説明

ヒドラジン含有廃水の処理装置、及び、ヒドラジン含有廃水の処理方法

【課題】 ヒドラジン含有廃水中のヒドラジンを効率良く分解することができるヒドラジン含有廃水の処理装置、及び、ヒドラジン含有廃水の処理方法を提供する。
【解決手段】 処理タンク5と、処理タンク5内に配置された少なくとも1つの触媒12と、処理タンク5にヒドラジン含有廃水を供給する廃水供給ライン3と、処理タンク5から廃水を排出する廃水排出ライン6と、処理タンク5に酸素を供給する酸素供給ライン8とを備え、廃水供給ライン3は、触媒12の上方に配置された吐出ノズル4を備え、吐出ノズル4は、廃水を散布可能に構成されており、触媒12を酸素雰囲気中に曝した状態で、吐出ノズル4により廃水を散布することにより、廃水中のヒドラジンを酸化させるヒドラジン含有廃水の処理装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドラジンを含有する廃水を処理するための処理装置、及び、処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒドラジンを含有する廃水を処理する装置として、図4に示す処理装置が知られていた(特許文献1参照)。
【0003】
このヒドラジン含有廃水の処理装置100は、処理タンク101と、処理タンク101内に配置された触媒102と、処理タンク101にヒドラジン含有廃水L(以下、単に「廃水」という。)を供給する廃水供給ライン105と、処理タンク101から前記廃水Lを排出する廃水排出ライン106と、処理タンク101に酸素を供給する酸素供給ライン107とを備えている。廃水排出ライン106及び廃水供給ライン105は、送出ポンプ109を介して接続されている。酸素供給ライン107の先端部には、処理タンク101に配置された散気ノズル108が設けられている。
【0004】
このような処理装置100によれば、処理タンク101に廃水Lが収容されている状態で、送出ポンプ109を作動させることにより、処理タンク101から廃水Lを廃水排出ライン106に排出し、該廃水Lを送出ポンプ109により廃水供給ライン105に送出し、廃水供給ライン105から該廃水Lを処理タンク101に供給する。こうして、廃水Lを循環させる。
【0005】
また、送出ポンプ109の作動と併せて、図示しない酸素発生装置から酸素を酸素供給ライン107に送出し、該酸素を、散気ノズル108を介して処理タンク101に供給する。供給された酸素は、処理タンク101内を上昇してゆく。
【0006】
このようにすると、処理タンク101内の廃水Lが触媒102に接触しつつ酸素と反応することにより、廃水L中のヒドラジンが酸化分解される。このとき、廃水L中のヒドラジンは、次に示す化学式により酸化分解される。
【0007】
(数1)
+O→N+2H

【特許文献1】特開昭53−91095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような処理装置100では、処理タンク101内の廃水L、触媒102、及び、酸素が効率良く接触せず、廃水L中のヒドラジンの酸化分解が効率良く進行しなかった。そのため、ヒドラジンの分解に長時間を要するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、ヒドラジン含有廃水中のヒドラジンを効率良く分解することができるヒドラジン含有廃水の処理装置、及び、ヒドラジン含有廃水の処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前記目的は、処理タンクと、前記処理タンク内に配置された少なくとも1つの触媒と、前記処理タンクにヒドラジン含有廃水を供給する廃水供給ラインと、前記処理タンクから前記廃水を排出する廃水排出ラインと、前記処理タンクに酸素を供給する酸素供給ラインとを備え、前記廃水供給ラインは、前記触媒の上方に配置された吐出ノズルを備え、前記吐出ノズルは、前記廃水を散布可能に構成されており、前記触媒を酸素雰囲気中に曝した状態で、前記吐出ノズルにより前記廃水を散布することにより、前記廃水中のヒドラジンを酸化させるヒドラジン含有廃水の処理装置により達成される。
【0011】
また、上記処理装置において、前記触媒は、平板状の多孔質体からなり、縦置き状態で水平方向に間隔をあけて複数配置されていることが好ましい。
【0012】
また、前記触媒は、鉛直方向に複数配置されており、鉛直方向に隣接するもの同士がそれぞれ異なる方向を向くように配置されていることが好ましい。
【0013】
また、前記廃水は、ヒドラジン濃度が300mg/l〜20,000mg/lであることが好ましい。
【0014】
また、前記処理タンク内の圧力を制御可能な圧力制御機構を更に備え、前記処理タンク内を加圧した状態で、前記廃水中のヒドラジンを酸化させることが好ましい。
【0015】
また、前記廃水排出ラインは、前記廃水供給ラインに接続されており、前記廃水排出ラインにより前記処理タンクから排出された前記廃水を、前記廃水供給ラインにより再び前記処理タンクに供給することにより、前記廃水を循環させることが好ましい。
【0016】
また、本発明の前記目的は、処理タンクと、前記処理タンク内に配置された少なくとも1つの触媒と、前記処理タンクにヒドラジン含有廃水を供給する吐出ノズルを有する廃水供給ラインと、前記処理タンクから前記廃水を排出する廃水排出ラインと、前記処理タンクに酸素を供給する酸素供給ラインとを備えるヒドラジン含有廃水の処理装置により、前記廃水を処理するヒドラジン含有廃水の処理方法であって、前記酸素供給ラインにより前記処理タンクに酸素を供給して前記触媒を酸素雰囲気に曝した状態で、前記吐出ノズルにより前記触媒の上方から前記処理タンクに前記廃水を散布することにより、前記廃水中のヒドラジンを酸化させる酸化ステップを備えるヒドラジン含有廃水の処理方法により達成される。
【0017】
また、上記処理方法において、前記廃水排出ラインは、前記廃水供給ラインに接続されており、前記酸化ステップは、前記廃水排出ラインにより前記処理タンクから排出された前記廃水を、前記廃水供給ラインにより再び前記処理タンクに供給することにより、前記廃水を循環させながら前記廃水中のヒドラジンを酸化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のヒドラジン含有廃水の処理装置、及び、処理方法によれば、ヒドラジン含有廃水中のヒドラジンを効率良く分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るヒドラジン含有廃水の処理装置10(以下、単に「処理装置」という)の概略構成を示す図である。この処理装置10は、図1に示すように、ヒドラジンを含有する廃水Lを貯留する貯留タンク1と、廃水Lを処理する処理タンク5と、廃水処理用の酸素を発生させる酸素発生装置7とを備えている。
【0020】
貯留タンク1は、図示しない廃水回収ラインなどにより回収された廃水Lを貯留可能に構成されている。
【0021】
処理タンク5は、金属製の直方体の缶から構成されている。図2は、処理タンク5の要部を示す断面図である。図2に示すように、処理タンク5は、内面から内方に突出する支持突起14と、内部に配置された複数の触媒ユニット11とを備えている。
【0022】
触媒ユニット11は、処理タンク5内において鉛直方向に複数積層されており、それぞれ、ユニット枠13と、ユニット枠13内に保持された複数の触媒12とを備えている。ユニット枠13は、金属製の線材を格子状に組むことにより構成されている。処理タンク5内において最下層に位置するユニット枠13は、支持突起14により支持されている。
【0023】
触媒12としては、ヒドラジンの酸化分解を促進するものであれば特に限定されないが、本実施形態では、平板状のステンレス金網の表面に金めっき層を形成し、該金めっき層の上にパラジウムめっき層を積層したものを用いている。このような触媒12としては、特開平6−269671号公報に記載の廃液酸化分解触媒を例示することができる。
【0024】
触媒12は、ユニット枠13内で起立するように縦置き状態で配置されており、水平方向に間隔をあけて複数配置されている。これにより、複数の触媒12は、それぞれ高さ方向が鉛直方向に沿うように配置され、水平方向に隣接するもの同士の間に、流体が通過可能な流路15が形成される。
【0025】
また、触媒12は、触媒ユニット11が積層されることにより、鉛直方向に沿って複数配置されている。また、複数の触媒ユニット11が鉛直方向に沿って交互に異なる向きで配置されることにより、触媒12は、処理タンク5内において鉛直方向に隣接するもの同士がそれぞれ異なる方向を向くように配置されている。本実施形態では、鉛直方向において対向する触媒12の縁部が直交するように配置されている。
【0026】
また、触媒12は、処理タンク5内に気体が導入された状態では、気相中に配置される。
【0027】
酸素発生装置7としては、大気中の空気を窒素と高濃度酸素に分離する公知のPSA式酸素発生装置などを用いることができる。また、液体酸素を用いて酸素を発生させてもよい。酸素発生装置7は、発生した酸素の圧力を調整して供給できるように構成されており、加圧状態の酸素を供給できる。
【0028】
また、処理装置10は、図1に示すように、廃水供給ライン3、廃水排出ライン6、酸素供給ライン8、及び、排ガスライン9を備えている。
【0029】
廃水供給ライン3は、両端部がそれぞれ貯留タンク1及び処理タンク5に接続されており、貯留タンク1内の廃水Lを処理タンク5に供給する。廃水供給ライン3の途中には、貯留タンク1内の廃水Lを廃水供給ライン3に吐出する吐出ポンプ2と、廃水供給ライン3を開閉する廃水バルブ20とが設けられている。また、廃水供給ライン3は、先端部に取り付けられた吐出ノズル4を備えている。吐出ノズル4は、処理タンク5内において、触媒ユニット11の上方に配置されており、触媒12の上方から廃液をシャワー状に散布可能に構成されている。吐出ノズル4としては、公知のスプレーノズルを用いることができる。
【0030】
廃水排出ライン6は、両端部がそれぞれ処理タンク5及び貯留タンク1に接続されており、処理タンク5から廃水Lを排出し、貯留タンク1に導入する。廃水排出ライン6は、処理タンク5の下部に接続されている。廃水排出ライン6の途中には、廃水排出ライン6の開度を調整する排水バルブ16が設けられている。
【0031】
廃水排出ライン6及び廃水供給ライン3は、貯留タンク1を介して接続されており、処理タンク5から廃水排出ライン6により排出された廃水Lが廃水供給ライン3により再び処理タンク5に供給され、廃水Lが循環するように構成されている。
【0032】
酸素供給ライン8は、両端部がそれぞれ酸素発生装置7及び処理タンク5に接続されており、酸素発生装置7で生成された酸素を処理タンク5内に導入する。酸素供給ライン8は、触媒ユニット11の下方において処理タンク5に接続されている。酸素供給ライン8は、酸素を処理タンク5の全体に供給する観点から、処理タンク5の底部に接続されるのが好ましい。酸素供給ライン8の途中には、酸素供給ライン8を開閉する酸素バルブ18が設けられている。
【0033】
排ガスライン9は、処理タンク5の上部に接続されており、廃水Lを酸化分解することにより発生する窒素を外部に排出する。排ガスライン9の途中には、排ガスライン9の開度を調整する排ガスバルブ19が設けられている。
【0034】
廃水Lとしては、ヒドラジン濃度が高すぎると、廃水処理に必要な酸素量が増大し、酸素発生装置7が大型化するので、設備コストの面で不利である。一方、ヒドラジン濃度が低すぎると、ヒドラジンの処理効率が低下して従来法に対する優位性が小さくなるため、酸素の使用を前提とする本発明への適用が設備コストの面で不利となる場合がある。したがって、廃水Lとしては、ヒドラジン濃度が300mg/l〜20,000mg/lの液体であることが好適である。
【0035】
次に、以上のように構成された処理装置10を用いて、廃水Lを処理する方法を説明する。
【0036】
まず、廃水バルブ20を開状態にすることにより、貯留タンク1内の廃水Lを処理タンク5に導入する。廃水Lは、処理タンク5に導入されるとき、吐出ノズル4からシャワー状に吐出され、液滴として処理タンク5内を落下してゆく。また、触媒12に接触した廃水Lの液滴は、触媒12に沿って、処理タンク5の下部に向かって下降してゆく。また、処理タンク5の下部に流れた廃水Lは、廃水排出ライン6により排出された後、再び、廃水供給ライン3により処理タンク5に供給され、循環する。
【0037】
一方、廃水バルブ20と併せて酸素バルブ18を開状態にすることにより、処理タンク5内に酸素を供給する。酸素は、処理タンク5の下部から導入され、処理タンク5内を上昇してゆく。また、この酸素は、酸素発生装置7により加圧されており、酸素分圧を高められた状態で処理タンク5に供給されている。このとき、触媒12は、処理タンク5内において、導入された酸素の雰囲気中に配置されている。
【0038】
その後、処理タンク5内の廃水Lが触媒12のもとで酸素と接触することにより、廃水L中のヒドラジンが酸化分解される。ヒドラジンの酸化により発生した窒素は、排ガスライン9から排出される。
【0039】
また、排ガスバルブ19を開閉することにより、排ガスライン9の開度を調整し、排ガスライン9中の排ガスの流量を調整する。また、排水バルブ16を開閉することにより、廃水排出ライン6の開度を調整し、廃水排出ライン6中の廃水Lの流量を調整する。こうして、処理タンク5内の排ガス及び廃水Lの量を調整することにより、処理タンク5内の酸素分圧を調整する。これにより、処理タンク5内の気圧が制御される。処理タンク5内の気圧は、加圧状態にされていることが好ましいが、高すぎると処理タンク5を耐圧構造にするためのコストが高くなることから、具体的には、0.1MPaG〜0.3MPaGが好ましい。
【0040】
本実施形態に係るヒドラジン含有廃水の処理装置10及び処理方法によれば、廃水供給ライン3が触媒12の上方に配置された吐出ノズル4を備え、吐出ノズル4が廃水Lを散布可能に構成されており、触媒12を酸素雰囲気中に曝した状態で、吐出ノズル4により廃水Lを散布するので、酸素雰囲気下で廃水Lを液滴の状態で触媒12に接触させることができる。これにより、廃水Lを触媒12と良好に接触させることができるので、廃水L中のヒドラジンを効率良く酸化分解することができる。特に、排水中のヒドラジン濃度が高濃度であるときに効率良く分解することができる。また、ヒドラジンの分解時間を短縮することができる。これにより、処理装置10を簡素な構成にすることができると共に、安全に取り扱うことができる。また、処理装置10に供給する酸素の量を低減することができる。また、ヒドラジンの分解を促進する薬品等を別途供給しなくてもよいので、コストを抑えることができる。これは、ヒドラジン濃度が高濃度であるこきに、特に効果的である。
【0041】
また、本実施形態に係るヒドラジン含有廃水の処理装置10及び処理方法によれば、触媒12が平板状の金網からなり、処理タンク5内において起立するように縦置き状態で水平方向に間隔をあけて複数配置されているので、触媒12に接触した廃水Lが、触媒12に沿ってスムーズに下方に流れる。また、処理タンク5内の酸素が触媒12に沿ってスムーズに上方に流れる。これにより、廃水L、触媒12及び酸素を円滑に接触させることができ、廃水L中のヒドラジンをより効率良く分解することができる。また、触媒12が多孔質の金網から構成されているので、廃水Lと触媒12との接触面積を増大させることができる。また、触媒12が簡素な構成なので、コストを削減することができる。
【0042】
また、触媒12が鉛直方向に複数配置されており、鉛直方向に隣接するもの同士がそれぞれ異なる方向を向くように配置されているので、処理タンク5内で下降する廃水Lを触媒12に均一に接触させることができ、廃水L中のヒドラジンを確実に分解することができる。
【0043】
また、廃水排出ライン6が廃水供給ライン3に接続されており、廃水排出ライン6により処理タンク5から排出された廃水Lを、廃水供給ライン3により再び処理タンク5に供給するので、廃水Lを循環させながら、ヒドラジンを分解することができる。これにより、廃水Lが多量であっても、廃水L中のヒドラジンを効率良く分解することができる。
【0044】
また、排ガスバルブ19及び排水バルブ16を備えているので、これらの開度調整で処理タンク5内の圧力を制御することにより、処理タンク5内を加圧した状態で、廃水L中のヒドラジンを酸化させることができる。これにより、処理タンク5中の酸素を触媒2に効率良く吸着させることができるので、触媒2及び酸素の量を軽減しても、ヒドラジンを効率良く分解することができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、平板状のステンレス金網から形成された触媒12を用いていたが、触媒12の形態は特に限定されない。触媒12は、触媒Lとの接触面積を大きくする観点から、多孔質体から構成されることが好ましい。
【0047】
また、上記実施形態では、触媒12は、起立状態で配置されていたが、配置構成は特に限定されず、横に伏せた状態で配置されていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、酸素供給ライン8は、触媒12の下方において処理タンク5に接続されていたが、触媒12が酸素雰囲気中に配置されていれば、酸素供給ライン8の接続位置は特に限定されず、触媒12の上方において処理タンク5に接続されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、排ガスライン9は、処理タンク5の上部に接続されていたが、処理タンク5内の排ガスを外部に排出することができれば接続位置は特に限定されず、処理タンク9の下部に接続されていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、処理タンク5は、金属製の直方体の缶から構成されていたが、内部に触媒12を配置可能であれば、その構成は特に限定されず、例えば、FRP(繊維強化プラスチック)製の円筒缶などであってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、排ガスバルブ19及び排水バルブ16により、処理タンク5内の圧力を制御する圧力制御機構を構成していたが、この圧力制御機構は、処理タンク5内の圧力を制御可能であれば、その構成は特に限定されず、例えば処理タンク5に別途設置した加圧装置等であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、処理タンク5内を加圧した状態に維持していたが、廃水L中のヒドラジンを分解可能であれば、必ずしも加圧する必要はない。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明が本実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例として、図1に示す処理装置1を用い、廃水L中のヒドラジンを酸化分解した。
【0055】
また、比較例として、図4に従来技術として示す処理装置100を用い、廃水L中のヒドラジンを酸化分解した。
【0056】
処理する廃水Lの量は、5lとし、その温度は、30℃〜40℃とした。廃水Lを循環させ、バッチ式の処理とした。処理時間は6時間とした。また、廃水供給ライン3から処理タンク5に廃水Lを供給するときの流量は、1〜2l/minとした。廃水Lのヒドラジン濃度は11,100mg/lとした。
【0057】
触媒12は、特開平6−269671号公報に記載のパラジウム系固体触媒(田中貴金属工業株式会社製)とした。この触媒12は、幅×高さが50mm×50mmである平板状のステンレス金網にパラジウムめっき層を積層したものであり、ステンレス金網が20メッシュのものとした。この触媒12を100個用い、また、触媒ユニット11を10個用い、1つの触媒ユニット11に触媒12を10個づつ配置した。
【0058】
酸素供給ライン8から処理タンク5に供給する酸素は、純度99%とし、流量を0.32l/minとした。この酸素の流量は、理論上要求される酸素の供給量の2倍程度である。
【0059】
比較例においても実施例と同様の廃水L、触媒及び酸素を用いた。比較例におけるヒドラジン濃度は、10,300mg/lとした。
【0060】
以上の条件により、廃水L中のヒドラジンの分解処理を行い、時間経過に伴う廃水L中のヒドラジン濃度を測定した。図3は、実験結果を示す図である。
【0061】
図3に示すように、実施例では、ヒドラジンの減少速度(単位時間当りにおける、廃水L中のヒドラジンの減少量)が、9,840mg/hであった。また、比較例では、ヒドラジンの減少速度が、2,490mg/hであった。実施例では、比較例に対して、時間経過に伴う廃水L中のヒドラジン濃度の低下量(ヒドラジンの減少量)が大きかった。これより、実施例では、廃水L中のヒドラジンを効率良く分解できることが確認できた。特に、ヒドラジン濃度が300mg/l〜20,000mg/lにおいて、ヒドラジンの分解効率が高いことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒドラジン含有廃水の処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】処理タンクの要部を示す断面図である。
【図3】実施例の実験結果を示す図である。
【図4】従来のヒドラジン含有廃水の処理装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
L ヒドラジン含有廃水
1 貯留タンク
2 吐出ポンプ
3 廃水供給ライン
4 吐出ノズル
5 処理タンク
6 廃水排出ライン
7 酸素発生装置
8 酸素供給ライン
10 ヒドラジン含有廃水の処理装置
11 触媒ユニット
12 触媒
13 ユニット枠
16 排水バルブ
19 排ガスバルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理タンクと、
前記処理タンク内に配置された少なくとも1つの触媒と、
前記処理タンクにヒドラジン含有廃水を供給する廃水供給ラインと、
前記処理タンクから前記廃水を排出する廃水排出ラインと、
前記処理タンクに酸素を供給する酸素供給ラインとを備え、
前記廃水供給ラインは、前記触媒の上方に配置された吐出ノズルを備え、
前記吐出ノズルは、前記廃水を散布可能に構成されており、
前記触媒を酸素雰囲気中に曝した状態で、前記吐出ノズルにより前記廃水を散布することにより、前記廃水中のヒドラジンを酸化させるヒドラジン含有廃水の処理装置。
【請求項2】
前記触媒は、平板状の多孔質体からなり、縦置き状態で水平方向に間隔をあけて複数配置されている請求項1に記載のヒドラジン含有廃水の処理装置。
【請求項3】
前記触媒は、鉛直方向に複数配置されており、鉛直方向に隣接するもの同士がそれぞれ異なる方向を向くように配置されている請求項2に記載のヒドラジン含有廃水の処理装置。
【請求項4】
前記廃水は、ヒドラジン濃度が300mg/l〜20,000mg/lである請求項1から3のいずれかに記載のヒドラジン含有廃水の処理装置。
【請求項5】
前記処理タンク内の圧力を制御可能な圧力制御機構を更に備え、
前記処理タンク内を加圧した状態で、前記廃水中のヒドラジンを酸化させる請求項1から4のいずれかに記載のヒドラジン含有廃水の処理装置。
【請求項6】
前記廃水排出ラインは、前記廃水供給ラインに接続されており、
前記廃水排出ラインにより前記処理タンクから排出された前記廃水を、前記廃水供給ラインにより再び前記処理タンクに供給することにより、前記廃水を循環させる請求項1から5のいずれかに記載のヒドラジン含有廃水の処理装置。
【請求項7】
処理タンクと、前記処理タンク内に配置された少なくとも1つの触媒と、前記処理タンクにヒドラジン含有廃水を供給する吐出ノズルを有する廃水供給ラインと、前記処理タンクから前記廃水を排出する廃水排出ラインと、前記処理タンクに酸素を供給する酸素供給ラインとを備えるヒドラジン含有廃水の処理装置により、前記廃水を処理するヒドラジン含有廃水の処理方法であって、
前記酸素供給ラインにより前記処理タンクに酸素を供給して前記触媒を酸素雰囲気に曝した状態で、前記吐出ノズルにより前記触媒の上方から前記処理タンクに前記廃水を散布することにより、前記廃水中のヒドラジンを酸化させる酸化ステップを備えるヒドラジン含有廃水の処理方法。
【請求項8】
前記廃水排出ラインは、前記廃水供給ラインに接続されており、
前記酸化ステップは、前記廃水排出ラインにより前記処理タンクから排出された前記廃水を、前記廃水供給ラインにより再び前記処理タンクに供給することにより、前記廃水を循環させながら前記廃水中のヒドラジンを酸化させる請求項7に記載のヒドラジン含有廃水の処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−226252(P2009−226252A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71525(P2008−71525)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000143972)株式会社ササクラ (138)
【Fターム(参考)】