説明

ヒト肝細胞癌細胞を特異的に標的化するための方法および組成物

本発明の特定の局面は、癌細胞の増殖または生存度に影響を与えるために、肝細胞癌(HCC)細胞を標的化および/または処置するための方法および組成物を提供する。例示的な方法および組成物は、細胞関連性のHCCタンパク質(例えば、配列番号l〜8、PGMRCI(プロスタグランジンレセプターの膜成分1)、SEMA5A(セマフォリン5A)、SLC2A2(溶質キャリアファミリーメンバー)、ABCC2(ATP結合カセットサブファミリーCメンバー2)およびHAL(ヒスチジンアンモニアリアーゼ)に対応する)に関し、正常な組織と比較して、疾患組織または他の疾患を有する患者の組織において、特異的な標的遺伝子および/または遺伝子産物がアップレギュレートまたはダウンレギュレートされるという発見に少なくとも部分的に基づく。本発明の組成物は、例えば、抗体、アンチセンスおよびsiRNA因子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明の局面は、一般的に肝細胞癌細胞に関し、より詳細には、治療化合物をスクリーニングするために、肝細胞癌細胞を標的化および処置するための方法および組成物に関する。
【0002】
(関連する出願に対する相互参照)
本出願は、2004年4月27日に出願され、「METHODS FOR SPECIFICALLY TARGETING HUMAN HEPATOCELLULAR CARCINOMA CELLS」と題された、米国仮特許出願第60/565,588号(この全体が、本明細書において参考として援用される)に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
悪性細胞に特異的な分子標的または経路の同定は、非癌細胞に影響することなく、癌細胞の増殖および生存度に影響する実質的な有用性を有する。当該分野において、ヒト肝細胞癌(HCC)細胞の増殖または生存度に影響するための方法および組成物を提供するために、これらの癌細胞上のこのような標的の同定に対する、顕著な必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の特定の局面の要旨)
発現マイクロアレイ技術は、非腫瘍組織と比較して、HCC組織において有意により高いレベルまたは有意により低いレベルで発現される多数の遺伝子の同定を可能にした。このような遺伝子およびこれらにコードされるポリペプチドは、肝細胞癌細胞の特異的な標的化に関する本発明の特定の局面の対象である。これらの分子標的は、癌細胞または腫瘍において、細胞プロセスを特異的に変更し、それにより細胞増殖または生存度の低下をもたらす因子を設計および生成する手段を提供する。これらの標的は、この標的分子と特異的に相互作用するように設計および生成される分子因子または化合物が、おそらくこの標的分子を発現する細胞にのみ優先的に影響するような標的である。種々のこのような標的化因子および対応する方法論は、以下に記載される。
【0005】
これらの遺伝子およびこれらにコードされるポリペプチド産物またはタンパク質産物の性質は、これらが癌細胞に特異的な標的として利用され得る方法を決定する。たとえ、本発明のコードされるポリペプチドの全てが細胞に関連するとしても、それらは、異なるカテゴリーに分けられ得る。このような標的ポリペプチドのカテゴリーは、細胞の表面に見出されるレセプターを含み、これらとしては、プロスタグランジンレセプターの膜成分1(PGRMCI、配列番号1)およびセマフォリン5A(SEMA5A、配列番号2)、ならびに膜結合型トランスポーター「溶質キャリアファミリーメンバー」(SLC2A2、配列番号3)およびATP結合カセットサブファミリーCメンバー2(ABCC2、配列番号4)が挙げられる。膜結合型標的ポリペプチド、SEMA5A(配列番号2)、PGRMC1(配列番号1)、ABCC2(配列番号4)およびSLC2A2(配列番号3)は、非腫瘍組織と比較して、腫瘍組織においてアップレギュレートされる。これらのタンパク質は、裸の(naked)抗体、抗体ベースの試薬、または細胞機能を変更する化合物に結合体化もしくは連結された抗体もしくは抗体ベースの試薬によって標的化され得る。このような化合物の多様な種類が、本発明の方法において使用され得、これらとしてはタンパク質、毒素または細胞毒性因子および放射性同位元素が挙げられ得る。
【0006】
本発明の膜結合型標的ポリペプチドはまた、アンタゴニスト(例えば、配列番号1〜2に対する)またはインヒビター(例えば、配列番号3〜4に対する)によって標的化され得る。あるいは、SEMA5A(配列番号2)およびPGRMC1(配列番号1)に関連するレセプター機能は、対応するレセプターのリガンドと結合する化合物または因子によって影響され得る。本発明の方法において有用なこのような化合物としては、抗リガンド抗体およびレセプターの可溶性形態が挙げられる。
【0007】
さらに、アップレギュレートされたポリヌクレオチド(SEMA5A(配列番号2)、PGRMC1(配列番号1)、ABCC2(配列番号4)およびSLC2A2(配列番号3))の発現は、アンチセンス技術(そしてsiRNA方法を含む)により阻害され得る。これは、目的のポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチド(ゲノムDNA、cDNA、RNA、siRNA、リボザイムおよびS−オリゴヌクレオチドのような誘導体を含む)が標的のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を阻害するように処理される、確立された技術である。
【0008】
本発明の第5の標的ポリペプチドは、細胞質酵素、ヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL、配列番号8)である。HAL(配列番号8)をコードする遺伝子の発現は、非腫瘍組織と比較して、腫瘍組織においてダウンレギュレートされる。腫瘍組織におけるHAL(配列番号8)遺伝子発現の低下は、HALまたはその対応するポリペプチドの発現を増加させることがHCC細胞の増殖または生存度に悪影響を与えることを示唆する。本発明は、HAL(配列番号8)をコードするポリヌクレオチドの投与によって、HAL(配列番号8)活性の増大を意図する遺伝子治療アプローチを含む。同様に、HAL標的ポリペプチド(配列番号8)またはその活性フラグメントが投与され得る。さらに、疾患組織におけるこの酵素のダウンレギュレーションは、ヒスチジンおよびヒスタミンのレベルの増大、ならびにウロカニン酸のレベルの低下をもたらし、HCC細胞を選択的に標的化するさらなるアプローチを提供することが期待される。
【0009】
以下の議論は説明的、例証的かつ例示的であり、そして、あらゆる先に添付された特許請求の範囲または続いて添付される特許請求の範囲により規定される、あらゆる発明の範囲を限定すると取られるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(詳細な説明)
本明細書で使用される用語「処置する」は、状態(例えば、肝細胞癌)を有するか、またはその危険性がある患者における状態を処置、予防、治癒または改善することを包含することが意図される。
【0011】
特定の局面において、肝細胞癌(HCC)を有するC型肝炎(HCV)感染患者由来の腫瘍サンプルの発現マイクロアレイ分析は、HCVに感染した硬変の非腫瘍組織および正常肝組織と比較した場合、肝細胞癌腫瘍組織において特異的にアップレギュレートまたはダウンレギュレートされる遺伝子の同定を導いた。
【0012】
肝臓サンプルおよびHCCサンプルを、関連した全ての人から事前のインフォームドコンセントを得て、外科手順の間に取得した。HCCサンプルは、HCV感染患者由来の21サンプルおよびB型肝炎に感染した患者由来の1サンプルを含んだ。さらに、正常かつ疾患の無い肝臓の4サンプルおよびHCCの徴候を有さないHCVに感染した硬変肝臓の8サンプルを、分析のために使用した。Geissら、(2001)に記載されるように、全RNAを単離した。RNA増幅を、製造者により記載されるように、AmpliScribeTM転写キット(Epicentre Technologies、Madison、Wisconsin)によるT7 RNAポリメラーゼプロトコール(Eberwine、1996)を使用して実行した。増幅されたRNAサンプルの質を、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies、Palo Alto、California)によるキャピラリー電気泳動を使用して評価した。
【0013】
cDNAマイクロアレイを、Research Genetics(St.Louis、MO)(Lennonら1996)から取得され、配列確認されたI.M.A.G.E.コンソーシアムクローンの増幅により生成されたPCR産物を使用して、University of Washington’s Center for Expression Array Technologyによって構築した。先に記載される(Geissら、2001)ように、マイクロアレイを構築した。ヒト高密度セットは、2つのアレイからなり、各々は、合計14,976クローン(約13,597個の固有のI.M.A.G.E. cDNAクローン)に対し、多くのさらなるコントロール配列とともに、7,296個のヒトクローンを二連で代表した。各単一の実験は、どの色素標識が反転されたかについての2つのスライドの調査(interrogation)(Geissら2000;Geissら2001に記載されるように蛍光反転(fluor reversal)方法論)を伴った。遺伝子ごと、実験ごとに、全部で少なくとも4回の個別のハイブリダイゼーション測定を行った。プローブ合成、マイクロアレイハイブリダイゼーションおよび洗浄条件のために使用されたプロトコールは、先に記載されている(Geissら2001)。
【0014】
マイクロアレイをスキャンし、特注のスポット検出(spot−finding)プログラム(Spot−On Image(Geissら、2000およびGeissら、2001))(分析されたサンプルの対における各遺伝子の発現レベル間の標準偏差および平均の比を計算する)を使用して画像を定量化した。生データおよびサンプルの情報を、特別設計のデータベース(Expression Array Manager)に入力し、Rosetta Biosoftware’s Resolver(登録商標)Version 3.0(Rosetta Biosoftware、Kirkland、WA)(マイクロアレイ発現データの保管および分析のためのソフトウェアパッケージ)を使用して評価した。このパッケージは、生物学的および実験的な変動を補正する洗練された誤差モデルとともに、一般的な統計手順を実行する(クラスター形成、傾向分析、BLAST関連アルゴリズムに基づく類似性探索など)。
【0015】
HCV感染HCC患者サンプルのみを調べ、同一の患者由来の腫瘍肝臓サンプル 対 非腫瘍肝臓サンプルにおいて有意に(p<0.01)アップレギュレート(2倍より大きく)されたか、またはダウンレギュレート(1/2より小さく)された遺伝子について分類することによって、発現マイクロアレイデータを加工した。次に、8人以上の患者において、これらの判断基準に適合した遺伝子を、肝硬変を有するが腫瘍を有さないHCV感染患者由来のコントロールサンプルにおいて分析し、そして正常かつ健康な肝臓のサンプルにおいても分析した。これらの遺伝子の発現が変化しないか、またはコントロールサンプルとは反対の方向に変化した場合、治療標的としての使用のためのそれらの可能性を、National Center for Biotechnology Informationデータベース(Unigene、OMIM、LocusLinkおよびHomoloGene)ならびに、それらのポリペプチド産物の位置および機能について現在公開されている文献によって利用可能な情報を使用して、さらに評価した。
【0016】
本発明の標的ポリペプチドは、HCC組織において優先的または特異的にアップレギュレートまたはダウンレギュレートされる遺伝子のタンパク質産物を含む。このようなポリペプチド、ならびにこれらをコードする遺伝子およびRNAは、これらの位置または活性に起因して、HCCの処置のための実行可能な薬理学的標的または治療標的であり、これらとしては、PGRMC1(配列番号1)、SEMA5A(配列番号2)、ABCC2(配列番号4)、SLC2A2(配列番号3)およびHAL(配列番号8)が挙げられる。標的ポリペプチドおよびこれらの特定の改変体のアミノ酸配列は、本明細書の配列表(例えば、配列番号1〜8)において列挙される。これらの遺伝子の差次的な発現は、HCC細胞の増殖および/または生存度に影響を与えるために、HCC細胞を特異的に標的化する多くの方法を提供する。これらの方法論は、本発明の特定の局面の主題であり、以下に詳述される。
【0017】
(配列番号1〜4の標的ポリペプチドの説明)
PGRMC1(配列番号1)。PGRMC1はプロゲステロンレセプターである。多くのプロゲステロンレセプターが細胞内である一方、PGRMC1は、原形質膜に局在すると考えられている(Krebsら、2000)。プロゲステロンレセプターの活性は、細胞核へのこのレセプターのトランスロケーション前のプロゲステロン結合に依存する。
【0018】
SEMA5A(配列番号2)。セマフォリンファミリーは、分泌型メンバーおよび膜結合型メンバーの大多数を含む。ニューロピリン(neutropilin)およびプレキシン(plexin)は、セマフォリンレセプターとしての役割を果たす。SEMA5Aは、膜結合型タンパク質である。ニューロピリンおよび/またはプレキシンは、SEMA5Aに対するリガンドであると考えられている(AdamsおよびTucker 2000)。ニューロピリンおよびプレキシンは膜結合型であり、これらの分子とのSEMA5Aの結合が細胞間相互作用をもたらすことが示唆される。あるいは、SEMA5Aは、現在のところ未同定の分子(例えば、プレキシンまたはニューロピリンの可溶性形態)に結合し得る(以下の実施例を参照のこと)。
【0019】
SLC2A2(配列番号3)。SLC2C2は促進性のグルコーストランスポーターである。これは、12回膜貫通ドメインタンパク質のファミリーに属する。細胞外グルコースとの結合は、細胞内にグルコースを移転させる変成的な変化をもたらす(Okaら、1990)。
【0020】
ABCC2(配列番号4〜7)。ABCC2は、多剤耐性に関与する内在性膜タンパク質である。これは、肝細胞内からの化学療法剤および他の分子のエネルギー依存的な輸送において機能する(GerkおよびVore 2002)。
【0021】
(癌細胞の標的化)
特定の局面において、同定される標的は、HCC細胞の増殖および/または生存度が影響され得る、少なくとも2つのアプローチを提供する。表面レセプター(配列番号l〜7)は、これらの分子の生物学を考慮せずに、単に特異的な標的として使用され得る。表面レセプターに特異的に結合する因子は、標的化される細胞に影響を与える局所作用性の生物学的因子(例えば、治療剤)を送達するために使用され得る。標的化される分子の性質は、それが標的化因子に対して到達可能であること、および、それが非癌細胞よりも癌細胞上で有意に高い濃度で見出されることのみにおいて重要である。例えば、HCC細胞上にもっぱら存在する膜レセプターに結合する抗体−放射性同位元素結合体は、このレセプターを発現する細胞(HCC細胞)にのみ影響を与えることが期待され得る。あるいは、標的分子またはその誘導体による個体の免疫化は、個体の免疫系に標的分子に特異的な免疫応答を確立することを促し得、上記分子を発現する細胞の除去をもたらし得る。
【0022】
さらなる局面において、標的分子の利用への別のアプローチは、腫瘍細胞におけるこれらの発現について観察される変化と、癌細胞の増殖または生存との間の想定される因果関係に基づく。腫瘍においてアップレギュレートされる分子の発現または生物学的機能を妨害することは、このような場合においては、細胞の増殖または生存度に有害であることが考えられ得る。腫瘍においてダウンレギュレートされる標的は、増殖または生存度を妨害し得、それゆえ、それらの機能のアップレギュレーションまたは置換は、関連する特定の細胞の増殖または生存度を低下させることが予測され得る。
【0023】
同定された標的分子の利用における特定のアプローチの例は、以下に記述される。
【0024】
(本発明の方法において有用な抗体)
本発明の文脈において、用語「抗体」は、当業者によく知られている種々の分子を含むように使用される。抗体は、特定の分子または抗原に結合することにより、分子レベルで特異的に細胞を標的化するための手段を提供する。本発明において、抗体により標的化される分子は、配列番号1〜7により規定されるポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントである。これらの分子に特異的な抗体および/または抗体ベースの試薬は、種々の方法によって生成され得、以下に記載される種々の形態で存在し得る。
【0025】
抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖Fv、組換えキメラ分子およびフラグメント(例えば、Fab’、Fab’(2))、ミニボディ(minibody)ならびにドメイン欠失抗体であり得る。抗体は、種々の手段(ウサギ、ヒツジ、ラット、マウスによるインビボ産生;哺乳動物細胞、真菌細胞、細菌細胞、昆虫細胞または植物細胞によるインビトロでの組換え分子の生成あるいはトランスジェニック動物による組換え分子の生成;ファージディスプレイまたは組換え酵母系における選択;および任意の上記の分子の化学修飾またはタンパク分解性の修飾が挙げられるが、これらに限定されない)によって同定および生成される。これらの抗体ならびにその選択および生成の記述は、以下の参考文献に見出される:Kingら、1994;Xiangら、1997;GlennieおよびJohnson、2000;Green、2000;Nuttallら、2000;HustonおよびGeorge、2001;Kriangkumら、2001;ReffおよびHeard、2001;Siegel、2002。
【0026】
癌細胞に特異的な分子または他の分子標的を標的化する抗体および抗体結合体は、この標的分子を発現する細胞のみの増殖または生存度を特異的に変更し得るので有用である。しかし、インビボ治療薬としての抗体は、いくつかの障害を示す。非ヒト起源の抗体は、宿主免疫応答を誘導し得る。別の問題は、抗体が、その大きさに部分的に起因して、多くの場合腫瘍に良好に貫入しないことである。これらの問題を克服するために、種々のアプローチが取られ、それらは文献に良く提供されている(ReffおよびHeard、2000;Reiter、2001)。例えば、非ヒト抗体をより低い抗原性にするために、相補性領域をインタクトなままにしながら、その抗体の非ヒト領域を、ヒト免疫グロブリン由来の同等な領域に置き換えるために分子生物学的アプローチが取られた(Morrisonら、1984;ReffおよびHeard、2001)。これらの技術は、ヒト免疫グロブリン分子の定常領域による、抗体の非ヒト定常領域の単純な置換から、非ヒト免疫グロブリン上の非ヒト相補性領域が、ヒト免疫グロブリン分子へ接合、移植または操作される、より洗練された方法論(Jonesら、1986)までの範囲に及ぶ。この技術の重要な例は、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)であり、これは乳癌を処置するために使用されるヒト化マウスモノクローナル抗体である(Carteretら、1992;Goldenberg、1999)。
【0027】
別の例、Rituxan(登録商標)は、非ホジキンリンパ腫を処置するために使用され、ヒトγ1定常領域に融合されたマウス可変領域からなる(JohnsonおよびGlennie、2001;Maloneyら、2002)。
【0028】
本発明の実施において有用な抗体の別の型は、Primatized(登録商標)抗体である。Primatized(登録商標)抗体は、カニクイザル(cynomologous monkey)を免疫化することにより生成される。カニクイザル抗体の抗体可変領域は、相同なヒト分子と区別できない。Rituxan(登録商標)の場合と同様に、ヒト免疫グロブリン定常領域はカニクイザル可変領域に接合される。Primatized(登録商標)抗体は、狼瘡およびアレルギー性喘息を処置するために開発された(Newmanら、1992;Nakamuraら、2000)。
【0029】
本発明の局面はまた、トランスジェニック動物から取得されたヒト抗体の使用も包含する(Green、1999)。これらの抗体は、非トランスジェニック動物由来の抗体と同様な様式で同定および特徴づけされるが、通常、非ヒト抗体治療薬により想定される免疫応答を誘発(illicit)し得ない。ヒト抗体は、いくつかの治療標的(インターロイキン8(Yangら、1999)および上皮増殖因子(Davisら、1999;Yangら、2001)が挙げられる)に対してマウスにおいて生成された。
【0030】
より低い抗原性にするために、抗体はまた化学的に修飾され得、それにより、インビボでの使用のための薬物動態特性を改善し得る。最も一般的に使用される技術は、免疫グロブリン分子にポリエチレングリコールを共有結合させることである(Chapman、2002)。このことは、効能を損失することなくなされ、モノクローナル抗インターロイキン8抗体は、虚血再灌流障害における浮腫を予防するために使用され(Leongら、2001)、そしてモノクローナル抗体は、結腸癌を処置するために使用されている(Deckertら、2000)。抗体フラグメントもまた、細胞の増殖または生存度に影響を与えるためにインビボで使用され、いくつかの利点を提供する。抗体分子の一部の除去は、免疫抗原性をより低くし得、血行中の半減期を延長し得る。これらの大きさの縮小は、より迅速な拡散を可能にし、それにより、固形腫瘍に貫入する能力を高める。多くの方法により生成された種々の抗体フラグメントが存在する。このようなフラグメントとしては、単鎖Fv、Fab’およびFab’(2)およびこれらのキメラバージョン(Behrら、1995;GlennieおよびJohnson、2000;Kortt、2001;Weirら、2002)、ミニボディ(Tramontanoら、1994;Huら、1996)、ならびにドメイン欠失抗体(ReffおよびHeard、2001)が挙げられる。これらの全ては、開発、選択および生成について文献で概説された(ReffおよびHeard、2001)。
【0031】
ファージディスプレイ技術は、ヒト免疫グロブリンのライブラリ由来の単鎖抗体の選択を可能にした(Dani、2001;Rhynerら、2002)。例として、癌の処置のための抗癌胎児抗体は、ファージscfvライブラリから単離されている(Chesterら、2000)。本発明の一実施形態は、配列番号1〜2のポリペプチドのリガンドの結合をブロックし、それによりHCC細胞の生存度または増殖に影響を与える、単鎖抗体の使用を特徴とする。
【0032】
(配列番号1〜7の標的ポリペプチドの生物活性の阻害)
レセプターを活性化させることなく、レセプターに結合し、リガンドの結合をブロックする抗体(アンタゴニスト)は、これらのレセプターを発現する細胞の生物活性を特異的に標的化し、かつそれに対し影響を与える手段である。配列番号1〜7の標的ポリペプチドまたはそれらのフラグメントに特異的に結合する抗体は、本発明の一部を形成する。当業者は、上記の抗体を生成し得るか、または組換え抗体ライブラリの場合、上記の抗体についてスクリーニングし得る。
【0033】
例えば、ウサギもしくはマウスまたは他の適切な動物は、PGRMC1(配列番号1)のペプチドフラグメント(プロゲステロン結合部位の領域またはその近傍の領域に由来する)によって免疫化される。この方法で生成されるいくつかの抗体は、PGRMC1に結合し、そしてプロゲステロン結合を立体的に妨害し、プロゲステロンによるレセプター活性化を防止することが期待される。配列番号2〜7のその他の膜結合型ポリペプチドの各々に対する類似の抗体は、同様に取得され得る。同様なアプローチが、当該分野において公知である。例えば、インターロイキン1補助タンパク質(accessory protein)(YoonおよびDinarello、1998)および上皮増殖因子レセプター(GentryおよびLawton、1986)の生物活性を阻害する抗ペプチドアンタゴニストが生成された。
【0034】
活性アッセイは、治療用の可能性を有する抗体を同定するために使用され得る。上記アッセイは、細胞ベースのアッセイにおいて、単鎖Fv(scfv)ファージディスプレイライブラリをスクリーニングする工程からなり得る。一例として、scfvファージディスプレイ抗体ライブラリは、SLC2A2(配列番号3)またはそのペプチドフラグメントに対してまずスクリーニングされる。単鎖抗体は、SLC2A2反応性のファージからクローニングされ得、さらにPermuttら(1989)により構築されたSLC2A2形質転換卵母細胞(SLC2A2グルコーストランスポーター活性を有する)において試験され得る。SLC2A2活性を阻害するこれらのscfvは、治療用の可能性を有する。この場合において、最初のスクリーニングが、標的ポリペプチドに結合するscfvを発現するファージを同定する工程からなるように、この機能性アッセイは低スループットアッセイである。他の場合において、高スループットの活性アッセイが利用可能であり得、これは、最初のスクリーニングとしての結合アッセイの必要性を排除する(次の例を参照のこと)。
【0035】
第3の例として、PGRMC1(配列番号1)に対して生成されるモノクローナル抗体は、放射性標識ジニトロフェニルGSHの搬出を測定するMDCK細胞アッセイにおいて使用するために受け入れられる(Eversら、1998)。放射性標識化合物の流出をブロックする抗体は、HCCの処置において治療用の可能性を有する。治療用の可能性のある抗体が第二のスクリーニングをせずに同定され得るように、このアッセイは比較的高スループットである。抗体アンタゴニストは、多くの先に同定されたヒト細胞表面レセプター(上皮増殖因子レセプター(Crombet−Ramosら、2002)およびインターロイキン2レセプター(Oliveら、1986)が挙げられる)に対して生成された。
【0036】
本発明の別の実施形態において、レセプターへの抗体の結合は、リガンドの結合を阻害することなく、レセプター機能を阻害する。通常、リガンドの結合は、レセプターの構造変化を誘導し、シグナル伝達、サブユニットの解離、内在化またはこれらのいくつかの組み合わせ(これらは、レセプターへの抗体の結合によって妨害され得る)を導く。本発明のこの局面において、配列番号1〜7のポリペプチドの1つ以上に対して生成される抗体は、レセプター機能をブロックする能力についてスクリーニングされる。このようなスクリーニングにおいて陽性を試験する抗体のいくつかは、リガンドの結合の競合インヒビターであり得、一方で他のものは、リガンドの結合に大きく影響を与えることなく、レセプター機能を阻害することが予測される。
【0037】
特定のレセプターは、刺激性のリガンドと調節性のリガンドとの両方を有する。したがって、本発明の別の実施形態は、阻害性のリガンド(配列番号1〜7によりコードされるポリペプチドに結合し、それらの各々の活性をブロックする増殖因子、サイトカイン、ケモカインおよび他の天然に存在する分子が挙げられる)の使用を含む。これらの分子は、リガンドの結合またはリガンド誘導性のレセプター活性化に基づくアッセイを使用して同定される。化合物は、リガンドの結合をブロックするか、またはリガンド誘導性のレセプターの活性化を低下させる化合物を同定するためにスクリーニングされる。阻害性のリガンドの供給源としては、培養された哺乳動物細胞由来の馴化培地、滑液、血清、血漿および脊髄液などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
低分子レセプターインヒビターは、化合物の高スループットスクリーニングにより単離されている(Landroら、2000)。これらの化合物の供給源は変化するが、これらとしては、天然分子のコレクション(Munroら、1999;Harvey、1999)、コンビナトリアル化学ライブラリ(Floydら、1999;RamstromおよびLehn、2002)または合成ペプチドライブラリ(Shustaら、1999)が挙げられる。本発明の特定の局面は、配列番号1〜7のポリペプチドに特異的に結合し、それらの活性化を阻害する分子を含み、この分子は、HCC細胞を標的化することにおいて使用される。このような低分子インヒビターの同定のためのスクリーニングアッセイの例は、先に記載される。
【0039】
(阻害性抗体を作製する手段としての患者の免疫化)
患者は、免疫応答を誘導するために、1つ以上の標的ポリペプチド(配列番号1〜7)またはその免疫抗原性フラグメントにより免疫化され得る。このことは、患者の免疫系が、これらのポリペプチドを発現する腫瘍細胞を優先的に破壊することを誘導する。文献は、多くの類似の例を含み、これらとしては、メラノーマの処置のための抗イディオタイプ抗体による免疫化(Lutzkyら、2002)、疾患の処置のためのメラノーマ抗原による免疫化(PeralesおよびWolchok、2002)およびヒト上皮増殖因子レセプターの一部を含む組換え融合タンパク質による免疫化(Vidocvicら、2002)が挙げられる。
【0040】
(標的としてのレセプターのリガンド)
配列番号1〜2によりコードされるレセプターの活性化または活性を阻害するために、リガンドは、それらがそれぞれのレセプターに結合することを防止するために標的化される。リガンドに結合することは、以下に記載される種々の方法によって達成され得、これらは、HCC細胞を標的化し、その増殖または生存度に影響を与える手段として本発明において具現化される。
【0041】
標的ポリペプチド(配列番号1〜2)に基づく可溶性レセプターをコードする遺伝子が、標準的な分子生物学的技術を使用して予測および生成される。これらの分子は、それぞれのレセプターのリガンド結合部分を少なくとも含み、そしてこの分子の膜結合部分の一部を含み得るか、または含み得ない。この概念は、関節リウマチ薬物、Enbrel(登録商標)(TNFに結合し、このリガンドがTNFレセプターに結合し、活性化することを防止する)により例証される。Enbrel(登録商標)は、TNFレセプターのリガンド結合領域と組み合わせた免疫グロブリン分子のフラグメントであり、哺乳動物細胞において組換え産生されるキメラ分子である(MurrayおよびDahl、1997)。
【0042】
いくつかのレセプターは、2つの形態で存在する。そのうちの一方は膜結合型であり、他方は可溶性である。例えば、TNF−αおよびインターロイキン1に対するレセプターは、膜形態および可溶性形態で存在する。この可溶性形態は、炎症および敗血症のための治療薬として開発された(Lowry、1993;KluthおよびRees、1996)。本発明の標的ポリペプチドの配列(配列番号1〜2)またはPGRMC1もしくはSEMA5Aのリガンドに対する天然に存在する可溶性レセプターに基づく、同様なインヒビターは、本発明の一実施形態である。
【0043】
リガンドに結合し、リガンドをレセプター活性化に対して利用不能にする別の方法は、リガンド特異的抗体を投与することである。本発明の別の実施形態において、標的ポリペプチド(配列番号1〜7)のリガンドに結合する抗体が使用される。このアプローチは、上皮増殖因子レセプターを過剰発現する癌細胞を標的化することにおいて成功裡に使用された(Yangら、2001)。抗上皮増殖因子リガンド抗体は、マウス癌モデルにおいて、腫瘍細胞の増殖を阻害し、腫瘍を根絶することが示された。
【0044】
(抗体結合体および免疫毒素)
各々の標的ポリペプチド(配列番号1〜7)は、HCC細胞の表面上に発現され、外因性分子に到達可能である。これらの標的ポリペプチドは、非癌細胞と比較して、より高いレベルでHCC細胞上に存在するので、これらは、全身性の抗体ベースの治療のための優先的な標的として利用され得る。これらの標的分子の差次的な発現は、抗体ベースの治療の特異性を可能にし、これは、標的ポリペプチド(配列番号1〜7)に指向される細胞毒性抗体が、正常組織よりも優先的にHCC細胞に影響を与えることを意味する。したがって、本発明は、配列番号1〜7の標的ポリヌクレオチドの1つ以上に対し特異的な抗体を含み、この抗体は、HCCの処置を可能にするか、または促進する。
【0045】
抗体治療は、文献に良く記載され、いくつかの異なるアプローチを含む。これらとしては、裸の抗体、毒素または他の生物活性化合物(免疫毒素)に結合体化または連結された抗体、放射免疫(radioimmuno)結合体(放射性核種抗体)、および、1つ以上の生物活性化合物を含む抗体コーティングされたリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
細胞への抗体の結合それ自体が、時折、増殖を阻害する(細胞増殖抑制効果)か、または標的細胞を死滅させる(細胞毒性効果)のに十分である(Baselgaら、1998;Czuczmanら、1999)。この活性の機構は変化するが、これらとしては、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(Clynesら、2000)、アポトーシスの活性化(Maloney、2001)、リガンド−レセプター機能または補体固定に対するシグナルの阻害が挙げられ得る。実際に、抗癌キメラ抗体リツキシマブが、上記の活性のいくつかを示す事実によりその効力を有することが示唆された(Maloney、2001;ParkおよびSmolen、2001)。いくつかの抗体は細胞増殖抑制性であり、細胞毒性ではない。例えば、トラスツズマブ(良く特徴付けられた抗HER2抗体であり、効果的な抗癌剤である)は、少なくともインビトロで細胞増殖抑制性である。本発明は、標的ポリペプチド(配列番号1〜7)に特異的に結合し、細胞毒性または細胞増殖抑制性のいずれかである抗体に関する。
【0047】
抗体はまた、多様な種類の化合物に結合体化または連結され得、これらの化合物としては、タンパク質、毒素もしくは細胞毒性因子、放射性核種、アポトーシス因子(Wuestら、2002)、抗脈管形成化合物あるいは、標的細胞もしくは組織の増殖を阻害するか、またはそれらを死滅させる他の生物活性化合物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、細胞毒性因子または細胞増殖抑制性因子としては、ジフテリア毒素(Kreitman、2001 a)、シュードモナス体外毒素(Kreitman、2001 a;Kreitman、2001 b)、リシン(Kreitman、2001 a)、ゲロニン(gelonin)、ドキソルビシン(Ajaniら、2000)およびその誘導体、ヨウ素−131、イットリウム−90(Witzig、2001)、インジウム−111(Witzig、2001)、RNAse(NewtonおよびRyback、2001)、カリケアマイシン(calicheamicin)(Bernstein 2000)、アポトーシス因子ならびに抗脈管形成因子(Frankelら、2000;Brinkmannら、2001;Garnett、2001)が挙げられるが、これらに限定されない。これらは全て、標的化された細胞抗原に特異的な抗体により標的化された細胞に悪影響を与えることが示されている。
【0048】
毒素はまた、抗体コーティングされたリポソームへの毒素の取り込みによって、細胞に特異的に標的化され得る。抗体は、リポソームを、生物活性化合物が放出される標的細胞に指向する。例えば、抗体コーティングされたリポソーム中の細胞毒は、動物モデルにおいて、奇形癌(Martyら、2002)およびHER2発現異種移植片(Parkら、2002)を処置するために使用されてきた。これらの標的化リポソームはまた、生物活性ポリペプチド(例えば、誘導性一酸化窒素シンターゼ)をコードするDNAとともに負荷され得る(Khareら、2001)。
【0049】
プロドラッグまたは酵素はまた、特異的な抗体により標的化された細胞に送達され得る。この場合において、免疫複合体は、一旦抗体が標的細胞に結合すると活性化され得る薬物に連結された抗体からなる。この方法の例は、概説されている(Denny、2001;XuおよびMcLeod、2001)。HCCの処置のための、配列番号l〜7によりコードされるポリペプチドに標的化される抗体−プロドラッグ/酵素結合体は、本発明の一実施形態である。
【0050】
抗体分子の特異性および高い親和性は、抗体分子を、細胞標的の特定の部分集合に毒素因子を送達するための理想的な候補にする。配列番号l〜7の標的ポリペプチドは、非腫瘍細胞よりも高いレベルでHCC細胞上に存在するので、これらは、抗体ベースの治療のための優れた標的を提供する。
【0051】
(アンチセンス)
配列番号1〜7の標的ポリペプチドをコードする遺伝子は、それら自身、これらの遺伝子の発現を阻害するアンチセンス治療のための標的である。これらの方法は、本発明の一実施形態を構成し、ポリヌクレオチド(DNA、RNA、リボザイム、ペプチド核酸または非核酸ポリマー(例えば、塩基対依存的な様式でDNAもしくはRNAに特異的に結合する、ホスホロチオネート誘導体またはモルホリノ誘導体)のいずれか)の送達からなる。これらの因子の設計、生成および特徴づけは、文献に概説されている(lyerら、1990;Cohen、1994;Agrawalおよびlyer、1997;Merdanら、2002)。アンチセンス分子は、配列番号1〜7の標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列または遺伝子に相補的であり、対応するRNAまたはこのような遺伝子のタンパク質合成を阻害する。相補的なポリヌクレオチドまたは関連する分子は、好ましくは、配列番号1〜7の標的ポリペプチドのうちの1つをコードする、少なくとも10個の連続する核酸に特異的にハイブリダイズするのに十分な長さである。
【0052】
HAL(配列番号5)。本発明の局面はまた、HCC組織においてダウンレギュレートされる、標的ポリペプチドHAL(配列番号8)をコードする遺伝子に関し、この標的ポリペプチドを遺伝子治療に受容させる。遺伝子治療としては、HAL標的ポリペプチド(配列番号8)に少なくとも88%同一であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)の送達による遺伝子の置換が挙げられる。肝臓に標的化される遺伝子治療は、送達およびベクターの選択の両方について広範に概説されている(Guhaら、2001;Mazzoliniら、2001;Schmitzら、2002;Wuら、2002)。HAL(配列番号8)はまた、直接置換され得る。本発明の別の実施形態において、配列番号8の標的ポリペプチドは、HCCを処置するために投与される。この実施形態は、HAL(配列番号8)ポリペプチドおよびHAL関連ポリペプチド(以下に記載される、全長かつ天然のHAL分子の生物活性を有するポリペプチドのフラグメントが挙げられる)を含む。HAL(配列番号8)は、ヒスチジン異化およびヒスタミン異化における最初の酵素である(Suchiら、1995)。この酵素のレベルの低下は、ヒスチジンのレベルおよびヒスタミンのレベルの増大、ならびにウロカニン酸(HAL(配列番号8)触媒作用の産物)のレベルの低下をもたらし得る。HCC細胞がHAL(配列番号8)のレベルの低下を生成する事実は、ヒスチジンもしくはヒスタミンが癌細胞の生存もしくは増殖に必要とされ、そして/または、ヒスチジンおよびヒスタミンに由来するウロカニン酸もしくは他の分子が癌細胞の生存もしくは増殖を阻害することを示唆する。したがって、本発明のこの局面は、HCCの処置において、ウロカニン酸および他のヒスチジンおよびヒスタミン異化代謝産物(4イミダザロン(imidazalone)−5−プロピオン酸およびN−ホルムイミノ−グルタミン酸単独または、それら互いの組み合わせもしくはHAL(配列番号8)との組み合わせ、が挙げられる)の使用を含む。
【0053】
(抗ヒスタミン薬)
HCC患者におけるヒスタミンのレベルの増大は、癌細胞の生存または増殖に影響を与え得る。実際に、ヒスタミンレセプターの一つ、H2は、細胞増殖の調節に関連している(Suhら、2001)。それゆえ、本発明の別の実施形態は、HCCの処置において、ヒスタミンアンタゴニストの使用を含む。ヒスタミンアンタゴニストは、多様な種類の化合物からなり、これらは広範に概説されている(Greaves、2001;Walshら、2001)。
【0054】
(併用治療)
癌は、多くの場合、試薬または方法論の併用によって効果的に処置される。HCC細胞の増殖または生存度はまた、因子または方法論の併用による処置によって影響され得る。例として以下が挙げられる:
1)子宮頸癌(AokiおよびTanaka、2002)または頭部および頚部の癌(Bustoら、2001)または膵臓癌(McGinnら、2002)の処置における、化学療法および放射線治療;
2)子宮頸癌の処置における、化学療法および手術(AokiおよびTanaka、2002);
3)乳癌の処置における、抗体治療およびサイトカイン治療(Hortobagyi、2002);
4)メラノーマ(McClay、2002)または結腸直腸癌腫(Kimら、2002)の併用化学療法処置;
5)非小細胞性肺癌の処置における、遺伝子治療、新脈管形成インヒビター治療および抗体治療を含む複数の提案された治療(FelipおよびRossell、2001);ならびに
6)化学療法および抗体治療またはキナーゼインヒビター治療または新脈管形成インヒビター治療の併用による転移性の乳癌の提案された処置。
【0055】
したがって、本発明の治療剤および構築物は、1つ以上の標準的な癌処置と組み合わせての使用を企画する。例えば、特定の本発明の方法は、1つ以上の以下のものと組み合わせて使用され得る:
a)化学療法剤;
b)放射線治療;
c)外科切除術または肝臓移植;あるいは
d)ラジオ波焼灼療法、冷凍外科、エタノール切除および塞栓形成。
【0056】
(HCCの予防的処置)
HCCのための現行の診断方法は、最も初期の段階にある癌を確実には検出し得ない。HCCについて高い危険にある患者において、本発明の治療分子の予防的投与は、適切であり得る。HCCについて高い危険にある患者は、慢性肝疾患を有する患者(B型肝炎患者およびC型肝炎患者が挙げられる)および肝硬変を有する患者である(Bruixら、2001;BefelerおよびBisceglie、2002)。したがって、患者がHCCを発症するこのような危険の増大を示す場合、本発明の標的化因子または構築物は、予防的根拠に基づいて、このような危険にある患者に投与され得る。
【0057】
(HCC治療薬の発見手段としてのポリペプチド(配列番号1〜7))
配列番号1〜7のポリペプチドは、HCCの処置において有効な化合物について、アッセイおよび/またはスクリーニングするために使用され得る。例示的な結合アッセイおよび生物学的機能アッセイは、先に記載されている。好ましい様式は、本明細書に記載される。例えば、PGMRC1(配列番号1)を発現しない細胞は、上記の標的ポリペプチドをコードする遺伝子によりトランスフェクトされる。次に、トランスフェクトされた細胞には結合するが、トランスフェクトされていない親細胞には結合しない試験因子がスクリーニングされる。上記のスクリーニングは、機能アッセイ、結合アッセイ、競合アッセイまたはレポーターアッセイを使用して達成される。あるいは、トランスフェクトされた細胞の非細胞画分が単離され、競合結合アッセイまたは直接結合アッセイにおいて使用される。例えば、試験化合物より先に、放射性標識プロゲステロンが、このトランスフェクトされた細胞に添加される。放射性標識プロゲステロンと置き換わる試験化合物は、PGMRC1レセプター(配列番号1)のアンタゴニストとしての、HCCの処置のための治療薬の候補である。
【0058】
(特定の本発明の調節因子、組成物、実用品および発現ベクター)
遺伝子発現の調節因子。特定の実施形態は、細胞の遺伝子発現の調節因子を提供する。好ましくは、本発明の調節因子は、本明細書に記載の1つ以上の細胞の遺伝子標的(例えば、配列番号9〜12)(例えば、配列番号1〜7をコードする遺伝子)に指向され、これらの発現は、少なくともある程度、肝細胞癌に必要とされる。
【0059】
本発明の調節因子としては、アンチセンス分子、siRNA、リボザイム、抗体または抗体フラグメント、タンパク質またはポリペプチドおよび低分子が挙げられるが、これらに限定されない。特定の調節因子(例えば、遺伝子特異的アンチセンス分子、siRNA分子およびリボザイム分子、低分子ならびに抗体およびそのエピトープ結合フラグメント)は、標的遺伝子の発現のインヒビター、または、それにコードされるタンパク質の生物活性のインヒビターである。
【0060】
好ましくは、本発明のアンチセンス分子は、標的遺伝子配列に対応する核酸分子に標的化される、約10〜35ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドであり、このアンチセンス分子は、少なくとも1つの標的遺伝子配列(例えば、配列番号9〜12)(例えば、配列番号1〜7をコードする遺伝子)の発現を阻害する。本発明を実施するのに有用なアンチセンス化合物としては、当該分野で認識される修飾バックボーンまたは非天然ヌクレオシド間結合、修飾糖部分あるいは修飾核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0061】
好ましいアンチセンス分子またはその相補体は、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも17個、少なくとも20個、少なくとも22個または少なくとも25個、および好ましくは約35個未満の連続する、(例えば、配列番号1〜7)からなる群のポリペプチドをコードする核酸配列と相補的なヌクレオチドを含むか、あるいはストリンジェントな条件または高ストリンジェントな条件で、(例えば、配列番号1〜7)からなる群のポリペプチドをコードする核酸配列の少なくとも1つにハイブリダイズする。好ましくは、このようなアンチセンス分子は、PMO(ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー)アンチセンス分子である。
【0062】
したがって、本発明は、以下に規定されるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、標的の細胞遺伝子配列の全てまたは一部にハイブリダイズする核酸を含む。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は、代表的に、少なくとも10ヌクレオチド長、少なくとも15ヌクレオチド長、少なくとも17ヌクレオチド長、少なくとも20ヌクレオチド長、少なくとも22ヌクレオチド長、少なくとも25ヌクレオチド長、少なくとも30ヌクレオチド長または少なくとも35ヌクレオチド長である。好ましくは、ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は、標的配列またはその相補体に、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である。
【0063】
本明細書に記載される型のハイブリダイズする核酸は、例えば、標的遺伝子の発現の本発明の治療用調節因子、クローニングプローブ、プライマー(例えば、PCRプライマー)、あるいは、診断プローブもしくは診断プライマーおよび/または予後プローブもしくは予後プライマーとして使用され得る。好ましくは、核酸サンプルへのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件下で実行される。核酸二重鎖または核酸ハイブリッドの安定性は、プローブが標的DNAから解離する温度である、融解温度またはTmとして表現される。この融解温度は、必要とされるストリンジェントな条件を規定するために使用される。
【0064】
プローブと同一ではなく、プローブと関連し、かつ実質的に同一である配列のために、特定の塩濃度(例えば、SSCまたはSSPE)において、相同なハイブリダイゼーションのみが生じる、最も低い温度をまず確立することが有用である。次に、1%のミスマッチがTmの1℃の低下をもたらすことを想定して、その結果、ハイブリダイゼーション反応における最後の洗浄の温度を下げる(例えば、プローブと>95%の同一性を有する配列が求められる場合、最後の洗浄の温度を5℃下げる)。実際には、Tmの変化は、1%のミスマッチあたり0.5℃と1.5℃の間であり得る。
【0065】
本明細書に規定されるストリンジェントな条件は、5×SSC/5×デンハルト液/1.0%SDS中、68℃でのハイブリダイゼーション、そして0.2×SSC/0.1%SDS中、室温での洗浄、または当該分野で認識されるそれと同等な条件を含む。本明細書に規定される中程度にストリンジェントな条件は、3×SSC中、42℃での洗浄、または当該分野で認識されるそれと同等な条件を含む。塩濃度および温度のパラメータは、プローブと標的核酸との間の同一性の最適なレベルを達成するように変動され得る。このような条件に関する手引きが、例えば、Sambrookら、1989、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、N.Y.;およびAusubelら(編)1995、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley&Sons、N.Y.)のUnit 2.10.により、当該分野において利用可能である。好ましくは、アンチセンス分子は、少なくとも17個または少なくとも20個または少なくとも25個、および好ましくは約35個未満の連続する、標的ポリペプチドをコードする(例えば、配列番号1〜7をコードする)核酸配列と相補的なヌクレオチドを含むか、あるいはストリンジェントな条件で、標的ポリペプチドをコードする(例えば、配列番号1〜7をコードする)核酸配列の少なくとも1つにハイブリダイズする。好ましくは、このようなアンチセンス分子は、PMOアンチセンス分子である。
【0066】
本発明はさらに、標的タンパク質コードする少なくとも1つのRNA(例えば、配列番号9〜12)(例えば、配列番号1〜7をコードするRNA)を特異的に切断し得るリボザイムおよびこのリボザイムを含む薬学的組成物を提供する。
【0067】
本発明はまた、標的遺伝子の発現の低分子調節因子を提供し、ここで特定の調節因子は、少なくとも1つの標的遺伝子の発現を低下させ得るインヒビター、少なくとも1つの標的遺伝子からのmRNAの発現を低下させ得るか、もしくは防止し得るインヒビター、または少なくとも1つの標的遺伝子産物の生物活性を低下させ得るインヒビターである。好ましくは、標的遺伝子は、標的ポリペプチド(例えば、配列番号1〜7)をコードする群より選択される。
【0068】
組成物。さらなる実施形態は、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤中に、標的遺伝子の発現の1つ以上の調節因子(または標的遺伝子産物の生物活性の調節因子)を含む組成物を提供する。
【0069】
特定の実施形態は、標的遺伝子の発現を阻害するための薬学的組成物を提供し、この薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤との混合物中に、本発明に従ったアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0070】
薬学的に受容可能なキャリア中に、標的遺伝子産物(例えば、タンパク質)のインヒビターの治療有効量を含む組成物がさらに提供される。特定の実施形態において、この組成物は、2つ以上の標的遺伝子産物インヒビターを含む。好ましくは、標的遺伝子産物は、配列番号1〜7からなる核酸群およびその組み合わせから選択される。
【0071】
特定の組成物の実施形態において、標的遺伝子インヒビターは、アンチセンス分子であり、そして特定の実施形態において、アンチセンス分子またはその相補体は、標的ポリペプチド(例えば、配列番号1〜7)をコードする核酸配列のうち、少なくとも10個、15個、17個、20個または25個の連続する核酸を含むか、あるいは、ストリンジェントな条件下で標的ポリペプチド(例えば、配列番号1〜7)をコードする核酸配列のうちの少なくとも1つにハイブリダイズする。好ましくは、このようなアンチセンス分子は、PMOアンチセンス分子である。
【0072】
方法および使用。本発明の特定の実施形態は、HCC細胞において、標的遺伝子の発現または標的遺伝子産物の生物活性を調節する方法を提供する。
【0073】
本発明は、ヒト細胞または組織において、標的の細胞遺伝子の発現を阻害する方法を提供し、この方法は、インビボ(またエキソビボまたはインビトロ)において、細胞または組織と、標的遺伝子産物の発現が阻害されるように、標的遺伝子産物をコードする核酸分子に標的化され、約10〜35ヌクレオチド長のアンチセンス化合物またはリボザイムとを接触させる工程を包含する。好ましくは、標的遺伝子は、配列番号1〜7からなる群より選択される。
【0074】
さらに、本発明は、細胞において、標的遺伝子の発現を調節する方法を提供し、この方法は、インビボ(またエキソビボまたはインビトロ)において、細胞と、標的遺伝子産物の発現が阻害されるように、標的遺伝子産物をコードする核酸分子に標的化され、約10〜35ヌクレオチド長の本発明のアンチセンス化合物またはリボザイムとを接触させる工程を包含する。
【0075】
本発明は、標的遺伝子の発現または活性を調節するための医薬を調製するための、本発明にしたがう標的遺伝子の発現の調節因子の使用を提供する。
【0076】
さらなる実施形態は、哺乳動物細胞において、標的遺伝子の発現またはコードされる生物活性を阻害する方法を提供し、この方法は、標的遺伝子の発現のインヒビター(または、コードされる生物活性のインヒビター)を細胞に投与する工程を包含する。そしてこの方法の特定の実施形態において、このインヒビターは、標的遺伝子特異的なアンチセンス分子である。好ましくは、このアンチセンス分子は、PMOアンチセンス分子である。
【0077】
本発明はまた、被験体において、標的遺伝子の発現の方法を提供し、この方法は、薬学的に有効なビヒクル中で、標的遺伝子に由来する選択された標的核酸配列の全てまたは一部に、特異的にハイブリダイズするのに有効である量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを上記被験体に投与する工程を包含する。好ましくは、このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、PMOアンチセンス化合物である。
【0078】
本発明はさらに、HCC関連状態または疾患を処置する方法を提供し、この方法は、例えば、新生物形成の状態またはウイルス関連疾患が、重症度において緩和されるように、標的遺伝子(例えば、配列番号1〜7をコードする)の発現の調節因子を、哺乳動物細胞に投与する工程を包含する。
【0079】
本明細書の以下の実施例において議論されるように、さらなる実施形態は、標的遺伝子の発現(活性)を調節するのに有用な化合物の同定のための、スクリーニングアッセイを提供し、このアッセイは、細胞と試験因子とを接触させる工程;適切なアッセイを使用して、少なくとも1つの標的の細胞遺伝子配列の発現を測定する工程;および、試験因子と接触させていないコントロール細胞と比較して、試験因子が上記の遺伝子発現を阻害するか否かを決定し、それにより、上記の遺伝子発現を阻害する因子が、標的遺伝子または遺伝子産物の活性を調節するのに有用な化合物として同定される工程を包含する。
【0080】
好ましくは、少なくとも1つの標的の細胞遺伝子配列の発現は、それぞれのmRNAの発現またはそれらにコードされるタンパク質の発現である。
【0081】
好ましくは、上記の標的遺伝子の発現を阻害または調節する因子は、HCCまたはHCC関連状態もしくは疾患を調節する能力について、さらに試験される。
【0082】
さらなる実施形態は、HCCの成熟またはHCCの進行についての診断アッセイまたは予後アッセイを提供し、このアッセイは、HCCを有することが疑われる被験体から細胞サンプルを取得する工程;少なくとも1つの標的遺伝子配列の発現を測定する工程;および、非HCCコントロール細胞と比較して、少なくとも1つの標的遺伝子または遺伝子産物の発現が誘導されるか否かを決定し、それにより診断が、少なくとも部分的に与えられる工程、を包含する。
【0083】
好ましくは、上記の発現を測定は、2つ以上の標的の細胞遺伝子配列の測定である。好ましくは、上記の発現の測定は、高スループットマイクロアレイ方法の使用による。
【0084】
ポリヌクレオチドおよび発現ベクター。特定の実施形態は、転写開始領域を含む配列および少なくとも10ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長または25ヌクレオチド長の標的遺伝子特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする配列を有する、単離されたポリヌクレオチドと、このポリヌクレオチドを含む組換えベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。好ましくは、この転写開始領域は、強力に構成的に発現させる哺乳動物のpol III特異的プロモーターまたはpol II特異的プロモーター、あるいはウイルスプロモーターである。
【0085】
(さらなるオリゴヌクレオチド調節因子)
標的遺伝子DNAまたはRNA(本明細書において「標的」ポリヌクレオチドと称される)にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが本発明の範囲内に包含される。オリゴヌクレオチドは、特異的なハイブリダイゼーションが達成される限り、標的ポリヌクレオチドに100%相補的である必要はない。達成されるべきハイブリダイゼーションの程度は、標的ポリヌクレオチドの正常な機能、転写、翻訳、相補配列との対合または別の生物学的成分(例えば、タンパク質)との結合を妨害する程度である。アンチセンスオリゴヌクレオチド(好ましいPMOアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる)は、DNA複製およびDNA転写を妨害し得、そしてRNAトランスロケーション、翻訳、スプライシングおよび触媒活性を妨害し得る。
【0086】
本発明は、その範囲内に、約10ヌクレオチド長〜約35ヌクレオチド長の任意のオリゴヌクレオチド(本明細書に記載のバリエーションを含む)を包含し、このオリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの正常な機能への効果が達成されるように、標的配列(DNAまたはmRNAが挙げられる)にハイブリダイズする。オリゴヌクレオチドは、例えば、10ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長または35ヌクレオチド長であり得る。35ヌクレオチドよりも長いオリゴヌクレオチドもまた、本発明の範囲内で企画され得、例えば、長さにおいて、完全な標的cDNA(すなわち、mRNA)配列またはその重要な部分もしくはその実質的な部分に対応し得る。
【0087】
アンチセンスオリゴヌクレオチド。本発明において有用であり、代表的な好ましいアンチセンス化合物の例は、標的ポリペプチド(例えば、配列番号1〜7)をコードするmRNA配列に基づき、これらとしては、修飾バックボーンまたは非天然ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。修飾バックボーンを有するオリゴヌクレオチドとしては、バックボーンにリン原子を保持するものとバックボーンにリン原子を有さないものとが挙げられる。
【0088】
好ましい修飾オリゴヌクレオチドバックボーンとしては、ホスホロチオネートまたはホスホロジチオエート、キラルホスホロチオネート、リン酸トリエステルおよびアルキルリン酸トリエステル、アミノアルキルリン酸トリエステル、メチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート(メチルホスホネート、3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートが挙げられる)、ホスフィネート、ホスホロアミデートまたはホスホルジアミデート(3’−アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデート、ならびにホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)が挙げられる)、チオホスホロアミデート、ホスホルアミドチオエート、チオアルキルホスホネート、チオノアルキルリン酸トリエステル、ならびにボラノホスフェートが挙げられ、これらは、通常の3’−5’結合、これらの2’−5’結合型のアナログおよび逆の極性を有するものを有し、ここで、隣接する対のヌクレオシド単位は、3’−5’〜5’−3’または2’−5’〜5’−2’に連結される。種々の塩形態、混合塩形態および遊離酸形態もまた包含される。
【0089】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、ヘキソースおよび2’−O−メチル糖部分を含むが、これらに限定されない群より選択される、少なくとも1つの修飾糖部分も含み得る。
【0090】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾塩基部分を含み得、この塩基部分は、以下を含むが、これらに限定されない基から選択される:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリン(米国特許第5,958,773号およびそこに開示される特許もまた参照のこと)。
【0091】
長さX(ヌクレオチド長)の本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの例としては、例えば、配列番号9についてのポリヌクレオチド位置により示されるように、連続的に重複する長さXのオリゴヌクレオチドのセットに対応するものが挙げられる。各連続的に重複するセット内のこのオリゴヌクレオチド(所定のX値に対応する)は、ヌクレオチド位置からのZオリゴヌクレオチドの有限のセットとして規定される:
n〜(n+(X−1));
ここでn=1、2、3、…(Y−(X−1));
Yは、配列番号9(1,890)の長さ(ヌクレオチドまたは塩基対)に等しく;
Xは、セット中の各オリゴヌクレオチドの共通の(ヌクレオチドでの)長さに等しい(例えば、連続的に重複する20マーのセットについてX=20);および
所定の配列番号の長さYについて連続的に重複するオリゴマーの長さXの個数(Z)は、Y−(X−1)に等しい。例えば、配列番号9について、X=20である場合、Z=1,890−19=1,871。
【0092】
本発明の20マーのオリゴヌクレオチドの例としては、配列番号9(PGRMC1 cDNA)についてのポリヌクレオチド位置により示される、以下の1,871オリゴマーのセットが挙げられる:1〜20、2〜21、3〜22、4〜23、5〜24、…1,869〜1,888、1,870〜1,889および1,871〜1,890。
【0093】
同様に、25マーのオリゴヌクレオチドの例としては、配列番号9についてのポリヌクレオチド位置により示される、以下の1,866オリゴマーのセットが挙げられる:1〜25、2〜26、3〜27、4〜28、5〜29…1,864〜1,888、1,865〜1,889および1,866〜1,890。
【0094】
本発明は、各標的配列(例えば、配列番号9〜13の各ヌクレオチド(それぞれ配列番号1〜4および5をコードする)について、長さX(例えば、X=10ヌクレオチド、17ヌクレオチド、20ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、25ヌクレオチド、30ヌクレオチドまたは35ヌクレオチドである)のオリゴヌクレオチドまたは修飾オリゴヌクレオチドの連続的に重複する複数のセットを包含する。
【0095】
種々の配列番号および関連するタンパク質標的が表1に列挙される。
【0096】
【表1】

代表的なsiRNA配列領域は、それらの設計(例えば、長さ、構造、組成物など)、調製および使用についての教示と併用した上記のアルゴリズムを考慮して、本明細書において開示され、本明細書において以下「siRNA」のもとに規定される。
【0097】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、このアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取り込みを増大させるために、1つ以上の部分または結合体にこのオリゴヌクレオチドを化学的に連結させることによっても修飾され得る。このような部分または結合体としては、脂質(例えば、コレステロール)、コール酸、チオエーテル、脂肪族の鎖、リン脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミチル部分、ならびに例えば、米国特許第5,514,758号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,597,696号および同第5,958,773号に開示されるその他のものが挙げられる。したがって、オリゴヌクレオチドは、他の付加基(例えば、(例えば、インビボで宿主細胞レセプターに標的化するための)ペプチド、あるいは細胞膜を通過しての輸送を促進または調節する因子(Letsingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553〜6556、1989;Lemaitreら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648〜652、1987;1988年12月15日に公開されたPCT WO88/09810)または血液脳関門を通過しての輸送を促進または調節する因子(1988年4月25日に公開されたPCT WO89/10134)または核膜を通過しての輸送を促進または調節する因子)または、ハイブリダイゼーション誘発性(hybridization−triggered)切断因子(Krolら、BioTechniques 6:958〜976、1988)もしくは介在因子(Zon、Pharm.Res.5:539〜549、1988)を含み得る。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発性架橋因子、輸送因子、ハイブリダイゼーション誘発性切断因子など)へ結合体化され得る。
【0098】
キメラアンチセンスオリゴヌクレオチドもまた、本発明の範囲内であり、例えば、米国特許第5,013,830号、同第5,149,797号、同第5,403,711号、同第5,491,133号、同第5,565,350号、同第5,652,355号、同第5,700,922号および同第5,958,773号に記載される方法を使用して、本発明のオリゴヌクレオチドから調製され得る。
【0099】
本発明者らは特定の作用機構に束縛されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ワトソン−クリック塩基対合を使用して、細胞内の標的ポリヌクレオチドの相補領域に結合することによって阻害効果を達成することが考えられる。標的ポリヌクレオチドがRNAである場合、実験証拠は、ハイブリッドのRNA成分が、RNase H(Giles、R.V.ら、Nuc.Acids Res.(1995)23:954〜961;米国特許第6,001,653号)によって切断されることを示唆する。一般的に、10塩基対を含むハイブリッドは、RNase Hのための基質としての役割を果たすのに十分な長さである。しかし、結合の特異性を達成するために、少なくとも17ヌクレオチドのアンチセンス分子を使用することが好ましい。なぜなら、この長さの配列がヒト遺伝子の中で固有であるようだからである。
【0100】
アンチセンスアプローチは、標的遺伝子配列(例えば、mRNA)に相補的であるオリゴヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)の設計を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、相補的なmRNA転写物に結合し、翻訳を防止する。完全な相補性が好ましいが、必ずしも必要とはされない。標的mRNAの一部または領域に「相補的」である配列は、本明細書において言及されるように、RNAとハイブリダイズし得るのに十分な相補性を有し、安定な二重鎖を形成する配列を意味する(それゆえ、二本鎖アンチセンス核酸の場合、二重鎖DNAの単鎖が試験され得るか、または三重鎖形成がアッセイされ得る)。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度およびアンチセンス核酸の長さの両方に依存する。一般的に、ハイブリダイズする核酸が長ければ長いほど、安定な二重鎖(あり得る場合には、三重鎖)形成を損なうことなく、RNA内に、より多くの塩基ミスマッチが含まれる。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を決定する標準的な手順の使用によって、ミスマッチの許容可能な程度を確かめる。
【0101】
米国特許第5,998,383号(本明細書において参考として援用される)に開示されるように、配列が、それらの相補的な標的とのオリゴヌクレオチド二重鎖形成のために重要かつ適切なエネルギー関連性の特徴を示し、自己二量体化または自己相補について低い可能性を示すように、オリゴヌクレオチドが選択される(Anazodoら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1996)229:305〜309)。コンピュータプログラムORIGO(Primer Analysis Software、Version 3.4)は、アンチセンス配列の融解温度、自由エネルギー特性を決定するために使用され、潜在的な自己二量体形成および自己相補特性を推定するために使用される。このプログラムは、これらの2つのパラメータ(潜在的な自己二量体形成および自己相補性)の定性的な推定の決定を可能にし、「可能性なし」または「多少の可能性」または「本質的に完全な可能性」の指標を提供する。好ましくは、これらのパラメータについて、可能性なしの推定を有する標的遺伝子配列の部分が選択される。しかし、カテゴリーのうちの1つ「多少の可能性」を有する部分は、それでもなお、有用性を有し得、これらのパラメータの釣り合いが、選択において慣用的に使用される。
【0102】
本発明にしたがって、mRNAのコード領域配列に相補的なアンチセンスヌクレオチドが使用される一方、転写された非翻訳領域または翻訳開始部位領域に相補的なアンチセンスヌクレオチドが、好ましい場合もある。メッセージの5’末端(例えば、5’非翻訳配列(AUG開始コドンまで至りAUG開始コドンを含む)に相補的なオリゴヌクレオチドは、しばしば翻訳を阻害することにおいて最も効果的に作用する。しかし、3’非翻訳配列またはmRNAの他の領域に相補的な配列はまた、mRNAの翻訳を阻害することにおいて有効である(例えば、Wagner、Nature 372:333〜335、1994を参照のこと)。アンチセンス技術分野において、特定の程度の単調な実験が、特定の標的に対する最適なアンチセンス分子を選択するために必要とされる。効果的にするために、アンチセンス分子は、好ましくは、到達可能であるか、または露出される標的RNA分子の一部に標的化される。いくつかの場合において、標的mRNA分子の構造についての情報が利用可能であるが、アンチセンスを使用する阻害への現行のアプローチは、実験による。
【0103】
このような実験は、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより細胞をトランスフェクトまたは負荷すること、それに続く、メッセンジャーRNA(mRNA)の逆転写およびそれぞれのcDNAレベルをアッセイすることによる、処理した細胞およびコントロール細胞におけるmRNAレベルの測定によって慣用的に実行され得る。cDNAレベルをアッセイおよび分析することによってアンチセンス活性の特異性を測定することは、アンチセンス結果を確証する、当該分野で認識される方法である。慣用的に、処理した細胞およびコントロール細胞由来のRNAは、逆転写され、生じるcDNAの集団が分析される(Branch、A.D.、T.I.B.S.(1998)23:45〜50)。
【0104】
本発明にしたがって、アンチセンスの効能は、当該分野において公知の細胞増殖、表現型または生存度に対する生物学的効果を測定することによって代替的に決定され得る。本発明の特定の局面にしたがって、例えば、HCC細胞の培養物は、標的遺伝子配列を標的化するように設計された本発明のオリゴヌクレオチドにより負荷される。このような負荷の細胞増殖、表現型または生存度に対する効果が測定される。
【0105】
リボザイム。標的遺伝子の発現の調節因子は、リボザイムであり得る。リボザイムは、RNA基質(例えば、mRNA)を特異的に切断し、細胞遺伝子の発現の特異的な阻害または妨害をもたらすRNA分子である。本明細書で使用される場合、用語「リボザイム」は、特異的な認識のためのアンチセンス配列を含むRNA分子およびRNA切断酵素活性を包含する。触媒性の鎖は、化学量論的な濃度より大きい濃度で、標的RNA内の特異的な部位を切断する。好ましくは、リボザイムは、その切断認識部位が、標的mRNAの5’末端の近傍に配置される(すなわち、効率を増加させ、非機能的なmRNA転写物の細胞内蓄積を最小限にする)ように操作される。
【0106】
広範な種類のリボザイムが、本発明の文脈内で利用され得、それらとしては、例えば、ハンマーヘッド型(hammerhead)リボザイム(例えば、ForsterおよびSymons、Cell(1987)48:211〜220;HaseloffおよびGerlach、Nature(1988)328:596〜600;WalbotおよびBruening、Nature(1988)334:196;HaseloffおよびGerlach、Nature(1988)334:585により記載される);ヘアピン型(hairpin)リボザイム(例えば、1993年10月19日に発行された、Haseloffら、米国特許第5,254,678号および1990年3月26日に公開された、Hempelら、欧州特許公開第0 360 257号により記載される);およびテトラヒメナリボソームRNAベースのリボザイム(Cechら、米国特許第4,987,071号を参照のこと)が挙げられる。Cech型リボザイムは、標的RNA配列にハイブリダイズし、その後、標的RNAの切断が生じる、8塩基対の活性部位を有する。本発明のリボザイムは、代表的にRNAからなるが、DNA、核酸アナログ(例えば、ホスホロチオネート)またはそのキメラ(例えば、DNA/RNA/RNA)からもなり得る。
【0107】
リボザイムは、任意のRNA転写物に標的化され得、このような転写物を触媒的に切断し得る(例えば、米国特許第5,272,262号;米国特許第5,144,019号;およびCechらの米国特許第5,168,053号、同第5,180,818号、同第5,116,742号および同第5,093,246号を参照のこと)。本発明の特定の実施形態に従って、任意のこのような標的遺伝子配列特異的なリボザイムまたはこのようなリボザイムをコードする核酸は、標的遺伝子の発現の阻害をもたらすために宿主細胞に送達され得る。それゆえ、リボザイムなどは、核への導入に際して、リボザイムが直接転写されるように、真核生物プロモーター(例えば、強力に構成的に発現させるpol III特異的プロモーターまたはpol II特異的プロモーター)または真核生物ウイルスプロモーターに連結されたリボザイムをコードするDNAによって宿主細胞に送達され得る。
【0108】
三重ヘリックス形成。代替的に、標的遺伝子の発現は、標的遺伝子の調節領域(例えば、それぞれのプロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的化し、標的遺伝子の転写を防止する三重ヘリックス構造を形成することにより低下され得る(例えば、Helen、Anticancer Drug Des.6:569〜84、1991;Heleneら、Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27〜36、1992;およびMaher、Bioassays 14:807〜15、1992を参照のこと)。
【0109】
siRNA。特定の局面において、本発明は、細胞または細胞外環境への、部分的または完全な二本鎖特性を有するRNAの導入を企画する。本発明の特定の局面にしたがって、阻害は、この有効な配列の一部に由来するヌクレオチド配列が、阻害性RNAを生成するために選択される点で、特定の標的細胞遺伝子の発現産物に特異的である。このプロセスは、(部分的または完全な)阻害を生成することにおいて有効であり、遺伝子特異的であることを有効にさせる。特定の実施形態において、有効な遺伝子を含む標的細胞は、ヒトHCC細胞またはHCCに罹患した細胞である。
【0110】
siRNAを調製および使用する方法は、一般的に、米国特許第6,506,559号(本明細書で参考として援用される)に開示される(Milhavetら、Pharmacological Reviews 55:629〜648、2003;およびGitlinら、J.Virol.77:7159〜7165、2003(本明細書で参考として援用される)による概説もまた参照のこと)。
【0111】
siRNAは、重合化されたリボヌクレオチドの1本以上の鎖を含み得、そしてリン酸−糖バックボーンまたはヌクレオシドのいずれかへの修飾を含み得る。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合は、少なくとも1つの窒素異種原子または硫黄異種原子を含むように修飾され得る。RNA構造における修飾は、いくつかの生物において、dsRNAにより生成される全身性のパニック応答(panic response)を回避する一方で、特定の遺伝学的な阻害を可能にするように調整され得る。同様に、塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックするように修飾され得る。RNAは、酵素的に生成され得るか、または部分的/完全な有機合成によって生成され得、任意の修飾リボヌクレオチドは、インビトロでの酵素的な合成または有機合成によって導入され得る。
【0112】
二本鎖構造は、単一の自己相補的RNA鎖または2本の自己相補的RNA鎖によって形成され得る。RNA二重鎖形成は、細胞の内部または外部のいずれかにおいて開始され得る。RNAは、1細胞あたり、少なくとも1コピーの送達を可能にする量で導入され得る。より高用量の二本鎖物質は、より有効な阻害をもたらし得る。RNAの二重鎖領域に対応するヌクレオチド配列が、遺伝学的な阻害のために標的化される場合に、阻害は配列特異的である。有効な遺伝子配列の一部と同一であるヌクレオチド配列を含む核酸は、阻害のために好ましい。標的配列に対する、挿入、欠失および単一の点突然変異を有するRNA配列はまた、阻害のために有効であることが見出されている。配列同一性は、当該分野において公知の整列アルゴリズムおよびヌクレオチド配列間のパーセント差異を計算することによって、最適化され得る。あるいは、RNAの二重鎖領域は、標的遺伝子転写物の一部とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列として、機能的に定義され得る。
【0113】
RNAは、インビボまたはインビトロのいずれかで合成され得る。細胞の内因性RNAポリメラーゼは、インビボで転写を媒介し得るか、またはクローニングされたRNAポリメラーゼは、インビボまたはインビトロでの転写のために使用され得る。インビボでの導入遺伝子または発現構築物からの転写のために、調節領域が、RNA鎖を転写するために使用され得る。
【0114】
siRNA(RNAi)のために、RNAは、直接細胞に導入され得る(すなわち、細胞内に)か、もしくは空洞、間質空間、生物の血行へ細胞外導入され得るか、経口導入され得るか、またはRNAを含む溶液に生物を浸けることにより導入され得る。経口導入のための方法としては、生物の食品とRNAとの直接混合、および食品として使用される種がRNAを発現するように操作され、次いで作用させるべき生物に与えられる、操作されたアプローチが挙げられる。核酸を導入する物理的な方法としては、細胞への直接注射またはRNA溶液の生物への細胞外注射が挙げられる。
【0115】
遺伝子の発現の阻害は、標的遺伝子標的由来のタンパク質および/またはmRNA産物のレベルの欠如(または観察可能な減少)をいう(例えば、遺伝子の発現の阻害は、標的遺伝子由来のタンパク質(例えば、配列番号1〜7)および/またはmRNA産物のレベルの欠如(または観察可能な減少)を言及し得る)。特異性は、細胞の他の遺伝子に対する顕著な影響なしに、標的遺伝子を阻害する能力をいう。阻害の結果は、細胞または生物の表面上の特性の試験によってか、生化学技術(例えば、本明細書に記載される、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子の発現のモニタリング、抗体の結合、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、蛍光活性化細胞分析(FACS)およびウイルス感染アッセイ、ウイルス複製アッセイ、ウイルス成熟アッセイまたはウイルス進行アッセイ)によって確認され得る。細胞株または生物全体のRNA媒介性の阻害について、遺伝子の発現は、レポーター遺伝子または薬物耐性遺伝子(それらのタンパク質産物は容易にアッセイされる)の使用により、都合よくアッセイされる。多くのこのようなレポーター遺伝子は、当該分野において公知である。
【0116】
天然RNAのホスホジエステル結合は、少なくとも1つの窒素異種原子または硫黄異種原子を含むように修飾され得る。RNA構造における修飾は、いくつかの生物において、dsRNAにより生成される全身性のパニック応答を回避する一方で、特定の遺伝学的な阻害を可能にするように調整され得る。同様に、塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックするように修飾され得る。RNAは、酵素的に生成され得るか、または部分的/完全な有機合成によって生成され得、任意の修飾リボヌクレオチドは、インビトロでの酵素的な合成または有機合成によって導入され得る。
【0117】
特定の標的遺伝子配列の一部と同一であるヌクレオチド配列を含むRNAは、阻害のために好ましい。標的配列に対する、挿入、欠失および単一の点突然変異を有するRNA配列は、阻害のために有効であり得る。配列同一性は、当該分野において公知の配列比較および整列アルゴリズム(GribskovおよびDevereux、Sequence Analysis Primer、Stockton Press、1991ならびに、これに引用される参考文献を参照のこと)および、例えば、初期設定のパラメータを使用して、BESTFITソフトウェアプログラムにおいて実行されるSmith−Watermanアルゴリズム(例えば、University of Wisconsin Genetic Computing Group)により、ヌクレオチド配列間のパーセント差異を計算することによって、最適化され得る。阻害性RNAと特定の有効な遺伝子(例えば、srcファミリーキナーゼの標的遺伝子)配列の一部との間の90%より大きい配列同一性、またはさらに100%の配列同一性が好ましい。あるいは、RNAの二重鎖領域は、特定の有効な遺伝子転写物の一部とハイブリダイズし得る(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA中、50℃または70℃での、12〜16時間のハイブリダイゼーション;それに続く洗浄)ヌクレオチド配列として、機能的に定義され得る。同一であるヌクレオチド配列の長さは、少なくとも20塩基、25塩基、50塩基、100塩基、200塩基、300塩基または400塩基であり得る。
【0118】
RNAと特定の標的遺伝子配列との間の100%の配列同一性は、本発明を実施するために必ずしも必要ではない。したがって、本方法は、遺伝学的突然変異、株の多型性または進化的多様性に起因することが想定され得る、配列のバリエーションを許容し得る利点を有する。
【0119】
特定の標的遺伝子配列siRNA(例えば、配列番号1〜7をコードするもの)は、インビボまたはインビトロのいずれかで、当該分野で認識される方法によって合成され得る。細胞の内因性RNAポリメラーゼは、インビボで転写を媒介し得るか、またはクローニングされたRNAポリメラーゼは、インビボまたはインビトロでの転写のために使用され得る。インビボでの導入遺伝子または発現構築物からの転写のために、調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、スプライスドナーおよびアクセプター、ポリアデニル化)が、RNA鎖を転写するために使用され得る。阻害は、器官、組織または細胞型における特異的な転写;環境条件の刺激(例えば、感染、ストレス、温度、化学誘発因子);および/または発生段階または年齢における転写の操作により標的化され得る。RNA鎖は、ポリアデニル化されてもよく、またはポリアデニル化されなくてもよい;RNA鎖は、細胞の翻訳装置によりポリペプチドへ翻訳されてもよく、または翻訳されなくてもよい。
【0120】
RNAは、手動の反応または自動化された反応により、化学的または酵素的に合成され得る。RNAは、細胞RNAポリメラーゼまたはバクテリオファージRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、SP6)により合成され得る。発現構築物の使用および生成は、当該分野において公知である(例えば、WO97/32016;米国特許第5,593,874号、同第5,698,425号、同第5,712,135号、同第5,789,214号および同第5,804,693号;ならびにこれらに引用される参考文献)。化学的に合成されるか、またはインビトロでの酵素的な合成による場合、RNAは、細胞への導入の前に精製され得る。例えば、RNAは、溶媒または樹脂による抽出、沈降、電気泳動、クロマトグラフィまたはそれらの組み合わせにより、混合物から精製され得る。あるいは、RNAは、サンプルのプロセシングに起因する損失を回避するために精製を行わないか、または最小限の精製によって使用され得る。RNAは、保存のために乾燥され得るか、水溶液中に溶解され得る。溶液は、二重鎖のアニーリングおよび/または安定化を促進するために、緩衝剤または塩を含み得る。
【0121】
siRNAは、直接細胞に導入され得る(すなわち、細胞内に)か、もしくは空洞、間質空間、生物の血行へ細胞外導入され得るか、経口導入され得るか、またはRNAを含む溶液に生物を浸けることにより導入され得る。経口導入のための方法としては、生物の食品とRNAとの直接混合、および食品として使用される種がRNAを発現するように操作され、次いで作用させるべき生物に与えられる、操作されたアプローチが挙げられる。例えば、RNAは、植物に噴霧され得、植物は、植物に感染することが公知の病原体をある程度または完全に死滅させるのに十分な量で、RNAを発現するように遺伝子操作され得る。核酸を導入する物理的な方法(例えば、細胞への直接注射または生物への細胞外注射)もまた使用され得る。血管の血行または血管外の血行、血液系またはリンパ系、および脳脊髄液は、RNAが導入され得る部位である。組換え構築物からRNAを発現するトランスジェニック生物は、適切な生物に由来する接合体、胚幹細胞または別の多分化能細胞へ、この構築物を導入することにより生成され得る。
【0122】
核酸を導入する物理的な方法としては、RNAを含む溶液の注射、RNAにより覆われた粒子の微粒子銃、RNAの溶液中への細胞または生物の浸漬、またはRNAの存在下での細胞膜のエレクトロポレーションが挙げられる。ウイルス粒子に封入されたウイルス構築物は、細胞への発現構築物の有効な導入および発現構築物によりコードされるRNAの転写の両方を達成し得る。細胞に核酸を導入するための、当該分野において公知の他の方法が使用され得る(例えば、脂質媒介性のキャリア輸送および化学物質媒介性の輸送(例えば、リン酸カルシウム)など)。したがって、RNAは、以下の活性の1つ以上を実行する成分とともに導入され得る:細胞によるRNA取り込みの増強、二重鎖のアニーリングの促進、アニーリングした鎖の安定化、またはその他の方法による標的遺伝子の阻害の増加。
【0123】
siRNAは、単独で使用され得るか、または、試験サンプルもしくは被験体へのRNAのインビトロ導入もしくはインビボ導入を実行するのに必要な、少なくとも1つの試薬を含むキットの成分として使用され得る。好ましい成分は、dsRNAおよびdsRNAの導入を促進するビヒクルである。このようなキットはまた、このキットの使用者が本発明を実施することを可能にする使用説明書を備え得る。
【0124】
適切な注射混合物は、動物が平均0.5×10分子〜1.0×10分子のRNAを受容するように構築される。センス活性、アンチセンス活性およびdsRNA活性の比較のために、注射は、同じ質量のRNA(すなわち、単鎖のモル濃度の半分でのdsRNA)により比較される。1成体あたりの注射された分子の個数は、注射された物質中のRNAの濃度(エチジウムブロマイド染色から推定される)および注射体積(注射部位における眼に見える置き換えから推定される)に基づいて、おおよその概算として与えられる。個別の動物間での、注射体積における数倍の変動性が起こりうる。
【0125】
(特定の特異的な実施形態)
特定の局面は、肝細胞癌を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、配列番号1〜7からなる群より選択される、少なくとも1つのポリペプチドおよび天然に存在するそれらの改変体の発現または生物活性を阻害するのに十分な量で治療剤を、この処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましくは、治療剤は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖Fv、Fabフラグメント、Fab(2)フラグメント、ミニボディまたはドメイン欠失抗体;サイトカイン、ケモカイン、増殖因子または他の天然に存在するリガンド;ならびに合成分子からなる群より選択される、少なくとも1つの因子を含む。
【0126】
さらなる実施形態は、肝細胞癌を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、配列番号1〜7からなる群より選択される、少なくとも1つのポリペプチドに対して指向される免疫応答を、この処置または予防を必要とする被験体において生成する工程を包含し、この方法は、免疫応答を誘発(illicit)するのに十分な量で1つ以上のこのポリペプチドまたはその免疫抗原性フラグメントによって、患者を免疫化する工程を包含する。好ましくは、この方法は、配列番号1、配列番号2、またはその両方のポリペプチドの生物活性の阻害を含み、この治療剤は、配列番号1または配列番号2のポリペプチドとアミノ酸レベルで、少なくとも88%同一であるポリペプチド;配列番号1または配列番号2のうちの少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドフラグメント;配列番号1または配列番号2の天然に存在する対立遺伝子改変体であって、この改変体は、配列番号1または配列番号2をコードする遺伝子とオリゴヌクレオチドレベルで、少なくとも88%同一である核酸分子にコードされる改変体;配列番号1または配列番号2の天然に存在する対立遺伝子改変体のポリペプチドフラグメントであって、このフラグメントは、配列番号1または配列番号2のうちの少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むフラグメント;および配列番号1または配列番号2のリガンド結合部位を模倣するのに十分な様式で連結される、配列番号1または配列番号2のポリペプチドフラグメントを含むキメラポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含み、そしてこの治療剤は、配列番号1または配列番号2のリガンド結合活性を示す。
【0127】
なおさらなる局面は、肝細胞癌を処置または予防する方法を提供し、この方法は、治療部分に結合体化または連結された標的化因子を含む治療化合物を、この処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含し、この標的化因子は配列番号1〜7からなる群より選択されるポリペプチドに結合し、そしてこの治療部分は細胞毒性または細胞増殖抑制性である。好ましくは、この標的化因子は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖Fv、Fabフラグメント、Fab(2)フラグメント、ミニボディまたはドメイン欠失抗体;二機能性キメラ抗体分子;サイトカイン、ケモカイン、増殖因子または他の天然に存在するリガンド;ならびに合成分子からなる群より選択される、少なくとも1つの治療部分を含む。好ましくは、この治療部分は、抗生物質;毒素;アポトーシス因子;代謝拮抗薬;増殖因子またはサイトカイン;RNase;および抗脈管形成因子のうちの少なくとも1つを含む。
【0128】
さらなる実施形態は、肝細胞癌を処置または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号1〜7からなる群より選択される、少なくとも1つのポリペプチドの生理的なレベルを減少させる治療剤を、この処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましくは、この治療剤は、遺伝子の発現または上記少なくとも1つのポリペプチドをコードする、それぞれのmRNAの翻訳を阻害するために投与されるアンチセンスポリヌクレオチドである。好ましくは、このアンチセンス分子は、上記少なくとも1つのポリペプチドをコードする配列と相補的である、少なくとも10個の連続するヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである。好ましくは、このアンチセンス分子は、ペプチドポリ核酸または非核酸ポリマーであり、このアンチセンス分子は、上記少なくとも1つのポリペプチドの少なくとも10個の連続するヌクレオチドと相補的である。好ましくは、この非核酸ポリマーは、ホスホロチオネート誘導体、モルホリノオリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。特定の局面において、この治療剤はリボザイムである。
【0129】
なおさらなる実施形態は、肝細胞癌を処置または予防する方法を提供し、この方法は、被験体においてヒスチジンアンモニアリアーゼ活性を増加させるために、治療剤を、この処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する。好ましくは、この治療剤は、配列番号8のポリペプチドと少なくとも88%の配列同一性を有する、少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントをコードするポリヌクレオチドである。好ましくは、この治療剤は、配列番号8のポリペプチドと少なくとも88%の配列同一性を有する、少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントである。
【0130】
さらなる局面は、肝細胞癌(HCC)を処置または予防する方法を提供し、この方法は、抗ヒスタミン薬である治療剤を、この処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する。
【0131】
特定の局面において、上記の方法は、化学療法剤を投与する工程;放射線治療を施す工程;外科切除術または肝移植を施す工程;ラジオ波焼灼療法を施す工程;冷凍外科を施す工程;エタノール切除を施す工程;および塞栓形成を施す工程、からなる群より選択される少なくとも1つの工程をさらに包含する。
【0132】
なおさらなる局面において、上記の方法は、予防的に実施される。
【0133】
さらなる実施形態は、肝細胞癌の処置または予防のための治療剤の同定のための方法を提供し、この方法は、配列番号1〜5からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと、試験化合物とを接触させる工程;そして1つ以上の適切なアッセイを使用して、コントロールとの比較により、上記少なくとも1つのポリペプチドの活性に対するこの試験化合物の効果を決定し、上記少なくとも1つのポリペプチドの活性を調節する試験化合物を同定する工程、を包含する。好ましくは、b)における決定する工程は、上記少なくとも1つのポリペプチドへの、この試験化合物の結合を検出する工程を包含し、この結合は、以下:上記少なくとも1つのポリペプチドへのこの試験化合物の結合の直接検出;競合結合アッセイ;および上記少なくとも1つのポリペプチドにより媒介される活性についてのアッセイからなる群より選択される、少なくとも1つの方法により検出される。
【0134】
なおさらなる局面は、肝細胞癌(HCC)を処置または予防するのに適切な少なくとも1つの因子と、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを組み合わせて含む、薬学的組成物を提供し、上記因子が以下:
配列番号1〜7からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドに特異的な抗体または抗体試薬;
配列番号9〜13からなる群より選択される少なくとも1つの配列に特異的なアンチセンス分子;
配列番号9〜12からなる群より選択される少なくとも1つの配列に特異的なsiRNA因子;
配列番号1〜7からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドに対応する可溶性レセプター;および
HALをコードするポリヌクレオチド、からなる群より選択される。
【0135】
さらなる局面は、肝細胞癌(HCC)を処置または予防するための医薬の調製における、請求項22に記載の薬学的組成物の使用を提供する。
【0136】
明示的であっても暗黙のうちであっても、いかなる許可も、本明細書で参照されるかまたは援用されたいかなる特許または特許出願に対して容認されない。上記の議論は説明的、実例的かつ例示的であり、そして、本明細書に続いて添付される特許請求の範囲により規定される、本発明の主題のいかなる局面の範囲も限定すると取られるべきではない。
【0137】
引用された特定の参考文献。
【0138】
【化1】

【0139】
【化2】

【0140】
【化3】

【0141】
【化4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞癌を処置または予防するための方法であって、該方法は、配列番号1〜7、および天然に存在するそれらの改変体からなる群より選択される、少なくとも1つのポリペプチドの発現または生物活性を阻害するのに十分な量で治療剤を、該処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記治療剤が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖Fv、Fabフラグメント、Fab(2)フラグメント、ミニボディ(minibody)またはドメイン欠失抗体;サイトカイン、ケモカイン、増殖因子または他の天然に存在するリガンド;ならびに合成分子からなる群より選択される、少なくとも1つの因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
肝細胞癌を処置または予防する方法であって、該方法は、配列番号1〜7からなる群より選択される、少なくとも1つのポリペプチドに向けられる免疫応答を、該処置または予防を必要とする被験体において生成する工程を包含し、該方法は、免疫応答を誘発するのに十分な量で1つ以上の該ポリペプチドまたはその免疫抗原性フラグメントによって、該患者に免疫化する工程を包含する、方法。
【請求項4】
配列番号1、配列番号2またはその両方のポリペプチドの生物活性の阻害を含む請求項1に記載の方法であって、前記治療剤は、以下:
配列番号1または配列番号2のポリペプチドとアミノ酸レベルで、少なくとも88%同一であるポリペプチド;
配列番号1または配列番号2のうちの少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドフラグメント;
配列番号1または配列番号2の天然に存在する対立遺伝子改変体であって、該改変体は、配列番号1または配列番号2をコードする遺伝子とオリゴヌクレオチドレベルで、少なくとも88%同一である核酸分子にコードされる、改変体;
配列番号1または配列番号2の天然に存在する対立遺伝子改変体のポリペプチドフラグメントであって、該フラグメントは、配列番号1または配列番号2のうちの少なくとも15個の連続するアミノ酸を含む、フラグメント;および
配列番号1または配列番号2のリガンド結合部位を模倣するのに十分な様式で連結される、配列番号1または配列番号2のポリペプチドフラグメントを含むキメラポリペプチド
からなる群より選択される少なくとも1つの因子を含み、そして該治療剤は、配列番号1または配列番号2のリガンド結合活性を示す、方法。
【請求項5】
肝細胞癌を処置または予防する方法であって、該方法は、治療部分に結合体化または連結された標的化因子を含む治療化合物を、該処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含し、該標的化因子は配列番号1〜7からなる群より選択されるポリペプチドに結合し、そして該治療部分は細胞毒性または細胞増殖抑制性である、方法。
【請求項6】
前記標的化因子が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖Fv、Fabフラグメント、Fab(2)フラグメント、ミニボディまたはドメイン欠失抗体;二機能性キメラ抗体分子;サイトカイン、ケモカイン、増殖因子または他の天然に存在するリガンド;ならびに合成分子からなる群より選択される、少なくとも1つの治療部分を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記治療部分が、抗生物質;毒素;アポトーシス因子;代謝拮抗薬;増殖因子またはサイトカイン;RNase;および抗脈管形成因子のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
肝細胞癌を処置または予防する方法であって、該方法は、配列番号1〜7からなる群より選択される、少なくとも1つのポリペプチドの生理的なレベルを減少させる治療剤を、該処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項9】
前記治療剤が、遺伝子の発現または前記少なくとも1つのポリペプチドをコードする、それぞれのmRNAの翻訳を阻害するために投与されるアンチセンスポリヌクレオチドである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アンチセンス分子が、前記少なくとも1つのポリペプチドをコードする配列と相補的である、少なくとも10個の連続するヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アンチセンス分子が、ペプチドポリ核酸または非核酸ポリマーであり、該アンチセンス分子が、前記少なくとも1つのポリペプチドの少なくとも10個の連続するヌクレオチドと相補的である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記非核酸ポリマーが、ホスホロチオネート誘導体、モルホリノオリゴヌクレオチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記治療剤がリボザイムである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
肝細胞癌を処置または予防する方法であって、該方法は、被験体においてヒスチジンアンモニアリアーゼ活性を増加させるために、治療剤を、該処置または予防を必要とする該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
前記治療剤が、配列番号8のポリペプチドと少なくとも88%の配列同一性を有する、少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントをコードするポリヌクレオチドである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記治療剤が、配列番号8のポリペプチドと少なくとも88%の配列同一性を有する、少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
肝細胞癌(HCC)を処置または予防する方法であって、該方法は、抗ヒスタミン薬である治療剤を、該処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法であって、以下:化学療法剤を投与する工程;放射線治療を施す工程;外科切除術または肝移植を施す工程;ラジオ波焼灼療法を施す工程;冷凍外科を施す工程;エタノール切除を施す工程;および塞栓形成を施す工程、からなる群より選択される少なくとも1つの工程をさらに包含する、方法。
【請求項19】
予防的に実施される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
肝細胞癌の処置または予防のための治療剤の同定のための方法であって、該方法は、
a)配列番号1〜5からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドと、試験化合物とを接触させる工程;そして
b)1つ以上の適切なアッセイを使用して、コントロールとの比較により、該少なくとも1つのポリペプチドの活性に対する該試験化合物の効果を決定し、該少なくとも1つのポリペプチドの活性を調節する試験化合物を同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項21】
b)における決定する工程が、前記少なくとも1つのポリペプチドへの前記試験化合物の結合を検出する工程を包含し、該結合が、以下;該少なくとも1つのポリペプチドへの該試験化合物の結合の直接検出;競合結合アッセイ;および該少なくとも1つのポリペプチドにより媒介される活性についてのアッセイからなる群より選択される、少なくとも1つの方法により検出される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
肝細胞癌(HCC)を処置または予防するのに適切な少なくとも1つの因子と、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを組み合わせて含む、薬学的組成物であって、該因子が以下;
配列番号1〜7からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドに特異的な抗体または抗体試薬;
配列番号9〜13からなる群より選択される少なくとも1つの配列に特異的なアンチセンス分子;
配列番号9〜12からなる群より選択される少なくとも1つの配列に特異的なsiRNA因子;
配列番号1〜7からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドに対応する可溶性レセプター;および
HALをコードするポリヌクレオチド、
からなる群より選択される、薬学的組成物。
【請求項23】
肝細胞癌(HCC)を処置または予防するための医薬の調製における、請求項22に記載の薬学的組成物の使用。

【公表番号】特表2007−534772(P2007−534772A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510987(P2007−510987)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/014668
【国際公開番号】WO2005/104785
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506139417)イルミジェン バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】