ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングルLK68またはLK8遺伝子を有効成分として含有する抗癌治療剤及びそれを使用した癌治療方法
本発明は、抗癌または抗転移遺伝子治療剤に関するもので、詳細には、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または抗転移遺伝子治療剤及び前記遺伝子治療剤を使用した癌治療方法に関するものである。本発明の遺伝子治療剤は、腫瘍の成長抑制及び転移抑制効果を有するため、癌転移抑制剤または原発腫瘍の治療剤等の多様な固形癌の予防及び治療に有用に使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌用遺伝子治療剤に関するものである。詳細には、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)遺伝子を含む遺伝子伝達体、または細胞で構成される抗癌または抗転移遺伝子治療剤及び前記遺伝子治療剤を使用した癌治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は非正常的かつ非制御性で、無秩序な細胞増殖の産物である。このような腫瘍が破壊的な成長性、浸透性及び転移性があれば悪性に分類される。浸透性というのは、周囲組織を浸透または破壊する性質で、一般的に組織の境界をなしている基底層を破壊して腫瘍が局部的に伝播することを意味し、時々体内の循環系にも流入する。転移というのは、一般的にリンパ管(lymphotic)または血管によって原発位置とは異なる所に腫瘍細胞が広がることを意味する。転移はまた、腸液性体腔または他の空間を通じて直接伸長して腫瘍細胞を移動させることをも意味する。
【0003】
現在、癌は主に3種の治療法、即ち外科的な手術、放射線照射及び化学療法のうちの1種またはそれらの組み合わせによって治療されている。手術は、疾病組織を大部分除去することを含む。このような外科的手術は、特定部位、例えば乳房、結腸及び皮膚に位置した腫瘍を除去する際には効果的であるが、脊椎のような一部区域において腫瘍を治療したり、白血病のような分散性腫瘍疾患を治療したりする際には使用できない。
【0004】
化学療法は、細胞複製または細胞代謝を崩壊させ、乳房、肺及び精巣の癌を治療する際に多く行われるが、腫瘍疾病を治療するのに使用される全身化学療法の副作用は、癌治療を受ける患者には最も問題になっている。このような副作用の中で吐き気と嘔吐は、最も一般的で深刻な副作用である。化学療法による副作用は患者の生命に大きな影響を及ぼし、治療に対する患者の順応性を急激に変化させ得る。また、化学治療剤と関連した副作用としては、一般的にこのような薬物の投与時注意しなければならない容量制限毒性(DLT, Dose Limiting Toxicity)がある。例えば、粘膜炎は色々な抗癌剤、例えば抗代謝物質細胞毒素剤の5-フルオロウラシル、メソトレクサイト及び抗腫瘍抗生剤(例、ドキソルビシン)等に対する容量制限毒性がある。このような化学療法由来の副作用の大部分は、ひどい場合、入院を要したり痛みを治療するために鎮痛剤を必要としたりする。このような化学治療剤及び放射線治療による副作用は、癌患者の臨床的処置時の主要な問題になっている。
【0005】
遺伝子治療というのは、DNA組換え方法を使用して治療用遺伝子を患者の細胞内に導入して遺伝子異常を矯正したり、細胞に新しい機能を追加したりして、人体細胞の遺伝的変形を通じて各種遺伝疾患、癌、心血管疾患、感染性疾病、そして自己免疫疾患等のような疾患を治療したり予防したりする方法である。即ち、治療遺伝子を体内の所望する臓器に伝達して細胞内で治療用または正常蛋白質が発現するようにして疾病を治療することを遺伝子治療という。遺伝子治療は、一般的な薬物による治療に比べて優れた選択性を有し、他の治療法では調節することが難しい疾病の治療率及び治療速度を改善して長期間適用できる。遺伝子治療は、単純に疾病の症状を治療することに留まらず疾病の原因を治療して除去する方式である。このような遺伝子治療を効果的に行なうためには、治療遺伝子を所望する標的細胞に伝達して高い発現効率が得られるようにする遺伝子伝達技術が必要である。
【0006】
遺伝子伝達体は、所望する治療遺伝子を対象細胞に導入するために必要な媒介体で、理想的な遺伝子伝達体は人体に無害で大量生産が容易であり効率的に遺伝子を伝達することができ、持続的に遺伝子を発現できなければならない。遺伝子伝達体技術は、遺伝子治療技術の核心要素であり、現在遺伝子治療に多く使用されている代表的な遺伝子伝達体としては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスのようなウイルス性伝達体とリポソーム、ポリエチレンイミンのような非ウイルス性伝達体がある。
【0007】
遺伝子を伝達する方法には、化学的、物理的な方法の他にもリポソームを使用する接合方法、受容体を使用する方法及びウイルスを使用する方法がある。各方法毎に長所や短所があるが、本発明者らは伝達効率と発現効率を考慮してウイルス伝達体を使用した伝達方法を選択した。ウイルス伝達体としては、様々なウイルスがあるが、最も広く使用されているものとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスとレトロウイルス等がある。
【0008】
アデノウイルスは、E1遺伝子を欠損させて、その部位に伝達しようとする治療遺伝子を挿入して作った組換えウイルスシステムとして使用されている。このシステムを使用して遺伝子治療用ベクターの約20%程度が試みられている(Journal of Gene Medicine Website, www.wiley.co.uk/genemd/clinical/)。アデノウイルス遺伝子伝達体は、多様な細胞によく感染するだけではなく、宿主細胞の染色体内へ挿入しないので持続的な発現様相を見るには難しいが、早い時期に高い発現を誘導するには適合したシステムである。
【0009】
アデノ随伴ウイルスは、ITR、Rep、Cap、 ITRの順に構成されるゲノムを有している。アデノ随伴ウイルスが増殖をするためには、アデノウイルス、ヘルペスウイルスのようなヘルパーウイルス(helper virus)の助けを必要とする。アデノウイルスをヘルパーウイルスとする場合、アデノウイルスのE1、E2a、E4、VAの遺伝子を必要とするが、これらの遺伝子と自身のRepとCap遺伝子が含まれたヘルパープラスミドを使用してRepとCapが抜けた部位に治療用遺伝子が挿入された組換えアデノ随伴ウイルスを製造できる(Samulski, R.J. ら, J. Virol., 1989年, 第63巻, 3822-3828頁)。アデノ随伴ウイルスは、発現効率が高いでけではなく遺伝子を宿主細胞の染色体 19番のアデノS1という特定位置に挿入するために持続的な発現効果を示す。さらに、自体では、増殖できないウイルスであるので野生型ウイルスの汚染のおそれがなく、その他のシステムより安全で、ウイルスによって発生する副作用が報告されたことがない。
【0010】
また、レトロウイルスは、現在最も広く使用されているベクターシステムで、遺伝子治療臨床試験で使用されている治療用ベクター全体の約40%程度を占めている(Journal of Gene Medicine Website, www.wiley.co.uk/genmed/clinical)。アデノ随伴ウイルスのITR(inverted terminal repeat)配列と類似して、両末端のLTR(long terminal repeat)配列間に治療用遺伝子とネオマイシンやハイグロマイシン、ピューロマイシンのような抗生剤抵抗遺伝子を挿入して組換えウイルスを製造する(Miller, A.D. ら, Biotechniques, 1989年, 第7巻, 980-990頁)。レトロウイルスシステムを使用すると宿主細胞の染色体に遺伝子が無作為的に挿入されて持続的な高い発現効率を期待できるが、充分な数のウイルスを製造することが難しく、非増殖細胞に対する感染効率が低いことなどが短所として指摘されている。また、直接体内に注入するよりは間接的な遺伝子伝達方法をよく使用する。即ち、組換えウイルスを直接注射するのではなく、インビトロで培養した細胞にまず感染させて遺伝子が伝達された細胞だけを選別して体内に注入する方法が広く使用されている。しかし、生産細胞内で類似塩基配列による相同組換えによって発生し得る複製可能レトロウイルス(RCR, replication competent retrovirus)による副作用問題とウイルス生産収率及び感染効率の増大のための研究が先行しなければならないシステムである。
【0011】
一方、遺伝子治療の戦略において、腫瘍細胞を制御する戦略としては腫瘍抑制遺伝子を使用する方法、腫瘍選択的殺傷ウイルスを使用する方法、自殺遺伝子を使用する方法、免疫調節遺伝子を導入する方法等がある。腫瘍抑制遺伝子を使用する方法は、相当数の癌患者で遺伝子が欠損または変形しているp53のような腫瘍抑制遺伝子を原型にして人体に伝達して癌を治療する方法で、腫瘍選択的殺傷ウイルスを使用する方法は、癌組織で変形している腫瘍抑制遺伝子の活性を利用して腫瘍細胞でのみ選択的に増殖できるウイルス遺伝子伝達体を人体に導入して治療効果を得ようとする方法で、すべて腫瘍細胞を直接殺傷しようとする戦略である。自殺遺伝子を使用する方法でHSV-TKのような感受性遺伝子を導入して腫瘍細胞の自殺を誘導する方法もこのような範疇に属する。一方、免疫調節遺伝子を導入する方法は、抗腫瘍免疫反応を増強するインターロイキン12、インターロイキン4、インターロイキン7、γインターフェロン、腫瘍壊死因子等の遺伝子を人体に伝達してT細胞に腫瘍を認識するように誘発したり、腫瘍誘発蛋白質を遮断して細胞自殺を誘導したりして間接的に疾病を治療する戦略である。アンジオスタチン、エンドスタチンのような血管生成抑制因子を発現させて腫瘍への栄養供給を遮断して壊死させる方法もこのような間接的疾病治療戦略として広く認識されている。
【0012】
クリングル(kringle)は、約80個のアミノ酸と3個の分子内ジスルフィド結合で構成された蛋白質の構造領域である。クリングル構造はアンジオスタチン(O'Reilly, M.S. ら, Cell, 1994年, 第79巻, 315-328頁)、プロトロンビン(Walz, D.A. ら, Proc. Natl. Acad. Sci., 1977年, 第74巻, 1069-1073頁)、ユーロキナーゼ(Pennica, D. ら, Nature, 1983年, 第301巻, 579-582頁)、肝細胞成長因子(Lukker, N.A. ら, Protein Eng., 1994年, 第7巻, 895-903頁)及びアポリポ蛋白質(a)(apolipoprotein(a))(McLean, J.W. ら, Nature,1987年, 第 330巻, 132-137頁)等のような多数の蛋白質から発見される。クリングル領域は、独立的な折り畳み単位(folding unit)で構成され、その機能的な役割はまだ明確に示されていない。しかし、クリングル構造を有する蛋白質等の多様な機能により、クリングル構造は共通的な機能を有しないものと認識されてきた。
【0013】
生体内において、肝臓でのみ生産される糖蛋白質の一種であるアポリポ蛋白質(a)もまた、多数のクリングル構造を含んでいる。アポリポ蛋白質(a)は、低密度リポ蛋白質(LDL)の主要蛋白質成分であるアポB-100と共有的に結合してリポ蛋白質(a)(lipoprotein(a))を形成する(Fless, G. M., J. Biol. Chem., 1986年, 第261巻, 8712-8717頁)。アポリポ蛋白質(a)は、生体内でコレステロール運搬を担当し、血漿でのリポ蛋白質(a)濃度増加は、単独的にも動脈硬化(artherosclerosis)及び心臓疾患の主な危険因子として報告され(Armstrong, V.W. ら, Artherosclerosis, 1986年, 第62巻, 249-257頁; Assmann, G., Am. J. Cardiol., 1996年, 第77巻, 1179-1184頁)、リポ蛋白質(a)の役割は、大部分アポリポ蛋白質(a)を媒介しておこなわれると報告された。アポリポ蛋白質(a)は、プラスミノゲンクリングルIV及びVと類似性を示す2種類のクリングル領域と非活性の蛋白質分解酵素類似(protease-like)領域を含んでいる。アポリポ蛋白質(a)クリングルIV類似領域は、アミノ酸配列の相同性によって再び10種の亜形(subtype; IV1〜IV10)に分けられ、各々は一つずつ存在するが、IV2クリングルはアポリポ蛋白質(a)遺伝子の多様なヒト対立遺伝子に3〜42個のコピー数(copy number)で存在する。そして、最後のクリングルVは、プラスミノゲンクリングル-5と83.5%のアミノ酸配列相同性を有する。
【0014】
本発明者らは、2003年にLK8蛋白質を有効成分として含む抗癌剤を出願した(大韓民国特許出願番号:第2003-10797号)。しかし、固形癌や転移癌は生体内で長期間休止期(dormant stage)を経ても再び成長する能力がある一方、蛋白質を使用した抗癌剤は生体内半減期が相対的に短い。したがって、有効な抗癌効能を得るためには多量の蛋白質を長期間反復的に投与して腫瘍での局所的な抗癌蛋白質濃度を一定水準以上に維持しなければならない。
【0015】
したがって、この方法は多量の蛋白質を必要とするので、それを生産できる設備及び技術が拡充されなければならず、生産が可能であるとしてもそれは患者と生産者両方に多くの費用が必要とされる。また、患者の立場からすると、長期間薬物を反復投与することは面倒なことであり、抗癌用蛋白質は大部分毒性がないものと報告されているが、それら蛋白質が大部分微生物を使って生産された組換え蛋白質であるので多量に長期間投与する場合、前記組換え蛋白質の生産時にエンドトキシン(bacterial endotoxin)等に汚染され得る。この場合前記トキシンが毒性を示す危険が常存している。結局、蛋白質を使用した抗癌剤開発のためにはこのような問題点を解決しなければならない。
【0016】
以上のことに鑑みて本発明者らは、蛋白質をコードする遺伝子を使用した遺伝子治療法は、比較的手軽に全身または腫瘍での局所的な抗癌用蛋白質の有効濃度を持続的に維持させられるという長所があるので、蛋白質治療法の短所を克服できる有用な代替方法であると判断し、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングルKIV9-KIV10- KV(LK68)及びKV(LK8)遺伝子をエクスビボ(ex vivo)で結腸癌細胞に伝達してその細胞株を使用した動物実験で、これら遺伝子の伝達が腫瘍の成長と転移を効果的に減少させられるという事実を発見して、LK68遺伝子及びLK8遺伝子を抗癌用遺伝子治療剤に使用できることを確認することにより本発明を完成させた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または抗転移遺伝子治療剤を提供することである。
【0018】
本発明のまた他の目的は、前記遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を個体に非経口的に投与する工程を含む、固形癌の予防または治療の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために本発明は、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または転移抑制用遺伝子治療剤を提供する。
【0020】
また、本発明は前記LK68またはLK8遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を個体に非経口で投与する工程を含む、固形癌予防または治療の方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
用語の定義
遺伝子伝達体は、治療対象にした個体に本発明のLK8またはLK68遺伝子を導入させるための遺伝子の運搬媒介体を意味し、治療対象になる個体で発現するのに適切な、プロモーター、エンハンサー、前記LK8またはLK68の遺伝子、転写終結部位等を含み、線形DNA断片、原型プラスミドベクター、ウイルス性発現ベクターを含むベクター、組換えアデノウイルス、組換えレトロウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス、組換えヘルペスシンプレックスウイルス及び組換えレンチウイルスからなる群から選択される組換えウイルスを全て含む。前記プロモーターは、特定器官及び組織特異的プロモーターが使用でき、該当器官及び組織で増殖できるよう複製起点を含むことができる。
【0022】
AAVは、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus)を意味し、外来遺伝子を発現する組換えアデノ随伴ウイルスまで包括する概念であるが、本明細書で特別な言及が無い限り、自然形ウイルス(wild type virus)を指す。組換えアデノ随伴ウイルス(recombinant adeno-associated virus, rAAV)は、目的外来遺伝子が挿入され前記外来遺伝子を発現できるアデノ随伴ウイルスを指し、遺伝子治療に使われる遺伝子伝達体で、組換えAAVベクターとも称される。一方、rAAV-LK8はLK8蛋白質の発現ベクターのpAAV-LK8が形質導入された細胞から生成されたLK8発現組換えアデノ随伴ウイルスを意味する。同様に、rAAV-LK68はLK68発現組換えアデノ随伴ウイルスを意味する。
【0023】
組換えアデノ随伴ウイルス発現ベクター(recombinant adeno associated viral expression vector, 以下「rAAV発現ベクター」と略称する)は、狭い意味では組換えアデノ随伴ウイルスにより感染した細胞で外来遺伝子が発現されるように製造された外来遺伝子が含まれた発現ベクターを意味し、広い意味では下記のAAV rep-cap遺伝子の発現ベクター及びヘルパープラスミドまたはヘルパーウイルスを含み、細胞に形質導入されて組換えアデノ随伴ウイルスを形成させるのに必要な全てのベクターを意味する。本明細書で特別な言及が無い限り、組換えアデノ随伴ウイルス発現ベクターは後者の意味に使用される。
【0024】
AAV rep-cap遺伝子の発現ベクターは、前記組換えアデノ随伴ウイルス発現ベクターから由来したゲノムの複製に必要な酵素(rep)及びアデノウイルス粒子の形成のための外皮蛋白質(cap)を各々コードする遺伝子の発現ベクターを意味し、前記組換えアデノ随伴ウイルス発現ベクターと同時形質導入することにより組換えアデノ随伴ウイルスの細胞内生成が可能である。ヘルパーウイルスは、独自に複製が不可能なアデノ随伴ウイルスの感染性粒子を形成できるように手助けするウイルスを意味し、アデノウイルス、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)及びヘルペスシンプレックスウイルス(herpes simplex virus)等がこれに属し、ヘルパープラスミド(helper plasmid)は前記ヘルパーウイルスの機能を代行するプラスミドを意味する。一方、前記AAV rep-cap遺伝子発現ベクター及びヘルパープラスミドは、一つのベクターで具現でき、代表的な例としては、pDG(DKFZ, Germany)がある。前記AAVrep-cap遺伝子発現ベクター及びヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドは全て独自に感染性アデノ随伴ウイルス粒子を形成させられないrAAV発現ベクターを助けて感染性rAAV粒子を形成させられるので、本文章では便宜上、AAVrep-cap遺伝子及びアデノ随伴ウイルス感染性粒子形成に必要な前記アデノウイルス起源遺伝子を同時に含むプラスミド(例えば、pDG)をヘルパープラスミドと称し、前記ヘルパープラスミドとヘルパーウイルスを包括してヘルパーベクター(helper vector)と称する。したがって、本明細書で特別な言及が無い限り、ヘルパープラスミドは、前記AAV rep-cap遺伝子発現ベクター及びアデノ随伴ウイルス感染性粒子形成に必要な前記アデノウイルス起源遺伝子の発現ベクター全てを包括する意味で使用する。
【0025】
発明の詳細な説明
前記目的を達成するために、本発明はヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または転移抑制用遺伝子治療剤を提供する。
【0026】
また、本発明は前記LK68またはLK8遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を個体に非経口で投与する工程を含む、固形癌の予防または治療の方法を提供する。
【0027】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0028】
本発明は、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または抗転移遺伝子治療剤を提供する。
【0029】
ここで、前記LK68遺伝子は特別にこれに制限されるものではなく、配列番号1で記載される塩基配列であることが好ましく、前記LK68遺伝子を含む遺伝子伝達体は特別にこれに制限されるものではなく、人体または動物細胞で発現される線形DNA、プラスミドベクター、ウイルス性発現ベクターを含むベクターまたは組換えレトロウイルス(retrovirus)ベクター、組換えアデノウイルス(adenovirus)ベクター、組換えアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus, AAV)ベクター、組換えヘルペスシンプレックスウイルス(herpes simplex virus)ベクターまたは組換えレンチウイルス(lentivirus)ベクターを含む組換えウイルスベクターであることがより好ましく、pSecTag-LK68、pLXSN-LK68、rAAV-LK68及びpAAV-LK68からなる群から選択されることが最も好ましい。前記LK68遺伝子を含む細胞は特別にこれに制限されるものではなく、造血幹細胞(hematopoietic stem cells)、樹状細胞(dendritic cells)、自己腫瘍細胞(autologous tumor cells)及び株化腫瘍細胞(established tumor cells)からなる群から選択されることが好ましい。
【0030】
前記LK8遺伝子は、特別にこれに制限されるものではなく、配列番号1で記載される塩基配列であることが好ましく、前記LK8遺伝子を含む遺伝子伝達体は特別にこれに制限されるものではなく、人体または動物細胞で発現される線形DNA、プラスミドベクター、ウイルス性発現ベクターを含むベクターまたは組換えレトロウイルス(retrovirus)ベクター、組換えアデノウイルス(adenovirus)ベクター、組換えアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus, AAV)ベクター、組換えヘルペスシンプレックスウイルス(herpes simplex virus)ベクターまたは組換えレンチウイルス(lentivirus)ベクターを含む組換えウイルスベクターであることがより好ましく、pSecTag-LK8、pLXSN-LK8、rAAV-LK8及びpAAV-LK8からなる群から選択されることが最も好ましい。前記LK8遺伝子を含む細胞は特別にこれに制限されるものではなく、造血幹細胞(hematopoietic stem cells)、樹状細胞(dendritic cells)、自己腫瘍細胞(autologous tumor cells)及び株化腫瘍細胞(established tumor cells)からなる群から選択されることが好ましい。
【0031】
また、前記治療剤は、LK68またはLK8遺伝子を含むベクターの場合、0.05〜500mgを含有することが好ましく、0.1〜300mgを含有することがさらに好ましく、LK68またはLK8遺伝子を含む組換えウイルスの場合、103〜1012IU(10〜1010PFU)を含有することが好ましく、105〜1010IUを含有することがさらに好ましい。一方、前記治療剤は、LK68またはLK8遺伝子を含む細胞の場合、103〜108個を含有することが好ましく、104〜107個を含有することがさらに好ましい。
【0032】
前記組換えウイルスは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスであることが好ましく、治療のための前記ウイルスの数は、ベクターゲノムを含んだウイルス粒子ないしは感染可能なウイルス数で示すことができる。即ち、ウイルス粒子の1%以下が実際に感染可能なウイルスの有効個数であり、それを示すためにIU(infection unit)またはPFU(plaque forming unit)を使用する。
【0033】
一方、細胞を使用した治療は、組換えレトロウイルスを使用した治療に適用できる。例えば、組換えレトロウイルスの場合、血中補体(complement)により前記ウイルスが大部分不活性化されるので、エクスビボ(ex vivo)伝達の治療法を使用する。詳細には、前記LK68またはLK8遺伝子を含む組換えレトロウイルスを製造し、前記ウイルスを使用してヒトの造血幹細胞(CD34+)に遺伝子を伝達し、前記細胞を人体に投与して疾病を治療できる。ここで、前記使用可能な細胞は造血幹細胞以外に樹状細胞、自己腫瘍細胞(autologous tumor cells)、株化腫瘍細胞(established tumor cells)等を代用できる。本発明の多数の実施例では、株化腫瘍細胞に該当するCT26細胞株にレトロウイルスを使用してLK68またはLK8遺伝子を伝達して、前記細胞を生体内に投与して疾病の進行を観察したことがある。
【0034】
また、前記治療剤は、癌転移抑制または原発腫瘍の治療に使用することが好ましく、前記癌は、結腸癌、肝癌、肺癌、乳房癌、脳腫瘍、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、膵臓癌、リンパ腫、腎臓癌、卵巣癌及び転移性癌からなる群から選択することがより好ましい。
【0035】
本発明のLK68またはLK8遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する遺伝子治療剤は、臨床投与時に非経口で投与が可能で、一般的な医薬品製剤の形態で使用できる。
【0036】
即ち、本発明の治療剤は、実際の臨床投与時に非経口の様々な剤形で投与できる。製剤化する場合には、普通に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を使用して調剤する。非経口投与のための製剤には、滅菌した水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレイン酸のような注射可能なエステル等が使用できる。坐薬の基剤には、ハードファット(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(Tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が使用できる。また、治療剤としての効能増進のためにカルシウムやビタミンD3を添加できる。
【0037】
投薬単位は、例えば個別投薬量の1、2、3または4倍、または1/2、1/3または1/4倍を含有できる。個別投薬量は、有効薬物が1回に投与される量を含有することが好ましく、これは通常1日投与量の全部、1/2、1/3または1/4倍に該当する。
【0038】
前記治療剤の有効用量は、体重1kg当たりベクターの場合には、0.05〜12.5mg/kg、組換えウイルスの場合には、107〜1011ウイルス粒子(105〜109IU)/kg、細胞の場合には、103〜106細胞/kgで、好ましくはベクターの場合には0.1〜10mg/kg、組換えウイルスの場合には、108〜1010粒子(106〜108IU)/kg、細胞の場合には102〜105細胞/kgで、一日2〜3回投与できる。前記のような組成は、必ずしもこれに限定されるものではなく、患者の状態及び神経疾患の発病程度により変動し得る。
【0039】
本発明者らは、LK68蛋白質及びLK8蛋白質がインビボ及びエクスビボで強力な抗癌剤として作用することを確認した(大韓民国特許出願番号:第2003-10797号)。しかし、多くの抗癌剤は製剤の特性上、高い濃度の蛋白質を長期間持続的に患者に投与しなければならないので、蛋白質の生産と生産した蛋白質の高い単価等、様々な難しい点が予想される。また、LK68及びLK8蛋白質は自体の物理的産物により細胞外基質(extracellular matrix)の主成分である種々の高分子(フィブリノゲン、フィブリン等)と結合できる能力があるので、前記蛋白質の全身投与時に蛋白質が腫瘍まで到達する前に非特異的反応によって損失し得る危険性が大きい。
【0040】
このような短所を克服できる代替方案の一つは、蛋白質を直接投与する代りに各蛋白質をコードする遺伝子を生体内標的細胞に導入させた後、形質転換された標的細胞から所望する蛋白質が直接発現して作用できるようにする遺伝子治療である。抗癌剤である前記LK68及びLK8蛋白質の代わりに前記蛋白質をコードする遺伝子を使用した治療は、抗癌剤としての効能を極大化できる。これに基づき、本発明者らはヒトアポリポ蛋白質(a)の多くのクリングル(kringle)構造の中からKIV9-KIV10-KV(LK68)構造を含む遺伝子及びKV(LK8)構造だけを有する遺伝子を確保して、前記遺伝子をエクスビボで癌細胞に伝達した後、生体内へ注入して癌細胞の成長と転移を観察した結果、前記遺伝子伝達によって腫瘍の成長と転移を効果的に抑制できることを確認した。
【0041】
本発明者らは、LK68またはLK8蛋白質をコードする遺伝子を有する組換えレトロウイルスを製造して、それを使用してエクスビボで結腸癌細胞に伝達した後、それを使用して生体内での腫瘍の成長と転移に及ぼす影響を観察した。また、LK68またはLK8遺伝子を含む治療用遺伝子伝達体である組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を製造して、それを生体内へ伝達し腫瘍の成長抑制及び転移抑制効果を確認することにより、前記遺伝子が抗癌用治療剤として使用できることを確認した。
【0042】
詳細には、本発明の実施例で、本発明者らはアポリポ蛋白質(a)の末端部3個のクリングル(KIV9、KIV10及びKV)構造(図1参照)、即ちLK68蛋白質とLK8蛋白質をコードする遺伝子を含む長さ約1KbpのDNAをヒト肝(liver)cDNAライブラリ(library)から逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を通じて製造した。前記の確保したDNAの適合性は自動塩基配列解析装置を通じて確認し、それをLK68遺伝子と命名した。LK68DNAから末端のKVクリングル部分だけを選択的なプライマーを通じて増幅してLK68と同じ方法でクローニングして、それをLK8遺伝子と命名した。
【0043】
組換えレトロウイルスの製造のために、製造した前記遺伝子をレトロウイルスベクター(retroviral vector)のpLXSN(Clontech, 米国)にクローニングした。LK68遺伝子を導入したベクターはpLXSN-LK68と、LK8遺伝子を導入したベクターはpLXSN-LK8と各々命名した(図1参照)。次に、前記組換えベクターのpLXSN-LK68とpLXSN-LK8をPT67パッケージング細胞株(packaging cell line)に導入して組換えウイルスを生産した後、標的細胞のネズミ結腸癌細胞株CT26にLK68またはLK8遺伝子を伝達した。LK68遺伝子を安定的に発現するCT26細胞株はCT-LK68と、LK8遺伝子を発現する細胞株はCT-LK8と命名した。一方、対照群のLK68及びLK8遺伝子なしにpLXSNベクターだけ導入した細胞株をCT-vectorと命名した。
【0044】
LK68またはLK8遺伝子の導入が、標的細胞自体の成長及び細胞死には影響を及ぼさないことを確認した(図2参照)。また、生体内での固形癌の成長及び転移抑制を通じてCT-LK68またはCT-LK8細胞株から発現したLK68とLK8蛋白質の抗癌効能を観察した(図3〜7参照)。その結果、LK68及びLK8遺伝子を使用した遺伝子治療剤は、腫瘍の成長と他の臓器への転移を卓越して抑制できることを確認した。
【0045】
また、前記結果に基づき本発明者らは、前記LK68及びLK8 DNAに免疫クロブリンκ(Igκ)鎖の細胞外分泌を誘導する信号塩基配列とFLAG抗原が付加されるようにDNAを構成して、前記DNAをアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体システムに導入し、LK68またはLK8遺伝子が挿入された組換えアデノ随伴ウイルスベクターを製造して、それをpAAV-LK68またはpAAV-LK8と命名した。ここから生成したウイルス粒子をrAAV-LK68またはrAAV-LK8と命名した(図8〜図10参照)。前記製造した組換え遺伝子伝達体によるLK68またはLK8遺伝子の細胞または組織内への遺伝子導入とそれによる発現を確認した(図11参照)。前記組換えウイルスによって伝達され発現したLK68及びLK8蛋白質は、動物実験を通じて転移性癌細胞のB16F10黒色腫(melanoma)細胞が肺に転移されることを約30〜60%程度阻害することを確認した(図12及び13参照)。したがって、組換えアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体のrAAV-LK68とrAAV-LK8は、抗癌用遺伝子治療剤として使用できることを確認した。
【0046】
合わせて、本発明は、本発明のヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または転移抑制用遺伝子治療剤を個体に非経口で投与する工程を含む、固形癌の予防または治療の方法を提供する。
【0047】
ここで、前記投与する工程は特別にそれに制限されるものではなく、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体を化学的方法、物理的方法、リポソームを使用した接合方法、受容体及びウイルスを使用した方法からなる群から選択される方法によって細胞内へ導入する工程を含むことが好ましい。また、本発明の固形癌の予防または治療方法は、固形癌の成長及び転移の抑制を通じてなされることが好ましい。さらに、本発明のまた他の好ましい実施態様で、前記投与する工程は造血幹細胞、樹状細胞、自己腫瘍細胞及び株化腫瘍細胞からなる群から選択した細胞に前記ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を導入して、前記細胞を人体に投与する方法からなることが好ましい。
【0048】
本発明者らは、LK68またはLK8遺伝子の導入が生体内での固形癌の成長及び転移抑制を通じて抗癌効能を確認し(図3〜7参照)、LK68及びLK8遺伝子を使用した遺伝子治療剤は腫瘍の成長と他の臓器への転移を卓越して抑制できることを確認した。また、前記遺伝子伝達体によって伝達され発現したLK68及びLK8蛋白質は転移性癌細胞のB16F10黒色腫(melanoma)細胞が肺に転移されることを約30〜60%程度阻害することを確認し(図12及び13参照)、前記LK68またはLK8遺伝子を含んだ組換えアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体が癌転移を抑制することを確認した。
【0049】
発明の形態
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するだけのもので、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1:組換え蛋白質LK68またはLK8を発現する結腸癌細胞株の確立
レトロウイルスを使用してLK68またはLK8蛋白質をコードする遺伝子を結腸癌細胞株に導入した。前記遺伝子を導入した細胞株製造の過程を下記に詳細に示す。
【0051】
<1-1>LK68またはLK8蛋白質を発現する組換えベクターの製造
まず、配列番号3で記載されるLK68遺伝子のセンスプライマーまたは配列番号4で記載されるLK8遺伝子のセンスプライマー及び配列番号5で記載されるウイルスベクターのセンスプライマーを使用して、各々配列番号1及び配列番号2で記載されるヒトの肝(liver)のLK68蛋白質またはLK8蛋白質をコードする遺伝子(以下、「LK68またはLK8遺伝子」と略称する)を含むDNA断片を得られるように、DNAの鎖分離(denaturation)のために94℃で5分、以後94℃で30秒、プライマー結合(annealing)のために56℃で30秒、プライマーにつなぐDNA合成(extension)のために72℃で1分の過程を30回反復した後、追加的に72℃で5分間さらに反応させるポリメラーゼ連鎖反応方法(PCR)で増幅した。各々のセンスプライマーには、制限酵素SfiI、アンチセンスプライマーには制限酵素XhoIの切断部位が各々挿入されているように製造してベクターと目的DNAとの連結(DNA ligation)を容易にした。増幅されたポリメラーゼ連鎖反応産物のベクター内導入で得られた組換えベクターの蛋白質発現及び標的蛋白質(LK68またはLK8蛋白質)が細胞外部に円滑に分泌されるようにするために、先で使用した制限酵素のSfiI及びXhoI制限酵素で前もって切断したpSecTag ベクター(Invitrogen, 米国)に前記ポリメラーゼ連鎖反応産物を連結(ligation)した後にIgκ信号配列(leader sequence)のSfiI制限酵素サイトに挿入して各LK68またはLK8遺伝子上流(upstream)に位置するようにpSecTag-LK68及びpSecTag-LK8を製造した。
【0052】
その後、LK68またはLK8遺伝子をレトロウイルスベクターに導入するために、配列番号6で記載されるウイルスベクターのセンスプライマーと配列番号5で記載されるLK68またはLK8アンチセンスプライマーを使用して、DNAの鎖分離(denaturation)のために94℃で5分、以後94℃で30秒、プライマー結合(annealing)のために56℃で30秒、プライマーにつなぐDNA合成(extension)のために72℃で1分の過程を30回反復した後、追加的に72℃で5分間さらに反応させるポリメラーゼ連鎖反応方法で前記pSecTag-LK68及びpSecTag-LK8ベクターから各々Igκ-LK68及びlgκ-LK8DNA部分だけを選択的に増幅した。ここで、プライマーには各々制限酵素EcoRIとXhoIの切断部位が挿入されているように製造し、以後のクローニングでベクターと目的DNAとの連結(DNA ligation)が容易になるようにした。ポリメラーゼ連鎖反応で増幅したIgκ-LK68及びIgκ-LK8DNA切片を前記の制限酵素EcoRIとXhoIで切断して、それに先立って同一な制限酵素で切断したレトロウイルスベクターのpLXSNベクター(Clontech, 米国)に前記DNA切片を連結して各々pLXSN-LK68及びpLXSN-LK8を製造した。各遺伝子の塩基配列分析と制限酵素を使用した遺伝子地図を通じて目的遺伝子がベクターに完全に導入(insertion)されたかどうかを確認した(図1のa)。
【0053】
<1-2>LK68またはLK8遺伝子を導入した結腸癌細胞株の製造
LK68またはLK8遺伝子を含む組換えレトロウイルスを生産するために、常用リポソーム(LipofectaminTM, Life Technologies Inc., Rockville, MD, 米国)を使用して前記実施例1-1で製造したpLXSN-LK68またはpLXSN-LK8ベクターでパッケージング細胞株(packaging cell line)のPT67(Clontech, 米国)を形質感染(transfection)させた。感染したPT67細胞株から作られた組換えウイルスを零下80℃で保管して、必要な場合に結腸癌細胞株のCT26(韓国細胞株銀行)を感染させるのに使用した。前記ウイルスで感染したCT26細胞株は、pLXSNベクターに存在するレポータ遺伝子によりG418抗生剤(濃度:1mg/ml)に耐性を示すので、このような抗生剤耐性を使用してLK68またはLK8蛋白質を安定的に発現する細胞株を確保した。LK68遺伝子を導入した細胞株をCT-LK68と、LK8遺伝子を導入した細胞株をCT-LK8と各々命名した。対照群として前記蛋白質(LK68またはLK8)をコードする遺伝子のベクターへの導入なしにpLXSNベクターだけを導入した細胞株をCT-vectorと、ウイルス感染を実施していない細胞株をCT-mockと命名した。
【0054】
前記細胞株CT-LK68及びCT-LK8からLK68及びLK8蛋白質が発現されるかどうかをウエスタンブロット分析と逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を通じて確認した(図1のb及びc)。その結果、前記細胞株が各々LK68及びLK8蛋白質を発現することを確認した。
【0055】
実施例2:細胞株CT-LK68及びCT-LK8のインビトロでの増殖及び予想される細胞死(apoptosis)観察
LK68及びLK8遺伝子導入がCT26細胞に及ぼす影響を調査するために、インビトロ(in vitro)でCT-LK68及びCT-LK8細胞株の増殖と予想される細胞死を観察した。
【0056】
詳細には、細胞株の増殖を観察するために、CT-LK68、CT-LK8、CT-vector及びCT-mock細胞株を24個ウェル(well)からなる組織培養平板のウェル毎に各々2.5×104個の細胞を分注して、10%FBS(fetal bovine serum)を添加したDMEM(Dulbecco's modified Eagles medium)培地で37℃、5%CO2の環境条件下で培養しながら時間毎に増殖した細胞の数をトリパンブルー排除(trypan blue exclusion)計数法(Freshney, R. I., 1994, Culture of Animal Cells. A manual of Basic Technique, 3rd Ed. Wiley-Liss. New York, 米国)を使用し5日間観察した。その結果、LK68またはLK8遺伝子を導入した細胞株と対照群間にほぼ同一な増殖様相を観測できた(図2のa; ここで、X軸は観察した時間を示し、Y軸は増殖した細胞の数を示す)。
【0057】
予想される細胞死は、約1×105の細胞をアネクシン-VとPIで染色した後、FACSを通じて観察した。ここで、陽性対照群に10μg/mlのタキソール(taxol)を24時間処理したCT26細胞株を使用した。その結果、陽性対照群に使用した10μg/mlのタキソールを処理した細胞株の予想された細胞死比率は約83%に達するのに反して、CT-mock細胞株は0.89%、CT-vector細胞株は1.21%、CT-LK68細胞株は0.96%と現れた(図2のb)。前記結果を通じて、LK68遺伝子の発現はCT26細胞株の増殖と予想される細胞死にはいかなる影響も与えないことを確認した。
【0058】
実施例3:LK68遺伝子の導入による固形癌の成長抑制
同種移植された腫瘍モデルを使用して、LK68遺伝子の導入により結腸癌細胞で発現したLK68蛋白質が固形癌の成長抑制効能があるかどうかを観察した。
【0059】
詳細には、10%FBSを添加したDMEM培地で培養した約5×105個のCT-LK68細胞をBalb/cマウス(Charles River, 横浜、日本)の背側中央部の皮下に接種した。マウスは一群当り8〜10匹を使用した。腫瘍を移植した後、約1か月間癌の成長を観察した。ここで、CT-LK68細胞の代わりにCT-vectorまたはCT-mock細胞を移植した群を対照群に設定した。腫瘍の大きさは3〜4日に1回ずつ測定して、[長さ×幅2×0.52]式を使用して癌の体積を計算した。
【0060】
その結果、LK68遺伝子を導入したCT-LK68細胞の場合、腫瘍の成長が対照群に比べて顕著に低下した。即ち、細胞株を移植して33日目に観測した結果、対照群のCT-vectorとCT-mock細胞の成長率の平均値と比較して、CT-LK68は約80%程度の成長抑制効果が観測された(図3のa)。観察終了後、即時にマウスを犠牲にして腫瘍をマウスから分離して重さを測定したところ、体積の結果と同様にLK68遺伝子を導入したCT-LK68細胞の腫瘍重量は、CT-vector細胞の腫瘍重量に比べて顕著に減少した(図3のb及びc)。
【0061】
実施例4:LK68遺伝子の導入による脾臓に移植した癌の肝転移(liver metastasis)抑制
遺伝子導入により結腸癌細胞で発現したLK68蛋白質またはLK8蛋白質が固形癌の転移抑制効能があるかどうかを観察するために、前記実施例3で使用した同種Balb/cマウスの脾臓に結腸癌細胞が注入された肝転移動物モデルを使用して癌の肝転移程度を観測した。
【0062】
詳細には、前記Balb/cマウスの脾臓に5×104個のCT-LK68細胞を移植して、移植後、14日目にマウスを解剖して肝を摘出し、癌観察及び転移した癌のコロニー(colony)数を計数して転移の程度を測定した。図4のaは、結腸癌が転移した代表的な肝の写真を示す。CT-vector細胞の場合、肝表面全体が大小の癌で覆われている非正常的な肝の形態を示した。一方、CT-LK68とCT-LK8細胞の場合には癌の転移が相当に減少し、肝の形態も正常的な肝と相当に類似に観察された。合わせて、肝表面に転移されて生じた瘤(nodule)の数を測定してみると、LK68遺伝子を導入したCT-LK68細胞は単位面積当り47±30個、CT-LK8細胞は86±50個の標準偏差で瘤が生成されたのに対して、対照群のCT-vector細胞は標準偏差125±14個の瘤が生成された。したがって、LK68またはLK8遺伝子を導入した細胞株は対照群に比べて転移で生成された瘤数が顕著に減少したことを確認できた(図4のb)。
【0063】
また、前記肝標本をホルマリンで固定した後、H&E染色を通じて全般的な結腸癌の転移様相を観察して、癌細胞の増殖はPCNA染色を通じて、死滅はTUNEL染色の免疫組織化学的方法を通じて分析した(図5のa、Junqueria, Basic Histology, MIP)。一定の領域内にある全体細胞数に対して各々の染色薬に陽性に染色された細胞数の比率を癌細胞の増殖指数と死滅指数を百分率で示した。
【0064】
H&E染色結果、CT-LK68細胞を移植した宿主マウスの肝は、対照群のCT-vector細胞を移植した動物に比べて全般的な癌転移の数が減少しただけではなく、転移されて形成された瘤の大きさもまた、顕著に小さく観察された。前記結果を通じて、LK68遺伝子は微細転移癌が新生血管形成を通じて巨大転移(macro metastasis)癌に増殖する過程もまた、抑制することを確認した。
【0065】
次に、CT-LK68細胞と対照群のCT-vector細胞の全体細胞に対するPCNA染色された細胞の比率は、各々64.5±3%と64.3±2%の標準偏差程度で、二つの群間で類似に観察された(図5のb)。しかし、TUNEL染色ではCT-LK68細胞群は5.36±1.35%、CT-vector細胞群は0.47±0.14%の標準偏差で、CT-LK68細胞群の癌細胞の予想された細胞死程度が顕著に増加したことを観察した(図5のc)。前記結果から遺伝子導入で結腸癌細胞で発現したLK68蛋白質は癌細胞の増殖には影響を及ぼさないが、癌細胞の死滅には効果的に作用することを確認した。即ち、LK68遺伝子の細胞内導入を通じて、結腸癌の肝への転移及び転移癌の成長を効果的に抑制できることが分かった。
【0066】
したがって、H&E、PCNA及びTUNEL染色結果を全て総合して判断すると、LK68遺伝子の細胞内導入による癌転移抑制効能は、LK68蛋白質発現による癌細胞の予想された細胞死による結果であると判断される。
【0067】
実施例5:脾臓に移植された癌の肝転移モデルにおけるLK68遺伝子の導入による宿主の生存率増加
前記実施例4の結腸癌細胞の肝転移動物モデルを使用して、LK68遺伝子の導入による肝転移抑制がマウスの生存率に及ぼす影響を調査した。
【0068】
詳細には、マウスの脾臓に4×105個のCT-LK68細胞と対照群のCT-vector細胞を注入した後、毎日マウスの状態と生存有無を観察した。対照群のCT-vector細胞が注入されたマウス群の場合、実験を開始した後、23日目から急速度で死亡し始めて前記マウス群の50%が生き残った生存期間は24日、全体的な生存期間は28日と観察され、CT-LK68細胞が注入されたマウス群の50%が生き残った生存期間は36日、全体的な生存期間は48日と観察された(図6)。カプランマイヤー生存曲線のログランクテストを通じて、二群間の生存率差の統計的有意性を検定した。この実験結果から、LK68遺伝子の細胞内導入は癌の肝転移を抑制することにより宿主の生存率を顕著に増加させることを確認した。
【0069】
実施例6:癌の腹腔転移モデルにおけるLK68遺伝子の導入による宿主の生存率増加
結腸癌細胞は肝への転移以外に腹腔を通じても転移が起きて、前記二種形態の転移が結腸癌患者の手術後、再発及び死亡の主原因である。したがって、LK68遺伝子の細胞内導入が結腸癌細胞の腹腔転移モデルで宿主の生存率を増加させるかどうかを確認した。
【0070】
詳細には、前記実施例3で使用した同種Balb/cマウスの腹腔に4×105個のCT-LK68細胞と対照群のCT-vector細胞を注入した後、約32日間マウスの状態と生存有無を毎日観察した。対照群のCT-vector細胞を注入したマウス群の場合、実験を開始した後、14日目から急速度で死亡し始めて前記マウス群の全体的な生存期間は21日と観察され、CT-LK68細胞を注入したマウス群の50%が生き残っている生存期間は23日、全体的な生存期間は28日と観察された(図7)。カプランマイヤー生存曲線のログランクテストを通じて、二群間の生存率差の統計的有意性を検定した。この実験結果から、LK68遺伝子の細胞内導入は結腸癌細胞の腹腔転移を抑制することにより宿主の生存率を顕著に増加させることを確認した。
【0071】
実施例7:組換えアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体製造のための伝達プラスミドベクターpAAV-LK68とpAAV-LK8の製造
本発明者らは、LK68及びLK8遺伝子を組換えアデノ随伴ウイルスベクターに導入して各々 pAAV-LK68とpAAV-LK8と命名した。pAAV-LK68とpAAV-LK8プラスミド製造の詳細な過程を下記に示す。
【0072】
<7-1>LK68及びLK8 cDNAの増幅
ヒト肝細胞cDNAライブラリ(Clontech, Palo Alto, CA, 米国)を鋳型(template)にして配列番号7と配列番号8で記載される各プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応を通じて配列番号1で記載されるLK68 DNAを前記実施例1-1と同一な反応条件と方法で増幅した。LK68蛋白質が細胞外に分泌されるようにするために、前記蛋白質のアミノ基末端をコードする塩基配列にIgκの信号塩基配列を連結させてpcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, 米国)にクローニングした。クローニング後、DNA塩基配列分析機(Applied Biosystems, CA, 米国)を使用した塩基配列の分析でLK68 DNAが正しく挿入されたかどうかを確認して、前記ベクターをpcDNA-LK68と命名した。また、前記pcDNA-LK68を鋳型に配列番号8及び配列番号9で記載されるプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応を遂行してLK8 DNAを増幅し、LK68 DNAと同一な方法でLK8DNAをクローニングして、前記方法で製造したベクターをpcDNA-LK8と命名した。
【0073】
pcDNA-LK68とpcDNA-LK8を鋳型に全て配列番号10及び配列番号11で記載されるプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応を遂行して各々LK68とLK8 DNAを増幅した。ここで、配列番号10で記載されるプライマーは、LK68及びLK8 cDNAの5'末端に連結されたIgκの信号塩基配列の5'末端と結合してプライマーの5'末端にEcoRI制限酵素切断部位を含むように考案した。配列番号11で記載されるプライマーは、LK68及びLK8 cDNAの3'末端にFLAG抗原が付加されるようにプライマー内部にFLAGをコードする塩基配列を有するよう考案した。FLAG抗原標識は、LK68及びLK8 cDNAを容易に分析するためのものである。
【0074】
下記のように、鋳型に使用されるpcDNA-LK68または-LK8ベクター100ng、25mMのプライマー各々2μl、10×ポリメラーゼ連鎖反応バッファー(buffer)5μl、dNTP(各2.5mM)混合液(mixture)4μl、Ex-Taqポリメラーゼ2.5Uを0.2ml PCRチューブに分注した後、3次蒸留水で最終体積が50μlになるように調節してポリメラーゼ連鎖反応を遂行した。ポリメラーゼ連鎖反応条件は、DNA鎖を分離するために95℃で5分反応した後、95℃で30秒、52℃で30秒、72℃で1分まで30回反復して、追加的に72℃で3分間さらに反応させた。ポリメラーゼ連鎖反応が正しく実行されたかどうかはアガロースゲル電気泳動で確認した(図8)。
【0075】
<7-2>プラスミドベクターpAAV-LK68とpAAV-LK8の製造
pAAV-hrGFPベクター(Stratagene, La Jolla, CA, 米国)のGFP遺伝子の前後にあるEcoRIとXhoI部位を切断してGFP遺伝子を除去して、前記部位にLK68またはLK8 cDNAを連結させた。
【0076】
詳細には、ポリメラーゼ連鎖反応を通じて製造したLK68とLK8 DNAをEcoRIとXhoI制限酵素で各々切断した後、ゲル抽出を通じて切断されたDNAを分離して、T4 DNAリガーゼ(ligase)で16℃で4時間反応させてコンピテントセル(Competent cell)のDH5α(ATCC)に形質転換(transformation)を遂行した(図9)。1日後に増殖した形質転換DH5αからDNAを抽出してGFP遺伝子を除去したpAAV-hrGFPベクター(以下、「pAAV」と略称する)にLK68及びLK8 DNAが正しく挿入されたかどうかをEcoRIとXhoIで再び切断することにより確認した。LK68 DNAがpAAVベクターに正しく挿入された伝達プラスミドベクターをpAAV-LK68と、LK8 DNAが挿入された伝達プラスミドベクターをpAAV-LK8と命名した(図10)。
【0077】
実施例8:LK68及びLK8遺伝子を伝達する組換えアデノ随伴ウイルスの生産及び分離
本発明者らは、アデノ随伴ウイルスLK68及びLK8遺伝子伝達体を製造するために、pAAV-LK68またはpAAV-LK8 DNAをアデノウイルスのE2a、E4、VA遺伝子とアデノ随伴ウイルスのRep、Cap遺伝子を有するヘルパープラスミドと定量比率1:5で混合して、N/P比率5に該当する量の形質導入試薬PEI(PolyPlus, Illkirch, France)と常温で15分間反応させた後、アデノウイルスのE1遺伝子が挿入され安定に発現されるHEK293細胞(Microbix, Toronto, Ontario, Canada)に一滴ずつ徐々に滴下した後、48時間37℃で培養した。前記培養した細胞を集めて3,000rpmで10分間遠心分離して培地と細胞を分離して、再び0.15MのNaClと50mMのTris-HCl(pH 8.5)で構成されたバッファーで前記細胞を浮遊(resuspension)させた後、急冷と解凍を3回反復して細胞を溶解(lysis)させた。ウイルス外皮(capsid)で包装されないDNAを除去するために、50U/mlのDNA分解酵素を処理して37℃で30分間反応させた後、3,000rpmで20分間遠心分離して上澄み液(supernatant)を分離した。前記上澄み液からウイルスを分離するために、イオジキサノール(iodixanol)濃度勾配超遠心分離を使用した(Zolotukhin, S. ら, Gene Therapy, 1999年, 第6巻, 973-985頁)。前記の方法で生産及び分離されたウイルスを各々rAAV-LK68とrAAV-LK8と命名した。
【0078】
実施例9:組換えアデノ随伴ウイルスによって伝達されたLK68及びLK8遺伝子の発現
前記実施例8で製造した伝達プラスミドベクターpAAV-LK68とpAAV-LK8のLK68及びLK8遺伝子が正常的に発現されるかどうかを確認するために、インビトロ(in vitro)でHEK293細胞に前記プラスミドベクターを導入してLK68及びLK8遺伝子の発現、細胞外部への分泌及びインビトロだけではなくインビボでの発現の有無を下記の方法で確認した。
【0079】
<9-1>インビトロ(in vitro)での形質導入とアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体によるLK68とLK8遺伝子の発現
6-ウェルプレートで70〜80%程度に培養されているHEK293細胞にPEI(PolyPlus, Illkirch, France)試薬を使用してpAAV-LK68またはpAAV-LK8プラスミドベクター3mgを形質導入させた後、24時間37℃で培養した。
【0080】
一方、前記実施例8で製造したウイルス遺伝子伝達体のrAAV-LK68とrAAV-LK8の場合には、FBSが入っていない条件で各々の6-ウェルプレートで70〜80%程度に培養されているHEK 293細胞に前記ウイルスを細胞数当りウイルス重複感染数(multiplicity of infection)が5になるように感染させた後、1時間後に培地を交換して37℃で24時間追加培養した。
【0081】
前記二種類の細胞を各々集めた後、3,000rpmで5分間遠心分離して細胞と培地を分離して、1×SDS-PAGEバッファー(50mMのTris(pH 6.8)、2%のSDS(sodium dodecyl sulfate)、100mMのDTT(dithiothreitol)、0.1%のBPB (bromophenol blue)、10%のグリセロール)で前記細胞を浮遊させて、100℃で5分程度湯煎加熱した後、10,000rpmで2分程度遠心分離して上澄み液を分離し、培地は遠心分離形濃縮装置(Centricon YM-10; Amicon, Beverly, MA, 米国)で10倍濃縮して前記と同一な方法で試料化した。
【0082】
電気泳動キットを使用して15%SDS-PAGEで20mAで約2時間電気泳動して、トランスファーユニット(transfer unit)を使用して300mAでトリス-グリシン(tris-glycine)バッファー(39 mMのglycin, 48mMのtris, 0.037%のSDS, 20%のメタノール)で約90分間電気泳動を遂行してPVDF膜(polyvinylidene fluoride membrane)に移動させた後、5%の脱脂粉乳/1×TBSTバッファー(10mMのTris, 150mMのNaCl, 0.1%のツイーン-20)を使用して常温で一晩ブロッキングした。1次抗体にマウス抗-FLAG単一クローン抗体(monoclonial antibody, Sigma, St. Louis, MO, 米国)を1:3,000で1×TBSTバッファーに希釈して常温で1時間程度反応させた後に前記TBSTバッファーで5分ずつ6回洗浄した。2次抗体でマウス抗-HRP(KPL, Gaithersburg, MD, 米国)を1:5,000で1×TBSTバッファーに希釈して30分間反応させた後、前記TBSTバッファーで5分ずつ6回洗浄して化学発光キット(ECLTM Chemiluminescent Western Blotting Detection Reagents kit; Amersham, Buckinghamshire, UK)を使用してLK68とLK8蛋白質発現を確認した(図11のa及びb)。
【0083】
<9-2>Balb/cヌードマウスでのLK68遺伝子の発現
アポリポ蛋白質(a)は、マウスにない蛋白質であるため、本発明者らが開発したLK68遺伝子を一般マウスに導入する場合には、前記マウスがLK68蛋白質に対する抗体形成を通じた体内免疫反応によって前記蛋白質が消滅するものと判断した。
【0084】
したがって、前記実施例8で製造及び分離したアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体のrAAV-LK68、rAAV-LK8を1×109IU(infection unit, 感染能力があるウイルスを示す単位)の量で前記実施例3等で使用した同種Balb/cヌードマウスの両後ろ足筋肉に各々三カ所に分けて注射した。ここで、陰性対照群としては食塩水(saline)だけを注入し、陽性対照群にはアンジオスタチン(K13)を発現する組換えアデノ随伴ウイルスのrAAV-K13を使用した。3日間隔で眼窩静脈叢(ocular venous plexus)を通じた採血を遂行して100μlの血液を採取した後、蛋白質分解酵素複合阻害剤(protease inhibitor cocktail)を処理した。採取した血液は約1時間常温に置いた後、12,000rpmで10分間遠心分離して血球細胞と血漿を分離した。分離した血漿の一部を取って酵素免疫測定法(ELISA)を遂行して血液内LK68、LK8及びK13遺伝子の発現量を定量的に測定した。また、前記実施例9-1で遂行したウエスタンブロット分析で直接蛋白質発現を確認した。酵素免疫測定法は、LK68蛋白質が有する3個のクリングル(kringle)中でカルボキシル酸(carboxylic acid)末端クリングル(LK8蛋白質)に対する2個の血清型が異なる抗体を使用した。一つはウサギ抗-LK8抗体でもう一つはマウス抗-LK8抗体である。免疫グロブリン(Immunoglobulin, Ig)がよく結合するように製造したプレート(F8 MAXISORP LOOSE; Nunc, Rosklide, Denmark)において、ウサギ抗-LK8抗体を区画当り0.25mgをコーティングバッファー(10mMのPBS, pH7.2)と混合して、37℃で1時間置いた後、洗浄バッファー(washing buffer, 1× PBS, 0.1%のツイーン20)で3回洗浄した。1%BSA(bovine serum albumin)が添加された洗浄バッファー200mlを添加して、再び常温で2時間ブロッキングをした。前記で準備した血漿を様々な比率で希釈して、37℃で1時間反応させた後、洗浄バッファーで3回洗浄して1:1,000に希釈したマウス抗-LK8抗体を37℃で1時間処理した。最終的に抗マウス-HRP(KPL, Gaithersburg, MD, 米国)を1:20,000に希釈して処理した後に洗浄バッファーで3回洗浄して、TMB酵素基質(KPL, Gaithersburg, MD, 米国)を処理して発色した程度を450nm波長で設定された光測定機(photometer)で測定して定量されたLK68蛋白質比較群と比較しその量を測定した。LK8遺伝子の血液内発現量を測定するためには、定量化されたLK8蛋白質比較群を使用した。前記の方法と同様にK13の発現量を測定した。
【0085】
その結果、ウイルス伝達体によって伝達されたLK68遺伝子は、徐々に発現量が増加して2週後に150〜200ng/mlの数値を示し、LK8遺伝子は徐々に発現量が増加する様相はLK68と同様であるが、その量が20〜30ng/mlで、LK68遺伝子よりは低い数値を示した(図12のa、b及びc)。
【0086】
<9-3>流体力学的注入によるLK68とLK8遺伝子の発現
25mgのLK68またはLK8遺伝子を各々含んだプラスミドが溶解している1.8mlの0.25%食塩水をC57BL/6正常マウス(Charles River, Yokohama, 日本)の尾静脈に7秒以内に注入した。ここで、陰性対照群にはプラスミドなしに食塩水だけを注入し、陽性対照群には前記rAAV-K13を使用した。注入して1日後に眼窩静脈叢を通じて採血して血液内LK68及びLK8遺伝子の発現量を測定した。その結果、LK68蛋白質は20〜25mg/ml、LK8蛋白質の場合は200〜250ng/ml程度の発現を確認した(図12のD)。前記数値は、アデノ随伴ウイルス伝達体によるものと比較してLK68遺伝子は100倍、LK8遺伝子は10倍程度高い発現量で、前記流体力学的注入は多量のDNAを数秒内に注入することにより短い時間内に体内で高い遺伝子の発現を誘導するのでウイルス伝達体に比べて高い発現数値を示し得る(Liu, F. ら, Gene Therapy, 1999年, 第6巻, 1258-1266頁)。
【0087】
実施例10:LK68及びLK8遺伝子導入による転移性癌の成長抑制
本発明者らは、LK68またはLK8遺伝子の発現蛋白質がインビボ(in vivo)で転移性癌の転移及び成長を抑制することを下記で確認した。
【0088】
詳細には、前記実施例8で製造及び分離したアデノ随伴ウイルスLK68遺伝子伝達体(rAAV-LK68)またはLK8遺伝子伝達体(rAAV-LK8)を1×109IUの量で前記実施例3等で使用した同種のBalb/cヌードマウスの両後ろ足筋肉に各々三カ所に分けて注射した後、3日毎に眼窩静脈叢を通じた採血を遂行して血液内のLK68またはLK8遺伝子の発現量を確認した。ここで、陰性対照群にはベータガラクトシダーゼを発現するpAAV-lacZ(Stratagene, 米国)を導入したrAAV-lacZを使用し、陽性対照群には前記rAAV-K13を使用した。
【0089】
最初に、組換えアデノ随伴ウイルスLK68またはLK8遺伝子伝達体を注射して2週間後に2×105個のB16F10黒色腫細胞(ATCC, Manassas, VA, 米国)を尾静脈を通じて注入した。B16F10黒色腫細胞は主に肺に転移する細胞株で、普通注入して2週間が過ぎると肺表面に小さくて黒い突起模様の癌細胞が現れる(Fidler, I.J. ら, J. Natl. Cancer Inst., 1976年, 第57巻, 1199-1202頁)。B16F10黒色腫細胞を注入して2週間後に、マウスの肺を抽出して表面の黒い癌細胞突起の個数を測定した。その結果、30〜60%程度の癌転移抑制効果があることを確認した(図13)。
【0090】
実施例11:肝癌モデルでのLK68及びLK8遺伝子導入による癌の成長と転移抑制
本発明者らは、アンジオスタチン(K13)の場合同様、LK68またはLK8遺伝子の発現した蛋白質がインビボ(in vivo)で肝癌の転移及び成長を抑制するかどうかを下記の方法で確認した。
【0091】
<11-1>Huh-7肝癌細胞(Human hepatocellular carcinoma cell)を使用した固形性肝癌モデルでのLK68及びLK8遺伝子伝達体による肝癌の成長抑制
Huh-7肝癌細胞(JCRB, Tokyo, Japan)をPBSで2回洗浄した後、1×107個の細胞をBalb/cヌードマウス(Charles River, Wilmington, MA, 米国)の右側脇腹部位に皮下注射して固形性肝癌を誘導した。約10日後から固形性肝癌が大きくなり始めて、80%以上の発生率を示した。毎日〔長さ×幅2×0.52〕式を使用して癌の体積を計算した。癌の大きさが50mm3程度の時、前記実施例8で製造及び分離したアデノ随伴ウイルスLK68遺伝子伝達体(rAAV-LK68)またはLK8遺伝子伝達体(rAAV-LK8)を1×109IUの量でBalb/cヌードマウスの両後ろ足筋肉に各々三カ所に分けて注射した。LK8またはLK68遺伝子伝達体を注射して約2週間後に眼窩静脈叢を通じた採血を遂行して血液内のLK68またはLK8遺伝子の発現量を確認しながら固形性肝癌の成長形態を毎日確認した。ここで、陰性対照群には食塩水だけを投与し、陽性対照群には前記rAAV-K13を使用した。感染効率を測定するために、pAAV-hrGFP(Stratagene, 米国)を導入したrAAV-GFP及び前記rAAV-lacZを使用した。その結果、LK68の場合は50〜150ng/ml、LK8は30〜50ng/ml、K13は50〜100ng/mlの濃度で発現が維持され、固形性肝癌の成長ではLK68、LK8すべて約80〜90%程度の成長抑制を示した(図14)。
【0092】
<11-2>Hep3B肝癌細胞を使用した固形性肝癌モデルでのLK68及びLK8遺伝子伝達体による肝癌の成長抑制
前記実施例11-1のような方法でHep3B肝癌細胞(ATCC, Manassas, VA, 米国)を使用し固形性肝癌を誘導した。約21日後から固形性肝癌が大きくなり始めて、その発生率は30%程度を示した。前記例と同様に癌の大きさが50mm3程度の時、LK68またはLK8遺伝子伝達体を筋肉注射してHep3Bから誘導した固形性肝癌の成長形態と伝達されたLK遺伝子の発現量を確認した。その結果、LK8またはLK68発現量はすべて前記実施例11-1の結果と似た程度を示し、固形性肝癌の成長は約80%程度の抑制を示した(図15のa及びb)。
【0093】
<11-3>EL4リンパ腫瘍細胞(human lymphoma cell)を使用した転移性肝癌モデルでのLK68及びLK8の活性
前もって、LK68またはLK8遺伝子伝達体を筋肉注射して血液内発現量がLK68の場合には50〜100ng/ml、LK8の場合は30〜50ng/mlの数値を示す雄Balb/cヌードマウスの脾臓を露出させた後に、2×105EL4リンパ腫瘍細胞(ATCC, Manassas, VA, 米国)を50μl容積で徐々に注入した。同様に、陰性対照群には食塩水だけを投し、陽性対照群にはrAAV-K13を使用した。感染効率を測定するために前記rAAV-GFP及びrAAV-lacZを使用した。前記マウスがエーテル蒸気に過多露出しないように注意し、注入した癌細胞が肝門脈へ流入するように5分程度時間を置いた後に脾臓を切除して縫合した。施術後、約2週間になった時、肝を摘出して転移した肝癌の大きさと個数、そして面積比率を分析プログラム(SigmaScanR Pro 5.0, Systat Software, Point Richmond, CA, 米国)で分析した。その結果、大きさの場合LK68は68〜90%、LK8は70〜91%、そして面積比率では転移した肝癌の成長を各々37〜54%と47〜61%抑制した(図16のa及びb)。
【0094】
<11-4>Huh-7肝癌細胞を使用した固形性肝癌モデルでのLK68及びLK8の活性による生存率増加
前記の例を通じてLK68及びLK8による癌の転移及び成長が効果的に抑制されたことを確認した。このような治療効果が実際に宿主の生存率をどれくらい増加させるかを測定するために前記実施例11-1で言及したHuh-7固形性肝癌動物モデルで個体が死亡に至るまで継続して肝癌の成長を測定して飼育した。その結果、LK68及びLK8遺伝子伝達体を注入していない比較群は、肝癌細胞を接種して60日以後から個体が急激に死に始めて100日以内にすべて死亡した。一方、LK68遺伝子伝達体を投与した群は80日から個体が死に始めたが140日以後まで40%の生存率を維持し、LK8遺伝子伝達体を投与した群は68日から個体が死に始めて130日以後まで30%の生存率を維持した。カプランマイヤー生存曲線のログランクテストを通じて、遺伝子伝達体非投与群と遺伝子伝達体投与群間の生存率差に対する統計的有意性を検定した。この実験結果から、遺伝子伝達体を通じたLK68及びLK8遺伝子の細胞内導入は、固形性癌の成長を抑制することにより宿主の生存率を顕著に増加させることを確認した(図17)。
【産業上の利用可能性】
【0095】
前記で詳しく説明したように、本発明者らはインビトロにおいて遺伝子操作方法でLK68及びLK8遺伝子を導入した組換え細胞株(CT-LK68及びCT-LK8)を製造して、前記細胞株に導入したLK68及びLK8遺伝子がインビボで腫瘍の成長及び転移を効果的に抑制することを確認し(エクスビボ遺伝子治療)、より直接的な投与方法としては、LK68及びLK8遺伝子を導入したアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体を製作して、生体内に直接注入して腫瘍の成長及び転移を効果的に抑制することを確認した(インビボ遺伝子治療)。したがって、本発明のLK68及びLK8遺伝子は、転移性癌の成長を抑制し、ウイルス遺伝子伝達体を使用してより効率的に体内へ伝達でき、それを使用した多様な癌疾患の予防及び遺伝子治療及び治療剤等に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】組換えウイルスを使用してLK68またはLK8遺伝子が導入された結腸癌細胞株の製造過程を示した模式図及び写真で、LK68及びLK8蛋白質の位置と各々LK68及びLK8蛋白質をコードする遺伝子をクローニングするためのベクターpLXSN-LK68及びpLXSN-LK8の模式図(a)、組換えウイルスで感染した結腸癌細胞株でLK68蛋白質とLK8蛋白質の発現の有無をウエスタンブロット分析(b)及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(c)を使用して確認した写真である。
【図2】LK68またはLK8遺伝子の導入が標的細胞自体の成長及び細胞死には影響を及ぼさないことを確認するために、図1で製造した組換え結腸癌細胞株のインビトロ(in vitro)での成長をトリパンブルー(trypan blue)を使用して計数したグラフ(a)(ここで、Y軸は細胞の数を、X軸は観察した時間を示す)及び図1で製造した組換え結腸癌細胞株の細胞死をアネクシンV(annexin-VとPI(propidium iodide, Clontech)染色を通じたFACS(fluorescence-activated cell sorter; Becton Dickinson, San Jose, CA, 米国)実験の遂行で観察したグラフ(b)(ここで、陽性対照群は10μg/mlのタキソール(taxol)を処理した)。CT-mock : ウイルス感染を実施していない細胞株、 CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株、 10μg/ml Taxol : CT-mock対照群細胞株にタキソールを処理した陽性対照群。
【図3】Balb/cヌードマウス(Charles River, Wilmington, MA, 米国)の皮下に移植した結腸癌細胞株の成長を観察するために、各々の細胞株移植後、時間経過による固形癌の成長を示すグラフ(a)(ここで、実験結果の統計的有意性はスチューデントt-テスト法で検定し(*: p < 0.0005)、Y軸は[長さ×幅2×0.52]式により算出した癌の体積で、X軸は癌移植後の経過日数を示す)、及び結腸癌細胞株培養最終日に前記マウスから分離した固形癌の写真(bと固形癌の重さを示したグラフ(c)。CT-mock : ウイルス感染を実施していない細胞株、 CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図4】結腸癌細胞の脾臓に注入した後、肝への転移を誘導する場合において、LK68またはLK8遺伝子を導入した結腸癌細胞は対照群結腸癌細胞に比べて転移が抑制されることを確認するために、結腸癌細胞の肝への転移程度を比較した写真(a)、及び肝への転移抑制程度を肝表面に生成された転移癌数を計数して示したグラフ(b)。CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株、 CT-LK8 : LK8遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図5】LK68遺伝子を導入した結腸癌細胞(CT-LK68)の場合、対照群(CT-vector)に比べて生成された瘤(nodule)の数及び大きさが全体的に顕著に減少して、対照群に比べて癌細胞の増殖力には変化がないが、細胞死が顕著に増加することを確認するために、転移が発生した肝の代表的な部分を組織学的または免疫組織化学的方法で染色し示した、結腸癌細胞が転移した肝の組織化学的分析写真(a)(ここで、全般的な癌の転移程度を観察するためにH&E(Hematoxylin-eosin)染色を、癌細胞の増殖程度と死滅程度を観察するためにPCNA(proliferating cell nuclear antigen)染色とTUNEL(terminal deoxynucleotidyl transferase biotin-dUTP nick end labeling)を遂行した)、及び全体細胞中のPCNA染色とTUNEL染色によって、各々の染色に陽性と反応した細胞の数を計数した後、相対的比率を百分率で示したグラフ(b及びc)(ここで、実験結果の統計的有意性はスチューデントt-テスト法で検定した)。CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図6】結腸癌細胞の肝転移モデルで、LK68遺伝子を導入した結腸癌細胞は対照群に比べて肝への転移が抑制され、宿主の生存率も増加することを確認するために、対照群(CT-vectorとLK68遺伝子を導入した結腸癌細胞(CT-LK68)の生存率を示すグラフ(ここで、実験結果の統計的有意性はカプランマイヤー(Kaplan-Meier)生存曲線のログランクテスト(log rank test)方法で検定した)。CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図7】腹腔転移(peritoneal dissemination)モデルで、LK68遺伝子を導入した結腸癌細胞は対照群に比べて腹腔への転移が抑制され、宿主の生存率も増加することを確認するために、対照群(CT-vectorとLK68遺伝子を導入した結腸癌細胞(CT-LK68)の生存率を示すグラフ(ここで、実験結果の統計的有意性は、カプラン生存曲線のログランクテスト法で検定した)。CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図8】LK68またはLK8蛋白質のカルボキシル基末端部位にFLAG抗原が付加されるように前記FLAGをコードする塩基配列を含んだプライマー(primer)を使用した、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じたLK68及びLK8遺伝子の増幅過程を示す、LK68またはLK8遺伝子を含んだベクターの地図、ポリメラーゼ連鎖反応を遂行して前記ベクターを増幅した後、アガロースゲル電気泳動(agarose gel electrophoresis)で確認した写真、及びFLAGをコードする塩基配列を示した模式図である。
【図9】増幅したLK68とLK8DNAをアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus, AAV)の伝達プラスミドベクターにクローニングする過程を示した模式図及びそれを確認するアガロースゲル電気泳動写真である。
【図10】図9のクローニング過程を通じて製造した、前記遺伝子が導入されている伝達プラスミドベクターの各遺伝子の位置を示したプラスミド地図である。
【図11】図10での前記アデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体製造用プラスミドベクターをインビトロで形質導入してLK68とLK8蛋白質の発現をウエスタンブロット分析で確認した写真(a)及びアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体製造用プラスミドベクターとヘルパープラスミドベクター(helper plasmid)の形質導入を通じて作られた組換えアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus, AAV)を試験管内で感染させてLK68とLK8蛋白質の発現をウエスタンブロット分析で確認した写真(b)である。
【図12】アポリポ蛋白質(a)の38番目のクリングル(kringle)であるLK8遺伝子(a)、LK68遺伝子(b)またはアンジオスタチン(K13)遺伝子(c)を含む組換えアデノ随伴ウイルスを各々Balb/cヌードマウスの後ろ足筋肉に注射した場合の血液内発現を示すグラフとウエスタンブロット分析写真及びLK68またはLK8遺伝子を含むプラスミドの流体力学的注入によるC57BL/6正常マウスでの血液内前記遺伝子の発現を示すグラフ(d)である。
【図13】組換えアデノ随伴ウイルスにより体内LK68またはLK8蛋白質が分泌されるマウスでB16F10細胞のLK68及びLK8蛋白質が肺に転移される進行性転移癌の抑制を示す写真(a)とグラフ(b)である。
【図14】Huh-7肝癌細胞を使用した固形性肝癌モデルで、LK68及びLK8遺伝子伝達体を筋肉注射した治療群と非治療群の固形性肝癌成長曲線(a)と成長抑制を相互比較したグラフ(b)(ここで、実験結果の統計学的有意性はスチューデントt-テスト法で検定した)。
【図15】Hep3B肝癌細胞株を使用した固形性肝癌モデルで、LK68及びLK8遺伝子伝達体を筋肉注射した治療群と非治療群の固形性肝癌成長曲線を示すグラフである(ここで、実験結果の統計学的有意性はスチューデントt-テスト法で検定した)。
【図16】組換えAAVウイルスにより体内LK68及びLK8蛋白質が分泌されるマウスで脾臓に注入したEL4リンパ腫細胞が肝へ転移される進行性転移と転移した癌の成長抑制を示す写真(a)とグラフ(b)(ここで、実験結果の統計学的有意性はスチューデントt-テスト法で検定し、図面の理解を明確にするために、rAAV-GFP、-LacZ、-K13、-LK68及び-LK8を各々GFP、LacZ、K13、LK8で表記した)。
【図17】Huh-7肝癌細胞を使用した固形性肝癌モデルで、LK68及びLK8遺伝子を含有した組換えウイルスを筋肉注射した治療群と非治療群の生存曲線を示すグラフである(実験結果の統計学的有意性は、カプランマイヤー生存曲線のログランクテスト法で検定した)。
【配列表フリーテキスト】
【0097】
前記配列番号1は、ヒト肝のアポリポ蛋白質(a)から由来したLK68蛋白質をコードする遺伝子であり;
配列番号2は、ヒト肝のアポリポ蛋白質(a)から由来したLK8蛋白質をコードする遺伝子であり;
配列番号3及び4は、各々前記LK68蛋白質をコードする遺伝子及び前記LK8蛋白質をコードする遺伝子を増幅するためのセンスプライマーであり;
配列番号5は、前記LK68またはLK8蛋白質をコードする遺伝子を増幅するためのウイルスベクター起源のアンチセンスプライマーであり;
配列番号6は、前記LK68またはLK8蛋白質をコードする遺伝子をレトロウイルスベクターで導入するためのウイルスベクター起源のセンスプライマーであり;
配列番号7及び8は、各々LK68のcDNAを増幅するためのセンスプライマー及びアンチセンスプライマーであり;
配列番号9は、前記配列番号8と共にLK8のcDNAを増幅するためのセンスプライマーであり;
配列番号10は、LK68及びLK8のDNA断片を増幅するためのセンスプライマーであり;かつ配列番号11は、前記LK68及びLK8のDNA断片を増幅するためのアンチセンスプライマーである。
前記の配列番号1〜11は、添付の配列表に記載した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌用遺伝子治療剤に関するものである。詳細には、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)遺伝子を含む遺伝子伝達体、または細胞で構成される抗癌または抗転移遺伝子治療剤及び前記遺伝子治療剤を使用した癌治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は非正常的かつ非制御性で、無秩序な細胞増殖の産物である。このような腫瘍が破壊的な成長性、浸透性及び転移性があれば悪性に分類される。浸透性というのは、周囲組織を浸透または破壊する性質で、一般的に組織の境界をなしている基底層を破壊して腫瘍が局部的に伝播することを意味し、時々体内の循環系にも流入する。転移というのは、一般的にリンパ管(lymphotic)または血管によって原発位置とは異なる所に腫瘍細胞が広がることを意味する。転移はまた、腸液性体腔または他の空間を通じて直接伸長して腫瘍細胞を移動させることをも意味する。
【0003】
現在、癌は主に3種の治療法、即ち外科的な手術、放射線照射及び化学療法のうちの1種またはそれらの組み合わせによって治療されている。手術は、疾病組織を大部分除去することを含む。このような外科的手術は、特定部位、例えば乳房、結腸及び皮膚に位置した腫瘍を除去する際には効果的であるが、脊椎のような一部区域において腫瘍を治療したり、白血病のような分散性腫瘍疾患を治療したりする際には使用できない。
【0004】
化学療法は、細胞複製または細胞代謝を崩壊させ、乳房、肺及び精巣の癌を治療する際に多く行われるが、腫瘍疾病を治療するのに使用される全身化学療法の副作用は、癌治療を受ける患者には最も問題になっている。このような副作用の中で吐き気と嘔吐は、最も一般的で深刻な副作用である。化学療法による副作用は患者の生命に大きな影響を及ぼし、治療に対する患者の順応性を急激に変化させ得る。また、化学治療剤と関連した副作用としては、一般的にこのような薬物の投与時注意しなければならない容量制限毒性(DLT, Dose Limiting Toxicity)がある。例えば、粘膜炎は色々な抗癌剤、例えば抗代謝物質細胞毒素剤の5-フルオロウラシル、メソトレクサイト及び抗腫瘍抗生剤(例、ドキソルビシン)等に対する容量制限毒性がある。このような化学療法由来の副作用の大部分は、ひどい場合、入院を要したり痛みを治療するために鎮痛剤を必要としたりする。このような化学治療剤及び放射線治療による副作用は、癌患者の臨床的処置時の主要な問題になっている。
【0005】
遺伝子治療というのは、DNA組換え方法を使用して治療用遺伝子を患者の細胞内に導入して遺伝子異常を矯正したり、細胞に新しい機能を追加したりして、人体細胞の遺伝的変形を通じて各種遺伝疾患、癌、心血管疾患、感染性疾病、そして自己免疫疾患等のような疾患を治療したり予防したりする方法である。即ち、治療遺伝子を体内の所望する臓器に伝達して細胞内で治療用または正常蛋白質が発現するようにして疾病を治療することを遺伝子治療という。遺伝子治療は、一般的な薬物による治療に比べて優れた選択性を有し、他の治療法では調節することが難しい疾病の治療率及び治療速度を改善して長期間適用できる。遺伝子治療は、単純に疾病の症状を治療することに留まらず疾病の原因を治療して除去する方式である。このような遺伝子治療を効果的に行なうためには、治療遺伝子を所望する標的細胞に伝達して高い発現効率が得られるようにする遺伝子伝達技術が必要である。
【0006】
遺伝子伝達体は、所望する治療遺伝子を対象細胞に導入するために必要な媒介体で、理想的な遺伝子伝達体は人体に無害で大量生産が容易であり効率的に遺伝子を伝達することができ、持続的に遺伝子を発現できなければならない。遺伝子伝達体技術は、遺伝子治療技術の核心要素であり、現在遺伝子治療に多く使用されている代表的な遺伝子伝達体としては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスのようなウイルス性伝達体とリポソーム、ポリエチレンイミンのような非ウイルス性伝達体がある。
【0007】
遺伝子を伝達する方法には、化学的、物理的な方法の他にもリポソームを使用する接合方法、受容体を使用する方法及びウイルスを使用する方法がある。各方法毎に長所や短所があるが、本発明者らは伝達効率と発現効率を考慮してウイルス伝達体を使用した伝達方法を選択した。ウイルス伝達体としては、様々なウイルスがあるが、最も広く使用されているものとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスとレトロウイルス等がある。
【0008】
アデノウイルスは、E1遺伝子を欠損させて、その部位に伝達しようとする治療遺伝子を挿入して作った組換えウイルスシステムとして使用されている。このシステムを使用して遺伝子治療用ベクターの約20%程度が試みられている(Journal of Gene Medicine Website, www.wiley.co.uk/genemd/clinical/)。アデノウイルス遺伝子伝達体は、多様な細胞によく感染するだけではなく、宿主細胞の染色体内へ挿入しないので持続的な発現様相を見るには難しいが、早い時期に高い発現を誘導するには適合したシステムである。
【0009】
アデノ随伴ウイルスは、ITR、Rep、Cap、 ITRの順に構成されるゲノムを有している。アデノ随伴ウイルスが増殖をするためには、アデノウイルス、ヘルペスウイルスのようなヘルパーウイルス(helper virus)の助けを必要とする。アデノウイルスをヘルパーウイルスとする場合、アデノウイルスのE1、E2a、E4、VAの遺伝子を必要とするが、これらの遺伝子と自身のRepとCap遺伝子が含まれたヘルパープラスミドを使用してRepとCapが抜けた部位に治療用遺伝子が挿入された組換えアデノ随伴ウイルスを製造できる(Samulski, R.J. ら, J. Virol., 1989年, 第63巻, 3822-3828頁)。アデノ随伴ウイルスは、発現効率が高いでけではなく遺伝子を宿主細胞の染色体 19番のアデノS1という特定位置に挿入するために持続的な発現効果を示す。さらに、自体では、増殖できないウイルスであるので野生型ウイルスの汚染のおそれがなく、その他のシステムより安全で、ウイルスによって発生する副作用が報告されたことがない。
【0010】
また、レトロウイルスは、現在最も広く使用されているベクターシステムで、遺伝子治療臨床試験で使用されている治療用ベクター全体の約40%程度を占めている(Journal of Gene Medicine Website, www.wiley.co.uk/genmed/clinical)。アデノ随伴ウイルスのITR(inverted terminal repeat)配列と類似して、両末端のLTR(long terminal repeat)配列間に治療用遺伝子とネオマイシンやハイグロマイシン、ピューロマイシンのような抗生剤抵抗遺伝子を挿入して組換えウイルスを製造する(Miller, A.D. ら, Biotechniques, 1989年, 第7巻, 980-990頁)。レトロウイルスシステムを使用すると宿主細胞の染色体に遺伝子が無作為的に挿入されて持続的な高い発現効率を期待できるが、充分な数のウイルスを製造することが難しく、非増殖細胞に対する感染効率が低いことなどが短所として指摘されている。また、直接体内に注入するよりは間接的な遺伝子伝達方法をよく使用する。即ち、組換えウイルスを直接注射するのではなく、インビトロで培養した細胞にまず感染させて遺伝子が伝達された細胞だけを選別して体内に注入する方法が広く使用されている。しかし、生産細胞内で類似塩基配列による相同組換えによって発生し得る複製可能レトロウイルス(RCR, replication competent retrovirus)による副作用問題とウイルス生産収率及び感染効率の増大のための研究が先行しなければならないシステムである。
【0011】
一方、遺伝子治療の戦略において、腫瘍細胞を制御する戦略としては腫瘍抑制遺伝子を使用する方法、腫瘍選択的殺傷ウイルスを使用する方法、自殺遺伝子を使用する方法、免疫調節遺伝子を導入する方法等がある。腫瘍抑制遺伝子を使用する方法は、相当数の癌患者で遺伝子が欠損または変形しているp53のような腫瘍抑制遺伝子を原型にして人体に伝達して癌を治療する方法で、腫瘍選択的殺傷ウイルスを使用する方法は、癌組織で変形している腫瘍抑制遺伝子の活性を利用して腫瘍細胞でのみ選択的に増殖できるウイルス遺伝子伝達体を人体に導入して治療効果を得ようとする方法で、すべて腫瘍細胞を直接殺傷しようとする戦略である。自殺遺伝子を使用する方法でHSV-TKのような感受性遺伝子を導入して腫瘍細胞の自殺を誘導する方法もこのような範疇に属する。一方、免疫調節遺伝子を導入する方法は、抗腫瘍免疫反応を増強するインターロイキン12、インターロイキン4、インターロイキン7、γインターフェロン、腫瘍壊死因子等の遺伝子を人体に伝達してT細胞に腫瘍を認識するように誘発したり、腫瘍誘発蛋白質を遮断して細胞自殺を誘導したりして間接的に疾病を治療する戦略である。アンジオスタチン、エンドスタチンのような血管生成抑制因子を発現させて腫瘍への栄養供給を遮断して壊死させる方法もこのような間接的疾病治療戦略として広く認識されている。
【0012】
クリングル(kringle)は、約80個のアミノ酸と3個の分子内ジスルフィド結合で構成された蛋白質の構造領域である。クリングル構造はアンジオスタチン(O'Reilly, M.S. ら, Cell, 1994年, 第79巻, 315-328頁)、プロトロンビン(Walz, D.A. ら, Proc. Natl. Acad. Sci., 1977年, 第74巻, 1069-1073頁)、ユーロキナーゼ(Pennica, D. ら, Nature, 1983年, 第301巻, 579-582頁)、肝細胞成長因子(Lukker, N.A. ら, Protein Eng., 1994年, 第7巻, 895-903頁)及びアポリポ蛋白質(a)(apolipoprotein(a))(McLean, J.W. ら, Nature,1987年, 第 330巻, 132-137頁)等のような多数の蛋白質から発見される。クリングル領域は、独立的な折り畳み単位(folding unit)で構成され、その機能的な役割はまだ明確に示されていない。しかし、クリングル構造を有する蛋白質等の多様な機能により、クリングル構造は共通的な機能を有しないものと認識されてきた。
【0013】
生体内において、肝臓でのみ生産される糖蛋白質の一種であるアポリポ蛋白質(a)もまた、多数のクリングル構造を含んでいる。アポリポ蛋白質(a)は、低密度リポ蛋白質(LDL)の主要蛋白質成分であるアポB-100と共有的に結合してリポ蛋白質(a)(lipoprotein(a))を形成する(Fless, G. M., J. Biol. Chem., 1986年, 第261巻, 8712-8717頁)。アポリポ蛋白質(a)は、生体内でコレステロール運搬を担当し、血漿でのリポ蛋白質(a)濃度増加は、単独的にも動脈硬化(artherosclerosis)及び心臓疾患の主な危険因子として報告され(Armstrong, V.W. ら, Artherosclerosis, 1986年, 第62巻, 249-257頁; Assmann, G., Am. J. Cardiol., 1996年, 第77巻, 1179-1184頁)、リポ蛋白質(a)の役割は、大部分アポリポ蛋白質(a)を媒介しておこなわれると報告された。アポリポ蛋白質(a)は、プラスミノゲンクリングルIV及びVと類似性を示す2種類のクリングル領域と非活性の蛋白質分解酵素類似(protease-like)領域を含んでいる。アポリポ蛋白質(a)クリングルIV類似領域は、アミノ酸配列の相同性によって再び10種の亜形(subtype; IV1〜IV10)に分けられ、各々は一つずつ存在するが、IV2クリングルはアポリポ蛋白質(a)遺伝子の多様なヒト対立遺伝子に3〜42個のコピー数(copy number)で存在する。そして、最後のクリングルVは、プラスミノゲンクリングル-5と83.5%のアミノ酸配列相同性を有する。
【0014】
本発明者らは、2003年にLK8蛋白質を有効成分として含む抗癌剤を出願した(大韓民国特許出願番号:第2003-10797号)。しかし、固形癌や転移癌は生体内で長期間休止期(dormant stage)を経ても再び成長する能力がある一方、蛋白質を使用した抗癌剤は生体内半減期が相対的に短い。したがって、有効な抗癌効能を得るためには多量の蛋白質を長期間反復的に投与して腫瘍での局所的な抗癌蛋白質濃度を一定水準以上に維持しなければならない。
【0015】
したがって、この方法は多量の蛋白質を必要とするので、それを生産できる設備及び技術が拡充されなければならず、生産が可能であるとしてもそれは患者と生産者両方に多くの費用が必要とされる。また、患者の立場からすると、長期間薬物を反復投与することは面倒なことであり、抗癌用蛋白質は大部分毒性がないものと報告されているが、それら蛋白質が大部分微生物を使って生産された組換え蛋白質であるので多量に長期間投与する場合、前記組換え蛋白質の生産時にエンドトキシン(bacterial endotoxin)等に汚染され得る。この場合前記トキシンが毒性を示す危険が常存している。結局、蛋白質を使用した抗癌剤開発のためにはこのような問題点を解決しなければならない。
【0016】
以上のことに鑑みて本発明者らは、蛋白質をコードする遺伝子を使用した遺伝子治療法は、比較的手軽に全身または腫瘍での局所的な抗癌用蛋白質の有効濃度を持続的に維持させられるという長所があるので、蛋白質治療法の短所を克服できる有用な代替方法であると判断し、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングルKIV9-KIV10- KV(LK68)及びKV(LK8)遺伝子をエクスビボ(ex vivo)で結腸癌細胞に伝達してその細胞株を使用した動物実験で、これら遺伝子の伝達が腫瘍の成長と転移を効果的に減少させられるという事実を発見して、LK68遺伝子及びLK8遺伝子を抗癌用遺伝子治療剤に使用できることを確認することにより本発明を完成させた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または抗転移遺伝子治療剤を提供することである。
【0018】
本発明のまた他の目的は、前記遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を個体に非経口的に投与する工程を含む、固形癌の予防または治療の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために本発明は、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または転移抑制用遺伝子治療剤を提供する。
【0020】
また、本発明は前記LK68またはLK8遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を個体に非経口で投与する工程を含む、固形癌予防または治療の方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
用語の定義
遺伝子伝達体は、治療対象にした個体に本発明のLK8またはLK68遺伝子を導入させるための遺伝子の運搬媒介体を意味し、治療対象になる個体で発現するのに適切な、プロモーター、エンハンサー、前記LK8またはLK68の遺伝子、転写終結部位等を含み、線形DNA断片、原型プラスミドベクター、ウイルス性発現ベクターを含むベクター、組換えアデノウイルス、組換えレトロウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス、組換えヘルペスシンプレックスウイルス及び組換えレンチウイルスからなる群から選択される組換えウイルスを全て含む。前記プロモーターは、特定器官及び組織特異的プロモーターが使用でき、該当器官及び組織で増殖できるよう複製起点を含むことができる。
【0022】
AAVは、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus)を意味し、外来遺伝子を発現する組換えアデノ随伴ウイルスまで包括する概念であるが、本明細書で特別な言及が無い限り、自然形ウイルス(wild type virus)を指す。組換えアデノ随伴ウイルス(recombinant adeno-associated virus, rAAV)は、目的外来遺伝子が挿入され前記外来遺伝子を発現できるアデノ随伴ウイルスを指し、遺伝子治療に使われる遺伝子伝達体で、組換えAAVベクターとも称される。一方、rAAV-LK8はLK8蛋白質の発現ベクターのpAAV-LK8が形質導入された細胞から生成されたLK8発現組換えアデノ随伴ウイルスを意味する。同様に、rAAV-LK68はLK68発現組換えアデノ随伴ウイルスを意味する。
【0023】
組換えアデノ随伴ウイルス発現ベクター(recombinant adeno associated viral expression vector, 以下「rAAV発現ベクター」と略称する)は、狭い意味では組換えアデノ随伴ウイルスにより感染した細胞で外来遺伝子が発現されるように製造された外来遺伝子が含まれた発現ベクターを意味し、広い意味では下記のAAV rep-cap遺伝子の発現ベクター及びヘルパープラスミドまたはヘルパーウイルスを含み、細胞に形質導入されて組換えアデノ随伴ウイルスを形成させるのに必要な全てのベクターを意味する。本明細書で特別な言及が無い限り、組換えアデノ随伴ウイルス発現ベクターは後者の意味に使用される。
【0024】
AAV rep-cap遺伝子の発現ベクターは、前記組換えアデノ随伴ウイルス発現ベクターから由来したゲノムの複製に必要な酵素(rep)及びアデノウイルス粒子の形成のための外皮蛋白質(cap)を各々コードする遺伝子の発現ベクターを意味し、前記組換えアデノ随伴ウイルス発現ベクターと同時形質導入することにより組換えアデノ随伴ウイルスの細胞内生成が可能である。ヘルパーウイルスは、独自に複製が不可能なアデノ随伴ウイルスの感染性粒子を形成できるように手助けするウイルスを意味し、アデノウイルス、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)及びヘルペスシンプレックスウイルス(herpes simplex virus)等がこれに属し、ヘルパープラスミド(helper plasmid)は前記ヘルパーウイルスの機能を代行するプラスミドを意味する。一方、前記AAV rep-cap遺伝子発現ベクター及びヘルパープラスミドは、一つのベクターで具現でき、代表的な例としては、pDG(DKFZ, Germany)がある。前記AAVrep-cap遺伝子発現ベクター及びヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドは全て独自に感染性アデノ随伴ウイルス粒子を形成させられないrAAV発現ベクターを助けて感染性rAAV粒子を形成させられるので、本文章では便宜上、AAVrep-cap遺伝子及びアデノ随伴ウイルス感染性粒子形成に必要な前記アデノウイルス起源遺伝子を同時に含むプラスミド(例えば、pDG)をヘルパープラスミドと称し、前記ヘルパープラスミドとヘルパーウイルスを包括してヘルパーベクター(helper vector)と称する。したがって、本明細書で特別な言及が無い限り、ヘルパープラスミドは、前記AAV rep-cap遺伝子発現ベクター及びアデノ随伴ウイルス感染性粒子形成に必要な前記アデノウイルス起源遺伝子の発現ベクター全てを包括する意味で使用する。
【0025】
発明の詳細な説明
前記目的を達成するために、本発明はヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または転移抑制用遺伝子治療剤を提供する。
【0026】
また、本発明は前記LK68またはLK8遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を個体に非経口で投与する工程を含む、固形癌の予防または治療の方法を提供する。
【0027】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0028】
本発明は、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または抗転移遺伝子治療剤を提供する。
【0029】
ここで、前記LK68遺伝子は特別にこれに制限されるものではなく、配列番号1で記載される塩基配列であることが好ましく、前記LK68遺伝子を含む遺伝子伝達体は特別にこれに制限されるものではなく、人体または動物細胞で発現される線形DNA、プラスミドベクター、ウイルス性発現ベクターを含むベクターまたは組換えレトロウイルス(retrovirus)ベクター、組換えアデノウイルス(adenovirus)ベクター、組換えアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus, AAV)ベクター、組換えヘルペスシンプレックスウイルス(herpes simplex virus)ベクターまたは組換えレンチウイルス(lentivirus)ベクターを含む組換えウイルスベクターであることがより好ましく、pSecTag-LK68、pLXSN-LK68、rAAV-LK68及びpAAV-LK68からなる群から選択されることが最も好ましい。前記LK68遺伝子を含む細胞は特別にこれに制限されるものではなく、造血幹細胞(hematopoietic stem cells)、樹状細胞(dendritic cells)、自己腫瘍細胞(autologous tumor cells)及び株化腫瘍細胞(established tumor cells)からなる群から選択されることが好ましい。
【0030】
前記LK8遺伝子は、特別にこれに制限されるものではなく、配列番号1で記載される塩基配列であることが好ましく、前記LK8遺伝子を含む遺伝子伝達体は特別にこれに制限されるものではなく、人体または動物細胞で発現される線形DNA、プラスミドベクター、ウイルス性発現ベクターを含むベクターまたは組換えレトロウイルス(retrovirus)ベクター、組換えアデノウイルス(adenovirus)ベクター、組換えアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus, AAV)ベクター、組換えヘルペスシンプレックスウイルス(herpes simplex virus)ベクターまたは組換えレンチウイルス(lentivirus)ベクターを含む組換えウイルスベクターであることがより好ましく、pSecTag-LK8、pLXSN-LK8、rAAV-LK8及びpAAV-LK8からなる群から選択されることが最も好ましい。前記LK8遺伝子を含む細胞は特別にこれに制限されるものではなく、造血幹細胞(hematopoietic stem cells)、樹状細胞(dendritic cells)、自己腫瘍細胞(autologous tumor cells)及び株化腫瘍細胞(established tumor cells)からなる群から選択されることが好ましい。
【0031】
また、前記治療剤は、LK68またはLK8遺伝子を含むベクターの場合、0.05〜500mgを含有することが好ましく、0.1〜300mgを含有することがさらに好ましく、LK68またはLK8遺伝子を含む組換えウイルスの場合、103〜1012IU(10〜1010PFU)を含有することが好ましく、105〜1010IUを含有することがさらに好ましい。一方、前記治療剤は、LK68またはLK8遺伝子を含む細胞の場合、103〜108個を含有することが好ましく、104〜107個を含有することがさらに好ましい。
【0032】
前記組換えウイルスは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスであることが好ましく、治療のための前記ウイルスの数は、ベクターゲノムを含んだウイルス粒子ないしは感染可能なウイルス数で示すことができる。即ち、ウイルス粒子の1%以下が実際に感染可能なウイルスの有効個数であり、それを示すためにIU(infection unit)またはPFU(plaque forming unit)を使用する。
【0033】
一方、細胞を使用した治療は、組換えレトロウイルスを使用した治療に適用できる。例えば、組換えレトロウイルスの場合、血中補体(complement)により前記ウイルスが大部分不活性化されるので、エクスビボ(ex vivo)伝達の治療法を使用する。詳細には、前記LK68またはLK8遺伝子を含む組換えレトロウイルスを製造し、前記ウイルスを使用してヒトの造血幹細胞(CD34+)に遺伝子を伝達し、前記細胞を人体に投与して疾病を治療できる。ここで、前記使用可能な細胞は造血幹細胞以外に樹状細胞、自己腫瘍細胞(autologous tumor cells)、株化腫瘍細胞(established tumor cells)等を代用できる。本発明の多数の実施例では、株化腫瘍細胞に該当するCT26細胞株にレトロウイルスを使用してLK68またはLK8遺伝子を伝達して、前記細胞を生体内に投与して疾病の進行を観察したことがある。
【0034】
また、前記治療剤は、癌転移抑制または原発腫瘍の治療に使用することが好ましく、前記癌は、結腸癌、肝癌、肺癌、乳房癌、脳腫瘍、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、膵臓癌、リンパ腫、腎臓癌、卵巣癌及び転移性癌からなる群から選択することがより好ましい。
【0035】
本発明のLK68またはLK8遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する遺伝子治療剤は、臨床投与時に非経口で投与が可能で、一般的な医薬品製剤の形態で使用できる。
【0036】
即ち、本発明の治療剤は、実際の臨床投与時に非経口の様々な剤形で投与できる。製剤化する場合には、普通に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を使用して調剤する。非経口投与のための製剤には、滅菌した水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレイン酸のような注射可能なエステル等が使用できる。坐薬の基剤には、ハードファット(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(Tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が使用できる。また、治療剤としての効能増進のためにカルシウムやビタミンD3を添加できる。
【0037】
投薬単位は、例えば個別投薬量の1、2、3または4倍、または1/2、1/3または1/4倍を含有できる。個別投薬量は、有効薬物が1回に投与される量を含有することが好ましく、これは通常1日投与量の全部、1/2、1/3または1/4倍に該当する。
【0038】
前記治療剤の有効用量は、体重1kg当たりベクターの場合には、0.05〜12.5mg/kg、組換えウイルスの場合には、107〜1011ウイルス粒子(105〜109IU)/kg、細胞の場合には、103〜106細胞/kgで、好ましくはベクターの場合には0.1〜10mg/kg、組換えウイルスの場合には、108〜1010粒子(106〜108IU)/kg、細胞の場合には102〜105細胞/kgで、一日2〜3回投与できる。前記のような組成は、必ずしもこれに限定されるものではなく、患者の状態及び神経疾患の発病程度により変動し得る。
【0039】
本発明者らは、LK68蛋白質及びLK8蛋白質がインビボ及びエクスビボで強力な抗癌剤として作用することを確認した(大韓民国特許出願番号:第2003-10797号)。しかし、多くの抗癌剤は製剤の特性上、高い濃度の蛋白質を長期間持続的に患者に投与しなければならないので、蛋白質の生産と生産した蛋白質の高い単価等、様々な難しい点が予想される。また、LK68及びLK8蛋白質は自体の物理的産物により細胞外基質(extracellular matrix)の主成分である種々の高分子(フィブリノゲン、フィブリン等)と結合できる能力があるので、前記蛋白質の全身投与時に蛋白質が腫瘍まで到達する前に非特異的反応によって損失し得る危険性が大きい。
【0040】
このような短所を克服できる代替方案の一つは、蛋白質を直接投与する代りに各蛋白質をコードする遺伝子を生体内標的細胞に導入させた後、形質転換された標的細胞から所望する蛋白質が直接発現して作用できるようにする遺伝子治療である。抗癌剤である前記LK68及びLK8蛋白質の代わりに前記蛋白質をコードする遺伝子を使用した治療は、抗癌剤としての効能を極大化できる。これに基づき、本発明者らはヒトアポリポ蛋白質(a)の多くのクリングル(kringle)構造の中からKIV9-KIV10-KV(LK68)構造を含む遺伝子及びKV(LK8)構造だけを有する遺伝子を確保して、前記遺伝子をエクスビボで癌細胞に伝達した後、生体内へ注入して癌細胞の成長と転移を観察した結果、前記遺伝子伝達によって腫瘍の成長と転移を効果的に抑制できることを確認した。
【0041】
本発明者らは、LK68またはLK8蛋白質をコードする遺伝子を有する組換えレトロウイルスを製造して、それを使用してエクスビボで結腸癌細胞に伝達した後、それを使用して生体内での腫瘍の成長と転移に及ぼす影響を観察した。また、LK68またはLK8遺伝子を含む治療用遺伝子伝達体である組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を製造して、それを生体内へ伝達し腫瘍の成長抑制及び転移抑制効果を確認することにより、前記遺伝子が抗癌用治療剤として使用できることを確認した。
【0042】
詳細には、本発明の実施例で、本発明者らはアポリポ蛋白質(a)の末端部3個のクリングル(KIV9、KIV10及びKV)構造(図1参照)、即ちLK68蛋白質とLK8蛋白質をコードする遺伝子を含む長さ約1KbpのDNAをヒト肝(liver)cDNAライブラリ(library)から逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を通じて製造した。前記の確保したDNAの適合性は自動塩基配列解析装置を通じて確認し、それをLK68遺伝子と命名した。LK68DNAから末端のKVクリングル部分だけを選択的なプライマーを通じて増幅してLK68と同じ方法でクローニングして、それをLK8遺伝子と命名した。
【0043】
組換えレトロウイルスの製造のために、製造した前記遺伝子をレトロウイルスベクター(retroviral vector)のpLXSN(Clontech, 米国)にクローニングした。LK68遺伝子を導入したベクターはpLXSN-LK68と、LK8遺伝子を導入したベクターはpLXSN-LK8と各々命名した(図1参照)。次に、前記組換えベクターのpLXSN-LK68とpLXSN-LK8をPT67パッケージング細胞株(packaging cell line)に導入して組換えウイルスを生産した後、標的細胞のネズミ結腸癌細胞株CT26にLK68またはLK8遺伝子を伝達した。LK68遺伝子を安定的に発現するCT26細胞株はCT-LK68と、LK8遺伝子を発現する細胞株はCT-LK8と命名した。一方、対照群のLK68及びLK8遺伝子なしにpLXSNベクターだけ導入した細胞株をCT-vectorと命名した。
【0044】
LK68またはLK8遺伝子の導入が、標的細胞自体の成長及び細胞死には影響を及ぼさないことを確認した(図2参照)。また、生体内での固形癌の成長及び転移抑制を通じてCT-LK68またはCT-LK8細胞株から発現したLK68とLK8蛋白質の抗癌効能を観察した(図3〜7参照)。その結果、LK68及びLK8遺伝子を使用した遺伝子治療剤は、腫瘍の成長と他の臓器への転移を卓越して抑制できることを確認した。
【0045】
また、前記結果に基づき本発明者らは、前記LK68及びLK8 DNAに免疫クロブリンκ(Igκ)鎖の細胞外分泌を誘導する信号塩基配列とFLAG抗原が付加されるようにDNAを構成して、前記DNAをアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体システムに導入し、LK68またはLK8遺伝子が挿入された組換えアデノ随伴ウイルスベクターを製造して、それをpAAV-LK68またはpAAV-LK8と命名した。ここから生成したウイルス粒子をrAAV-LK68またはrAAV-LK8と命名した(図8〜図10参照)。前記製造した組換え遺伝子伝達体によるLK68またはLK8遺伝子の細胞または組織内への遺伝子導入とそれによる発現を確認した(図11参照)。前記組換えウイルスによって伝達され発現したLK68及びLK8蛋白質は、動物実験を通じて転移性癌細胞のB16F10黒色腫(melanoma)細胞が肺に転移されることを約30〜60%程度阻害することを確認した(図12及び13参照)。したがって、組換えアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体のrAAV-LK68とrAAV-LK8は、抗癌用遺伝子治療剤として使用できることを確認した。
【0046】
合わせて、本発明は、本発明のヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または転移抑制用遺伝子治療剤を個体に非経口で投与する工程を含む、固形癌の予防または治療の方法を提供する。
【0047】
ここで、前記投与する工程は特別にそれに制限されるものではなく、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体を化学的方法、物理的方法、リポソームを使用した接合方法、受容体及びウイルスを使用した方法からなる群から選択される方法によって細胞内へ導入する工程を含むことが好ましい。また、本発明の固形癌の予防または治療方法は、固形癌の成長及び転移の抑制を通じてなされることが好ましい。さらに、本発明のまた他の好ましい実施態様で、前記投与する工程は造血幹細胞、樹状細胞、自己腫瘍細胞及び株化腫瘍細胞からなる群から選択した細胞に前記ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を導入して、前記細胞を人体に投与する方法からなることが好ましい。
【0048】
本発明者らは、LK68またはLK8遺伝子の導入が生体内での固形癌の成長及び転移抑制を通じて抗癌効能を確認し(図3〜7参照)、LK68及びLK8遺伝子を使用した遺伝子治療剤は腫瘍の成長と他の臓器への転移を卓越して抑制できることを確認した。また、前記遺伝子伝達体によって伝達され発現したLK68及びLK8蛋白質は転移性癌細胞のB16F10黒色腫(melanoma)細胞が肺に転移されることを約30〜60%程度阻害することを確認し(図12及び13参照)、前記LK68またはLK8遺伝子を含んだ組換えアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体が癌転移を抑制することを確認した。
【0049】
発明の形態
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するだけのもので、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1:組換え蛋白質LK68またはLK8を発現する結腸癌細胞株の確立
レトロウイルスを使用してLK68またはLK8蛋白質をコードする遺伝子を結腸癌細胞株に導入した。前記遺伝子を導入した細胞株製造の過程を下記に詳細に示す。
【0051】
<1-1>LK68またはLK8蛋白質を発現する組換えベクターの製造
まず、配列番号3で記載されるLK68遺伝子のセンスプライマーまたは配列番号4で記載されるLK8遺伝子のセンスプライマー及び配列番号5で記載されるウイルスベクターのセンスプライマーを使用して、各々配列番号1及び配列番号2で記載されるヒトの肝(liver)のLK68蛋白質またはLK8蛋白質をコードする遺伝子(以下、「LK68またはLK8遺伝子」と略称する)を含むDNA断片を得られるように、DNAの鎖分離(denaturation)のために94℃で5分、以後94℃で30秒、プライマー結合(annealing)のために56℃で30秒、プライマーにつなぐDNA合成(extension)のために72℃で1分の過程を30回反復した後、追加的に72℃で5分間さらに反応させるポリメラーゼ連鎖反応方法(PCR)で増幅した。各々のセンスプライマーには、制限酵素SfiI、アンチセンスプライマーには制限酵素XhoIの切断部位が各々挿入されているように製造してベクターと目的DNAとの連結(DNA ligation)を容易にした。増幅されたポリメラーゼ連鎖反応産物のベクター内導入で得られた組換えベクターの蛋白質発現及び標的蛋白質(LK68またはLK8蛋白質)が細胞外部に円滑に分泌されるようにするために、先で使用した制限酵素のSfiI及びXhoI制限酵素で前もって切断したpSecTag ベクター(Invitrogen, 米国)に前記ポリメラーゼ連鎖反応産物を連結(ligation)した後にIgκ信号配列(leader sequence)のSfiI制限酵素サイトに挿入して各LK68またはLK8遺伝子上流(upstream)に位置するようにpSecTag-LK68及びpSecTag-LK8を製造した。
【0052】
その後、LK68またはLK8遺伝子をレトロウイルスベクターに導入するために、配列番号6で記載されるウイルスベクターのセンスプライマーと配列番号5で記載されるLK68またはLK8アンチセンスプライマーを使用して、DNAの鎖分離(denaturation)のために94℃で5分、以後94℃で30秒、プライマー結合(annealing)のために56℃で30秒、プライマーにつなぐDNA合成(extension)のために72℃で1分の過程を30回反復した後、追加的に72℃で5分間さらに反応させるポリメラーゼ連鎖反応方法で前記pSecTag-LK68及びpSecTag-LK8ベクターから各々Igκ-LK68及びlgκ-LK8DNA部分だけを選択的に増幅した。ここで、プライマーには各々制限酵素EcoRIとXhoIの切断部位が挿入されているように製造し、以後のクローニングでベクターと目的DNAとの連結(DNA ligation)が容易になるようにした。ポリメラーゼ連鎖反応で増幅したIgκ-LK68及びIgκ-LK8DNA切片を前記の制限酵素EcoRIとXhoIで切断して、それに先立って同一な制限酵素で切断したレトロウイルスベクターのpLXSNベクター(Clontech, 米国)に前記DNA切片を連結して各々pLXSN-LK68及びpLXSN-LK8を製造した。各遺伝子の塩基配列分析と制限酵素を使用した遺伝子地図を通じて目的遺伝子がベクターに完全に導入(insertion)されたかどうかを確認した(図1のa)。
【0053】
<1-2>LK68またはLK8遺伝子を導入した結腸癌細胞株の製造
LK68またはLK8遺伝子を含む組換えレトロウイルスを生産するために、常用リポソーム(LipofectaminTM, Life Technologies Inc., Rockville, MD, 米国)を使用して前記実施例1-1で製造したpLXSN-LK68またはpLXSN-LK8ベクターでパッケージング細胞株(packaging cell line)のPT67(Clontech, 米国)を形質感染(transfection)させた。感染したPT67細胞株から作られた組換えウイルスを零下80℃で保管して、必要な場合に結腸癌細胞株のCT26(韓国細胞株銀行)を感染させるのに使用した。前記ウイルスで感染したCT26細胞株は、pLXSNベクターに存在するレポータ遺伝子によりG418抗生剤(濃度:1mg/ml)に耐性を示すので、このような抗生剤耐性を使用してLK68またはLK8蛋白質を安定的に発現する細胞株を確保した。LK68遺伝子を導入した細胞株をCT-LK68と、LK8遺伝子を導入した細胞株をCT-LK8と各々命名した。対照群として前記蛋白質(LK68またはLK8)をコードする遺伝子のベクターへの導入なしにpLXSNベクターだけを導入した細胞株をCT-vectorと、ウイルス感染を実施していない細胞株をCT-mockと命名した。
【0054】
前記細胞株CT-LK68及びCT-LK8からLK68及びLK8蛋白質が発現されるかどうかをウエスタンブロット分析と逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を通じて確認した(図1のb及びc)。その結果、前記細胞株が各々LK68及びLK8蛋白質を発現することを確認した。
【0055】
実施例2:細胞株CT-LK68及びCT-LK8のインビトロでの増殖及び予想される細胞死(apoptosis)観察
LK68及びLK8遺伝子導入がCT26細胞に及ぼす影響を調査するために、インビトロ(in vitro)でCT-LK68及びCT-LK8細胞株の増殖と予想される細胞死を観察した。
【0056】
詳細には、細胞株の増殖を観察するために、CT-LK68、CT-LK8、CT-vector及びCT-mock細胞株を24個ウェル(well)からなる組織培養平板のウェル毎に各々2.5×104個の細胞を分注して、10%FBS(fetal bovine serum)を添加したDMEM(Dulbecco's modified Eagles medium)培地で37℃、5%CO2の環境条件下で培養しながら時間毎に増殖した細胞の数をトリパンブルー排除(trypan blue exclusion)計数法(Freshney, R. I., 1994, Culture of Animal Cells. A manual of Basic Technique, 3rd Ed. Wiley-Liss. New York, 米国)を使用し5日間観察した。その結果、LK68またはLK8遺伝子を導入した細胞株と対照群間にほぼ同一な増殖様相を観測できた(図2のa; ここで、X軸は観察した時間を示し、Y軸は増殖した細胞の数を示す)。
【0057】
予想される細胞死は、約1×105の細胞をアネクシン-VとPIで染色した後、FACSを通じて観察した。ここで、陽性対照群に10μg/mlのタキソール(taxol)を24時間処理したCT26細胞株を使用した。その結果、陽性対照群に使用した10μg/mlのタキソールを処理した細胞株の予想された細胞死比率は約83%に達するのに反して、CT-mock細胞株は0.89%、CT-vector細胞株は1.21%、CT-LK68細胞株は0.96%と現れた(図2のb)。前記結果を通じて、LK68遺伝子の発現はCT26細胞株の増殖と予想される細胞死にはいかなる影響も与えないことを確認した。
【0058】
実施例3:LK68遺伝子の導入による固形癌の成長抑制
同種移植された腫瘍モデルを使用して、LK68遺伝子の導入により結腸癌細胞で発現したLK68蛋白質が固形癌の成長抑制効能があるかどうかを観察した。
【0059】
詳細には、10%FBSを添加したDMEM培地で培養した約5×105個のCT-LK68細胞をBalb/cマウス(Charles River, 横浜、日本)の背側中央部の皮下に接種した。マウスは一群当り8〜10匹を使用した。腫瘍を移植した後、約1か月間癌の成長を観察した。ここで、CT-LK68細胞の代わりにCT-vectorまたはCT-mock細胞を移植した群を対照群に設定した。腫瘍の大きさは3〜4日に1回ずつ測定して、[長さ×幅2×0.52]式を使用して癌の体積を計算した。
【0060】
その結果、LK68遺伝子を導入したCT-LK68細胞の場合、腫瘍の成長が対照群に比べて顕著に低下した。即ち、細胞株を移植して33日目に観測した結果、対照群のCT-vectorとCT-mock細胞の成長率の平均値と比較して、CT-LK68は約80%程度の成長抑制効果が観測された(図3のa)。観察終了後、即時にマウスを犠牲にして腫瘍をマウスから分離して重さを測定したところ、体積の結果と同様にLK68遺伝子を導入したCT-LK68細胞の腫瘍重量は、CT-vector細胞の腫瘍重量に比べて顕著に減少した(図3のb及びc)。
【0061】
実施例4:LK68遺伝子の導入による脾臓に移植した癌の肝転移(liver metastasis)抑制
遺伝子導入により結腸癌細胞で発現したLK68蛋白質またはLK8蛋白質が固形癌の転移抑制効能があるかどうかを観察するために、前記実施例3で使用した同種Balb/cマウスの脾臓に結腸癌細胞が注入された肝転移動物モデルを使用して癌の肝転移程度を観測した。
【0062】
詳細には、前記Balb/cマウスの脾臓に5×104個のCT-LK68細胞を移植して、移植後、14日目にマウスを解剖して肝を摘出し、癌観察及び転移した癌のコロニー(colony)数を計数して転移の程度を測定した。図4のaは、結腸癌が転移した代表的な肝の写真を示す。CT-vector細胞の場合、肝表面全体が大小の癌で覆われている非正常的な肝の形態を示した。一方、CT-LK68とCT-LK8細胞の場合には癌の転移が相当に減少し、肝の形態も正常的な肝と相当に類似に観察された。合わせて、肝表面に転移されて生じた瘤(nodule)の数を測定してみると、LK68遺伝子を導入したCT-LK68細胞は単位面積当り47±30個、CT-LK8細胞は86±50個の標準偏差で瘤が生成されたのに対して、対照群のCT-vector細胞は標準偏差125±14個の瘤が生成された。したがって、LK68またはLK8遺伝子を導入した細胞株は対照群に比べて転移で生成された瘤数が顕著に減少したことを確認できた(図4のb)。
【0063】
また、前記肝標本をホルマリンで固定した後、H&E染色を通じて全般的な結腸癌の転移様相を観察して、癌細胞の増殖はPCNA染色を通じて、死滅はTUNEL染色の免疫組織化学的方法を通じて分析した(図5のa、Junqueria, Basic Histology, MIP)。一定の領域内にある全体細胞数に対して各々の染色薬に陽性に染色された細胞数の比率を癌細胞の増殖指数と死滅指数を百分率で示した。
【0064】
H&E染色結果、CT-LK68細胞を移植した宿主マウスの肝は、対照群のCT-vector細胞を移植した動物に比べて全般的な癌転移の数が減少しただけではなく、転移されて形成された瘤の大きさもまた、顕著に小さく観察された。前記結果を通じて、LK68遺伝子は微細転移癌が新生血管形成を通じて巨大転移(macro metastasis)癌に増殖する過程もまた、抑制することを確認した。
【0065】
次に、CT-LK68細胞と対照群のCT-vector細胞の全体細胞に対するPCNA染色された細胞の比率は、各々64.5±3%と64.3±2%の標準偏差程度で、二つの群間で類似に観察された(図5のb)。しかし、TUNEL染色ではCT-LK68細胞群は5.36±1.35%、CT-vector細胞群は0.47±0.14%の標準偏差で、CT-LK68細胞群の癌細胞の予想された細胞死程度が顕著に増加したことを観察した(図5のc)。前記結果から遺伝子導入で結腸癌細胞で発現したLK68蛋白質は癌細胞の増殖には影響を及ぼさないが、癌細胞の死滅には効果的に作用することを確認した。即ち、LK68遺伝子の細胞内導入を通じて、結腸癌の肝への転移及び転移癌の成長を効果的に抑制できることが分かった。
【0066】
したがって、H&E、PCNA及びTUNEL染色結果を全て総合して判断すると、LK68遺伝子の細胞内導入による癌転移抑制効能は、LK68蛋白質発現による癌細胞の予想された細胞死による結果であると判断される。
【0067】
実施例5:脾臓に移植された癌の肝転移モデルにおけるLK68遺伝子の導入による宿主の生存率増加
前記実施例4の結腸癌細胞の肝転移動物モデルを使用して、LK68遺伝子の導入による肝転移抑制がマウスの生存率に及ぼす影響を調査した。
【0068】
詳細には、マウスの脾臓に4×105個のCT-LK68細胞と対照群のCT-vector細胞を注入した後、毎日マウスの状態と生存有無を観察した。対照群のCT-vector細胞が注入されたマウス群の場合、実験を開始した後、23日目から急速度で死亡し始めて前記マウス群の50%が生き残った生存期間は24日、全体的な生存期間は28日と観察され、CT-LK68細胞が注入されたマウス群の50%が生き残った生存期間は36日、全体的な生存期間は48日と観察された(図6)。カプランマイヤー生存曲線のログランクテストを通じて、二群間の生存率差の統計的有意性を検定した。この実験結果から、LK68遺伝子の細胞内導入は癌の肝転移を抑制することにより宿主の生存率を顕著に増加させることを確認した。
【0069】
実施例6:癌の腹腔転移モデルにおけるLK68遺伝子の導入による宿主の生存率増加
結腸癌細胞は肝への転移以外に腹腔を通じても転移が起きて、前記二種形態の転移が結腸癌患者の手術後、再発及び死亡の主原因である。したがって、LK68遺伝子の細胞内導入が結腸癌細胞の腹腔転移モデルで宿主の生存率を増加させるかどうかを確認した。
【0070】
詳細には、前記実施例3で使用した同種Balb/cマウスの腹腔に4×105個のCT-LK68細胞と対照群のCT-vector細胞を注入した後、約32日間マウスの状態と生存有無を毎日観察した。対照群のCT-vector細胞を注入したマウス群の場合、実験を開始した後、14日目から急速度で死亡し始めて前記マウス群の全体的な生存期間は21日と観察され、CT-LK68細胞を注入したマウス群の50%が生き残っている生存期間は23日、全体的な生存期間は28日と観察された(図7)。カプランマイヤー生存曲線のログランクテストを通じて、二群間の生存率差の統計的有意性を検定した。この実験結果から、LK68遺伝子の細胞内導入は結腸癌細胞の腹腔転移を抑制することにより宿主の生存率を顕著に増加させることを確認した。
【0071】
実施例7:組換えアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体製造のための伝達プラスミドベクターpAAV-LK68とpAAV-LK8の製造
本発明者らは、LK68及びLK8遺伝子を組換えアデノ随伴ウイルスベクターに導入して各々 pAAV-LK68とpAAV-LK8と命名した。pAAV-LK68とpAAV-LK8プラスミド製造の詳細な過程を下記に示す。
【0072】
<7-1>LK68及びLK8 cDNAの増幅
ヒト肝細胞cDNAライブラリ(Clontech, Palo Alto, CA, 米国)を鋳型(template)にして配列番号7と配列番号8で記載される各プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応を通じて配列番号1で記載されるLK68 DNAを前記実施例1-1と同一な反応条件と方法で増幅した。LK68蛋白質が細胞外に分泌されるようにするために、前記蛋白質のアミノ基末端をコードする塩基配列にIgκの信号塩基配列を連結させてpcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, 米国)にクローニングした。クローニング後、DNA塩基配列分析機(Applied Biosystems, CA, 米国)を使用した塩基配列の分析でLK68 DNAが正しく挿入されたかどうかを確認して、前記ベクターをpcDNA-LK68と命名した。また、前記pcDNA-LK68を鋳型に配列番号8及び配列番号9で記載されるプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応を遂行してLK8 DNAを増幅し、LK68 DNAと同一な方法でLK8DNAをクローニングして、前記方法で製造したベクターをpcDNA-LK8と命名した。
【0073】
pcDNA-LK68とpcDNA-LK8を鋳型に全て配列番号10及び配列番号11で記載されるプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応を遂行して各々LK68とLK8 DNAを増幅した。ここで、配列番号10で記載されるプライマーは、LK68及びLK8 cDNAの5'末端に連結されたIgκの信号塩基配列の5'末端と結合してプライマーの5'末端にEcoRI制限酵素切断部位を含むように考案した。配列番号11で記載されるプライマーは、LK68及びLK8 cDNAの3'末端にFLAG抗原が付加されるようにプライマー内部にFLAGをコードする塩基配列を有するよう考案した。FLAG抗原標識は、LK68及びLK8 cDNAを容易に分析するためのものである。
【0074】
下記のように、鋳型に使用されるpcDNA-LK68または-LK8ベクター100ng、25mMのプライマー各々2μl、10×ポリメラーゼ連鎖反応バッファー(buffer)5μl、dNTP(各2.5mM)混合液(mixture)4μl、Ex-Taqポリメラーゼ2.5Uを0.2ml PCRチューブに分注した後、3次蒸留水で最終体積が50μlになるように調節してポリメラーゼ連鎖反応を遂行した。ポリメラーゼ連鎖反応条件は、DNA鎖を分離するために95℃で5分反応した後、95℃で30秒、52℃で30秒、72℃で1分まで30回反復して、追加的に72℃で3分間さらに反応させた。ポリメラーゼ連鎖反応が正しく実行されたかどうかはアガロースゲル電気泳動で確認した(図8)。
【0075】
<7-2>プラスミドベクターpAAV-LK68とpAAV-LK8の製造
pAAV-hrGFPベクター(Stratagene, La Jolla, CA, 米国)のGFP遺伝子の前後にあるEcoRIとXhoI部位を切断してGFP遺伝子を除去して、前記部位にLK68またはLK8 cDNAを連結させた。
【0076】
詳細には、ポリメラーゼ連鎖反応を通じて製造したLK68とLK8 DNAをEcoRIとXhoI制限酵素で各々切断した後、ゲル抽出を通じて切断されたDNAを分離して、T4 DNAリガーゼ(ligase)で16℃で4時間反応させてコンピテントセル(Competent cell)のDH5α(ATCC)に形質転換(transformation)を遂行した(図9)。1日後に増殖した形質転換DH5αからDNAを抽出してGFP遺伝子を除去したpAAV-hrGFPベクター(以下、「pAAV」と略称する)にLK68及びLK8 DNAが正しく挿入されたかどうかをEcoRIとXhoIで再び切断することにより確認した。LK68 DNAがpAAVベクターに正しく挿入された伝達プラスミドベクターをpAAV-LK68と、LK8 DNAが挿入された伝達プラスミドベクターをpAAV-LK8と命名した(図10)。
【0077】
実施例8:LK68及びLK8遺伝子を伝達する組換えアデノ随伴ウイルスの生産及び分離
本発明者らは、アデノ随伴ウイルスLK68及びLK8遺伝子伝達体を製造するために、pAAV-LK68またはpAAV-LK8 DNAをアデノウイルスのE2a、E4、VA遺伝子とアデノ随伴ウイルスのRep、Cap遺伝子を有するヘルパープラスミドと定量比率1:5で混合して、N/P比率5に該当する量の形質導入試薬PEI(PolyPlus, Illkirch, France)と常温で15分間反応させた後、アデノウイルスのE1遺伝子が挿入され安定に発現されるHEK293細胞(Microbix, Toronto, Ontario, Canada)に一滴ずつ徐々に滴下した後、48時間37℃で培養した。前記培養した細胞を集めて3,000rpmで10分間遠心分離して培地と細胞を分離して、再び0.15MのNaClと50mMのTris-HCl(pH 8.5)で構成されたバッファーで前記細胞を浮遊(resuspension)させた後、急冷と解凍を3回反復して細胞を溶解(lysis)させた。ウイルス外皮(capsid)で包装されないDNAを除去するために、50U/mlのDNA分解酵素を処理して37℃で30分間反応させた後、3,000rpmで20分間遠心分離して上澄み液(supernatant)を分離した。前記上澄み液からウイルスを分離するために、イオジキサノール(iodixanol)濃度勾配超遠心分離を使用した(Zolotukhin, S. ら, Gene Therapy, 1999年, 第6巻, 973-985頁)。前記の方法で生産及び分離されたウイルスを各々rAAV-LK68とrAAV-LK8と命名した。
【0078】
実施例9:組換えアデノ随伴ウイルスによって伝達されたLK68及びLK8遺伝子の発現
前記実施例8で製造した伝達プラスミドベクターpAAV-LK68とpAAV-LK8のLK68及びLK8遺伝子が正常的に発現されるかどうかを確認するために、インビトロ(in vitro)でHEK293細胞に前記プラスミドベクターを導入してLK68及びLK8遺伝子の発現、細胞外部への分泌及びインビトロだけではなくインビボでの発現の有無を下記の方法で確認した。
【0079】
<9-1>インビトロ(in vitro)での形質導入とアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体によるLK68とLK8遺伝子の発現
6-ウェルプレートで70〜80%程度に培養されているHEK293細胞にPEI(PolyPlus, Illkirch, France)試薬を使用してpAAV-LK68またはpAAV-LK8プラスミドベクター3mgを形質導入させた後、24時間37℃で培養した。
【0080】
一方、前記実施例8で製造したウイルス遺伝子伝達体のrAAV-LK68とrAAV-LK8の場合には、FBSが入っていない条件で各々の6-ウェルプレートで70〜80%程度に培養されているHEK 293細胞に前記ウイルスを細胞数当りウイルス重複感染数(multiplicity of infection)が5になるように感染させた後、1時間後に培地を交換して37℃で24時間追加培養した。
【0081】
前記二種類の細胞を各々集めた後、3,000rpmで5分間遠心分離して細胞と培地を分離して、1×SDS-PAGEバッファー(50mMのTris(pH 6.8)、2%のSDS(sodium dodecyl sulfate)、100mMのDTT(dithiothreitol)、0.1%のBPB (bromophenol blue)、10%のグリセロール)で前記細胞を浮遊させて、100℃で5分程度湯煎加熱した後、10,000rpmで2分程度遠心分離して上澄み液を分離し、培地は遠心分離形濃縮装置(Centricon YM-10; Amicon, Beverly, MA, 米国)で10倍濃縮して前記と同一な方法で試料化した。
【0082】
電気泳動キットを使用して15%SDS-PAGEで20mAで約2時間電気泳動して、トランスファーユニット(transfer unit)を使用して300mAでトリス-グリシン(tris-glycine)バッファー(39 mMのglycin, 48mMのtris, 0.037%のSDS, 20%のメタノール)で約90分間電気泳動を遂行してPVDF膜(polyvinylidene fluoride membrane)に移動させた後、5%の脱脂粉乳/1×TBSTバッファー(10mMのTris, 150mMのNaCl, 0.1%のツイーン-20)を使用して常温で一晩ブロッキングした。1次抗体にマウス抗-FLAG単一クローン抗体(monoclonial antibody, Sigma, St. Louis, MO, 米国)を1:3,000で1×TBSTバッファーに希釈して常温で1時間程度反応させた後に前記TBSTバッファーで5分ずつ6回洗浄した。2次抗体でマウス抗-HRP(KPL, Gaithersburg, MD, 米国)を1:5,000で1×TBSTバッファーに希釈して30分間反応させた後、前記TBSTバッファーで5分ずつ6回洗浄して化学発光キット(ECLTM Chemiluminescent Western Blotting Detection Reagents kit; Amersham, Buckinghamshire, UK)を使用してLK68とLK8蛋白質発現を確認した(図11のa及びb)。
【0083】
<9-2>Balb/cヌードマウスでのLK68遺伝子の発現
アポリポ蛋白質(a)は、マウスにない蛋白質であるため、本発明者らが開発したLK68遺伝子を一般マウスに導入する場合には、前記マウスがLK68蛋白質に対する抗体形成を通じた体内免疫反応によって前記蛋白質が消滅するものと判断した。
【0084】
したがって、前記実施例8で製造及び分離したアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体のrAAV-LK68、rAAV-LK8を1×109IU(infection unit, 感染能力があるウイルスを示す単位)の量で前記実施例3等で使用した同種Balb/cヌードマウスの両後ろ足筋肉に各々三カ所に分けて注射した。ここで、陰性対照群としては食塩水(saline)だけを注入し、陽性対照群にはアンジオスタチン(K13)を発現する組換えアデノ随伴ウイルスのrAAV-K13を使用した。3日間隔で眼窩静脈叢(ocular venous plexus)を通じた採血を遂行して100μlの血液を採取した後、蛋白質分解酵素複合阻害剤(protease inhibitor cocktail)を処理した。採取した血液は約1時間常温に置いた後、12,000rpmで10分間遠心分離して血球細胞と血漿を分離した。分離した血漿の一部を取って酵素免疫測定法(ELISA)を遂行して血液内LK68、LK8及びK13遺伝子の発現量を定量的に測定した。また、前記実施例9-1で遂行したウエスタンブロット分析で直接蛋白質発現を確認した。酵素免疫測定法は、LK68蛋白質が有する3個のクリングル(kringle)中でカルボキシル酸(carboxylic acid)末端クリングル(LK8蛋白質)に対する2個の血清型が異なる抗体を使用した。一つはウサギ抗-LK8抗体でもう一つはマウス抗-LK8抗体である。免疫グロブリン(Immunoglobulin, Ig)がよく結合するように製造したプレート(F8 MAXISORP LOOSE; Nunc, Rosklide, Denmark)において、ウサギ抗-LK8抗体を区画当り0.25mgをコーティングバッファー(10mMのPBS, pH7.2)と混合して、37℃で1時間置いた後、洗浄バッファー(washing buffer, 1× PBS, 0.1%のツイーン20)で3回洗浄した。1%BSA(bovine serum albumin)が添加された洗浄バッファー200mlを添加して、再び常温で2時間ブロッキングをした。前記で準備した血漿を様々な比率で希釈して、37℃で1時間反応させた後、洗浄バッファーで3回洗浄して1:1,000に希釈したマウス抗-LK8抗体を37℃で1時間処理した。最終的に抗マウス-HRP(KPL, Gaithersburg, MD, 米国)を1:20,000に希釈して処理した後に洗浄バッファーで3回洗浄して、TMB酵素基質(KPL, Gaithersburg, MD, 米国)を処理して発色した程度を450nm波長で設定された光測定機(photometer)で測定して定量されたLK68蛋白質比較群と比較しその量を測定した。LK8遺伝子の血液内発現量を測定するためには、定量化されたLK8蛋白質比較群を使用した。前記の方法と同様にK13の発現量を測定した。
【0085】
その結果、ウイルス伝達体によって伝達されたLK68遺伝子は、徐々に発現量が増加して2週後に150〜200ng/mlの数値を示し、LK8遺伝子は徐々に発現量が増加する様相はLK68と同様であるが、その量が20〜30ng/mlで、LK68遺伝子よりは低い数値を示した(図12のa、b及びc)。
【0086】
<9-3>流体力学的注入によるLK68とLK8遺伝子の発現
25mgのLK68またはLK8遺伝子を各々含んだプラスミドが溶解している1.8mlの0.25%食塩水をC57BL/6正常マウス(Charles River, Yokohama, 日本)の尾静脈に7秒以内に注入した。ここで、陰性対照群にはプラスミドなしに食塩水だけを注入し、陽性対照群には前記rAAV-K13を使用した。注入して1日後に眼窩静脈叢を通じて採血して血液内LK68及びLK8遺伝子の発現量を測定した。その結果、LK68蛋白質は20〜25mg/ml、LK8蛋白質の場合は200〜250ng/ml程度の発現を確認した(図12のD)。前記数値は、アデノ随伴ウイルス伝達体によるものと比較してLK68遺伝子は100倍、LK8遺伝子は10倍程度高い発現量で、前記流体力学的注入は多量のDNAを数秒内に注入することにより短い時間内に体内で高い遺伝子の発現を誘導するのでウイルス伝達体に比べて高い発現数値を示し得る(Liu, F. ら, Gene Therapy, 1999年, 第6巻, 1258-1266頁)。
【0087】
実施例10:LK68及びLK8遺伝子導入による転移性癌の成長抑制
本発明者らは、LK68またはLK8遺伝子の発現蛋白質がインビボ(in vivo)で転移性癌の転移及び成長を抑制することを下記で確認した。
【0088】
詳細には、前記実施例8で製造及び分離したアデノ随伴ウイルスLK68遺伝子伝達体(rAAV-LK68)またはLK8遺伝子伝達体(rAAV-LK8)を1×109IUの量で前記実施例3等で使用した同種のBalb/cヌードマウスの両後ろ足筋肉に各々三カ所に分けて注射した後、3日毎に眼窩静脈叢を通じた採血を遂行して血液内のLK68またはLK8遺伝子の発現量を確認した。ここで、陰性対照群にはベータガラクトシダーゼを発現するpAAV-lacZ(Stratagene, 米国)を導入したrAAV-lacZを使用し、陽性対照群には前記rAAV-K13を使用した。
【0089】
最初に、組換えアデノ随伴ウイルスLK68またはLK8遺伝子伝達体を注射して2週間後に2×105個のB16F10黒色腫細胞(ATCC, Manassas, VA, 米国)を尾静脈を通じて注入した。B16F10黒色腫細胞は主に肺に転移する細胞株で、普通注入して2週間が過ぎると肺表面に小さくて黒い突起模様の癌細胞が現れる(Fidler, I.J. ら, J. Natl. Cancer Inst., 1976年, 第57巻, 1199-1202頁)。B16F10黒色腫細胞を注入して2週間後に、マウスの肺を抽出して表面の黒い癌細胞突起の個数を測定した。その結果、30〜60%程度の癌転移抑制効果があることを確認した(図13)。
【0090】
実施例11:肝癌モデルでのLK68及びLK8遺伝子導入による癌の成長と転移抑制
本発明者らは、アンジオスタチン(K13)の場合同様、LK68またはLK8遺伝子の発現した蛋白質がインビボ(in vivo)で肝癌の転移及び成長を抑制するかどうかを下記の方法で確認した。
【0091】
<11-1>Huh-7肝癌細胞(Human hepatocellular carcinoma cell)を使用した固形性肝癌モデルでのLK68及びLK8遺伝子伝達体による肝癌の成長抑制
Huh-7肝癌細胞(JCRB, Tokyo, Japan)をPBSで2回洗浄した後、1×107個の細胞をBalb/cヌードマウス(Charles River, Wilmington, MA, 米国)の右側脇腹部位に皮下注射して固形性肝癌を誘導した。約10日後から固形性肝癌が大きくなり始めて、80%以上の発生率を示した。毎日〔長さ×幅2×0.52〕式を使用して癌の体積を計算した。癌の大きさが50mm3程度の時、前記実施例8で製造及び分離したアデノ随伴ウイルスLK68遺伝子伝達体(rAAV-LK68)またはLK8遺伝子伝達体(rAAV-LK8)を1×109IUの量でBalb/cヌードマウスの両後ろ足筋肉に各々三カ所に分けて注射した。LK8またはLK68遺伝子伝達体を注射して約2週間後に眼窩静脈叢を通じた採血を遂行して血液内のLK68またはLK8遺伝子の発現量を確認しながら固形性肝癌の成長形態を毎日確認した。ここで、陰性対照群には食塩水だけを投与し、陽性対照群には前記rAAV-K13を使用した。感染効率を測定するために、pAAV-hrGFP(Stratagene, 米国)を導入したrAAV-GFP及び前記rAAV-lacZを使用した。その結果、LK68の場合は50〜150ng/ml、LK8は30〜50ng/ml、K13は50〜100ng/mlの濃度で発現が維持され、固形性肝癌の成長ではLK68、LK8すべて約80〜90%程度の成長抑制を示した(図14)。
【0092】
<11-2>Hep3B肝癌細胞を使用した固形性肝癌モデルでのLK68及びLK8遺伝子伝達体による肝癌の成長抑制
前記実施例11-1のような方法でHep3B肝癌細胞(ATCC, Manassas, VA, 米国)を使用し固形性肝癌を誘導した。約21日後から固形性肝癌が大きくなり始めて、その発生率は30%程度を示した。前記例と同様に癌の大きさが50mm3程度の時、LK68またはLK8遺伝子伝達体を筋肉注射してHep3Bから誘導した固形性肝癌の成長形態と伝達されたLK遺伝子の発現量を確認した。その結果、LK8またはLK68発現量はすべて前記実施例11-1の結果と似た程度を示し、固形性肝癌の成長は約80%程度の抑制を示した(図15のa及びb)。
【0093】
<11-3>EL4リンパ腫瘍細胞(human lymphoma cell)を使用した転移性肝癌モデルでのLK68及びLK8の活性
前もって、LK68またはLK8遺伝子伝達体を筋肉注射して血液内発現量がLK68の場合には50〜100ng/ml、LK8の場合は30〜50ng/mlの数値を示す雄Balb/cヌードマウスの脾臓を露出させた後に、2×105EL4リンパ腫瘍細胞(ATCC, Manassas, VA, 米国)を50μl容積で徐々に注入した。同様に、陰性対照群には食塩水だけを投し、陽性対照群にはrAAV-K13を使用した。感染効率を測定するために前記rAAV-GFP及びrAAV-lacZを使用した。前記マウスがエーテル蒸気に過多露出しないように注意し、注入した癌細胞が肝門脈へ流入するように5分程度時間を置いた後に脾臓を切除して縫合した。施術後、約2週間になった時、肝を摘出して転移した肝癌の大きさと個数、そして面積比率を分析プログラム(SigmaScanR Pro 5.0, Systat Software, Point Richmond, CA, 米国)で分析した。その結果、大きさの場合LK68は68〜90%、LK8は70〜91%、そして面積比率では転移した肝癌の成長を各々37〜54%と47〜61%抑制した(図16のa及びb)。
【0094】
<11-4>Huh-7肝癌細胞を使用した固形性肝癌モデルでのLK68及びLK8の活性による生存率増加
前記の例を通じてLK68及びLK8による癌の転移及び成長が効果的に抑制されたことを確認した。このような治療効果が実際に宿主の生存率をどれくらい増加させるかを測定するために前記実施例11-1で言及したHuh-7固形性肝癌動物モデルで個体が死亡に至るまで継続して肝癌の成長を測定して飼育した。その結果、LK68及びLK8遺伝子伝達体を注入していない比較群は、肝癌細胞を接種して60日以後から個体が急激に死に始めて100日以内にすべて死亡した。一方、LK68遺伝子伝達体を投与した群は80日から個体が死に始めたが140日以後まで40%の生存率を維持し、LK8遺伝子伝達体を投与した群は68日から個体が死に始めて130日以後まで30%の生存率を維持した。カプランマイヤー生存曲線のログランクテストを通じて、遺伝子伝達体非投与群と遺伝子伝達体投与群間の生存率差に対する統計的有意性を検定した。この実験結果から、遺伝子伝達体を通じたLK68及びLK8遺伝子の細胞内導入は、固形性癌の成長を抑制することにより宿主の生存率を顕著に増加させることを確認した(図17)。
【産業上の利用可能性】
【0095】
前記で詳しく説明したように、本発明者らはインビトロにおいて遺伝子操作方法でLK68及びLK8遺伝子を導入した組換え細胞株(CT-LK68及びCT-LK8)を製造して、前記細胞株に導入したLK68及びLK8遺伝子がインビボで腫瘍の成長及び転移を効果的に抑制することを確認し(エクスビボ遺伝子治療)、より直接的な投与方法としては、LK68及びLK8遺伝子を導入したアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体を製作して、生体内に直接注入して腫瘍の成長及び転移を効果的に抑制することを確認した(インビボ遺伝子治療)。したがって、本発明のLK68及びLK8遺伝子は、転移性癌の成長を抑制し、ウイルス遺伝子伝達体を使用してより効率的に体内へ伝達でき、それを使用した多様な癌疾患の予防及び遺伝子治療及び治療剤等に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】組換えウイルスを使用してLK68またはLK8遺伝子が導入された結腸癌細胞株の製造過程を示した模式図及び写真で、LK68及びLK8蛋白質の位置と各々LK68及びLK8蛋白質をコードする遺伝子をクローニングするためのベクターpLXSN-LK68及びpLXSN-LK8の模式図(a)、組換えウイルスで感染した結腸癌細胞株でLK68蛋白質とLK8蛋白質の発現の有無をウエスタンブロット分析(b)及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(c)を使用して確認した写真である。
【図2】LK68またはLK8遺伝子の導入が標的細胞自体の成長及び細胞死には影響を及ぼさないことを確認するために、図1で製造した組換え結腸癌細胞株のインビトロ(in vitro)での成長をトリパンブルー(trypan blue)を使用して計数したグラフ(a)(ここで、Y軸は細胞の数を、X軸は観察した時間を示す)及び図1で製造した組換え結腸癌細胞株の細胞死をアネクシンV(annexin-VとPI(propidium iodide, Clontech)染色を通じたFACS(fluorescence-activated cell sorter; Becton Dickinson, San Jose, CA, 米国)実験の遂行で観察したグラフ(b)(ここで、陽性対照群は10μg/mlのタキソール(taxol)を処理した)。CT-mock : ウイルス感染を実施していない細胞株、 CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株、 10μg/ml Taxol : CT-mock対照群細胞株にタキソールを処理した陽性対照群。
【図3】Balb/cヌードマウス(Charles River, Wilmington, MA, 米国)の皮下に移植した結腸癌細胞株の成長を観察するために、各々の細胞株移植後、時間経過による固形癌の成長を示すグラフ(a)(ここで、実験結果の統計的有意性はスチューデントt-テスト法で検定し(*: p < 0.0005)、Y軸は[長さ×幅2×0.52]式により算出した癌の体積で、X軸は癌移植後の経過日数を示す)、及び結腸癌細胞株培養最終日に前記マウスから分離した固形癌の写真(bと固形癌の重さを示したグラフ(c)。CT-mock : ウイルス感染を実施していない細胞株、 CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図4】結腸癌細胞の脾臓に注入した後、肝への転移を誘導する場合において、LK68またはLK8遺伝子を導入した結腸癌細胞は対照群結腸癌細胞に比べて転移が抑制されることを確認するために、結腸癌細胞の肝への転移程度を比較した写真(a)、及び肝への転移抑制程度を肝表面に生成された転移癌数を計数して示したグラフ(b)。CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株、 CT-LK8 : LK8遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図5】LK68遺伝子を導入した結腸癌細胞(CT-LK68)の場合、対照群(CT-vector)に比べて生成された瘤(nodule)の数及び大きさが全体的に顕著に減少して、対照群に比べて癌細胞の増殖力には変化がないが、細胞死が顕著に増加することを確認するために、転移が発生した肝の代表的な部分を組織学的または免疫組織化学的方法で染色し示した、結腸癌細胞が転移した肝の組織化学的分析写真(a)(ここで、全般的な癌の転移程度を観察するためにH&E(Hematoxylin-eosin)染色を、癌細胞の増殖程度と死滅程度を観察するためにPCNA(proliferating cell nuclear antigen)染色とTUNEL(terminal deoxynucleotidyl transferase biotin-dUTP nick end labeling)を遂行した)、及び全体細胞中のPCNA染色とTUNEL染色によって、各々の染色に陽性と反応した細胞の数を計数した後、相対的比率を百分率で示したグラフ(b及びc)(ここで、実験結果の統計的有意性はスチューデントt-テスト法で検定した)。CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図6】結腸癌細胞の肝転移モデルで、LK68遺伝子を導入した結腸癌細胞は対照群に比べて肝への転移が抑制され、宿主の生存率も増加することを確認するために、対照群(CT-vectorとLK68遺伝子を導入した結腸癌細胞(CT-LK68)の生存率を示すグラフ(ここで、実験結果の統計的有意性はカプランマイヤー(Kaplan-Meier)生存曲線のログランクテスト(log rank test)方法で検定した)。CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図7】腹腔転移(peritoneal dissemination)モデルで、LK68遺伝子を導入した結腸癌細胞は対照群に比べて腹腔への転移が抑制され、宿主の生存率も増加することを確認するために、対照群(CT-vectorとLK68遺伝子を導入した結腸癌細胞(CT-LK68)の生存率を示すグラフ(ここで、実験結果の統計的有意性は、カプラン生存曲線のログランクテスト法で検定した)。CT-vector : LK68遺伝子なしにプラスミドだけを導入した細胞株、 CT-LK68 : LK68遺伝子を導入したプラスミドを導入した結腸癌細胞株。
【図8】LK68またはLK8蛋白質のカルボキシル基末端部位にFLAG抗原が付加されるように前記FLAGをコードする塩基配列を含んだプライマー(primer)を使用した、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じたLK68及びLK8遺伝子の増幅過程を示す、LK68またはLK8遺伝子を含んだベクターの地図、ポリメラーゼ連鎖反応を遂行して前記ベクターを増幅した後、アガロースゲル電気泳動(agarose gel electrophoresis)で確認した写真、及びFLAGをコードする塩基配列を示した模式図である。
【図9】増幅したLK68とLK8DNAをアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus, AAV)の伝達プラスミドベクターにクローニングする過程を示した模式図及びそれを確認するアガロースゲル電気泳動写真である。
【図10】図9のクローニング過程を通じて製造した、前記遺伝子が導入されている伝達プラスミドベクターの各遺伝子の位置を示したプラスミド地図である。
【図11】図10での前記アデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体製造用プラスミドベクターをインビトロで形質導入してLK68とLK8蛋白質の発現をウエスタンブロット分析で確認した写真(a)及びアデノ随伴ウイルス遺伝子伝達体製造用プラスミドベクターとヘルパープラスミドベクター(helper plasmid)の形質導入を通じて作られた組換えアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus, AAV)を試験管内で感染させてLK68とLK8蛋白質の発現をウエスタンブロット分析で確認した写真(b)である。
【図12】アポリポ蛋白質(a)の38番目のクリングル(kringle)であるLK8遺伝子(a)、LK68遺伝子(b)またはアンジオスタチン(K13)遺伝子(c)を含む組換えアデノ随伴ウイルスを各々Balb/cヌードマウスの後ろ足筋肉に注射した場合の血液内発現を示すグラフとウエスタンブロット分析写真及びLK68またはLK8遺伝子を含むプラスミドの流体力学的注入によるC57BL/6正常マウスでの血液内前記遺伝子の発現を示すグラフ(d)である。
【図13】組換えアデノ随伴ウイルスにより体内LK68またはLK8蛋白質が分泌されるマウスでB16F10細胞のLK68及びLK8蛋白質が肺に転移される進行性転移癌の抑制を示す写真(a)とグラフ(b)である。
【図14】Huh-7肝癌細胞を使用した固形性肝癌モデルで、LK68及びLK8遺伝子伝達体を筋肉注射した治療群と非治療群の固形性肝癌成長曲線(a)と成長抑制を相互比較したグラフ(b)(ここで、実験結果の統計学的有意性はスチューデントt-テスト法で検定した)。
【図15】Hep3B肝癌細胞株を使用した固形性肝癌モデルで、LK68及びLK8遺伝子伝達体を筋肉注射した治療群と非治療群の固形性肝癌成長曲線を示すグラフである(ここで、実験結果の統計学的有意性はスチューデントt-テスト法で検定した)。
【図16】組換えAAVウイルスにより体内LK68及びLK8蛋白質が分泌されるマウスで脾臓に注入したEL4リンパ腫細胞が肝へ転移される進行性転移と転移した癌の成長抑制を示す写真(a)とグラフ(b)(ここで、実験結果の統計学的有意性はスチューデントt-テスト法で検定し、図面の理解を明確にするために、rAAV-GFP、-LacZ、-K13、-LK68及び-LK8を各々GFP、LacZ、K13、LK8で表記した)。
【図17】Huh-7肝癌細胞を使用した固形性肝癌モデルで、LK68及びLK8遺伝子を含有した組換えウイルスを筋肉注射した治療群と非治療群の生存曲線を示すグラフである(実験結果の統計学的有意性は、カプランマイヤー生存曲線のログランクテスト法で検定した)。
【配列表フリーテキスト】
【0097】
前記配列番号1は、ヒト肝のアポリポ蛋白質(a)から由来したLK68蛋白質をコードする遺伝子であり;
配列番号2は、ヒト肝のアポリポ蛋白質(a)から由来したLK8蛋白質をコードする遺伝子であり;
配列番号3及び4は、各々前記LK68蛋白質をコードする遺伝子及び前記LK8蛋白質をコードする遺伝子を増幅するためのセンスプライマーであり;
配列番号5は、前記LK68またはLK8蛋白質をコードする遺伝子を増幅するためのウイルスベクター起源のアンチセンスプライマーであり;
配列番号6は、前記LK68またはLK8蛋白質をコードする遺伝子をレトロウイルスベクターで導入するためのウイルスベクター起源のセンスプライマーであり;
配列番号7及び8は、各々LK68のcDNAを増幅するためのセンスプライマー及びアンチセンスプライマーであり;
配列番号9は、前記配列番号8と共にLK8のcDNAを増幅するためのセンスプライマーであり;
配列番号10は、LK68及びLK8のDNA断片を増幅するためのセンスプライマーであり;かつ配列番号11は、前記LK68及びLK8のDNA断片を増幅するためのアンチセンスプライマーである。
前記の配列番号1〜11は、添付の配列表に記載した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または抗転移遺伝子治療剤。
【請求項2】
前記LK68遺伝子が、配列番号1で記載される塩基配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記LK68遺伝子を含む遺伝子伝達体が、ベクターまたは組換えウイルスであることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項4】
前記ベクターが、線形DNA、プラスミドDNAまたは組換えウイルス性ベクターであることを特徴とする、請求項3に記載の治療剤。
【請求項5】
前記組換えウイルスが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスシンプレックスウイルス、レンチウイルスからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の治療剤。
【請求項6】
前記細胞が、造血幹細胞、樹状細胞、自己腫瘍細胞(autologous tumor cells)及び株化腫瘍細胞(established tumor cells)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項7】
前記遺伝子伝達体が、pSecTag-LK68、pLXSN-LK68、rAAV-LK68及びpAAV-LK68からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項8】
前記LK8遺伝子が、配列番号2で記載される塩基配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項9】
前記LK8遺伝子を含む遺伝子伝達体が、ベクターまたは組換えウイルスであることを特徴とする、請求項8に記載の治療剤。
【請求項10】
前記ベクターが、線形DNA、プラスミドDNAまたは組換えウイルス性ベクターであることを特徴とする、請求項9に記載の治療剤。
【請求項11】
前記組換えウイルスが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスシンプレックスウイルス、レンチウイルスからなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の治療剤。
【請求項12】
前記遺伝子伝達体が、pSecTag-LK8、pLXSN-LK8、rAAV-LK8及びpAAV-LK8からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の治療剤。
【請求項13】
前記ベクターが、0.05〜500mg含有されることを特徴とする、請求項3または請求項9に記載の治療剤。
【請求項14】
前記組換えウイルスが、103〜1012IU含有されることを特徴とする、請求項3または請求項9に記載の治療剤。
【請求項15】
前記細胞が、103〜108個含有されることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項16】
結腸癌、肝癌、リンパ腫、肺癌、乳癌、脳腫瘍、前立線癌、皮膚癌、胃癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌及び転移性癌からなる群から選択される癌を治療することを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項17】
前記癌が、結腸癌、肝癌、リンパ腫または転移性癌であることを特徴とする、請求項16に記載の治療剤。
【請求項18】
請求項1の治療剤を個体に非経口的に投与する工程を含む、固形癌の予防または治療の方法。
【請求項19】
固形癌の成長及び転移の抑制を通じてなされることを特徴とする、請求項18に記載の予防または治療の方法。
【請求項20】
前記投与する工程が、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体を化学的方法、物理的方法、リポソームを使用する接合方法、受容体及びウイルスを使用した方法からなる群から選択される方法により、細胞内へ導入する工程を含むことを特徴とする、請求項18に記載の予防または治療の方法。
【請求項21】
前記投与する工程が、造血幹細胞、樹状細胞、自己腫瘍細胞及び株化腫瘍細胞からなる群から選択した細胞に、前記ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を導入して、前記細胞を人体に投与する方法からなることを特徴とする、請求項18に記載の予防または治療の方法。
【請求項1】
ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体または細胞を有効成分として含有する抗癌または抗転移遺伝子治療剤。
【請求項2】
前記LK68遺伝子が、配列番号1で記載される塩基配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記LK68遺伝子を含む遺伝子伝達体が、ベクターまたは組換えウイルスであることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項4】
前記ベクターが、線形DNA、プラスミドDNAまたは組換えウイルス性ベクターであることを特徴とする、請求項3に記載の治療剤。
【請求項5】
前記組換えウイルスが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスシンプレックスウイルス、レンチウイルスからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の治療剤。
【請求項6】
前記細胞が、造血幹細胞、樹状細胞、自己腫瘍細胞(autologous tumor cells)及び株化腫瘍細胞(established tumor cells)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項7】
前記遺伝子伝達体が、pSecTag-LK68、pLXSN-LK68、rAAV-LK68及びpAAV-LK68からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項8】
前記LK8遺伝子が、配列番号2で記載される塩基配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項9】
前記LK8遺伝子を含む遺伝子伝達体が、ベクターまたは組換えウイルスであることを特徴とする、請求項8に記載の治療剤。
【請求項10】
前記ベクターが、線形DNA、プラスミドDNAまたは組換えウイルス性ベクターであることを特徴とする、請求項9に記載の治療剤。
【請求項11】
前記組換えウイルスが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスシンプレックスウイルス、レンチウイルスからなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の治療剤。
【請求項12】
前記遺伝子伝達体が、pSecTag-LK8、pLXSN-LK8、rAAV-LK8及びpAAV-LK8からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の治療剤。
【請求項13】
前記ベクターが、0.05〜500mg含有されることを特徴とする、請求項3または請求項9に記載の治療剤。
【請求項14】
前記組換えウイルスが、103〜1012IU含有されることを特徴とする、請求項3または請求項9に記載の治療剤。
【請求項15】
前記細胞が、103〜108個含有されることを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項16】
結腸癌、肝癌、リンパ腫、肺癌、乳癌、脳腫瘍、前立線癌、皮膚癌、胃癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌及び転移性癌からなる群から選択される癌を治療することを特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
【請求項17】
前記癌が、結腸癌、肝癌、リンパ腫または転移性癌であることを特徴とする、請求項16に記載の治療剤。
【請求項18】
請求項1の治療剤を個体に非経口的に投与する工程を含む、固形癌の予防または治療の方法。
【請求項19】
固形癌の成長及び転移の抑制を通じてなされることを特徴とする、請求項18に記載の予防または治療の方法。
【請求項20】
前記投与する工程が、ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を含む遺伝子伝達体を化学的方法、物理的方法、リポソームを使用する接合方法、受容体及びウイルスを使用した方法からなる群から選択される方法により、細胞内へ導入する工程を含むことを特徴とする、請求項18に記載の予防または治療の方法。
【請求項21】
前記投与する工程が、造血幹細胞、樹状細胞、自己腫瘍細胞及び株化腫瘍細胞からなる群から選択した細胞に、前記ヒトアポリポ蛋白質(a)クリングル(kringle)KIV9-KIV10-KV(LK68)またはKV(LK8)遺伝子を導入して、前記細胞を人体に投与する方法からなることを特徴とする、請求項18に記載の予防または治療の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−517865(P2007−517865A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549124(P2006−549124)
【出願日】平成17年1月10日(2005.1.10)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000075
【国際公開番号】WO2005/065720
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(504385351)モガム バイオテクノロジー リサーチ インスティチュート (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月10日(2005.1.10)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000075
【国際公開番号】WO2005/065720
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(504385351)モガム バイオテクノロジー リサーチ インスティチュート (10)
【Fターム(参考)】
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