説明

ヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシポリカルボン酸のエステルを含有する潤滑剤及び燃料組成物

【要約書】
本明細書では、(A)潤滑剤又は炭化水素燃料と、(B)次の一般式(I)で表されるヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルの少なくとも一種


(式中、Rは、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルケニル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、及びベンジルからなる群から選択され、Xは、式(II)、(III)、及び(IV)からなる群から選択され、


式中、Rは、水素、CHCO、CH(OH)CO、アルキル、アリール、アルコキシアルキル、及びアルカリールからなる群から選択され、Rは、水素、アルキル、及びCHCOからなる群から選択され、ただし、RがCHCOである場合、Rは水素又はCHCOであり、RがCH(OH)COである場合、Rは水素であり、Rがアルキル、アリール、アルコキシアルキル、又はアルカリールである場合、Rは水素又はアルキルであり、Rは水素、アルキル、アリール、及びCHCOからなる群から選択され、R及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択され、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素、CO、アルキル、及び縮合アリールからなる群から選択される)と、場合によっては(C)少なくとも1種類のリン含有添加剤とを含む組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国特許法120条に基づき、発明の名称が「ヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシポリカルボン酸のエステルを含有する潤滑剤及び燃料組成物(LUBRICANT AND FUEL COMPOSITIONS CONTAINING HYDROXY POLYCARBOXYLIC ACID ESTERS)」であり、かつ、2004年3月11日に出願された、米国仮特許出願第60/551,827号に関する利益を請求する。
【0002】
本発明は、燃料、特に炭化水素燃料、及び、潤滑剤、特に潤滑油に関し、より詳細には、ヒドロキシカルボン酸エステル及びヒドロキシポリカルボン酸エステルから誘導される燃料及び潤滑剤用の、あるクラスの耐摩耗性、耐疲労性、且つ極圧性の添加剤を含有する潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
潤滑油の開発において、それに耐疲労、耐摩耗、及び極圧特性を与える添加剤を提供するための多くの試みが行われてきた。50年以上前から、耐摩耗性添加剤として、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)が配合油中に使用されてきた。しかし、ジヒドロカルビルジオチオリン酸亜鉛は灰分を生じ、それが自動車排気ガスの粒子状物質の一因となるため、監督機関は環境への亜鉛排出の低減を求めている。さらに、リンもZDDPの成分であり、汚染を低減するために自動車に使用される触媒コンバータの耐用年数を制限するのではないかとみられている。毒性上及び環境上の理由から、エンジンの使用中に生じる粒子状物質及び汚染を抑えることが重要ではあるが、潤滑油の耐摩耗特性を低減させないで維持することも重要である。
【0004】
周知の亜鉛及びリン含有添加剤の前記欠点に鑑み、亜鉛もリンも含有しない、又は少なくとも大幅に低減させた量で含有する潤滑油添加剤を提供するための努力がなされてきた。亜鉛を含有しない、即ち無灰分の、リンを含有しない潤滑油添加剤の実例には、米国特許第5,512,190号に開示されている2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールと不飽和モノ、ジ、及びトリグリセリドとの反応生成物、並びに米国特許第5,514,189号のジチオカルバミン酸ジアルキル由来の有機エーテルがある。
【0005】
米国特許第5,512,190号は、潤滑油に耐摩耗性を付与する添加剤を開示している。この添加剤は、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールと、不飽和モノ、ジ、及びトリグリセリドの混合物との反応生成物である。また、不飽和モノ、ジ、トリグリセリドの混合物をジエタノールアミンと反応させて中間反応生成物を形成し、その中間反応生成物を2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールと反応させることによって生成された、耐摩耗特性を有する潤滑油添加剤を開示している。
【0006】
米国特許第5,514,189号は、ジチオカルバミン酸ジアルキル由来の有機エーテルが、潤滑剤及び燃料用の有効な耐摩耗性/抗酸化性添加剤であることが判明したと開示している。
【0007】
米国特許第3,293,181号は、一方のアルコールがイソブチルアルコールであり、他方が少なくとも6個の炭素原子を含有する少なくとも2種類の異なる第一級分岐鎖アルコールの混合物からアルキル基が誘導される、混合ジアルキルジチオリン酸の亜鉛塩によって、熱安定性が改善されたジアルキルジチオリン酸亜鉛を提供することができることを開示している。
【0008】
米国特許第3,396,109号は、ホスフィノジチオ酸の金属塩、特にジアリールホスフィノジチオ酸の亜鉛塩を、アミン、特に1〜約40個の炭素原子を有する脂肪族アミンと反応させることによる、リン及び窒素を含有する組成物の調製を開示している。この組成物は、潤滑油及び自動変速機油の添加剤として有用であるとされており、組成物はその油中で酸化抑制剤及び耐摩耗剤として作用する。それらはまた、フェニルβ−ナフチルアミンと併用すると、酸化を相乗的に抑制する特性をもたらすことができるとされている。
【0009】
米国特許第3,397,145号は、アルキルチオリン酸の、第三級原子を含有すると共に、ポリマー性反応生成物を含む縮合物の前記第三級窒素原子との付加反応によって形成されるアルキルチオリン酸塩を開示している。
【0010】
米国特許第3,442,804号は、特に定義されたジチオリン酸亜鉛を少量含有する潤滑用組成物を開示している。このジチオリン酸亜鉛の例は、炭化水素基が第一級アルキル基であり、且つ低分子量の基(即ち、炭素原子5個未満である)と高分子量の基(即ち、少なくとも炭素原子5個を有する)との混合物からなる、ジヒドロカルボンジチオリン酸から誘導されるものである。この特に定義されたジチオリン酸亜鉛では、低分子量の基と高分子量の基の比はモルベースで表して1:1〜3:1の範囲である。
【0011】
米国特許第3,637,499号は、長鎖アルケニルで置換された分子量400〜3,000のC〜Cモノカルボン酸を、第一級又は第二級ヒドロカルビロールアミンと反応させ、得られたアミドを硫化リンと反応させ、得られたジチオリン酸をポリアミノ化合物で中和させることによって調製された、ジチオリン酸のアミンで中和された誘導体を、潤滑油中の耐摩耗性及び清浄抑制添加剤として含有する潤滑油組成物を開示している。
【0012】
米国特許第4,151,102号は、圧延潤滑剤を汚染する場合でも圧延品を汚さない、摩耗を防止する軸受合成潤滑剤を開示している。この軸受潤滑剤は、ポリイソブテン、C〜Cアルコールとα−ヒドロキシモノカルボン酸又はα−ヒドロキシジカルボン酸との少なくとも1種のエステル、及び少なくとも一不飽和又は多価不飽和のC13〜C19カルボン酸を含有する。
【0013】
米国特許第4,741,848号は、ヒドロキシ置換エステル、アミド、又はイミドの少なくとも1つをホウ素化合物と反応させることを含む、ホウ素含有組成物の調製方法を開示している。このようなホウ素含有組成物は、燃料組成物及び潤滑油中で有用であり、耐摩耗及び/又は減摩特性を有する潤滑油を提供するとされている。
【0014】
米国特許第5,084,195号及び同5,300,243号は、潤滑剤又は作動油用に指定された耐摩耗性添加剤としてのN−アシル−チオウレタンチオ尿素を開示している。
【0015】
米国特許第5,338,470号は、クエン酸と、アルキルアルコール又はアミンとの反応生成物として得られるアルキル化クエン酸誘導体を開示しており、これは耐摩耗性であり摩擦を緩和する、燃料及び潤滑剤に有効な添加剤であるとされている。
【0016】
米国特許第5,498,809号は、光散乱測定法で測定して、数平均分子量が約1,500〜7,500であり、全ポリマー鎖の少なくとも約30パーセントの末端にエチルビニリデン基が付いており、エチレン誘導性含有物の量が約50重量パーセント以下であり、鉱油中でポリマー凝集物を含まない溶液を形成する、エチレン及び1−ブテンから誘導された油溶性コポリマーを開示している。これらのコポリマーを官能基化し誘導体化することによって生成された潤滑油添加剤、特に分散剤は、潤滑油組成物中で、コポリマーを特徴付ける諸特性の組合せに部分的に帰することができる向上した性能(例えば、分散性及び流動点の改善)を有するとされている。
【0017】
チェコスロバキア特許出願第254033号は、エンジンオイル中の摩擦緩和剤としての2−エチルヘキシル−4−ヘキサデシルサリチル酸の使用を教示している。
【0018】
欧州特許出願第562405号は、冷蔵庫のコンプレッサ潤滑剤にクエン酸エステルを使用することを開示している。
【0019】
仏国特許出願第2205931号は、ベースストック配合物の一部としての乳酸ブチル33重量%の使用を開示している。ZDDP0.7%が使用される。
【0020】
特開平07−268369号公報は、ヒドロキシポリカルボン酸エステル化合物、例えば、Rが炭素数1〜18のアルキル基である(R−COC−OHからなる添加剤を開示している。この潤滑油化合物は、ヒドロキシポリカルボン酸エステルからなる添加剤を0.1〜40重量%含有する。この添加剤は、純粋な潤滑油に耐摩耗性を付与するとされている。
【0021】
特開2000−290669は、燃料油又はガソリンから水を除去するための試剤として、エステル90〜100%を最大で10%の非イオン性界面活性剤と共に使用することを開示している。好ましいエステルは、a−ヒドロキシイソ酪酸メチル、a−ヒドロキシイソ酪酸エチル、a−ヒドロキシイソ酪酸ヘキシル、乳酸メチル、乳酸オクチル、グリコール酸ヘキシル、及びグリコール酸オクチルである。
【0022】
国際公開第2001060954号は、ディーゼル燃料添加剤としての、好ましくは3〜6%のa−ヒドロキシモノカルボン酸エステルを開示している。
【0023】
Mirci,L.等の「合成潤滑剤(Synthetic Lubrication)」、2003年、20(1)、39〜52頁は、合成ベースストックとしての、クエン酸ベースの複合エステルの使用を論じている。
【0024】
Ponomorenko,A.G.等の、Trenie I Iznos(1998年)、9(2)、305〜310頁(CAN109:233832)は、個々の酒石酸エステルの耐摩耗及び耐摩擦特性が、パラフィン油で希釈すると改善されることを記載している。このエステルは混合物の30〜50%未満とすべきではない。
【0025】
前記参考文献の開示の全体を、参照により本明細書に組み込む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、耐摩耗性能を低下させることなく現在使用されている亜鉛及びリンの量を低減するために、単独でも、(1)ジヒドロカルビルチオリン酸亜鉛、又は(2)無灰分のリン含有添加剤、或いは(3)(1)と(2)の混合物との相乗効果のある組合せでも使用することができる添加剤を含む潤滑剤組成物を対象とする。これらの添加剤は、エンジンオイル中に一般にみられる他の添加剤、並びに無灰分の他の耐摩耗添加剤と併用することもできる。エンジンオイル中にみられる一般的な添加剤には、分散剤、清浄剤、耐摩耗剤、極圧剤、さび止め剤、抗酸化剤、消泡剤、摩擦緩和剤、粘度指数(V.I.)向上剤、金属不動態化剤、及び流動点降下剤が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の実施において使用される化合物は、リンを含まない、耐疲労、耐摩耗、極圧添加剤として、燃料及び潤滑油に対して有用であるヒドロキシカルボン酸エステル及びヒドロキシポリカルボン酸エステルである。
【0028】
本発明は、潤滑油を含み、ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルの少なくとも一種を、単独で、或いはジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛又はリン酸トリラウリルやチオリン酸トリフェニルなどの無灰分のリン含有添加剤との相乗効果のある組合せで機能特性を改善する量で含む、潤滑油組成物を提供する。
【0029】
本明細書では、「ヒドロカルビル」という用語は、炭化水素基並びに実質上の炭化水素基を含む。「実質上の炭化水素」とは、基の実質上炭化水素である性質を変えないヘテロ原子置換基を含む基を言う。ヒドロカルビル基の例には、以下のものが含まれる:
(1)炭化水素置換基、即ち、脂肪族(例えば、アルキル又はアルケニル)置換基、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、芳香族置換基;芳香族で置換された芳香族置換基、脂肪族で置換された芳香族置換基、及び脂環式の基で置換された芳香族置換基等;並びに、環が分子の別の部分によって完成される(即ち、例えば指示されたいずれか2つの置換基が一緒になって、脂環式基を形成することができる)環式置換基、
(2)置換された炭化水素置換基、即ち、本発明の文脈において、置換基が実質的に炭化水素たる性質を変えない、非炭化水素基を含む置換基;当業者ならば、このような基(例えば、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシ等)を承知しているはずである;並びに
(3)ヘテロ原子置換基、即ち、本発明の文脈において、実質上炭化水素の性格を有し、かつ、炭素原子から構成される環又は鎖(例えば、アルコキシ又はアルキルチオ)中に存在する炭素以外の原子を含む、置換基が含まれる。適切なヘテロ原子は、当業者には明らかなはずであり、例えば、硫黄、酸素、窒素であり、ヘテロ原子置換基は、例えば、ピリジル、フリル、チエニル、イミダゾリル等である。好ましくは、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに約2個以下、より好ましくは1個以下のヘテロ置換基が存在する。より好ましくは、ヒドロカルビル基中にこのようなヘテロ原子置換基が存在しない、即ちヒドロカルビル基が純粋に炭化水素である。
【0030】
単独で、或いはジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛などの無灰分のリン含有添加剤との相乗効果のある組合せで有用なヒドロキシカルボン酸エステル及びヒドロキシポリカルボン酸エステルは、従来技術に勝る改良であり、その新規な適用例を提供することが本発明の目的である。ジヒドロカルビルチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、アルキルアリールチオリン酸亜鉛、及びそれらの組合せを含めた一般的な用語である。これは、単独で使用しても、他の潤滑剤添加剤と併用してもよい。
【0031】
本発明の実施で使用することができる他の無灰分リン含有添加剤には、下記に限らないが、亜リン酸二水素モノヒドロカルビル、亜リン酸水素ジヒドロカルビル、亜リン酸トリヒドロカルビル、及びこれらの混合物、例えば、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘキシル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ジイソデシル、亜リン酸ジ−n−オクチル、Irgafos(登録商標)OPH、亜リン酸ジフェニルイソデシル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジ−n−オクチル、亜リン酸水素ジオレイル、亜リン酸ジメチルフェニル、亜リン酸エチルヘキシルジフェニル、亜リン酸フェニルジイソデシル、亜リン酸トリイソデシル、亜リン酸トリイソオクチル、亜リン酸トリラウリル、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス(ジプロピレングリコール)、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(5−ノルボルナン−2−メチル)、亜リン酸トリス(トリデシル);また、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ヘプタキス(ジプロピレングリコール)トリホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイトなどの二リン酸及び三リン酸エステル;また、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、ポリ4,4’イソプロピリデンジフェノール−C12〜C15アルコールホスファイト(Weston439)、アルキル(C10)ビスフェノールAホスファイト(Doverphos(登録商標)675、Dover社製)、アルキル(C12〜C15)ビスフェノールAホスファイト(Doverphos613)、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、フェニルネオペンチレングリコールホスファイト、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオールホスファイト;2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、リン酸二水素モノヒドロカルビル、リン酸水素ジヒドロカルビル、及びリン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリトリルなどのリン酸トリヒドロカルビル、ジチオリン酸エステル(Irgalube(登録商標)62及びIrgalube353など)、トリチオリン酸エステル、トリチオ亜リン酸トリラウリル;ホスホナイト、Irgafos12(Ciba、CA#[80410−33−9])、ジホスホナイト、チオリン酸エステル、例えばチオリン酸トリフェニル(例えば、IrgalubeTPPT)、チオリン酸トリス(ノニルフェニル)(Irgalube211など)、及びチオリン酸トリス(ブチルフェニル)(Irgalube232など)、リン酸アミン(Irgalube349など)が含まれる。
【0032】
本発明の潤滑剤添加剤組成物は、多くの異なる潤滑油組成物の成分として特に有用である。この添加剤組成物は、天然及び合成潤滑油、並びにそれらの混合物を含めた、潤滑剤としての粘性を有する様々な油に加えることができる。この添加剤は、電気点火及び圧縮点火型の内燃機関エンジン用のクランクケース潤滑油に加えることができる。この組成物は、燃料、ガスエンジン潤滑剤、タービン潤滑剤、自動変速機油、ギア潤滑剤、コンプレッサ潤滑剤、金属加工潤滑油、作動油、並びに他の潤滑油及びグリース組成物中で使用することもできる。
【0033】
本発明の耐疲労性、耐摩耗性、且つ極圧性の添加剤は、次の一般式のヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルである。
【化1】


式中、
は、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルケニル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、及びベンジルからなる群から選択され、
Xは、
【化2】


からなる群から選択され、
式中、
は、水素、CHCO、CH(OH)CO、アルキル、アリール、アルコキシアルキル、及びアルカリールからなる群から選択され、
は、水素、アルキル、及びCHCOからなる群から選択され、
ただし、
がCHCOである場合、Rは水素又はCHCOであり、
がCH(OH)COである場合、Rは水素であり、
がアルキル、アリール、アルコキシアルキル、又はアルカリールである場合、Rは水素又はアルキルであり、
は水素、アルキル、アリール、及びCHCOからなる群から選択され、
及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択され、
、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素、CO、アルキル、及び縮合アリールからなる群から選択される。
【0034】
上式において、R、R、又はR〜R10のいずれかが、アルキル又はアルキル置換基であり、好ましくは炭素原子1〜18個のアルキルである。アリール部分は、通常、炭素原子6〜10個となる。
【0035】
より具体的には、本発明は、
(A)潤滑剤又は炭化水素燃料、及び
(B)次式のヒドロキシカルボン酸又はヒドロキシポリカルボン酸のエステルの少なくとも一種を含む組成物を対象とする。
【化3】


式中、X及びRは上記の通りである。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、
(A)潤滑剤又は炭化水素燃料と、
(B)次式のヒドロキシカルボン酸又はヒドロキシポリカルボン酸のエステルの少なくとも一種
【化4】


(式中、X及びRは上記の通りである)と、
(C)少なくとも1種のリン含有添加剤、好ましくは次式のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛
【化5】


(式中、nは2であり、R及びRは、それぞれ独立に選択された、ヒドロカルビル基、好ましくはアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルカリール、或いはヒドロカルビルで置換されたアルキル、シクロアルキル、アラルキル、又はアルカリール基であり、酸中の前記R及びR基は、好ましくは、それぞれ平均で少なくとも3個の炭素原子を有する)と
を含む組成物を対象とする。
【0037】
また別の実施形態では、本発明は、潤滑剤及び炭化水素燃料の耐疲労、耐摩耗、及び極圧特性を改善する方法を対象とし、この方法は、前記潤滑剤及び炭化水素燃料に、次式のヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルの少なくとも一種を、機能特性を改善する量で添加することを含む。
【化6】


式中、X及びRは上記の通りである。
【0038】
さらに別の実施形態では、本発明は、潤滑剤及び炭化水素燃料の耐疲労、耐摩耗、及び極圧特性を改善する方法を対象とし、この方法は、前記潤滑剤及び炭化水素燃料に、
(A)次式のヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルの少なくとも一種
【化7】


(式中、X及びRは上記の通りである)と、
(B)少なくとも1種のリン含有添加剤、好ましくは次式のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛
【化8】


(式中、nは2であり、R及びRは、それぞれ独立にヒドロカルビル基から選択される)と
を、機能特性を改善する量で添加することを含む。
【0039】
ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルは、約0.01〜約10重量%の範囲の濃度で、本発明の組成物中に存在する。
【0040】
無灰分のリン含有添加剤が本発明の組成物中に存在する場合、約0.01〜約10重量%、好ましくは約0.1〜約2.0重量%の範囲の濃度となる。
【0041】
ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルと、無灰分のリン含有添加剤、例えばジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛との組合せは、約0.02〜約20重量%、好ましくは約0.2〜約2.0重量%の範囲の濃度で、本発明の組成物中に存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
上述のように、耐疲労、耐摩耗、及び極圧のクラスの添加剤は、以下の一般式のヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルの少なくとも一種を有することができる。
【化9】


式中、X及びRは上記の通りである。
【0043】
好ましいエステルには、クエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、マンデル酸エステル、グリコール酸エステル、ヒドロキシプロピオン酸エステル、ヒドロキシグルタル酸エステル、サリチル酸エステル等が含まれる。特に、クエン酸トリアルキル及びホウ酸化クエン酸トリアルキルが好ましく、特に、クエン酸トリエチル及びホウ酸化クエン酸トリエチルが好ましい。
【0044】
耐疲労、耐摩耗、及び極圧の特に好ましいクラスの添加剤は、Rが炭素原子1〜5個の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、それらの異性体、及びそれらの混合物である添加剤である。前述のように、好ましくはRはエチルであり、クエン酸トリエチル及びホウ酸化クエン酸トリエチルが特に好ましい実施形態である。このような添加剤は、少なくとも1種の無灰分のリン含有添加剤、例えばリン酸トリラウリル又はホスホロチオ酸トリフェニル、或いは次式のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛との相乗効果のある組合せで使用されるのが有利である。
【化10】


式中、nは2であり、R及びRは、それぞれ独立に選択された、ヒドロカルビル基、好ましくはアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルカリール、或いはヒドロカルビルで置換されたアルキル、シクロアルキル、アラルキル、又はアルカリール基であり、酸中の前記R及びR基が、それぞれ平均で少なくとも3個の炭素原子を有することが好ましい。好ましいジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、アルキル基が炭素3〜8個の直鎖又は分岐鎖である、例えば、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、それらの異性体、及びそれらの混合物であるジアルキルジチオリン酸亜鉛である。
【0045】
ヒドロキシカルボン酸エステル及びヒドロキシポリカルボン酸エステルの生成プロセスでは、ヒドロキシカルボン酸又はヒドロキシポリカルボン酸と、アルコールとの反応を利用する。この反応は、加熱、及び副産物としての水を除去することにより行われる。
【0046】
本発明のヒドロキシカルボン酸エステル及びヒドロキシポリカルボン酸エステル添加剤は、リン酸トリラウリルやホスホロチオ酸トリフェニルなどの無灰分のリン含有添加剤との、或いはジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛との相乗効果のある組合せにおいて有用であり、この組合せは、耐摩耗性能を低減せずに現在使用されている亜鉛及びリンの量を低減することができる故に、従来技術に勝る改良である。ヒドロキシカルボン酸エステル及びヒドロキシポリカルボン酸エステル添加剤は、潤滑油中に一般にみられる他の添加剤、並びに他の耐摩耗添加剤と併用することもできる。潤滑油中に一般にみられるこれらの添加剤は、例えば、分散剤、清浄剤、腐食抑制剤/さび止め剤、抗酸化剤、耐摩耗剤、消泡剤、摩擦緩和剤、シール膨潤剤、乳化破壊剤、V.I.向上剤、流動点降下剤等である。例えば、有用な潤滑油組成物添加剤を記載しており、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,498,809号を参照されたい。
【0047】
指摘したように、安定な耐摩耗組成物には、ジヒドロカルビルジチオリン酸が含まれる。好ましくは、ヒドロカルビル基は、平均で少なくとも3個の炭素原子を含む。特に有用なのは、ヒドロカルビル基が平均で少なくとも3個の炭素原子を含む、少なくとも1種のジヒドロカルビルジチオリン酸の金属塩である。ジヒドロカルビルジチオリン酸をそれから誘導することのできる酸は、次式で表される酸によって例示することができる。
【化11】


式中、R及びRは、同じ又は異なる基であり、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルカリール、又はこれらの基のいずれかの誘導体である、置換された実質的に炭化水素である基であり、酸中のR及びR基は、それぞれ平均で少なくとも3個の炭素原子を有する。「実質的に炭化水素」とは、基の炭化水素の性格に実質上影響を及ぼさない原子又は基、例えば基の一部分あたり、エーテル、エステル、ニトロ、ハロゲンなど1〜4個の置換基を含む基を意味している。
【0048】
適切なR及びR基の具体例には、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、n−ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、ジイソブチル、イソオクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ブチルフェニル、o,p−ジペンチルフェニル、オクチルフェニル、ポリイソブテン(分子量約350)で置換されたフェニル、テトラプロピレンで置換されたフェニル、β−オクチルブチルナフチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、クロロフェニル、o−ジクロロフェニル、ブロモフェニル、ナフテニル、2−メチルシクロヘキシル、ベンジル、クロロベンジル、クロロペンチル、ジクロロフェニル、ニトロフェニル、ジクロロデシル、キセニル、及び類似の基が挙げられる。炭素原子約3〜約30個を有するアルキル基及び炭素原子約6〜約30個を有するアリール基が好ましい。特に好ましいR及びR基は、炭素原子3〜18個のアルキルである。
【0049】
ジチオリン酸は、五硫化リンと、アルコール又はフェノールとの反応によって容易に得ることができる。この反応では、約20℃〜200℃の温度で、アルコール又はフェノール4モルを、五硫化リン1モルと混合する。反応が起こると、硫化水素が遊離する。アルコール類の混合物、フェノール類の混合物、又はその両方の混合物、例えば、C〜C30のアルコール、C〜C30の芳香族アルコール等の混合物を使用することができる。
【0050】
リン酸塩を生成するのに有用な金属には、I族の金属、II族の金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、コバルト、及びニッケルが含まれる。亜鉛が好ましい金属である。酸と反応させることができる金属化合物の例には、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、リチウムペンチラート、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムプロピラート、ナトリウムフェノキシド、酸化カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、カリウムメチラート、酸化銀、炭酸銀、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、マグネシウムエチラート、マグネシウムプロピラート、マグネシウムフェノキシド、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、カルシウムメチラート、カルシウムプロピラート、カルシウムペンチラート、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、亜鉛プロピラート、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、酸化カドミウム、水酸化カドミウム、炭酸カドミウム、カドミウムエチラート、酸化バリウム、水酸化バリウム、バリウム水和物、炭酸バリウム、バリウムエチラート、バリウムペンチラート、酸化アルミニウム、アルミニウムプロピラート、酸化鉛、水酸化鉛、炭酸鉛、酸化スズ、スズブチラート、酸化コバルト、水酸化コバルト、炭酸コバルト、コバルトペンチラート、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル等が含まれる。
【0051】
場合によっては、ある成分、特に金属反応物と併用される少量の金属酢酸塩や酢酸などの、カルボン酸又は金属カルボン酸塩を組み込むと反応が容易になり、改良された生成物が得られる。例えば、最大で約5%の酢酸亜鉛を、必要とされる量の酸化亜鉛と併用すると、ジチオリン酸亜鉛の形成が容易になる。
【0052】
金属ジチオリン酸の調製は、当技術分野で周知であり、参照によりそれらの開示が本明細書に組み込まれる米国特許第3,293,181号、同第3,397,145号、同第3,396,109号、及び同第3,442,804号を含めた数々の発行済みの特許に記載されている。その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,637,499号に記載されるような、ジチオリン酸化合物のアミン誘導体も、耐摩耗添加剤として有用である。
【0053】
亜鉛塩は、潤滑油中の耐摩耗添加剤として、潤滑油組成物全重量に対して0.1〜10、好ましくは0.2〜2重量%の量で最も一般に使用されている。それらは、まず通常アルコール又はフェノールをPと反応させることによってジチオリン酸を形成し、次いでジチオリン酸を適切な亜鉛化合物で中和する周知の技術に従って調製することができる。
【0054】
一般に、熱安定性を付与するための第一級アルコールと、耐摩耗特性を付与するための第二級アルコールの混合物を含めたアルコールの混合物を使用することができる。一般に、任意の塩基性又は中性の亜鉛化合物を使用することができるが、最も一般にはその酸化物塩、水酸化物塩、及び炭酸塩が使用される。市販の添加剤は、中和反応で過度の塩基性亜鉛化合物を使用する故に、しばしば過剰の亜鉛を含有している。
【0055】
ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)は、ジチオリン酸のジヒドロカルビルエステルの油溶性の塩であり、次式で表すことができる。
【化12】


式中、n、R、及びRは、上記の通りである。
【0056】
分散剤の例には、ポリイソブチレンスクシンイミド、ポリイソブチレンコハク酸エステル、マンニッヒ塩基無灰分分散剤等が含まれる。清浄剤の例には、金属系無灰分のアルキルフェナート、金属系無灰分の硫化アルキルフェナート、金属系無灰分のスルホン酸アルキル、金属系無灰分のサリチル酸アルキル、金属系無灰分のサリゲニン誘導体等が含まれる。
【0057】
抗酸化剤の例には、アルキル化ジフェニルアミン、N−アルキル化フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、ジメチルキノリン、トリメチルジヒドロキノリン及びそれらから誘導されたオリゴマー化合物、ヒンダードフェノール類、アルキル化ヒドロキノリン、水酸化チオジフェニルエステル、アルキリデンビスフェノール、チオプロピオナート、金属ジチオカルバメート、1,3,4−ジメルカプトチアジアゾール及び誘導体、油溶性銅化合物等が含まれる。以下はこのような添加剤の例であり、Crompton Corporationから市販されている(とりわけ、Naugalube(登録商標)438、Naugalube438L、Naugalube640、Naugalube635、Naugalube680、NaugalubeAMS、NaugalubeAPAN、Naugard(登録商標)PANA、NaugalubeTMQ、Naugalube531、Naugalube431、NaugardBHT、Naugalube403、及びNaugalube420)。
【0058】
本発明の添加剤と併用することができるさらなる耐摩耗添加剤の例には、有機ホウ酸エステル、有機亜リン酸エステル、有機リン酸エステル、有機含硫化合物、硫化オレフィン、硫化脂肪酸誘導体(エステル)、塩素化パラフィン、ジアルキルジチオリン酸エステル、ジアリールジチオリン酸エステル、含リン硫黄炭化水素等が含まれる。以下はこのような添加剤の例であり、The Lubrizol Corporationから市販されており(とりわけ、Lubrizol 677A、Lubrizol 1095、Lubrizol 1097、Lubrizol 1360、Lubrizol 1395、Lubrizol 5139、及びLubrizol 5604)、またCiba Corporationから市販されている(Irgalube353)。
【0059】
摩擦緩和剤の例には、脂肪酸のエステル及びアミド、有機モリブデン化合物、ジチオカルバミン酸モリブデンジアルキル、ジチオリン酸モリブデンジアルキル、二硫化モリブデン、ジチオカルバミン酸トリモリブデンクラスタジアルキル、非硫黄モリブデン化合物等が含まれる。以下はモリブデン添加剤の例であり、R.T.Vanderbilt Company,Inc.から市販されている(とりわけ、MolyvanA、MolyvanL、Molyvan807、Molyvan856B、Molyvan822、Molyvan855)。以下もこのような添加剤の例であり、Asahi Denka Kogyo K.K.から市販されている(とりわけ、SAKURA−LUBE100、SAKURA−LUBE165、SAKURA−LUBE300、SAKURA−LUBE310G、SAKURA−LUBE321、SAKURA−LUBE474、SAKURA−LUBE600、SAKURA−LUBE700)。以下もこのような添加剤の例であり、Akzo Nobel Chemicals GmbHから市販されており(とりわけ、Ketjen−Ox77M、Ketjen−Ox77TS)、またCrompton Corporationから市販されている(Naugalube(登録商標)MolyFM2543)。
【0060】
消泡剤の一例は、ポリシロキサン等である。さび止め剤の例は、ポリオキシアルキレンポリオール、ベンゾトリアゾール誘導体等である。V.I.向上剤の例には、オレフィンコポリマー及び分散型オレフィンコポリマー等が含まれる。流動点降下剤の一例は、ポリメタクリレート等である。
【0061】
潤滑剤組成物
組成物がこれらの添加剤を含有する場合には、一般に、添加剤が基油中で通常の付随的機能を付与するのに効果的な量で、組成物が基油中にブレンドされる。このような添加剤の代表的な有効量を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
他の添加剤が使用される場合、必須ではないものの、本発明の主題である添加剤の濃縮した溶液又は分散液を(上記濃縮量で)、1種又は複数の前記他の添加剤と一緒に含む添加剤濃縮物を調製し(前記濃縮物が添加剤混合物を構成する場合、本明細書では添加剤パッケージと呼ぶ)、それによって数種類の添加剤を同時に基油に添加して、潤滑油組成物を形成できることが望ましい。添加濃縮物の潤滑油への溶解は、溶媒、及び穏やかな加熱を伴う混合によって促進することができるが、これは必須ではない。濃縮物又は添加剤パッケージは、一般に、添加剤パッケージが所定の量の潤滑基剤と混合されるときに、最終的な配合物中で望ましい濃度をもたらす適切な量で添加剤を含有するように配合されることになる。したがって、本発明の主題である添加剤を、他の望ましい添加剤と共に少量の基油又は他の相容性のある溶剤に加えて、活性成分を添加剤の総量で一般に約2.5〜約90重量パーセント、好ましくは約15〜約75重量パーセント、より好ましくは約25〜約60重量パーセント、それぞれ適切な割合で含有し、残余が基油である添加剤パッケージを形成することができる。最終的な配合物は、一般に、添加剤パッケージを約1〜20重量パーセント使用することができ、残余は基油である。
【0064】
本明細書で表される重量パーセントは(別段の指示がない限り)すべて、添加剤の活性成分(AI)含有量に、及び/或いは、各添加剤のAIの重量の合計に油若しくは希釈剤の重量を加えた和である、任意の添加剤パッケージ又は配合物の総量に基づいて決まる。
【0065】
一般に、本発明の潤滑剤組成物は、約0.05〜約30重量パーセントの範囲の濃度の添加剤を含有する。油組成物の総量に対する添加剤の濃度範囲は、約0.1〜約10重量パーセントの範囲であることが好ましい。より好ましい濃度範囲は、約0.2〜約5重量パーセントである。添加剤の油濃縮物は、潤滑油の粘度の担体又は希釈油中に添加剤反応生成物約1〜約75重量パーセントを含有することができる。
【0066】
一般に、本発明の添加剤は、様々な潤滑油ベースストックに有用である。この潤滑油ベースストックは、100℃で、約2〜約200cSt、より好ましくは約3〜約150cSt、及び最も好ましくは約3〜約100cStの動粘度を有する、任意の天然又は合成潤滑油ベースストック分画である。この潤滑油ベースストックは、天然潤滑油、合成潤滑油、又はそれらの混合物から誘導することができる。適切な潤滑油ベースストックには、合成ワックス及びワックスの異性化によって得られるベースストック、並びに原油の芳香族の極性成分を(溶媒抽出ではなく)水素化分解することによって生成される水素化分解ベースストックが含まれる。天然潤滑油には、ラード油などの動物油、植物油(例えば、菜種油、ヒマシ油、ヒマワリ油)、石油、鉱油、及び石炭又は頁岩から導出された油が含まれる。
【0067】
合成油には、炭化水素油、及び、ハロ置換の炭化水素油が含まれ、例えば、ポリマー化及びインターポリマー化オレフィン、フィッシャー−トロプシュ技術によってガスから調製された液体、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、同族体等である。合成潤滑油には、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、及び、末端のヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって修飾されているそれらの誘導体も含まれる。合成潤滑油のもう1つの適切なクラスは、ジカルボン酸と様々なアルコールとのエステルを含む。合成油として有用なエステルには、C〜C12のモノカルボン酸と、ポリオール及びポリオールエーテルとから生成されたものも含まれる。合成油として有用な他のエステルには、α−オレフィンと、短鎖又は中鎖アルコールでエステル化されたジカルボン酸とのコポリマーから生成されたものが含まれる。以下は、このような添加剤の例であり、Akzo Nobel Chemicals SpAから市販されている(とりわけ、Ketjenlubes115、135、165、1300、2300、2700、305、445、502、522、及び6300)。
【0068】
ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ、ポリアリールオキシシロキサン油などのシリコンベースの油、及びシリケート油は、合成潤滑油のもう1つの有用なクラスを構成する。他の合成潤滑油には、リンを含有する酸、ポリマー性テトラヒドロフラン、ポリα−オレフィン等の液状エステルが含まれる。
【0069】
潤滑油を、未精製、精製、再精製油、又はそれらの混合物から導出することができる。未精製油は、さらなる精製又は処理なしに、天然供給源又は合成供給源(例えば、石炭、頁岩、又はタール及び瀝青)から直接得られる。未精製油の例には、レトルトでの乾留により直接得られる頁岩油、蒸留により直接得られる石油、又はエステル化プロセスにより直接得られるエステル油が含まれ、次いでそれらはそれぞれさらなる処理なしに使用される。精製油は、1つ又は複数の特性を改善するために、1つ又は複数の精製ステップで処理されている点を除き、未精製油と類似している。適切な精製技術には、蒸留、水素化処理、脱ろう、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、濾過、浸透等が含まれ、これらはすべて当業者には周知である。再精製油は、精製油を得るために使用されるプロセスに類似のプロセスで、精製油を処理することによって得ることができる。これらの再精製油はまた、再生油又は再処理油として知られており、しばしば使用済み添加剤及び油分解生成物を除去するための技術によってさらに処理される。
【0070】
ワックスの水素異性化により導出された潤滑油ベースストックは、単独で、或いは前記天然及び/又は合成ベースストックと組み合わせて使用することもできる。このようなワックス異性化油は、水素異性化触媒により、天然又は合成ワックス、或いはそれらの混合物の水素異性化によって生成される。天然ワックスは、一般に鉱油の溶媒脱ろうによって回収された軟ろうであり、合成ワックスは、一般にフィッシャー−トロプシュ法によって生成されたワックスである。得られた異性体生成物は、一般に、特定の粘度範囲を有する様々な分画を回収するために、溶媒脱ろう及び分留にかけられる。ワックス異性化物はまた、非常に高い粘度指数、一般に少なくとも130、好ましくは少なくとも135以上のV.I.を有し、脱ろう後に約−20℃以下の流動点を有することを特徴とする。
【0071】
本発明の添加剤は、多くの異なる潤滑油組成物の成分として特に有用である。この添加剤は、天然及び合成潤滑油、並びにそれらの混合物を含めた、潤滑剤としての粘性を有する様々な油に含めることができる。この添加剤は、電気点火及び圧縮点火型の内燃機関エンジン用のクランクケース潤滑油に加えることができる。この組成物は、ガスエンジン潤滑剤、タービン潤滑剤、自動変速機油、ギア潤滑剤、コンプレッサ潤滑剤、金属加工潤滑油、作動油、並びに他の潤滑油及びグリース組成物中で使用することもできる。この添加剤は、モータ燃料組成物中で使用することもできる。
【0072】
本発明の利点及び重要な特徴は、以下の実施例からより明らかになるであろう。
【実施例】
【0073】
耐摩耗四球試験
アメリカ石油協会(API)グループIIの完全配合済み潤滑油中での、ヒドロキシカルボン酸エステルの耐摩耗特性を、ASTM D4172の試験条件下、四球摩耗試験で判定した。これらの実施例における試験は、Falex Variable Drive四球摩耗試験機で行った。4個の球が正四面体の各頂点になるよう配列する。下側の3個の球を潤滑剤で充填した試験カップ内にクランプで固定し、上側の球をモータ駆動のチャックで保持する。上側の球を、固定した下側の球に対して回転させる。ウェイト/レバーアーム装置で、上向きの方向に負荷をかける。負荷は、連続的に可変の空気圧式負荷装置でかけられる。ヒータを用いると、高い油温度で動作できるようになる。3個の固定した鋼球を、10ミリリットルの試験用サンプル中に浸し、4個目の鋼球を、3個の固定した鋼球の頂点で「3点接触」状態で回転させる。この試験機を、40キログラムの負荷及び毎分1,200回転の回転速度で、75℃で1時間動作させる。完全配合済み潤滑油は、エンジンオイル中に一般にみられるすべての添加剤(表2に記した異なる耐摩耗剤を含む)、並びに運転中のエンジン内環境をシミュレートする助けとして、クメンヒドロペルオキシド0.63重量%、及びPennzoil Excel 100HC2.40%を含有していた。これらの添加剤を、エンジンオイル配合物中で有効かどうか試験し、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む同一配合物、及びジアルキルジチオリン酸亜鉛を含まない同一配合物と比較した。データの検討から、これらのヒドロキシエステル添加剤をリン含有添加剤と併用すると、どちらかのタイプの添加剤を単独で使用するよりも相乗効果的な改善が示されることが明らかとなる。
【0074】
耐摩耗Cameron−PlintTE77高周波摩擦機試験
APIグループIIの完全配合済み潤滑油中での本発明の添加剤の耐摩耗特性を、Cameron−PlintTE77高周波摩擦機試験で判定した。試料用部品(硬度800±20kg/mm、径6mmのAISI 52100鋼球、及びRC60/0.4ミクロンの硬化研磨済みのNSOH B01ゲージプレート)をすすぎ、次いで工業用ヘキサンを使用して15分間超音波処理した。この手順をイソプロピルアルコールを使用して繰り返した。これらの試料用部品を窒素で乾燥させ、TE77に挿入した。油浴にサンプル10mLを充填した。試験は、周波数30Hertz、負荷100ニュートン、振幅2.35mmで行った。試験は、室温で、試料用部品及び油から始まる。直ちに温度を15分かけて50℃まで上げ、そこで15分間留めた。次いで温度を15分かけて100℃まで上げ、そこで45分間留めた。3度目に、温度を15分かけて150℃まで上げ、その後最終的に150℃で15分間留めた。試験の全所要時間は、2時間であった。試験の最後に、Leica Stereo Zoom6(登録商標)立体顕微鏡及びミツトヨ164シリーズ デジマチックヘッドを使用して、6mm球の摩耗痕の径を測定した。試験された完全配合済み潤滑油は、運転中のエンジン内環境をシミュレートする助けとするために、クメンヒドロペルオキシド1重量%を含有していた。添加剤をエンジンオイル配合物中で有効かどうか試験し、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む同一配合物、及びジアルキルジチオリン酸亜鉛を含まない同一配合物と比較した。表2では、有効性が高いほど、試験結果の数値(摩耗痕の径、mm)が小さくなる。また、プレート上の摩耗痕の最大深度を測定した。これは、表面形状測定装置を使用して測定する。
【0075】
以下の実施例の番号は、表2中の番号を示す。
【0076】
(実施例1〜5)
Aldrichから入手したクエン酸トリエチルを使用した。
【0077】
(実施例6)
クエン酸トリペンチルとクエン酸エチルジペンチル
表面下への窒素注入部、磁気攪拌棒、及び、水冷式ショートパス冷却器に通じる加熱済みAlihn冷却器を備えた500mLの三口フラスコに、クエン酸トリエチル22.92グラム、1−ペンタノール177.86グラム、及びp−トルエンスルホン酸1.51グラムを投入した。Alihn冷却器を、90℃の循環式バスからの液体を使用して加熱した。この混合物を24時間還流しながら攪拌した。この反応混合物をヘプタンで希釈し、希水酸化ナトリウムで1回洗浄し、次いで水で5回洗浄した。ロータリーエバポレーターによって溶媒を除去した。生成物は、GCで測定してトリペンチルエステル83%及びジペンチルエステル15%を含有していた。
【0078】
(実施例7〜8)
ホウ酸化クエン酸トリエチル
オーバーヘッド攪拌棒、熱電対及びサブサーフェス窒素スパージャとして使用するための16ゲージのニードルを有するクライゼンアダプタ、並びにショートパス冷却器を備えた100mLの三口フラスコに、クエン酸トリエチル61.88グラム及びホウ酸5.04グラムを投入した。この混合物を119℃で5.5時間加熱した。この間に、反応器の側面に付着した固体を分散させ溶解させる助けとして、ヒートガンを2回使用した。ヒートガンの使用中、温度は一時的に140℃に上昇した。反応混合物を、セライト545珪藻土で濾過した。ロータリーエバポレーターによって揮発物を除去して、淡黄色の液体58.8グラムを得た。
【0079】
(実施例9)
Unitex Chemical Corpから入手したクエン酸トリブチルを使用した。
【0080】
(実施例10〜11)
クエン酸トリエチルを2−メトキシエタノールでエステル交換した生成物
表面下への窒素導入部、磁気攪拌棒、及び水冷式ショートパス冷却器に通じる加熱済みAlihn冷却器を備えた500mLの三口フラスコに、クエン酸トリエチル22.92グラム、2−メトキシエタノール153.7グラム、及びp−トルエンスルホン酸1.5グラムを投入した。Alihn冷却器を、90℃の循環式バスからの液体を使用して加熱した。この混合物を121〜124℃で攪拌した。アリコートサンプルを15時間後に取り出し、反応は20時間で終了させた。各部分を酢酸ブチルで希釈し、希水酸化ナトリウムで1回洗浄し、次いで水で洗浄した。サンプルを硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターによって揮発物を除去した。
【0081】
15時間経過時のサンプルは、GCによると、クエン酸トリエチル6%、クエン酸ジエチルメトキシエチル35%、クエン酸エチルジ(メトシキエチル)53%、クエン酸トリ(メトキシエチル)6%を含有していた。(実施例D)
【0082】
20時間経過時のサンプルは、GCによると、クエン酸ジエチル−メトキシエチル8%、クエン酸エチルジ(メトキシエチル)77%、及びクエン酸トリ(メトキシエチル)13%を含有していた。(実施例E)
【0083】
(実施例12)
1,2−プロパンジオールでエステル交換したクエン酸トリエチル
表面下への窒素導入部、磁気攪拌棒、及び水冷式ショートパス冷却器に通じる加熱済みAlihn冷却器を備えた500mLの三口フラスコに、クエン酸トリエチル22.9グラム、1,2−プロパンジオール153.7グラム、及びp−トルエンスルホン酸1.5グラムを投入した。Alihn冷却器を、90℃の循環式バスからの液体を使用して加熱した。この混合物を125℃で19時間攪拌した。この反応混合物を酢酸ブチルで希釈し、希水酸化ナトリウムで1回洗浄し、次いで水で洗浄した。生成物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターによって揮発物を除去した。生成物は、ジ及びトリエステルの複雑な混合物であった。
【0084】
(実施例13〜14)
Aldrichから入手したO−アセチルクエン酸トリエチルを使用した。
【0085】
(実施例15)
クエン酸トリエチルとコハク酸オクタデシルの誘導体
オーバーヘッド攪拌棒、熱電対を有するクライゼンアダプタ、窒素導入部、及びショートパス冷却器を備えた100mLの三口フラスコに、クエン酸トリエチル25.9グラム及び無水コハク酸オクタデシル31.74グラム、トリエチルアミン13.1mL、及びジメチルアミノピリジン1.5グラムを投入した。この反応物を55℃で6.5時間攪拌した。反応混合物をキシレンで希釈し、希塩酸で1回抽出し、次いで、水で3回洗浄した。生成物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターによって揮発物を除去した。生成物は褐色の液体であった。
【0086】
(実施例16)
Acrosから入手したL−酒石酸ジメチルを使用した。
【0087】
(実施例17)
Acrosから入手したL−酒石酸(+)ジイソプロピルを使用した。
【0088】
(実施例18〜21)
Acrosから入手したL−酒石酸ジブチルを使用した。
【0089】
(実施例19)
ホウ酸化酒石酸ジブチル
オーバーヘッド攪拌棒、熱電対及び窒素導入部を有するクライゼンアダプタ、並びにショートパス冷却器を備えた50mLの三口フラスコに、酒石酸ジブチル23.93グラム及びホウ酸1.88グラム(.33モル相当)を投入した。この反応物を123℃で1時間攪拌した。反応混合物をデカンテーションして、薄い淡黄色の油22.2グラムを得た。
【0090】
(実施例20)
ホウ酸化酒石酸ジブチル
オーバーヘッド攪拌棒、熱電対及び窒素導入部を有するクライゼンアダプタ、並びにショートパス冷却器を備えた50mLの三口フラスコに、酒石酸ジブチル26.44グラム及びホウ酸4.15グラム(0.67モル等量)を投入した。この反応物を123℃で100分間攪拌した。得られた生成物をデカンテーションして、粘性のある琥珀色の液体11.71グラムを得た。
【0091】
(実施例22〜23)
リンゴ酸ジブチル
磁気攪拌棒、熱電対及び窒素導入部を有するクライゼンアダプタ、並びにショートパス冷却器を備えた100mLの三口フラスコに、リンゴ酸ジメチル4.45グラム、1−ブタノール40mL、及びp−トルエンスルホン酸0.51グラムを投入した。反応物を、窒素ガスでスイープしながら、115℃で3.7時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチルに溶解し、希重炭酸ナトリウム水溶液で抽出し、水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、淡黄色の液体6.8グラムを得た。
【0092】
(実施例24)
Aldrichから入手した(S)−(−)−酪酸メチルを使用した。
【0093】
(実施例25〜26)
Acrosから入手した酪酸n−ブチルを使用した。
【0094】
(実施例27〜28)
マンデル酸ペンチル
磁気攪拌棒、熱電対及び表面下への窒素導入部を有するクライゼンアダプタ、並びにショートパス冷却器を備えた100mLの三口フラスコに、マンデル酸エチル7.94グラム、1−ペンタノール40mL、及びp−トルエンスルホン酸0.75グラムを投入した。反応物を、窒素ガスでスイープしながら、120〜132℃で4.0時間攪拌した。反応混合物を酢酸ブチルに溶解し、希水酸化ナトリウム水溶液で抽出し、水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、淡黄色の液体8.3グラムを得た。
【0095】
(実施例29〜30)
Aldrichから入手したグリコール酸エチルを使用した。
【0096】
(実施例31〜32)
Aldrichから入手した2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸メチルを使用した。
【0097】
(実施例33〜34)
Aldrichから入手した3−ヒドロキシグルタル酸ジエチルを使用した。
【0098】
(実施例35〜36)
Aldrichから入手したサリチル酸メチルを使用した。
【0099】
(実施例37〜38)
5−ヒドロキシイソフタル酸ジペンチル
磁気攪拌棒、熱電対及び表面下への窒素導入部を有するクライゼンアダプタ、並びにショートパス冷却器を備えた100mLの三口フラスコに、5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル5.31グラム、1−ペンタノール44mL、及びp−トルエンスルホン酸0.53グラムを投入した。反応物を、窒素ガスでスイープしながら、129℃で6.3時間攪拌した。反応混合物をキシレンに溶解し、希重炭酸ナトリウム水溶液で抽出し、水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、淡黄色の液体7.3グラムを得た。
【0100】
(実施例39〜43)
Cibaから入手したIrgalubeTPPT(ホスホロチオ酸トリフェニル)を使用した。
【0101】
(実施例44〜48)
Cromptonから入手可能なWestonTLP(リン酸トリラウリル)を使用した。
【0102】
【表2−1】


【表2−2】


【表2−3】


【表2−4】

【0103】
本発明の根底にある諸原理から逸脱することなく加えることができる多くの変更及び改変に鑑み、本発明に与えられるべき保護の範囲を理解するには、添付の特許請求の範囲を参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)潤滑剤又は炭化水素燃料と、
(B)次の一般式のヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルの少なくとも一種と
を含む組成物。
【化1】


(式中、
は、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルケニル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、及びベンジルからなる群から選択され、
Xは、
【化2】


からなる群から選択され、
式中、
は、水素、CHCO、CH(OH)CO、アルキル、アリール、アルコキシアルキル、及びアルカリールからなる群から選択され、
は、水素、アルキル、及びCHCOからなる群から選択され、
ただし、
がCHCOである場合、Rは水素又はCHCOであり、
がCH(OH)COである場合、Rは水素であり、
がアルキル、アリール、アルコキシアルキル、又はアルカリールである場合、Rは水素又はアルキルであり、
は水素、アルキル、アリール、及びCHCOからなる群から選択され、
及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択され、
、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素、CO、アルキル、及び縮合アリールからなる群から選択される)
【請求項2】
前記ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルが、クエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、マンデル酸エステル、グリコール酸エステル、ヒドロキシプロピオン酸エステル、ヒドロキシグルタル酸エステル、サリチル酸エステル、それらのホウ酸化誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルが、クエン酸トリアルキル及びホウ酸化クン酸トリアルキルからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エステルが、クエン酸トリエチル、ホウ酸化クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
(A)潤滑剤又は炭化水素燃料と、
(B)次の一般式のヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルの少なくとも一種と
【化3】


(式中、
は、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルケニル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、及びベンジルからなる群から選択され、
Xは、
【化4】


からなる群から選択され、
式中、
は、水素、CHCO、CH(OH)CO、アルキル、アリール、アルコキシアルキル、及びアルカリールからなる群から選択され、
は、水素、アルキル、及びCHCOからなる群から選択され、
ただし、
がCHCOである場合、Rは水素又はCHCOであり、
がCH(OH)COである場合、Rは水素であり、
がアルキル、アリール、アルコキシアルキル、又はアルカリールである場合、Rは水素又はアルキルであり、
は水素、アルキル、アリール、及びCHCOからなる群から選択され、
及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択され、
、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素、CO、アルキル、及び縮合アリールからなる群から選択される)、
(C)少なくとも1種類のリン含有添加剤と
を含む組成物。
【請求項6】
前記リン含有添加剤が、次式(II)のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛である、請求項5に記載の組成物。
【化5】


(式中、nは2であり、R及びRは、それぞれ独立に選択されたヒドロカルビル基である)
【請求項7】
前記ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルが、クエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、マンデル酸エステル、グリコール酸エステル、ヒドロキシプロピオン酸エステル、ヒドロキシグルタル酸エステル、サリチル酸エステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記エステルが、クエン酸トリエチル、ホウ酸化クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルが、クエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、マンデル酸エステル、グリコール酸エステル、ヒドロキシプロピオン酸エステル、ヒドロキシグルタル酸エステル、サリチル酸エステル、それらのホウ酸化誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記エステルが、クエン酸トリエチル、ホウ酸化クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
潤滑剤及び炭化水素燃料の耐疲労、耐摩耗、及び極圧特性を改善するための方法であって、前記潤滑剤及び炭化水素燃料に、次の一般式のヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルの少なくとも一種を、機能特性を改善する量で添加することを含む方法。
【化6】


(式中、
は、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルケニル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、及びベンジルからなる群から選択され、
Xは、
【化7】


からなる群から選択され、
式中、
は、水素、CHCO、CH(OH)CO、アルキル、アリール、アルコキシアルキル、及びアルカリールからなる群から選択され、
は、水素、アルキル、及びCHCOからなる群から選択され、
ただし、
がCHCOである場合、Rは水素又はCHCOであり、
がCH(OH)COである場合、Rは水素であり、
がアルキル、アリール、アルコキシアルキル、又はアルカリールである場合、Rは水素又はアルキルであり、
は水素、アルキル、アリール、及びCHCOからなる群から選択され、
及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択され、
、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素、CO、アルキル、及び縮合アリールからなる群から選択される)
【請求項12】
前記ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルが、クエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、マンデル酸エステル、グリコール酸エステル、ヒドロキシプロピオン酸エステル、ヒドロキシグルタル酸エステル、サリチル酸エステル、それらのホウ酸化誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記エステルが、クエン酸トリエチル、ホウ酸化クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
潤滑剤及び炭化水素燃料の耐疲労、耐摩耗、及び極圧特性を改善する方法であって、
前記潤滑剤及び炭化水素燃料に、
(A)次の一般式のヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルの少なくとも一種
【化8】


(式中、
は、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルキル、C〜C18の直鎖又は分岐鎖のアルケニル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、及びベンジルからなる群から選択され、
Xは、
【化9】


からなる群から選択され、
式中、
は、水素、CHCO、CH(OH)CO、アルキル、アリール、アルコキシアルキル、及びアルカリールからなる群から選択され、
は、水素、アルキル、及びCHCOからなる群から選択され、
ただし、
がCHCOである場合、Rは水素又はCHCOであり、
がCH(OH)COである場合、Rは水素であり、
がアルキル、アリール、アルコキシアルキル、又はアルカリールである場合、Rは水素又はアルキルであり、
は水素、アルキル、アリール、及びCHCOからなる群から選択され、
及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択され、
、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素、CO、アルキル、及び縮合アリールからなる群から選択される)と、
(B)少なくとも1種類のリン含有添加剤と
を、機能特性を改善する量で添加することを含む方法。
【請求項15】
前記リン含有添加剤が、次式のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛である、請求項14に記載の方法。
【化10】


(式中、nは2であり、R及びRは、それぞれ独立に選択されたヒドロカルビル基である)
【請求項16】
前記ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルが、クエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、マンデル酸エステル、グリコール酸エステル、ヒドロキシプロピオン酸エステル、ヒドロキシグルタル酸エステル、サリチル酸エステル、それらのホウ酸化誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記エステルが、クエン酸トリエチル、ホウ酸化クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドロキシカルボン酸エステル又はヒドロキシポリカルボン酸エステルが、クエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、マンデル酸エステル、グリコール酸エステル、ヒドロキシプロピオン酸エステル、ヒドロキシグルタル酸エステル、サリチル酸エステル、それらのホウ酸化誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記エステルが、クエン酸トリエチル、ホウ酸化クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。


【公表番号】特表2007−528440(P2007−528440A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503072(P2007−503072)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/008273
【国際公開番号】WO2005/087904
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(505365356)ケムチュア コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】