ヒドロゲルを使用した髄核の置換または補充
【課題】本発明はヒドロゲルを使用した髄核の置換または補充に関する。
【解決手段】椎間板の髄核は、椎間板の中央領域に挿入された細長い生理学的に十分に水和されたヒドロゲル補綴具により補充されるか或は置換され、この際、補綴具はそれ自身に折り重なって線維輪部の中央領域内に補綴具物体を形成することができる。ヒドロゲル補綴具は挿入孔を通る補綴具の放出を防ぐのを助ける拡大部分を有してもよい。補綴具を挿入するための器具は、十分な量が移植された後、椎間板の中央領域内で細長い補綴具を切断するためのカッターを有している。
【解決手段】椎間板の髄核は、椎間板の中央領域に挿入された細長い生理学的に十分に水和されたヒドロゲル補綴具により補充されるか或は置換され、この際、補綴具はそれ自身に折り重なって線維輪部の中央領域内に補綴具物体を形成することができる。ヒドロゲル補綴具は挿入孔を通る補綴具の放出を防ぐのを助ける拡大部分を有してもよい。補綴具を挿入するための器具は、十分な量が移植された後、椎間板の中央領域内で細長い補綴具を切断するためのカッターを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対するクロスレファレンス]
本願は、2004年5月21日に出願された米国暫定出願第60/572,764号(その全開示は出典を明示することによって本願明細書の開示の一部とされる)の利益を請求する。
本発明は、椎間板の生来の髄核を置換するか或いは補充することに関し、より詳細には、細長いヒドロゲル移植片を使用して髄核を置換するか或いは補充することに関する。
【背景技術】
【0002】
椎間板の損傷または年に関連した退化により生じられる慢性の背中の痛み、代表的には、腰の痛みは多くの患者が経験する状態である。
背中の痛みのための現在の治療選択肢は、伝統的なベットでの安静から脊髄融合および全体椎間板置換を含む非常に侵襲的な外科手順まで及ぶ。
人間の椎間板は2つの主な構造体、すなわち、線維輪部または輪部と称せられる外側または周囲の腱構造体と、線維輪部内の概ね中央の領域に位置された内側のゼラチン質髄核とで構成されている。代表的に自然に老化と関連された核の退化は椎間板の悪化および機能の損失を引き起こす。その結果、背中の痛みの除去のための他の外科的選択肢は輪部をそのままにして核を置換することである。核の置換の目的は痛みを除去すること、椎間板に対する健康な生理学的機能を回復すること、および輪部における追加の摩損を防ぐことである。
【0003】
髄核のゼラチン質性質を考慮して、生来の髄核を置換するのにヒドロゲルを使用することが提案されており、このような置換のための物質および方法が提案されている。
ヒドロゲルは、代表的には、固形の概ね不溶性の親水性ポリマーから形成され、それらの水和状態では、概ね水膨潤構造を有する。生来の髄核の機械的特性に近似する機械的特性を有し得るヒドロゲル移植片を設計すること、およびこのようなヒドロゲル補綴具を椎間板の中央領域の中へ、すなわち、髄核により通常占められる空洞の中へ移植することが提案されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、椎間板の髄核は、或る量の生物適合性の生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを細長いヒドロゲル物体の形態で線維輪部の中央領域に導入することにより補充されるか、或いは置換される。
従って、本発明の1つの面は椎間板の髄核を置換するか或いは補充する方法を提供することである。
本発明の更なる面は、実質的に十分に生理学的に水和されたヒドロゲルを椎間板の中央領域に導入することにより髄核を補充するか或は置換することである。
【0005】
本発明の更なる面はこのようなヒドロゲルを椎間板の中央領域に導入することであり、ヒドロゲルは少なくとも約5:1の長さ対最大の横方向寸法の比を有する細長い固形の物体の形態で導入される。
本発明の更なる面は、平衡水交換、例えば、等浸透圧性の点から局部組織、すなわち、髄核および線維輪部と生物適合性である生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを利用している髄核補綴具を提供することである。
【0006】
本発明の更なる面は、水和レベルが椎間板の通常の生理学的荷重支持において出会う付加荷重と実質的に無関係であり(すなわち、約150Nないし約1500N)、それにより一定量の水和ヒドロゲルをその場に供給する髄核補綴具を提供することである。
本発明の更なる面は、臨床医に移植手術にわって改良制御をもたらす生理学的に実質的に十分に水和されたヒドロゲルを提供することである。
本発明の更なる面は下記の本発明の説明および添付図面から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
添付図面を参照して本発明の実施形態を以下に詳細に説明する。
正常な人間の髄核の量が約5立方センチメートル(cc)であることは一般に認識されている。しかしながら、正確な測定は困難である。何故なら、核と周囲の輪部との間の界面が、特により年取った患者では、しばしば、はっきりしないからである。正常に測定されないが、(しばしば、椎間板切除と呼ばれる)代表的な核切除手順は核の0.1ccと2ccとの間の除去を伴う。従って、核置換の概念は、椎間板の正常の機能を十分に回復するために同様な量のポリマー物質の挿入を意図している。
【0008】
本発明は、核切除手順において除去される量の核を置換すること、または年齢、損傷などの理由により退化された髄核を比較的低い弾性率のヒドロゲルポリマーで補給することに対処している。本発明によれば、比較的長くて薄い移植片を幅狭いかニューレを通して椎間板の中央空洞に挿入する。この補綴具は線維輪部を通して、或は隣接した脊髄体および脊髄端板を通して挿入されてもよい。核空洞に入った後、薄い移植片は曲がってそれ自身に折り重なり、そして絡まって、圧縮されて単一の一体構造体のように作用するようになってもよい。この方法はほとんどのヒドロゲル物質に適しているが、本発明は主として、高い水含有量で低い弾性率(<4MPa)のポリマーを用いるものである。何故なら、このようなポリマーは周囲の収容構造体に容易に一致する傾向があり、従って核空洞の十分な一致充填に対処するからである。
【0009】
本発明は、接触する椎間板における組織に対して好ましくは浸透的に均衡化されたヒドロゲルを使用する。このようなヒドロゲルは、周囲の組織に対して水をいずれの可なりの量で吸収することもないし、且つ放出することもなく、かくしてここでは、「生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを称される。このようなヒドロゲルは、移植されたときに有する水和度を保持し、このようなヒドロゲルから作製された補綴具は、移植された後、水和度の変化に起因したその機械的特性のいずれのかなりの変化も受けない。その結果、本発明による細長い比較的幅狭い物体の形態のこのようなヒドロゲルがここに記載の手順により移植されると、このヒドロゲルは、椎間板の機能をできるだけ回復し、その後に機械的特性の変化を受けないような量が移植されるまで、椎間板の髄核空洞における有効な空間を徐々に埋める。このようなヒドロゲルは、代表的には比較的柔らかく、すなわち、比較的低い弾性率を有しており、従って挿入される空洞に一致し、それにより空洞をいっぱいに詰め込んで埋めるのに良く適している。かくして、空洞の完全な埋めは移植時に本質的に機械的な手順により達成される。
【0010】
更に、本発明は、主ボディの横断面積より実質的に大きい横断面積を有する末端部分を備えた移植片の或る具体例を用意することにより線維輪部における穴または線維輪部における他の穴または欠陥を通して移植片が後に放出される恐れを低減している。変更例として、或は更に、移植片はその端部間に位置決めされた拡張部分を有してもよい。このような設計は、髄核空洞からの移植片の放出を防ぐ追加の保護手段を設けている。
水和ヒドロゲルは生来の髄核の全体または部分除去により線維輪部の中央領域内に形成された空洞に挿入されてもよい。変更例として、ヒドロゲル物質は、生来の髄核が退化されるか、或は線維輪部におけるヘルニア化または破壊により8少なくとも部分的に消失された患者における生来の髄核を補充するために、生来の或は人造の空洞が生じられていない線維輪部の核空洞に挿入されてもよい。また、本発明によれば、ヒドロゲル物質の挿入に先立って、可撓性の収容容器、バッグ、囲い体、容器などを線維輪部の核空洞に導入し、次いでヒドロゲル物質を可撓性の収容容器、バッグ、囲い体、容器などに挿入する。この実施形態では、バッグまたは容器はヒドロゲル物質を線維輪部の核空洞内に収容し、そして後の放出を防ぐための追加の手段として役立つ。
【0011】
本発明の方法における使用に適したヒドロゲルとしては、以上で指摘した適切な弾性率を有する任意の生物適合性ヒドロゲルがある。このようなヒドロゲルは当業者には周知であり、公知のヒドロゲルの中から適切なヒドロゲルが容易に選択され得る。本発明における使用に適した代表的なヒドロゲルとしては、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルピロリドン(PVP)のコポリマー、メチルメタクリレートおよびビニルピロリドンのコポリマー、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)などが挙げられる。幾つかのヒドロゲルが、中でも、米国特許第5,976,186号(バウ)、米国特許第6,280,475号(バウ)、米国特許第6,264,695号(ストイ)、米国特許第6,620,196号(テリウ)、ヨーロッパ特許第EP1229873号および米国特許出願第号(それらの各々の全体開示は出典を明示することにより本願明細書の開示の一部とされる)に開示されている。
【0012】
固形の生理学的に十分に水和されたヒドロゲルは、以上に指摘したように、好ましくは、椎間板における周囲の組織に対して浸透的に均衡化される。このような組織は、一般には、周囲の生理学的流体と浸透平衡にあり、従って通常の生理学的流体の浸透圧と同等な浸透圧を示し、すなわち、周囲の生理学的流体に対して等浸透圧であると言える。ヒドロゲル補綴具は移植前に等浸透圧溶液と平衡化され、それにより前述のような生理学的に十分な水和を達成する。代表的には、椎間空間における生理学的流体は普通の適度の物理的活性下で0.1ないし0.3の範囲内の浸透圧を示す。従って、この補綴具は好ましくは、実質的に前記範囲内の浸透圧、例えば、約0.2メガパスカルの浸透圧を有する溶液と平衡化される。いずれの従来の生物適合性溶液をも使用することができる。好適な平衡化媒体は、実質的に等浸透圧の水溶液である。このような溶液は当業者には周知であり、人間の身体の生理学的流体の浸透圧に実質的に等しい浸透圧を有している。このような等浸透圧の水溶液は補綴具の後の移植と適合する任意の従来の溶質を含有してもよい。好適な溶質は任意の可なりの量で補綴具に浸透しない比較的高分子のポリマーである。ポリエチレングリコール、デエキストランのような水溶性ポリマーがヒドロゲル補綴具を平衡化するのに使用される実質的に等浸透圧の水溶液の浸透に適した溶質である。等浸透圧の水溶液の配合および浸透は当業者には周知である。
【0013】
従って、本発明はヒドロゲルを水和する方法を意図しており、この方法は、水和の所望レベル、特に、水和の平衡レベルを達成するのに十分な時間、前記ヒドロゲルを実質的に等浸透圧の溶液と接触させることよりなる。接触は、好ましくは、ヒドロゲルを実質的に等浸透圧の溶液に浸漬することにより達成される。本発明によるヒドロゲルを水和する好適な方法では、実質的に等浸透圧の溶液はデキストランの等浸透圧水溶液である。かくして、本発明は、補綴具としての使用に適した形態の生物適合性ヒドロゲルを用意し、そして前述の本発明の方法によりヒドロゲルを水和することにより補綴具を製造することを意図しており、並びにそのように調製された補綴具を意図している。
固形の実質的に十分に水和されたヒドロゲルを、少なくとも約5:1の長さ対主要な直径または横方向寸法、すなわち、長さまたは最も長い寸法に対して概ね直角の寸法の寸法比を有する概ね細長い固体の形態で線維輪部の中央空洞に導入する。好ましくは、長さ対主要な横方向の寸法の寸法比は、少なくとも約10:1、より好ましくは、約50:1、更に好ましくは、少なくとも約100:1、更により好ましくは、少なくとも約500:1である。最も長い寸法対主要な横方向寸法の寸法比は1000:1またはそれ以上ほどに大きくてもよい。長さ対主要な横方向の寸法の特に好適な寸法比は約350:1である。
【0014】
本発明の方法に使用されるヒドロゲルは、代表的には、約4MPaより大きくない弾性率を有する。代表的には、十分に飽和されたヒドロゲルの弾性率は約0.05MPaと4.0MPaとの間である。好ましくは、弾性率および横方向寸法は、空洞の容積全体を実質的に埋めるために輪部の中央空洞への挿入時にヒドロゲル物体が容易に折り曲がることができるように選択される。従って、細長いヒドロゲル物体は、代表的には、約10mmより大きくない、好ましくは、約5mmより大きくない、より好ましくは、約2.5mmより大きくない主要な横方向寸法を有する。細長い物体の主要な横方向寸法はいずれの厳しい最小値に依存しない。この主要な横方向寸法は、例えば、線維輪部の中央空洞内に適当な折りパターンを設けるように、有利な長さ内に適当な量のヒドロゲル材を設けるように、或は他の理由で本発明の移植方法に関連して、選択されてもよい。代表的には、ヒドロゲル物体の主要な横方向寸法は少なくとも約0.5mmまたはそれ以上である。
【0015】
線維輪部の髄核に挿入されるべきヒドロゲル物体の長さおよび横方向寸法は空洞に挿入されるべきヒドロゲル物質の全量により定められる。従って、熟練した専門家は特定の状況において適切な長さおよび横方向寸法を容易に定めることができる。
細長いヒドロゲル物体の横方向横断面は任意の有利な形状であってもよい。例えば、細長いヒドロゲル物体は、所定の孔への挿通に有利であるか、或は特定のサイズまたは形状の空洞内で折り曲がる必要性により必要とされるのに応じて、概ね円形、台形、正方形、矩形、三日月形、または他の横方向横断面形状を有してもよい。
【0016】
線維輪部または隣接した脊髄端板における挿入孔を通るヒドロゲル物体の放出を防ぐために、椎間板の髄核空洞に挿入されるべきヒドロゲル物体には、その一端または両端により大きい横方向の横断面の一部が設けられてもよい。例えば、細長いヒドロゲル物体のいずれかの端部または両端部には、細長いヒドロゲル物体の主要直径、すなわち、中央または非末端の部分の直径よりいくらか大きい直径を有する概ね球状の末端部が設けられてもよい。変更例として、細長いヒドロゲル物体の端部のうちの一方または両方には、フレア状形状、または1つまたはそれ以上の横方向または角状のクロス部材が設けられてT-形状、Y-形状、X-形状などを形成してもよい。このような補綴具の例は図面に示されており、後で説明される。ヒドロゲル物体および/またはより大きい横方向横断面積の末端部分は、挿入カニューレへの挿通前に、変形されたり、圧縮されたりしてもよい。挿入後、このような変形された或は圧縮されたヒドロゲル物体は拡張して線維輪部の穴と通しての放出を防ぐように設計された形状をなす。この補綴具は、押出し、または圧縮成形、射出成形などのような従来の成形手順により製造され得る。
【0017】
本発明によれば、概ね細長い形状を有し、好ましくは、比較的低い弾性率と、約5mmより大きくない内径を有するカニューレを通して押出しされるように圧縮されることができるような横方向横断面輪郭とを有するヒドロゲルポリマー補綴具が提供される。或る実施形態では、挿入カニューレは3.5mmの内径を有してもよい。本発明の好適な実施形態では、比較的柔軟ポリマーヒドロゲルが、直径が約5mmより大きくなく、且つ長さが髄核を置換するか或は補充するのに十分な量のヒドロゲルを生じるのに十分であるような長い円筒形の形状で得られる。このような補綴具は約300ないし500mmほど長い長さを有してもよい。移植片が有利な処置のために長すぎないなら、この移植片は、その直径よりわずかに大きい外径を有する概ね剛性のカニューレ(金属またはプラスチック)内における外科手術に供されてもよい。核空洞が外科医の満足のいくように準備されたら、カニューレの端部を輪部を通して椎間板空洞に丁寧に挿入する。ヒドロゲル移植片の直径と同様な直径のロッドを使用して、移植片をカニューレから押出して空洞を埋める。これは、続けるのに必要とされる圧力が非常に高くなるまで、或は外科医が十分なヒドロゲルが挿入されたと満足されるまで、続けられる。この時点で、移植片を或る長さに切断し、切断されたたん部を核空洞に押し入れる。変更例として、移植片は、有利な処置のためにいくらか可撓性であることができる別体の貯蔵チューブ内に設けられてもよい。次いで、このような貯蔵チューブを、前述のように線維輪部を通して挿入されているか、或は挿入されるべき剛性のカニューレに連結しもよい。この実施形態では、移植片を挿入カニューレを通して椎間板の髄核に押し入れるために、流体圧力源が貯蔵中部の遠位短部に連結されてもよい。十分な量の移植片が挿入されると、この移植片を或る長さに切断し、残部を前述のように核空洞に押入れてもよい。いずれの手順でも、移植片は、適切なカッターを備えた挿入カニューレを使用して髄核領域内で切断されてもよい。このような挿入カニューレの例を後で説明する。
【0018】
本発明による生理学的に十分に水和されたヒドロゲルの移植の模範的な方法が図1ないし図5に概略的に示されている。
図1は脊髄102および椎間板104の一般構成を示す人間の背骨100の腰椎部分の左側横方向概略図を示している。本発明を腰椎椎間板について説明するが、熟練した専門家は、必要に応じて、適切な変更例とともに、同様な構造を有する椎間板のいずれかについて本発明を実施し得ることをわかるであろう。
本発明のヒドロゲル補綴具の移植が図2ないし図5に示されており、図1における線2−2により示されるような代表的な椎間板の上部図から手順が見られる。
【0019】
図2は、カニューレ202が椎間板104の線維輪部106を通して髄核空洞108に挿入された本発明のヒドロゲル補綴具の移植における初期工程を示している。髄核空洞108は、髄核の自然退化または漏れの理由で、或は生来の髄核の部分的または全体取出し後、補綴具を必要としている。カニューレ202は、任意の従来の外科技術により線維輪部106に挿通される、図示のような尖端部、または丸い先端部を有しているカニューレを含めて、任意の種類の従来のカニューレでもよい。カニューレ202はその中に装填sざれた本発明の補綴具を示すように部分的に切り離されて示されている。
補綴具の長さは、従来の手段により定められるように、髄核空洞における空の容積により決定される移植されるべきヒドロゲルの量に依存している。長さは、髄核空洞における空いた空間を埋めるのに、或は髄核を補充するのに必要とされる量が定められたら、補綴具の円筒形または他の幾何形状から容易に算出され得る。変更例として、補綴具は、内部圧力が元のままの髄核の機能を少なくとも部分的に回復するのに十分な値に達するまで、髄核の空洞に押し入れられてもよい。
【0020】
ヒドロゲル補綴具を髄核空洞に押し入れるのに必要とされる力は任意の従来の手段により供給されてもよい。移植されるべきヒドロゲルの量が比較的少ないならば、ヒドロゲルは剛性の押出しカニューレに収容され、そして堅いロッドで髄核空洞に押入れられればよい。変更例として、移植カニューレの外端部に直接または間接に連結された注射器またはポンプを使用してもよい。移植されるべきヒドロゲルの量が剛性の移植カニューレに有利に収容されることができる量を超えるならば、ヒドロゲルは、移植カニューレの外端部に連結される適切なサイズのチューブに供給され、そして前述のような任意の従来の手段により供給チューブから移植カニューレを通して押入れられればよい。
【0021】
図3は、カニューレから髄核空洞への移植片の押入れが始まった移植の初期段階を示している。図4は、補綴具が髄核空洞内のいずれの空の容積をも埋め始めており、必要に応じて空洞に嵌入するように自身に折り重ねられる補綴具の移植における中間段階を示している。図5は、補綴具が髄核空洞におけるいずれの空き容積をも実質的に埋めており、そして好ましくは生来の髄核の圧力に近似するのに十分な圧力が充填される移植の最終段階を示している。
必要量のヒドロゲル補綴具を髄核空洞に押入れた後、例えばカニューレに挿通されたロッドにより末端部を空洞に押入れる。好ましくは、補綴具の末端部を、補綴具が導入された穴からできるだけ遠い位置まで移動させる。この手順は、本発明によれば、埋められた髄核空洞内で補綴具が穴を見つけてそれを通して追い出されるかも知れない可能性を最小にする。
【0022】
本発明のヒドロゲルを移植する別の方法では、移植片を上または下脊髄体の通過により核空洞に導入することができる。この方法は線維輪部についていずれの外科手順をも必要としない利点を有するが、脊髄端板にアクセス孔を形成することを必要とする。この実施形態でも、ヒドロゲル補綴具の比較的小さい直径により、脊髄端板に比較的小さい孔を使用することが可能である。
【0023】
図6は、代表的には約5mmより大きくない主要な直径d1を有する図2ないし図5に示された方法に使用されるような概ね円筒形の補綴具を概略的に示している。このような補綴具の長さは、以上で指摘したように、髄核空洞に移植されるべきヒドロゲルの量に応じて変化してもよい。
本発明のヒドロゲルが移植されるときに通った穴を通して線維輪部の中央領域から追い出される可能性を減少させるために、少なくとも一部、すなわち、補綴具の長さの少なくとも一部は補綴具の他の部分のものより大きい横断面積を有してもよい。特に、補綴具のいずれかの端部または両端部は、移植されるときに通った穴を通して補綴具が追い出される可能性を減少させるために、例えば図7および図8に示されるように、移植片の中央部分または非末端部分のものより大きい横断面積(主要横断面積)を有する拡大部分で終わってもよい。端部は、代表的には、移植片が線維輪部の核空洞に挿入されて空洞の内側で一旦拡張するとき、圧縮される。
【0024】
従って、図7は、主要直径d2を有し且つより大きい直径のフレア状端部404を有する本発明の補綴具の別の実施形態402を示している。補綴具が線維輪部に形成された挿入穴を通って追い出される可能性を減少させるために、補綴具のいずれかの端部または両端部がフレア状にされてもよい。フレア状端部404は、髄核空洞への挿入のために端部の変形を容易にするために、例えば、周方向に間隔を隔てられた切欠き406を設けることにより区分されてもよい。
【0025】
図8は主要直径d3を有する本発明の補綴具の他の実施形態502を示しており、この場合、細長い補綴具は概ね球状のボール504で終わっている。補綴具502のいずれかの端部または両端部がボールで終わってもよい。熟練した専門家は、同じ原理を組み入れた本発明の補綴具の拡大端部分の多くの別の設計が可能であることを認めるであろう。
本発明の補綴具の他の実施形態では、移植片は補綴具の主要の横方向寸法(直径d4)より大きい少なくとも1つの横方向寸法を有する1つまたはそれ以上の繰り返し構造を有する。このような構造は補綴具の隣接部分のものより大きい横断面積を有する。好ましくは、このような拡大部分の少なくとも1つの横方向寸法は導入カニューレが挿入されるときに通った線維輪部における穴の直径より大きい。より好ましくは、拡大部分は、補綴具の軸線のまわりに概ね対称であり、そして導入カニューレが挿入されるときに通った線維輪部における穴の直径より大きい横方向直径を有している。このような補綴具の2つの例が図9および図10に示されている。熟練した専門家は、同じ原理を組み入れた多くの別の設計が可能であることを認めるであろう。
【0026】
図9は主要直径d4の補綴具602を示しており、この補綴具602はそれに沿って間隔を隔てられた多くの概ね球状の拡大部分(ビード)604を有している。これらのビードは、代表的には、補綴具が髄核空洞に挿入されると、移植片が線維輪部における核空洞に挿入されて拡張するときに、圧縮される。
図10は主要直径または横断寸法d5の補綴具702を示しており、この補綴具702はそれに沿って間隔を隔てられた多くの棘状突起704を有している。これらの棘は、ヒドロゲル補綴具のボディに沿って実質的に連続して位置決めされてもよいし、或は図9に示される補綴具の球状の拡大部分にいくらか類似して、補綴具のボディに沿って間隔を隔てられてもよい。これらの棘は、代表的には、補綴具が髄核空洞に挿入されると、移植片が線維輪部における核空洞に挿入されて拡張するときに、圧縮される。
【0027】
本発明のヒドロゲル補綴具を髄核空洞に挿入するための適当な挿入器具が図11に示されている。図11の器具800は概ねまっすぐなカニューレ部分802と、漏斗部分804と、継ぎ手806とを備えている。使用にあたり、圧縮形態で挿入されるべきである本発明の補綴具、例えば、図9に示されるもののようなビード付き補綴具を、継ぎ手806を介して挿入器具800に連結されている管状供給導管内に収容された状態で供給する。次いで、補綴具を供給導管から漏斗部分804と、まっすぐな部分802とを通して髄核空洞に押入れる。また、挿入器具800は、そのまっすぐな部分802に取付けられた補助チューブ810を通って取っ手またはリング812まで導かれている切断用のワイヤループ808を備えている。十分な量のヒドロゲルを核空洞に挿入したら、取っ手812を引っ張り、それにより切断用スープ808が締め付けられて補綴具を切断することによって、ヒドロゲルを空洞の内側で切断することができる。次いで、挿入器具800を引出して外科移植手順を完了する。
【0028】
挿入器具を使用して圧縮可能な補綴具を挿入することにより、移植片をカニューレを通して挿入することができ、このカニューレによれば、線維輪部における穴を最小にし、かくして輪部に対する外傷を最小にし、また挿入カニューレが引出された後に輪部に残るいずれもの通路の直径が挿入された補綴具の直径より小さいということになる。このような最小化された通路は補綴具のいずれもの可能な放出に対する更なるバリアをなす。熟練した専門家は、同じ原理を組み入れた挿入カニューレの多くの別の設計が可能であることを認めるであろう。
【0029】
本発明の実施を下記の例により例示する。
例1
この例は本発明の実施に使用される好適なヒドロゲルの調製を示している。
12.7gの量のPVA(クラレ社により販売されているモウイオール、132000Mw50000MnPD2.6;加水分解>99.1%)を0.127gのPVP(インターナショナルスペシャリティプロダクツにより販売されているプラスドン、58000Mw)、6.5gのBaSO4および81mlの水と混合する。この溶液を95℃で10時間加熱し、次いでモールドに入れる。次いで、モールドに収容された混合物をプログラミング可能な環境室に入れ、これに+30℃から−30℃までの範囲の6つの連続的な冷凍-解凍サイクルをそれぞれ21時間および3時間、施す。次いで、そのようにして形成されたゲルを脱型し、そしてデキストリンの実質的に等浸透圧の水溶液に1日間、入れてゲルの水含有量を人間の髄核のものと同様な状態に浸透圧的に釣り合わせる。最終的に、この補綴具をパックし、そして殺菌のために送る。
【0030】
例2
この例は例1で調製されたようなヒドロゲルの基本的な機械的特性を示している。
ヒドロゲルは、しばしば、非線形の機械的特性を示し、そして非常に変形可能な物質であり、かくして、それらの特性は試験および試験条件に非常に依存している。本発明に使用される好適なヒドロゲルを物質の増分弾性率を得るために下記のようにして試験した。従来の機械的試験機を使用して下記の如く引張り特性および圧縮特性を得た。
例1におけるように調製されたヒドロゲルの直径3.8mmおよび長さ100mmの試料について引張り試験を行なう。60mmのヒドロゲルのゲージ長さが各グリップ間に存在するように試料を両端部で握る。0.04Nの予備荷重を試料に加える。次いで、試料について引張り試験を60mm/分の割合で行なう。代表的な歪レベルに対応する点を通る線の傾斜として増分引張り弾性率を算出する。図12は代表的な引張り試験の出力を示している。以上に指摘したように試験された好適な実施形態の代表的な引張り弾性率の値は0.675MPa@50%歪である。
例1におけるように調製されたヒドロゲルの直径12.0mmおよび高さ8mmの試料について圧縮試験を行なう。試料を試験のために実質的に等浸透圧の溶液、例えば、デキストリンの実質的に等浸透圧の水溶液の37℃の浴に入れる。1Nの圧縮予備荷重を試料に加える。次いで、この試料について、圧縮試験を試験試料高さ/分の100%の割合で行なう。代表的な歪レベルに対応する点を通る線の傾斜として増分圧縮弾性率を算出する。代表的な圧縮試験のプロットを図13に示してある。本発明の好適な十分に水和されたヒドロゲルの代表的な圧縮弾性率の値は0.984MPa@15%歪である。
【0031】
例3
この例は或る荷重付加条件下の本発明の十分に水和されたヒドロゲルの水含有量の維持を示している。
応力緩和:
高さ8mm、直径12mmの物質試験試料を等浸透圧の水溶液の37℃の浴に入れる。16時間の15%変位の後に8時間の荷重除去回復よりなる応力緩和調査を試料について行う。試料を3つの連続的サイクルにより試験する。3サイクル試験の前後に質量および弾性率の値を算出する。代表的な試験サイクルにおいて課せられた条件のプロットが図14に示されている。例1において調製されたような十分に水和されたヒドロゲルの具体例は、この応力緩和プロトコル下で質量、弾性率および水含有量の5%未満の変化を示している。
疲労
下記のようにして生理学的荷重付加下で水含有量の変化について試験するために疲労調査を行なう。高さ8mm、直径12mmの試験試料を秤量し、測定し、そして試験して圧縮増分弾性率の値を定める。この試料を37℃の等浸透圧の水溶液の浴に入れ、次いで図15に示すように、5Hzの周波数で100万サイクル、0-15%変位によりサイクル試験する。サイクル試験の後、試験試料を再び秤量し、測定し、そして増分弾性率の値を算出する。例1において調製されたような十分に水和されたヒドロゲルの具体例は、この疲労プロトコル下で質量、弾性率および水含有量の5%未満の変化を示している。
【0032】
例4
この例は、本発明による生理学的に十分に水和されたヒドロゲル補綴具を使用した背骨運動部分の機械的特性の回復を示している。
髄核を置換し、そして種々の工程で椎間単位の屈曲性を測定して核の退化および回復をシミュレートするために本発明の方法を行なうことによって屈曲性実験を行なった。L4およびL5腰椎脊髄骨および元のままの線維輪部および髄核を有する脊髄骨間の椎間板を有しているL4/L5背骨運動部分の適切な試料を選択した。選択された試料は本質的に正常な髄核を有していた。この試料について、純粋なモーメントを使用してシミュレートされた屈曲-伸展連続運動を行なうことによって核置換手順の前、中および後に、4段階で屈曲性の測定を行なった。屈曲および伸展の規定角度の範囲に必要とされるトルクを加えた。結果を図16のチャートに示してある。
【0033】
4回の屈曲-伸展連続運動のうちの初めの連続運動を元のままの健康な椎間板について行った。その結果を曲線1に示してある。次いで、核を取外し、試料を曲線2に示されるように同じ付加モーメントにより試験した。従って、2番目の連続運動は激しく悪化された核をシミュレートしている。次いで、試料を本発明の生理学的に十分に水和された移植片と共に移植し、コアを部分的に満たした等浸透圧塩水溶液を使用して平衡化し、そして再び試験し、それにより幾らか退化された核または加圧なしで置換された核をシミュレートした。移植片は約3mmの直径を有する生理学的に十分に水和されたヒドロゲルよりなっており、この移植片を脊髄端板を通して挿入した。約120mmの長さの移植片を使用した。曲線3に示すように、運動範囲にわたる正常な生理学的値に向かう移動が見られた。最終的に、試料を本発明の生理学的に水和されたヒドロゲル移植片(直径約3mmのおよび長さ約120mm)と共に移植し、そして前述の技術を使用してコアを完全に埋めて加圧すると、曲線4に示すように、椎間板の機構の完全に近い回復が見られた。
【0034】
本発明の生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを使用した本発明の方法は臨床医に多くの利点をもたらす。移植されるべきヒドロゲルの量は、移植片の結果的に安定な寸法で移植片の所望の量を達成するために予め定められることができる。この移植方法は、患者の痛み反応の直接的な監視により適切なフィードバックを行なって椎間板核空洞の過剰加圧を回避するか、或は椎間板が化学的に敏感である状況を検出する。更に、放射線不透過性物質、例えば、BaSO4を含有する生理学的に実質的に十分に水和されたヒドロゲルの具体例を使用することによって、相互作用する放射線写真および/または蛍光透視的な可視化により移植を監視することが可能である。
また、生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを使用した本発明の方法は、核除去における変化した効果性に起因した患者の解剖学的構造の変化および椎間板空洞のサイズおよび/または形状の変化を容易に受入れることができると言う理由で、外科介入における融通性をもたらす。本発明の方法は、(核の部分除去による)完全核置換または部分的核置換、または核物質を予め除去することなしに移植片を単に加えることによる核の増強の選択肢をもたらす。
【0035】
本発明の補綴具および方法は、
可変形状の核空洞を埋めること;
核空洞への大きな入口または挿入開口部を必要とすることなしに定量的埋込みに対処すること;
挿入されるべきポリマーの随意に可変の長さを考慮することにより変化された定量的埋込みに対処すること;
比較的小さい横断面積の挿入開口部を設け、そして移植片の端部が線維輪部における挿入開口部に位置され、それにより挿入開口部を通る髄核空洞から脱出する可能性を最小にすることによって後の移植片の放出の可能性を最小にすること
に良く適している。
本発明を以上に説明したが、本発明の性質および精神から逸脱することなしに多くの変更例および/または変形例を行なうことができ、すべてのこのような変形例および/または変更例が本発明の範囲内に含まれるものであることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】人間の脊柱の一部の概略図である。
【図2】補綴具が移植されるのに通るカニューレが椎間板の線維輪部に挿通された、本発明の方法によりヒドロゲル物質を髄核空洞に移植する第1段階を概略的に示している図である。
【図3】カニューレを通して空洞へヒドロゲルを押入れることが始まった移植の第2段階を概略的に示している図である。
【図4】ヒドロゲル移植片の押入れが続いている移植の第3段階を概略的に示している図である。
【図5】空洞がヒドロゲルで実質的に埋められる移植の最終的な段階を概略的に示している図である。
【図6】本発明のヒドロゲル移植片の細長い概ね円筒形の具体例を示している図である。
【図7】本発明によるヒドロゲル移植片のフレア状端部付きの具体例を示している図である。
【図8】本発明によるヒドロゲル移植片のボール端部付きの具体例の図である。
【図9】長さに沿って間隔を置いて位置決めされたビードの形態の拡大部分を有する細長い構造体を備えている本発明の方法に使用されるヒドロゲル補綴具の具体例の図である。
【図10】長さに沿って位置決めされた方向性棘を有している本発明によるヒドロゲル移植片の具体例の図である。
【図11】本発明による細長いヒドロゲル補綴具を線維輪部を通して椎間板の中央領域に挿入するための器具の図である。
【図12】本発明のヒドロゲルの引張り特性の代表的な試験の結果を示している図である。
【図13】本発明のヒドロゲルの圧縮特性の代表的な試験の結果を示している図である。
【図14】本発明のヒドロゲルの応力緩和特性の代表的な試験の結果を示している図である。
【図15】本発明のヒドロゲルのための疲労試験条件を示している図である。
【図16】本発明によるヒドロゲル移植片を有する背骨運動部分についての機械的測定の結果を示している図である。
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対するクロスレファレンス]
本願は、2004年5月21日に出願された米国暫定出願第60/572,764号(その全開示は出典を明示することによって本願明細書の開示の一部とされる)の利益を請求する。
本発明は、椎間板の生来の髄核を置換するか或いは補充することに関し、より詳細には、細長いヒドロゲル移植片を使用して髄核を置換するか或いは補充することに関する。
【背景技術】
【0002】
椎間板の損傷または年に関連した退化により生じられる慢性の背中の痛み、代表的には、腰の痛みは多くの患者が経験する状態である。
背中の痛みのための現在の治療選択肢は、伝統的なベットでの安静から脊髄融合および全体椎間板置換を含む非常に侵襲的な外科手順まで及ぶ。
人間の椎間板は2つの主な構造体、すなわち、線維輪部または輪部と称せられる外側または周囲の腱構造体と、線維輪部内の概ね中央の領域に位置された内側のゼラチン質髄核とで構成されている。代表的に自然に老化と関連された核の退化は椎間板の悪化および機能の損失を引き起こす。その結果、背中の痛みの除去のための他の外科的選択肢は輪部をそのままにして核を置換することである。核の置換の目的は痛みを除去すること、椎間板に対する健康な生理学的機能を回復すること、および輪部における追加の摩損を防ぐことである。
【0003】
髄核のゼラチン質性質を考慮して、生来の髄核を置換するのにヒドロゲルを使用することが提案されており、このような置換のための物質および方法が提案されている。
ヒドロゲルは、代表的には、固形の概ね不溶性の親水性ポリマーから形成され、それらの水和状態では、概ね水膨潤構造を有する。生来の髄核の機械的特性に近似する機械的特性を有し得るヒドロゲル移植片を設計すること、およびこのようなヒドロゲル補綴具を椎間板の中央領域の中へ、すなわち、髄核により通常占められる空洞の中へ移植することが提案されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、椎間板の髄核は、或る量の生物適合性の生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを細長いヒドロゲル物体の形態で線維輪部の中央領域に導入することにより補充されるか、或いは置換される。
従って、本発明の1つの面は椎間板の髄核を置換するか或いは補充する方法を提供することである。
本発明の更なる面は、実質的に十分に生理学的に水和されたヒドロゲルを椎間板の中央領域に導入することにより髄核を補充するか或は置換することである。
【0005】
本発明の更なる面はこのようなヒドロゲルを椎間板の中央領域に導入することであり、ヒドロゲルは少なくとも約5:1の長さ対最大の横方向寸法の比を有する細長い固形の物体の形態で導入される。
本発明の更なる面は、平衡水交換、例えば、等浸透圧性の点から局部組織、すなわち、髄核および線維輪部と生物適合性である生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを利用している髄核補綴具を提供することである。
【0006】
本発明の更なる面は、水和レベルが椎間板の通常の生理学的荷重支持において出会う付加荷重と実質的に無関係であり(すなわち、約150Nないし約1500N)、それにより一定量の水和ヒドロゲルをその場に供給する髄核補綴具を提供することである。
本発明の更なる面は、臨床医に移植手術にわって改良制御をもたらす生理学的に実質的に十分に水和されたヒドロゲルを提供することである。
本発明の更なる面は下記の本発明の説明および添付図面から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
添付図面を参照して本発明の実施形態を以下に詳細に説明する。
正常な人間の髄核の量が約5立方センチメートル(cc)であることは一般に認識されている。しかしながら、正確な測定は困難である。何故なら、核と周囲の輪部との間の界面が、特により年取った患者では、しばしば、はっきりしないからである。正常に測定されないが、(しばしば、椎間板切除と呼ばれる)代表的な核切除手順は核の0.1ccと2ccとの間の除去を伴う。従って、核置換の概念は、椎間板の正常の機能を十分に回復するために同様な量のポリマー物質の挿入を意図している。
【0008】
本発明は、核切除手順において除去される量の核を置換すること、または年齢、損傷などの理由により退化された髄核を比較的低い弾性率のヒドロゲルポリマーで補給することに対処している。本発明によれば、比較的長くて薄い移植片を幅狭いかニューレを通して椎間板の中央空洞に挿入する。この補綴具は線維輪部を通して、或は隣接した脊髄体および脊髄端板を通して挿入されてもよい。核空洞に入った後、薄い移植片は曲がってそれ自身に折り重なり、そして絡まって、圧縮されて単一の一体構造体のように作用するようになってもよい。この方法はほとんどのヒドロゲル物質に適しているが、本発明は主として、高い水含有量で低い弾性率(<4MPa)のポリマーを用いるものである。何故なら、このようなポリマーは周囲の収容構造体に容易に一致する傾向があり、従って核空洞の十分な一致充填に対処するからである。
【0009】
本発明は、接触する椎間板における組織に対して好ましくは浸透的に均衡化されたヒドロゲルを使用する。このようなヒドロゲルは、周囲の組織に対して水をいずれの可なりの量で吸収することもないし、且つ放出することもなく、かくしてここでは、「生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを称される。このようなヒドロゲルは、移植されたときに有する水和度を保持し、このようなヒドロゲルから作製された補綴具は、移植された後、水和度の変化に起因したその機械的特性のいずれのかなりの変化も受けない。その結果、本発明による細長い比較的幅狭い物体の形態のこのようなヒドロゲルがここに記載の手順により移植されると、このヒドロゲルは、椎間板の機能をできるだけ回復し、その後に機械的特性の変化を受けないような量が移植されるまで、椎間板の髄核空洞における有効な空間を徐々に埋める。このようなヒドロゲルは、代表的には比較的柔らかく、すなわち、比較的低い弾性率を有しており、従って挿入される空洞に一致し、それにより空洞をいっぱいに詰め込んで埋めるのに良く適している。かくして、空洞の完全な埋めは移植時に本質的に機械的な手順により達成される。
【0010】
更に、本発明は、主ボディの横断面積より実質的に大きい横断面積を有する末端部分を備えた移植片の或る具体例を用意することにより線維輪部における穴または線維輪部における他の穴または欠陥を通して移植片が後に放出される恐れを低減している。変更例として、或は更に、移植片はその端部間に位置決めされた拡張部分を有してもよい。このような設計は、髄核空洞からの移植片の放出を防ぐ追加の保護手段を設けている。
水和ヒドロゲルは生来の髄核の全体または部分除去により線維輪部の中央領域内に形成された空洞に挿入されてもよい。変更例として、ヒドロゲル物質は、生来の髄核が退化されるか、或は線維輪部におけるヘルニア化または破壊により8少なくとも部分的に消失された患者における生来の髄核を補充するために、生来の或は人造の空洞が生じられていない線維輪部の核空洞に挿入されてもよい。また、本発明によれば、ヒドロゲル物質の挿入に先立って、可撓性の収容容器、バッグ、囲い体、容器などを線維輪部の核空洞に導入し、次いでヒドロゲル物質を可撓性の収容容器、バッグ、囲い体、容器などに挿入する。この実施形態では、バッグまたは容器はヒドロゲル物質を線維輪部の核空洞内に収容し、そして後の放出を防ぐための追加の手段として役立つ。
【0011】
本発明の方法における使用に適したヒドロゲルとしては、以上で指摘した適切な弾性率を有する任意の生物適合性ヒドロゲルがある。このようなヒドロゲルは当業者には周知であり、公知のヒドロゲルの中から適切なヒドロゲルが容易に選択され得る。本発明における使用に適した代表的なヒドロゲルとしては、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルピロリドン(PVP)のコポリマー、メチルメタクリレートおよびビニルピロリドンのコポリマー、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)などが挙げられる。幾つかのヒドロゲルが、中でも、米国特許第5,976,186号(バウ)、米国特許第6,280,475号(バウ)、米国特許第6,264,695号(ストイ)、米国特許第6,620,196号(テリウ)、ヨーロッパ特許第EP1229873号および米国特許出願第号(それらの各々の全体開示は出典を明示することにより本願明細書の開示の一部とされる)に開示されている。
【0012】
固形の生理学的に十分に水和されたヒドロゲルは、以上に指摘したように、好ましくは、椎間板における周囲の組織に対して浸透的に均衡化される。このような組織は、一般には、周囲の生理学的流体と浸透平衡にあり、従って通常の生理学的流体の浸透圧と同等な浸透圧を示し、すなわち、周囲の生理学的流体に対して等浸透圧であると言える。ヒドロゲル補綴具は移植前に等浸透圧溶液と平衡化され、それにより前述のような生理学的に十分な水和を達成する。代表的には、椎間空間における生理学的流体は普通の適度の物理的活性下で0.1ないし0.3の範囲内の浸透圧を示す。従って、この補綴具は好ましくは、実質的に前記範囲内の浸透圧、例えば、約0.2メガパスカルの浸透圧を有する溶液と平衡化される。いずれの従来の生物適合性溶液をも使用することができる。好適な平衡化媒体は、実質的に等浸透圧の水溶液である。このような溶液は当業者には周知であり、人間の身体の生理学的流体の浸透圧に実質的に等しい浸透圧を有している。このような等浸透圧の水溶液は補綴具の後の移植と適合する任意の従来の溶質を含有してもよい。好適な溶質は任意の可なりの量で補綴具に浸透しない比較的高分子のポリマーである。ポリエチレングリコール、デエキストランのような水溶性ポリマーがヒドロゲル補綴具を平衡化するのに使用される実質的に等浸透圧の水溶液の浸透に適した溶質である。等浸透圧の水溶液の配合および浸透は当業者には周知である。
【0013】
従って、本発明はヒドロゲルを水和する方法を意図しており、この方法は、水和の所望レベル、特に、水和の平衡レベルを達成するのに十分な時間、前記ヒドロゲルを実質的に等浸透圧の溶液と接触させることよりなる。接触は、好ましくは、ヒドロゲルを実質的に等浸透圧の溶液に浸漬することにより達成される。本発明によるヒドロゲルを水和する好適な方法では、実質的に等浸透圧の溶液はデキストランの等浸透圧水溶液である。かくして、本発明は、補綴具としての使用に適した形態の生物適合性ヒドロゲルを用意し、そして前述の本発明の方法によりヒドロゲルを水和することにより補綴具を製造することを意図しており、並びにそのように調製された補綴具を意図している。
固形の実質的に十分に水和されたヒドロゲルを、少なくとも約5:1の長さ対主要な直径または横方向寸法、すなわち、長さまたは最も長い寸法に対して概ね直角の寸法の寸法比を有する概ね細長い固体の形態で線維輪部の中央空洞に導入する。好ましくは、長さ対主要な横方向の寸法の寸法比は、少なくとも約10:1、より好ましくは、約50:1、更に好ましくは、少なくとも約100:1、更により好ましくは、少なくとも約500:1である。最も長い寸法対主要な横方向寸法の寸法比は1000:1またはそれ以上ほどに大きくてもよい。長さ対主要な横方向の寸法の特に好適な寸法比は約350:1である。
【0014】
本発明の方法に使用されるヒドロゲルは、代表的には、約4MPaより大きくない弾性率を有する。代表的には、十分に飽和されたヒドロゲルの弾性率は約0.05MPaと4.0MPaとの間である。好ましくは、弾性率および横方向寸法は、空洞の容積全体を実質的に埋めるために輪部の中央空洞への挿入時にヒドロゲル物体が容易に折り曲がることができるように選択される。従って、細長いヒドロゲル物体は、代表的には、約10mmより大きくない、好ましくは、約5mmより大きくない、より好ましくは、約2.5mmより大きくない主要な横方向寸法を有する。細長い物体の主要な横方向寸法はいずれの厳しい最小値に依存しない。この主要な横方向寸法は、例えば、線維輪部の中央空洞内に適当な折りパターンを設けるように、有利な長さ内に適当な量のヒドロゲル材を設けるように、或は他の理由で本発明の移植方法に関連して、選択されてもよい。代表的には、ヒドロゲル物体の主要な横方向寸法は少なくとも約0.5mmまたはそれ以上である。
【0015】
線維輪部の髄核に挿入されるべきヒドロゲル物体の長さおよび横方向寸法は空洞に挿入されるべきヒドロゲル物質の全量により定められる。従って、熟練した専門家は特定の状況において適切な長さおよび横方向寸法を容易に定めることができる。
細長いヒドロゲル物体の横方向横断面は任意の有利な形状であってもよい。例えば、細長いヒドロゲル物体は、所定の孔への挿通に有利であるか、或は特定のサイズまたは形状の空洞内で折り曲がる必要性により必要とされるのに応じて、概ね円形、台形、正方形、矩形、三日月形、または他の横方向横断面形状を有してもよい。
【0016】
線維輪部または隣接した脊髄端板における挿入孔を通るヒドロゲル物体の放出を防ぐために、椎間板の髄核空洞に挿入されるべきヒドロゲル物体には、その一端または両端により大きい横方向の横断面の一部が設けられてもよい。例えば、細長いヒドロゲル物体のいずれかの端部または両端部には、細長いヒドロゲル物体の主要直径、すなわち、中央または非末端の部分の直径よりいくらか大きい直径を有する概ね球状の末端部が設けられてもよい。変更例として、細長いヒドロゲル物体の端部のうちの一方または両方には、フレア状形状、または1つまたはそれ以上の横方向または角状のクロス部材が設けられてT-形状、Y-形状、X-形状などを形成してもよい。このような補綴具の例は図面に示されており、後で説明される。ヒドロゲル物体および/またはより大きい横方向横断面積の末端部分は、挿入カニューレへの挿通前に、変形されたり、圧縮されたりしてもよい。挿入後、このような変形された或は圧縮されたヒドロゲル物体は拡張して線維輪部の穴と通しての放出を防ぐように設計された形状をなす。この補綴具は、押出し、または圧縮成形、射出成形などのような従来の成形手順により製造され得る。
【0017】
本発明によれば、概ね細長い形状を有し、好ましくは、比較的低い弾性率と、約5mmより大きくない内径を有するカニューレを通して押出しされるように圧縮されることができるような横方向横断面輪郭とを有するヒドロゲルポリマー補綴具が提供される。或る実施形態では、挿入カニューレは3.5mmの内径を有してもよい。本発明の好適な実施形態では、比較的柔軟ポリマーヒドロゲルが、直径が約5mmより大きくなく、且つ長さが髄核を置換するか或は補充するのに十分な量のヒドロゲルを生じるのに十分であるような長い円筒形の形状で得られる。このような補綴具は約300ないし500mmほど長い長さを有してもよい。移植片が有利な処置のために長すぎないなら、この移植片は、その直径よりわずかに大きい外径を有する概ね剛性のカニューレ(金属またはプラスチック)内における外科手術に供されてもよい。核空洞が外科医の満足のいくように準備されたら、カニューレの端部を輪部を通して椎間板空洞に丁寧に挿入する。ヒドロゲル移植片の直径と同様な直径のロッドを使用して、移植片をカニューレから押出して空洞を埋める。これは、続けるのに必要とされる圧力が非常に高くなるまで、或は外科医が十分なヒドロゲルが挿入されたと満足されるまで、続けられる。この時点で、移植片を或る長さに切断し、切断されたたん部を核空洞に押し入れる。変更例として、移植片は、有利な処置のためにいくらか可撓性であることができる別体の貯蔵チューブ内に設けられてもよい。次いで、このような貯蔵チューブを、前述のように線維輪部を通して挿入されているか、或は挿入されるべき剛性のカニューレに連結しもよい。この実施形態では、移植片を挿入カニューレを通して椎間板の髄核に押し入れるために、流体圧力源が貯蔵中部の遠位短部に連結されてもよい。十分な量の移植片が挿入されると、この移植片を或る長さに切断し、残部を前述のように核空洞に押入れてもよい。いずれの手順でも、移植片は、適切なカッターを備えた挿入カニューレを使用して髄核領域内で切断されてもよい。このような挿入カニューレの例を後で説明する。
【0018】
本発明による生理学的に十分に水和されたヒドロゲルの移植の模範的な方法が図1ないし図5に概略的に示されている。
図1は脊髄102および椎間板104の一般構成を示す人間の背骨100の腰椎部分の左側横方向概略図を示している。本発明を腰椎椎間板について説明するが、熟練した専門家は、必要に応じて、適切な変更例とともに、同様な構造を有する椎間板のいずれかについて本発明を実施し得ることをわかるであろう。
本発明のヒドロゲル補綴具の移植が図2ないし図5に示されており、図1における線2−2により示されるような代表的な椎間板の上部図から手順が見られる。
【0019】
図2は、カニューレ202が椎間板104の線維輪部106を通して髄核空洞108に挿入された本発明のヒドロゲル補綴具の移植における初期工程を示している。髄核空洞108は、髄核の自然退化または漏れの理由で、或は生来の髄核の部分的または全体取出し後、補綴具を必要としている。カニューレ202は、任意の従来の外科技術により線維輪部106に挿通される、図示のような尖端部、または丸い先端部を有しているカニューレを含めて、任意の種類の従来のカニューレでもよい。カニューレ202はその中に装填sざれた本発明の補綴具を示すように部分的に切り離されて示されている。
補綴具の長さは、従来の手段により定められるように、髄核空洞における空の容積により決定される移植されるべきヒドロゲルの量に依存している。長さは、髄核空洞における空いた空間を埋めるのに、或は髄核を補充するのに必要とされる量が定められたら、補綴具の円筒形または他の幾何形状から容易に算出され得る。変更例として、補綴具は、内部圧力が元のままの髄核の機能を少なくとも部分的に回復するのに十分な値に達するまで、髄核の空洞に押し入れられてもよい。
【0020】
ヒドロゲル補綴具を髄核空洞に押し入れるのに必要とされる力は任意の従来の手段により供給されてもよい。移植されるべきヒドロゲルの量が比較的少ないならば、ヒドロゲルは剛性の押出しカニューレに収容され、そして堅いロッドで髄核空洞に押入れられればよい。変更例として、移植カニューレの外端部に直接または間接に連結された注射器またはポンプを使用してもよい。移植されるべきヒドロゲルの量が剛性の移植カニューレに有利に収容されることができる量を超えるならば、ヒドロゲルは、移植カニューレの外端部に連結される適切なサイズのチューブに供給され、そして前述のような任意の従来の手段により供給チューブから移植カニューレを通して押入れられればよい。
【0021】
図3は、カニューレから髄核空洞への移植片の押入れが始まった移植の初期段階を示している。図4は、補綴具が髄核空洞内のいずれの空の容積をも埋め始めており、必要に応じて空洞に嵌入するように自身に折り重ねられる補綴具の移植における中間段階を示している。図5は、補綴具が髄核空洞におけるいずれの空き容積をも実質的に埋めており、そして好ましくは生来の髄核の圧力に近似するのに十分な圧力が充填される移植の最終段階を示している。
必要量のヒドロゲル補綴具を髄核空洞に押入れた後、例えばカニューレに挿通されたロッドにより末端部を空洞に押入れる。好ましくは、補綴具の末端部を、補綴具が導入された穴からできるだけ遠い位置まで移動させる。この手順は、本発明によれば、埋められた髄核空洞内で補綴具が穴を見つけてそれを通して追い出されるかも知れない可能性を最小にする。
【0022】
本発明のヒドロゲルを移植する別の方法では、移植片を上または下脊髄体の通過により核空洞に導入することができる。この方法は線維輪部についていずれの外科手順をも必要としない利点を有するが、脊髄端板にアクセス孔を形成することを必要とする。この実施形態でも、ヒドロゲル補綴具の比較的小さい直径により、脊髄端板に比較的小さい孔を使用することが可能である。
【0023】
図6は、代表的には約5mmより大きくない主要な直径d1を有する図2ないし図5に示された方法に使用されるような概ね円筒形の補綴具を概略的に示している。このような補綴具の長さは、以上で指摘したように、髄核空洞に移植されるべきヒドロゲルの量に応じて変化してもよい。
本発明のヒドロゲルが移植されるときに通った穴を通して線維輪部の中央領域から追い出される可能性を減少させるために、少なくとも一部、すなわち、補綴具の長さの少なくとも一部は補綴具の他の部分のものより大きい横断面積を有してもよい。特に、補綴具のいずれかの端部または両端部は、移植されるときに通った穴を通して補綴具が追い出される可能性を減少させるために、例えば図7および図8に示されるように、移植片の中央部分または非末端部分のものより大きい横断面積(主要横断面積)を有する拡大部分で終わってもよい。端部は、代表的には、移植片が線維輪部の核空洞に挿入されて空洞の内側で一旦拡張するとき、圧縮される。
【0024】
従って、図7は、主要直径d2を有し且つより大きい直径のフレア状端部404を有する本発明の補綴具の別の実施形態402を示している。補綴具が線維輪部に形成された挿入穴を通って追い出される可能性を減少させるために、補綴具のいずれかの端部または両端部がフレア状にされてもよい。フレア状端部404は、髄核空洞への挿入のために端部の変形を容易にするために、例えば、周方向に間隔を隔てられた切欠き406を設けることにより区分されてもよい。
【0025】
図8は主要直径d3を有する本発明の補綴具の他の実施形態502を示しており、この場合、細長い補綴具は概ね球状のボール504で終わっている。補綴具502のいずれかの端部または両端部がボールで終わってもよい。熟練した専門家は、同じ原理を組み入れた本発明の補綴具の拡大端部分の多くの別の設計が可能であることを認めるであろう。
本発明の補綴具の他の実施形態では、移植片は補綴具の主要の横方向寸法(直径d4)より大きい少なくとも1つの横方向寸法を有する1つまたはそれ以上の繰り返し構造を有する。このような構造は補綴具の隣接部分のものより大きい横断面積を有する。好ましくは、このような拡大部分の少なくとも1つの横方向寸法は導入カニューレが挿入されるときに通った線維輪部における穴の直径より大きい。より好ましくは、拡大部分は、補綴具の軸線のまわりに概ね対称であり、そして導入カニューレが挿入されるときに通った線維輪部における穴の直径より大きい横方向直径を有している。このような補綴具の2つの例が図9および図10に示されている。熟練した専門家は、同じ原理を組み入れた多くの別の設計が可能であることを認めるであろう。
【0026】
図9は主要直径d4の補綴具602を示しており、この補綴具602はそれに沿って間隔を隔てられた多くの概ね球状の拡大部分(ビード)604を有している。これらのビードは、代表的には、補綴具が髄核空洞に挿入されると、移植片が線維輪部における核空洞に挿入されて拡張するときに、圧縮される。
図10は主要直径または横断寸法d5の補綴具702を示しており、この補綴具702はそれに沿って間隔を隔てられた多くの棘状突起704を有している。これらの棘は、ヒドロゲル補綴具のボディに沿って実質的に連続して位置決めされてもよいし、或は図9に示される補綴具の球状の拡大部分にいくらか類似して、補綴具のボディに沿って間隔を隔てられてもよい。これらの棘は、代表的には、補綴具が髄核空洞に挿入されると、移植片が線維輪部における核空洞に挿入されて拡張するときに、圧縮される。
【0027】
本発明のヒドロゲル補綴具を髄核空洞に挿入するための適当な挿入器具が図11に示されている。図11の器具800は概ねまっすぐなカニューレ部分802と、漏斗部分804と、継ぎ手806とを備えている。使用にあたり、圧縮形態で挿入されるべきである本発明の補綴具、例えば、図9に示されるもののようなビード付き補綴具を、継ぎ手806を介して挿入器具800に連結されている管状供給導管内に収容された状態で供給する。次いで、補綴具を供給導管から漏斗部分804と、まっすぐな部分802とを通して髄核空洞に押入れる。また、挿入器具800は、そのまっすぐな部分802に取付けられた補助チューブ810を通って取っ手またはリング812まで導かれている切断用のワイヤループ808を備えている。十分な量のヒドロゲルを核空洞に挿入したら、取っ手812を引っ張り、それにより切断用スープ808が締め付けられて補綴具を切断することによって、ヒドロゲルを空洞の内側で切断することができる。次いで、挿入器具800を引出して外科移植手順を完了する。
【0028】
挿入器具を使用して圧縮可能な補綴具を挿入することにより、移植片をカニューレを通して挿入することができ、このカニューレによれば、線維輪部における穴を最小にし、かくして輪部に対する外傷を最小にし、また挿入カニューレが引出された後に輪部に残るいずれもの通路の直径が挿入された補綴具の直径より小さいということになる。このような最小化された通路は補綴具のいずれもの可能な放出に対する更なるバリアをなす。熟練した専門家は、同じ原理を組み入れた挿入カニューレの多くの別の設計が可能であることを認めるであろう。
【0029】
本発明の実施を下記の例により例示する。
例1
この例は本発明の実施に使用される好適なヒドロゲルの調製を示している。
12.7gの量のPVA(クラレ社により販売されているモウイオール、132000Mw50000MnPD2.6;加水分解>99.1%)を0.127gのPVP(インターナショナルスペシャリティプロダクツにより販売されているプラスドン、58000Mw)、6.5gのBaSO4および81mlの水と混合する。この溶液を95℃で10時間加熱し、次いでモールドに入れる。次いで、モールドに収容された混合物をプログラミング可能な環境室に入れ、これに+30℃から−30℃までの範囲の6つの連続的な冷凍-解凍サイクルをそれぞれ21時間および3時間、施す。次いで、そのようにして形成されたゲルを脱型し、そしてデキストリンの実質的に等浸透圧の水溶液に1日間、入れてゲルの水含有量を人間の髄核のものと同様な状態に浸透圧的に釣り合わせる。最終的に、この補綴具をパックし、そして殺菌のために送る。
【0030】
例2
この例は例1で調製されたようなヒドロゲルの基本的な機械的特性を示している。
ヒドロゲルは、しばしば、非線形の機械的特性を示し、そして非常に変形可能な物質であり、かくして、それらの特性は試験および試験条件に非常に依存している。本発明に使用される好適なヒドロゲルを物質の増分弾性率を得るために下記のようにして試験した。従来の機械的試験機を使用して下記の如く引張り特性および圧縮特性を得た。
例1におけるように調製されたヒドロゲルの直径3.8mmおよび長さ100mmの試料について引張り試験を行なう。60mmのヒドロゲルのゲージ長さが各グリップ間に存在するように試料を両端部で握る。0.04Nの予備荷重を試料に加える。次いで、試料について引張り試験を60mm/分の割合で行なう。代表的な歪レベルに対応する点を通る線の傾斜として増分引張り弾性率を算出する。図12は代表的な引張り試験の出力を示している。以上に指摘したように試験された好適な実施形態の代表的な引張り弾性率の値は0.675MPa@50%歪である。
例1におけるように調製されたヒドロゲルの直径12.0mmおよび高さ8mmの試料について圧縮試験を行なう。試料を試験のために実質的に等浸透圧の溶液、例えば、デキストリンの実質的に等浸透圧の水溶液の37℃の浴に入れる。1Nの圧縮予備荷重を試料に加える。次いで、この試料について、圧縮試験を試験試料高さ/分の100%の割合で行なう。代表的な歪レベルに対応する点を通る線の傾斜として増分圧縮弾性率を算出する。代表的な圧縮試験のプロットを図13に示してある。本発明の好適な十分に水和されたヒドロゲルの代表的な圧縮弾性率の値は0.984MPa@15%歪である。
【0031】
例3
この例は或る荷重付加条件下の本発明の十分に水和されたヒドロゲルの水含有量の維持を示している。
応力緩和:
高さ8mm、直径12mmの物質試験試料を等浸透圧の水溶液の37℃の浴に入れる。16時間の15%変位の後に8時間の荷重除去回復よりなる応力緩和調査を試料について行う。試料を3つの連続的サイクルにより試験する。3サイクル試験の前後に質量および弾性率の値を算出する。代表的な試験サイクルにおいて課せられた条件のプロットが図14に示されている。例1において調製されたような十分に水和されたヒドロゲルの具体例は、この応力緩和プロトコル下で質量、弾性率および水含有量の5%未満の変化を示している。
疲労
下記のようにして生理学的荷重付加下で水含有量の変化について試験するために疲労調査を行なう。高さ8mm、直径12mmの試験試料を秤量し、測定し、そして試験して圧縮増分弾性率の値を定める。この試料を37℃の等浸透圧の水溶液の浴に入れ、次いで図15に示すように、5Hzの周波数で100万サイクル、0-15%変位によりサイクル試験する。サイクル試験の後、試験試料を再び秤量し、測定し、そして増分弾性率の値を算出する。例1において調製されたような十分に水和されたヒドロゲルの具体例は、この疲労プロトコル下で質量、弾性率および水含有量の5%未満の変化を示している。
【0032】
例4
この例は、本発明による生理学的に十分に水和されたヒドロゲル補綴具を使用した背骨運動部分の機械的特性の回復を示している。
髄核を置換し、そして種々の工程で椎間単位の屈曲性を測定して核の退化および回復をシミュレートするために本発明の方法を行なうことによって屈曲性実験を行なった。L4およびL5腰椎脊髄骨および元のままの線維輪部および髄核を有する脊髄骨間の椎間板を有しているL4/L5背骨運動部分の適切な試料を選択した。選択された試料は本質的に正常な髄核を有していた。この試料について、純粋なモーメントを使用してシミュレートされた屈曲-伸展連続運動を行なうことによって核置換手順の前、中および後に、4段階で屈曲性の測定を行なった。屈曲および伸展の規定角度の範囲に必要とされるトルクを加えた。結果を図16のチャートに示してある。
【0033】
4回の屈曲-伸展連続運動のうちの初めの連続運動を元のままの健康な椎間板について行った。その結果を曲線1に示してある。次いで、核を取外し、試料を曲線2に示されるように同じ付加モーメントにより試験した。従って、2番目の連続運動は激しく悪化された核をシミュレートしている。次いで、試料を本発明の生理学的に十分に水和された移植片と共に移植し、コアを部分的に満たした等浸透圧塩水溶液を使用して平衡化し、そして再び試験し、それにより幾らか退化された核または加圧なしで置換された核をシミュレートした。移植片は約3mmの直径を有する生理学的に十分に水和されたヒドロゲルよりなっており、この移植片を脊髄端板を通して挿入した。約120mmの長さの移植片を使用した。曲線3に示すように、運動範囲にわたる正常な生理学的値に向かう移動が見られた。最終的に、試料を本発明の生理学的に水和されたヒドロゲル移植片(直径約3mmのおよび長さ約120mm)と共に移植し、そして前述の技術を使用してコアを完全に埋めて加圧すると、曲線4に示すように、椎間板の機構の完全に近い回復が見られた。
【0034】
本発明の生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを使用した本発明の方法は臨床医に多くの利点をもたらす。移植されるべきヒドロゲルの量は、移植片の結果的に安定な寸法で移植片の所望の量を達成するために予め定められることができる。この移植方法は、患者の痛み反応の直接的な監視により適切なフィードバックを行なって椎間板核空洞の過剰加圧を回避するか、或は椎間板が化学的に敏感である状況を検出する。更に、放射線不透過性物質、例えば、BaSO4を含有する生理学的に実質的に十分に水和されたヒドロゲルの具体例を使用することによって、相互作用する放射線写真および/または蛍光透視的な可視化により移植を監視することが可能である。
また、生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを使用した本発明の方法は、核除去における変化した効果性に起因した患者の解剖学的構造の変化および椎間板空洞のサイズおよび/または形状の変化を容易に受入れることができると言う理由で、外科介入における融通性をもたらす。本発明の方法は、(核の部分除去による)完全核置換または部分的核置換、または核物質を予め除去することなしに移植片を単に加えることによる核の増強の選択肢をもたらす。
【0035】
本発明の補綴具および方法は、
可変形状の核空洞を埋めること;
核空洞への大きな入口または挿入開口部を必要とすることなしに定量的埋込みに対処すること;
挿入されるべきポリマーの随意に可変の長さを考慮することにより変化された定量的埋込みに対処すること;
比較的小さい横断面積の挿入開口部を設け、そして移植片の端部が線維輪部における挿入開口部に位置され、それにより挿入開口部を通る髄核空洞から脱出する可能性を最小にすることによって後の移植片の放出の可能性を最小にすること
に良く適している。
本発明を以上に説明したが、本発明の性質および精神から逸脱することなしに多くの変更例および/または変形例を行なうことができ、すべてのこのような変形例および/または変更例が本発明の範囲内に含まれるものであることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】人間の脊柱の一部の概略図である。
【図2】補綴具が移植されるのに通るカニューレが椎間板の線維輪部に挿通された、本発明の方法によりヒドロゲル物質を髄核空洞に移植する第1段階を概略的に示している図である。
【図3】カニューレを通して空洞へヒドロゲルを押入れることが始まった移植の第2段階を概略的に示している図である。
【図4】ヒドロゲル移植片の押入れが続いている移植の第3段階を概略的に示している図である。
【図5】空洞がヒドロゲルで実質的に埋められる移植の最終的な段階を概略的に示している図である。
【図6】本発明のヒドロゲル移植片の細長い概ね円筒形の具体例を示している図である。
【図7】本発明によるヒドロゲル移植片のフレア状端部付きの具体例を示している図である。
【図8】本発明によるヒドロゲル移植片のボール端部付きの具体例の図である。
【図9】長さに沿って間隔を置いて位置決めされたビードの形態の拡大部分を有する細長い構造体を備えている本発明の方法に使用されるヒドロゲル補綴具の具体例の図である。
【図10】長さに沿って位置決めされた方向性棘を有している本発明によるヒドロゲル移植片の具体例の図である。
【図11】本発明による細長いヒドロゲル補綴具を線維輪部を通して椎間板の中央領域に挿入するための器具の図である。
【図12】本発明のヒドロゲルの引張り特性の代表的な試験の結果を示している図である。
【図13】本発明のヒドロゲルの圧縮特性の代表的な試験の結果を示している図である。
【図14】本発明のヒドロゲルの応力緩和特性の代表的な試験の結果を示している図である。
【図15】本発明のヒドロゲルのための疲労試験条件を示している図である。
【図16】本発明によるヒドロゲル移植片を有する背骨運動部分についての機械的測定の結果を示している図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎間板の線維輪部の中央領域に位置されている髄核を補充するか或は置換する方法であって、
細長い固形のヒドロゲル物体の形態の或る量の生物適合性の生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを前記線維輪部の前記中央領域に導入することを備えている髄核を補充するか或は置換する方法。
【請求項2】
前記細長いヒドロゲル物体は概ね円筒形の形状を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細長いヒドロゲル物体は前記線維輪部の前記中央領域を実質的に埋めるためにそれ自身に折り重なることが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細長いヒドロゲル物体は少なくとも約5:1の長さ対主要の横方向寸法の比を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細長いヒドロゲル物体は約350:1の長さ対主要の横方向寸法の比を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細長いヒドロゲル物体は約10mmより大きくない主要の横方向寸法を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細長いヒドロゲル物体は約2.5mmの主要の横方向寸法を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒドロゲルは約4メガパスカルより大きくない弾性率を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲルは約0.05メガパスカルと約4.0メガパスカルとの間の弾性率を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細長いヒドロゲル物体を、前記線維輪部を通して前記線維輪部の前記中央領域に挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記細長いヒドロゲル物体を、前記線維輪部を通して挿入されたカニューレを通して前記線維輪部の前記中央領域に挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記細長いヒドロゲル物体を、隣接した脊髄骨を通して前記線維輪部の前記中央領域に挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記線維輪部の前記中央領域内に収容容器を設け、前記細長いヒドロゲル物体を前記収容容器に挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記細長い固形のヒドロゲル物体の少なくとも一部が前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横断面積を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記細長いヒドロゲル物体の少なくとも一端部には、前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有している末端部分が設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細長いヒドロゲル物体の少なくとも一端部には、前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有しているフレア状末端部分が設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記細長いヒドロゲル物体の少なくとも一端部には、前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有している概ね球状の端部分が設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記細長いヒドロゲル物体はその端部間に、前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有している少なくとも1つの部分を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有している前記部分は概ね球状の形状または棘形状を有している、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記線維輪部の前記中央領域への挿入中、前記細長いヒドロゲル物体の少なくとも一部が圧縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールコポリマーを含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンのコポリマーを含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンの混合物を含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒドロゲル物体は更に放射線不透過性物質を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記放射線不透過性物質は硫酸バリウムである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも約5:1の長さ対主要の横方向寸法の比を有する細長い生理学的に十分に水和された固形ヒドロゲル物体。
【請求項27】
約350:1の長さ対主要の横方向寸法の比を有する請求項26に記載の物体。
【請求項28】
前記ヒドロゲルが約4メガパスカルより大きくない弾性率を有している、請求項26に記載の物体。
【請求項29】
前記ヒドロゲルが約0.05メガパスカルと約4.0メガパスカルとの間の弾性率を有している、請求項26に記載の物体。
【請求項30】
概ね円筒形の形状を有している請求項26に記載の物体。
【請求項31】
主要の横断面積より大きい横断面積を持つ少なくとも1つの部分を有している請求項26に記載の物体。
【請求項32】
主要の横断面積より大きい横方向の横断面積の末端部分を備えている少なくとも一端部を有している請求項26に記載の物体。
【請求項33】
主要の横断面積より大きい横方向の横断面積のフレア状末端部分を備えている少なくとも一端部を有している請求項26に記載の物体。
【請求項34】
主要の横断面積より大きい横方向の横断面積の概ね球状の末端部分を備えている少なくとも一端部を有している請求項26に記載の物体。
【請求項35】
主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を持つ少なくとも1つの部分を端部間に有している請求項26に記載の物体。
【請求項36】
前記少なくとも1つの部分は概ね球状の形状または棘形状を有している請求項26に記載の物体。
【請求項37】
線維輪部の中央領域を生理学的に埋めるために自身に折り重なることが可能である請求項26に記載の物体。
【請求項38】
成形または押出しにより製造された請求項26に記載の物体。
【請求項39】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールコポリマーを含有している、請求項26に記載の物体。
【請求項40】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンのコポリマーを含有している、請求項26に記載の物体。
【請求項41】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンの混合物を含有している、請求項26に記載の物体。
【請求項42】
放射線不透過性物質を更に備えている請求項26に記載の物体。
【請求項43】
前記放射線不透過性物質は硫酸バリウムである、請求項42に記載の物体。
【請求項44】
前記線維輪部の前記中央領域内の前記細長いヒドロゲルの連続長さから前記ヒドロゲル物体の所定の長さが切断される、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
細長いヒドロゲルを線維輪部の中央領域に挿入するための器具であって、線維輪部を通して椎間板の中央領域に挿入されるようになっている遠位端部および近位端部を有する概ね管状のボディと、前記近位端部のところの継ぎ手と、前記管状ボディに支持されて前記管状ボディに沿って延びており、そして前記管状ボディの前記遠位端部の近くに位置決めされた遠位端部および近位端部を有しているガイド構造体と、前記ガイド構造体の前記遠位端部から前記ガイド構造体の前記近位端部まで前記ガイド構造体を通って延びている切断用部分とを備えており、前記切断用部分は、ヒドロゲル物体を切断するために前記ガイド構造体の前記遠位端部の近くに配置されたループ上ワイヤ部分を有している、細長いヒドロゲルを挿入するための器具。
【請求項46】
前記ガイド構造体はガイドチューブである、請求項45に記載の器具。
【請求項47】
前記ワイヤループは取っ手を備えている、請求項45に記載の器具。
【請求項48】
水和の所望のレベルを達成するのに十分な時間、ヒドロゲルを実質的に等浸透圧の溶液と接触させることを備えているヒドロゲルを水和する方法。
【請求項49】
前記時間は水和の平衡レベルを達成するのに十分である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記溶液はデキストランの実質的に等浸透圧の水溶液である請求項48に記載の方法。
【請求項51】
補綴具として使用するのに適した形態の生物適合性ヒドロゲルを用意し、このヒドロゲルを請求項48の方法により水和することを備えている補綴具を製造する方法。
【請求項52】
請求項51による方法により製造された補綴具。
【請求項1】
椎間板の線維輪部の中央領域に位置されている髄核を補充するか或は置換する方法であって、
細長い固形のヒドロゲル物体の形態の或る量の生物適合性の生理学的に十分に水和されたヒドロゲルを前記線維輪部の前記中央領域に導入することを備えている髄核を補充するか或は置換する方法。
【請求項2】
前記細長いヒドロゲル物体は概ね円筒形の形状を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細長いヒドロゲル物体は前記線維輪部の前記中央領域を実質的に埋めるためにそれ自身に折り重なることが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細長いヒドロゲル物体は少なくとも約5:1の長さ対主要の横方向寸法の比を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細長いヒドロゲル物体は約350:1の長さ対主要の横方向寸法の比を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細長いヒドロゲル物体は約10mmより大きくない主要の横方向寸法を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細長いヒドロゲル物体は約2.5mmの主要の横方向寸法を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒドロゲルは約4メガパスカルより大きくない弾性率を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲルは約0.05メガパスカルと約4.0メガパスカルとの間の弾性率を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細長いヒドロゲル物体を、前記線維輪部を通して前記線維輪部の前記中央領域に挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記細長いヒドロゲル物体を、前記線維輪部を通して挿入されたカニューレを通して前記線維輪部の前記中央領域に挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記細長いヒドロゲル物体を、隣接した脊髄骨を通して前記線維輪部の前記中央領域に挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記線維輪部の前記中央領域内に収容容器を設け、前記細長いヒドロゲル物体を前記収容容器に挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記細長い固形のヒドロゲル物体の少なくとも一部が前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横断面積を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記細長いヒドロゲル物体の少なくとも一端部には、前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有している末端部分が設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細長いヒドロゲル物体の少なくとも一端部には、前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有しているフレア状末端部分が設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記細長いヒドロゲル物体の少なくとも一端部には、前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有している概ね球状の端部分が設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記細長いヒドロゲル物体はその端部間に、前記細長いヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有している少なくとも1つの部分を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒドロゲル物体の主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を有している前記部分は概ね球状の形状または棘形状を有している、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記線維輪部の前記中央領域への挿入中、前記細長いヒドロゲル物体の少なくとも一部が圧縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールコポリマーを含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンのコポリマーを含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンの混合物を含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒドロゲル物体は更に放射線不透過性物質を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記放射線不透過性物質は硫酸バリウムである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも約5:1の長さ対主要の横方向寸法の比を有する細長い生理学的に十分に水和された固形ヒドロゲル物体。
【請求項27】
約350:1の長さ対主要の横方向寸法の比を有する請求項26に記載の物体。
【請求項28】
前記ヒドロゲルが約4メガパスカルより大きくない弾性率を有している、請求項26に記載の物体。
【請求項29】
前記ヒドロゲルが約0.05メガパスカルと約4.0メガパスカルとの間の弾性率を有している、請求項26に記載の物体。
【請求項30】
概ね円筒形の形状を有している請求項26に記載の物体。
【請求項31】
主要の横断面積より大きい横断面積を持つ少なくとも1つの部分を有している請求項26に記載の物体。
【請求項32】
主要の横断面積より大きい横方向の横断面積の末端部分を備えている少なくとも一端部を有している請求項26に記載の物体。
【請求項33】
主要の横断面積より大きい横方向の横断面積のフレア状末端部分を備えている少なくとも一端部を有している請求項26に記載の物体。
【請求項34】
主要の横断面積より大きい横方向の横断面積の概ね球状の末端部分を備えている少なくとも一端部を有している請求項26に記載の物体。
【請求項35】
主要の横断面積より大きい横方向の横断面積を持つ少なくとも1つの部分を端部間に有している請求項26に記載の物体。
【請求項36】
前記少なくとも1つの部分は概ね球状の形状または棘形状を有している請求項26に記載の物体。
【請求項37】
線維輪部の中央領域を生理学的に埋めるために自身に折り重なることが可能である請求項26に記載の物体。
【請求項38】
成形または押出しにより製造された請求項26に記載の物体。
【請求項39】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールコポリマーを含有している、請求項26に記載の物体。
【請求項40】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンのコポリマーを含有している、請求項26に記載の物体。
【請求項41】
前記ヒドロゲルはポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンの混合物を含有している、請求項26に記載の物体。
【請求項42】
放射線不透過性物質を更に備えている請求項26に記載の物体。
【請求項43】
前記放射線不透過性物質は硫酸バリウムである、請求項42に記載の物体。
【請求項44】
前記線維輪部の前記中央領域内の前記細長いヒドロゲルの連続長さから前記ヒドロゲル物体の所定の長さが切断される、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
細長いヒドロゲルを線維輪部の中央領域に挿入するための器具であって、線維輪部を通して椎間板の中央領域に挿入されるようになっている遠位端部および近位端部を有する概ね管状のボディと、前記近位端部のところの継ぎ手と、前記管状ボディに支持されて前記管状ボディに沿って延びており、そして前記管状ボディの前記遠位端部の近くに位置決めされた遠位端部および近位端部を有しているガイド構造体と、前記ガイド構造体の前記遠位端部から前記ガイド構造体の前記近位端部まで前記ガイド構造体を通って延びている切断用部分とを備えており、前記切断用部分は、ヒドロゲル物体を切断するために前記ガイド構造体の前記遠位端部の近くに配置されたループ上ワイヤ部分を有している、細長いヒドロゲルを挿入するための器具。
【請求項46】
前記ガイド構造体はガイドチューブである、請求項45に記載の器具。
【請求項47】
前記ワイヤループは取っ手を備えている、請求項45に記載の器具。
【請求項48】
水和の所望のレベルを達成するのに十分な時間、ヒドロゲルを実質的に等浸透圧の溶液と接触させることを備えているヒドロゲルを水和する方法。
【請求項49】
前記時間は水和の平衡レベルを達成するのに十分である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記溶液はデキストランの実質的に等浸透圧の水溶液である請求項48に記載の方法。
【請求項51】
補綴具として使用するのに適した形態の生物適合性ヒドロゲルを用意し、このヒドロゲルを請求項48の方法により水和することを備えている補綴具を製造する方法。
【請求項52】
請求項51による方法により製造された補綴具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−500145(P2008−500145A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527545(P2007−527545)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/018028
【国際公開番号】WO2005/113032
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505377463)ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/018028
【国際公開番号】WO2005/113032
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505377463)ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【Fターム(参考)】
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