説明

ヒトP2Y15Gタンパク質共役型受容体の調節

ヒトP2Y15Gタンパク質共役型受容体を調節する物質は、喘息を含むがこれに限定されないアレルギー等の疾患における気管支収縮または炎症の予防、改善または是正において役割を果たし得る。さらに、そのような物質は、腎臓機能の疾患または肥満細胞に関連する疾患を処置するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Gタンパク質共役型受容体の分野に属する。より具体的には、本発明は、P2Y15Gタンパク質共役型受容体およびそれらの調節に関する。さらに本発明は、気管支収縮および炎症の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Gタンパク質共役型受容体
多くの医学的に重要な生体プロセスは、Gタンパク質が関与するシグナル伝達経路により媒介されている (Lefkowitz, Nature 351, 353 354, 1991)。Gタンパク質共役受容体(GPCR)のファミリーには、ホルモン、神経伝達物質、成長因子、およびウイルスに対する受容体が含まれる。GPCRの具体例としては、ドーパミン、カルシトニン、アドレナリン作動性ホルモン、エンドセリン、cAMP、アデノシン、アセチルコリン、セロトニン、ヒスタミン、トロンビン、キニン、卵胞刺激ホルモン、オプシン、内皮細胞分化遺伝子−1、ロドプシン、臭気物質、サイトメガロウイルス、Gタンパク質自身、エフェクタータンパク質(例えばホスホリパーゼC、アデニル酸シクラーゼおよびホスホジエステラーゼ)、およびアクチュエータータンパク質(例えばプロテインキナーゼAおよびプロテインキナーゼC)などの物質に対する受容体が挙げられる。
【0003】
GPCRは、少なくとも8個の異なる親水性ループを連結する、膜を貫通する7個の保存されたドメインを持っている。GPCR(7TMレセプターとしても知られる)は、少なくとも8個の異なる親水性ループを連結する、約20ないし30のアミノ酸のこれら7個の保存された疎水性ストレッチを含むものとして特徴付けられている。殆どのGPCRは、最初の二つの細胞外ループの各々に単一の保存されたシステイン残基を持っており、これがジスルフィド結合を形成し、機能的タンパク質構造を安定化させると考えられている。この7個の膜貫通領域はTM1、TM2、TM3、TM4、TM5、TM6、およびTM7と呼ばれる。TM3はシグナル伝達に関わっている。システイン残基のリン酸化および脂質化(パルミチル化またはファルネシル化)は、幾つかのGPCRのシグナル伝達に影響を及ぼし得る。殆どのGPCRは、第三細胞質ループおよび/またはカルボキシ末端内部にリン酸化の可能性ある部位を含んでいる。幾つかのGPCR、例えばβ−アドレナリン作動性レセプターでは、プロテインキナーゼAおよび/または特異的レセプターキナーゼによるリン酸化によってレセプターの脱感作が仲介される。
【0004】
幾つかのレセプターについては、GPCRのリガンド結合部位が、数個のGPCR膜貫通ドメインにより形成された親水性ソケットを含むと考えられる。この親水性ソケットは、GPCRの疎水性残基に取り囲まれている。各GPCR膜貫通ヘリックスの親水性側は、内側を向き、極性リガンド結合部位を形成していると仮定されている。TM3は、リガンド結合部位、例えばTM3アスパラギン酸残基を持っている幾つかのGPCRと関連している。TM5のセリン、TM6のアスパラギン、およびTM6またはTM7のフェニルアラニンまたはチロシンもまたリガンド結合に関連している。
【0005】
GPCRは細胞内部でヘテロ三量体Gタンパク質により、種々の細胞内酵素、イオンチャンネルおよび輸送体と共役している(Johnson et al., Endoc. Rev. 10, 317 331, 1989を参照)。種々のGタンパク質αサブユニットは優先的に特定のエフェクターを刺激し、細胞の様々な生体機能を調整する。GPCRの細胞質残基のリン酸化は、幾つかのGPCRの調節にとって重要な機構である。例えば、或る形のシグナル伝達においては、ホルモン結合の効果は、酵素アデニルシクラーゼの活性化である。ホルモンによる酵素の活性化はヌクレオチドGTPの存在に依存する。GTPはホルモン結合にも影響を及ぼす。Gタンパク質はホルモンレセプターをアデニルシクラーゼに結合させる。Gタンパク質はホルモンレセプターによって活性化されると、GTPを、結合したGDPに交換する。すると、GTPを有する型が、活性化アデニルシクラーゼに結合する。Gタンパク質自身により触媒されるGTPからGDPへの加水分解が、Gタンパク質をその基本的な不活性型へと戻す。したがってGタンパク質は、レセプターからエフェクターへとシグナルを中継する仲介物質としての、そしてシグナルの持続を制御する時計としての、二重の役割を果たしている。
【0006】
過去15年間にわたり、GPCRレセプターを標的とする350近くの治療薬が成功裏に上市されてきた。この事は、これらのレセプターが治療薬として確立された折り紙付きの歴史を持っていることを示すものである。明らかに、細菌、真菌、原虫といった感染症、およびウイルス感染症、とりわけHIVウイルスによる感染症、疼痛、癌、食欲不振、過食症、喘息、急性心不全、低血圧症、高血圧症、尿停留、骨粗鬆症、狭心症、心筋梗塞、潰瘍、喘息、パーキンソン病、急性心不全、低血圧症、高血圧症、尿閉、骨粗鬆症、狭心症、心筋梗塞、潰瘍、喘息、アレルギー、多発性硬化症、良性前立腺肥大および精神障害および神経学的障害、不安症、統合失調症、躁うつ病、精神錯乱、痴呆、いくつかの知的障害およびハンチントン病およびトゥレット病等のジスキネジーを包含する(但しこれらに限定される訳ではない)機能不全または疾病の予防、改善または是正において役割を果たし得る、
【0007】
P2Y受容体
細胞外ヌクレオチドは多くの種類の細胞において、筋肉の収縮と弛緩、血管拡張、神経伝達、血小板凝集、イオン輸送調節、および細胞増殖を含む様々な応答を誘導する。この効果は主に、P2Y型Gタンパク質共役型受容体,およびP2X型リガンド依存性イオンチャネルの2つのタイプの受容体を介して発揮される。これまで9種類の異なるヌクレオチド置換Gタンパク質共役型受容体のメンバーがヒトにおいて特徴付けられている。この9種類の受容体はさらに、リガンド特異性にしたがって、アデニンヌクレオチドによって活性化されるもの(P2Y1、P2Y11、P2Y12、およびP2Y13)、ウリジンヌクレオチド(P2Y4、P2Y6、CYSLT1、およびGPR105)によって活性化されるもの、およびアデニンおよびウリジン両ヌクレオチドによって活性化されるもの(P2Y2)の3つのグループに分離することができる。これら受容体に結合することが分かっている天然のヌクレオチドは必ずヌクレオチドジホスフェートおよびヌクレオチドトリホスフェートである。例えば、ATPは、リボ核酸(RNA)合成の前駆体、サイクリックAMP合成の前駆体など、多くの生化学的反応のエネルギー源である。しかし、ATPもまた、神経組織および神経以外の組織において細胞外メッセンジャーとして機能する。細胞外ATPはその効果を発揮する。これらの組織に対して、一般にP2X受容体(また、プリン受容体、P2XRチャネルおよびATP感受性チャネルとしても知られる)と称されるリガンド依存性イオンチャネル (Bean, B. P. (1992) Trends Pharmac. Sci. 12:87 90; Bean, B. P.およびFried, D. D. (1990) Ion Channels 2:169 203)またはGタンパク質共役型(P2Y) 受容体 (Barnard, E. A. et al. (1994) Trends Pharmac. Sci. 15:67 70)のいずれかであり得る膜結合プリノレセプター(purinoreceptor) (Burnstock, G. Ann. NY Acad. Sci. (1990) 603:1 17) を介して作用することにより、効果を発揮する。米国特許第5,856,129を参照。
【0008】
アデノシン 受容体
ヌクレオチドに加えて、ヌクレオシドもまた細胞外シグナル伝達機能を有することが示されている。アデノシン、即ちプリンヌクレオシドは、広く存在する、特に心臓血管および神経系における様々な生理学的活性の調節物質である。アデノシンの効果は、特定の細胞表面受容体タンパク質によって媒介されるようである。アデノシンは、鎮静作用の誘導、血管拡張、心拍数の抑制および収縮、血小板凝集性の抑制、新糖生の刺激、および脂肪分解の抑制を含む多様な生理学的機能を調節する。アデニル酸シクラーゼに対するその効果に加えて、アデノシンはカリウムチャネルを開口し、カルシウムチャネルを介する流れを減少させ、受容体介在の機構を介するホスホイノシチドターンオーバーを抑制または刺激することが示されている(例えば、C. E. MullerおよびB. Stein "Adenosine受容体 Antagonists: Structures and Potential Therapeutic Applications," Current Pharmaceutical Design, 2:501 (1996) and C. E. Muller "A.sub.1-Adenosine受容体 Antagonists," Exp. Opin. Ther. Patents 7(5):419 (1997)を参照)。
【0009】
アデノシン 受容体はプリン受容体のスーパーファミリーに属し、P.sub.1 (アデノシン)およびP.sub.2 (ATP, AMPまたはアデノシン受容体リガンドおよび他のヌクレオチド) 受容体にさらに分類される。ヌクレオシドアデノシンに対しては、これまで、ヒトを含む種々の種から4つの受容体サブタイプがクローニングされている。2つの受容体サブタイプ(A.sub.1およびA.sub.2a)はアデノシンに対し、ナノモル濃度の範囲で親和性を示し、他の2つの既知のサブタイプA.sub.2bおよびA.sub.3は親和性の低い受容体であり、低いマイクロモル濃度の範囲でアデノシンに対して親和性を有する。A.sub.1およびA.sub.3 アデノシン受容体の活性化は、アデニル酸シクラーゼ活性の抑制につながるが、A.sub.2aおよびA.sub.2bの活性化はアデニル酸シクラーゼに対する刺激を引き起こす。
【0010】
アデノシン5’−一リン酸(AMP)およびアデノシン
全ての細胞は、アデノシンおよびアデニンヌクレオチドを含み、多くの種類の細胞が、刺激により、アデノシンまたはアデニンヌクレオチドを放出することが報告されている。例えば、肥満細胞は抗原投与によりアデノシンを放出することが報告されている[Marquardt, D.L et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6192-6]。血小板 [Jarvis, G.E. et al. (1996) Eur J Pharmacol 315:203-12]、好中球[Madara, J.L. et al (1993) J. Clin. Invest. 91:2320-5)]および好酸球[Resnick, M.B. et al. (1993)] の活性化はAMPの放出を誘導することが報告されている。放出されるとアデニンヌクレオチドは、エクトヌクレオチダーゼ酵素によってアデノシンに変換され得る。アデノシンは、炎症を起こした気道の気管支肺胞洗浄液 (BALF)中で増加することが分かっており、特に、肺の慢性的炎症状態、例えば、喘息やCOPDなどの患者のBALF中に高い濃度で存在することが知られている (Driver, A.G. et al. (1993) Am. J. Respir. Dis. 148:91-7)。
【0011】
吸入することによりまたは滴下することにより、喘息や肺の他の炎症性疾患を有する患者の気道内へ人工的に導入されたAMPまたはアデノシンは、迅速な気管支収縮を起こすことができる[Polosa, R.およびHolgate, S.T. (1997) Thorax 52:919-23]。この応答は、他の肺疾患を有する患者よりも、喘息を有する患者において有意に高く、正常なボランティアにおいてもまれに見られる。したがって、最近、AMPまたはアデノシンに対する応答を用いて喘息と他の疾患とを区別することができること、およびさらに、応答性は炎症の状態とよく相関しているので疾患の活性の特異的なマーカーとして用いることができることが示唆されている。AMPおよびアデノシンの気管支収縮活性に照らして、内因的に産生されたAMPおよびアデノシンが、喘息および他の炎症性肺疾患において潜在的に有意の役割を果たすことは明らかである。確かに、喘息において気管支拡張効果を有する2種類の薬物、テオフィリンおよびエンプロフィリンが、炎症細胞のアデノシン誘導性の活性化およびその後の炎症メディエーターの放出をブロックすることにより、それらの効果を達成すると考えられている。
【0012】
P2Y15
WO0214511は、ヒトP2Y15受容体、そのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列並びにそれらの調節を開示している。P2Y15のマウスのオルソログのアクセス番号はXP_139267である。
【0013】
喘息
喘息は、複数の遺伝的要因と環境要因との相互作用の結果として生じると考えられ、3つの主特徴、すなわち1)気管支収縮、粘液産生量の増加、および気道の狭窄につながる気道壁の肥厚によって起こる間欠的で可逆的な気道閉塞、2)気道径制御の低下によって起こる気道反応性亢進、ならびに3)気道炎症を特徴とする。喘息の炎症反応にはいくつかの細胞が重要であるが、それらには、T細胞および抗原提示細胞、IgEを産生するB細胞、およびマスト細胞、好塩基球、好酸球、およびIgEを結合する他の細胞が含まれる。これらのエフェクター細胞は、気道のアレルギー反応部位に蓄積して毒性産物を放出し、それが急性病状の一因となり、最終的にはこの障害に関連する組織破壊の一因となる。喘息を持つ個体では他の常在細胞、例えば平滑筋細胞、肺上皮細胞、粘液産生細胞、および神経細胞なども異常である可能性があり、それらも病状の一因となりうる。臨床的には間欠的な喘鳴および息切れとして現れる喘息の気道閉塞は、一般に、迅速な処置を要する最も切迫したこの疾患の症状であり、この疾患に付随する炎症および組織破壊が不可逆的な変化をもたらして、ついには、喘息を長期管理が必要な慢性障害にしてしまう場合もある。
【0014】
喘息の病態生理に関する我々の理解には最近大きな進歩があったにもかかわらず、この疾患の有病率と重症度は増加しつつあるようである(GergenおよびWeiss, Am. Rev. Respir. Dis. 146,823-24,1992)。人口の30〜40%はアトピー性アレルギーを患っており、小児人口の15%および成人人口の5%は喘息を患っていると推定されている(Gergen and Weiss,1992)。したがって我々の保健医療財源には非常に大きい負担がかかっている。しかし喘息は診断も処置も困難である。肺組織炎症の重症度は測定するのが容易でなく、この疾患の症状は呼吸器感染症、慢性呼吸器炎症性障害、アレルギー性鼻炎、または他の呼吸器障害の症状と区別できないことも多い。誘発アレルゲンを決定できないために、原因環境物質の除去が困難である場合も多い。現在の薬物処置にはそれぞれに欠点がある。よく使用されるβアゴニストなどの治療薬は、症状緩和剤として作用して肺機能を一過性に改善することはできるが、根底にある炎症には影響を及ぼさない。根底にある炎症を減少させることができる抗炎症性ステロイドなどの物質は、免疫抑制から骨量減少までに及ぶ重大な欠点を持ちうる(Goodman and Gilman's THE PHARMACOLOGIC BASIS OF THERAPEUTICS, Seventh Edition, MacMillan Publishing Company, NY, USA, 1985)。また、吸入コルチコステロイドなどの現行治療法の多くは持効性に乏しく、不便であり、定期的に(時には一生)使用しなければならないことも多いため、患者がその処置を遵守しないことが大きな問題となり、それが処置としての有効性を減じている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の治療法には種々の問題があるため代替処置法の評価が行なわれている。グリコホリンA(Chu and Sharom, Cell.Immunol. 145,223-39,1992)、シクロスポリン(Alexanderら、Lancet 339,324-28,1992)およびIL−2のノナペプチド断片(Zav'yalovら、Immunol.Lett. 31,285-88,1992)はいずれもインターロイキン2依存性Tリンパ球増殖を阻害するが、これらは他にも多くの効果を持つことが知られている。例えばシクロスポリンは免疫抑制剤として臓器移植後に使用される。これらの物質は喘息患者の処置においてステロイドの代替物となりうるが、これらはインターロイキン2依存性Tリンパ球増殖を阻害し、ホメオスタシスに関係する重要な免疫機能を抑制する可能性がある。最近、気管支収縮の媒介物質の放出または活性を遮断する他の処置、例えばクロモン類または抗ロイコトリエン類などが、軽度喘息の処置に導入されたが、これらは高価であり、全ての患者に有効なわけではなく、これらが喘息性炎症に伴う慢性的変化に効果があるかどうかははっきりしない。当技術分野で必要とされているのは、喘息の発症に不可欠な経路で作用することができ、この障害の挿間的発作を遮断すると共に、患者の免疫機能を損なわずに、異常に亢進したアレルギー免疫応答を優先的に抑制する処置を同定することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、Gタンパク質共役型受容体 GPR80 (Lee, DK et al., 2001, Gene 275:83-91)がAMPおよびアデノシンによってin vivoで調節されるという発見に基づく。以下、これをP2Y15Gタンパク質共役型受容体と称する。
【0017】
P2Y15GPCRを調節する試薬および方法を提供することが、本発明の1つの目的である。本発明のこのおよびその他の目的は、下に記載する1またはそれ以上の態様によって提供する。
【0018】
本発明の1つの態様は、試料中のP2Y15の活性を検出するための方法であって、以下の工程
a)試料を、P2Y15およびリガンドとともに、P2Y15と該リガンドの結合が可能な条件下でインキュベーションする工程;および
b)第2のメッセンジャーを検出する工程であって、ここに該リガンドはAMPまたはアデノシン受容体リガンドである
を含む方法である。
【0019】
本方法はさらに、以下の工程:
a)第2の試料をP2Y15と、該リガンドの不在下、P2Y15と該リガンドの結合が可能な条件下でインキュベーションする工程;および
b)第2のメッセンジャーを検出する工程
を含む。試料は、P2Y15を発現する細胞またはP2Y15を有する細胞膜を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の別の態様は、P2Y15を発現している細胞を用いて、P2Y15活性を調節する物質のスクリーニングする方法である。この方法は、以下の工程
a)該物質の存在下で該細胞の第1の試料、および該物質の不在下で該細胞の第2の試料を、両試料ともAMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15への結合が可能な条件下でインキュベーションする工程
b)該第1および第2の試料中のP2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を検出する工程および
c)該第2のメッセンジャーアッセイの結果を第1の試料および第2の試料について比較する工程
を含む。
【0021】
本発明のさらなる態様は、P2Y15を有する細胞膜を用いて、P2Y15活性を調節する物質をスクリーニングする方法である。この方法は、
a)該物質の存在下で前記細胞膜の第1の試料、および該物質の不在下で前記細胞膜の第2の試料を、両試料ともAMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15への結合が可能な条件下でインキュベーションする工程
b)該第1および第2の試料中のP2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を検出する工程;および
c)該第2のメッセンジャーアッセイの結果を第1の試料および第2の試料について比較する工程
を含む。
【0022】
本発明のさらなる態様は、P2Y15を発現している細胞を用いて、試験化合物がP2Y15の活性を増大または減少させるかを決定する方法である。この方法は、
a)該試験化合物の存在下で該細胞の第1の試料、および該試験化合物の不在下で該細胞の第2の試料を、両試料ともAMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15への結合が可能な条件下でインキュベーションする工程:
b)該第1および第2の試料におけるP2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を検出する工程;および
c)該第2のメッセンジャーアッセイの結果を第1の試料および第2の試料について比較する工程
を含む。
【0023】
本発明のさらなる態様は、P2Y15を有する細胞膜を用いて、試験化合物がP2Y15の活性を増大または減少させるかを決定する方法である。この方法は、
a)該試験化合物の存在下で該細胞の第1の試料、および該試験化合物の不在下で該細胞の第2の試料を、両試料ともAMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15への結合が可能な条件下でインキュベーションする工程:
b)該第1および第2の試料におけるP2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を検出する工程;および
c)該第2のメッセンジャーアッセイの結果を第1の試料および第2の試料について比較する工程
を含む。
【0024】
本発明のさらなる態様は、P2Y15の機能を調節する物質を同定する方法である。この方法は、
a)P2Y15ポリペプチドを、ある物質の存在下および不在下で、AMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15ポリペプチドへの結合が可能な条件下で接触させる工程;および
b)該P2Y15ポリペプチドの該物質への結合を測定し、該物質の存在下での結合と比較する工程
を含む。結合を変化させる物質は、P2Y15の機能を減少または増大のための潜在的な治療物質として同定される。この測定は、標識置換、表面プラズモン共鳴、蛍光共鳴エネルギー遷移、蛍光クエンチングおよび蛍光偏光法から選択される方法を用いて行う。この物質は、天然のまたは合成されたペプチド、ポリペプチド、抗体またはその抗原結合断片、脂質、炭化水素、核酸および有機小分子からなる群から選択することができる。P2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程は、第2のメッセンジャーのレベルの変化を検出することを含む。
【0025】
シグナル伝達活性を検出する工程にはグアニンヌクレオチド結合または交換、アデニル酸シクラーゼ活性、cAMP、タンパク質キナーゼC活性、ホスファチジルイノシトール分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウム、アラキドン酸濃度、MAPキナーゼ活性、チロシンキナーゼ活性およびレポーター遺伝子発現の測定が含まれる。
【0026】
本発明のさらなる態様は、P2Y15ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性を調節する物質である。この物質は上記方法のいずれかによって同定する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、上記物質および製薬的に許容し得る担体を含有する医薬組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
喘息に対するP2Y15GPCRの関連性
本発明のヒトP2Y様GPCRは、P2Yと非常にホモロジーが高い新規P2Y様7回膜貫通ドメイン分子である。このことは、P2Yホモログについてゲノム配列データベースをサーチして独自に見い出した。正常ヒト上皮から誘導されたcDNAライブラリー由来のこの遺伝子について、1つのESTのみがこれまでに報告された。我々独自のこの遺伝子の発現プロファイリングにより、この遺伝子が気管、唾液腺及び腎臓においては高発現であるが、胎児の脳、結腸、胎盤及び肺においてはそれほど発現されていないことが示される。
【0029】
P2Y15GPCRは、ホモロジーにおいて、アデニンヌクレオチド(ATP及びADPまたはアデニン受容体リガンド)と結合するP2Y1に最も近いが、AとUヌクレオチドの両方と結合するP2Y2やP2Y4、Uヌクレオチドと結合するP2Y3、及びLTB4、LTC4やLTD4と結合するロイコトリエン受容体とも有意なホモロジーがある。出願人はこの受容体の真のリガンドを実験により決定した。
【0030】
気道上皮の研究において、ATPやUTPの両方が、等力的に上皮電解質及び水輸送を調節し、ムチン分泌を引き起こし、そして線毛打頻度を増大させることを見出した。気管において、ヌクレオチドは、抗菌タンパク質及び抗タンパク質分解タンパク質の分泌に寄与する気管腺漿液細胞を誘導し、分泌性白血球プロテイナーゼ阻害物質を生産し、クロライド輸送を増大させることができる。P2Y2受容体のノックアウトマウス研究では、気道上皮には主要な細胞外ヌクレオチド受容体があるが、気道には同様に機能する他のヌクレオチド受容体が存在することが示される。
【0031】
我々のヒトP2Y様GPCRの発現プロファイリング研究により、気道上部の組織にて高発現されていることが示される。唾液腺及び気管におけるこの高発現は、気道において主に保護機能を果たす外分泌物を分泌する働きがあることを示し得る。しかしながら、喘息においては、ムチン過剰発現は、喘息患者の気道を塞ぐ粘性粘液栓に寄与する。喘息患者の大気道の粘膜下腺もまた、何らかの形で外部媒介物質により過剰刺激されるためであろう肥厚化についての証拠が頻繁に示される。
【0032】
P2Y15受容体のアゴニストおよびアンタゴニストはいずれも、喘息において有益な効果を有しうる。アゴニストは保護性タンパク質分泌を増大させ、線毛打頻度を増大させることができるのに対し、アンタゴニストは粘液生産及び腺性肥厚化を遅延させ、平滑筋収縮を防止し、アレルゲン、汚染物質、乾燥または冷気、低酸素濃度、高いCO2またはCO濃度、スーパーオキシドおよび炎症メディエーターを含む気道刺激物に対する感受性を低減することができる。
【0033】
本発明によって、P2Y15GPCRを調節して、喘息を含むがこれに限定されないアレルギー等の疾患における気管支収縮や炎症を処置することができることを発見した。ヒトP2Y15GPCRは配列番号2に示すアミノ酸配列を有する。
【0034】
ヒトP2Y15GPCRはまた、ヒトP2Y15GPCRアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングするために用いることができる。
【0035】
他の疾患の処置に対するP2Y15GPCRの関連性
腎臓において、我々が行った in situ ハイブリダイゼーションよるP2Y15転写物局在の解析は、腎臓微小血管系における発現が最も高いようであるということを示した。P2Y15シグナル伝達の阻害物質として作用するテオフィリンおよびカフェインは、腎臓に対して利尿作用を有することが知られており、他のアンタゴニストまたはアゴニストもまた腎臓機能に対する作用を有すると予想される。そのようなP2Y15のアンタゴニストやアゴニストを用い、尿の産生を治療的に調節することができ、そうすることで、電解質やタンパク質等の血液成分の濃度の調節にも有益である。例えば、P2Y15アンタゴニストまたはアゴニストを鬱血性心不全、高血圧、肝硬変、およびネフローゼ症候群等の疾患の処置に用いることができる。
【0036】
ヒト臍帯血由来肥満細胞における遺伝子の転写レベルを検出するためにDNAマイクロアレイを用いて我々が行った解析では、P2Y15転写物の発現は、発現強度において、これら細胞において発現する遺伝子の上位1%に入ることが分かった。この著しく高度な発現のために、P2Y15は肥満細胞にとって重要なシグナル伝達分子であると我々は考える。従って、P2Y15シグナル伝達の調節を、肥満細胞が関与する疾患や状態を処置するための方法として用いることができる。肥満細胞の増加は多くの病理学的状態において認められる。例えば、皮膚における肥満細胞の過形成(肥満細胞腫)は皮膚の病変を示し、肥満細胞の脱顆粒の間に放出される化学メディエーターに起因して麻疹や顔面紅潮の症状を示すことがある。子供は、単一の肥満細胞種または色素性蕁麻疹の複数の皮膚の病変を発症することがある。成人においては、皮膚の病変が現れることがなくても複数の器官が関係することがある(通常、骨、肝臓、脾臓およびリンパ節が冒される)(全身性肥満細胞症)。骨の病変は、破骨細胞または骨芽細胞に局在または広く遍在している。肥満細胞の増加は、いくつかの炎症性大腸炎(潰瘍性大腸炎、クローン病)や寄生虫感染症においても見られる。神経線維腫(Cutaneous neurofibromas)、良性および悪性の乳房病変およびいくつかの軟組織主張もまた、高い肥満細胞数を示す。肥満細胞数はまた、間質性膀胱炎や特発性の膀胱貯尿量の減少(感覚性急迫性尿失禁)において高いことが分かっている。肥満細胞数が異常に高いとは認められない状態の疾患のいてさえ、肥満細胞におけるP2Y15シグナル伝達の調節は有益な効果を有しうる。例えば、炎症細胞の脱顆粒は、受容体の阻害機能と相互作用し、シナプスへのアセチルコリンの放出の増大を導くシナプス前終末でのムスカリン受容体の不活性化につながることが報告されている。そのような不活性化は、喘息や過活動膀胱においてみられるような異常な筋肉収縮や不安定につながることがある。従って、P2Y15シグナル伝達の調節による、肥満細胞のような炎症細胞の無調節な脱顆粒の阻止は、前兆となる筋肉収縮や不安定を処置する方法の1つとなり得る。
【0037】
我々が行ったP2Y15GPCRの発現プロファイリングは、唾液腺および気管において高度に発現することが示された。このことは、P2Y15のアンタゴニストまたはアゴニストを用いて、シューグレン症候群、口渇、虫歯、後鼻漏および咳等、粘膜または唾液の異常な産生がみられる上気道および口腔の疾患または状態を処置することができるということを示している。
【0038】
定義
本発明で用いられる「P2Y15」は以下からなる群から選択される任意のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを意味する:
a)配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列と少なくとも約50%一致するアミノ酸配列;および配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むP2Y15ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
b)配列番号1、3または5の配列を含むポリヌクレオチド
c)ストリンジェントな条件下で(a)および(b)で特定されるポリヌクレオチドにハイブリダイズし、P2Y15ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
d)遺伝コードの縮重のために(a)〜(c)において特定される核酸配列と異なり、P2Y15をコードする核酸配列を有するポリヌクレオチド;および
e)(a)〜(d)において特定される核酸配列の断片、誘導体またはアレル変異体を示し、P2Y15をコードし、P2Y15活性を保持するポリヌクレオチド。
【0039】
本明細書において用いられる「リガンド」は、AMPと同様または等価な方式で受容体に結合する分子を意味する。
【0040】
本明細書において用いられる「アデノシン受容体リガンド」は、アデノシン受容体の特異的なおよび非特異的なアゴニストおよびアンタゴニストを意味し、アデノシン、2−クロロアデノシン、N6−シクロペンチルアデノシン(CPA)、CGS−21680ハイドロクロライド、クロロ−IB−MECA,5’−(N−エチルカルボキサミド)アデノシン(NECA)およびその誘導体、8−フェニルテオフィリン(8−PT)、3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)、アロキサジン、8−(p−スルホフェニル)テオフィリン(8−SPT)、8−シクロペンチル−1,3−ジプロピルキサンチン(DPCPX)、カフェイン、テオフィリンおよびエンプロフィリンが挙げられるがこれに限定されない。例えば、Pharmacological reviews 53:527-552, 2001に開示されているような他のアデノシン受容体リガンドも知られている。
【0041】
本明細書において用いられる「第2のメッセンジャー」なる語は、Gタンパク質共役型受容体の活性化によって生じまたは引き起こされて濃度が変化し、そのGPCRからのシグナルの伝達に参加する分子を意味する。第2のメッセンジャーの例としては、cAMP、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸およびアラキドン酸代謝物、カルシウムイオンが挙げられるがこれに限定されない。「第2のメッセンジャーのレベルの変化」なる語は、与えられた第2のメッセンジャーの検出されたレベルの、調節物質候補の不在下で行ったアッセイにおいて検出された量と比較して少なくとも10%の増大または減少を意味する。
【0042】
本明細書において用いられる「第2のメッセンジャーアッセイ」なる語は、好ましくは、当分野で公知の方法および本明細書において定義される方法に従う、グアニンヌクレオチド結合または交換、アデニル酸シクラーゼ、細胞内cAMP、細胞内イノシトールリン酸、細胞内ジアシルグリセロール濃度、アラキドン酸濃度、カルシウム動員、MAPキナーゼまたはチロシンキナーゼ、タンパク質キナーゼC活性、またはレポーター遺伝子発現の測定またはエクオリンベースのアッセイを包含する。
【0043】
本明細書において用いられる「試料」なる語は、P2Y15ポリペプチドへの結合またはP2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を調節する物質または調節化合物の存在について試験する分子の供給源である。試料は、環境試料(environmental sample)、動物、植物、酵母または細菌の細胞もしくは組織の天然抽出物、臨床試料、合成試料、または組換え細胞または発酵プロセスから調製された培地であってよい。
【0044】
本明細書において用いられる「膜画分」なる語は、P2Y15ポリペプチドを含む細胞の脂質膜の調製物を意味する。本明細書において用いられる「膜画分」は、非膜関連細胞成分の少なくとも一部(即ち少なくとも10%および好ましくはそれ以上)が除去されている点において、細胞のホモジネートとは区別される。「膜関連」なる用語は、脂質膜に統合されているか、または脂質膜に統合されている成分と物理的に会合している細胞の構成成分を意味する。
【0045】
本明細書において用いられる「P2Y15およびリガンドの結合が可能な条件」なる語は、その条件下でリガンドがP2Y15に結合する、例えば、温度、塩濃度、pH、およびタンパク質濃度の条件を意味する。実際の結合条件は、アッセイの性質、例えばそのアッセイが生きた細胞を用いているか細胞の膜画分のみを用いているか、に依存して変わる。
【0046】
ポリペプチド
本発明に係るP2Y15GPCRポリペプチドには、配列番号2に示すアミノ酸配列で示されるアミノ酸配列から選択される、少なくとも10、12、15、20、24、30、40、50、75、100、125、150、175、200、250、275、300、325または350個の連続アミノ酸、または以下に定義される生物学的に活性な変異体が含まれる。したがって、本発明のP2Y15GPCRポリペプチドは、P2Y15GPCRタンパク質の一部、完全長のP2Y15GPCRタンパク質、又はP2Y15GPCRタンパク質の全部または一部を含む融合タンパク質であり得る。
【0047】
タンパク質の配列を他のGタンパク質共役型受容体(GPCRs)と比較する系統発生解析は、アデノシンに対する既知の受容体(van den Berge, M., Kerstjens, H. A.,およびPostma, D. S. (2002) Clin Exp Allergy 32, 824-830)から離れた、他のP2Y受容体の集団の分子を判別する。遺伝子配列は、ヒトの染色体13q32に存在するgenomic contig NT_009952において見出された。
【0048】
生物学的に活性な変異体
生物学的に活性な、即ちリガンドに結合して、サイクリックAMP形成、細胞内カルシウムの動員、またはオスホイノシチド代謝などの生物学的効果をもたらす活性を保持する、P2Y15GPCRポリペプチド変異体もまた、P2Y15GPCRタンパク質ポリペプチドである。好ましくは、天然または非天然に存在するP2Y15GPCRポリペプチド変異体は、配列番号2に示すアミノ酸配列またはその断片と少なくとも約50、55、60、65、70、より好ましくは約75、90、96または98%一致するアミノ酸配列を有する。推定されるP2Y15GPCRポリペプチド変異体と配列番号2のアミノ酸配列との一致パーセントは、慣用の方法によって決定する。例えば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48:603 (1986)、およびHenikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1992)を参照。簡潔には、2つのアミノ酸配列を、ギャップオープニングペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ1、およびHenikoff & Henikoff (1992)の「BLOSUM62」スコアリングマトリクスを用いてアライメントスコアが最適になるよう整列させる。
【0049】
当業者は、2つのアミノ酸配列を整列させるために用いることができる確立されたアルゴリズムが多く存在することを理解している。Pearson and Lipmanの「FASTA」類似性検索アルゴリズムは、本明細書に開示されたアミノ酸配列と推定の変異体のアミノ酸配列が共有する同一性のレベルを調べるための適当なタンパク質アライメント法である。FASTAアルゴリズムは、Pearson and Lipman, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444(1988)、およびPearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)に記載されている。簡潔には、FASTAは、最初に、保存的なアミノ酸置換、挿入または欠失を考慮することなく、照会する配列(即ち、配列番号2)および最も高い同一性の密度(ktup変数が1である場合)または同一の対(ktup=2の場合)のいずれかを有する試験配列が共有する領域を同定することによって配列の類似性を特徴付ける。次いで、最も高い同一性の密度を有する10の領域を、アミノ酸置換マトリクスを用いてすべての対のアミノ酸の類似性を比較することによって再スコア化し、その領域の末端を、最も高いスコア貢献する残基のみを含むように切り取る。「切り捨て(cutoff)」値(配列の長さとktup値に基づいて所定の式によって計算された)よりも大きいスコアを有する領域がいくつか存在する場合は、切取った最初の領域を調べ、その領域が連結してgapを有する近似アライメントを形成することができるかどうかを決定する。最後に、2つのアミノ酸配列の最も高いスコアの領域を、アミノ酸挿入および欠失を許容する、Needleman-Wunsch- Sellers algorithm (Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol.48:444 (1970); Sellers, SIAM J. Appl. Math. 26:787 (1974))を用いて整列させる。FASTA分析に好ましいパラメーターは、以下のとおりである:ktup=1, ギャップオープニングペナルティ=10, ギャップ伸長ペナルティ=1、および置換マトリクス=BLOSUM62。これらのパラメータは、Appendix 2 of Pearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)において説明されているように、スコアリングマトリクスファイル(「SMATRIX」)に修飾を施してFASTAプログラムに導入することができる。
【0050】
FASTAは、上記の比率を用いて核酸分子の配列同一性を決定するために用いることもできる。ヌクレオチド配列の比較に関して、ktup値は、1〜6の範囲内であり得、好ましくは3〜6の範囲、最も好ましくは3であり、その他のパラメータは既定値である。
【0051】
同一性の百分率における変化は、例えばアミノ酸置換、挿入または欠失に起因し得る。アミノ酸置換は1対1のアミノ酸の置き換えとして定義される。置換されたアミノ酸が類似の構造的および/または化学的性質を有する場合、置換は保存的である。保存的置換の例は、イソロイシンまたはバリンによるロイシンの置換、グルタミン酸塩によるアスパラギン酸塩の置換、またはセリンによるスレオニンの置換である。
【0052】
アミノ酸挿入または欠失は、アミノ酸配列への、またはその内部での変化である。これらは典型的には約1ないし5アミノ酸の範囲で起こる。P2Y15GPCRポリペプチドの生物学的または免疫学的活性を廃絶することなく、どのアミノ酸残基が置換、挿入または欠失できるかを決定する際の指針は、当分野で周知のコンピュータープログラム、例えばDNASTARソフトウェアを用いて見出すことができる。アミノ酸変化が生物学的に活性なP2Y15GPCRポリペプチドを生じるかどうかは、リガンドへの結合について分析することにより、または例えば以下の具体的な実施例に記載した機能分析により容易に決定することができる。
【0053】
融合タンパク質
融合タンパク質は、P2Y15GPCRポリペプチドアミノ酸配列に対する抗体の作製に、そして様々な検定系での使用に有用である。例えば、融合タンパク質は、P2Y15GPCRポリペプチドの一部と相互作用するタンパク質の同定に使用できる。タンパク質親和クロマトグラフィーまたはタンパク質−タンパク質相互作用のためのライブラリーに基づく検定、例えば酵母2−ハイブリッドまたはファージディスプレイ系をこの目的のために使用できる。このような方法は当分野で周知であり、薬物スクリーニングとしても使用できる。
【0054】
P2Y15GPCRポリペプチド融合タンパク質は、ペプチド結合により融合した2のポリペプチドセグメントを含んでいる。第一のポリペプチドセグメントは、配列番号2に示すアミノ酸配列から選択される少なくとも10、12、15、20、24、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、または325個の連続アミノ酸、または上記に記載したようなその生物学的に活性な変異体を含む。融合タンパク質において用いるための連続アミノ酸は、配列番号2に示したアミノ酸配列から、または上記に記載したようなその配列の生物学的に活性な変異体から、選択することができる。第一のポリペプチドセグメントはまた、完全長P2Y15GPCRを含むことができる。
【0055】
第2のポリペプチドセグメントは、完全長タンパク質またはタンパク質断片であってよい。融合タンパク質の組み立てに一般的に使用するタンパク質は、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、自己蛍光タンパク質(青色蛍光タンパク質(BFP)を包含する)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)を包含する。さらに、融合タンパク質の組み立てには、ヒスチジン(His)標識、FLAG標識、インフルエンザへマグルチニン(HA)標識、Myc標識、VSV−G標識、およびチオレドキシン(Trx)標識を包含するエピトープ標識を使用する。その他の融合組み立て物は、マルトース結合タンパク質(MBP)、S−標識、Lex a DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4 DNA結合ドメイン融合物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物を包含する。融合タンパク質はさらに、P2Y15GPCRポリペプチドコード配列とヘテロローガスタンパク質配列の間に位置する開裂部位を含むよう組み立てることができ、その結果、このP2Y15GPCRポリペプチドが開裂して、ヘテロローガス部分から精製することができる。
【0056】
融合タンパク質は当分野で周知のように化学合成できる。好ましくは、融合タンパク質は二つのポリペプチドセグメントを共有結合で連結することにより、または分子生物学分野で標準的な方法により調製する。例えば、当分野で知られているように、第2のポリペプチドセグメントをコードしているヌクレオチドを有する適切なリーディングフレームに配列番号1から選ばれるコード配列を含む、DNA組み立て物を作製し、このDNA組み立て物を宿主細胞で発現させる事による組換えDNA法を用いて、融合タンパク質を調製できる。融合タンパク質を組み立てるための多くのキットは、Promega Corporation(Madison, WI)、Stratagene(La Jolla, CA)、CLONTECH(Mountain View, CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)、MBL international Corporation(MIC; Watertown, MA)、およびQuantum Biotechnologies(Montreal, Canada; 1-888-DNA-KITS)等から入手できる。
【0057】
種相同体の同定
P2Y15GPCRポリヌクレオチド(下記)を使用して他の種、例えばマウス、サル、または酵母由来のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングするために好適なプローブまたはプライマーを作製し、P2Y15GPCRポリペプチドの相同体をコードしているcDNAを同定し、そして当分野で周知のようにこのcDNAを発現させて、ヒトP2Y15GPCRポリペプチドの種相同体を得ることができる。
【0058】
ヒトP2Y15 GPCRポリペプチドの種相同体はまた、プログラムtblastn を用い、National Center for Biotechnology InformationのGenbankデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov) において、ヒトまたは他の種のP2Y15ポリペプチド配列をクエリとして用いて検索を行うことによっても得ることができる。P2Y15のマウスオルソログはアクセス番号XP_139267で見つけられる。
【0059】
ポリヌクレオチド
P2Y15GPCRポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であってよく、P2Y15GPCRポリペプチドのコード配列またはこのコード配列の相補体を含んでいる。配列番号2をコードするヌクレオチド配列を配列番号1に示す。
【0060】
ヒトP2Y15GPCRポリペプチドをコードしている縮重ヌクレオチド配列、および、配列番号1、3または5に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50、55、60、65、70%、より好ましくは約75、90、96、または98%一致するホモローガスなヌクレオチド配列またはこれらの相補物もまた、P2Y15GPCRポリヌクレオチドである。二つのポリヌクレオチド配列間の配列一致パーセントは、ALIGNのようなコンピュータープログラムを用いて決定するが、これは、ギャップオープンペナルティー−12およびギャップエクステンションペナルティー−2によるアフィンギャップ検索を用いるFASTAアルゴリズムを使用するものである。相補的DNA(cDNA)分子、種相同体および生物学的に活性なP2Y15GPCRポリペプチドをコードするP2Y15GPCRポリヌクレオチドの変異体もやはりP2Y15GPCRポリヌクレオチドである。
【0061】
ポリヌクレオチド変異体および相同体の同定
上記のP2Y15GPCRポリヌクレオチドの変異体および相同体もまたP2Y15GPCRポリヌクレオチドである。典型的には、P2Y15GPCRポリヌクレオチド配列は、当分野で周知のように、ストリンジェントな条件下で候補ポリヌクレオチドを既知のP2Y15GPCRポリヌクレオチドにハイブリダイズすることにより同定できる。例えば、以下の洗浄条件 -- 2X SSC(0.3M NaCl、0.03Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.1%SDS、室温で2回、各々30分間;次いで2X SSC、0.1%SDS、50℃ 1回、30分間;次いで2X SSC、室温 2回、各々10分間 -- を使用して、最大約25−30%の塩基対ミスマッチを含むホモローガス配列を同定できる。より好ましくは、ホモローガス核酸鎖は15−25%の塩基対ミスマッチを、さらに好ましくは5−15%の塩基対ミスマッチを含む。
【0062】
本明細書に開示するP2Y15GPCRポリヌクレオチドの種相同体はさらに、適当なプローブまたはプライマーを作製し、他の種、例えばマウス、サル、または酵母由来のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることによって同定できる。P2Y15GPCRポリヌクレオチドのヒト変異体は、例えばヒトcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることにより同定できる。二本鎖DNAのTは相同性が1%低下する毎に1−1.5℃低下することがよく知られている(Bonner et al., J.Mol.Biol. 81,123(1973))。故にP2Y15GPCRポリヌクレオチドの変異体または他の種のP2Y15GPCRポリヌクレオチドは、推定のホモローガスP2Y15GPCRポリヌクレオチドを、配列番号1のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその相補物とハイブリダイズさせて被験ハイブリッドを作製することによって同定できる。被験ハイブリッドの融解温度を、完全に相補的なヌクレオチド配列を有するトランスホルミラーゼポリヌクレオチドを含むハイブリッドの融解温度と比較し、被験ハイブリッドの中の塩基対ミスマッチのパーセント数を算出する。
【0063】
ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件に従いP2Y15GPCRポリヌクレオチドまたはその相補物とハイブリダイズするヌクレオチド配列もまたP2Y15GPCRポリヌクレオチドである。ストリンジェントな洗浄条件は当分野で周知且つ理解されており、例えばSambrook et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2d ed., 1989, 9.50-9.51頁に開示されている。
【0064】
典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のためには、温度と塩濃度の組み合わせを、検討中のハイブリッドの理論的Tよりおよそ12−20℃低くなるよう選択すべきである。配列番号1、3または5に示すヌクレオチド配列を有するP2Y15GPCRポリヌクレオチドまたはその相同体と、それらのヌクレオチド配列のいずれか1つと少なくとも約50、55、60、65、70、より好ましくは約75、90、96、または98%一致するポリヌクレオチド配列とのハイブリッドのTは、例えばBolton and McCarthy, Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A. 48,1390(1962)の式:
=81.5℃−16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/l)、
[式中、l=塩基対で表したハイブリッドの長さ]
を用いて算出できる。
【0065】
ストリンジェントな洗浄条件としては例えば、4X SSC(65℃)、または50%ホルムアミド、4X SSC(42℃)、または0.5X SSC、0.1%SDS(65℃)が挙げられる。高度ストリンジェントな洗浄条件は、例えば0.2X SSC(65℃)などである。
【0066】
ポリヌクレオチドの調製
P2Y15GPCRポリヌクレオチドは、膜構成成分、タンパク質および脂質といった他の細胞成分を含まないよう単離できる。ポリヌクレオチドは細胞から調製でき、標準的核酸精製技術を用いて単離、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅技術を用いて合成、もしくは自動合成機を用いることによって調製できる。ポリヌクレオチドを単離する方法は常套的であり、当分野で知られている。ポリヌクレオチドを取得するためこのような任意の技術を用いて、単離されたP2Y15GPCRポリヌクレオチドを得ることができる。例えば、制限酵素およびプローブを用いてP2Y15GPCRタンパク質を含むポリヌクレオチド断片を単離できる。単離したポリヌクレオチドは、他の分子を少なくとも70、80、または90%含まない調製物である。
【0067】
P2Y15GPCR cDNA分子は、P2Y15GPCR mRNAを鋳型に用いて標準的分子生物学技術にて調製できる。その後P2Y15GPCR cDNA分子は、当分野で周知でありSambrook et al.(1989)のようなマニュアルに開示される分子生物学技術を用いて複製できる。ヒトゲノムDNAまたはcDNAを鋳型に使用して本発明に係るポリヌクレオチドのさらなるコピーを得るため、PCRのような増幅技術を用いることができる。
【0068】
別法として、合成化学技術を用いてP2Y15GPCRポリヌクレオチドを合成することもできる。遺伝コードの縮重は、例えば配列番号2、4または6に示すアミノ酸配列を有するP2Y15GPCRポリペプチドまたはその生物学的に活性な変異体をコードする、別のヌクレオチド配列の合成を可能にする。
【0069】
ポリヌクレオチドの伸張
PCRに基づく様々な方法を用いて本明細書に開示の核酸配列を伸長させ、プロモーターおよび調節要素といった上流配列を検出することができる。例えば制限部位PCRは、既知の座に隣接する未知配列を回収するため、普遍的プライマーを使用する(Sarkar, PCR Methods Applic. 2,318-322,1993)。まず、ゲノムDNAを、リンカー配列に対するプライマーおよび既知領域に対し特異的なプライマーの存在下で増幅する。次に、増幅させた配列を、同じリンカープライマーおよび最初のものの内部にある別の特異的プライマーを用いる第二回目のPCRに付す。各回のPCRの産物を適当なRNAポリメラーゼで転写し、逆転写酵素を用いて配列決定する。
【0070】
既知領域に基づく異なるプライマーを用いて配列を増幅または伸長するために、逆PCRを使用することもできる(Triglia et al., Nucleic Acids Res. 16,8186,1988)。OLIGO 4.06 Primer Analysisソフトウェア(National Biosciences Inc., Plymouth, Minn.)のような市販ソフトウェアを用いて、長さ22−30ヌクレオチド長、50%またはそれ以上のGC含有量を持ち、約68−72℃の温度で標的配列とアニーリングするプライマーを設計できる。この方法は、遺伝子の既知領域に適当な断片を作り出す幾つかの制限酵素を使用する。次いでこの断片を分子内ライゲーションにより環化し、PCR鋳型として使用する。
【0071】
使用できるもう一つの方法は、ヒトおよび酵母人工染色体DNA中の既知配列に隣接するDNA断片のPCR増幅を含む、捕捉PCRである(Lagerstrom et al., PCR Methods Applic. 1,111-119,1991)。この方法では、作製した二本鎖配列を、PCRの実施前に当該DNA分子の未知断片中に入れるため、さらに複数の制限酵素消化とライゲーションを行うことができる。
【0072】
未知配列を回収するために使用できるもう一つの方法はParker et al., Nucleic Acids Res. 19,3055-3060,1991の方法である。加えて、PCR、入れ子式(nested)プライマー、およびPROMOTERFINDERライブラリー(CLONTECH, Palo Alto, Calif.)を用いてゲノムDNAを移動させることができる(CLONTECH, Palo Alto, Calif.)。このプロセスはライブラリーをスクリーニングする必要性を排除し、イントロン/エクソン接合点の発見に有用である。
【0073】
スクリーニングで完全長cDNAを求める場合、より大きなcDNAを含むようサイズ選択したライブラリーを使用するのが望ましい。遺伝子の5’領域を含む配列をより多く含んでいるという点で、無作為プライミングしたライブラリーが好ましい。無作為プライミングしたライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを産生しない状況で特に好ましいであろう。ゲノムライブラリーは、配列を5’非転写調節領域へと伸長させるのに有用であり得る。
【0074】
市販品が入手可能な毛細管電気泳動系を用いて、PCRまたは配列決定産物のサイズを分析、またはヌクレオチド配列を確認することができる。例えば、毛細管配列決定は、電気泳動分離用の流動性ポリマー、レーザー励起する4種の異なる蛍光色素(各ヌクレオチドにつき1種ずつ)、および電荷結合素子カメラによる放射された波長の検出を利用することができる。出力/光強度は適当なソフトウェア(例えばGENOTYPERおよびSequence NAVIGATOR、Perkin Elmer)を用いて電気信号に変換でき、試料のロードからコンピューター分析および電子的データ表示に至る全プロセスをコンピューター管理することができる。毛細管電気泳動は、特定の試料中に限られた量で存在するかも知れないDNAの小片を配列決定するのに特に好ましい。
【0075】
ポリペプチドの取得
P2Y15GPCRポリペプチドは、例えば細胞からの精製によって、P2Y15GPCRポリヌクレオチドの発現によって、または直接的化学合成によって取得できる。
【0076】
タンパク質精製
P2Y15 GPCRポリペプチドは、P2Y15 GPCRヌクレオチドでトランスフェクトされた宿主細胞を含むこの受容体を発現する任意の細胞から精製することができる。精製されたP2Y15 GPCRポリペプチドは、細胞内でP2Y15 GPCRポリペプチドに通常付随するその他の化合物、例えばある種のタンパク質、炭水化物または脂質から、当分野で周知の方法を用いて分離する。このような方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画、イオン交換クロマトグラフィー、親和クロマトグラフィー、および調製用ゲル電気泳動を包含するが、これらに限定されない。
【0077】
P2Y15 GPCRポリペプチドは、以下の実施例に記載するように、付随するGタンパク質ともに複合体として便利に単離することができる。精製されたP2Y15 GPCRポリペプチドの調製物は少なくとも80%純粋であり、好ましくは該調製物は90%、95%、または99%純粋である。調製物の純度はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような当分野で既知の任意の手段によって評価できる。
【0078】
ポリヌクレオチドの発現
P2Y15GPCRポリヌクレオチドを発現させるため、挿入されたコード配列の転写と発現に必要な要素を含む発現ベクター中にそのポリヌクレオチドを挿入することができる。P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列および適当な転写および翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを組み立てるため、当業者に周知の方法が利用できる。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えがある。このような技術は、例えばSambrook et al.(1989)およびAusubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York., 1989に記載されている。
【0079】
様々な発現ベクター/宿主系が、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列を含みそして発現させるために利用できる。これらには、微生物、例えば組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換された細菌;酵母発現ベクターにより形質転換された酵母、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)により感染させた昆虫細胞系、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)、もしくは細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)により形質転換された植物細胞系、または動物細胞系が包含されるがこれらに限定される訳ではない。
【0080】
調節エレメントまたは調節配列は、宿主細胞タンパク質と相互作用して転写と翻訳を実行する、ベクターの非翻訳領域 --エンハンサー、プロモーター、5’および3’非翻訳領域--である。このようなエレメントはその強さと特異性において異なっている。利用するベクター系および宿主に応じて、構成的および誘導的プロモーターを包含する、多数の好適な転写および翻訳エレメントを使用できる。例えば、細菌系でクローニングを行う場合、BLUESCRIPTファージミド(Stratagene, LaJolla,Calif.)またはpSPORT1プラスミド(Life Technologies)等のハイブリッドlacZプロモーターのような誘導的プロモーターを使用できる。バキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターは昆虫細胞に使用できる。植物細胞のゲノムから(例えば熱ショック、RUBISCO、および貯蔵遺伝子)、または植物ウイルスから(例えば、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列)誘導したプロモーターまたはエンハンサーを該ベクター中にクローニングすることができる。哺乳動物細胞系では、哺乳動物遺伝子由来の、または哺乳動物ウイルス由来のプロモーターが好ましい。P2Y15GPCRポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を複数コピー含むセルラインを作製する必要がある場合は、SV40またはEBVに基づくベクターを適当な選択マーカーと共に使用することができる。
【0081】
細菌および酵母発現系
細菌系では、P2Y15GPCRポリペプチドに対して意図する用途に応じて数多くの発現ベクターを選択できる。例えば、抗体の誘導のため大量のP2Y15GPCRポリペプチドが必要である場合は、容易に精製できる融合タンパク質の高レベル発現を指令するベクターが使用できる。このようなベクターは、BLUESCRIPT(Stratagene)のような多機能E.coliクローニングおよび発現ベクターを包含するが、これに限定される訳ではない。BLUESCRIPTベクターにおいては、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列を、β−ガラクトシダーゼのアミノ末端Metとこれに続く7残基の配列と共にフレーム内で該ベクター中にライゲーションすることができ、その結果ハイブリッドタンパク質が産生される。pINベクター(Van Heeke & Schuster, J.Biol.Chem. 264,5503-5509,1989)またはpGEXベクター(Promega, Madison, Wis.)もまた、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を伴う融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるのに使用できる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズに吸着させ、その後遊離グルタチオンの存在下で溶離することにより、溶菌させた細胞から容易に精製できる。このような系で調製したタンパク質は、ヘパリン、トロンビン、または第Xa因子プロテアーゼ開裂部位を含むよう設計でき、その結果、目的とするクローンポリペプチドをGST部分から随意に解放することができる。
【0082】
酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいては、α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHのような構成的または誘導的プロモーターを含む幾つかのベクターが使用できる。総説としてAusubel et al.(1989)およびGrant et al., Methods Enzymol. 153,516-544,1987を参照されたい。
【0083】
植物および昆虫発現系
植物発現ベクターを使用する場合、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列の発現は、幾つかのプロモーターのうち任意のものにより駆動できる。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターのようなウイルスプロモーターを、単独で、またはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて使用できる(Takamatsu, EMBO J. 6,307-311,1987)。別法として、RUBISCOの小サブユニットのような植物プロモーターまたは熱ショックプロモーターを使用することもできる(Coruzzi et al., EMBO J. 3,1671-1680,1984;Broglie et al., Science 224,838-843,1984;Winter et al., Results Probl.Cell Differ. 17,85-105,1991)。これらの組み立て物は、直接DNA形質転換または病原体仲介トランスフェクションにより植物細胞中に導入できる。このような技術は幾つかの一般に入手可能な総説に記載されている(例えば、HobbsまたはMurray、MCGRAW HILL YEARBOOK OF SCIENCE AND TECHNOLOGY, McGraw Hill, New York, N.Y., pp191-196,1992)。
【0084】
昆虫系もまたP2Y15GPCRポリペプチドの発現に使用できる。例えば、係る系の1つAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)は、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusiaの幼虫で外来遺伝子を発現させるベクターとして使用する。P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列を、ポリヘドリン遺伝子のような該ウイルスの非必須領域中にクローニングし、ポリヘドリンプロモーターの調節下に置くことができる。P2Y15GPCRポリペプチドをうまく挿入すると、ポリヘドリン遺伝子は不活性化し、コートタンパク質を欠く組換えウイルスが生成する。次いでこの組換えウイルスをS.frugiperda細胞またはTrichoplusiaの幼虫への感染に使用し、そこでP2Y15GPCRポリペプチドを発現させることができる(Engelhard et al., Proc.Nat.Acad.Sci. 91,3224-3227,1994)。
【0085】
哺乳動物発現系
ウイルスに基づく多くの発現系を用いて哺乳動物宿主細胞でP2Y15GPCRポリペプチドを発現させることができる。例えば、発現ベクターとしてアデノウイルスを使用する場合、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列は、後期プロモーターおよび3部に分かれたリーダー配列を含むアデノウイルス転写/翻訳複合体中にライゲーションできる。該ウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域における挿入を用いて、感染宿主細胞においてP2Y15GPCRポリペプチドを発現できる生存ウイルスを取得できる(Logan & Shenk, Proc.Natl.Acad.Sci. 81,3655-3659,1984)。所望により、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーのような転写エンハンサーを用いて哺乳動物宿主細胞での発現を増大させることができる。
【0086】
ヒト人工染色体(HAC)もまた、プラスミドが内包し発現するDNA断片よりも大きなDNA断片の運搬に使用できる。6Mないし10MのHACを組み立て、常套的デリバリー法により細胞に到達させる(例えば、リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、または小胞)。
【0087】
さらに、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列の、より効率的な翻訳を達成するために、特異的開始シグナルを使用できる。係るシグナルはATG開始コドンおよび連続配列を包含する。P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列、その開始コドン、および上流配列を適当な発現ベクター中に挿入した場合、さらなる転写または翻訳調節シグナルは必要ないであろう。しかしながら、コード配列またはその断片のみを挿入した場合は、外因性の翻訳調節シグナル(ATG開始コドンを包含する)を供給すべきである。開始コドンは挿入物全体を確実に翻訳させるために、正しいリーディングフレームになければならない。外因性翻訳エレメントおよび開始コドンは天然および合成両者の様々な起源であってよい。発現の効率は、使用する特定の細胞系に対し適切なエンハンサーを存在させることにより増強できる(Scharf et al., Results Probl.Cell Differ. 20,125-162,1994)。
【0088】
宿主細胞
宿主細胞菌株は、挿入した配列の発現を調節する能力または発現されたP2Y15GPCRポリペプチドを所望の方法でプロセシングできる能力を目的として選択することができる。該ポリペプチドのこのような修飾には、アセチル化、カルボキシ化、グリコシル化、燐酸化、脂質化、およびアシル化が包含されるがこれらに限定されない。該ポリペプチドの「プレプロ」型を開裂する翻訳後プロセシングもまた、正しい挿入、折り畳み、および/または機能を促進するために使用できる。翻訳後活性のための特異的な細胞機構および特徴的メカニズムを持つ異なる宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、1321N1およびWI38)が、American Type Culture Collection(ATCC;10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209)から入手でき、外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実とするために選択できる。
【0089】
組換えタンパク質の、長期高収量産生のために、安定な発現が好ましい。例えば、P2Y15GPCRポリペプチドを安定に発現するセルラインは、ウイルス複製起点および/または内因性発現エレメント、および同じまたは別のベクター上にある選択マーカー遺伝子を含む発現ベクターを使用して、トランスフェクトすることができる。該ベクターの導入に続いて、細胞を強化培地で1−2日間生育させた後、培地を選択培地に交換することができる。選択マーカーの目的は、選択に対する抵抗性を付与することであり、その存在が、導入されたP2Y15GPCR配列を成功裏に発現する細胞の生育と回収を可能にする。安定に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型にとって適当な組織培養技術を用いて増殖させることができる。例えば、ANIMAL CELL CULTURE, R.I.Freshney,ed.,1986を参照されたい。
【0090】
任意の数の選択系を用いて、形質転換されたセルラインを回収することができる。これらには、それぞれtkまたはaprt細胞で使用できる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11,223-32,1977)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22,817-23,1980)遺伝子が包含されるがこれらに限定される訳ではない。さらに、代謝拮抗物質、抗生物質、または除草剤耐性を選択の基準に用いることができる。例えば、dhfrはメソトレキサートに対する耐性を付与し(Wigler et al., Proc.Natl.Acad.Sci. 77,3567-70,1980)nptはアミノグリコシド、ネオマイシンおよびG−418に対する耐性を付与し(Colbere-Garapin et al., J.Mol. Biol. 150,1-14,1981)、そしてalsおよびpatはそれぞれクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する(Murray, 1992,上記)。さらなる選択遺伝子が記載されている。例えば、trpBは細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用するようにさせ、hisDは細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用するようにさせる(Hartman & Mulligan, Proc.Natl.Acad.Sci. 85,8047-51,1988)。アントシアニンのような可視マーカー、β−グルクロニダーゼとその基質GUS、およびルシフェラーゼとその基質ルシフェリンは、形質転換体を同定し、特異的ベクター系に帰すことのできる一過性または安定なタンパク質発現の量を定量するために使用できる(Rhodes et al., Methods Mol.Biol. 55,121-131,1995)。
【0091】
ポリペプチド発現の検出
マーカー遺伝子発現の存在はP2Y15GPCRポリヌクレオチドもまた存在することを示唆しているが、その存在と発現は確認する必要がある。例えば、もしP2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列がマーカー遺伝子配列内部に挿入されるならば、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の不在によって同定できる。あるいは、マーカー遺伝子を、単一のプロモーターの調節下にP2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列とタンデムに並べて位置させることもできる。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は、通常、P2Y15GPCRポリヌクレオチドの発現を示す。
【0092】
あるいは、P2Y15GPCRポリヌクレオチドを含みP2Y15GPCRポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に知られる様々な方法によって同定できる。これらの方法には、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質生検またはイムノアッセイ技術(核酸またはタンパク質の検出および/または定量のための膜、溶液、またはチップに基づく技術を包含する)が包含されるがこれらに限定されない。例えば、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列の存在は、プローブまたは断片またはP2Y15GPCRポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの断片を使用するDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションまたは増幅によって検出できる。核酸増幅に基づく検定は、P2Y15GPCRポリヌクレオチドを含む形質転換体を検出するための、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列から選択されるオリゴヌクレオチドの使用を含む。
【0093】
P2Y15GPCRポリペプチドに対し特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれかを使用して該ポリペプチドの発現を検出および測定するための様々なプロトコルが当分野で知られている。例として、酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化セルソーティング(FACS)がある。P2Y15GPCRポリペプチド上の2個の非干渉性エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる、2部位のモノクローナルに基づくイムノアッセイが使用でき、または、競合的結合検定を使用することができる。これらのそしてその他の検定はHamptom et al., SEROLOGICAL METHODS: A LABORATORY MANUAL, APS Press, St.Paul, Minn., 1990およびMaddox et al., J.Exp.Med. 158,1211-1216,1983)に記載されている。
【0094】
多岐にわたる標識およびコンジュゲーション技術が当業者に知られており、様々な核酸およびアミノ酸検定に使用できる。P2Y15GPCRポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための標識化ハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを調製する手段は、標識したヌクレオチドを使用する、オリゴ標識化、ニック翻訳、末端標識化、またはPCR増幅を包含する。あるいは、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列を、mRNAプローブの産生のためのベクター中にクローニングすることもできる。このようなベクターは当分野で既知であり、市販品が入手でき、標識化ヌクレオチドおよび適当なRNAポリメラーゼ、例えばT7、T3、またはSP6を添加することによりインビトロでのRNAプローブの合成に使用することができる。これらの方法は、市販の様々なキットを用いて実施できる(Amersham Pharmacia Biotech、 Promega、およびUS Biochemical)。検出を容易にするために使用できる適当なリポーター分子または標識には、放射性核種、酵素、および蛍光、化学ルミネセント、または色素生成物質、ならびに基質、補助因子、インヒビター、磁性粒子などが包含される。
【0095】
ポリペプチドの発現および精製
P2Y15GPCRポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列で形質転換させた宿主細胞は、発現と、細胞培養からのタンパク質の回収に適した条件下で培養できる。形質転換細胞により産生されたポリペプチドは、その配列および/または使用したベクターに応じて分泌されまたは細胞内に貯留され得る。当業者には理解できるであろうが、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核または真核細胞膜を通った可溶性P2Y15GPCRポリペプチドの分泌を指令する、または膜結合P2Y15GPCRポリペプチドの、膜挿入を指令する、シグナル配列を含むよう設計できる。
【0096】
上に論じたように、他の組み立て物を用いて、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列を、可溶性タンパク質の精製を促進するポリペプチドドメインをコードしているヌクレオチド配列と結合させることができる。このような精製促進ドメインは、金属キレート化ペプチド、例えば固定化金属上での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするタンパク質Aドメイン、およびFLAGS伸長/親和精製系で利用するドメインが包含されるが、これらに限定されない(Immunex Corp., Seattle, Wash.)。精製ドメインとP2Y15GPCRポリペプチドとの間に開裂可能リンカー配列、例えば第Xa因子またはエンテロキナーゼに特異的なリンカー配列を入れること(Invitrogen, San Diego, CA)もまた、精製を促進するために利用できる。このような発現ベクターの1つは、P2Y15GPCRポリペプチドと、チオレドキシンまたはエンテロキナーゼ開裂部位に先立つ6個のヒスチジン残基とを含む融合タンパク質の発現を提供する。このヒスチジン残基はIMAC(Porath et al., Prot.Exp.Purif. 3,263-281,1992に記載の固定化金属イオン親和クロマトグラフィー)による精製を促進し、一方エンテロキナーゼ開裂部位は融合タンパク質からのP2Y15GPCRポリペプチドの精製手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターはKroll et al., DNA Cell Biol. 12,441-453,1993に開示されている。
【0097】
化学合成
P2Y15GPCRポリペプチドをコードしている配列は、その全体または一部を、当分野で周知の化学的方法を用いて合成できる(Caruthers et al., Nucl.Acids Res.Symp.Ser. 215-223,1980;Horn et al., Nucl.Acids Res.Symp.Ser. 225-232,1980)。あるいは、P2Y15GPCRポリペプチド自身を、そのアミノ酸配列を合成するための化学的方法、例えば固相技術を用いる直接ペプチド合成を用いて調製できる(Merrifield, J.Am.Chem.Soc. 85,2149-2154,1963;Roberge et al., Science 269,202-204,1995)。タンパク質合成は手動技術またはオートメーションを用いて実施できる。自動化合成は、例えばApplied Biosystems 431Aペプチド合成機(Perkin Elmer)を用いて達成できる。所望により、P2Y15GPCRポリペプチドの断片を別々に合成し、化学的方法を用いて合して完全長の分子を調製することもできる。
【0098】
新たに合成したペプチドは、調製用高速液体クロマトグラフイー(例えばCreighton, PROTEINS: STRUCTURES AND MOLECULAR PRINCIPLES, WH Freeman and Co., New York, N.Y., 1983)により実質的に精製できる。合成P2Y15GPCRポリペプチドの組成はアミノ酸分析または配列決定により確認できる(例えばエドマン分解法;Creighton、上記を参照されたい)。さらに、直接合成中にP2Y15GPCRポリペプチドのアミノ酸配列の任意の部分を改変させ、そして/または化学的方法を用いて他のタンパク質由来の配列と合して、変異体ポリペプチドまたは融合タンパク質を調製することができる。
【0099】
改変ポリペプチドの調製
当業者には理解できるであろうが、天然に存在しないコドンを有するP2Y15GPCRポリペプチドコード化ヌクレオチドを調製することは有利であり得る。例えば、特定の原核または真核宿主が好むコドンを選択して、タンパク質発現の速度を増大させ、または所望の性質、例えば天然に存在する配列から産み出される転写物の半減期より長い半減期を持つRNA転写物を調製することができる。
【0100】
本明細書に開示するヌクレオチド配列は、当分野で一般的に知られる方法を用いて、該ポリペプチドまたはmRNA産物のクローニング、プロセシング、および/または発現を修飾する改変を包含する(但しこれらに限定される訳ではない)様々な理由で、P2Y15GPCRポリペプチドコード配列を改変させるように設計できる。無作為断片化によるDNAシャフリングと遺伝子断片および合成オリゴヌクレオチドのPCR再集合を用いてヌクレオチド配列を設計できる。例えば、位置指定突然変異誘発を用いて、新たな制限部位を挿入し、グリコシル化パターンを変え、コドンの優先性を変え、スプライス変異体を調製し、突然変異を導入する等を実施できる。
【0101】
オルソログ
P2Y15 GPCRのマウスオルソログ(GenBank アクセッション番号XP_139267.1; 配列番号 3/アミノ酸配列:配列番号4 )等のオルソログもまた製造することができる。マウスオルソログは、ヒトP2Y15 GPCRアミノ酸配列に対して、85%同一で、88%相同なアミノ酸配列を有する。当業者は、マウスとヒトのタンパク質との間の同一性の程度が高いために、マウスをモデル系として用いて、P2Y15 GPCR活性を引き起こす標的化合物の効果についてスクリーニングし、研究することができるということを認識する。また、マウスをモデル系として用いてP2Y15遺伝子における突然変異の効果またはアレルギー反応が含まれるがこれらに限定されない疾患に対するP2Y15 GPCRの過剰発現または過小発現の効果を研究することもできる。P2Y15 GPCRのマウスオルソログはまた、受容体活性を調節する標的化合物をスクリーニングするための精製されたタンパク質として有用である。このタンパク質はまた、P2Y15 GPCRの構造を解明するための取り組みおよびタンパク質活性を引き起こす小分子の設計に役立てるために精製することもができる。我々は、Genbankのラットゲノムトレース配列サブセットに対してtblastnクエリにおいてマウスのタンパク質配列を用いることにより、P2Y15のラットオルソログを見い出した。コンピュータープログラムTMpredが予測した7回膜貫通領域は、太いオーバーラインと番号TM1-7で表示される。ラットP2Y15配列のGenbankアクセッション番号は、AY191367(配列番号5/アミノ酸配列:配列番号6)である。
【0102】
抗体
当分野で知られているいかなる型の抗体も、P2Y15GPCRポリペプチドのエピトープに特異的に結合するよう作製できる。本明細書で使用する「抗体」とは、無傷の免疫グロブリン分子、およびその断片、例えばFab、F(ab’)、およびFvを包含し、これらはP2Y15GPCRポリペプチドのエピトープに結合できる。典型的には、エピトープを形成するためには少なくとも6、8、10、または12の連続するアミノ酸が必要である。しかしながら、非連続アミノ酸を含むエピトープはより多くの、例えば少なくとも15、25、または50のアミノ酸を必要とするかも知れない。
【0103】
P2Y15GPCRポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体は治療に使用でき、そして免疫化学検定、例えばウェスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学検定、免疫沈降、またはその他の当分野で既知の免疫化学的検定に使用できる。所望の特異性を有する抗体の同定のため、様々なイムノアッセイが使用できる。競合的結合または免疫放射検定のための多数のプロトコルが当分野でよく知られている。このようなイムノアッセイは典型的には、免疫原と、その免疫原に特異結合する抗体との間の複合体形成の測定を含んでいる。
【0104】
典型的には、P2Y15GPCRポリペプチドに特異的に結合する抗体は、免疫化学検定に使用する時、他のタンパク質が提供する検出シグナルより少なくとも5、10、または20倍高い検出シグナルを提供する。好ましくは、P2Y15GPCRポリペプチドに特異結合する抗体は、免疫化学検定で他のタンパク質を検出せず、P2Y15GPCRポリペプチドを溶液から免疫沈降させることができる。
【0105】
P2Y15GPCRポリペプチドは、哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、またはヒトを免疫してポリクローナル抗体を産生させるのに使用できる。所望により、P2Y15GPCRポリペプチドは、担体タンパク質、例えば牛血清アルブミン、チログロブリン、およびスカシガイヘモシアニンとコンジュゲートさせることができる。宿主の種に応じて、免疫学的反応を増大させるために種々のアジュバントを使用できる。このようなアジュバントは、フロイントアジュバント、鉱物性ゲル(例えば水酸化アルミニウム)、および界面活性物質(例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、スカシガイヘモシアニン、およびジニトロフェノール)を包含するがこれらに限定されない。ヒトに使用するアジュバントの中ではBCG(bacilli Calmette-Guerin)およびCorynebacterium parvumが特に有用である。
【0106】
P2Y15GPCRポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体は、培養中の連続的セルラインにより抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いて調製できる。これらの技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV−ハイブリドーマ技術があるがこれらに限定されない(Kohler et al., Nature 256,495-497,1985; Kozbor et al., J.Immunol.Methods 81,31-42,1985; Cote et al., Proc.Natl.Acad.Sci. 80,2026-2030,1983; Cole et al., Mol.Cell Biol. 62,109-120,1984)。
【0107】
さらに、マウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子にスプライシングして適当な抗原特異性と生物活性を持つ分子を得る、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術が利用できる(Morrison et al., Proc.Natl.Acad.Sci. 81,6851-6855,1984; Neuberger et al., Nature 312,604-608,1984; Takeda et al., Nature 314,452-454,1985)。モノクローナルおよびその他の抗体はまた、これを治療に使用した場合に患者が該抗体に対する免疫反応を起こすのを防ぐため、「ヒト化」することができる。このような抗体は、治療に直接使用できるほど配列が充分ヒトに類似しているかも知れず、または幾つかの重要残基の変更を必要とするかも知れない。齧歯類の抗体とヒト配列の間の配列相違は、個々の残基の位置指定突然変異誘発により、または相補性決定領域全体のgratingにより、ヒト配列内の残基と相違する残基を置き換えることによって最小化することができる。別法として、ヒト化抗体はGB2188638Bに記載のように組換え法を用いて調製できる。P2Y15GPCRポリペプチドに特異的に結合する抗体は、米国特許第5,565,332号に開示のように、部分的または完全にヒト化した抗原結合部位を含むことができる。
【0108】
あるいは、当分野で既知の方法を用いて、一本鎖抗体の調製のために記載した技術を適合させ、P2Y15GPCRポリペプチドに特異結合する一本鎖抗体を調製することができる。関連する特異性を持つが別個のイディオタイプ組成を有する抗体を、無作為組み合わせ免疫グロブリンライブラリーから鎖シャフリングによって調製することができる(Burton, Proc.Natl.Acad.Sci. 88,11120-23,1991)。
【0109】
一本鎖抗体はまた、ハイブリドーマcDNAを鋳型に用いて、PCRのようなDNA増幅法を用いて組み立てることができる(Thirion et al., 1996, Eur.J.Cancer Prev. 5,507-11)。一本鎖抗体は単一または二重特異性であり得、また、二価または四価であり得る。四価二重特異性一本鎖抗体の組み立ては例えばColoma & Morrison, 1997, Nat.Biotechnol. 15,159-63に教示されている。二価二重特異性一本鎖抗体の組み立てはMallender & Voss, 1994, J.Biol.Chem. 269,199-206に教示されている。
【0110】
下記のように、一本鎖抗体をコードしているヌクレオチド配列を手動または自動ヌクレオチド合成を用いて組み立て、標準的組換えDNA法を用いて発現組み立て物中にクローニングし、そして細胞中に導入してコード配列を発現させることができる。別法として、一本鎖抗体を、例えば糸状ファージ技術を用いて直接調製することもできる(Verhaar et al., 1995, Int.J.Cancer 61,497-501; Nicholla et al., 1993, J.Immunol.Meth. 165,81-91)。
【0111】
P2Y15GPCRポリペプチドに特異結合する抗体はまた、リンパ球集団においてインビボ産生を誘導することによって、または、文献に開示されている極めて特異的な結合試薬のパネルまたは免疫グロブリンライブラリーをスクリーニングすることによって調製することもできる(Orlandi et al., Proc.Natl.Acad.Sci. 86,3833-3837,1989; Winter et al., Nature 349,293-299,1991)。
【0112】
その他の型の抗体を、本発明方法において組み立て、治療に使用することができる。例えば、WO93/03151に開示のように、キメラ抗体を組み立てることができる。免疫グロブリンから誘導され多価且つ多重特異的である結合タンパク質、例えばWO94/13804に記載の「diabodies」もまた調製できる。
【0113】
本発明に係る抗体は当分野で周知の方法により精製できる。例えば、抗体は、P2Y15GPCRポリペプチドが結合しているカラムを通過させることにより親和精製できる。次いで、結合した抗体を、高い塩濃度の緩衝液を用いてカラムから溶出することができる。
【0114】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のDNAまたはRNA配列に対し相補的なヌクレオチド配列である。いったん細胞中に導入されるとこの相補的ヌクレオチドは、該細胞が産生した天然配列と結合して複合体を形成し、転写または翻訳のいずれかを遮断する。好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドは少なくとも11ヌクレオチド長であるが、少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50またはそれ以上のヌクレオチド長であってもよい。より長い配列もまた使用できる。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子をDNA組み立て物に提供し、上記のように細胞中に導入して、その細胞におけるP2Y15GPCR遺伝子産物のレベルを低下させることができる。
【0115】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはこの両者の組み合わせであってよい。オリゴヌクレオチドは、1つのヌクレオチドの5’末端を、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロアミデート、燐酸エステル、カルバメート、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、カルボネート、および燐酸トリエステルといった非ホスホジエステルヌクレオチド間結合を有する別のヌクレオチドの3’末端と共有結合させることにより、手動で、または自動合成機によって合成できる。Brown, Meth.Mol. Biol. 20,1-8,1994; Sonveaux, Meth.Mol.Biol. 26,1-72,1994; Uhlmann et al., Chem.Rev. 90,543-583,1990を参照されたい。
【0116】
P2Y15GPCR遺伝子の制御、5’、または調節領域と二本鎖を形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することにより、P2Y15GPCR遺伝子発現の修飾が得られる。転写開始部位、例えば開始部位から−10および+10位の間から誘導されるオリゴヌクレオチドが好ましい。同様に、「三重らせん」塩基対合法を用いて阻害を達成できる。三重らせん対合は、二重らせんがポリメラーゼ、転写因子またはシャペロンの結合に足るほど開く能力の阻害を惹起するため、有用である。三本鎖DNAを用いる治療上の進歩が文献に記載されている(例えばGee et al., Huber & Carr, MOLECULAR AND IMMUNOLOGIC APPROACHES, Futura Publishing Co., Mt.Kisco, N.Y., 1994)。転写物がリボソームに結合するのを防ぐことによりmRNAの翻訳を遮断するアンチセンスオリゴヌクレオチドもまた設計できる。
【0117】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとP2Y15GPCRポリヌクレオチドの相補配列との間に好結果の複合体を形成させるためには、正確な相補性は必要ない。例えばP2Y15GPCRポリヌクレオチドに対し正確に相補的である2、3、4、もしくは5またはそれ以上の長さの連続するヌクレオチドであって、その各々が、隣接するP2Y15GPCRタンパク質ヌクレオチドとは相補的ではない連続するヌクレオチドの鎖によって隔てられているものを含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、P2Y15GPCRタンパク質mRNAに対する充分な標的化特異性を提供できる。好ましくは、相補的な連続ヌクレオチドの長さはそれぞれ少なくとも4、5、6、7もしくは8またはそれ以上のヌクレオチド長である。非相補的な介在配列は、好ましくは1、2、3、または4ヌクレオチド長である。当業者は、アンチセンス−センスの対の算出融点を容易に使用して、特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドと特定のP2Y15GPCRポリヌクレオチド配列間で寛容されるミスマッチの程度を決定できるであろう。
【0118】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、P2Y15GPCRポリヌクレオチドとハイブリダイズする能力に影響を及ぼすことなく修飾できる。これらの修飾は該アンチセンス分子の内部、または一端もしくは両端である。例えば、ヌクレオシド間のリン酸結合は、アミノ基と末端リボースの間にいろいろな数の炭素残基を有するコレステリルまたはジアミン部分を加えることによって修飾できる。修飾された塩基および/または糖、例えばリボースの代わりのアラビノース、または3’ヒドロキシ基または5’リン酸基が置換されている3’,5’−置換オリゴヌクレオチドもまた修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドに使用できる。これらの修飾オリゴヌクレオチドは当分野で周知の方法により調製できる。例えば、Agrawal et al., Trends Biotechnol. 10,152-158,1992; Uhlmann et al., Chem.Rev. 90,543-584,1990; Uhlmann et al., Tetrahedron.Lett. 215,3539-3542,1987を参照されたい。
【0119】
リボザイム
リボザイムは触媒活性を有するRNA分子である。例えば、Cech, Science 236,1532-1539; 1987; Cech, Ann.Rev.Biochem. 59,543-568; 1990, Cech, Curr.Opin.Struct.Biol. 2,605-609; 1992, Couture & Stinchcomb, Trends Genet. 12,510-515, 1996を参照されたい。当分野で知られるように、リボザイムは、RNA配列を開裂することにより遺伝子機能を阻害するのに使用できる(例えば、Haseloff et al., 米国特許5641673)。リボザイムの作用機構は、相補的標的RNAに対するリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションと、その後のエンドヌクレアーゼ的開裂を含む。例には、特異的ヌクレオチド配列のエンドヌクレアーゼ的開裂を特異的且つ効果的に触媒できる、設計されたハンマーヘッドモチーフリボザイム分子がある。
【0120】
P2Y15GPCRポリヌクレオチドのコード配列を用いて、P2Y15GPCRポリヌクレオチドから転写されたmRNAに特異結合するリボザイムを作製できる。他のトランスのRNA分子を極めて配列特異的に開裂できるリボザイムを設計し組み立てる方法が開発され、当分野で記載されている(Haseloff et al. Nature 334,585-591,1988)。例えば、リボザイムの開裂活性は、別個の「ハイブリダイゼーション」領域を該リボザイム中に組み入れることによって、特定のRNAを標的とさせることができる。このハイブリダイゼーション領域は標的RNAに対し相補的な配列を含んでおり、したがってその標的と特異的にハイブリダイズする(例えばGerlach et al., EP321201を参照されたい)。
【0121】
P2Y15GPCRタンパク質RNA標的内部の特異的リボザイム開裂部位は、この標的分子を、以下の配列:GUA、GUU、およびGUCを包含するリボザイム開裂部位についてスキャンすることにより同定できる。同定できたならば、該開裂部位を含む標的RNAの領域に対応する、15および20の間のリボヌクレオチドを有する短いRNA配列を、標的を非機能的にし得る二次構造の特徴について評価できる。さらに、候補のP2Y15GPCRタンパク質RNA標的の適合性を、リボヌクレアーゼ防護検定を用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対する利用可能性を試験することによって評価できる。より長い相補配列を用いて、標的に対するハイブリダイゼーション配列の親和性を増大させることができる。リボザイムのハイブリダイズおよび開裂する領域は、相補領域を介して標的RNAにハイブリダイズする時、リボザイムの触媒領域が標的を開裂し得るといったように、完全に相関している。
【0122】
リボザイムはDNA組み立て物の一部として細胞内に導入できる。マイクロ注入、リポソーム仲介トランスフェクション、電気穿孔、またはリン酸カルシウム沈殿といった機械的方法を用いて、P2Y15GPCRタンパク質発現の低下が望まれる細胞中にリボザイム含有DNA組み立て物を導入することができる。あるいは、細胞がDNA組み立て物を安定的に保持することが望まれる場合は、該組み立て物をプラスミド上で供給し、当分野で知られるように、別個のエレメントとして維持するか、または細胞のゲノム中に組み込むことができる。リボザイムコード化DNA組み立て物は、細胞中のリボザイムの転写を調節するために、プロモーターエレメント、エンハンサーまたはUASエレメント、および転写ターミネーターシグナルといった転写調節エレメントを含み得る。
【0123】
Haseloff et al.,米国特許5641673に教示のように、リボザイムは、標的遺伝子の発現を誘導する因子に応答してリボザイムの発現が起こるように設計することができる。リボザイムはまた、追加レベルの調節を提供するよう設計でき、その結果、mRNAの破壊はリボザイムと標的遺伝子の両者が細胞に誘導された時にのみ起こる。
【0124】
区別的に発現する遺伝子
遺伝子産物がP2Y15GPCRタンパク質と相互作用する遺伝子の同定方法をここに記載する。このような遺伝子は、CNS障害、心疾患、喘息、骨粗鬆症、糖尿病およびCOPDを包含する(但しこれらに限定されない)疾患において区別して(区別的に)発現される遺伝子を表し得る。さらに、そのような遺伝子は、このような疾患の進行または治療に関連する操作に応答して区別的に調節される遺伝子を表し得る。加えて、このような遺伝子は、組織または生物の発生の異なる段階で増大または低下する、一時的に調節される発現を示すことができる。区別的に発現される遺伝子はまた、その発現を、対照対実験条件の下で調節させることができる。さらに、P2Y15GPCR遺伝子または遺伝子産物は、これ自体区別的発現について試験できる。
【0125】
発現が正常対疾病状態で相違する程度は、標準的特性決定技術、例えば区別的ディスプレイ技術によって視覚化されるに充分大きいというだけでよい。発現の相違を視覚化することのできる、その他のこのような標準的特性決定技術は、定量的RT(逆転写酵素)、PCR、およびノーザン分析を包含するが、これらに限定されない。
【0126】
区別的に発現する遺伝子の同定
区別的に発現される遺伝子を同定するためには、目的とする組織から全RNA、または好ましくはmRNAを単離する。例えば、RNA試料は、実験対象の組織から、そして対照となる対象の対応組織から取得する。mRNAの単離に対して不利に選択しない任意のRNA単離技術を、係るRNA試料の精製に利用できる。例えば、Ausubel et al., ed., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, Inc. New York, 1987-1993を参照されたい。当業者に周知の技術、例えばChomczynski、米国特許4843155の一段階RNA単離プロセスを用いて多数の組織試料を容易に処理することができる。
【0127】
区別的に発現される遺伝子が産生したRNAを表す、集められたRNA試料内部の転写物は、当業者に周知の方法により同定する。これらには、例えば、ディファレンシャルスクリーニング(Tedder et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 85,208-12,1988)、差引きハイブリダイゼーション(Hedrick et al., Nature 308,149-53; Lee et al., Proc Natl.Acad.Sci.U.S.A. 88,2825,1984)、および好ましくはディファレンシャルディスプレイ(Liang & Pardee, Science 257,967-71,1992; 米国特許5262311)が包含される。
【0128】
区別的発現の情報はこれ自体、P2Y15GPCRポリペプチドの関与する疾病の治療のための関連法を示唆している。例えば、治療は、区別的に発現される遺伝子および/またはP2Y15GPCRタンパク質をコードしている遺伝子の発現の調節を包含し得る。区別的発現の情報は、区別的に発現される遺伝子もしくは遺伝子産物またはP2Y15GPCRポリペプチド遺伝子もしくは遺伝子産物の活性または発現が、アップレギュレーションであるかダウンレギュレーションであるかを示すことができる。
【0129】
スクリーニング方法
本発明は、P2Y15GPCRポリペプチドまたはP2Y15GPCRポリヌクレオチドに結合する、またはその活性を調節する、試験化合物をスクリーニングするための検定を提供する。試験化合物は好ましくはP2Y15GPCRポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する。より好ましくは、試験化合物は、ホスファターゼ活性を、試験化合物の不在時と比較して少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%低下または増大させる。
【0130】
試験化合物
試験化合物は当分野で既知の薬理学的物質であってよく、または薬理活性を持っていることが前もって分かっていない化合物であってよい。この化合物は天然に存在する、または実験室で設計されたものであってよい。これらは、微生物、動物、または植物から単離されたものであってよく、そして組換え的に調製され、または当分野で既知の化学的方法により合成されたものであってよい。所望により試験化合物は、生物学的ライブラリー、空間的アドレス特定可能な並行固相または液相ライブラリー、デコンボルーションを要する合成ライブラリー法、「一ビーズ一化合物」ライブラリー法、および親和クロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を包含する(但しこれらに限定される訳ではない)当分野で既知の数多くの組み合わせライブラリー法のいずれかを用いて取得できる。生物学的ライブラリーアプローチはポリペプチドライブラリーに限定されているが、他の4種のアプローチはポリペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用できる。Lam, Anticancer Drug Des. 12,145,1997を参照されたい。
【0131】
分子ライブラリーの合成法は当分野でよく知られている(例えば、DeWitt et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 90,6909,1993; Erb et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 91,11422,1994; Zuckermann et al., J.Med.Chem. 37,2678,1994; Cho et al., Science 261,1303,1993; Carell et al., Angew.Chem.Int.Ed.Engl. 33,2059,1994; Carell et al., Angew.Chem.Int.Ed.Engl. 33,2061; Gallop et al., J.Med.Chem. 37,1233,1994を参照されたい)。化合物のライブラリーは溶液で(例えば、Houghten, Biotechniques 13,412-421,1992)、またはビーズ(Lam, Nature 354,82-84,1991)、チップ(Fodor, Nature 364,555-556,1993)、細菌または胞子(Ladner、米国特許5223409)プラスミド(Cull et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 89,1865-1869,1992)、またはファージ(Scott & Smith, Science 249,386-390, 1990; Devlin, Science 249,404-406,1990);Cwirla et al., Proc.Natl.Acad.Sci.97,6378-6382,1990; Felici, J.Mol.Biol. 222,301-310,1991; およびLadner、米国特許5223409)上に提供できる。
【0132】
ハイスループットスクリーニング
試験化合物は、高(ハイ)スループットスクリーニングを用いて、P2Y15GPCRポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する能力、またはP2Y15GPCR活性もしくはP2Y15GPCR遺伝子発現に影響を及ぼす能力についてスクリーニングできる。ハイスループットスクリーニングを使用して、多くの個別的化合物を並行して試験でき、その結果多数の試験化合物を迅速にスクリーニングできる。最も広範に確立されている技術は96ウェル微量定量プレートを利用するものである。この微量定量プレートのウェルは、典型的には50ないし500μlの範囲の検定容量を必要とする。このプレートに加えて、96ウェルフォーマットに適合させた多くの機器、材料、ピペット、ロボット、プレート洗浄機、およびプレート読み取り機が市販されている。
【0133】
別法として、「自由フォーマット検定」、または試料間に物理的障壁を持たない検定が使用できる。例えば、組み合わせペプチドライブラリーのための、単純な均質検定で色素細胞(メラノサイト)を用いる検定が、Jayawickreme et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 19,1614-18(1994)に記載されている。ペトリ皿中のアガロースの下にこの細胞を入れ、次いで組み合わせ化合物を伴っているビーズをアガロースの表面に載せる。組み合わせ化合物はこのビーズから化合物を部分的に放出する。化合物がゲルマトリックス中へと局所的に拡散するにつれて活性化合物が細胞の色の変化を惹起するため、活性化合物を暗色色素領域として視覚化することができる。
【0134】
自由フォーマット検定のもう一つの例は、生体分子スクリーニング学会第1回年次総会(Philadelphia,Pa.、1995年11月7-10日)で報告されたChelsky、「組み合わせライブラリーのスクリーニングのための戦略:新規な、そして伝統的なアプローチ」により記載されている。Chelskyは、カルボニックアンヒドラーゼのための単純な均質酵素検定をアガロースゲルの内部に入れ、その結果ゲル中の酵素がゲル全体に色の変化を惹起するようにさせた。その後、光リンカーを介して組み合わせ化合物を持つビーズをゲル内部に入れ、すると該化合物はUV光により部分的に放出された。酵素を阻害する化合物は、色の変化がより少ない局所阻害領域として観察された。
【0135】
さらに別の例がSalmon et al., Molecular Diversity 2,57-63(1996)に記載されている。この例では、組み合わせライブラリーを、寒天中で生育する癌細胞への細胞毒性効果を有する化合物についてスクリーニングした。
【0136】
もう一つのハイスループットスクリーニング法がBeutel et al.、米国特許5976813に記載されている。この方法では、被験試料を多孔性マトリックスに入れる。次に1またはそれ以上の検定成分を、マトリックス、例えばゲル、プラスチックシート、フィルター、またはその他の形の容易に操作できる固体担体の内部、上、または底に入れる。試料がこの多孔性マトリックスに導入されるとこれらは充分ゆっくりと拡散し、その結果、被験試料が混ざらずに検定が遂行できる。
【0137】
結合検定
結合検定については、試験化合物は好ましくは、例えばP2Y15GPCRポリペプチドの活性部位に結合してこれを占有し、それにより基質がリガンド結合部位に接近できなくさせ、その結果正常な生物活性が妨げられるような小分子またはペプチド様分子である。このような小分子の例は小ペプチドまたはペプチド様分子を包含するが、これらに限定される訳ではない。アデノシンおよびアデノシン一リン酸に加えて、本発明のポリペプチドに結合し得る他の可能性のあるリガンドとしては、既知のGPCRの天然のリガンドおよびそのアナログまたは誘導体が挙げられるがこれに限定されない。GPCRの天然のリガンドとしては、アドレノメデュリン、アミリン、カルシトニン遺伝子関連タンパク質 (CGRP)、カルシトニン、アナンダミン、セロトニン、ヒスタミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、血小板活性化因子、トロンビン、C5a、ブラジキニンおよびケモカインが挙げられる。本発明のポリペプチドと結合し得る他の可能性のあるリガンドとしては、カフェイン、テオフィリン、エンプロフィリンおよびIBMXを含む、アデノシン受容体の特異的および非特異的アゴニストおよびアンタゴニストが挙げられるがこれに限定されない。
【0138】
結合検定では、試験化合物またはP2Y15GPCRポリペプチドのいずれかが検出可能な標識、例えば蛍光、放射性同位元素、化学ルミネセント、または酵素標識(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼ)を含むことができる。そこで、P2Y15GPCRポリペプチドに結合している試験化合物の検出は、例えば放射能の放出を直接計数することにより、またはシンチレーション計数により、または検出可能産物への適当な基質の変換を測定することにより、達成できる。
【0139】
別法として、P2Y15GPCRポリペプチドへの試験化合物の結合を、反応体のいずれをも標識せずに測定することができる。例えば、マイクロフィジオメーターを用いて、試験化合物とP2Y15GPCRポリペプチドとの結合を検出できる。マイクロフィジオメーター(例えばサイトセンサーTM)とは、細胞がその環境を酸性化する速度を光アドレッサブル電位差センサー(LAPS)を用いて測定する分析機器である。この酸性化速度の変化は、試験化合物とP2Y15GPCRポリペプチドの相互作用の指標として使用できる(McConnell et al., Science 257,1906-1912,1992)。
【0140】
試験化合物がP2Y15GPCRポリペプチドに結合する能力の測定はまた、実時間Bimolecular Interaction Analysis(BIA)のような技術を用いて達成できる(Sjolander & Urbaniczky, Anal.Chem. 63,2338-2345,1991、およびSzabo et al., Curr.Opin.Struct.Biol. 5,699-705,1995)。BIAは、いかなる反応体をも標識せずに、生体特異的相互作用を実時間で研究するための技術である(例えばBIAcoreTM)。光学的現象表面プラズモン共鳴(SPR)の変化を、生体分子間の実時間反応の指標に使用できる。
【0141】
本発明のさらに別の態様では、P2Y15GPCRポリペプチドを二ハイブリッド検定または三ハイブリッド検定(例えば、米国特許5283317; Zervos et al., Cell 72,223-232,1993; Madura et al., J.Biol.Chem. 268,12046-12054,1993; Bartel et al., Biotechniques 14,920-924,1993; Iwabuchi et al., Oncogene 8,1693-1696,1993; およびBrent WO94/10300)における「おとりタンパク質」として使用し、P2Y15GPCRポリペプチドに結合またはこれと相互作用してその活性を調節する他のタンパク質を同定することができる。
【0142】
二ハイブリッド系は殆どの転写因子のモジュール的性格に基づくものであり、それは、分離可能なDNA結合および活性化ドメインから成っている。簡潔に述べると、この検定は二種の異なるDNA組み立て物を利用する。例えば、一方の組み立て物においては、P2Y15GPCRポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドが、既知の転写因子のDNA結合ドメインをコードしているポリヌクレオチドに融合できる(例えばGAL−4)。別の組み立て物においては、未同定タンパク質(「餌」または「試料」)をコードしているDNA配列が、既知の転写因子の活性化ドメインをコードしているポリヌクレオチドに融合できる。もし「おとり」および「餌」タンパク質がインビボで相互作用してタンパク質依存複合体を形成できたならば、該転写因子のDNA結合および活性化ドメインは極めて近位に招来される。この近位性が、転写因子に応答する転写調節部位と機能的に結合しているリポーター遺伝子(例えばLacZ)の転写を可能にする。リポーター遺伝子の発現が検出でき、機能的転写因子を含む細胞コロニーを単離し、P2Y15GPCRポリペプチドと相互作用するタンパク質をコードしているDNA配列取得に使用することができる。
【0143】
反応体の一方または両方の非結合型からの結合型の分離を促進するため、そして検定の自動化の便宜を図るため、P2Y15GPCRポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物のいずれかを固定化することが望ましいかも知れない。したがって、この酵素ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物のいずれかを固体支持体に結合させることができる。好適な固体支持体は、ガラスまたはプラスチックスライド、組織培養プレート、微量定量ウェル、管、シリコンチップ、またはビーズ(ラテックス、ポリスチレン、またはガラスビーズを包含するがこれらに限定されない)のような粒子を包含するがこれらに限定されない。共有および非共有結合、受動吸収、またはそれぞれポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物に付着させた結合部分と固体支持体の対、の使用を包含する、当分野で既知の任意の方法を用いて酵素ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物を固体支持体に付着させることができる。試験化合物は好ましくは整列して固体支持体に結合させ、その結果個々の試験化合物の位置を追跡することができる。P2Y15GPCRポリペプチド(またはポリヌクレオチド)への試験化合物の結合は、反応体を入れるのに適した任意の容器で達成できる。係る容器の例には微量定量プレート、試験管、および微量遠沈管がある。
【0144】
一つの態様において、P2Y15GPCRポリペプチドは、P2Y15GPCRポリペプチドを固体支持体に結合させるドメインを含む融合タンパク質である。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質をグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical)上またはグルタチオン誘導体化微量定量プレート上に吸着させ、次いでこれを試験化合物または試験化合物および非吸着P2Y15GPCRポリペプチドに合し;次にこの混合物を複合体形成が行われる条件下でインキュベートする(例えば、塩およびpHに関して生理的条件)。インキュベーションの後、ビーズまたは微量定量プレートのウェルを洗浄して未結合成分を除去する。反応体の結合は上記のように直接的または間接的に測定できる。別法として、複合体を固体支持体から解離させた後に結合を測定することもできる。
【0145】
本発明に係るスクリーニング検定には、タンパク質またはポリヌクレオチドを固体支持体上に固定化するためのその他の技術を使用することもできる。例えば、P2Y15GPCRポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物のいずれかを、ビオチンとストレプトアビジンのコンジュゲーションを利用して固定化できる。当分野で周知の技術(例えばビオチニル化キット、Pierce Chemicals, Rockford,Ill.)を用いて、ビオチニル化したP2Y15GPCRポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物をビオチン−NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジン被覆した96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化できる。別法として、P2Y15GPCRポリペプチド、ポリヌクレオチド、または試験化合物に特異的に結合するが、所望の結合部位、例えばP2Y15GPCRポリペプチドの活性部位に干渉しない抗体をプレートのウェルに誘導体化することができる。未結合の標的またはタンパク質が抗体コンジュゲーションによりウェル中に捕捉できる。
【0146】
GST−固定化複合体について上に記載した方法に加え、このような複合体を検出する方法には、P2Y15GPCRポリペプチドまたは試験化合物に特異結合する抗体を用いる、複合体の免疫検出、P2Y15GPCRポリペプチドの活性検出へと引き継がれる酵素結合検定、および非還元条件下でのSDSゲル電気泳動がある。
【0147】
P2Y15GPCRポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合する試験化合物を求めるスクリーニングは、無傷の細胞で実施することもできる。P2Y15GPCRポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む任意の細胞が、細胞に基づく検定系で使用できる。P2Y15GPCRポリヌクレオチドは細胞中に天然に存在し、または上記のような技術を用いて導入できる。P2Y15GPCRポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対する試験化合物の結合は、上記のように測定する。
【0148】
機能検定
P2Y15GPCRポリペプチドの生物学的効果を増大または低下させる能力について被験化合物を試験できる。そのような生物学的効果は、下記の具体的実施例に記載の機能検定を用いて測定できる。機能検定は、精製したP2Y15GPCRポリペプチド、細胞膜調製物、または無傷の細胞を被験化合物と接触させた後に実施できる。P2Y15GPCR活性を少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%低下させる被験化合物を、P2Y15GPCRの機能的活性を低下させる可能性ある物質として同定する。P2Y15GPCR活性を少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%増大させる被験化合物を、P2Y15GPCR活性を増大させる可能性ある物質として同定する。
【0149】
このようなスクリーニング方法の1つは、P2Y15GPCRポリペプチドを発現するようトランスフェクトしたメラニン保有細胞の使用を含む。係るスクリーニング技術は1992年2月6日公開のWO92/01810に記載されている。したがって、例えばこのような検定を使用して、該レセプターを含むメラニン保有細胞を、レセプターリガンドと、スクリーニングされる被験化合物の両者に接触させることにより、レセプターポリペプチドの活性化を阻害する化合物を求めるスクリーニングができる。リガンドが生成するシグナルの阻害は、被験化合物がそのレセプターについての可能性あるアンタゴニストであること、即ち該レセプターの活性化を阻害することを示す。このスクリーニングは、係る細胞をスクリーニングすべき化合物と接触させることにより、レセプターを活性化する被験化合物を同定するために、そして各被験化合物がシグナルを生成するかどうか、即ちレセプターを活性化するかどうかを決定するために使用できる。
【0150】
その他のスクリーニング技術は、レセプター活性化により惹起される細胞外pH変化を測定する系においてヒトP2Y15GPCRポリペプチドを発現する細胞(例えば、トランスフェクトされたCHO細胞)を使用することを包含する(例えばScience 246,181-296,1989を参照されたい)。例えば、被験化合物をヒトP2Y15GPCRポリペプチドを発現する細胞に接触させ、二次メッセンジャー反応、例えばシグナル伝達またはpH変化を測定して、被験化合物が該レセプターを活性化するか阻害するかを決定できる。
【0151】
別のこのようなスクリーニング技術は、ヒトP2Y15GPCRポリペプチドをコードしているRNAをXenopus卵母細胞内に導入し、該レセプターを一過性発現させることを含む。次いでトランスフェクトさせた卵母細胞をレセプターリガンドおよびスクリーニングすべき被験化合物に接触させ、その後、該レセプターの活性化を阻害すると思われる被験化合物についてスクリーニングする場合は、カルシウムシグナルの活性化または阻害の検出を行う。
【0152】
別のスクリーニング技術は、レセプターがホスホリパーゼCまたはDに結合している細胞でヒトP2Y15GPCRポリペプチドを発現させることを含む。このような細胞には、内皮細胞、平滑筋細胞、胚性腎細胞などがある。スクリーニングは上記のように、ホスホリパーゼ活性の変化から該レセプターの活性化程度を定量することにより達成できる。
【0153】
上に記載のような機能検定の詳細は、下記の具体的実施例に提供する。
【0154】
遺伝子発現
別の態様では、P2Y15GPCR遺伝子の発現を増大または減少させる被験化合物を同定する。P2Y15GPCRポリヌクレオチドを被験化合物と接触させ、RNAまたはP2Y15GPCRポリヌクレオチドのポリペプチド産物の発現を測定する。被験化合物存在下での適当なmRNAまたはポリペプチドの発現レベルを、該被験化合物不在下でのmRNAまたはポリペプチドの発現レベルと比較する。すると被験化合物が、この比較に基づく発現のモジュレーターとして同定できる。例えば、mRNAまたはポリペプチドの発現が、被験化合物の不在時よりも存在時により大きい場合は、この被験化合物を、該mRNAまたはポリペプチド発現の刺激物質または増強物質と同定する。あるいは、mRNAまたはポリペプチドの発現が、被験化合物の不在時よりも存在時により小さい場合は、この被験化合物を、該mRNAまたはポリペプチド発現のインヒビターと同定する。
【0155】
細胞におけるP2Y15GPCRmRNAまたはポリペプチド発現のレベルは、mRNAまたはポリペプチドを検出するための当分野で周知の方法により決定できる。定性または定量的方法のいずれかが使用できる。P2Y15GPCRポリヌクレオチドのポリペプチド産物の存在は、例えばラジオイムノアッセイのような免疫化学的方法、ウエスタンブロッティング、および免疫組織化学を包含する、当分野で周知の様々な技術を用いて決定できる。別法として、ポリペプチド合成は、P2Y15GPCRポリペプチド内への標識アミノ酸の取り込みを検出することにより、インビボで、細胞培養で、またはインビトロ翻訳系で決定できる。
【0156】
このようなスクリーニングは、無細胞検定系または無傷の細胞のいずれかで実施できる。P2Y15GPCRポリヌクレオチドを発現するいかなる細胞も細胞に基づく検定系で使用できる。P2Y15GPCRポリヌクレオチドは細胞内に天然に存在するか、または上記のような技術を用いて導入することができる。一次培養または確立されたセルライン、例えばCHOまたはヒト胚性腎293細胞のいずれかを使用できる。
【0157】
医薬組成物
本発明はさらに、治療効果を達成するために患者に投与できる医薬組成物を提供する。本発明に係る医薬組成物は、例えばP2Y15GPCRポリペプチド、P2Y15GPCRポリヌクレオチド、P2Y15GPCRポリペプチドに特異的に結合する抗体、または類似体、アゴニスト、アンタゴニスト、またはP2Y15GPCRポリペプチド活性のインヒビターを含み得る。この組成物は単独で、または少なくとも1種類の他の物質、例えば安定化化合物と組み合わせて投与でき、これは、食塩水、緩衝化食塩水、デキストロース、および水を包含する(但しこれらに限定されない)任意の無菌で生物学的適合性のある製薬的担体中で投与できる。この組成物は単独で、または他の物質、薬物またはホルモンと組み合わせて患者に投与できる。
【0158】
活性成分に加えてこれらの医薬組成物は、賦形剤および補助物質を含む適当な製薬的に許容し得る担体を含有でき、これらは、製薬的に使用できる調製物への活性化合物の処理を促進する。本発明に係る医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下、または直腸手段を包含する(但しこれらに限定されない)多くの経路により投与できる。経口投与用医薬組成物は、当分野で既知の製薬的に許容し得る担体を用いて経口投与に適した用量に調合できる。このような担体により、該医薬組成物を、患者が内服するための錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに調合できる。
【0159】
経口使用のための医薬製剤は、活性化合物を、固体賦形剤と合し、得られた混合物を所望により粉砕し、そしてこの顆粒混合物を、所望ならば適当な補助物質を加えた後に処理して錠剤または糖衣剤核を得る。好適な賦形剤は炭水化物またはタンパク増量剤、例えば乳糖、シュクロース、マンニトール、またはソルビトールを包含する糖;トウモロコシ、小麦、米、馬鈴薯、またはその他の植物由来の澱粉;セルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム;アラビアゴムおよびトラガカントゴムを包含するゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパクである。所望により崩壊剤または可溶化剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加できる。
【0160】
糖衣剤核は、濃縮糖溶液のような適当な被覆剤と共に使用でき、これはさらに、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。製品の同定のためまたは活性化合物の量、即ち用量をあらわすために染料または色素を錠剤または糖衣被覆剤に添加できる。
【0161】
経口的に使用できる医薬調製物は、ゼラチン製のはめ込み式カプセル剤、ならびに、ゼラチンおよび被覆剤、例えばグリセロールまたはソルビトールでできた軟封入カプセル剤を包含する。押してはめ込むカプセル剤は、活性成分を、乳糖または澱粉のような増量剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および所望により安定剤と混合して含有できる。軟カプセル剤では、活性化合物を、安定剤を加えたまたは加えない適当な液体、例えば脂肪油、液体、または液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁できる。
【0162】
非経口投与に好適な医薬製剤は、水溶液、好ましくは生理学的適合性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的に緩衝化した食塩水中で製剤化できる。水性注射用懸濁剤は、該懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有できる。さらに、活性化合物の懸濁剤は適当な油性注射用懸濁剤として調製できる。好適な親油性溶媒または媒質は、胡麻油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを包含する。非脂質ポリカチオンアミノポリマーもまたデリバリーに使用できる。所望により懸濁剤は、化合物の溶解性を増し高濃縮溶液の調製を可能にするような適当な安定剤または物質を含むことができる。局所または鼻腔投与のためには、透過すべき特定の障壁に対し適当な浸透剤を製剤に使用する。このような浸透剤は当分野で一般に知られている。
【0163】
本発明に係る医薬組成物は当分野で既知の方法で、例えば常套的混合、溶解、顆粒化、糖衣剤製造、すりつぶし、乳化、カプセル化、捕捉、または凍結乾燥プロセスによって製造できる。この医薬組成物は塩として提供でき、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、琥珀酸などを包含する(但しこれらに限定されない)多くの酸を用いて調製できる。塩は、水性または他のプロトン性溶媒において、対応する遊離塩基型よりも溶けやすい傾向がある。別の場合には、好ましい調製物は、pH範囲4.5ないし5.5において以下のもの:1−50mMヒスチジン、0.1%−2%シュクロース、および2−7%マンニトール、の全てまたは任意のものを含有できる凍結乾燥粉末であってよく、これを使用前に緩衝液と合する。
【0164】
製剤化と投与のための技術のさらなる詳細は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Maack Publishing Co., Easton, Pa)の最新版に見出すことができる。医薬組成物を製造した後、これらを適当な容器に入れ、適応状態の治療のためにラベルを貼る。このようなラベル表示は、投与の量、頻度、および投与方法を包含する。
【0165】
治療上の適応および方法
本発明はさらに、上記のスクリーニング検定により同定する新規物質の使用に関するものである。したがって、本明細書に記載のように同定される被験化合物を適当な動物モデルに使用することが、本発明の範囲内にある。例えば、本明細書記載のように同定される物質(例えば、調節物質、アンチセンス核酸分子、特異抗体、リボザイム、またはP2Y15GPCRポリペプチド結合分子)を動物モデルに使用して、かかる物質による治療の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、本明細書に記載のように同定される物質は、かかる物質の作用機構を決定するための動物モデルに使用できる。さらに、本発明は、本明細書記載の治療のための上記スクリーニング検定により同定する新規物質の用途・使用に関するものである。
【0166】
P2Y15GPCR活性に影響を及ぼす試薬をインビトロまたはインビボでヒト細胞に投与し、P2Y15GPCR活性を低下させることができる。この試薬は好ましくはヒトP2Y15GPCR遺伝子の発現産物に結合する。発現産物がタンパク質である場合、この試薬は好ましくは抗体である。ヒト細胞をex vivoで治療するために、身体から取り出した幹細胞の調製物に抗体を添加できる。次いでこの細胞を、当分野で既知のクローン増幅を行って、または行わずに、同じまたは別のヒトの身体に戻すことができる。
【0167】
一つの態様では、この試薬はリポソームを用いて送達する。好ましくはリポソームは、投与される動物中で少なくとも約30分間、より好ましくは少なくとも約1時間、さらに好ましくは少なくとも約24時間安定である。リポソームは、試薬、とりわけポリヌクレオチドを動物、例えば人間の特定部位に標的化できる脂質組成物を含んでいる。好ましくはリポソームのこの脂質組成物は、動物の特定の臓器、例えば肺、肝臓、脾臓、心臓、脳、リンパ節、および皮膚を標的とすることができる。
【0168】
本発明において有用なリポソームは、標的細胞の細胞質膜と融合してその内容物を細胞へと運搬できる脂質組成物を含んでいる。好ましくは、リポソームのトランスフェクション効率は、約106細胞に送達されるリポソーム16nmoleあたりDNA約0.5μg、より好ましくは約106細胞に送達されるリポソーム16nmoleあたりDNA約1.0μg、さらに好ましくは約106細胞に送達されるリポソーム16nmoleあたりDNA約2.0μgである。好ましくは、リポソームは直径が約100および500nmの間、より好ましくは約150および450nmの間、そしてさらに好ましくは約200および400nmの間である。
【0169】
本発明での使用にとって好適なリポソームには、例えば当業者に知られる遺伝子送達法で標準的に用いるリポソームが包含される。より好ましいリポソームは、ポリカチオン脂質組成物を有するリポソームおよび/またはポリエチレングリコールとコンジュゲートしたコレステロールバックボーンを有するリポソームを包含する。所望により、リポソームはそのリポソームを特定の細胞タイプへと標的化できる化合物、例えばリポソームの外表面に露出している細胞特異的リガンドを含む。
【0170】
リポソームと、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムのような試薬との複合体形成が、当分野において標準的な方法を用いて達成できる(例えば米国特許5705151)。好ましくは約0.1μgから約10μgのポリヌクレオチドを約8nmolのリポソームと、より好ましくは約0.5μgから約5μgのポリヌクレオチドを約8nmolのリポソームと、そしてさらに好ましくは約1.0μgのポリヌクレオチドを約8nmolのリポソームと合する。
【0171】
別の態様では、受容体媒介標的化送達を用いて抗体を特異的組織にインビボ送達できる。受容体媒介DNA送達技術は、例えばFindeisら、Trends in Biotechnol. 11,202-05(1993); Chiouら、GENE THERAPEUTICS: METHODS AND APPLICATIONS OF DIRECT GENE TRANSFER(J.A.Wolff編)(1994); Wu & Wu, J.Biol.Chem. 263,621-24(1988); Wuら、J.Biol.Chem. 269,542-46(1994); Zenkeら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 87,3655-59(1990); Wuら、J.Biol.Chem. 266,338-42(1991) に教示されている。
【0172】
治療的有効量の決定
治療的有効量の決定は、充分当業者の能力の範囲内にある。治療的有効量とは、治療的有効量の不在下で起こるP2Y15GPCR活性に比較してP2Y15GPCR活性を増大させ、または低下させる活性成分の量を指す。
【0173】
いかなる化合物に関しても、治療的有効量は最初に細胞培養検定で、または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、またはブタで見積もることができる。動物モデルは適当な濃度範囲および投与経路の決定にも使用できる。次にこのような情報を用いて人間での有用な用量と投与経路を決定できる。
【0174】
治療的有効性および毒性、例えばED50(集団の50%で治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%で致死的な用量)は、細胞培養または実験動物における標準的薬学的方法により決定できる。治療効果に対する毒性効果の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50で表すことができる。
【0175】
大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養検定および動物研究から得られるデータを、人間への使用のための用量範囲を処方する際に使用する。かかる組成物に含まれる用量は、好ましくは殆どまたは全く毒性を持たないED50を包含する循環濃度の範囲内である。この用量は、使用する剤形、患者の感受性、および投与経路に応じてこの範囲内で変わる。
【0176】
正確な用量は、治療を必要とする対象に関連する因子に照らして医師が決定する。用量および投与は、充分なレベルの活性成分を提供するよう、または所望の効果を保持するよう、調節する。考慮できる因子は、疾病状態の重篤度、対象の全身健康状態、年齢、体重、および対象の性別、食餌、投与の時間および頻度、薬物の組み合わせ、反応の感受性、および療法に対する寛容/応答を包含する。長時間作用性医薬組成物は、その製剤の半減期およびクリアランス率に応じて3から4日毎、毎週、または2週間に1回投与することができる。
【0177】
標準的な用量は投与経路に応じて0.1から100,000マイクログラムまで変えることができ、約1gまでの総用量とすることができる。特定の用量および送達方法についての指針は文献に提供されており、一般に当分野の医師が入手できる。当業者は、ヌクレオチド用にはタンパク質またはそれらのインヒビター用のものとは異なる製剤を使用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は特定の細胞、状態、場所などに特異的である。
【0178】
この試薬が一本鎖抗体である場合、この抗体をコードしているポリヌクレオチドを構築し、トランスフェリン−ポリカチオン−媒介DNA転移、裸のまたはカプセル内核酸を用いるトランスフェクション、リポソームの媒介する細胞融合、DNA被覆ラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、電気穿孔、遺伝子銃、およびDEAE−または燐酸カルシウム−媒介トランスフェクションを包含する(但しこれらに限定されない)充分確立した技術を用いて、ex vivoまたはインビボで細胞内に導入できる。
【0179】
抗体の有効なインビボ用量は、約5μgから約50μg/kg、約50μgから約5mg/kg、約100μgから約500μg/kg(患者の体重)、および約200から約250μg/kg(患者の体重)の範囲である。一本鎖抗体をコードしているポリヌクレオチドの投与のためには、有効なインビボ用量は、約100ngから約200ng、500ngから約50mg、約1μgから約2mg、約5μgから約500μg、および約20μgから約100μgのDNAの範囲である。
【0180】
発現産物がmRNAである場合、試薬は好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムである。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを発現するポリヌクレオチドは、上記のように多岐にわたる方法によって細胞中に導入できる。
【0181】
好ましくは、試薬は、P2Y15GPCR遺伝子の発現またはP2Y15GPCRポリペプチドの活性を、該試薬の不在時と比較して少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%低下させる。P2Y15GPCR遺伝子の発現レベルまたはP2Y15GPCRポリペプチドの活性を低下させるよう選択した機構の有効性は、当分野で周知の方法、例えばP2Y15GPCR特異的mRNAへのヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション、定量的RT−PCR、P2Y15GPCRポリペプチドの免疫学的検出、またはP2Y15GPCR活性の測定を用いて評価できる。
【0182】
上記のいずれの態様においても、本発明に係る任意の医薬組成物は他の適当な治療薬と組み合わせて投与できる。併用療法に使用するための適当な物質の選択は、常套的製薬原理に従い、当業者により実施することができる。治療薬の組み合わせは、相乗的に働いて、上記の様々な疾患の治療または予防を奏効させる。このアプローチを用いて、より低い各物質の用量で治療効果を達成することができ、したがって有害な副作用の可能性を低減することができる。
【0183】
上記の治療方法のいずれも、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および最も好ましくはヒトといった哺乳動物を包含する、このような治療を必要とする任意の対象に適用することができる。
【0184】
診断方法
P2Y15GPCRはさらに、GPCRをコードしている核酸配列における突然変異の存在に関連する疾病および異常、またはそれら疾病および異常に対する感受性を検出する診断検定に使用できる。このような疾病は、例えば細胞の形質転換、例えば腫瘍および癌、ならびに高血圧症および低血圧症を包含する様々な心血管疾患、ならびに血流異常、アンギオテンシンの誘発するアルドステロン分泌の異常、およびその他の体液および電解質ホメオスタシスの調節異常から生ずる疾病に関連している。
【0185】
本発明にしたがって、疾病に罹患している個体と正常な個体とにおけるGPCRをコードしているcDNAまたはゲノム配列の間の相違を決定できる。もし罹患している個体の幾つかまたは全てに突然変異が観察され、正常な個体には観察されないならば、この突然変異がその疾病の原因であると思われる。
【0186】
レファレンス遺伝子および突然変異を有する遺伝子の間の配列相違は、直接DNA配列決定法によって明らかにできる。加えて、クローニングしたDNAセグメントを、特定のDNAセグメントを検出するためのプローブとして使用できる。この方法の感受性はPCRと組み合わせる時極めて増強される。例えば、二本鎖PCR産物または修飾PCRにより調製された一本鎖テンプレート分子と共に、配列決定プライマーを使用することができる。配列決定は、放射標識したヌクレオチドを用いる常套的方法によって、または蛍光標識を使用する自動配列決定法によって実施する。
【0187】
DNA配列相違に基づく遺伝子試験は、変性させる物質を含むまたは含まないゲル中のDNA断片の電気泳動移動度の変化を検出することにより実施できる。小配列の欠失および挿入は、例えば高分解能ゲル電気泳動によって視覚化できる。異なる配列のDNA断片は変性させるホルムアミド勾配ゲル上で識別でき、ここでは、異なるDNA断片の移動度が、それらの特異的融解温度または部分的融解温度に従って、ゲル中の異なる位置で遅延する(例えば、Myers et al., Science 230,1242,1985を参照されたい)。特定の位置での配列改変もまたヌクレアーゼ保護検定、例えばRNアーゼおよびS1保護または化学的開裂法によって明らかにすることができる(例えば、Cotton et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,4397-4401,1985)。即ち特異的DNA配列の検出は、ハイブリダイゼーション、RNアーゼ保護、化学的開裂、直接DNA配列決定といった方法によって、または制限酵素とゲノムDNAのサザンブロッティングを使用することによって実施できる。ゲル電気泳動およびDNA配列決定のような直接法に加えて、突然変異はin situ分析により検出することもできる。
【0188】
GPCRレベルの変化もまた種々の組織で検出できる。血液または組織生検のように、宿主から誘導した身体試料中のレセプターポリペプチドのレベルを検出するために用いる検定は、当業者に周知であり、ラジオイムノアッセイ、競合的結合検定、ウェスタンブロット分析、およびELISA検定を包含する。
【0189】
本明細書に引用する全ての特許および特許出願は、引用により本明細書の一部とする。上記の内容は本発明を一般的に記載するものである。より完全な理解は以下の具体的実施例を参照することによって得られ、それらの実施例は例示のみの目的で記載するものであり、本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例】
【0190】
実施例1
P2Y15GPCR活性の検出
配列番号1、3または5のポリヌクレオチドを発現ベクターpCEV4内に挿入し、得られた発現ベクターpCEV4−P2Y15GPCRポリペプチドをヒト胚性腎293細胞にトランスフェクトする。この細胞を培養フラスコから削り取って5mlのTris HCl、5mM EDTA、pH7.5に入れ、超音波により溶解する。細胞溶解液を1000rpm、4℃で5分間遠心分離する。上清を30000xg、4℃で20分間遠心分離する。0.1%BSA、2μg/mlアプロチニン、0.5mg/mlロイペプチン、および10μg/mlホスホルアミドンを添加した50mM Tris HCl、5mM MgSO、1mM EDTA、100mM NaCl、pH7.5を含有する結合緩衝液にペレットを懸濁する。添加した放射性リガンドの10%未満と結合するのに要するタンパク濃度として定義した最適膜懸濁液希釈液を、リガンド、非標識ペプチド、および最終容量250μlとするのに要する結合緩衝液を入れた96ウェルポリプロピレン微量定量プレートに加える。
【0191】
平衡飽和結合検定では、漸増濃度(0.1nMないし4nM)の125I−標識リガンドまたは被験化合物(比活性2200Ci/mmol)の存在下で膜調製物をインキュベートする。異なる被験化合物の結合親和性を、12の異なる濃度の各被験化合物の存在下で、0.1nM125I−ペプチドを用いる平衡競合結合検定で決定する。
【0192】
結合反応混合物を30℃で1時間インキュベートする。細胞収穫器を使用し、0.5%ポリエチレンイミンで処理したGF/Bフィルターで濾過することにより反応を停止させる。シンチレーション計数により放射能を測定し、コンピューター処理した非線形回帰プログラムによりデータを解析する。
【0193】
非特異結合は、非標識ペプチド100nMの存在下で膜タンパクをインキュベートした後に残留する放射能の量として定義する。タンパク濃度を、牛血清アルブミンを標準とするBio-Rad試薬を用いるBradford法により測定する。配列番号2のポリペプチドがP2Y15GPCR活性を有することが証明される。
【0194】
実施例2
組換えヒトP2Y15GPCRの発現
Pichia pastoris発現ベクターpPICZB(Invitrogen, San Diego, CA)を使用して、大量の組換えヒトP2Y15GPCRポリペプチドを酵母で産生させる。P2Y15GPCRコード化DNA配列は配列番号1に示されるヌクレオチド配列から誘導する。ベクターpPICZB中に挿入する前に、このDNA配列を、周知の方法により、5'末端に開始コドンを、そして3'末端にエンテロキナーゼ開裂部位、His6リポーター標識および終止コドンを含むように修飾する。さらに、両方の末端に制限エンドヌクレアーゼのための認識配列を付加し、pPICZ Bの複数のクローニング部位を対応する制限酵素で消化した後に、この修飾したDNA配列をpPICZB中にライゲーションする。この発現ベクターは、酵母プロモーターにより駆動する、Pichia pastorisでの誘導的発現のために設計する。得られたpPICZ/md−His6ベクターを用いて酵母を形質転換する。
【0195】
この酵母を5リットル振盪フラスコ中、通常条件下に培養し、組換え産生されたタンパクを8M尿素の存在下で親和クロマトグラフィー(Ni−NTA−樹脂)によって培養から単離する。結合したポリペプチドを緩衝液(pH3.5)で溶出し、中和する。His6リポーター標識からの該ポリペプチドの分離を、製造者の指示に従いエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CA)を用いる位置特異的タンパク分解により達成する。精製されたヒトP2Y15GPCRポリペプチドが得られる。
【0196】
実施例3
放射性リガンド結合検定
ヒトP2Y15GPCRを発現するポリヌクレオチドでトランスフェクトしたヒト胚性腎293細胞を培養フラスコから削り取って、5mlのTris HCl、5mM EDTA、pH7.5に入れ、超音波処理によって溶解させる。細胞溶解液を1000rpm、4℃で5分間遠心分離する。上清を30000xg、4℃で20分間遠心分離する。0.1%BSA、2μg/mlアプロチニン、0.5mg/mlロイペプチン、および10μg/mlホスホルアミドンを添加した50mM Tris HCl、5mM MgSO、1mM EDTA、100mM NaCl、pH7.5を含有する結合緩衝液にペレットを懸濁する。添加した放射性リガンドの10%未満と結合するのに要するタンパク濃度として定義した最適膜懸濁液希釈液を、125I−標識リガンドまたは被験化合物、非標識ペプチド、および最終容量250μlとするのに要する結合緩衝液を入れた96ウェルポリプロピレン微量定量プレートに加える。
【0197】
平衡飽和結合検定では、漸増濃度(0.1nMないし4nM)の125I−標識リガンドまたは被験化合物(比活性2200Ci/mmol)の存在下で膜調製物をインキュベートする。異なる被験化合物の結合親和性を、12の異なる濃度の各被験化合物の存在下で、0.1nM125I−ペプチドを用いる平衡競合結合検定で決定する。
【0198】
結合反応混合物を30℃で1時間インキュベートする。細胞収穫器を使用し、0.5%ポリエチレンイミンで処理したGF/Bフィルターで濾過することにより反応を停止させる。シンチレーション計数により放射能を測定し、コンピューター処理した非線形回帰プログラムによりデータを解析する。
【0199】
非特異結合は、非標識ペプチド100nMの存在下で膜タンパクをインキュベートした後に残留する放射能の量として定義する。タンパク濃度を、牛血清アルブミンを標準とするBio-Rad試薬を用いるBradford法により測定する。被験化合物と共にインキュベートしなかった膜タンパクの放射能に比して、膜タンパクの放射能を少なくとも15%増大させる被験化合物を、ヒトP2Y15GPCRポリペプチドに結合する化合物として同定する。
【0200】
実施例4
ヒトP2Y15GPCRの仲介するサイクリックAMP形成に及ぼす被験化合物の効果
レセプターの仲介するcAMP形成の阻害が、ヒトP2Y15GPCRを発現する宿主細胞で検定できる。細胞を96ウェルプレートに蒔き、10mM HEPES、5mMテオフィリン、2μg/mlアプロチニン、0.5mg/mlロイペプチン、および10μg/mlホスホロアミドンを添加したダルベッコ燐酸緩衝化食塩水(PBS)中、37℃、5%CO中で20分間インキュベートする。被験化合物を加え、37℃でさらに10分間インキュベートする。培地を吸引し、100mM HClの添加により反応を停止させる。このプレートを4℃で15分間保存する。停止用溶液中のcAMP含有量をラジオイムノアッセイにより測定する。
【0201】
データ処理ソフトウェアを備えたガンマカウンターを用いて放射能を定量する。被験化合物の無いウェル内容物の放射能に比してウェル内容物の放射能を低下させる被験化合物を、cAMP形成の可能性あるインヒビターと同定する。被験化合物の無いウェル内容物の放射能に比してウェル内容物の放射能を増大させる被験化合物を、cAMP形成の可能性あるエンハンサーと同定する。
【0202】
実施例5
細胞内カルシウムの動員に及ぼす被験化合物の効果
細胞内の遊離カルシウム濃度は、蛍光インディケーター色素Fura-2/AMを用いる顕微分光蛍光分析によって測定できる(Bush et al., J.Neurochem. 57,562-74,1991)。安定にトランスフェクトされた細胞を、ガラス製カバーグラス挿入物を入れた35mm培養皿に蒔く。細胞をHBSで洗浄し、被験化合物と共にインキュベートし、100μlのFura-2/AM(10μM)を用いて20−40分間ロードする。HBSで洗浄してFura-2/AM溶液を除去した後、細胞をHBS中で10−20分間平衡化する。次いでLeitz Fluovert FS顕微鏡の40X対物レンズの下で細胞を視覚化する。
【0203】
蛍光の放出を、340nMおよび380nMの間を交代する励起波長を用いて510nMで測定する。標準カルシウム濃度曲線とソフトウェア解析技術を用いて生の蛍光データをカルシウム濃度に変換する。被験化合物不在時の蛍光に比して蛍光を少なくとも15%増大させる被験化合物を、細胞内カルシウムを動員する化合物と同定する。
【0204】
実施例6
ホスホイノシチド代謝に及ぼす被験化合物の効果
ヒトP2Y15GPCRcDNAを安定に発現する細胞を96ウェルプレートに蒔き、密集するまで増殖させる。検定の前日、成長培地を1%血清および0.5μCi H−myinositolを含有する培地100μlに交換する。このプレートをCOインキュベーター(5%CO、37℃)中で一夜インキュベートする。検定の直前、培地を除去し、10mM LiClを含有するPBS 200μlに置き換え、細胞を新しい培地で20分間平衡化する。この間に細胞は、PBS中の20倍濃縮溶液10μlアリコートとして加えたアンタゴニストにも平衡化する。
【0205】
被験化合物を含有する溶液10μlを添加することにより、イノシトール燐脂質代謝からの燐酸3H−イノシトールの蓄積を開始させる。最初のウェルに10μlを加えて基礎蓄積を測定する。11の異なる濃度の被験化合物を、各プレート列の、以下の11ウェルで検定する。全ての検定は、二つの連続するプレート列に同じ添加を反復することにより、二重に実施する。
【0206】
このプレートをCOインキュベーター中で1時間インキュベートする。50%v/vトリクロロ酢酸(TCA)15μlの添加により反応を停止させ、その後4℃で40分間インキュベートする。1M Tris 40μlでTCAを中和した後、ウェルの内容物を、Dowex AG1-X8(200−400メッシュ、蟻酸塩(エステル)型)を含有するMultiscreen HVフィルタープレート(Millipore)に移す。このフィルタープレートは、各ウェルにDowex AG1-X8懸濁液200μl(50%v/v、水:樹脂)を添加することにより調製する。フィルタープレートを真空マニホルド上に据え、樹脂床を洗浄または溶出する。各ウェルを水200μlで2回、続いて5mM四硼酸ナトリウム/60mM蟻酸アンモニウム2x200μlで洗浄する。
【0207】
3H−IPを1.2M蟻酸アンモニウム/0.1蟻酸200μlで、空の96ウェルプレートに溶出する。ウェル内容物をシンチレーション混合液3mlに加え、液体シンチレーション計数により放射能を測定する。
【0208】
実施例7
レセプター結合法
標準結合検定。50mM HEPES、pH7.4、0.5%BSA、および5mM MgClを含有する結合緩衝液中で結合検定を実施する。P2Y15GPCRポリペプチドを含む膜断片に対する放射性リガンド(例えば125I−被験化合物)の結合のための標準検定は、96ウェル微量定量プレート(例えば、Dynatech Immulon II Removawellプレート)中で以下のように実施する。放射性リガンドを、結合緩衝液+PMSF/Baci中で50μlあたり所望のcpmとなるよう希釈し、次いで50μlアリコートをウェルに加える。非特異結合試料のため、ウェルあたり40μMのコールドリガンド5μlもまた加える。結合緩衝液+PMSF/Baci中、所望濃度(10−30μg膜タンパク/ウェル)に希釈した、ウェルあたり150μlの膜を添加することにより、結合を開始させる。次いでプレートをLinbro mylarプレートシーラー(Flow Labs)で被蓋し、Dynatech Microshaker II上に据える。結合を室温で1−2時間進行させ、プレートを2000xgで15分間遠心分離することにより結合を停止させる。上清をデカンテーションし、氷冷結合緩衝液200μlの添加、短時間の振盪、および再遠心分離により、膜ペレットを1回洗浄する。個々のウェルを12x75mmの管に入れ、LKB Gammamasterカウンターで計数する(78%効率)。この方法による特異結合は、迅速濾過(3−5秒間)と、ポリエチレンイミン被覆したグラスファイバーフィルター上での洗浄により遊離リガンドを除去して測定したものと同一である。
【0209】
標準結合検定の3種の変形もまた使用する。
1.或る濃度範囲のコールドリガンド対125I−標識リガンドを用いる競合的放射性リガンド結合検定を、1つの修飾を施す他は上記のように実施する。検定するリガンドの全希釈液を40X PMSF/Baci中で検定の最終濃度の40X濃度に作製する。次にペプチドの試料(各々5μl)を微量定量ウェル毎に加える。膜と放射性リガンドを、プロテアーゼインヒビター無しの結合緩衝液で希釈する。放射性リガンドを加え、コールドリガンドと混合し、次いで膜の添加により結合を開始させる。
【0210】
2.放射性リガンドとレセプターの化学的架橋は、標準検定と同一の結合工程の後に行う。但し、洗浄工程は、放射性リガンドとBSAとの非特異的架橋の可能性を減少させるため、BSAを除いた結合緩衝液で行う。架橋工程は下記のように実施する。
【0211】
3.レセプター:リガンド複合体の可溶化に関する研究のための、およびレセプター精製のための、膜ペレットを取得するために、大スケール結合検定もまた実施する。これらは、(a)結合をポリプロピレン管内で1−250mlの容量で実施し、(b)膜タンパクの濃度を常に0.5mg/mlとし、そして(c)レセプター精製については、結合緩衝液中のBSA濃度を0.25%に減らし、洗浄工程をBSA無しの結合緩衝液で行い、これにより、精製されたレセプターのBSA混入を減らす、という事を除いては標準検定と同一である。
【0212】
実施例8
放射性リガンドとレセプターの化学的架橋
上記の放射性リガンド結合工程の後、膜ペレットを、微量定量プレートのウェルあたり200μlの、BSAを含まない氷冷結合緩衝液に再懸濁する。次に、ウェルあたり5μlの、DMSO中の4mM N−5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド(ANB−NOS、Pierce)を加え、混合する。この試料を氷上に保持し、Mineralight R-52Gランプ(UVP Inc., San Gabriel, Calif.)を用いて10分間UV照射する。次いで試料をエッペンドルフ微量遠心管に移し、遠心分離により膜をペレット化し、上清を除き、膜をポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)用のLaemmli SDS試料緩衝液中に可溶化する。PAGEは下記のように実施する。放射標識したタンパクを、Kodak XARフィルムおよびDupont画像増感紙を用いる乾燥ゲルのオートラジオグラフィーにより視覚化する。
【0213】
実施例9
膜の可溶化
膜の可溶化は、25mM Tris、pH8、10%グリセロール(w/v)および0.2mM CaClを含有する緩衝液(可溶化緩衝液)中で実施する。Triton X-100、デオキシコール酸、デオキシコール酸:リソレシチン、CHAPS、および両性洗浄剤を含有する極めて可溶性の洗浄剤を可溶化緩衝液中10%濃度で作製し、凍結アリコートとして保存する。リソレシチンは凍結−融解時の不溶性の故に新しく作製し、ジギトニンは、より限られた溶解性の故に低濃度で新たに作製する。
【0214】
膜を可溶化するため、結合工程後の洗浄したペレットをピペット操作により目視できる粒子が無いよう再懸濁し、可溶化緩衝液中100000xgで30分間攪拌する。上清を除去し、氷上に保持し、ペレットを廃棄する。
【0215】
実施例10
可溶化したレセプターの検定
125Iリガンドの結合と、洗浄剤による膜の可溶化の後、無傷のR:L複合体は4つの異なる方法で検定できる。全て氷上または4−10℃の冷室で実施する。
【0216】
カラムクロマトグラフィー(Knuhtsen et al., Biochem.J. 254,641-647,1988)。Sephadex G-50カラム(8x250mm)を、膜の可溶化に用いた濃度の洗浄剤と1mg/mlの牛血清アルブミンを含有する可溶化緩衝液で平衡化する。可溶化した膜の試料(0.2−0.5ml)をこのカラムに適用し、約0.7ml/分の流速で溶出する。試料(0.18ml)を集める。放射能をガンマカウンターで測定する。カラムの空隙容量をブルーデキストランの溶出容量により決定する。空隙容量に溶出する放射能はタンパクに結合していると考えられる。遊離の125Iリガンドと同容量で後に溶出する放射能は非結合であると考えられる。
【0217】
ポリエチレングリコール沈殿(Cuatrecasas, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69,318-322,1972)。12x75mmポリプロピレン管中の可溶化した膜の試料100μlに対し、0.1M燐酸ナトリウム緩衝液中の1%(w/v)牛ガンマグロブリン(Sigma)0.5ml、続いて25%(w/v)ポリエチレングリコール(Sigma)0.5mlを加え、混合する。混合物を15分間氷上に保持する。次に試料毎に0.1M燐酸ナトリウム(pH7.4)3mlを加える。試料をWhatman GF/Bグラスファイバーフィルターで速やかに(1−3秒間)濾過し、燐酸緩衝液4mlで洗浄する。PEG沈殿したレセプター:125I−リガンド複合体をフィルターのガンマ計数によって測定する。
【0218】
GFB/PEIフィルター結合(Bruns et al., Analytical Biochem. 132,74-81,1983)。Whatman GF/Bグラスファイバーフィルターを0.3%ポリエチレンイミン(PEI、Sigma)に3時間浸漬する。可溶化した膜の試料(25−100μl)を12x75mmポリエチレン管に戻す。次いで、洗浄剤を含まない可溶化緩衝液4mlを試料毎に加え、この試料を直ちにGFB/PEIフィルターで濾過し(1−3秒間)、可溶化緩衝液4mlで洗浄する。吸着されたレセプター:125I−リガンド複合体のCPMをガンマ計数により決定する。
【0219】
チャコール/デキストラン(PaulおよびSaid, Peptides 7[Suppl. 1], 147-149,1986)。デキストランT70(0.5g、Pharmacia)を水1リットルに溶解し、次に活性炭(Norit A、アルカリ性;Fisher Scientific)5gを加える。この懸濁液を室温で10分間攪拌し、次いで使用時まで4℃で保存する。R:L複合体を測定するため、木炭/デキストラン懸濁液4部(容量)を、可溶化した膜1部(容量)に加える。試料を混合し、氷上に2分間保持し、次いでBeckman遠心分離器中11000xgで2分間遠心分離する。遊離の放射性リガンドが木炭/デキストランに吸着され、これをペレットと共に廃棄する。レセプター:125I−リガンド複合体は上清に残存し、これをガンマ計数によって測定する。
【0220】
実施例11
レセプターの精製
GHCl膜へのビオチニル−レセプターの結合は上記のように実施する。インキュベーションは室温で1時間とする。標準的精製プロトコルでは、結合インキュベーションは10nM Bio-S29を含有する。トレーサーとして125Iリガンドを、膜タンパクmgあたり5000−100000cpmのレベルで加える。対照インキュベーションには、レセプターを非ビオチニル化リガンドで飽和させるため10μMのコールドリガンドを含有させる。
【0221】
レセプター:リガンド複合体の可溶化はさらに、0.2mM MgClを含有する可溶化緩衝液中の0.15%デオキシコール酸:リソレシチンを用いて上記のように実施して、可溶化したR:L複合体を含有する100000xg上清を得る。
【0222】
固定化したストレプトアビジン(6%ビーズ化アガロースに架橋させたストレプトアビジン、Pierce Chemical Co.; 「SA−アガロース」)を可溶化緩衝液中で洗浄し、可溶化した膜に1/30の最終容量で加える。この混合物をぐるぐると回転させることにより4−10℃で4−5時間絶えず攪拌しつつインキュベーションする。次に混合物をカラムに適用し、非結合物質を洗い流す。100000xg上清のcpmをSA−アガロースへの吸着後のカラム溶出液のcpmと比較することにより、SA−アガロースへの放射性リガンドの結合を決定する。最後に、12−15カラム容量の可溶化緩衝液+0.15%デオキシコール酸:リソレシチン+1/500(容量/容量)100x4paseでカラムを洗浄する。
【0223】
ストレプトアビジンカラムを可溶化緩衝液+0.1mM EDTA+0.1mM EGTA+0.1mM GTP−ガンマ−S(Sigma)+0.15%(重量/容量)デオキシコール酸:リソレシチン+1/1000(容量/容量)100倍4paseで溶出する。まず、1カラム容量の溶離緩衝液をカラムに流し、流れを20−30分間停止させる。次に、さらに3−4カラム容量の溶離緩衝液を流す。溶出液を全てプールする。
【0224】
ストレプトアビジンカラムからの溶出液を固定化した小麦胚芽アグルチニン(WGAアガロース、Vector Labs)と共に一夜(12−15時間)インキュベートし、共有結合した炭水化物とWGAレクチンとの相互作用を介してレセプターを吸着させる。ストレプトアビジンカラム溶出液に対するWGA−アガロースの比(容量/容量)は一般に1:400である。1:1000ないし1:200の範囲もまた使用できる。結合工程の後、樹脂を遠心分離によってペレット化し、上清を除去して取り置き、樹脂を50mM HEPES、pH8、5mM MgCl、および0.15%デオキシコール酸:リソレシチンを含有する緩衝液で3回(それぞれ約2分間)洗浄する。WGA結合レセプターを溶離するため、樹脂の洗浄に用いたものと同じHEPES緩衝液に入れた10mM N−N’−N”−トリアセチルチトトリオースを毎回3樹脂カラム容量用いて氷上15−30分間反復混合(低速のボルテクスミキサー)することにより、3回抽出する。各溶離工程の後、樹脂を遠心沈降させ、WGA−アガロースペレットを含まないよう上清を注意深く取り除く。3つのプールした溶出液は、最終的な精製レセプターを含有する。WGAに結合しない物質は、ストレプトアビジンカラムから特異的に溶離されたGタンパクサブユニット、および非特異的混入物質を含有する。これらの画分は全て−90℃で冷凍保存する。
【0225】
実施例12
P2Y15GPCRポリペプチドに結合する被験化合物の同定
グルタチオン−S−トランスフェラーゼタンパクを含み96ウェル微量定量プレートのグルタチオン誘導体化したウェル上に吸収させた精製P2Y15GPCRポリペプチドを、小分子ライブラリー由来の被験化合物と、生理的緩衝溶液中pH7.0で接触させる。P2Y15GPCRポリペプチドは配列番号2に示すアミノ酸配列を含む。この被験化合物は蛍光標識を含む。試料を5分間ないし1時間インキュベートする。対照試料は被験化合物の不在下にインキュベートする。
【0226】
被験化合物を含有する緩衝溶液をウェルから洗浄する。P2Y15GPCRポリペプチドへの被験化合物の結合を、ウェル内容物の蛍光測定によって検出する。ウェル内の蛍光を、被験化合物をその中でインキュベートしなかったウェルの蛍光に比して、少なくとも15%増大させる被験化合物を、P2Y15GPCRポリペプチドに結合する化合物として同定する。
【0227】
実施例13
P2Y15GPCR遺伝子発現を減少させる被験化合物の同定
被験化合物をヒト胃細胞の培養に投与し、37℃で10ないし45分間インキュベートする。被験化合物無しで同時間インキュベートした同じ型の細胞培養を負の対照とする。
【0228】
二つの培養から、Chirgwin et al., Biochem. 18,5294-99,1979に記載のようにRNAを単離する。総RNA20ないし30μgを用いてノーザンブロットを調製し、Express-hyb(CLONTECH)中65℃で32P標識P2Y15GPCR特異的プローブとハイブリダイズさせる。このプローブは配列番号1から選択した少なくとも11の連続するヌクレオチドを含んでいる。被験化合物不在時に得られるシグナルに比してP2Y15GPCR特異的シグナルを減少させる被験化合物を、P2Y15GPCR遺伝子発現のインヒビターとして同定する。
【0229】
実施例14
P2Y15GPCR遺伝子産物に特異結合する試薬による、P2Y15GPCRが過剰に発現する疾患の治療
配列番号1から選択した少なくとも11の連続するヌクレオチドを含んでいるアンチセンスP2Y15GPCRオリゴヌクレオチドの合成を、ホスホロアミダイト法(Uhlmann et al., Chem.Rev. 90,534-83,1990)を用いてPharmacia Gene Assembler連続合成機にて実施する。組み立てと脱保護の後、オリゴヌクレオチドを2回エタノール沈殿させ、乾燥し、燐酸緩衝化食塩水(PBS)に所望濃度で懸濁させる。これらのオリゴヌクレオチドの純度を毛管ゲル電気泳動とイオン交換HPLCにより試験する。このオリゴヌクレオチド調製物のエンドトキシンレベルをLuminous Amebocyte Assay(Bang, Biol.Bull.(Woods Hole, Mass.)105,361-362,1953)を用いて測定する。
【0230】
このアンチセンスオリゴヌクレオチドを患者に投与する。患者の疾患の重篤度は軽減する。
【0231】
実施例15
P2Y15 GPCRの組織特異的発現
P2Y15 GPCR遺伝子発現の解析において、以下の供給源由来の全RNA25μgを反応における鋳型として用い、発現プロファイリングのための第1鎖cDNAを合成した。ヒト 全RNA パネルI-V (Clontech Laboratories, Palo Alto, CA, USA)、正常なヒト肺プライマリーセルライン(BioWhittaker Clonetics, Walkersville, MD, USA)、ヒトヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs) (Kurabo, Osaka, Japan)、数種の一般的なセルライン(ATCC, Washington, DC)および末梢血から精製した種々の細胞。オリゴ (dT) (Nippon Gene Research Laboratories, Sendai, Japan)およびRT-PCR用SUPERSCRIPTTM First-Strand Synthesis System (Life Technologies, Rockville, MD)を用い、製造者のプロトコルにしたがって第1鎖cDNAを合成した。次に、これらの試料について、1/1250の合成した第1鎖cDNAを、定量的PCR
のための鋳型として用いた。それ例外の試料は、予め合成されたcDNAとして購入し(Human Immune System MTC PanelおよびHuman Blood Fractions MTC Panel, Clontech Laboratories)、これらについては10 ngのcDNAを定量的 PCRの鋳型として用いた。
【0232】
LightCycler (Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)中、オリゴヌクレオチドプライマー5’−TTCGGATCGAATCTCGCCTGCT-3’ (配列番号7)および5’−TGCTTGCTCAAGGTTCCCGCTTA-3’ (配列番号8) をDNA結合蛍光色素SYBRグリーンIの存在下で定量的PCRを行った。次いで、結果を標準曲線に当てはめることにより、鋳型cDNAngあたりの遺伝子転写のコピー数に換算した。標準曲線は、標的遺伝子から予め増幅された既知の構築物のPCR産物に対して、定量的PCR反応を同時に行うことにより得た。
【0233】
種々の組織の種類における細胞ごとのmRNA転写レベルの差異を校正するために、同様に計算された5種類の異なるハウスキーピング遺伝子:グリセルアルデヒド−3−ホスファターゼ(G3PDH)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、β−アクチン、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)およびβ−2−ミクログロブリンの発現レベルを用いて標準化の手順を実行した。ハウスキーピング遺伝子発現のレベルは、全ての組織について比較的に一定に相関していると考えられ(Adams et al., 1993, Adams et al., 1995, Liew et al., 1994)、従って、cDNA鋳型のngあたりの細胞の相対的な数を概算するための尺度として用いることができる。全ての組織試料における5つのハウスキーピング遺伝子の発現レベルを、LightCyclerおよび一定量(25μg)の初発RNAを用いて、遺伝子あたり3回の独立した反応で測定した。同時に反応させた既知濃度の標準との比較から導いた各遺伝子についての算出コピー数を記録し、全組織試料中の遺伝子のコピー数の合計からのパーセンテージに変換した。次に、各組織試料について、各遺伝子についてのパーセント値の合計を算出し、各組織の合計パーセント値を、標準として任意に選択した或る1つの組織の合計パーセント値で除することにより、正規化因子を算出した。或る組織試料における特定遺伝子の発現について実験的に得られた値を正規化するために、得られた値に、試験した組織についての正規化因子を掛けた。この標準化法は全ての組織について用いた。活性化の状態によってこれらの組織では他のハウスキーピング遺伝子発現の変化が大きいために1種類のハウスキーピング遺伝子β−2−ミクログロブリンに対して標準化したヒト血液画分MTCパネルから得られた組織を除いて。この発現プロファイリングの結果を、試験した各試料中の第1鎖cDNA10ngあたりのmRNAのコピー数の標準化された数値を示す図1に示す。
【0234】
実施例16
P2Y15 GPCRリガンドの測定
配列番号1のポリヌクレオチドをヒトゲノムDNAを鋳型として用い、プライマー 5’−GCCAAACTGAACTCTCTTGTTTTCTTGC-3’ (配列番号9)および5’−GCCCTGGCTTTGGCACATGATTAC-3’(配列番号10)およびHotStarTaq (Qiagen, Hilden, Germany)とPfu Turbo (Stratagene, La Jolla, CA)ポリメラーゼの混合物を用いてPCRを行いクローニングした。PCR産物をpCRII-TOPO (Invitrogen, Carlsbad, CA)にクローニングし、ABI Prism Dye Terminator Cycle Sequencing Reaction Kit (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いてサイクルシークエンスし、ABI Prism 377シーケンスシステム (Applied Biosystems)にて解析した。次いでcDNAを修飾pDisplay ベクター(Invitrogen)にサブクローニングしてN末端HAエピトープおよびIgシグナル配列に連結した。得られた発現ベクターpDisplay-P2Y15 GPCR構築物をLipofectamine (Invitrogen)を用いてヒト胎児293腎細胞にトランスフェクトした。細胞をフィコエリトリン標識抗HA抗体 (Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)で染色し、細胞に結合した蛍光をFACSort (Becton-Dickinson, Franklin Lakes, NJ)にて測定することにより細胞表面における発現を確認した。次いで、限界希釈の後、G418にて選択し、安定にトランスフェクトされたクローンを作製した。最後に、クローンにおけるP2Y15 GPCRポリペプチドの細胞表面の発現をFACSで再確認した。
【0235】
以下のとおり、Ca2+ フラックス分析においてリガンドスクリーニングを行った。安定にトランスフェクトされたP2Y15 GPCR発現細胞を96ウェルプレートに加え、組織培養機中、37℃にて一晩インキュベーションした。培地を吸引し、HBSS中に0.1%BSA、20mMHEPES、1mMプロベネシド、0.01%プルロニックF127、および1MのFluo−3−AM(Molecular Probes, Eugene, OR) を含有するローディング緩衝液で置き換え、室温で1時間インキュベーションした。次いで、HBSS中に0.1%BSA、20mMHEPES、1mMプロベネシドを含有する洗浄バッファーで、細胞を3回静かに洗浄した。洗浄した細胞をFDSS6000 functional drug screening system (Hamamatsu Photonics, Hamamatsu, Japan)にセットし、候補のリガンドの希釈列を添加した後、細胞内の蛍光の変化を測定した。約130種類の候補のリガンドの集団は、P2Y15 GPCRに最も密接に関連するGPCRの既知のリガンド並びに天然に存在するその関連化合物を選択することにより構成した。このライブラリーは、様々な、生物活性を有する、脂質、エイコサノイド、ペプチド、カンナビノイド、ケモカイン、ヌクレオシド、ヌクレオチドおよび化学的に関連する物質を含んでいる。このリガンドは、通常、Sigma 社または R&D Systems社から購入した。
【0236】
試験したリガンドの候補のうち、AMPおよびアデノシンのみが転写物における応答を誘導することができたが、トランスフェクションしなかったHEK293細胞または同一のベクター構築物において対照のオーファンで安定にトランスフェクトされたHEK293細胞はいずれも同様の応答を誘導することができなかった。カルシウム応答を検出し、AMPについてのEC50は920 nM、アデノシンについてEC50は670 nMであった(図2A)。両形質転換体およびトランスフェクトされていない細胞は、ATP、AMPまたはアデノシン受容体リガンドおよびUTPに応答してカルシウムを動員し、P2Y1およびP2Y2 受容体を内因的に発現するHEK293の以前の報告と一致した(Schachter, J. B., Sromek, S. M., Nicholas, R. A.,およびHarden, T. K. (1997) Neuropharmacology 36, 1181-1187)。RT-PCRによるさらなる分析により、ヌクレオチド受容体 P2Y4, P2Y12,およびP2Y13およびアデノシン 受容体 A2AおよびA2B (Sunahara, R. K., Dessauer, C. W.,およびGilman, A. G. (1996) Annu Rev Pharmacol Toxicol 36, 461-480において以前に報告された)もまたHEK293細胞において発現されることが示された。アデノシン受容体の内因的発現にもかかわらず、トランスフェクトされていない細胞におけるアデノシンに対するカルシウム動員は非常に高いアデノシン濃度でのみ検出することができ、非常に弱い応答を示すのみであった。
【0237】
実施例17
サイクリックAMP産生分析
アデ二リルサイクラーゼ活性に対するP2Y15刺激の効果を決定づけるために、AMPおよびアデノシンに応答する、P2Y15-HEK293安定な形質転換体におけるサイクリックAMP蓄積を、Tropix cAMPスクリーン(Applied Biosystems)を用い、製造者のプロトコルにしたがって測定した。簡潔には、安定な形質転換と対照細胞(1×105細胞/ウェル)を、1μMの百日咳毒素有りまたは無しで2時間培養した後、10μM のフォルスコリンおよびAMPまたはアデノシンの連続希釈列で30分間処理した。次いで、細胞を溶解し、産生したcAMPをcAMP特異的ELISAで測定した。同時に測定したcAMP標準と比較して産生したcAMPの濃度を計算した。リガンド単独での刺激はいずれも、検出限界をわずかに超える弱い応答を生じたに過ぎなかった。しかし、10μM フォルスコリンの存在下では、AMPとアデノシンの両方がサイクリックAMPの産生を用量依存的に誘導し、EC50はAMPが214nM、アデノシンが327nMであった(図2B)。トランスフェクトしていないHEK293細胞は、おそらく内因的に発現したアデノシン 受容体の刺激に起因して、同様にアデノシンに応答してサイクリックAMPを産生したがAMPに対しては強くは応答しなかった。いずれか一方のリガンドに応答するサイクリックAMPの産生は、1μMの百日咳毒素で2時間細胞を前処理しても影響されず、P2Y15がアデニル酸シクラーゼ刺激Gタンパク質と連動していることを示した。
【0238】
実施例18
受容体結合アッセイ
96ウェルプレートにて各ウェルにつき、105細胞をDMEM培地で1時間2回洗浄した。次いで、小麦麦芽凝集素SPAビーズ(Amersham) を1mg/ウェルで加え、1時間後、一定体積のHBS:10 mM Hepes, 130 mM NaCl, 5 mM KCl, 1 mM MgCl2, 1 mM CaCl2および1 g/l グルコース (6μL/ウェル))中、 [3H]-アデノシンまたは [3H]-AMP (Amersham)の濃度を増加させた。4℃で16時間インキュベーションした後、プレートを10分間1500 rpmで遠心し、TopCount自動化シンチレーションカウンタにてシンチレーション計測した。代わりにSPAビーズを用いること以外は、同条件下で[32P]-AMPの結合を行い、インキュベーションの最後に、真空濾過により細胞を3回洗浄し、100μLのシンチレーション液をウェルに加えた。過剰量のいずれかの冷却したリガンド(2.5mM)とともに、同条件下で、非特異的結合測定を行った。Prism (Graph Pad)プログラムを用いる非線形回帰によりK値を測定した。
【0239】
安定な形質転換体におけるP2Y15受容体に対するリガンドの飽和結合アッセイにより、3H-アデノシンのKd は12.0μM (Fig. 3A)、3H-AMPのKdは18.6μM (データ示さず)であった。AMPはエクトヌクレオチダーゼによりアデノシンに脱リン酸化することができるので、我々は、測定された結合がAMPであり、アデノシンでないことを確認するためにアデノシン5’−[32P] 一リン酸について結合アッセイを再び行った。これにより、Kd 18.8μM (図3B)の同様の曲線が得られ、分解産物ではなくAMP自身が受容体に結合したことを示した。
【0240】
実施例19
競合結合アッセイ
競合結合アッセイ実験を以下の通り行った:96ウェルプレートにて各ウェルにつき、105細胞をDMEM培地で1時間2回洗浄した。次いで、小麦麦芽凝集素SPAビーズ(Amersham) を1mg/ウェルで加え、1時間後、10μMの[3H]-アデノシンまたは10μMの[3H]-AMP (Amersham)を加え、一定体積のHBS:10 mM Hepes, 130 mM NaCl, 5 mM KCl, 1 mM MgCl2, 1 mM CaCl2および1 g/l グルコース (6μL/ウェル))中、標識されていないリガンドの濃度を増加させた。4℃で16時間インキュベーションした後、プレートを10分間1500 rpmで遠心し、TopCount自動化シンチレーションカウンタにてシンチレーション計測した。Prism (Graph Pad)プログラムを用いる非線形回帰によりKi値を測定した。
【0241】
標識されていないアデノシンは、標識されていないAMPと同様の力価で、形質転換体に対する10μM 3H−AMPの結合をブロックすることができた(Ki=39.8μM)(図3C)。一方、標識されていないAMPは、形質転換体に対する10μM 3H−アデノシンの結合の大部分をブロックすることができたが、標識されていないアデノシンと同程度に完全にはブロックすることはできず、トランスフェクトされていないHEK293細胞に対する3H−アデノシン結合のブロックにおける効果はほとんどなかった(図3D)。これらの結果は、AMPおよびアデノシンの両方がP2Y15に結合するという考えを支持するものであるが、AMPとアデノシンのいずれも、トランスフェクトされていないHEK293細胞に対する3H−AMPの結合と拮抗することができないので、この結果はまた、トランスフェクトされていない細胞において特異的AMP結合部位を欠いていることを示している。
【0242】
実施例20
アデノシン受容体の任意の既知の非特異的アンタゴニストがP2Y15に拮抗することができるかどうかを試験するために、異なる濃度のテオフィリン、8−フェニルテオフィリン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)およびカフェインの存在下でカルシウム動員アッセイを行った。これら化合物は全て、AMPおよびアデノシンで誘導されるカルシウム動員をブロックすることができ、AMPのブロックのKiの値は、8−フェニルテオフィリンの250nMから、カフェインの2700nMの範囲に分布しており、アデノシンのブロックのKiの値は、8−フェニルテオフィリンの260nMからカフェインの26200nMの範囲に分布した(図4Aおよび4B)。
【0243】
実施例21
エクトヌクレオチダーゼの強力な阻害物質であるアデノシン5’−(α,β−メチレン)ジホスフェート (AMP-CP)を用いて、AMPのアデノシンへの変換をブロックすることによってAMPに対する細胞の応答を効果的にブロックすることができ、AMPだけでなくアデノシンに対するカルシウム応答のブロックにおいても有効であるという証拠を得、この化合物もまたP2Y15受容体に対する結合を直接阻害することができるということを示した(図4)。
【0244】
実施例22
マイクロアレイ解析により検出されるP2Y15の肥満細胞発現
標的の調製
H. Saito (H. Saito et al. J. Immunol. 157:343-350, 1996)により確立された、invivoのHCMCの作製方法にしたがって、ヒト臍帯血由来肥満細胞(HCMC)から全RNAを調製した。作製したHCMCは、その細胞内プロテアーゼプロファイル、ヒスタミン放出特性、および薬理学的特性 (H. Saito et al. J. Immunol. 157:343-350;1996, Y. Igarashi et al. Clin. Exp. Allergy 26:597-602;1996,およびH. Nagai et al. Clin. Exp. Allergy 28:1228-1236;1998)において、ヒトの肺の肥満細胞と類似していると思われる。従って、このHCMCは、肺の肥満細胞の生物学的および薬理学的研究、新しい抗ぜんそく薬の開発に有用である。HCMC由来の全RNAはTrizolTM (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA, USA)を用い、製造者のプロトコルにしたがって単離する。次いで、5μgの全RNAを、細菌調節mRNA (2.5 pg/μL araB/entF、8.33 pg/μL fixB/gndおよび25 pg/μL hisB/leuB)および1.0μLの0.5 pmol/μL T7-(dT)24 オリゴヌクレオチドプライマーを含有する反応混合物に加え、最終の体積を12μLとする。混合物を70℃にて10分間インキュベーションし、氷にて冷却した。混合物を氷で冷却しながら、4 μLの5×第1鎖緩衝液、2 μL 0.1M DTT、1μL10 mM dNTPミックスおよび1μL SuperscriptTM II RNase H逆転写酵素(200 U/μL)を加えて最終の体積を20μLとし、混合物をウォーターバスにて42℃で1時間インキュベーションした。第2鎖cDNAは、30 μLの5×第2鎖緩衝液、3 μLの10 mM dNTPミックス、4 μLのEscherichia coli DNAポリメラーゼI(10 U/μL)および1 μLのRNase H (2 U/μL)を含有する混合物(最終体積150μL)中、16℃で2時間合成した。Qiagen QIAquick精製キットを用いてcDNAを精製し、乾燥し、3.0 μLヌクレアーゼ不含水、4.0 μL 10×反応緩衝液、4.0 μL 75 mM ATP、4.0 μL、75 mM GTP, 3.0 μL、75 mM CTP, 3.0 μL、75 mM UTP, 7.5 μL、10 mM ビオチン 11-CTP, 7.5 μL、10 mM ビオチン 11-UTP (PerkinElmer Life Sciences Inc. Boston, MA, USA)および4.0 μL酵素ミックスを含有するIVT反応混合物中に再懸濁した。反応混合物を37℃にて14時間インキュベーションし、cRNA標的をRNeasy(登録商標)キット (Qiagen)を用いて精製した。cRNAの収量を260 nmのUV吸収により定量し、40 mM Tris酢酸(TrisOAc) pH 7.9, 100 mM KOAcおよび31.5 mM MgOAc中で94℃にて20分間断片化した。これにより、典型的に、100〜200塩基の範囲の大きさの断片化された標的を生じる。
【0245】
アレイハイブリダイゼーション
UniSet Human IおよびII Bioarrays (AmershamBiosciences)とのハイブリダイゼーションのため、78 μLのAmersham Hyb緩衝液コンポーネントAおよび130 μLのAmersham Hyb 緩衝液コンポーネントBを含有する260 μLのハイブリダイゼーション溶液中、各アレイにつき10μgの断片化された標的cDNAを用いた。ハイブリダイゼーション溶液を90℃に5分間加熱してcRNAを変性させ氷で冷却した。試料を最大スピードで5分間攪拌し、250 μLをハイブリダイゼーションチャンバーの入り口に注入した。ハイブリダイゼーションチャンバーを上に向けて、スライドをISF-4-W振盪インキュベーター(Kuhner, Birsfelden, Switzerland)にロードした。300 r.p.m.にて振盪しながらスライドを37℃で24時間インキュベーションした。
【0246】
ストレプタビジンCy5を用いた、ハイブリダイゼーション後のプロセシング
ISF-4-Wシェーカーからスライドを取り外し、各スライドからハイブリダイゼーションチャンバーを取り外した。各スライドを、TNT緩衝液(0.1 M TrisHCl pH 7.6, 0.15 M NaCl, 0.05% Tween-20)中、室温にて手短にリンスした後、TNT緩衝液中42℃にて60分間洗浄した。1:500希釈のストレプタビジン−Cy5(AmershamBiosciences)を用い、室温にて30分間発生させた。TNT緩衝液でそれぞれ5分間室温にて4回洗浄することにより過剰の色素を除去した。スライドを0.05% Tween-20でリンスし、窒素ガスにて乾燥した。処理したスライドをAxon GenePix 4000B スキャナーにて、レーザーを635 nmにセットし、光電子増倍管(PMT)の電圧を600にし、スキャン解像度を10μmにてスキャンした。Axon GenePixPro v4.0 Scanning Software (AmershamBiosciences)により画像を得、CodeLinkTM Expression Analysis Software (AmershamBiosciences).を用いて解析した。
【0247】
データ解析
CodeLinkTM Expression Analysis Software(AmershamBiosciences) は、Microsoft Excel 形式のスプレッドシートとしてスポットされた各ドットについてシグナルデータを自動的に作成する。コンピュータープログラムSpotfire Decision Site 7.0 (Spotfire Japan K.K., Tokyo, Japan) を用いてデータを解析し、2つのアレイ示される約20000個の遺伝子のそれぞれについて発現の相対的強度を決定した。この解析の結果として、P2Y15遺伝子転写物が、相対的強度において上位約1%のなかで一貫してよりも高く発現することが分かった。図5は、肥満細胞において発現した他の周知の遺伝子に対するP2Y15発現強度を示す。
【0248】
参考文献
1.Nandanan E, Jang SY, Moro S, Kim HO, Siddiqui MA, Russ P, Marquez VE, Busson R, Herdewijn

2.P, Harden TK, Boyer JL, Jacobson KA. Synthesis, biological activity, and molecular modeling of ribose-modified deoxyadenosine bisphosphate analogues as P2Y(1) receptor ligands. J Med Chem. 2000 Mar 9;43(5):829-42.

3.Major DT, Halbfinger E, Fischer B. Molecular recognition of modified adenine nucleotides by the P2Y(1)-receptor. 2. A computational approach. J Med Chem. 1999 Dec 30;42(26):5338-47.

3.Halbfinger E, Major DT, Ritzmann M, Ubl J, Reiser G, Boyer JL, Harden KT, Fischer B. Molecular recognition of modified adenine nucleotides by the P2Y(1)-receptor. 1. A synthetic, biochemical, and NMR approach. J Med Chem. 1999 Dec 30;42(26):5325-37.

4.Moro S, Hoffmann C, Jacobson KA. Role of the extracellular loops of G protein-coupled receptors inリガンドrecognition: a molecular modeling study of the human P2Y1 receptor. Biochemistry. 1999 Mar 23;38(12):3498-507.

5.Moro S, Guo D, Camaioni E, Boyer JL, Harden TK, Jacobson KA. Human P2Y1 receptor: molecular modeling and site-directed mutagenesis as tools to identify agonist and antagonist recognition sites. J Med Chem. 1998 Apr 23;41(9):1456-66.

6.Webb TE, Simon J, Barnard EA. Regional distribution of [35S]2'-deoxy 5'-O-(1-thio) ATP binding sites and the P2Y1 messenger RNA within the chick brain. Neuroscience. 1998 Jun;84(3):825-37.

7.Homolya L, Watt WC, Lazarowski ER, Koller BH, Boucher RC. Nucleotide-regulated calcium signaling in lung fibroblasts and epithelial cells from normal and P2Y(2) receptor (-/-) mice. J Biol Chem. 1999 Sep 10;274(37):26454-60.

8.Leon C, Hechler B, Vial C, Leray C, Cazenave JP, Gachet C. The P2Y1 receptor is an AMP OR ADENOSINE RECEPTOR LIGAND receptor antagonized by ATP and expressed in platelets and megakaryoblastic cells. FEBS Lett. 1997 Feb 10;403(1):26-30.

9.Dehaye JP, Moran A, Marino A. Purines, a new class of agonists in salivary glands? Arch Oral Biol. 1999 May;44 Suppl 1:S39-43.

10.King BF, Townsend-Nicholson A, Burnstock G. Metabotropic receptors for ATP and UTP: exploring the correspondence between native and recombinant nucleotide receptors. Trends Pharmacol Sci. 1998 Dec;19(12):506-14.

11.Saleh A, Figarella C, Kammouni W, Marchand-Pinatel S, Lazdunski A, Tubul A, Brun P, Merten MD. Pseudomonas aeruginosa quorum-sensing signal molecule N-(3-oxododecanoyl)-L-homoserine lactone inhibits expression of P2Y receptors in cystic fibrosis tracheal gland cells. Infect Immun. 1999 Oct;67(10):5076-82.

12.Cressman VL, Lazarowski E, Homolya L, Boucher RC, Koller BH, Grubb BR. Effect of loss of P2Y(2) receptor gene expression on nucleotide regulation of murine epithelial Cl(-) transport. J Biol Chem. 1999 Sep 10;274(37):26461-8.
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】種々のヒト組織および細胞におけるヒトP2Y15 GPCRの相対的発現を示す。
【図2A】P2Y15を発現する(丸印)トランスフェクトされたHEK293細胞における、カルシウム動員を示す:AMPによる刺激(塗りつぶされた記号)およびアデノシンによる刺激(白抜きの記号)。
【図2B】P2Y15を発現する(丸印)トランスフェクトされたHEK293細胞における、サイクリックAMP生成を示す:AMPによる刺激(塗りつぶされた記号)およびアデノシンによる刺激(白抜きの記号)。
【図3A】P2Y15を発現するとトランスフェクトされたHEK293細胞(丸印)およびトランスフェクトされていないHEK293細胞(四角印)に対する、増加する濃度の3H−アデノシンの結合を示す。
【図3B】P2Y15を発現するトランスフェクトされたHEK293細胞(丸印)およびトランスフェクトされていないHEK293細胞(四角印)に対する、増加する濃度の32P−AMPの結合を示す。
【図3C】P2Y15トランスフェクト細胞および非トランスフェクト細胞に対する3H−AMPの結合は、標識していないAMP(塗りつぶされた記号)またはアデノシン(白抜きの記号)の両方の場合において競合することができた。
【図3D】P2Y15トランスフェクト細胞および非トランスフェクト細胞に対する3H−アデノシンの結合は、標識していないAMP(塗りつぶされた記号)またはアデノシン(白抜きの記号)の両方の場合において競合することができた。
【図4A】アデノシンブロックAMP誘発P2Y15シグナル伝達の非特異的アンタゴニストを示す。10M AMPによって誘導されたカルシウム動員は、テオフィリン、IBMX、8−フェニルテオフィリン、カフェインおよびAMP−CPにより用量依存的に効果的にブロックされた。各アンタゴニストについてのKi値を示す。
【図4B】アデノシンブロックアデノシン誘発P2Y15シグナル伝達の非特異的アンタゴニストを示す。10M アデノシンによって誘導されたカルシウム動員は、テオフィリン、IBMX、8−フェニルテオフィリン、カフェインおよびAMP−CPにより用量依存的に効果的にブロックされた。各アンタゴニストについてのKi値を示す。
【図5】DNAマイクロアレイアッセイよって測定された、肥満細胞において発現した、P2Y15および種々の周知の遺伝子およびマーカーの相対的強度を示す。
【配列表】












【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のP2Y15の活性を検出するための方法であって、以下の工程
a)試料を、P2Y15およびリガンドとともに、P2Y15と該リガンドの結合が可能な条件下でインキュベーションする工程;および
b)第2のメッセンジャーを検出する工程であって、ここに該リガンドはAMPまたはアデノシン受容体リガンドである
を含む方法。
【請求項2】
さらに、
a)P2Y15含む第2の試料を、該リガンドの不在下、P2Y15と該リガンドの結合が可能な条件下でインキュベーションする工程;および
b)第2のメッセンジャーを検出する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、P2Y15を発現している細胞を含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記試料がP2Y15を有する細胞膜を含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
P2Y15を発現している細胞を用いて、P2Y15活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって、以下の工程
a)該物質の存在下で該細胞の第1の試料、および該物質の不在下で該細胞の第2の試料を、両試料ともAMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15への結合が可能な条件下でインキュベーションする工程
b)該第1および第2の試料中のP2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を検出する工程および
c)第2のメッセンジャーアッセイの結果を第1の試料および第2の試料について比較する工程
を含む方法。
【請求項6】
P2Y15を有する細胞膜を用いて、P2Y15活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって、
a)該物質の存在下で前記細胞膜の第1の試料、および該物質の不在下で前記細胞膜の第2の試料を、両試料ともAMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15への結合が可能な条件下でインキュベーションする工程
b)該第1および第2の試料中のP2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を検出する工程;および
c)第2のメッセンジャーアッセイの結果を第1の試料および第2の試料について比較する工程
を含む方法。
【請求項7】
P2Y15を発現している細胞を用いて、試験化合物がP2Y15の活性を増大または減少させるかを決定する方法であって、以下の工程:
a)該試験化合物の存在下で該細胞の第1の試料、および該試験化合物の不在下で該細胞の第2の試料を、両試料ともAMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15への結合が可能な条件下でインキュベーションする工程:
b)該第1および第2の試料におけるP2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を検出する工程;および
c)第2のメッセンジャーアッセイの結果を第1の試料および第2の試料について比較する工程
を含む方法。
【請求項8】
P2Y15を有する細胞膜を用いて、試験化合物がP2Y15の活性を増大または減少させるかを決定する方法であって、以下の工程:
a)該試験化合物の存在下で該細胞の第1の試料、および該試験化合物の不在下で該細胞の第2の試料を、両試料ともAMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15への結合が可能な条件下でインキュベーションする工程:
b)該第1および第2の試料におけるP2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を検出する工程;および
c)第2のメッセンジャーアッセイの結果を第1の試料および第2の試料について比較する工程
を含む方法。
【請求項9】
P2Y15の機能を調節する物質を同定する方法であって、以下の工程:
a)P2Y15ポリペプチドを、ある物質の存在下および不在下で、AMPまたはアデノシン受容体リガンドのP2Y15ポリペプチドへの結合が可能な条件下で接触させる工程;および
b)該P2Y15ポリペプチドの該物質への結合を測定し、該物質の存在下での結合と比較して結合を変化させる物質を、P2Y15の機能を減少または増大のための潜在的な治療物質として同定する工程
を含む方法。
【請求項10】
前記測定を、標識置換、表面プラズモン共鳴、蛍光共鳴エネルギー遷移、蛍光クエンチングおよび蛍光偏光法から選択される方法を用いて行う、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記物質が、天然のまたは合成されたペプチド、ポリペプチド、抗体またはその抗原結合断片、脂質、炭化水素、核酸および有機小分子からなる群から選択される、請求項5〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記P2Y15ポリペプチドのシグナル伝達活性を測定する工程が、第2のメッセンジャーのレベルの変化を検出することを含む、請求項5〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記シグナル伝達活性を検出する工程が、グアニンヌクレオチド結合または交換、アデニル酸シクラーゼ活性、cAMP、タンパク質キナーゼC活性、ホスファチジルイノシトール分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウム、アラキドン酸濃度、MAPキナーゼ活性、チロシンキナーゼ活性およびレポーター遺伝子発現の測定を含む、請求項5〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13にいずれかに記載の方法によって同定される、P2Y15ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性を調節する物質。
【請求項15】
請求項14に記載の物質および製薬的に許容し得る担体を含有する医薬組成物。
【請求項16】
疾患におけるP2Y15の活性を調節するための医薬の製造のための請求項14に記載の物質の使用。
【請求項17】
前記疾患が、腎臓機能に関連する疾患、肥満細胞に関連する疾患、上気道および口腔の疾患またはアレルギーもしくは炎症疾患である請求項16の使用。
【請求項18】
前記疾患が、喘息、COPD、鬱血性心疾患、高血圧、水腫、肝硬変、ネフローゼ症候群、皮膚における肥満細胞の過形成(肥満細胞腫)、麻疹、顔面紅潮、単独の肥満細胞腫、色素性蕁麻疹の複数の皮膚の病変、炎症性大腸炎、寄生虫感染症、神経線維腫(Cutaneous neurofibromas)、良性および悪性の乳房病変、急迫性尿失禁、過活動膀胱、シューグレン症候群、口渇、虫歯、後鼻漏および咳からなる群から選択される請求項16の使用。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2006−500056(P2006−500056A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539016(P2004−539016)
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010666
【国際公開番号】WO2004/029626
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】