説明

ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法

【課題】 本発明は、製膜性と厚みの均一性に優れ、かつ良好なヒネリ適性を有する極めて有用なヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 解決手段は、ポリエステルを溶融押出後、冷却ロールで固化したシートをまず横方向に第1段目延伸を行い、次いで巾方向に定長下熱処理した後、縦方向に第2段目延伸を行うヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、第1段目の横方向の延伸と第2段目の縦方向の延伸の間の熱処理をポリエステルのガラス転移温度〜ガラス転移温度+20℃の温度で0.5〜3秒間行って、フィルム表面の最大高さを5〜7μmにすることを特徴とするヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法に関し、さらに詳細には、製膜性と厚みの均一性に優れ、かつ優れたヒネリ適性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒネリ適性の優れたフィルムとして、透明性がよいセロハンが広く使用されてきた。しかしながら、セロハンは吸湿性を有するため特性が季節により変動し、一定の品質のものを常に供給することが困難であり、かつ厚みの不均一性に起因する加工性の悪さが欠点とされてきた。一方、ポリエチレンテレフタレートフィルムは強靱性、耐熱性、耐水性、透明性等の優れた特性の良さがある反面、ヒネリ適性が劣るためヒネリ包装用に用いることができないという欠点があった。
【0003】
かかる欠点を解消する方法として、共重合ポリエステルを二軸延伸した後、比較的高温(140〜235℃、好ましくは150〜230℃)で緊張熱処理を行い、配向度を低減させた(未延伸フィルムの平均屈折率をN0、二軸延伸フィルムの平均屈折率をN0とした時、0.003≦N1−N0≦0.021を満足させた)ポリエステルフィルムが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、該ポリエステルフィルムはヒネリ適性には優れているが、比較的高温で緊張熱処理を行うため、厚みの均一性がよくなく、その結果、印刷や蒸着等の加工工程でシワが発生しやすいという欠点があった。
【0005】
かかる欠点を解消する方法として、ポリエチレンテレフタレートを二軸延伸しただけの結晶化度が40%以下のポリエステルフィルムが開示されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、該ポリエステルフィルムはヒネリ適性と厚みの均一性に優れているが、二軸延伸後にタルミが発生しやすく、二軸延伸後にフィルムの両端を切断する際、または製品ロールに仕上げるために裁断する際に破断しやすく、かつ製品ロールに前記タルミに起因したシワが発生しやすいという欠点があり、いまだ満足されるものではなかった。
【特許文献1】特許2505474号公報
【特許文献2】特表2005−513225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来技術の問題点を解消することを目的とするものである。即ち、製膜性と厚みの均一性に優れ、かつ製品ロールにした際の外観に優れ、さらに優れたヒネリ適性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明は、ポリエステルを溶融押出後、冷却ロールで固化したシートをまず横方向に第1段目延伸を行い、次いで巾方向に定長下熱処理した後、縦方向に第2段目延伸を行うヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、第1段目の横方向の延伸と第2段目の縦方向の延伸の間の熱処理をポリエステルのガラス転移温度〜ガラス転移温度+20℃の温度で0.5〜3秒間行って、フィルム表面の最大高さを5〜7μmにすることを特徴とするヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、製膜性と厚みの均一性に優れ、かつ製品ロールにした際の外観に優れ、さらに優れたヒネリ適性を有するため、極めて有用なヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であるといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、エチレンテレフタレート成分を主たる構成成分とすることが得られたフィルムの耐熱性、耐水性等を確保する点から好ましい。
【0011】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、その目的を阻害しない範囲で他の共重合成分を含むことができる。使用できる他の共重合成分のうち、ジカルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。
【0012】
また、グリコール成分として、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物,ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が使用できる。このほか少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有する化合物を含んでいてもよい。
【0013】
本発明では、横方向に第1段目延伸を行ない、次いでポリエステルのガラス転移温度〜ガラス転移温度+20℃の温度で0.5〜3秒間、巾方向に定長熱処理し、次いで縦方向に第2段目延伸を行うことが必要である。
【0014】
第1段目の横方向の延伸と第2段目の縦方向の延伸の間に熱処理を行わない場合、またはポリエステルのガラス転移温度未満の温度で熱処理した場合、または熱処理時間が0.5秒未満の場合、得られたポリエステルフィルムの最大高さが5μm未満となり、ヒネリ適性が劣るため好ましくない。逆に、ガラス転移温度+20℃を超える温度および/または3秒を超える時間で熱処理した場合、得られたポリエステルフィルムの最大高さが7μmを越え、ヒネリ適性は良好であるが、縦方向に第2段目延伸を行う際にフィルムが破断しやすくなるため好ましくない。
【0015】
本発明では、第1段目延伸としてポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.0〜4.5倍横方向に延伸し、第2段目延伸としてポリエステルのガラス転移温度以上の温度で2.0〜4.5倍縦方向に延伸することが好ましい。
【0016】
第1段目延伸倍率が3.0未満の場合、および/または第2段目延伸倍率が2.0未満の場合、得られたポリエステルフィルムの厚みの均一性または平面性が悪く、ヒネリ包装機でのフィルムの走行性が劣るため好ましくない。逆に、第1段目延伸倍率が4.5倍を超える場合、および/または第2段目延伸倍率が4.5倍を超える場合、第2段目延伸でシワが発生することや第3段目延伸で破断することが多いため好ましくない。
【0017】
本発明では、第2段目の縦延伸後に第3段目延伸としてポリエステルのガラス転移温度以上の温度で1.05〜1.4倍の再横延伸を行ってもよい。
【0018】
本発明では、第2段目の縦延伸後または第3段目の再横延伸後に公知の巾方向を一定長とした熱固定処理を行うが、熱固定処理温度は80℃以上であることが好ましい。
【0019】
熱固定処理温度が80℃未満の場合、得られたポリエステルフィルムのヒネリ適性は優れているが、二軸延伸後にフィルムの両端を切断する際、または製品ロールに仕上げるために裁断する際に破断しやすく、かつ製品ロールに前記タルミに起因したシワが発生しやすいため好ましくない。
【0020】
本発明では、ポリエステルの極限粘度は、0.5dl/g以上であることが好ましい。極限粘度が0.5dl/g未満の場合、ポリエステルフィルムを製膜する際、破断が発生しやすく好ましくない。
【0021】
本発明では、ポリエステルフィルムの厚みは9〜25μmであることが好ましい。ポリエステルフィルムの厚みが9μm未満の場合、得られたフィルムをヒネリ包装に用いた場合、フィルムの腰感が劣るため好ましくない。逆に、25μmを超える場合、得られたフィルムのヒネリ適性が劣るため好ましくない。
【実施例】
【0022】
以下、実施例をもとに本発明を説明する。まず、実施例および比較例に用いた評価方法について説明する。
【0023】
(1)ポリエステルの極限粘度
ポリエステル0.1gをフェノール/テトラクロロエタン(容積比で3/2)の混合溶媒25ml中に溶解させ、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0024】
(2)ポリエステルのガラス転移温度
ポリエステルを300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷して得たサンプル10mgを用い、窒素気流中、示差走査型熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定し、接線法によりガラス転移温度を求めた。
【0025】
(3)ポリエステルフィルムの最大高さ(平均Rt)
3個のポリエステルフィルム片を(株)菱化システムの三次元非接触表面形状計測システム(KP−MI白黒CCDカメラ、MICROSCOPE MM−40カメラ、ユニバーサル照明装置 EPI−Uより構成)を用いて下記の光学条件と測定条件で測定したRt(中心線からの最高点と最低点の差)の平均値を最大高さ(平均Rt)とした。
【0026】
(光学条件)
波長:5600Å、対物レンズ:10倍、ズームレンズ:0.5倍、リレーレンズ:未使用、CCDカメラ:2/3インチ。
【0027】
(測定条件)
モード:Wave 560M、繰返し測定サイクル:1、測定領域:FieldX:480、Field Y:480、サンプリング間隔:1。
【0028】
(3)ポリエステルフィルムの厚みの均一性(TV(%))
ポリエステルフィルムの中央部から縦方向に巾4cm×長さ3mのフィルム片を切り出し、これを1mの長さに3分割したものを測定サンプルとする。該測定サンプルをアンリツ電気社製の連続厚み計(マイクロメーター:K306C、レコーダー:K310C)を用いて下記の条件で測定する。測定サンプル1m内の(最大値−最小値)を求め,3個の平均値(ΔT平均)を算出する。次いで、平均厚み(T平均:連続厚み測定後のフィルム片を3枚重ねて一方の端部から5cmのところを基準とし、5cmピッチでダイアルゲージを用いて18点測定し、18点の厚みの合計値を54で除した値)を算出する。次いで、TV=(ΔT平均/T平均)×100(%)を算出し、TVが8%以下を実用性ありと評価する。
【0029】
[連続厚みの測定条件]
フィルムの送り速度:1.5m/分
マイクロメーターのスケール:±5μm
レコーダーのハイカット:5Hz
レコーダーのスケール:±2μm
レコーダーのチャート速度:2.5mm/秒
レコーダーの測定レンジ:×1
【0030】
(4)ヒネリ適性
ポリエステルフィルムから10cm×10cmのサンプル片を切りだし、直径2cmの丸棒に5cmはみ出すように、長手方向に巻き付ける。次いで、はみ出した部分を360°ひねり、360°から戻った角度を測定する(n=100)。これらの平均値を求め、○を実用性ありと評価する。
○:ひねり戻り角度が75°以下
×:ひねり戻り角度が75°超
【0031】
実施例および比較例に用いたポリエステル原料、製膜条件、フィルムの最大高さ(平均Rt)、厚みの均一性、ヒネリ適性を表1に示す。
(1)A:ポリエチレンテレフタレート(極限粘度:0.62dl/g、ガラス転移温度:74℃、平均粒径:1.3μmの凝集シリカを1000ppm配合)
(2)B:ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート(エチレンイソフタレートの繰り返し単位10モル%、極限粘度:0.62dl/g、ガラス転移温度:72℃、平均粒径:1.3μmの凝集シリカを1000ppm配合)
【0032】
[実施例1]
ポリエステル原料としてポリエステルAを、120℃で24時間減圧乾燥(1.3hPa)し、単軸押出機を用いて280℃で溶融させた後、45cm幅のTダイより冷却ロール(周速50m/分)上へキャストして(冷却ロール周面に対向するように設置した直径が30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加し、0.2mAの電流を流して静電密着させて)未延伸シートを得た。該未延伸シートをテンターで予熱温度95℃、延伸温度92℃で横方向に3.7倍延伸し(第1段目延伸)、78℃で1秒間熱処理し、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に4.2倍延伸し(第2段目延伸)、さらに100℃で1.05倍再横延伸し(第3段目延伸)、その後100℃で定長巾熱固定処理して厚さ18μmのポリエステルフィルムを得た。
本実施例の方法は、表1からわかるように、最大高さが5.2μmであり、ヒネリ適性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であるといえる。
【0033】
[実施例2]
第1段目延伸後に熱処理温度を82℃とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステルフィルムを得た。
本実施例の方法は、表1からわかるように、最大高さが6.2μmであり、優れたヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であるといえる。
【0034】
[実施例3]
第1段目延伸倍率を3.5倍、第3段目延伸倍率を1.2倍とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステルフィルムを得た。
本実施例の方法は、表1からわかるように、最大高さが5.7μmであり、ヒネリ適性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であるといえる。
【0035】
[実施例4]
ポリエステル原料として、Aを80重量%とBを20重量%混合した原料を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステルフィルムを得た。
本実施例の方法は、表1からわかるように、最大高さが5.1μmであり、ヒネリ適性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であるといえる。
【0036】
[比較例1]
第1段目延伸後に熱処理温度を70℃とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステルフィルムを得た。
この方法は、表1からわかるように、最大高さが4.3μmであり、ヒネリ適性が劣るため、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好ましくない。
【0037】
[比較例2]
第1段目延伸後に熱処理を実施しなかった以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステルフィルムを得た。
この方法は、表1からわかるように、最大高さが4.0μmであり、ヒネリ適性が劣るため、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好ましくない。
【0038】
[比較例3]
第1段目延伸後の熱処理温度を100℃とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステルフィルムを得ようとしたが、第2段目延伸で破断することが多く、安定的にポリエステルフィルムを得られなかった。
この方法は、表1からわかるように、最大高さが7.3μmであり、ヒネリ適性は優れていたが、製膜性が劣るため、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好ましくない。
【0039】
[比較例4]
熱固定処理温度を50℃とした以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得ようとしたが、熱固定処理後でフィルムのタルミが著しく、フィルムの両端を切断する際、フィルムが破断しやすいためポリエステルフィルムを安定して得られなかった。
この方法は、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として好ましくない。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、製膜性に優れ、かつ得られたフィルムの厚みの均一性とヒネリ適性に優れており、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として極めて有用であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを溶融押出後、冷却ロールで固化したシートをまず横方向に第1段目延伸を行い、次いで巾方向に定長下熱処理した後、縦方向に第2段目延伸を行うヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、第1段目の横方向の延伸と第2段目の縦方向の延伸の間の熱処理をポリエステルのガラス転移温度〜ガラス転移温度+20℃の温度で0.5〜3秒間行って、フィルム表面の最大高さを5〜7μmにすることを特徴とするヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−196508(P2007−196508A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17430(P2006−17430)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】