説明

ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの調製方法

本発明は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを調製するための連続法に関し、より詳細には、1分子あたり、1以上の(メタ)アクリレート基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの調製法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを調製するための連続法に関し、より詳細には、1分子あたり1個以上の(メタ)アクリレート基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを調製するための連続法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは既知である。それらの使用には、ウレタン(メタ)アクリレートと不飽和のポリウレタン分散体を調製するための、イソシアネート含有化合物との反応が含まれる(例えば、EP1700873A1参照)。
【0003】
特に、それらは、ラジカル重合により硬化されるコーティング組成物の原料でもある(例えば、EP1541609A2参照)。
【0004】
以下において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、一般式(1)を有する、アクリル酸またはメタクリル酸の具体的なエステルである:
【0005】
【化1】

【0006】
この式において、R1=HまたはCHであり、nは整数(1,2,3・・・)である。R2は、好ましくは窒素原子または酸素原子を介して付着する任意所望の基、例えば、アルコキシ-、アルケノキシ-、アルキノキシ-、フェノキシ-、アミノ-、カルボキシ-、アクリロイルオキシ-、メタクリロイルオキシ-などである。
【0007】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの1具体的な典型例は、3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートであり、GAMAとして下記に特定される。
【0008】
【化2】

【0009】
アクリレート基および/またはメタクリレート基を含有する化合物は、温度感受性および/または剪断感受性であることが知られており、機械的暴露および/または熱暴露の結果、自発的な重合を生じることが知られている(例えば、EP1293547B1参照)。
【0010】
重合の発熱特性は、ホットスポットと称される事柄を発現する場合があり、この発現は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを調製する際に、よくても、均一でなく再現性のない生成物を生じさせ、最悪の場合、反応を暴走させてしまう。特に、構造式(1)におけるR2基が更にアクリレートまたはメタクリレート官能基を含有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの場合、回分式の製造における潜在的な危険性が特に高い。なぜならば、このような化合物の場合、高温感受性および/または剪断感受性基の濃度が高いからである。これらの特に有害な化合物の1典型例は、GAMAである。したがって、このような化合物の調製には、安全に関して極めて厳格な要求が課される。先行技術によると、この種の化合物は、ホットスポットの発生を防ぐために精密に制御された条件下で調製される。温度は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが後続反応、例えば自発的な重合に耐え得る温度よりもより低く保持される。低温で反応させることは、長い反応時間をもたらすので、時空収率を乏しくする。後続反応を望まない場合には、環境に対する毒性を最小限にするために、反応バッチは、相応に少なく選択される。先行技術に従う回分法で変換される量は、それに応じて低い。
【0011】
例えば、EP-A1693359は、GAMAを調製するための回分法を開示する。該方法において、弱ルイス酸性のボラン化合物(例えばトリスジメチルアミノボランなど)を用いる触媒作用により、80℃の温度にて、グリシジルメタクリレートとアクリル酸とを反応させて、例えば、GAMAを生成させる。反応時間は、24〜48時間又はそれ以上である。
【0012】
この点において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの合成は、急速かつ複雑ではない調製法に背く、一連の要件下にて行われる。このことは、構造式(1)におけるR2基が更なるアクリレートまたはメタクリレート官能基を含有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの場合、特に当てはまる。反応時間をより短くするために、先行技術において開示される温度と比べてより高温でヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの合成を行う得ることが所望される。しかし、ここで、後続反応、特に(メタ)アクリレート中の不飽和二重結合のラジカル重合が生じるリスクがある。このことは、構造式(1)におけるR2基が更なるアクリレートまたはメタクリレート官能基を含有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの場合、特に当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1700873号A1明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1541609号A2明細書
【特許文献3】欧州特許第1293547号B1明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1693359号A明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、先行技術に基づき存在する問題は、先行技術に記載された方法と比べてより高い時空収率をもたらし、同等の品質の生成物をもたらすことができる、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの調製方法を提供することである。より具体的な方法は、構造式(1)におけるR2基がアクリレート基またはメタクリレート官能基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの調製を可能とする方法である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを調製するための方法を提供し、該方法において、少なくとも1種の化合物Aと少なくとも1種の化合物Bは、反応装置中で連続的に混合され、反応装置を介して、+20℃〜+200℃の温度にて、反応混合物の状態で搬送され、少なくとも1種の化合物Aは少なくとも1種のエポキシド基を有し、少なくとも1種の化合物Bは、エポキシド基の開環を求核攻撃により行うことができる少なくとも1種の求核基を有し、ならびにAおよび/またはBは少なくとも1個の(メタ)アクリレート基を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明による方法を実施するための構造を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における用語「連続反応」は、化学反応器内への反応物質の導入と化学反応器からの生成物の取り出しが同時に行われるが、離れた位置で行われる連続反応である。その一方で、不連続反応の場合、反応工程は、反応物質の導入、化学反応および生成物の除去が逐次的に行われる反応である。連続法は経済的であり有利である。なぜならば、充填および排出操作に起因する化学反応器の休止を避けることができ、回分法において生じる、安全な供給法、反応器の比熱交換手順、ならびに加熱および冷却操作に基づく、長い反応時間を回避できるからである。
【0018】
本発明の方法は、少なくとも1種の化合物Aと少なくとも1種の化合物Bが反応装置中で連続的に混合され、反応装置を介して、反応混合物として搬送される。反応装置を貫く滞留路に沿って、AとBの連続的な反応がおこなわれ、構造式(1)で表わされるようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが生成される。
【0019】
連続反応は、0〜30barの圧力下、好ましくは0〜10barの圧力下、より好ましくは0〜4barの範囲で行われ、+20℃〜+200℃の温度、好ましくは+80℃〜+160℃の範囲、より好ましくは+90℃〜+120℃の範囲で行われる。
【0020】
化合物AおよびBに加えて、更なる成分を反応混合物中に存在させてもよく、または反応セクションに沿って反応混合物に供給させてもよい。例えば、更なる成分は、1種以上の化合物Aおよび/またはB、溶媒および/または触媒が含まれ得る。
【0021】
全ての成分の計量速度は、所望される滞留時間と目標とされる転換に主に依存する。より高い最高反応温度の場合、より短い滞留時間が導かれるであろう。一般に、反応域において、反応物質は20秒(20sec)〜400分(400min)の範囲、好ましくは40分〜400分の範囲、特に好ましくは90分〜300分の範囲の滞留時間を有する。
【0022】
滞留時間は、例えば、体積流量率と反応域の体積によって制御できる。反応の進行は、種々の測定装置を用いることにより有利に監視される。この目的に特に対して特に適当なものは、流れている媒体中の温度、粘度、熱伝導率および/または屈折率を測定するための装置および/または赤外および/または近赤外測定するための装置である。
【0023】
成分は、独立した流れで化学反応器へ計量添加され得る。この場合、2つ以上の流が存在し、それらは、まとめた形態で供給されてもよい。例えば、濃度勾配を厳密に行うために、または例えば、ほぼ完全な反応を行うために、化学反応器の様々な位置において、異なる割合で流れを供給することもできる。流れの入り口を、順に変化させてもよく、経時的にずらして変化させてもよい。予備反応のため及び/または反応を完了させるために、2つ以上の反応器を組合せてもよい。
【0024】
混合前に、流れを、熱交換器を用いて加熱してもよい。すなわち、−20℃〜+200℃、好ましくは+10℃〜+140℃、より好ましくは+20℃〜+120℃の温度へ加熱してもよい。
【0025】
成分、より具体的には化合物Aおよび化合物Bは、反応物質を若干強力に混合させる混合要素を用いて、好ましく混合される。放射状の濃度勾配を妨げ、反応溶液を相互に極めて急激に混合させる、強力ミキサー(μミキサー)を用いることが有利である。マイクロ反応器/マイクロミキサーを使用する結果、反応混合物の剪断を減少させ、このことは、剪断感受性(メタ)アクリレートの場合、より安全な工程形態をもたらし、さらに、増加した製品品質をもたらす。
【0026】
反応物質を混蔵/混同した後、それら(更なる混合成分を含有してもよい)は反応装置を介して搬送される。更なる混合成分が反応セクションに沿うことにより、好ましいより狭い滞留時間分布をもたらす。反応装置は、20秒(20sec)〜400分(400min)の範囲、好ましくは40分〜400分の範囲、特に好ましくは90分〜300分の範囲の量での滞留量をもたらすことを特徴とする。
【0027】
本発明に従い使用される反応セクションは、比熱伝達率(W/(K・m))、換言すれば、化学反応器の自由体積に基づく、熱伝達媒体に対するケルビン温度あたりの熱伝達差により特徴づけられる、それらの高い熱伝達能力に関して更に注目される。本発明に従い使用される反応セクションは、それらが10〜750kW/(K・m)、好ましくは50〜750kW/(K・m)、およびより好ましくは100〜750kW/(K・m)の熱伝達率を可能とすることを特徴とする。
【0028】
高い熱伝達率は、特に、化学反応器と冷却媒体の間の温度差を小さくする効果を有しており、極めて狭い温度制御ができ、このことは反応の安定と、表面上の沈積物のポテンシャル形成の観点においても有益である。
【0029】
出発物質の反応は、集中熱交換器(intensive heat exchanger)を併用する微細構造ミキサー中で好ましく行われ、このことは、短い滞留時間をもたらし、効率的な温度制御を可能とする。この厳格な工程制御管理の結果として、反応温度は、存在する方法における温度よりも著しく高い反応温度を可能とし、それ故に、実現される滞留時間の大幅な減少がもたらされる。使用される反応温度が、示差熱分析(DTA)を用いて測定できる、後続反応の発熱生成物の範囲内に既にあるので、このことは、特に驚くべきことである。
【0030】
適当な反応装置の例は、集中熱交換器、例えば、フルイテック(Fluitec)社製のCSE-XRモデルなどである。同様に想定できるものは、より大きな構造を有する他の熱交換器を備えるマイクロ反応器の組合せであり、例えば、フルイテック社またはスルザー(sulzer)社製のもの等である。これらの組合せにおける重要な特徴は、生じる粘度と圧力損失を考慮し、個々の装置において予測され必要とされる熱出力に応じて、個々の化学反応器型を配置すること。
【0031】
マイクロ反応器を用いるマイクロ反応技術(μ-反応技術)の使用も適当である。使用される用語「マイクロ反応器」は、好ましくは、連続的に稼働する微細構造化学反応器に代表される用語であり、マイクロ反応器、ミニ反応器、マイクロ-熱交換器、ミニミキサーまたはマイクロミキサーの名称で既知である。例には、マイクロ反応器、マイクロ熱交換器、TおよびYミキサー、多種多様の企業(例えば、Ehrfeld Mikrotechnik BTS社、Institut fur Mikrotechnik Mainz社、シーメンスAG社、CPC-Cellular Process Chemistry System社等)製のマイクロミキサーも、当業者にとって一般常識であり、本発明における「マイクロ反応器」は、一般的に、最大1mmの内径を特性/特徴として備え、静的混合内部装置を具備してもよい。
【0032】
反応セクションの熱伝達特性に加えて、反応系における狭い滞留時間分布が、同様に有利であり、所望の転換に対して必要な滞留体積を最小にできる。このことは、一般に、上述のような静的混合装置またはマイクロ反応器を使用することによりもたらされる。また、この要求は、一般に、例えばCSE-XRモデルなどの集中熱交換器によって、十分な程度にもたらされる。
【0033】
連続して2種以上の化学反応器を接続することも考えられる。これらの化学反応器の各々は、冷却および/または加熱手段、例えば温度調整した熱伝達流体が通過するジャケットが有利に備えられている。
【0034】
独立して温度調整できる加熱/冷却領域を2つ以上使用することは、転換を最大限行うために、例えば、反応初期(換言すれば混合直後)に流れる反応混合物を冷却でき、生成された反応物の熱を除去でき、そして、反応終盤に向かって(換言すれば、化学反応器からそれを取り出す直前まで)混合物を加熱できる。冷却媒体および加熱媒体の温度は、+25℃〜250℃、好ましくは+200℃未満である。加熱および/または冷却と同様に、反応混合物の温度も、反応熱に影響される。エチレン性不飽和化合物が存在する場合、固有の温度上限を超過しないことが有用である。なぜならば、そうしなければ、所望ではない重合のリスクが増加するからである。不飽和アクリレートに関すると、最大反応温度は+250℃の水準を超過すべきでない。+200℃を超過しなしことが好ましい。
【0035】
半回分法、または回分法とは対照的に、本発明による連続法は、十分により高い時空収率を備え、プラント中において低減された滞留をもたらし、信頼性があり製品適合性を有する調製を可能とする。本発明による方法は、特に、安全性の観点からも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの調製を可能とし、その上より大きな規模での調製を可能とする。なぜならば、連続法は、化学反応器中の滞留を著しく減少できるからである。
【0036】
本発明による方法は、少なくとも1種の化合物Aが少なくとも1種の化合物Bと連続的に反応し、該少なくとも1種の化合物Aは少なくとも1種のエポキシド基を有し、該少なくとも1種の化合部Bはエポキシド基の開環を求核攻撃下にて行うことができる少なくとも1種の求核基を有し、およびAおよび/またはBは少なくとも1個の(メタ)アクリレート基を有することを特徴とする。
【0037】
好ましくは、少なくとも1種の化合物Aと少なくとも1種の化合物Bは、少なくとも1個の(メタ)アクリレート基をそれぞれ含有する。
【0038】
適当な化合物Aは、モノエポキシド化合物および多官能性エポキシドであり、より具体的には、二官能性エポキシドまたは三官能性エポキシドである。例として、エポキシ化オレフィン類、(シクロ)脂肪族または芳香族ポリオールのグリシジルエーテル、および/または飽和または不飽和カルボン酸のグリシジルエステルが含まれる。特に適当なモノエポキシド化合物の例には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、バーサチック酸(Versatic acid)グリシジルエステル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o-クレシルグリシジルエーテルまたは、1,2-エポキシブタンが含まれる。
【0039】
特に適当なポリエポキシド化合物は、ビスフェノールAまたはビスフェノールF型のポリグリシジル化合物、およびそれらの水素化による誘導体(perhydrogenated derivative)、または多官能性アルコール、例えばブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトールなどのグリシジルエーテルである。
【0040】
ビニルモノマー、例えば単官能性のアクリレート、メタクリレートまたはスチレンのエポキシ官能化ポリマーを使用することも同様に可能であり、例えば、グリシジルメタクリレートの比例的な使用も同様に可能である。
【0041】
適当な化合物Bの例には、1、2またはそれより高い官能性を有するカルボン酸が含まれる。考慮されるモノカルボン酸は、飽和カルボン酸および好ましくは不飽和カルボン酸、例えば安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−エチルヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、並びに天然脂肪酸および合成脂肪酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、二量体アクリル酸またはクロトン酸などである。適当なジカルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸および脂肪酸の水素化二量体である。
【0042】
ジカルボン酸は、入手できる場合、それらの無水物形態で使用でき、対応する量の水の添加を伴う。純粋な酸に加えて、過剰量の酸を用いて調製されている対応する反応混合物または酸官能性ポリエステルを用いることも可能である。このような混合物、特に、例えば過剰量のアクリル酸を有するポリエーテルアクリレートおよび/またはポリエステルアクリレートを含有する混合物は、例えば、EP-A0976716、EP-A0054105およびEP-A0126341に記載されている。
【0043】
例えば、アクリル酸またはメタクリル酸の比例した使用と、例えば、ビニルモノマー(例えば、単官能性アクリレート、メタクリレートまたはスチレンなど)のポリアクリレートなどで例示される、酸官能性ポリマーを同様に使用できる。
【0044】
エポキシドに対する酸の当量比は、幅広い範囲内で変化できる。しかし、好ましくは、1.2:1.0〜1.0:1.2の当量比が好ましく、より好ましくは1.05:1.00〜1.00:1.05である。
【0045】
本発明による方法における1つの好ましい実施態様において、アクリル酸、メタクリル酸および/または二量体アクリル酸と、グリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレートとの反応が行われ、特に好ましくは、グリシジルメタクリレートとアクリル酸の反応が行われる。酸とグリシジル化合物の反応は、0.90:1.00〜1.30:1.00の当量比、好ましくは1.01:1.00〜1.20:1.00の当量比で行われる。工程生成物における他の成分の特に低い残留濃度を得るために、ごく僅かな過剰量の1成分を使用することが特に有用である。例えば、本発明による方法を用いる場合、当量比を適当に選択することにより、0.1重量%未満のアクリル酸またはグリシジルメタクリレートの残存濃度を、確実に実現できる。
【0046】
反応は、好ましくは触媒を用いて行われる。予測される触媒は、グリシジル化合物とカルボン酸の反応における触媒として文献において既知の化合物であり、例えば、第3級アミン、第3級ホスフィン、アンモニウム化合物またはホスホニウム化合物、チオジグリコール、およびスズ化合物、クロム化合物、カリウム化合物およびセシウム化合物などである。好ましくは、アミン化合物またはアンモニウム化合物を含まない触媒である。トリフェニルホスフィンが特に好ましい。
【0047】
好ましくは、反応は、アクリレートおよびメタクリレートに適した安定剤の存在下で行われる。酸素含有ガスおよび化学安定剤が、早期重合を回避するために適当であり、不飽和化合物の量に基づき、0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.05重量%の量で使用される。この種の安定剤は、例えばホウベン・ヴェイル(Houben-Wely)による有機化学論(methoden derorganischen Chemie)、第4版、第XIV/1巻、ゲオルグ・シーメ・バーグ社シュトゥットガルト1961年、第433頁以降に記載されている。例として、以下のものが含まれる:亜ジチオン酸ナトリウム、硫化水素ナトリウム、硫黄、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドラゾベンゼン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N−フェニルエタノールジアミン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、p−ニトロソジメチルアニリン、ジフェニルニトロソアミン、フェノール、例えば、パラ−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、p−tert−ブチルピロカテコールまたは2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、テトラメチルチウラムジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩、フェノチアジン、N−オキシル化合物、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシド(TEMPO)またはその誘導体の1つ。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールおよびパラ−メトキシフェノール並びにそれらの混合物が好ましい。
【0048】
1好ましい実施態様において、本発明による方法は、例えば、安定剤(フェノチアジンなど)を用い、酸素を排除して(嫌気条件で)行われる。
【0049】
安定剤、例えばフェノチアジンなどは、ごく僅かに着色を増加させ得る。別の好ましい実施態様において、本発明による方法は、安定剤として酸素を用いて行われ、該酸素は、好ましくは膜を介して反応混合物内へ注入できる。純粋な酸素の代わりに、例えば、空気などの気体混合物を使用することも可能である。
【0050】
反応は、反応物質と生成物に対して不活性であり、好ましくはイソシアネートに対しても不活性である有機溶媒の存在下で行うことができる。例として、塗料用溶媒、例えば酢酸ブチルなど、ソルベントナフサ、メトキシプロピルアセテートまたは炭化水素、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサンまたはイソオクタンなどである。
【0051】
生成したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、ウレタン(メタ)アクリレートおよび不飽和ポリウレタン分散体を調製する目的のために、例えばイソシアネート含有化合物との更なる反応に直ちに付されてもよく、または、まず貯蔵されるか搬送されてもよい。更なる反応は、好ましくは更なる精製、例えば抽出または蒸留を行わずに、例えばイソシアネート含有化合物を用いて行なう。
【0052】
また、本発明は、化学線放射(actinic radiation)を用いて硬化可能な組成物における成分として、および化学線放射を用いて硬化可能な組成物に関する成分の合成における、本発明による方法により調製されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用を提供する。
【0053】
本発明による方法を用いて調製されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、ペイント、接着剤、シーラント等に関する、ラジカル重合により硬化可能なバインダーを調製するのに特に適している。
【0054】
本発明は、下記の実施例を用いることにより説明されるが、これらの実施例に制約されない。
【実施例】
【0055】
実施例1:本発明による方法を実施するための装置
図1は、本発明による方法を実施するための構造を図式的に示す。2つのリザーバー1および2が存在し、そこから、反応物質を、化学反応器へ個別に供給できる。リザーバーの1つにおいて、エポキシド基を有する化合物Aが好ましく存在し、別のリザーバーにおいて、求核基を有する化合物Bが存在する。Aおよび/またはBは、少なくとも1個の(メタ)アクリレート基を有する。好ましくは、AおよびBは共に(メタ)アクリレート基を有する。
【0056】
本実施例において、使用されるリザーバーは、5リットルの容量を有するガラス容器である。
【0057】
反応物質はミキサー10で混合される。本実施例において、膜ピストンポンプ(Lewa社製ecodos 6S1×3)を、計量される各流れに関して使用できる。ミキサーは、Ehrfeld Mikrotechnik BTS GmbH社製のカスケード型ミキサーである。
【0058】
反応物質を混合した後、反応混合物は反応セクションを通過する、本実施例における該反応セクションは、5つのFluitec社製CSE-XR型熱交換器により形成され、熱交換器12(DN25)はそれぞれ約0.37リットルの体積を有し、熱交換器13(DN50)はそれぞれ約1.7リットルの体積を有し、熱交換器18(DN80)は約4リットルの体積を有する。
【0059】
本実施例において、連続的に接続させた熱交換器に続けて、静的混合装置を装着し、約8リットルの体積を有する管型反応器21(DN100)が続く。反応セクションにおける温度制御は2つの回路を用いて行われ、該回路は、それぞれ並列に接続され、サーモスタット(1×ヒューバー製(WK1)、1×ラウダ製(WK2))を用いて熱的に調整される。管型反応器21には、水冷却系WK3を備える、後冷却器としてのIKSM管型反応器が続く。
【0060】
反応器18と21の間に配置されるものは、Inopor nano型(TiO、0.9nm、遮断限界450D)のセラミック膜(反応媒体はそれを通過して流れる)と、圧縮空気が供給される環境ガス空間から構成されるガス化装置である。ガス側における圧力は、膜内部における圧力よりも約0.2〜0.4bar高く設定される。ガス化装置は、その気泡形成点よりも下方で操作される(すなわち、反応媒体側において形成された気相は存在しない)。
【0061】
実施例2:3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル メタクリレート(GAMA)の合成
実施例1による装置を使用した。使用される全ての化学薬品は、商業的に入手でき、例えば、シグマアルドリッヒ社から入手できる。
【0062】
リザーバー1は、その組成が以下のようなGMA溶液で充填される
グリシジルメタクリレート(GMA):98.2重量%
トリフェニルホスフィン(TPP):1.5重量%
フェノチアジン:0.004重量%
ジ-tert-ブチルメチルフェノール(抑制剤 KB):0.22重量%
【0063】
リザーバー2は、アクリル酸で充填される。
【0064】
反応装置は、空の状態で80℃まで加熱される。反応物質は、3.07kg/時の質量流量でリザーバー1から計量添加され、リザーバー2から、反応物質は、1.56kg/時の質量流量で計量添加される。
【0065】
化学反応器は、1時間あたり、500kgのサーモスタットオイル(シリコーンオイル)の質量流量で、それぞれ熱的に調整される(WK1、WK2)。
【0066】
計量供給の開始後、プラントをゆっくりと充填させる。第1加熱回路(WK1)における化学反応器が充填されている場合、この回路における温度を、複数の段階により、110℃のジャケット温度までゆっくりと上昇させる。同じ流量での同じやり方は、第2の熱調整回路(WK2)における化学反応器を用いて行われ、それらが充填される場合、ここで設定されるジャケット温度も110℃となる。さらなる3つの滞留時間の後、生成物(GAMA)が得られる。
【0067】
結果:残留モノマー含有量:0.5重量%のアクリル酸、0.48重量%のGMA。
【符号の説明】
【0068】
1 リザーバー
2 リザーバー
10 ミキサー
21 管型反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの調製方法であって、
少なくとも1種の化合物Aと少なくとも1種の化合物Bは、反応装置中で連続的に混合され、該反応装置を介して+20℃〜+200℃の温度にて、反応混合物の形態で搬送され、
該少なくとも1種の化合物Aは少なくとも1種のエポキシド基を有し、
該少なくとも1種の化合物Bは、求核攻撃下にてエポキシド基を開環できる少なくとも1種の求核基を有し、ならびに、
Aおよび/またはBが少なくとも1個の(メタ)アクリレート基を有することを特徴とする、該方法。
【請求項2】
温度が+80℃から+160℃の範囲、好ましくは、+90℃から+120℃の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物Aと化合物Bの混合は、静的ミキサー、好ましくは強力ミキサー(μミキサー)を用いて行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
反応装置が、反応セクションに沿って、狭い滞留時間分布を得るために更なる混合要素を具備することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
反応装置が、10〜750kW/(K・m)、好ましくは50〜750kW/(K・m)、およびより好ましくは100〜750kW/(K・m)の熱伝達率を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、式(1)で表わされる構造を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法:
【化1】

[式中、R1=HまたはCH
R2=アルコキシ-、アルケノキシ-、アルキノキシ-、フェノキシ-、アミノ-、カルボキシ-、アクリロイルオキシ-、メタクリロイルオキシ-であり、および
nは整数(1,2,3・・・)である]。
【請求項7】
R2基がアクリレート基またはメタクリレート基を含有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アクリル酸、メタクリル酸および/または二量体アクリル酸を、グリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレートと反応させることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
酸とグリシジル化合物の反応が、0.90:1.00〜1.30:1.00の当量比、好ましくは1.01:1.00〜1.20:1.00の当量比で行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ラジカル重合により硬化可能なバインダーを調製するための、請求項1から9のいずれかに記載の方法により調製されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−533527(P2012−533527A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519916(P2012−519916)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004115
【国際公開番号】WO2011/009526
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(504109610)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Technology Services GmbH
【Fターム(参考)】