説明

ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有日焼け止め組成物及び使用方法

無機金属酸化物日焼け止め粒子及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んでなる日焼け止め組成物並びに日焼け止め組成物中に1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを含ませることを含んでなる無機金属酸化物日焼け止め粒子を含む日焼け止め組成物のSPF(紫外線防御指数)の増強方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年10月22日に出願された米国仮特許出願第61/107,507号の利益を請求する。
【0002】
分野
本発明は、日焼け止め(sunscreen)組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
サンケア市場における有機日焼け止め剤と無機日焼け止め剤とのバランスは、規制上の変化及び消費者の需要に呼応して、無機日焼け止め剤に傾きつつある。現在、多くの国は、定量化可能なUVA保護を日焼け止め剤ラベル上に記載することを要求しており、酸化亜鉛及び二酸化チタンは、UVA保護を提示する数少ないフィルターのうちの2つとなっている。しかし、高濃度の無機日焼け止め剤は高価で且つ/又は皮膚への適用時に不所望な白色外観をもたらし得るため、無機日焼け止め剤のみで今日のUVA及びUVBラベルの要求を達成することは困難と考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、より低い無機濃度で、追加の有機日焼け止め剤を必要とせずに、高いSPF(紫外線防御指数(sun protection factor))及び高いUVA保護を実現するのに役立つ日焼け止め剤用ブースターへのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、無機金属酸化物日焼け止め粒子及び、1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んでなる日焼け止め組成物を提供する。
【0006】
別の態様において、本発明は、日焼け止め組成物中に1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを含ませることを含んでなる、無機金属酸化物日焼け止め粒子を含む日焼け止め組成物のSPFの増強方法を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを選択し、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースを日焼け止め組成物中に組み入れることを含んでなる、無機金属酸化物日焼け止め粒子を含む日焼け止め組成物のSPFの増強方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一態様において、本発明は、無機金属酸化物日焼け止め粒子及び、1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んでなる日焼け止め組成物を提供する。
【0009】
好ましくは、無機金属酸化物日焼け止め粒子は酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO2)又はそれらの混合物から選択される。一態様において、無機金属酸化物日焼け止め粒子は顔料級酸化亜鉛又は顔料級二酸化チタンである。
【0010】
一態様において、無機金属酸化物日焼け止め粒子は透明な酸化亜鉛又は透明な二酸化チタンである。日焼け止め剤に使用されているほとんどの無機金属酸化物日焼け止め粒子は光散乱によってもたらされる美容上不所望な白色外観を生じる。従って、本明細書中で使用する用語「透明な無機金属酸化物日焼け止め粒子」は特別な意味を有し、適用時に無機金属酸化物組成物を明澄又は透明とする、種々の加工条件によって製造された無機金属酸化物日焼け止め粒子を指す。即ち、これらの特別に加工された無機金属酸化物組成物は、適用時に白く見えることがないため、「透明」と称する。
【0011】
透明な酸化亜鉛の例は、例えば米国特許第5,223,250号、第5,372,805号、第5,573,753号、第5,587,148号及び第5,876,688号に開示されている。透明な酸化亜鉛の一例は、BASF Corporation(ドイツ)から商品名Z−COTEとして市販されている。透明な酸化亜鉛の別の例は、Antaria Limited(オーストラリア)から商品名ZINCLEARとして市販されている。透明な酸化亜鉛の別の例は、Actifirm(USA)から商品名Z−CLEARとして市販されている。
【0012】
透明な二酸化チタンの例は、例えば米国特許第5,573,753号、第5,733,895号及び第7,390,355号に開示されている。透明な二酸化チタンの例は石原産業株式会社(日本)から商品名TIPAQUE及びTTO−51(A)として市販されている。透明な二酸化チタンの別の例は、BASF Corporation(ドイツ)から商品名T−COTEとして市販されている。透明な二酸化チタンの別の例は、三好化成株式会社(日本)から商品名UFTRとして市販されている。透明な二酸化チタンの別の例は、Uniqema(英国)から商品名SOLAVEIL CLARUSとして市販されている。
【0013】
一態様において、透明な無機金属酸化物日焼け止め粒子は透明な酸化亜鉛、透明な二酸化チタン又はそれらの混合物から選択される。一態様において、透明な酸化亜鉛日焼け止め粒子は、組成物の約0.01重量%〜約99重量%、好ましくは約0.1重量%〜約50重量%、より好ましくは1重量%〜約25重量%の量で存在する。一態様において、透明な二酸化チタン日焼け止め粒子は、組成物の約0.01重量%〜約99重量%、好ましくは約0.1重量%〜約50重量%、より好ましくは1重量%〜約25重量%の量で存在する。
【0014】
ヒドロキシルプロピルメチルセルロースは、一般に、商品名METHOCEL E、F、J及びK(The Dow Chemical Company)として入手可能である。セルロースのポリマー主鎖はアンヒドログルコース単位の反復構造である。苛性アルカリ溶液、続いて塩化メチル及びプロピレオキシドでのセルロース繊維の処理により、メトキシ基及びヒドロキシプロピル基で置換されたセルロースエーテルが得られる。用語「DS」はアンヒドログルコース単位当たりのメトキシル置換度を指す。用語「MS」はアンヒドログルコース単位当たりのヒドロキシプロピル置換度を指す。各グレードは、ポリマー主鎖のメトキシ及びヒドロキシプロピル置換によって差別化される。
【0015】
本発明において有用なヒドロキシルプロピルメチルセルロースは1.7未満のDSメトキシルを有する。好ましくは、このDSは約1.6未満、好ましくは約1.5未満、好ましくは約1.4未満である。1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシルプロピルメチルセルロースは、一般に、The Dow Chemical Companyから商品名METHOCEL J及びKとして入手可能である。
【0016】
一態様において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、20℃において、水中濃度2%で約1cps〜約100,000cps、好ましくは約5cps〜約30cps、最も好ましくは約15cpsの粘度を有する。
【0017】
一態様において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、組成物の約0.01重量%
〜約30重量%、好ましくは約0.05重量%〜約15重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0018】
本発明の組成物は更に、少なくとも1種の有機サンケア活性物質(organic suncare actives)、化粧用として許容され得る皮膚軟化剤(emollient)、モイスチャライザー、コンディショナー、油、沈殿防止剤、不透明剤/パール化剤(pearlizer)、界面活性剤、乳化剤、保存剤、レオロジー改質剤、着色剤、pH調整剤、噴射剤、還元剤、酸化防止剤、香料、発泡剤若しくは脱泡剤、タンニング剤(tanning agent)、昆虫忌避剤又は殺生剤を含む、日焼け止め製剤の業界で知られている他の成分を組み入れることができる。好ましくは、本発明の日焼け止め組成物は、保湿剤(humectant)、界面活性剤、皮膚軟化剤及び保存剤の少なくとも1種を含む。
【0019】
別の態様において、本発明は、日焼け止め組成物中に1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを組み入れることを含んでなる、無機金属酸化物日焼け止め粒子を含む日焼け止め組成物のSPFを増強する方法を提供する。
【0020】
別の態様において、本発明は、1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを選択し、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースを日焼け止め組成物中に組み入れることを含んでなる、無機金属酸化物日焼け止め粒子を含む日焼け止め組成物のSPFを増強する方法を提供する。
【実施例】
【0021】
以下の実施例は、説明のみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。特に断らない限り、全ての百分率は重量基準である。
【0022】
例1
例示の日焼け止め組成物は表Iに列挙した成分を含む。
【0023】
【表1】

【0024】
バッチ1においては、約75℃の水にMETHOCEL K4Mをゆっくりと添加することによって、4%の原液を調製する。バッチ2に関しては、撹拌しながら、METHOCEL J5MSと冷水とを混合し、NaOHの添加によってpHを上昇させることによって、4%原液を調製する。METHOCEL原液を調製する原液の準備以外は、バッチ1及び2の準備は同じである。METHOCELを均一に混合後、分散液を室温まで冷却させる。追加の水、プロピレングリコール、メチルグルセス(gluceth)及びOPTIMAを室温で合し、次いで4%METHOCEL原液を添加して、第1の混合物を形成する。この混合物を次に約75℃まで加熱し、固体成分を全て溶解させる。
【0025】
PEG40ステアレート、グリセリルステアレート、セテアリルアルコール及びセテアレス−20、ジメチコン及び透明な酸化亜鉛を合して、第2の混合物を形成する。この混合物を次に約75℃まで加熱して、固体成分を全て溶解させる。
【0026】
第1の混合物と第2の混合物とを、いずれも比較的熱い(即ち約75℃)うちに合し、Silverson IKAホモジナイザー(Homogenizer)を用いて混合する。約7.5〜約8のpHに達するまで、クエン酸を滴加する。
【0027】
例2(比較例)
比較の日焼け止め組成物は表IIに列挙した成分を含む。
【0028】
【表2】

【0029】
組成物は実質的に例1に関して前述したようにして調製する。METHOCEL E4M及びMETHOCEL F4Mはいずれも、例1のバッチ1に記載した熱水法を用いて調製する。
【0030】
例3
例1及び2のプロトコールに実質的に従って調製した日焼け止め組成物を準備し、それらのSPF値を測定し、表IIIに列挙した。
【0031】
【表3】

【0032】
SPFは以下のプロトコールに実質的に従ってインビトロ法を用いて測定した。
【0033】
最初に、粗化PMMA基材(SCHONBERG GmbH & Co.KG,Hamburg/Germanyから購入)の重量を測定する。次いで、被検バッチを基材上に付着させた後、すぐに7ミクロンのドローダウンバー(draw down bar)で均して、薄い均一層を得る。この層を約20分間乾燥させ、基材+乾燥均一層の重量を測定する。
【0034】
乾燥均一層のUV吸収を、層上の複数の点でLABSPHERE 1000Sスペクトロメーターを用いて測定する。
【0035】
METTLER LP16固形分分析装置を用いて、層のパーセント固形分を測定する。乾燥フィルムの重量及び層の固形分を用いて、付着直後の最初の湿潤層の重量、ひいては密度を算出できる。このデータを用いて、下記数式:
【0036】
【数1】

【0037】
[式中、E(λ)=標準太陽光スペクトルの分光放射照度;S(λ)=波長λにおける紅斑作用スペクトル;及びA(λ)=波長λにおける補正分光吸光度(データを外挿して、湿潤層密度2.0mg/cm2(付着直後の最初の湿潤層を用いる)における吸光度の値を確認するために、補正因子を算出する)]
によって、SPF値を算出できる。
【0038】
表IIIの結果は、各バッチ当たり少なくとも27個の測定値の平均値である。本発明は、METHOCEL E4M(比較バッチB)に比較して、14%及び19%のSPFの増強をもたらす。
【0039】
例4
例示の日焼け止め組成物は、表IVに列挙した成分を含む。
【0040】
【表4】

【0041】
組成物は、実質的に例1に関して前述したようにして調製する。
【0042】
例5
例4のプロトコールに実質的に従って調製した日焼け止め組成物を準備し、それらのSPF値を測定し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含まない組成物からのパーセントSPF改善率として表Vに列挙した。
【0043】
【表5】

【0044】
SPFは、以下のプロトコールに実質的に従ってインビボ法を用いて測定した。
被検者の背中の一部(日焼け止め剤なし)を、太陽シミュレーター、通常は太陽様スペクトル(UVB:290〜320ナノメーター及びUVA:320〜400ナノメーター)を再現するフィルターを装着した150ワットキセノンアーク(Xenon Arc)BergerソーラーUVシュミレーター(Solar Ultraviolet Simulator)(Solar Light Co.,Philadelphia,PA)に、時間間隔を次第に増加させながら暴露する。被検者への暴露は、熟練した観察者から見て皮膚がわずかにピンク色となるまで行う。次いで、暴露されなかった被検者の背中の隣接部位に、2mg/cm2の試験日焼け止め剤をむらなく適用し、約15分乾燥させる。次いで、前記観察者から見て皮膚がわずかにピンク色となるまで、この部位を太陽シミュレーターに、時間間隔を次第に増加させながら暴露する。保護された皮膚及び保護されなかった皮膚について、ピンク色が得られるまでの暴露時間(最小紅斑量(MED))を、下記数式
【0045】
【数2】

【0046】
を用いて比率で表して、インビボSPFを得る。
【0047】
本発明は、本明細書中に具体的に開示及び例示した態様に限定されないことを理解されたい。本発明の種々の修正形態は、当業者には明らかであろう。このような変更形態及び修正形態は、添付した「特許請求の範囲」から逸脱することなく、実施可能である。更に、各列挙範囲は、範囲の全ての組合せ及び下位の組合せ並びにその範囲に含まれる具体的な数値も含む。また、本明細書中に引用又は記載した各特許、特許出願及び刊行物の開示は、参照することによってその全体を本明細書中に組み入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機金属酸化物日焼け止め粒子及び
1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロース
を含んでなる日焼け止め組成物。
【請求項2】
前記無機金属酸化物日焼け止め粒子が、酸化亜鉛、二酸化チタン又はそれらの混合物から選択される請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項3】
前記無機金属酸化物日焼け止め粒子が透明な酸化亜鉛又は透明な二酸化チタンである請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項4】
前記の透明な酸化亜鉛日焼け止め粒子が前記組成物の約0.01重量%〜約99重量%、好ましくは約0.1重量%〜約50重量%、より好ましくは1重量%〜約25重量%の量で存在する請求項3に記載の日焼け止め組成物。
【請求項5】
前記の透明な二酸化チタン日焼け止め粒子が前記組成物の約0.01重量%〜約99重量%、好ましくは約0.1重量%〜約50重量%、より好ましくは1重量%〜約25重量%の量で存在する、請求項3に記載の日焼け止め組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが前記組成物の約0.01重量%〜約30重量%、好ましくは約0.05重量%〜約15重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約5重量%の量で存在する請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項7】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが約1.6未満、好ましくは約1.5未満、好ましくは約1.4未満のDSメトキシルを有する請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項8】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、水中2%で約1cps〜約100,000cps、好ましくは約15cpsの粘度を有する請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項9】
保湿剤を更に含む請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項10】
界面活性剤を更に含む請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項11】
皮膚軟化剤を更に含む請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項12】
保存剤を更に含む請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の有機サンケア活性物質を更に含む請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項14】
a)1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを日焼け止め組成物に含ませるか、又は
b)1.7未満のDSメトキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを選択し、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースを日焼け止め組成物に組み入れる
ことを含んでなる無機金属酸化物日焼け止め粒子を含む日焼け止め組成物のSPFの増強方法。

【公表番号】特表2012−506438(P2012−506438A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533263(P2011−533263)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/061250
【国際公開番号】WO2010/048128
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】