説明

ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法

【課題】高純度のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、高純度のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法に関する。特に、本発明は、商業的かつ有利に高純度ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを(メタ)アクリル酸およびアルキレンオキシドから産生できる、改善された方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法に関する。特に、本発明は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを(メタ)アクリル酸およびアルキレンオキシドから商業的かつ有利に産生できる改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここにおいて用いられる場合、「(メタ)」なる用語の後に別の用語、例えば、アクリレートが続く用法は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。例えば、「(メタ)アクリレート」なる用語は、アクリレートまたはメタアクリレートのいずれかをさし;「(メタ)アクリル」なる用語は、アクリルまたはメタクリルのいずれかをさし:「(メタ)アクリル酸」なる用語は、アクリル酸またはメタクリル酸のいずれかをさす。
98%を超える純度として定義される高純度を達成することは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法において存在する課題の1つである。米国特許第4,365,081A号および米国特許第6,465,681号において例示されるような高純度のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを達成する試みが、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキシドと、均一触媒の存在下で反応させることによりもたらされる。米国特許第4,365,081A号において開示されたものなどの方法は、伝統的には、温度および供給速度などの特定のプロセス条件下で行われる。典型的には、反応温度を一定に、69℃より高く維持しながら、アルキレンオキシドは、1時間あたり、(メタ)アクリル酸1モルあたりアルキレンオキシド0.27モルより低い割合でリアクター中に供給される。97.5%付近のみの純度が達成される。同様に、米国特許第6,465,681号において開示された方法は、特定の供給速度および温度条件下で行われ、ここで、アルキレンオキシドはリアクター中に、0.71〜0.18の範囲の割合で供給され、反応温度は(メタ)アクリル酸の50%変換後に上昇させられ、69℃を超えた。この性質のプロセス条件で、結果として得られる反応液の純度はわずか91.4%である。
【特許文献1】米国特許第4,365,081号明細書
【特許文献2】米国特許第6,465,681号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
経済効率およびプロセス効率のバランスをとりつつ生成物純度のレベルを上昇させることは、引き続きヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート製造業者らの目標である。
【0004】
本発明は、温度および供給速度のプロセス条件を最適化することにより純度レベルを98%より高く増大させることによって、この問題を解決した。最適化の結果として、本発明は、製造においてこれらのモノマーが用いられる場合に、前記の従来技術のモノマーよりも、低い副生成物形成、下流用途における増大した性能、および得られたポリマーのより高い均一性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様において、高純度ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって:
i)(メタ)アクリル酸を反応容器中に供給し;
ii)少なくとも1種のアルキレンオキシドを反応容器中に、1時間あたり、(メタ)アクリル酸1モルにつきアルキレンオキシド0.12〜1.23モルの範囲の供給速度で供給し;
iii)アルキレンオキシドの供給の間、反応温度を50〜69℃の範囲に維持し;その後
iv)リアクター内容物を初期反応温度よりも少なくとも5℃低い温度に冷却し、ここで、冷却は、添加されるアルキレンオキシドの合計量の少なくとも35重量%がリアクターに添加された時に開始される;
v)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸および少なくとも1種のアルキレンオキシドを反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを形成し、ここで、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは不純物を含む;および
vi)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを蒸留により精製すること:を含む方法が提供される。
【0006】
本発明の第二の態様において、高純度ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって:
i)(メタ)アクリル酸を反応容器中に供給し;
ii)少なくとも1種のアルキレンオキシドを反応容器中に、1時間あたり、(メタ)アクリル酸1モルにつきアルキレンオキシド0.12〜1.23モルの範囲の供給速度で供給し;
iii)少なくとも1種のアクリル酸および少なくとも1種のアルキレンオキシドを反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを形成し;
iv)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを蒸留により精製し;
v)反応容器を少なくとも1種の洗浄剤により洗浄すること、ここで、洗浄剤の成分は本質的に酢酸および水からなる:を含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(メタ)アクリル酸は反応容器中に供給される。少なくとも1種のアルキレンオキシドが同じリアクター中に所定の供給速度で供給される。アルキレンオキシドに適した供給速度は、1.23、1.20、および1.17の上限から0.12、0.20、および0.26の下限までの範囲である。全ての範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。
【0008】
反応は、当業者に周知の装置および基本的プロセスを用いて行われる。米国特許第4,365,081A号は、本発明のプロセスにおいて用いられる基本的な装置を例示している。
【0009】
反応物質を触媒の存在下で反応させて、少なくとも1種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび不純物を形成する。本発明により製造される高純度ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、これに限定されないが、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、およびヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられる。反応物質がリアクターに供給される間、容器の温度は69℃未満、特に50〜69℃の範囲である。
【0010】
続いて、反応を100、88、および75℃の上限から25、37、および50℃の下限までの範囲の温度で行う。全ての温度範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。
【0011】
反応を行った後、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート生成物を次に精製する。一つの態様において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート生成物は粗反応混合物から蒸留される。蒸留プロセスに関する主な問題の一つは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート自体が追加の(メタ)アクリル酸分子でさらにエステル化できるか、または別のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとエステル交換して、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(以下、「ジ(メタ)アクリレート」と称する)を産生し得ることである。ジ(メタ)アクリレートは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが成分であるその後の重合において架橋剤として作用し得るので、望ましくない。さらに、ジ(メタ)アクリレートは蒸留段階の間の望ましくない重合の程度を増大させる場合があり、その結果、蒸留器底部においてまたは装置上のタールまたは他の望ましくない固体の量が増大し、および対応して、蒸留物中の所望のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの収率が減少する場合がある。このジ(メタ)アクリレートの形成の程度は、反応において用いられる触媒の種類、様々な反応物質の濃度、生成物、または他の添加剤、ならびに反応および蒸留条件に依存する。
【0012】
タールまたは他の望ましくない固体の量の増加の問題に対抗するために、1以上のジエステル遅延剤が習慣的に反応容器に添加される。特定のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、およびヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)などに関して、クロム触媒を使用する場合、ジエステル遅延剤、例えば、サリチル酸および他のカルボン酸または米国特許第5,342,487A号においてこの目的に関して開示されているような他の酸の使用を排除することが有利である。典型的には、これらの酸は、ジ(メタ)アクリレートの形成を遅らせるので、ジエステル遅延剤として使用される。加えて、これらはしばしば非常に粘稠である蒸留残滓の希釈剤として挙動することが知られている。これらのジエステル遅延剤の使用に関する問題は、これらが反応混合物の成分と反応して、(メタ)アクリル酸を形成することである。(メタ)アクリル酸は、所望のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから分離するのが困難であるので、反応容器中の望ましくない生成物である。従って、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、およびヒドロキシプロピルメタクリレートのために、カルボン酸のようなジエステル遅延剤を使用することなく、ジエステル形成を制御するためにプロセス条件を操作することが必要である。
【0013】
本発明によると、酢酸クロムおよび特定のリアクターおよび蒸留条件は、ジ(メタ)アクリレート量を低く保つ。これは、通常の希釈剤または前記のようなジエステル遅延剤が必要ないので、有利である。さらに、反応温度の低下の結果、ジエステル形成が減少する。低下した反応温度とは、45〜69℃、さらに詳細には50〜69℃の範囲の温度を意味する。
【0014】
さらに、オキシドの供給速度を増大させると、その結果、サイクルタイムがよりはやくなり、副生成物形成が少なくなり、かつ生成物純度が高くなる。好適な増大した供給速度は、0.61の上限から0.22の下限までの範囲である。
【0015】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート生成物の蒸留の間に担体を添加することができる。本発明の好適な担体は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび少量の水を含んでなる。任意の担体を、別々に、または組み合わせて用いることができる。
【0016】
反応後に洗浄剤を反応容器に添加することができる。洗浄剤は水および酢酸のみを含んでなり、水100%および酢酸0%の上限から水5%および酢酸95%の下限までの範囲の割合で提供される。全ての比は両端を含み、組み合わせ可能である。水および酢酸を同時に、または段階的に添加することができ、洗浄プロセスは、1種の洗浄剤または複数の洗浄剤からなりうる。洗浄剤を添加する場合、洗浄剤は75、55、および40℃の上限から25、30、および35℃の下限までの範囲の温度を有するのが好ましい。全ての温度範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例および比較例をさらに具体的に記載する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0018】
実施例1
スターラー、加熱コイルおよび熱交換器を備えたステンレス鋼316(SS−316)リアクターに、容量の64%までアクリル酸、初期アクリル酸チャージの0.56重量パーセントに等しい鉄(0)粉末、および第二アクリル酸チャージ(4.6重量パーセントのp−メトキシフェノール(重合禁止剤として)、および3.0重量パーセントの銅ジブチルジチオカーバメート(重合禁止剤として)を含有し、初期アクリル酸チャージの4.6重量パーセントに等しい)を充填した。雰囲気を次に空気および窒素と置換して、酸素9パーセントを含有する雰囲気を達成した。温度を69℃に上昇させ、混合物を1.3時間撹拌して、アクリル酸鉄(III)が生成した。この期間中、ヘッドスペース中の酸素濃度を2.5から9パーセントの間に維持した。次に、1時間あたり、アクリル酸1モルにつきエチレンオキシド0.22モルの速度でエチレンオキシドを供給しつつ、温度を68℃に下げ、一定に保った。添加されるエチレンオキシドの合計量の35パーセントが供給された後、残りのエチレンオキシド供給のために、温度を56℃に下げ、一定に保った。エチレンオキシドの合計アクリル酸に対するモル比が1.1対1になったら、エチレンオキシドの供給を停止した。次に、温度を56℃で一定に保ち、未反応アクリル酸の量が0.75パーセント未満に減少するまで反応を継続した。合計反応時間は9.1時間であった。結果として得られる混合物のガスクロマトグラフィー分析は、ヒドロキシエチルアクリレート91.8重量パーセント、ジエチレングリコールモノアクリレート7.2重量パーセント、エチレングリコールジアクリレート0.22重量パーセント、およびエチレングリコール0.05重量パーセントの濃度を示した。これらの結果を表1に記載する。
【0019】
比較例1
エチレンオキシドを、1時間あたりアクリル酸1モルにつきエチレンオキシド0.18モルの速度で供給した以外は実施例1のプロセスを用いて、手順を実施した。合計反応時間は10.4時間であり、得られた混合物のガスクロマトグラフィー分析は、ヒドロキシエチルアクリレート91.3重量パーセント、ジエチレングリコールモノアクリレート7.5重量パーセント、エチレングリコールジアクリレート0.17重量パーセント、およびエチレングリコール0.05重量パーセントの濃度を示した。これらの結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
実施例2
スターラー、加熱コイルおよび熱交換器を備えたSS−316リアクターに容量の56%までアクリル酸、初期アクリル酸チャージの0.75重量パーセントに等しい酢酸クロム(III)粉末、および第二アクリル酸チャージ(4.9重量パーセントのp−メトキシフェノール(重合禁止剤として)、および3.1重量%の銅ジブチルジチオカーバメート(重合禁止剤として)を含有し、初期アクリル酸チャージの3.9重量%に等しい)を充填した。雰囲気を次に空気および窒素と置換して、酸素9パーセントを含有する雰囲気を達成した。次に、1時間あたりアクリル酸1モルにつきプロピレンオキシド0.36モルの速度でプロピレンオキシドを供給しつつ、温度を65℃に上昇させ、一定に保った。プロピレンオキシドの合計アクリル酸に対するモル比がそれぞれ1.08対1に達したら、プロピレンオキシドの供給を停止した。次に、温度を60℃に下げ、温度を60℃で一定に保ち、未反応アクリル酸の量が0.08パーセント未満に減少するまで反応を継続した。合計反応時間は9.0時間であった。次に、結果として得られた混合物を8.0kPa以下の圧力で、蒸留容器、デミスターパッド、リボイラー、接触型凝縮器、および受けタンクを備えたSS−316蒸留装置に移して、0.0013〜0.27kPaの真空下、混合物温度範囲58〜66℃での蒸留による精製を行った。移す前に、蒸留容器に、ヒドロキシプロピルアクリレート(6.5重量パーセントの銅ジブチルジチオカーバメート(重合禁止剤として)を含有し、初期アクリル酸チャージの2.9重量パーセントに等しい)、および第二のヒドロキシプロピルアクリレートチャージ(5.0重量パーセントのp−メトキシフェノール(重合禁止剤として)を含有し、初期アクリル酸チャージの4.7重量パーセントに等しい)を添加した。移された混合物を次に3時間56℃、0.80kPaの動的真空下で保持して、過剰のプロピレンオキシドをストリップした。ストリップ段階の間、リボイラー前に蒸留容器容積1リットルあたり、1.7×10−3リットル/分の速度で空気を導入した。次に、物質を0.07kPa未満の真空、混合物温度範囲58〜66℃で蒸留した。蒸留段階の間、蒸留容器容積1リットルあたり1.7×10−3リットル/分の速度で空気をリボイラー前に添加し、蒸留容器容積1リットルあたり4.3×10−4リットル/分の速度で空気を接触型凝縮器ループに添加した。さらに蒸留段階の間に、初期アクリル酸チャージの51重量パーセントに等しい、リサイクルされたヒドロキシプロピルアクリレートを蒸留容器中に含まれる粗混合物に添加した。得られた商業的品質のヒドロキシプロピルアクリレートの量は、リアクターに添加されたアクリル酸の初期量に対して193パーセントであった。リアクターに添加されたアクリル酸の初期量に対して20パーセントの量の追加量のヒドロキシプロピルアクリレートも集められた。結果として得られた商業的混合物のガスクロマトグラフィー分析は、ヒドロキシプロピルアクリレート98.4重量パーセント、ジプロピレングリコールモノアクリレート0.90重量パーセント、プロピレングリコールジアクリレート0.12重量パーセント、およびプロピレングリコール0.08重量パーセントの濃度を示した。これらの結果を表2に記載する。
【0022】
比較例2
初期アクリル酸チャージの0.35重量パーセントに等しい量のサリチル酸を蒸留段階の開始前に蒸留容器に添加した以外は実施例2と同様にして、手順を実施した。得られた商業的混合物のガスクロマトグラフィー分析は、ヒドロキシプロピルアクリレート98.4重量パーセント、ジプロピレングリコールモノアクリレート0.84重量パーセント、プロピレングリコールジアクリレート含量0.13重量パーセント、およびプロピレングリコール0.07重量パーセントの濃度を示した。これらの結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
実施例3
250mlエルレンマイヤーフラスコに、水28グラム、ヒドロキシエチルアクリレート62グラム、およびN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩10グラムを添加した。混合物を2時間撹拌し、その間に溶液は均一になった。均一溶液は、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩:水:ヒドロキシエチルアクリレートの重量比1:2.8:6.2を有していた。
【0025】
比較例3
250mlエルレンマイヤーフラスコに、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩20グラムおよび水90グラムを添加した。混合物を2時間撹拌し、次に濾過した。濾液の組成は、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩1部に対して水9部であると決定された。同時に、250mlエルレンマイヤーフラスコに、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩20グラムおよびヒドロキシエチルアクリレート90グラムを添加した。混合物を2時間撹拌し、次いで濾過した。重量基準の分析により、ヒドロキシエチルアクリレート中N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩の濃度は感知できなかった。次に、水溶液およびヒドロキシエチルアクリレート溶液をそれぞれ1:2の比で混合した。重量基準で、最終均一溶液は、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩:水:ヒドロキシエチルアクリレートの重量比1:9:20を有していた。
【0026】
実施例4
粗物質を次のようにして蒸留により精製する以外は、実施例1と同様にして、手順を実施した。粗反応混合物を8.0kPa以下の圧力で、蒸留容器、デミスターパッド、リボイラー、接触型凝縮器、および受けタンクを備えたSS−316蒸留装置に移して、0.0013〜0.27kPaの真空下、58〜73℃の混合物温度範囲での蒸留による精製を行った。移す前に、蒸留容器に、ヒドロキシエチルアクリレート(6.1重量パーセントの銅ジブチルジチオカーバメート(重合禁止剤として)を含有し、初期アクリル酸チャージの4.0重量パーセントに等しい)、および第二のヒドロキシエチルアクリレートチャージ(4.0重量パーセントのp−メトキシフェニル(重合禁止剤として)、および13.0重量パーセントのサリチル酸を含有し、初期アクリル酸チャージの5.2重量パーセントに等しい)を添加した。移された混合物を次に2.8時間、42℃、0.60kPaの動的真空下に保ち、過剰のエチレンオキシドをストリップする。ストリップ段階の間、リボイラー前に蒸留容器容積1リットルあたり、1.7×10−3リットル/分の速度で空気を導入した。次に、物質を0.07kPa未満の真空で、58〜73℃の混合温度範囲で蒸留した。蒸留段階の間、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩、水およびヒドロキシエチルアクリレートの溶液(相対比1:2.8:6.2)を、蒸留容器容積1リットルあたり9.3×10−5リットル/時の速度で蒸留容器に導入した。さらに蒸留段階の間、蒸留容器容積1リットルあたり1.7×10−3リットル/分の速度で空気をリボイラー前に添加し、空気を蒸留容器容積1リットルあたり4.3×10−4リットル/分の速度で接触型凝縮器ループに添加した。さらに、蒸留段階の間、リサイクルされたヒドロキシエチルアクリレート(初期アクリル酸チャージの44重量パーセントに等しい)を蒸留容器中に含まれる粗混合物に添加した。生成物を受け容器中に集める。N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩溶液をN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩:水:HEA=1:2.8:6.2の比で使用することにより、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩を含有する飽和水溶液(約10パーセント)と比較して、水1単位あたり、より多くのN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩を添加することが可能になる。水1単位あたり、より多くのN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩を添加すると、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩を含有する飽和水溶液の使用と比較して、最終蒸留生成物中の水汚染を増大させることなく、より良好な重合の蒸気相阻害が可能になる。
【0027】
実施例5
リアクターから蒸留装置への移動が完了した後に、リアクター内部の洗浄を次のようにして行った以外は、実施例2と同様にして、手順を実施した。残留する粗ヒドロキシプロピルアクリレートをリアクターから除去するために、酢酸を容器に、リアクターの内部の39容量パーセントの量で添加し、内容物を15分間撹拌し、次に排出させた。使用した酢酸を、後のリアクターおよび蒸留装置の洗浄のために保存した。次に、水を容器にリアクターの内部の99容量パーセントの量で添加した。リアクター内容物を次に、リアクター容器容積1リットルあたり7.9×10−2リットル/分の速度の空気およびリアクター容器容積1リットルあたり0.12リットル/分の速度の窒素でスパージし、2時間撹拌し、次いで排出させた。水抽出プロセスを2回繰り返した。次に、リアクターを窒素および空気で207kPaに加圧し、次いで容器を34kPaにベントすることにより乾燥した。乾燥手順を10回繰り返した。蒸留が完了した後、蒸留容器の内部の洗浄を次にようにして行った。残留する粗ヒドロキシプロピルアクリレートを除去するために、酢酸を容器に、蒸留容器の内部の7容量パーセントの量で添加し、内容物を1時間循環させた。その後、蒸留容器の内部の洗浄は、蒸留容器の内部の90容量パーセントの量の水を使用し、内容物を30分間循環させ、次いで排出させた。水抽出手順を2回繰り返した。次に、容器に真空を適用し、次にベントして大気圧にすることにより、蒸留容器を乾燥した。乾燥手順を2回繰り返した。
【0028】
比較例5
リアクターから蒸留装置への移動が完了した後に、リアクター内部の洗浄を次のようにして行った以外は、実施例2と同様にして、手順を実施した。残留する粗ヒドロキシプロピルアクリレートをリアクターから除去するために、水を容器に、リアクターの内部の99容量パーセントの量で添加した。リアクター内容物を次に、リアクター容器容積1リットルあたり7.9×10−2リットル/分の速度の空気およびリアクター容器容積1リットルあたり0.12リットル/分の速度の窒素でスパージし、2時間撹拌し、次いで排出させた。抽出手順を2回繰り返した。次に、容器を窒素および空気で207kPaに加圧し、次いで容器をベントして34kPaにすることにより乾燥した。乾燥手順を10回繰り返した。蒸留が完了した後、蒸留容器の内部の洗浄を次のようにして行った。残留する粗ヒドロキシプロピルアクリレートを除去するために、酢酸を容器に、蒸留容器の内部の7容量パーセントの量で添加し、内容物を1時間循環させた。その後、蒸留容器の内部の洗浄は、蒸留容器の内部の90容量パーセントの量の水を使用し、内容物を30分間循環させ、次いで排出させた。水抽出手順を2回繰り返した。次に、容器に真空を適用し、次にベントして大気圧にすることにより、蒸留容器を乾燥した。乾燥手順を2回繰り返した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって:
i)(メタ)アクリル酸を反応容器中に供給し;
ii)少なくとも1種のアルキレンオキシドを反応容器中に、1時間あたり、(メタ)アクリル酸1モルにつきアルキレンオキシド0.12〜1.23モルの範囲の供給速度で供給し;
iii)アルキレンオキシドの供給の間、反応温度を50〜69℃の範囲に維持し;その後
iv)リアクター内容物を初期反応温度よりも少なくとも5℃低い温度に冷却し、ここで、冷却は、添加されるアルキレンオキシドの合計量の少なくとも35重量%がリアクターに添加された時に開始される;
v)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸および少なくとも1種のアルキレンオキシドを反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを形成し、ここで、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは不純物を含む;および
vi)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを蒸留により精製する:ことを含む方法。
【請求項2】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、およびヒドロキシプロピルメタクリレートを含む群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
アルキレンオキシドが、1時間あたり、(メタ)アクリル酸1モルにつきアルキレンオキシド0.26〜1.23モルの範囲の速度で供給される請求項1記載の方法。
【請求項4】
ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、およびヒドロキシプロピルメタクリレートを精製する際に、ジエステル遅延剤が添加されない請求項2記載の方法。
【請求項5】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが蒸留により精製され、蒸留が、担体の添加を含み、担体が、水、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、およびN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
アンモニウム塩が1〜10%の範囲の濃度である請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の高純度ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの純度が98.0〜99.9の範囲である請求項1記載の生成物。
【請求項8】
高純度ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法であって:
i)(メタ)アクリル酸を反応容器中に供給し;
ii)少なくとも1種のアルキレンオキシドを反応容器中に、1時間あたり、(メタ)アクリル酸1モルにつきアルキレンオキシド0.12〜1.23モルの範囲の供給速度で供給し;
iii)少なくとも1種のアクリル酸および少なくとも1種のアルキレンオキシドを反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを形成し;
iv)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを蒸留により精製し;
v)反応容器を少なくとも1種の洗浄剤により洗浄すること、ここで、洗浄剤の成分は本質的に酢酸および水からなる:を含む方法。

【公開番号】特開2008−201780(P2008−201780A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−31771(P2008−31771)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】