ヒドロゲルプラグによる薬物送達
実施態様は、ヒトの眼の涙点又は小管を通る涙流を遮断し、又は減少させ、かつ薬剤を眼に送達するための医療用装具であって、涙点を通過して寸法を有する脱水共有結合架橋合成親水性ポリマーヒドロゲルを含み、脱水ヒドロゲルは生理的水を吸収して、少なくとも約1mmの断面幅まで膨潤し、かつ小管に整合的に適合し、ヒドロゲルは、眼への放出のために該ヒドロゲル中に分散した治療薬を含み、ヒドロゲルは、インビトロにおいて生理食塩水で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容積%の含水量を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年2月12日出願のUS61/152,081の優先権を主張し、これは全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。
(技術分野)
本技術分野は広く眼科用装具に関連し、より具体的には、涙点プラグ(punctum plug)などの医療用小管挿入物に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
眼への薬物送達は従来、点眼剤の定期的投与、ペースト及び包袋、角膜へ適用される薬剤を含浸させたレンズ、直接注入又は眼に挿入される薬剤デポーによって達成される。例えば、白内障手術及び網膜硝子体手術の後には、数日間、数時間毎に抗生物質を投与しなければならない場合がある。加えて、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの他の薬剤を、頻繁に与える必要もある。
【発明の概要】
【0003】
(発明の概要)
一般に、眼疾患又は状態を治療するための眼用薬剤は、眼表面状態、前部疾患、又は後部/眼の奥の疾患の治療に向けられる。
眼表面及び眼の前部に送達される大抵の薬剤は、点眼剤の形態で投与される。この形態の送達には幾つかの問題がある。まず、関節炎の可能性のある高齢患者にとって、液滴を眼に入れることは困難な場合がある。次に、液滴中の薬剤の95%以上が、結局眼に浸透するに至らず、無駄になると見積もられている。この浪費は、薬剤の非効率的な利用となるだけでなく、全身的な副作用につながるおそれもある(例えば、緑内障用のβ遮断薬は循環器系の問題を招き得る)。最後に、要求される治療レベルの達成を可能とするために、利用者は高濃度の薬剤を投与しなければならず、これは、灼熱感及び刺痛などの局所的問題、又は眼表面の違和感を引き起こし、服薬不順守並びに不快感を招く。しかしながら、現在まで液滴は、依然として眼用医薬品送達の主流となっている。
【0004】
様々な薬剤デポーが、眼用薬剤の投与を試みて製造されている。経時的に一貫した薬剤用量の送達は、1950年代の最初の薬剤発売の大規模な商業化から薬剤発売産業全体に掲げられている難題である。幾つかのアプローチには、硝子体内埋め込み型リザーバタイプの系、又は除去不要の埋込錠(非腐食性)が含まれている。したがって、これらの埋込錠は、極めて高い薬剤濃度を有し、非常に小さく作られている。それらは小型ではあるけれども、やはりサイズ25G(25ゲージ)より大きな針、又は埋め込み若しくは必要に応じた除去のための外科的アプローチによる送達系によって配置される必要がある。例えば、POSURDEX(Allergan社)は、糖尿病黄斑浮腫(DME)又は網膜静脈閉塞症に使用するための埋め込み型生分解性ペレットであり、硝子体腔への送達のために22G送達系が使用される。例えば、MEDIDUREインプラントは、直径約3mmの円筒形形状であり、かつ非腐食性である。それは25Gの注入器送達系によって配置され、18又は36ヵ月の名目送達寿命を有する。
【0005】
眼部送達のための多くの他のアプローチが、例えば、US2008/0038317(全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれ、矛盾がある場合は本明細書が支配する)の背景の節に概説されるように公知であり、これは、内部リザーバ及び特定の生分解性ポリマーで製造され、更にプラグ中の薬剤の放出速度を制御するための不浸透性部材、又は特定の放出調節器を有する涙点プラグを教示している。そして、例えば、U.S.6,196,993(全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれ、矛盾がある場合は本明細書が支配する。)は、内部薬剤-ロードリザーバを有する涙点プラグを教示しており、これは、有用な速度でリザーバ中の薬剤を放出することに合わせたサイズ及び形状を有し得る細孔を有している。
【0006】
こうした進歩にもかかわらず、プラグの保持には、それらの目的とする寿命が完了する前に、極度に高い割合で外へ落ちてしまうという進行中の問題がある。強固な送達系が必要とされている。実際、従来の系は、送達、用量及びサイズの制限のために、数種類の薬剤及び限られた数の疾患にしか使用することができない。
【0007】
特定の実施態様は、保持のために所定の位置で膨潤し、固定するヒドロゲルプラグによってこの問題を解決する。該ヒドロゲルプラグは、分解性のヒドロゲルで製造され、除去の必要がなく、かつ放出用リザーバ系に頼らない。該プラグは特に、眼表面又は眼の前眼房への送達によく適している。高度に膨潤して堅固に位置付けされ、かつ薬剤及び病状に応じて調整され得る所定の速度で薬剤を放出する合成ヒドロゲル涙点プラグが、本明細書中に開示される。これらのヒドロゲルは、快適さのために柔軟で弾力があり、かつ治療期間の終了後に該プラグが消失するような予想可能な速度で生分解するか、又は交換のために容易に排出される。これらの系は、高い患者コンプライアンス率を提供し、同時に薬剤放出系を配置するために眼に穿刺を行う必要性を回避する。本明細書中の実施態様は、広範な送達用量及び時間を満たすために、必要に応じて、送達について大きく異なる化学特性の薬剤との使用に適合され得る安定したマトリックス製剤を提供する。広範な濃度のための確実なツールの使用は、系全体を特別に作製することなく、繰り返し使用することができる単一のプラットフォームを提供するので、非常に重要な進歩である。このアプローチは、臨床経験が1つの系で起こるので安全性を強化し、更なる治療の創作のための工程を排除することによる効率性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】眼及び涙器系の図である。
【図2A】アプリケーターに把持された涙点プラグを示す。
【図2B】プラグの配置に使用時の図2Aのアプリケーターを示す。
【図2C】小管内に完全に配置したプラグを示す。
【図2D】定位置で膨潤するプラグを示す。
【図2E】近位部が管の外へ延出し、かつ末端部が小管内に配置された、プラグの別の配置を示す。
【図2F】図2Eの実施態様のプラグの膨潤を示す。
【図3A】原位置(in situ)での涙点プラグ形成の部位に前駆体を配置するためのシリンジタイプのアプリケーターを示す。
【図3B】原位置での涙点プラグ形成のために前駆体を導入するアプリケーターを示す。
【図4A】原位置でプラグを形成する前駆体の配置後のアプリケーターを示す。
【図4B】図3Bのプラグの形成を示す。
【図4C】図4Bのプラグの膨潤を示す。
【図5】薬物送達用微小粒子の形成のための選択肢を示したフローチャートである。
【図6】薬剤を含有するミクロスフェアの顕微鏡写真である。
【図7】実施例10に詳述される様々に形成された涙点プラグの実施態様の膨潤を示すグラフである。
【図8】実施例11に詳述される涙点プラグの寸法変化のグラフである。
【図9】実施例12に詳述される様々に形成された涙点プラグの容積変化のグラフである。
【図10】実施例13に詳述される涙点プラグヒドロゲル及び/又はミクロスフェアからの薬剤放出を示す。
【図11】実施例14に詳述される涙点プラグヒドロゲル及び/又はミクロスフェアからの薬剤放出を示す。
【図12】疎水性領域の組み込みによるヒドロゲルプラグの膨潤の減少を示すグラフである。
【図13】涙点プラグ配置のための特定の選択肢を示す。
【図14】実施例18〜19に詳述されるヒドロゲル-微小粒子組み合わせからの薬剤放出を示すプロットである。
【図15A】実施例18〜19に詳述される構成及び放出速度動態を示すプロットである。
【図15B】微小粒子サイズ範囲に関連した放出動態のプロットである。
【図15C】放出動態へのPLGA分子量の影響のプロットである。
【図15D】分子量及び濃度による放出動態の調整を示すプロットである。
【図15E】インビボ及びインビトロ動態に関するプロットである。
【図16】実施例20に詳述されるミクロスフェアの様々な実施態様の放出プロファイルを示すプロットである。
【図17A】実施例20に詳述される同じ作用薬を含有する多数の種類のポリマーの配合の効果の例を提供する。
【図17B】粒径範囲の効果の例を提供する。
【図17C】多数のミクロスフェアの配合の効果の例を提供する。
【図18】実施例21に詳述されるヒドロゲルからの薬剤放出の薬物動態データを示す。
【図19】実施例22に詳述されるヒドロゲルからの薬剤放出の薬物動態データを示す。
【図20】実施例23に詳述される生理食塩水中の薬剤物質単体と比較したインビトロでのヒドロゲル中に捕捉された薬剤の放出を示すプロットであり、ヒドロゲルは放出速度に影響を与える。
【図21A】ヒドロゲルの伸張に関する。
【図21B】ヒドロゲルの伸張に関する。
【図22】ミクロスフェア製造に使用したポリマー分子量の操作による放出プロファイルの代替を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(詳細な説明)
一実施態様は、水を吸収して加水分解的に生分解可能なヒドロゲルを形成する共有結合架橋性親水性ポリマーから形成された涙点プラグであって、これは、水に接触して吸収し、原位置で膨潤し、堅固で安定な配置のために小管を膨張させ、かつ小管に整合的に適合する。該ヒドロゲルは、眼への放出制御のための薬剤を含み、かつ高い含水量を有する。
【0010】
放出制御は複雑な主題領域である。多くの薬剤は、少なくとも閾値を満たす濃度で存在する必要がある。同時に、高すぎる濃度は、望ましくない副作用を有する。一般に、0次放出プロファイルが有用である。0次放出とは、放出が反応物の濃度の変化とは無関係な速度で、経時的に一定である系を指す。しかしながら、拡散プロセスは、単位時間あたりに放出される薬剤の量は薬剤濃度の減少につれて低下する傾向があるように、薬剤の濃度に応じる傾向がある。分解性材料の場合、分解が薬剤放出速度に影響を与えるならば、事情はより複雑になり得る。様々なアプローチが展開されている。一つのアプローチは、流体をリザーバの一部にだけ接続させるデバイス中にマトリックスを捕捉することであり、拡散制限材料が放出を制御する。又は別のアプローチは、一定領域の表面が侵食される材料である。あるいはリザーバを基礎としたアプローチが使用されている。
【0011】
しかし、所定の時間に渡って実質的に0次の作用薬放出速度を有するヒドロゲル材料であって、カプセル化を伴う又は伴わないのいずれかで、該材料中に分散した作用薬を有する、前記ヒドロゲル材料を本明細書中に開示し、例示する。これらの作用薬は、非ヒドロゲル材料から解放されており、例えば、リザーバ領域がなく、拡散膜バリアがなく、及び放出速度を制御するスリーブがない。ヒドロゲル材料は親水性であり、水性溶液(生理的流体)が該材料を通過して浸透することを可能にする。更に、該ヒドロゲル系は分解可能であり、加水分解的に分解可能である。明らかなことであるが、0次放出ヒドロゲル系を得るための設計因子は、互いに競合する。本明細書中に記載される実験を実施するより前に、有効量の薬剤を眼に送達するために、そのような系を開発できるかどうかは分かっていなかった。
【0012】
涙点プラグの場合、特定の理論に縛られるものではないが、生理的流体が小管プラグの上部に蓄積し、作用薬放出を該プラグの近位部の断面積によって制限させる傾向のある流体カラムを与えることが仮定される。小管の壁は、該流体カラムを通過する治療薬の減少に対して十分に遅い速度で、薬剤を溶出するようである。あるいは、又は加えて、小管壁は薬剤で飽和され、その結果、壁を介した放出が減速し、薬剤の放出はプラグの端部に移動する。したがって、バリア若しくはリザーバの多く、又は従来提案されている他の比較的より複雑な系は、ほとんど本当の利益を提供していない場合がある。一部が小管の外にあるプラグの場合、流体カラムはヒドロゲル中に浸透して、同様の効果に達すると仮定される。それにもかかわらず、単位時間あたりごく一部だけを放出しながら、薬剤を小容量に濃縮する場合に、克服すべきかなりの挑戦がある。
【0013】
ヒドロゲルプラグは水を吸収し、それによって、涙点又は涙小管に滞在する力を生み出し;幾つかの実施態様において、ヒドロゲルは、それが抑制されない場合に、水中で500%以上膨潤する。ヒドロゲルは、弾力を有し、水をそれ自身に引き込み、かつそれをヒドロゲル中に保持して膨潤力を生み出すように共有結合架橋し、かつ患者が眼を擦るか、又は別のことで該ヒドロゲルが曲がり変形する場合に、別の形状に再形成されない。薬剤は、薬剤放出の実施態様であるマイクロカプセル化、ミセル化又は分散によって、所望の放出プロファイルを提供するようにヒドロゲル中に組み込まれる。ヒドロゲル分子ネットワーク又はヒドロゲルマトリックス内に捕捉された大分子への薬剤の抱合もまた、薬剤放出を調節するのに使用することができるモチーフである。
【0014】
涙点プラグは、2グループの1つに分類される:涙点の最上部に配置される涙点プラグ(本明細書中で涙点プラグと称される)又は小管に挿入される小管内プラグ(intracanalicular plug)。恒久的プラグ(回収されるまで安定)及び一時的プラグ(生分解性)の両方が利用される。一時的プラグは通常、コラーゲンから製造され、従来、患者がプラグから利益を得ることができるかどうかを判断するために十分に長く存続するように設計される。期間が延長された一時的プラグは、典型的に、ポリ(カプロラクトン-コ-ラクチド)及びポリ(グリコリド-コ-トリメチレンカルボナート)などの合成物から製造される。恒久的涙点プラグ及び小管内プラグは、一般にシリコンから製造される。一恒久的プラグは、体温まで暖められ、剛体から柔軟に変化するように形状を変化させる疎水性アクリルポリマーから製造される。別の恒久的プラグは、涙液に曝されると膨潤する、非分解性乾燥ヒドロゲルから製造される。
【0015】
図1は、涙点及び涙小管を示している。眼100は、上眼瞼102、下眼瞼104、瞳孔106、涙腺108、上涙点110、下涙点112、上涙小管114、下涙小管116、涙嚢118及び鼻涙管120を有する。涙小管(lacrimal canaliculi)は、涙小管(lacrimal canal)112、114又は涙道としても知られており、これは、涙乳頭の先端の涙点(puncta lacrimalia)又は涙点(punctum)110、112と呼ばれる微小開口部で始まる、各眼瞼102、104における細い導管であり、涙湖の側部の眼瞼の縁に見られる。上涙小管114(2つのうち、より細く短い方)は、最初上へ向かい、次いで鋭角に曲がり、内側下方に移動して涙嚢118へ向かう。下涙小管116は、最初下へ向かい、次いでほぼ水平に涙嚢118へ向かう。その角度で、それらは膨大部に拡張される。微視的に、それらは、眼輪の涙嚢部に接続する横紋筋の更に外側の層を有する線維組織で囲まれた重層扁平上皮を非角質化することによって並ばされる。各涙乳頭の底には、筋線維が環状に並び、一種の括約筋を形成している。
【0016】
図2Aは、脱水プラグ202を把持する鉗子200を示す。図2Bは、プラグ202を下涙点112及び/又は下涙小管116に配置するための鉗子200の使用を示す。プラグは、涙小管中への該プラグ全体の配置を示した図2Cのように、最初は膨潤していない。プラグはその周囲から生理的流体を吸収し、図2Dのように膨潤する。あるいは、フラグは図2Eのように、少なくとも一部が涙点を通過する状態で配置することができ、続いて頭部分を残して膨潤する。ヒドロゲルは、全方向に膨潤する場合であっても、導管の内腔に起因するその容積への制約が、それが過度に延長するのを防止するように、ポリマー部材間の内部共有結合架橋を有し;該膨潤がプラグを所定の位置にしっかりと位置付けするが、その位置以外のプラグを強制しない。
【0017】
US3,949,750(これは全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれる)には、従来の涙点プラグが記載されている。ロッド状プラグは、小管を広げて阻止的に突き出る大きめの先端又はバーブ部、涙点括約筋輪が締め付ける細い首又は腰部、及び涙点開口部の上部に置かれ、かつ該プラグが小管に下降するのを防ぐ比較的大きく滑らかなヘッド部によって形成される。該ヘッド部は、ボディ部上に置かれ、任意に腰部を有する。プラグを涙点開口部に挿入するための典型的な方法には、涙点及び連結した小管を広げるための拡張器、並びにプラグの把持、操作及び挿入を支援する挿入器を利用する。
【0018】
図3Aは、注射外筒302、針柄303、出口308を有する丸型先端306の針304、及びプッシャー312を有するプランジャー310を備えるシリンジシステム300を示す。ヒドロゲル前駆体の溶液314を、注射外筒302に入れ、針304を介して分注し、出口308を出る。シリンジシステム300の一実施態様を図3Bに示す。これは、疎水性コーティング320を施した別の針318を示し、該針と前駆体溶液314との間の高い接触角を生み出して、液滴322を形成するのを支援し、及び/又は溶液314の広がりに対する針の抵抗性によって、患者に配置後に溶液314から離れるのを支援する。
【0019】
図4Aは、ヒドロゲル前駆体314を導管112に導入するのに使用されるシリンジシステム300を示し、該前駆体は導管112に残される。該前駆体は互いに共有結合を形成して、架橋ヒドロゲルプラグ402を作り出す。該ヒドロゲル402は、プラグ402の膨潤した状態404を示す図4Cのように、その周囲から液体を吸収すると膨潤し、導管112の内腔を圧迫し、該導管を広げる。流体状態のヒドロゲル前駆体の導入、続くヒドロゲルの形成は、ヒドロゲルがその使用目的の部位で作り出されるので、ヒドロゲルの原位置(in situ)形成と呼ばれる。
【0020】
ヒドロゲルは、水には溶解しない材料であり、かなりの割合(20%を超える)の水をその構造内に保持する(「Szycherの生体材料及び医療デバイス事典(Szycher's dictionary of Biomaterials and Medical Devices)」, Technomic Pub. Co., Lancaster, 1992)。実際、多くの場合、90%を上回る含水量が知られている。ヒドロゲルは、水溶性分子を架橋して、実質的に無限の分子量のネットワークを構築することによって形成されることが多い。高含水量のヒドロゲルは、典型的に、柔らかく柔軟な材料である。柔軟な材料で製造される場合、高含有量ヒドロゲルは眼に快適に装用され、より剛性な材料、例えば、ポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)から製造されるプラグに付随して起こり得る異物感を回避する。乾燥しているヒドロゲルは本明細書中で、水に曝した時にそれがヒドロゲル状態に戻る場合に脱水ヒドロゲルと称され(キセロゲルとも呼ばれる);このヒドロゲルは過剰な水に曝され、かつ抑制されない場合に、容積を膨張させる。用語、乾燥したとは、極微量の水が存在し得ることを踏まえて、基本的に流体を有しないヒドロゲルを指す。
【0021】
ヒドロゲルネットワークは、任意にヒドロゲルネットワーク形成時に又はロードした後に、治療薬が存在する状態で、非水溶媒中に形成され得る。次いで該非水溶媒を、適当な手法によって水と置き換えて、ヒドロゲルを形成することができる。用語、治療薬には、診断薬、イメージング剤及び薬剤を含む。用語、薬剤は、患者を治療するために生物学的反応を誘発することを目的とする作用薬を指す。該ヒドロゲルは、生分解性又は非生分解性であり得る。
【0022】
治療薬は、ヒドロゲル内に分散させることができる(溶液、懸濁液又はコロイドのいずれかとして、実質的に構造体中に広がっていることを意味する)。該作用薬は、ヒドロゲルを水和させる流体として同じ相に分散させることができるか、又はヒドロゲル中の流体とは不連続な相に含ませることができる。ヒドロゲルと不連続な相は、ミセル、液滴又は粒子であり得る。したがって、ヒドロゲル内部に分散したミクロスフェア内に捕捉された薬剤は、ヒドロゲル内部に分散した薬剤である。対照として、リザーバに限局された薬剤は分散していない。ミセル、液滴又は粒子は、例えば、薬剤と別の材料、例えば、ポリマーとの混合物を含み得る。粒子の一実施態様は、カプセル内部に薬剤を伴うカプセルである。粒子の別の態様は、薬剤と関連するポリマーによって形成された固体である。粒子は、それが分解した時に、拡散により又はそれらの組み合わせにより薬剤を放出することができる。これらの特徴を組み合わせて、所望の作用薬の放出プロファイルを提供することができる。ヒドロゲル中に分散した作用薬を有するヒドロゲルとは、構造体中の実質的に一様な作用薬の分布を有する連続的なヒドロゲルマトリックスを指す。
【0023】
(配置)
涙点プラグは、涙小管に、又は部分的に涙小管内部に配置され得る。鉗子又は他のアプリケーターを使用して、プラグを把持し、挿入することができる。又は前駆体を涙小管に入れて、架橋してプラグを形成させてもよい。他の選択肢は、下眼瞼と眼との間の結膜円蓋内部にミクロスフェア及び/又はヒドロゲル(脱水された、乾燥された、部分的に脱水又は乾燥された)を配置することである。この配置を使用する他のデバイスの例は、米国特許第3,618,604号、米国特許第3,626,940号、米国特許第3,845,770号、米国特許第3,962,414号、米国特許第3,993,071号、及び米国特許第4,014,335号に開示されている(これらは全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれ、矛盾がある場合は本明細書が支配する)。
【0024】
他の選択肢は、結膜と強膜との間の結膜下にミクロスフェア及び/又はヒドロゲルを配置することである。例えば、シリンジを使用して、強膜に穴を開けることなく結膜に突き刺すことができ、ヒドロゲル及び/又はミクロスフェア及び/又はヒドロゲル前駆体を注入して、デポーを形成する。これらの構成成分の1以上を、分解性材料として形成することができる。別の選択肢は、そのような材料を眼の表面(例えば、角膜、又は局所ではあるが角膜を避けた部位)に局所的に形成することである。次いで、これらの材料中の治療薬は、時間とともに放出されて、治療が達成される。明らかなことであるが、本明細書中に記載される様々な実施態様は、このようにして投与することができる。
【0025】
そのような材料を用いて、任意に結膜下部位において、マイクロデポーを形成することができる。例えば、5〜400μlの容積を形成することができる(例えば、約5〜約30μl又は約20〜約100μlなど、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0026】
(ヒドロゲル前駆体)
ヒドロゲルは前駆体から製造され得る。該前駆体はヒドロゲルではないが、互いに共有結合架橋してヒドロゲルを形成し、それによってヒドロゲルの一部をなす。架橋は、共有結合又はイオン結合によって、前駆体分子セグメントの疎水性会合によって、又は前駆体分子セグメントの結晶化によって形成することができる。該前駆体は誘発され、反応して架橋ヒドロゲルを形成し得る。該前駆体は重合可能であり、毎回ではないが多くの場合、重合可能な前駆体である架橋剤を含む。したがって、重合可能な前駆体は、互いに反応して繰り返し単位から作製されたポリマーを形成する官能基を有する。前駆体はポリマーであり得る。
【0027】
したがって、幾つかの前駆体は、付加重合とも呼ばれる連鎖成長重合によって反応し、二重又は三重化学結合を組み込むモノマーの結合を含む。これらの不飽和モノマーは、余分な内部結合を有し、これは破壊することができ、他のモノマーと結合して、繰り返し鎖を形成する。モノマーは、他の基と反応してポリマーを形成する少なくとも1の基を有する重合可能な分子である。マクロモノマー(又はマクロマー)は、ポリマーであるか、又は多くの場合端部に、それらがモノマーとして機能することを可能にする少なくとも1の反応基を有するオリゴマーであり;各マクロモノマー分子は、該反応基の反応によってポリマーに付加される。したがって、2以上のモノマー又は他の官能基を有するマクロモノマーは、共有結合架橋を形成する傾向がある。付加重合は、例えば、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルの製造に関与する。付加重合の1種は、リビング重合である。
【0028】
したがって、幾つかの前駆体は、モノマーが縮合反応を介して結合する場合に起こる縮合重合によって反応する。典型的にこれらの反応は、アルコール、アミン又はカルボン酸(又は他のカルボキシル誘導体)官能基を組み込んでいる分子を反応させることによって達成することができる。アミンがカルボン酸と反応すると、水の放出を伴い、アミド又はペプチド結合が形成される。幾つかの縮合反応は、例えば、米国特許第6,958,212号(これは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)にあるように、求核アシル置換に付随する。
【0029】
幾つかの前駆体は、連鎖成長機構によって反応する。連鎖成長ポリマーは、反応中心を有するモノマー又はマクロモノマーの反応によって形成されたポリマーと定義される。反応中心は、該化学種が関与する反応のイニシエータである化合物内の特定の場所である。連鎖成長ポリマー化学において、これは鎖成長の成長の点でもある。反応中心は通常、性質的にラジカル、アニオン又はカチオンであるが、他の形態を取ることもできる。連鎖成長系は、フリーラジカル重合を含み、これは開始、成長及び停止のプロセスを含む。開始とは、ラジカル開始剤、例えば、有機過酸化物分子から生成されるような成長に必要なフリーラジカルの生成である。ラジカルが更なる成長を防止するように反応すると、停止が起こる。停止の最も一般的な方法は、2つのラジカル種を互いに反応させて単一分子を形成するカップリングによるものである。
【0030】
幾つかの前駆体は、段階成長機構によって反応し、モノマーの官能基間の段階反応によって形成されたポリマーである。大部分の段階成長ポリマーも、縮合ポリマーに分類されるが、全ての段階成長ポリマーは、縮合体を放出しない。
モノマーは、ポリマー又は小分子であり得る。ポリマーは、多くの小分子(モノマー)が規則的パターンで結合することによって形成された高分子量分子である。オリゴマーは、約20未満のモノマーの繰り返し単位を有するポリマーである。一般に小分子とは、約2000ダルトン未満の分子を指す。
【0031】
したがって、前駆体は、アクリル酸又はビニルカプロラクタムなどの小分子でなければならず、後者の分子は、アクリラートキャップされたポリエチレングリコール(PEG-ジアクリラート)などの重合可能な基を含むか、又はエチレン系不飽和基、例えば、Dunnらの米国特許第4,938,763号、Cohnらの米国特許第5,100,992号及び第4,826,945号、又はDeLucaらの米国特許第4,741,872号及び第5,160,745号(これらのそれぞれは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載のものを含む他の分子を含む。
【0032】
共有結合架橋したヒドロゲルを形成するために、前駆体を一斉に架橋しなければならない。一般にポリマー前駆体は、2以上の位置で他のポリマー前駆体に結合するポリマーを形成し、各位置は同じであるか又は異なったポリマーに結合している。各反応基は、異なる成長ポリマー鎖の形成に関与することができるので、少なくとも2の反応基を有する前駆体は、架橋剤として機能することができる。反応中心を有さない官能基の場合、他の中で、架橋は、前駆体上に3以上の官能基を必要とする。例えば、多くの求電子-求核反応は、求電子性及び求核性官能基を消費するので、そのため前駆体に第3の官能基が架橋形成のために必要とされる。したがって、そのような前駆体は、3以上の官能基を有することができ、かつ2以上の官能基を有する前駆体によって架橋され得る。架橋分子は、イオン結合若しくは共有結合、物理的力又は他の引力を介して架橋され得る。しかしながら、共有結合架橋は典型的に、反応物が作り出す構造体の安定性及び予測性を提供する。
【0033】
幾つかの実施態様において、各前駆体は多官能性であり、これは、一前駆体上の求核性官能基が、他の前駆体上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成するように、2以上の求電子性又は求核性官能基を含むことを意味する。少なくとも1の前駆体は、2より多くの官能基を含み、求電子-求核反応の結果、該前駆体は結合して、架橋ポリマー生成物を形成する。
【0034】
前駆体は、生物学的に不活性でかつ親水性のタンパク質、例えば、コアを有する。分枝ポリマーの場合、コアとは、該コアから延びた腕に結合した分子の近接部を指し、該腕は多くの場合、分枝の末端に官能基を有する。親水性の前駆体又は前駆体部分は、好ましくは、少なくとも1g/100mLの水性溶液への溶解度を有する。親水性部は、例えば、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド(PPO)、コ-ポリエチレンオキシドブロック若しくはランダムコポリマー、及びポリビニルアルコール(PVA)などのポリアルキレンオキシド、ポリ(ビニルピロリジノン)(PVP)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、又はタンパク質であってよい。前駆体は、ポリアルキレングリコール部分を有してもよく、ポリマーの少なくとも約80重量%又は90重量%で、ポリエチレンオキシドの繰り返しを含むポリエチレングリコールベースのものであってもよい。ポリエーテル、及びより具体的にはポリ(オキシアルキレン)又はポリ(エチレングリコール)又はポリエチレングリコールは、一般に親水性である。
【0035】
また前駆体は巨大分子(又はマクロマー)であってよく、数千〜何百万の範囲の分子量を有する分子である。しかしながら、幾つかの実施態様において、少なくとも1の前駆体は、約1000Da以下の小分子である。巨大分子は、約1000Da以下の小分子との組み合わせにおいて反応する場合、好ましくは、分子量は小分子よりも、少なくとも5〜50倍大きく、好ましくは、約60,000Daより小さい(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。より好ましい範囲は、架橋剤よりも分子量が約7〜約30倍大きい巨大分子であり、最も好ましい範囲は、約10〜20倍分子量が異なる。更に、7,000〜40,000の分子量、又は10,000〜20,000の分子量のように、5,000〜50,000の分子量の巨大分子が有用である。
【0036】
特定のマクロマー前駆体は、Hubbellらの米国特許第5,410,016号(これは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載の架橋性、生分解性、水溶性マクロマーである。これらのマクロマーは、少なくとも1の分解可能領域で隔てられた少なくとも2の重合可能な基を有することによって特徴付けられる。
【0037】
合成前駆体を使用してもよい。合成とは、天然には見られない又はヒトには通常見られない分子を指す。幾つかの合成ポリマーは、天然に存在するアミノ酸を含まないか、又はアミノ酸配列を含まない。幾つかの合成分子は、天然に見られない又はヒトの体には通常見られないポリペプチド、例えば、ジ-、トリ-若しくはテトラ-リジンである。幾つかの合成分子は、アミノ酸残基を有するが、近接する1、2又は3つを有するだけであり、該アミノ酸又はそれらのクラスターは、非天然の高分子又は基によって隔てられている。したがって、多糖又はその誘導体は合成的ではない。
【0038】
前駆体は、得られるヒドロゲルが必要量の水、例えば、少なくとも約20%の水を保持するという条件で、疎水性部を用いて製造されてもよい。幾つかの場合において、それにもかかわらず、該前駆体は親水性部も有すので、水に溶解する。他の場合において、該前駆体は、水中で分散をなす(懸濁液)が、それにもかかわらず、反応可能であり、架橋材料を形成する。幾つかの疎水性部は、複数のアルキル、ポリプロピレン、アルキル鎖又は他の基を含み得る。疎水性部を有する幾つかの前駆体は、PLURONIC F68、JEFFAMINE又はTECTRONICの商標名で販売されている。疎水性部とは、水性連続相において、マクロマー又はコポリマーを凝集させてミセルを形成するのに、十分に疎水性なものであるか、又は自身によって試験される場合に、pH約7〜約7.5、温度約30〜約50℃の水の水性溶液内で、そこから沈殿するか、又はそうでなければ相を変化させるのに十分に疎水性なものである。
【0039】
前駆体は、例えば、2〜100の腕(arm)を有することができ、各腕は、幾つかの前駆体がデンドリマー又は他の高度に分枝した材料であってもよいことを踏まえれば、末端を有する。ヒドロゲル前駆体の腕とは、架橋可能な官能基をポリマーコアと連結する直鎖の化学基を指す。幾つかの実施態様は、3〜300の腕を有する(例えば、4〜16本、8〜100又は少なくとも6本の腕など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0040】
したがって、ヒドロゲルは、例えば、官能基の第1の組を有する多腕型(multi-armed)前駆体、及び官能基の第2の組を有する低分子量前駆体から製造され得る。例えば、6の腕又は8の腕の前駆体は、親水性の腕、例えば、腕の分子量が約1,000〜約40,000の第一級アミンを末端に有するポリエチレングリコールを有することができる(明確に記載された値間の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。そのような前駆体は、比較的小さな前駆体、例えば、少なくとも約3の官能基又は約3〜約16の官能基を有する分子量約100〜約5000、又は800、1000、2000若しくは5000以下の分子と混合され得る(これらの明確な値間の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。そのような小分子は、ポリマー又は非ポリマー、及び天然物又は合成物であってよい。
【0041】
デンドリマーではない前駆体を使用してもよい。樹枝状分子は、高度に分枝した放射対称性のポリマーであり、腕が多数の腕で配置されており、かつサブアーム(subarm)が中心コアから放射状に伸びている。デンドリマーは、対称性と多分散性との両方の評価に基づいた、それらの構造的完全性の程度によって特徴付けられ、合成のために特定の化学プロセスが要求される。したがって、当業者は、デンドリマー前駆体と非デンドリマー前駆体とを容易に識別できる。デンドリマーは典型的に、その構成ポリマーの所与の環境への溶解度に依存した形状を有し、実質的に溶媒又はその周囲の溶質に従い(例えば、温度、pH又はイオン量の変化)変化することができる。
【0042】
前駆体は、例えば、特許出願公開番号US20040086479、US20040131582、WO07005249、WO07001926、WO06031358又はそのU.S.対応物にあるようにデンドリマーであってよく;デンドリマーはまた、例えば、米国特許公開番号US20040131582、US20040086479並びにPCT出願番号WO06031388及びWO06031388にあるように多官能性前駆体として有用であり得る(これらUS及びPCT出願のそれぞれは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。デンドリマーは、高い容積に対する表面積の比を所有することを強く命じられ、潜在的な機能化のための多数の末端基を提示する。実施態様は、デンドリマーではない多官能性前駆体を含む。
【0043】
幾つかの実施態様は、基本的に5残基以下のオリゴペプチド配列(例えば、少なくとも1のアミン、チオール、カルボキシル又はヒドロキシル側鎖を含むアミノ酸)からなる前駆体を含む。残基とは、天然に存在する又はその誘導体化されたアミノ酸である。そのようなオリゴペプチドの骨格は、天然物又は合成物であってよい。幾つかの実施態様において、2以上のアミノ酸のペプチドを合成骨格と組み合わせて前駆体を製造し;そのような前駆体の特定の実施態様は、約100〜約10,000、又は約300〜約500の範囲の分子量を有する(これらの明確に記載された範囲間の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0044】
前駆体は、導入部位に存在する酵素によって切断可能なアミノ酸配列を含まないように製造することができ、メタロプロテイナーゼ及び/又はコラゲナーゼによって付加しやすい配列がないことを含む。更に前駆体は、アミノ酸を全く含まないか、又は約50、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1より多くのアミノ酸のアミノ酸配列を含まないように製造することができる。前駆体は非タンパク質であってよく、これは、それらが天然のタンパク質ではなく、天然のタンパク質を切断することによって製造することはできず、かつタンパク質に合成材料を付加することによって製造することはできないということを意味する。前駆体は、非コラーゲン、非フィブリン、非フィブリノーゲン及び非アルブミンであってよく、これは、それらがこれらのタンパク質の1つではなく、かつこれらのタンパク質の1つの化学誘導体ではないことを意味する。非タンパク質前駆体の使用、及びアミノ酸配列の限定的使用は、免疫反応を回避し、望ましくない細胞認識を回避し、及び天然源由来のタンパク質の使用に付随する危険を回避するのに役立てることができる。また前駆体は、非糖類(糖類を含まない)又は基本的に糖類(前駆体分子量の約5% w/wを越える糖類を含まない)とすることができる。したがって、前駆体は例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン又はゲランを排除し得る。前駆体はまた、非タンパク質及び非糖類の両方であり得る。
【0045】
ペプチドを前駆体として使用することができる。一般に、より大きな配列(例えば、タンパク質)が使用され得るが、約10残基未満のペプチドが好ましい。これらの明確な範囲内の全ての範囲及び値には、例えば、1〜10、2〜9、3〜10、1、2、3、4、5、6又は7が含まれることが当業者には直ちに理解されるであろう。幾つかのアミノ酸は、求核基(例えば、第一級アミン又はチオール)、又は求核基若しくは求電子基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)を組み込むために必要に応じて誘導体化され得る基を有する。合成によって生成されたポリアミノ酸ポリマーは、それらが天然に見られず、かつ天然に存在する生体分子と同一でないように操作される場合に、合成的であるとされる。
【0046】
幾つかのヒドロゲルは、ポリエチレングリコール含有前駆体によって製造される。ポリエチレングリコール(PEG、高分子量で存在する場合にポリエチレンオキシドとも呼ばれる)とは、繰り返し基(CH2CH2O)nを有し、nが少なくとも3であるポリマーを指す。したがって、ポリエチレングリコールを有するポリマー前駆体は、直線で互いに結合した少なくとも3のこれら繰り返し基を有する。ポリマー又は腕のポリエチレングリコール含有量は、たとえそれらが他の基によって隔たられるとしても、該ポリマー又は腕上の全てのポリエチレングリコール基を加算することによって算出される。したがって、少なくとも1000MWのポリエチレングリコールを有する腕は、合計して少なくとも1000MWとなるのに十分なCH2CH2O基を有する。これら分野で慣例的な技術用語であるが、ポリエチレングリコールポリマーは、必ずしも末端にヒドロキシル基を有する分子を指すわけではない。
【0047】
(開始系)
幾つかの前駆体は、開始剤を使用して反応する。開始剤基は、連鎖成長による重合反応を開始することが可能な化学基(例えば、フリーラジカル)である。例えば、それは、別個の構成成分として、又は前駆体上の懸垂基(pendent group)として存在し得る。フリーラジカル開始剤基には、熱開始剤、光学活性化可能な開始剤(photoactivatable initiator)、及び酸化-還元(レドックス)系が含まれる。長波長のUV及び可視光に光学活性化可能な開始剤を挙げると、例えば、エチルエオシン基、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン基、他のアセトフェノン誘導体、チオキサントン基、ベンゾフェノン基及びカンファーキノン基がある。熱反応性開始剤の例を挙げると、4,4'アゾビス(4-シアノペンタン酸)基、及び過酸化ベンゾイル基の類似体である。幾つかの市販されている低温ラジカル開始剤、例えば、Wako Chemicals USA社(リッチモンド、Va.)から入手可能なV-044などを使用し、体温でラジカル架橋反応を開始して、前述のモノマーのよるヒドロゲルを形成することができる。
【0048】
金属イオンを、レドックス開始系における酸化剤又は還元剤として使用することができる。例えば、重合を開始するために、又は重合系の一部として、第一鉄イオンを過酸化物又はヒドロペルオキシドと組合せて使用することができる。この場合、第一鉄イオンは還元剤として機能することになる。あるいは、金属イオンは、酸化剤として機能し得る。例えば、セリウムイオン(セリウムの4+価の状態)は、カルボン酸及びウレタンを含む様々な有機基と相互作用し、電子を金属イオンに移動させ、有機基の背後に開始ラジカルを残す。そのような系において、該金属イオンは酸化剤として作用する。どちらの役割にも潜在的に適した金属イオンは、遷移金属イオン、ランタニド及びアクチニドのいずれかであり、これらは、少なくとも2つの移行しやすい酸化状態を有する。特に有用な金属イオンは、ただ1の電荷の差だけで隔てられた、少なくとも2つの状態を有する。これらの中で、最も一般に使用されるのは、第二鉄/第一鉄;第二銅/第一銅;第二セリウム/第一セリウム;第二コバルト/第一コバルト;バナジン酸V対FV;過マンガン酸;及びマンガン(III)/マンガン(II)である。過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クミルペルオキシドを含む、例えば、過酸化物及びヒドロペルオキシドなどの過酸素含有化合物を使用することができる。
【0049】
開始系の例は、一溶液中の過酸素化合物と、別の溶液中の遷移金属などの反応性イオンとの組合せである。この場合において、2つの相補的な反応性官能基を含有する部位が、適用部位で相互作用する場合に、外部の重合開始剤は不要であり、かつ重合は自発的に、かつ外部エネルギーの適用又は外部エネルギー供給源の使用を伴うことなく進行する。
【0050】
(官能基)
前駆体は、患者の外部又は原位置のいずれかで、互いに反応して材料を形成する官能基を有する。一般に官能基は、重合若しくは求電子剤-求核剤反応で互いに反応するための重合可能な基を有するか、又は他の重合反応に関与するように構成される。重合反応の様々な態様が、本明細書中の前駆体の節に記載されている。
【0051】
したがって、幾つかの実施態様において、前駆体は、重合分野で使用されような光開始又はレドックス系によって活性化される重合可能な基、又は例えば、カルボジイミダゾール、塩化スルホニル、クロロカルボナート、n-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル若しくはスルファスクシンイミジル(sulfasuccinimidyl)エステルである求電子性官能基、又は米国特許第5,410,016号若しくは第6,149,931号(これらのそれぞれは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されたものを有する。該求核性官能基は、例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル及びチオールであり得る。求電子剤の別の部類は、例えば、米国特許第6,958,212号に記載されるようなアシルであり、該文献には特に、ポリマーの反応についてマイケル付加のスキームが記載されている。
【0052】
アルコール又はカルボン酸などの特定の官能基は通常、生理的条件下(例えば、pH7.2〜11.0、37℃)では、アミンなどの他の官能基と反応しない。しかしながら、そのような官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの活性化基を使用することによって、より反応性を高めることができる。特定の活性化基を挙げると、カルボニルジイミダゾール、塩化スルホニル、ハロゲン化アリール、スルホスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステルなどがある。N-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)基は、タンパク質、又はアミノ末端ポリエチレングリコールなどのアミン含有ポリマーの架橋に有用な基である。NHS-アミン反応の利点は、反応速度論的に優位な点であるが、そのゲル化速度は、pH又は濃度によって調節され得る。NHS-アミンの架橋反応は、副生成物としてN-ヒドロキシスクシンイミドの形成をもたらす。N-ヒドロキシスクシンイミドのスルホン化又はエトキシ化の形態は、比較的増大された水への溶解度を有し、したがって、これらは体内からの迅速に排除される。NHS-アミンの架橋反応は水性溶液中、かつ緩衝液、例えば、リン酸緩衝液(pH5.0〜7.5)、トリエタノールアミン緩衝液(pH7.5〜9.0)又はホウ酸緩衝液(pH9.0〜12)又は炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.0〜10.0)の存在下で行うことができる。NHSベースの架橋剤及び官能性ポリマーの水性溶液は、好ましくは、NHS基が水と反応するために、架橋反応の直前に作製される。これらの基の反応速度は、これらの溶液を低いpH(pH4〜7)で保つことによって遅らせることができる。
【0053】
幾つかの実施態様において、求核性及び求電子性の両方の前駆体が架橋反応に使用されない限りは、各前駆体は求核性官能基だけを、又は求電子性官能基だけを含む。したがって、例えば、架橋剤がアミンなどの求核性官能基を有する場合は、官能性ポリマーは、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの求電子性官能基を有し得る。一方、架橋剤がスクシンイミドなどの求電子性官能基を有する場合は、官能性ポリマーは、アミン又はチオールなどの求核性官能基を有し得る。このように、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、又はアミン末端の二官能性若しくは多官能性ポリ(エチレングリコール)などの官能性ポリマーを使用することができる。
【0054】
一実施態様は、3〜16の求核性官能基を各々もつ反応性前駆体種、及び2〜12個の求電子性官能基を各々もつ反応性前駆体種を有する(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0055】
官能基は、例えば、求核剤と反応可能な求電子剤、特定の求核剤と反応可能な基、例えば、第一級アミン、生体液中の材料とアミド結合を形成する基、カルボキシルとアミド結合を形成する基、活性化した酸官能基、又は同物の組み合わせとアミド結合を形成する基であり得る。官能基は、例えば、強求電子性官能基であってよく、これは、室温及び室圧で、pH9.0の水性溶液中で第一級アミンと共有結合を効果的に形成する求電子性官能基、及び/又はマイケル型反応によって反応する求電子性基を意味する。強求電子剤は、マイケル型反応に関与しない種のものであるか、又はマイケル型反応に関与する種のものであってもよい。
【0056】
マイケル型反応とは、共役不飽和系における求核剤の1,4付加反応を指す。該付加機構は、純粋に極性であり得るか、又はラジカル様中間体状態によって進行し;ルイス酸又は適切に設計された水素結合種が触媒として作用できる。用語共役とは、炭素-炭素、炭素-ヘテロ原子、又はヘテロ原子-ヘテロ原子の多重結合と単結合との交互の連なり、又は合成ポリマー若しくはタンパク質などの巨大分子への官能基の結合も指す。マイケル型反応は、米国特許第6,958,212号に詳細に記載されている(これは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
マイケル型反応に関与しない強求電子剤の例は、スクシンイミド、スクシンイミジルエステル又はNHS-エステルである。マイケル型求電子剤の例は、アクリラート、メタクリラート、メチルメタクリラート及び他の不飽和の重合可能な基である。
【0057】
(ヒドロゲル及びヒドロゲル形成)
一般に前駆体は組み合わされて、共有結合架橋性ヒドロゲルを製造する。該ヒドロゲルは、適切な期間放出される治療薬又は作用薬を含み得る。ヒドロゲルは、事前に又は原位置で製造することができる。
原位置で製造される場合、一般に架橋反応は、生理的条件下、水性溶液中で起こる。好ましくは、該架橋反応は重合熱を発しないか、又は重合の開始若しくは誘発に外部のエネルギー供給源を必要としない。例えば、光化学的開始は一般に、眼への損害を回避するために避けられるべきものである。注入される材料の場合、その粘性は、該材料が小口径のカテーテル又は針を通って導入されるように制御され得る。ヒドロゲルが事前に製造される場合、ポリマーは、水性及び/又は有機性溶媒中で作製がなされる。
【0058】
一般にヒドロゲルは、ヒドロゲルが物理的制限の非存在下で生理的溶液に24時間曝された場合に、形成時のヒドロゲルの重量と比較して、約50%を超えて重量が増加することから測定可能なように、高膨潤性である。膨潤は重量又は容積により、測定する又は表すことができる。幾つかの実施態様は、重量又は容積が、約1000%を超えて、約500%を超えて、又は約100%を超えて膨潤する(例えば、約200%を超える、又は約300%〜約1000%など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。したがって、幾つかの実施態様は、重量又は容積が、約100%〜約2000%、約200%〜約1500%又は約300%〜約1100%膨潤するヒドロゲルを含む(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0059】
高膨潤性への1つのアプローチは、架橋の数を制御することである。別の実施態様は、ヒドロゲル前駆体に、前駆体と共有結合架橋しない高分子量水溶性の合成又は天然ポリマーを混合して、その中で他の材料が分散された架橋性ヒドロゲルを達成することである。そのような材料の例は、メチルセルロース、ヒアルロン酸、及び例えば、分子量が100,000MWを超える(例えば、約100,000〜約10,000,000)高分子量PEGである(例えば、約250,000〜約1,000,000など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。これらの追加された材料は、高水溶性の大きなポリマーがネットワーク内部に絡まって留まり、該ヒドロゲル構造内部の浸透圧の増加を引き起こし、これにより該ヒドロゲルをより膨潤させるように、架橋性ヒドロゲルの膨潤を大きく増加させることができる。
【0060】
事前に形成された脱水ヒドロゲルにおいて、ある程度の分子配向は、該材料を引き伸ばしてそれを凝固させ、分子配向を固定することによって与えることができる。これは、該材料を、該材料の結晶化可能領域の融点を上回る温度に加熱しながら引き抜き、次いで該結晶化可能領域を結晶化させることによって達成することができる。あるいは、乾燥ヒドロゲルのガラス転移温度を使用して、分子配向を固定することができる。更に別の代替法は、完全な脱水(又は乾燥)より前にゲルを引き抜き、次いで該材料を張力下で乾燥させることである。分子配向は、水和媒体への導入時に、異方性の膨潤の機構を与える。しかしながら、半径方向にだけ膨潤し、長さ方向には増大も減少もないロッドを形成することができる。半径方向の膨潤は、涙点プラグにおいて望ましい場合があるが、長さ方向の増大又は収縮は、外科医によって配置される場合に、デバイスの保持に関する問題となることがある。長さの変化は、涙点プラグを外に追い出させる又はそれを回収するを困難とさせる。したがって、半径方向膨潤性涙点プラグは、長軸方向の収縮及び/又は膨潤のないものにさせ得る。用語等方性とは、制約がない場合に全方向に一様に膨潤することを指す。用語異方性とは、他とは対照的に一方向に優先的に膨潤することを指し、主に半径方向に膨潤して小管及び/又は涙点に適合するが、長軸方向にはあまり膨張又は縮小しない円柱の場合、したがって外科医に配置された位置を維持する。最小限の長さの増大と、大きな半径の増大との組み合わせは、治療過程の間のプラグの保持の改善を提供する。
【0061】
膨潤を増大させる別の実施態様は、架橋時の溶媒和は低度であるが、その後に更に溶媒和し、実質的に増大する溶媒和物の半径を有する;言い換えると、前駆体は架橋後に溶液中に広がるが、架橋時には比較的収束されている前駆体を選択することである。pH、温度、固体濃度及び溶媒和環境の変化は、そのような変化をもたらし得る。
【0062】
別途明記しない限り、ヒドロゲルの膨潤は、架橋が有効に完了した場合のその形成時間と、インビトロにて制約を受けない状態で水性溶液中に置かれた後の24時間の時間(この時点で、平衡膨潤状態に達したと十分に考えられる)との間のその容積(又は重量)の変化に関連する。ほとんどの実施態様について、架橋は約15分以内で有効に完了されて、初期重量は通常、初期形成時の重量として形成後約15分で記すことができるようにする。したがって、次の式を使用する:膨潤%=[(24時間時の重量−初期形成時の重量)/初期形成時の重量]*100。ヒドロゲルの重量には、ヒドロゲル中の溶液の重量が含まれる。制約を受ける場所で形成されたヒドロゲルは、それにもかかわらず、膨潤の量を定義するのは、制約を受けない状態での膨張であるので、高膨潤性ヒドロゲルと考えられる場合がある。例えば、体内で作り出される膨潤可能なヒドロゲルは、その周囲によって膨潤に制約がかかり得るが、それでも、制約を受けない及び/又は制約に反して力が働く場合、その膨潤の測定からも明らかなように、高度に膨潤可能なヒドロゲルであり得る。
【0063】
一般に反応速度論は、外部開始剤又は連鎖移動剤が必要とされる場合(この場合において、開始剤を誘発すること又は移動剤を操作することが、制御工程となり得る)を除き、特定の官能基を考慮して制御される。幾つかの実施態様において、前駆体の分子量を利用して、反応時間に影響を与える。低分子量の前駆体は、それらの高濃度の反応基のため反応を加速させる傾向があり、そのため幾つかの実施態様は、約1000又は約2000ダルトン未満の分子量の前駆体を少なくとも1つ有する(例えば、100〜約900ダルトン又は500〜約1800ダルトンなど、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。好ましくは、ゲル化をもたらす架橋反応は、約2未満〜約10、又は〜約30分以内で起こる(例えば、少なくとも120秒、又は180〜600秒など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。ゲル化時間は、前駆体を平面に適用すること、及び該平面を約60度の角度(すなわち、垂直に近い急角度)にした時に、実質的に該表面を流れ落ちなくなった時間を計ることによって測定される。原位置でのヒドロゲル形成の場合、約2分未満、又は約1分、又は約30秒のゲル化時間が有用である(例えば、約5〜約90秒又は約10〜約40秒など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0064】
得られる生体適合性架橋ポリマーの架橋密度は、架橋剤及び官能性ポリマーの総分子量、並びに1分子あたり有効な官能基の数によって制御される。500などの架橋間の低分子量は、10,000などの高分子量と比べ、非常に高い架橋密度を与えるであろう。架橋密度はまた、架橋剤及び官能性ポリマー溶液の全体の固体パーセントによって制御され得る。該固体パーセントが増加するほど、加水分解による不活性化の前に、求電子性官能基が求核性官能基と組み合わされる確立が増大する。架橋密度を制御する更に別の方法は、求核性官能基対求電子性官能基の化学量論を調節することによる。1対1の比率は、最も高い架橋密度をもたらす。架橋間の距離が長い前駆体は一般に、より柔らかく、より柔軟で、かつより弾性がある。したがって、ポリエチレングリコールなどの水溶性部分の延長は、弾性を強化して所望の物理的性質をもたらす傾向がある。このように、特定の実施態様は、3,000〜100,000又は例えば、10,000〜35,000の範囲の分子量の水溶性部分を有する前駆体に関する。
【0065】
ヒドロゲルの固体パーセントは、その機械的特性及び生体適合性に影響を与え、かつ競合する要件間のバランスを反映し得る。比較的低い固体含有量、例えば、約2.5%〜約25%(その間の全ての範囲及び値、例えば、約2.5%〜約10%、約5%〜約15%、又は約15%未満を含む)が有用である。
驚くべきことに、疎水性領域を有するヒドロゲルを十分な濃度でロードすることが、ヒドロゲルの膨潤性を低下させるのに効果的であることが見出された。図12はこの効果を示している。ヒドロゲルへのシクロスポリンAのロードの増加は、全体の膨潤性を低下させた。
【0066】
(ヒドロゲルの製造方法)
薬剤を組み込んだヒドロゲルの製造方法は、有機溶媒又は水性溶液中でヒドロゲルを作製することを含み、該薬剤はヒドロゲルの形成時に存在しているか、又はその形成後にヒドロゲルに添加される。ヒドロゲルは、事前に製造され(事前形成デバイス(preformed device))、かつ少なくとも一部が脱水若しくは乾燥されていてもよく、又は形成場所の溶液中にて原位置で製造されてもよい。
【0067】
ヒドロゲル製造の一実施態様は、治療薬存在下の有機溶媒における事前形成デバイスを製造することである。第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有する第2のヒドロゲル前駆体とともに、有機溶媒に混和性の治療薬の存在下で有機溶媒に溶解する。該溶液をモールドに導入し、前駆体が第1の官能基と第2の官能基との間での共有結合の形成によって互いに架橋するまで放置する。ヒドロゲルを全部又は一部乾燥させて、脱水又は乾燥ヒドロゲル(キセロゲル)を形成する。次にヒドロゲルを取り出し、任意に切断するか、又は別の形状若しくはサイズに切り取る。この実施態様は、例えば、非水溶性作用薬、又は有機相に耐性をもつカプセル化作用薬を伴うヒドロゲルのロードに使用することができる。
【0068】
治療薬存在下の有機溶媒における事前形成デバイスの製造のための実施態様は、各腕の末端に求電子性官能基を有する分枝ポリエチレングリコールを、求核性前駆体とともに、治療薬を含有するメタノールに溶解することである。該前駆体はヒドロゲルに形成され、乾燥され、かつ所望であれば成形される。
【0069】
ヒドロゲルを製造するための別の実施態様は、有機溶媒中で事前形成デバイスを作製し、ヒドロゲルが形成された後、該ヒドロゲルに治療薬をロードすることである。第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有する第2のヒドロゲル前駆体とともに有機溶媒に溶解する。該溶液をモールドに導入し、前駆体が第1の官能基と第2の官能基との間での共有結合の形成によって互いに架橋するまで放置する。ヒドロゲルを全部又は一部乾燥させて、脱水又は乾燥ヒドロゲル(キセロゲル)を形成する。該架橋ヒドロゲルを膨潤させる有機溶媒(架橋中に使用されるものと同じであるか又は異なる)を加える。この溶媒は、溶解した作用薬を高濃度で含有する。ヒドロゲルは、有機性薬剤溶液により膨潤させられ、幾らかの薬剤をヒドロゲルマトリックス中に浸透させる。ゲルを取り出し、上記と同様に乾燥させるか、又は非溶媒、例えば、ヘキサン中に置く。該非溶媒は、有機溶媒を該ゲルから取り除き、作用薬を該ゲルマトリックス中に沈殿させ、作用薬がロードされたプラグを与える。この実施態様は、例えば、特定の架橋官能基に不適合性の作用薬(例えば、前駆体のアミン官能基が架橋中に反応されることを意図する場合の第一級アミンを有する作用薬)のロードに使用することができる。この薬剤ロード工程と架橋工程との分離は、治療薬と架橋反応との間の化学的不適合性に関する問題を排除する。
【0070】
したがって、ヒドロゲルを製造するための実施態様は、各腕の末端に求電子性官能基を有する分枝ポリエチレングリコールを、求核性前駆体とともに溶解することである。前駆体は混合されるか、又はそうでなければ、活性化されて、モールド中で架橋ヒドロゲルを形成し、次に溶媒が乾燥される。該事前形成デバイスを、架橋ヒドロゲルを膨潤させる溶媒に加える。該溶媒は、溶解した薬剤を高濃度で含有する。プラグは溶媒剤溶液により膨潤させられ、幾らかの薬剤をヒドロゲルマトリックス中に浸透させる。ゲルを取り出し、上記と同様に乾燥させるか、又はヘキサンなどの沈殿剤に置く。該沈殿剤が、ゲルネットワーク及び治療薬に僅かに不適合性の溶媒と適合する場合は、それは溶媒をゲルから移動させ、薬剤をゲルマトリックス中に沈殿させ、作用薬がロードされたプラグを形成する。
【0071】
ヒドロゲルを製造する別の実施態様は、治療薬存在下の水性溶媒中で事前形成デバイスを作製することである。第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有するヒドロゲル前駆体とともに、溶媒の治療薬存在下の水性溶液に溶解する。該溶液をモールドに導入し、前駆体が第1の官能基と第2の官能基との間での共有結合の形成によって互いに架橋するまで放置する。ヒドロゲルを全部又は一部乾燥させて、脱水又は乾燥ヒドロゲルを形成する。次にヒドロゲルを取り出し、任意に切断するか、又は別の形状若しくはサイズに切り取る。この実施態様は、例えば、非水溶性作用薬、又は水相に耐性をもつカプセル化作用薬を伴うヒドロゲルのロードに使用することができる。該作用薬は、水性溶媒、例えば、溶液又は懸濁液に分散されてよい。懸濁は例えば、作用薬を含む粒子、又はカプセル化された作用薬の懸濁であってよい。この実施態様は、例えば、他のポリマー系においてすでにカプセル化された作用薬を、ヒドロゲルにロードするのに有用である。また水性ベースの製造を使用して、幾つかの有機溶媒で起こり得るカプセル化作用薬の抽出を回避することができる。
【0072】
したがって、ヒドロゲルを製造するための実施態様は、求電子的に活性化された末端を有する分枝ポリエチレングリコールを、求核性前駆体とともに、作用薬を含有する水、例えば、薬剤の懸濁液に溶解することである。ヒドロゲルはモールド中で形成され、乾燥される。該乾燥プラグをモールドから取り出し、任意に更なる処理、例えば、サイズ又は形状に関する処理を行う。
【0073】
治療薬存在下の原位置でヒドロゲルを製造するための実施態様は、アプリケーターによって涙点及び/又は小管に投与され得る水性溶液中で前駆体を組み合わせ、その後にヒドロゲルを形成することである。前駆体は投与の前、その間、又はその後に活性化剤と混合することができる。該ヒドロゲルは、治療薬をそこに例えば、溶液、懸濁液、粒子、ミセル又はカプセル化として分散させた状態で配置され得る。一実施態様において、架橋結合は作用薬を捕捉している。別の実施態様において、架橋結合は、作用薬を沈殿させるか、又は溶液から懸濁液に移動させる。
【0074】
したがって、一実施態様は、第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有する第2のヒドロゲル前駆体と、溶媒中の治療薬存在下の水性溶媒において組み合わせることに関する。一実施態様において、前駆体は別個に溶解され、効果的な架橋を提供する活性化剤の存在下で組み合わされる。あるいは、該前駆体を単に混合するだけで、架橋が誘発される。したがって、一実施態様は、求核剤を含む低分子量前駆体を含有する低pH(4.0)希釈溶液に溶解した複数のスクシンイミジル末端を有する分枝ポリマーを提供することである。この溶液は、高pH溶液(8.8)と組み合わせることによって活性化され、架橋機構が開始される。作用薬は、希釈溶液中の懸濁液として事前にロードされる。該溶液を小管に適用するか、又は適切なカニューレ(例えば、27G)を有する小型シリンジ(例えば、1cc)に取り、小管に注入する。ゲルは原位置で形成される。
【0075】
架橋化学はまた、揮発性有機溶媒中で行うこともできる。したがって、一実施態様は、第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有する第2のヒドロゲル前駆体と、揮発性有機溶媒中、任意に溶媒中に治療薬の存在下で組み合わせることに関する。又は前駆体を、任意に作用薬が存在する揮発性有機溶媒と組み合わせて、ヒドロゲルを製造してもよい。前駆体は反応して、例えば、ロッド形状の涙点プラグなどのデバイスを形成する。揮発性有機溶媒とは、約100℃未満の沸点を有する溶媒を意味する。揮発性有機溶媒の例は、メタノール(65℃)、エタノール(78℃)、アセトニトリル(81℃)である。幾つかの実施態様において、治療薬は低水溶性である。この方法は、架橋ヒドロゲルにおける作用薬の即時の捕捉を有利に提供する。
幾つかの実施態様において、治療薬は、水性溶液の作製に先立って又は官能性ポリマーの無菌製造中に、前駆体と混合される。次いで、この混合物は前駆体と混合されて、生物学的に活性のある物質が捕捉された架橋性材料が生成される。
【0076】
(送達のための作用薬の相分離)
幾つかの実施態様において、治療薬又は作用薬は、前駆体が反応して架橋ポリマーヒドロゲルを生成する場合に、分離相に存在している。この相分離は、NHSエステルとアミン基との間の反応などの化学架橋反応における治療薬の関与を防止する。該分離相はまた、架橋材料又はゲルからの活性剤の放出動態を調節し、ここで「分離相」は、油(水中油エマルジョン)、生分解性ビヒクルなどであり得る。活性剤が存在し得る生分解性ビヒクルを挙げると、微小粒子、ミクロスフェア、マイクロビーズ、マイクロペレットなどのカプセル化ビヒクルがあり、ここで該活性剤は、生浸食性(bioerodable)又は生体吸収性(bioresorbable)ポリマー、例えば、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(トリメチレンカルボナート)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)-コ-ポリ(グリコール酸)、ポリ(オルトカルボナート)、ポリ(カプロラクトン)のポリマー及びコポリマーなど、シクロデキストリンのような包接及び捕捉分子、モレキュラーシーブなどに捕捉されている。ポリ(ラクトン)及びポリ(ヒドロキシ酸)のポリマー及びコポリマーから作製されたミクロスフェアは、有用な生分解性カプセル化ビヒクルである。
【0077】
本発明の特定の実施態様は、組成物及びヒドロゲルを使用して比較的低分子量の治療用化学種(therapeutic species)の放出を制御する方法を提供することによって達成される。まず治療薬を、1以上の比較的疎水性の速度修正剤(rate modifying agent)に分散又は溶解させて、混合物を形成する。該混合物は、粒子又は微小粒子中に形成することができ、次いで、制御された方式で水溶性治療薬を放出するために、生体吸収性ヒドロゲルマトリックス内に捕捉される。あるいは、該微小粒子は、ヒドロゲルの架橋間に原位置で形成されてもよい。薬剤は、涙点プラグへの組み込みに先立ち、放出制御の目的のための様々な技術を使用してカプセル化することができる。これらの放出制御系は、懸濁液、油剤、エマルジョン、リポソーム、ミセル、埋込錠及び微小粒子の形態であり得る。ポリマー放出制御系は、徐放を与えるために医薬品産業において一般に使用され、かなり多くの市販品が、生分解性ポリマーに基づいている。生分解性ポリマーの合成形態には、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリホサゼン(polyphosazene)、ポリアミノ酸、ポリアルキルシアノアクリル酸、ポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカルボナートなど)を含むことができ、ポリエステル(ポリ(ラクチド)(PLA)及びポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA))がより頻繁に使用される。
【0078】
微小粒子製造技術に関して、親水性薬剤は典型的に、内部水相に組み込まれる(多層乳化法を参照)か、又は固体として油相に分散され(分散法を参照)、それに対して親油性薬剤は一般に、有機/油相に溶解される(共溶媒法を参照)。溶媒キャストに関して、連続相が微小粒子形成に必要である以外は、薬剤は共溶媒法と同様に溶媒に組み込まれる。溶融押出又は圧縮技術に関して、薬剤は、溶媒非存在におけるその初期状態で組み込まれ得る。これらの組み込み技術の変形が存在し、多数の変量(例えば、薬剤ロード、溶解度、溶媒選択及び配合、ポリマー濃度、ポリマー種及び配合、賦形剤、目標放出期間、薬剤安定性)が、ポリマーマトリックスへの薬剤の組み込みに最良の選択肢の選定に役割を果たすように、調整することができる。
【0079】
一方法において、ヒドロゲルミクロスフェアは、重合可能相の第2の不混和相への分散によって重合可能なマクロマー又はモノマーから形成される。該重合可能相は、架橋を導く重合開始に必要な構成成分を少なくとも1つ含有し、かつ不混和性バルク相は相間移動剤とともに、架橋開始に必要な別の構成成分を含有する。水溶性治療薬を含有する事前形成微小粒子は、重合可能相に分散されるか、又は原位置で形成されてエマルジョンを形成することができる。エマルジョン及び不混和相の重合及び架橋は、重合可能相の適切にサイズ設定されたミクロスフェアへの分散後に、制御された方式で開始され、こうして、微小粒子をヒドロゲルミクロスフェアに捕捉する。可視化剤を、例えば、ミクロスフェア、微小粒子及び/又は微小滴中に含むことができる。
【0080】
発明の実施態様は、組成物及び治療用化合物を捕捉している複合ヒドロゲルベースマトリックス及びミクロスフェアの形成方法を含む。一実施態様において、生物活性剤は、疎水性の性質を有する微小粒子(疎水性微小領域とも呼ばれる)中に捕捉され、捕捉された作用薬の流出を遅延させる。幾つかの場合において、該複合材料は2つの相分散を有し、どちらの相も吸収性であるが、混和しない。例えば、連続相は、親水性ネットワーク(例えば、架橋することができる又はできないヒドロゲル)であり得るが、一方分散相は、疎水性(例えば、油、脂肪、脂肪酸、ワックス、フルオロカーボン、又は概して本明細書中で「油」若しくは「疎水性」相と呼ばれる合成若しくは天然の水不混和相)である。
【0081】
油相は薬剤を捕捉し、該薬剤をヒドロゲルへゆっくりと分配することによって、放出に障壁を与える。ヒドロゲル相は、該油をリパーゼなどの酵素による消化から、及び天然に存在する脂質及び界面活性物質による溶解から保護する。後者は、例えば、疎水性、分子量、立体構造、拡散抵抗などから、ヒドロゲルへの侵入を制限しているだけだと考えられる。ヒドロゲルマトリックスへの限定的な溶解度を有する疎水性薬剤の場合において、薬剤の粒子形成もまた、放出速度修正剤として機能する。
【0082】
疎水性微小領域は、それ自身で分解するか又はインビボで投与される場合に迅速に排除され、インビボで捕捉された作用薬を含有する微小滴又は微小粒子を直接使用した持続性放出を達成することを困難にさせる。しかしながら、本発明によると、疎水性微小領域は、ゲルマトリックス中に捕捉される。該ゲルマトリックスは、疎水性微小領域を迅速なクリアランスから保護するが、微小滴又は微小粒子の含有物をゆっくりと放出する能力を損なうことはない。可視化剤を、例えば、ゲルマトリックス又は微小領域中に含むことができる。
【0083】
一実施態様において、疎水性相と例えば、タンパク質、ペプチド又は他の水溶性化学種などの水溶性分子化合物の水性溶液とのマイクロエマルジョンが調製される。該エマルジョンは、「水中油」系(水が連続相である)とは対照的に、「油中水」型(連続相として油を用いる。)の系である。薬物送達の他の態様は、米国特許第6,632,457号;第6,379,373号;及び第6,514,534号に見出される(これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。更に、米国特許出願番号12/012,808(2008年2月6日出願)及び優先権証明書60/899,898(2007年2月6日提出)に記載の薬物送達スキームは、各々その全体が参照により本明細書中に組み込まれ、したがって、本明細書中のヒドロゲル及び涙点プラグ及び粒子を用いて使用することができる。
【0084】
また治療薬送達の制御された速度は、架橋ヒドロゲルネットワークへの治療薬の分解可能な共有結合によって、本明細書中に開示される系を用いて得ることができる。該共有結合性の性質は、数時間〜数週間又はそれ以上で、放出速度を調整し得るように制御することができる。様々な加水分解時間を有する多数の結合から製造された複合体を使用することによって、放出制御プロファイルは、より長時間に延長され得る。
【0085】
作用薬は放出制御のために、涙点プラグに組み込むのに先立ち様々な技術を使用してカプセル化することができる。これらの放出制御系は、懸濁液、油剤、エマルジョン、リポソーム、ミセル、埋込錠及び微小粒子の形態であり得る。ポリマー放出制御系は、徐放を与えるために医薬品産業において一般に使用され、かなり多くの市販品が、生分解性ポリマーに基づいている。生分解性ポリマーの合成形態には、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリホサゼン(polyphosazene)、ポリアミノ酸、ポリアルキルシアノアクリル酸、ポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカルボナートなど)を含むことができ、ポリエステル(ポリ(ラクチド)(PLA)及びポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA))がより頻繁に使用される。
【0086】
ポリ(ラクチド)(PLA)及びそのポリグリコール酸コポリマーであるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)などのポリエステルは、その生体適合性、生分解性及び機械的強度のために薬剤担体として使用され得る。それらはエステル骨格の加水分解によって分解し、かつその分解生成物(すなわち、乳酸及びグリコール酸)は代謝化合物である。加水分解による分解とは、酵素の役割を有しない、水中における共有結合の自然分解を指し;したがって、加水分解的に分解可能な材料は、酵素を含まない水の溶液において経時的に分解する。ポリ(ラクチド)(PLA)及びそのポリグリコール酸コポリマーであるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)などのポリエステルは、その優れた生体適合性、生分解性及び機械的強度のために、薬剤担体として最も一般的に使用される。それらはエステル骨格の加水分解によって分解し、かつその分解生成物(すなわち、乳酸及びグリコール酸)は代謝化合物である。薬剤のポリエステルへの導入は、例えば、溶融押出、圧縮、溶媒キャスト、射出成型、原位置重合及びマイクロ及び/又はナノ粒子などの様々な技術を使用して実施される。微小粒子は、前述の押出、圧縮又はキャストポリマー系の造粒によって形成され得るか、又はそれらは、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、相分離(コアセルベーション)及び溶媒蒸発などの技術を使用して形成され得る。溶媒蒸発は下記の図に示すように異なる技術を用いて、薬剤の親油性及び/又は親水性に基づき薬剤をカプセル化することができる。
【0087】
作用薬のポリエステルへの導入は、例えば、溶融押出、圧縮、溶媒キャスト、射出成型、原位置重合及びマイクロ及び/又はナノ粒子などの様々な技術を使用して実施され得る。微小粒子は、前述の押出、圧縮又はキャストポリマー系の造粒によって形成され得るか、又はそれらは、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、相分離(コアセルベーション)及び溶媒蒸発などの技術を使用して形成され得る。溶媒蒸発は下記の図5に示すように異なる技術を用いて、作用薬の親油性及び/又は親水性に基づき薬剤をカプセル化することができる。
【0088】
微小粒子製造技術に関して、親水性作用薬は典型的に、内部水相に組み込まれる(図5の多層乳化法を参照)か、又は固体として油相に分散され(図5の分散法を参照)、それに対して親油性作用薬は一般に、有機/油相に溶解される(図5の共溶媒法を参照)。溶媒キャストに関して、連続相が微小粒子形成に必要である以外は、作用薬は共溶媒法と同様に溶媒に組み込まれる。溶融押出又は圧縮技術に関して、作用薬は一般に、溶媒非存在におけるその初期状態で組み込まれ得る。これらの組み込み技術の変形が存在し、多数の変量(例えば、薬剤ロード、溶解度、溶媒選択及び配合、ポリマー濃度、ポリマー種及び配合、賦形剤、目標放出期間、薬剤安定性など)は、ポリマーマトリックスへの薬剤の組み込みに最良の選択肢の選定に役割を果たすように、ケースバイケースで調整されるべきものである。
【0089】
埋込錠、微小粒子及び大抵の場合、原位置形成デバイスからの作用薬放出は、多数の因子に依存し、かつそれらによって調整されて、持続性放出及び/又はバースト放出(burst release)を調節し得る。これらの生分解性ポリマー系からの作用薬放出に影響を与える因子のいくつかを、表1に列記する。
【表1】
【0090】
(生分解)
一般にヒドロゲルは、ヒドロゲルがインビトロにおいて水分解性基の分解によって、過剰な水に溶解可能であることから測定可能であるように水分解性である。この試験は、インビボでの加水分解的駆動性(hydrolytically-driven)溶解の予測となり、進行は細胞又はプロテアーゼ駆動性分解とは対照的である。ヒドロゲルは、選択した薬剤、治療される疾患、必要な放出期間、及び選択した特定の薬剤の放出プロファイルに応じて、数日、数週間又は数ヶ月かけて吸収可能であるように選択することができる。
【0091】
生分解性の結合は、水分解性又は酵素分解性であり得る。例示的な水分解性、生分解性の結合を挙げると、グリコリド、dl-ラクチド、1-ラクチド、ジオキサノン、エステル、カルボナート及びトリメチレンカルボナートのポリマー、コポリマー及びオリゴマーがある。例示的な酵素的生分解性の結合を挙げると、メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼによって切断可能なペプチド結合がある。生分解性結合の例を挙げると、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカルボナート)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カルボナート)、ポリ(ホスホナート)のポリマー及びコポリマーがある。
【0092】
しかしながら、重要なことには、酸性成分に分解されるポリ酸無水物又は他の通常使用される分解性材料は、眼中で炎症を引き起こさせる傾向がある。しかし、ヒドロゲルはそのような物質を除外することができ、ポリ酸無水物、無水物結合(anhydride bond)、又は酸又は二酸に分解する前駆体を含まないことができる。代わりに、例えば、SG(グルタル酸スクシンイミジル)、SS(コハク酸スクシンイミジル)、SC(炭酸スクシンイミジル)、SAP(アジピン酸スクシンイミジル)カルボキシメチルヒドロキシ酪酸(CM-HBA)を使用することができ、かつ加水分解的に不安定なエステル性結合を有する。スベリン酸の結合などのより疎水性な結合を使用してもよく、これらの結合はスクシナート、グルタラート又はアジパートの結合よりも分解性が劣る。
【0093】
生体適合性架橋ポリマーが、生体吸収性又は吸収性であることが望ましい場合、官能基間に存在する生分解性結合を有する1以上の前駆体を使用することができる。また生分解性結合は任意に、1以上の前駆体の親水性コアとして機能することができる。各方法について、生分解性結合は、得られる生分解性、生体適合性架橋ポリマーが、所望の期間で分解し又は吸収されるように選択され得る。
【0094】
一般に架橋ヒドロゲルの分解は、水分解性材料を使用する場合、生分解性部分の水駆動性加水分解によって進行する。ポリグリコラートを生分解性部分として使用する場合、例えば、該架橋ポリマーは、ネットワークの架橋密度に応じて、約1〜約30日で分解するようにさせることができる。同様に、ポリカプロラクトンベースの架橋ネットワークを、約1〜約8月で分解されるようにさせることができる。一般に分解時間は、使用する分解可能部分の型によって、次の順:ポリグリコラート<ポリラクタート<ポリトリメチレンカルボナート<ポリカプロラクトンで変化する。またエステル結合を含むポリマーを、所望の分解速度を提供するために含むことができ、分解の速度を増加させる又は減少させるために、エステル近接に基が付加されるか又はそこから除かれる。このように、分解可能部分を用いて、数日〜数月の所望の分解プロファイルを有するヒドロゲルを構築することが可能である。
同様に、生分解性カプセル又は粒子を、ヒドロゲルマトリックス内部への包含のために製造することができる。該カプセル又は粒子は、ヒドロゲルマトリックスと同じであるか又は異なる分解時間を有することができる。
【0095】
(涙点プラグ用ヒドロゲル)
ヒドロゲルを涙点プラグ(涙点プラグ又は小管内プラグ)として使用することができる。涙点プラグのための様々な形状及びサイズが知られている。最も単純な形状は、その端部が平面又は円形な固体のロッドであり得る。該ロッドは、その外部形状が実質的に円筒形であり、それは隆起物を有さないが、真っすぐな側面を有する。あるいは、該ロッドは膨潤前に、ヘッド部及びシャフト部を有し得る。涙点プラグとして使用するために、乾燥又は脱水ヒドロゲルの長さは、例えば、約0.5mm〜約15mmとし得る(例えば、約2〜約4mmのように、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。一般に長方形のヒドロゲルについて、例えば、約0.1〜約1.0mmの幅が使用され得る。例えば、配置後に約2倍に膨潤する場合に、約0.3mmの直径がほとんどの患者に対して密接な適合を提供するであろう。本開示の解釈から明らかなことであるが、より大きな膨潤速度は、使用されるべきより小さな径のプラグを提供し、そのようなより小さなサイズが企図される。「ユニバーサルフィット」プラグとは、特定の涙点用にサイズ設定する必要がある全てのプラグを指す(ポリ(カプロラクトン-コ-ラクチド)又はシリコンプラグの場合のように)。
【0096】
本明細書中に記載のヒドロゲルは、涙点プラグとして使用することができる。高膨潤ヒドロゲルを使用して、所定の位置で膨潤した場合に堅固な位置付けを提供する。堅固な位置付け及び柔軟かつ平滑なヒドロゲルは、高度な保持及びプラグから送達される薬剤による治療の高い患者コンプライアンスに貢献する。また該高膨潤性は、適合するまで膨潤するように作製され得るので、ワン・サイズ・フィット・オール・ユーザーを提供する。全ての合成特性は、可変性並びに混入物、不純物、免疫原及びアレルゲンの供給源を排除する。該プラグは製造され、かつ単一材料として使用され得る。単一材料とは、該プラグが1つのマトリックス材料から製造されており、例えば、カバー、スリーブ、シース、オーバーコート、リザーバ部又は他の追加材料を追加することなく全体を通して同一であることを意味する。幾つかの実施態様は、ヒドロゲルに開口部を有しないような均一の巨視的構造から作製され、すなわち、ヒドロゲルが特定の天然の空隙率を有することを踏まえれば、該材料はトンネル又はマクロ細孔構造を欠いている。均質のプラグは、そこに分散された作用薬を含み得る。該プラグは、他の眼科的な薬剤放出系とは対照的に、切開又は侵襲的方法を伴わない配置のためにサイズを設定することができる。
【0097】
本プラグは加水分解的に生分解性であり得る。説明される加水分解による分解とは、水性溶液における自発的な過程を指し、すなわち、酵素作用なしに生じる。生分解は、約5〜約365日の間とすることができる(例えば、約1週間〜約30週間、少なくとも約30日、約30日〜約90日;約45日など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。加水分解による分解は有利には、細胞ベース又は酵素ベースの分解と比べて、予想可能な分解速度に利用することができる。
【0098】
共有結合架橋ヒドロゲルは、従来の好ましくない非架橋性ヒドロゲルを超える利点を有する。1つの利点は、コアセルベート(アルギナート)又はイオン架橋は、ゲルが、永続的な形状変化があるように曲げられる場合に、崩壊し、再形成しやすいことである。したがって、水は、涙点プラグセッティングにおいてそのような材料から排除され得る。しかし、共有結合架橋ヒドロゲルは水を吸収し、歪に反応してその結合を再形成しない。また該共有結合架橋を使用して、水和した場合でさえ、鉗子又は道具による堅固な把持及び強引な除去を可能とする構造的強度を有するゲルを提供することができる。
【0099】
幾つかの涙点プラグは、涙点プラグのヒドロゲルとは異なる速度で分解する粒子又はカプセル中に捕捉された治療薬を含む。速い速度は薬物送達を加速させるが、遅い速度はそれを遅延させる。そのような速度の組合せを使用して、所望の投与計画を経時的に遂行することができる。例えば、図に示されるような、1以上の送達系の組み合わせは、記載の速度の和である送達プロファイルを可能にする。例えば、図10は、非カプセル化形態で含まれ、ミクロスフェアとしても提供される薬剤を示す。該非カプセル化薬剤は、より迅速に送達され、カプセル化薬剤は、連続的かつ効果的投与であるように遅延を伴い送達される。
【0100】
図13に涙点プラグの配置方法を示す。一実施態様は、涙点プラグを、該プラグが涙点から外へ出ないように完全に患者内に配置することである。プラグの上端は涙点と同一平面に配置されて、患者から伸びることなく涙点にシートを提供する。別の実施態様は、膨潤時に該プラグの「頭」が作り出されるように、一部が涙点の外にある涙点プラグの配置である。該頭は、十分に膨潤した材料(例えば、容積が少なくとも2倍又は4倍増加)の場合に、簡単な除去のために容易に把持することができる。
【0101】
幾つかの実施態様は、膨潤を停止することなく膨潤を遅延させる疎水性コーティングを伴う涙点プラグを含む。該コーティングは、適当な適合を保証するのに十分な期間膨潤を遅延させることによって、利用者を支援することができる。幾つかの実施態様において、該コーティングは、膨潤を約10〜約300秒の平均値だけ遅延させるのに有効であるような厚さで、選択され、適用される(例えば、約15秒又は30秒又は約30秒〜約60秒など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。例示的な厚さは、約1〜約1000μmである(例えば、約10〜約100μm、約800μm未満又は約100〜約500μmなど、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0102】
涙点プラグは、本明細書中に記載の材料を使用して製造することができ、本明細書中に記載の薬物送達に使用することもできる。したがって、涙点プラグ及び同物の製造方法の実施態様は、微粒子の塩基性塩(例えば、ホウ酸ナトリウム二水和物又は二塩基性リン酸ナトリウム)及び微粒子のトリリジンから形成されるロッドである。該構成成分を、炭酸ジメチル(DMC)中の修飾ポリエチレングリコール(PEG)の溶液に添加して、懸濁液を形成する。次いで、該懸濁液を乾燥させて、懸濁粒子を含む固体を形成する。次に該固体を融解し、成形して涙点プラグを形成することができる。該PEGは、それがトリリジンと反応して架橋ヒドロゲルを形成するように、修飾されている。PEG用溶液であるが、トリリジン及びその塩用の非溶媒であるDMC中の懸濁液を形成することによって、反応種は、混合及び反応できない。水の添加により、3つの構成成分全ての共通の溶媒を提供し、反応を進行させる。次に該プラグを濡れた涙点に挿入する。水分と接触すると、該プラグは水を吸収し、反応して原位置でヒドロゲルを形成するように液化し、膨潤する。懸濁液の形成方法は、本明細書中に記載のゲル化時間、膨潤及び係数を達成するために、変更され得る。薬剤は、治療目的のための涙液又は組織への放出のために、懸濁液に組み込まれ得る。
【0103】
(送達用治療薬)
ヒドロゲルは、治療薬を含むことができる。該ヒドロゲルを有する涙点プラグを使用して、該治療薬を送達する。特定の眼状態の治療は、適当な用量の作用薬を眼に適当な期間に渡り送達することによって決まる。表2に状態及び治療の幾つかの実施態様を示す。
【表2】
【0104】
本ヒドロゲルを使用して、ステロイド薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、眼圧下降剤、抗生物質又はその他を含むクラスの薬剤を送達することができる。本ヒドロゲルを使用して、例えば、抗炎症薬(例えば、ジクロフェナク)、鎮静薬(例えば、ブピバカイン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、抗生物質(例えば、シプロフロキサシン)、細胞周期阻害剤(例えば、シンバスタチン)、タンパク質(例えば、インスリン)などの薬剤及び治療薬を送達することができる。ヒドロゲルからの放出速度は、薬剤及びヒドロゲルの特性によって決まり、薬剤サイズ、相対疎水性、ヒドロゲル密度、ヒドロゲル固体含有量、及び他の薬物送達モチーフ、例えば、微粒子のパーセンテージを含む因子を有する。
【0105】
ヒドロゲル前駆体を使用して、ステロイド薬、NSAID(表3参照)、眼圧下降剤、抗生物質、鎮痛剤、阻害剤又は血管内皮増殖因子(VEGF)、化学療法薬、抗ウイルス薬などを含むクラスの薬剤を送達することができる。該薬剤、それ自身は、小分子、タンパク質、RNA断片、タンパク質、グリコサミノグリカン、炭水化物、核酸、無機及び有機生物活性化合物とすることができ、ここで特定の生物活性化合物を挙げると、酵素、抗生物質、抗悪性腫瘍薬、局所麻酔薬、ホルモン、抗血管新生薬、増殖因子、抗体、神経伝達物質、精神活性剤、抗癌薬、化学療法薬、生殖器に作用する薬剤、遺伝子、及びオリゴヌクレオチド又は他の立体構造体があるが、これに限定されない。低水溶性の薬剤は、例えば、粒子として又は懸濁液として組み込むことができる。高水溶性の薬剤は、微小粒子又はリポソーム内にロードすることができる。微小粒子は、例えば、PLGA又は脂肪酸から形成することができる。
【表3】
【0106】
様々な薬剤又は他の治療薬を、これらの系を使用して送達することができる。作用薬又は薬剤のファミリーの一覧、並びに作用薬の表示の例を提供する。また該作用薬を、呈示された状態の治療方法又は呈示された状態を治療するための組成物の製造方法の一部として使用することができる。例えば、AZOPT(ブリンゾラミド眼科用懸濁液剤)を使用して、高眼圧症又は開放隅角緑内障を伴う患者の眼圧亢進を治療することができる。ポビドンヨード眼科用液剤中のBETADINEを、眼周囲領域の前処理(prepping)及び眼表面の洗浄に使用することができる。BETOPTIC(ベタキソロールHCl)を、眼圧の低下又は慢性開放隅角緑内障、及び/又は高眼圧症に使用することができる。CILOXAN(シプロフロキサシンHCl眼科用液剤)を使用して、微生物の感受性株に起因する感染症を治療することができる。NATACYN(ナタマイシン眼科用懸濁剤)を使用して、真菌性の眼瞼炎、結膜炎及び角膜炎を治療することができる。NEVANAC(ネパフェナク眼科用懸濁剤)を使用して、白内障手術に関連する疼痛及び炎症を治療することができる。TRAVATAN(トラボプロスト眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障、又は高眼圧症による眼圧亢進を低下させることができる。FML FORTE(フルオロメトロン眼科用懸濁剤)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部の副腎皮質ステロイド応答性の炎症を治療することができる。LUMIGAN(ビマトプロスト眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障又は高眼圧症による眼圧亢進を低下させることができる。PRED FORTE(酢酸プレドニゾロン)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部のステロイド応答性の炎症を治療することができる。PROPINE(塩酸ジピベフリン)を使用して、慢性開放隅角緑内障の眼圧を制御することができる。RESTASIS(シクロスポリン眼科用乳剤)を使用して、例えば、乾性角結膜炎と関連する眼炎症を有する患者における涙の産生を増加させることができる。ALREX(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を使用して、季節性アレルギー性結膜炎を一時的に軽減することができる。LOTEMAX(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部のステロイド応答性の炎症を治療することができる。MACUGEN(ペガプタニブナトリウム注射剤)を使用して、血管新生(滲出型)加齢黄斑変性を治療することができる。OPTIVAR(塩酸アゼラスチン)を使用して、アレルギー性結膜炎と関連する眼のそう痒を治療することができる。XALATAN(ラタノプロスト眼科用液剤)を使用して、例えば、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者の眼圧亢進を低下させることができる。BETIMOL(チモロール眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者の眼圧亢進を低下させることができる。ラタノプロストは遊離酸形態のプロドラッグであり、選択的プロスタノイドFP受容体アゴニストである。ラタノプロストは、僅かな副作用を伴い、緑内障の眼圧を低下させる。ラタノプロストは、比較的低い水性溶液への溶解度を有すが、溶媒蒸発を使用するミクロスフェアの製造に典型的に用いられる有機溶媒には容易に溶解する。
【0107】
一実施態様は、アレルギー性結膜炎のための医薬の持続放出を含む。例えば、ケトチフェン、抗ヒスタミン薬及び肥満細胞安定化薬は、アレルギー性結膜炎を治療するのに有効な量で、本明細書中に記載のように眼へ放出され得る。季節性アレルギー性結膜炎(SAC)及び通年性アレルギー性結膜炎(PAC)は、アレルギー性の結膜疾患である。症状は、そう痒及びピンク色から赤褐色の眼を含む。これらの2つの眼の状態は、肥満細胞によって媒介される。症状を寛解させるための非特定の測定は従来、冷湿布、代用涙液(tear substitute)による洗眼、及びアレルゲンの回避を含む。治療は従来、抗ヒスタミン肥満細胞安定化剤、デュアルメカニズム(dual mechanism)抗アレルゲン剤、又は局所用抗ヒスタミン薬からなる。副腎皮質ステロイドは有効であるが、副作用のために、春季カタル(VKC)及びアトピー性角結膜炎(AKC)などのアレルギー性結膜炎の更に深刻な形態用に控えられる。
【0108】
モキシフロキサシンは、VIGAMOXの有効成分であり、眼部の細菌感染症の治療又は予防への使用に認可されたフルオロキノロンである。投与は典型的に、0.5%溶液の一滴であり、1週間以上の期間に1日に3回投与される。モキシフロキサシンがロードされたヒドロゲル、例えば、涙点プラグが本明細書中に記載され、これはプローブ膨張に続いて、鉗子で垂直小管(vertical canaliculus)に配置されるように設計された乾燥ポリエチレングリコール(PEG)ベースのヒドロゲルロッドを有する。配置後、該プラグは水分との接触により膨張し、それにより、内腔を塞ぎ、治療の間所定の場所に固定する。カプセル化モキシフロキサシンを含有したポリラクチド-コ-グリコリドミクロスフェア及び非カプセル化の遊離した薬剤物質(モキシフロキサシン)のどちらも、ロッド中に組み込まれる。該ミクロスフェアは、薬剤をカプセル化した生体吸収性粒子であり、かつ長期間に渡り加水分解を介して薬剤を放出するように形成される。非カプセル化の遊離薬剤物質は、プラグの加水分解時に直ちに放出される。そのようなデバイスは、例えば、局所的な眼用モキシフロキサシンに対する感受性を予め測定することによる、細菌株に起因する細菌性結膜炎の治療に使用することができる。モキシフロキサシン涙点プラグは、約10日間に渡って小管中に保持される。あるいは、他の製剤を異なる期間、例えば、約6若しくは約14日、又は約3日〜約30日の範囲内の別の日に使用することができる(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。例示的なロードは、プラグあたり約100〜約1000gであり、該プラグは約1立方ミリメートル未満の容積を有する。
【0109】
VKC及びAKCは、好酸球、結膜線維芽細胞、上皮細胞、肥満細胞及び/又はTH2リンパ球が、結膜の生化学及び組織学を悪化させる慢性的なアレルギー性疾患である。VKC及びAKCは、アレルギー性結膜炎の対処に使用される医薬によって治療することができる。
したがって、実施態様は、1以上の作用薬を組み込んだヒドロゲルを含む。作用薬は、例えば、ミクロスフェアを伴い又は伴わず、本明細書中の1以上の方法を使用して組み込むことができる。該ヒドロゲルを使用して、所定の時間に渡り有効量の作用薬を投与して、呈示された状態を治療するための医薬を製造することができる。
【0110】
幾つかの治療薬は可視化剤である。可視化剤はヒドロゲルとともに使用することができ、これは、該ヒドロゲルを適用する利用者が、ゲルを観察できるように、ヒトの眼に検出可能な波長の光を反射するか又は放出する。幾つかの有用な可視化剤は、FD&C BLUE #1、FD&C BLUE #2及びメチレンブルーである。そのような作用薬は、本明細書中に記載の涙点プラグ及び/又はミクロスフェア及び/又はヒドロゲル実施態様とともに使用することができる。
これらの作用薬は、ヒドロゲル中に分散される場合、好ましくは、0.05mg/mlを超える濃度で、及び好ましくは、少なくとも0.1〜約12mg/mlの濃度範囲で、及びより好ましくは、0.1〜4.0mg/mlの範囲で存在するが、最大で可視化剤の溶解度の限界までのより高い濃度が、可能性として使用され得る。これらの濃度範囲は、求電子-求核反応性前駆体の実施態様についての架橋時間(反応性前駆体種からゲル化までの時間によって測定される)を妨げることなく、ヒドロゲルに色を与えることができる。
【0111】
可視化剤は、例えば、FD&C BLUE染料3及び6、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン又は通常合成手術縫合糸に見られる着色染料など、医学的に埋め込み可能な医療用デバイスに使用するのに適した様々な無毒性の着色物質のいずれかから選択することができる。可視化剤は、例えば、架橋剤などの反応性前駆体種、又は官能性ポリマー溶液のいずれかとともに存在することができる。好ましい着色物質は、ヒドロゲルにへの化学結合をなしてもよいし、又はなさなくてもよい。可視化剤は一般に、少量で使用され、好ましくは1%重量/容積未満、より好ましくは0.01%重量/容積未満、及び最も好ましくは、0.001%重量/容積未満の濃度で使用され得る。
追加的機械援用イメージング剤、例えば、蛍光化合物、X線画像装置でのイメージングのためのX線造影剤(例えば、ヨウ素化合物)、超音波造影剤又はMRI造影剤(例えば、ガドリニウム含有化合物)を使用することができる。
【0112】
可視化剤は、涙点適用に使用される材料の分解を調査する前には予測されなかった利点を有する。プラグ又はヒドロゲルは、材料が劣化するにつれて、それらを位置からずらすような圧縮力を受ける。しかし、該材料は薬物送達に使用される場合に、所定の位置に留まる必要がある。しかしながら、心地よく配置された材料は、患者がこの事実に気付かずに位置からずらされ得る。しかし、可視化に有効な濃度の可視化剤の組み込みは、利用者に材料が存在していることを監視できるようにし、かつ該プラグ又は他の材料が、治療計画の終了前に位置ずれしている場合に、再配置を得るための工程を取らせる。このように、機械的支援を用いず裸眼で見ることができる作用薬は、材料の存在又は非存在を可視化するのに、患者にとって有効な量で使用することができる。したがって、実施態様は、有効量の可視化剤を使用すること、及びプラグ又は他の材料の存在について、定期的(例えば、毎日)に同物を確認することを含む。
【0113】
本明細書中に記載の材料及びデバイスを使用して、薬剤又は他の治療薬(例えば、イメージング剤又はマーカー)を眼又は周辺組織に送達することができる。例えば、涙点プラグを使用して、用薬を眼の表面に(すなわち、局所的に)送達することができる。該作用薬は、眼の前部における治療効果を有するのに有効な量で送達され得ることも発見されている。そのような送達は、プラグによって、又は眼上若しくは眼周辺に配置されたデポー若しくはマイクロデポーによって達成することができる。
【0114】
このように治療され得る疾患の幾つかは、眼の奥の疾患である。用語眼の奥の疾患は、当業者には理解されるが一般に、脈管構造、及び網膜、黄斑又は脈絡膜の統合性に影響を与える後部の眼疾患を指し、視力障害、視界の消失(loss of sight)又は失明を引起こす。該後部の病状は、年齢、外傷、外科的処置及び遺伝性因子に起因し得る。幾つかの眼の奥の疾患は、加齢黄斑変性(AMD)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎及び糖尿病網膜症である。幾つかの眼の奥の疾患は、黄斑変性症又は糖尿病網膜症など、望ましくない血管新生又は血管増殖に起因する。これら及び他の状態のための薬剤治療の選択肢は、本明細書中の他の場所に更に記載される。
上記の薬物送達のための架橋組成物の使用において、架橋性ポリマー、架橋剤及びホストに導入される投与作用薬は、必然的に特定の薬剤及び治療すべき状態により決定されるであろう。投与は、シリンジ、カニューレ、外套針、カテーテルなどの任意の従来法によって行うことができる。
【0115】
(キット又は系)
ヒドロゲル作製のためのキット又は系を製造することができる。該キットは医療として許容し得る条件を使用して製造され、かつ無菌性、純度、及び医薬として許容し得る調製法を有する前駆体を含む。該キットは、必要に応じてアプリケーター並びに取扱説明書を含み得る。治療薬は、予め混合したもの又は混合に利用できるものを含み得る。溶媒/溶液は、一式で若しくは別個に提供するか、又は構成成分が溶媒と予め混合されていてもよい。該キットは、混合及び/又は送達のためのシリンジ及び/又は針を含み得る。
幾つかの実施態様において、該キットは、少なくとも1の前駆体及びアプリケーターを有する。幾つかの実施態様において、生分解性ポリマー合成ヒドロゲルは、それぞれの腕の各末端にスクシンイミジルエステルを有する多腕型ポリエチレングリコール(PEG)と、トリリジン(第一級アミン求核剤を有する)とのリン酸及び他の緩衝溶液中での反応によって形成される。
【0116】
幾つかの実施態様において、前駆体及び治療薬を伴う原位置でのヒドロゲル形成に必要な他の材料を有するキットを提供することができ、該構成成分には、本明細書中に記載のものが含まれる。したがって、幾つかの態様において、ヒドロゲルの特徴を選択して、高膨潤性でかつ細い針を介して送達されるヒドロゲルを製造することができる。ヒドロゲルは炎症性又は血管新生性がなく、生体適合性の前駆体に基づいており、かつ柔軟、親水性であり、かつ配置された空間を膨張させる。ヒドロゲルは、容易に除去可能であるか、又は自己除去され、かつ生分解性でありか又は分散せずに容易に到達可能な領域への送達に適合することができる。単一の容器で全ての前駆体を組み合わせるという選択肢によって、混合及び使用が容易であるようにさせることができる。ヒドロゲルは、安全な、全合成の材料で製造することができる。分解及び/又は送達速度は、記載の期間に適合するように制御することができる。患者コンプライアンスは、反復投与を回避することによって向上され得る。アプリケーターを有する類似のキットを製造することができ、これは本明細書中に記載の材料、例えば、事前形成された脱水ヒドロゲルを含む。
原位置で涙点プラグを形成するための流動性の水性前駆体の使用は、細い針(例えば、30ゲージ)を介した投与を可能にする。またヒドロゲルは、酸性副生成物を最小化するように作製できるので、該プラグは、眼などの感受性組織に十分に許容される。
【0117】
(製造及びキネティクス、放出プロファイル)
様々な実施例により、ヒドロゲル及び薬剤送達能を有するヒドロゲル涙点プラグの製造方法が説明される。概して実施例は、眼の涙液の局所的な送達を目標とした作用薬を含むポリエチレングリコールを含むように製造された浸食性又は非浸食性デバイスに関して向けられる。作用薬の例を挙げると、プロスタグランジン、抗炎症薬、免疫調節物質、抗ヒスタミン薬、NSAID、抗生物質、ステロイド薬及び麻酔薬がある。該デバイスは、事前形成されてよく、かつ乾燥した薬剤ロードデバイスとして提供されるか、又は眼に投与し、涙点の原位置で形成される液体製剤として提供されてもよい。明らかなことであるが、実施例は、限定することなく、より一般的な開示を示している。
【0118】
実施例1、2及び3は、例えば、涙点プラグ又はデポー(又はマイクロデポー)としてヒドロゲルを形成するための、それぞれ有機溶媒ベース、メタノールベース、又は水性ベースの方法である。またヒドロゲルは、実施例4のように、原位置、例えば、小管で又はデポーとして、例えば、局所的に又は結膜下に形成され得る。様々なミクロスフェア形成方法が記載される。実施例5は、疎水性薬剤のラタノプロストを例として使用する。用語疎水性は、当業者に公知であり、pH及びイオン条件が調整される場合でさえ、実質的に水に不溶性な材料を指し、疎水性材料は、理論上非常に少量の溶解性を有することが認識されている。水溶性薬剤又はポリマーは、少なくとも1g/100mLの水性溶液への溶解度を有する。実質的に水溶解性材料は、疎水性ではないが、1g/100mLで水に溶解しない。図6は、有機溶媒ベースの方法を使用して製造されたミクロスフェアの集合物を示し;他の方法によって製造された粒子の画像が比較される。実施例6は、移動剤を使用するこの方法の変化の予測的例を提供する。
【0119】
フィルム及びウェハは、薬剤を含有して製造することができ、該薬剤は、同物中に分散される。材料を切り刻み又は挽いて粒子を製造できるか、又はヒドロゲルとして全体を使用できる。実施例7〜9及び18は、どのようにこの方法を実施するか、又は実施され得る変化を示す。
実施例10は、図7にも見られる、高膨潤ヒドロゲルを示す。500%を超える容積変化が観察された。有機化学種又は水性化学種を使用して、様々に形成されたヒドロゲルが、実施例11〜12及び図7〜9のように、膨潤性ヒドロゲルを製造するのに有用であることが観察された。
【0120】
図10(実施例5及び13)は、特定のヒドロゲル内に捕捉された、ヒドロゲル内に自由に分散された、又はミクロスフェアにカプセル化後に分散された疎水性薬剤の放出動態を示している。ニート(自由)な薬剤は急速に放出されるが、0次プロファイルにおいて顕著である。対照的に、ヒドロゲル中に捕捉されたミクロスフェア中の薬剤は、冗長な遅延放出(初期のバーストなし)を有する。薬剤のヒドロゲルへのロードは、2.5%である。パーセンテージロードは、放出における予想外の効果を有することが発見された。図11(実施例14)は、カプセル化されていない疎水性薬剤(シクロスポリン)の放出を示し、パーセントロードだけ変化する。更なるロードは、材料からの総放出のパーセンテージに関して測定されるように、放出の動態を低下させた。この効果は、望ましい放出プロファイルをもたらすのに使用され得る系の不測の性質を指す。特定の理論に縛られるものではないが、該ヒドロゲルは、単に限定的量の流体のための内部空間を有し、該空間は飽和し、放出を制限する。一方、この性質は、放出プロファイルが達成され得る場合に、予測に混乱させる影響を有する。
【0121】
疎水性薬剤はまた、図12に示されるように、膨潤を制限した。ロードが増大するほど、膨潤の低下が観察された。この効果は事前に断言できるものではない。最終的な膨潤は、薬剤がほとんど放出された後の全てのヒドロゲルで同じであると予測されたが、それは事実とは異なった。実質的な放出後の収縮も、予測されなかった。
実施例15及び16は、短期分解性ヒドロゲル及び相対的長期分解性ヒドロゲルの形成を例証している。長期材料(実施例15)は、グルタル酸スクシンイミジルで製造されるのに対し、相対的長期分解性材料(実施例16)は、アジピン酸スクシンイミジルで製造される。長期放出を示す実施例は、該長期材料を使用し(長期作用性インサートのために数週間に渡って薬剤を放出するラタノプロスト含有材料の実施など)、及び短期放出実験は、短期分解性材料を使用した(モキシフロキサシンが数日に渡って放出されるように)。
【0122】
図17は、親水性又は疎水性材料を、長期間又は短期間放出するために製造された実施態様を示している。これらの系のためにミクロスフェアを調製した。実施例17Cに、使用することができた変形体を記載する。
ミクロスフェアのサイズ範囲は、ヒドロゲルが粒子を含有する系において、放出動態の制御に影響を与えるように操作可能であることが発見された。図15A(実施例19A)は、プロットの比較及び小分子から大分子への放出傾向より明らかであるように、より小さな微小粒子がより迅速に薬剤を放出したことを示している図15Bは、15Aと同じデータのプロットの一部であり、より明確に該傾向を示している。ミクロスフェア中のPLGAの分子量及び分布は、別の変量であり、放出動態を制御するために操作した。より大きな分子量は、放出前に2〜3日の遅延期間を作り出したのに対し、より小さなものは、約1日目から直線的な放出を示した(図15C)。図15Dに示されるように、濃度及び分子量の両方の更なる変化によって、即効型であるが、持続性を可能とさせる製剤が作り出された。高ポリマー濃度は、放出期間を長期間に延長させるための、より密度の高いミクロスフェアを作り出すようである。
【0123】
遅延期間の排除は、特に抗生物質のような即時作用治療薬にとって有用である。図15Dで観察されたインビトロでの遅延期間は、図15Eのインビボでの遅延期間に直接転化した。低分子量製剤を使用した再製剤(CB-ITX-152-2と表示)と高分子量製剤C(B-ITX-124-1と表示)との比較は、動物モデルにおいて即時放出機会を示した。
ミクロスフェア内容物のポリマー変化の更なる実験から、図16(実施例20)のように、他の薬剤(ラタノプロスト)の放出動態も操作できることが示された。図17A、17B及び17Cは、所望の放出速度の制御を得るために、実際にどのようにして競合する設計因子と配合するミクロスフェアサイズ及び組成物とのバランスを取ることができたかを詳述している。
【0124】
図18及び19(実施例21及び22)に示されるように、動物での実験から、涙点プラグ系が実際に所定の時間薬剤を送達でき、しかも涙膜が薬剤を受け取り、かつ高い初期上昇の濃度を構築し、次いで薬剤の有効量を持続できたことが示された。小管は、臨床上望ましい適用にする薬剤の総容量、放出速度、有効な閾値濃度、及び停留期間、並びにプラグをそこに拘束するのに必要なヒドロゲル容積が、制限かつ競合因子となるように、プラグの受け取りに対して容積の制限を与える。この難問の一態様は、大きなロード作用寿命、放出速度、眼用量、動態及び機械的完全性を伴うヒドロゲルのロード(% w/wで表される)であり、すなわち、どのようなロードが達成され得るかの制限が存在する。したがって、この結果の予測不可能性は、十分に理解されるべきものである。
別の薬剤(様々なステロイド)を用いた更なる試験は、更なる放出動態の制御を示した(図20)。
【0125】
ヒドロゲル-微小粒子系の使用の別の試みは、処理の間にヒドロゲルが破損した。この結果に影響した変量は、微小粒子のサイズであると判断された(表4、実施例24)。関連するヒドロゲル系の柔軟な性質及び粒子の顕微鏡レベルのサイズを考慮すると、この変量は予測可能なものではない。実施例25(表5)は、多くの設計因子の調和を達成するために、どのくらいの変量が操作され得るかを示す別の結果を表している。
デバイスの成功又は失敗に影響を与えることが決定された別の因子は、ミクロスフェア密度である(図22)。簡潔に、より高密度の粒子は、より多くの薬剤を有することがわかり、デバイスの全体の性能における操作可能な因子の相互依存性を考慮して、より高密度な分子を作るために技術が開発された。
【実施例】
【0126】
(実施例1. 事前形成デバイスの有機溶媒ベースの製造)
薬剤の有機溶媒への混和性に基づいた第1のプロトコルを、以下のように開発した。90mgの各腕の末端にグルタル酸スクシンイミジルを有する8腕の分子量15,000のポリエチレングリコール(8a15K PEG SG)を、6.7mgのトリリジンとともに、24.2mgの薬剤物質を含有する329.1mgのメタノール(MeOH)に溶解した。これは、MeOH溶液中20%濃度のポリマー、及び最終の乾燥涙点プラグにおける20% w/wの薬剤ロードと相関する。
該溶液を既知の直径を有するシラスティックチューブに吸入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで垂直を保つ。クリップを取り除き、ゲルが充填されたチューブを真空チャンバに配置する。ゲルを100mTorr(13.33Pa)で24時間乾燥させ、翌日取り出す。乾燥したプラグをシラスティックチューブから取り出し、最適な長さが2.0〜4.0mmの範囲のサイズに切断する。
この方法は、非水溶性薬剤のロード、又は有機相に耐性をもつカプセル化薬剤の組み込みに使用できる。
【0127】
(実施例2. 事前形成デバイスのメタノールベースの製造)
90mgの8a15K PEG SGを、6.7mgのトリリジンとともに、353.3mgのMeOHに溶解した。これは、MeOH溶液中20%濃度のポリマーと相関する。該溶液を既知の直径を有するシラスティックチューブに吸入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで垂直を保つ。クリップを取り除き、ゲルが充填されたチューブを真空チャンバに配置する。ゲルを100mTorr(13.33Pa)で24時間乾燥させ、翌日取り出す。乾燥したプラグをシラスティックチューブから取り出し、最適な長さが2.0〜4.0mmの範囲のサイズに切断する。
該事前形成デバイスを、架橋したITXヒドロゲルを膨潤させることが公知のMeOHなどの溶媒に加える。該MeOHは、溶解した高濃度の薬剤を含有する。プラグは有機薬剤溶液によって膨潤させられ、幾らかの薬剤をヒドロゲルマトリックス中に浸透させる。ゲルを取り出し、上記のように再び乾燥させるか、又はヘキサンなどの非溶媒中に置く。これはMeOHをゲルから追い出させ、薬剤をゲルマトリックス中に沈降させ、薬剤がロードされたプラグを与える。
この方法は、例えば、第一級アミンを有する薬剤などの架橋技術と不適合性の薬剤をロードするのに適している。これは薬剤ロードと架橋工程とを分離して、不適合性に関する問題を排除する。
【0128】
(実施例3. 事前形成デバイスの水性ベースの製造)
90mgの8a15K PEG SGを、6.7mgのトリリジンとともに、24.2mgの薬剤懸濁液を含有する329.1mgの水に溶解した。これは、MeOH溶液中20%濃度のポリマー、及び最終の乾燥涙点プラグにおける20% w/wの薬剤ロードと相関する。該薬剤懸濁液は、例えば、不溶性薬剤粒子又はカプセル化製剤の懸濁液であり得る。
該溶液を既知の直径を有するシラスティックチューブに吸入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで垂直を保つ。クリップを取り除き、ゲルが充填されたチューブを真空チャンバに配置する。ゲルを100mTorr(13.33Pa)で24時間乾燥させ、翌日取り出す。乾燥したプラグをシラスティックチューブから取り出し、最適な長さが2.0〜4.0mmの範囲のサイズに切断する。
この方法は、例えば、他のポリマー系にカプセル化された薬剤をロードするのに適している。該水性ベースの製造は、幾つかの有機溶媒によって起こり得るカプセル化薬剤の抽出を回避するのに使用することができる。
【0129】
(実施例4. 液体原位置形成デバイス)
8a15K PEG SGポリマーを、小分子量トリリジン架橋剤を含有する低pH(4.0)の希釈溶液に、20%濃度で溶解する。この溶液は、高pH(8.8)溶液との組み合わせによって活性化され、ゲル化機構が開始される。薬剤は、希釈溶液中に懸濁液として予めロードされる。該薬剤懸濁液は、例えば、不溶性薬剤粒子又はカプセル化製剤の懸濁液からなり得る。
該溶液を垂直小管に適用するか、又は27Gのカニューレを有する小型の1ccシリンジに吸入し、垂直小管に注入する。ゲルは原位置で形成される。高ポリマー濃度のために、形成物は大きく膨潤し、該小管に応じた適合を与える。
【0130】
(実施例5. ミクロスフェア形成)
概してミクロスフェアは、薬剤物質としてラタノプロストを組み込み、溶媒蒸発によって製造される。ラタノプロストは、遊離酸形態のプロドラッグであり、プロスタノイド選択的FP受容体アゴニストである。ラタノプロストは、僅かな副作用を伴い緑内障患者の眼圧を低下させる。ラタノプロストは、比較的低い水性溶液への溶解度を有するが、典型的に、溶媒蒸発を使用するミクロスフェアの製造に有用な有機溶媒への易溶性を有する。
およそ250mgのPLGA(50:50のラクチド:グリコリド比、〜60kD分子量、Lakeshore Biomaterials社)を1.67mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液を、およそ25mgのラタノプロストに加えて、均質になるまで混合した。次いで、該薬剤/ポリマー溶液を、およそ20秒間に渡って、25ゲージの針を介して、67mLの注射用水(WFI)中1.5%ポリビニルアルコール(31〜50kD、89%加水分解)を含有する150mLのビーカーに注入し、同時に1インチ撹拌子を使用して300rpmで撹拌した。該溶液を一晩撹拌し、およそ18時間、溶媒を蒸発させた。ミクロスフェアを真空下のメンブランフィルターで回収し、50mLのWFIで3回リンスした。次いで、洗浄したミクロスフェアを、およそ3mLの容積で20mLのシンチレーションに移し、このバイアルを凍結させ、その後、涙点プラグへの組み込みに先立ち、週末に渡って凍結乾燥した。ミクロスフェアの代表的な写真を、図6に示す。
【0131】
(実施例6. ミクロスフェア形成)
この方法は実施例5と同様であり、加えて塩化メチレンが、1%濃度に達するまで連続相に添加される。この添加は、不連続相から連続相への溶媒の移動速度を低下させて、より密なスキン形成をもたらす。
【0132】
(実施例7〜9. 溶媒キャストによるポリマーウェハ/フィルムの製造)
およそ200mgのPLGA(50:50のラクチド:グリコリド比、〜60kD分子量、Lakeshore Biomaterials社)を、1mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液を、およそ10mgのラタノプロストに加えて、20mLのシンチレーションバイアルにおいて均質になるまで混合した。次いで、該薬剤/ポリマー溶液の溶媒を、ドラフトでおよそ72時間蒸発させた。次いで、得られたフィルムを更に、真空下、周囲温度にて一晩乾燥させた。同様に、これらの方法は、溶媒としてアセトン及びクロロホルムのそれぞれを使用して、実施することができる。
【0133】
(実施例10. 膨潤能、事前形成プラグ)
実施例1又は実施例3の方法を使用して、プラグを製造した。分枝ポリエチレングリコールは、末端がグルタル酸スクシンイミジルの8腕の15,000MW(8a15KSG)であった。求核性前駆体は、トリリジンであった。ヒドロゲルを、メタノール(MeOH)又は水(WFI)中で架橋した。膨潤によるパーセント変化は、プラグの長さ又は幅などの規定寸法の、時間との相関関係による変化として評価される。ヒドロゲル形成時のヒドロゲル中の固体の量は、10%〜30%で変動した。図7に示されるように、平衡時の非抑制的な容積変化は、形成時の溶媒又は固体含有量に応じて、約500%〜約1200%の範囲であることが得られた。
【0134】
(実施例11. 浸食性涙点プラグ、8A15kSG)
実施例1又は実施例3の方法を使用して、プラグを製造した。分枝ポリエチレングリコールは、末端がグルタル酸スクシンイミジルの4腕の20,000MW(4a15KSG)であった。求核性前駆体は、トリリジンであった。ヒドロゲルを、メタノール(MeOH)又は水(WFI)中で架橋した。膨潤によるパーセント変化は、プラグの長さ又は幅などの規定寸法の、時間との相関関係による変化として評価される。ヒドロゲル形成時のヒドロゲル中の固体の量は、20%〜30%で変動した。図8に示されるように、平衡時の非抑制的な容積変化は、形成時の溶媒又は固体含有量に応じて、約500%〜約1200%の範囲であることが得られた。
【0135】
(実施例12)
実施例1又は実施例3の方法を使用して、プラグを製造した。分枝ポリエチレングリコールは、末端がグルタル酸スクシンイミジルの4腕の20,000MW(4a20KSG)であった。求核性前駆体は、トリリジンであった。ヒドロゲルを、メタノール(MeOH)又は水(WFI)中で架橋した。膨潤によるパーセント変化は、プラグの長さ又は幅などの規定寸法の、時間との相関関係による変化として評価される。ヒドロゲル形成時のヒドロゲル中の固体の量は、20%〜30%で変動した。図9に示されるように、平衡時の非抑制的な容積変化は、形成時の溶媒又は固体含有量に応じて、約1100%〜約1700%の範囲であることが得られた。
【0136】
(実施例13. PLGAカプセル化8A15kSG涙点プラグ)
実施例3の方法を使用してヒドロゲルを製造した。該ヒドロゲルは、治療薬の非存在下の水中で製造した。グルタル酸スクシンイミジルの末端を有する8腕の15,000MWのポリエチレングリコールを、トリリジンと反応させた。該ヒドロゲルに、ラタノプロスト又は実施例5に従って製造したラタノプロスト含有ミクロスフェアをロードした。図10に示されるように、カプセル化されていないニートのラタノプロストは、約90%の送達に達するまで、実質的に0次放出プロファイルでヒドロゲルから放出された。300μmのミクロスフェアをロードしたヒドロゲルは、約6日目まで作用薬を放出せず、その後、経時的に放出され、その時間の大部分はほぼ0次放出であった。同様に、ジクロロメタンからのキャストしたフィルムは、類似であるが異なるプロファイルを有した。
【0137】
(実施例14. シクロスポリン)
実施例1の方法を使用してヒドロゲルを製造した。ヒドロゲルを製造するのに使用する有機媒体中に、シクロスポリンを予め溶解させ、カプセル化は用いなかった。本明細書中に報告される予想外の結果の1つは、薬剤ロードの増大が放出を遅らせることであり、これは薬物送達における期待に反するものである。図11に示されるように、総放出のパーセンテージとしての放出速度は意外にも、高ロードプラグよりも低ロードプラグの方が速かった。
【0138】
(実施例15. 事前形成デバイス(短期用)の水性ベースの製造)
432mgの4A20kSGを10mLシリンジに取り、1.2mLの1.7%モキシフロキサシン溶液(20mLのWFI中の400mgのモキシフロキサシン塩基を1NのHClでpH4.5に調整したもの)と混合した。余分な空気を取り除いた。第2のシリンジにおいて、2gのモキシフロキサシンミクロスフェアを、2.4mLの1.7%モキシフロキサシン溶液(20mLのWFI中の400mgのモキシフロキサシン塩基を1NのHClでpH4.5に調整したもの)と混合した。これら2つのシリンジを、シリンジ間で前後にゆっくりと材料を交換することによって合わせた。材料を1つの10mLシリンジに回収した。第3のシリンジにおいて、1.2mLのトリリジン溶液(31.2mgのトリリジンを3mLの二塩基性リン酸ナトリウムに溶解したもの)を加えた。これを先に混合したシリンジと交換し、次いで、既知の直径を有するシラスティックチューブに注入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで吊るした。クリップを取り除き、ゲル/シラスティックチューブを元の長さの2.5倍に伸ばす。これを30℃で48時間乾燥させる。貯蔵乾燥プラグを取り出し、長さ3.5〜4.5mmに切断する。この方法は、カプセル化した薬剤を他のポリマー系にロードするのに適している。
【0139】
(実施例16. 事前形成デバイス(長期用)の水性ベースの製造)
432mgの4A20kSAPを10mLシリンジに取り、1.2mLのWFI(一塩基性リン酸ナトリウムでpH4.5に調整したもの)と混合した。余分な空気を取り除いた。第2のシリンジにおいて、2gのモキシフロキサシンミクロスフェアを、2.4mLのWFI(pH4.5に調整)と混合した。これら2つのシリンジを、シリンジ間で前後にゆっくりと材料を交換することによって合わせた。材料を1つの10mLシリンジに回収した。第3のシリンジにおいて、1.2mLのトリリジン溶液(31.2mgのトリリジンを3mLの二塩基性リン酸ナトリウムに溶解したもの)を加えた。これを先に混合したシリンジと交換し、次いで、既知の直径を有するシラスティックチューブに注入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで吊るした。クリップを取り除き、ゲル/シラスティックチューブを元の長さの2.5倍に伸ばす。これを30℃で48時間乾燥させる。貯蔵乾燥プラグを取り出し、長さ3.5〜4.5mmに切断する。
【0140】
(実施例17. ミクロスフェアの製造)
ミクロスフェアは、薬剤物質としてラタノプロスト又はモキシフロキサシンを組み込み、溶媒蒸発によって製造される。ラタノプロストは、遊離酸形態のプロドラッグであり、プロスタノイド選択的FP受容体アゴニストである。ラタノプロストは、僅かな副作用を伴い緑内障患者の眼圧を低下させる。ラタノプロストは、比較的低い水性溶液への溶解度を有するが、典型的に、溶媒蒸発を使用するミクロスフェアの製造に用いられる有機溶媒への易溶性を有する。モキシフロキサシンは、VIGAMOXの有効成分であり、眼の細菌感染症の治療又は予防の使用に認可されたフルオロキノロンである。モキシフロキサシンは、容易に水性溶液に溶解する。このように、疎水性及び親水性の両方の作用薬を、ミクロスフェア形成で例証した。
【0141】
(実施例17A)
およそ2.8gのモキシフロキサシ塩基を、8mLの塩化メチレンに溶解した。これに5.18gの2A 50:50 PLGAを加え、溶解するまで混合した。次いで、直ちに薬剤/ポリマー溶液を、1Lの0.5%ポリビニルアルコール、0.2%二塩基性リン酸ナトリウム、2.5%塩化ナトリウムの溶液に注入し、同時に880rpmで撹拌した。該溶液を一晩撹拌し、およそ60分間40℃で溶媒を蒸発させた。ミクロスフェアを、8LのWFIの500mLの分割量で洗浄し、次いで、複数の20mLのシンチレーションバイアルに、およそ3mLの容量で移した。これらのバイアルを凍結させ、その後、ヒドロゲル又は他の使用への組み込みに先立ち、48時間に渡って凍結乾燥して、ミクロスフェアを乾燥させた。次いで、乾燥させたミクロスフェアを、構成成分(ロード用ミクロスフェア/マクロマー/トリリジン/緩衝液)をシリンジ中で混合すること、及びヒドロゲルの架橋のためにシリコンチューブに注入し、同時にミクロスフェアが底に沈殿するのを防止するために室温で回転させることによって、涙点プラグに組み込んだ。次いで、該チューブを所望の長さに伸ばし、オーブン中、30℃で1〜2日間乾燥させる。乾燥した材料をチューブから取り出し、特定の長さのプラグに切断する。
【0142】
(実施例17B)
およそ250mgのPLGA又はPLAを、1.67mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液を、およそ25mgのラタノプロストに加えて、均質になるまで混合した。次いで、該薬剤/ポリマー溶液を、およそ20秒間に渡って、25ゲージの針を介して、67mLの注射用水(WFI)中1.5%ポリビニルアルコール(31〜50kD、89%加水分解)を含有する150mLのビーカーに注入し、同時に1インチ撹拌子を使用して300rpmで撹拌した。該溶液を一晩撹拌し、およそ18時間溶媒を蒸発させた。ミクロスフェアを真空下のメンブランフィルターで回収し、50mLの水で3回リンスした。次いで、洗浄したミクロスフェアを、およそ3mLの容量で20mLのシンチレーション管に移し、このバイアルを凍結させ、その後、ヒドロゲル又は他の使用への組み込みに先立ち、約48時間に渡って凍結乾燥して、ミクロスフェアを乾燥させた。以下のPLGA及びPLA系を、ミクロスフェアの生成に利用した:1. 50:50 PLGA 2.5A;2. 50:50 PLGA 4A;3. 75:25 PLGA 4A;4. 100 PLA 4A;5. 100 PLA 2.5E;6. 100 PLA 4.5E;7. 100 PLA 7E。これらの略語は、当業者に公知で、Lakeshore Biomaterials社によって公開される術語に従い、Aとはカルボン酸末端基を意味し、Eはエステル末端基を意味する。2.5及び4の数字は、分子量に対するIVナンバー(IV number)(特定の濃度のクロロホルムにおける溶液の固有粘度)を指す。比率は、L:G比(ラクチド:グリコリド)である。この術語は、製造業者であるLakeshore Biomaterials社(Surmodics社の事業部)に由来する。
【0143】
(実施例17C)
実施例17Aと同様であり、加えて塩化メチレンが、1%濃度に達するまで連続相に添加される。これは、不連続相から連続相への溶媒の移動速度を低下させて、より密なスキン形成をもたらす。
【0144】
(実施例18. 溶媒キャストによるポリマーウェハ/フィルムの製造)
(実施例18A)
およそ250mgのPLGA(50:50のラクチド:グリコリド比、〜60kD分子量、Lakeshore Biomaterials社)を1mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液を、およそ10mgのラタノプロストに加えて、20mLのシンチレーションバイアルにおいて均質になるまで混合した。次いで、該薬剤/ポリマー溶液の溶媒を、ドラフトでおよそ72時間蒸発させた。次いで、得られたフィルムを更に、真空下、周囲温度にて一晩乾燥させた。
(実施例18B)
実施例18Aにおいて、溶媒としてアセトンを用いる。
(実施例18C)
実施例18Aにおいて、溶媒としてクロロホルムを用いる。
【0145】
(実施例19A. インビトロでの短期放出)
この実施例は、治療薬としてモキシフロキサシンを使用して実施した。実施例17Aのようなプロトタイプのモキシフロキサシン涙点プラグについてのインビトロでの放出プロファイルを、リン酸緩衝食塩水(PBS)中37℃で評価した。この放出を図14に示す。上記プロトタイプからの放出は、カプセル化についてLakeshore社2A 50:50 PL:GAポリマーを利用した。製造及び放出速度動態を図15Aに示す。図15Bは、放出動態が粒径の範囲を変化させることによって、どのように操作されるかを示している。図15Bに示されるように、より広い粒子範囲のCB-ITX-152-2は、より狭い粒径範囲の製剤CB-ITX-152-10と比べて、長期のヒドロゲルプラグからの薬剤放出をもたらす。
【0146】
(実施例19B. 放出プロファイル)
実施例19Aへの修正は、製造中使用したPLGAの平均分子量及び分布の変更による放出期間及びプロファイルの変化を含む。図15Cに示されるように、製剤CB-ITX-124-1において使用したより高い分子量のPLGAは、徐放が生じ得る前に顕著な遅延期間を示すのに対し、製剤CB-ITX-114-11において使用したより低い分子量のPLGAは、1日目から直線的な放出を示す。遅延期間は、PLGA又はPLAのミクロスフェア製剤で観察されたが、これらは、ポリマーの分子量、並びにミクロスフェアの粒径範囲及び分布を調整することによって対処することができる。
【0147】
(実施例19C. 放出プロファイル)
実施例19A及び19Bへの修正は、製造反応において使用したPLGAの平均分子量及び分布、並びにポリマー濃度の変更による放出期間及びプロファイルの変化を含む。図15Dに示されるように、濃度及び分子量の両方の変更によって、長期間の即時放出を可能として、製剤を作り出すことができる。より高いポリマー濃度は、放出期間を長期間に延長させ得るより高密度のミクロスフェアを作り出すようである。
遅延期間の排除は、特に抗生物質のような即時作用治療薬にとって有用である。図15Dで観察されたインビトロでの遅延期間は、図15Eのインビボでの遅延期間に直接転化した。低分子量製剤を使用した再製剤、CB-ITX-152-2製剤は、高分子量製剤、B-ITX-124-1と比較して、前臨床モデルにおいて即時放出を示した。
【0148】
(実施例20. インビトロでの長期放出ラタノプロストプラグ)
ラタノプロスト涙点プラグを製造するのに使用した個々のミクロスフェアタイプについてのインビトロでの放出プロファイルは、使用する分子量、組成(LとGとの比率)及び末端基(酸対エステル末端)に従い変化するであろう。個々の放出速度の例を、図16に示す。
同じ作用薬を含有する複数種のポリマーの配合の効果の例を、図17に示す。同じ活性剤を含む複数種のポリマーの配合の効果の例を、図17Aに示す。所望のミクロスフェアを異なる量で配合することによって、放出プロファイルを適用の要求に合わせることができる。より小さい粒径は、図17Bに示されるように、より大きな粒径と比べてより短い放出期間を生じさせた(速い初期放出)。図17Cは、配合がもたらす他の効果を示している。
【0149】
(実施例21. 比較的短期間のヒドロゲル)
ヒドロゲルと微小粒子との放出系の薬物動態性能を、モデルとしてモキシフロキサシンを使用して評価した。モキシフロキサシン涙点プラグを、インビボでのモキシフロキサシン放出の相関を決定するために、イヌの眼モデルにおいて評価した。2A 50:50 PLGA溶媒蒸発ミクロスフェアを含有する9% 4A20kSGのプロトタイププラグを、イヌの下涙点に埋め込み、涙試料を16日に渡ってLC-MS/MSで分析した。薬物動態データを図18に示す。薬物動態プロファイルは、ヒドロゲル涙点プラグが、インビボで所定の10日間の送達時間の間に、一定の速度で治療量をイヌの眼に送達できることを示している。
細菌学的データを含む広範な手術後の眼内炎実験から、手術後の眼内炎に関与する確認された成長分離株の94.2%が、グラム陽性病原体であり、最も一般的には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)であることが示された(Ηan DPらの文献,「眼内炎硝子体切除術研究における微生物学的単離株のスペクトル及び感受性(Spectrum and susceptibilities of microbiological isolates in the Endophthalmitis Victrectomy Study)」, Am J Ophthalmol, 1996; 122:1-17)。図18のプロファイルは、涙液レベルが、既報の10日間のモキシフロキサシンMIC90、黄色ブドウ球菌(60ng/mL)及び表皮ブドウ球菌(130ng/mL)(Hariprasad, S.らの文献,「ヒト水様液及び硝子体液における0.5%モキシフロキサシン点眼剤の局所的投与の浸透薬物動態(Penetration Pharmacokinetics of Topically Administered 0.5% Moxifloxacin Ophthalmic Solution in Human Aqueous and Vitreous)」, Arch Ophthalmology, Jan 2005;123: 39-44)を上回ることを示している。
【0150】
(実施例22.クロスフェアを有する長期用のヒドロゲル)
ヒドロゲルと微小粒子との放出系の薬物動態性能を、モデルとしてモキシフロキサシンを使用して評価した。モキシフロキサシン涙点プラグの性能を、インビボでのモキシフロキサシン放出の相関を決定するために、イヌの眼モデルにおいて評価した。PLGA/PLA溶媒蒸発ミクロスフェアの配合物を含有する20% 4A20kSAPのプロトタイププラグを、イヌの下涙点に埋め込み、涙試料を16日に渡ってLC-MS/MSで分析した。薬物動態データを図19に示す。
【0151】
(実施例23. ヒドロゲルマトリックス中への薬剤の捕捉)
9% 4a20KSGヒドロゲルを、3つの異なるステロイド(フルニソリド、ブデソニド及びトリアムシノロンアセトニド)を組み込んで製造した。該ヒドロゲルにおけるステロイドの放出プロファイルとPBS中の遊離な薬剤との比較を、図20に示す。ヒドロゲル中へステロイドの閉じ込め又は捕捉は、より遅く、より持続性のある薬剤放出プロファイルをもたらすことが認められる。
【0152】
(実施例24. 伸張及び粒径)
特定の実施態様は、ヒドロゲルを伸張することに関する。粒径は、管のサイズとの相関関係で、乾燥中に伸張可能な長さに影響を与えることが発見された。より小さな直径の管での涙点プラグの製造及び比較的大きな粒子範囲の組み込みは、乾燥工程の間にいっそう粉砕しやすく、使用に適さないヒドロゲルプラグとなる。表4に示されるように、粒径範囲及び特定の管の直径に対する伸張係数を制御することによって、結果、ヒドロゲル/ミクロスフェアロッドは、後続の例えば、涙点プラグへの切断のための乾燥に成功し得る。より大きな粒径のミクロスフェアは、うまく伸張されるヒドロゲルの能力を低下させる。
【表4】
【0153】
(実施例25. ヒドロゲルサイズ及びパタメータ)
伸張、乾燥、薬剤ロード、膨潤、分解、放出速度、合計容積、及び薬剤用量は、競合している設定パラメータを提示する。最終プラグ長及び3.5mm長のプラグあたりの推定薬剤(モデルとしてモキシフロキサシンを使用)用量に対して、総プラグ容積あたりのミクロスフェアロード、乾燥間の伸張係数、及びシリコンチューブ内径を変化させて、実施可能性実験を行った。表5に記載された結果は、1.47mm IDのチューブで製造した場合に、2.5×の伸張係数を用いて、0.50mmの最終乾燥直径で200μgを上回る標的プラグ用量が達成され得ることを示した。
【表5】
【0154】
(実施例26. 伸張因子実験)
実施例1への修正は、伸張乾燥は、涙点プラグ又は他の適用に最も適したサイズを標的とするための異なった乾燥直径であるが、図21Aに示されるように、類似の水和した直径を有するプラグをもたらし得ることの理解を含む。たとえそれら全てが、図21Bに示されるように、類似の乾燥時の長さを有したとしても、より短い水和した長さは、より大きな伸長係数と相関がある。したがって、長い乾燥時の長さを有するが、涙点における水和時にプラグが小管に後退するように、涙点プラグの使用に適しているであろう短い水和時の長さを有するプラグを作り出すことが可能である。
【0155】
(実施例27. ミクロスフェアポリマー重量配合)
図22に示されるように、放出プロファイルを変化させるためにポリマー重量の配合を行うことが可能である。これは、広範囲のPLGA分子量をもたらし、その結果、放出プロファイルを修正する。より大きな割合の低分子量のPLGAを製剤に組み込むことによって、より速い放出又は親水性薬剤のためのより高い薬剤カプセル化効果を得ることが可能である。反対に、より大きな分子量は、より長い放出期間を与える。
高密度のミクロスフェアは、より多くの作用薬を含有することが見出された。PVA/連続相において塩化ナトリウムなしで製造されたミクロスフェアは、0.4g/mLのタップ密度を有するのに対し、塩化ナトリウムを伴うものは、1g/mLの高いバルクのタップ密度を有した。密度の調整は、様々な因子により制御されるが、幾つかの因子は、薬剤カプセル化効率を顕著に増大させ、高密度ミクロスフェアをもたらすことが観察された。高PLGA濃度と塩化ナトリウムを含有する連続相の大きな容積(有機相の100倍)との組み合わせは、高いカプセル化効率(>70%)を有する高密度ミクロスフェアを与えた。高いPLGA濃度及び連続相の大きな容積は、ミクロスフェア表面でPLGAの迅速な沈降をもたらし、擬似半透膜を形成する。連続相における塩の添加は、浸透圧を増大させ、これは、連続/水相の分散/有機相への内向き流束を防止し、ミクロスフェア表面でのチャネルの形成を低下させる。加えて、塩化ナトリウムは、連続相の極性を増大させ、それにより、塩化メチレンの極性連続相への溶解度を低下させ、これにより、ポリマーをよりゆっくりを沈降させ、比較的高密度の微小粒子を形成する。
【0156】
(追加的開示)
1. ヒトの眼の涙点又は小管を通る涙流を遮断し、又は減少させ、かつ薬剤を眼に送達するための医療用装具であって、涙点を通過する寸法を有する脱水共有結合架橋合成親水性ポリマーヒドロゲルを含み、該脱水ヒドロゲルが生理的水を吸収して、少なくとも約1mmの断面幅(又は少なくとも1.5mm、又は少なくとも約2mm)まで膨潤し、かつ小管に整合的に適合し、該ヒドロゲルが眼への放出のためにヒドロゲル中に分散した治療薬を含み、該ヒドロゲルがインビトロにおいて生理食塩水で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容積%の含水量を有する、前記医療用装具。該装具の容積は、例えば、0.2〜100立方mmであり得る(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0157】
2. 前記脱水ヒドロゲルが、小管への配置の10分以内に、少なくとも幅1mmに膨潤する、1記載の医療用装具。
3. 前記ヒドロゲルが、長さが伸長され、かつ乾燥される、1又は2記載の医療用装具。
4. 前記伸張の量が、少なくとも約1又は1.5又は2倍でヒドロゲルの長さを増大させる、1〜3のいずれかに記載の医療用装具。
5. 機械援用を伴わず、ヒトへの作用薬の可視性を提供するのに有効な濃度で存在する可視化剤を更に含む、1〜4のいずれかに記載の医療用装具。
6. 約2日目の累積的放出率の合計と、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合の約75%の累積的放出の合計との間で、実質的に直線となる経時的な薬剤の放出のプロットの傾きから測定可能なように、薬剤の実質的な0次放出動態を提供する、1〜5のいずれかに記載の医療用装具。
【0158】
7. 前記薬剤が、ヒドロゲル中に分散したミクロスフェアの集合物内でカプセル化され、該集合物が、約20〜約300μmのみの粒径の範囲、及び相対的に小さなミクロスフェアが該範囲内において、より大きな粒子と比べてより迅速に薬剤を放出することの結果としての0次放出を提供するのに必要なサイズ分布を有するように選択される、1〜6のいずれかに記載の医療用装具。
8. 前記直径範囲が、約20〜約150μm、又は25〜150μmである、1〜7のいずれかに記載の医療用装具(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0159】
9. 追加的量の薬剤を含み、該追加的量が、ミクロスフェアへのカプセル化を伴わずにヒドロゲル内に分散されており、該追加的量が、経時的な累積的薬剤放出のプロットから測定可能なように、追加的量の薬剤の放出の初期バーストを提供し、該初期バーストが、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合に、0%〜約35%の薬剤の累積的放出の合計であり(又は20%の10% w/w、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)、かつミクロスフェアと関連する薬剤が、実質的に初期バーストに寄与しない、1〜8のいずれかに記載の医療用装具。
10. 前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、1〜9のいずれかに記載の医療用装具。
11. 本質的に、ヒドロゲル、薬剤を含有するミクロスフェア、及び追加的量の薬剤からなる、1〜10のいずれかに記載の医療用装具。緩衝液及び生理食塩水は、本発明の特徴に必須ではない。あるいは、該デバイスは本質的に、可視化剤、ヒドロゲル、及び薬剤及び/又はミクロスフェア中ではない追加的量の薬剤を含有するミクロスフェアからなり得る。
【0160】
12. 前記薬剤が実質的に、水性溶液に不溶性である、1〜10のいずれかに記載の医療用装具。
13. 前記薬剤が実質的に、水性溶液に可溶性である、1〜10、12のいずれかに記載の医療用装具。
14. 前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物である、1〜10、12〜13のいずれかに記載の医療用装具。
15. 前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を含む第1の合成水溶性ポリマーと少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成する、1〜12、10〜14のいずれかに記載の医療用装具。
16. 前記第1のポリマーが、ポリエチレングリコールを含み、前記第1の官能基が、スクシンイミドであり、かつ前記第2の官能基が、アミン及びチオールからなる群から選択される、1〜12、10〜15のいずれかに記載の医療用装具。
【0161】
17. 前記薬剤がラタノプロストであり、該ラタノプロストがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから、開放隅角緑内障又は高眼圧症に罹患している患者において眼圧亢進を低下させるのに有効な量で、少なくとも約4週間の期間に渡って放出され、所定の位置で膨潤したヒドロゲルが、約1立方mm以下の容積を有する、1〜12、10〜16のいずれかに記載の医療用装具。
18. 前記薬剤がモキシフロキサシンであり、該モキシフロキサシンがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから眼の涙膜に、眼における黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌を実質的に減少させるのに有効な量で、少なくとも約6日間の期間に渡って放出可能であり、所定の位置で膨潤したヒドロゲルが、約1立方mm以下の容積を有する、1〜10、又は10〜17のいずれかに記載の医療用装具。
19. 前記モキシフロキサシンが、塩基形態である、18記載の医療用装具。
【0162】
20. ヒトの眼の涙点又は小管を通る涙流を遮断し、又は減少させ、かつ薬剤を眼に送達するための装具の製造方法であって、加水分解的に分解可能な材料から複数のミクロスフェアを形成すること(該ミクロスフェアは薬剤を含有する)、該ミクロスフェアを洗浄すること、該ミクロスフェアを分離して、約20〜約300μmの範囲の直径を有するミクロスフェアの集合物を得ること、該ミクロスフェアを合成ポリマーヒドロゲル前駆体と混合し、かつ管内で前駆体からヒドロゲルを形成すること(該ミクロスフェアは、ヒドロゲル中に分散している)、管からヒドロゲルを押し出すこと、ヒドロゲルの長さを少なくとも約2倍に伸張すること(又は少なくとも1.5、又は少なくとも2.5、又は1〜3の間;明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)(生じるヒドロゲルの最大断面幅が約1mm未満である)、ヒドロゲルを乾燥させること、該乾燥したヒドロゲルを約5mm未満の長さに切断し又は分割すること、及び約2日目の累積的薬剤放出率のおよその合計と、脱水ヒドロゲル装具がインビトロで生理的溶液中に配置される場合の約75%の累積的放出の合計との間で、実質的に直線となる経時的な該装具からの薬剤の放出のプロットの傾きから測定可能なように、薬剤について実質的に0次放出の動態を示すために、集合物の範囲内でミクロスフェア直径の分布を選択すること(該脱水ヒドロゲルは生理的水を吸収して少なくとも約1mmの断面幅まで膨潤し、小管に整合的に適合し、かつ該ヒドロゲルは、インビトロにおいて生理食塩水中で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容積%の含水量を有する)を含む、前記製造方法。
【0163】
21. 前記脱水ヒドロゲルが、小管への配置の10分以内に、少なくとも幅1mmまで膨張する、20記載の製造方法。
22. 前記ヒドロゲルに、機械援用を伴わず、ヒトへの前記装具の可視性を提供するのに有効な濃度で可視化剤を配置させることを更に含む、20又は21記載の製造方法。
23. 追加的量の薬剤を、ミクロスフェアへのカプセル化を伴わずにヒドロゲルと混合することを更に含み、該追加的量が、経時的な累積的薬剤放出のプロットから測定可能なように、追加的量の薬剤の放出の初期バーストを提供し、該初期バーストが、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合に、0%〜約35%の薬剤の累積的放出の合計であり、かつミクロスフェアの製造又はロードの間に、ミクロスフェアと関連する薬剤が、実質的に初期バーストに寄与しない、20〜22のいずれかに記載の製造方法。
【0164】
24. 前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、20〜23のいずれかに記載の製造方法。
25. 前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物である、20〜24のいずれかに記載の製造方法。
26. 前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を更に含む合成ポリマーヒドロゲル前駆体と、少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成する、20〜25のいずれかに記載の製造方法。
27. 1〜26のいずれかを使用することを含む、方法。
28. 1〜26の装具のいずれかを製造することを含む、方法。
【0165】
29. 前記薬剤がラタノプロストであり、該ラタノプロストがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから、開放隅角緑内障又は高眼圧症に罹患している患者において眼圧亢進を低下させるのに有効な量で、少なくとも約4週間の期間に渡って放出される、1〜28のいずれかに記載の装具若しくは方法を利用する使用又は使用方法。
30. 前記薬剤がモキシフロキサシンであり、該モキシフロキサシンがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから眼の涙膜に、眼における黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌を実質的に減少させるのに有効な量で、少なくとも約6日間の期間に渡って放出される、1〜28のいずれかに記載の装具若しくは方法を利用する使用又は使用方法。
【0166】
31. 本明細書中に記載の薬剤の、それと関連した状態を治療するための、又はそのための医薬を製造するための、使用又は使用方法。
32. 1〜30のいずれかに記載される、又はそれにより製造される、医薬。
33. 前記ミクロスフェアからの薬剤の送達のために結膜下に配置される、本明細書中に記載のミクロスフェア、その医薬若しくは使用、又は患者において同物を使用する治療法。
【0167】
本明細書中の表題及び副題は、読み手の便宜のためにあることを意図する。これらは、節内の開示又は実施態様を何ら限定するものではない。特定の特徴を有する様々な実施態様が、記載されている。これらの様々な特徴は、実施可能なデバイスを製造する必要性によって導かれるように当業者によって自由に組み合わせて適合され得る。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年2月12日出願のUS61/152,081の優先権を主張し、これは全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。
(技術分野)
本技術分野は広く眼科用装具に関連し、より具体的には、涙点プラグ(punctum plug)などの医療用小管挿入物に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
眼への薬物送達は従来、点眼剤の定期的投与、ペースト及び包袋、角膜へ適用される薬剤を含浸させたレンズ、直接注入又は眼に挿入される薬剤デポーによって達成される。例えば、白内障手術及び網膜硝子体手術の後には、数日間、数時間毎に抗生物質を投与しなければならない場合がある。加えて、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの他の薬剤を、頻繁に与える必要もある。
【発明の概要】
【0003】
(発明の概要)
一般に、眼疾患又は状態を治療するための眼用薬剤は、眼表面状態、前部疾患、又は後部/眼の奥の疾患の治療に向けられる。
眼表面及び眼の前部に送達される大抵の薬剤は、点眼剤の形態で投与される。この形態の送達には幾つかの問題がある。まず、関節炎の可能性のある高齢患者にとって、液滴を眼に入れることは困難な場合がある。次に、液滴中の薬剤の95%以上が、結局眼に浸透するに至らず、無駄になると見積もられている。この浪費は、薬剤の非効率的な利用となるだけでなく、全身的な副作用につながるおそれもある(例えば、緑内障用のβ遮断薬は循環器系の問題を招き得る)。最後に、要求される治療レベルの達成を可能とするために、利用者は高濃度の薬剤を投与しなければならず、これは、灼熱感及び刺痛などの局所的問題、又は眼表面の違和感を引き起こし、服薬不順守並びに不快感を招く。しかしながら、現在まで液滴は、依然として眼用医薬品送達の主流となっている。
【0004】
様々な薬剤デポーが、眼用薬剤の投与を試みて製造されている。経時的に一貫した薬剤用量の送達は、1950年代の最初の薬剤発売の大規模な商業化から薬剤発売産業全体に掲げられている難題である。幾つかのアプローチには、硝子体内埋め込み型リザーバタイプの系、又は除去不要の埋込錠(非腐食性)が含まれている。したがって、これらの埋込錠は、極めて高い薬剤濃度を有し、非常に小さく作られている。それらは小型ではあるけれども、やはりサイズ25G(25ゲージ)より大きな針、又は埋め込み若しくは必要に応じた除去のための外科的アプローチによる送達系によって配置される必要がある。例えば、POSURDEX(Allergan社)は、糖尿病黄斑浮腫(DME)又は網膜静脈閉塞症に使用するための埋め込み型生分解性ペレットであり、硝子体腔への送達のために22G送達系が使用される。例えば、MEDIDUREインプラントは、直径約3mmの円筒形形状であり、かつ非腐食性である。それは25Gの注入器送達系によって配置され、18又は36ヵ月の名目送達寿命を有する。
【0005】
眼部送達のための多くの他のアプローチが、例えば、US2008/0038317(全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれ、矛盾がある場合は本明細書が支配する)の背景の節に概説されるように公知であり、これは、内部リザーバ及び特定の生分解性ポリマーで製造され、更にプラグ中の薬剤の放出速度を制御するための不浸透性部材、又は特定の放出調節器を有する涙点プラグを教示している。そして、例えば、U.S.6,196,993(全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれ、矛盾がある場合は本明細書が支配する。)は、内部薬剤-ロードリザーバを有する涙点プラグを教示しており、これは、有用な速度でリザーバ中の薬剤を放出することに合わせたサイズ及び形状を有し得る細孔を有している。
【0006】
こうした進歩にもかかわらず、プラグの保持には、それらの目的とする寿命が完了する前に、極度に高い割合で外へ落ちてしまうという進行中の問題がある。強固な送達系が必要とされている。実際、従来の系は、送達、用量及びサイズの制限のために、数種類の薬剤及び限られた数の疾患にしか使用することができない。
【0007】
特定の実施態様は、保持のために所定の位置で膨潤し、固定するヒドロゲルプラグによってこの問題を解決する。該ヒドロゲルプラグは、分解性のヒドロゲルで製造され、除去の必要がなく、かつ放出用リザーバ系に頼らない。該プラグは特に、眼表面又は眼の前眼房への送達によく適している。高度に膨潤して堅固に位置付けされ、かつ薬剤及び病状に応じて調整され得る所定の速度で薬剤を放出する合成ヒドロゲル涙点プラグが、本明細書中に開示される。これらのヒドロゲルは、快適さのために柔軟で弾力があり、かつ治療期間の終了後に該プラグが消失するような予想可能な速度で生分解するか、又は交換のために容易に排出される。これらの系は、高い患者コンプライアンス率を提供し、同時に薬剤放出系を配置するために眼に穿刺を行う必要性を回避する。本明細書中の実施態様は、広範な送達用量及び時間を満たすために、必要に応じて、送達について大きく異なる化学特性の薬剤との使用に適合され得る安定したマトリックス製剤を提供する。広範な濃度のための確実なツールの使用は、系全体を特別に作製することなく、繰り返し使用することができる単一のプラットフォームを提供するので、非常に重要な進歩である。このアプローチは、臨床経験が1つの系で起こるので安全性を強化し、更なる治療の創作のための工程を排除することによる効率性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】眼及び涙器系の図である。
【図2A】アプリケーターに把持された涙点プラグを示す。
【図2B】プラグの配置に使用時の図2Aのアプリケーターを示す。
【図2C】小管内に完全に配置したプラグを示す。
【図2D】定位置で膨潤するプラグを示す。
【図2E】近位部が管の外へ延出し、かつ末端部が小管内に配置された、プラグの別の配置を示す。
【図2F】図2Eの実施態様のプラグの膨潤を示す。
【図3A】原位置(in situ)での涙点プラグ形成の部位に前駆体を配置するためのシリンジタイプのアプリケーターを示す。
【図3B】原位置での涙点プラグ形成のために前駆体を導入するアプリケーターを示す。
【図4A】原位置でプラグを形成する前駆体の配置後のアプリケーターを示す。
【図4B】図3Bのプラグの形成を示す。
【図4C】図4Bのプラグの膨潤を示す。
【図5】薬物送達用微小粒子の形成のための選択肢を示したフローチャートである。
【図6】薬剤を含有するミクロスフェアの顕微鏡写真である。
【図7】実施例10に詳述される様々に形成された涙点プラグの実施態様の膨潤を示すグラフである。
【図8】実施例11に詳述される涙点プラグの寸法変化のグラフである。
【図9】実施例12に詳述される様々に形成された涙点プラグの容積変化のグラフである。
【図10】実施例13に詳述される涙点プラグヒドロゲル及び/又はミクロスフェアからの薬剤放出を示す。
【図11】実施例14に詳述される涙点プラグヒドロゲル及び/又はミクロスフェアからの薬剤放出を示す。
【図12】疎水性領域の組み込みによるヒドロゲルプラグの膨潤の減少を示すグラフである。
【図13】涙点プラグ配置のための特定の選択肢を示す。
【図14】実施例18〜19に詳述されるヒドロゲル-微小粒子組み合わせからの薬剤放出を示すプロットである。
【図15A】実施例18〜19に詳述される構成及び放出速度動態を示すプロットである。
【図15B】微小粒子サイズ範囲に関連した放出動態のプロットである。
【図15C】放出動態へのPLGA分子量の影響のプロットである。
【図15D】分子量及び濃度による放出動態の調整を示すプロットである。
【図15E】インビボ及びインビトロ動態に関するプロットである。
【図16】実施例20に詳述されるミクロスフェアの様々な実施態様の放出プロファイルを示すプロットである。
【図17A】実施例20に詳述される同じ作用薬を含有する多数の種類のポリマーの配合の効果の例を提供する。
【図17B】粒径範囲の効果の例を提供する。
【図17C】多数のミクロスフェアの配合の効果の例を提供する。
【図18】実施例21に詳述されるヒドロゲルからの薬剤放出の薬物動態データを示す。
【図19】実施例22に詳述されるヒドロゲルからの薬剤放出の薬物動態データを示す。
【図20】実施例23に詳述される生理食塩水中の薬剤物質単体と比較したインビトロでのヒドロゲル中に捕捉された薬剤の放出を示すプロットであり、ヒドロゲルは放出速度に影響を与える。
【図21A】ヒドロゲルの伸張に関する。
【図21B】ヒドロゲルの伸張に関する。
【図22】ミクロスフェア製造に使用したポリマー分子量の操作による放出プロファイルの代替を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(詳細な説明)
一実施態様は、水を吸収して加水分解的に生分解可能なヒドロゲルを形成する共有結合架橋性親水性ポリマーから形成された涙点プラグであって、これは、水に接触して吸収し、原位置で膨潤し、堅固で安定な配置のために小管を膨張させ、かつ小管に整合的に適合する。該ヒドロゲルは、眼への放出制御のための薬剤を含み、かつ高い含水量を有する。
【0010】
放出制御は複雑な主題領域である。多くの薬剤は、少なくとも閾値を満たす濃度で存在する必要がある。同時に、高すぎる濃度は、望ましくない副作用を有する。一般に、0次放出プロファイルが有用である。0次放出とは、放出が反応物の濃度の変化とは無関係な速度で、経時的に一定である系を指す。しかしながら、拡散プロセスは、単位時間あたりに放出される薬剤の量は薬剤濃度の減少につれて低下する傾向があるように、薬剤の濃度に応じる傾向がある。分解性材料の場合、分解が薬剤放出速度に影響を与えるならば、事情はより複雑になり得る。様々なアプローチが展開されている。一つのアプローチは、流体をリザーバの一部にだけ接続させるデバイス中にマトリックスを捕捉することであり、拡散制限材料が放出を制御する。又は別のアプローチは、一定領域の表面が侵食される材料である。あるいはリザーバを基礎としたアプローチが使用されている。
【0011】
しかし、所定の時間に渡って実質的に0次の作用薬放出速度を有するヒドロゲル材料であって、カプセル化を伴う又は伴わないのいずれかで、該材料中に分散した作用薬を有する、前記ヒドロゲル材料を本明細書中に開示し、例示する。これらの作用薬は、非ヒドロゲル材料から解放されており、例えば、リザーバ領域がなく、拡散膜バリアがなく、及び放出速度を制御するスリーブがない。ヒドロゲル材料は親水性であり、水性溶液(生理的流体)が該材料を通過して浸透することを可能にする。更に、該ヒドロゲル系は分解可能であり、加水分解的に分解可能である。明らかなことであるが、0次放出ヒドロゲル系を得るための設計因子は、互いに競合する。本明細書中に記載される実験を実施するより前に、有効量の薬剤を眼に送達するために、そのような系を開発できるかどうかは分かっていなかった。
【0012】
涙点プラグの場合、特定の理論に縛られるものではないが、生理的流体が小管プラグの上部に蓄積し、作用薬放出を該プラグの近位部の断面積によって制限させる傾向のある流体カラムを与えることが仮定される。小管の壁は、該流体カラムを通過する治療薬の減少に対して十分に遅い速度で、薬剤を溶出するようである。あるいは、又は加えて、小管壁は薬剤で飽和され、その結果、壁を介した放出が減速し、薬剤の放出はプラグの端部に移動する。したがって、バリア若しくはリザーバの多く、又は従来提案されている他の比較的より複雑な系は、ほとんど本当の利益を提供していない場合がある。一部が小管の外にあるプラグの場合、流体カラムはヒドロゲル中に浸透して、同様の効果に達すると仮定される。それにもかかわらず、単位時間あたりごく一部だけを放出しながら、薬剤を小容量に濃縮する場合に、克服すべきかなりの挑戦がある。
【0013】
ヒドロゲルプラグは水を吸収し、それによって、涙点又は涙小管に滞在する力を生み出し;幾つかの実施態様において、ヒドロゲルは、それが抑制されない場合に、水中で500%以上膨潤する。ヒドロゲルは、弾力を有し、水をそれ自身に引き込み、かつそれをヒドロゲル中に保持して膨潤力を生み出すように共有結合架橋し、かつ患者が眼を擦るか、又は別のことで該ヒドロゲルが曲がり変形する場合に、別の形状に再形成されない。薬剤は、薬剤放出の実施態様であるマイクロカプセル化、ミセル化又は分散によって、所望の放出プロファイルを提供するようにヒドロゲル中に組み込まれる。ヒドロゲル分子ネットワーク又はヒドロゲルマトリックス内に捕捉された大分子への薬剤の抱合もまた、薬剤放出を調節するのに使用することができるモチーフである。
【0014】
涙点プラグは、2グループの1つに分類される:涙点の最上部に配置される涙点プラグ(本明細書中で涙点プラグと称される)又は小管に挿入される小管内プラグ(intracanalicular plug)。恒久的プラグ(回収されるまで安定)及び一時的プラグ(生分解性)の両方が利用される。一時的プラグは通常、コラーゲンから製造され、従来、患者がプラグから利益を得ることができるかどうかを判断するために十分に長く存続するように設計される。期間が延長された一時的プラグは、典型的に、ポリ(カプロラクトン-コ-ラクチド)及びポリ(グリコリド-コ-トリメチレンカルボナート)などの合成物から製造される。恒久的涙点プラグ及び小管内プラグは、一般にシリコンから製造される。一恒久的プラグは、体温まで暖められ、剛体から柔軟に変化するように形状を変化させる疎水性アクリルポリマーから製造される。別の恒久的プラグは、涙液に曝されると膨潤する、非分解性乾燥ヒドロゲルから製造される。
【0015】
図1は、涙点及び涙小管を示している。眼100は、上眼瞼102、下眼瞼104、瞳孔106、涙腺108、上涙点110、下涙点112、上涙小管114、下涙小管116、涙嚢118及び鼻涙管120を有する。涙小管(lacrimal canaliculi)は、涙小管(lacrimal canal)112、114又は涙道としても知られており、これは、涙乳頭の先端の涙点(puncta lacrimalia)又は涙点(punctum)110、112と呼ばれる微小開口部で始まる、各眼瞼102、104における細い導管であり、涙湖の側部の眼瞼の縁に見られる。上涙小管114(2つのうち、より細く短い方)は、最初上へ向かい、次いで鋭角に曲がり、内側下方に移動して涙嚢118へ向かう。下涙小管116は、最初下へ向かい、次いでほぼ水平に涙嚢118へ向かう。その角度で、それらは膨大部に拡張される。微視的に、それらは、眼輪の涙嚢部に接続する横紋筋の更に外側の層を有する線維組織で囲まれた重層扁平上皮を非角質化することによって並ばされる。各涙乳頭の底には、筋線維が環状に並び、一種の括約筋を形成している。
【0016】
図2Aは、脱水プラグ202を把持する鉗子200を示す。図2Bは、プラグ202を下涙点112及び/又は下涙小管116に配置するための鉗子200の使用を示す。プラグは、涙小管中への該プラグ全体の配置を示した図2Cのように、最初は膨潤していない。プラグはその周囲から生理的流体を吸収し、図2Dのように膨潤する。あるいは、フラグは図2Eのように、少なくとも一部が涙点を通過する状態で配置することができ、続いて頭部分を残して膨潤する。ヒドロゲルは、全方向に膨潤する場合であっても、導管の内腔に起因するその容積への制約が、それが過度に延長するのを防止するように、ポリマー部材間の内部共有結合架橋を有し;該膨潤がプラグを所定の位置にしっかりと位置付けするが、その位置以外のプラグを強制しない。
【0017】
US3,949,750(これは全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれる)には、従来の涙点プラグが記載されている。ロッド状プラグは、小管を広げて阻止的に突き出る大きめの先端又はバーブ部、涙点括約筋輪が締め付ける細い首又は腰部、及び涙点開口部の上部に置かれ、かつ該プラグが小管に下降するのを防ぐ比較的大きく滑らかなヘッド部によって形成される。該ヘッド部は、ボディ部上に置かれ、任意に腰部を有する。プラグを涙点開口部に挿入するための典型的な方法には、涙点及び連結した小管を広げるための拡張器、並びにプラグの把持、操作及び挿入を支援する挿入器を利用する。
【0018】
図3Aは、注射外筒302、針柄303、出口308を有する丸型先端306の針304、及びプッシャー312を有するプランジャー310を備えるシリンジシステム300を示す。ヒドロゲル前駆体の溶液314を、注射外筒302に入れ、針304を介して分注し、出口308を出る。シリンジシステム300の一実施態様を図3Bに示す。これは、疎水性コーティング320を施した別の針318を示し、該針と前駆体溶液314との間の高い接触角を生み出して、液滴322を形成するのを支援し、及び/又は溶液314の広がりに対する針の抵抗性によって、患者に配置後に溶液314から離れるのを支援する。
【0019】
図4Aは、ヒドロゲル前駆体314を導管112に導入するのに使用されるシリンジシステム300を示し、該前駆体は導管112に残される。該前駆体は互いに共有結合を形成して、架橋ヒドロゲルプラグ402を作り出す。該ヒドロゲル402は、プラグ402の膨潤した状態404を示す図4Cのように、その周囲から液体を吸収すると膨潤し、導管112の内腔を圧迫し、該導管を広げる。流体状態のヒドロゲル前駆体の導入、続くヒドロゲルの形成は、ヒドロゲルがその使用目的の部位で作り出されるので、ヒドロゲルの原位置(in situ)形成と呼ばれる。
【0020】
ヒドロゲルは、水には溶解しない材料であり、かなりの割合(20%を超える)の水をその構造内に保持する(「Szycherの生体材料及び医療デバイス事典(Szycher's dictionary of Biomaterials and Medical Devices)」, Technomic Pub. Co., Lancaster, 1992)。実際、多くの場合、90%を上回る含水量が知られている。ヒドロゲルは、水溶性分子を架橋して、実質的に無限の分子量のネットワークを構築することによって形成されることが多い。高含水量のヒドロゲルは、典型的に、柔らかく柔軟な材料である。柔軟な材料で製造される場合、高含有量ヒドロゲルは眼に快適に装用され、より剛性な材料、例えば、ポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)から製造されるプラグに付随して起こり得る異物感を回避する。乾燥しているヒドロゲルは本明細書中で、水に曝した時にそれがヒドロゲル状態に戻る場合に脱水ヒドロゲルと称され(キセロゲルとも呼ばれる);このヒドロゲルは過剰な水に曝され、かつ抑制されない場合に、容積を膨張させる。用語、乾燥したとは、極微量の水が存在し得ることを踏まえて、基本的に流体を有しないヒドロゲルを指す。
【0021】
ヒドロゲルネットワークは、任意にヒドロゲルネットワーク形成時に又はロードした後に、治療薬が存在する状態で、非水溶媒中に形成され得る。次いで該非水溶媒を、適当な手法によって水と置き換えて、ヒドロゲルを形成することができる。用語、治療薬には、診断薬、イメージング剤及び薬剤を含む。用語、薬剤は、患者を治療するために生物学的反応を誘発することを目的とする作用薬を指す。該ヒドロゲルは、生分解性又は非生分解性であり得る。
【0022】
治療薬は、ヒドロゲル内に分散させることができる(溶液、懸濁液又はコロイドのいずれかとして、実質的に構造体中に広がっていることを意味する)。該作用薬は、ヒドロゲルを水和させる流体として同じ相に分散させることができるか、又はヒドロゲル中の流体とは不連続な相に含ませることができる。ヒドロゲルと不連続な相は、ミセル、液滴又は粒子であり得る。したがって、ヒドロゲル内部に分散したミクロスフェア内に捕捉された薬剤は、ヒドロゲル内部に分散した薬剤である。対照として、リザーバに限局された薬剤は分散していない。ミセル、液滴又は粒子は、例えば、薬剤と別の材料、例えば、ポリマーとの混合物を含み得る。粒子の一実施態様は、カプセル内部に薬剤を伴うカプセルである。粒子の別の態様は、薬剤と関連するポリマーによって形成された固体である。粒子は、それが分解した時に、拡散により又はそれらの組み合わせにより薬剤を放出することができる。これらの特徴を組み合わせて、所望の作用薬の放出プロファイルを提供することができる。ヒドロゲル中に分散した作用薬を有するヒドロゲルとは、構造体中の実質的に一様な作用薬の分布を有する連続的なヒドロゲルマトリックスを指す。
【0023】
(配置)
涙点プラグは、涙小管に、又は部分的に涙小管内部に配置され得る。鉗子又は他のアプリケーターを使用して、プラグを把持し、挿入することができる。又は前駆体を涙小管に入れて、架橋してプラグを形成させてもよい。他の選択肢は、下眼瞼と眼との間の結膜円蓋内部にミクロスフェア及び/又はヒドロゲル(脱水された、乾燥された、部分的に脱水又は乾燥された)を配置することである。この配置を使用する他のデバイスの例は、米国特許第3,618,604号、米国特許第3,626,940号、米国特許第3,845,770号、米国特許第3,962,414号、米国特許第3,993,071号、及び米国特許第4,014,335号に開示されている(これらは全ての目的のために参照により本明細書中に組み込まれ、矛盾がある場合は本明細書が支配する)。
【0024】
他の選択肢は、結膜と強膜との間の結膜下にミクロスフェア及び/又はヒドロゲルを配置することである。例えば、シリンジを使用して、強膜に穴を開けることなく結膜に突き刺すことができ、ヒドロゲル及び/又はミクロスフェア及び/又はヒドロゲル前駆体を注入して、デポーを形成する。これらの構成成分の1以上を、分解性材料として形成することができる。別の選択肢は、そのような材料を眼の表面(例えば、角膜、又は局所ではあるが角膜を避けた部位)に局所的に形成することである。次いで、これらの材料中の治療薬は、時間とともに放出されて、治療が達成される。明らかなことであるが、本明細書中に記載される様々な実施態様は、このようにして投与することができる。
【0025】
そのような材料を用いて、任意に結膜下部位において、マイクロデポーを形成することができる。例えば、5〜400μlの容積を形成することができる(例えば、約5〜約30μl又は約20〜約100μlなど、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0026】
(ヒドロゲル前駆体)
ヒドロゲルは前駆体から製造され得る。該前駆体はヒドロゲルではないが、互いに共有結合架橋してヒドロゲルを形成し、それによってヒドロゲルの一部をなす。架橋は、共有結合又はイオン結合によって、前駆体分子セグメントの疎水性会合によって、又は前駆体分子セグメントの結晶化によって形成することができる。該前駆体は誘発され、反応して架橋ヒドロゲルを形成し得る。該前駆体は重合可能であり、毎回ではないが多くの場合、重合可能な前駆体である架橋剤を含む。したがって、重合可能な前駆体は、互いに反応して繰り返し単位から作製されたポリマーを形成する官能基を有する。前駆体はポリマーであり得る。
【0027】
したがって、幾つかの前駆体は、付加重合とも呼ばれる連鎖成長重合によって反応し、二重又は三重化学結合を組み込むモノマーの結合を含む。これらの不飽和モノマーは、余分な内部結合を有し、これは破壊することができ、他のモノマーと結合して、繰り返し鎖を形成する。モノマーは、他の基と反応してポリマーを形成する少なくとも1の基を有する重合可能な分子である。マクロモノマー(又はマクロマー)は、ポリマーであるか、又は多くの場合端部に、それらがモノマーとして機能することを可能にする少なくとも1の反応基を有するオリゴマーであり;各マクロモノマー分子は、該反応基の反応によってポリマーに付加される。したがって、2以上のモノマー又は他の官能基を有するマクロモノマーは、共有結合架橋を形成する傾向がある。付加重合は、例えば、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルの製造に関与する。付加重合の1種は、リビング重合である。
【0028】
したがって、幾つかの前駆体は、モノマーが縮合反応を介して結合する場合に起こる縮合重合によって反応する。典型的にこれらの反応は、アルコール、アミン又はカルボン酸(又は他のカルボキシル誘導体)官能基を組み込んでいる分子を反応させることによって達成することができる。アミンがカルボン酸と反応すると、水の放出を伴い、アミド又はペプチド結合が形成される。幾つかの縮合反応は、例えば、米国特許第6,958,212号(これは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)にあるように、求核アシル置換に付随する。
【0029】
幾つかの前駆体は、連鎖成長機構によって反応する。連鎖成長ポリマーは、反応中心を有するモノマー又はマクロモノマーの反応によって形成されたポリマーと定義される。反応中心は、該化学種が関与する反応のイニシエータである化合物内の特定の場所である。連鎖成長ポリマー化学において、これは鎖成長の成長の点でもある。反応中心は通常、性質的にラジカル、アニオン又はカチオンであるが、他の形態を取ることもできる。連鎖成長系は、フリーラジカル重合を含み、これは開始、成長及び停止のプロセスを含む。開始とは、ラジカル開始剤、例えば、有機過酸化物分子から生成されるような成長に必要なフリーラジカルの生成である。ラジカルが更なる成長を防止するように反応すると、停止が起こる。停止の最も一般的な方法は、2つのラジカル種を互いに反応させて単一分子を形成するカップリングによるものである。
【0030】
幾つかの前駆体は、段階成長機構によって反応し、モノマーの官能基間の段階反応によって形成されたポリマーである。大部分の段階成長ポリマーも、縮合ポリマーに分類されるが、全ての段階成長ポリマーは、縮合体を放出しない。
モノマーは、ポリマー又は小分子であり得る。ポリマーは、多くの小分子(モノマー)が規則的パターンで結合することによって形成された高分子量分子である。オリゴマーは、約20未満のモノマーの繰り返し単位を有するポリマーである。一般に小分子とは、約2000ダルトン未満の分子を指す。
【0031】
したがって、前駆体は、アクリル酸又はビニルカプロラクタムなどの小分子でなければならず、後者の分子は、アクリラートキャップされたポリエチレングリコール(PEG-ジアクリラート)などの重合可能な基を含むか、又はエチレン系不飽和基、例えば、Dunnらの米国特許第4,938,763号、Cohnらの米国特許第5,100,992号及び第4,826,945号、又はDeLucaらの米国特許第4,741,872号及び第5,160,745号(これらのそれぞれは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載のものを含む他の分子を含む。
【0032】
共有結合架橋したヒドロゲルを形成するために、前駆体を一斉に架橋しなければならない。一般にポリマー前駆体は、2以上の位置で他のポリマー前駆体に結合するポリマーを形成し、各位置は同じであるか又は異なったポリマーに結合している。各反応基は、異なる成長ポリマー鎖の形成に関与することができるので、少なくとも2の反応基を有する前駆体は、架橋剤として機能することができる。反応中心を有さない官能基の場合、他の中で、架橋は、前駆体上に3以上の官能基を必要とする。例えば、多くの求電子-求核反応は、求電子性及び求核性官能基を消費するので、そのため前駆体に第3の官能基が架橋形成のために必要とされる。したがって、そのような前駆体は、3以上の官能基を有することができ、かつ2以上の官能基を有する前駆体によって架橋され得る。架橋分子は、イオン結合若しくは共有結合、物理的力又は他の引力を介して架橋され得る。しかしながら、共有結合架橋は典型的に、反応物が作り出す構造体の安定性及び予測性を提供する。
【0033】
幾つかの実施態様において、各前駆体は多官能性であり、これは、一前駆体上の求核性官能基が、他の前駆体上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成するように、2以上の求電子性又は求核性官能基を含むことを意味する。少なくとも1の前駆体は、2より多くの官能基を含み、求電子-求核反応の結果、該前駆体は結合して、架橋ポリマー生成物を形成する。
【0034】
前駆体は、生物学的に不活性でかつ親水性のタンパク質、例えば、コアを有する。分枝ポリマーの場合、コアとは、該コアから延びた腕に結合した分子の近接部を指し、該腕は多くの場合、分枝の末端に官能基を有する。親水性の前駆体又は前駆体部分は、好ましくは、少なくとも1g/100mLの水性溶液への溶解度を有する。親水性部は、例えば、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド(PPO)、コ-ポリエチレンオキシドブロック若しくはランダムコポリマー、及びポリビニルアルコール(PVA)などのポリアルキレンオキシド、ポリ(ビニルピロリジノン)(PVP)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、又はタンパク質であってよい。前駆体は、ポリアルキレングリコール部分を有してもよく、ポリマーの少なくとも約80重量%又は90重量%で、ポリエチレンオキシドの繰り返しを含むポリエチレングリコールベースのものであってもよい。ポリエーテル、及びより具体的にはポリ(オキシアルキレン)又はポリ(エチレングリコール)又はポリエチレングリコールは、一般に親水性である。
【0035】
また前駆体は巨大分子(又はマクロマー)であってよく、数千〜何百万の範囲の分子量を有する分子である。しかしながら、幾つかの実施態様において、少なくとも1の前駆体は、約1000Da以下の小分子である。巨大分子は、約1000Da以下の小分子との組み合わせにおいて反応する場合、好ましくは、分子量は小分子よりも、少なくとも5〜50倍大きく、好ましくは、約60,000Daより小さい(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。より好ましい範囲は、架橋剤よりも分子量が約7〜約30倍大きい巨大分子であり、最も好ましい範囲は、約10〜20倍分子量が異なる。更に、7,000〜40,000の分子量、又は10,000〜20,000の分子量のように、5,000〜50,000の分子量の巨大分子が有用である。
【0036】
特定のマクロマー前駆体は、Hubbellらの米国特許第5,410,016号(これは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載の架橋性、生分解性、水溶性マクロマーである。これらのマクロマーは、少なくとも1の分解可能領域で隔てられた少なくとも2の重合可能な基を有することによって特徴付けられる。
【0037】
合成前駆体を使用してもよい。合成とは、天然には見られない又はヒトには通常見られない分子を指す。幾つかの合成ポリマーは、天然に存在するアミノ酸を含まないか、又はアミノ酸配列を含まない。幾つかの合成分子は、天然に見られない又はヒトの体には通常見られないポリペプチド、例えば、ジ-、トリ-若しくはテトラ-リジンである。幾つかの合成分子は、アミノ酸残基を有するが、近接する1、2又は3つを有するだけであり、該アミノ酸又はそれらのクラスターは、非天然の高分子又は基によって隔てられている。したがって、多糖又はその誘導体は合成的ではない。
【0038】
前駆体は、得られるヒドロゲルが必要量の水、例えば、少なくとも約20%の水を保持するという条件で、疎水性部を用いて製造されてもよい。幾つかの場合において、それにもかかわらず、該前駆体は親水性部も有すので、水に溶解する。他の場合において、該前駆体は、水中で分散をなす(懸濁液)が、それにもかかわらず、反応可能であり、架橋材料を形成する。幾つかの疎水性部は、複数のアルキル、ポリプロピレン、アルキル鎖又は他の基を含み得る。疎水性部を有する幾つかの前駆体は、PLURONIC F68、JEFFAMINE又はTECTRONICの商標名で販売されている。疎水性部とは、水性連続相において、マクロマー又はコポリマーを凝集させてミセルを形成するのに、十分に疎水性なものであるか、又は自身によって試験される場合に、pH約7〜約7.5、温度約30〜約50℃の水の水性溶液内で、そこから沈殿するか、又はそうでなければ相を変化させるのに十分に疎水性なものである。
【0039】
前駆体は、例えば、2〜100の腕(arm)を有することができ、各腕は、幾つかの前駆体がデンドリマー又は他の高度に分枝した材料であってもよいことを踏まえれば、末端を有する。ヒドロゲル前駆体の腕とは、架橋可能な官能基をポリマーコアと連結する直鎖の化学基を指す。幾つかの実施態様は、3〜300の腕を有する(例えば、4〜16本、8〜100又は少なくとも6本の腕など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0040】
したがって、ヒドロゲルは、例えば、官能基の第1の組を有する多腕型(multi-armed)前駆体、及び官能基の第2の組を有する低分子量前駆体から製造され得る。例えば、6の腕又は8の腕の前駆体は、親水性の腕、例えば、腕の分子量が約1,000〜約40,000の第一級アミンを末端に有するポリエチレングリコールを有することができる(明確に記載された値間の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。そのような前駆体は、比較的小さな前駆体、例えば、少なくとも約3の官能基又は約3〜約16の官能基を有する分子量約100〜約5000、又は800、1000、2000若しくは5000以下の分子と混合され得る(これらの明確な値間の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。そのような小分子は、ポリマー又は非ポリマー、及び天然物又は合成物であってよい。
【0041】
デンドリマーではない前駆体を使用してもよい。樹枝状分子は、高度に分枝した放射対称性のポリマーであり、腕が多数の腕で配置されており、かつサブアーム(subarm)が中心コアから放射状に伸びている。デンドリマーは、対称性と多分散性との両方の評価に基づいた、それらの構造的完全性の程度によって特徴付けられ、合成のために特定の化学プロセスが要求される。したがって、当業者は、デンドリマー前駆体と非デンドリマー前駆体とを容易に識別できる。デンドリマーは典型的に、その構成ポリマーの所与の環境への溶解度に依存した形状を有し、実質的に溶媒又はその周囲の溶質に従い(例えば、温度、pH又はイオン量の変化)変化することができる。
【0042】
前駆体は、例えば、特許出願公開番号US20040086479、US20040131582、WO07005249、WO07001926、WO06031358又はそのU.S.対応物にあるようにデンドリマーであってよく;デンドリマーはまた、例えば、米国特許公開番号US20040131582、US20040086479並びにPCT出願番号WO06031388及びWO06031388にあるように多官能性前駆体として有用であり得る(これらUS及びPCT出願のそれぞれは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。デンドリマーは、高い容積に対する表面積の比を所有することを強く命じられ、潜在的な機能化のための多数の末端基を提示する。実施態様は、デンドリマーではない多官能性前駆体を含む。
【0043】
幾つかの実施態様は、基本的に5残基以下のオリゴペプチド配列(例えば、少なくとも1のアミン、チオール、カルボキシル又はヒドロキシル側鎖を含むアミノ酸)からなる前駆体を含む。残基とは、天然に存在する又はその誘導体化されたアミノ酸である。そのようなオリゴペプチドの骨格は、天然物又は合成物であってよい。幾つかの実施態様において、2以上のアミノ酸のペプチドを合成骨格と組み合わせて前駆体を製造し;そのような前駆体の特定の実施態様は、約100〜約10,000、又は約300〜約500の範囲の分子量を有する(これらの明確に記載された範囲間の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0044】
前駆体は、導入部位に存在する酵素によって切断可能なアミノ酸配列を含まないように製造することができ、メタロプロテイナーゼ及び/又はコラゲナーゼによって付加しやすい配列がないことを含む。更に前駆体は、アミノ酸を全く含まないか、又は約50、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1より多くのアミノ酸のアミノ酸配列を含まないように製造することができる。前駆体は非タンパク質であってよく、これは、それらが天然のタンパク質ではなく、天然のタンパク質を切断することによって製造することはできず、かつタンパク質に合成材料を付加することによって製造することはできないということを意味する。前駆体は、非コラーゲン、非フィブリン、非フィブリノーゲン及び非アルブミンであってよく、これは、それらがこれらのタンパク質の1つではなく、かつこれらのタンパク質の1つの化学誘導体ではないことを意味する。非タンパク質前駆体の使用、及びアミノ酸配列の限定的使用は、免疫反応を回避し、望ましくない細胞認識を回避し、及び天然源由来のタンパク質の使用に付随する危険を回避するのに役立てることができる。また前駆体は、非糖類(糖類を含まない)又は基本的に糖類(前駆体分子量の約5% w/wを越える糖類を含まない)とすることができる。したがって、前駆体は例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン又はゲランを排除し得る。前駆体はまた、非タンパク質及び非糖類の両方であり得る。
【0045】
ペプチドを前駆体として使用することができる。一般に、より大きな配列(例えば、タンパク質)が使用され得るが、約10残基未満のペプチドが好ましい。これらの明確な範囲内の全ての範囲及び値には、例えば、1〜10、2〜9、3〜10、1、2、3、4、5、6又は7が含まれることが当業者には直ちに理解されるであろう。幾つかのアミノ酸は、求核基(例えば、第一級アミン又はチオール)、又は求核基若しくは求電子基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)を組み込むために必要に応じて誘導体化され得る基を有する。合成によって生成されたポリアミノ酸ポリマーは、それらが天然に見られず、かつ天然に存在する生体分子と同一でないように操作される場合に、合成的であるとされる。
【0046】
幾つかのヒドロゲルは、ポリエチレングリコール含有前駆体によって製造される。ポリエチレングリコール(PEG、高分子量で存在する場合にポリエチレンオキシドとも呼ばれる)とは、繰り返し基(CH2CH2O)nを有し、nが少なくとも3であるポリマーを指す。したがって、ポリエチレングリコールを有するポリマー前駆体は、直線で互いに結合した少なくとも3のこれら繰り返し基を有する。ポリマー又は腕のポリエチレングリコール含有量は、たとえそれらが他の基によって隔たられるとしても、該ポリマー又は腕上の全てのポリエチレングリコール基を加算することによって算出される。したがって、少なくとも1000MWのポリエチレングリコールを有する腕は、合計して少なくとも1000MWとなるのに十分なCH2CH2O基を有する。これら分野で慣例的な技術用語であるが、ポリエチレングリコールポリマーは、必ずしも末端にヒドロキシル基を有する分子を指すわけではない。
【0047】
(開始系)
幾つかの前駆体は、開始剤を使用して反応する。開始剤基は、連鎖成長による重合反応を開始することが可能な化学基(例えば、フリーラジカル)である。例えば、それは、別個の構成成分として、又は前駆体上の懸垂基(pendent group)として存在し得る。フリーラジカル開始剤基には、熱開始剤、光学活性化可能な開始剤(photoactivatable initiator)、及び酸化-還元(レドックス)系が含まれる。長波長のUV及び可視光に光学活性化可能な開始剤を挙げると、例えば、エチルエオシン基、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン基、他のアセトフェノン誘導体、チオキサントン基、ベンゾフェノン基及びカンファーキノン基がある。熱反応性開始剤の例を挙げると、4,4'アゾビス(4-シアノペンタン酸)基、及び過酸化ベンゾイル基の類似体である。幾つかの市販されている低温ラジカル開始剤、例えば、Wako Chemicals USA社(リッチモンド、Va.)から入手可能なV-044などを使用し、体温でラジカル架橋反応を開始して、前述のモノマーのよるヒドロゲルを形成することができる。
【0048】
金属イオンを、レドックス開始系における酸化剤又は還元剤として使用することができる。例えば、重合を開始するために、又は重合系の一部として、第一鉄イオンを過酸化物又はヒドロペルオキシドと組合せて使用することができる。この場合、第一鉄イオンは還元剤として機能することになる。あるいは、金属イオンは、酸化剤として機能し得る。例えば、セリウムイオン(セリウムの4+価の状態)は、カルボン酸及びウレタンを含む様々な有機基と相互作用し、電子を金属イオンに移動させ、有機基の背後に開始ラジカルを残す。そのような系において、該金属イオンは酸化剤として作用する。どちらの役割にも潜在的に適した金属イオンは、遷移金属イオン、ランタニド及びアクチニドのいずれかであり、これらは、少なくとも2つの移行しやすい酸化状態を有する。特に有用な金属イオンは、ただ1の電荷の差だけで隔てられた、少なくとも2つの状態を有する。これらの中で、最も一般に使用されるのは、第二鉄/第一鉄;第二銅/第一銅;第二セリウム/第一セリウム;第二コバルト/第一コバルト;バナジン酸V対FV;過マンガン酸;及びマンガン(III)/マンガン(II)である。過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クミルペルオキシドを含む、例えば、過酸化物及びヒドロペルオキシドなどの過酸素含有化合物を使用することができる。
【0049】
開始系の例は、一溶液中の過酸素化合物と、別の溶液中の遷移金属などの反応性イオンとの組合せである。この場合において、2つの相補的な反応性官能基を含有する部位が、適用部位で相互作用する場合に、外部の重合開始剤は不要であり、かつ重合は自発的に、かつ外部エネルギーの適用又は外部エネルギー供給源の使用を伴うことなく進行する。
【0050】
(官能基)
前駆体は、患者の外部又は原位置のいずれかで、互いに反応して材料を形成する官能基を有する。一般に官能基は、重合若しくは求電子剤-求核剤反応で互いに反応するための重合可能な基を有するか、又は他の重合反応に関与するように構成される。重合反応の様々な態様が、本明細書中の前駆体の節に記載されている。
【0051】
したがって、幾つかの実施態様において、前駆体は、重合分野で使用されような光開始又はレドックス系によって活性化される重合可能な基、又は例えば、カルボジイミダゾール、塩化スルホニル、クロロカルボナート、n-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル若しくはスルファスクシンイミジル(sulfasuccinimidyl)エステルである求電子性官能基、又は米国特許第5,410,016号若しくは第6,149,931号(これらのそれぞれは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されたものを有する。該求核性官能基は、例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル及びチオールであり得る。求電子剤の別の部類は、例えば、米国特許第6,958,212号に記載されるようなアシルであり、該文献には特に、ポリマーの反応についてマイケル付加のスキームが記載されている。
【0052】
アルコール又はカルボン酸などの特定の官能基は通常、生理的条件下(例えば、pH7.2〜11.0、37℃)では、アミンなどの他の官能基と反応しない。しかしながら、そのような官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの活性化基を使用することによって、より反応性を高めることができる。特定の活性化基を挙げると、カルボニルジイミダゾール、塩化スルホニル、ハロゲン化アリール、スルホスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステルなどがある。N-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)基は、タンパク質、又はアミノ末端ポリエチレングリコールなどのアミン含有ポリマーの架橋に有用な基である。NHS-アミン反応の利点は、反応速度論的に優位な点であるが、そのゲル化速度は、pH又は濃度によって調節され得る。NHS-アミンの架橋反応は、副生成物としてN-ヒドロキシスクシンイミドの形成をもたらす。N-ヒドロキシスクシンイミドのスルホン化又はエトキシ化の形態は、比較的増大された水への溶解度を有し、したがって、これらは体内からの迅速に排除される。NHS-アミンの架橋反応は水性溶液中、かつ緩衝液、例えば、リン酸緩衝液(pH5.0〜7.5)、トリエタノールアミン緩衝液(pH7.5〜9.0)又はホウ酸緩衝液(pH9.0〜12)又は炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.0〜10.0)の存在下で行うことができる。NHSベースの架橋剤及び官能性ポリマーの水性溶液は、好ましくは、NHS基が水と反応するために、架橋反応の直前に作製される。これらの基の反応速度は、これらの溶液を低いpH(pH4〜7)で保つことによって遅らせることができる。
【0053】
幾つかの実施態様において、求核性及び求電子性の両方の前駆体が架橋反応に使用されない限りは、各前駆体は求核性官能基だけを、又は求電子性官能基だけを含む。したがって、例えば、架橋剤がアミンなどの求核性官能基を有する場合は、官能性ポリマーは、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの求電子性官能基を有し得る。一方、架橋剤がスクシンイミドなどの求電子性官能基を有する場合は、官能性ポリマーは、アミン又はチオールなどの求核性官能基を有し得る。このように、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、又はアミン末端の二官能性若しくは多官能性ポリ(エチレングリコール)などの官能性ポリマーを使用することができる。
【0054】
一実施態様は、3〜16の求核性官能基を各々もつ反応性前駆体種、及び2〜12個の求電子性官能基を各々もつ反応性前駆体種を有する(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0055】
官能基は、例えば、求核剤と反応可能な求電子剤、特定の求核剤と反応可能な基、例えば、第一級アミン、生体液中の材料とアミド結合を形成する基、カルボキシルとアミド結合を形成する基、活性化した酸官能基、又は同物の組み合わせとアミド結合を形成する基であり得る。官能基は、例えば、強求電子性官能基であってよく、これは、室温及び室圧で、pH9.0の水性溶液中で第一級アミンと共有結合を効果的に形成する求電子性官能基、及び/又はマイケル型反応によって反応する求電子性基を意味する。強求電子剤は、マイケル型反応に関与しない種のものであるか、又はマイケル型反応に関与する種のものであってもよい。
【0056】
マイケル型反応とは、共役不飽和系における求核剤の1,4付加反応を指す。該付加機構は、純粋に極性であり得るか、又はラジカル様中間体状態によって進行し;ルイス酸又は適切に設計された水素結合種が触媒として作用できる。用語共役とは、炭素-炭素、炭素-ヘテロ原子、又はヘテロ原子-ヘテロ原子の多重結合と単結合との交互の連なり、又は合成ポリマー若しくはタンパク質などの巨大分子への官能基の結合も指す。マイケル型反応は、米国特許第6,958,212号に詳細に記載されている(これは、本明細書中に明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
マイケル型反応に関与しない強求電子剤の例は、スクシンイミド、スクシンイミジルエステル又はNHS-エステルである。マイケル型求電子剤の例は、アクリラート、メタクリラート、メチルメタクリラート及び他の不飽和の重合可能な基である。
【0057】
(ヒドロゲル及びヒドロゲル形成)
一般に前駆体は組み合わされて、共有結合架橋性ヒドロゲルを製造する。該ヒドロゲルは、適切な期間放出される治療薬又は作用薬を含み得る。ヒドロゲルは、事前に又は原位置で製造することができる。
原位置で製造される場合、一般に架橋反応は、生理的条件下、水性溶液中で起こる。好ましくは、該架橋反応は重合熱を発しないか、又は重合の開始若しくは誘発に外部のエネルギー供給源を必要としない。例えば、光化学的開始は一般に、眼への損害を回避するために避けられるべきものである。注入される材料の場合、その粘性は、該材料が小口径のカテーテル又は針を通って導入されるように制御され得る。ヒドロゲルが事前に製造される場合、ポリマーは、水性及び/又は有機性溶媒中で作製がなされる。
【0058】
一般にヒドロゲルは、ヒドロゲルが物理的制限の非存在下で生理的溶液に24時間曝された場合に、形成時のヒドロゲルの重量と比較して、約50%を超えて重量が増加することから測定可能なように、高膨潤性である。膨潤は重量又は容積により、測定する又は表すことができる。幾つかの実施態様は、重量又は容積が、約1000%を超えて、約500%を超えて、又は約100%を超えて膨潤する(例えば、約200%を超える、又は約300%〜約1000%など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。したがって、幾つかの実施態様は、重量又は容積が、約100%〜約2000%、約200%〜約1500%又は約300%〜約1100%膨潤するヒドロゲルを含む(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0059】
高膨潤性への1つのアプローチは、架橋の数を制御することである。別の実施態様は、ヒドロゲル前駆体に、前駆体と共有結合架橋しない高分子量水溶性の合成又は天然ポリマーを混合して、その中で他の材料が分散された架橋性ヒドロゲルを達成することである。そのような材料の例は、メチルセルロース、ヒアルロン酸、及び例えば、分子量が100,000MWを超える(例えば、約100,000〜約10,000,000)高分子量PEGである(例えば、約250,000〜約1,000,000など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。これらの追加された材料は、高水溶性の大きなポリマーがネットワーク内部に絡まって留まり、該ヒドロゲル構造内部の浸透圧の増加を引き起こし、これにより該ヒドロゲルをより膨潤させるように、架橋性ヒドロゲルの膨潤を大きく増加させることができる。
【0060】
事前に形成された脱水ヒドロゲルにおいて、ある程度の分子配向は、該材料を引き伸ばしてそれを凝固させ、分子配向を固定することによって与えることができる。これは、該材料を、該材料の結晶化可能領域の融点を上回る温度に加熱しながら引き抜き、次いで該結晶化可能領域を結晶化させることによって達成することができる。あるいは、乾燥ヒドロゲルのガラス転移温度を使用して、分子配向を固定することができる。更に別の代替法は、完全な脱水(又は乾燥)より前にゲルを引き抜き、次いで該材料を張力下で乾燥させることである。分子配向は、水和媒体への導入時に、異方性の膨潤の機構を与える。しかしながら、半径方向にだけ膨潤し、長さ方向には増大も減少もないロッドを形成することができる。半径方向の膨潤は、涙点プラグにおいて望ましい場合があるが、長さ方向の増大又は収縮は、外科医によって配置される場合に、デバイスの保持に関する問題となることがある。長さの変化は、涙点プラグを外に追い出させる又はそれを回収するを困難とさせる。したがって、半径方向膨潤性涙点プラグは、長軸方向の収縮及び/又は膨潤のないものにさせ得る。用語等方性とは、制約がない場合に全方向に一様に膨潤することを指す。用語異方性とは、他とは対照的に一方向に優先的に膨潤することを指し、主に半径方向に膨潤して小管及び/又は涙点に適合するが、長軸方向にはあまり膨張又は縮小しない円柱の場合、したがって外科医に配置された位置を維持する。最小限の長さの増大と、大きな半径の増大との組み合わせは、治療過程の間のプラグの保持の改善を提供する。
【0061】
膨潤を増大させる別の実施態様は、架橋時の溶媒和は低度であるが、その後に更に溶媒和し、実質的に増大する溶媒和物の半径を有する;言い換えると、前駆体は架橋後に溶液中に広がるが、架橋時には比較的収束されている前駆体を選択することである。pH、温度、固体濃度及び溶媒和環境の変化は、そのような変化をもたらし得る。
【0062】
別途明記しない限り、ヒドロゲルの膨潤は、架橋が有効に完了した場合のその形成時間と、インビトロにて制約を受けない状態で水性溶液中に置かれた後の24時間の時間(この時点で、平衡膨潤状態に達したと十分に考えられる)との間のその容積(又は重量)の変化に関連する。ほとんどの実施態様について、架橋は約15分以内で有効に完了されて、初期重量は通常、初期形成時の重量として形成後約15分で記すことができるようにする。したがって、次の式を使用する:膨潤%=[(24時間時の重量−初期形成時の重量)/初期形成時の重量]*100。ヒドロゲルの重量には、ヒドロゲル中の溶液の重量が含まれる。制約を受ける場所で形成されたヒドロゲルは、それにもかかわらず、膨潤の量を定義するのは、制約を受けない状態での膨張であるので、高膨潤性ヒドロゲルと考えられる場合がある。例えば、体内で作り出される膨潤可能なヒドロゲルは、その周囲によって膨潤に制約がかかり得るが、それでも、制約を受けない及び/又は制約に反して力が働く場合、その膨潤の測定からも明らかなように、高度に膨潤可能なヒドロゲルであり得る。
【0063】
一般に反応速度論は、外部開始剤又は連鎖移動剤が必要とされる場合(この場合において、開始剤を誘発すること又は移動剤を操作することが、制御工程となり得る)を除き、特定の官能基を考慮して制御される。幾つかの実施態様において、前駆体の分子量を利用して、反応時間に影響を与える。低分子量の前駆体は、それらの高濃度の反応基のため反応を加速させる傾向があり、そのため幾つかの実施態様は、約1000又は約2000ダルトン未満の分子量の前駆体を少なくとも1つ有する(例えば、100〜約900ダルトン又は500〜約1800ダルトンなど、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。好ましくは、ゲル化をもたらす架橋反応は、約2未満〜約10、又は〜約30分以内で起こる(例えば、少なくとも120秒、又は180〜600秒など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。ゲル化時間は、前駆体を平面に適用すること、及び該平面を約60度の角度(すなわち、垂直に近い急角度)にした時に、実質的に該表面を流れ落ちなくなった時間を計ることによって測定される。原位置でのヒドロゲル形成の場合、約2分未満、又は約1分、又は約30秒のゲル化時間が有用である(例えば、約5〜約90秒又は約10〜約40秒など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0064】
得られる生体適合性架橋ポリマーの架橋密度は、架橋剤及び官能性ポリマーの総分子量、並びに1分子あたり有効な官能基の数によって制御される。500などの架橋間の低分子量は、10,000などの高分子量と比べ、非常に高い架橋密度を与えるであろう。架橋密度はまた、架橋剤及び官能性ポリマー溶液の全体の固体パーセントによって制御され得る。該固体パーセントが増加するほど、加水分解による不活性化の前に、求電子性官能基が求核性官能基と組み合わされる確立が増大する。架橋密度を制御する更に別の方法は、求核性官能基対求電子性官能基の化学量論を調節することによる。1対1の比率は、最も高い架橋密度をもたらす。架橋間の距離が長い前駆体は一般に、より柔らかく、より柔軟で、かつより弾性がある。したがって、ポリエチレングリコールなどの水溶性部分の延長は、弾性を強化して所望の物理的性質をもたらす傾向がある。このように、特定の実施態様は、3,000〜100,000又は例えば、10,000〜35,000の範囲の分子量の水溶性部分を有する前駆体に関する。
【0065】
ヒドロゲルの固体パーセントは、その機械的特性及び生体適合性に影響を与え、かつ競合する要件間のバランスを反映し得る。比較的低い固体含有量、例えば、約2.5%〜約25%(その間の全ての範囲及び値、例えば、約2.5%〜約10%、約5%〜約15%、又は約15%未満を含む)が有用である。
驚くべきことに、疎水性領域を有するヒドロゲルを十分な濃度でロードすることが、ヒドロゲルの膨潤性を低下させるのに効果的であることが見出された。図12はこの効果を示している。ヒドロゲルへのシクロスポリンAのロードの増加は、全体の膨潤性を低下させた。
【0066】
(ヒドロゲルの製造方法)
薬剤を組み込んだヒドロゲルの製造方法は、有機溶媒又は水性溶液中でヒドロゲルを作製することを含み、該薬剤はヒドロゲルの形成時に存在しているか、又はその形成後にヒドロゲルに添加される。ヒドロゲルは、事前に製造され(事前形成デバイス(preformed device))、かつ少なくとも一部が脱水若しくは乾燥されていてもよく、又は形成場所の溶液中にて原位置で製造されてもよい。
【0067】
ヒドロゲル製造の一実施態様は、治療薬存在下の有機溶媒における事前形成デバイスを製造することである。第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有する第2のヒドロゲル前駆体とともに、有機溶媒に混和性の治療薬の存在下で有機溶媒に溶解する。該溶液をモールドに導入し、前駆体が第1の官能基と第2の官能基との間での共有結合の形成によって互いに架橋するまで放置する。ヒドロゲルを全部又は一部乾燥させて、脱水又は乾燥ヒドロゲル(キセロゲル)を形成する。次にヒドロゲルを取り出し、任意に切断するか、又は別の形状若しくはサイズに切り取る。この実施態様は、例えば、非水溶性作用薬、又は有機相に耐性をもつカプセル化作用薬を伴うヒドロゲルのロードに使用することができる。
【0068】
治療薬存在下の有機溶媒における事前形成デバイスの製造のための実施態様は、各腕の末端に求電子性官能基を有する分枝ポリエチレングリコールを、求核性前駆体とともに、治療薬を含有するメタノールに溶解することである。該前駆体はヒドロゲルに形成され、乾燥され、かつ所望であれば成形される。
【0069】
ヒドロゲルを製造するための別の実施態様は、有機溶媒中で事前形成デバイスを作製し、ヒドロゲルが形成された後、該ヒドロゲルに治療薬をロードすることである。第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有する第2のヒドロゲル前駆体とともに有機溶媒に溶解する。該溶液をモールドに導入し、前駆体が第1の官能基と第2の官能基との間での共有結合の形成によって互いに架橋するまで放置する。ヒドロゲルを全部又は一部乾燥させて、脱水又は乾燥ヒドロゲル(キセロゲル)を形成する。該架橋ヒドロゲルを膨潤させる有機溶媒(架橋中に使用されるものと同じであるか又は異なる)を加える。この溶媒は、溶解した作用薬を高濃度で含有する。ヒドロゲルは、有機性薬剤溶液により膨潤させられ、幾らかの薬剤をヒドロゲルマトリックス中に浸透させる。ゲルを取り出し、上記と同様に乾燥させるか、又は非溶媒、例えば、ヘキサン中に置く。該非溶媒は、有機溶媒を該ゲルから取り除き、作用薬を該ゲルマトリックス中に沈殿させ、作用薬がロードされたプラグを与える。この実施態様は、例えば、特定の架橋官能基に不適合性の作用薬(例えば、前駆体のアミン官能基が架橋中に反応されることを意図する場合の第一級アミンを有する作用薬)のロードに使用することができる。この薬剤ロード工程と架橋工程との分離は、治療薬と架橋反応との間の化学的不適合性に関する問題を排除する。
【0070】
したがって、ヒドロゲルを製造するための実施態様は、各腕の末端に求電子性官能基を有する分枝ポリエチレングリコールを、求核性前駆体とともに溶解することである。前駆体は混合されるか、又はそうでなければ、活性化されて、モールド中で架橋ヒドロゲルを形成し、次に溶媒が乾燥される。該事前形成デバイスを、架橋ヒドロゲルを膨潤させる溶媒に加える。該溶媒は、溶解した薬剤を高濃度で含有する。プラグは溶媒剤溶液により膨潤させられ、幾らかの薬剤をヒドロゲルマトリックス中に浸透させる。ゲルを取り出し、上記と同様に乾燥させるか、又はヘキサンなどの沈殿剤に置く。該沈殿剤が、ゲルネットワーク及び治療薬に僅かに不適合性の溶媒と適合する場合は、それは溶媒をゲルから移動させ、薬剤をゲルマトリックス中に沈殿させ、作用薬がロードされたプラグを形成する。
【0071】
ヒドロゲルを製造する別の実施態様は、治療薬存在下の水性溶媒中で事前形成デバイスを作製することである。第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有するヒドロゲル前駆体とともに、溶媒の治療薬存在下の水性溶液に溶解する。該溶液をモールドに導入し、前駆体が第1の官能基と第2の官能基との間での共有結合の形成によって互いに架橋するまで放置する。ヒドロゲルを全部又は一部乾燥させて、脱水又は乾燥ヒドロゲルを形成する。次にヒドロゲルを取り出し、任意に切断するか、又は別の形状若しくはサイズに切り取る。この実施態様は、例えば、非水溶性作用薬、又は水相に耐性をもつカプセル化作用薬を伴うヒドロゲルのロードに使用することができる。該作用薬は、水性溶媒、例えば、溶液又は懸濁液に分散されてよい。懸濁は例えば、作用薬を含む粒子、又はカプセル化された作用薬の懸濁であってよい。この実施態様は、例えば、他のポリマー系においてすでにカプセル化された作用薬を、ヒドロゲルにロードするのに有用である。また水性ベースの製造を使用して、幾つかの有機溶媒で起こり得るカプセル化作用薬の抽出を回避することができる。
【0072】
したがって、ヒドロゲルを製造するための実施態様は、求電子的に活性化された末端を有する分枝ポリエチレングリコールを、求核性前駆体とともに、作用薬を含有する水、例えば、薬剤の懸濁液に溶解することである。ヒドロゲルはモールド中で形成され、乾燥される。該乾燥プラグをモールドから取り出し、任意に更なる処理、例えば、サイズ又は形状に関する処理を行う。
【0073】
治療薬存在下の原位置でヒドロゲルを製造するための実施態様は、アプリケーターによって涙点及び/又は小管に投与され得る水性溶液中で前駆体を組み合わせ、その後にヒドロゲルを形成することである。前駆体は投与の前、その間、又はその後に活性化剤と混合することができる。該ヒドロゲルは、治療薬をそこに例えば、溶液、懸濁液、粒子、ミセル又はカプセル化として分散させた状態で配置され得る。一実施態様において、架橋結合は作用薬を捕捉している。別の実施態様において、架橋結合は、作用薬を沈殿させるか、又は溶液から懸濁液に移動させる。
【0074】
したがって、一実施態様は、第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有する第2のヒドロゲル前駆体と、溶媒中の治療薬存在下の水性溶媒において組み合わせることに関する。一実施態様において、前駆体は別個に溶解され、効果的な架橋を提供する活性化剤の存在下で組み合わされる。あるいは、該前駆体を単に混合するだけで、架橋が誘発される。したがって、一実施態様は、求核剤を含む低分子量前駆体を含有する低pH(4.0)希釈溶液に溶解した複数のスクシンイミジル末端を有する分枝ポリマーを提供することである。この溶液は、高pH溶液(8.8)と組み合わせることによって活性化され、架橋機構が開始される。作用薬は、希釈溶液中の懸濁液として事前にロードされる。該溶液を小管に適用するか、又は適切なカニューレ(例えば、27G)を有する小型シリンジ(例えば、1cc)に取り、小管に注入する。ゲルは原位置で形成される。
【0075】
架橋化学はまた、揮発性有機溶媒中で行うこともできる。したがって、一実施態様は、第1の型の官能基を有する第1のヒドロゲル前駆体を、第2の型の官能基を有する第2のヒドロゲル前駆体と、揮発性有機溶媒中、任意に溶媒中に治療薬の存在下で組み合わせることに関する。又は前駆体を、任意に作用薬が存在する揮発性有機溶媒と組み合わせて、ヒドロゲルを製造してもよい。前駆体は反応して、例えば、ロッド形状の涙点プラグなどのデバイスを形成する。揮発性有機溶媒とは、約100℃未満の沸点を有する溶媒を意味する。揮発性有機溶媒の例は、メタノール(65℃)、エタノール(78℃)、アセトニトリル(81℃)である。幾つかの実施態様において、治療薬は低水溶性である。この方法は、架橋ヒドロゲルにおける作用薬の即時の捕捉を有利に提供する。
幾つかの実施態様において、治療薬は、水性溶液の作製に先立って又は官能性ポリマーの無菌製造中に、前駆体と混合される。次いで、この混合物は前駆体と混合されて、生物学的に活性のある物質が捕捉された架橋性材料が生成される。
【0076】
(送達のための作用薬の相分離)
幾つかの実施態様において、治療薬又は作用薬は、前駆体が反応して架橋ポリマーヒドロゲルを生成する場合に、分離相に存在している。この相分離は、NHSエステルとアミン基との間の反応などの化学架橋反応における治療薬の関与を防止する。該分離相はまた、架橋材料又はゲルからの活性剤の放出動態を調節し、ここで「分離相」は、油(水中油エマルジョン)、生分解性ビヒクルなどであり得る。活性剤が存在し得る生分解性ビヒクルを挙げると、微小粒子、ミクロスフェア、マイクロビーズ、マイクロペレットなどのカプセル化ビヒクルがあり、ここで該活性剤は、生浸食性(bioerodable)又は生体吸収性(bioresorbable)ポリマー、例えば、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(トリメチレンカルボナート)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)-コ-ポリ(グリコール酸)、ポリ(オルトカルボナート)、ポリ(カプロラクトン)のポリマー及びコポリマーなど、シクロデキストリンのような包接及び捕捉分子、モレキュラーシーブなどに捕捉されている。ポリ(ラクトン)及びポリ(ヒドロキシ酸)のポリマー及びコポリマーから作製されたミクロスフェアは、有用な生分解性カプセル化ビヒクルである。
【0077】
本発明の特定の実施態様は、組成物及びヒドロゲルを使用して比較的低分子量の治療用化学種(therapeutic species)の放出を制御する方法を提供することによって達成される。まず治療薬を、1以上の比較的疎水性の速度修正剤(rate modifying agent)に分散又は溶解させて、混合物を形成する。該混合物は、粒子又は微小粒子中に形成することができ、次いで、制御された方式で水溶性治療薬を放出するために、生体吸収性ヒドロゲルマトリックス内に捕捉される。あるいは、該微小粒子は、ヒドロゲルの架橋間に原位置で形成されてもよい。薬剤は、涙点プラグへの組み込みに先立ち、放出制御の目的のための様々な技術を使用してカプセル化することができる。これらの放出制御系は、懸濁液、油剤、エマルジョン、リポソーム、ミセル、埋込錠及び微小粒子の形態であり得る。ポリマー放出制御系は、徐放を与えるために医薬品産業において一般に使用され、かなり多くの市販品が、生分解性ポリマーに基づいている。生分解性ポリマーの合成形態には、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリホサゼン(polyphosazene)、ポリアミノ酸、ポリアルキルシアノアクリル酸、ポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカルボナートなど)を含むことができ、ポリエステル(ポリ(ラクチド)(PLA)及びポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA))がより頻繁に使用される。
【0078】
微小粒子製造技術に関して、親水性薬剤は典型的に、内部水相に組み込まれる(多層乳化法を参照)か、又は固体として油相に分散され(分散法を参照)、それに対して親油性薬剤は一般に、有機/油相に溶解される(共溶媒法を参照)。溶媒キャストに関して、連続相が微小粒子形成に必要である以外は、薬剤は共溶媒法と同様に溶媒に組み込まれる。溶融押出又は圧縮技術に関して、薬剤は、溶媒非存在におけるその初期状態で組み込まれ得る。これらの組み込み技術の変形が存在し、多数の変量(例えば、薬剤ロード、溶解度、溶媒選択及び配合、ポリマー濃度、ポリマー種及び配合、賦形剤、目標放出期間、薬剤安定性)が、ポリマーマトリックスへの薬剤の組み込みに最良の選択肢の選定に役割を果たすように、調整することができる。
【0079】
一方法において、ヒドロゲルミクロスフェアは、重合可能相の第2の不混和相への分散によって重合可能なマクロマー又はモノマーから形成される。該重合可能相は、架橋を導く重合開始に必要な構成成分を少なくとも1つ含有し、かつ不混和性バルク相は相間移動剤とともに、架橋開始に必要な別の構成成分を含有する。水溶性治療薬を含有する事前形成微小粒子は、重合可能相に分散されるか、又は原位置で形成されてエマルジョンを形成することができる。エマルジョン及び不混和相の重合及び架橋は、重合可能相の適切にサイズ設定されたミクロスフェアへの分散後に、制御された方式で開始され、こうして、微小粒子をヒドロゲルミクロスフェアに捕捉する。可視化剤を、例えば、ミクロスフェア、微小粒子及び/又は微小滴中に含むことができる。
【0080】
発明の実施態様は、組成物及び治療用化合物を捕捉している複合ヒドロゲルベースマトリックス及びミクロスフェアの形成方法を含む。一実施態様において、生物活性剤は、疎水性の性質を有する微小粒子(疎水性微小領域とも呼ばれる)中に捕捉され、捕捉された作用薬の流出を遅延させる。幾つかの場合において、該複合材料は2つの相分散を有し、どちらの相も吸収性であるが、混和しない。例えば、連続相は、親水性ネットワーク(例えば、架橋することができる又はできないヒドロゲル)であり得るが、一方分散相は、疎水性(例えば、油、脂肪、脂肪酸、ワックス、フルオロカーボン、又は概して本明細書中で「油」若しくは「疎水性」相と呼ばれる合成若しくは天然の水不混和相)である。
【0081】
油相は薬剤を捕捉し、該薬剤をヒドロゲルへゆっくりと分配することによって、放出に障壁を与える。ヒドロゲル相は、該油をリパーゼなどの酵素による消化から、及び天然に存在する脂質及び界面活性物質による溶解から保護する。後者は、例えば、疎水性、分子量、立体構造、拡散抵抗などから、ヒドロゲルへの侵入を制限しているだけだと考えられる。ヒドロゲルマトリックスへの限定的な溶解度を有する疎水性薬剤の場合において、薬剤の粒子形成もまた、放出速度修正剤として機能する。
【0082】
疎水性微小領域は、それ自身で分解するか又はインビボで投与される場合に迅速に排除され、インビボで捕捉された作用薬を含有する微小滴又は微小粒子を直接使用した持続性放出を達成することを困難にさせる。しかしながら、本発明によると、疎水性微小領域は、ゲルマトリックス中に捕捉される。該ゲルマトリックスは、疎水性微小領域を迅速なクリアランスから保護するが、微小滴又は微小粒子の含有物をゆっくりと放出する能力を損なうことはない。可視化剤を、例えば、ゲルマトリックス又は微小領域中に含むことができる。
【0083】
一実施態様において、疎水性相と例えば、タンパク質、ペプチド又は他の水溶性化学種などの水溶性分子化合物の水性溶液とのマイクロエマルジョンが調製される。該エマルジョンは、「水中油」系(水が連続相である)とは対照的に、「油中水」型(連続相として油を用いる。)の系である。薬物送達の他の態様は、米国特許第6,632,457号;第6,379,373号;及び第6,514,534号に見出される(これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。更に、米国特許出願番号12/012,808(2008年2月6日出願)及び優先権証明書60/899,898(2007年2月6日提出)に記載の薬物送達スキームは、各々その全体が参照により本明細書中に組み込まれ、したがって、本明細書中のヒドロゲル及び涙点プラグ及び粒子を用いて使用することができる。
【0084】
また治療薬送達の制御された速度は、架橋ヒドロゲルネットワークへの治療薬の分解可能な共有結合によって、本明細書中に開示される系を用いて得ることができる。該共有結合性の性質は、数時間〜数週間又はそれ以上で、放出速度を調整し得るように制御することができる。様々な加水分解時間を有する多数の結合から製造された複合体を使用することによって、放出制御プロファイルは、より長時間に延長され得る。
【0085】
作用薬は放出制御のために、涙点プラグに組み込むのに先立ち様々な技術を使用してカプセル化することができる。これらの放出制御系は、懸濁液、油剤、エマルジョン、リポソーム、ミセル、埋込錠及び微小粒子の形態であり得る。ポリマー放出制御系は、徐放を与えるために医薬品産業において一般に使用され、かなり多くの市販品が、生分解性ポリマーに基づいている。生分解性ポリマーの合成形態には、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリホサゼン(polyphosazene)、ポリアミノ酸、ポリアルキルシアノアクリル酸、ポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカルボナートなど)を含むことができ、ポリエステル(ポリ(ラクチド)(PLA)及びポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA))がより頻繁に使用される。
【0086】
ポリ(ラクチド)(PLA)及びそのポリグリコール酸コポリマーであるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)などのポリエステルは、その生体適合性、生分解性及び機械的強度のために薬剤担体として使用され得る。それらはエステル骨格の加水分解によって分解し、かつその分解生成物(すなわち、乳酸及びグリコール酸)は代謝化合物である。加水分解による分解とは、酵素の役割を有しない、水中における共有結合の自然分解を指し;したがって、加水分解的に分解可能な材料は、酵素を含まない水の溶液において経時的に分解する。ポリ(ラクチド)(PLA)及びそのポリグリコール酸コポリマーであるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)などのポリエステルは、その優れた生体適合性、生分解性及び機械的強度のために、薬剤担体として最も一般的に使用される。それらはエステル骨格の加水分解によって分解し、かつその分解生成物(すなわち、乳酸及びグリコール酸)は代謝化合物である。薬剤のポリエステルへの導入は、例えば、溶融押出、圧縮、溶媒キャスト、射出成型、原位置重合及びマイクロ及び/又はナノ粒子などの様々な技術を使用して実施される。微小粒子は、前述の押出、圧縮又はキャストポリマー系の造粒によって形成され得るか、又はそれらは、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、相分離(コアセルベーション)及び溶媒蒸発などの技術を使用して形成され得る。溶媒蒸発は下記の図に示すように異なる技術を用いて、薬剤の親油性及び/又は親水性に基づき薬剤をカプセル化することができる。
【0087】
作用薬のポリエステルへの導入は、例えば、溶融押出、圧縮、溶媒キャスト、射出成型、原位置重合及びマイクロ及び/又はナノ粒子などの様々な技術を使用して実施され得る。微小粒子は、前述の押出、圧縮又はキャストポリマー系の造粒によって形成され得るか、又はそれらは、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、相分離(コアセルベーション)及び溶媒蒸発などの技術を使用して形成され得る。溶媒蒸発は下記の図5に示すように異なる技術を用いて、作用薬の親油性及び/又は親水性に基づき薬剤をカプセル化することができる。
【0088】
微小粒子製造技術に関して、親水性作用薬は典型的に、内部水相に組み込まれる(図5の多層乳化法を参照)か、又は固体として油相に分散され(図5の分散法を参照)、それに対して親油性作用薬は一般に、有機/油相に溶解される(図5の共溶媒法を参照)。溶媒キャストに関して、連続相が微小粒子形成に必要である以外は、作用薬は共溶媒法と同様に溶媒に組み込まれる。溶融押出又は圧縮技術に関して、作用薬は一般に、溶媒非存在におけるその初期状態で組み込まれ得る。これらの組み込み技術の変形が存在し、多数の変量(例えば、薬剤ロード、溶解度、溶媒選択及び配合、ポリマー濃度、ポリマー種及び配合、賦形剤、目標放出期間、薬剤安定性など)は、ポリマーマトリックスへの薬剤の組み込みに最良の選択肢の選定に役割を果たすように、ケースバイケースで調整されるべきものである。
【0089】
埋込錠、微小粒子及び大抵の場合、原位置形成デバイスからの作用薬放出は、多数の因子に依存し、かつそれらによって調整されて、持続性放出及び/又はバースト放出(burst release)を調節し得る。これらの生分解性ポリマー系からの作用薬放出に影響を与える因子のいくつかを、表1に列記する。
【表1】
【0090】
(生分解)
一般にヒドロゲルは、ヒドロゲルがインビトロにおいて水分解性基の分解によって、過剰な水に溶解可能であることから測定可能であるように水分解性である。この試験は、インビボでの加水分解的駆動性(hydrolytically-driven)溶解の予測となり、進行は細胞又はプロテアーゼ駆動性分解とは対照的である。ヒドロゲルは、選択した薬剤、治療される疾患、必要な放出期間、及び選択した特定の薬剤の放出プロファイルに応じて、数日、数週間又は数ヶ月かけて吸収可能であるように選択することができる。
【0091】
生分解性の結合は、水分解性又は酵素分解性であり得る。例示的な水分解性、生分解性の結合を挙げると、グリコリド、dl-ラクチド、1-ラクチド、ジオキサノン、エステル、カルボナート及びトリメチレンカルボナートのポリマー、コポリマー及びオリゴマーがある。例示的な酵素的生分解性の結合を挙げると、メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼによって切断可能なペプチド結合がある。生分解性結合の例を挙げると、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカルボナート)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カルボナート)、ポリ(ホスホナート)のポリマー及びコポリマーがある。
【0092】
しかしながら、重要なことには、酸性成分に分解されるポリ酸無水物又は他の通常使用される分解性材料は、眼中で炎症を引き起こさせる傾向がある。しかし、ヒドロゲルはそのような物質を除外することができ、ポリ酸無水物、無水物結合(anhydride bond)、又は酸又は二酸に分解する前駆体を含まないことができる。代わりに、例えば、SG(グルタル酸スクシンイミジル)、SS(コハク酸スクシンイミジル)、SC(炭酸スクシンイミジル)、SAP(アジピン酸スクシンイミジル)カルボキシメチルヒドロキシ酪酸(CM-HBA)を使用することができ、かつ加水分解的に不安定なエステル性結合を有する。スベリン酸の結合などのより疎水性な結合を使用してもよく、これらの結合はスクシナート、グルタラート又はアジパートの結合よりも分解性が劣る。
【0093】
生体適合性架橋ポリマーが、生体吸収性又は吸収性であることが望ましい場合、官能基間に存在する生分解性結合を有する1以上の前駆体を使用することができる。また生分解性結合は任意に、1以上の前駆体の親水性コアとして機能することができる。各方法について、生分解性結合は、得られる生分解性、生体適合性架橋ポリマーが、所望の期間で分解し又は吸収されるように選択され得る。
【0094】
一般に架橋ヒドロゲルの分解は、水分解性材料を使用する場合、生分解性部分の水駆動性加水分解によって進行する。ポリグリコラートを生分解性部分として使用する場合、例えば、該架橋ポリマーは、ネットワークの架橋密度に応じて、約1〜約30日で分解するようにさせることができる。同様に、ポリカプロラクトンベースの架橋ネットワークを、約1〜約8月で分解されるようにさせることができる。一般に分解時間は、使用する分解可能部分の型によって、次の順:ポリグリコラート<ポリラクタート<ポリトリメチレンカルボナート<ポリカプロラクトンで変化する。またエステル結合を含むポリマーを、所望の分解速度を提供するために含むことができ、分解の速度を増加させる又は減少させるために、エステル近接に基が付加されるか又はそこから除かれる。このように、分解可能部分を用いて、数日〜数月の所望の分解プロファイルを有するヒドロゲルを構築することが可能である。
同様に、生分解性カプセル又は粒子を、ヒドロゲルマトリックス内部への包含のために製造することができる。該カプセル又は粒子は、ヒドロゲルマトリックスと同じであるか又は異なる分解時間を有することができる。
【0095】
(涙点プラグ用ヒドロゲル)
ヒドロゲルを涙点プラグ(涙点プラグ又は小管内プラグ)として使用することができる。涙点プラグのための様々な形状及びサイズが知られている。最も単純な形状は、その端部が平面又は円形な固体のロッドであり得る。該ロッドは、その外部形状が実質的に円筒形であり、それは隆起物を有さないが、真っすぐな側面を有する。あるいは、該ロッドは膨潤前に、ヘッド部及びシャフト部を有し得る。涙点プラグとして使用するために、乾燥又は脱水ヒドロゲルの長さは、例えば、約0.5mm〜約15mmとし得る(例えば、約2〜約4mmのように、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。一般に長方形のヒドロゲルについて、例えば、約0.1〜約1.0mmの幅が使用され得る。例えば、配置後に約2倍に膨潤する場合に、約0.3mmの直径がほとんどの患者に対して密接な適合を提供するであろう。本開示の解釈から明らかなことであるが、より大きな膨潤速度は、使用されるべきより小さな径のプラグを提供し、そのようなより小さなサイズが企図される。「ユニバーサルフィット」プラグとは、特定の涙点用にサイズ設定する必要がある全てのプラグを指す(ポリ(カプロラクトン-コ-ラクチド)又はシリコンプラグの場合のように)。
【0096】
本明細書中に記載のヒドロゲルは、涙点プラグとして使用することができる。高膨潤ヒドロゲルを使用して、所定の位置で膨潤した場合に堅固な位置付けを提供する。堅固な位置付け及び柔軟かつ平滑なヒドロゲルは、高度な保持及びプラグから送達される薬剤による治療の高い患者コンプライアンスに貢献する。また該高膨潤性は、適合するまで膨潤するように作製され得るので、ワン・サイズ・フィット・オール・ユーザーを提供する。全ての合成特性は、可変性並びに混入物、不純物、免疫原及びアレルゲンの供給源を排除する。該プラグは製造され、かつ単一材料として使用され得る。単一材料とは、該プラグが1つのマトリックス材料から製造されており、例えば、カバー、スリーブ、シース、オーバーコート、リザーバ部又は他の追加材料を追加することなく全体を通して同一であることを意味する。幾つかの実施態様は、ヒドロゲルに開口部を有しないような均一の巨視的構造から作製され、すなわち、ヒドロゲルが特定の天然の空隙率を有することを踏まえれば、該材料はトンネル又はマクロ細孔構造を欠いている。均質のプラグは、そこに分散された作用薬を含み得る。該プラグは、他の眼科的な薬剤放出系とは対照的に、切開又は侵襲的方法を伴わない配置のためにサイズを設定することができる。
【0097】
本プラグは加水分解的に生分解性であり得る。説明される加水分解による分解とは、水性溶液における自発的な過程を指し、すなわち、酵素作用なしに生じる。生分解は、約5〜約365日の間とすることができる(例えば、約1週間〜約30週間、少なくとも約30日、約30日〜約90日;約45日など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。加水分解による分解は有利には、細胞ベース又は酵素ベースの分解と比べて、予想可能な分解速度に利用することができる。
【0098】
共有結合架橋ヒドロゲルは、従来の好ましくない非架橋性ヒドロゲルを超える利点を有する。1つの利点は、コアセルベート(アルギナート)又はイオン架橋は、ゲルが、永続的な形状変化があるように曲げられる場合に、崩壊し、再形成しやすいことである。したがって、水は、涙点プラグセッティングにおいてそのような材料から排除され得る。しかし、共有結合架橋ヒドロゲルは水を吸収し、歪に反応してその結合を再形成しない。また該共有結合架橋を使用して、水和した場合でさえ、鉗子又は道具による堅固な把持及び強引な除去を可能とする構造的強度を有するゲルを提供することができる。
【0099】
幾つかの涙点プラグは、涙点プラグのヒドロゲルとは異なる速度で分解する粒子又はカプセル中に捕捉された治療薬を含む。速い速度は薬物送達を加速させるが、遅い速度はそれを遅延させる。そのような速度の組合せを使用して、所望の投与計画を経時的に遂行することができる。例えば、図に示されるような、1以上の送達系の組み合わせは、記載の速度の和である送達プロファイルを可能にする。例えば、図10は、非カプセル化形態で含まれ、ミクロスフェアとしても提供される薬剤を示す。該非カプセル化薬剤は、より迅速に送達され、カプセル化薬剤は、連続的かつ効果的投与であるように遅延を伴い送達される。
【0100】
図13に涙点プラグの配置方法を示す。一実施態様は、涙点プラグを、該プラグが涙点から外へ出ないように完全に患者内に配置することである。プラグの上端は涙点と同一平面に配置されて、患者から伸びることなく涙点にシートを提供する。別の実施態様は、膨潤時に該プラグの「頭」が作り出されるように、一部が涙点の外にある涙点プラグの配置である。該頭は、十分に膨潤した材料(例えば、容積が少なくとも2倍又は4倍増加)の場合に、簡単な除去のために容易に把持することができる。
【0101】
幾つかの実施態様は、膨潤を停止することなく膨潤を遅延させる疎水性コーティングを伴う涙点プラグを含む。該コーティングは、適当な適合を保証するのに十分な期間膨潤を遅延させることによって、利用者を支援することができる。幾つかの実施態様において、該コーティングは、膨潤を約10〜約300秒の平均値だけ遅延させるのに有効であるような厚さで、選択され、適用される(例えば、約15秒又は30秒又は約30秒〜約60秒など、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。例示的な厚さは、約1〜約1000μmである(例えば、約10〜約100μm、約800μm未満又は約100〜約500μmなど、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0102】
涙点プラグは、本明細書中に記載の材料を使用して製造することができ、本明細書中に記載の薬物送達に使用することもできる。したがって、涙点プラグ及び同物の製造方法の実施態様は、微粒子の塩基性塩(例えば、ホウ酸ナトリウム二水和物又は二塩基性リン酸ナトリウム)及び微粒子のトリリジンから形成されるロッドである。該構成成分を、炭酸ジメチル(DMC)中の修飾ポリエチレングリコール(PEG)の溶液に添加して、懸濁液を形成する。次いで、該懸濁液を乾燥させて、懸濁粒子を含む固体を形成する。次に該固体を融解し、成形して涙点プラグを形成することができる。該PEGは、それがトリリジンと反応して架橋ヒドロゲルを形成するように、修飾されている。PEG用溶液であるが、トリリジン及びその塩用の非溶媒であるDMC中の懸濁液を形成することによって、反応種は、混合及び反応できない。水の添加により、3つの構成成分全ての共通の溶媒を提供し、反応を進行させる。次に該プラグを濡れた涙点に挿入する。水分と接触すると、該プラグは水を吸収し、反応して原位置でヒドロゲルを形成するように液化し、膨潤する。懸濁液の形成方法は、本明細書中に記載のゲル化時間、膨潤及び係数を達成するために、変更され得る。薬剤は、治療目的のための涙液又は組織への放出のために、懸濁液に組み込まれ得る。
【0103】
(送達用治療薬)
ヒドロゲルは、治療薬を含むことができる。該ヒドロゲルを有する涙点プラグを使用して、該治療薬を送達する。特定の眼状態の治療は、適当な用量の作用薬を眼に適当な期間に渡り送達することによって決まる。表2に状態及び治療の幾つかの実施態様を示す。
【表2】
【0104】
本ヒドロゲルを使用して、ステロイド薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、眼圧下降剤、抗生物質又はその他を含むクラスの薬剤を送達することができる。本ヒドロゲルを使用して、例えば、抗炎症薬(例えば、ジクロフェナク)、鎮静薬(例えば、ブピバカイン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、抗生物質(例えば、シプロフロキサシン)、細胞周期阻害剤(例えば、シンバスタチン)、タンパク質(例えば、インスリン)などの薬剤及び治療薬を送達することができる。ヒドロゲルからの放出速度は、薬剤及びヒドロゲルの特性によって決まり、薬剤サイズ、相対疎水性、ヒドロゲル密度、ヒドロゲル固体含有量、及び他の薬物送達モチーフ、例えば、微粒子のパーセンテージを含む因子を有する。
【0105】
ヒドロゲル前駆体を使用して、ステロイド薬、NSAID(表3参照)、眼圧下降剤、抗生物質、鎮痛剤、阻害剤又は血管内皮増殖因子(VEGF)、化学療法薬、抗ウイルス薬などを含むクラスの薬剤を送達することができる。該薬剤、それ自身は、小分子、タンパク質、RNA断片、タンパク質、グリコサミノグリカン、炭水化物、核酸、無機及び有機生物活性化合物とすることができ、ここで特定の生物活性化合物を挙げると、酵素、抗生物質、抗悪性腫瘍薬、局所麻酔薬、ホルモン、抗血管新生薬、増殖因子、抗体、神経伝達物質、精神活性剤、抗癌薬、化学療法薬、生殖器に作用する薬剤、遺伝子、及びオリゴヌクレオチド又は他の立体構造体があるが、これに限定されない。低水溶性の薬剤は、例えば、粒子として又は懸濁液として組み込むことができる。高水溶性の薬剤は、微小粒子又はリポソーム内にロードすることができる。微小粒子は、例えば、PLGA又は脂肪酸から形成することができる。
【表3】
【0106】
様々な薬剤又は他の治療薬を、これらの系を使用して送達することができる。作用薬又は薬剤のファミリーの一覧、並びに作用薬の表示の例を提供する。また該作用薬を、呈示された状態の治療方法又は呈示された状態を治療するための組成物の製造方法の一部として使用することができる。例えば、AZOPT(ブリンゾラミド眼科用懸濁液剤)を使用して、高眼圧症又は開放隅角緑内障を伴う患者の眼圧亢進を治療することができる。ポビドンヨード眼科用液剤中のBETADINEを、眼周囲領域の前処理(prepping)及び眼表面の洗浄に使用することができる。BETOPTIC(ベタキソロールHCl)を、眼圧の低下又は慢性開放隅角緑内障、及び/又は高眼圧症に使用することができる。CILOXAN(シプロフロキサシンHCl眼科用液剤)を使用して、微生物の感受性株に起因する感染症を治療することができる。NATACYN(ナタマイシン眼科用懸濁剤)を使用して、真菌性の眼瞼炎、結膜炎及び角膜炎を治療することができる。NEVANAC(ネパフェナク眼科用懸濁剤)を使用して、白内障手術に関連する疼痛及び炎症を治療することができる。TRAVATAN(トラボプロスト眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障、又は高眼圧症による眼圧亢進を低下させることができる。FML FORTE(フルオロメトロン眼科用懸濁剤)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部の副腎皮質ステロイド応答性の炎症を治療することができる。LUMIGAN(ビマトプロスト眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障又は高眼圧症による眼圧亢進を低下させることができる。PRED FORTE(酢酸プレドニゾロン)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部のステロイド応答性の炎症を治療することができる。PROPINE(塩酸ジピベフリン)を使用して、慢性開放隅角緑内障の眼圧を制御することができる。RESTASIS(シクロスポリン眼科用乳剤)を使用して、例えば、乾性角結膜炎と関連する眼炎症を有する患者における涙の産生を増加させることができる。ALREX(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を使用して、季節性アレルギー性結膜炎を一時的に軽減することができる。LOTEMAX(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部のステロイド応答性の炎症を治療することができる。MACUGEN(ペガプタニブナトリウム注射剤)を使用して、血管新生(滲出型)加齢黄斑変性を治療することができる。OPTIVAR(塩酸アゼラスチン)を使用して、アレルギー性結膜炎と関連する眼のそう痒を治療することができる。XALATAN(ラタノプロスト眼科用液剤)を使用して、例えば、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者の眼圧亢進を低下させることができる。BETIMOL(チモロール眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者の眼圧亢進を低下させることができる。ラタノプロストは遊離酸形態のプロドラッグであり、選択的プロスタノイドFP受容体アゴニストである。ラタノプロストは、僅かな副作用を伴い、緑内障の眼圧を低下させる。ラタノプロストは、比較的低い水性溶液への溶解度を有すが、溶媒蒸発を使用するミクロスフェアの製造に典型的に用いられる有機溶媒には容易に溶解する。
【0107】
一実施態様は、アレルギー性結膜炎のための医薬の持続放出を含む。例えば、ケトチフェン、抗ヒスタミン薬及び肥満細胞安定化薬は、アレルギー性結膜炎を治療するのに有効な量で、本明細書中に記載のように眼へ放出され得る。季節性アレルギー性結膜炎(SAC)及び通年性アレルギー性結膜炎(PAC)は、アレルギー性の結膜疾患である。症状は、そう痒及びピンク色から赤褐色の眼を含む。これらの2つの眼の状態は、肥満細胞によって媒介される。症状を寛解させるための非特定の測定は従来、冷湿布、代用涙液(tear substitute)による洗眼、及びアレルゲンの回避を含む。治療は従来、抗ヒスタミン肥満細胞安定化剤、デュアルメカニズム(dual mechanism)抗アレルゲン剤、又は局所用抗ヒスタミン薬からなる。副腎皮質ステロイドは有効であるが、副作用のために、春季カタル(VKC)及びアトピー性角結膜炎(AKC)などのアレルギー性結膜炎の更に深刻な形態用に控えられる。
【0108】
モキシフロキサシンは、VIGAMOXの有効成分であり、眼部の細菌感染症の治療又は予防への使用に認可されたフルオロキノロンである。投与は典型的に、0.5%溶液の一滴であり、1週間以上の期間に1日に3回投与される。モキシフロキサシンがロードされたヒドロゲル、例えば、涙点プラグが本明細書中に記載され、これはプローブ膨張に続いて、鉗子で垂直小管(vertical canaliculus)に配置されるように設計された乾燥ポリエチレングリコール(PEG)ベースのヒドロゲルロッドを有する。配置後、該プラグは水分との接触により膨張し、それにより、内腔を塞ぎ、治療の間所定の場所に固定する。カプセル化モキシフロキサシンを含有したポリラクチド-コ-グリコリドミクロスフェア及び非カプセル化の遊離した薬剤物質(モキシフロキサシン)のどちらも、ロッド中に組み込まれる。該ミクロスフェアは、薬剤をカプセル化した生体吸収性粒子であり、かつ長期間に渡り加水分解を介して薬剤を放出するように形成される。非カプセル化の遊離薬剤物質は、プラグの加水分解時に直ちに放出される。そのようなデバイスは、例えば、局所的な眼用モキシフロキサシンに対する感受性を予め測定することによる、細菌株に起因する細菌性結膜炎の治療に使用することができる。モキシフロキサシン涙点プラグは、約10日間に渡って小管中に保持される。あるいは、他の製剤を異なる期間、例えば、約6若しくは約14日、又は約3日〜約30日の範囲内の別の日に使用することができる(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。例示的なロードは、プラグあたり約100〜約1000gであり、該プラグは約1立方ミリメートル未満の容積を有する。
【0109】
VKC及びAKCは、好酸球、結膜線維芽細胞、上皮細胞、肥満細胞及び/又はTH2リンパ球が、結膜の生化学及び組織学を悪化させる慢性的なアレルギー性疾患である。VKC及びAKCは、アレルギー性結膜炎の対処に使用される医薬によって治療することができる。
したがって、実施態様は、1以上の作用薬を組み込んだヒドロゲルを含む。作用薬は、例えば、ミクロスフェアを伴い又は伴わず、本明細書中の1以上の方法を使用して組み込むことができる。該ヒドロゲルを使用して、所定の時間に渡り有効量の作用薬を投与して、呈示された状態を治療するための医薬を製造することができる。
【0110】
幾つかの治療薬は可視化剤である。可視化剤はヒドロゲルとともに使用することができ、これは、該ヒドロゲルを適用する利用者が、ゲルを観察できるように、ヒトの眼に検出可能な波長の光を反射するか又は放出する。幾つかの有用な可視化剤は、FD&C BLUE #1、FD&C BLUE #2及びメチレンブルーである。そのような作用薬は、本明細書中に記載の涙点プラグ及び/又はミクロスフェア及び/又はヒドロゲル実施態様とともに使用することができる。
これらの作用薬は、ヒドロゲル中に分散される場合、好ましくは、0.05mg/mlを超える濃度で、及び好ましくは、少なくとも0.1〜約12mg/mlの濃度範囲で、及びより好ましくは、0.1〜4.0mg/mlの範囲で存在するが、最大で可視化剤の溶解度の限界までのより高い濃度が、可能性として使用され得る。これらの濃度範囲は、求電子-求核反応性前駆体の実施態様についての架橋時間(反応性前駆体種からゲル化までの時間によって測定される)を妨げることなく、ヒドロゲルに色を与えることができる。
【0111】
可視化剤は、例えば、FD&C BLUE染料3及び6、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン又は通常合成手術縫合糸に見られる着色染料など、医学的に埋め込み可能な医療用デバイスに使用するのに適した様々な無毒性の着色物質のいずれかから選択することができる。可視化剤は、例えば、架橋剤などの反応性前駆体種、又は官能性ポリマー溶液のいずれかとともに存在することができる。好ましい着色物質は、ヒドロゲルにへの化学結合をなしてもよいし、又はなさなくてもよい。可視化剤は一般に、少量で使用され、好ましくは1%重量/容積未満、より好ましくは0.01%重量/容積未満、及び最も好ましくは、0.001%重量/容積未満の濃度で使用され得る。
追加的機械援用イメージング剤、例えば、蛍光化合物、X線画像装置でのイメージングのためのX線造影剤(例えば、ヨウ素化合物)、超音波造影剤又はMRI造影剤(例えば、ガドリニウム含有化合物)を使用することができる。
【0112】
可視化剤は、涙点適用に使用される材料の分解を調査する前には予測されなかった利点を有する。プラグ又はヒドロゲルは、材料が劣化するにつれて、それらを位置からずらすような圧縮力を受ける。しかし、該材料は薬物送達に使用される場合に、所定の位置に留まる必要がある。しかしながら、心地よく配置された材料は、患者がこの事実に気付かずに位置からずらされ得る。しかし、可視化に有効な濃度の可視化剤の組み込みは、利用者に材料が存在していることを監視できるようにし、かつ該プラグ又は他の材料が、治療計画の終了前に位置ずれしている場合に、再配置を得るための工程を取らせる。このように、機械的支援を用いず裸眼で見ることができる作用薬は、材料の存在又は非存在を可視化するのに、患者にとって有効な量で使用することができる。したがって、実施態様は、有効量の可視化剤を使用すること、及びプラグ又は他の材料の存在について、定期的(例えば、毎日)に同物を確認することを含む。
【0113】
本明細書中に記載の材料及びデバイスを使用して、薬剤又は他の治療薬(例えば、イメージング剤又はマーカー)を眼又は周辺組織に送達することができる。例えば、涙点プラグを使用して、用薬を眼の表面に(すなわち、局所的に)送達することができる。該作用薬は、眼の前部における治療効果を有するのに有効な量で送達され得ることも発見されている。そのような送達は、プラグによって、又は眼上若しくは眼周辺に配置されたデポー若しくはマイクロデポーによって達成することができる。
【0114】
このように治療され得る疾患の幾つかは、眼の奥の疾患である。用語眼の奥の疾患は、当業者には理解されるが一般に、脈管構造、及び網膜、黄斑又は脈絡膜の統合性に影響を与える後部の眼疾患を指し、視力障害、視界の消失(loss of sight)又は失明を引起こす。該後部の病状は、年齢、外傷、外科的処置及び遺伝性因子に起因し得る。幾つかの眼の奥の疾患は、加齢黄斑変性(AMD)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎及び糖尿病網膜症である。幾つかの眼の奥の疾患は、黄斑変性症又は糖尿病網膜症など、望ましくない血管新生又は血管増殖に起因する。これら及び他の状態のための薬剤治療の選択肢は、本明細書中の他の場所に更に記載される。
上記の薬物送達のための架橋組成物の使用において、架橋性ポリマー、架橋剤及びホストに導入される投与作用薬は、必然的に特定の薬剤及び治療すべき状態により決定されるであろう。投与は、シリンジ、カニューレ、外套針、カテーテルなどの任意の従来法によって行うことができる。
【0115】
(キット又は系)
ヒドロゲル作製のためのキット又は系を製造することができる。該キットは医療として許容し得る条件を使用して製造され、かつ無菌性、純度、及び医薬として許容し得る調製法を有する前駆体を含む。該キットは、必要に応じてアプリケーター並びに取扱説明書を含み得る。治療薬は、予め混合したもの又は混合に利用できるものを含み得る。溶媒/溶液は、一式で若しくは別個に提供するか、又は構成成分が溶媒と予め混合されていてもよい。該キットは、混合及び/又は送達のためのシリンジ及び/又は針を含み得る。
幾つかの実施態様において、該キットは、少なくとも1の前駆体及びアプリケーターを有する。幾つかの実施態様において、生分解性ポリマー合成ヒドロゲルは、それぞれの腕の各末端にスクシンイミジルエステルを有する多腕型ポリエチレングリコール(PEG)と、トリリジン(第一級アミン求核剤を有する)とのリン酸及び他の緩衝溶液中での反応によって形成される。
【0116】
幾つかの実施態様において、前駆体及び治療薬を伴う原位置でのヒドロゲル形成に必要な他の材料を有するキットを提供することができ、該構成成分には、本明細書中に記載のものが含まれる。したがって、幾つかの態様において、ヒドロゲルの特徴を選択して、高膨潤性でかつ細い針を介して送達されるヒドロゲルを製造することができる。ヒドロゲルは炎症性又は血管新生性がなく、生体適合性の前駆体に基づいており、かつ柔軟、親水性であり、かつ配置された空間を膨張させる。ヒドロゲルは、容易に除去可能であるか、又は自己除去され、かつ生分解性でありか又は分散せずに容易に到達可能な領域への送達に適合することができる。単一の容器で全ての前駆体を組み合わせるという選択肢によって、混合及び使用が容易であるようにさせることができる。ヒドロゲルは、安全な、全合成の材料で製造することができる。分解及び/又は送達速度は、記載の期間に適合するように制御することができる。患者コンプライアンスは、反復投与を回避することによって向上され得る。アプリケーターを有する類似のキットを製造することができ、これは本明細書中に記載の材料、例えば、事前形成された脱水ヒドロゲルを含む。
原位置で涙点プラグを形成するための流動性の水性前駆体の使用は、細い針(例えば、30ゲージ)を介した投与を可能にする。またヒドロゲルは、酸性副生成物を最小化するように作製できるので、該プラグは、眼などの感受性組織に十分に許容される。
【0117】
(製造及びキネティクス、放出プロファイル)
様々な実施例により、ヒドロゲル及び薬剤送達能を有するヒドロゲル涙点プラグの製造方法が説明される。概して実施例は、眼の涙液の局所的な送達を目標とした作用薬を含むポリエチレングリコールを含むように製造された浸食性又は非浸食性デバイスに関して向けられる。作用薬の例を挙げると、プロスタグランジン、抗炎症薬、免疫調節物質、抗ヒスタミン薬、NSAID、抗生物質、ステロイド薬及び麻酔薬がある。該デバイスは、事前形成されてよく、かつ乾燥した薬剤ロードデバイスとして提供されるか、又は眼に投与し、涙点の原位置で形成される液体製剤として提供されてもよい。明らかなことであるが、実施例は、限定することなく、より一般的な開示を示している。
【0118】
実施例1、2及び3は、例えば、涙点プラグ又はデポー(又はマイクロデポー)としてヒドロゲルを形成するための、それぞれ有機溶媒ベース、メタノールベース、又は水性ベースの方法である。またヒドロゲルは、実施例4のように、原位置、例えば、小管で又はデポーとして、例えば、局所的に又は結膜下に形成され得る。様々なミクロスフェア形成方法が記載される。実施例5は、疎水性薬剤のラタノプロストを例として使用する。用語疎水性は、当業者に公知であり、pH及びイオン条件が調整される場合でさえ、実質的に水に不溶性な材料を指し、疎水性材料は、理論上非常に少量の溶解性を有することが認識されている。水溶性薬剤又はポリマーは、少なくとも1g/100mLの水性溶液への溶解度を有する。実質的に水溶解性材料は、疎水性ではないが、1g/100mLで水に溶解しない。図6は、有機溶媒ベースの方法を使用して製造されたミクロスフェアの集合物を示し;他の方法によって製造された粒子の画像が比較される。実施例6は、移動剤を使用するこの方法の変化の予測的例を提供する。
【0119】
フィルム及びウェハは、薬剤を含有して製造することができ、該薬剤は、同物中に分散される。材料を切り刻み又は挽いて粒子を製造できるか、又はヒドロゲルとして全体を使用できる。実施例7〜9及び18は、どのようにこの方法を実施するか、又は実施され得る変化を示す。
実施例10は、図7にも見られる、高膨潤ヒドロゲルを示す。500%を超える容積変化が観察された。有機化学種又は水性化学種を使用して、様々に形成されたヒドロゲルが、実施例11〜12及び図7〜9のように、膨潤性ヒドロゲルを製造するのに有用であることが観察された。
【0120】
図10(実施例5及び13)は、特定のヒドロゲル内に捕捉された、ヒドロゲル内に自由に分散された、又はミクロスフェアにカプセル化後に分散された疎水性薬剤の放出動態を示している。ニート(自由)な薬剤は急速に放出されるが、0次プロファイルにおいて顕著である。対照的に、ヒドロゲル中に捕捉されたミクロスフェア中の薬剤は、冗長な遅延放出(初期のバーストなし)を有する。薬剤のヒドロゲルへのロードは、2.5%である。パーセンテージロードは、放出における予想外の効果を有することが発見された。図11(実施例14)は、カプセル化されていない疎水性薬剤(シクロスポリン)の放出を示し、パーセントロードだけ変化する。更なるロードは、材料からの総放出のパーセンテージに関して測定されるように、放出の動態を低下させた。この効果は、望ましい放出プロファイルをもたらすのに使用され得る系の不測の性質を指す。特定の理論に縛られるものではないが、該ヒドロゲルは、単に限定的量の流体のための内部空間を有し、該空間は飽和し、放出を制限する。一方、この性質は、放出プロファイルが達成され得る場合に、予測に混乱させる影響を有する。
【0121】
疎水性薬剤はまた、図12に示されるように、膨潤を制限した。ロードが増大するほど、膨潤の低下が観察された。この効果は事前に断言できるものではない。最終的な膨潤は、薬剤がほとんど放出された後の全てのヒドロゲルで同じであると予測されたが、それは事実とは異なった。実質的な放出後の収縮も、予測されなかった。
実施例15及び16は、短期分解性ヒドロゲル及び相対的長期分解性ヒドロゲルの形成を例証している。長期材料(実施例15)は、グルタル酸スクシンイミジルで製造されるのに対し、相対的長期分解性材料(実施例16)は、アジピン酸スクシンイミジルで製造される。長期放出を示す実施例は、該長期材料を使用し(長期作用性インサートのために数週間に渡って薬剤を放出するラタノプロスト含有材料の実施など)、及び短期放出実験は、短期分解性材料を使用した(モキシフロキサシンが数日に渡って放出されるように)。
【0122】
図17は、親水性又は疎水性材料を、長期間又は短期間放出するために製造された実施態様を示している。これらの系のためにミクロスフェアを調製した。実施例17Cに、使用することができた変形体を記載する。
ミクロスフェアのサイズ範囲は、ヒドロゲルが粒子を含有する系において、放出動態の制御に影響を与えるように操作可能であることが発見された。図15A(実施例19A)は、プロットの比較及び小分子から大分子への放出傾向より明らかであるように、より小さな微小粒子がより迅速に薬剤を放出したことを示している図15Bは、15Aと同じデータのプロットの一部であり、より明確に該傾向を示している。ミクロスフェア中のPLGAの分子量及び分布は、別の変量であり、放出動態を制御するために操作した。より大きな分子量は、放出前に2〜3日の遅延期間を作り出したのに対し、より小さなものは、約1日目から直線的な放出を示した(図15C)。図15Dに示されるように、濃度及び分子量の両方の更なる変化によって、即効型であるが、持続性を可能とさせる製剤が作り出された。高ポリマー濃度は、放出期間を長期間に延長させるための、より密度の高いミクロスフェアを作り出すようである。
【0123】
遅延期間の排除は、特に抗生物質のような即時作用治療薬にとって有用である。図15Dで観察されたインビトロでの遅延期間は、図15Eのインビボでの遅延期間に直接転化した。低分子量製剤を使用した再製剤(CB-ITX-152-2と表示)と高分子量製剤C(B-ITX-124-1と表示)との比較は、動物モデルにおいて即時放出機会を示した。
ミクロスフェア内容物のポリマー変化の更なる実験から、図16(実施例20)のように、他の薬剤(ラタノプロスト)の放出動態も操作できることが示された。図17A、17B及び17Cは、所望の放出速度の制御を得るために、実際にどのようにして競合する設計因子と配合するミクロスフェアサイズ及び組成物とのバランスを取ることができたかを詳述している。
【0124】
図18及び19(実施例21及び22)に示されるように、動物での実験から、涙点プラグ系が実際に所定の時間薬剤を送達でき、しかも涙膜が薬剤を受け取り、かつ高い初期上昇の濃度を構築し、次いで薬剤の有効量を持続できたことが示された。小管は、臨床上望ましい適用にする薬剤の総容量、放出速度、有効な閾値濃度、及び停留期間、並びにプラグをそこに拘束するのに必要なヒドロゲル容積が、制限かつ競合因子となるように、プラグの受け取りに対して容積の制限を与える。この難問の一態様は、大きなロード作用寿命、放出速度、眼用量、動態及び機械的完全性を伴うヒドロゲルのロード(% w/wで表される)であり、すなわち、どのようなロードが達成され得るかの制限が存在する。したがって、この結果の予測不可能性は、十分に理解されるべきものである。
別の薬剤(様々なステロイド)を用いた更なる試験は、更なる放出動態の制御を示した(図20)。
【0125】
ヒドロゲル-微小粒子系の使用の別の試みは、処理の間にヒドロゲルが破損した。この結果に影響した変量は、微小粒子のサイズであると判断された(表4、実施例24)。関連するヒドロゲル系の柔軟な性質及び粒子の顕微鏡レベルのサイズを考慮すると、この変量は予測可能なものではない。実施例25(表5)は、多くの設計因子の調和を達成するために、どのくらいの変量が操作され得るかを示す別の結果を表している。
デバイスの成功又は失敗に影響を与えることが決定された別の因子は、ミクロスフェア密度である(図22)。簡潔に、より高密度の粒子は、より多くの薬剤を有することがわかり、デバイスの全体の性能における操作可能な因子の相互依存性を考慮して、より高密度な分子を作るために技術が開発された。
【実施例】
【0126】
(実施例1. 事前形成デバイスの有機溶媒ベースの製造)
薬剤の有機溶媒への混和性に基づいた第1のプロトコルを、以下のように開発した。90mgの各腕の末端にグルタル酸スクシンイミジルを有する8腕の分子量15,000のポリエチレングリコール(8a15K PEG SG)を、6.7mgのトリリジンとともに、24.2mgの薬剤物質を含有する329.1mgのメタノール(MeOH)に溶解した。これは、MeOH溶液中20%濃度のポリマー、及び最終の乾燥涙点プラグにおける20% w/wの薬剤ロードと相関する。
該溶液を既知の直径を有するシラスティックチューブに吸入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで垂直を保つ。クリップを取り除き、ゲルが充填されたチューブを真空チャンバに配置する。ゲルを100mTorr(13.33Pa)で24時間乾燥させ、翌日取り出す。乾燥したプラグをシラスティックチューブから取り出し、最適な長さが2.0〜4.0mmの範囲のサイズに切断する。
この方法は、非水溶性薬剤のロード、又は有機相に耐性をもつカプセル化薬剤の組み込みに使用できる。
【0127】
(実施例2. 事前形成デバイスのメタノールベースの製造)
90mgの8a15K PEG SGを、6.7mgのトリリジンとともに、353.3mgのMeOHに溶解した。これは、MeOH溶液中20%濃度のポリマーと相関する。該溶液を既知の直径を有するシラスティックチューブに吸入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで垂直を保つ。クリップを取り除き、ゲルが充填されたチューブを真空チャンバに配置する。ゲルを100mTorr(13.33Pa)で24時間乾燥させ、翌日取り出す。乾燥したプラグをシラスティックチューブから取り出し、最適な長さが2.0〜4.0mmの範囲のサイズに切断する。
該事前形成デバイスを、架橋したITXヒドロゲルを膨潤させることが公知のMeOHなどの溶媒に加える。該MeOHは、溶解した高濃度の薬剤を含有する。プラグは有機薬剤溶液によって膨潤させられ、幾らかの薬剤をヒドロゲルマトリックス中に浸透させる。ゲルを取り出し、上記のように再び乾燥させるか、又はヘキサンなどの非溶媒中に置く。これはMeOHをゲルから追い出させ、薬剤をゲルマトリックス中に沈降させ、薬剤がロードされたプラグを与える。
この方法は、例えば、第一級アミンを有する薬剤などの架橋技術と不適合性の薬剤をロードするのに適している。これは薬剤ロードと架橋工程とを分離して、不適合性に関する問題を排除する。
【0128】
(実施例3. 事前形成デバイスの水性ベースの製造)
90mgの8a15K PEG SGを、6.7mgのトリリジンとともに、24.2mgの薬剤懸濁液を含有する329.1mgの水に溶解した。これは、MeOH溶液中20%濃度のポリマー、及び最終の乾燥涙点プラグにおける20% w/wの薬剤ロードと相関する。該薬剤懸濁液は、例えば、不溶性薬剤粒子又はカプセル化製剤の懸濁液であり得る。
該溶液を既知の直径を有するシラスティックチューブに吸入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで垂直を保つ。クリップを取り除き、ゲルが充填されたチューブを真空チャンバに配置する。ゲルを100mTorr(13.33Pa)で24時間乾燥させ、翌日取り出す。乾燥したプラグをシラスティックチューブから取り出し、最適な長さが2.0〜4.0mmの範囲のサイズに切断する。
この方法は、例えば、他のポリマー系にカプセル化された薬剤をロードするのに適している。該水性ベースの製造は、幾つかの有機溶媒によって起こり得るカプセル化薬剤の抽出を回避するのに使用することができる。
【0129】
(実施例4. 液体原位置形成デバイス)
8a15K PEG SGポリマーを、小分子量トリリジン架橋剤を含有する低pH(4.0)の希釈溶液に、20%濃度で溶解する。この溶液は、高pH(8.8)溶液との組み合わせによって活性化され、ゲル化機構が開始される。薬剤は、希釈溶液中に懸濁液として予めロードされる。該薬剤懸濁液は、例えば、不溶性薬剤粒子又はカプセル化製剤の懸濁液からなり得る。
該溶液を垂直小管に適用するか、又は27Gのカニューレを有する小型の1ccシリンジに吸入し、垂直小管に注入する。ゲルは原位置で形成される。高ポリマー濃度のために、形成物は大きく膨潤し、該小管に応じた適合を与える。
【0130】
(実施例5. ミクロスフェア形成)
概してミクロスフェアは、薬剤物質としてラタノプロストを組み込み、溶媒蒸発によって製造される。ラタノプロストは、遊離酸形態のプロドラッグであり、プロスタノイド選択的FP受容体アゴニストである。ラタノプロストは、僅かな副作用を伴い緑内障患者の眼圧を低下させる。ラタノプロストは、比較的低い水性溶液への溶解度を有するが、典型的に、溶媒蒸発を使用するミクロスフェアの製造に有用な有機溶媒への易溶性を有する。
およそ250mgのPLGA(50:50のラクチド:グリコリド比、〜60kD分子量、Lakeshore Biomaterials社)を1.67mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液を、およそ25mgのラタノプロストに加えて、均質になるまで混合した。次いで、該薬剤/ポリマー溶液を、およそ20秒間に渡って、25ゲージの針を介して、67mLの注射用水(WFI)中1.5%ポリビニルアルコール(31〜50kD、89%加水分解)を含有する150mLのビーカーに注入し、同時に1インチ撹拌子を使用して300rpmで撹拌した。該溶液を一晩撹拌し、およそ18時間、溶媒を蒸発させた。ミクロスフェアを真空下のメンブランフィルターで回収し、50mLのWFIで3回リンスした。次いで、洗浄したミクロスフェアを、およそ3mLの容積で20mLのシンチレーションに移し、このバイアルを凍結させ、その後、涙点プラグへの組み込みに先立ち、週末に渡って凍結乾燥した。ミクロスフェアの代表的な写真を、図6に示す。
【0131】
(実施例6. ミクロスフェア形成)
この方法は実施例5と同様であり、加えて塩化メチレンが、1%濃度に達するまで連続相に添加される。この添加は、不連続相から連続相への溶媒の移動速度を低下させて、より密なスキン形成をもたらす。
【0132】
(実施例7〜9. 溶媒キャストによるポリマーウェハ/フィルムの製造)
およそ200mgのPLGA(50:50のラクチド:グリコリド比、〜60kD分子量、Lakeshore Biomaterials社)を、1mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液を、およそ10mgのラタノプロストに加えて、20mLのシンチレーションバイアルにおいて均質になるまで混合した。次いで、該薬剤/ポリマー溶液の溶媒を、ドラフトでおよそ72時間蒸発させた。次いで、得られたフィルムを更に、真空下、周囲温度にて一晩乾燥させた。同様に、これらの方法は、溶媒としてアセトン及びクロロホルムのそれぞれを使用して、実施することができる。
【0133】
(実施例10. 膨潤能、事前形成プラグ)
実施例1又は実施例3の方法を使用して、プラグを製造した。分枝ポリエチレングリコールは、末端がグルタル酸スクシンイミジルの8腕の15,000MW(8a15KSG)であった。求核性前駆体は、トリリジンであった。ヒドロゲルを、メタノール(MeOH)又は水(WFI)中で架橋した。膨潤によるパーセント変化は、プラグの長さ又は幅などの規定寸法の、時間との相関関係による変化として評価される。ヒドロゲル形成時のヒドロゲル中の固体の量は、10%〜30%で変動した。図7に示されるように、平衡時の非抑制的な容積変化は、形成時の溶媒又は固体含有量に応じて、約500%〜約1200%の範囲であることが得られた。
【0134】
(実施例11. 浸食性涙点プラグ、8A15kSG)
実施例1又は実施例3の方法を使用して、プラグを製造した。分枝ポリエチレングリコールは、末端がグルタル酸スクシンイミジルの4腕の20,000MW(4a15KSG)であった。求核性前駆体は、トリリジンであった。ヒドロゲルを、メタノール(MeOH)又は水(WFI)中で架橋した。膨潤によるパーセント変化は、プラグの長さ又は幅などの規定寸法の、時間との相関関係による変化として評価される。ヒドロゲル形成時のヒドロゲル中の固体の量は、20%〜30%で変動した。図8に示されるように、平衡時の非抑制的な容積変化は、形成時の溶媒又は固体含有量に応じて、約500%〜約1200%の範囲であることが得られた。
【0135】
(実施例12)
実施例1又は実施例3の方法を使用して、プラグを製造した。分枝ポリエチレングリコールは、末端がグルタル酸スクシンイミジルの4腕の20,000MW(4a20KSG)であった。求核性前駆体は、トリリジンであった。ヒドロゲルを、メタノール(MeOH)又は水(WFI)中で架橋した。膨潤によるパーセント変化は、プラグの長さ又は幅などの規定寸法の、時間との相関関係による変化として評価される。ヒドロゲル形成時のヒドロゲル中の固体の量は、20%〜30%で変動した。図9に示されるように、平衡時の非抑制的な容積変化は、形成時の溶媒又は固体含有量に応じて、約1100%〜約1700%の範囲であることが得られた。
【0136】
(実施例13. PLGAカプセル化8A15kSG涙点プラグ)
実施例3の方法を使用してヒドロゲルを製造した。該ヒドロゲルは、治療薬の非存在下の水中で製造した。グルタル酸スクシンイミジルの末端を有する8腕の15,000MWのポリエチレングリコールを、トリリジンと反応させた。該ヒドロゲルに、ラタノプロスト又は実施例5に従って製造したラタノプロスト含有ミクロスフェアをロードした。図10に示されるように、カプセル化されていないニートのラタノプロストは、約90%の送達に達するまで、実質的に0次放出プロファイルでヒドロゲルから放出された。300μmのミクロスフェアをロードしたヒドロゲルは、約6日目まで作用薬を放出せず、その後、経時的に放出され、その時間の大部分はほぼ0次放出であった。同様に、ジクロロメタンからのキャストしたフィルムは、類似であるが異なるプロファイルを有した。
【0137】
(実施例14. シクロスポリン)
実施例1の方法を使用してヒドロゲルを製造した。ヒドロゲルを製造するのに使用する有機媒体中に、シクロスポリンを予め溶解させ、カプセル化は用いなかった。本明細書中に報告される予想外の結果の1つは、薬剤ロードの増大が放出を遅らせることであり、これは薬物送達における期待に反するものである。図11に示されるように、総放出のパーセンテージとしての放出速度は意外にも、高ロードプラグよりも低ロードプラグの方が速かった。
【0138】
(実施例15. 事前形成デバイス(短期用)の水性ベースの製造)
432mgの4A20kSGを10mLシリンジに取り、1.2mLの1.7%モキシフロキサシン溶液(20mLのWFI中の400mgのモキシフロキサシン塩基を1NのHClでpH4.5に調整したもの)と混合した。余分な空気を取り除いた。第2のシリンジにおいて、2gのモキシフロキサシンミクロスフェアを、2.4mLの1.7%モキシフロキサシン溶液(20mLのWFI中の400mgのモキシフロキサシン塩基を1NのHClでpH4.5に調整したもの)と混合した。これら2つのシリンジを、シリンジ間で前後にゆっくりと材料を交換することによって合わせた。材料を1つの10mLシリンジに回収した。第3のシリンジにおいて、1.2mLのトリリジン溶液(31.2mgのトリリジンを3mLの二塩基性リン酸ナトリウムに溶解したもの)を加えた。これを先に混合したシリンジと交換し、次いで、既知の直径を有するシラスティックチューブに注入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで吊るした。クリップを取り除き、ゲル/シラスティックチューブを元の長さの2.5倍に伸ばす。これを30℃で48時間乾燥させる。貯蔵乾燥プラグを取り出し、長さ3.5〜4.5mmに切断する。この方法は、カプセル化した薬剤を他のポリマー系にロードするのに適している。
【0139】
(実施例16. 事前形成デバイス(長期用)の水性ベースの製造)
432mgの4A20kSAPを10mLシリンジに取り、1.2mLのWFI(一塩基性リン酸ナトリウムでpH4.5に調整したもの)と混合した。余分な空気を取り除いた。第2のシリンジにおいて、2gのモキシフロキサシンミクロスフェアを、2.4mLのWFI(pH4.5に調整)と混合した。これら2つのシリンジを、シリンジ間で前後にゆっくりと材料を交換することによって合わせた。材料を1つの10mLシリンジに回収した。第3のシリンジにおいて、1.2mLのトリリジン溶液(31.2mgのトリリジンを3mLの二塩基性リン酸ナトリウムに溶解したもの)を加えた。これを先に混合したシリンジと交換し、次いで、既知の直径を有するシラスティックチューブに注入し、クリップで閉じ、架橋反応が完了するまで吊るした。クリップを取り除き、ゲル/シラスティックチューブを元の長さの2.5倍に伸ばす。これを30℃で48時間乾燥させる。貯蔵乾燥プラグを取り出し、長さ3.5〜4.5mmに切断する。
【0140】
(実施例17. ミクロスフェアの製造)
ミクロスフェアは、薬剤物質としてラタノプロスト又はモキシフロキサシンを組み込み、溶媒蒸発によって製造される。ラタノプロストは、遊離酸形態のプロドラッグであり、プロスタノイド選択的FP受容体アゴニストである。ラタノプロストは、僅かな副作用を伴い緑内障患者の眼圧を低下させる。ラタノプロストは、比較的低い水性溶液への溶解度を有するが、典型的に、溶媒蒸発を使用するミクロスフェアの製造に用いられる有機溶媒への易溶性を有する。モキシフロキサシンは、VIGAMOXの有効成分であり、眼の細菌感染症の治療又は予防の使用に認可されたフルオロキノロンである。モキシフロキサシンは、容易に水性溶液に溶解する。このように、疎水性及び親水性の両方の作用薬を、ミクロスフェア形成で例証した。
【0141】
(実施例17A)
およそ2.8gのモキシフロキサシ塩基を、8mLの塩化メチレンに溶解した。これに5.18gの2A 50:50 PLGAを加え、溶解するまで混合した。次いで、直ちに薬剤/ポリマー溶液を、1Lの0.5%ポリビニルアルコール、0.2%二塩基性リン酸ナトリウム、2.5%塩化ナトリウムの溶液に注入し、同時に880rpmで撹拌した。該溶液を一晩撹拌し、およそ60分間40℃で溶媒を蒸発させた。ミクロスフェアを、8LのWFIの500mLの分割量で洗浄し、次いで、複数の20mLのシンチレーションバイアルに、およそ3mLの容量で移した。これらのバイアルを凍結させ、その後、ヒドロゲル又は他の使用への組み込みに先立ち、48時間に渡って凍結乾燥して、ミクロスフェアを乾燥させた。次いで、乾燥させたミクロスフェアを、構成成分(ロード用ミクロスフェア/マクロマー/トリリジン/緩衝液)をシリンジ中で混合すること、及びヒドロゲルの架橋のためにシリコンチューブに注入し、同時にミクロスフェアが底に沈殿するのを防止するために室温で回転させることによって、涙点プラグに組み込んだ。次いで、該チューブを所望の長さに伸ばし、オーブン中、30℃で1〜2日間乾燥させる。乾燥した材料をチューブから取り出し、特定の長さのプラグに切断する。
【0142】
(実施例17B)
およそ250mgのPLGA又はPLAを、1.67mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液を、およそ25mgのラタノプロストに加えて、均質になるまで混合した。次いで、該薬剤/ポリマー溶液を、およそ20秒間に渡って、25ゲージの針を介して、67mLの注射用水(WFI)中1.5%ポリビニルアルコール(31〜50kD、89%加水分解)を含有する150mLのビーカーに注入し、同時に1インチ撹拌子を使用して300rpmで撹拌した。該溶液を一晩撹拌し、およそ18時間溶媒を蒸発させた。ミクロスフェアを真空下のメンブランフィルターで回収し、50mLの水で3回リンスした。次いで、洗浄したミクロスフェアを、およそ3mLの容量で20mLのシンチレーション管に移し、このバイアルを凍結させ、その後、ヒドロゲル又は他の使用への組み込みに先立ち、約48時間に渡って凍結乾燥して、ミクロスフェアを乾燥させた。以下のPLGA及びPLA系を、ミクロスフェアの生成に利用した:1. 50:50 PLGA 2.5A;2. 50:50 PLGA 4A;3. 75:25 PLGA 4A;4. 100 PLA 4A;5. 100 PLA 2.5E;6. 100 PLA 4.5E;7. 100 PLA 7E。これらの略語は、当業者に公知で、Lakeshore Biomaterials社によって公開される術語に従い、Aとはカルボン酸末端基を意味し、Eはエステル末端基を意味する。2.5及び4の数字は、分子量に対するIVナンバー(IV number)(特定の濃度のクロロホルムにおける溶液の固有粘度)を指す。比率は、L:G比(ラクチド:グリコリド)である。この術語は、製造業者であるLakeshore Biomaterials社(Surmodics社の事業部)に由来する。
【0143】
(実施例17C)
実施例17Aと同様であり、加えて塩化メチレンが、1%濃度に達するまで連続相に添加される。これは、不連続相から連続相への溶媒の移動速度を低下させて、より密なスキン形成をもたらす。
【0144】
(実施例18. 溶媒キャストによるポリマーウェハ/フィルムの製造)
(実施例18A)
およそ250mgのPLGA(50:50のラクチド:グリコリド比、〜60kD分子量、Lakeshore Biomaterials社)を1mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液を、およそ10mgのラタノプロストに加えて、20mLのシンチレーションバイアルにおいて均質になるまで混合した。次いで、該薬剤/ポリマー溶液の溶媒を、ドラフトでおよそ72時間蒸発させた。次いで、得られたフィルムを更に、真空下、周囲温度にて一晩乾燥させた。
(実施例18B)
実施例18Aにおいて、溶媒としてアセトンを用いる。
(実施例18C)
実施例18Aにおいて、溶媒としてクロロホルムを用いる。
【0145】
(実施例19A. インビトロでの短期放出)
この実施例は、治療薬としてモキシフロキサシンを使用して実施した。実施例17Aのようなプロトタイプのモキシフロキサシン涙点プラグについてのインビトロでの放出プロファイルを、リン酸緩衝食塩水(PBS)中37℃で評価した。この放出を図14に示す。上記プロトタイプからの放出は、カプセル化についてLakeshore社2A 50:50 PL:GAポリマーを利用した。製造及び放出速度動態を図15Aに示す。図15Bは、放出動態が粒径の範囲を変化させることによって、どのように操作されるかを示している。図15Bに示されるように、より広い粒子範囲のCB-ITX-152-2は、より狭い粒径範囲の製剤CB-ITX-152-10と比べて、長期のヒドロゲルプラグからの薬剤放出をもたらす。
【0146】
(実施例19B. 放出プロファイル)
実施例19Aへの修正は、製造中使用したPLGAの平均分子量及び分布の変更による放出期間及びプロファイルの変化を含む。図15Cに示されるように、製剤CB-ITX-124-1において使用したより高い分子量のPLGAは、徐放が生じ得る前に顕著な遅延期間を示すのに対し、製剤CB-ITX-114-11において使用したより低い分子量のPLGAは、1日目から直線的な放出を示す。遅延期間は、PLGA又はPLAのミクロスフェア製剤で観察されたが、これらは、ポリマーの分子量、並びにミクロスフェアの粒径範囲及び分布を調整することによって対処することができる。
【0147】
(実施例19C. 放出プロファイル)
実施例19A及び19Bへの修正は、製造反応において使用したPLGAの平均分子量及び分布、並びにポリマー濃度の変更による放出期間及びプロファイルの変化を含む。図15Dに示されるように、濃度及び分子量の両方の変更によって、長期間の即時放出を可能として、製剤を作り出すことができる。より高いポリマー濃度は、放出期間を長期間に延長させ得るより高密度のミクロスフェアを作り出すようである。
遅延期間の排除は、特に抗生物質のような即時作用治療薬にとって有用である。図15Dで観察されたインビトロでの遅延期間は、図15Eのインビボでの遅延期間に直接転化した。低分子量製剤を使用した再製剤、CB-ITX-152-2製剤は、高分子量製剤、B-ITX-124-1と比較して、前臨床モデルにおいて即時放出を示した。
【0148】
(実施例20. インビトロでの長期放出ラタノプロストプラグ)
ラタノプロスト涙点プラグを製造するのに使用した個々のミクロスフェアタイプについてのインビトロでの放出プロファイルは、使用する分子量、組成(LとGとの比率)及び末端基(酸対エステル末端)に従い変化するであろう。個々の放出速度の例を、図16に示す。
同じ作用薬を含有する複数種のポリマーの配合の効果の例を、図17に示す。同じ活性剤を含む複数種のポリマーの配合の効果の例を、図17Aに示す。所望のミクロスフェアを異なる量で配合することによって、放出プロファイルを適用の要求に合わせることができる。より小さい粒径は、図17Bに示されるように、より大きな粒径と比べてより短い放出期間を生じさせた(速い初期放出)。図17Cは、配合がもたらす他の効果を示している。
【0149】
(実施例21. 比較的短期間のヒドロゲル)
ヒドロゲルと微小粒子との放出系の薬物動態性能を、モデルとしてモキシフロキサシンを使用して評価した。モキシフロキサシン涙点プラグを、インビボでのモキシフロキサシン放出の相関を決定するために、イヌの眼モデルにおいて評価した。2A 50:50 PLGA溶媒蒸発ミクロスフェアを含有する9% 4A20kSGのプロトタイププラグを、イヌの下涙点に埋め込み、涙試料を16日に渡ってLC-MS/MSで分析した。薬物動態データを図18に示す。薬物動態プロファイルは、ヒドロゲル涙点プラグが、インビボで所定の10日間の送達時間の間に、一定の速度で治療量をイヌの眼に送達できることを示している。
細菌学的データを含む広範な手術後の眼内炎実験から、手術後の眼内炎に関与する確認された成長分離株の94.2%が、グラム陽性病原体であり、最も一般的には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)であることが示された(Ηan DPらの文献,「眼内炎硝子体切除術研究における微生物学的単離株のスペクトル及び感受性(Spectrum and susceptibilities of microbiological isolates in the Endophthalmitis Victrectomy Study)」, Am J Ophthalmol, 1996; 122:1-17)。図18のプロファイルは、涙液レベルが、既報の10日間のモキシフロキサシンMIC90、黄色ブドウ球菌(60ng/mL)及び表皮ブドウ球菌(130ng/mL)(Hariprasad, S.らの文献,「ヒト水様液及び硝子体液における0.5%モキシフロキサシン点眼剤の局所的投与の浸透薬物動態(Penetration Pharmacokinetics of Topically Administered 0.5% Moxifloxacin Ophthalmic Solution in Human Aqueous and Vitreous)」, Arch Ophthalmology, Jan 2005;123: 39-44)を上回ることを示している。
【0150】
(実施例22.クロスフェアを有する長期用のヒドロゲル)
ヒドロゲルと微小粒子との放出系の薬物動態性能を、モデルとしてモキシフロキサシンを使用して評価した。モキシフロキサシン涙点プラグの性能を、インビボでのモキシフロキサシン放出の相関を決定するために、イヌの眼モデルにおいて評価した。PLGA/PLA溶媒蒸発ミクロスフェアの配合物を含有する20% 4A20kSAPのプロトタイププラグを、イヌの下涙点に埋め込み、涙試料を16日に渡ってLC-MS/MSで分析した。薬物動態データを図19に示す。
【0151】
(実施例23. ヒドロゲルマトリックス中への薬剤の捕捉)
9% 4a20KSGヒドロゲルを、3つの異なるステロイド(フルニソリド、ブデソニド及びトリアムシノロンアセトニド)を組み込んで製造した。該ヒドロゲルにおけるステロイドの放出プロファイルとPBS中の遊離な薬剤との比較を、図20に示す。ヒドロゲル中へステロイドの閉じ込め又は捕捉は、より遅く、より持続性のある薬剤放出プロファイルをもたらすことが認められる。
【0152】
(実施例24. 伸張及び粒径)
特定の実施態様は、ヒドロゲルを伸張することに関する。粒径は、管のサイズとの相関関係で、乾燥中に伸張可能な長さに影響を与えることが発見された。より小さな直径の管での涙点プラグの製造及び比較的大きな粒子範囲の組み込みは、乾燥工程の間にいっそう粉砕しやすく、使用に適さないヒドロゲルプラグとなる。表4に示されるように、粒径範囲及び特定の管の直径に対する伸張係数を制御することによって、結果、ヒドロゲル/ミクロスフェアロッドは、後続の例えば、涙点プラグへの切断のための乾燥に成功し得る。より大きな粒径のミクロスフェアは、うまく伸張されるヒドロゲルの能力を低下させる。
【表4】
【0153】
(実施例25. ヒドロゲルサイズ及びパタメータ)
伸張、乾燥、薬剤ロード、膨潤、分解、放出速度、合計容積、及び薬剤用量は、競合している設定パラメータを提示する。最終プラグ長及び3.5mm長のプラグあたりの推定薬剤(モデルとしてモキシフロキサシンを使用)用量に対して、総プラグ容積あたりのミクロスフェアロード、乾燥間の伸張係数、及びシリコンチューブ内径を変化させて、実施可能性実験を行った。表5に記載された結果は、1.47mm IDのチューブで製造した場合に、2.5×の伸張係数を用いて、0.50mmの最終乾燥直径で200μgを上回る標的プラグ用量が達成され得ることを示した。
【表5】
【0154】
(実施例26. 伸張因子実験)
実施例1への修正は、伸張乾燥は、涙点プラグ又は他の適用に最も適したサイズを標的とするための異なった乾燥直径であるが、図21Aに示されるように、類似の水和した直径を有するプラグをもたらし得ることの理解を含む。たとえそれら全てが、図21Bに示されるように、類似の乾燥時の長さを有したとしても、より短い水和した長さは、より大きな伸長係数と相関がある。したがって、長い乾燥時の長さを有するが、涙点における水和時にプラグが小管に後退するように、涙点プラグの使用に適しているであろう短い水和時の長さを有するプラグを作り出すことが可能である。
【0155】
(実施例27. ミクロスフェアポリマー重量配合)
図22に示されるように、放出プロファイルを変化させるためにポリマー重量の配合を行うことが可能である。これは、広範囲のPLGA分子量をもたらし、その結果、放出プロファイルを修正する。より大きな割合の低分子量のPLGAを製剤に組み込むことによって、より速い放出又は親水性薬剤のためのより高い薬剤カプセル化効果を得ることが可能である。反対に、より大きな分子量は、より長い放出期間を与える。
高密度のミクロスフェアは、より多くの作用薬を含有することが見出された。PVA/連続相において塩化ナトリウムなしで製造されたミクロスフェアは、0.4g/mLのタップ密度を有するのに対し、塩化ナトリウムを伴うものは、1g/mLの高いバルクのタップ密度を有した。密度の調整は、様々な因子により制御されるが、幾つかの因子は、薬剤カプセル化効率を顕著に増大させ、高密度ミクロスフェアをもたらすことが観察された。高PLGA濃度と塩化ナトリウムを含有する連続相の大きな容積(有機相の100倍)との組み合わせは、高いカプセル化効率(>70%)を有する高密度ミクロスフェアを与えた。高いPLGA濃度及び連続相の大きな容積は、ミクロスフェア表面でPLGAの迅速な沈降をもたらし、擬似半透膜を形成する。連続相における塩の添加は、浸透圧を増大させ、これは、連続/水相の分散/有機相への内向き流束を防止し、ミクロスフェア表面でのチャネルの形成を低下させる。加えて、塩化ナトリウムは、連続相の極性を増大させ、それにより、塩化メチレンの極性連続相への溶解度を低下させ、これにより、ポリマーをよりゆっくりを沈降させ、比較的高密度の微小粒子を形成する。
【0156】
(追加的開示)
1. ヒトの眼の涙点又は小管を通る涙流を遮断し、又は減少させ、かつ薬剤を眼に送達するための医療用装具であって、涙点を通過する寸法を有する脱水共有結合架橋合成親水性ポリマーヒドロゲルを含み、該脱水ヒドロゲルが生理的水を吸収して、少なくとも約1mmの断面幅(又は少なくとも1.5mm、又は少なくとも約2mm)まで膨潤し、かつ小管に整合的に適合し、該ヒドロゲルが眼への放出のためにヒドロゲル中に分散した治療薬を含み、該ヒドロゲルがインビトロにおいて生理食塩水で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容積%の含水量を有する、前記医療用装具。該装具の容積は、例えば、0.2〜100立方mmであり得る(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0157】
2. 前記脱水ヒドロゲルが、小管への配置の10分以内に、少なくとも幅1mmに膨潤する、1記載の医療用装具。
3. 前記ヒドロゲルが、長さが伸長され、かつ乾燥される、1又は2記載の医療用装具。
4. 前記伸張の量が、少なくとも約1又は1.5又は2倍でヒドロゲルの長さを増大させる、1〜3のいずれかに記載の医療用装具。
5. 機械援用を伴わず、ヒトへの作用薬の可視性を提供するのに有効な濃度で存在する可視化剤を更に含む、1〜4のいずれかに記載の医療用装具。
6. 約2日目の累積的放出率の合計と、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合の約75%の累積的放出の合計との間で、実質的に直線となる経時的な薬剤の放出のプロットの傾きから測定可能なように、薬剤の実質的な0次放出動態を提供する、1〜5のいずれかに記載の医療用装具。
【0158】
7. 前記薬剤が、ヒドロゲル中に分散したミクロスフェアの集合物内でカプセル化され、該集合物が、約20〜約300μmのみの粒径の範囲、及び相対的に小さなミクロスフェアが該範囲内において、より大きな粒子と比べてより迅速に薬剤を放出することの結果としての0次放出を提供するのに必要なサイズ分布を有するように選択される、1〜6のいずれかに記載の医療用装具。
8. 前記直径範囲が、約20〜約150μm、又は25〜150μmである、1〜7のいずれかに記載の医療用装具(明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)。
【0159】
9. 追加的量の薬剤を含み、該追加的量が、ミクロスフェアへのカプセル化を伴わずにヒドロゲル内に分散されており、該追加的量が、経時的な累積的薬剤放出のプロットから測定可能なように、追加的量の薬剤の放出の初期バーストを提供し、該初期バーストが、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合に、0%〜約35%の薬剤の累積的放出の合計であり(又は20%の10% w/w、明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)、かつミクロスフェアと関連する薬剤が、実質的に初期バーストに寄与しない、1〜8のいずれかに記載の医療用装具。
10. 前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、1〜9のいずれかに記載の医療用装具。
11. 本質的に、ヒドロゲル、薬剤を含有するミクロスフェア、及び追加的量の薬剤からなる、1〜10のいずれかに記載の医療用装具。緩衝液及び生理食塩水は、本発明の特徴に必須ではない。あるいは、該デバイスは本質的に、可視化剤、ヒドロゲル、及び薬剤及び/又はミクロスフェア中ではない追加的量の薬剤を含有するミクロスフェアからなり得る。
【0160】
12. 前記薬剤が実質的に、水性溶液に不溶性である、1〜10のいずれかに記載の医療用装具。
13. 前記薬剤が実質的に、水性溶液に可溶性である、1〜10、12のいずれかに記載の医療用装具。
14. 前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物である、1〜10、12〜13のいずれかに記載の医療用装具。
15. 前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を含む第1の合成水溶性ポリマーと少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成する、1〜12、10〜14のいずれかに記載の医療用装具。
16. 前記第1のポリマーが、ポリエチレングリコールを含み、前記第1の官能基が、スクシンイミドであり、かつ前記第2の官能基が、アミン及びチオールからなる群から選択される、1〜12、10〜15のいずれかに記載の医療用装具。
【0161】
17. 前記薬剤がラタノプロストであり、該ラタノプロストがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから、開放隅角緑内障又は高眼圧症に罹患している患者において眼圧亢進を低下させるのに有効な量で、少なくとも約4週間の期間に渡って放出され、所定の位置で膨潤したヒドロゲルが、約1立方mm以下の容積を有する、1〜12、10〜16のいずれかに記載の医療用装具。
18. 前記薬剤がモキシフロキサシンであり、該モキシフロキサシンがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから眼の涙膜に、眼における黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌を実質的に減少させるのに有効な量で、少なくとも約6日間の期間に渡って放出可能であり、所定の位置で膨潤したヒドロゲルが、約1立方mm以下の容積を有する、1〜10、又は10〜17のいずれかに記載の医療用装具。
19. 前記モキシフロキサシンが、塩基形態である、18記載の医療用装具。
【0162】
20. ヒトの眼の涙点又は小管を通る涙流を遮断し、又は減少させ、かつ薬剤を眼に送達するための装具の製造方法であって、加水分解的に分解可能な材料から複数のミクロスフェアを形成すること(該ミクロスフェアは薬剤を含有する)、該ミクロスフェアを洗浄すること、該ミクロスフェアを分離して、約20〜約300μmの範囲の直径を有するミクロスフェアの集合物を得ること、該ミクロスフェアを合成ポリマーヒドロゲル前駆体と混合し、かつ管内で前駆体からヒドロゲルを形成すること(該ミクロスフェアは、ヒドロゲル中に分散している)、管からヒドロゲルを押し出すこと、ヒドロゲルの長さを少なくとも約2倍に伸張すること(又は少なくとも1.5、又は少なくとも2.5、又は1〜3の間;明確に記載された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることが、当業者には直ちに理解されるであろう)(生じるヒドロゲルの最大断面幅が約1mm未満である)、ヒドロゲルを乾燥させること、該乾燥したヒドロゲルを約5mm未満の長さに切断し又は分割すること、及び約2日目の累積的薬剤放出率のおよその合計と、脱水ヒドロゲル装具がインビトロで生理的溶液中に配置される場合の約75%の累積的放出の合計との間で、実質的に直線となる経時的な該装具からの薬剤の放出のプロットの傾きから測定可能なように、薬剤について実質的に0次放出の動態を示すために、集合物の範囲内でミクロスフェア直径の分布を選択すること(該脱水ヒドロゲルは生理的水を吸収して少なくとも約1mmの断面幅まで膨潤し、小管に整合的に適合し、かつ該ヒドロゲルは、インビトロにおいて生理食塩水中で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容積%の含水量を有する)を含む、前記製造方法。
【0163】
21. 前記脱水ヒドロゲルが、小管への配置の10分以内に、少なくとも幅1mmまで膨張する、20記載の製造方法。
22. 前記ヒドロゲルに、機械援用を伴わず、ヒトへの前記装具の可視性を提供するのに有効な濃度で可視化剤を配置させることを更に含む、20又は21記載の製造方法。
23. 追加的量の薬剤を、ミクロスフェアへのカプセル化を伴わずにヒドロゲルと混合することを更に含み、該追加的量が、経時的な累積的薬剤放出のプロットから測定可能なように、追加的量の薬剤の放出の初期バーストを提供し、該初期バーストが、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合に、0%〜約35%の薬剤の累積的放出の合計であり、かつミクロスフェアの製造又はロードの間に、ミクロスフェアと関連する薬剤が、実質的に初期バーストに寄与しない、20〜22のいずれかに記載の製造方法。
【0164】
24. 前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、20〜23のいずれかに記載の製造方法。
25. 前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物である、20〜24のいずれかに記載の製造方法。
26. 前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を更に含む合成ポリマーヒドロゲル前駆体と、少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成する、20〜25のいずれかに記載の製造方法。
27. 1〜26のいずれかを使用することを含む、方法。
28. 1〜26の装具のいずれかを製造することを含む、方法。
【0165】
29. 前記薬剤がラタノプロストであり、該ラタノプロストがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから、開放隅角緑内障又は高眼圧症に罹患している患者において眼圧亢進を低下させるのに有効な量で、少なくとも約4週間の期間に渡って放出される、1〜28のいずれかに記載の装具若しくは方法を利用する使用又は使用方法。
30. 前記薬剤がモキシフロキサシンであり、該モキシフロキサシンがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから眼の涙膜に、眼における黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌を実質的に減少させるのに有効な量で、少なくとも約6日間の期間に渡って放出される、1〜28のいずれかに記載の装具若しくは方法を利用する使用又は使用方法。
【0166】
31. 本明細書中に記載の薬剤の、それと関連した状態を治療するための、又はそのための医薬を製造するための、使用又は使用方法。
32. 1〜30のいずれかに記載される、又はそれにより製造される、医薬。
33. 前記ミクロスフェアからの薬剤の送達のために結膜下に配置される、本明細書中に記載のミクロスフェア、その医薬若しくは使用、又は患者において同物を使用する治療法。
【0167】
本明細書中の表題及び副題は、読み手の便宜のためにあることを意図する。これらは、節内の開示又は実施態様を何ら限定するものではない。特定の特徴を有する様々な実施態様が、記載されている。これらの様々な特徴は、実施可能なデバイスを製造する必要性によって導かれるように当業者によって自由に組み合わせて適合され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの眼の涙点又は小管を通る涙流を遮断し、又は減少させ、かつ薬剤を眼に送達するための医療用装具であって:
涙点を通過する寸法を有する脱水共有結合架橋合成親水性ポリマーヒドロゲルを含み、該脱水ヒドロゲルが生理的水を吸収して、少なくとも約1mmの断面幅まで膨潤し、かつ小管に整合的に適合し、該ヒドロゲルが、眼への放出のためにヒドロゲル中に分散した治療薬を含み、該ヒドロゲルが、インビトロにおいて生理食塩水中で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容積%の含水量を有する、前記医療用装具。
【請求項2】
前記脱水ヒドロゲルが、小管への配置の10分以内に、少なくとも幅1mmに膨潤する、請求項1記載の医療用装具。
【請求項3】
前記ヒドロゲルが、長さが伸長され、かつ乾燥される、請求項2記載の医療用装具。
【請求項4】
前記伸張の量が、少なくとも約1.5倍でヒドロゲルの長さを増大させる、請求項3記載の医療用装具。
【請求項5】
機械援用を伴わず、ヒトへの作用薬の可視性を提供するのに有効な濃度で存在する可視化剤を更に含む、請求項1記載の医療用装具。
【請求項6】
約2日目の累積的放出率の合計と、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合の約75%の累積的放出の合計との間で、実質的に直線となる経時的な薬剤の放出のプロットの傾きから測定可能なように、薬剤の実質的な0次放出動態を提供する、請求項3記載の医療用装具。
【請求項7】
前記薬剤が、ヒドロゲル中に分散したミクロスフェアの集合物内でカプセル化され、該集合物が、約20〜約300μmのみの粒径の範囲、及び相対的に小さなミクロスフェアが該範囲内において、より大きな粒子と比べてより迅速に薬剤を放出することの結果としての0次放出を提供するのに必要なサイズ分布を有するように選択される、請求項6記載の医療用装具。
【請求項8】
前記直径範囲が、約20〜約150μmである、請求項7記載の医療用装具。
【請求項9】
追加的量の薬剤を含み、該追加的量が、ミクロスフェアへのカプセル化を伴わずにヒドロゲル内に分散されており、該追加的量が、経時的な累積的薬剤放出のプロットから測定可能なように、追加的量の薬剤の放出の初期バーストを提供し、該初期バーストが、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合に、0%〜約35%の薬剤の累積的放出の合計であり、かつミクロスフェアと関連する薬剤が、実質的に初期バーストに寄与しない、請求項7記載の医療用装具。
【請求項10】
前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、請求項9記載の医療用装具。
【請求項11】
本質的に、ヒドロゲル、薬剤を含有するミクロスフェア、及び追加的量の薬剤からなる、請求項10記載の医療用装具。
【請求項12】
前記薬剤が実質的に、水性溶液に不溶性である、請求項9記載の医療用装具。
【請求項13】
前記薬剤が実質的に、水性溶液に可溶性である、請求項9記載の医療用装具。
【請求項14】
前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物である、請求項1記載の医療用装具。
【請求項15】
前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を含む第1の合成水溶性ポリマーと、少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成する、請求項1記載の医療用装具。
【請求項16】
前記第1のポリマーが、ポリエチレングリコールを含み、前記第1の官能基が、スクシンイミドであり、かつ前記第2の官能基が、アミン及びチオールからなる群から選択される、請求項15記載の医療用装具。
【請求項17】
前記薬剤がラタノプロストであり、該ラタノプロストがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから、開放隅角緑内障又は高眼圧症に罹患している患者において眼圧亢進を低下させるのに有効な量で、少なくとも約4週間の期間に渡って放出され、所定の位置で膨潤したヒドロゲルが、約1立方mm以下の容積を有する、請求項1記載の医療用装具。
【請求項18】
前記薬剤がモキシフロキサシンであり、該モキシフロキサシンがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから眼の涙膜に、眼における黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌を実質的に減少させるのに有効な量で、少なくとも約6日間の期間に渡って放出可能であり、所定の位置で膨潤したヒドロゲルが、約1立方mm以下の容積を有する、請求項1記載の医療用装具。
【請求項19】
前記モキシフロキサシンが、塩基形態である、請求項18記載の医療用装具。
【請求項20】
ヒトの眼の涙点又は小管を通る涙流を遮断し、又は減少させ、かつ薬剤を眼に送達するための装具の製造方法であって:
加水分解的に分解可能な材料から複数のミクロスフェアを形成すること、該ミクロスフェアは薬剤を含有し、
該ミクロスフェアを洗浄すること、
該ミクロスフェアを分離して、約20〜約300μmの直径範囲を有するミクロスフェアの集合物を得ること、
該ミクロスフェアを合成ポリマーヒドロゲル前駆体と混合し、かつ管内で前駆体からヒドロゲルを形成すること、該ミクロスフェアは、ヒドロゲル中に分散しており、
該管からヒドロゲルを押し出すこと、
該ヒドロゲルの長さを少なくとも約2倍に伸張すること、生じるヒドロゲルの最大断面幅は、約1mm未満であり、
該ヒドロゲルを乾燥させること、
該乾燥したヒドロゲルを約5mm未満の長さに切断し又は分割すること、
及び約2日目の累積的薬剤放出率のおよその合計と、脱水ヒドロゲル装具がインビトロで生理的溶液中に配置される場合の約75%の累積的放出の合計との間で、実質的に直線となる経時的な該装具からの薬剤の放出のプロットの傾きから測定可能なように、薬剤について実質的に0次放出の動態を示すために、集合物の範囲内でミクロスフェア直径の分布を選択すること、
該脱水ヒドロゲルは生理的水を吸収して少なくとも約1mmの断面幅まで膨潤し、小管に整合的に適合し、かつ該ヒドロゲルは、インビトロにおいて生理食塩水で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容積%の含水量を有する、前記製造方法。
【請求項21】
前記脱水ヒドロゲルが、小管への配置の10分以内に、少なくとも幅1mmまで膨張する、請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
前記ヒドロゲルに、機械援用を伴わず、ヒトへの前記装具の可視性を提供するのに有効な濃度で可視化剤を配置させることを更に含む、請求項20記載の製造方法。
【請求項23】
追加的量の薬剤を、ミクロスフェアへのカプセル化を伴わずにヒドロゲルと混合することを更に含み、該追加的量が、経時的な累積的薬剤放出のプロットから測定可能なように、追加的量の薬剤の放出の初期バーストを提供し、該初期バーストが、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合に、0%〜約35%の薬剤の累積的放出の合計であり、かつミクロスフェアの製造又はロードの間に、ミクロスフェアと関連する薬剤が、実質的に初期バーストに寄与しない、請求項20記載の製造方法。
【請求項24】
前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、請求項20記載の製造方法。
【請求項25】
前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物である、請求項20記載の製造方法。
【請求項26】
前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を更に含む合成ポリマーヒドロゲル前駆体と、少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成する、請求項20記載の製造方法。
【請求項27】
前記薬剤が、ラタノプロスト又はモキシフロキサシンである、請求項20記載の製造方法。
【請求項28】
前記薬剤が、モキシフロキサシンであり、かつ塩基形態である、請求項27記載の製造方法。
【請求項29】
薬剤による眼の眼状態の治療方法であって:
脱水合成ヒドロゲルを眼の小管に配置し、それによって小管を通る涙流を遮断し、又は減少させることを含み、該脱水ヒドロゲルが生理的水を吸収して、配置の約10分以内に、少なくとも1mmの断面幅まで膨潤し、かつ小管に整合的に適合し、該ヒドロゲルが、眼への放出のためにヒドロゲル中に分散された治療薬を含み、かつ該ヒドロゲルが、インビトロにおいて生理食塩水で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容量%の含水量を有し、
前記ヒドロゲルが、小管で水和される場合に、約1立方mm未満の容積を有し、かつ眼状態を治療するのに有効な薬剤の量を、眼の涙膜中の薬剤の濃度から測定可能なように、少なくとも約6日間の期間に渡って放出する、前記方法。
【請求項30】
前記ヒドロゲルに、機械援用を伴わず、患者への作用薬の可視性を提供するのに有効な濃度で可視化剤を提供することを更に含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物であるか、又は
前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を含む第1の合成水溶性ポリマーと、少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成するか、又は
前記ヒドロゲルが、ポリエチレングリコールを含む第1の合成ポリマーの反応生成物であり、第1の官能基がスクシンイミドであり、かつ第2の官能基がアミン及びチオールからなる群から選択される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記薬剤がラタノプロストであり、該ラタノプロストがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから、開放隅角緑内障又は高眼圧症に罹患している患者において眼圧亢進を低下させるのに有効な量で、少なくとも約4週間の期間に渡って放出される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記薬剤がモキシフロキサシンであり、該モキシフロキサシンがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから眼の涙膜に、眼における黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌を実質的に減少させるのに有効な量で、少なくとも約6日間の期間に渡って放出される、請求項29記載の方法。
【請求項35】
前記モキシフロキサシンが、塩基形態である、請求項34記載の方法。
【請求項1】
ヒトの眼の涙点又は小管を通る涙流を遮断し、又は減少させ、かつ薬剤を眼に送達するための医療用装具であって:
涙点を通過する寸法を有する脱水共有結合架橋合成親水性ポリマーヒドロゲルを含み、該脱水ヒドロゲルが生理的水を吸収して、少なくとも約1mmの断面幅まで膨潤し、かつ小管に整合的に適合し、該ヒドロゲルが、眼への放出のためにヒドロゲル中に分散した治療薬を含み、該ヒドロゲルが、インビトロにおいて生理食塩水中で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容積%の含水量を有する、前記医療用装具。
【請求項2】
前記脱水ヒドロゲルが、小管への配置の10分以内に、少なくとも幅1mmに膨潤する、請求項1記載の医療用装具。
【請求項3】
前記ヒドロゲルが、長さが伸長され、かつ乾燥される、請求項2記載の医療用装具。
【請求項4】
前記伸張の量が、少なくとも約1.5倍でヒドロゲルの長さを増大させる、請求項3記載の医療用装具。
【請求項5】
機械援用を伴わず、ヒトへの作用薬の可視性を提供するのに有効な濃度で存在する可視化剤を更に含む、請求項1記載の医療用装具。
【請求項6】
約2日目の累積的放出率の合計と、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合の約75%の累積的放出の合計との間で、実質的に直線となる経時的な薬剤の放出のプロットの傾きから測定可能なように、薬剤の実質的な0次放出動態を提供する、請求項3記載の医療用装具。
【請求項7】
前記薬剤が、ヒドロゲル中に分散したミクロスフェアの集合物内でカプセル化され、該集合物が、約20〜約300μmのみの粒径の範囲、及び相対的に小さなミクロスフェアが該範囲内において、より大きな粒子と比べてより迅速に薬剤を放出することの結果としての0次放出を提供するのに必要なサイズ分布を有するように選択される、請求項6記載の医療用装具。
【請求項8】
前記直径範囲が、約20〜約150μmである、請求項7記載の医療用装具。
【請求項9】
追加的量の薬剤を含み、該追加的量が、ミクロスフェアへのカプセル化を伴わずにヒドロゲル内に分散されており、該追加的量が、経時的な累積的薬剤放出のプロットから測定可能なように、追加的量の薬剤の放出の初期バーストを提供し、該初期バーストが、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合に、0%〜約35%の薬剤の累積的放出の合計であり、かつミクロスフェアと関連する薬剤が、実質的に初期バーストに寄与しない、請求項7記載の医療用装具。
【請求項10】
前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、請求項9記載の医療用装具。
【請求項11】
本質的に、ヒドロゲル、薬剤を含有するミクロスフェア、及び追加的量の薬剤からなる、請求項10記載の医療用装具。
【請求項12】
前記薬剤が実質的に、水性溶液に不溶性である、請求項9記載の医療用装具。
【請求項13】
前記薬剤が実質的に、水性溶液に可溶性である、請求項9記載の医療用装具。
【請求項14】
前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物である、請求項1記載の医療用装具。
【請求項15】
前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を含む第1の合成水溶性ポリマーと、少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成する、請求項1記載の医療用装具。
【請求項16】
前記第1のポリマーが、ポリエチレングリコールを含み、前記第1の官能基が、スクシンイミドであり、かつ前記第2の官能基が、アミン及びチオールからなる群から選択される、請求項15記載の医療用装具。
【請求項17】
前記薬剤がラタノプロストであり、該ラタノプロストがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから、開放隅角緑内障又は高眼圧症に罹患している患者において眼圧亢進を低下させるのに有効な量で、少なくとも約4週間の期間に渡って放出され、所定の位置で膨潤したヒドロゲルが、約1立方mm以下の容積を有する、請求項1記載の医療用装具。
【請求項18】
前記薬剤がモキシフロキサシンであり、該モキシフロキサシンがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから眼の涙膜に、眼における黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌を実質的に減少させるのに有効な量で、少なくとも約6日間の期間に渡って放出可能であり、所定の位置で膨潤したヒドロゲルが、約1立方mm以下の容積を有する、請求項1記載の医療用装具。
【請求項19】
前記モキシフロキサシンが、塩基形態である、請求項18記載の医療用装具。
【請求項20】
ヒトの眼の涙点又は小管を通る涙流を遮断し、又は減少させ、かつ薬剤を眼に送達するための装具の製造方法であって:
加水分解的に分解可能な材料から複数のミクロスフェアを形成すること、該ミクロスフェアは薬剤を含有し、
該ミクロスフェアを洗浄すること、
該ミクロスフェアを分離して、約20〜約300μmの直径範囲を有するミクロスフェアの集合物を得ること、
該ミクロスフェアを合成ポリマーヒドロゲル前駆体と混合し、かつ管内で前駆体からヒドロゲルを形成すること、該ミクロスフェアは、ヒドロゲル中に分散しており、
該管からヒドロゲルを押し出すこと、
該ヒドロゲルの長さを少なくとも約2倍に伸張すること、生じるヒドロゲルの最大断面幅は、約1mm未満であり、
該ヒドロゲルを乾燥させること、
該乾燥したヒドロゲルを約5mm未満の長さに切断し又は分割すること、
及び約2日目の累積的薬剤放出率のおよその合計と、脱水ヒドロゲル装具がインビトロで生理的溶液中に配置される場合の約75%の累積的放出の合計との間で、実質的に直線となる経時的な該装具からの薬剤の放出のプロットの傾きから測定可能なように、薬剤について実質的に0次放出の動態を示すために、集合物の範囲内でミクロスフェア直径の分布を選択すること、
該脱水ヒドロゲルは生理的水を吸収して少なくとも約1mmの断面幅まで膨潤し、小管に整合的に適合し、かつ該ヒドロゲルは、インビトロにおいて生理食塩水で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容積%の含水量を有する、前記製造方法。
【請求項21】
前記脱水ヒドロゲルが、小管への配置の10分以内に、少なくとも幅1mmまで膨張する、請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
前記ヒドロゲルに、機械援用を伴わず、ヒトへの前記装具の可視性を提供するのに有効な濃度で可視化剤を配置させることを更に含む、請求項20記載の製造方法。
【請求項23】
追加的量の薬剤を、ミクロスフェアへのカプセル化を伴わずにヒドロゲルと混合することを更に含み、該追加的量が、経時的な累積的薬剤放出のプロットから測定可能なように、追加的量の薬剤の放出の初期バーストを提供し、該初期バーストが、脱水ヒドロゲルがインビトロで生理的溶液中に配置される場合に、0%〜約35%の薬剤の累積的放出の合計であり、かつミクロスフェアの製造又はロードの間に、ミクロスフェアと関連する薬剤が、実質的に初期バーストに寄与しない、請求項20記載の製造方法。
【請求項24】
前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、請求項20記載の製造方法。
【請求項25】
前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物である、請求項20記載の製造方法。
【請求項26】
前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を更に含む合成ポリマーヒドロゲル前駆体と、少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成する、請求項20記載の製造方法。
【請求項27】
前記薬剤が、ラタノプロスト又はモキシフロキサシンである、請求項20記載の製造方法。
【請求項28】
前記薬剤が、モキシフロキサシンであり、かつ塩基形態である、請求項27記載の製造方法。
【請求項29】
薬剤による眼の眼状態の治療方法であって:
脱水合成ヒドロゲルを眼の小管に配置し、それによって小管を通る涙流を遮断し、又は減少させることを含み、該脱水ヒドロゲルが生理的水を吸収して、配置の約10分以内に、少なくとも1mmの断面幅まで膨潤し、かつ小管に整合的に適合し、該ヒドロゲルが、眼への放出のためにヒドロゲル中に分散された治療薬を含み、かつ該ヒドロゲルが、インビトロにおいて生理食塩水で十分に水和される場合に、少なくとも約50重量%又は容量%の含水量を有し、
前記ヒドロゲルが、小管で水和される場合に、約1立方mm未満の容積を有し、かつ眼状態を治療するのに有効な薬剤の量を、眼の涙膜中の薬剤の濃度から測定可能なように、少なくとも約6日間の期間に渡って放出する、前記方法。
【請求項30】
前記ヒドロゲルに、機械援用を伴わず、患者への作用薬の可視性を提供するのに有効な濃度で可視化剤を提供することを更に含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記ヒドロゲルが、水中での化学加水分解によって自発的に分解する、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記ヒドロゲルが、フリーラジカル開始によって重合される複数の重合可能な基を含む第1の合成ポリマーの反応生成物であるか、又は
前記ヒドロゲルが、少なくとも3の第1の官能基を含む第1の合成水溶性ポリマーと、少なくとも3の第2の官能基を含む第2の合成水溶性ポリマーとの反応生成物であり、該第1及び第2の官能基が互いに反応して共有結合を形成し、それによって合成架橋ヒドロゲルとしてヒドロゲルを形成するか、又は
前記ヒドロゲルが、ポリエチレングリコールを含む第1の合成ポリマーの反応生成物であり、第1の官能基がスクシンイミドであり、かつ第2の官能基がアミン及びチオールからなる群から選択される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記薬剤がラタノプロストであり、該ラタノプロストがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから、開放隅角緑内障又は高眼圧症に罹患している患者において眼圧亢進を低下させるのに有効な量で、少なくとも約4週間の期間に渡って放出される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記薬剤がモキシフロキサシンであり、該モキシフロキサシンがインビボで、小管に配置されたヒドロゲルから眼の涙膜に、眼における黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌を実質的に減少させるのに有効な量で、少なくとも約6日間の期間に渡って放出される、請求項29記載の方法。
【請求項35】
前記モキシフロキサシンが、塩基形態である、請求項34記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2012−517330(P2012−517330A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550256(P2011−550256)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024029
【国際公開番号】WO2010/093873
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(509221607)インセプト エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024029
【国際公開番号】WO2010/093873
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(509221607)インセプト エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
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