説明

ヒドロキシ基を含有するホスホニトリル酸エステルの製造方法

【課題】1分子中にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を少なくとも1つ以上含有する環状及び/または鎖状ホスホニトリル酸エステルの製造方法の提供。
【解決手段】1価フェノール類及び/または1価アルコールをホスホニトリルジクロライド1分子中に含有されるクロロ基のモル数よりも当量未満となるように、ホスホニトリルジクロライドと反応(第1段目反応)させ、次いでアルカリ金属無機塩に対して過剰量の2価フェノール類及び/または2価アルコールを作用させることにより調製したモノアルカリ金属塩と該第1段目反応生成物とを反応(第2段目反応)させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホスホニトリルジクロライドからホスホニトリル酸エステルを製造する方法に関するものである。さらに詳しくは、ホスホニトリルジクロライドをフェノール類、及びまたはアルコールと反応させてホスホニトリル酸エステルを製造するに際し、1分子中にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を少なくとも1つ以上含有するホスホニトリル酸エステルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホニトリル酸エステルは、プラスチックおよびその添加剤、ゴム、肥料、医薬などとしてその用途は極めて広範囲である。特に近年、社会的な関心が高まっているノンハロゲン系難燃剤によるプラスチックの難燃化や不燃化という点で、ホスホニトリル酸エステルオリゴマーやホスホニトリル酸エステルポリマーの誘導体はその優れた難燃性や従来のリン酸エステルに比べて低い加水分解性、高耐熱性など、極めて優れた特徴を有しており、難燃・不燃材料への用途が非常に有望である。さらに、これらを添加した樹脂組成物が極めて低い誘電率を示すことからプリント基板用材料、半導体封止材用材料など電子材料用途の難燃剤として、その工業化が強く望まれている。
【0003】
ホスホニトリル酸エステルにおいて、近年特に注目されているのが、下記一般式(8)で表わされる環状3量体、及び下記一般式(9)で表わされる環状4量体である。
【0004】
【化8】

(式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基を表わす。)
【0005】
【化9】

(式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基を表わす。)
ホスホニトリル酸エステルは、下記一般式(14)で表わされ、構造式上ではリン原子に結合した塩素原子(以下、クロロ基と称する。)を含有していないが、通常、塩化アンモニウムと塩素化リンから製造されたホスホニトリルジクロライドをアルコキシ化またはアリールオキシ化することにより製造されることから、アリールオキシ化及び/またはアルコキシ化反応から得られる生成物には下記一般式(10)で表わされるようにクロロ基が残存したモノクロロ体が残存することになる。製造時にクロロ基の全てをアリールオキシ基及び/またはアルコキシ基によって置換することは非常に困難であり、特に環状3量体中の最後に残った1個のクロロ基を置換することは困難である。
【0006】
【化14】

(式中、Q’はアリールオキシ基またはアルコキシ基であり、mは3以上の整数を表わす。)
【0007】
【化10】

(式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基、mは3以上の整数を表わす。)
【0008】
残存したクロロ基は加水分解によって下記一般式(11)で表わされるヒドロキシ体を生成し、反応生成物の酸価が上昇したり、架橋反応によりP−O−P結合を生じてゲル化し、ホスホニトリル酸エステルが有する優れた特性を発揮できない場合がある。
【0009】
【化11】

(式中、Qはアリールオキシ基またはアルコキシ基、mは3以上の整数を表わす。)
【0010】
例えば、アリールオキシ基及び/またはアルコキシ基置換が完結していないホスホニトリル酸エステルが難燃剤として樹脂に添加されていた場合、ポリエステル樹脂、特にポリカーボネート樹脂のような、酸により分解されやすい樹脂の場合にはホスホニトリル酸エステル中に含有されるP−OH由来のリン酸痕によって樹脂そのものが分解し、樹脂組成物の難燃性や耐熱性などの熱的特性だけでなく、種々の機械的物性を低下させたり、電子材料用途の樹脂である場合には、誘電性能を低下させるなどの問題が発生する。
【0011】
また近年、エポキシ樹脂を中心としたプリント基板用材料の難燃剤用途にグリシジル基を含有するホスホニトリル酸エステルが特に注目されている。当該ホスホニトリル酸エステルはエポキシ樹脂との相溶性・分散性が良好であり優れた難燃性能を発現する一方で、樹脂そのものの耐熱性や誘電特性を低下させないという特徴を有している。このグリシジル化ホスファゼンはエポキシ樹脂に添加した際に、グリシジル基が樹脂と架橋することによって優れた特性を発現する。ヒドロキシフェノキシ基を含有するホスホニトリル酸エステルはグリシジル基を導入する前駆体として極めて重要である。
【0012】
ホスホニトリル酸エステルの製造方法には、(1)ホスホニトリルジクロライドとヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩を反応させる方法、(2)第3級アミンを塩酸捕捉剤として使用して、ヒドロキシ化合物とホスホニトリルジクロライドを反応させる方法、(3)第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を使用して、第2、3級アミン等の塩酸捕捉剤の存在下でヒドロキシ化合物とホスホニトリルジクロライドを反応させる方法などがある。
【0013】
ホスホニトリル酸エステルを製造する従来技術としては、反応に不活性な溶媒としてトルエンやキシレンを使用し、アルコール類やフェノール類と水酸化アルカリから共沸脱水により調製したアルカリ金属アルコラートやアルカリ金属フェノラートとホスホニトリルジクロライドを作用させることによりホスホニトリル酸エステルを製造する方法が広く知られている(特許文献1)。
【0014】
残存活性塩素を含有せず、分子中にフェノール性水酸基を有するホスホニトリル酸ポリヒドロキシフェノキシフェニルエステルを製造する方法が知られている(特許文献2、3)。この方法では、確かに1分子中ヒドロキシフェノキシ基を有するホスホニトリル酸エステルを製造することは可能であるが、2価フェノールによる架橋を防止する為に、一方のヒドロキシ基をメチル基で保護したメトキシフェノールを原料としており、反応後にピリジン塩酸塩や臭化ホウ素等の試薬を使用して脱保護をしなくてはならず、製造工程が煩雑となり問題である。
【0015】
さらに同一分子中にアリールオキシ基とアルコキシ基を含有するホスホニトリル酸エステルの製造方法が知られている(特許文献4、5)。この方法では、同一分子中にアリールオキシ基とアルコキシ基を含有するホスホニトリル酸エステルが高い確率で製造できるものの、同時に僅かであるが1分子中にアリールオキシ基のみ、またはアルコキシ基のみを含有するホスホニトリル酸エステルが生成するため未だ満足できるものではない。
【0016】
【特許文献1】米国特許4107028号明細書
【特許文献2】特開昭58−219190号公報
【特許文献3】特公平6−4661号公報
【特許文献4】特開2002−284788号公報
【特許文献5】特開2001−26594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような現状に鑑み、環状及び/または鎖状であるホスホニトリルジクロライドからホスホニトリル酸エステルを製造する方法において、1分子中にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を少なくとも1つ以上含有し、かつモノクロロ体含有量が極めて少ないホスホニトリル酸エステルを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前記の目的を達成するために、1分子中にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を少なくとも1つ以上含有するホスホニトリル酸エステルを低モノクロロ体含有量で製造する方法について鋭意研究を重ねた。その結果驚くべきことに、1価フェノール類及び/または1価アルコールの金属塩をホスホニトリルジクロライド1分子中に含有されるクロロ基のモル数よりも当量未満となるように、ホスホニトリルジクロライドと反応(第1段目反応)させ、次いで無機金属塩に対して過剰量の2価フェノール類及び/または2価アルコールを作用させることにより調製したモノ金属塩と該第1段目反応生成物とを反応(第2段目反応)させることにより、1分子中にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を少なくとも1つ以上含有するホスホニトリル酸エステルを、ホスファゼン分子間で架橋することなく、かつ低モノクロロ体含有率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、以下に記載する通りのものである。
(I)反応溶媒存在下、下記一般式(1)で表される環状及び/または鎖状ホスホニトリルジクロライドと、下記一般式(2)で表される1価フェノール類及び下記一般式(3)で表される1価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩、並びに、下記一般式(4)または下記一般式(5)で表される2価フェノール類及び下記一般式(6)で表される2価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種のモノ金属塩とを反応させることにより、1分子中にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を少なくとも1つ以上含有する下記一般式(7)で表される環状及び/または鎖状ホスホニトリル酸エステルを製造する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とするホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(1)1価フェノール類及び/または1価アルコールの金属塩をホスホニトリルジクロライド1分子中に含有されるクロロ基のモル数よりも当量未満となるように添加して、ホスホニトリルジクロライドと反応させる第1段目反応
(2)金属無機塩に対して過剰量の2価フェノール類及び/または2価アルコールを作用させることにより調製したヒドロキシ金属アリーラート及び/またはヒドロキシ金属アルコラートと該第1段目反応生成物とを反応させる第2段目反応
【0020】
【化1】

(式中、mは3以上の整数を表わす。)
【0021】
【化2】

(式中、R1〜R5は水素原子または炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基のいずれかである。またR1とR2 、R2とR3 、R3とR4 、R4とR5は環を形成していても良い。)
【0022】
【化3】

(式中、R6は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である。)
【0023】
【化4】

(式中、R7〜R11の少なくとも1つは水酸基であり、かつ水素原子または炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基のいずれかである。またR7〜R11の内、水酸基ではない隣り合う基は環を形成していても良い。)
【0024】
【化5】

(式中、R12は、単結合、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。
【0025】
【化6】

(式中、R13は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であり、環を形成していても良い。)
【0026】
【化7】

(式中、Qの内、少なくとも1つはヒドロキシアリールオキシ基またはヒドロキシアルコキシ基であり、その他はアリールオキシ基またはアルコキシ基を表し、mは3以上の整数を表わす。)
【0027】
(II)該第1段目反応に際し、ホスホニトリルジクロライド1分子中のクロロ基1モルに対して、1価フェノール類及び1価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩を0.05〜0.95モル添加して反応させる(I)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(III)該第1段目反応に際し、反応溶媒にホスホニトリルジクロライドを溶解した液に1価フェノール類及び1価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩を投入する(I)または(II)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(IV)該第1段目反応において、ホスホニトリルジクロライドを溶解した反応液に1価フェノール類及び1価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩を投入する時の温度が0〜200℃である(I)〜(III)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(V)該第2段目反応に使用する2価フェノール類及び2価アルコールから選ばれる少なくとも1種のモノアルカリ金属塩を調製するに際し、金属無機塩1モルに対して、 2価フェノール類及び2価アルコールから選ばれる少なくとも1種を1.05〜10モル添加する(I)〜(IV)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【0028】
(VI)該第2段目反応に際し、第1段目反応生成物1分子中のクロロ基1モルに対して、 2価フェノール類及び2価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種のモノ金属塩を1.05〜2モル添加して反応させる(I)〜(V)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(VII)該第2段目反応温度が0〜200℃である(I)〜(VI)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(VIII)1価フェノール類及び1価アルコールの金属塩、並びに、2価フェノール類及び2価アルコール類のモノ金属塩を調製する際の無機金属塩が、金属の水酸化物、炭酸化物、炭酸水素化物である(I)〜(VII)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(IX)該反応溶媒がトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンの中から選ばれる少なくとも1種である(I)〜(VIII)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(X)該第1段目反応時の反応系内の水分量が該ホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.5モル以下である(I)〜(IX)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【0029】
(XI)(I)〜(IX)のいずれかに記載の第2段目反応時の反応系内の水分量が第1段目反応生成物1モルに対して、0.5モル以下である(I)〜(X)に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(XII)(I)〜(XI)のいずれかに記載の製造方法により製造されたホスホニトリル酸エステルであって、1分子中に少なくとも2つ以上のヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を有するホスホニトリル酸エステル。
(XIII)(I)〜(XI)のいずれかに記載の製造方法により製造されたホスホニトリル酸エステルとエピクロルヒドリンを反応させることにより製造されることを特徴とするグリシジル化ホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(XIV)(I)〜(XI)のいずれかに記載の製造方法により製造されたホスホニトリル酸エステルとエピクロルヒドリンを反応させることにより製造されることを特徴とするグリシジル化ホスホニトリル酸エステル。
【発明の効果】
【0030】
本発明のホスホニトリル酸エステルを製造する方法によれば、環状及び/または鎖状であるホスホニトリルジクロライドと1価フェノール類及び1価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩、及び2価フェノール類及び2価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種のモノ金属塩とを反応させることにより、1分子中にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を少なくとも1つ以上含有する環状及び/または鎖状であるホスホニトリル酸エステルを製造することが可能である。
【0031】
本発明を実施するに際し、まず1価フェノール類及び/または1価アルコールの金属塩をホスホニトリルジクロライド1分子中に含有されるクロロ基のモル数よりも当量未満となるように、ホスホニトリルジクロライドと反応させ(第1段目反応)、次いで無機金属塩に対して過剰量の2価フェノール類及び/または2価アルコールを反応させることにより調製したモノ金属塩と該第1段目反応生成物とを反応(第2段目反応)させることにより、1分子中にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を少なくとも1つ以上含有し、かつモノクロロ体の含有率が極めて少ないホスホニトリル酸エステルを製造することが可能である。
【0032】
また本発明によれば、極めて速やかに反応が進行するため、反応時間の短縮が可能で用役費の削減が可能となり、より安価にホスホニトリル酸エステルを製造することが可能である。従って、本発明により工業的に有用なホスホニトリル酸エステルを低モノクロロ体含有率で製造することが可能となり、ホスホニトリル酸エステルそのものの耐加水分解性、耐熱性が向上し、さらに樹脂組成物の物性低下が抑制されるため、ホスホニトリル酸エステルオリゴマーやホスホニトリル酸エステルポリマーの各種誘導体がプラスチックおよびその添加剤、ゴム、肥料、医薬など、より広範囲な用途に使用されることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本願発明について説明する。
本発明におけるホスホニトリルジクロライドと1価フェノール類及びアルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩、及び2価フェノール類及び2価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種のモノ金属塩との反応は以下に示す方法で実施させることが本発明の最大の特徴である。すなわち、本発明の方法は、
(1)1価フェノール類及び/または1価アルコールの金属塩をホスホニトリルジクロライド1分子中に含有されるクロロ基のモル数よりも当量未満となるように添加して、ホスホニトリルジクロライドと反応させる第1段目反応、
(2)金属無機塩に対して過剰量の2価フェノール類及び/または2価アルコールを反応させることにより調製したモノアルカリ金属塩と該第1段目反応生成物とを反応させる第2段目反応、
からなることを最大の特徴とする。
【0034】
まず第1段目反応について説明する。
本発明の第1段目反応において原料として使用されるホスホニトリルジクロライドは、環状であっても、鎖状であっても良く、その組成すなわち、前記一般式(1)中でm=3である環状3量体、m=4である環状4量体、m≧5の環状多量体および鎖状体の比率には特に制限はなく、各成分を任意の割合で含有した混合物を用いることができる。ホスホニトリルジクロライドの製造方法には限定されず、いかなる方法で製造されたホスホニトリルジクロライドでも使用することができる。
【0035】
例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンまたは塩化アンモニウムと三塩化リン及び塩素から製造された環状体及び鎖状体を含有するホスホニトリルジクロライドを使用することができ、必要に応じて、ホスホニトリルジクロライドを炭化水素系溶媒で処理して鎖状体を除去した環状ホスホニトリルジクロライドを使用しても良いし、再結晶精製や昇華精製により、環状3、4量体の含有率を高めたホスホニトリルジクロライドを使用しても良い。
【0036】
本発明の第1段目反応において使用される1価のフェノール類とは前記一般式(2)で表される1価フェノールであり、一つの水酸基以外の置換基数が0〜5、置換基として炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を有するものである。
【0037】
1価フェノール類の具体例としては、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4−フェニルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、o−イソプロピルフェノール、m−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−(2−メチルプロピル)フェノール、m−(2−メチルプロピル)フェノール、p−(2−メチルプロピル)フェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−ペンチルフェノール、m−ペンチルフェノール、p−ペンチルフェノール、o−(2−メチルブチル)フェノール、m−(2−メチルブチル)フェノール、p−(2−メチルブチル)フェノール、o−(3−メチルブチル)フェノール、m−(3−メチルブチル)フェノール、p−(3−メチルブチル)フェノール、o−t−アミルフェノール、m−t−アミルフェノール、p−t−アミルフェノール、1−ヒドロキシ−2−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−3−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−4−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−7−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−8−メチルナフタレン、2−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、3−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、4−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、5−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、6−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、7−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、8−エチル−1−ヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシ−1−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−3−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−4−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−7−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−8−メチルナフタレン、1−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、3−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、4−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、5−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、6−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、7−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、8−エチル−2−ヒドロキシナフタレン、2−メチル−4−フェニルフェノール、2−エチル−4−フェニルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2−エチル−6−メチルフェノール、3−エチル−6−メチルフェノール、4−エチル−6−メチルフェノール、5−エチル−6−メチルフェノール、2−エチル−3−メチルフェノール、2−エチル−4−メチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、3−エチル−5−メチルフェノール、2−メチル−3−n−プロピルフェノール、2−メチル−4−n−プロピルフェノール、2−メチル−5−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、3−メチル−2−n−プロピルフェノール、4−メチル−2−n−プロピルフェノール、5−メチル−2−n−プロピルフェノール、3−メチル−4−n−プロピルフェノール、3−メチル−5−n−プロピルフェノール、2−メチル−3−イソプロピルフェノール、2−メチル−4−イソプロピルフェノール、2−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、3−メチル−2−イソプロピルフェノール、4−メチル−2−イソプロピルフェノール、5−メチル−2−イソプロピルフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、3−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−ブチル−6−メチルフェノール、3−n−ブチル−6−メチルフェノール、4−n−ブチル−6−メチルフェノール、5−n−ブチル−6−メチルフェノール、2−n−ブチル−3−メチルフェノール、2−n−ブチル−4−メチルフェノール、2−n−ブチル−5−メチルフェノール、3−n−ブチル−4−メチルフェノール、3−n−ブチル−5−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、3−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、4−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、5−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−3−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−4−メチルフェノール、2−(2−メチルプロピル)−5−メチルフェノール、3−(2−メチルプロピル)−4−メチルフェノール、3−(2−メチルプロピル)−5−メチルフェノール、2−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、3−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、4−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、5−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェノール、2−(3−メチルプロピル)−3−メチルフェノール、2−(3−メチルプロピル)−4−メチルフェノール、2−(3−メチルプロピル)−5−メチルフェノール、3−(3−メチルプロピル)−4−メチルフェノール、3−(3−メチルプロピル)−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−6−メチルフェノール、3−t−ブチル−6−メチルフェノール、4−t−ブチル−6−メチルフェノール、5−t−ブチル−6−メチルフェノール、2−t−ブチル−3−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−メチルフェノール、3−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,3−ジエチルフェノール、2,4−ジエチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、3,4−ジエチルフェノール、2,3−ジ−n−プロピルフェノール、2,4−ジ−n−プロピルフェノール、2,5−ジ−n−プロピルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、3,5−ジ−n−プロピルフェノール、2,3−ジ−イソプロピルフェノール、2,4−ジ−イソプロピルフェノール、2,5−ジ−イソプロピルフェノール、2,6−ジ−イソプロピルフェノール、3,4−ジ−イソプロピルフェノール、3,5−ジ−イソプロピルフェノール、2,3−ジ−t−プチルフェノール、2,4−ジ−t−プチルフェノール、2,5−ジ−t−プチルフェノール、2,6−ジ−t−プチルフェノール、3,4−ジ−t−プチルフェノール、3,5−ジ−t−プチルフェノール、2,3−ジ−t−アミルフェノール、2,4−ジ−t−アミルフェノール、2,5−ジ−t−アミルフェノール、2,6−ジ−t−アミルフェノール、3,4−ジ−t−アミルフェノール、3,5−ジ−t−アミルフェノール、1−ヒドロキシ−2,3−ジメチルナフタレン、1−ヒドロキシ−2,5−ジメチルナフタレン、1−ヒドロキシ−2,6−ジメチルナフタレン、1−ヒドロキシ−2,7−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−1,3ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−1,5−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−1,7−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−1,8−ジメチルナフタレン、2,3−ジエチル−1−ヒドロキシナフタレン、2,5−ジエチル−1−ヒドロキシナフタレン、2,6−ジエチル−1−ヒドロキシナフタレン、2,7−ジエチル−1−ヒドロキシナフタレン、1,3−ジエチル−2−ヒドロキシナフタレン、1,5−ジエチル−2−ヒドロキシナフタレン、1,7−ジエチル−2−ヒドロキシナフタレン、1,8−ジエチル−2−ヒドロキシナフタレン、2,6−ジメチル−4−フェニルフェノール、2,6−ジエチル−4−フェニルフェノールなどが挙げられ、これらの中で、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4−フェニルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールが好ましい。
【0038】
また、アルコール類とは前記一般式(3)で表される炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基を有するアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、2−メチルブタノール、3−メチルブタノール、4−メチルブタノール、2,2−ジメチルプロパノール、3,3−ジメチルプロパノール、3−エチルプロパノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、4−メチルペンタノール、5−メチルペンタノール、2,2−ジメチルブタノール、2,3−ジメチルブタノール、2,4−ジメチルブタノール、3,3−ジメチルブタノール、3,4−ジメチルブタノール、3−エチルブタノール、4−エチルブタノール、2,2,3−トリメチルプロパノール、2,3,3−トリメチルプロパノール、3−エチル−2−メチルプロパノール、3−イソプロピルプロパノール、n−へプタノール、n−オクタノールなどが挙げられる。
【0039】
これらのフェノール類、アルコールは単独で用いても良いし、複数を任意の割合で組み合わせて用いても良い。フェノール類、アルコール類を複数用いた場合には、当然のことながら、生成物におけるアリールオキシ基またはアルコキシ基が2種類以上となる。
本発明において使用される、1価のフェノール類、及び/または1価のアルコールはホスホニトリルジクロライドとの反応性の点からこれらフェノールまたはアルコールの金属塩である。
【0040】
本発明の第1段目反応において使用される1価フェノールまたは1価アルコールは、反応性の点からそれぞれの金属フェノラートまたは金属アルコラートであることが好ましく、IA、IIA、IIIA、IVA、VA、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII属の中から選ばれる元素の塩であり、これらの中でLi,Na,K,Rb,Cs,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Cr,Mo,Al,Ga,In,Tl,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luの中から選ばれる元素の塩が好ましく、Li,Na,K,Rb,Cs,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Ga,In,Tl,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb、Dy,Luの中から選ばれる元素の塩がさらに好ましく、Li,Na,K,Rb,Csの中から選ばれる元素の塩がよりさらに好ましく、Li,Na,K,Rb,Csの中から選ばれる元素の塩が特に好ましい。
【0041】
本発明においては、これら金属を単独で使用しても良いし、複数を任意の割合で混ぜ合わせて使用しても良い。本発明における最も好ましい形態は、原料として、フェノール類、及び/またはアルコールのナトリウム塩を使用し、かつ該フェノール類、及び/またはアルコールのカリウム塩及びセシウム塩の中から選ばれる少なくとも1種を使用する方法である。
【0042】
1価フェノール類及び/または1価アルコールから金属アリーラートあるいは金属アルコラートを調製する際の金属源としては、ナトリウム、カリウムなどの金属をそのまま使用しても良いし、水酸化物や炭酸化物、炭酸水素化物などの無機金属塩を使用しても良い。
【0043】
金属アリーラートあるいは金属アルコラートの調製方法には特に制限はなく、例えば、水酸化リチウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物をフェノール類あるいはアルコールと反応させ、生成する水を加熱下または減圧下で除去して金属アリーラートあるいは金属アルコラートとしても良いし、生成する水と共沸混合物となる有機溶媒を添加して加熱下で共沸脱水しても良い。またアルカリ金属をそのままフェノール類あるいはアルコールと反応させて金属アリーラート類あるいは金属アルコラートとしても良い。
【0044】
本発明の第1段目反応において使用される金属アリーラート及び/または金属アルコラートの使用量はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.05〜0.95モルであり、好ましくは0.12〜0.87モルであり、さらに好ましくは0.15〜0.85モルである。金属アリーラート及び/または金属アルコラートの使用量が0.05モル以上である場合にはホスホニトリルジクロライド中のクロロ基を少なくとも一つのフェノキシ基またはアルコキシ基で置換することができ好ましく、0.95モル以下である場合にはホスホニトリルジクロライド中のクロロ基の全てをフェノキシ基またはアルコキシ基で置換することがないため好ましい。
また、ホスホニトリル酸エステル1分子中に少なくとも2つ以上ヒドロキシフェノキシ基、及び/またはヒドロキシアルコキシ基を導入することを目的とする場合には、0.05〜0.70モルであることが好ましい。
【0045】
本発明の第1段目反応において使用される反応溶媒には特に制限はなく、例えばトルエン、エチルベンゼン、1,2−キシレン、1,3−キシレン、1,4−キシレン、1−メチル−2−エチルベンゼン、1−メチル−3−エチルベンゼン、1−メチル−4−エチルベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,5−トリクロロベンゼンなどから選ばれる少なくとも一種を溶媒として使用でき、この中でも特に芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素が好ましく、例えば、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,5−トリクロロベンゼンが好ましい。これらの溶媒は単独で使用しても良いし、複数を任意の割合で組み合わせて用いも良い。
【0046】
該反応溶媒の使用量は、ホスホニトリルジクロライド1質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。反応溶媒の使用量が0.1質量部より少ない場合には、反応系内の原料濃度が高くなり、反応液が粘調となり、効率的な攪拌が困難となるため、反応性が低下し好ましくなく、100質量部より多い場合には、用役費の増大や設備の巨大化など経済的に好ましくない。
【0047】
本発明においては、反応系内に存在する水分量を制御することが好ましい。許容される反応系内の水分量は、ホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.5モル以下、好ましくは0.2モル以下、さらに好ましくは0.05モル以下である。反応系内の水分量がホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.5モルより少ない場合には、水と反応溶媒との共沸により反応温度が低下して反応性が低下することがなく、反応中にホスホニトリルジクロライドの加水分解が抑えられモノヒドロキシ体の生成が抑制される。
【0048】
ここで言う反応系内の水分量とは、ホスホニトリルジクロライドとアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートを反応させるに際し、反応液中に含有される水分量のことを言い、原料および触媒、溶媒、反応に不活性なガスに含有される水分、反応装置内部に付着した水分の総量を指している。さらに該水分量には、アルコキシ化反応あるいはアリールオキシ化反応を開始するにあたり、アルコール類やフェノール類を金属水酸化物や金属炭酸塩と反応させてアルカリ金属アルコラートやアルカリ金属アリーラートを調製する際に生成する水も含まれている。本発明においては、金属アルコラートや金属アリーラートを調製する際に生成する水分の除去が特に重要であり、生成する水は反応溶媒との共沸などにより反応系外へ除去され、反応系内に残存する水分量を制御することが好ましい。
【0049】
また本発明の第1段目反応においては必要に応じて従来から知られている種々の触媒を使用することができる。例えば、ピリジン、キノリンおよびこれらの誘導体を併用することができる。ピリジン誘導体としては、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシ−6−メチルピリジン、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、2,6−ジクロロピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ルチジン、メチルエチルピリジン等が挙げられ、キノリン誘導体としては、2−メチルキノリン、3−メチルキノリン、4−メチルキノリン、5−メチルキノリン、6−メチルキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン、2−クロロキノリン、3−クロロキノリン、4−クロロキノリン、5−クロロキノリン、6−クロロキノリン、2,3−ジクロロキノリン、2−メチル−4−ブロモキノリン、3−クロロイソキノリン、8−クロロイソキノリンなどがある。
さらに下記一般式(12)及び/または下記一般式(13)で表される化合物を反応触媒として使用することができる。
【0050】
【化12】

【0051】
【化13】

【0052】
式中、Xはハロゲン原子を表し、pは0〜10の整数、qは1〜10の整数、rは1〜35の整数である。また式中、AはIIA、IIIA、IVA、VA、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII属の元素であり、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどが挙げられる。これらの中でAがMg、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、La、Gd、Ho、Ybの場合が好ましく、Mg、Al、Cr、Co、Cu、Zn、La、Gd、Ho、Ybがさらに好ましく、Mg、Co、Cu、Zn、La、Ybが特に好ましい。
【0053】
より具体的には、該触媒がMgCl、NHMgCl、AlCl、NHAlCl、(NHAlCl、(NHAlCl、CrCl、NHCrCl、(NHCrCl、(NHCrCl、MnCl、MnCl、NHMnCl、NHMnCl、(NHMnCl、(NHMnCl、(NHMnCl、FeCl、FeCl、NHFeCl、NHFeCl、(NHFeCl、(NHFeCl、(NHFeCl、CoCl、NHCoCl、(NHCoCl、(NHCoCl、NiCl、NHNiCl、(NHNiCl、CuCl、CuCl、NHCuCl、(NHCuCl、ZnCl、NHZnCl、(NHZnCl、(NHZnCl、GaCl、NHGaCl、(NHGaCl、(NHGaCl、LaCl、(NHLaCl、(NHLaCl、GdCl、NHGdCl、(NHGdCl、(NHGdCl、HoCl、NHHoCl、(NHHoCl、NHHoCl、YbCl、(NHYbCl、NHYbClが好ましく、MgCl、NHMgCl、CoCl、NHCoCl、(NHCoCl、(NHCoCl、CuCl、CuCl、NHCuCl、(NHCuCl、ZnCl、NHZnCl、(NHZnCl、(NHZnClが特に好ましい。
【0054】
本発明の第1段目反応におけるホスホニトリルジクロライドと金属アリーラート及び/または金属アルコラートとの反応は従来から知られている種々の方法により実施することが可能である。例えば、反応溶媒中でアルカリ金属水酸化物とフェノール類、及び/またはアルコール類とを作用させて、共沸脱水により水を除去して調製したアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートの反応溶媒スラリーに、ホスホニトリルジクロライドを反応溶媒に溶解した液を滴下して反応させても良いし、予め調製したアルカリ金属アリーラート、及び/またはアルカリ金属アルコラートを反応溶媒に懸濁させ、ホスホニトリルジクロライドを反応溶媒に溶解した液を滴下して反応させても良い。あるいはホスホニトリルジクロライドを反応溶媒に溶解した液に前記スラリーを滴下しても反応させることができる。
【0055】
これらの中で本発明を実施するための好ましい形態は、ホスホニトリルジクロライドを反応溶媒に溶解した液に、金属水酸化物とフェノール類、及び/またはアルコール類とを作用させて、脱水して調製した金属アリーラート、及び/または金属アルコラートを投入する方法である。金属アリーラート、及び/または金属アルコラートを投入する方法には特に制限はなく、固体のまま投入しても良いし、反応溶媒に溶解または懸濁させて滴下しても良い。
【0056】
本発明の第1段目反応において、ホスホニトリルジクロライド1分子中の全てのクロロ基がアリールオキシ基及び/またはアルコキシ基によって置換されることを抑制する為には金属アリーラート、及び/または金属アルコラートを投入する速度を制御することが必要である。金属アリーラート、及び/または金属アルコラートを投入する速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.001〜50モル/hrであることが好ましい。
金属アリーラート、及び/または金属アルコラートを投入時の温度は0〜200℃の範囲であり、好ましくは20〜180℃である。
【0057】
本発明の第1段目反応における金属アリーラート、及び/または金属アルコラート投入後の反応温度は特に制限されないが、好ましくは50〜200℃の範囲であり、さらに好ましくは120〜185℃である。反応温度が50℃よりも低い場合には、反応が進行しないか反応完結までに長時間を要するため好ましくなく、200℃よりも高い場合には、ホスホニトリルジクロライドの加水分解が顕著となったり、昇華が起こり好ましくない。
【0058】
次に本発明の第2段目反応について説明する。
本発明の第2段目反応は無機金属塩と過剰量の2価フェノール類及び/または2価アルコールを反応させることによりモノ金属塩を調製することを第1の特徴とする。
本発明の第2段目反応時に使用される2価フェノール類とは、前記一般式(4)または一般式(5)で表される2価フェノール類であり、二つの水酸基以外の置換基が0〜4、置換基として炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基を有するものである。
【0059】
2価フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン、2,2−ビス(4)−オキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、3,4−ジヒドロキシナフタレン、o,o−ビフェノールなどが挙げられる。2価アルコールとは前記一般式(6)で表される炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基を有するアルコールであり、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、などが挙げられる。
【0060】
これらの2価のフェノール類、アルコールは単独で用いても良いし、複数を任意の割合で組み合わせて用いても良い。フェノール類、アルコールを複数用いた場合には、当然のことながら、生成物におけるヒドロキシアリールオキシ基またはヒドロキシアルコキシ基が2種類以上となる。
本発明において使用される、2価のフェノール類、及び/または2価のアルコールは第1段目反応生成物との反応性の点からこれらフェノール類またはアルコールの金属塩であることが好ましい。
【0061】
本発明の第2段目反応において使用されるヒドロキシ金属フェノラートまたはヒドロキシ金属アルコラートは、IA、IIA、IIIA、IVA、VA、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII属の中から選ばれる元素の塩であり、上記第1段目反応時に使用される金属を使用することができる。
2価フェノール類及び/または2価アルコールからそれぞれのモノ金属塩を調製する際の金属源としては、ナトリウム、カリウムなど金属をそのまま使用しても良いし、水酸化物や炭酸化物、炭酸水素化物などの無機金属塩を使用しても良い。
【0062】
本発明によって得られる最終製品中に含有される成分の内、ホスホニトリル酸エステル分子どうしが分子間で架橋した成分の生成をできるだけ抑制する為には、2価のフェノール類、及び/または2価のアルコールと無機金属塩を反応させる際に、ジ金属塩の生成を抑制することが必要である。そのためには本発明の第2段目反応において、2価のフェノール類、及び/または2価のアルコールからそれらのモノ金属塩を調製することが必要であり、金属無機塩に対して、過剰量の2価のフェノール類、及び/または2価のアルコールを使用する必要がある。具体的には、金属無機塩1モルに対して2価のフェノール類、及び/または2価のアルコールを1.05〜10モル使用することが好ましく、1.05〜5モル使用することがさらに好ましい。2価のフェノール類、及び/または2価のアルコールの使用量が1.05モル以上である場合には、それらのモノ金属塩が生成しやすいため好ましく、10モル以下である場合には、設備の増大や比例費の増大を抑制できるため好ましい。
【0063】
ヒドロキシ金属アリーラートあるいはヒドロキシ金属アルコラートの調製方法には特に制限はなく、例えば、水酸化リチウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物を2価フェノール類あるいは2価アルコールと作用させ、生成する水を加熱下または減圧下で除去してヒドロキシ金属アリーラートあるいはヒドロキシ金属アルコラートとしても良いし、生成する水と共沸混合物となる有機溶媒を添加して加熱下で共沸脱水しても良い。またアルカリ金属をそのまま2価フェノール類あるいは2価アルコール類と作用させてヒドロキシ金属アリーラート類あるいはヒドロキシ金属アルコラートとしても良い。
【0064】
本発明を実施するにあたり、ヒドロキシ金属アリーラートあるいはヒドロキシ金属アルコラートを選択的に調製する為の好ましい形態は、過剰量存在する2価フェノール及び/または2価アルコールに0〜200℃の温度で上述の金属または無機金属塩をフェノール類及び/またはアルコール1モルに対して、0.001〜100モル/hrの速度で添加することが好ましい。その際の金属または無機金属塩の形態は固体・粉体であっても構わないし、溶媒に懸濁したり溶解した状態であっても良い。
【0065】
本発明においては、ヒドロキシ金属アリーラートあるいはヒドロキシ金属アルコラートを調製した際、金属または無機金属塩に対して過剰量の2価フェノール類、および/または2価アルコールを使用する為、ヒドロキシ金属アリーラート、及び/またはヒドロキシ金属アルコラートとともに余剰の2価フェノール類及び/または2価アルコールが残存している。本発明においては、第2段目反応にヒドロキシ金属アリーラート、及び/またはヒドロキシ金属アルコラートを供するに際し、余剰の2価フェノール類、および/または2価アルコールを含んだ状態で使用しても良いし、再結晶や溶媒洗浄などの操作により分離して使用しても良い。
【0066】
尚、本発明の第1段目反応における金属アリーラート、及び/または金属アルコラートの使用量と第2段目反応におけるヒドロキシ金属アリーラート類、及び/またはヒドロキシ金属アルコラートの使用量の総量は、ホスホニトリルジクロライド中のクロロ基1モルに対して、好ましくは1.0〜2.0モルであり、さらに好ましくは、1.05〜1.5モルである。
【0067】
本発明の第2段目反応において使用される反応溶媒は、第1段目反応で使用される溶媒を使用することができ、例えばトルエン、エチルベンゼン、1,2−キシレン、1,3−キシレン、1,4−キシレン、1−メチル−2−エチルベンゼン、1−メチル−3−エチルベンゼン、1−メチル−4−エチルベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,5−トリクロロベンゼンなどから選ばれる少なくとも一種を溶媒として使用でき、この中でも特に芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素が好ましく、例えば、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,5−トリクロロベンゼンが好ましい。これらの溶媒は単独で使用しても良いし、複数を任意の割合で組み合わせて用いも良い。
【0068】
該反応溶媒の使用量は、ホスホニトリルジクロライド1質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。反応溶媒の使用量が0.1質量部より少ない場合には、反応系内の原料濃度が高くなり、反応液が粘稠となり、効率的な攪拌が困難となるため、反応性が低下し好ましくなく、100質量部より多い場合には、用役費の増大や設備の巨大化など経済的に好ましくない。
【0069】
本発明の第2段目反応においては、反応系内に存在する水分量を制御することが好ましい。許容される反応系内の水分量は、ホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.5モル以下、好ましくは0.2モル以下、さらに好ましくは0.05モル以下である。反応系内の水分量がホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.5モル以下である場合には、水と反応溶媒との共沸により反応温度が低下して反応性が低下することがなく、反応中にホスホニトリルジクロライドの加水分解が抑えられモノヒドロキシ体の生成が抑制される。
【0070】
ここで言う反応系内の水分量とは、第1段目反応生成物とヒドロキシ金属アリーラート、及び/またはヒドロキシ金属アルコラートを反応させるに際し、反応液中に含有される水分量のことを言い、原料および触媒、溶媒、反応に不活性なガスに含有される水分、反応装置内部に付着した水分の総量を指している。さらに該水分量には、アルコキシ化反応あるいはアリールオキシ化反応を開始するにあたり、アルコール類やフェノール類を金属水酸化物反応させてアルカリ金属アルコラートやアルカリ金属アリーラートを調製する際に生成する水も含まれている。本発明においては、金属アルコラートや金属アリーラートを調製する際に生成する水分の除去が特に重要であり、生成する水は反応溶媒との共沸などにより反応系外へ除去され、反応系内に残存する水分量を制御することが好ましい。
また本発明の第2段目反応においても第1段目反応の説明で記載した従来から知られている種々の触媒を必要に応じて使用することができる。
【0071】
本発明の第2段目反応における第1段目反応生成物とヒドロキシ金属アリーラート及び/またはヒドロキシ金属アルコラートとの反応は従来から知られている種々の方法により実施することが可能である。例えば、反応溶媒中で金属水酸化物と2価フェノール類、及び/または2価アルコールとを反応させて、共沸脱水により水を除去して調製したヒドロキシ金属アリーラート、及び/またはヒドロキシ金属アルコラートの反応溶媒スラリーに、第1段目反応生成物を反応溶媒に溶解した液を滴下して反応させても良いし、予め調製したヒドロキシ金属アリーラート、及び/またはヒドロキシ金属アルコラートを反応溶媒に懸濁させ、第1段目反応生成物を反応溶媒に溶解した液を滴下して反応させても良い。あるいは第1段目反応生成物を反応溶媒に溶解した液に前記スラリーを滴下しても反応させることができる。
【0072】
本発明の第2段目反応における第1段目反応生成物とヒドロキシ金属アリーラート、及び/またはヒドロキシ金属アルコラートとの反応温度は特に制限されないが、好ましくは0〜200℃の範囲であり、さらに好ましくは120〜185℃である。反応温度が0℃よりも低い場合には、反応が進行しないか反応完結までに長時間を要するため好ましくなく、200℃よりも高い場合には、第1段目反応生成物の加水分解が顕著となったり、昇華が起こり好ましくない。
【0073】
本発明においては、第2段目反応終了後、用途に応じて、ホスホニトリル酸エステルの洗浄・精製を実施することができる。例えば、ホスホニトリル酸エステル製造後の反応液を水で洗浄して過剰のフェノール類やアルコール類、生成した金属塩を除去しても良いし、ホスホニトリル酸エステルを適当な溶媒から再結晶により精製することができる。この際再結晶溶媒を選択することにより所望の組成のホスホニトリル酸エステルを得ることができる。
【0074】
このようにして得られたホスホニトリル酸エステルには1分子中に少なくとも一つ、好ましくは2つ以上のヒドロキシフェノキシ基あるいはヒドロキシアルコキシ基を含有している。これらのヒドロキシ基はエピクロルヒドリンと反応させることにより、ホスホニトリル酸エステル分子中にグリシジル基を導入することが可能である。グリシジル基を導入する方法としては、従来から知られている方法によって、ホスホニトリル酸エステル中のヒドロキシ基とエピクロルヒドリンを反応させることができる。本発明の好ましい形態としては、例えば、ヒドロキシフェノキシ基あるいはヒドロキシアルコキシ基を含有ホスホニトリル酸エステルとエピクロルヒドリン、水の混合液を60〜110℃の温度で加温した後、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリを固体または液体の状態で添加し、そのままの温度で10分〜5時間程度加熱攪拌を実施する。
【実施例】
【0075】
以下に実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
実施例、比較例において、環状クロロホスファゼンオリゴマーの組成は、GPC測定により内部標準法により決定した。GPC分析結果において、環状オリゴマーの組成比の合計が100%に満たない場合には、不足分は、未反応の塩素化リン由来の成分または線状体である。またアリールオキシ化及び/またはアルコキシ化反応の終点は高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略称する。)から判定した。ホスホニトリル酸エステルの組成すなわちアリールオキシ化及び/またはアルコキシ化完結体、モノクロロ体、モノヒドロキシ体の比率は31P−NMRから得られたピーク面積の比率から決定した。さらにホスホニトリル酸エステル1分子中のヒドロキシアリールオキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基の含有率はMALDI−TOF/MSから分析した。
【0076】
<GPC測定条件>
装置:東ソー社製HLC−8220 GPC
カラム:東ソー社製TSKgel Super 1000 ×2本
TSKgel Super 2000 ×2本
TSKgel Super 3000 ×1本
TSKguard column SuperH−L
カラム温度:40℃
溶離液:クロロホルム
溶離液流量:0.5ml/min
内標:トルエン
【0077】
<HPLC測定条件>
装置:東ソー社製HPLC 8020
カラム:Waters Symmetry300 C18 5μm 4.9×150mm ×2
検出波長:254nm
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/水=80/20
溶離液流量:1.0ml/min
実施例および比較例に使用される溶媒は、市販特級品(和光純薬製)を、五酸化ニリンおよびモレキュラーシーブで乾燥後、蒸留して使用した。反応系内の水分量は気化装置付きカールフィッシャー水分分析計を用いて測定した。
【0078】
<水分量測定>
装置:三菱化成工業(株)社製微量水分測定装置CA−100型(水分気化装置:三菱化学(株)社製VA−100型)
測定方法:水分気化−電量滴定法
試料ボートにサンプルを仕込み、120℃で加熱したVA−100内に投入、300ml/分の窒素気流にて気化した水分を滴定セルに導入して水分量を測定した。
試薬:アクアミクロンAX/CXU
パラメータ:End Sense 0.1、Delay(VA) 2
【0079】
<MALDI−TOF/MS分析>
装置: 島津 AXIMA CFR plus
レーザー: 窒素レーザー(337nm)
検出器形式: リニアモード
イオン検出: 正イオン
積算回数: 500回
スキャンレンジ: m/z 1〜3000
溶媒: THF
マトリックス: ジスラノール
【0080】
<ホスホニトリル酸エステルの収率>
本発明における実施例及び比較例のホスホニトリル酸エステルの収率とは、原料であるホスホニトリルジクロライドを基準としたホスホニトリル酸エステルの収率として定義され、より具体的には、(反応後に回収したホスホニトリル酸エステルモル数)/(反応前に投入したホスホニトリルジクロライドのモル数)×100から算出される。
ホスホニトリル酸エステルの収率が98%以上の場合に回収率が良好であると判断される。
【0081】
<ホスホニトリルジクロライドの合成>
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた1000mlの4つ口フラスコに、平均粒径2.1μmの塩化アンモニウム38.6g(0.72mol)、酸化亜鉛0.82g(10mmol)、およびo−ジクロロベンゼン340gを仕込み、窒素気流とした。反応溶液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ、五塩化リン1モルに対して、2.5×10−4モルであった。
その後、油浴温度177℃で加熱しながら、五塩化リン125g(0.6mol)をo−ジクロロベンゼン340gに溶解した溶液を105℃に加熱した滴下ロートを用いて、反応系内に56分間かけて滴下した。このときの五塩化リンの反応系内への供給速度は塩化アンモニウム1モルに対して0.89モル/hrであった。
滴下終了後、2時間反応を継続した。反応中、反応系内の水分量は、五塩化リン1モルに対して、2.5×10−4モルを上回ることはなかった。反応終了後、未反応塩化アンモニウム及び触媒をろ別除去し、反応溶媒を減圧留去・濃縮した。溶媒を留去して濃縮した微淡黄色粘調液体に石油エーテル1000gを添加し、不溶成分をろ別除去した。回収したろ液から溶媒を減圧留去・乾燥し、微淡黄色固体69.2g(五塩化リンに対して収率99.5%)を得た。反応生成物の組成はGPC測定から、環状3量体:85.4%、環状4量体:12.3%、>環状5量体:2.3%であった。
【0082】
<ホスホニトリルジクロライドの再結晶精製>
<ホスホニトリルジクロライドの合成>で合成したホスホニトリルジクロライド30g及びトルエン200mlを500mlナス型フラスコに投入し、油浴温度110℃で還流して溶解させた。室温までゆっくりと放冷後、−10℃で4時間静置した。析出した結晶をろ過し、結晶を−10℃に冷却したトルエン50mlで洗浄した。結晶を60℃の真空乾燥機で乾燥させた。回収した結晶は21.8g(収率72.7%)であった。回収した結晶の組成はGPC測定から、3量体:99.5%、4量体:0.5%であった。
【0083】
<ハイドロキノンのモノカリウム塩の調製及び精製>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、ハイドロキノン 55.0g(0.500mol)及びキシレン50gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、水酸化カリウム5.60g(0.1mol)とキシレン20gの懸濁液をゆっくりと31分かけて滴下した。水酸化カリウムの供給速度はハイドロキノン1モルに対して、0.77モル/hrであった。
その後ディーンスタークトラップを使用して、共沸脱水してハイドロキノンのモノカリウム塩を調製した。ハイドロキノンモノカリウム塩のキシレン懸濁液をエバポレータにより溶媒留去し、白色固体を得た。この白色固体を200mlナス型フラスコに投入し、蒸留水100gを添加した。油浴温度80℃で加熱溶解し、そのまま室温まで放冷し、0℃で1晩静置した。析出した白色針状結晶をキリヤマロートにより減圧ろ過、分取し、真空乾燥機で80℃で減圧乾燥した。
このようにして、ハイドロキノンのモノカリウム塩9.18g(収率62%)を得た。
【0084】
[実施例1]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、キシレン20gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をキシレン存在下150℃で共沸脱水により調製したカリウムフェノキサイドのキシレン懸濁液20.1gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は33分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.82モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.012モルであった。
反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後2時間で反応を終了した。
【0085】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、ハイドロキノン 23.65g(0.215mol)及びキシレン20gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、水酸化カリウム2.41g(0.043mol)とキシレン10gの懸濁液をゆっくりと15分かけて滴下した。水酸化カリウムの供給速度はハイドロキノン1モルに対して、0.80モル/hrであった。
その後ディーンスタークトラップを使用して、共沸脱水してハイドロキノンのモノカリウム塩を調製した。室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.015モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が140℃となってから2時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.34g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率98.7%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0086】
[実施例2]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液22.8gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は38分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.58モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.014モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後1時間で反応を終了した。
【0087】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、ハイドロキノン 23.87g(0.217mol)及びo−ジクロロベンゼン25gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱攪拌しながら、水酸化カリウム2.41g(0.043mol)とo−ジクロロベンゼン15gの懸濁液をゆっくりと15分かけて滴下した。水酸化カリウムの供給速度はハイドロキノン1モルに対して、0.79モル/hrであった。
その後油浴温度を190℃まで昇温し、ディーンスタークトラップにより脱水してハイドロキノンのモノカリウム塩を調製した。室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.016モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が140℃となってから2時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.30g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率98.1%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0088】
[実施例3]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液22.1gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は36分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.67モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.014モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後1時間で反応を終了した。
【0089】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計を装着し、<ハイドロキノンのモノカリウム塩の調製及び精製>で調製した精製ハイドロキノンモノカリウム塩5.51g(0.037mol)を投入した。窒素気流下、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.018モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が140℃となってから2時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.33g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率98.5%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0090】
[実施例4]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに再結晶精製したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液22.4gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は35分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.72モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.012モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後1時間で反応を終了した。
【0091】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、ハイドロキノン 23.87g(0.217mol)及びo−ジクロロベンゼン25gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱攪拌しながら、水酸化カリウム2.41g(0.043mol)とo−ジクロロベンゼン15gの懸濁液をゆっくりと17分かけて滴下した。水酸化カリウムの供給速度はハイドロキノン1モルに対して、0.70モル/hrであった。
その後、油浴温度を190℃まで昇温し、ディーンスタークトラップにより脱水してハイドロキノンのモノカリウム塩を調製した。室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.014モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が140℃となってから2時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.32g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率98.4%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0092】
[実施例5]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液21.8gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は34分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.76モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.013モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後1時間で反応を終了した。
【0093】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、ビスフェノールA 49.48g(0.217mol)及びo−ジクロロベンゼン25gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱攪拌しながら、水酸化カリウム2.41g(0.043mol)とo−ジクロロベンゼン15gの懸濁液をゆっくりと16分かけて滴下した。水酸化カリウムの供給速度はハイドロキノン1モルに対して、0.74モル/hrであった。
その後、油浴温度を190℃まで昇温し、ディーンスタークトラップにより脱水してハイドロキノンのモノカリウム塩を調製した。室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.012モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が140℃となってから2時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物9.92g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率98.9%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0094】
[実施例6]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 0.94g(0.010mol)と水酸化カリウム0.56g(0.010mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液20.1gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は31分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.93モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.011モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後1時間で反応を終了した。
【0095】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、ハイドロキノン 70.84g(0.644mol)及びo−ジクロロベンゼン50gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱攪拌しながら、水酸化カリウム3.58g(0.064mol)とo−ジクロロベンゼン25gの懸濁液をゆっくりと20分かけて滴下した。水酸化カリウムの供給速度はハイドロキノン1モルに対して、0.30モル/hrであった。
その後、油浴温度を190℃まで昇温し、ディーンスタークトラップにより脱水してハイドロキノンのモノカリウム塩を調製した。室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.013モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が140℃となってから2時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.83g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率97.9%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0096】
[実施例7]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液22.5gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は37分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.62モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.014モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後1時間で反応を終了した。
【0097】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、1,3−プロパンジオール 16.9g(0.217mol)及びo−ジクロロベンゼン25gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱攪拌しながら、金属ナトリウム0.99g(0.043mol)ゆっくりと12分かけて添加して、1,3−プロパンジオールモノナトリウム塩を調製した。ナトリウムの供給速度は1,3−プロパンジオール1モルに対して、0.99モル/hrであった。
室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.018モルであった。その後、油浴温度180℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が175℃となってから5時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物6.56g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率98.4%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0098】
[実施例8]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液22.1gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は35分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.72モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.016モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後1時間で反応を終了した。
【0099】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、1,4−シクロヘキサンジオール 25.17g(0.217mol)及びo−ジクロロベンゼン25gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱攪拌しながら、金属ナトリウム0.99g(0.043mol)を11分かけて添加し、1,4−ヘキサンジオールのモノナトリウム塩を調製した。水酸化カリウムの供給速度は1,4−シクロヘキサンジオール1モルに対して、1.08モル/hrであった。
室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.018モルであった。その後、油浴温度180℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が175℃となってから5時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.42g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率98.1%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0100】
[実施例9]グリシジル化ホスホニトリル酸エステルの合成
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに実施例2で合成したヒドロキシフェノキシフェノキシホスホニトリル酸エステル6.00g(0.024mol)及びエピクロルヒドリン22.2g(0.240mol)を投入した。窒素気流下、油浴温度100℃で加熱攪拌しながら、40%NaOH水溶液1g(0.01mol NaOH)を5分間で滴下した。そのまま100℃で攪拌を継続し、1時間後に攪拌を停止し、室温まで放冷した。エバポレーターにより反応液から水及びエピクロルヒドリンを留去した。残渣をクロロホルム100mlに溶解し、蒸留水100mlで2回洗浄後に、クロロホルム層を分取して、エバポレーターにより溶媒を留去し、淡黄色固体を得た。収量7.51g、収率97.8%であった。
【0101】
[比較例1]
攪拌装置、冷却管、滴下ロート、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、フェノール 2.91g(0.031mol)、ハイドロキノン4.77g(0.043mol)、水酸化カリウム 4.14g(0.074mol)、1,2−ジクロロベンゼン 50gを投入し、窒素気流下、油浴温度190℃で共沸脱水しつつカリウムフェノキサイドを調製した。室温まで放冷後、<ホスホニトリルジクロライドの合成>から得られたホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を1,2−ジクロロベンゼン 25gに溶解したものを15分間かけて滴下した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して0.017モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が140℃となってから5時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.28g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率97.9%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表2に示す。
【0102】
[比較例2]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液22.4gを滴下ロートにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は1分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、60モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.021モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後1時間で反応を終了した。
【0103】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、ハイドロキノン 23.87g(0.217mol)及び水酸化カリウム2.41g(0.043mol)、o−ジクロロベンゼン30gを投入した。窒素気流下、油浴温度を190℃まで昇温し、ディーンスタークトラップにより脱水してハイドロキノンのモノカリウム塩を調製した。室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.023モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が140℃となってから2時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.20g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率96.8%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表2に示す。
【0104】
[比較例3]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液20.1gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は33分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.82モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.018モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後1時間で反応を終了した。
【0105】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、ハイドロキノン 4.73g(0.043mol)及びo−ジクロロベンゼン25gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱攪拌しながら、水酸化カリウム2.41g(0.043mol)とo−ジクロロベンゼン15gの懸濁液をゆっくりと16分かけて滴下した。水酸化カリウムの供給速度はハイドロキノン1モルに対して、3.75モル/hrであった。
その後、油浴温度を190℃まで昇温し、ディーンスタークトラップにより脱水してハイドロキノンのモノカリウム塩を調製した。室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.020モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡し、反応系内が140℃となってから2時間後に反応を終了した。反応終了後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.25g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率97.5%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0106】
[比較例4]
<第1段目反応>
攪拌装置、冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに合成したホスホニトリルジクロライド 3.63g(0.031mol)を投入し、o−ジクロロベンゼン25gに溶解した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱還流しながら、フェノール 2.91g(0.031mol)と水酸化カリウム1.74g(0.031mol)をo−ジクロロベンゼン存在下180℃で脱水して調製したカリウムフェノキサイドのo−ジクロロベンゼン懸濁液22.1gを定量ポンプにより反応系内へ供給した。カリウムフェノキサイドの供給時間は36分であり、供給速度はホスホニトリルジクロライド1モルに対して、1.67モル/hrであった。カリウムフェノキサイド投入後の反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.52モルであった。反応はHPLCにより追跡し、カリウムフェノキサイド投入終了後3時間で反応を終了した。
【0107】
<第2段目反応>
100ml4つ口フラスコに攪拌装置、冷却管、温度計、ディーンスタークトラップを装着し、ハイドロキノン 23.87g(0.217mol)及びo−ジクロロベンゼン25gを投入した。窒素気流下、油浴温度150℃で加熱攪拌しながら、水酸化カリウム2.41g(0.043mol)とo−ジクロロベンゼン15gの懸濁液をゆっくりと15分かけて滴下した。水酸化カリウムの供給速度はハイドロキノン1モルに対して、0.79モル/hrであった。
その後、油浴温度を190℃まで昇温し、ディーンスタークトラップにより脱水してハイドロキノンのモノカリウム塩を調製した。室温まで冷却後、第1段目反応液を滴下ロートを使用してゆっくりと添加した。反応液の一部をマイクロシリンジで採取し、水分量を測定したところ第1段目反応生成物1モルに対して0.54モルであった。その後、油浴温度150℃で加熱を行った。反応はHPLCにより追跡したが、反応系内が140℃となってから12時間後であっても反応は未完結であった。反応停止後、反応液を10%水酸化カリウム水溶液50mlで2回洗浄後、希塩酸で中和した。さらに反応溶液を蒸留水50mlで洗浄後、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物7.10g(ホスホニトリルジクロライドから換算した収率95.4%)が得られた。31P−NMR、MALDI−TOF/MS測定結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
実施例(表1)と比較例(表2)との比較から明らかなように、原料の仕込み量、供給速度、水分量を制御することにより、反応は速やかに完結し、分子中に少なくとも1つのヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を含有するホスホニトリル酸エステルが得られることが分かる。また本発明の方法で製造できたヒドロキシ基を含有するホスホニトリル酸エステルからは高収率でグリシジル化ホスホニトリル酸エステルが製造できることが分かる。一方、原料の仕込み量、供給速度が本発明の範囲を超えた場合には、反応系内の水分量が低くても、分子内にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を1つも含まない成分が生成していることが分かる。さらに、原料の仕込み量、供給速度が本発明の範囲内である場合でも、反応系内の水分量が特定量以上の場合には、反応性が低下して反応完結に長時間を要し、モノクロロ体が含有されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のホスホニトリル酸エステルを製造する方法によれば、分子中に少なくとも1つのヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を含有するホスホニトリル酸エステルを短時間で製造することが可能である。よって、反応時間の短縮が可能で用役費の削減が可能となり、より安価にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を含有するホスホニトリル酸エステルやグリシジル化ホスホニトリル酸エステルを製造することが可能となる。従って、本発明により工業的に有用なホスホニトリル酸エステルを低モノクロロ体含有率で製造することが可能となり、ホスホニトリル酸エステルそのものの耐加水分解性、耐熱性が向上し、さらに樹脂組成物の物性低下が抑制されるため、ホスホニトリル酸エステルオリゴマーやホスホニトリル酸エステルポリマーの各種誘導体がプラスチックおよびその添加剤、ゴム、肥料、医薬など、より広範囲な用途へ使用されることが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応溶媒存在下、下記一般式(1)で表される環状及び/または鎖状ホスホニトリルジクロライドと、下記一般式(2)で表される1価フェノール類及び下記一般式(3)で表される1価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩、並びに、下記一般式(4)または下記一般式(5)で表される2価フェノール類及び下記一般式(6)で表される2価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種のモノ金属塩とを反応させることにより、1分子中にヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を少なくとも1つ以上含有する下記一般式(7)で表される環状及び/または鎖状ホスホニトリル酸エステルを製造する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とするホスホニトリル酸エステルの製造方法。
(1)1価フェノール類及び/または1価アルコールの金属塩をホスホニトリルジクロライド1分子中に含有されるクロロ基のモル数よりも当量未満となるように添加して、ホスホニトリルジクロライドと反応させる第1段目反応
(2)金属無機塩に対して過剰量の2価フェノール類及び/または2価アルコールを作用させることにより調製したヒドロキシ金属アリーラート及び/またはヒドロキシ金属アルコラートと該第1段目反応生成物とを反応させる第2段目反応
【化1】

(式中、mは3以上の整数を表わす。)
【化2】

(式中、R1〜R5は水素原子または炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基のいずれかである。またR1とR2 、R2とR3 、R3とR4 、R4とR5は環を形成していても良い。)
【化3】

(式中、R6は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である。)
【化4】

(式中、R7〜R11の少なくとも1つは水酸基であり、かつ水素原子または炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基のいずれかである。またR7〜R11の内、水酸基ではない隣り合う基は環を形成していても良い。)
【化5】

(式中、R12は、単結合、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。
【化6】

(式中、R13は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であり、環を形成していても良い。)
【化7】

(式中、Qの内、少なくとも1つはヒドロキシアリールオキシ基またはヒドロキシアルコキシ基であり、その他はアリールオキシ基またはアルコキシ基を表し、mは3以上の整数を表わす。)
【請求項2】
該第1段目反応に際し、ホスホニトリルジクロライド1分子中のクロロ基1モルに対して、1価フェノール類及び1価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩を0.05〜0.95モル添加して反応させることを特徴とする請求項1に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項3】
該第1段目反応に際し、反応溶媒にホスホニトリルジクロライドを溶解した液に1価フェノール類及び1価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩を投入することを特徴とする請求項1または2に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項4】
該第1段目反応において、ホスホニトリルジクロライドを溶解した反応液に1価フェノール類及び1価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の金属塩を投入する時の温度が0〜200℃であることを特徴とする請求項3に記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項5】
該第2段目反応に使用する2価フェノール類及び2価アルコールから選ばれる少なくとも1種のモノアルカリ金属塩を調製するに際し、金属無機塩1モルに対して、 2価フェノール類及び2価アルコールから選ばれる少なくとも1種を1.05〜10モル添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項6】
該第2段目反応に際し、第1段目反応生成物1分子中のクロロ基1モルに対して、 2価フェノール類及び2価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種のモノ金属塩を1.05〜2モル添加して反応させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項7】
該第2段目反応温度が0〜200℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項8】
1価フェノール類及び1価アルコールの金属塩、並びに、2価フェノール類及び2価アルコール類のモノ金属塩を調製する際の無機金属塩が、アルカリ金属の水酸化物、炭酸化物、炭酸水素化物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項9】
該反応溶媒がトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項10】
該第1段目反応時の反応系内の水分量が該ホスホニトリルジクロライド1モルに対して、0.5モル以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項11】
該第2段目反応時の反応系内の水分量が第1段目反応生成物1モルに対し
て、0.5モル以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法により製造されたホスホニトリル酸エステルであって、1分子中に少なくとも2つ以上のヒドロキシフェノキシ基及び/またはヒドロキシアルコキシ基を含有するホスホニトリル酸エステル。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法により製造されたホスホニトリル酸エステルとエピクロルヒドリンとを反応させることにより製造されることを特徴とするグリシジル化ホスホニトリル酸エステルの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法により製造されたホスホニトリル酸エステルとエピクロルヒドリンとを反応させることにより製造されることを特徴とするグリシジル化ホスホニトリル酸エステル。

【公開番号】特開2006−321736(P2006−321736A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144896(P2005−144896)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】