説明

ヒトCD20に対するヒト抗体及びその使用方法

ヒトCD20に特異的に結合し、そして補体依存性細胞傷害活性(CDC)を誘導することができ、そしてヒトリンパ腫のマウスモデルにおいてコントロールで処置された動物と比較して約2倍から約9倍の間に無症状生存時間を増加させることができる、ヒト抗体又は抗体の抗原結合フラグメント。本抗体又はその抗原結合フラグメントは、CD20媒介疾患又は状態、例えば非ホジキンリンパ腫、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病、慢性リンパ性白血病、及び炎症性疾患を処置するための治療方法において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトCD20に特異的なヒト抗体及び抗体フラグメント、医薬組成物、並びにその治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の記述
CD20(ヒトBリンパ球限定分化抗原又はBp35;Bリンパ球表面抗原B1、Leu−16、BM5、及びLF5としても知られる)は、約35kDの分子量を有し、プレ−Bリンパ球及び成熟Bリンパ球に発現される疎水性膜貫通タンパク質である(非特許文献1;非特許文献2)。ヒトCD20のアミノ酸配列は、配列番号1(GenBank登録番号NP_690605)で示される。抗CD20抗体は、例えば特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載される。
【0003】
ヒト治療薬として有用な抗体を製造する方法としては、キメラ抗体及びヒト化抗体の生成(例えば特許文献4を参照のこと)が挙げられる。また例えば、ヒト治療薬を製造するために有用な抗体を産生することができる遺伝子改変されたマウスを生成する方法を記載する特許文献5及び特許文献6も参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 5,736,137
【特許文献2】WO 2004/056312
【特許文献3】US 2004/0167319
【特許文献4】US 6,949,245
【特許文献5】WO 94/02602
【特許文献6】US 6,596,541
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Valentine et al. (1989) J Biol Chem 264:11282
【非特許文献2】Einfield et al. (1988) EMBO J 7:711−717
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第一の局面において、本発明は、ヒトCD20に特異的に結合するヒト抗体、好ましくは組み換えヒト抗体を提供する。これらの抗体は、ヒトCD20に特異的に結合すること、及びCD20を発現しているB細胞リンパ腫細胞の殺傷を媒介することを特徴とする。本抗体は、全長(例えば、IgG1又はIgG4抗体)であり得、又は抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)2又はscFvフラグメント)のみを含んでいてもよく、そして機能性を達成するために、例えば残留エフェクタ機能を排除又は増強するために改変されていてもよい(Reddy et al.(2000)J.Immunol.164:1925−1933)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトCD20に特異的に結合し、そして補体の存在下でCD20を発現している細胞の補体依存性細胞傷害活性(complement dependent cytotoxicity)(CDC)を誘導することができ、ここで濃度約10nM又はそれ以下の抗体が、補体を含む5%正常ヒト血清の存在下でDaudi細胞及びRL細胞の50%溶解を誘導する。好ましい実施態様において、50%溶解を誘導する抗体濃度は、約5nM若しくはそれ以下;約2nM若しくはそれ以下;又は約1nM若しくはそれ以下である。一実施態様において、本抗体又はそのフラグメントは、Daudi細胞において測定された場合に0.2nM若しくはそれ以下のEC50を示し、又はRL細胞により測定された場合に0.4nM若しくはそれ以下のEC50を示す。種々の実施態様において、本抗体又は抗体フラグメントは、ヒトリンパ腫のマウスモデルにおいてコントロールで処置された動物と比較して無症状生存時間を約2倍から約9倍の間に増加することができる。
【0008】
本抗体又はそのフラグメントは、ヒトCD20に特異的に結合し、そして末梢血単核球(PBMC)の存在下でCD20を発現している細胞の抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を誘導することができ、ここで本抗体は、Daudi細胞で測定された場合に約1nM又はそれ以下のEC50を示す。好ましい実施態様において、本抗体は約50pM又はそれ以下;約20pM又はそれ以下;約10pM又はそれ以下のEC50を示す。好ましい実施態様において、抗体は増強されたADCC活性を示し、減少したレベルのフコシル化(例えば約5%フコース)を含み得る。
【0009】
一実施態様において、本発明の抗体又は抗体の抗原結合部分は、配列番号3、19、23、27、43、47、51、67、71、75、91、95、99、115、119、123、139、143、147、163、167、171、187、191、195、211、215、219、235、239、243、259、263、267、283、287、291、307、311、315、331、335、339、355、359、363、379、383、387、395、及び403からなる群より選択される重鎖可変領域(HCVR)配列、又はその実質的に類似の配列を含む。好ましい実施態様において、本抗体又はフラグメントは、配列番号339、195及び243からなる群より選択されるHCVR配列を含む。
【0010】
より特定の実施態様において、本抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号11、21、25、35、45、49、59、69、73、83、93、97、107、117、121、131、141、145、155、165、169、179、189、193、203、213、217、227、237、241、251、261、265、275、285、289、299、309、313、323、333、337、347、357、361、371、381及び385からなる群より選択される軽鎖可変領域(LCVR)配列、又はその実質的に類似の配列をさらに含む。好ましい実施態様において、本抗体又はフラグメントは、配列番号347、203及び251からなる群より選択されるLCVRを含む。
【0011】
特定の実施態様において、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号3/11、19/21、23/25、27/35、43/45、47/49、51/59、67/69、71/73、75/83、91/93、95/97、99/107、115/117、119/121、123/131、139/141、143/145、147/155、163/165、167/169、171/179、187/189、191/193、195/203、211/213、215/217、219/227、235/237、239/241、243/251、259/261、263/265、267/275、283/285、287/289、291/299、307/309、311/313、315/323、331/333、335/337、339/347、355/357、359/361、363/371、379/381及び383/385からなる群より選択されるHCVR/LCVR配列対を含む。好ましい実施態様において、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号339/347、195/203及び243/251からなる群より選択されるHCVR/LCVR配列対を含む。
【0012】
第二の局面において、本発明は、抗体又はそのフラグメントをコードする単離された核酸分子を提供する。特定の実施態様において、本核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号2、18、22、26、42、46、50、66、70、74、90、94、98、114、118、122、138、142、146、162、166、170、186、190、194、210、214、218、234、238、242、258、262、266、282、286、290、306、310、314、330、334、338、354、358、362、378、382、386、394及び402からなる群より選択されるHCVR、又はその実質的に同一な配列をコードする。関連の局面において、本発明は、ヌクレオチド配列が配列番号10、20、24、34、44、48、58、68、72、82、92、96、106、116、120、130、140、144、154、164、168、178、188、192、202、212、216、226、236、240、250、260、264、274、284、288、298、308、312、322、332、336、346、356、360、370、380及び384からなる群より選択されるLCVR、又はその実質的に同一な配列をコードする単離された核酸分子を提供する。好ましい実施態様において、本抗体又は抗体フラグメントは、それぞれ配列番号338、194及び242からなる群より選択される核酸分子によりコードされるHCVR、並びに配列番号346、202及び250からなる群より選択される核酸分子によりコードされるLCVRを含む。
【0013】
第三の局面において、本発明は、配列番号9、33、57、81、104、129、153、177、201、225、249、273、297、321、345、369、393、401及び409からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);並びに配列番号17、41、65、89、113、137、161、185、209、233、257、281、305、329、353及び377からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、抗体又はその抗原結合フラグメントを特徴とする。好ましい実施態様において、本抗体又はそのフラグメントは、HCDR3/LCDR3配列対 配列番号345/353、201/209及び249/257から選択されるHCDR3及びLCDR3配列を含む。
【0014】
より特定の実施態様において、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号5、29、53、77、101、125、149、173、197、221、245、269、293、317、341、365、389、397及び405からなる群より選択される重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン配列;配列番号7、31、55、79、103、127、151、175、199、223、247、271、295、319、343、367、391、399及び407からなる群より選択される重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン配列;配列番号13、37、61、85、109、133、157、181、205、229、253、277、301、325、349及び373からなる群より選択される軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン配列;並びに配列番号15、39、63、87、111、135、159、183、207、231、255、279、303、327、351及び375からなる群より選択される軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン配列をさらに含む。好ましい実施態様において、本抗体又はそのフラグメントは、それぞれ配列番号341、343、345、349、351及び353;197、199、201、205、207及び209;並びに245、247、249、253、255及び257からなる群より選択される重鎖CDR配列及び軽鎖CDR配列を含む。
【0015】
第四の局面において、本発明は、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子を特徴とし、ここでHCDR3ドメイン及びLCDR3ドメインをコードする核酸分子は、それぞれ配列番号9及び16;33及び41;57及び65;81及び89;104及び113;129及び137;153及び161;177及び185;201及び209;225及び233;249及び257;273及び281;297及び305;321及び329;345及び353;並びに369及び377からなる群より選択される。
【0016】
第五の局面において、本発明は、HCDR3ドメイン及びLCDR3ドメインを含む抗体又は抗原結合フラグメントを特徴とし、ここでHCDR3ドメインは式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19(配列番号412)[式中、X1=A、V又はT;X2=K;X3=D;X4=P、F又はG;X5=S又はH;X6=Y;X7=G;X8=S又はH;X9=G又はF;X10=S又はY;X11=Y、N又はS;X12=Y、G又はH;X13=G、L又はS;X14=Y、M又はD;X15=Y、D又はV;X16=G、V又は存在しない;X17=M又は存在しない;X18=D又は存在しない;X19=V又は存在しない]のアミノ酸配列を含み;そしてLCDR3ドメインは、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号415)、[式中、X1=Q;X2=Q;X3=R又はS;X4=N、Y又はF;X5=N、D、又はY;X6=W;X7=P;X8=L;X9=T]のアミノ酸配列を含む。
【0017】
より特定の実施態様において、本抗体又は抗原結合フラグメントは、重鎖及び軽鎖CDR1及びCDR2ドメインをさらに含み、ここでHCDR1ドメインは式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号410)[式中、X1=G;X2=F又はI;X3=T;X4=F;X5=H、R又はY;X6=D;X7=Y;X8=T又はA]のアミノ酸配列を含み;HCDR2ドメインは、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号411)[式中、X1=I;X2=S;X3=W;X4=N;X5=S;X6=G又はD;X7=S、Y又はT;X8=I又はL]のアミノ酸配列を含み;LCDR1ドメインは、式X1−X2−X3−X4−X5−X6(配列番号413)[式中、X1=Q;X2=S;X3=V又はI;X4=S;X5=S又はR;X6=Y又はN]のアミノ酸配列を含み;そしてLCDR2ドメインは、式X1−X2−X3(配列番号414)[式中、X1=E、G又はV;X2=A;X3=S]のアミノ酸配列を含む。
【0018】
第六の局面において、本発明は、本発明の核酸分子を有する組み換え発現ベクター、及びこのようなベクターが導入された宿主細胞、さらには本発明の宿主細胞を培養することにより得られる本発明の抗体又はそのフラグメントの製造方法を提供する。宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよく、好ましくは宿主細胞はE.coli細胞又は哺乳動物細胞、例えばCHO細胞である。好ましい実施態様において、抗体は種々の量のフコシル化を用いて製造され得る。例えば、CHO細胞株は、最小約5%から最大約95%までのフコシル化範囲を有する抗体又は抗体フラグメントを産生するように選択され得る。
【0019】
第七の局面において、本発明は、抗ヒトCD20抗体又はそのフラグメント及び薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物を特徴とする。
【0020】
第八の局面において、本発明は、細胞結合実験(以下に記載される)により測定した場合に、約10nM未満のEC50でヒトCD20に結合することができる、完全なヒト抗体又は抗体フラグメントを特徴とする。好ましい実施態様において、本発明の抗体は、細胞表面に提示された抗原に対する結合により測定した場合に、約10-8〜約10-12M若しくはそれ以上、例えば少なくとも10-8M、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M、少なくとも10-11M、又は少なくとも10-12MのEC50を示す。
【0021】
本発明は、改変されたグリコシル化パターンを有する抗CD20抗体を包含する。いくつかの用途では、望ましくないグリコシル化部位を除去する改変が有用であり得、又は例えば抗体依存性細胞障害活性(ADCC)機能(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照のこと)を増加させるためにオリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠損した抗体が有用であり得る。他の用途において、ガラクトシル化の改変が、補体依存性細胞障害活性(CDC)を改変するために行われ得る。
【0022】
第九の局面において、本発明は、ヒトにおいてCD20媒介疾患又は状態を軽減又は抑制するための使用のための、上記の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを特徴とする。好ましい実施態様において、処置される疾患又は状態は、非ホジキンリンパ腫、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病、慢性リンパ性白血病、及び炎症性疾患である。関連の実施態様において、本発明は、ヒトにおいてCD20媒介疾患又は状態を軽減又は抑制する方法を包含し、この方法は、治療有効量の、上記の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを投与することを含む。さらに本発明は、ヒトにおいてCD20媒介疾患又は状態を低減又は抑制するための使用のための医薬の製造における、本発明の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの使用を包含する。
【0023】
他の目的及び利点は、次の詳細な説明を検討することにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】無症状生存曲線。結果をヒトFcコントロール、コントロール抗体I及びII、並びに抗体:8G6−5、9D4−7、10F2−13、及び7E1−13について示す。
【0025】
詳細な説明
本方法を記載する前に、当然のことながら、本発明は、記載される特定の方法及び実験条件に限定されず、そのようなものとして方法及び条件は変動し得る。また当然のことながら、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲にのみ限定されるので、本明細書中で使用される用語は、特定の実施態様を記載する目的のみであり、限定することを意図されない。
【0026】
別に規定がなければ、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は等価であるあらゆる方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料がここで記載される。
【0027】
定義
用語「CD20」は、ヒトCD20の変異体及びアイソフォームを含み、これらは天然で細胞により発現される。本発明の抗体のCD20抗原に対する結合は、CD20を発現している細胞(例えば腫瘍細胞)の死滅を媒介する。CD20を発現している細胞の死滅は、CD20を発現している細胞の補体依存性細胞傷害活性(CDC)、CD20を発現している細胞のアポトーシス、CD20を発現している細胞のエフェクター細胞ファゴサイトーシス、又はCD20を発現している細胞のエフェクター細胞抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を含む多数の様式で起こり得る。
【0028】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、ジスルフィド結合で相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を指すことを意図される。重鎖はそれぞれ重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。軽鎖はそれぞれ、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を構成する。VH領域及びVL領域は、超多様性(hypervariability)領域、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる領域、より保存された領域が点在している領域、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域にさらに細分することができる。VH及びVLはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0029】
用語抗体の「抗原結合部分」(又は簡単に「抗体部分」又は「抗体フラグメント」)は、本明細書で使用される場合、抗原(例えば、hCD20)に特異的に結合する能力を保持している抗体の1つ又はそれ以上のフラグメントを指す。全長抗体のフラグメントが抗体の抗原結合機能を果たし得ることが示されている。用語抗体の「抗原結合部分」内に包含される結合フラグメントの例としては、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL1及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii) F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのF(ab)’フラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アーム(single arm)のVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;(v)dAbフラグメント(Ward et al.(1989)Nature 241:544−546)、(これはVHドメインからなる);並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別の遺伝子にコードされるが、これらは組み換え法を使用して、それらをVL及びVH領域が対になって一価分子を形成する単一の連続した鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423−426;及びHuston et al.(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−5883を参照のこと)として作成されることを可能にする合成リンカーにより連結することができる。このような単鎖抗体もまた、用語抗体の「抗原結合部分」に包含されることを意図される。単鎖抗体の他の形態、例えば二重特異性抗体(diabodies)もまた包含される(例えばHolliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444−6448を参照のこと)。
【0030】
「CDR」又は相補性決定領域は、より保存された、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる領域内に点在する超多様性の領域である。本発明の抗hCD20抗体又はフラグメントの種々の実施態様において、FRはヒト生殖細胞配列と同一であってもよく、又は天然若しくは人工的に改変されていてもよい。
【0031】
用語「表面プラズモン共鳴」は本明細書で使用される場合、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を、例えばBIACORETMシステム(Pharmacia Biosensor AB)を使用して検出することによりリアルタイムの相互作用を分析することを可能にする光学現象を指す。
【0032】
用語「エピトープ」とは、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域において特定の抗原結合部分と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は1つより多くのエピトープを有し得る。エピトープは立体構造型(conformational)であっても線状であってもよい。立体構造型(conformational)エピトープは、1つ(又はそれ以上)の線状ポリペプチド鎖の異なる部分からの空間的に並列したアミノ酸により形成される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接したアミノ酸残基により形成されるエピトープである。特定の状況では、エピトープは抗原上に他の部分、例えば糖鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基を含み得る。
【0033】
核酸又はそのフラグメントに言及する場合の用語「実質的な同一性」又は「実質的に同一」は、別の核酸(又はその相補鎖)と、適切なヌクレオチド挿入又は欠損を伴って最適に整列した場合に、以下で考察されるように、あらゆる周知の配列同一性アルゴリズム、例えばFASTA、BLAST又はGAPで測定された場合に、少なくとも約95%、及びより好ましくは少なくとも約96%、97%、98%又は99%のヌクレオチド塩基においてヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。
【0034】
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な類似性」又は「実質的に類似」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップ加重を使用して例えばプログラムGAP又はBESTFITにより最適に整列された場合に、少なくとも95%配列同一性、なおさらに好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学特性(例えば電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換されているものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化しない。2つ又はそれ以上のアミノ酸配列が互いに保存的置換により異なっている場合には、類似性のパーセント又は程度は、置換の保存的性質を修正するために上方調節され得る。この調節を行う手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994) Methods Mol.Biol.24:307−331を参照のこと。類似の化学特性を有する側鎖を有するアミノ酸のグループの例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;2)脂肪族−ヒドロキシ側鎖:セリン及びトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、並びに7)硫黄含有側鎖:システイン及びメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換グループは:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、及びアスパラギン−グルタミンである。あるいは、保存的置換は、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443 45に開示されるPAM250対数尤度マトリクスにおいて正の値を有するあらゆる変化である。「中程度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度マトリクスにおいて負でない値を有するあらゆる変化である。
【0035】
ポリペプチドについての配列類似性は、典型的に配列解析ソフトウエアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウエアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠損及び他の変更に帰属される類似性の指標を使用して類似の配列をマッチングする。例えば、GCGソフトウエアは、密接に関連するポリペプチド(例えば異なる生物種からの同族ポリペプチド)の間、又は野生型タンパク質とその突然変異タンパク質との間の配列相同性又は配列同一性を決定するためのデフォルトパラメーターと共に使用することができるGAP及びBESTFITのようなプログラムを含む。例えば、GCG バージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列はまた、デフォルト又は推奨のパラメーターを用いてFASTAを使用して比較することができる;GCG バージョン6.1.FASTAのプログラム(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリー配列と検索配列との間の最大オーバーラップの領域の整列及び配列同一性パーセントを提供する(Pearson(2000)既出)。本発明の配列を異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTP又はTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403 410及びAltschul et al.(1997) Nucleic Acids Res.25:3389 402を参照のこと。
【0036】
用語「有効量」は、特定の記載された目的の達成をもたらす、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの濃度又は量である。「有効量」の抗CD20抗体又はその抗体の抗原結合フラグメントは、実験的に決定され得る。さらに、「治療有効量」は、記載された治療効果を達成するために有効である、抗CD20抗体又はその抗原結合フラグメントの濃度又は量である。この量もまた、実験的に決定され得る。
【0037】
ヒト抗体の製造
ヒト抗体を生成する方法としては、例えば、VelocImmuneTM(Regeneron Pharmaceuticals)、XenoMouseTM技術(Green et al.(1994)Nature Genetics 7:13−21;Abgenix)、「小遺伝子座(minilocus)」アプローチ、及びファージディスプレイ(及び例えば、US5,545,807、US6,787,637を参照のこと)が挙げられる。VelocImmuneTM技術(US6,596,541)は、選択抗原に対する高特異性完全ヒト抗体を生成する方法を包含する。この技術は、マウスが抗原刺激に応じてヒト可変領域及びマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内因性マウス定常領域遺伝子座と操作可能に(operably)連結されたヒト重鎖及び軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成を含む。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、そしてヒト重鎖及び軽鎖定常領域をコードするDNAに操作可能に連結させる。次いでこのDNAを完全ヒト抗体を発現することができる細胞で発現させる。特定の実施態様において、この細胞はCHO細胞である。
【0038】
抗体は、補体結合による細胞の死滅(CDC)及び参加(participation)抗体依存性細胞媒介細胞傷害活性(ADCC)よりもむしろ、リガンド−受容体相互作用の遮断又は受容体構成要素相互作用の阻害において治療上有用であり得る。抗体の定常領域は、補体に結合して細胞依存性細胞傷害活性を媒介する抗体の能力において重要である。従って、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害活性を媒介することが望ましいか否かに基づいて選択され得る。
【0039】
ヒト免疫グロブリンは、ヒンジ異質性(heterogeneity)に関連する2つの形態で存在することができる。一方の形態では、免疫グロブリン分子は、ダイマーが鎖間重鎖ジスルフィド結合により一緒に保持されている約150−160kDaの安定な四鎖構築物を含む。第二の形態では、ダイマーは鎖間ジスルフィド結合を介して連結しておらず、約75−80kDaの分子が、共有結合で結合した軽鎖及び重鎖から構成されて形成される(半抗体(half−antibody))。これらの形態は、アフィニティ精製後でさえ、分離することが非常に困難である。種々のインタクトなIgGアイソタイプにおける第二の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造的な差異に起因するがこれに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、第二の形態(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)の出現を、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルまで有意に減少させることができる。本発明は、ヒンジ、CH2又はCH3領域において1つ又はそれ以上の変異を有する抗体を包含し、これは、例えば所望の抗体形態の収量を改善するために、製造において望ましいかもしれない。
【0040】
本発明の抗体は、好ましくはVelocImmuneTM技術を使用して製造される。内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖可変領域が対応するヒト可変領域で置き換えられているトランスジェニックマウスに目的の抗原をチャレンジし、そして抗体を発現するマウスからリンパ細胞(例えばB細胞)を回収する。このリンパ細胞を骨髄腫細胞株に融合させて不死ハイブリドーマ細胞株を調製し得、そしてこのようなハイブリドーマ細胞株を、目的の抗原に対して特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するためにスクリーニングして選択する。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAは、単離されて重鎖及び軽鎖の所望のアイソタイプ定常領域に連結され得る。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞で産生され得る。あるいは、抗原特異的キメラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変ドメインをコードするDNAは、抗原特異的リンパ球から直接単離され得る。
【0041】
一般に、本発明の抗体は、非常に高い親和性を有しており、細胞表面に提示された抗原に対する結合により測定した場合に、典型的には約10-8から約10-12M若しくはそれ以上、例えば、少なくとも10-8M、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M、少なくとも10-11M、又は少なくとも10-12MのKD又はEC50を有する。
【0042】
最初に、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。以下に記載されるように、これら抗体を特徴付けし、そして親和性、選択性、エピトープなどの所望の特徴について選択する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域と置き換えて本発明の完全ヒト抗体を生成する、例えば野生型又は改変されたIgG1又はIgG4(例えば、配列番号416、417、418)。選択された定常領域は特定の用途に従って変化し得るが、高親和性抗原結合及び標的特異性の特徴は、可変領域に存在する。
【0043】
エピトープマッピング及び関連技術
特定のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、「Antibodies:A Laboratory Manual」 1988 Cold Spring Harbor Laboratory、Harlow及びLane編、に記載されるような慣用の交差遮断(cross−blocking)アッセイを行うことができる。他の方法としては、アラニン走査変異体(alanine scanning mutants)、ペプチドブロット(Reineke (2004)Methods Mol Biol 248:443−63)、又は以下の実施例に記載されるようなペプチド切断分析が挙げられる。さらに、エピトープ切り出し、エピトープ抽出及び抗原の化学修飾のような方法を使用することができる(Tomer(2000)Protein Science:9:487−496)。
【0044】
抗体の結合特性を確認するために、選択されたアミノ酸置換からなる変異体CD20タンパク質を構築した。変異体CD20タンパク質は、ヒトタンパク質に存在する特定のアミノ酸の、マウスタンパク質に存在する対応するアミノ酸での置換を含んでいた。このアプローチは、変異体CD20タンパク質がそれらの三次元構造、そしておそらくあらゆる立体構造型エピトープを維持することを確実にするのに役立つ。FACSにより測定した場合に、試験抗体のこれらの変異体CD20タンパク質に対する結合を、コントロール(既知)CD20抗体と比較した。本発明の抗体のいずれも、(それぞれ及び全ての変異体に関して)コントロール抗体のいずれかと同一である結合プロフィールを示さなかった。
【0045】
免疫複合体
本発明は、治療部分、例えば細胞毒素、化学療法薬、免疫抑制剤又は放射性同位体に結合したヒト抗CD20モノクローナル抗体(「免疫複合体」)を包含する。細胞毒素剤は、細胞に有害なあらゆる薬剤を含む。免疫複合体を形成するために適切な細胞毒素剤及び化学療法薬の例は、当該分野で公知であり、例えばWO05/103081を参照のこと。
【0046】
二重特異性
本発明の抗体は、単一特異性でも、二重特異性でも、多重特異性でもよい。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープについて特異的であっても、1つより多くの標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含んでいてもよい。例えば、Tutt et al.(1991)J.Immunol.147:60−69を参照のこと。ヒト抗CD20抗体は、別の機能的分子、例えば別のペプチド若しくはタンパク質に連結又は別のペプチド若しくはタンパク質と同時発現(co−expressed)してもよい。例えば、抗体又はそのフラグメントは、1つ又はそれ以上の他の分子実体、例えば別の抗体又は抗体フラグメントに、(例えば化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合又はその他により)機能的に連結されて、第二の結合特異性を有する二重特異性又は多重特異性抗体を生じ得る。本発明の多重特異性抗体は、CD20を発現している細胞、並びにポリペプチド、例えばヒトFc受容体、及び/又はT細胞受容体複合体(complex)を発現しているヒトエフェクター細胞の両方に特異的に結合し得る。一実施態様において、本発明の多重特異性抗体は、CD20結合部分及びサイトカインを含む。
【0047】
治療用途
本発明のヒト抗体、抗体の抗原結合フラグメント、免疫複合体、及び二重特異性分子は、CD20を発現している細胞の成長を阻害すること及び/又はCD20を発現している細胞を死滅させることにより抑制又は改善されるヒト疾患を処置するための治療方法において有用である。本発明の治療方法が達成される作用機序には、例えば、CDC、アポトーシス、ADCC、ファゴサイトーシス、又は2つ若しくはそれ以上のこれらの機序の組み合わせによる、エフェクター細胞の存在下でのCD20を発現している細胞の死滅が含まれる。本発明の分子の治療効果を達成するための機序は、CD20を発現している細胞の死滅又は阻害を直接的に生じても、間接的に、CD20を発現していない、例えば構造的に関連した細胞表面抗原(すなわち、関連するが機能的に異なる細胞表面抗原に対する交差反応性はない)を発現する細胞を阻害することにより生じてもよい。本発明のヒト抗体を使用して阻害又は死滅することができる、CD20を発現している細胞としては、例えば腫瘍形成性B細胞が挙げられる。
【0048】
抗CD20抗体及びそのフラグメントを用いて処置又は改善することができる疾患及び状態の例としては、限定されないが、腫瘍形成性疾患、例えばB細胞リンパ腫(NHL、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫、成熟B細胞新生物、B細胞慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性(prolymphocytic)白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、皮膚濾胞中心リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、プラスマ細胞腫、プラスマ細胞骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、及び未分化大細胞リンパ腫);免疫疾患、例えば自己免疫疾患(乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎、全身性強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、糸球体腎炎、湿疹、ぜんそく、アテローム性動脈硬化症、白血球接着不全、多発性硬化症、レイノー症候群、シェーグレン症候群、若年発症糖尿病、ライター病、ベーチェット病、免疫複合体性腎炎、IgAネフロパシー、IgM多発ニューロパシー);免疫性の血小板減少、急性特発性血小板減少性紫斑病及び慢性特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、重症筋無力症、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、オーメン症候群、慢性腎不全、急性伝染性単核球症、HIV、及びヘルペスウイルス関連疾患;重症急性呼吸促迫症候群及び脈絡網膜炎(choreoretinitis);エプスタイン−バーウイルスのようなウイルスへのB細胞の感染により引き起こされる疾患及び障害が挙げられる。
【0049】
特定の実施態様において、抗体を投与される被験体は、Fc受容体の発現又は活性を調節する(増強又は阻害する)化学療法剤、放射線又は薬剤、例えばサイトカインでさらに処置される。処置の間の投与に典型的なサイトカインとしては、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−ガンマ(IFN−()、及び腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。典型的な治療剤としては、とりわけ、抗腫瘍剤、例えばドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、及びシクロホスファミドが挙げられる。
【0050】
治療用投与及び製剤
本発明は、本発明のヒト抗CD20抗体又はその抗原結合フラグメントを含む治療用組成物を提供する。本発明に従う治療用組成物は、適切な担体、賦形剤、及び製剤中に組み込まれて改善された移動、送達、耐性などをもたらす他の薬剤とともに投与される。一般に、担体、賦形剤、又は他の薬剤としては、例えば、油脂(例えば、菜種油、綿実油、落花生油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油)、脂肪酸並びにその塩及びエステル(例えば、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸)、アルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール、例えば、PEG 3350)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80)、ゼラチン、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、塩(例えば、塩化ナトリウム)、コハク酸及びその塩(例えば、コハク酸ナトリウム)、アミノ酸及びその塩(例えば、アラニン、ヒスチジン、グリシン、アルギニン、リジン)、酢酸又はその塩若しくはエステル(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム)、クエン酸及びその塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、安息香酸及びその塩、リン酸及びその塩(例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)、乳酸及びその塩、ポリ乳酸、グルタミン酸及びその塩(例えば、グルタミン酸ナトリウム)、カルシウム及びその塩(例えば、塩化カルシウム、酢酸カルシウム)、フェノール、糖質(例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース)、エリトリトール、アラビトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80)、イオン性界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、クロロブタノール、DMSO、水酸化ナトリウム、グリセリン、m−クレゾール、イミダゾール、プロタミン、亜鉛及びその塩(例えば、硫酸亜鉛)、チメロサール、メチルパラベン、プロピルパラベン、カルボキシメチルセルロース、クロロブタノール、及びヘパリンを挙げることができる。他の非治療用薬剤は、US7,001,892にて特に表Aに記載される。多数の適切な製剤は、全ての薬化学者に公知の処方集:Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company、Easton、Pa)に見いだされ得る。これらの製剤としては、例えば、散剤、ペースト、軟膏、ゼリー、ロウ、油状物、脂質、脂質を含有する小胞(カチオン性又はアニオン性)(例えばLIPOFECTINTM)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油及び油中水乳剤、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル、及びカーボワックスを含有する半固形混合物を挙げることができる。前述の混合物のいずれも本発明による処置及び治療において適切であり得るが、ただし製剤中の活性成分は、製剤化により不活性化されず、そして製剤は生理学的に適合性であり、そして投与経路に許容しうるものである。薬化学者に周知の賦形剤及び担体に関連するさらなる情報については、Powell et al.PDA(1998)J Pharm Sci Technol.52:238−311及びその中の引用も参照のこと。
【0051】
治療用組成物の用量は、投与される被験体の年齢及び大きさ、標的の疾患、状態、投与経路などに依存して変動し得る。本発明の抗体が、成人患者においてCD20活性に関連する種々の状態及び疾患(非ホジキンリンパ腫、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病、慢性リンパ性白血病、炎症性疾患などを含む)を処置するために使用される場合、本発明の抗体を、通常約0.01〜約20mg/体重1kg、好ましくは約0.1〜約10mg/体重1kg、そしてより好ましくは約0.1〜約5mg/体重1kgの単回用量で静脈内に投与することが有利である。状態または疾患の重篤度に依存して、処置の頻度及び持続時間を調節することができる。他の非経口投与及び経口投与において、本抗体を上記に示される用量に相当する用量で投与することができる。
【0052】
種々の送達系が知られており、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができる、例えば、リポソーム中のカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu et al.(1987)J.Biol.Chem.262:4429−4432を参照のこと)。導入方法としては、限定されないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口の経路が挙げられる。本組成物は、あらゆる都合の良い経路により、例えば注入又はボーラス注射により、上皮又は粘膜皮膚内層を通る吸収により(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤とともに投与され得る。投与は好ましくは全身でも局所的でもよい。
【0053】
本医薬組成物はまた、小胞で、特にリポソーム(Langer(1990)Science 249:1527−1533を参照のこと)で送達され得る。特定の状況において、本医薬組成物は、制御放出システムで送達することができる。一実施態様において、ポンプを使用してもよい(Langer、既出;Sefton(1987)CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201)。別の実施態様において、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release、Langer及びWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Florida (1974);Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、Smolen及びBall (編)、Wiley、New York (1984)を参照のこと。さらに別の実施態様において、制御放出システムは、組成物の標的の近位に配置することができ、従って全身用量の一部しか必要としない(例えば、Goodson、in Medical Applications of Controlled Release、既出、vol.2、pp.115−138、1984を参照のこと)。
【0054】
注射可能製剤は、静脈内、皮下、皮内及び筋内の注射、点滴などのための投薬形態を含み得る。これらの注射可能製剤は、公知の方法により製造され得る。例えば、注射可能製剤は、例えば上記の抗体又はその塩を、注射用に従来使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中に溶解、懸濁又は乳化させることにより製造され得る。注射用の水性媒体としては、例えば生理食塩水、グルコース及び他の補助剤などを含有する等張液があり、これらは適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO−50(硬化ひまし油のポリオキシエチレン(50mol)付加体)]などと組み合わせて使用され得る。油性媒体としては、例えばごま油、大豆油などが使用され得、これらは、可溶化剤、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと組み合わせて使用され得る。このようにして製造された注射は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0055】
有利には、上記の経口又は非経口用途の医薬組成物は、活性成分の用量に適合させるために適した単回用量で投薬形態に調製される。このような単回用量の投薬形態としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射(アンプル)、坐剤などが挙げられる。含有される上述の抗体の量は、一般的に単回用量の投薬形態あたり約5〜500mgであり;特に注射の形態では、上述の抗体が約5〜100mg、そして他の投薬形態については約10〜250mg含有されることが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物を製造し、使用する方法の完全な開示及び記載を当業者に提供するために示されるものであり、本発明者らが彼らの発明と考えるものの範囲を限定することは意図されない。使用される数値(例えば量、温度など)に関して正確さを確実にしようとする努力がなされるが、いくらかの実験誤差及び偏差が存在するはずである。別に指示がなければ、部は質量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、そして圧力は大気圧又はその付近である。
【0057】
実施例1. ヒトCD20に対するヒト抗体の生成
齧歯動物を、当該分野で公知のいずれかの方法により免疫状態にすることができる(例えば、Harlow&Lane編(1988)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、New York;Malik and Lillehoj、Antibody techniques:Academic Press、1994、San Diegoを参照のこと)。一実施態様において、CD20を発現している細胞を、ヒトIg重鎖可変領域及びκ軽鎖可変領域の両方をコードするDNA座を有するマウスに(VelocImmuneTM、Regeneron Pharmaceuticals、Inc.;US6,596,541)、免疫応答を刺激するアジュバントとともに直接投与した。このようなアジュバントとしては、完全及び不完全フロイントアジュバント、MPL+TDMアジュバント系(Sigma)、又はRIBI(ムラミールジペプチド)を挙げることができる(Human Press、2000、Totawa、NJによるO’Hagan、Vaccine Adjuvantを参照のこと)。細胞表面でのヒトCD20の高い発現レベルを達成するために、マウス細胞株、MG87及び/又はNS/0細胞を、ヒトCD20をコードするプラスミドでトランスフェクトし、そして高レベルのCD20を発現している細胞を、FACS技術を使用して濃縮した。一実施態様では、CD20を、CD20遺伝子を含有するDNAプラスミドとして間接的に投与し、そしてCD20を宿主のタンパク質発現系を使用して発現させて、インビボで抗原タンパク質を産生する。両方のアプローチにおいて、最適な抗体免疫応答を得るために3〜4週間ごとにマウスにブースター注射を行った。1〜3倍段階希釈の血清サンプルを免疫アッセイにかける、以下に記載される細胞ベースの免疫アッセイにより、免疫応答をモニタリングした。血清力価を、バックグラウンドの2倍のアッセイシグナルを生じた血清サンプルの希釈として規定した。動物がそれらの最大免疫応答に達した場合に、抗体を発現しているB細胞を採取し、そしてマウス骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成した。
【0058】
実施例2. 抗原特異的ハイブリドーマのスクリーニング
一次スクリーニングにおいて、NS/0細胞(ATCC)を、ヒトCD20遺伝子でトランスフェクとし、高発現細胞(NS/0−hCD20細胞)をプールし、そして 一般に融合の約11〜14日後にハイブリドーマ−馴化培地中でのスクリーニングにおける使用のために培養液中に維持した。10%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640中のNS/0−hCD20細胞を、96ウェルポリ−D−リジンプレートにおいて1ウェルあたり50,000個の細胞の密度でプレーティングした。ハイブリドーマ−馴化培地を5倍希釈し、そして30分間細胞に結合させた。次いでこれらの細胞を、等体積の8%ホルムアルデヒドを加えて20分間プレートに固定し、続いて4回連続してPBST洗浄した。プレートを5%BSAと共に2時間室温(RT)でインキュベートした。洗浄した後、プレートに結合した抗体をHRP結合ヤギ抗マウスIgG Fcγ特異的ポリクローナル抗体とともに30分間インキュベートし、そしてプレートを、最終洗浄の後、3.3’,5.5’−テトラメチル−ベンジジン(TMB)基質(BD Pharmigen)を使用して現像した。HRP反応を、等体積の1Mリン酸を用いて停止した。抗体結合シグナルを、450nmにて光学濃度により測定した。NS/0親細胞(検出可能なCD20発現がない)をバックグラウンドコントロールとして使用して、非特異的細胞表面結合を有するハイブリドーマ上清を除いた。NS/0親細胞及びCD20を発現している細胞の両方に陽性のウェルを除いた。
【0059】
実施例3. CD20に対するヒト抗体の配列決定
配列決定の前に、抗原特異的ハイブリドーマ細胞を、MOFLOTMフローサイトメーターを使用して単一細胞サブクローニングした。可変軽鎖及び重鎖領域の配列決定を、標準的方法(例えば、US 2004/0167319A1を参照のこと)により行った。完全RNAを各ハイブリドーマ細胞株からRNEASYTMキット(Qiagen)を使用して調製した。cDNAをSMART RACETM cDNA増幅キット(Clonetech)を使用して調製した。HCVR及びLCVRのDNA配列を配列決定し、そして選択された抗体について得られたHCVR及びLCVRのアミノ酸配列を推定した(HCVR/LCVR配列番号):3B9−10N(3/11);3B9−10GSP(19/21);3B9−10FGL(23/25);9C11−14N(27/35);9C11−14GSP(43/45);9C11−14FGL(47/49);2B7−7N(51/59);2B7−7GSP(67/69);2B7−7FGL(71/73);2C11−4N(75/83);2C11−4GSP(91/93);2C11−4FGL(95/97);3H7−6N(99/107);3H7−6GSP(115/117);3H7−6FGL(119/121);5H2−17N(123/131);5H2−17GSP(139/141);5H2−17FGL(143/145);6B9−4N(147/155);6B9−4GSP(163/165);6B9−4FGL(167/169);6F6−1N(171/179);6F6−1GSP(187/189);6F6−1FGL(191/193);8G6−5N(「8G6−5」)(195/203);8G6−5GSP(211/213);8G6−5FGL(215/217);9C3−8N(219/227);9C3−8GSP(235/237);9C3−8FGL(239/241);9D4−7N(「9D4−7」)(243/251);9D4−7GSP(259/261);9D4−7FGL(263/265);9E4−20N(267/275);9E4−20GSP(283/285);9E4−20FGL(287/289);9H4−12N(291/299);9H4−12GSP(307/309);9H4−12FGL(311/313);10E3−17N(315/323);10E3−17GSP(331/333);10E3−17FGL(335/337);10F2−13N(“10F2−13”)(339/347);10F2−13GSP(355/357);10F2−13FGL(359/361);7E1−13N(363/371);7E1−13GSP(379/381);7E1−13FGL(383/385)。
【0060】
実施例4. 抗CD20抗体の抗原結合特異性
キメラ抗体を完全ヒトIgGに変換した後、特異的抗原結合特性を、HRP結合ヤギ抗hIgG Fc(特異的ポリクローナルを検出抗体として使用し、そしてDaudi細胞株(内因性CD20を発現する)を抗原源として使用したこと以外は、上記のプロトコールと同様のELISAプロトコールを用いて決定した。試験した抗体の全ては、約0.4nM〜約20nMの範囲のEC50値でDaudi細胞に特異的に結合した。
【0061】
完全ヒト抗CD20抗体の抗原結合特異性を、以下に記載されるようにフローサイトメトリーを使用してヒトCD20でトランスフェクトしたMG87細胞を用いて検証した。手短には、親MG87細胞及びヒトCD20でトランスフェクトしたMG87細胞を30分間4℃にて15のヒト抗体のそれぞれ及び2つのコントロール抗体とともにインキュベートし、続いてPE結合抗ヒトIgG 抗体とともにインキュベートした。結合をフローサイトメトリーにより評価した。蛍光強度を親細胞株及びコントロールアイソタイプ適合サンプルに対する結合と比較した。結果を表1に要約する。全ての抗体がヒトCD20トランスフェクトMG87細胞に結合したが、親MG87細胞に対する結合は見られず、抗体がCD20特異的であることを示した。コントロールI:キメラ(マウス/ヒト)抗CD20 mAb、リツキシマブ、(RITUXAN(登録商標)、IDEC Pharmaceuticals Corp.);コントロールII:ヒト抗CD20 mAb、2F2、WO 2005/103081に記載される)。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例5. 変異体ヒトCD20に対するヒト抗CD20抗体の結合
変異体ヒトCD20を、ヒトCD20アミノ酸配列を対応するマウスアミノ酸でStrategene Mutagenesisキットを使用して置換することにより生成した(表2)。次いで変異体ヒトCD20、CMVプロモーター、及びハイグロマイシン耐性遺伝子IRES−GFPマーカーを含むプラスミドベクターを、MG87細胞にトランスフェクトした。各変異体ヒトCD20について、高GFP発現を示したハイグロマイシン耐性細胞のプールを収集し、そして安定な細胞株を抗体結合アッセイのために生成した。
【0064】
【表2】

【0065】
手短には、変異体ヒトCD20を発現しているそれぞれの安定にトランスフェクトされた細胞株から約1×106個の細胞を収集し、そして各抗ヒト抗体とともに10μg/mlで氷上にて1時間インキュベートし、続いてAPC結合ヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immunolabs)とともに10μg/mlで氷上にて45分間インキュベートした。各抗体について、各変異体ヒトCD20に対する結合を、フローサイトメトリーにより評価した。平均蛍光強度レベルを、各細胞株内で変動する変異体CD20発現レベルに起因する効果を最小にするために、平均レベルのGFP発現を示した細胞の小さな(約20%)集団にゲーティングしながら評価した。各変異体CD20について、最も高い平均蛍光強度を示した抗体を100%結合として指定した。表3は、各変異体ヒトCD20に対する各抗CD20抗体の結合パーセントを示す。
【0066】
【表3】

【0067】
実施例6. 補体依存性細胞傷害活性(CDC)における有効性
抗ヒトCD20ヒト抗体を、補体依存性細胞傷害活性(CDC)を促進するそれらの能力について、ヒトリンパ腫細胞株Daudi及びRLを標的細胞株として使用して試験した。抗体を媒体中に連続希釈し(最終濃度範囲50nM〜0.85pM及び緩衝液コントロール)、そして96ウェルプレート型に播種された標的細胞に加えた。補体成分(Quidel)を含むヒト血清を各ウェルに加えて、最終血清濃度を5%とした。細胞を試験抗体、及び補体成分を含むヒト血清とともに37(Cで2時間インキュベートし、次いでALAMARBLUETMにより検出した場合の細胞生存について測定した。蛍光を、560nmの励起波長及び590nmの発光波長を使用して測定した(表4)。
【0068】
【表4】

【0069】
実施例7. ヒト抗CD20抗体の機能的解離速度(Off−Rate)
抗CD20mAbの解離速度(off−rates)をCDCアッセイで分析した。3つの別々の組で実験を行った。各組内において、細胞溶解のパーセンテージを、コントロールI及びIIと比較して0時間、1時間、及び6時間目に5つの抗体について測定した。各抗体2μgを106Daudi細胞と45分間(RT)インキュベートすることにより抗体を細胞に結合させた。0時間の時点で細胞を洗浄し、そしてすぐに20%正常ヒト血清補体を含有する培地100μlに再懸濁し、次いで45分間37℃、5%CO2にてインキュベートした。1時間及び6時間の時点について、抗体結合後の106個の細胞を洗浄し、15ml Falconチューブ中で新鮮な培地12mlに再懸濁し、そしてメカニカルインバーターでそれぞれ1時間及び6時間インキュベートした。選択された時点が完了すると細胞を洗浄し、そして20%正常ヒト血清補体を含有する培地中でインキュベートし、そして45分間インキュベートした。血清インキュベーションの後、7−アミノ−アクチノマイシンD(7AAD)を各サンプルに加え、そして15分間室温でインキュベートして細胞生存を評価した。細胞傷害性パーセントを各時点において、前方散乱対7AAD陽性及び陰性の細胞を表す7AAD2次元散乱プロットとしての領域を設定し、両方の領域からごみ(debris)を除去することにより決定した。細胞傷害性パーセントを、各時点について100−7AADネガティブ細胞のパーセンテージとしてプロットした(表5〜7)。
【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
【表7】

【0073】
実施例8. ヒト抗CD20抗体の生化学的解離速度
選択された試験抗CD20抗体についての生化学的解離速度を決定し、そしてコントロール抗体I及びIIと比較した。2つの選択されたヒト抗体、コントロールI又はII(各2μg/ml)を、CD20を発現しているRaji細胞とともに、106/mlにて2時間室温でインキュベートした。次いで細胞を洗浄し、過剰の抗体を除去し、1%血清含有培地に再懸濁し、そして37℃でインキュベートした。0、15、30、45、60、90、120、及び180分の時点で、細胞の1mlのアリコートを取り出し、洗浄し、PE標識抗hFc抗体で染色し、そしてFACS分析を行った。平均蛍光強度(MFI)を細胞表面に結合した抗体の量の指標として使用した。生化学的解離速度を、時間0の時点の結合パーセントを100%として計算した。実験をさらに5回繰り返し、そして12の試験抗体についての生化学的解離速度を決定し、そしてコントロールI及びIIと比較した(表8〜13)。
【0074】
【表8】

【0075】
【表9】

【0076】
【表10】

【0077】
【表11】

【0078】
【表12】

【0079】
【表13】

【0080】
実施例9. 抗体依存性細胞媒介細胞傷害活性(ADCC)アッセイ
選択されたヒト抗CD20抗体により誘導されたADCCを、Daudi細胞(内因的にCD20を発現するヒトリンパ腫細胞株由来の細胞)を使用して評価した。手短には、Daudi細胞(50μl中10,000細胞/ウェル)を最初に等体積の連続希釈したヒト抗CD20抗体と混合し、最終抗体濃度を0.169pM〜10nMの範囲とし、そして10分間室温にて96ウェルプレートでインキュベートした(コントロール=抗体(ab)を含まないウェル)。別に、ヒト末梢血単核細胞(PBMC、エフェクター細胞)を、従来のFicoll−Hypaqueグラジエント遠心分離濃縮手順にしたがって調製した。濃縮したPBMCを集めて洗浄し、そして10%熱不活化FBS、2mMグルタミン及び50nMベータ−メルカプトエタノールを含有するRPMI 1640中にプレーティングした。次いで細胞を5ng/mlヒトIL−2で3日間刺激し、培地で1回洗浄し、次いでADCCアッセイでそのまま使用した。約300,000のPBMCを抗体及び標的細胞の各混合物に加えてエフェクター対標的細胞の最終比率を約30:1とした。次いで96ウェルプレートを4時間インキュベートし、そして250xgで遠心分離した。上清を採取し、そして乳酸脱水素酵素(LDH)活性についてCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイシステム(Promega)を使用して測定した(表14)。
【0081】
【表14】

【0082】
実施例10. ヒトリンパ腫異種移植マウスモデルを用いた抗CD20抗体の治療活性
選択された抗CD20抗体についてのインビボ有効性研究を、ヒト非ホジキンB細胞リンパ腫異種移植マウスモデルを使用して行った。雌性重症複合免疫不全(SCID)マウスを6週齢で購入した。1週間馴化させた後、2500万個の採取直後のRaji細胞(ヒト非ホジキンB細胞リンパ腫細胞株由来の細胞)を各マウスに静脈内注射した。次いでRaji細胞を移植された各マウスをヒトFC(hFC)、コントロールI、コントロールII、8G6−5、9D4−7、10F2−13、又は7E1−13で、それぞれ10mg/kgで、静脈注射で側尾(lateral tail)により移植後3、6、及び9日目に処置した。マウスを180日までの期間モニタリングした。後肢麻痺、悪液質、及び偶発的な(occasional)大きい局所的な腫瘍塊を含む疾患の兆候を示すマウスをCO2窒息により安楽死させた。無症状生存曲線をKaplan−Meier法を使用して作図した(図1)。結果を無症状生存時間の関数として生存パーセントとして表す。これらの結果は、ab 10F2−13が動物モデルにおいて生存時間を約20日(hFcコントロール処置動物)から約180日(生存率において9倍より多い増加)(処置された動物の50%は約20日(hFcコントロール)、約40日(コントロールI)、約85日(コントロールII)まで、及び180日より多く(10F2−13)有意に増加させた。これらの増加した生存時間は、少なくとも2倍より大きい(コントロールIIと比較して)か、約4.5倍大きい(コントロールIと比較して)か、又はhFc処置動物と比較して少なくとも約9倍又はそれ以上である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD20に特異的に結合し、そして約5nM又はそれ以下の抗体濃度で補体依存性細胞傷害活性(CDC)を誘導することができ、そしてヒトリンパ腫のマウスモデルにおいてコントロールで処置された動物と比較して無症状生存時間を約2倍から約9倍の間に増加することができる、ヒト抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、該抗体又は抗体フラグメントは、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)及び軽鎖CDR3(LCDR3)を含み、ここでHCDR3及びLCDR3は配列番号345及び353;201及び209;並びに249及び257からなる群より選択される、ヒト抗体又は抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項2】
ヒトCD20に特異的に結合し、そして約5nM又はそれ以下の抗体濃度で補体依存性細胞傷害活性(CDC)を誘導することができる、ヒト抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、該抗体又はそのフラグメントは、重鎖可変領域(HCVR)配列及び軽鎖可変領域(LCVR)配列を含み、ここでHCVR配列及びLCVR配列は、配列番号339及び347;195及び203;並びに243及び251からなる群より選択される、ヒト抗体又は抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項3】
CDCを誘導するために必要な抗体濃度が1nM又はそれ以下である、請求項1又は2に記載のヒト抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項4】
Daudi細胞で測定した場合に0.2nM若しくはそれ以下のEC50、又はRL細胞で測定した場合に0.4nM若しくはそれ以下のEC50を示すことをさらに特徴とする、請求項3に記載のヒト抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項5】
ヒトCD20に結合し、そしてRL細胞又はDaudi細胞で測定した場合に約5nM又はそれ以下の抗体濃度で補体依存性細胞傷害活性(CDC)を誘導することができ、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)ドメイン及び軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む、ヒト抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
HCDR3ドメインが式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19(配列番号412)[式中、X1=A、V又はT;X2=K;X3=D;X4=P、F又はG;X5=S又はH;X6=Y;X7=G;X8=S又はH;X9=G又はF;X10=S又はY;X11=Y、N又はS;X12=Y、G又はH;X13=G、L又はS;X14=Y、M又はD;X15=Y、D又はV;X16=G、V又は存在しない;X17=M又は存在しない;X18=D又は存在しない;X19=V又は存在しない]のアミノ酸配列を含み;そして
LCDR3ドメインが、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号415)、[式中、X1=Q;X2=Q;X3=R又はS;X4=N、Y又はF;X5=N、D、又はY;X6=W;X7=P;X8=L;X9=T]のアミノ酸配列を含む、ヒト抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
細胞表面に提示された抗原に対する結合により測定された場合に、少なくとも10-11MのKD又はEC50を示すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒト抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項7】
請求項6に記載のヒト抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項9】
抗ヒトCD20抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを製造する方法であって、請求項8に記載の発現ベクターを、単離された宿主細胞に導入する工程、抗体又は抗体フラグメントの産生を可能にする条件下で細胞を培養する工程、及びこのようにして産生された抗体又は抗体フラグメントを回収する工程を含む、方法。
【請求項10】
宿主細胞がE.coli細胞、CHO細胞、又はCOS細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物。
【請求項12】
ヒトにおいてCD20媒介疾患又は状態を軽減又は抑制するための使用のための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体又は抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項13】
処置される疾患又は状態が、非ホジキンリンパ腫、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病、慢性リンパ性白血病、及び炎症性疾患からなる群より選択される、請求項12に記載の抗体又は抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項14】
ヒトにおいてCD20媒介疾患又は状態を軽減又は抑制する方法であって、治療有効量の請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法。
【請求項15】
ヒトにおいてCD20媒介疾患又は状態を軽減又は抑制するための使用のための医薬の製造における、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの使用。
【請求項16】
処置される疾患又は状態が、非ホジキンリンパ腫、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病、慢性リンパ性白血病、及び炎症性疾患である、請求項15に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−535033(P2010−535033A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520180(P2010−520180)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/071709
【国際公開番号】WO2009/018411
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】