説明

ヒドロキシエチルシクロヘキサン及びヒドロキシエチルピペリジンの製造法

【課題】 ヒドロキシエチルベンゼン又はヒドロキシエチルピリジンからのヒドロキシエチルヘキサン及びヒドロキシエチルピペリジンへの新規な選択的製造方法の提供。
【解決手段】 使用前に水素により120から250バールの圧力及び120から250℃の温度で既に処理されているルテニウムを触媒として使用し、大気圧で70℃以上の沸点を有するアルカンを溶媒として使用する場合、対応するヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンの接触水素化により、場合によってシクロヘキサン環中に窒素原子を含むことがあるヒドロキシエチルシクロヘキサンが選択的に製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応するヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンを接触水素化によって、場合によってシクロヘキサン環中に窒素原子を含むことがあるヒドロキシエチルシクロヘキサンを製造する方法に関する。
【0002】
ヒドロキシエチルシクロヘキサン及びヒドロキシエチルピペリジンは、医薬品、芳香剤及び昆虫駆除剤製造用の中間体である。
【0003】
ラネーニッケルまたはロジウム等の慣用の水素化触媒を用い、及び/または極性溶媒中で、対応するヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンを接触水素化することにより、ヒドロキシエチルシクロヘキサン及びヒドロキシエチルピペリジンを製造する場合、2次反応が相当程度起こって、所望しない副生成物を生成するに至る。それゆえ、場合によってシクロヘキサン環中に窒素原子を含むことがあるヒドロキシエチルシクロヘキサンを例えば95%以上の良好な選択率で製造するのに使用できる方法にはニーズが存在する。
【0004】
ここで、本発明者らは、使用前に還元剤により既に処理されているルテニウムを触媒として使用することを特徴とする、対応するヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンを接触水素化することにより、場合によってシクロヘキサン環中に窒素原子を含むことがあるヒドロキシエチルシクロヘキサンを製造する方法を見出した。
【0005】
本発明によれば、例えば式(I)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、XはCHまたはNであり、
及びRは、おたがいに独立に、水素、ヒドロキシル、アミノ、C−C10アルキル、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、C−C12アラルキル、C−C10アルコキシまたはC−Cシクリアルコキシである)
のヒドロキシエチルベンゼン及びヒドロキシエチルピリジンを使用して、場合によってシクロヘキサン環中に窒素原子を含むことがあり、式(II)
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、YはCHまたはNHであり、R及びRは式(I)に定義されている)
に対応するヒドロキシエチルシクロヘキサンを得ることが可能である。
【0010】
式(I)及び(II)において、R及びRは、好ましくはおたがいに独立に、水素、C−Cアルキル、ベンジルまたはC−Cアルコキシである。R及びRは、特に好ましくは水素である。
【0011】
式(I)においては、Xは、好ましくはNである。対応して、式(II)においては、Yは、好ましくはNHである。
【0012】
式(I)及び(II)において、ヒドロキシルエチル基は、好ましくはXまたはYに関して2位にある。R及びRは、好ましくはXまたはYに関して3、4、5及びまたは6位にある。
【0013】
特に好ましいのは、本発明のプロセスにおいて2−(2−ヒドロキシエチル)−ピリジンまたはヒドロキシエチルベンゼンを用い、2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジンまたはヒドロキシエチルシクロヘキサンを製造することである。
【0014】
好ましいルテニウム触媒は、担体上の金属ルテニウム(すなわち、±0の酸化状態のルテニウム)からなる触媒である。このような担持触媒のルテニウム含量は、例えば0.5から15重量%、好ましくは15から10重量%である。
【0015】
本発明のプロセスにおける使用に先立つ、還元剤によるルテニウムの処理は、例えば高温において水素により行われる。水素処理は、例えば120から250バールの圧力及び120から250℃の温度を使用することができる。150から220バール及び150から220℃が好ましい。
【0016】
担持触媒上の担体材料の例は、木炭、酸化アルムニウムまたはシリカである。金属触媒用に他の公知の担体材料を使用することも可能である。
【0017】
場合によっては、好適な還元剤による処理後に、本発明のプロセスに好適となる担持触媒は市販されている。
【0018】
不連続操作においては、例えば0.01から10重量%のルテニウム触媒(Ru金属のみを考慮に入れ、使用されるヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンに基づいて)を使用することができる。この量は、好ましくは0.1から2.5重量%である。
【0019】
反応混合物から分離した後、この触媒を本発明のプロセスに再度使用することができる。場合によっては、本発明のプロセスを連続的に行うこともできる。
【0020】
本発明のプロセスは溶媒の存在下で行われる。
【0021】
好適な溶媒は、大気圧で70℃以上の沸点を有するアルカン、特に直鎖あるいは分岐の脂環式C−C18アルカン、無置換の環状C−C10アルカン及び直鎖あるいは分岐のC−C10アルキル基で置換されたC−C10アルカンである。特に好ましい溶媒は、イソオクタン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン、特にメチルシクロヘキサンである。種々のアルカンの混合物を使用することも可能である。
【0022】
使用される100gのヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンに基
づいて、例えば10から1000mlの溶媒を使用することが可能である。この量は、好ましくは20から100mlである。
【0023】
本発明による水素化は、例えば50から250℃の範囲の温度及び5から200バールの水素圧力で行われる。好ましいのは、80から220℃の範囲の温度及び50から180バールの水素圧力である。
【0024】
最初に、例えば使用されるヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンを場合によっては溶媒と一緒に、加圧容器中に導入し、加圧容器を例えば窒素によって掃気して不活性とすることにより本発明のプロセスを行うことが可能である。これとは別に、この触媒は水素により前処理されている。好ましくは加圧容器中に既に存在するものと同じ溶媒中に懸濁された触媒が加圧容器に添加され、次に反応温度迄加圧され、水素が注入される。まず、30分から10時間後に完結する(水素がもはや吸収されなくなる)。混合物は、最初に、冷却し、次に放圧し、次に触媒を分離し、製造されたヒドロキシエチルシクロヘキサンまたはヒドロキシエチルピペリジンを例えば蒸留により単離することによって、反応が仕上げられる。
【0025】
連続法を含めて、本発明のプロセスを行う他の方法が可能である。
【0026】
本発明のプロセスを用いて、ヒドロキシエチルシクロヘキサン及びヒドロキシエチルピペリジンを高収率、高選択率で製造することが可能である。選択率は、出発材料を基準にして、一般に95%、時には98%以上である。本発明のプロセスにおいては、触媒の使用寿命も長い。
【実施例】
【0027】
実施例1
150gの2−(2−ヒドロキシエチル)−ピリジンを50gのメチルシクロヘキサンと混合し、0.7lの攪拌されたオートクレーブ中に入れた。次に、オートクレーブを5バールのNにより3回不活性化した。次に、50mlのメチルシクロヘキサン中に懸濁した、木炭上に5重量%のルテニウムを含む10gの触媒を計量、注入した。この触媒は、200℃の温度及び200バールのH圧力でHにより事前に処理されたものであった。この混合物を150℃及び80バールのH圧力で水素化した。水素化時間は5時間であった。
【0028】
次の組成(GC)を有する粗混合物を得た。
2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン: 98.6%
2−エチルピペリジン: 0.4%
他のエチルピペリジン: 0.5%
実施例2
酸化アルミニウム上に5重量%のルテニウムを含む10gの触媒を使用した他は、手順は、実施例1におけるようであった。得られた粗混合物は、96.6%(GC)の2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジンを含んでいた。
【0029】
実施例3(比較として)
触媒として3gのラネーニッケルを使用した他は、手順は、実施例1におけるようであった。得られた粗混合物は、
2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン: 48.6%
メチルピペリジン: 19.9%
ヒドロキシエチル−エチルピペリジン: 19.3%
からなっていた(GC)。
【0030】
実施例4(比較として)
カーボン上の5重量%のロジウムを含む10gの触媒を使用した他は、手順は、実施例1におけるようであった。得られた粗混合物は、
2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン: 79.7%
ヒドロキシエチルピリジン: 14.9%
エチルピペリジン: 3.8%
からなっていた(GC)。
【0031】
実施例5
150gのヒドロキシエチルベンゼンを50gのメチルシクロヘキサンと混合し、0.7lの攪拌されたオートクレーブ中に入れた。次に、オートクレーブを5バールのNにより3回不活性化した。次に、50mlのメチルシクロヘキサン中に懸濁した、カーボン上に5重量%のルテニウムを含む5gの触媒を計量、注入した。この触媒は、200℃の温度及び80バールのH圧力でHにより事前に処理されたものであった。この混合物を100℃及び150バールのH圧力で水素化した。水素化時間は45時(times)であった。
【0032】
次の組成(GC)を有する粗混合物を得た。
ヒドロキシエチルシクロヘキサン: 99.3%
エチルシクロヘキサン: 0.3%
実施例6(比較として)
各々の場合、それぞれ50gのメチルシクロヘキサンの代わりに100gのメタノールを使用した他は、手順は実施例1におけるようであった。得られた粗混合物は、
2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン: 81.5%
メチルピペリジン: 6.3%
エチルピペリジン: 4.4%
ヒドロキシエチル−エチルピリジン: 6.6%
未同定物質: 残り
からなっていた(GC)。
【0033】
本発明の特徴及び態様を示せば以下の通りである。
【0034】
1.対応するヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンを接触水素化することにより、場合によってシクロヘキサン環中に窒素原子を含むことがあるヒドロキシエチルシクロヘキサンを製造する方法であって、使用前に水素により既に処理されているルテニウムを触媒として使用することを特徴とする製造方法。
【0035】
2.式(I)
【0036】
【化3】

【0037】
(式中、XはCHまたはNであり、
及びRは、おたがいに独立に、水素、ヒドロキシル、アミノ、C−C10アルキ
ル、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、C−C12アラルキル、C−C10アルコキシまたはC−Cシクリアルコキシである)
のヒドロキシエチルベンゼン及びヒドロキシエチルピリジンを使用して、場合によってシクロヘキサン環中に窒素原子を含むことがあり、式(II)
【0038】
【化4】

【0039】
(式中、XはCHまたはNHであり、R及びRは式(I)に定義されている)
に対応するヒドロキシエチルシクロヘキサンを得ることを特徴とする上記1に記載の方法。
【0040】
3.使用されるルテニウム触媒が担体上の金属ルテニウムからなる触媒であることを特徴とする上記1から2に記載の方法。
【0041】
4.使用に先立って、高温で水素により前処理されているルテニウム含有担持触媒が使用されることを特徴とする上記1から3に記載の方法。
【0042】
5.ルテニウムの前処理が120から250℃の温度及び120から250バールの圧力で水素により行われることを特徴とする上記1から4に記載の方法。
【0043】
6.担体材料として木炭、酸化アルムニウムまたはシリカを含有するルテニウム含有担持触媒が使用されることを特徴とする上記1から5に記載の方法。
【0044】
7.連続操作において、使用されるヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンに基づいて、0.01から10重量%のルテニウム触媒(Ru金属のみを考慮に入れて)が使用されることを特徴とする上記1から6に記載の方法。
【0045】
8.大気圧で70℃以上の沸点を有するアルカンである溶媒中で行われることを特徴とする上記1から7に記載の方法。
【0046】
9.使用されるアルカンがイソオクタン、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンである上記1から8に記載の方法。
【0047】
10.水素化が50から250℃の範囲の温度及び5から200バールの水素圧力で行われる上記1から9に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応するヒドロキシエチルベンゼンまたはヒドロキシエチルピリジンを加圧容器を使用して溶媒の存在下で接触水素化することにより、場合によってシクロヘキサン環中に窒素原子を含むことがあるヒドロキシエチルシクロヘキサンを製造する方法であって、使用する触媒が使用前に水素により120から250バールの圧力及び120から250℃の温度で既に処理されているルテニウムであり、使用する溶媒が大気圧で70℃以上の沸点を有するアルカンであり、該触媒が加圧容器中に既に存在する溶媒と同じ溶媒中の懸濁液の形で添加されることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−202666(P2010−202666A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133333(P2010−133333)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【分割の表示】特願平11−325500の分割
【原出願日】平成11年11月16日(1999.11.16)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】