).
【非特許文献12】Rabinovitch, M. Cell-extracellular matrix interactions in the ductus arteriosusand perinatal pulmonary circulation. Semin Perinatol 20, 531-41 (1996).
【非特許文献13】Slomp, J. et al. Formation of intimal cushions in the ductus arteriosus as a modelfor vascular intimal thickening. An immunohistochemical study of changes inextracellular matrix components. Atherosclerosis 93, 25-39 (1992).
【非特許文献14】Gittenberger-de Groot, A.C., van Ertbruggen, I., Moulaert, A.J. & Harinck, E.The ductus arteriosus in the preterm infant: histologic and clinical observations.J Pediatr 96, 88-93 (1980).
【非特許文献15】Gittenberger-de Groot, A.C., Strengers, J.L., Mentink, M., Poelmann, R.E. &Patterson, D.F. Histologic studies on normal and persistent ductus arteriosus inthe dog. J Am Coll Cardiol 6, 394-404 (1985).
【非特許文献16】Tada, T. et al. Human ductus arteriosus. A histological study on the relationbetween ductal maturation and gestational age. Acta Pathol Jpn 35, 23-34(1985).
【非特許文献17】Wong, S.T. et al. Adenylyl cyclase 3 mediates prostaglandin E(2)-inducedgrowth inhibition in arterial smooth muscle cells. J Biol Chem 276, 34206-12(2001).
【非特許文献18】Fujino, T. et al. Effects of the prostanoids on the proliferation or hypertrophy of cultured murine aortic smooth muscle cells. Br J Pharmacol 136, 530-9 (2002).
【非特許文献19】Bulin, C. et al. Differential effects of vasodilatory prostaglandins on focaladhesions, cytoskeletal architecture, and migration in human aortic smoothmuscle cells. Arterioscler Thromb Vasc Biol 25, 84-9 (2005).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヒアルロン酸の減少又は欠乏が伴う障害や疾患を治療することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、従来法に比べ、より生理的であり、副作用が少ない動脈管開存症治療法を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
生理活性を有する脂質メディエータは複数の細胞応答を誘発するが、その結果は刺激の時期及び期間によって変化する可能性がある。プロスタグランジンE(PGE)は血管拡張性の脂質メディエータであり、胎児における大動脈と肺動脈とのバイパス動脈である動脈管(DA)の開存性維持に主要な役割を果たす。しかしながら、矛盾するように思われるのだが、PGE特異的レセプターEP4の遺伝的破壊はマウス胎児においてDAを開存させた1。本明細書において、本発明者らは、PGEの連続的な刺激は、新生内膜クッションの形成に重要なヒアルロン酸産生を促進することを見出した。本発明者らは、アデノウイルスの媒介によるHAS2遺伝子導入が、未熟児ラット胎仔由来のDA移植片における内膜クッション形成に十分であることを見出した。HAS2をトランスフェクトしたDAの血管内腔は、開存性DAの治療に広く使われているPGH2シンターゼインヒビターであるインドメタシンの遅延型投与によりほぼ完全に閉塞された。従って、PGE-EP4により誘導されたシグナルは、DAの発達において、二重の必須の役割、すなわち、血管拡張及び内膜クッション形成という2つの事象に必須の役割を持つ。後者は妊娠後期における内腔狭小化につながり、その結果、出生時すぐに血管拡張性PGEが供給されなくなるとDAが完全に閉鎖する。これらの結果は、また、開存性DAの現在の治療法、すなわち、PGEシグナル伝達の抑制が、DAが完全に発達していない乳幼児に本当は悪影響を示す可能性があり、HA産生の誘導が代替治療戦略として役立つ可能性があることを意味している。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
【0010】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
(1)ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを含む、医薬組成物。
【0012】
(2)ヒアルロン酸シンターゼがヒアルロン酸シンターゼ2アイソフォームである(1)記載の医薬組成物。
【0013】
(3)ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAがベクターに組み込まれている(1)又は(2)記載の医薬組成物。
【0014】
(4)ベクターがアデノウイルスベクターである(3)記載の医薬組成物。
【0015】
(5)ヒアルロン酸の減少又は欠乏が伴う障害及び/又は疾患を治療及び/又は改善するために用いられる(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0016】
(6)ヒアルロン酸の減少又は欠乏が伴う障害及び/又は疾患が、動脈管開存症又は肌の老化である(5)記載の医薬組成物。
【0017】
(7)ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを含む、内膜肥厚促進剤。
【0018】
血管のように弾性を持つ組織を収縮させても、内側の接着が不十分であれば、また開いてしまう。これがまさに未熟児動脈管の特徴であり、従来の血管収縮薬が十分な効果を発揮できなかった理由と考えられる。本発明は、ヒアルロン酸の内膜肥厚作用・接着作用を利用する。本発明の医薬組成物を動脈管開存症治療剤として用いれば、血管収縮作用を有する従来の治療剤の副作用を避けることも可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の医薬組成物は、生体内で生理的に生じている現象を促進することを目指しているため、従来の治療剤に比べ、より生理的であり、副作用が少ないと考えられる。また、本発明の医薬組成物を動脈管開存症治療剤として用いる場合には、従来法で用いられた治療剤とは異なる作用機序を持つことから、従来法での不応例に対しても、効果が期待でき、従来法との併用が可能である。
【0020】
同様に、本発明の内膜肥厚促進剤は、生体内で生理的に生じている現象を促進することを目指しているため、生体への使用にあたっては、より生理的であり、副作用が少ないと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明は、ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを含む、医薬組成物を提供する。
【0023】
また、本発明は、ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを含む、内膜肥厚促進剤を提供する。
【0024】
ヒアルロン酸シンターゼ(HAS)は、ヒト、ブタ、イヌ、ウサギ、ラット、マウスなどの生物に由来するものを挙げることができ、治療の対象とする生物由来のものが好ましい。
【0025】
HASには、HAS1、HAS2及びHAS3の3つのアイソフォームがあることが知られており、いずれのアイソフォームでもよいが、HAS2が好ましい。ヒトHAS1、HAS2及びHAS3のDNA配列をそれぞれ配列番号1、3及び5に示す。ヒトHAS1、HAS2及びHAS3のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2、4及び6に示す。ラットHAS1、HAS2及びHAS3のDNA配列をそれぞれ配列番号7、9及び11に示す。ラットHAS1、HAS2及びHAS3のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号8、10及び12に示す。
【0026】
ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを含む医薬組成物び内膜肥厚促進剤は、遺伝子治療剤として用いることができる。
【0027】
遺伝子導入において、外来遺伝子は、通常、ベクターに包含されて標的細胞中に送達される。
【0028】
遺伝子治療に用いられる場合、ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAは、導入された外来遺伝子が発現するために適切な調節配列と作動可能に連結されるとよい。調節配列は、ベクターに対して内在性ものであっても、外来性のものであってもよい。調節配列としては、シグナル配列、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、選択マーカー、ポリA付加シグナル、リボゾーム結合部位、開始コドン、終止コドンなどを挙げることができる。さらに、ベクターは、レポーター遺伝子などを含んでもよい。レポーター遺伝子としては、β-ガラクトシダーゼ、GFP (green fluorescent protein)などを例示することができるが、これらに限定されることはない。
【0029】
ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAは、天然型DNAのみならず、修飾核酸(例えば、トリステル結合をもつ修飾核酸、メチルホスホネート結合をもつ修飾核酸、ホスホロチオエート結合をもつ修飾核酸、ホスホロジチオエート結合をもつ修飾核酸、ホスホロアミンデート結合をもつ修飾核酸などのリン酸結合部位を修飾した修飾核酸、α−アノマー型修飾核酸、ポリアミド核酸などの糖部を修飾した修飾核酸など)も含むものである。
【0030】
ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを患者の所望の部位に遺伝子導入することにより、ヒアルロン酸合成を促進し、その結果として、内膜肥厚を促進することができる。
【0031】
遺伝子治療において、外来遺伝子はベクターにより生体組織あるいは生体外の細胞中に送達される。ベクターは、ウイルスベクターと非ウイルスベクターに分類される。
【0032】
遺伝子治療に利用可能なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、センダイウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ワクシニアウイルスなどを例示することができ、アデノウイルスが好ましい。
【0033】
アデノウイルスは、Graham FL, Prevec L. Mol Biotechnol. 1995; 3:207-220に記載の方法に従って、調製することができる。
【0034】
遺伝子治療に利用可能な非ウイルスベクターとしては、DOPMA(Invitrogen社)、DOTAP(Biontec社)、DC-コレステロールなどのカチオン性脂質で形成されたリポソーム、ポリエチレンイミン、DEAE(diethylaminoethyl)デキストラン、ポリ-L-リジン、キトサンなどの正電荷高分子キャリアーなどを例示することができる。
【0035】
また、これらの脂質又はポリマーとDNAの複合体(リポプレックス又はポリプレックス)などを利用することもできる。
【0036】
さらに、裸のプラミスミドDNAを直接投与してもよい。プラスミドベクターとしては、pCAGGS(Gene, 108, 193-200 (1991))、pBK-CMV(Stratagene社)、pcDNA3.1、pZeoSV(Invitrogen社)などを例示することができる。
【0037】
遺伝子導入法としては、リン酸カルシウム共沈法、DEAE-デキストラン法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、遺伝子銃法などが挙げられる。
【0038】
さらに、ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを組み込んだベクターを導入した宿主細胞を遺伝子治療剤として利用することもできる。宿主としては、ビフィズス菌、乳酸菌、酵母、糸状菌などの他、治療の対象である疾患部位を含む組織から分離された細胞などを用いることができる。
【0039】
遺伝子治療に用いるDNAは、局所的または全身的に生体に投与される。生体への投与は、生体内にDNAを導入できる方法であればいかなる投与法によってもよく、例えば、カテーテルによる投与、注射などによるとよい。ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNA又はそれを含むベクターは直接体内に投与されてもよいし(in vivo法)、患者から細胞を取り出し、ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを細胞に導入した後、その細胞を体内に戻してもよい(ex vivo法)。
【0040】
ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNA又はそれを含むベクターを含有する医薬製剤は、医薬上許容できる担体を含んでもよい。担体としては、滅菌精製水、注射用水、ゴマ油、ダイズ油、トウモロコシ油などの溶剤、窒素、二酸化炭素などの不活性ガス、EDTA、チオグリコール酸などのキレート剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノールなどの保存剤、水素添加ヒマシ油、ポリソルベートなどの界面活性剤、ベンジルアルコール、クロロブタノールなどの無痛化剤、クエン酸、酢酸、リン酸のナトリウム塩、ホウ酸などの緩衝剤、CMC-Na、ポリビニルピロリドンなどの懸濁化剤などを使用するとよい。
【0041】
ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNA又はそれを含むベクターの投与量、投与の回数及び頻度は、患者の症状、年齢、体重、病巣の大きさなどにより適宜調製されるが、例えば、ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNA(外来遺伝子)を含むベクターをヒトに投与する場合、患者一人当り、1〜10 mg、好ましくは1〜3 mgの1回量で投与するとよい。投与されるベクター中に含有される外来遺伝子の量としては、患者一人当り、50〜500 mg、好ましくは100〜300 mgの1回量で投与するとよい。また、ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNA又はそれを含むベクターを導入した細胞をヒトに投与する場合には、患者一人当り1.0 x 106〜1.0 x 109個、好ましくは1.0 x 107〜1.0 x 108個の1回量で投与するとよい。上記の投与量のベクター又は細胞を、例えば、100〜1000 mlの生理食塩水とともに患者に投与するとよい。投与は、治療効果が認められるまで、適当な頻度で繰り返すとよい。
【0042】
動脈管開存症治療を目的とする生体への投与にあたっては、従来の動脈管開存症治療法で用いられているプロスタグランジン合成阻害剤(例えば、インドメタシン、メフェナム酸)の投与と併用するとより効果的である。この場合、プロスタグランジン合成阻害剤の投与量は、ヒトに投与する場合には、患児の生後時間に応じ次記の用量を12〜24時間間隔で、3回静脈内投与する。生後48時間未満:1回目0.2mg/kg、2回目0.1mg/kg、3回目0.1mg/kg。生後2〜7日未満:1回目0.2mg/kg、2回目0.2mg/kg、3回目0.2mg/kg。生後7日以上:1回目0.2mg/kg、2回目0.25mg/kg、3回目0.25mg/kg。
【0043】
本発明の内膜肥厚促進剤は、動脈管内膜、動脈内膜、血管内膜、子宮内膜、眼球内膜、皮膚細胞の内膜などの内膜の肥厚を促進することができる。
【0044】
本発明の内膜肥厚促進剤は、医薬品として、ヒト、その他の動物に投与してもよいし、実験用の試薬として用いてもよい。本発明の内膜肥厚促進剤は、単独で使用してもよいし、あるいは他の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明の内膜肥厚促進剤は、ヒアルロン酸の減少又は欠乏に伴う種々の障害又は疾患に利用できる。例えば、本発明の内膜肥厚促進剤は、動脈管開存症、肌の老化などの治療及び/又は改善に利用できる。
【0046】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明の範囲はこれらの実施例により限定されることはない。
【実施例1】
【0047】
方法
試薬
PGE2、sulprostone、butaprost、pCPT-cAMP、8-cCPT-2’-O-Me-cAMP、フォスコリンはSigma(St. Louis, MO)から得た。PGE1及びビオチン化HA結合タンパク質はCalbiochem(La Jolla, CA)から得た。HA、ヒアルロニダーゼ、PDGF-BB、インドメタシン及び10%緩衝化ホルマリンは和光純薬工業(大阪、日本)から得た。Cyto Quick, Mayer’s hematoxylin及びElastica-van Gieson染色は武藤化学株式会社(東京、日本)から得た。ラテックス標識HA結合タンパク質はLPIA Ace, 富士レビオ(東京、日本)から得た。TGFβはIBL株式会社(群馬、日本)から得た。ペルオキシダーゼブロッキング試薬及びストレプトアビジンペルオキシダーゼはDAKO Laboratoriesから得た。コラゲナーゼIIはWorthington biochemから得た。コラゲナーゼ/dispaseはRoche(Indianapolis, IN)から得た。フィブロネクチンはBD Bioscienceから得た。TaqMan Rodent GAPDHコントロール試薬キットはApplied Biosystems(Foster City, CA)から得た。
【0048】
動物及び組織
すべての動物は、American Physiologic Societyのガイドライン原理に応じて世話をした。実験は横浜市立大学医学部動物実験倫理委員会に認可された。ほとんどの実験について、記録された妊娠母体から得たWistarラット胎仔を用いた。
【0049】
定量的逆転写酵素(RT)-PCR
Wistarラット胎仔の同腹仔のうちの一匹のプールした組織から全RNAを単離した。cDNAの産生及びRT-PCR分析は既報42のように行った。EP及びHASアイソフォームのラットヌクレオチド配列を基に、PCR増幅のプライマーを設計した(補足データ1)。定量的RT-PCR分析については、各鋳型を少なくとも3回試験して、アッセイの再現性を確認した。各遺伝子の存在量は、TaqMan Rodent GAPDH対照試薬キット(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いるGAPDHと比較して決定した。
【0050】
細胞培養
初期培養における血管平滑筋細胞(VSMC)は、胎生21日目のWistarラット胎仔のDA及び大動脈から得た。組織を刻み、800μLのコラゲナーゼ/dispase酵素混合物(組成:補足データ2)に移した。消化は37℃で15分間行った。その後、細胞懸濁液を遠心分離し、培地をコラゲナーゼII酵素混合物(組成:補足データ2)に変更した。37℃で12分間インキュベーションした後、細胞懸濁液を37℃で加湿5% CO2及び95%周囲混合空気中で35 mm Poly-L-Lysin(Sigma)コート皿中の成長培地混合物(組成:補足データ2)に移した。4〜6代のコンフルエントな細胞を実験に用いた。細胞の99%以上がα平滑筋アクチンに陽性であり、典型的な”hill-and-valley”の形態を示した。
【0051】
ヒアルロン酸の定量
細胞培養上清中のヒアルロン酸の量は、bovine cartilage(LPIA Ace, 富士レビオ、東京、日本)から得たラテックス標識HA結合タンパク質を用い、HAの特異的相互作用に基づく、ラテックス凝集法で測定した。HITACHI 7070分析システム(日立製作所、東京、日本)で、800 nmの波長にて、600μLアリコ−トの条件化した細胞培養培地を用い、製造者の指示に従い、ヒアルロン酸を2回定量した。
【0052】
SMC遊走アッセイ
遊走アッセイは、24ウェルTranswell培養インサート及びポリカーボネート膜(8-μm孔:Corning Inc., Acton, MA)を用いて行った。膜を75μlのフィブロネクチン(50μg/ml: BD Bioscience, San Jose, CA)で16時間コーティングし、細胞懸濁前にDMEMで洗浄した。DA SMCをトリプシン-EDTAで回収し、血清不含のDMEMに再懸濁し、カウントし、インサート中に1 x 105 cells/100μlの濃度で分配した。低い方のチャンバーに薬剤を添加する前に、細胞を1時間血清不含のDMEM中で定着させた。基底条件として、低い方のチャンバーを600 μlの血清不含のDMEMで充填した。その後、SMCを4時間37℃/5% CO2でインサートの膜の下面に遊走させた。実験の最後に、細胞を10%緩衝化ホルマリン(和光純薬工業、大阪、日本)中で固定した。膜の上表面上の細胞を綿棒で機械的に取り除き、膜の下表面上に遊走した細胞をCyto Quick(武藤化学株式会社、東京、日本)で染色し、マニュアルに従い、Image Jソフトウェアを用い、顕微鏡下で、3つの異なる領域(0.5 mm2/領域)からカウントした。
【0053】
組織染色及び免疫組織化学
DA組織を含むパラフィン包埋ブロックを4μm厚の切片に切断し、3-アミノプロピルトリエトキシシランコーティングスライドグラス上に置いた。内膜クッション形成の境界線を決定するために、製造者(武藤化学株式会社、東京、日本)が推奨するように、組織切片をElastica-van Gieson染色で染色した。HA染色については、標本を脱パラフィン化し、再水和させ、5分間ペルオキシダーゼブロッキング試薬(DAKO Laboratories)中でインキュベートして、内在性ペルオキシダーゼを不活性化した。その後、組織切片をPBS中ですすぎ、HA結合タンパク質(Calbiochem; 8μg/ml)とともに室温で2時間インキュベートした。HA結合タンパク質とともにインキュベーションした後、スライドをPBS中で洗浄し、続いて、ストレプトアビジンペルオキシダーゼ及びDAB色素原基質溶液(ニチレイ、東京、日本)とともに室温で30分間インキュベートした。スライドをMayer’s hematoxylinで対比染色し、脱水和し、カウントした。
【0054】
器官培養
DA及び大動脈弓動脈を含む胎仔動脈を胸腔から取り除いた。動脈を取り囲んでいる接着性接合組織を注意深く除去し、その後、セグメントに2時間加湿5% CO2及び95%周囲混合空気中37℃で1.2 x 107 pfu/mLのHAS2アデノウイルス30,31又はGFPアデノウイルスを0.5% FCS含有DMEM中で感染させた。感染後、セグメントを1週間まで培養し、10%緩衝化ホルマリン中に固定し、パラフィン中に包埋した。DAの真中部分の切片化したセグメントを免疫組織化学的に分析した。Win Roof ver5.0ソフトウェア(Mitani 社、東京、日本)を用いて、形態計測分析を行った。内膜クッション形成を([新生内膜領域]/[内側領域])x100%と定義した。少なくとも3つの切片の平均を各組織についての値として用いた。
【0055】
統計的分析
データは、独立した実験の平均値±s.d.である。統計分析は、独立スチューデントのt検定又はウェルチ補正付き独立t検定により2つのグループ間について、また、一方向性の分散分析に続くStudent-Newmans-Keulの多重比較検定により複数のグループ間について行った。p<0.05の値は有意差有りと見なす。
【0056】
結果
未熟児ラットにおける内膜クッション形成の欠乏及びHA合成の減少
最初に、我々は、ラットDAにおける内膜クッション形成及びHA沈着の発生的な変化を調べた(図1)。未熟児DAは、胎生19日目では内膜クッション形成が貧弱であり、わずかなヒアルロン酸の沈着を示した。成熟児DAにおいては、胎生21日目で、内膜クッション形成が見られるようになり、HA沈着も増加した。出生後、血管内腔は、HAの厚い沈着物を含む内膜クッションにより充填され、DAの完全な閉塞がもたらされた。
【0057】
PGE-PK4シグナル伝達はDAにおけるHA合成を時間及び濃度依存的に増加させる
HAは内膜クッションの重要な成分であり、HAに富むマトリックスは細胞遊走及び増殖に必須である23,24から、我々はDAでのHA産生におけるPGE-cAMP-PKAシグナル伝達の役割を調べた。DA由来であるが、大動脈由来ではない培養SMCにおいて、PGE1(10-6M)及びPGE2(10-6M)は、48時間後に測定したとき、培養培地中へのHAの分泌を強力に増加させた(図2a)。TGFβ及びPDGF-BBはHA産生を刺激することが知られている25,26が、それらの効果は、PGE-EP4活性化のHA産生刺激と比べれば、DA SMCではずっと弱い。
我々は、さらに、DAでのHA産生に対するPGE活性化の下流シグナルの効果を調べた。フォルスコリンは細胞内cAMPを増加させるアデニリルシクラーゼ活性化剤であるが、これは10-5M濃度でHA産生を10倍増加させた(データは示さず)。cAMP依存的プロテインキナーゼA(PKA)活性化剤であるpCPT-cAMPは、100μM濃度でHA産生を有意に増加させた(図2b)。反対に、exchange-protein-activated-by-cAMP(Epac)の活性化剤である8-cCPT-2’-O-Me-cAMPは、50μM濃度でHA産生を誘導しなかった。これらのデータは、PGEシグナル伝達が、おそらく、cAMP-PKA経路の活性化を通して、DAでのHA合成に主要な役割を果たすことを示唆している。
【0058】
短期的PGE刺激はSMC遊走を抑制するが、長期的PGE刺激はHA誘導を介してSMC遊走を促進する
血管中位から内皮層へのSMC遊走は新生内膜クッション形成中の重要な血管再構築プロセスである12,27から、我々は、改良Boyden chamber法を用いてDA SMC遊走に対するPGE-EP4-cAMP-PKAシグナル伝達の効果を調べた。PGE2のようなcAMP起動剤はSMC遊走を抑制することを示す既報の研究19,28に従い、我々は、培養DA SMCをPGE1、フォスコリン又はPKA活性化剤であるpCPT-cAMPに短時間(4時間程度)さらしたところ、血管SMC遊走の強力な刺激剤であるPDGF-BB29により誘導されたSMC遊走を部分的ではあるが、有意に抑制したことを見出した(図3a)。PDGF-BBにより増強される遊走の同様な反転が、PGE1、フォスコリン又はPKA活性化剤であるpCPT-cAMPによる処理後に観察された。PDGF-BBの不存在下で、pCPT-cAMPの場合を除き、これらの薬剤のSMC遊走に対する抑制効果は見られなかった。これらのデータは、PGE-cAMP-PKAシグナル伝達がDA SMC遊走に対する急性の抑制応答を発揮しないことを示唆している。
PDGF-BB刺激無しに、SMCをPGE刺激に長期間(2〜5日)さらすと、SMC遊走が誘導された。遊走の増加には、培養培地中のHA含有量の顕著な増加が伴った。遊走の増強は培地中に分泌されたHA濃度と比例していた。その後、我々は、PGE刺激によるHA産生の増加がDA SMC遊走の原因であるかどうかを調べた。PGE刺激による遊走の増強は、培養培地を毎日交換すること、あるいはヒアルロニダーゼを培地に添加する(0.05 mg/ml)ことによって、妨げられた(図3b)。反対に、DA SMC遊走は、PGE刺激の不存在下で、HA添加(200 ng/ml)により促進された。これらの知見は、長期的なPGE刺激がHA合成の増加を介してSMC遊走を誘導したことを示している。
【0059】
アデノウイルスの媒介によるHAS2遺伝子導入は未熟児ラット由来のDAにおける内膜クッション形成を促進する
DAでのHA誘導が器官培養における内膜クッション形成を促進するのに十分であるかどうかを試験するために、我々は、既報のアデノウイルスベクター30,31を用いて、未熟児ラットDA組織中へHAS2遺伝子導入を行った。HAS2アデノウイルスを感染させた未熟児DAは、対照の緑色蛍光タンパク質(GFP)アデノウイルスを感染させたものよりも、より厚い内膜クッションを生じ、HA沈着も多かった(図4a)。HAS2導入DAでは、GFP導入DAより、内膜クッションの厚さはより厚く(図4b)、血管内腔の領域はより小さかった(図4c)。さらに、HAS2又はGFPアデノウイルス感染の72時間後にインドメタシン(10-5M)を投与したところ、インドメタシン投与により、血管内腔の領域がHAS2感染DAではより小さくなったが、内膜クッションの厚さは影響を受けなかった(図4b及び4c)。血管内腔におけるインドメタシンによる誘導の減少は、内在性PGEが器官培養におけるDAの拡大に寄与することを示している。
【0060】
考察
PGEのよく知られている血管拡張作用に加え、我々の知見は、妊娠期間中のEP4経由の長期的PGE刺激がDAの血管再構築を誘導し、新生内膜クッション形成及び血管内腔の構造的閉塞を促進することを示している。DAのクッション組織の形成には、EP4-cAMP-PKA経路の活性化が関与し、その結果、HAS2遺伝子の転写及びHA産生が増加する。興味深いことに、HAS2ノックアウトマウスにおける主要な欠陥は、心臓弁を生じる類似の内膜下クッションの形成が不全となることである32。妊娠後期の間はずっとEP4発現が高いので、EP4-cAMP-PKA経路は後期妊娠期間中より活性が高く、DAでの内膜クッションの形成を促進する。我々は、出生時に、成熟乳幼児において、内膜クッション形成が十分に生じているが、その完全な閉塞はEP4の相殺作用、すなわち、血管拡張作用によって妨げられるのかもしれないと提唱する。出生時にEP4刺激を取り除くと、循環するPGE2が急速に減少するので、DAに対する血管拡張作用がなくなり、DAが急速かつ完全に閉塞するのだろう。異なる時期の胎児におけるPGE刺激の二重の結果は統合され、出生後のDA閉塞が起る(図6)。
【0061】
我々のデータが、DAでの内膜クッション形成の多くの側面を共有するプロセスである13,27,35、in vivoでの血管損傷後の新生内膜病変の形成をcAMPが減少させることを実証した既報の研究33,34と矛盾するように見えると言う人がいるかもしれない。この違いは、他の血管と比較して、DAの特異的な性格によるのかもしれない。他の研究でも、HAがSMC遊走を刺激することが示されている36。我々のデータは、cAMPの上昇に対する細胞応答がある種の細胞タイプにおいて刺激の時期及び期間によって変化する可能性を暗に意味している。
【0062】
より重要なことは、本研究は、未熟児乳幼児におけるPDAを治療するためにPGE抑制を用いるという現行の薬理学的戦略には改良が必要かもしれないことを暗に意味することである。ヒトの未熟児乳幼児におけるPDAにもDA 内膜クッションの不十分な発達が伴う37。COX-2インヒビターによる長期的なPGE抑制は、DAの解剖学的再構築を妨げているのかもしれない。事実、妊娠中の母親がインドメタシンを服用していると、PDAを発症する乳幼児を出産する頻度が高いことが知られている9,10,38。PDA治療のためにCOX-2インヒビターを長期間使っていると、内膜クッション形成に強い悪影響が出るかもしれない。あるいはまた、アデノウイルス媒介HAS2遺伝子導入から得られた我々の結果は、内膜クッション形成がHAS活性化によってのみ発生する可能性があることを示唆している。我々の研究は、HAS活性化が、少なくともラット器官培養において、内膜クッションの形成を促進できることを実証し、このことは、循環するPGE2が劇的に減少する出生後でさえも、HASが媒介する内膜クッションの発達が達成できるかもしれないことを暗に意味している。実際、HAは、フィブロネクチンやラミニン39-41に加え、DAにおける内膜クッションの細胞外マトリックスの顕著な成分である。HA誘導が、適切に組織化された細胞外成分及び細胞成分とともに成熟した内膜クッションを形成するのに十分であるかどうかを決定することが残っている。にもかかわらず、本研究は、PGE抑制と組み合わせたHAS活性化が特に未熟児乳幼児におけるPDAを治療するための有効な戦略である可能性を示唆している。
【0063】
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【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、生体内に内膜肥厚をもたらすことが可能となった。本発明の内膜肥厚促進剤は、動脈開存症、肌の老化などに利用できる。
【0065】
また、本発明により、動脈管開存症の新たな治療戦略が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】組織学的分析及びDAにおけるEPアイソフォームの発現それぞれ、内膜クッション及びHA沈着を可視化するために、Elastica-van Gieson染色及びHA結合タンパク質で染色した胎生19日目(上)、21日目(真中)及び出生日(下)に発達したラットDAの画像。真中のバネルは4倍の高拡大率のDAの内膜層を示す。スケールバーは100μm。
【図2】PGE-PKA経路によるDAにおけるHA産生の刺激(a,b)種々の薬剤で48時間刺激した後の培養培地中へのHA分泌。PGE刺激はHA産生を刺激する(a)。cAMP依存的プロテインキナーゼA(PKA)活性化剤であるpCPT-cAMPはHA産生を有意に増加させたが、反対に、exchange-protein-activated-by-cAMP(Epac)の活性化剤である8-cCPT-2’-O-Me-cAMPはHA産生を誘導しなかった(b)。
【図3】(a)PDGF-BB(10 ng/ml)の有又は無で種々の薬剤への短時間(4時間程度)曝露に応答するDA SMC遊走。PGE-EP4-PKAシグナル伝達は、遊走するDA SMCに急性の抑制効果を及ぼす。(b) PGE刺激とともに48時間インキュベーションしたことによる、遊走増加に対するHAの効果。PGE刺激に誘導された遊走は、培養培地を毎日交換することあるいはヒアルロニダーゼ(0.05 mg/ml)を培地に添加することによって、妨げられた。値は平均値±s.d.で表す。**及び***は、それぞれ、対照(血清不含)と比較し、p<0.01、及びp<0.001を示す。
【図4】HAS2アデノウイルス感染は未熟児ラットDAにおける内膜クッション形成及びHA沈着を促進する(a)対照GFPアデノウイルス又はHAS2アデノウイルスに感染したDAをElastica-van Gieson染色及びHA結合タンパク質で染色し、内膜クッション及びHA沈着をそれぞれ可視化した。真中のパネルは高拡大率のDAの内膜層を示す。右の2つのパネルはその後のインドメタシン(Ind, 10-5 M)投与の効果を示す。(b)対照GFPアデノウイルス又はHAS2アデノウイルスに感染したDAにおける内膜クッションの厚さ。内膜クッションの厚さを全平滑筋層の領域に対する内膜クッションの領域の比として表した。(c)血管内腔の領域。値は平均値±s.d.で表す。スケールバーは100μm。
【図5】血管拡張おける長期的PGE-PKA刺激の二重の役割及びDAにおける管腔狭小化。
【配列表フリーテキスト】
【0067】
<配列番号1>
配列番号1は、ヒト由来HAS1のDNA配列を示す。(NM_001523)
<配列番号2>
配列番号2は、ヒト由来HAS1のアミノ酸配列を示す。NP_001514(NM_005328)
<配列番号3>
配列番号3は、ヒト由来HAS2のDNA配列を示す。(NM_005328)
<配列番号4>
配列番号4は、ヒト由来HAS2のアミノ酸配列を示す。(NP_005319)
<配列番号5>
配列番号5は、ヒト由来HAS3のDNA配列を示す。(NM_005329)
<配列番号6>
配列番号6は、ヒト由来HAS3のアミノ酸配列を示す。(NP_005320)
<配列番号7>
配列番号7は、ラット由来HAS1のDNA配列を示す。(NM_172323)
<配列番号8>
配列番号8は、ラット由来HAS1のアミノ酸配列を示す。(NP_758826)
<配列番号9>
配列番号9は、ラット由来HAS2のDNA配列を示す。(NM_013153。)
<配列番号10>
配列番号10は、ラット由来HAS2のアミノ酸配列を示す。(NP_037285)
<配列番号11>
配列番号11は、ラット由来HAS3のDNA配列を示す。(NM_172319)
<配列番号12>
配列番号12は、ラット由来HAS3のアミノ酸配列を示す。(NP_758822)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを含む、医薬組成物。
【請求項2】
ヒアルロン酸シンターゼがヒアルロン酸シンターゼ2アイソフォームである請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAがベクターに組み込まれている請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
ベクターがアデノウイルスベクターである請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
ヒアルロン酸の減少又は欠乏が伴う障害及び/又は疾患を治療及び/又は改善するために用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
ヒアルロン酸の減少又は欠乏が伴う障害及び/又は疾患が、動脈管開存症又は肌の老化である請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
ヒアルロン酸シンターゼをコードするDNAを含む、内膜肥厚促進剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−106698(P2007−106698A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299288(P2005−299288)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【Fターム(参考)】