説明

ヒアルロン酸誘導体

本発明は、(a)ヒアルロン酸、及びジアミン、ポリアミン又はその組合せを含んで成る液体溶液を、イミンを形成するのに適切なpHで混合し;(b)前記イミンを、アミンに、ヒアルロン酸の誘導体を生成するのに適切なpHで還元し;そして(c)前記ヒアルロン酸の誘導体を回収することを含んで成る、ヒアルロン酸誘導体の調製方法に関する。本発明はまた、ヒアルロン酸、及びジアミン、ポリアミン又はその組合せを含んで成る、単離されたヒアルロン酸誘導体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、ヒアルロン酸誘導体、及びヒアルロン酸誘導体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載:
ヒアルロン酸(HA)は、硫酸化されていないグリコサミノグリカンの種類に属する、天然及び線状炭水化物ポリマーである。それは、10MDaまでの分子量を有する、β−1,3−N−アセチルグルコサミン及びβ−1,4−グルクロン酸反復二糖単位から構成される。ヒアルロン酸は、硝子軟骨、滑膜関節液及び皮膚組織(真皮及び表皮の両者)に依存し、そして脊椎動物の結合組織、ヒト臍帯、及び雄鶏の鶏冠を包含する天然の組織から抽出され得る。
【0003】
身体中でのヒアルロナンの多くの役割は同定されている(Laurent T. C. and Fraser J. R. E. , 1992, FASEB J. 6: 2397-2404; 及び Toole B. P. , 1991, "Proteoglycans and hyaluronan in morphogenesis and differentiation."In : Cell Biology of the Extracellular Matrix, pp. 305-341, Hay E. D. , ed., Plenum, New Yorkを参照のこと)。それは、多くの組織、例えば皮膚、腱、筋肉及び軟骨の細胞のための機械的支持体として重要な役割を演じる。ヒアルロン酸は、重要な生物学的工程、例えば組織の保湿化及び潤滑に包含される。それはまた、多くの生理学的機能、例えば付着、成長、細胞運動性、癌、脈管形成及び創傷治癒における役割を有すると思われる。ヒアルロン酸のユニークな物理学的性質(粘弾性、生物適合性及び生分解性を包含する)のために、ヒアルロン酸は、化粧品、眼科学、リウマチ学、薬物及び遺伝子供給、創傷治療及び組織工学内の広範囲の現在及び開発中の用途に使用される。
【0004】
ヒアルロン酸の水−結合能力及び粘弾性性質は、生物材料としてのその使用において重要である。それらの性質は、ヒアルロン酸の濃度及び分子量により調節される。
【0005】
高分子量ヒアルロン酸は従来、雄鶏の鶏冠及びウシ硝子体液から抽出されてきたが、しかしそれはしばしば、プロテオグリカンと複合体を形成し、その精製を困難にする(O'Regan など., 1994, International Journal of Biological Macromolecules 16: 283-286)。他方では、ヒアルロン酸は、細菌発酵工程により生成され得る。ストレプトコーカス(streptococcus)株が高分子量ヒアルロン酸を生成することが知られているが、この株はしばしば、毒性且つ病原性であり、精製を困難且つ高価にする。バチルス(Bacillus)宿主株を包含する組換え方法がまた、ヒアルロン酸を生成するために使用され得るが(アメリカ特許第6,951,743号、WO03/0175902号)、しかしそのようにして生成されるヒアルロン酸は、1〜2MDa又はそれ以下の範囲の平均分子量を有することが報告されている。
【0006】
いくつかの上記用途へのヒアルロン酸の使用は、所望する粘弾性、機械、安定性及び/又はマトリックス/キャリヤー性質を生成するために適切な分子量を有するヒアルロン酸の利用能力により制限される。例えば、眼科又は変形性関節炎適用は、4MDa又はそれよりも高いヒアルロン酸を必要として(Wobig など., 1999, Clin Ther. 21: 1549-1662; Armstrong など., 1997, Applied and Environmental Microbiology 63: 2759-2764; Goa and Benfieid, 1994, Drugs 47: 536-568; Swann and Kuo, 1991, Hyaluronic acid, p. 286-305, In D. Byrom (ed.), Biomaterials-novel materials from biological sources, Stockton Press, New York, NY; アメリカ特許第4,784,990号)、そして化粧適用は、2〜4MDaのヒアルロン酸を必要とする(Swann and Kuo, 1991, 前記;アメリカ特許第4,784,990号)。従って、より高い平均分子量を有するヒアルロン酸の誘導体を製造する方法が当業界において必要とされる。
【発明の開示】
【0007】
種々の平均分子量のヒアルロン酸の誘導体を製造するための新規方法を提供することが、本発明の目的である。
発明の要約:
本発明は、
(a)ヒアルロン酸、及びジアミン、ポリアミン又はその組合せを含んで成る液体溶液を、イミンを形成するのに適切なpHで混合し;
(b)前記イミンを、アミンに、ヒアルロン酸の誘導体を生成するのに適切なpHで還元し;そして
(c)前記ヒアルロン酸の誘導体を回収することを含んで成る、ヒアルロン酸誘導体の調製方法に関する。
【0008】
本発明はまた、ヒアルロン酸、及びジアミン、ポリアミン又はその組合せを含んで成る、単離されたヒアルロン酸誘導体にも関する。
本発明はまた、そのようなヒアルロン酸誘導体、及び不活性成分、活性成分、又は不活性成分及び活性成分の組合せを含んで成る組成物にも関する。
【0009】
本発明はまた、そのようなヒアルロン酸誘導体又はその組織物を含んで成る化粧品及び衛生品にも関する。
本発明はまた、そのようなヒアルロン酸誘導体又はその組成物を含んで成る医薬用カプセルにも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の特定の記載:
本発明は、(a)ヒアルロン酸、及びジアミン、ポリアミン又はその組合せを含んで成る液体溶液を、イミンを形成するのに適切なpHで混合し;(b)前記イミンを、アミンに、ヒアルロン酸の誘導体を生成するのに適切なpHで還元し;そして(c)前記ヒアルロン酸の誘導体を回収することを含んで成る、ヒアルロン酸誘導体の調製方法に関する。
【0011】
用語“ヒアルロン酸”は、β−1,4グリコシド結合及びβ−1,3グリコシド結合を変えることによって一緒に結合される、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びグルクロン酸(GlcUA)の反復二糖単位から構成される、硫酸化されていないグリコサミノグリカンとして、本明細書においては定義される。ヒアルロン酸はまた、ヒアルロナン、ヒアルロネート又はHAとして知られている。N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びグルクロン酸(GlcUA)の反復二糖単位の構造式は、図1に示される。
【0012】
用語“ヒアルロン酸”とは、異なった分子量を有する硫酸化されていないグルコサミノグリカン群又はさらに、前記グリコサミノグリカンの分解された画分を包含することが、本明細書において理解される。例えば、ヒアルロン酸の分子量は、分子量は、800〜10,000,000Da、又はそれより高い。
【0013】
いずれの入手できるヒアルロン酸又はその塩でも本発明の方法に使用され得る。可能性ある源は、脊椎動物の結合組織、ヒト臍帯、雄鶏の鶏冠、微生物(例えば、ストレプトコーカス)及び組換え微生物(例えば、バチルス)を包含する。塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛又はヒアルロン酸コバルトを包含する。
【0014】
好ましい観点においては、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸を生成するための遺伝子機械類を用いて、微生物から天然において又は組換え的に入手される。より好ましい観点においては、ヒアルロン酸は、ストレプトコーカス細胞から入手される。もう1つのより好ましい観点においては、ヒアルロン酸は、バチルス宿主細胞から組換え的に入手される。最も好ましい観点においては、ヒアルロン酸は、ストレプトコーカス・ズーエピデミカス(S. zooepidemicus)細胞から入手される(アメリカ特許第4,801,539号、ヨーロッパ特許第0694616号)。もう1つの最も好ましい観点においては、ヒアルロン酸は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)又はバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)宿主細胞から組換え的に入手される(WO03/0175902号)。
【0015】
本発明の方法においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、出発ヒアルロン酸の平均分子量に依存するであろう。出発ヒアルロン酸は、1つの平均分子量、2又はそれ以上の平均分子量、又は広範囲の平均分子量のものであり得る。出発ヒアルロン酸の分子量の選択は、ヒアルロン酸の分子量がジアミンを用いての延長により高められるか、又は枝分かれヒアルロン酸がポリアミンを用いて製造されるかに依存するであろう。前者に関しては、1〜2MDaの出発ヒアルロン酸が好ましい。後者の場合、分子量は、いずれの分子量のものでもあり得る。出発ヒアルロン酸の分子量の選択はまた、所望する粘弾性、機械、安定性及び/又はマトリックス/キャリヤー性質を生成するための意図される適用に依存するであろう。
【0016】
ヒアルロン酸又はその誘導体の平均分子量は、当業界における標準の方法、例えばUenoなど, 1988, Chem. Pharm. Bull. 36" 4971-4975; Wyatt, 1993, Anal Chim. Acta 272: 1-40: and Wyatt Technologies, 1999 "Light Scattering University DAWN Course Manual" and "DAWN EOS Manual" Wyatt Technology Corporation, Santa Barbara, Californiaにより記載されるそれらの方法を用いて決定され得る。多−角度レーザー光散乱にカップリングされたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−MALLS)は、それが4MDaまでのヒアルロン酸の分子量を測定できることが報告されているので、当業界においては好ましい方法である。
【0017】
しかしながら、SEC−MALLSは、入手できる水性SECカラムが制限された孔サイズを有するか、又はヒアルロン酸分子が分子間又は分子内に絡み合い、局部的不均衡性を導き、そしてヒアルロン酸溶液を非液体ニュートン性にするので、高分子量を測定するためにその使用において限定され得る。非理想的(ニュートン)ヒアルロン酸溶液は、SEC−MALLSシステムにおける種々の細管/間入性経路を通過する困難性を有し、そしてシステムの圧力/剪断作用がヒアルロン酸を分解する(Soltes など., 2002, Biomedical Chromatography 16: 459-462; Armstrong など., 1997, Appl. Environ. Microbiol. 63: 2759-2764)。他方では、粘性及び沈殿/遠心分離方法が、分子量を推定するために使用され得る。例えば、Hokputsa など., 2003, Eur, Biophys. J. 32: 450-456 and Soltes など.,2002. 前記を参照のこと。
【0018】
本発明の方法においては、出発ヒアルロン酸の分子量は、約800〜約10,000,000Da又はそれ以上の範囲にある。好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約1,000〜約10,000,000Daの範囲にある。好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約1,000〜約7,500,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約2,000〜約5,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約2,000〜約4,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約2,000〜約3,000,000Daの範囲にある。
【0019】
もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約4,000〜約3,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約8,000〜約3,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約10,000〜約2,500,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約25,000〜約2,500,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約50,000〜約2,500,000Daの範囲にある。
【0020】
もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約50,000〜約2,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約50,000〜約1,500,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約50,000〜約1,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、出発ヒアルロン酸の平均分子量は、約50,000〜約500,000Daの範囲にある。
【0021】
ヒアルロン酸のレベルは、改良されたカルバゾール法方位(Bitter and Muir, 1962, Anal Biochem. 4: 330-334)に従って決定され得る。
【0022】
用語“ジアミン”とは、2つのアミノ基から構成される有機化合物として本明細書において定義される。本発明の方法においては、ジアミンは、第一アミン、第二アミン、又は第一アミン及び第二アミンの組合せから構成されるいずれかのジアミンであり得る。
好ましい観点においては、ジアミンのアミノ基は、第一アミノ基である。もう1つの好ましい観点においては、ジアミンは、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及び複素芳香族アミンから成る群から選択される。
【0023】
例えば、脂肪族ジアミンは、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン又はリシル−グリシル−リシントリペプチドであり得;芳香族ジアミンは、1,4−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノメチルベンゼン、又はそれらの枝分かれ、環化され、置換され、酸化され、又は脱水素化された誘導体又は類化体であり得;そして複素芳香族ジアミンは、2,5−ジアミノフラン、2,5−ジアミノジオキシン又はグルコサミンダイマーであり得る。しかしながら、いずれのジアミンでも、本発明の方法の実施に使用され得る。
【0024】
より好ましい観点においては、ジアミンは、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ブタン、1,5−ジアミンペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン及び1,8−ジアミノオクタンから成る群から選択される。
【0025】
用語“ポリアミン”とは、3又はそれ以上のアミノ基から構成される有機化合物として本明細書において定義される。本発明の方法においては、ポリアミンは、第一アミン、第二アミン、又は1又は複数の第一アミン及び第二アミンの組合せから構成されるいずれかのポリアミンであり得る。
【0026】
好ましい観点においては、ポリアミンのアミノ基は、第一アミノ基である。もう1つの好ましい観点においては、ポリアミンは、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン及び複素芳香族ポリアミンから成る群から選択される。
【0027】
例えば、脂肪族ポリアミンは、1,3−ジアミノ−2−アミノメチル−プロパン、1,7−ジアミノ−4−アミノメチル−ヘプタン、1,10−ジアミノ−4,7−ジアミノメチル−デカン、他のトリアミノ−n−アルカン、テトラアミノアルカン、トリアミノ−アルケン、テトラアミノアルキン又はそれらの枝分かれされ、環化され、置換され、酸化され又は脱水素化された誘導体又は類似体であり得;芳香族ポリアミンは、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、1,3,5−トリアミノメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、又はそれらの枝分かれされ、環化され、置換され、酸化され又は脱水素化された誘導体又は類似体であり得;そして複素芳香族ポリアミンは、2,3,4,5−テトラアミノフラン、2,3,5,6−テトラアミノジオキシン、キトサン、ポリリシン又はリシン含有ポリペプチドであり得る。しかしながら、いずれのポリアミンでも、本発明の方法の実施において使用され得る。
【0028】
より好ましい観点においては、ポリアミンは、ポリ−L−リシン又はポリリシン含有ポリペプチドである。
【0029】
本発明の方法においては、ヒアルロン酸は、イミンを生成するために、図2に示される反応に従って、ジアミン、ポリアミン又はその組合せと反応せしめられる。環状化されたヘミアセタール形での還元剤、例えばアルデヒド又はC1OHは、ヒアルロン酸の末端に存在する基に依存して、N−アセチルグルコサミン又はグルクロン酸のいずれかからであり得る。イミンを生成するための最適pHは好ましくは、わずかに酸性のpH範囲、例えば約4〜6のpHである。
【0030】
ジアミン、ポリアミン、ジアミン及びポリアミン、又はジアミン及びポリアミンの組合せが、本発明の方法に使用され得る。好ましい観点においては、反応は1つのジアミン又は1つのポリアミンから構成される。
【0031】
本発明の方法においては、ヒアルロン酸の濃度は好ましくは、約1nM〜約10mMの範囲にある。濃度の選択は、ヒアルロン酸の分子量に依存するであろう。例えば、1MDaの分子量を有するヒアルロン酸はたぶん、1000Daの分子量を有するヒアルロン酸に比較して、より低い濃度、例えば1μMを必要とする。しかしながら、溶解されたヒアルロン酸が適切な粘度を有する限り、ヒアルロン酸のいずれの濃度でも、本発明の方法に使用され得る。ジアミン及び/又はポリアミンの濃度は、下記のようにモル過剰で存在するであろう。
【0032】
ジアミン、ポリアミン又はその組合せの誘導体への出発ヒアルロン酸の転換を最適化するためには、出発ヒアルロン酸のモル濃度は、反応の最後で反応のヒアルロン酸の量を最少にするために、ジアミン、ポリアミン又はその組合せのアミノ基のモル濃度に対して、十分な過剰で存在すべきである。
【0033】
ジアミンに関しては、ヒアルロン酸:ジアミンのモル比は好ましくは、少なくとも約4:1、より好ましくは少なくとも3.5:1、さらにより好ましくは少なくとも約3:1、及び最も好ましくは少なくとも約2.5:1である。
【0034】
ポリアミンに関しては、ヒアルロン酸:ポリアミンのモル比は、ヒアルロン酸によるポリアミンの誘導体化の所望する程度に依存するであろう。例えば、ヒアルロン酸によるポリアミンの誘導体の所望する程度がポリアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子である場合、モルに基づくヒアルロン酸:ポリアミンの比は好ましくは少なくとも約4:1、より好ましくは少なくとも3.5:1、さらにより好ましくは少なくとも約3:1、及び最も好ましくは少なくとも約2.5:1である。ポリアミンのあらゆるアミンの高い程度の誘導体化又は合計の誘導体化に関して、そのモル比は、相応じて、より高いモル比に調節される必要がある。
【0035】
ジアミン及びポリアミンの組み合わせに関して、ヒアルロン酸:ジアミン及びポリアミンのモル比は再び、ヒアルロン酸によるポリアミンの誘導体化の所望する程度に依存するであろう。例えば、ヒアルロン酸によるジアミンの誘導体の所望する程度が、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子であり、そしてヒアルロン酸によるポリアミンの誘導体化の所望する程度がポリアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子である場合、モルに基づくヒアルロン酸:ジアミン及びポリアミンの組合せのモル比(等濃度のジアミン及びポリアミンを想定する)は、好ましくは少なくとも約8:1、より好ましくは少なくとも約7:1、さらにより好ましくは少なくとも約6:1、及び最も好ましくは少なくとも約5:1である。再び、ポリアミンのあらゆるアミンの高い程度の誘導体化又は合計の誘導体化に関して、そのモル比は、相応じてより高いモル比に調節される必要がある。さらに、ジアミン及びポリアミンのモル比に依存して、そのモル比はさらなる考慮を必要とするであろう。
【0036】
好ましい観点においては、ジアミン:ポリアミンのモル比は、好ましくは約1:1000、より好ましくは約1:500、より好ましくは約1:250、より好ましくは約1:100、より好ましくは約1:50、より好ましくは約1:25、より好ましくは約1:10、さらにより好ましくは約1:5、最も好ましくは約1:2.5、及びさらに最も好ましくは約1:1である。もう1つの好ましい観点においては、ポリアミン:ジアミンのモル比は、好ましくは約1:1000、より好ましくは約1:500、より好ましくは約1:250、より好ましくは約1:100、より好ましくは約1:50、より好ましくは約1:25、より好ましくは約1:10、さらにより好ましくは約1:5、最も好ましくは約1:2.5、及びさらに最も好ましくは約1:1である。しかしながら、本発明の方法においては、ジアミン及びポリアミンのいずれの所望するモル比でも使用され得る。
【0037】
ジアミン又はポリアミンの物性(例えば、水溶解性)に依存して、そしてアミノ基が第一又は第二アミノ基又はその組合せであるかどうかにかかわらず、ヒアルロン酸:ジアミン、ポリアミン又はその組合せのモル比は、アミノ基へのヒアルロン酸の還元基の接近性に依存して、調節される必要があることが理解される。
【0038】
ポリアミンによる本発明の方法の実施においては、出発ヒアルロン酸の分子量を、例えば3倍、4倍に高めることが所望される。そのような情況においては、ヒアルロン酸:ポリアミンの高い比が必要とされる。最適な比は、当業者により実験的に決定され得る。
【0039】
反応は一般的に、水から構成される液体溶液において行われる。その水溶液は、ジアミン、ポリアミン又はその組合せの溶解性を高めるために、有機溶媒により補充され得る。例えば、有機溶媒、例えばアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及び他のアルコール)、ケトン(例えば、アセトン)及び他の通常の有機溶媒が使用され得る。他方では、液体溶液は主に、有機溶媒、例えばジオキシン、フラン、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルスルホキシド(DMSO)であり得る。有機溶媒は、水により補充され得る。
【0040】
本発明の方法においては、段階(a)の液体溶液は好ましくは、ヒアルロン酸を含んで成る水性液体を形成するために、ヒアルロン酸を水、例えば脱イオン水に溶解することにより調製される。水は緩衝剤により処理されるか、又は水酸化ナトリウムが、ヒアルロン酸を含んで成る水性液体に添加され、その結果、ヒアルロン酸の水酸化物基が脱プロトン化される。水性液体は、ヒアルロン酸の均等な溶媒化を確保するために低温で一定期間、放置される。次に、ジアミン、ポリアミン又はその組合せが添加される。ジアミン、ポリアミン又はその組合せの完全な添加の後、その液体反応混合物は、イミンへの転換を確保するのに十分な時間、撹拌されるか又は振盪される。反応のための時間は、反応体の濃度、温度及びpHに依存して、数分〜数時間であり得る。
【0041】
ジアミン、ポリアミン又はその組合せとのヒアルロン酸の反応のpHは、好ましくは約4〜約9、より好ましくは約4〜約8、さらにより好ましくは約4〜約7、及び最も好ましくは約5〜約6で維持される。pHは、緩衝液により、及び/又は希酸(例えば、HCl)又は塩基(例えば、水酸化ナトリウム)の添加により維持され得る。
【0042】
ジアミン、ポリアミン又はその組合せとのヒアルロン酸の反応の温度は好ましくは、約0℃〜約100℃、より好ましくは約10℃〜約80℃、さらにより好ましくは約15℃〜約60℃、最も好ましくは約20℃〜約50℃、及びさらに最も好ましくは約25℃〜約40℃で維持される。
【0043】
用語“イミン”又は“シッフ塩基”とは、下記に示されるように、水素ではなくアリール基又はアルキル基に結合されるアミンの窒素原子と共に炭素−窒素二重結合を含む化合物の官能基又は型として本明細書において定義される:
R1R2C=N−R3
式中、R1, R2及びR3は、水素、炭素結合基(アルキル、ベンジル、カルボニル、シアニド、カルボキシル、及び置換された誘導体/類似体)、酸素結合基(ヒドロキシル、エーテル、エステル及び置換された誘導体/類似体)、窒素結合基(アミン、アミド及び置換された誘導体/類似体)及び他の原子結合基(ハロゲン化物、スルホニル、スルフェート、ホスフェート及び置換された誘導体/類似体)から成る群から選択される。イミンは、ヘミアミナルへの求核性付加、続くイミンへの水の脱離により芳香族アミン及びカルボニル化合物から合成され得る。シッフ塩基はアゾメチンと同じ意味である。
【0044】
本発明の方法においては、段階(b)の還元は、C=N二重結合をC-N単結合に還元するか又は水素化するために実施される。これは、還元剤/電子ドナー/水素化剤(この後、“還元剤”と称する)を用いて達成される。還元は好ましくは、還元のために適切なpH及び温度で水溶液において行われる。水溶液は好ましくは、緩衝剤により処理されるか、又は希酸(例えば、HCl)又は塩基(例えば、水酸化ナトリウム)が添加され、pHが維持される。還元剤の完全な添加の後、液体反応混合物は、C-N単結合へのC=N二重結合の最大の転換を確保するために撹拌されるか又は振盪される。還元のための時間は、イミン及び還元剤の濃度、温度及びpHに依存して、数分〜数時間であり得る。還元剤としての硼水素化物を用いての還元の例は、図3に示されている。
【0045】
本発明の方法においては、還元は、当業界において知られているいずれかの方法により行われ得る。好ましい観点においては、還元は化学還元剤により行われる。もう1つの好ましい観点においては、還元は電気化学的還元により行われる。
【0046】
還元が化学還元剤により行われる場合、アミンにイミンを還元する、当業界において知られているいずれかの適切な化学還元剤が使用され得る。化学還元剤は、水素化物、金属水素化物、金属/水素及びスルフヒドリル様還元剤から成る群から選択され得る。好ましい観点においては、化学還元剤は、シアノ硼水素化ナトリウム(NaCNBH3)、硼水素化ナトリウム(NaBH4)、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、ヒドロキシシクロペンタジエニルルテニウム水素化物、ラニーニッケル及びH2、及び亜ジチオン酸ナトリウムから成る群から選択される。例えば、Casey など., 2006, J. Am. Chem. Soc. 128; 2286-2293, Abdei-Magid など.,1996, J. Org. Chem. 61: 3849-3862, Pojer, 1979, Aust. J. Chem. 32: 201-204を参照のこと。
【0047】
還元はまた、当業界において知られている方法を用いて、電気化学的に実施され得る。例えば、Boettcherなど.,1997, Inorg. Chem. 36: 2498-2504を参照のこと。
還元反応のpHは、使用される還元剤に依存するであろう。pHは好ましくは、約4〜約10、より好ましくは約4〜約9、さらにより好ましくは約5〜約9、及び最も好ましくは約6〜約8である。pHは、緩衝液により、及び/又は希水素化ナトリウムの添加により維持され得る。
【0048】
還元反応の温度は好ましくは、約0℃〜約100℃、より好ましくは約10℃〜約80℃、さらにより好ましくは約15℃〜約60℃、最も好ましくは約20℃〜約50℃、及びさらに最も好ましくは約25℃〜約40℃で維持される。
次に、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、本明細書に記載される方法に従って決定され得る。
【0049】
ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約800〜約20,000,000Da、又はそれ以上の範囲に存在することができる。好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約1,000〜約20,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約1,000〜約15,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約1,000〜約10,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約2,000〜約10,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約2,000〜約8,000,000Daの範囲にある。
【0050】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約2,000〜約6,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約4,000〜約6,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約8,000〜約6,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約10,000〜約5,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約25,000〜約5,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約50,000〜約5,000,000Daの範囲にある。
【0051】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約50,000〜約4,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約50,000〜約3,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約50,000〜約2,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約50,000〜約1,000,000Daの範囲にある。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸誘導体の平均分子量は、約50,000〜約500,000Daの範囲にある。
【0052】
得られるヒアルロン酸誘導体は、当業界において知られている方法により回収され得る。例えば、アメリカ特許第5,023,175号及びRadaeva など., 1997, Prikl. Biokhim. Mikrobiol 33: 133-137を参照のこと。例えば、ヒアルロン酸誘導体は、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿(但し、それらだけには限定されない)を包含する従来の方法により回収され得る。
【0053】
次に、単離されたヒアルロン酸誘導体はさらに、当業界において知られている種々の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば、分離用等電点電気泳動)、差異溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出(但し、それらだけには限定されない)により精製され得る(例えば、Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)。
【0054】
例えば、還元が完結された後、ヒアルロン酸誘導体は、過剰の有機溶媒、例えばエタノール、アセトン、メタノール又はイソプロピルアルコールの添加により沈殿され得る。誘導体化された生成物の精製に関しては、それは遠心分離され、そして溶媒、例えばエタノール、メタノール又はアセトンにより洗浄され得る。次に、生成物は透析され、実質的に純粋なヒアルロン酸誘導体が供給される。
【0055】
ヒアルロン酸誘導体は、ヒアルロン酸のピラノシルβ−1,3−N−アセチルグルコサミン又はβ−1,4−グルクロン酸単位の特異的化学シフトとは異なる、アミノ化されたソルビトール(グルシトール)に対応する特異的化学シフトを決定することによるプロトン又は13C−NMR、又はグルコース及びその誘導体について開発された他の分光分析方法(McNichols and Cote, 2000, Journal of Biomedical Optics 5; 5-16)、又は還元糖−特異的試薬、例えばp−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジドにより検出されるようなヒアルロン酸還元末端の損失(Schuelein, 1997, J. Biotechnol. 57: 71-81)により特徴づけられ得る。
【0056】
本発明はまた、ヒアルロン酸、及びジアミン、ポリアミン又はその組合せを含んで成る単離されたヒアルロン酸誘導体にも関する。例えば、単離されたヒアルロン酸誘導体は、ジアミンについて、構造体HA-CH2-NH- R-NH-CH2-HA及びポリアミンについて、構造体HA-CH2-NH-R(-NH-CH2-HA)-NH-CH2-HAを有することができ、ここでHAはヒアルロン酸であり、そしてRはジアミン又はポリアミンの構造体の残りである。本発明のヒアルロン酸誘導体の例は、図4に示される。ヒアルロン酸の還元末端(アルドース)によるジアミンのシッフ塩基の形成が、ヒアルロン酸末端のピラノース環の開環を導き、そしてシッフ塩基還元がその対応するソルビトール成分の形成を導く。
【0057】
ヒアルロン酸及びジアミンの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0058】
ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり2又はそれ以上のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり少なくとも2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり少なくとも3つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり少なくとも4つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0059】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり少なくとも5つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり少なくとも6のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり少なくとも7つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0060】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり少なくとも8つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり少なくとも9つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり少なくとも10のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0061】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり3つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり4つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり5つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0062】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり6のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり7つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり8つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり9つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体は、ポリアミンの分子当たり10のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0063】
ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり2又はそれ以上のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも3個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0064】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも4個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも5個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも6個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0065】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも7個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも8個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0066】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも9個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも10個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0067】
もう1つの好ましい観点においては、好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり3個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり4個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0068】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり5個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり6個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり7個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0069】
もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり8個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり9個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。もう1つの好ましい観点においては、ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体は、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり10個のヒアルロン酸分子を含んで成るか、又はそれらから成る。
【0070】
本発明のヒアルロン酸誘導体は、天然のヒアルロン酸とは関連しないいくつかの改良された性質を有する。それらの改良された性質は、粘弾性、機械、安定性及び/又はマトリックス/キャリヤー性質を包含する。
【0071】
本発明の方法は、種々の適用のために所望される、1.4〜4MDaのヒアルロン酸生成物に、0.7〜2MDaのバチルス−生成されたヒアルロン酸を転換するために使用され得る。例えば、Wobig など., 1999, Clin Ther. 21: 1549-1562, Armstrong など.,1997, Applied and Environmental Microbiology 63; 2759-2764; Goa and Benfield, 1994, Drugs 47: 536-566; Swann and Kuo, 1991, Hyaluronic acid, p. 286-395, in D. Byrom (ed.), Biomaterials-novel matenals from biological sources, Stockton Press, New York, NYを参照のこと。本発明の方法はまた、ヒアルロン酸を特定分子量に調整するためにも使用され得る。例えば、ジアミンにより、延長されたヒアルロン酸は出発材料の分子量を二倍にし、そしてポリアミン、例えばトリアミンにより、ヒアルロン酸誘導体は出発材料の分子量を三倍にすることができる。
【0072】
本発明のヒアルロン酸誘導体は、塩、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛又はコバルト塩の形で存在することができる。
【0073】
本発明のヒアルロン酸誘導体又はその塩は、当業界において知られている試薬及び方法を用いて架橋され得る。例えば、架橋は、EPO161887B1号に開示されるように、多官能価をポキシ化合物により調製され得る。全体の又は部分的な架橋されたエステルは脂肪族アルコールにより調製され得、そして無機又は有機塩基とのそのような部分的エステルの塩が、アメリカ特許第4,957,744号に開示される。架橋の他の手段は、アメリカ特許第5,616,568号、第5,652,347号及び第5,874,417号に開示されている。
【0074】
好ましい観点においては、本発明のヒアルロン酸誘導体又はその塩は好ましくは、ホウ素酸により架橋される。もう1つの好ましい観点においては、架橋されたヒアルロン酸誘導体は、ホウ素酸エステルを含んで成る。
【0075】
組成物
本発明はまた、本発明のヒアルロン酸誘導体を含んで成る組成物にも関する。
ヒアルロン酸誘導体を含んで成る組成物はまた、不活性成分、活性成分、又は活性成分及び活性成分の組合せを含んで成る。ヒアルロン酸誘導体は、活性成分のためのキャリヤーとして使用され得る。
【0076】
活性成分は好ましくは、薬理学的活性剤である。本発明に使用され得る薬理学的活性剤の非制限的例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:タンパク質及び/又はペプチド薬物、例えばヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン/ペプチド、顆粒球−コロニー刺激因子、エリトロポイエチン、骨形態発生タンパク質、インターフェロン又はその誘導体、インスリン又はその誘導体、アトリオペプチン−III 、モノクローナル抗体、腫瘍壊死因子、マクロファージ活性化因子、インターロイキン、腫瘍分解因子、インスリン様成長因子、上皮成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、第VII 因子、第VIII因子及びウロキナーゼ。
【0077】
不活性成分は好ましくは、医薬的に許容できるキャリヤーである。当業界において知られているいずれの医薬的に許容できるキャリヤーでも使用され得る。
本発明の組成物はさらに、水溶性賦形剤を含んで成る。水溶性賦形剤は、活性成分を安定化するために包含され得る。賦形剤は、タンパク質、例えばアルブミン又はゼラチン;アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、グルタミン酸、アルギニン又はリシン、又はその塩;炭水化物、例えばグルコース、ラクトース、キシロース、ガラクトース、フククトース、マルトース、サッカロース、デキストラン、マンニトール、ソルビドール、トレハロース、又はコンドロイチンスルフェート;無機塩、例えばホスフェート;界面活性剤、例えばTWEEN(商標)(ICI)、ポリエチレングリコール又はそれらの混合物を包含することができる。賦形剤又は安定剤は、生成物の0.001〜99重量%の範囲の量で使用され得る。
【0078】
好ましい観点においては、本発明の組成物は、ヒアルロン酸誘導体及び活性成分を含んで成る。
もう1つの好ましい観点においては、本発明の組成物は、ヒアルロン酸誘導体及び不活性成分を含んで成る。
もう1つの好ましい観点においては、本発明の組成物は、ヒアルロン酸誘導体、活性成分及び不活性成分を含んで成る。
【0079】
もう1つの好ましい観点においては、本発明の組成物は、有効量のヒアルロン酸誘導体及び医薬的に許容できるキャリヤー、賦形剤又は希釈剤を含んで成る。
もう1つの好ましい観点においては、医薬組成物は、ビークルとしての有効量のヒアルロン酸誘導体及び薬理学的活性剤を含んで成る。
好ましい観点においては、賦形剤又は希釈剤は、水溶性賦形剤である。より好ましい観点においては、賦形剤又は希釈剤は、ラクトースである。
【0080】
製品
本発明はまた、本発明のヒアルロン酸誘導体又はその組成物を含んで成る製品及び材料、例えば化粧品又は衛生品(例えば、医薬品又は手術用品)にも関する。
好ましい観点においては、化粧品は、活性成分として、有効量の本発明のヒアルロン酸誘導体又はその組成物を含んで成る。
【0081】
もう1つの好ましい観点においては、衛生品は、本発明のヒアルロン酸誘導体又はその組成物を含んで成る。より好ましい観点においては、衛生品は、オムツ、衛生用タオル、手術用スポンジ、創傷治癒スポンジ、及びバンドエイド又は他の創傷包帯材料に含まれる部分から成る群から選択される。
本発明はまた、本発明のヒアルロン酸誘導体又はその組成物を含んで成る医薬用カプセルにも関する。用語“医薬用カプセル”とは、微小カプセル、超微小カプセル、微小球又は超微小球を包含することが理解されるであろう。
【0082】
用途
本発明のヒアルロン酸誘導体又はその塩は、化粧品、眼科学、リウマチ学、薬剤及び遺伝子供給、創傷治癒及び組織工学内の広範囲の現在の及び進行中の用途に使用され得る。
本発明のヒアルロン酸誘導体又はその塩は、例えば変形性関節炎、癌、眼の状態、脈管形成、抜け毛及び禿頭症、創傷又はドライスキンの処理に使用され得る。
【0083】
本発明のヒアルロン酸誘導体又はその塩はまた、例えば薬理学的活性剤の皮膚又は経皮投与、又は化粧品の皮膚投与の実施のためにも使用され得る。
本発明はさらに、次の例により記載されるが、それらは本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0084】
緩衝剤及び基質として使用される化学薬品は、少なくとも試薬品種の市販の製品である。
溶液
0.22MDa、0.59MDa、及び0.81MDaのヒアルロン酸(ナトリウム塩)(医学的品種、LifeCore Biomedical, Inc., Chaska, MN, USA)の混合物を、それぞれ約89〜91μM、約17μM及び約6.2μMの還元末端濃度を有する、それぞれ20g, 10g及び5gのヒアルロン酸を、1.0Lのガラス蒸留された水において混合することにより調製した。製造業者により供給される分子量を用いて、個々のヒアルロン酸分子が線状であり、そしてわずか1つの還元末端を有することを仮定して、ヒアルロン酸のモル濃度に等しい、還元末端の濃度を計算した。
ポリ−L−リシン(ポリK)ストック溶液(0.5mM)を、0.2mlのガラス蒸留された水に、8.8mgの(DP 401-453, MW 84-95 kDa, Sigma Chemical Co., St.- Louis, MO, USA)を溶解することにより製造した。
【0085】
緩衝ストック溶液を、41.6μlの10×PBS(1L当たり80gのNaCl、2.0gのKCl、14.4gのNa2HPO4及び2.4gのKH2PO4から構成されるリン酸緩衝溶液)、4.8μlの0.1Mの硼酸ナトリウム(pH9.5)、46.4mgの塩化ナトリウム及び124.8μlのガラス蒸留された水を混合することにより製造した。
シアノ硼水素化ナトリウム(NaCNBH3)ストック溶液(2M)を、17.9mgのシアノ硼水素化ナトリウム(95%の純度、Aldrich Chemical Co., Inc., Milwaukee, WI, USA)、を135.5μlのガラス蒸留された水に溶解することにより使用の直前に製造した。
【0086】
例1ポリリシンによるヒアルロン酸の誘導体化
200μlの0.22MDaヒアルロン酸、約0.5Mの最終塩化ナトリウム濃度を有する、約8.5にpHを調節するための緩衝ストック溶液22.3μl、及びポリ−L−リシンについて約5μM及びリシン単位について約3mMの最終濃度を有するポリ−L−リシンストック溶液2μlの混合物を、130rpmで混合しながら、50℃で1.7mlの微小遠心分離管においてインキュベートした。6日後(毎日ピペットで混合しながら)、12μlのNaCNBH3ストック溶液を添加し、約0.1Mの最終濃度にし、続いて、毎日ピペットで混合しながら、50℃で3日間、インキュベートした。次に、約1.5mgのNaCNBH3粉末を添加し(これは、約0.1Mの新鮮なNaCNBH3に対応する)、続いて、毎日ピペットで混合しながら、50℃で4日間インキュベートした。0.59及び0.81MDaのヒアルロン酸をまた、同じ条件下で試験した。ポリ−L−リシン及びNaCNBH3の不在下での溶液を、対照として使用した。
【0087】
小溶液に関しては、溶液の毛管現象を用いて、ヒアルロン酸反応生成物の粘度を比較した。パスツールガラスピペット(約1mmの直径)を、溶液の表面下にわずかに沈め、液体を吸引した。2分後、上昇する液体の静止した高さ(h)及び体積を三重反復して測定した。下記等式(Pelofsky, 1966, J. Chem. Eng. Data 11: 394-397)に基づいて、より高い粘度(η)がより低いhを導く:
h=4δcosβ/(γd)、ここでδは表面張力であり、βは接触角度であり、dは直径であり、そしてγは特定重量であり、ここでδの対数は粘度に反比例する。
【0088】
大きな体積のサンプルに関しては、cPでの粘度を、Cole Palmer 98936回転粘度計(Cole-Parmer instrument Company, Vernon Hills, IL, USA)を用いて、その製造業者の説明書に従って測定した。
ヒアルロン酸反応溶液を含む管の反転は、ポリ−L−リシン及びNaCNBH3との反応が対照よりも、より粘性(低い流動性)であることを示した。表1は、毛細現象測定の液体上昇の高さ(h)を示す。検出できる粘度上昇が、ヒアルロン酸のポリ−L−リシン及びNaCNBH3との反応の後、観察された。粘度上昇の程度は、0.22MDaのHA>0.59MDaのHA>0.81MDaのHAの順序であり、これは、遊離還元末端の濃度の順序と一致する。
【0089】
【表1】

【0090】
観察される粘度の変化は、ポリ−L−リシンにおける第一アミンがヒアルロン酸の還元末端と反応したことを示唆した。反応は、より短い長さのヒアルロン酸により、より容易に進行するように思われ、これは、与えられたヒアルロン酸濃度に関して、より入手できる還元末端に、たぶん寄与できる。
【0091】
例2ポリリシン及び/又は1,8−ジアミノオクタンによるヒアルロン酸の誘導体化
第1の実験においては、20g/lの0.22MDaヒアルロン酸、0.5Mの塩化ナトリウム、0.3mMの硼酸ナトリウム、1/4強度のPBS緩衝ストック溶液(最終pH8.6)を含む、3個の0.2mlの溶液を調製した。第1溶液に、6.6mMの1,8−ジアミノオクタン(約13mMの−NH2)を添加した。第2溶液に、0.56μMのポリ−L−リシン(約0.35mMの−NH2)を添加した。第3溶液に、14μMのポリ−L−リシン及び6.6mMの1,8−ジアミノオクタン(約13mMの−NH2)及び0.1MのNaCNBH3を添加した。その溶液を、1.7mlの微小遠心分離管において、毎日ピペットで混合しながら3日間、45℃でインキュベートした。
【0092】
第2の実験においては、5g/lの0.81MDaヒアルロン酸、0.5Mの塩化ナトリウム、0.3mMの硼酸ナトリウム、1/4強度のPBS緩衝ストック溶液(最終pH8.6)を含む、4個の0.2mlの溶液を調製した。第1溶液に、0.31mMの1,8−ジアミノオクタン(約0.6mMの−NH2)を添加した。第2溶液に、0.1MのNaCNBH3を添加した。第3溶液に、0.31mMの1,8−ジアミノオクタン(約0.6mMの−NH2)及び0.1MのNaCNBH3を添加した。第4溶液に、3.1μMの1,8−ジアミノオクタン(約6mMの−NH2)及び0.1MのNaCNBH3を添加した。その溶液を、1.7mlの微小遠心分離管において、毎日ピペットで混合しながら5日間、45℃でインキュベートした。
【0093】
第1の実験においては、反応管の反転は、ポリ−L−リシン、1,8−ジアミノオクタン及びNaCNBH3を含む反応が他の2種の反応よりも、有意に、より粘性であることを示した。第2の実験においては、反応管の反転は、0.3mMの1,8−ジアミノオクタン及び0.1MのNaCNBH4を含む反応が他の4種の反応よりも、より粘性であることを示した。観察される粘度変化は、1,8−ジアミノオクタンにおける第一アミンがヒアルロン酸の還元末端と反応したことを示唆した。
【0094】
本明細書に記載、請求される発明は、本明細書に開示される特許の態様により範囲を限定されるものではない。何故ならば、それらの態様は本発明のいくつかの観点を例示するものだからである。いずれかの同等の態様が本発明の範囲内で意図される。実際、本明細書に示され、そして記載されるそれらの修飾の他に、本発明の種々の修飾は、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾はまた本発明の範囲内にある。一致しない場合、定義を含む開示により処理されるであろう。
種々の文献が本明細書に引用されており、それらの開示は引用により本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、ヒアルロン酸におけるN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びグルクロン酸(GlcUA)の反復二糖単位の構造式を示す。
【図2】図2は、イミンを生成するために、ジアミン又はポリアミンとのヒアルロン酸の反応を示す。
【図3】図3は、アミンを生成するために、還元剤としての硼水素化物によるイミンの還元を示す。
【図4】図4は、ジアミン及びヒアルロン酸の誘導体を示し、ここでR’はH又はNHCOCH3であり、R”はCO2H又はCH2OHであり、そしてRはジアミンの構造式の残りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒアルロン酸、及びジアミン、ポリアミン又はその組合せを含んで成る液体溶液を、イミンを形成するのに適切なpHで混合し;
(b)前記イミンを、アミンに、ヒアルロン酸の誘導体を生成するのに適切なpHで還元し;そして
(c)前記ヒアルロン酸の誘導体を回収することを含んで成る、ヒアルロン酸誘導体の調製方法。
【請求項2】
前記ジアミンが、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及び複素芳香族ジアミンから成る群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ジアミンが、1,8−ジアミノオクタンである請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアミンが、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン及び複素芳香族ポリアミンから成る群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアミンが、ポリ−L−リシンである請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記段階(a)におけるヒアルロン酸及びジアミンが、少なくとも約2.5:1(ヒアルロン酸:ジアミン)のモル比で存在する請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記段階(a)におけるヒアルロン酸及びポリアミンが、少なくとも約2.5:1(ヒアルロン酸:ポリアミン)のモル比で存在する請求項1、4及び5記載の方法。
【請求項8】
前記段階(a)におけるヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せが、少なくとも約5:1の(ヒアルロン酸:ジアミン及びポリアミンの組合せ)のモル比で存在する請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記段階(a)のpHが、約4〜約9で維持される請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記段階(a)の温度が、約0℃〜約100℃で維持される請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記還元が、化学還元又は電気化学還元剤により行われる請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記段階(b)のpHが、約4〜約10で維持される請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記段階(b)の温度が、約0℃〜約100℃で維持される請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ヒアルロン酸の誘導体が、沈殿、濾過、クロマトグラフィー又は蒸発により回収される請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ヒアルロン酸及びジアミンの誘導体が、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか又はそれらから成る請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体が、ポリアミンの分子当たり少なくとも2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか又はそれらから成る請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体が、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか又はそれらから成る請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ヒアルロン酸、及びジアミン、ポリアミン又はその組合せを含んで成る、単離されたヒアルロン酸誘導体。
【請求項19】
前記ジアミンが、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及び複素芳香族ジアミンから成る群から選択される請求項18記載の単離されたヒアルロン酸誘導体。
【請求項20】
前記ジアミンが、1,8−ジアミノオクタンである請求項18記載の単離されたヒアルロン酸誘導体。
【請求項21】
前記ポリアミンが、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン及び複素芳香族ポリアミンから成る群から選択される請求項18記載の単離されたヒアルロン酸誘導体。
【請求項22】
前記ポリアミンが、ポリ−L−リシンである請求項18記載の単離されたヒアルロン酸誘導体。
【請求項23】
前記ヒアルロン酸及びジアミンの誘導体が、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか又はそれらから成る請求項18記載の単離されたヒアルロン酸誘導体。
【請求項24】
前記ヒアルロン酸及びポリアミンの誘導体が、ポリアミンの分子当たり少なくとも2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか又はそれらから成る請求項18記載の単離されたヒアルロン酸誘導体。
【請求項25】
前記ヒアルロン酸、及びジアミン及びポリアミンの組合せの誘導体が、ジアミンの分子当たり2つのヒアルロン酸分子、及びポリアミンの分子当たり少なくとも2つのヒアルロン酸分子を含んで成るか又はそれらから成る請求項18記載の単離されたヒアルロン酸誘導体。
【請求項26】
請求項18〜25のいずれか1項記載のヒアルロン酸誘導体、及び不活性成分、活性成分、又は不活性成分及び活性成分の組合せを含んで成る組成物。
【請求項27】
前記活性成分が、薬理学的活性剤である請求項26記載の組成物。
【請求項28】
水溶性賦形剤をさらに含んで成る請求項26又は27記載の組成物。
【請求項29】
請求項18〜25のいずれか1項記載のヒアルロン酸誘導体又はその組成物を含んで成る化粧品。
【請求項30】
請求項18〜25のいずれか1項記載のヒアルロン酸誘導体又はその組成物を含んで成る衛生品。
【請求項31】
前記製品が、オムツ、衛生用タオル、手術用スポンジ、創傷治癒スポンジ、及びバンドエイド又は他の創傷包帯材料に含まれる部分から成る群から選択される請求項30記載の衛生品。
【請求項32】
請求項18〜25のいずれか1項記載のヒアルロン酸誘導体又はその組成物を含んで成る医薬用カプセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−528438(P2009−528438A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557481(P2008−557481)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/062960
【国際公開番号】WO2007/101243
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(504235872)ノボザイムス バイオポリマー アクティーゼルスカブ (12)
【Fターム(参考)】