説明

ヒアルロン酸産生促進因子

【課題】老化防止又は改善用、シワ改善用に好適な皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】表皮又は真皮におけるヒアルロン酸産生促進作用を有する成分、取り分け、高分子ヒアルロン酸産生量を増加させる成分としてトクサ科トクサ属に属する植物より得られる抽出物を含有する皮膚外用剤。また、ヒアルロン酸産生促進因子は、表皮又は表皮を介する真皮におけるヒアルロン酸産生促進作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化防止又は改善用、シワ形成の予防又は改善用などに好適な皮膚外用剤に関し、詳しくは、ヒアルロン酸産生促進因子を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シワ、シミ、くすみ、たるみ等の皮膚症状の悪化は、遺伝及び環境的要因により引き起こされる老化の兆候として見た目にも非常に分かり易い皮膚外観の質的な低下である。この様な皮膚症状の悪化は、生まれながらに規定されている遺伝的要因に、加齢、生活習慣、ストレス、活性酸素等の内的環境要因、さらには、紫外線暴露や乾燥等の外的環境要因による影響が大きく寄与し、皮膚老化現象が顕著になることが知られている。特に、シワ、たるみ等の皮膚立体形状の変化は、自分自身及び第三者に肉眼により識別可能な皮膚外観の質的な低下であり、この様な皮膚の質的低下より自身の肌を守ることに対する中高年齢者の関心は非常に高く、肌の美観を美しく保つために様々な手段の開発が求められている。
【0003】
ヒアルロン酸は、皮膚(表皮及び真皮)、軟骨、関節液などに存在する高分子多糖類であり、全体の約50%が皮膚に存在する。ヒアルロン酸は、優れた保水力を有し、皮膚組織等においては、細胞外空間の構造維持、細胞への栄養供給物の拡散と老廃物の排出、さらには、細胞表面レセプタ−と相互作用し細胞分化などのシグナル伝達物質として働くことが知られている。また、ヒアルロン酸は、皮膚の弾力性又は粘弾性、保水性に深く関係し、加齢と共に減少することが知られている。ヒアルロン酸の減少は、水分が足りない乾燥肌となる原因とされ、皮膚のハリが衰え、シワやたるみなどの皮膚老化現象が起こり易い肌に繋がる。このため、皮膚内における合成及び分解により制御されるヒアルロン酸量を適切に維持することにより、うるおいやハリのある肌を保つために、外部よりヒアルロン酸を補給する方法(例えば、非特許文献1を参照)、更には、ヒアルロン酸産生促進(例えば、特許文献1を参照)又は分解抑制(例えば、特許文献2を参照)等の様々な方法により生体内のヒアルロン酸産生量を増加させる試みがなされているが、十分な効果が得られるには至っていない。
【0004】
ヒアルロン酸は、皮膚においては角層、表皮及び真皮中に含まれ、水分維持、細胞の生存及び生理機能等に深く関与していることが明らかにされている。ヒトのヒアルロン酸合成に関与する酵素としては、3種類のヒアルロン酸合成酵素(HAS1、HAS2、HAS3)が存在することが報告されている。また、前記のヒアルロン酸合成酵素により産生されるヒアルロン酸は、1000Da程度〜1000万Daにおよぶ多様な分子量をとる。この様なヒアルロン酸は、大まかには低分子量ヒアルロン酸(10Da〜)及び高分子ヒアルロン酸(〜10Da)に分類され、その分子量の違いにより多様な生物学的又は物理学的な性質を示すことが知られている。また、高分子ヒアルロン酸は、血管新生抑制作用、抗炎症作用、免疫抑制作用等を有するのに対し、低分子量ヒアルロン酸には、血管新生促進作用、炎症亢進、抗アポト−シス作用等(例えば、非特許文献2を参照)が存することが知られている。ヒアルロン酸の分子量の違いは、保水力、粘弾性等の物理的な性質に影響し、特に、保湿力の高い高分子ヒアルロン酸は、皮膚のハリが衰え、シワやたるみなどの皮膚老化現象に深く関与する。また、表皮又は真皮中の高分子ヒアルロン酸は、主にHAS2により産生され、HAS2遺伝子発現を活性化するHAS2遺伝子活性化剤としては、(−)−ムスコン等が既に知られている(例えば、非特許文献3、非特許文献4を参照)が、前記のHAS2遺伝子発現活性化剤は、何れも真皮に作用することにより真皮中におけるヒアルロン酸産生を促進する成分である。このため、表皮におけるヒアルロン酸産生を促進する因子、又は、表皮細胞より放出された因子による真皮におけるヒアルロン酸の産生を促進する因子、取り分け、高分子ヒアルロン酸産生を促進する因子は、全く知られていない。特に、表皮細胞は真皮細胞に対して働きかける現象は殆ど知られておらず、特定の成分が表皮細胞に働きかけ、真皮細胞におけるヒアルロン酸産生を促す刺激因子を放出することも全く知られていない。また、科学的な認識としては、表皮細胞は、バリア機能を司り、真皮への物質の到達を防ぐのが本質であると考えられる背景も厳然として存在する。
【0005】
トクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物には、真皮におけるヒアルロン酸産生促進作用(例えば、特許文献1を参照)が存することが報告されている。しかしながら、トクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物に、表皮細胞におけるヒアルロン酸産生量を増加させる作用が存すること、特に、高分子ヒアルロン酸合成に関与するHAS2遺伝子発現を活性化することにより高分子ヒアルロン酸産生量を増加させる作用が存することは知られていなかった。加えて、当該植物抽出物に、間接的な作用により、言い換えれば、表皮細胞への作用により真皮中のヒアルロン酸産生量を増加させること、特に、表皮細胞への作用により真皮細胞におけるHAS2遺伝子発現促進し高分子ヒアルロン酸産生量を増加させることは全く知られていなかった。このため、表皮細胞におけるHAS2遺伝子発現を促進させヒアルロン酸産生量を増加させる成分、表皮細胞を介した真皮細胞のHAS2遺伝子発現を促進させることにより真皮におけるヒアルロン酸産生を促進することが出来る成分は、新たな作用機序を有するヒアルロン酸産生を促進する因子、取り分け、高分子ヒアルロン酸産生を促進する因子として、抗老化老化防止又は改善剤、又は、シワ予防又は改善剤として期待することが出来る。尚、本願においては、ヒアルロン酸なる言葉は、ヒアルロン酸及び/又はその塩を示す語であり、塩も包含することを特記する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−339142号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】老化防止、美白、保湿化粧料の開発技術、鈴木正人 監修、シ−エムシ−出版
【非特許文献2】井上紳太郎、佐用哲也、生化学、第77巻、第99号、P1152−1164(2005)
【非特許文献3】Sakai S. et al.,Skin Pharmacol. Appl. Skin Physiol.,12, 276−283(1999)
【非特許文献4】Sayo T. et al.,Skin Pharmacol Physiol,17,77−83(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な状況下において為されたものであり、表皮又は表皮を介する真皮におけるヒアルロン酸産生を促進するヒアルロン酸産生促進因子、並びに、当該成分を含有する皮膚外用剤を提供し、老化防止又は改善用、シワ形成の予防又は改善用に好適な皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【0009】
この様な状況に鑑みて、本発明者等は、老化防止又は改善用、シワ改善用に好適な、皮膚外用剤を求め鋭意努力を重ねた結果、従来の真皮におけるヒアルロン酸産生促進剤とは異なる表皮又は表皮を介し真皮におけるヒアルロン酸産生促進作用を有するヒアルロン酸産生促進因子を見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下に示す通りである。
<1> トクサ科トクサ属に属する植物より得られる抽出物よりなる、ヒアルロン酸産生促進因子。
<2> 前記トクサ科トクサ属に属する植物が、トクサ科トクサ属スギナであることを特徴とする、<1>に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
<3> 前記ヒアルロン酸産生促進作用が、表皮又は表皮を介する真皮におけるヒアルロン酸産生促進作用であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
<4> 前記ヒアルロン酸産生促進作用が、総ヒアルロン酸産生量及び/又はヒアルロン酸合成酵素(HAS)の遺伝子発現量の変化によることを特徴とする、<1>〜<3>の何れか一項に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
<5> 前記ヒアルロン酸産生促進因子により産生されるヒアルロン酸が、高分子ヒアルロン酸であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一項に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
<6> 前記ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現量の変化が、ヒアルロン酸産成酵素2(HAS2)mRNAの発現量の変化であることを特徴とする、<5>に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
<7> <1>〜<6>に記載のヒアルロン酸産生促進因子を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<8> <1>〜<6>に記載のヒアルロン酸産生促進因子を、皮膚外用剤全量に対し0.00001質量%〜20質量%含有することを特徴とする、<7>に記載の皮膚外用剤。
<9> 油中水乳化剤形に好ましい成分を含有し、油中水乳化剤形であることを特徴とする、<8>又は<9>に記載の皮膚外用剤。
<10> 老化防止又は改善用、又は、シワ予防又は改善用であることを特徴とする、<7>〜<9>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<11> 化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<7>〜<10>に記載の皮膚外用剤。
<12> 更に、老化防止成分乃至は改善成分を含んでも良い形態において、老化防止又は改善作用、シワ形成の予防又は改善作用に優れる成分を含有することを特徴とする、<7>〜<11>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<13> 老化防止又は改善用、シワ改善用の化粧料(但し、医薬部外品を含む)の製造方法であって、トクサ科トクサ属に属する植物より得られる抽出物の表皮又は表皮を介する真皮における高分子ヒアルロン酸産生促進作用を計測し、これらの度合いの大小を指標として、それらの作用が大きいものを選択し化粧料に配合することを特徴とする、化粧料の製造方法。
<14> <13>に記載の化粧料の製造方法において、高分子ヒアルロン酸産生促進作用を、表皮又は表皮を介する真皮におけるヒアルロン酸産生促進作用により効果を発揮する植物抽出物を選択することを特徴とする、化粧料の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物の表皮細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を示す図である。
【図2】本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物の表皮細胞を介する真皮細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を示す図である。
【図3】本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物の表皮細胞におけるヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)mRNA発現促進作用を示す図である。
【図4】ホ発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物の表皮細胞を介する真皮細胞におけるヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)mRNA発現促進作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明のヒアルロン酸産生促進因子>
本発明の皮膚外用剤は、トクサ科トクサ属に属する植物より得られる抽出物よりなるヒアルロン酸産生促進因子を含有することを特徴とする。ヒアルロン酸は、皮膚(表皮又は真皮)に存在する高分子多糖類であり、皮膚の弾力性又は粘弾性、保水性に深く関与する。また、ヒアルロン酸は加齢と共に減少するため、皮膚のハリの衰え、シワやたるみ等の皮膚老化現象に深く関係している。ヒトのヒアルロン酸合成に関与する酵素としては、3種類のヒアルロン酸合成酵素(HAS1、HAS2、HAS3)が存在することが報告されている。ヒアルロン酸合成酵素の内、HAS2は、優れた保水力を有する高分子ヒアルロン酸合成に深く関与し、皮膚のハリが衰え、シワやたるみなどの皮膚老化現象に大きな影響を与える。本発明のヒアルロン酸産生促進因子は、従来の真皮細胞に直接的に作用することにより真皮中のヒアルロン酸産生を促進するヒアルロン酸産生促進剤とは異なり、表皮中のヒアルロン酸産生量を増加させる、又は、表皮細胞を介し真皮細胞に作用することにより真皮中のヒアルロン酸産生を促進する作用を有する成分を意味する。本発明のヒアルロン酸産生促進因子としては、表皮細胞に直接的に働きかけ表皮細胞のヒアルロン酸産生量を増加させる成分、又は、表皮細胞に働きかけることにより生じるサイトカイン等の情報伝達物質を介し真皮細胞へ間接的に作用し真皮細胞のヒアルロン酸量を増加させる作用を有する成分であれば、特段の限定なく適応することが出来る。前記の表皮細胞又は表皮細胞を介し真皮細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を有する成分の内、より好ましいものとしては、表皮又は真皮中において高分子ヒアルロン酸産生を促進する成分が好適に例示出来る。また、高分子ヒアルロン酸産生量は、HAS2により制御されているため、HAS2を活性化する成分であれば、前記の高分子ヒアルロン酸産生促進因子として特段の限定なく適応することが出来る。これらの内、より好ましいものとしては、HAS2mRNA発現量を増加させる作用を有する成分が好ましい。
【0012】
前記の表皮細胞及び/又は表皮細胞を介する真皮細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を有する成分としては、具体的には、後述する「ヒアルロン酸産生促進作用評価」においてヒアルロン酸産生促進作用を示す成分が好適に例示出来る。また、表皮細胞又は表皮細胞を介した真皮細胞を利用した「ヒアルロン酸産生促進作用評価」において、表皮細胞又は真皮細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を有する成分とは、被験物質無処置群(コントロ−ル群)に比較し、総ヒアルロン酸産生量が増加している成分が好適に例示出来、より好ましくは、統計的な有意差を持って総ヒアルロン酸産生量が増加している成分が好ましい。また、前記のヒアルロン酸産生促進剤の内、より好ましいものとしては、「高分子ヒアルロン酸産生促進作用評価」において、表皮又は表皮を介する真皮における作用により、表皮細胞又は真皮細胞における高分子ヒアルロン酸産生促進作用を示す成分が好適に例示出来る。表皮細胞又は真皮細胞において高分子ヒアルロン酸産生促進作用を有する成分とは、被験物質無処置群(コントロ−ル群)に比較し、ヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)mRNA発現量が増加している成分が好適に例示出来、より好ましくは、統計的な有意差を持ってHAS2mRNA発現量が増加している成分が好適に例示出来る。本発明のヒアルロン酸産生促進因子は、表皮細胞に直接的に働きかけ表皮中におけるヒアロン酸産生量、取り分け、高分子ヒアルロン酸産生量を増加させる作用、又は、表皮細胞に働きかけることにより生じるサイトカイン等の情報伝達物質を介し真皮細胞へ間接的に作用し真皮細胞のヒアルロン酸産生量、取り分け、高分子ヒアルロン酸産生量を増加させる作用を有するため、従来のヒアルロン酸産生促進剤とは全く異なる作用機序により表皮又は真皮中におけるヒアルロン酸産生量を増加させる。また、本発明のヒアルロン酸産生促進因子は、表皮細胞又は表皮細胞を介し真皮細胞におけるHAS2mRNA発現量を増加させる作用を有するため、表皮又は真皮細胞における高分子ヒアルロン酸産生量を増加させる。表皮又は真皮細胞における高分子ヒアルロン酸は、主にHAS2により産生が制御されている。
【0013】
本発明のヒアルロン酸産生促進因子のヒアルロン酸産生促進作用を評価する方法としては、細胞中のヒアルロン酸、取り分け、表皮細胞又は真皮細胞における総ヒアルロン酸量を評価出来る方法であれば、特段の限定なく適応することが出来る。一般的に、生体中の微量成分の測定には、抗原抗体反応の特性を利用し、更に、放射性同位元素、結合タンパク質、或いは、酵素反応を用いた生化学的な測定方法が知られており、本発明の表皮又は真皮中におけるヒアルロン酸量の測定に付いてもこの様な生物化学的な測定方法を利用することが出来る。また、細胞中における生物化学的測定法以外のヒアルロン酸測定方法としては、高速液体クロマトグラフィ−による測定(HPLC法)、カルバゾ−ル硫酸法等が存するが、感度、測定の簡便性等より生物化学的な測定方法が好ましい。本発明の表皮又は真皮中のヒアルロン酸を測定する生物化学的な測定方法としては、例えば、特開 2004−208693号公報に記載されている様に、低分子量化させたヒアルロン酸ナトリウムにヘモシアニン、ホスハチジルエタノ−ルアミン又はホスファチジルセリンを導入して形成される共有結合体を動物に免疫して得られるモノクロ−ナル抗体を用い、競合測定方法及びサンドイッチ測定法等により標識化合物を定量するヒアルロン酸量の定量方法を好適に例示することが出来る。標識化合物としては、蛍光物質、化学発光化合物等が存し、蛍光物質の場合には、適当な波長の励起光の照射により生じる蛍光量を光電子倍増管により定量することが出来るし、化学発光物質の場合には、例えば、アクリジニウムエステルのアルカリ溶液を加えることにより生じる発光量を光電子倍増管により定量することが出来る。また、標識化合物が酵素の場合には、適当な基質を反応させることにより酵素活性を吸光度(吸光度測定法)、蛍光量(蛍光量測定法)又は発光量(化学発光測定法)により測定出来る。これ以外のヒアルロン酸産生量の測定方法としては、例えば、WO2005114186号公報に記載されている様に、ヒアルロン酸バインディングプロテイン(HABP)に対するモノクロ−ナルを予めラテックス粒子等に感作させ、そこにヒアルロン酸とHABPとの複合体を反応させ、該反応により生じた凝集物による光学的変化を測定(逆受身凝集反応法、免疫比ろう法、免疫比濁法等)し、該測定値よりヒアルロン酸量を算出する測定方法が好適に例示出来る。勿論、標識化抗体を用いて、該標識を指標に検知することも出来る。該標識としては、ペルオキシダ−ゼ、蛍光標識、放射性同位元素等による標識などが好適に例示出来る。HABPとしては、プロテオグリカン、リンクプロテイン、ヒアルロネクチン及びCD44(細胞膜貫通型蛋白)等の様にヒアルロン酸と結合する性質を有する蛋白質であれば、特に限定されない。また、抗HABP抗体としては、モノクロ−ナル抗体であってもポリクロ−ナル抗体の何れでもよいが、単一エピト−プのアフィニティ−精製をしたポリクロ−ナル抗体又はモノクロ−ナル抗体が好ましく、効率よくヒアルロン酸と結合出来るモノクロ−ナル抗体が特に好ましい。中でも、ペプシン、パパイン等の酵素を用い、適宜消化し、Fab、Fab’、(Fab’)等として用いることが好ましい。この様なヒアルロン酸産生量を測定する方法を利用した市販のヒアルロン酸測定キットとしては、例えば、ヒアルロン酸測定キット(Hyaluronan Assay Kit、生化学バイオビジネス社製)、ヒアルロン酸(HA)ELISAキット(コスモ・バイオ株式会社製)、ヒアルロン酸キット(エルピアエ−スHA(商標登録)、富士レビオ株式会社製)等が好適に例示出来、適宜、購入しヒアルロン酸量の測定に使用することが出来る。
【0014】
本発明のヒアルロン酸産生促進因子の高分子ヒアルロン酸産生作用を評価する方法としては、高分子ヒアルロン酸産生量を評価することが出来る方法であれば、特段の限定なく適応することが出来る。表皮又は真皮中の高分子ヒアルロン酸は、主にヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)により産生されるため、表皮又は真皮における高分子ヒアルロン酸産生促進作用は、HAS2の活性を測定することにより代替することが出来る。本発明においては、HAS2の活性化作用を測定する方法であれば、特段の限定なく適応することが出来るが、より好ましいものとしては、ヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)mRNA発現量の変化を測定することによりヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)の活性化作用を測定する方法が好適に例示出来る。また、ヒアルロン酸合成酵素発現量を測定する方法としては、ポリメラ−ゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)を利用したPCR法が好適に例示出来る。また、本発明におけるHAS2mRNA発現量の測定には、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いmRNAを抽出し、SuperScript VILO cDNA synthesis Kit(Invitrogen社製、配列非公開)を用いcDNAを合成し、リアルタイムPCR(アプライドバイオシステムズ社製)にてヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)mRNA発現量を測定した。
【0015】
本発明のヒアルロン酸産生促進因子、即ち、前述した表皮細胞又は表皮細胞を介した真皮細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を有する成分としては、トクサ科トクサ属に属する植物より得られる抽出物、より好ましくは、トクサ科トクサ属スギナより得られる抽出物が好適に例示出来る。ここで、本発明の植物由来の抽出物とは、植物由来の抽出物自体、抽出物の分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。トクサ科トクサ属スギナは、北半球を原産地とする多年草であり、北半球の温帯からやや寒い地方に掛けて広く分布し、日本においても、ごくありふれた雑草として幅広い地域に自生する。早春に出てくる胞子茎をツクシ、栄養茎をスギナと呼ぶ。また、スギナを乾燥させたもの「問荊」と呼び、利尿などに用いることが知られている。
【0016】
本発明におけるトクサ科トクサ属に属する植物より得られる抽出物は、日本において自生又は生育した植物、漢方生薬原料などとして販売される日本産のものを用い抽出物を作製することも出来るし、丸善製薬株式会社などの植物抽出物を取り扱う会社より販売されている市販の抽出液を購入し、使用することも出来る。本発明のトクサ科トクサ属に属する植物より得られる植物抽出物の抽出に際しては、植物体、地上部又は木幹部は予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出物は、植物体、地上部、木幹部乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬する。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不溶物を除去した後、溶媒を減圧濃縮するなどにより除去することにより植物抽出物を得ることが出来る。また、この様にして得られる植物抽出物に関し、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィ−等により分画精製することにより、所望の活性を向上させた植物抽出物を得ることが出来る。尚、本発明においては、抽出物とは、抽出物自体、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。かかる成分の組成物における好ましい含有量は、0.000001〜20質量%、より好ましくは、0.00001質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは、0.0001質量%〜5質量%である。これは、あまり濃すぎると効果が頭打ちになる場合があり、少なすぎると有効濃度とならない場合があるからである。また、かかる成分は、表皮細胞又は表皮細胞を介する真皮細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用、取り分け、高分子ヒアルロン酸産生促進作用(HAS2mRNA発現促進作用)に優れ、高い安全性及び安定性を有するため、化粧料、医薬部外品、医薬品等への使用が好ましい。
【0017】
前記の抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、水、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ル等のアルコ−ル類、1,3−ブタンジオ−ル、ポリプロピレングリコ−ル等の多価アルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル類から選択される1種乃至は2種以上が好適に例示出来る。前記抽出溶媒の内、より好ましいものとしては、エタノ−ル等のアルコ−ル類又は含水アルコ−ル類、1,3−ブタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類又は含水多価アルコ−ル類が好適に例示出来る。また、前記含水アルコ−ル類又は多価アルコ−ル類の含水率は、70%(アルコ−ル類又は多アルコ−ル類:水=30:70)以上、より好ましくは、含水率が50%以上、さらに好ましくは、含水率が70%以上であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物は、以下に記載の方法により製造することも出来るし、市販の植物抽出物として、丸善製薬株式会社等の植物抽出物を取り扱う会社より購入し使用することも出来る。
【0019】
<製造例1: 本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物の製造方法>
本発明のヒアルロン酸産生促進因子であるトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物は、スギナ全草の粗粉砕物を抽出原料として製造することが出来る。スギナ全草の粗粉砕物10(kg)に、抽出溶媒150(L)を加え、穏やかに攪拌しながら加熱抽出し、熱時濾過した。これに水又は溶媒を適量加え、全量を50(L)に調整し、3日間以上放置した後、オリ及び沈殿を濾過し、濾液を減圧濃縮し、本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物を得る。また、本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物は、丸善製薬株式会社等より市販の植物抽出物として入手することも出来る。
【0020】
<本発明の老化防止又は改善作用、シワ形成の予防又は改善作用に優れる成分>
本発明の皮膚外用剤は、トクサ科トクサ属に属する植物より得られる植物抽出物よりなるヒアルロン酸産生促進因子を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤には、トクサ科トクサ属に属する植物より得られる植物抽出物よりなるヒアルロン酸産生促進剤を、唯1種含有させることも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。本発明の皮膚外用剤は、トクサ科トクサ属に属する植物より得られる植物抽出物よりなるヒアルロン酸産生促進剤を配合することにより、「老化防止又は改善用」、又は、「シワ予防又は改善」として効果を発揮する。また、本発明の皮膚外用剤は、前記ヒアルロン酸産生促進剤と共に、前記ヒアルロン酸産生促進剤とは異なる老化防止又は改善作用、シワ形成の予防又は改善作用に優れる成分より選択される1種又は2種異常の成分を含有させることにより、「老化防止又は改善用」、又は、「シワ予防又は改善」を増強することが出来る。前記のヒアルロン酸産生促進剤とは異なる老化防止又は改善作用、シワ形成の予防又は改善作用に優れる成分としては、レチノ−ル、レチノイン酸などのビタミンA誘導体、ウルソ−ル酸、ウルソ−ル酸ベンジル、ウルソ−ル酸リン酸エステル及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩などのウルソ−ル酸誘導体、4−プロピルレゾルシノ−ル、4−ブチルレゾルシノ−ル、4−ペンチルレゾルシノ−ル、4−(1−メチルプロピル)レゾルシノ−ル、4−(1−メチルブチル)レゾルシノ−ル、4−(2−メチルプロピル)レゾルシノ−ル、4−(2−メチルブチル)レゾルシノ−ル及びそれらの薬理学的に許容される塩などの4−アルキルレゾルシノ−ル誘導体、モクセイ科オリ−ブ属オリ−ブ抽出物、ユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタ抽出物、バラ科プテンチラ属トルメンチラ抽出物、バラ科ボテンチラ属カワラサイコ抽出物、バラ科ポテンチラ属ミヤマキンバエ抽出物、マメ科アスオアラトゥス属ルイボス抽出物、バラ科シモツケソウ属シモツケソウ抽出物、キク科ヨモギ属ヨモギ抽出物、マメ科ゲンゲ属レンゲソウ抽出物などのAGEs分解促進剤等が好適に例示出来る。かかる成分は、本発明のヒアルロン酸産生促進剤と共に配合することにより、ヒアルロン酸産生促進剤が有する老化防止又は改善作用、シワ予防又は改善作用を増強する効果を有する。かかる成分は、皮膚外用剤全量に対し、0.0001〜10質量%含有させること、より好ましくは、0.001〜5質量%含有させることが好ましい。
【0021】
<本発明のヒアルロン酸産生促進因子を含有する皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、トクサ科トクサ属に属する植物より得られる植物抽出物よりなるヒアルロン酸産生促進因子を含有することを特徴とする。本発明のヒアルロン酸産生促進因子としては、表皮細胞に直接的に働きかけ表皮細胞のヒアルロン酸産生量を増加させる成分、又は、表皮細胞に働きかけることにより生じるサイトカイン等の情報伝達物質を介し真皮細胞へ間接的に作用し真皮細胞のヒアルロン酸量を増加させる作用を有する成分であれば、特段の限定なく適応することが出来る。前記の表皮細胞又は表皮細胞を介し真皮細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用を有する成分の内、より好ましいものとしては、表皮又は真皮中において高分子ヒアルロン酸産生を促進する成分が好適に例示出来る。また、高分子ヒアルロン酸産生量は、HAS2により制御されているため、HAS2を活性化する成分であれば、前記の高分子ヒアルロン酸産生促進因子として特段の限定なく適応することが出来る。これらの内、より好ましいものとしては、HAS2mRNA発現量を増加させる作用を有する成分が好ましい。本発明において植物抽出物とは、抽出物自体、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味し、本発明の皮膚外用剤には、前記ヒアルロン酸産生促進因子を、唯1種含有させることも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。本発明の皮膚外用剤は、トクサ科トクサ属に属する植物抽出物より得られるヒアルロン酸産生促進因子を配合することにより、表皮細胞又は表皮細胞を介する真皮細胞におけるヒアルロン酸産生、取り分け、表皮又は真皮における高分子ヒアルロン酸産生量を増加させることにより抗老化作用、シワ改善作用を発揮する。
【0022】
本発明における皮膚外用剤の作製にあたっては、前記の必須成分であるヒアルロン酸産生促進剤以外に、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品等の製剤化において使用される任意成分を含有することが出来る。また、本発明の皮膚外用剤は、比類無き使用感の良さを有しているため、使用感が重要な化粧料に特に好適であるためである。化粧料としては、油中水乳化剤形を応用できるものであれば、特段の限定はなく、例えば、エッセンス、乳液、クリ−ム等の基礎化粧料、アンダ−メ−クアップ、ファンデ−ション、チ−クカラ−、マスカラ、アイライナ−などのメ−クアップ化粧料、ヘアクリ−ムなどの毛髪化粧料などが好適に例示できる。
【0023】
本発明の皮膚外用剤においては、前記必須成分に加えて、油中水乳化剤形を形成するための乳化剤を含有することが好ましく、該乳化剤としては、有機変性粘土鉱物やジグリセリンモノオレ−トやトリグリセリンジイソステアレ−ト等が好適に例示できる。ジグリセリンモノオレ−トを乳化剤として用いる場合に於いては、必須成分としての量に、乳化のための量を積算し、安定化作用のための役割と、乳化のための役割を兼ねさせることもできる。
【0024】
前記有機変性粘土鉱物に於いて、有機変性とは、粘土鉱物の一部に有機化合物の一部を共有結合乃至はイオン結合を介して強固乃至は緩やかな結合を生ぜしめ、有機化合物の性質の一部乃至は全部を粘土鉱物に付与させることを意味し、この様な変性としては4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法、カルボキシル基と粘土鉱物のカチオン部分を結合させる方法等が例示でき、4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法が特に好ましく例示できる。
【0025】
粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物としては、特に限定されるわけではないが、クオタニウムと称される化合物が例示される。クオタニウムとは、低分子の置換第4級アンモニウム塩であって、国際基準化粧品原材料(INCI)に登録された化粧料原料が好ましい。さらに、粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物は、クオタニウム化合物のなかでも、従来の皮膚外用剤に含有されるクオタニウム化合物であることが好ましい。従来の皮膚外用剤で使用されているクオタニウム化合物としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等が好ましく例示される。ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等は、粘土鉱物とともに安定な油中水乳化構造を形成することができるので好ましい。
【0026】
一方、4級アミノ基を有する化合物で変性される粘土鉱物(未変性粘土鉱物)としては、従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物であれば特段の限定無く使用することができる。従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物としては、スメクタイト系のヘクトライト、ベントナイトやモンモリロナイト;カオリナイト;イライト;マリ−ン粘土鉱物(海泥);デザ−トロ−ズ粘土鉱物;パスカライトなどが好ましく挙げられる。これらのうち、油中水乳化構造を安定化させることができるベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト又はカオリナイトが好ましく例示される。
【0027】
本発明の皮膚外用剤に含有される4級アミノ基を有する化合物で変性された粘土鉱物の製造方法の一例を以下に説明する。前記未変性粘土鉱物を分散媒に分散させる。該分散剤は水系の溶媒であることが好ましく、水であってもよい。分散未変性粘土鉱物を含む分散液に、さらに4級アミノ基を有する化合物を加え、よく撹拌する。4級アミノ基を有する化合物は、水に溶解されて加えられてもよい。加えられる4級アミノ基を有する化合物の量は、分散未変性粘土鉱物の量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましい。この様な構成を取ることにより、乳化系において、好ましい使用感を呈するためである。撹拌後、分散質を濾取し、脱水、乾固することにより本発明における変性粘土鉱物を得ることができる。あるいは、分散質を濾取することなく、減圧濃縮することにより分散剤を除去して乾固させることにより、本発明における変性粘土鉱物を得ることもできる。得られた変性粘土鉱物は、好ましくは所望のサイズ(粒径が1〜1000μmであることが好ましい)に粉砕され、本発明の皮膚外用剤に含有される。
【0028】
本発明における変性粘土鉱物は、前述したように調製して使用されることもできるが、市販されているものを使用することもできる。市販されている変性粘土鉱物には、化粧料などの皮膚外用剤などとして用いられているものもある。市販されている変性粘土鉱物としては、例えば、エレメンティス社より「ベントン38V」の名称で販売されている、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどが好ましく例示される。
【0029】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分は0.5〜10質量%好ましく含有され、より好ましくは1〜5質量%含有される。かかる成分は、前記の含有量の範囲において、乳化剤として、高内相の油中水乳化剤形を形成すべく働く。
【0030】
ジグリセリンモノオレ−ト及び/又はトリグリセリンジイソステアレ−トを乳化剤として含有する場合には、かかる乳化剤の質量の0.5〜2倍のマルチト−ルやソルビト−ルの様な多価アルコ−ルをともに含有させることが好ましい。前記ジグリセリンモノオレ−トの化粧料用の原料としては、「ニッコ−ルDGMO−C」(日本サ−ファクタント株式会社製)が好ましく例示できるし、トリグリセリンジイソステアレ−トの化粧料用の原料としては、「エメレスト2452」(エメリ−社製)などが好ましく例示できる。かかる成分の好ましい含有量は、皮膚外用剤全量に対して、1〜10質量%であり、より好ましくは2〜7質量%である。これはこの量範囲を逸脱すると乳化できない場合や安定性が損なわれる場合が存するためである。以上述べてきた成分が油中水乳化剤形に好ましい成分であると言える。
【0031】
本発明の皮膚外用剤に於いては、前記必須成分の他に、油性成分、水性成分ともに溶解しにくい成分、取り分け、ジメチコンなどのシリコ−ン類や流動パラフィンなどの炭化水素類のような非極性成分に難溶な成分を好ましく含有する。該溶解しにくい成分としては、例えば、フィトステロ−ル配糖体、スフィンゴ糖脂質、ウルソ−ル酸、ウルソ−ル酸のエステル及びこれらの塩が好適に例示できる。かかる成分は、皮膚に対して、光老化防止効果、タ−ンオ−バ−調整効果、保湿効果などの好ましい働きを有する、有効成分であり、前記フィトステロ−ルは、植物性ステロ−ル類の総称であり、植物性のステロ−ル類には、スチグマスタノ−ル、カンペステロ−ル、シトステロ−ルなどが存し、これらを一括して、フィトステロ−ルと総称している。フィトステロ−ル配糖体は、このフィトステロ−ルに糖鎖が結合したもので、該フィトステロ−ル配糖体としては小麦胚芽などの植物体から、複数のフィトステロ−ル配糖体を含有するステロ−ル配糖体分画を取り出して用いる場合が多く、この様な分画のみを精製した化粧料原料も市販されており、本発明のかかる市販原料を購入して利用することができる。通常この様な成分には、スフィンゴ糖脂質も同時に抽出されて含まれていることが多い。この様な市販原料としては、例えば、岡安商店株式会社から販売されている「フィトステサイド」などが存する。かかる「フィトステサイド」は約85質量%がフィトステロ−ルの配糖体であり、約15質量%がスフィンゴ糖脂質である。又、ウルソ−ル酸はロ−ズマリ−などの植物体に含有されるトリテルペン酸であり、このエステルは、ウルソ−ル酸から誘導される酸クロリドをアルカリの存在下、対応するアルコ−ルと縮合させることにより得ることができ、例えば、ウルソ−ル酸エチルエステル、ウルソ−ル酸ステアリルエステル、ウルソ−ル酸オレイルエステル、ウルソ−ル酸ベンジルエステル、ウルソ−ル酸フェネチルエステルなどが好適に例示できる。これらの内、特に好ましいものは、ウルソ−ル酸ベンジルエステル及びウルソ−ル酸リン酸エステルである。この様な溶けにくい有効成分、取り分け固形の成分の好ましい含有量は、それぞれ0.05〜0.5質量%である。
【0032】
本発明の皮膚外用剤は、油中水乳化剤形に形態を取るため、油中水乳化剤形の使用感、仕上がり感の欠点を補うために、シリコ−ン、特に好ましくは、シクロメチコン及び/又は粘度1mPa・s以下のジメチコンを含有することが好ましく、該シリコ−ンの含有量としては、化粧料全量に対しては、10〜50質量%含有することが好ましく、より好ましくは、20〜40質量%であり、シクロメチコン及び粘度1mPa・s以下のジメチコンの含有量の和が油相全量に対して、50質量%以上、より好ましくは55質量%以上であることが好ましい。
【0033】
又、本発明の皮膚外用剤では、乳化剤として前記有機変性粘土鉱物を用いる場合、前記有機変性粘土鉱物の乳化作用を補助する意味で、POE変性メチルポリシロキサン、POP変性メチルポリシロキサン、POP・POE変性メチルポリシロキサン等のポリエ−テル変性メチルポリシロキサンを含有することが好適に例示できる。かかるポリエ−テル変性メチルポリシロキサンの好ましい含有量は、0.5〜5質量%、1〜3質量%がより好ましい。
【0034】
乳化剤として前記有機変性粘土鉱物を用いる場合、更に、上記の成分以外の好ましい任意成分としては、乳化状態を安定化できる、多価アルコ−ルが例示できる。特に、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコ−ルが好適に例示できる。かかる成分は唯一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、5〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。更に加えて、1,2−ペンタンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル及び1,2−オクタンジオ−ルから選択される1種乃至は2種以上を1〜7質量%含有させることも、防腐力を向上させる見地から好ましい。
【0035】
上記以外にも、本発明の皮膚外用剤に於いては、本発明の効果を損ねない限度に於いて、通常使用される任意成分を含有することもできる。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコ−ル等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコ−ル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコ−ル類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤などが好ましく例示できる。特に、本発明の皮膚外用剤は、抗シワ等の老化防止の目的で好適に使用されることから、シワ形成阻外、抗老化作用に優れる成分を含有することが好ましい。この様な成分としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体乃至はその塩、アルキルレゾルシノ−ル類、トコフェロ−ル類、SOD等の活性酸素除去作用を有する成分、フィトステロ−ル類、グリチルレチン酸、ウルソ−ル酸、ベツリン酸等のテルペン酸乃至はその誘導体、ベンゾフェノン類、アミノアルキルベンゾイックアシッドのエステル、桂皮酸エステル類等の紫外線吸収剤などが好適に例示出来る。これらの含有量は、皮膚外用剤に対し、それぞれ0.01質量%〜5質量%が好適に例示出来る。
【0036】
本発明の皮膚外用剤は、前述の成分を常法に従って処理することにより本発明の皮膚外用剤を製造することができる。
【0037】
以下に、実施例をあげて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0038】
<試験例1: 表皮細胞のヒアルロン酸(HA)酸産生促進作用評価>
製造例1に記載の本発明のヒアルロン酸産生促進剤であるトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物に関し、表皮細胞のヒアルロン酸産生促進作用を下記の評価方法に従い評価した。正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK、倉敷紡績株式会社製)を24 well plateに3×10(cell/well)播種し、KG2培地(倉敷紡績株式会社製)で4日間培養した。培養後、被験物質(本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物)又は1,3−ブチレングリコ−ル(1,3−BG、溶媒コントロ−ル)を添加し、24時間後の培養上清を回収し、培地中のヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸測定キット(生化学バイオビジネス社製)を用い、測定した。結果を図1に示す。図1には、コントロ−ル群のヒアルロン酸産生量を1とした場合の、被験物質添加時のヒアルロン酸産生量をコントロ−ル群のヒアルロン酸産生量に対する比率として表示した。図1の結果より、本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物には、表皮細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用が認められた。
【実施例2】
【0039】
<試験例2: 表皮細胞を介した真皮細胞のヒアルロン酸産生促進作用評価>
本発明のヒアルロン酸産生促進剤であるトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物に関し、表皮細胞を介した真皮細胞のヒアルロン酸産生促進作用を下記の評価方法に従い評価した。正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK、倉敷紡績株式会社製)を24 well plateに5×10(cell/well)播種し、KG2培地(倉敷紡績株式会社製)で4日間培養した。培養後に2%FBS/DMEM(FBS:株式会社ハナ・ネスコバイオ製、DMEM:株式会社シグマアルドリッチ社製)1mLに培地を交換し、被験物質(本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物)又は1,3−ブチレングリコ−ル(1,3−BG、溶媒コントロ−ル)を添加し、24時間後の培養を回収し、あらかじめ2.5×10(cell/well)で播種し4日間培養した正常ヒト真皮ファイブロブラスト(ccd−1113sk、ATCC)に900μL添加した。48時間培養後、無血清DMEMに培地を交換し、2時間後に培養上清を回収し、培地中のヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸測定キット(生化学バイオビジネス社製)を用い測定した。結果を図2に示す。図2には、コントロ−ル群のヒアルロン酸産生量を1とした場合の、被験物質添加時のヒアルロン酸産生量をコントロ−ル群のヒアルロン酸産生量に対する比率として表示した。図2の結果より、本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物には、表皮細胞を介し真皮細胞のヒアルロン酸産生促進作用が認められた。
【実施例3】
【0040】
<試験例3: 表皮細胞の高分子ヒアルロン酸産生促進作用評価>
ヒアルロン酸合成酵素の内、高分子ヒアルロン酸を産生することが知られているヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)のmRNA発現量を指標とし、表皮細胞の高分子ヒアルロン酸産生促進作用を評価した。即ち、正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK、倉敷紡績株式会社製)を24 well plateに3×10(cell/well)播種し、KG2培地(倉敷紡績株式会社製)で4日間培養した。培養後、被験物質(本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物)又は1,3−ブチレングリコ−ル(1,3−BG、溶媒コントロ−ル)を添加し、添加後24時間の細胞からRNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いmRNAを抽出し、SuperScript VILO cDNA synthesis Kit(Invitrogen社製、配列非公開)を用いcDNAを合成し、リアルタイムPCR(アプライドバイオシステムズ社製)にてヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)mRNA発現量を測定した。結果を図3に示す。図3には、コントロ−ル群のHAS2mRNA発現量を1とした場合の、被験物質添加時のHAS2mRNA発現量をコントロ−ル群のHAS2mRNA発現量に対する比率として表示した。図3の結果より、本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物には、表皮細胞における高分子ヒアルロン酸産生促進作用が認められた。
【実施例4】
【0041】
<試験例4: 表皮細胞を介した真皮細胞の高分子ヒアルロン酸産生促進作用評価>
ヒアルロン酸合成酵素の内、高分子ヒアルロン酸を産生することが知られているヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)のmRNA発現量を指標とし、表皮細胞を介した真皮細胞の高分子ヒアルロン酸産生促進作用を評価した。即ち、即ち、正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK、倉敷紡績株式会社製)を24 well plateに5×10(cell/well)播種し、KG2培地(倉敷紡績株式会社製)で4日間培養した。培養後に2%FBS/DMEM(FBS:株式会社ハナ・ネスコバイオ製、DMEM:株式会社シグマ製) 1mLに培地を交換し、被験物質(本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物)又は1,3−ブチレングリコ−ル(1,3−BG、溶媒コントロ−ル)を添加し、添加後24時間後の培養を回収し、あらかじめ2.5×10(cell/well)で播種し4日間培養した正常ヒト真皮ファイブロブラスト(ccd−1113sk、ATCC)に900μL添加した。添加後24時間の細胞からRNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いmRNAを抽出し、SuperScript VILO cDNA synthesis Kit(Invitrogen社製、配列非公開)を用いcDNAを合成し、リアルタイムPCR(アプライドバイオシステムズ社製)にてヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)mRNA発現量を測定した。結果を図4に示す。図4には、コントロ−ル群のHAS2mRNA発現量を1とした場合の、被験物質添加時のHAS2mRNA発現量をコントロ−ル群のHAS2mRNA発現量に対する比率として表示した。図4の結果より、本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物には、表皮細胞を介した真皮細胞における高分子ヒアルロン酸産生促進作用が認められた。
【実施例5】
【0042】
<製造例2: 本発明のヒアルロン酸産生促進因子を含有する皮膚外用剤の製造1>
表1に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である乳化剤形の化粧料を製造した。即ち、イ、ロ、ハの成分を80℃に加温し、イの中にニを加えて溶解させ、混練りしてゲルを形成させ、これにロを加え希釈し、これに攪拌下、徐々にハを加えて乳化し、攪拌冷却し、「本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物」(本発明のヒアルロン酸産生促進因子)を含有する皮膚外用剤である油中水乳化剤形の化粧料1を得た。さらに、処方中、「本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物」を「水」に置換した比較例1を作製した。また、表2に示す処方に従って、「本発明のトクサ科トクサ属スギナより得られる植物抽出物」及び「本発明のシワ形成阻害、抗老化作用に優れる成分」を含有する皮膚外用剤(化粧料2)を製造した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【実施例6】
【0045】
<製造例3: 本発明のヒアルロン酸産生促進因子を含有する皮膚外用剤の製造2>
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料3(ロ−ション)を作製した。即ち、処方成分を80℃に加熱し、攪拌可溶化し、攪拌冷却して本発明の皮膚外用剤を作製した。
【0046】
【表3】

【実施例7】
【0047】
<本発明のヒアルロン酸産生促進因子を含有する皮膚外用剤のシワ改善テスト>
実施例5に記載の方法に従い製造した化粧料1、化粧料2及び比較例1を用い、以下の方法で、シワ改善効果を調べた。即ち、目尻のシワが気になるパネラ−24名(女性、年齢層40〜60歳)を8名ずつ3群に分け、1群には化粧料1を、1群には化粧料2、1群には比較例1を渡し、1日朝晩2回、連日8週間使用してもらい、試験の前後の目尻のレプリカの比較からシワ改善効果を調べた。レプリカは、光を透過させない白色のものを用い、これに皮膚表面形態をうつしとり、このレプリカを実体顕微鏡の標本台に固定し、45度の角度で光を照射し、レプリカを回転させて、皮溝の陰影が強く観察される方向の陰影画像(1×1cm2)を画像解析装置に取り込んだ。この画像はシワの凹凸に従って、シワの深いところは輝度が低く、シワのないところは輝度が高く、陰影を形成する。陰影画像における輝度の分布を求め、輝度のメジアン値を境に、メジアン値以上の輝度の輝点は最大輝度に、メジアン値未満の輝度の輝点は輝度0に変換して、二値化を行い、陰影部分(輝度0の部分)の面積率を求めた。(試験前の陰影の面積率−試験後の陰影の面積率)/(試験前の陰影の面積率)×100でシワ改善度(%)を求めた。結果を各群8名の平均値±標準偏差として表4に示す。これより本発明の皮膚外用剤はシワ改善効果に優れることがわかる。
【0048】
【表4】

【0049】
表1に記載の処方成分中、表1に記載の化粧料1の処方成分中、「ベントン38V」を「シリコ−ンKF6017」に置換した化粧料2、「1,2−ペンタンジオ−ル」を「ポリエチレングリコ−ル400」に置換した化粧料3を作製し、実施例7に記載の方法に従い、シワ改善テストを実施したところ、化粧料2は、シワ改善度 5.8±3.5、化粧料3は、シワ改善度 4.9±3.1を示し、何れも化粧料においてもシワ改善度がほとんど認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、老化防止又は改善用、シワ改善用などに好適な皮膚外用剤に応用出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トクサ科トクサ属に属する植物より得られる抽出物よりなる、ヒアルロン酸産生促進因子。
【請求項2】
前記トクサ科トクサ属に属する植物が、トクサ科トクサ属スギナであることを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸産生促進作用が、表皮又は表皮を介する真皮におけるヒアルロン酸産生促進作用であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
【請求項4】
前記ヒアルロン酸産生促進作用が、総ヒアルロン酸産生量及び/又はヒアルロン酸合成酵素(HAS)の遺伝子発現量の変化によることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
【請求項5】
前記ヒアルロン酸産生促進因子により産生されるヒアルロン酸が、高分子ヒアルロン酸であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
【請求項6】
前記ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現量の変化が、ヒアルロン酸産成酵素2(HAS2)mRNAの発現量の変化であることを特徴とする、請求項5に記載のヒアルロン酸産生促進因子。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のヒアルロン酸産生促進因子を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項8】
請求項1〜6に記載のヒアルロン酸産生促進因子を、皮膚外用剤全量に対し0.00001質量%〜20質量%含有することを特徴とする、請求項7に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
油中水乳化剤形に好ましい成分を含有し、油中水乳化剤形であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
老化防止又は改善用、又は、シワ予防又は改善用であることを特徴とする、請求項7〜9の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項7〜10に記載の皮膚外用剤。
【請求項12】
更に、老化防止成分乃至は改善成分を含んでも良い形態において、老化防止又は改善作用、シワ形成の予防又は改善作用に優れる成分を含有することを特徴とする、請求項7〜11の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項13】
老化防止又は改善用、シワ改善用の化粧料(但し、医薬部外品を含む)の製造方法であって、トクサ科トクサ属に属する植物より得られる抽出物の表皮又は表皮を介する真皮における高分子ヒアルロン酸産生促進作用を計測し、これらの度合いの大小を指標として、それらの作用が大きいものを選択し化粧料に配合することを特徴とする、化粧料の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の化粧料の製造方法において、高分子ヒアルロン酸産生促進作用を、表皮又は表皮を介する真皮におけるヒアルロン酸産生促進作用により効果を発揮する植物抽出物を選択することを特徴とする、化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−195493(P2011−195493A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63455(P2010−63455)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】