説明

ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマー

イソシアネート反応性の出発物質と少なくとも1種のイソシアネート含有の出発物質の化学反応生成物を含むヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーにおいて、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート反応性の出発物質が、2より大きい官能性および3000g/mol以上の数平均モル質量を有するポリプロピレングリコールと、2以下の官能性および1000g/mol以下の数平均モル質量を有するポリプロピレングリコールと、2以下の官能性および500g/mol以下の数平均モル質量を有する鎖延長剤とを含むこと、ならびにヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート含有の出発物質が、脂肪族または脂環式のジイソシアネートを含むことを特徴とするヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温では固体で、溶融可能で、多くの溶剤中に可溶で、ヒドロキシル官能化されており、長鎖分枝部位を含み、かつ感圧接着用途に適した粘弾性特性を有するポリウレタンプレポリマーならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着用途に適した粘弾性特性を有する物質は、機械的変形の際に粘性に流動し、かつ弾性復元力を生成することを特色とする。両方のプロセスは、それぞれの割合に関し、考察すべき物質の正確な組成、構造、および架橋度にも、変形の速度および継続時間にも、ならびに温度にも依存して、特定の相互比率をなしている。
【0003】
割合に応じた粘性流動は、付着性を達成するために必要である。比較的大きな可動性を有する巨大分子によってもたらされる粘性部分だけが、貼り付くべき土台上への良好な濡れおよび良好な流動を可能にする。高い割合の粘性流動は、高い自己接着性(感圧接着性またはタックとも言う)を、したがってしばしば高い接着力をもたらす。強く架橋した系、結晶性ポリマー、またはガラス状に凝固したポリマーは、流動可能な部分の欠如により、一般的には自己接着性でない。
【0004】
割合に応じた弾性復元力は、凝集性を達成するために必要である。弾性復元力は、例えば非常に長鎖で強く絡んだ巨大分子によって、ならびに物理的または化学的に架橋された巨大分子によってもたらされ、接着結合に作用する力の伝達を可能にする。弾性復元力は、接着結合に影響を及ぼす例えば継続的なせん断荷重の形の継続荷重に、接着結合が十分な程度で比較的長期にわたって持ちこたえ得ることをもたらす。
【0005】
弾性割合および粘性割合の程度ならびに割合の相互比率を比較的正確に説明および定量化するため、動的機械分析(DMA)によって確定可能な貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、および損失係数tanδ(タンデルタ)と呼ばれる比率G”/G’の値を考慮することができる。G’は物質の弾性割合に関する尺度であり、G”は粘性割合に関する尺度である。両方の値は変形周波数および温度に依存する。
【0006】
この値はレオメータを用いて確定することができる。その際には、調査すべき材料を、例えばプレート・プレート構成において正弦波状に振動するせん断負荷に曝す。せん断応力制御型機器の場合、時間の関数としての変形、およびせん断応力の付与に対するこの変形の時間的ずれが測定される。この時間的ずれは位相角δと呼ばれる。
【0007】
貯蔵弾性率G’は以下のように定義され、すなわちG’=τ/γ・cos(δ)(τ=せん断応力、γ=変形、δ=位相角=せん断応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)。損失弾性率G”の定義はG”=τ/γ・sin(δ)(τ=せん断応力、γ=変形、δ=位相角=せん断応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)。
【0008】
物質はその粘弾性特性に関し、室温で10〜10rad/sec、理想的には10−1〜10rad/secの周波数範囲において、G’が10〜10Paの範囲内にあり、かつG”も同様にこの範囲内にある場合に、一般的に感圧接着用途に適していると見なされる。G’およびG”から成るマトリクス相関図(G”に依存してG’を配置)における、感圧接着用途のための粘弾性窓または粘弾性基準に基づく感圧接着材料窓とも呼び得る範囲内にはさらにまた、それぞれ属する物質の期待される感圧接着特性をより詳しく特徴づける様々なセクタおよび正方形が存在する。例えばこの窓内で高いG”および低いG’を有する物質は、一般的には高い接着力および低いせん断強度を特色とし、その一方で高いG”および高いG’を有する物質は、接着力もせん断強度も高いことを特色とする。
【0009】
レオロジーと感圧接着性の関係についての知識は、従来技術および例えばSatas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」、第3版、(1999)、153〜203頁(非特許文献1)に包括的に記載されている。
【0010】
物質の粘弾性特性を特徴づけるための多くの代替的可能性の1つが、引張伸長試験において引張伸び特性および緩和挙動を決定することである。引張伸長試験では、とりわけ引張強度およびこの時の伸びが決定される。緩和挙動も同様に引張伸長試験で確定することができる。これに関しては、特定の伸びが達成された瞬間の応力を測定する。応力は、測定長さ内の初期断面積に対する被検体での引張力として定義されている。この伸びをその後垂直に維持する。特定の時間の後に応力を新たに決定する。応力の減少パーセントが緩和である。
【0011】
接着テープまたは他の自己接着性物品を考察する場合、感圧接着用途に適した粘弾性特性は、何よりもまず自己接着性物品の感圧接着層のために重要である。しかし感圧接着用途に適した粘弾性特性は、接着テープの他の層にとっても意味を有し得る。つまり接着テープの感圧接着特性は、感圧接着層の粘弾性特性だけでなく、さらなる層の対応する特性によっても、ならびに層厚によっても影響を及ぼされる。感圧接着用途のための粘弾性窓の原理が、接着テープのほぼすべての層に波及するようなものである。こうして感圧接着用途に適した粘弾性特性を有する層は、しばしば支持層としても有利に使用可能である。接着テープの機能層のためにさえ、感圧接着用途に適した粘弾性特性が有利であり得る。機能層とは、幾つかだけ例を挙げるなら、例えばプライマ層であることができ、または特別な光学的特性、電気的特性、もしくは熱伝導特性を有する層であってもよい。
【0012】
連続コーティングプロセスにおいて自己接着性物品を製造することに関しては、多種多様な技術が知られている。基本的に溶剤ベースの技術と溶剤なしの技術とを区別することができる。
【0013】
溶剤ベースの系では、感圧接着性ポリマーまたは感圧接着性混合物質が、通常はコーティング前に既に溶液状態で未架橋で存在している。場合によっては、支持体または補助支持体上にコーティングする直前に化学的架橋剤が混入される。コーティングおよび溶剤蒸発の後、感圧接着性ポリマーまたは感圧接着性混合物質は、支持体または補助支持体上でフィルムまたはフィルム状の層として存在し、かつ架橋プロセスが既に終了しているか否かに関係なく巻き付けることができる。架橋は、巻き付け可能であるための基本的前提である感圧接着性ポリマーまたは感圧接着性混合物質の固体的な性質に影響を及ぼすが、一般的に目立つ程度ではない。
【0014】
溶剤ベースの技術は、特に経済的に容認できる速度でコーティングすべき場合には、厚い層の製造に適していないという基本的な欠点を有している。約100〜150μm以降の層厚で既に、蒸発する溶剤による目に見える小泡の発生が増加し、これにより明らかに品質が低下し、したがってこの場合、接着テープにおける層としての使用は問題外である。比較的薄い層の製造でも、溶剤を蒸発させる必要性のため、コーティング速度がかなり制限される。これに加え、溶剤ベースのコーティングプロセスは、溶剤の回収または焼却の必要性により、かなりのプロセス費用を生じさせる。
【0015】
溶剤なしの系は、溶剤なしでも室温で液状、シロップ状、またはペースト状である反応系と、感圧接着性ポリマーまたは感圧接着性混合物質が室温では固体であり、熱を供給すると溶融可能なホットメルト系とに区分することができる。
【0016】
室温で液状、シロップ状、またはペースト状の反応系に関する典型的な例は、一般に知られている二成分のポリウレタン、エポキシド、またはシリコーンである。このような反応系を用いると薄い層も厚い層も製造することができ、これは溶剤ベースの系に比べて大きな利点である。
【0017】
しかし室温で液状、シロップ状、またはペースト状の反応系は、接着テープの作製に関し、特に大きな層厚の場合に、この反応系が液状、シロップ状、またはペースト状の状態では巻き付けることができない、または少なくとも一定の層厚では巻き付けることができないという欠点を有している。一定の層厚での巻き付けは、固体のポリマーフィルムでしかできない。溶剤なしの室温で液状の反応系の固化は、これに先立つ化学反応と連関しており、この反応は一般的に成分の混合後に始まる。反応の進行にはある程度の時間が必要である。それぞれの化学反応の十分に高い反応率によってフィルムが固化した時に初めて、支持体または補助支持体上にコーティングしたフィルムを巻き付けることができる。したがってこのような系は、コーティング速度において制限されている。
【0018】
EP1469024A2(特許文献1)、EP1469055B1(特許文献2)、EP1849811A1(特許文献3)、またはWO2008/009542(特許文献4)に記載されたポリウレタンベースの感圧接着材料は、反応系のこのカテゴリーに属する。すなわちこれらの感圧接着材料は、制限された、したがって通常はあまり経済的でないコーティング速度でしか、接着テープの構成要素としてのフィルムおよび/または感圧接着層として製造することができない。
【0019】
EP0801121B1(特許文献5)およびEP0894841B1(特許文献6)に記載されたポリウレタンベースの自己接着テープの支持体も、上述の感圧接着材料のように、支持体が、液状またはペースト状の成分のコーティング中に製造されるという欠点を有している。すなわちここでも、この支持体を巻き付け得るまで反応が進行するのを待たなければならず、これはコーティング速度、したがって製造の経済性を制限する。
【0020】
同じ欠点が、EP1095993B1(特許文献7)に記載された二成分ポリウレタンから成る自己接着性物品の連続的製造方法に基づいて製造される物質に当てはまる。
【0021】
シロップ状の成分をベースとする接着テープまたは接着テープ層は、例えばEP0259094B1(特許文献8)またはEP0305161B1(特許文献9)に記載されており、これらの文献ではポリマー形成または架橋が光重合によって達成される。
【0022】
この反応系も、そのシロップ状の状態では巻き付けることができない、または少なくとも一定の層厚では巻き付けることができないという欠点を有している。ここでも巻き付け可能であることは、ある程度の時間を要する反応の進行と結びついている。したがってこのような系も、コーティング速度において制限されている。
【0023】
ポリマー形成および架橋が外部からの例えばUV放射またはESH放射によって開始される液状、シロップ状、またはペースト状の反応系は、一般的には放射がフィルム厚全体にわたって、ポリマー形成に関与するすべての分子に均一に達する場合にしか、一貫して均質な特性を有するポリマー構造がもたらされないという追加的な欠点を有している。特に層厚が大きい場合または充填物質で満たされた系の場合には、一貫して均質な特性を有するポリマー構造はもたらされず、したがってこのようなフィルムは、不均質に架橋したポリマー骨格を有している。
【0024】
液状、シロップ状、またはペースト状の反応系に比べてホットメルト系は、特に押出成形プロセスにおいて加工する場合には、ホットメルト系を用いて高いコーティング速度を達成できるという利点を有する。押出成形プロセスでは、室温では固体の溶融可能なポリマー(ホットメルト)を溶融し、比較的高温のこの状態でフィルムに成形し、一般的には支持体または補助支持体上にコーティングする。冷却、したがって固化の後、すぐに巻き付けることができる。巻き付け可能であることが、それに先立つ化学反応とは結びついていない。フィルムの冷却プロセスは、普通は比較的少ない時間しか必要としない。液状、シロップ状、またはペースト状の反応系によるように、ホットメルト系によっても、層を原理的な厚さ制限なしで製造することができる。接着テープ領域では、とりわけスチレンブロックコポリマー含有の例えばDE10003318A1(特許文献10)またはDE10252088A1(特許文献11)に記載された感圧接着材料が、このやり方でコーティングされている。
【0025】
しかしホットメルト系については、高い加工温度、かつそれに関連して熱架橋法が制限されることから、これに基づき化学線放射を用いて層を架橋する際、放射の侵入深度の厚さ制限および侵入強度の厚さ依存の故に、特に厚い層に関しては、層全体にわたる均質な架橋が不可能であるという問題がいつものように生じる。
【0026】
熱可塑性ポリウレタンも、ホットメルトプロセスにおいて加工することができる。例えばDE2059570A(特許文献12)には、熱可塑性無孔質ポリウレタンのための連続的な単一工程での製造方法が記載されている。
【0027】
まずは中間段階として製造したOH末端をもつ直鎖プレポリマーから、熱可塑性に加工可能なポリウレタンを製造することは例えばDE102005039933A(特許文献13)に記載されている。DE2248382C2(特許文献14)にも、多段階プロセスにおいてOH末端をもつプレポリマーから熱可塑性ポリウレタンを製造することが記載されている。挙げた文献では2より大きい官能性を有するポリオールは用いられていない。これら文献の教示に従って製造可能なポリウレタンの感圧接着用途に適した粘弾性特性に関する示唆は示されていない。US2007/0049719A1(特許文献15)にも、ヒドロキシル末端をもつポリウレタンプレポリマーが記載されている。そこでも、分枝部位のない純粋な二官能性の出発物質から形成された直鎖プレポリマーしか論じられていない。感圧接着用途に適した粘弾性特性に関する示唆はそこでも示されていない。
【0028】
ヒドロキシル末端をもつポリウレタンプレポリマーは、同様にUS2007/0129456A1(特許文献16)にも記載されている。このプレポリマーは、合成皮革の製造に用いられ、室温では液状または半固体である。このプレポリマーは、結晶性ポリエーテルポリオールおよび結晶性ポリエステルポリオールを含んでいる。感圧接着用途に適した粘弾性特性に関する示唆は示されていない。このプレポリマーの、接着テープロールとして巻き付けるのに十分に固体的な性質に関する示唆もない。
【0029】
熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性に加工可能なポリマーをベースとするホットメルトコーティングプロセスは、確かに高いコーティング速度が達成可能であり、かつ厚い層の製造が可能であるという利点を有するが、未架橋の、または少なくとも十分には架橋されていないポリマーフィルムが生成され、したがってこのフィルムは、特に比較的高い温度では、継続的負荷に耐える高い能力が重要な接着テープ層には適していない。
【0030】
トリオールを一緒に使用することでエラストマーの架橋した性質が生じ得るであろうポリウレタンエラストマーの押出成形が、例えばDE1964834A(特許文献17)およびDE2302564C3(特許文献18)から知られている。しかしこれらの文献では、液状出発物質の反応が記載されており、したがってこのようなエラストマーを巻き付ける前に、反応の進行に依存する固化を待たなければならないという欠点が存在する。これらの文献に記載の方法に従って製造した製品の感圧接着用途に適した粘弾性特性に関する示唆は示されていない。これに加え、これらの文献に記載の方法では、ヒドロキシル末端をもつプレポリマーを使用するのではなく、イソシアネート末端をもつプレポリマーしか使用しない。これらの文献で使用されたトリオールの分子量は500を上限としている。
【0031】
EP135111B1(特許文献19)には、分枝状の、ただし熱可塑性に加工可能な、したがって架橋されていないポリウレタンの多段階方法での製造が記載されている。第1の中間段階Aとして、OH末端をもつプレポリマーが提案されており、このプレポリマーは、基本的に直鎖で比較的高分子のポリヒドロキシル化合物から形成されている。このポリヒドロキシル化合物の分子量は550を下限としている。感圧接着用途に適した粘弾性特性またはOH末端をもつプレポリマーのホットメルト特性に関する示唆は示されていない。
【0032】
JP2006/182795(特許文献20)には、ポリエーテルジオールおよびポリエーテルトリオールから構成されたポリエーテルポリオール混合物と、ポリイソシアネートとから成るヒドロキシル官能化されたポリウレタンプレポリマーが記載されている。ポリオール混合物の平均的な官能性は2.2〜3.4である。さらに、このプレポリマーと多官能性のイソシアネートの、接着フィルムへの反応が記載されている。ただしJP2006/182795(特許文献20)でのヒドロキシル官能化されたポリウレタンプレポリマーはホットメルトではない。JP2006/182795(特許文献20)では、ジオールの分子量は700を下限としている。感圧接着用途に適した粘弾性特性に関する示唆は示されていない。
【0033】
架橋したポリマーフィルムが生じるホットメルトコーティングプロセスは、例えばDE102004044086A1(特許文献21)から知られている。そこには、アクリレート溶融感圧接着剤をベースとする接着テープの製造方法が記載されており、この接着剤には、押出機内での溶融状態で、熱架橋剤が添加される。
【0034】
そこに記載された方法の難点は、アクリレート溶融感圧接着剤を、まずは溶剤中で重合しなければならず、続いてこの溶剤を濃縮押出機によって再び除去しなければならないことである。さらなる欠点は、ポリアクリレートの比較的高いモル質量である(重量平均M:300000〜1500000g/mol)。高いモル質量は、高い加工温度、したがって高いプロセス費用を必要とし、そのうえ押出成形プロセスの際に、縦方向と横方向でポリマー特性が同じにならない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】EP1469024A2
【特許文献2】EP1469055B1
【特許文献3】EP1849811A1
【特許文献4】WO2008/009542
【特許文献5】EP0801121B1
【特許文献6】EP0894841B1
【特許文献7】EP1095993B1
【特許文献8】EP0259094B1
【特許文献9】EP0305161B1
【特許文献10】DE10003318A1
【特許文献11】DE10252088A1
【特許文献12】DE2059570A
【特許文献13】DE102005039933A
【特許文献14】DE2248382C2
【特許文献15】US2007/0049719A1
【特許文献16】US2007/0129456A1
【特許文献17】DE1964834A
【特許文献18】DE2302564C3
【特許文献19】EP135111B1
【特許文献20】JP2006/182795
【特許文献21】DE102004044086A1
【特許文献22】US5,712,216
【特許文献23】US5,693,584
【特許文献24】WO99/56874
【特許文献25】WO99/51661
【特許文献26】WO99/59719
【特許文献27】WO99/64152
【特許文献28】US5,952,261
【特許文献29】WO99/64493
【特許文献30】WO99/51657
【非特許文献】
【0036】
【非特許文献1】Satas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」、第3版、(1999)、153〜203頁
【非特許文献2】「Kunststoff-Handbuch, Polyurethane」、Guenter Oertel編、第3版、88〜103、(1993)
【非特許文献3】GaechterおよびMueller、「Taschenbuch der Kunststoff-Additive」、Muenchen 1979
【非特許文献4】Kirk-Othmer (3.) 23、615〜627頁
【非特許文献5】「Encycl. Polym. Sci. Technol.」、14、125〜148頁
【非特許文献6】Ullmann (4.) 8、21頁; 15、529頁、676頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明の課題は、従来技術の欠点を回避する、または少なくとも減少させる物質または物質組成を提供することである。
【0038】
特に有利には、このような物質または物質組成は、以下の基準の1つ、有利には複数、好ましくはすべてを満たすべきであろう。
【0039】
この物質または物質組成は、感圧接着用途に適した粘弾性特性を有すべきであり、つまり、プレート/プレート構成におけるせん断応力制御型レオメータを用いた動的機械分析(DMA)により、室温で10〜10rad/sec、好ましくは10−1〜10rad/secの変形周波数範囲において確定される物質または物質組成の貯蔵弾性率G’も損失弾性率G”も、10Pa〜10Paの範囲内にあるべきである。この物質または物質組成は、化学的に架橋可能であるべきであり、特に架橋後も、上述の基準に基づく感圧接着用途に適した粘弾性特性を有すべきである。この物質または物質組成は、その粘弾性特性に関し、幅広く多種多様な変化の可能性を許容すべきであり、これにより感圧接着特性を幅広く多種多様に調整することができる。この物質または物質組成は、架橋後に、接着テープまたは他の自己接着性物品における支持層、感圧接着層としての使用に、または機能層としての使用にも適しているべきである。
【0040】
この物質または物質組成はホットメルトであるべきであり、つまり室温では固体であり、熱供給により溶融可能であるべきである。
【0041】
この物質または物質組成は、選択的に、連続的なコーティングおよび架橋プロセス、例えば押出成形方法において、または不連続的な方法において、コーティングおよび架橋可能であるべきである。
【0042】
この物質または物質組成は、従来技術の欠点を有さない、または少なくとも同程度には有さない性質をもつべきである。特に、この物質または物質組成は溶剤なしで製造および加工可能であるべきである。しかし必要な場合には、溶剤中でも製造および加工可能であるべきである。この物質または物質組成から押出成形プロセスにおいて生成され、架橋されたポリマーフィルムは、縦方向と横方向で同じ特性を有すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0043】
この課題は、請求項1で説明されているようなヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーによって解決される。その際、従属請求項の対象は、プレポリマー、その製造方法、ならびにその使用可能性の有利な変形形態である。
【0044】
本発明は特に、室温では固体で、溶融可能で、多くの溶剤中に可溶で、ヒドロキシル官能化されており、長鎖分枝部位を含み、かつ感圧接着用途に適した粘弾性特性を有するポリウレタンプレポリマーに関する。少なくとも二官能性のポリイソシアネートとの反応および反応段階中のコーティングによって、このプレポリマーから、感圧接着用途に適した粘弾性特性を有する化学的に架橋したポリウレタンフィルムを製造することができ、したがってこのポリウレタンフィルムは、接着テープまたは他の自己接着性物品における感圧接着層、支持層、または機能層として使用することができる。少なくとも二官能性のポリイソシアネートとの反応は、選択的に溶液または溶融物の状態で行うことができる。架橋プロセスおよびコーティングプロセスは、選択的に、例えば押出成形方法において連続的に、または不連続的に行うことができる。
【0045】
請求項1は、イソシアネート反応性の出発物質と少なくとも1種のイソシアネート含有の出発物質の化学反応生成物である、またはそれを含むヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーにおいて、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート反応性の出発物質が、2より大きい官能性および3000g/mol以上の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリプロピレングリコール(以下、「ポリプロピレングリコールPI」と言う)と、2以下の官能性および1000g/mol以下の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリプロピレングリコール(以下、「ポリプロピレングリコールPII」と言う)と、2以下の官能性および500g/mol未満の数平均モル質量を有する鎖延長剤(以下、「鎖延長剤KI」と言う)とである、またはそれを含むこと、ならびにヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート含有の出発物質が、脂肪族または脂環式のジイソシアネートである、またはそれを含むことを特徴とするヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーに関する。
【0046】
つまり、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは特に、少なくとも3種のイソシアネート反応性の成分と少なくとも1種のイソシアネート含有の成分の反応によって得られることを特徴とする。本発明の有利な一実施形態では、ポリプロピレングリコールPIIは、鎖延長剤KIの少なくとも2倍以上、特に好ましくは少なくとも3倍以上大きい数平均モル質量を有する。
【0047】
溶融可能、したがって熱可塑性に加工可能な特性を有するポリマーまたはプレポリマーは、本明細書では当業者の用語において一般的なようにホットメルトと言う。
【0048】
ポリウレタンホットメルトプレポリマーとは、本明細書では、複数のポリオールを含む混合物と1種または複数のポリイソシアネートの化学反応によって得られる特に溶融可能な反応生成物と理解され、この反応生成物は室温では固体で形状安定性であり、つまり室温では、溶剤、希釈剤、またはその他の粘性を下げる添加剤を添加せずには既知の混合装置内でのコンパウンド化(ならびに特に成形または類似の加工工程も)が不可能である。既知の混合装置とは、例えば混練機、密閉式混合機、押出機、遊星ローラ押出機、遊星混合機、バタフライミキサ、または溶解機である。本明細書の意味における溶融可能な反応生成物の加工は、溶融可能な反応生成物を加熱した場合に初めて可能であり、その際、熱は外部からの加熱によって供給することができ、またはせん断によって生成することができる。本明細書の意味における溶融可能な反応生成物のための典型的な加工温度は、70℃〜160℃の範囲内であり、低くとも40℃である。室温とは、本明細書では20℃〜25℃の温度範囲、理想的には23℃と理解される。
【0049】
本明細書の意味における溶融可能な反応生成物は、プレート・プレート構成において正弦波状に振動するせん断負荷、温度23℃、および振動周波数10rad/sでの振動試験においてレオメータで測定された複素粘度が、少なくとも8000Pas、好ましくは少なくとも10000Pasである。70℃および周波数10rad/sでは、複素粘度は少なくとも100Pas、好ましくは少なくとも200Pasである。
【0050】
複素粘度ηは次のように定義され、すなわちη=G/ω
(G=複素せん断弾性率、ω=角周波数)。
【0051】
さらなる定義は、
【0052】
【数1】

(G”=粘性係数(損失弾性率)、G’=弾性係数(貯蔵弾性率))。
【0053】
G”=τ/γ・sin(δ)(τ=せん断応力、γ=変形、δ=位相角=せん断応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)。
【0054】
G’=τ/γ・cos(δ)(τ=せん断応力、γ=変形、δ=位相角=せん断応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)。
【0055】
ω=2π・f(f=周波数)。
【0056】
意外にも、感圧接着用途に適した粘弾性特性を、ホットメルト特性ならびにヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数のポリイソシアネートのさらなる反応による架橋性と組み合わせることは、特に、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーが分枝部位を含む場合で、かつ分枝部位が出ている物質が、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート反応性の出発物質であり、またはそれを含み、このイソシアネート反応性の出発物質がまた、2より大きい官能性および3000g/mol以上の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールPI)と、2以下の官能性および1000g/mol以下の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールPII)と、2以下の官能性および500g/mol以下の数平均モル質量を有する少なくとも1種の鎖延長剤(鎖延長剤KI)とである、またはそれを含む場合で、かつヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート含有の出発物質が、脂肪族または脂環式のジイソシアネートである、またはそれを含む場合に達成されることが分かった。さらに分枝部位は、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの化学構造に関与しているすべての3以上の官能性をもつ分子から出ている。分枝の程度は、生成されるプレポリマー鎖の長さとの相互作用において、このヒドロキシル官能化されたポリウレタンプレポリマーの溶融性が保証されるように、つまり追加的な架橋性物質の添加なしでは架橋構造が形成されないように調整される。プレポリマー中の分枝部位の割合が特定の程度を超える場合に初めてゲル化が始まり、つまり架橋構造が形成される。この特定の程度の計算または計算による見積りを以下に簡単に説明する。
【0057】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する出発物質のイソシアネート基の総数とヒドロキシル基の総数の比(以下、簡単にNCO/OH比と言う)は、ヒドロキシル官能化を達成するため、特に1.0未満である。架橋構造を生じさせないためには、いわゆるゲル点を超えてはならない。理論的なゲル点は、P.J.Floryのゲル点方程式によって計算することができる。ジオールおよびトリオールと不足するジイソシアネートからポリウレタンを生成反応させる場合のゲル化NCO/OH比を見積るための、Flory方程式から導き出した式は下記の通りである。
【0058】
【数2】

【0059】
ゲル化NCO/OH比に達すると、またはそれを超えると、架橋構造の形成、つまりゲル化の開始を覚悟しなければならない。ただし実際にはそうならないことがしばしばあり、なぜなら市場で入手可能なジオールおよびトリオールの多くが、たいていは未定義の高い割合で単官能性の分子も含んでいるからである。したがってこの式は、近似指標を提供しているにすぎず、このNCO/OH比以降で実際のゲル点に達する。
【0060】
この式では、プレポリマーの生成反応に関与しており、二官能性ポリオールに起因するヒドロキシル基の総数がジオール−OHで表されている。これに対応して、プレポリマーの生成反応に関与しており、三官能性ポリオールに結合しているヒドロキシル基の総数はトリオール−OHで表されている。例えば三官能性ポリオールだけをジイソシアネートと共にヒドロキシル官能化されたプレポリマーへと反応させる場合、臨界NCO/OH比は0.5である。このNCO/OH比を超えると、溶融不能なプレポリマーを生じさせる架橋構造の形成、つまりゲル化を覚悟しなければならない。
【0061】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンプレポリマーが室温で固体であることを達成するため、結晶融点か、ガラス転移温度か、または場合によってはその両方が室温より高い、または低くとも室温付近であるようにしなければならない。これは、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーへの生成反応に関与するポリオールおよびポリイソシアネートの選択および編成を介して様々なやり方で実現可能である。例えば、結晶性で室温では固体のポリオールを用いることができ、または短鎖ポリオールを高い割合で使用することができ、この短鎖ポリオールの高い割合は、ポリイソシアネートとの反応後に、プレポリマー構造内のハードセグメントを高い割合で生じさせる。ただし当業者は、結晶融点、ガラス転移温度、または場合によってはその両方が室温より高い、または低くとも室温付近である場合すぐに、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンプレポリマーが、感圧接着用途に適した粘弾性特性を有さないことを予期せざるを得ない。
【0062】
意外にも、ホットメルト特性を、感圧接着用途に適した粘弾性特性および架橋性と組み合わせることは、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート反応性の出発物質が、2以下の官能性および1000g/mol以下の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリプロピレングリコールPIIと、2以下の官能性および500g/mol以下の数平均モル質量を有する少なくとも1種の鎖延長剤KIとを含む場合で、かつヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート含有の出発物質が、脂肪族または脂環式のジイソシアネートを含む場合で、かつさらに、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート反応性の出発物質が、2より大きい官能性および3000g/mol以上の数平均モル質量を有するポリプロピレングリコールPIを含む場合に達成されることが分かった。
【0063】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与しており、1000g/mol以下の相対モル質量を有する分子の数的な割合が、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%になるように決められることにより、ホットメルト性質を達成できることが有利である。数的な割合は、常に物質量の割合に相当する。
【0064】
特に典型的ないわゆる「汎用の」感圧接着用途に適した粘弾性特性を、ホットメルト特性および架橋性と組み合わせることは、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを生成するために投入され、2より大きい官能性および3000g/mol以上の数平均モル質量を有するポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールPI)に由来するヒドロキシル基の数的な割合が、少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも5.0%、および/または最大25.0%、好ましくは最大20.0%である場合に達成することができる。特に典型的ないわゆる「汎用の」感圧接着用途に適した粘弾性特性を、さらに有利にホットメルト特性および架橋性と組み合わせることは、2より大きい官能性を有するポリプロピレングリコールPIの数平均モル質量が、4500g/mol以上、好ましくは5500g/mol以上であり、2以下の官能性を有するポリプロピレングリコールPIIの数平均モル質量が、800g/mol以下、好ましくは600g/mol以下である場合、または2以下の官能性を有する鎖延長剤KIの数平均モル質量が、400g/mol以下、好ましくは200g/mol以下である場合に達成することができる。特に好ましい鎖延長剤は、2−メチル−1,3−プロパンジオールである。
【0065】
特に典型的ないわゆる「汎用の」感圧接着用途に適した粘弾性特性を達成するために特に有利なのは、脂肪族または脂環式のジイソシアネートが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートである、またはそれを含む場合であることが分かった。
【0066】
接着テープまたは自己接着性物品における層としての、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの使用に関し、オーダーメイドで、可変の変動する要求プロファイルに応じて裁断される接着テープ層の開発を可能にする特に有利で感圧接着用途に適した粘弾性特性は、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーをポリイソシアネートとさらに反応させるかどうか、つまり特に架橋するかどうかに関係なく、できるだけ長いプレポリマー鎖を形成する場合に達成されることが分かった。これは、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する出発物質のイソシアネート基の総数とヒドロキシル基の総数の比を、0.80以上で0.98以下、好ましくは0.85以上で0.97以下、特に好ましくは0.90以上で0.96以下に調整することによって達成される。その際、得られたプレポリマーの重量平均モル質量は、約50000〜150000g/molである。これは、得られるフィルムに、目立って使用の障害となる様々な特性が縦方向でも横方向でも生じることなく、ホットメルトとしての問題のないコーティングが可能な範囲である。
【0067】
特に有利で感圧接着用途に適した粘弾性特性は、さらに、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの生成に関与するポリオールが、70重量%以上の重量分率でポリエーテルポリオール、好ましくはポリプロピレングリコールである場合に達成される。
【0068】
接着テープまたは自己接着性物品における層としての、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの使用に関し、ポリイソシアネートとの反応後に有利な架橋度を達成できるのは、その前に、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与し、2より大きい官能性を有する分子の数的な割合が、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2.0%の場合である。
【0069】
ポリウレタンプレポリマーは、製造に関し、従来技術および例えば「Kunststoff-Handbuch, Polyurethane」、Guenter Oertel編、第3版、88〜103、(1993)(非特許文献2)に包括的に記載されている。
【0070】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを製造するためのイソシアネート反応性の出発物質は、すべての既知のポリオール、例えばポリエーテルポリオール、特にポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレングリコールエーテル(ポリテトラヒドロフラン)、水素化および非水素化のヒドロキシル官能化されたポリブタジエン誘導体、水素化および非水素化のヒドロキシル官能化されたポリイソプレン、ヒドロキシル官能化されたポリイソブチレン、ヒドロキシル官能化されたポリオレフィン、水素化および非水素化のヒドロキシル官能化された炭化水素であることができる。好ましいポリオールはポリプロピレングリコールである。ポリプロピレングリコールとしては、プロピレンオキシドおよびジオールの場合は二官能性開始剤およびトリオールの場合は三官能性開始剤をベースとするすべての市販のポリエーテルを用いることができる。従来通りに、つまり通常は水酸化カリウムなどの塩基性触媒を用いて製造されたポリプロピレングリコールも、DMC(二重金属シアニド)の触媒反応によって製造された特に純粋なポリプロピレングリコールもこれに属しており、その製造は例えばUS5,712,216(特許文献22)、US5,693,584(特許文献23)、WO99/56874(特許文献24)、WO99/51661(特許文献25)、WO99/59719(特許文献26)、WO99/64152(特許文献27)、US5,952,261(特許文献28)、WO99/64493(特許文献29)、およびWO99/51657(特許文献30)に記載されている。DMCの触媒反応によるポリプロピレングリコールに特徴的なのは、ジオールの場合は厳密に2またはトリオールの場合は厳密に3の「名目的」または理論的な官能性が、実際にもほぼ達成されることである。従来通りに製造したポリプロピレングリコールの場合、それも特に比較的高いモル質量を有するポリプロピレングリコールの場合、「現実の」官能性は、理論的な官能性より常に少し低い。原因は、プロピレンオキシドのアリルアルコールへの転位副反応である。さらに、エチレンオキシドが共に組込み重合されたすべてのポリプロピレングリコール(ジオールまたはトリオール)を用いることもでき、このエチレンオキシドの組込み重合は、多くの市販のポリプロピレングリコールで、イソシアネートより高い反応性を達成するためになされている。
【0071】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの形成には、その他のイソシアネート反応性物質、例えばポリエーテルアミンも関与することができる。
【0072】
包括的には、本明細書でのイソシアネート反応性物質とは、活性水素を有するすべての物質と理解される。活性水素とは、窒素、酸素、または硫黄に結合しており、ヨウ化メチルマグネシウムと、ブチルエーテルまたは他のエーテル中でメタンを発生させながら反応する水素と定義されている。
【0073】
本明細書の意味における鎖延長剤とは、イソシアネートに対して反応性であり、2以下の官能性および500g/mol以下の数平均モル質量を有するすべての化合物である。一般的には、二官能性でモル質量が低い化合物、例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、エタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、またはm−フェニレンジアミンである。しかし上述のポリオール、特にポリプロピレングリコールも、その官能性が2以下で、かつ数平均モル質量が500g/mol以下であれば、鎖延長剤の概念に属する。
【0074】
架橋剤も同様に使用することができる。架橋剤とは、低分子で、イソシアネートに対して反応性であり、2より大きい官能性を有する化合物である。架橋剤に関する例は、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、および/または1,2,4−ブタントリオールである。
【0075】
単官能性で、イソシアネートに対して反応性の物質、例えばモノオールも同様に使用することができる。この物質は連鎖停止剤として働き、したがって鎖の長さを制御するために使用することができる。
【0076】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを製造するためのイソシアネート含有の出発物質として考慮されるのは、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、またはm−テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)であり、挙げたイソシアネートの混合物であり、またはそれらから化学的に導出された、例えば二量化型、三量化型、もしくは重合型で、例えば尿素基、ウレトジオン基、もしくはイソシアヌレート基を含むイソシアネートである。二量化型に関する例は、Bayer社のHDIウレトジオンDesmodur N3400(登録商標)である。三量化型に関する例は、同様にBayerのHDIイソシアヌレートDesmodur N3300(登録商標)である。脂肪族および脂環式のジイソシアネートに関する例は、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、またはジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートである。特に好ましいのは、イソホロンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートである。
【0077】
イソシアネート反応性の出発物質と少なくとも1種のイソシアネート含有の出発物質の反応を促進するため、当業者に既知の1種または複数の触媒、幾つかだけ挙げるなら例えば第三級アミン、有機ビスマス化合物、または有機スズ化合物を用いることができる。
【0078】
ビスマスおよび炭素を含む触媒、好ましくはカルボン酸ビスマスまたはカルボン酸ビスマス誘導体を用い得ることが非常に有利である。
【0079】
触媒の濃度は、使用するポリイソシアネートおよびポリオールに、ならびに混合装置内での目指す滞在時間および混合装置内での温度に適合させる。濃度は一般的に、製造しようとする化学的に架橋したポリウレタンフィルムの0.01重量%から0.5重量%の間である。
【0080】
可能な一実施形態では、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーが、1種または複数のさらなる配合成分、例えば充填物質、マイクロ球、樹脂、特に接着性を付与する炭化水素樹脂、軟化剤、老朽化防止剤(酸化防止剤)、光保護剤、UV吸収剤、レオロジー添加剤、ならびにその他の補助物質および添加物質を含んでいる。
【0081】
充填物質としては、強化性充填物質、例えばカーボンブラックも、非強化性充填物質、例えばチョークまたは硫酸バリウムも用いることができる。さらなる例は、タルカム、雲母、焼成シリカ、ケイ酸塩、酸化亜鉛、マイクロ中実ガラス球、マイクロ中空ガラス球、および/またはすべての種類のマイクロプラスチック球である。挙げた物質の混合物も用いることができる。
【0082】
酸化防止剤の使用は有利であるが、絶対に必要ではない。
【0083】
適切な酸化防止剤に属するのは、例えば立体阻害フェノール、ヒドロキノン誘導体、アミン、有機硫黄化合物、または有機リン化合物である。
【0084】
光保護剤およびUV吸収剤も同様に任意で用いることができる。
【0085】
光保護剤としては、例えばGaechterおよびMueller、「Taschenbuch der Kunststoff-Additive」、Muenchen 1979(非特許文献3)、Kirk-Othmer (3.) 23、615〜627頁(非特許文献4)、「Encycl. Polym. Sci. Technol.」、14、125〜148頁(非特許文献5)、ならびにUllmann (4.) 8、21頁; 15、529頁、676頁(非特許文献6)で開示された化合物を使用する。
【0086】
任意で添加可能なレオロジー添加剤に関する例は、焼成シリカ、層状ケイ酸塩(ベントナイト)、高分子ポリアミド粉末、またはヒマシ油誘導体の粉末である。
【0087】
さらに軟化剤の使用も同様に可能であるが、軟化剤の強いマイグレーション傾向に基づき、どちらかと言えば回避すべきであろう。
【0088】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの製造は、バッチ式(つまり不連続的)に、例えば加熱可能な混練機、遊星混合機、もしくは溶解機内で、または連続的に、例えば押出機内で、もしくは2成分混合および配量設備を用いて行うことができる。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの製造は、部分工程内で行うこともでき、その際、混合方法を組み合わせることもできる。気泡がないようにするため、減圧下での混合が好ましい。
【0089】
本発明の対象はさらに、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの、特にポリウレタン成形体および/またはポリウレタン層を製造するためのさらなる加工である。
【0090】
本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、特に連続的方法誘導において、溶融物(つまり特に溶剤なし)の状態で、1種または複数の少なくとも二官能性のポリイソシアネートと、混合装置内で混合させ、したがって特に連続的に化学反応させるために、最終的には化学的に架橋した特に感圧接着用途に適した粘弾性特性を有するポリウレタン成形体またはポリウレタンフィルムを得るために使用することができる。
【0091】
連続的または連続的方法誘導とは、混合中に、混合すべき物質が絶え間なくかつ均一な速度で混合装置に供給され、つまり混合装置内に投入され、そして架橋したポリマーへの漸次的な化学反応が進展する混合物が、混合装置の別の位置から絶え間なくかつ均一な速度で吐出されることを意味する。したがって混合装置内では、混合中に絶え間ない均一な流動工程および/または搬送工程が行われる。化学反応する混合物としての投入から吐出までの混合装置内での物質の滞在時間(つまり特に、成形前の、ポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数のポリイソシアネートの反応時間)は、好ましくは10分を超えず、かつ非常に好ましくは2秒〜5分である。
【0092】
本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーと反応させるポリイソシアネートの官能性、およびそれにより連続的に進行する化学反応によって生じるポリマーの分子形成に関与する出発物質のイソシアネート基の総数とヒドロキシル基の総数の比は、完全に反応した後、フィルムが化学的に架橋されており、したがって溶融不能になるように調整されるのが好ましい。NCO/OH比は、通常は1.0から1.1の間で選択される。1.0超のNCO/OH比、つまりNCOの過剰は、実際に常在の周囲水分との反応を介して、ポリマー鎖形成または架橋をもたらす。1.0未満のNCO/OH比は、特に3以上の官能性のポリイソシアネートを使用する場合に選択することができる。適切なポリイソシアネートは、すべての少なくとも二官能性のポリイソシアネートである。考慮されるポリイソシアネートは、例えば本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを製造するためのポリイソシアネートを説明した際に挙げたすべてのポリイソシアネートである。
【0093】
溶融した本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数の少なくとも二官能性のポリイソシアネートの連続的な混合は、連続的に稼働する混合装置、好ましくは押出機、特に二軸スクリュー押出機もしくは遊星ローラ押出機内で、または加熱可能な2成分混合および配量設備内で行われるのが好ましい。連続的に、または不連続的にも稼働する混合装置の縦続接続も同様に適している。混合装置は、混合装置内での短い滞在時間で良好な混合を保証するように構想されるのが好ましい。溶融した本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーおよび少なくとも二官能性のポリイソシアネートの投入は、押出機の同じ位置で、または異なる位置でも行うことができ、加圧のないゾーン内で行うのが好ましい。少なくとも二官能性のポリイソシアネートが、本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーに、細かく分散して、例えばエアロゾルとして、または細かい液滴において添加される場合が有利である。
【0094】
本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、2成分混合および配量設備内でも加熱することができ、溶融状態で成分Aとして温度調節して搬送することができ、その一方で少なくとも二官能性のポリイソシアネートは成分Bとして搬送される。その後、連続的な混合は、動的混合ヘッド内で、または好ましくは静的混合管内で、または動的および静的な混合方法を組み合わせて行われる。
【0095】
任意で、溶融物状態での本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの連続的な混合中に、1種または複数の少なくとも二官能性のポリイソシアネートと共に、さらなる配合成分、例えば充填物質、マイクロ球、樹脂、特に接着性を付与する炭化水素樹脂、軟化剤、老朽化防止剤(酸化防止剤)、光保護剤、UV吸収剤、レオロジー添加剤、ならびにその他の補助物質および添加物質を混入させることができる。
【0096】
溶融物状態での本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数の少なくとも二官能性のポリイソシアネートの連続的な混合の最中および後に、架橋したポリウレタンへの化学反応が連続的に進展する。触媒反応なしで、または適切な触媒による適度な触媒作用の場合に、反応速度は十分に遅く、したがって熱可塑性の加工がもうしばらくの時間可能である。通常は分単位であるこの時間中に、温かいまたは熱い、化学反応中の混合物をフィルムへと連続的に成形することができる。成形後、フィルムを室温へと冷却し、これによりフィルムは化学的架橋反応の進行に関係なく即座に固化する。架橋反応は室温でも、完全に達成されるまでさらに進展する。化学的架橋反応は、室温では通常1〜2週間後に完全に終了する。完全に反応した後、生成されたポリマーは、通常はもう溶融不能に架橋されている。
【0097】
温かいまたは熱い、化学反応中の混合物の連続的な成形は、ローラ塗布または押出ノズルによって行われることが好ましく、しかし別の塗布方法、例えばコンマ型ドクターブレードによって行うこともできる。成形されたフィルムは連続的に、流れてくるシート状の支持材料上に塗布され、続いて巻き付けられる。流れてくるシート状支持材料は、例えば抗付着性に処理されたフィルムまたは抗付着性に処理された紙であることができる。それはしかし、感圧接着材料もしくは機能層で予めコーティングした材料または支持体または前述のシート状材料の任意の組合せであってもよい。
【0098】
本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーが既に分枝を含むので、当業者は、溶融物状態で、つまり室温より明らかに高い温度でこのプレポリマーにポリイソシアネートを配量添加することにより即座にゲル化が始まり、つまりさらなる混合および続くコーティングおよびフィルムへの成形を不可能にする架橋構造がすぐに形成されることを覚悟せざるを得なかった。これが起きないことは、当業者には予測できなかった。
【0099】
ホットメルトコーティングにより、フィルムが巻き付け可能なことが、化学反応の進展または溶剤の蒸発速度に連関するのではなく、フィルムの冷却の速さだけに関係しているので、非常に高いコーティング速度を達成することができ、これは経済的な利点である。そのうえ、加熱路区間を加熱するための費用ならびに溶剤の焼却または回収のための費用がいらなくなる。本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは溶剤なしで製造できるので、そこでも溶剤の焼却または回収のための費用は発生しない。
【0100】
溶剤なしが可能なことにより、原理的には、蒸発する溶剤によって気泡または泡が形成されることなく任意に厚いポリマーフィルムを製造することができる。
【0101】
本発明による方法により、特に非常に均質な(均質に架橋された)厚い層および均質に架橋された3次元成形体を製造することができる。格別に均質な100μm超、さらには200μm超の層厚が可能である。
【0102】
上述の方法は特に、層厚が100μmから10000μmの間、好ましくは200μmから5000μmの間、より好ましくは300μmから2500μmの間の粘弾性接着テープ(一層構造またはさらには例えば2層もしくは3層の多層構造)の製造に適している。
【0103】
本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーへの、化学的架橋をもたらす1種または複数のポリイソシアネートの連続的な混入は、混合物をフィルムに成形する少し前になってから初めて行われるので、反応基のブロッキングがなく、したがってブロック化剤を使用する必要がない。すなわち如何なる時点でも、フィルム内に残っていて、場合によっては後の適用において障害となるブロック化剤が遊離することはない。
【0104】
本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、溶剤または溶剤混合物中でも製造または貯蔵することができる。同様にこのプレポリマーは、溶剤または溶剤混合物中で、1種または複数のポリイソシアネートと反応させることができ、かつ溶液状態で、プレポリマーとポリイソシアネートの反応段階を開始させながらコーティングすることができる。適切な溶剤は、例えばメチルエチルケトン、アセトン、酢酸ブチルエステル、デカリン、またはテトラヒドロフランである。
【0105】
架橋が、外部から、例えばUV放射またはESH放射のような放射によって開始されるのではないので、製造されるフィルムが非常に厚い場合またはフィルムが比較的大量の充填物質を含む場合でも、一貫して均質な特性を有するポリマー構造が達成される。充填物質は、比較的大量に、例えば50%以上で加えることができる。
【0106】
本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーが、通常は、多くの別の熱可塑性に加工可能なポリマーに比べて低い重量平均モル質量を有することにより、このプレポリマーは、比較的低い温度で溶融可能であり、熱可塑性に加工可能である。通常は、溶融物をフィルムに成形する最中および後に、フィルムの縦方向と横方向での接着技術的に重大な相違は生じない。
【0107】
意外であり、かつ当業者にとって予測不能でもあるが、本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分枝により、架橋したポリマー構造の生成が、同時に流動可能な部分を備えて可能になる。このようなポリマー構造は、接着テープ領域において、高い接着力を高いせん断強度と同時に達成するために必要な粘弾性特性をもたらす。周知のように、ある程度の粘性流動は、貼り付くべき土台への付着性(接着性)を形成するため常に必要である。同様に、特に高温でのせん断負荷に耐え得るためにはある程度の弾性復元力(凝集性)が必要である。有利な感圧接着特性は、これに対応して感圧接着層が粘弾性に構想されている場合だけでなく、粘弾性が接着テープの他の層、例えば支持層またはプライマ層に適用される場合にも達成することができる。これに対し非分枝ホットメルトプレポリマーは架橋後に、特に弾性の性質を有し、流動性部分はさほどないポリマー構造か、または非常に高い流動性部分と非常に低い弾性部分を有するポリマー構造を生じさせる。つまり感圧接着用途に適した範囲には不十分にしか当てはまり得ないであろう。弾性過ぎる性質を有するポリマーは、非常に低い程度でしか土台上を流れず、つまり低い付着力しか生じない。さらにまた非分枝ホットメルトプレポリマーが僅かしか、または全く架橋されない場合、このプレポリマーはつまり低過ぎる弾性の性質を有し、非常に低い凝集力になる。
【0108】
本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、二官能性イソシアネートだけでも架橋させ得ることが有利である。
【0109】
以下の例に基づき本発明をより詳しく説明するが、それによって本発明を制限する意図はない。
【発明を実施するための形態】
【0110】
下記の検査法は、本発明に従って製造したサンプルを簡単に特徴づけるために用いた。
【0111】
貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”を決定するための動的機械分析(DMA)
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを特徴づけるため、動的機械分析(DMA)による貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の決定を行った。
【0112】
測定は、プレート・プレート構成において正弦波状に振動するせん断負荷での振動試験において、Rheometric Scientific社のせん断応力制御型レオメータDSR200Nを用いて行った。貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”は、25℃の温度で10−1〜10rad/secの周波数掃引において決定した。G’およびG”は以下のように定義されている。
【0113】
G’=τ/γ・cos(δ)(τ=せん断応力、γ=変形、δ=位相角=せん断応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)。
【0114】
G”=τ/γ・sin(δ)(τ=せん断応力、γ=変形、δ=位相角=せん断応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)。
【0115】
角周波数の定義はω=2π・f(f=周波数)である。単位はrad/secである。
【0116】
測定する試料の厚さは常に0.9から1.1mmの間であった(1±0.1mm)。試料の直径はそれぞれ25mmであった。事前応力は3Nの荷重で行った。被検体のストレスはすべての測定で2500Paであった。
【0117】
複素粘度(η)を決定するための動的機械分析(DMA)
さらにヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを特徴づけるため、動的機械分析(DMA)による複素粘度の決定を行った。
【0118】
測定は、プレート・プレート構成において正弦波状に振動するせん断負荷での振動試験において、Rheometric Scientific社のせん断応力制御型レオメータDSR200Nを用いて行った。複素粘度は、10rad/sの振動周波数で−50℃〜+250℃の温度掃引において決定した。複素粘度ηは次のように定義され、すなわちη=G/ω
(G=複素せん断弾性率、ω=角周波数)。
【0119】
さらなる定義は、
【0120】
【数3】

(G”=粘性係数(損失弾性率)、G’=弾性係数(貯蔵弾性率))。
【0121】
G”=τ/γ・sin(δ)(τ=せん断応力、γ=変形、δ=位相角=せん断応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)。
【0122】
G’=τ/γ・cos(δ)(τ=せん断応力、γ=変形、δ=位相角=せん断応力ベクトルと変形ベクトルの位相ずれ)。
【0123】
ω=2π・f(f=周波数)。
【0124】
測定する試料の厚さは常に0.9から1.1mmの間であった(1±0.1mm)。試料の直径はそれぞれ25mmであった。事前応力は3Nの荷重で行った。被検体のストレスはすべての測定で2500Paであった。
【0125】
引張伸長試験での引張特性の決定
0.9〜1.1mm厚の試料を、2週間の貯蔵期間後に室温で、縦方向(成形方向)および横方向(フィルム平面内であって成形方向に対して90°の角度の方向)の引張伸び特性に関して調査した。
【0126】
測定は、DIN EN ISO527−1〜3に基づき、サイズ5Aの規定被検体を用いて検査速度300mm/minで行った。引張強度およびこの時の伸びを測定した。引張強度とは、被検材料を伸長した際に測定された力の最大値であり、試料の初期断面積で割り算し、単位はN/mmで提示する。引張強度の時の伸びとは、被検細長片の元々の測定長さに対する、力の最大値が測定された時の長さの変化であり、単位は%で提示する。
【0127】
緩和挙動の決定
0.9〜1.1mm厚の試料を、2週間の貯蔵期間後に室温で、縦方向(成形方向)および横方向(フィルム平面内であって成形方向に対して90°の角度の方向)の緩和挙動に関して調査した。緩和挙動の調査は、同様にDIN EN ISO527−1〜3に倣った引張伸長試験において、サイズ5Aの規定被検体を用いて行った。被検材料を、検査速度100mm/minで、被検細長片の元の長さに対して縦方向に50%伸長させた。この時の応力は、50%の伸びが達成した瞬間に測定した。応力は、測定長さ内の初期断面積に対する被検体での引張力として定義されている。この50%の伸びをその後垂直に維持した。5分後に応力を新たに決定した。応力の減少パーセントが緩和であり、すなわち、
緩和=100・(初期応力−最終応力)/初期応力。
【0128】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを特徴づけるため、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)による数平均および重量平均のモル質量の決定を行った。測定は、Mainz在Polymer Standards Service社で実施された。
【0129】
較正は普遍的にポリ(メチルメタクリレート)を用いて行った。決定は分析法AM1005に従って行った。溶離液としてTHF/0.1Vol.%トリフルオロ酢酸(TFAc)を使用した。プレカラムとしてPSS−SDV、10μm、内径8.0mm×50mmを、カラムとしてPSS−SDV、10μm linear one、内径8.0mm×300mmを用いた。TSP P100でポンプ注入した。流量は0.5ml/minであった。試料濃度は約1.5g/lであった。注入システムはTSP AS3000であった。注入量は100μlであった。23℃で測定した。検出器はShodex RI71であった。評価は、プログラムPSS−WinGPC Unity Version7.20で行った。
【0130】
接着力
接着力はPSTC−101に従って決定した。この方法に従い、測定すべき接着細長片を被接着下地(スチール)上に施し、2kgのおもりで2回押し付け、続いて定義された条件下で引張検査機によって剥離する。剥離角度は90°または180°、剥離速度は300mm/minであった。剥離に必要な力が接着力であり、単位はN/cmで提示する。測定した接着細長片は、25μm厚のポリエステルフィルムで背面を強化していた。
【0131】
せん断テスト
せん断テストは検査規則PSTC−107に従って行った。この方法に従い、測定すべき接着細長片を被接着下地(スチール)上に施し、2kgのおもりで4回押し付け、続いて一定のせん断荷重に曝した。保持時間を分単位で確定する。
【0132】
貼り付き面はそれぞれ13×20mmであった。この貼り付き面のせん断荷重は1kgであった。測定は室温(23℃)で行った。測定した接着細長片は、25μm厚のポリエステルフィルムで背面を強化していた。
【0133】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、Molteni社の溶解機の撹拌機構を備えた通常の加熱および真空化可能な混合釜内で製造された。それぞれ約2時間の混合工程中、混合物の温度は約70℃〜100℃に調整された。溶剤なしで作業した場合は、成分の脱ガスのため真空を印加した。
【0134】
本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数のポリイソシアネートの反応は、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーがその機能においてホットメルトとして使用される場合には、ドイツ在Leistritz社の二軸スクリュー押出機Bez LSM30/34内で行われた。この装置は、外部から電気で約70℃〜90℃に加熱され、様々な送風機を介して空冷され、かつ押出機内での短い滞在時間でプレポリマーとポリイソシアネートの良好な混合が保証されるように構想された。このため二軸スクリュー押出機の混合軸は、搬送要素と混合要素が交互になるように配置された。それぞれのポリイソシアネートの投入は、適切な配量装置を用い、配量補助手段を使用して、二軸スクリュー押出機のうち加圧のない搬送ゾーン内で行った。
【0135】
化学反応している約80℃の熱い混合物が二軸スクリュー押出機から吐出された後(吐出:円形ノズル、直径5mm)、直接的にフィルムへの成形が、後続の2本ロール塗布装置によって、流れてくる2枚の両面シリコーン処理された50μm厚のポリエステルフィルムの間で行われた。流れてくる速度は1m/minから20m/minの間で可変であった。流れてくる両面シリコーン処理されたポリエステルフィルムの一方は、フィルムの冷却、したがって固化後にすぐに再び取り外された。これにより巻き付け可能なフィルムが準備された。
【0136】
シリコーン処理されたポリエステルフィルム上に存在している巻き付けられたフィルムの一部を、2週間の貯蔵期間後に室温で再び繰り出し、シリコーン処理されたポリエステルフィルム上で最終的に50μmの厚さになるよう塗布されて存在するポリアクリレート感圧接着材料National Starch社のDurotac280−1753に対してラミネートした。ラミネート加工はさらなる前処理なしで行った。ポリアクリレート感圧接着材料による試験は、接着テープにおける支持層または機能層としての使用を試すために役立った。
【0137】
試験の一部では、本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを、使用前にアセトン中で溶解させた。その際、アセトンの割合は常に40重量%であった。その後、本発明によるヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数のポリイソシアネートの反応を、Molteni社の溶解機の撹拌機構を備えた通常の加熱および真空化可能な混合釜内で室温で行った。混合時間は15〜30分であった。このようなアセトン中のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数のポリイソシアネートから成る化学反応している混合物は、触媒含有率が0.05%から0.2%の間の場合、漸次的なゲル化に至るまで一般的に約24〜48時間はコーティング可能であった。
【0138】
表1には、化学的に架橋したポリウレタンフィルムを製造するために使用したベース材料が、しかもそれぞれ商品名およびメーカーと共に挙げられている。挙げた原料はすべて市場で自由に入手可能である。
【0139】
【表1】

表1:化学的に架橋したポリウレタンフィルムを製造するために使用したベース材料
【0140】

例1
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、提示した量比率で下記の出発物質を均質に混合、したがって化学反応させて製造した。
【0141】
【表2】

表2:ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの組成、例1
【0142】
Voranol P400の官能性が厳密に2であり、Voranol CP6055の官能性が厳密に3であるという極めて理想的な仮定の下で、出発物質の重量分率およびOH数もしくはNCO数から算出した。
【0143】
最初に、MP DiolおよびVestanat IPDI以外の上記すべての出発物質を、70℃の温度および100mbarの圧力で1.5時間混合した。次いでMP Diolを15分間、続いてVestanat IPDIを同様に15分間混合した。混合物は発生した反応熱によって100℃に加熱され、この時点で備蓄容器に詰められた。
【0144】
NCO/OH比は0.90であった。理論的なゲル点は0.91と算出される。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを生成するために投入されたヒドロキシル基の10.0%が、2より大きい官能性および6000g/molの数平均モル質量を有するポリプロピレングリコールに由来する。したがってOH基を担持する出発物質分子の約6.9%は三官能性である。全体としては、理想値で考察する場合、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の3.6%が三官能性であり、したがって分枝構造を形成する能力をもっている。
【0145】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の96.4%は、1000以下の相対モル質量を有する(理想値で考察する場合)。
【0146】
生じたプレポリマーは室温では固体で、稠度に関してはゴム状で自己接着性(感圧接着性)であった。複素粘度ηは室温(23℃)で18000Pas、70℃で210Pasであった。
【0147】
重量平均モル質量Mは120000g/mol、数平均モル質量Mは17600g/molであった。
【0148】
生じたプレポリマーは溶融可能であった。
【0149】
試験の一部に関しては、プレポリマーをアセトン中で溶解させた。
【0150】
使用
感圧接着フィルムを製造するため、アセトン中で溶解させたプレポリマーを室温で、25μm厚のポリエステルフィルム上にコーティングした。溶剤は70℃で蒸発させた。50μm厚の層が得られた。
【0151】
化学的に架橋した感圧接着材料を製造するため、アセトン中で溶解させたプレポリマーを室温でVestanat IPDIと混合した。混合比は、プレポリマー100重量部:Vestanat IPDI3.99重量部であった。したがって、ここまでに投入したすべてのNCO基およびOH基から成る全体のNCO/OH比は1.05であった。混合物を25μm厚のポリエステルフィルム上にコーティングした。溶剤は70℃で蒸発させた。50μm厚の層が得られた。
【0152】
化学的に架橋した接着テープ支持体を製造するため、80℃に予熱した二軸スクリュー押出機にプレポリマーを連続的に供給した。同時かつ同じ位置で二軸スクリュー押出機にポリイソシアネートを連続的に配量添加した。配量添加するポリイソシアネートとしてDesmodur W(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)を使用した。
【0153】
ここでも全体のNCO/OH比を1.05に調整した。
【0154】
したがって混合比は、プレポリマー100重量部:Desmodur W4.54重量部であった。
【0155】
連続的に混合および搬送を行った。押出機から押出物が吐出するまでの時間は約2分であった。
【0156】
押出物は直接的に2本ロール塗布装置に送り、そこで、流れてくる2枚の両面シリコーン処理されたポリエステルフィルムの間にコーティングし、したがってフィルムへと成形された。フィルムの厚さは1.0mmであった。フィルムを室温に冷却した後、両方のシリコーン処理されたポリエステルフィルムの一方を予め取り外してから巻き付けた。巻き付けたフィルムは室温で2週間貯蔵した。
【0157】
続いてフィルムの一部を再び繰り出し、シリコーン処理されたポリエステルフィルム上で最終的に50μmの厚さになるよう塗布されて存在するポリアクリレート感圧接着材料National Starch社のDurotac280−1753に対してラミネートした。ラミネート加工は如何なる前処理もせずに行った。ポリアクリレート感圧接着材料を備えた試験は、接着テープにおける支持層または機能層としての使用を試すために役立った。
【0158】
検査結果(例1)は下の表にまとめられている。
【0159】
【表3】

表3:検査結果、例1
【0160】
比較として、25μm厚のポリエステルフィルム上に50μm厚の層として塗布された感圧接着材料Durotac280−1753の接着力は5.9N/cmであった。
【0161】
例2
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、提示した量比率で下記の出発物質を均質に混合、したがって化学反応させて製造した。
【0162】
【表4】

表4:ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの組成、例2
【0163】
Voranol P400の官能性が厳密に2であり、Voranol CP6055の官能性が厳密に3であるという極めて理想的な仮定の下で、出発物質の重量分率およびOH数もしくはNCO数から算出した。
【0164】
最初に、MP DiolおよびDesmodur W以外の上記すべての出発物質を、70℃の温度および100mbarの圧力で1.5時間混合した。次いでMP Diolを15分間、続いてDesmodur Wを同様に15分間混合した。混合物は発生した反応熱によって100℃に加熱され、この時点で備蓄容器に詰められた。
【0165】
NCO/OH比は0.97であった。理論的なゲル点は0.98と算出される。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを生成するために投入されたヒドロキシル基の2.5%が、2より大きい官能性および6000g/molの数平均モル質量を有するポリプロピレングリコールに由来する。したがってOH基を担持する出発物質分子の約1.7%は三官能性である。全体としては、理想値で考察する場合、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の0.8%が三官能性であり、したがって分枝構造を形成する能力をもっている。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の99.2%は、1000以下の相対モル質量を有する(理想値で考察する場合)。
【0166】
生じたプレポリマーは室温では固体で、稠度に関してはゴム状で自己接着性(感圧接着性)であった。複素粘度ηは室温(23℃)で54000Pas、70℃で265Pasであった。
【0167】
重量平均モル質量Mは100000g/mol、数平均モル質量Mは15600g/molであった。
【0168】
生じたプレポリマーは溶融可能であった。
【0169】
試験の一部に関しては、プレポリマーをアセトン中で溶解させた。
【0170】
使用
感圧接着フィルムを製造するため、アセトン中で溶解させたプレポリマーを室温で、25μm厚のポリエステルフィルム上にコーティングした。溶剤は70℃で蒸発させた。50μm厚の層が得られた。
【0171】
化学的に架橋した感圧接着材料を製造するため、アセトン中で溶解させたプレポリマーを室温でVestanat IPDIと混合した。混合比は、プレポリマー100重量部:Vestanat IPDI2.51重量部であった。したがって、ここまでに投入したすべてのNCO基およびOH基から成る全体のNCO/OH比は1.05であった。混合物を25μm厚のポリエステルフィルム上にコーティングした。溶剤は70℃で蒸発させた。50μm厚の層が得られた。
【0172】
化学的に架橋した接着テープ支持体を製造するため、80℃に予熱した二軸スクリュー押出機にプレポリマーを連続的に供給した。同時かつ同じ位置で二軸スクリュー押出機にポリイソシアネートを連続的に配量添加した。配量添加するポリイソシアネートとしてVestanat IPDIを使用した。
【0173】
ここでも全体のNCO/OH比を1.05に調整した。
【0174】
したがってここでも混合比は、プレポリマー100重量部:Vestanat IPDI2.51重量部であった。
【0175】
連続的に混合および搬送を行った。押出機から押出物が吐出するまでの時間は約2分であった。
【0176】
押出物は直接的に2本ロール塗布装置に送り、そこで、流れてくる2枚の両面シリコーン処理されたポリエステルフィルムの間にコーティングし、したがってフィルムへと成形された。フィルムの厚さは1.0mmであった。フィルムを室温に冷却した後、両方のシリコーン処理されたポリエステルフィルムの一方を予め取り外してから巻き付けた。巻き付けたフィルムは室温で2週間貯蔵した。
【0177】
続いてフィルムの一部を再び繰り出し、シリコーン処理されたポリエステルフィルム上で最終的に50μmの厚さになるよう塗布されて存在するポリアクリレート感圧接着材料National Starch社のDurotac280−1753に対してラミネートした。ラミネート加工は如何なる前処理もせずに行った。ポリアクリレート感圧接着材料を備えた試験は、接着テープにおける支持層または機能層としての使用を試すために役立った。
【0178】
検査結果(例2)は下の表にまとめられている。
【0179】
【表5】

表5:検査結果、例2
【0180】
比較として、25μm厚のポリエステルフィルム上に50μm厚の層として塗布された感圧接着材料Durotac280−1753の接着力は5.9N/cmであった。
【0181】
例3
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、提示した量比率で下記の出発物質を均質に混合、したがって化学反応させて製造した。
【0182】
【表6】

表6:ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの組成、例3
【0183】
Voranol1010LおよびVoranol P400の官能性が厳密に2であり、Voranol CP3355の官能性が厳密に3であるという極めて理想的な仮定の下で、出発物質の重量分率およびOH数もしくはNCO数から算出した。
【0184】
最初に、Vestanat IPDI以外の上記すべての出発物質を、70℃の温度および100mbarの圧力で1.5時間混合した。次いでVestanat IPDIを15分間混合した。混合物は発生した反応熱によって100℃に加熱され、この時点で備蓄容器に詰められた。
【0185】
NCO/OH比は0.98であった。理論的なゲル点は0.98と算出される。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを生成するために投入されたヒドロキシル基の2.0%が、2より大きい官能性および3500g/molの数平均モル質量を有するポリプロピレングリコールに由来する。したがってOH基を担持する出発物質分子の約1.3%は三官能性である。全体としては、理想値で考察する場合、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の0.7%が三官能性であり、したがって分枝構造を形成する能力をもっている。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の99.3%は、1000以下の相対モル質量を有する(理想値で考察する場合)。
【0186】
生じたプレポリマーは室温では固体で、稠度に関してはゴム状で自己接着性(感圧接着性)であった。複素粘度ηは室温(23℃)で36000Pas、70℃で95Pasであった。
【0187】
重量平均モル質量Mは99000g/mol、数平均モル質量Mは13600g/molであった。
【0188】
生じたプレポリマーは溶融可能であった。
【0189】
試験の一部に関しては、プレポリマーをアセトン中で溶解させた。
【0190】
使用
感圧接着フィルムを製造するため、アセトン中で溶解させたプレポリマーを室温で、25μm厚のポリエステルフィルム上にコーティングした。溶剤は70℃で蒸発させた。50μm厚の層が得られた。
【0191】
化学的に架橋した感圧接着材料を製造するため、アセトン中で溶解させたプレポリマーを室温でDesmodur Wと混合した。混合比は、プレポリマー100重量部:Desmodur W2.16重量部であった。したがって、ここまでに投入したすべてのNCO基およびOH基から成る全体のNCO/OH比は1.05であった。混合物を25μm厚のポリエステルフィルム上にコーティングした。溶剤は70℃で蒸発させた。50μm厚の層が得られた。
【0192】
化学的に架橋した接着テープ支持体を製造するため、80℃に予熱した二軸スクリュー押出機にプレポリマーを連続的に供給した。同時かつ同じ位置で二軸スクリュー押出機にポリイソシアネートを連続的に配量添加した。配量添加するポリイソシアネートとしてDesmodur Wを使用した。
【0193】
ここでも全体のNCO/OH比を1.05に調整した。
【0194】
したがってここでも混合比は、プレポリマー100重量部:Desmodur W2.16重量部であった。
【0195】
連続的に混合および搬送を行った。押出機から押出物が吐出するまでの時間は約2分であった。
【0196】
押出物は直接的に2本ロール塗布装置に送り、そこで、流れてくる2枚の両面シリコーン処理されたポリエステルフィルムの間にコーティングし、したがってフィルムへと成形された。フィルムの厚さは1.0mmであった。フィルムを室温に冷却した後、両方のシリコーン処理されたポリエステルフィルムの一方を予め取り外してから巻き付けた。巻き付けたフィルムは室温で2週間貯蔵した。
【0197】
続いてフィルムの一部を再び繰り出し、シリコーン処理されたポリエステルフィルム上で最終的に50μmの厚さになるよう塗布されて存在するポリアクリレート感圧接着材料National Starch社のDurotac280−1753に対してラミネートした。ラミネート加工は如何なる前処理もせずに行った。ポリアクリレート感圧接着材料を備えた試験は、接着テープにおける支持層または機能層としての使用を試すために役立った。
【0198】
検査結果(例3)は下の表にまとめられている。
【0199】
【表7】

表7:検査結果、例3
【0200】
比較として、25μm厚のポリエステルフィルム上に50μm厚の層として塗布された感圧接着材料Durotac280−1753の接着力は5.9N/cmであった。
【0201】
例4
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、提示した量比率で下記の出発物質を均質に混合、したがって化学反応させて製造した。
【0202】
【表8】

表8:ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの組成、例4
【0203】
Voranol P400およびVoranol2000Lの官能性が厳密に2であり、Voranol CP6055の官能性が厳密に3であるという極めて理想的な仮定の下で、出発物質の重量分率およびOH数もしくはNCO数から算出した。Lutensol AO7に関しては官能性1と仮定した。
【0204】
最初に、Vestanat IPDIおよびエチレングリコール以外の上記すべての出発物質を、70℃の温度および100mbarの圧力で1.5時間混合した。次いでエチレングリコールを15分間、続いてVestanat IPDIを15分間混合した。混合物は発生した反応熱によって100℃に加熱され、この時点で備蓄容器に詰められた。
【0205】
NCO/OH比は0.92であった。理論的なゲル点は、Lutensol AO7を計算に入れない場合、0.92と算出される。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを生成するために投入されたヒドロキシル基の8.6%が、2より大きい官能性および6000g/molの数平均モル質量を有するポリプロピレングリコールに由来する。したがってOH基を担持する出発物質分子の約5.8%は三官能性である。全体としては、理想値で考察する場合、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の3.0%が三官能性であり、したがって分枝構造を形成する能力をもっている。
【0206】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の92.4%は、1000以下の相対モル質量を有する(理想値で考察する場合)。
【0207】
生じたプレポリマーは室温では固体で、稠度に関してはゴム状で自己接着性(感圧接着性)であった。複素粘度ηは室温(23℃)で75000Pas、70℃で650Pasであった。
【0208】
重量平均モル質量Mは130000g/mol、数平均モル質量Mは15900g/molであった。
【0209】
生じたプレポリマーは溶融可能であった。
【0210】
使用
今回はプレポリマーを、化学的に架橋した粘弾性の接着テープ支持体の製造にだけ使用した。
【0211】
このために、80℃に予熱した二軸スクリュー押出機にプレポリマーを連続的に供給した。同時かつ同じ位置で二軸スクリュー押出機にポリイソシアネートを連続的に配量添加した。配量添加するポリイソシアネートとしてVestanat IPDIを使用した。
【0212】
全体のNCO/OH比を1.05に調整した。
【0213】
したがって混合比は、プレポリマー100重量部:Vestanat IPDI2.90重量部であった。
【0214】
連続的に混合および搬送を行った。押出機から押出物が吐出するまでの時間は約2分であった。
【0215】
押出物は直接的に2本ロール塗布装置に送り、そこで、流れてくる2枚の両面シリコーン処理されたポリエステルフィルムの間にコーティングし、したがってフィルムへと成形された。フィルムの厚さは1.0mmであった。フィルムを室温に冷却した後、両方のシリコーン処理されたポリエステルフィルムの一方を予め取り外してから巻き付けた。巻き付けたフィルムは室温で2週間貯蔵した。
【0216】
続いてフィルムの一部を再び繰り出し、シリコーン処理されたポリエステルフィルム上で最終的に50μmの厚さになるよう塗布されて存在するポリアクリレート感圧接着材料National Starch社のDurotac280−1753に対してラミネートした。ラミネート加工は如何なる前処理もせずに行った。ポリアクリレート感圧接着材料を備えた試験は、接着テープにおける支持層または機能層としての使用を試すために役立った。
【0217】
検査結果(例4)は下の表にまとめられている。
【0218】
【表9】

表9:検査結果、例4
【0219】
比較として、25μm厚のポリエステルフィルム上に50μm厚の層として塗布された感圧接着材料Durotac280−1753の接着力は5.9N/cmであった。
【0220】
比較例1
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、提示した量比率で下記の出発物質を均質に混合、したがって化学反応させて製造した。
【0221】
【表10】

表10:ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの組成、比較例1
【0222】
Voranol P400の官能性が厳密に2であり、Voranol CP1055の官能性が厳密に3であるという極めて理想的な仮定の下で、出発物質の重量分率およびOH数もしくはNCO数から算出した。
【0223】
最初に、Vestanat IPDIおよびMPDiol以外の上記すべての出発物質を、70℃の温度および100mbarの圧力で1.5時間混合した。次いでMPDiolを15分間、続いてVestanat IPDIを同様に15分間混合した。混合物は発生した反応熱によって110℃に加熱され、この時点で備蓄容器に詰められた。
【0224】
NCO/OH比は0.91であった。理論的なゲル点も同様に0.91と算出される。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを生成するために投入されたヒドロキシル基の10.0%が、2より大きい官能性および1000g/molの数平均モル質量を有するポリプロピレングリコールに由来する。したがってOH基を担持する出発物質分子の約6.9%は三官能性である。全体としては、理想値で考察する場合、ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の3.6%が三官能性であり、したがって分枝構造を形成する能力をもっている。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の100%が、1000以下の相対モル質量を有する(理想値で考察する場合)。
【0225】
生じたプレポリマーは室温では固体で脆性硬質であり、稠度に関しては非自己接着性(非感圧接着性)であった。G’は、1rad/secおよび10rad/secの場合、それぞれ25℃で10Pa超であった。感圧接着用途に有利な粘弾性特性は認められなかった。
【0226】
比較例2
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーは、提示した量比率で下記の出発物質を均質に混合、したがって化学反応させて製造した。
【0227】

表10:ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの組成、比較例2
【0228】
Voranol P400の官能性が厳密に2であるという極めて理想的な仮定の下で、出発物質の重量分率およびOH数もしくはNCO数から算出した。
【0229】
最初に、Vestanat IPDIおよびMPDiol以外の上記すべての出発物質を、70℃の温度および100mbarの圧力で1.5時間混合した。次いでMPDiolを15分間、続いてVestanat IPDIを同様に15分間混合した。混合物は発生した反応熱によって110℃に加熱され、この時点で備蓄容器に詰められた。
【0230】
NCO/OH比は0.98であった。理論的なゲル点は1.0と算出される。
【0231】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを生成するために投入されたヒドロキシル基の0%が、2より大きい官能性および1000g/molの数平均モル質量を有するポリプロピレングリコールに由来する。したがってどの出発物質分子も三官能性でない。ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの分子形成に関与する分子の100%が、1000以下の相対モル質量を有する(理想値で考察する場合)。
【0232】
生じたプレポリマーは室温では固体で脆性硬質であり、稠度に関しては非自己接着性(非感圧接着性)であった。G’は、1rad/secおよび10rad/secの場合、それぞれ25℃で10Pa超であった。感圧接着用途に有利な粘弾性特性は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート反応性の出発物質と、少なくとも1種のイソシアネート含有の出発物質の化学反応生成物とを含むヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーにおいて、
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート反応性の出発物質が、
2より大きい官能性および3000g/mol以上の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリプロピレングリコールPIと、
2以下の官能性および1000g/mol以下の数平均モル質量を有する少なくとも1種のポリプロピレングリコールPIIと、
2以下の官能性および500g/mol以下の数平均モル質量を有する少なくとも1種の鎖延長剤KIとを含むこと、
ならびにヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーのイソシアネート含有の出発物質が、脂肪族または脂環式のジイソシアネートを含むことを特徴とするヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマー。
【請求項2】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーを生成するために投入され、ポリプロピレングリコールPIに由来するヒドロキシル基の数的な割合が、
少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも5.0%、および/または
最大25.0%、好ましくは最大20.0%であることを特徴とする請求項1に記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマー。
【請求項3】
ポリプロピレングリコールPIの数平均モル質量が、4500g/mol以上、好ましくは5500g/mol以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマー。
【請求項4】
ポリプロピレングリコールPIIの数平均モル質量が、800g/mol以下、好ましくは600g/mol以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマー。
【請求項5】
鎖延長剤KIの数平均モル質量が、400g/mol以下、好ましくは200g/mol以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマー。
【請求項6】
脂肪族または脂環式のジイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートおよび/またはジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである、またはそれを含むことを特徴とする請求項1に記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマー。
【請求項7】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーへの化学反応に関与する物質のイソシアネート基の総数とヒドロキシル基の総数の比が、0.80以上で0.98以下、好ましくは0.85以上で0.97以下、特に好ましくは0.90以上で0.96以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマー。
【請求項8】
ヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーへの化学反応が、触媒、特にビスマスおよび炭素を含む触媒、好ましくはカルボン酸ビスマスまたはカルボン酸ビスマス誘導体を添加して行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーの製造方法。
【請求項9】
感圧接着材料としての、請求項1〜7のいずれか一つに記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーまたは請求項8に従って製造したポリウレタンホットメルトプレポリマーの使用。
【請求項10】
接着テープ支持材料および/または接着テープ機能層としての、請求項1〜7のいずれか一つに記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーまたは請求項8に従って製造したポリウレタンホットメルトプレポリマーの使用。
【請求項11】
1種または複数のポリイソシアネートとの溶融物状態での反応および成形、特にコーティングによるポリウレタン成形体および/またはポリウレタン層の製造のための、請求項1〜7のいずれか一つに記載のヒドロキシル官能化されたポリウレタンホットメルトプレポリマーまたは請求項8に従って製造したポリウレタンホットメルトプレポリマーの使用。
【請求項12】
ポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数のポリイソシアネートの反応生成物が、感圧接着特性を有することを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
ポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数のポリイソシアネートの反応が、溶剤なしで、特に溶融物状態で行われることを特徴とする請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
ポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数のポリイソシアネートの反応が、連続的に稼働する混合装置内で行われることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一つに記載の使用。
【請求項15】
成形前の、ポリウレタンホットメルトプレポリマーと1種または複数のポリイソシアネートの反応時間が、10分を超えず、特に2秒〜5分の時間窓内にあることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一つに記載の使用。

【公表番号】特表2011−521040(P2011−521040A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508896(P2011−508896)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055716
【国際公開番号】WO2009/138402
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】