説明

ヒドロキシ酢酸エステル誘導体、その製法及び合成中間体としての用途

【課題】(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]-5-ピリジル)酢酸メチル、すなわちクロピドグレル(clopidgrel)の有用な合成中間体の提供。
【解決手段】一般式(I)[式中、R1はベンジル基、1もしくは幾つかのハロゲン原子で任意に置換されたC1-C4アルキル又は1もしくは幾つかのハロゲン原子、又は1もしくは幾つかの直鎖状あるいは分枝状のC1-C4アルキル基又はニトロ基で任意に置換されたフェニル基を示す]の(R)-スルホニルオキシ酢酸エステル誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してヒドロキシ酢酸エステルの新規な誘導体及び合成中間体としてのその用途に関する。
より詳細には、本発明の目的は、一般式(I):
【化1】

【0002】
[式中、R1 は、ベンジル基、塩素もしくは臭素のような1もしくは幾つかのハロゲン原子で置換されてもよいC1-C4 アルキルあるいは1もしくは幾つかのハロゲン原子、又は1もしくは幾つかの直鎖状あるいは分枝状のC1-C4 アルキル基又はニトロ基で置換されてもよいフェニル基を示す]
を有するスルホニルオキシ酢酸エステルである。
特に、本発明は、R1 がメチル、エチル、プロピル、トリフルオロメチル、ベンジル、フェニル、クロロフェニル、トリル、トリメチルフェニル、トリイソプロピルフェニル、ジクロロフェニル、特に2,5-ジクロロフェニル又はニトロフェニル、詳細にはp-ニトロフェニル基を示す、式-Iの化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
式-I の化合物は、特に(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]-5-ピリジル)酢酸メチル、すなわちクロピドグレル(clopidgrel)の合成中間体として、それ自体特に有用であることが明らかにされている。
次の構造式:
【化2】

【0004】
を有するこのエナンチオマーは、特に血小板凝集阻害と抗血栓特性のために、その治療上の価値が知られている。
欧州特許第0465358号には、2位が活性基である2-アリール酢酸エステルを用いる、C1-C4アルキルの2-(ハロゲノフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]-5-ピリジル)アセテートの(R)及び(S)エナンチオマーの製造が記載されている。
この方法によれば、
a) ラセミ型のC1-C4アルキル2-(ハロゲノフェニル)-2-ハロゲノ又はC1-C4 アルキルスルホニルオキシ、又はC6-C10 アルキルアリールスルホニルオキシのアセテートを塩基又は
塩の形態の4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c] ピリジンと結合させ、ラセミ化合物が得られる。
b) このようにして生じたラセミ化合物を、光学的に活性な酸性塩を再結晶して分割し、所望の(R)又は(S)エナンチオマーが得られる。
しかし、この方法についての唯一の実施例は、クロピドグレルを最終的に製造するためにラセミ型の2-(2-クロロフェニル)-2-クロロ酢酸メチルを原料としたもので、C1-C4 アルキル 2-(ハロフェニル)-2-(ブロモ又はアルキルスルホニルオキシ又はアリールスルホニルオキシ)-アセテートの製造を例証する詳細な指示や実施例は示されていない。
【0005】
この実施例によれば、クロピドグレルは、2-ヒドロキシ酢酸エステルを原料として、次の5工程を行って得られる:
a) 及び b) 45%収率でラセミ型の2-(2-クロロフェニル)-2-クロロ酢酸メチルを生じる、ラセミ型2-(2-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ酢酸と五塩化リンとの反応ならびにメタノールとのエステル化、
c) このようにして生じた2-(2-クロロフェニル)-2-クロロ酢酸メチルと、炭酸カリウム存在下での4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンとの結合-これにより、平均収率80%でラセミ型の2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]-5-ピリジル)-2-(2-クロロフェニル)-酢酸メチルが得られる、
d) カンファースルホン酸との造塩で得られるラセミ化合物の分割(収率:所望の塩に関して88%)、
e) 重炭酸ナトリウムで目的のカンファースルホン酸塩を処理することによる、塩基形態のクロピドグレルの再生。
この方法を用いることによって、クロピドグレルは、2-(2-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ酢酸から30%までの化学収量で得られる。
【0006】
本発明に関連して行った予備試験で、2-(2-クロロフェニル)-2-クロロ酢酸メチルの(R)又は(S)エナンチオマーを原料とする以外は既に挙げた特許に記載されたのと同様の反応によって、クロピドグレル又はその(R)エナンチオマーを製造する試みをした。
しかし、重炭酸ナトリウムを用いるか又は用いないで、塩基もしくは塩酸塩いずれかの形態の1又は2当量の4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンを用いて、室温から65℃の温度で、溶媒としてメタノール、アセトニトリルもしくは酢酸エチル中で行った全ての試験は、ラセミ型の2-(2-クロロフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ [3,2-c]-5-ピリジル)酢酸メチルを72〜88%生じた。
炭酸ナトリウム存在下かつメチルイソブチルケトン/水の溶媒混合物中で、(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-クロロ酢酸メチルと 4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンを用いて80℃に加熱した他の試験は、鏡像異性体過剰率がわずか20%の(R)- 2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]-5-ピリジル)-2-(クロロフェニル)酢酸メチルを生じた。
【特許文献1】欧州特許第0465358号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この結果、できるだけ工程が少なく、相当量の所望の化合物を生じる、立体選択的な方法を用いて4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンからクロピドグレルを製造する方法の開発は、依然として明らかに重要である。
非常に驚くべきことに、本発明によれば、クロピドグレルは、(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-ハロゲノ酢酸メチルを、2位がスルホニルオキシ基の(R)-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル、つまり上記式Iの化合物で置換することによって、80%のオーダーの全収率で(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ酢酸からわずか三工程で得られることが発見された。
この方法は、以下の理由により非常に驚くべきことである:
A) カルボキシルエステルの2-メタンスルホニルオキシ基と2-トルエンスルホニルオキシ基は、アミン官能基による求核置換に関与する際に、ラセミ化に付されることが公知である(Angew. Chem. Int. Ed. Eng. 22 (1983), no.1 pp 65-66)。
これらのことは、Tetrahedron [Vol. 47, no. 7, pp 1109-1135 (1991)]で確認されており、カルボン酸の2-メタンスルホニルオキシ及び2-p-トルエンスルホニルオキシエステルは、2位での立体選択的な求核置換反応に不適当な基質であると報告されている。
同様の考察は、Leibigs. Ann. Chem. 1986, p. 314-433に記載されており、ここでは30%より少ない収量が、メチル-2-p-トルエンスルホニルオキシ- 又はメチル-2-メタンスルホニルオキシ-プロピオネートをベンジルアミンでの置換で得られることが報告されている。
【0008】
B) 2-フェニル基をさらに含む2-スルホニルオキシ酢酸エステルの(R)及び(S)エナンチオマーは、2位での求核置換後に立体選択性をかなり減じた化合物を生じることが知られている。
例えば、Tetrahedron, Vol. 44, no. 17, pp 5583-5595 (1988) は、溶媒としてのジクロロメタン中で、0℃から室温でO-ベンジルヒドロキシルアミンにより(S)又は(R)2-トリフリルオキシ-2-X-酢酸メチル誘導体を置換し、2-O-ベンジルヒドロキシルアミノ-2-Xの(R)及び(S)酢酸エステルがそれぞれ形成されることを報告している。ここで、トリフリル基がトリフルオロメチルスルホニル基を表すことが知られている。
この反応は、Xがメチルのように置換されやすいアルキル基又はベンジルを示すエステルの場合、非常に選択的(鏡像異性体過剰率、ee ≧95%)であるが、Xがフェニル基を示す際は、相当する(R)-2-O-ベンジルヒドロキシルアミノ-2-フェニルエステルの鏡像異性体過剰率が50%未満であるために選択性がかなり低くなることが分かっている。非常に似た結果は、2-フェニル酢酸エステルの2-スルホニルオキシ誘導体を用いて行った他の実験の後でも報告されている。
【0009】
つまり、
a) Tetrahedron Letters, Vol. 31, no. 21, pp 2953-2956 (1990) は、ジクロロメタン中かつ0℃でt-ブチルオキシカルボニルヒドラジン又はBOC-ヒドラジンを用いて(S)-2-トリフリルオキシ-2-X-酢酸メチルエステルを置換し、(R)-2-BOC-ヒドラジニル-2-X-酢酸エステルを形成する反応を記載している。
また、この反応の選択性は、Xがメチル、イソブチルのような置換されやすいアルキル基又はベンジルを示す際に非常に顕著である(ee>95%)が、逆にXがフェニルを示す際に非常に制限される(ee: 28%)ことが分かっている。
b) Tetrahedron, Vol. 48, no. 15, pp 3007-3020 (1992) は、ジクロロメタン中かつ室温で、アジド基を用いて(S)-2-ノシルオキシ-2-X-酢酸メチル誘導体を置換し、(R)-2-アジド-2-X 酢酸エステルとすることが報告されている。
さらに、2-スルホニルオキシ基、この場合ノシルオキシ基の置換は、Xがメチル、イソプロピル、sec-ブチルのような置換されやすいアルキル基又はベンジルを示す際に非常に選択的で(ee>92%)、Xがフェニル基を示す場合は期待外れである(ee:35%)。
これらの知見は、実際に、問題の文献の著者らにより「2-ノシルオキシエステルと2-トリフリルオキシエステルが異なる群の求核剤で置換される場合、フェニル基が立体選択性を減じることは周知である」と結論づけられている。ノシル基はp-ニトロフェニルスルホニル基を意味する。
【0010】
特にクロピドグレルの製造に、それ自体特に重要な合成中間体であることが分かっている式-Iの酢酸エステルのスルホニルオキシ誘導体は、以下のとおりである:
(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-メタンスルホニルオキシ酢酸メチル、
(R)-2-(4-クロロベンゼンスルホニルオキシ)-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,4,6-トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,5-ジクロロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル。
【0011】
特に、以下のものが好ましい:
(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,4,6-トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル、
(R)-2-(4-クロロベンゼンスルホニルオキシ) -2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル、
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,5-ジクロロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のスルホニルオキシ誘導体は、式(II):
【化3】

【0013】
を有する(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ酢酸エステルを、一般式(III):
R1-SO2-R2 III
[式中、R2 はOSO2-R1 基、又は好ましくは塩素もしくは臭素のようなハロゲン原子を示し、かつR1 は前述と同じ意味である]
を有するスルホニル無水物又はハロゲン化物と、触媒及びピリジン又は4-ジメチルアミノピリジンのような酸受容体としてともに作用する芳香族アミンならびにリチウム塩の存在下で反応させて得られ、所望の化合物とされる。
問題の反応は、0℃から室温で、C1-C4脂肪族炭化水素、好ましくはハロゲン化されたもので、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素もしくはテトラクロロエタンのような非プロトン溶媒中で一般的に行われる。
さらに、好ましくはC6-C10の芳香族アミンは、化学量論量又は好ましくは式-IIIの化合物の1.2モル当量に達することができるわずかな過剰量で用いられる。
式-IIの化合物とR2 がハロゲン原子を示す式-IIIの化合物との結合反応は副反応を生じ、ハロゲン化誘導体、つまり2-(2-クロロフェニル)-2-ハロゲノ酢酸メチル誘導体を形成することができる。
【0014】
しかし、反応混合物中のリチウム塩の存在により、副反応をかなり減じ、その結果、式-Iの化合物を高割合で得られることが、思いがけず見出された。
一例として、20℃でジクロロメタン中かつピリジンならびに過塩素酸リチウムの存在下での、p-ニトロベンゼンスルホニルクロリド又はp-トルエンスルホニルクロリドと(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ酢酸メチルとの反応は、92%収量の(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチルと85%収量の(R)(2-クロロフェニル)-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)酢酸メチルを5時間後にそれぞれ生じるが、過塩素酸リチウム非存在下で行なわれる同じ反応は、目的生成物をそれぞれ28%及び30%の収量でしか生じない。
このリチウム塩、例えば過塩素酸リチウム(LiClO4) 又はテトラフルオロ硼素酸リチウム(LiBF4)は、化学量論量で用いられる。しかし、このリチウム塩は、わずかに過剰で、式-IIIの化合物に関して1.2モル当量までとすることが好ましい。
【0015】
式-IIのエステルについては、(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ酢酸又は市販製品の(R)-2-クロロ-マンデル酸を、硫酸のような強酸の存在下でメタノールを用いてエステル化することによる非ラセミ化反応を用いて得ることができる。
上記の方法の変形によれば、式-Iのスルホニルオキシ誘導体は、触媒としての4-ジメチルアミノピリジンと脂肪族アミンのような別の酸受容体、例えばトリエチルアミンの存在下で、式-IIのエステルを式-IIIのハロゲン化物と反応させて製造し、所望の化合物とすることもできる。
この反応は、一般に-10〜+10℃、好ましくは0℃かつ既に記載したような非プロトン溶媒、特にジクロロメタン中で行われる。
上述の処理により、特に良好な収量、通常は90〜98%のオーダーで、鏡像異性体過剰率が99%より著しく多い式-Iのスルホニルオキシ誘導体を得ることができる。
前記のとおり、本発明のスルホニルオキシ誘導体は、クロピドグレルの製造に特に用いることができる。
【0016】
したがって、本発明の別の目的は、単独に用いられる塩基性剤の存在下又は水溶液中で、塩基又は塩の形態の4,5,6,7-テトラヒドロチエノ [3,2-c]ピリジンを式-Iのスルホニルオキシ誘導体で処理することによるクロピドグレルの製造であって、所望の化合物を得ることに関する。
用いられる反応媒体は、一般に、C2-C5 脂肪族エステル、例えばエチルもしくはイソプロピルアセテート、C1-C4 脂肪族アルコール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランもしくはイソプロピルエーテルのようなC4-C6 環状エステル又はC2-C6 脂肪族エステル、C2-C8 脂肪族ケトン、例えばメチルイソブチルケトンのような極性溶媒、又は好ましくはC1-C4 ハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素もしくはテトラクロロエタン、又はベンゼン、トルエンもしくはキシレンのようなC6-C10芳香族炭化水素のような非極性溶媒で、したがって水が反応媒体にある場合に二相系が形成される。この後者の場合、必要であれば、相転移触媒、例えば四級アンモニウム、ホスホニウム塩又はクラウンエーテルを用いることができる。
同様に、塩基性剤は、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムのようなアルカリ金属の炭酸塩、又は例えば重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウムのようなアルカリ金属の重炭酸塩であってもよい。反応は、室温から用いた媒体の還流温度までで行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
公知化合物である4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンについては、化学量論量で用いられるが、通常は、式-Iのスルホニルオキシ誘導体に関して2.5モル当量と同じくらい過剰であることが好ましい。
約4時間かけて80℃でトルエン、メチルイソブチルケトン又はイソプロピルアセテート中でこの後者の反応を行なうことによって、95%より過剰な化学収量で鏡像異性体過剰率が80〜88%のクロピドグレルを得ることができる。
40℃の温度で溶媒としてジクロロメタンを用いることによって、
a) クロピドグレルに転化される%は、96%の鏡像異性体過剰率で5時間で94〜95%に達することができる、
b) (R)-2-(4-クロロベンゼンスルホニルオキシ)-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチルを原料として、クロピドグレルへの転化は10時間後に100%に達し、鏡像異性体過剰率は96%である、
c) (R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチルを原料として、クロピドグレルへの転化が30分後に100%に達し、鏡像異性体過剰率は98%より多い。
【0018】
別の経路を用いて、本発明のスルホニルオキシ誘導体と2-(チエン-2-イル)エチルアミンから、クロピドグレルを製造することができる。
したがって、本発明は、以下の方法:
a) 単独で用いられる塩基性剤の存在下又は水溶液中で、塩基もしくは塩の形態の2-(チエン-2-イル)エチルアミンを式-Iのスルホニルオキシ誘導体と反応させ、式(IV):
【化4】

【0019】
を有する(+)-(S)-α-(2-(チエン-2-イル)エチルアミノ)-α-(2-クロロフェニル)酢酸メチルを形成し、
b) このようにして形成したチエニルエチルアミン誘導体をホルミル化剤と反応させ、酸の存在下で環化し、所望の化合物を得ること
によるクロピドグレルの製造にも適用される。
上記の方法で用いられるホルミル化剤は、
- ホルムアルデヒドもしくは反応形態でホルムアルデヒドを放出することが一般に知られているいずれかの化合物、例えばその水和物もしくはその重合誘導体(これらのホルミル化剤は、本発明に関して好ましいと考えられる)、又は
- 一般式; R3-CH2-R4 (V)
[式中、R3はハロゲン原子、C1-C4 アルキルオキシ基、C1-C4 アルキルチオ基又はアミノ基、かつR4 はC1-C4 アルコキシ基、C1-C4 アルキルチオ基、C2-C5 アルコキシカルボニルもしくはフェノキシカルボニル基]
の化合物、
- 又は一般式:
【化5】

【0020】
[Zは、O、NH又はSを示し、例えばs-トリオキサンである]
の複素環式化合物であってもよい。
公知化合物である2-(チエン-2-イル)エチルアミンを使用する工程は、4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンの使用について前述したのと同じ条件下で行うことができる。
ホルミル化と環化の工程は、欧州特許第0466569号に報告されているように、ヒドロキシメチレンアミンもしくはトリメチレンアミン型の複素環のような中間化合物を生じることができる。
したがって、ホルミル化剤と環化剤での反応は、連続的に可能であれば、問題の中間化合物を単離して行うか、又は逆に同時に行うことができる。
反応が連続的に行われる場合、ホルミル化剤に関与する工程は、エーテルあるいはベンゼン、トルエン、キシレンもしくは石油エーテルのような炭化水素溶媒、又は塩化メチレンもしくはジクロロエタンのようなハロゲン化溶媒の存在下で任意に行なうことができる。
次に、水、アルコール、ジメチルホルムアミドのような極性溶媒又はこれらの溶媒の混合物中で、環化が行われる。
ホルミル化剤として、ホルムアルデヒドが一般的に好ましく、これを水溶液形態で反応溶媒に加えることができる。
【0021】
酸は有機又は無機酸であってもよく、一般には、硫酸のような強酸もしくは塩酸のような水素酸、又はメタンスルホン酸のようなスルホン酸であってもよい。
反応が同時に行われる場合、反応媒体は水又はアルコールのような極性溶媒からなり、無機又は有機であってもよい酸は、好ましくは用いられる式-IVの化合物に対して化学量論量で媒体に加えられる。この場合、この酸は強酸で、式-IVの化合物との塩の形態で媒体に単に加えられる。蟻酸や酢酸のような酸性溶媒も用いることができ、蟻酸は、パラホルムアルデヒドと合わせることが特に好ましい。
クロピドグレルは本発明の方法、つまり上記の種々の方法を用いて得られ、必要であれば、再結晶法を用いる通常の方法か、クロマトグラフィー法により精製することができる。
以下の限定されない実施例は、本発明を例示するものである。
【実施例】
【0022】
製造
(R)-2-ヒドロキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル
底部にダブルジャケットとバルブを備え、機械攪拌機、温度計ならびにコンデンサーを備えた1000mlの反応器に、120g (0.643モル)の (R)-2-ヒドロキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸、480mlのメタノール及び4.8gの 95%硫酸を充填する。次いで得られた溶液を2時間還流下で加熱し、 過剰なメタノールを減圧下で除く。次に、油状の残渣をジクロロメタン650mlと10%炭酸カリウム水溶液240g中に採取する。
デカントした後、塩素化された相を水 200mlで洗浄し、減圧下で濃縮する。
このようにして、124.4gの(R)-2-ヒドロキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチルが、無色油状物の形態で得られる。
収率: 94%
キラル相の液体クロマトグラフィーによる光学純度:>99%
NMR (CDCl3): 7.4-7.2 ppm (マルチプレット4 芳香族プロトン)
5.57 ppm (シングレット、1 CHプロトン)
3.76 ppm (シングレット、3 OCH3 プロトン)
3.59 ppm (幅広いシングレット、1 OHプロトン)
【0023】
実施例1〜7
(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル
(実施例 1)
磁気攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた乾燥した 100mlのトリコール(tricol)丸底フラスコに、窒素雰囲気下で操作して、過塩素酸リチウム3.81g(36mmol)、ベンゼンスルホニルクロライド30mmol及び 45mlのジクロロメタンを入れる。
得られた溶液に、2.9ml (36mmol)のピリジンを加える。次いで、不均一な白色反応媒体を15分攪拌し、15mlのジクロロエタンに溶解した6.0gの(R)-2-ヒドロキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチルを加える。
ミルク状の得られた反応混合物を5時間攪拌し、次いで1N塩酸120mlとジクロロメタン 240mlの攪拌混合物に注ぐ。デカントした後、塩素化相を水120mlで洗浄し、減圧下で濃縮する。このようにして生じたスルホネートは、無色の粘性液体となる。シリカカラムでの精製によって、分析的に純粋なサンプルとする。
【0024】
このようにして、(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチルが得られる。
収率: 90%
光学純度:>99%
【0025】
【数1】

【0026】
NMR (CDCl3) 7.88 ppm (二重のトリプレット、2芳香族プロトン)
7.63 〜 7.55 ppm (マルチプレット、1芳香族プロトン)
7.50 〜 7.38 ppm (マルチプレット、3芳香族プロトン)
7.33 〜 7.17 ppm (マルチプレット、3芳香族プロトン)
6.30ppm (シングレット、1 (CH)プロトン)
3.70ppm (シングレット、1 (OCH3)プロトン)。
【0027】
前記と同様にして、以下の化合物を製造した。
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4-p-トルエンスルホニルオキシ)アセテート
(実施例2)
収率: 85%
光学純度:>99%
【0028】
【数2】

【0029】
NMR (CDCl3) 7.75 〜 7.25 ppm (マルチプレット、8芳香族プロトン)
5.79 ppm (シングレット、1 (CH-O)プロトン)
3.67 ppm (シングレット、3 (OCH3)プロトン)
2.41 ppm (シングレット、3 (CH3-フェニル)プロトン)
【0030】
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-メタンスルホニルオキシ酢酸メチル
(実施例3)
収率: 87%
光学純度:>99%
【0031】
【数3】

【0032】
NMR (CDCl3) 7.49 〜 7.28 ppm (マルチプレット、4芳香族プロトン)
6.40 ppm (シングレット、1 (CH)プロトン)
3.79 ppm (シングレット、3 (OCH3)プロトン)
3.14 ppm (シングレット、3 (SO2CH3)プロトン)
(R)-2-(4-クロロベンゼンスルホニルオキシ)-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル
(実施例4)
収率: 90%
光学純度:>99%
NMR (CDCl3) 7.8 及び 7.43 ppm (2ダブレット、4芳香族プロトン)
7.42 〜 7.18 ppm (マルチプレット、4芳香族プロトン)
6.31 ppm (シングレット、1 (CH)プロトン)
3.73 ppm (シングレット、3 (OCH3)プロトン)
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,4,6-トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル
(実施例5)
収率: 93%
光学純度:>99%
NMR (CDCl3) 7.50 〜 7.20 ppm (マルチプレット、4芳香族プロトン)
6.92 ppm (シングレット、2芳香族プロトン)
6.21 ppm (シングレット、1 (CH)プロトン)
3.69 ppm (シングレット、3 (OCH3)プロトン)
2.62 ppm (シングレット、6 (CH3)プロトン)
2.30ppm (シングレット、3 (CH3)プロトン)
【0033】
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル
(実施例6)
収率: 93%
光学純度:>99%
NMR (CDCl3) 7.50 〜 7.20 ppm (マルチプレット、4芳香族プロトン)
7.14 ppm (シングレット、2芳香族プロトン)
6.25 ppm (シングレット、1 (CH)プロトン)
4.09 ppm (セプタプレット、2 (2CH-イソプロピル)プロトン)
3.71 ppm (シングレット、3 (OCH3)プロトン)
2.85ppm (セプタプレット、1 (CH イソプロピル)プロトン)
1.24 ppm (ダブレット、6 (2 CH3)プロトン)
1.22 ppm (ダブレット、6 (2 CH3)プロトン)
1.10 ppm (ダブレット、6 (2 CH3)プロトン)
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル
(実施例7)
収率: 92%
光学純度:>99%
NMR (CDCl3) 8.29 及び 8.06 ppm (2ダブレット、4芳香族プロトン)
7.40 〜 7.15 ppm (マルチプレット、4芳香族プロトン)
6.37 ppm (シングレット、1 (CH)プロトン)
3.74 ppm (シングレット、3 (OCH3)プロトン)
【0034】
実施例8
(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル
ダブルジャケット、磁気攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた乾燥したトリコールの丸底フラスコに、窒素雰囲気下で操作して、0.72g (6mmol)の4-ジメチルアミノピリジン、12.0g(60mmol)の(R)-2-ヒドロキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル、6.06g (60mmol)のトリエチルアミン、次いで20 mlのジクロロメタンを入れる。得られた無色の溶液を0°Cに冷やし、次いでこの温度で操作して、ジクロロメタン30ml溶液中のベンゼンスルホニルクロライド60mmolを加える。反応混合物は0℃で3時間攪拌し、次いで 1N塩酸240mlとジクロロメタン240mlからなる攪拌混合物に加える。
デカントした後、塩素化相を水120 mlで洗浄し、次いで減圧下で濃縮する。
このようにして得られたスルホナートは、無色の粘性液体の形態である。分析的に純粋なサンプルは、シリカカラムで精製後に得られる。
このようにして、(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチルが得られる:
収率: 97%
光学純度:>99%
【0035】
【数4】

【0036】
上記と同様の方法にしたがって、以下の化合物を得た。
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル
(実施例9)
収率: 88%
光学純度:>99%
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,5-ジクロロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチル
(実施例10)
収率: 95%
光学純度:>99%
NMR (CDCl3) 7.98 ppm (ダブレット、1芳香族プロトン)
7.15 〜 7.50 ppm (マルチプレット、6芳香族プロトン)
6.38 ppm (シングレット、1 (CH)プロトン)
3.74 ppm (シングレット、3 (OCH3)プロトン)
実施例11
(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル
この化合物は、ジクロロメタンをトルエンに代える以外は実施例8に記載の方法を用いて得た。
収率: 95%
【0037】
実施例12
(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル
実施例8のように備えられた乾燥したトリコールの丸底フラスコに、0.72g(6mmol; 0.1当量)の4-ジメチルアミノピリジン、12.0g (60mmol; 1当量)の(R)-2-ヒドロキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチル及び7.8 g(78mmol; 1.3当量)のトリエチルアミンならびに20 mlのジクロロメタンを入れる。得られた無色の溶液を0℃に冷やし、次いでこの温度で操作して、ジクロロメタン30ml溶液中の6.06g (60mmol; 1当量)のベンゼンスルホニルクロライドを加える。反応混合物は3時間 0℃で攪拌し、次いで1N塩酸240mlとジクロロメタン240mlからなる攪拌混合物に加え、この混合物を攪拌する。
デカントした後、塩素化相を希釈塩酸、次いで水で洗浄し、減圧下で濃縮する。分析的に純粋なサンプルが、シリカカラムで精製後に得られる。
このようにして、(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチルが得られる。
収率: 98%
光学純度: 100% (S(+) エナンチオマーは検出されない)。
【0038】
製造例1
(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ [3,2-c]-5-ピリジル)酢酸メチル
ダブルジャケット、磁気攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた乾燥した50ml のトリコールの丸底フラスコに、溶媒7.5ml溶液中Ymmolの4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンと30%炭酸カリウム水溶液2.85gを入れる。10分攪拌後、溶媒2.5mlに予め溶かした式-Iの化合物5mmolを加える。
こうして得た二相媒体は、示した時間、還流下で加熱し、70℃に冷やし、デカントした。
このようにして、(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]-5-ピリジル)酢酸メチル、すなわちクロピドグレルが得られる。
NMR (CDCl3) 7.70 ppm (マルチプレット、ベンゼンの1 芳香族プロトン)
7.41 ppm (マルチプレット、ベンゼンの1芳香族プロトン)
7.33 〜 7.22 ppm (マルチプレット、ベンゼンの2芳香族プロトン)
7.06 ppm (ダブレット、チオフェンの1芳香族プロトン)
6.67 ppm (ダブレット、チオフェンの 1芳香族プロトン)
4.93 ppm (シングレット、1 CHCOプロトン)
3.73 ppm (シングレット、3 OCH3 プロトン)
3.76 及び 3.64 ppm (2 ダブレット、2 CH3 プロトン)
2.89 ppm (シングレット、4 2CH2 プロトン)
用いられる式-Iの化合物、用いられる4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンの
濃度によって、上記溶媒を用いて得られる収率及び反応時間は、下記のとおりである:
【0039】
【表1】

【0040】
製造例2
(S)-2-(2-クロロフェニル-2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ [3,2-c]-5-ピリジル)酢酸メチル
ダブルジャケット、磁気攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた50mlのトリコールの丸底フラスコに、ジクロロメタン7.5ml溶液中1.2mmolの 4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンと30%炭酸カリウム水溶液2.85gを入れる。10分攪拌後、溶媒2.5mlに予め溶かした5mmolの(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,5-ジクロロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチルを加える。
こうして得た二相の媒体を3.5時間還流下で加熱し、70℃に冷やし、次いでデカントする。
このようにして、(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]-5-ピリジル)酢酸メチルが得られる。
収率: 89%
光学純度: 96%
【0041】
製造例3
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ [3,2-c]-5-ピリジル)ヘミスルフェート、すなわちクロピドグレルヘミスルフェート
a) (+)-(S)-α-(2-チエン-2-イル) エチルアミノ)-α-(2-クロロフェニル)酢酸メチル
ダブルジャケット、モーター駆動攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた250mlの反応器に、ジクロロメタン67.5ml溶液中の 7.62gの2-(チエン-2-イル)エチルアミン (0.06mol; スルホニルオキシ誘導体に関して1.2 mol当量) と水30ml中の重炭酸カリウム(0.07mol;スルホニルオキシ誘導体に関して 1.4当量) 7.0gの水溶液を入れる。5分攪拌後、ジクロロメタン40mlに溶かした0.05mol (1当量)の式-I化合物を加える。
このようにして得た二相の媒体を示した時間還流下で加熱し、冷却し、次いでデカントし、(+)メチル (S)-α-(2-チエン-2-イル)エチルアミノ-α-(2-クロロフェニル)アセテート(式IV)を回収する。
用いられる式-Iの化合物と上記反応時間によって、以下の収量が得られる:
【0042】
【表2】

【0043】
b) クロピドグレルヘミスルフェート
攪拌しながら、200mlの塩化メチレン溶液中の20.5gの(+)メチル (S)-α-(2-チエン-2-
イル)エチルアミノ-α-(2-クロロフェニル)アセテートを、25分かけて40mlの30%(w/w)ホルムアルデヒド水溶液に加える。
3時間攪拌後、有機相をデカントし、水で洗浄して乾燥し、溶媒を蒸留する。残渣は 50mlの塩化メチレンに溶かし、その溶液を60℃の温度で6N塩酸を含む無水N,N-ジメチルホルムアミド100mlに加える。1時間半後、減圧下で溶媒を蒸留して除き、残渣を200mlの塩化メチレンと100mlの水に溶かす。
重炭酸ナトリウムを加えて、その塩化水素から塩基を放出し、有機相をデカントし、乾燥して減圧下濃縮し、塩基がない形態のクロピドグレルとする。
次いで、この塩基化合物のヘミスルフェートを、濃硫酸(96%)4.9gと反応させてアセトン150ml中に形成する。
このようにして、クロピドグレルヘミスルフェート17gが得られる。
【0044】
【数5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

[式中、R1 は、ベンジル基、1もしくは幾つかのハロゲン原子で置換されてもよいC1-C4 アルキルあるいは1もしくは幾つかのハロゲン原子、又は1もしくは幾つかの直鎖状あるいは分枝状のC1-C4 アルキル基又はニトロ基で置換されてもよいフェニル基を示す]
を有する(R)-スルホニルオキシ酢酸エステルの誘導体。
【請求項2】
R1 がメチル、エチル、プロピル、トリフルオロメチル、ベンジル、フェニル、クロロフェニル、トリル、トリメチルフェニル、トリイソプロピルフェニル又はニトロフェニル基を示す請求項1に記載の(R)-スルホニルオキシ酢酸エステル誘導体。
【請求項3】
(R)-2-ベンゼンスルホニルオキシ-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチルである請求項1に記載の(R)-スルホニルオキシ酢酸エステルの誘導体。
【請求項4】
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,4,6-トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチルである請求項1に記載の(R)-スルホニルオキシ酢酸エステルの誘導体。
【請求項5】
(R)-2-(4-クロロベンゼンスルホニルオキシ)-2-(2-クロロフェニル)酢酸メチルである請求項1に記載の(R)-スルホニルオキシ酢酸エステルの誘導体。
【請求項6】
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチルである請求項1に記載の(R)-スルホニルオキシ酢酸エステルの誘導体。
【請求項7】
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチルである請求項1に記載の(R)-スルホニルオキシ酢酸エステルの誘導体。
【請求項8】
(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2,5-ジクロロベンゼンスルホニルオキシ)酢酸メチルである請求項1に記載の(R)-スルホニルオキシ酢酸エステルの誘導体。

【公開番号】特開2009−137989(P2009−137989A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2505(P2009−2505)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【分割の表示】特願2005−366868(P2005−366868)の分割
【原出願日】平成10年9月29日(1998.9.29)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】