説明

ヒドロシリル化方法

本発明の主題は、Hシラン及び線状の、環式の又は分枝したHシロキサンと炭素−炭素−二重結合又は炭素−炭素−三重結合を含有する化合物との、貴金属を用いた触媒作用下でのヒドロシリル化のための方法であって、触媒活性の改善のために、反応混合物の水含有量が最高1000ppmであり、かつこの触媒が液状で反応混合物に添加されることを特徴とする、ヒドロシリル化のための方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、H−シラン及び線状の、環式の又は分枝したH−シロキサンの炭素−炭素−二重結合又は炭素−炭素−三重結合を含有する化合物を用いた、貴金属を用いた触媒作用下でのヒドロシリル化のための方法であって、触媒活性の改善のために、反応混合物の水含有量が最高1000ppmであり、かつこの触媒が液状で反応混合物に添加されることを特徴とする、ヒドロシリル化のための方法である。
【0002】
A. Behr et al.はChemie Ingenieur Technik (1999), 71 (5), 490-493中で、アルコキシシランの水不含のヘキサクロロ白金酸を用いたヒドロシリル化を記載する。この使用される触媒はこの際、高真空中で260℃で乾燥される。この際、固体の触媒の計量供給は不利に作用し、というのもこれは、プロセスの実施及び計量供給の正確性に対して高度に技術的な手間を課すからである。この使用される乾燥方法は更に、非経済的であり、かつ大工業的に実際的でない。この記載される方法は更に、極めて高い白金濃度でもって作業され、その際この最も低い白金濃度は50ppmである。この乾燥された触媒は、吸湿性の固体であり、これにより、技術的なプロセスにおける貯蔵及び取り扱いは困難となる。
【0003】
ヨーロッパ特許公報EP 0 693 492 B1は、ジメチルクロロシラン(HM2)のアリルメタクリラートを用いた、周期表の第VIII副族の化合物又は金属から選択された貴金属触媒の存在下でのヒドロシリル化を記載し、その際アリルメタクリラート中のこの水含有量は最高200ppmである。このアリルメタクリラートは、モレキュラーシーブを用いて又は水非混合性溶媒を用いた共沸蒸留により乾燥される。この生じるメタクリルオキシプロピルジメチルクロロシランは、重合抑制剤の存在下で蒸留を用いて精製される。この方法は、不所望な副生成物α−メチルプロピオニルオキシプロピルジメチルクロロシランの少ない割合及び引き続く蒸留の間のゲル化の回避により特徴付けられる。
【0004】
L. LestelはPolymer Preprints (1989), 30 (1), 133-134で、ポリジメチルシロキサンとジアリル末端ポリエチレンオキシドとの、乾燥されたH2PtCl6粉末、1−オクタノール中に溶解されたヘキサクロロ白金酸及びキシレン中に溶解された1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラメチルジシロキサン白金錯体からなる群から選択される白金含有触媒の存在下でのヒドロシリル化を開示する。記載されたブロックコポリマーからなる膜の製造の際には、生じる水素によるふくれ形成は、水痕跡量の存在に起因すると見なされる。これは、水素脱離下でのペンタメチルジシロキサンと水との、シラノールへの反応(これは、自体で、水の遊離下で更にデカメチルテトラシロキサンを生じる)に基づき裏付けられる。
【0005】
国際特許出願WO2004/56907 A2は、親水性シロキサンコポリマーを記載し、これは、分子につき少なくとも1つの、ケイ素に結合した水素原子を有する有機ポリシロキサンと、アルケニルポリエーテルとのヒドロシリル化、及び、ジイソシアナートとの引き続く反応により製造され、但し、この粗原料有機ポリシロキサン及びアルケニルポリエーテルの水含有量は2000ppmより少ないとの条件付きである。この水含有量は、第2の反応工程における気泡形成を抑制するために、水とジイソシアナートとの副反応のために2000ppm未満に維持される。
【0006】
ドイツ国特許公報DE 101 33 008 C1は、白金含有触媒の存在下でのケイ素に結合した水素の脂肪族の炭素−炭素−多重結合への付加のための方法を開示し、この際、過酸の添加により、この白金触媒の触媒活性は得られるか又は上昇される。その酸化作用により、前記化合物は連続的な及び非連続的なヒドロシリル化において、触媒、白金の抑制された状態を再活性化し、かつコアクチベーター又は共触媒として作用することができる。この方法の欠点は、触媒活性を得るための、助剤の更なる添加である。
【0007】
本発明の課題は従って、使用される貴金属触媒の簡易な添加を可能にし、かつ、更なる助剤の添加無しに、同じくらいに高いか又はより高い触媒活性を保証する、ケイ素に結合した水素の炭素−炭素−多重結合へのヒドロシリル化のための、大工業的に使用可能な方法を提供することであった。
【0008】
この本発明の基礎となる課題は、意外にも、ヒドロシリル化組成物の水含有量が、1000ppm未満に維持され、かつ、この触媒が液状の形態で計量供給されることにより解決された。
【0009】
本発明の主題は従って、炭素−炭素−二重結合又は炭素−炭素−三重結合を含有する化合物(A)と、ケイ素に結合した水素を有する有機ケイ素化合物(B)との、触媒(C)としての第VIII副族の貴金属の化合物又は錯体を用いたヒドロシリル化のための方法であって、触媒活性の改善のために、この反応混合物の水含有量が最高で1000ppmであり、かつ、この触媒が、液状で反応混合物に添加され、但し、この貴金属濃度は、この全体の反応組成物に対して最高で50ppm、有利には25ppmである、との条件付きであることを特徴とする、ヒドロシリル化のための方法である。
【0010】
有利には、本発明による方法の反応混合物中の水含有量は、0.05〜500ppm、特に有利には0.1〜100ppmである。
【0011】
触媒の液状の計量供給及び反応混合物中での最高の水含有量1000ppmにより、より高い触媒活性が生じ、これにより、より少ない貴金属使用が必要となる。同時に、より短い装置使用時間(Anlagebelegzeit)が生じる。この液状の計量供給は技術的に特に簡易に実現でき、かつ、極めて正確である。従って、より確実なプロセスの実施が生じ、というのは、発熱反応の際にゆらぎがより少なくなるからである。
【0012】
本発明により使用される化合物(A)は、脂肪族不飽和基を有するケイ素不含の有機化合物、並びに、脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物であることができる。
【0013】
本発明による方法において成分(A)として使用されることができる有機化合物のための例は、全ての種類のオレフィン、例えば1−アルケン、1−アルキン、ビニルシクロヘキサン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4,7−メチレン−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、シクロペンテン、メチルシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2.5−ジエン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリアリルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、3−メチル−ヘプタジエン−(1,5)、3−フェニル−ヘキサジエン−(1,5)、3−ビニル−ヘキサジエン−(1,5)及び4,5−ジメチル−4,5−ジエチル−オクタジエン−(1,7)、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカルボナート、N,N′−ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2−メチルアリル)アミン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリル−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ジアリルマロン酸エステル、アリルアルコール、アリルグリコール、アリルグリシドエーテル及びアリルコハク酸無水物である。
【0014】
原則的に、本発明による方法は、アクリラート、例えばN,N′−メチレン−ビス(アクリル酸アミド)、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリアクリラート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリメタクリラート、トリプロピレングリコール−ジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジメタクリラート又はポリ(プロピレングリコール)メタクリラートの反応のためにも適している。
【0015】
更に、本発明による方法の際には、成分(A)として、脂肪族の不飽和の有機ケイ素化合物が使用されることができる。
【0016】
成分(A)として、脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合した残基を有する有機ケイ素化合物が使用される場合には、

【化1】

[式中、
Rは、同一又は異なることができ、かつ脂肪族の炭素−炭素−多重結合不含の有機残基を意味し、
1は、同一又は異なることができ、かつ、一価の、場合により置換された、SiC結合した炭化水素残基であって、炭素−炭素−多重結合を有する炭化水素残基を意味し、
aは、0、1、2又は3であり、かつ
bは、0、1又は2である、
但し、合計a+b≦4である、との条件付きである]、
の単位からなる有機ケイ素化合物が有利である。
【0017】
本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)とは、シラン、即ち、a+b=4を有する式(I)の化合物であってもよいし、シロキサン、即ちa+b≦3を有する式(I)の単位を有する化合物であってもよい。
【0018】
残基Rは一価の残基−F、−Cl、−Br、−CN、−SCN、−NCO、アルコキシ残基及びSiC結合した、場合により置換された炭化水素基を含み、これは酸素原子又は基−C(O)−で中断されていることができる。
【0019】
残基Rの例は、アルキル残基、例えばメチル残基、エチル残基、n−プロピル残基、イソプロピル残基、n−ブチル残基、イソブチル残基、t−ブチル残基、n−ペンチル残基、イソペンチル残基、ネオペンチル残基、t−ペンチル残基、ヘキシル残基、例えばn−ヘキシル残基、ヘプチル残基、例えばn−ヘプチル残基、オクチル残基、例えばn−オクチル残基及びイソオクチル残基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル残基、ノニル残基、例えばn−ノニル残基、デシル残基、例えばn−デシル残基、ドデシル残基、例えばn−ドデシル残基、及びオクタデシル残基、例えばn−オクタデシル残基、シクロアルキル残基、例えばシクロペンチル残基、シクロヘキシル残基、シクロヘプチル残基及びメチルシクロヘキシル残基、アリール残基、例えばフェニル残基、ナフチル残基、アントリル残基及びフェナントリル残基、アルカリール残基、例えばo−、m−、p−トリル残基、キシリル残基及びエチルフェニル残基、及びアラルキル残基、例えばベンジル残基、α−及びβ−フェニルエチル残基である。
【0020】
置換された残基Rの例は、ハロゲンアルキル残基、例えば、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル残基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル残基及びヘプタフルオロイソプロピル残基、並びにハロゲンアリール残基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル残基である。
【0021】
残基Rは有利に一価の、脂肪族の炭素−炭素−多重結合不含の、SiC結合した、置換又は非置換の、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素残基、特に有利に一価の、脂肪族の炭素−炭素−多重結合不含の、SiC結合した、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素残基、特にメチル残基又はフェニル残基である。
【0022】
残基R1は、SiH官能性化合物と付加反応(ヒドロシリル化)することができる任意の基であってよい。
【0023】
残基R1がSiC結合した、置換された炭化水素残基である場合には、置換基として、ハロゲン原子、シアノ残基、アルコキシ基及びシロキシ基が好ましい。
【0024】
残基R1は2〜16個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、例えばビニル残基、アリル残基、メタリル残基、1−プロペニル残基、5−ヘキセニル残基、エチニル残基、ブタジエニル残基、ヘキサジエニル残基、シクロペンテニル残基、シクロペンタジエニル残基、シクロヘキセニル残基、ビニルシクロヘキシルエチル残基、ジビニルシクロヘキシルエチル残基、ノルボルネニル残基、ビニルフェニル基及びスチリル残基であるのが有利であり、その際、ビニル残基、アリル残基及びヘキセニル残基が特に有利に使用される。
【0025】
有利には成分(A)として、全ての末端位のオレフィン及び全てのアリル含有、ビニル含有及びアルキン含有系であり、その際アリル含有系が特に有利である。
【0026】
有機ケイ素化合物(B)として、今までにもヒドロシリル化反応の際に使用されてきた全ての水素官能性有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0027】
Si結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物(B)として、有利には、式
【化2】

[式中、
2は、同一又は異なっていることができ、かつ、Rに対して挙げた意味合いを有する、
cは、0、1、2又は3であり、かつ
dは、0、1又は2である、
但し、合計c+d≦4であり、かつ、少なくとも1つのSiに結合した水素原子が分子につき存在する、との条件付きである]の単位を含有する有機ケイ素化合物が使用される。
【0028】
有利には、残基R2は、一価の残基、−F、−Cl、−Br、−CN、−SCN、−NCO及びSiC結合した、場合により置換された炭化水素残基、例えばアルキル残基、例えばメチル残基、エチル残基、n−プロピル残基、イソプロピル残基、n−ブチル残基、イソブチル残基、t−ブチル残基、n−ペンチル残基、イソペンチル残基、ネオペンチル残基、t−ペンチル残基、ヘキシル残基、例えばn−ヘキシル残基、ヘプチル残基、例えばn−ヘプチル残基、オクチル残基、例えばn−オクチル残基及びイソオクチル残基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル残基、ノニル残基、例えばn−ノニル残基、デシル残基、例えばn−デシル残基、ドデシル残基、例えばn−ドデシル残基、及びオクタデシル残基、例えばn−オクタデシル残基、シクロアルキル残基、例えばシクロペンチル残基、シクロヘキシル残基、シクロヘプチル残基及びメチルシクロヘキシル残基、アリール残基、例えばフェニル残基、ナフチル残基、アントリル残基及びフェナントリル残基、アルカリール残基、例えばo−、m−、p−トリル残基、キシリル残基及びエチルフェニル残基、及びアラルキル残基、例えばベンジル残基、α−及びβ−フェニルエチル残基を含有する群から選択されている。
【0029】
本発明により使用される有機ケイ素化合物(B)は、シラン、即ち、c+d=4を有する式(II)の化合物、またシロキサン、即ちc+d≦3を有する式(II)の単位を含有する化合物であってよい。有利には、本発明により使用される有機ケイ素化合物は、有機ポリシロキサン、特に、式(II)の単位からなる有機ポリシロキサンである。
【0030】
好ましくは、本発明により使用される有機ケイ素化合物(B)は、Si結合水素を、この有機ケイ素化合物(B)の全質量に対して0.02〜1.7質量%の範囲内で含有する。
【0031】
シロキサンの場合には成分(B)の分子量は、広範囲、例えば102〜106g/molで変動してよい。従って、成分(B)は、例えば比較的低分子のSiH官能性のオリゴシロキサン、例えばテトラメチルジシロキサンであってよいが、また鎖中又は末端のSiH基を有する高分子のポリジメチルシロキサン又はSiH基を有するシリコーン樹脂であってよい。また成分(B)を形成する分子の構造は限定されておらず、特に高分子、従ってオリゴマー又はポリマーのSiH含有のシロキサンの構造は直鎖状、環状、分枝鎖状又は樹脂状、網状であってよい。
【0032】
本発明による方法では成分(B)は有利には、成分(A)の脂肪族の不飽和基と成分(B)のSiH基のモル比が0.1〜20、そしてシロキサンの場合には有利には1.0〜5.0であるような量で使用される。
【0033】
本発明により使用される成分(A)及び(B)は市販製品であるか若しくは当該化学分野において慣用の方法により製造可能である。
【0034】
本発明による方法では、成分(C)として、従来にもSiに結合した水素の脂肪族不飽和化合物への付加のために使用されていた全ての触媒を使用することができる。かかる触媒のための例は、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及びパラジウムを含む貴金属の群の化合物又は錯体、例えば白金ハロゲン化物、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、白金−ケトン錯体、例えばH2PtCl6・6H2Oとシクロヘキサノンとの反応生成物、白金−ビニルシロキサン錯体、特に白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体であって検出可能な無機的に結合されたハロゲンを有するもの又は有さないもの、ビス−(γ−ピコリン)−白金二塩化物、トリメチレンジピリジン白金二塩化物、ジシクロペンタジエン白金二塩化物、ジメチルスルホキシドエチレン白金(II)二塩化物並びに四塩化白金とオレフィン及び第一級アミンもしくは第二級アミン又は第一級アミン及び第二級アミンとの反応生成物、例えば1−オクテン中に溶解された四塩化白金とs−ブチルアミンとからの反応生成物である。本発明による方法の更に好ましい一実施態様において、イリジウムとシクロオクタジエンとの錯体、例えばμ−ジクロロ−ビス(シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)が使用される。
【0035】
有利には、触媒(C)は、白金の化合物又は錯体、有利には白金塩化物及び白金錯体、特に白金−オレフィン錯体、特にとりわけ有利には白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。
【0036】
本発明による方法では、触媒(C)は、元素の貴金属として計算して、かつ材料中に存在する、本発明による成分(A)及び(B)の全質量に対して、1〜50質量ppmの量で使用される。有利には5〜25質量ppmが使用される。
【0037】
同様に有利な一実施態様において、一般式(III)
【化3】

[式中、
3は、同一又は異なっていることができ、かつ、上でRに対して挙げた意味合いを有する、
eは、1、2又は3である、かつ
fは1、2又は3である、
但し、合計e+f=4である、との条件付きである]
のシランが反応される。
【0038】
残基R3のための例は、特に−F、−Cl、−Br、−CN、−SCN、−NCO及び残基Rに対して挙げた、SiC結合した、置換されたか又は非置換のアルキル残基及びアリール残基並びにハロゲン原子置換されたアリール残基であり、その際メチル残基、プロピル残基、フェニル残基及びハロゲン化されたフェニル残基が有利であり、かつ、メチル残基及びハロゲン化されたフェニル残基が特に有利である。
【0039】
本発明による方法は、有機溶媒(D)の存在又は不在において実施することができる。
【0040】
有機溶媒(D)のための例は、これまでにもヒドロシリル化反応の際に使用されることができた全ての溶媒、例えばトルエン、キシレン、イソプロパノール、アセトン、イソホロン及びグリコールである。
【0041】
有機溶媒(D)が使用される場合には、これは有利にはトルエン、イソプロパノール及びグリコール並びに特に有利にはトルエンである。
【0042】
本発明による方法の際に有機溶媒(D)が使用される場合には、そのつど、この反応混合物の全質量に対して、有利には5〜60質量%、特に有利には5〜40質量%の量である。
【0043】
本発明による方法の際に、成分(A)〜(D)の他に、これまでにもヒドロシリル化反応の際に使用されてきた、更に全ての更なる物質(E)が使用されることができる。
【0044】
有利には、本発明による方法の際には成分(A)〜(E)の他に更なる物質は使用されない。
【0045】
本発明により使用される成分(A)ないし(E)は、そのつど、かかる成分の個々の種類であっても、かかる成分の種々異なる種類の少なくとも2種からなる混合物であってもよい。
【0046】
本発明による方法の際にはこの使用される成分は任意のかつ公知の方法に応じて相互に混合されることができる。有利には、本発明による方法の際には、触媒(C)を除く全ての剤が装入され、引き続きこの反応が触媒の添加により開始されるか、又は、SiH含有化合物(B)を除く全ての剤が装入され、SiH含有化合物が引き続き計量供給される。
【0047】
本発明による方法は、連続的に又は不連続的に実施することができる。
【0048】
本発明による方法の際には、Si結合した水素の脂肪族の多重結合への付加が、これまでに公知のヒドロシリル化反応と同じ条件下で行われることができる。この場合、20〜200℃、特に好ましくは60〜140℃の温度が好ましく、かつ1〜20barの圧力が好ましい。しかしながら、より高い又はより低い温度及び圧力を適用することもできる。
【0049】
本発明による方法で製造される有機ケイ素化合物は、これまでにも修飾された有機ケイ素化合物のために使用されてきた全ての目的のために使用されることができる。
【0050】
本発明による方法は、当初の触媒の触媒活性が顕著に高められ、かつ、延長されることができるので、顕著な触媒減少が達成されることができる利点を有する。
【0051】
更に、本発明による方法は、触媒減少により、二次的な効果、例えば改善された着色品質及び毒性の重金属のより少ない割合がヒドロシリル化生成物中、特にポリシロキサンで達成されることができる利点を有する。
【0052】
反応混合物中での最高1000ppmの水含有量は、相応する少ない水含有量を有する出発化合物の使用又は使用される出発化合物及び触媒の、例えば適した乾燥剤での前処理により達成されることができる。
【0053】
適した乾燥剤の例は、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、金属又はモレキュラーシーブである。H−シロキサンに適していないのは、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又は酸性アルミナであり、これは、SiHとの反応又は平衡化反応を生じる。特に有利には、H含有クロロシランの際には、乾燥剤としてのH不含クロロシラン、例えば四塩化ケイ素中での触媒の前混合である。
【0054】
触媒作用のための尺度として、ヒドロシリル化の反応開始後の発熱性の温度上昇までの時間が考慮されることができる。このために、SiH含有成分及びオレフィン性成分が混合され、かつ触媒の添加後に、この使用される温度上昇が追跡される。
【0055】
触媒作用のための更なる尺度は、均質でない開始混合物では、例えばポリエーテル/シリコーン混合物で澄明な混合物が存在するまでの時間である。
【0056】
実施例
1.)クロロシラン
A)「乾燥」無しの比較例(本発明によらない)
ガラスフラスコ100ml中にヘキサデセン29g(0.13モル)を室温で装入し、トリクロロシラン19.0g(0.14モル)と混合する。この反応混合物をドデセン中の白金触媒溶液(白金4質量%)0.05gと混合する。この反応混合物は約5分間後に強力な温度の上昇を示し、かつ、12分間後に最高温度に達する。この反応は15分後に終了している。
【0057】
B)本発明による実施例
乾燥:白金含有触媒溶液10gを2質量%のテトラクロロシランと室温で混合し、かつ15分間撹拌する。
【0058】
100mlのガラスフラスコ中でヘキサデセン29g(0.13モル)を室温で装入し、かつ、トリクロロシラン19.0g(0.14モル)と混合する。この反応混合物をドデセン中の乾燥した白金触媒溶液(4質量%の白金)0.05gと混合する。この反応混合物は約3分間後に強力な温度上昇を示し、かつ、8分間後に最高温度に達する。この反応は10分間後に終了している。
【0059】
2.)グリコール官能性シリコーンオイル
A)比較例 反応混合物中>1000ppmのH2Oでのヒドロシリル化(本発明によらない)
Si結合した水素0.055質量%及び55質量ppmの水含有量を有するα,ω−ジヒドロゲンポリジメチルシロキサン800gを、a:bの比=1.0、水含有量1619質量ppm及びヨウ素価(使用される、検査すべき材料100グラムにつき、脂肪族の多重結合への付加の際に必要とされるヨウ素量(g)を示す数がヨウ素価として呼ばれる)14.3を有する式
【化4】

のアリルアルコールエトキシラート/プロピルオキシラート1407gと混合した。
【0060】
この反応混合物を95℃に加熱し、かつ反応温度で、ジメトキシエタン中の1.25%のヘキサクロロ白金酸溶液2.20gと混合する。この反応混合物は6℃分だけ温まり、かつ反応開始15分後に均一になる。
【0061】
B)本発明による実施例
比較のために、前もって高真空中で2時間100℃で乾燥させたポリエーテルを使用することにより前述の例を繰り返す。このポリエーテルの水含有量はこれにより127質量ppmである。
【0062】
この反応混合物は8℃分だけ温まり、かつ、反応開始12分後に既に均一になる。
【0063】
3.)カルビノール官能性シリコーンオイル
A)比較例 反応混合物中>1000ppmのH2Oでのヒドロシリル化(本発明によらない)
アリルアルコール100g、トルエン113ml及び炭酸ナトリウム1g(水不含)を三口フラスコ中に装入し、かつ90℃に加熱する。白金触媒溶液(ジメトキシエタン中でのヘキサクロロ白金酸の1.25%溶液)2.0mlの添加後に、Si結合した水素0.22質量%を有するα,ω−ジヒドロゲンポリジメチルシロキサン585gを連続的に計量供給し、この結果この反応温度は90〜110℃である。この計量供給時間は1.5時間である。この反応混合物を更なる時間105℃に維持し、かつ引き続き室温に冷却する。反応の前進のための尺度として水素数を決定する。この水素数は55(目標値<10)であり、このため新たに触媒溶液(ジメトキシエタン中のヘキサクロロ白金酸の1.25%溶液)2.0mlを添加し、かつ、この反応混合物を更なる1.5時間105℃に加熱する。この褐色の反応溶液の水素数は8であり、かつ、この水含有量は1285ppmである。回転蒸発器で112℃/0.5時間/真空<1mbarでこの易沸物質を留去する。この残留物を濾過し、以下の特性を有するカルビノール官能性シリコーンオイルを得る:ハーゼン色数(Farbzahl Hazen)(DIN ISO 6271):54;水含有量:794ppm。
【0064】
B)本発明による実施例
比較のために、前もって高真空中で1時間90℃で加熱したα,ω−ジヒドロゲンポリジメチルシロキサンを使用することにより前述の例を繰り返す。白金触媒溶液の第2の添加は必要でなく、というのも水素数測定の第1の値は9であるからである。この生じるカルビノール可能性シリコーンオイルは以下の特性を有する:ハーゼン色数(DIN ISO 6271):6;水含有量:390ppm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素−炭素−二重結合又は炭素−炭素−三重結合を含有する化合物(A)と、ケイ素に結合した水素を有する有機ケイ素化合物(B)との、触媒(C)として第VIII副族の貴金属の化合物又は錯体を用いたヒドロシリル化のための方法であって、この反応混合物の水含有量が最高で1000ppmであり、かつ、この触媒が、液状で反応混合物に添加され、但し、この貴金属濃度は、この全体の反応組成物に対して最高で50ppmである、との条件付きであることを特徴とする、ヒドロシリル化のための方法。
【請求項2】
貴金属濃度が、この全体の反応組成物に対して5〜25ppmであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
この反応混合物の水含有量が、最高で100ppmであることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
触媒(C)として、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及びパラジウムを含む群からの貴金属の化合物又は錯体が使用されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
触媒(C)として、白金−オレフィン錯体又は白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が使用されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
60〜140℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
1〜20barの圧力で実施することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ケイ素に結合した水素を有する有機ケイ素化合物(B)が、一般式(II)
【化1】

[式中、
2は、同一又は異なる一価の残基であって、−F、−Cl、−Br、−CN、−SCN、−NCO、アルコキシ残基及びSiC結合した、置換されたか又は非置換の炭化水素残基(これは、酸素原子又は基−C(O)−で中断されていることができる)を含有する群から選択された残基、
cは、0、1、2又は3、及び
dは、0、1又は2、
但し、合計c+d≦4であり、かつ、少なくとも1つのSi結合した水素原子が分子につき存在する、との条件付きである]
の単位を含有する化合物を含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ケイ素に結合した水素を有する有機ケイ素化合物(B)が、一般式(III)
【化2】

[式中、
3は、同一又は異なる一価の残基であって、−F、−Cl、−Br、−CN、−SCN、−NCO、アルコキシ残基及びSiC結合した、置換されたか又は非置換の炭化水素残基(これは、酸素原子又は基−C(O)−で中断されていることができる)を含有する群から選択された残基、
eは、1、2又は3、及び
fは、1、2又は3
但し、合計e+f≦4である、との条件付きである]
のシランを含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
使用される出発化合物又は触媒の少なくとも1つ又は複数が、反応混合物中で最高で1000ppmの水含有量を達成するために、適した乾燥剤で前処理されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
乾燥剤として、H不含のクロロシランが使用されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
乾燥剤として、四塩化ケイ素が使用されることを特徴とする、請求項11記載の方法。

【公表番号】特表2009−513594(P2009−513594A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537047(P2008−537047)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067394
【国際公開番号】WO2007/048716
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】