説明

ヒンジ装置

【課題】 確実に表示パネル等の部材を所望の角度に維持することができるヒンジ装置を提供する。
【解決手段】ヒンジ機構は、ケーシングを形成するパネル11と、軸穴12に回転可能に保持されるシャフト20を含む。シャフト20には、これに相対回転不能なリング部材40が挿入され、その外周面には外歯41が形成されている。ロックプレート50の中間部56には、内歯51が形成され、内歯51と外歯41とが噛み合って、リング部材40が挟持される。ロックプレート50の基端部54を貫通する支軸53には、付勢手段としてスプリング60が取付けられ、ロックプレート50をシャフト20側へと付勢している。先端部55のカム穴58を作動ピン70が貫通し、作動ピン70はパネル11に形成されたガイド穴17に沿った直線運動するとともに、直線運動がカム穴58を介してロックプレート50の揺動運動に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば表示パネルの角度を調整することができるヒンジ装置に関し、より詳細には、調整後の表示パネルを固定することができるロック機構を有するヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パソコンのモニター等の表示パネルの角度を調整することができるヒンジ装置が知られている。例えば、特許文献1によれば、2つの部材間に設けられ、部材の相対的な回動を可能にするとともに、所望の角度を保持するためのトルクヒンジが記載されている。このトルクヒンジは、サイドカットボルトと、このサイドカットボルトの断面とほぼ同じ形状のボルト挿通孔が形成された合成樹脂性ワッシャおよび金属製ワッシャと、皿バネワッシャとを含み、これらワッシャを介してナットで緊締されることによって、トルクを得ることとしている。このような構成にすることによって、常に一定のトルクを比較的長期にわたり維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−151212号公報(JP2008−151212 A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記トルクヒンジは、一定のトルクを得ることによって、2つの部材は所望の角度を保持することができるが、一方の部材としてタッチパネルを用いた場合、ユーザがタッチパネルを押し付けるようにして使用することから、タッチパネルがヒンジを介して旋回してしまう可能性がある。
【0005】
この発明は、確実に表示パネル等の部材を所望の角度に維持することができるヒンジ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ケーシングと、前記ケーシングに回転可能に保持されるシャフトとを含むヒンジ装置の改良に関わる。
【0007】
この発明は、前記ヒンジ装置において、前記シャフトの回転を規制するロック機構を含み、前記ロック機構は、前記シャフトの周面に位置する一対のロックプレートと、前記ロックプレートを前記シャフト側へと付勢する付勢手段と、前記ケーシングに形成され前記シャフトに向かって延びるガイド穴を摺動可能な作動ピンとを含み、一対の前記ロックプレートは、支軸を介して揺動可能に前記ケーシングに取付けられた基端部と、前記基端部の反対側に位置する先端部と、前記基端部と先端部との間に位置し前記シャフトに接触してその回転を規制する中間部と、前記先端部に形成され前記作動ピンが挿入されるカム穴とを含み、前記作動ピンが前記ガイド穴に沿って直線運動をすると、前記カム穴を介して前記ロックプレートが前記付勢手段の付勢に抗して揺動運動をし、前記シャフトから離間されることを特徴とする。
【0008】
この発明の実施態様のひとつとして、前記シャフトの回転に対してトルクを発生させるトルク発生機構をさらに含む。
【0009】
他の実施態様のひとつとして、前記トルク発生機構は、前記ケーシング内において前記シャフトに相対回転不能に取付けられたリング部材と、前記リング部材と前記ケーシングとの間に取付けられた摩擦用ワッシャとを含む。
【0010】
他の実施態様のひとつとして、前記ロック機構は、前記シャフトの外周面に形成された外歯と、前記ロックプレートに形成された前記外歯に噛み合う内歯とを含む。
【0011】
他の実施態様のひとつとして、前記カム穴は、前記支軸と前記作動ピンとを結ぶ仮想中心線に対して傾斜する傾斜部と、前記傾斜部の両端において前記作動ピンを保持するピン保持部とを含み、一対の前記ロックプレートに形成された前記傾斜部は、互いに交差して前記作動ピンが挿入される。
【発明の効果】
【0012】
この発明のヒンジ装置は、シャフトの回転を規制するロック機構を含むこととしたので、シャフトの位置を固定することができる。したがって、ヒンジ装置が取付けられた表示パネル等が押し付けられた場合であっても、これが旋回してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ヒンジ機構の使用状態を示す斜視図。
【図2】ヒンジ機構の斜視図。
【図3】図2の平面図。
【図4】図2の分解組立図。
【図5】図4の一部分解組立図。
【図6】ケーシング内部を示す斜視図。
【図7】作動説明図。
【図8】作動説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施形態を、表示パネル2に取付けられるヒンジ機構1を例に挙げて説明する。図1は、ヒンジ機構1の使用状態の一例を示す斜視図である。図1に示したように、ヒンジ機構1は、一対のパネル11から形成されるケーシング10と、ケーシング10を貫通するシャフト20とを含む。ヒンジ機構1は、表示パネル2の裏面に取付けられ、パネル11から突出したシャフト20に脚3を係合することによって、当該表示パネル2と脚3とを連結している。また、パネル11には、上下に移動するアーム4が取付けられている。
【0015】
図2はヒンジ機構1の斜視図、図3は図2の平面図、図4は図2の分解組立図、図5は図4の一部についての分解組立図、図6は一方のパネル11を外してその内部を視認可能にした斜視図、図7および8はヒンジ機構1の作動説明図である。ヒンジ機構1は、ケーシング10と、ケーシング10の軸穴12に回転可能に保持されるシャフト20を含む。
【0016】
ケーシング10は、対向する一対のパネル11,11を含み、パネル11は、L字状に曲げられたブラケット13と側部14とを含む。パネル11は、ブラケット13を表示パネル2の裏面に対向させ、ネジ止めされる(図1参照)。側部14は、ボス15を介して互いにネジ止めされている。側部14には、軸穴12を貫通してシャフト20が保持されている。シャフト20の両端部には、ネジ孔24が形成され、このネジ孔24によって脚3とヒンジ機構1とが連結されている(図1参照)。
【0017】
図4に示したように、シャフト20は、その断面がほぼ真円になる円形領域21と、円形領域21の軸方向両側においてその一部が軸方向に面取りされたサイドカット領域22,23とを含む。円形領域21は、側部14に形成された軸穴12のいずれか一方で回転可能に保持されている。サイドカット領域22および23の一部は、側部14に形成された軸穴12から延出されている。この実施形態では一方のサイドカット領域22は、他方のサイドカット領域23よりも軸方向の長さ寸法が小さくなるようにされている。延出したサイドカット領域22,23には、複数のワッシャを介してナット31が螺合されている。ワッシャは、パネル11の側部14に隣接する摩擦用ワッシャ32と、その軸方向外側に位置し一対の金属ワッシャ33で挟まれた3枚の皿バネワッシャ34とを含む。これらワッシャは、サイドカット領域22,23の両方で同様のものが用いられている。摩擦用ワッシャ32は、合成樹脂性のものを用いることができる。これらワッシャをナット31で締め付けることによって、シャフト20の抜け止めをするとともに、シャフト20の回転に対してトルクを発生させることができる。
【0018】
シャフト20のパネル11間に位置する部分には、リング部材40と、リング部材40の軸方向両側に位置する一対の摩擦用ワッシャ35とが挿入されている。リング部材40の貫通孔42は、シャフト20のサイドカット領域23の断面とほぼ同じ形状を有し、リング部材40にシャフト20のサイドカット領域23を挿入することによって、これらが相対回転不能に取付けられる。摩擦用ワッシャ35は、プラスチック等の合成樹脂を用いることができる。パネル11の側部14は、ボス15を介してネジ止めすることによって、これらの間の摩擦力が大きくなるようにしている。したがって、シャフト20とパネル11とが相対回転した際には、この回転によってトルクが発生する。すなわち、シャフト20の回転に対して、パネル11間に位置する摩擦用ワッシャと、パネル11外に位置するワッシャ群とによってトルクが発生される。
【0019】
リング部材40の外周面には、外歯41が形成されている。外歯41のさらに外周側には、これに噛み合う内歯51を有する一対のロックプレート50が位置されている。図6〜8に示したように、ロックプレート50は、シャフト20の軸方向に直交するとともに、後述する支軸53と作動ピン70とを結ぶ仮想中心線P−Pに対称に形成されている。
【0020】
図5,6に示したように、ロックプレート50は、基端部54と、基端部54の反対側に位置する先端部55と、これら基端部54と先端部55の間に位置する中間部56とを有する。ロックプレート50は、基端部54から先端部55に向かって弧を描くように湾曲し、一方の基端部54と他方の基端部54、一方の先端部55と他方の基端部55とがそれぞれ互いに重なり、中間部56は互いに離間される。中間部56には、内歯51が形成され、内歯51と外歯41とが噛み合うことによって、ロックプレート50の間でリング部材40が挟持される。
【0021】
基端部54には、軸穴52が形成され、支軸53を介してロックプレート50がパネル11に取付けられている。支軸53は、上記軸穴52を貫通するとともに、パネル11の軸穴16に挿入され、ロックプレート50は、支軸53を中心に揺動可能とされている。支軸53には、パネル11とロックプレート50との間において、ワッシャ80が取付けられている。また、支軸53には、付勢手段としてスプリング60が取付けられている。スプリング60の一端61は、一方のロックプレート50の保持穴57に取付けられ、他端62は他方のロックプレート50の保持穴57に取付けられ、ロックプレート50は、シャフト20側へと付勢されている。
【0022】
ロックプレート50の先端部55には、カム穴58が形成され、作動ピン70が、互いに重なったこのカム穴58を貫通している。作動ピン70とロックプレート50との間には、ワッシャ72が取付けられている。カム穴58は、仮想中心線P−Pに対して傾斜する傾斜部58aと、傾斜部58aの両端において作動ピン70を保持するピン保持部として、第1および第2保持部58b,58cとを有している。傾斜部58aと第1および第2保持部58b,58cとの間には、それぞれ変局点R,Sが形成されている。変局点R,Sは、傾斜部58aにほぼ対称に形成され、これによって、第1および第2保持部58b,58cが、傾斜部58aにほぼ対称に形成されている。
【0023】
図2および4に示したように、カム穴58を貫通する作動ピン70は、その両端においてパネル11に形成されたガイド穴17で支持されている。ガイド穴17は、パネル11の側部14であって、仮想中心線P−Pに沿った直線上に形成されている。したがって、作動ピン70はガイド穴17に沿って直線運動をする。作動ピン70には、連結部材71が取付けられ、連結部材71には、アーム4が連結されている(図1参照)。アーム4は、表示パネル2の下方に延出し、このアーム4を上下に移動させることによって、連結部材71を介して作動ピン70を直線運動させることができる。
【0024】
図7は、シャフト20の回転が規制されたロック状態を示した図である。このロック状態は、アーム4が下方に位置している状態、すなわち作動ピン70が、カム穴58の第1保持部58bに位置されている。この状態においては、ロックプレート50がスプリング60によって、矢印A方向に付勢され、リング部材40の外歯41に対してロックプレート50の内歯51が噛み合っている。このような状態では、ロックプレート50によってシャフト20の回転が規制されているから、シャフト20とパネル11とが相対的に回転することができず、ユーザによって表示パネル2が押されたとしてもこれが旋回して動いてしまうことがない。作動ピン70は、カム穴58の第1保持部58bに位置するとともに、スプリング60の付勢によって、第1保持部58bから抜けることがない。しかも、第1保持部58bと傾斜部58aとの間には変局点Rを有しているから、作動ピン70は、この変局点Rを乗り越えない限り、第1保持部58bから傾斜部58aへと移動することができず、このロック状態を維持することができる。
【0025】
図8は、図7のロック状態を解除した図である。アーム4を上方に押し上げると、連結部材71を介して作動ピン70がガイド穴17に沿って図の上方に移動する。さらに、作動ピン70は、カム穴58の第1保持部58bから変局点Rを乗り越えて傾斜部58aへと移動し、傾斜部58aを第2保持部58cに向かって移動する。このようにカム穴58を摺動することによって、ロックプレート50が、スプリング60の付勢に抗して互いに離間する矢印B方向に旋回する。すなわち、作動ピン70の直線運動が、カム穴58を介してロックプレート50の揺動運動に変換される。
【0026】
ロックプレート50が矢印B方向に旋回すると、リング部材40の外歯41からロックプレート50の内歯51が離間して、シャフト20のロック状態が解除される。シャフト20が回転可能となるので、表示パネル2を旋回させて動かすことができ、ユーザの好みの角度に表示パネル2を傾けることができる。
【0027】
第2保持部58cに位置する作動ピン70は、スプリング60によって付勢されたロックプレート50によって、両側から押し付けられる。したがって、作動ピン70が、第2保持部58cから変局点Sを越えて傾斜部58aへと移動するのを防止することができる。すなわち、ピン70が第2保持部58cから脱落することなく、維持される。図7および8においては、分かり易いように第1および第2保持部58b, 58cと作動ピン70とに隙間を形成しているが、実際には、一対の第1および第2保持部58b,58cは、スプリング60の付勢によって、作動ピン70に接触している。
【0028】
シャフト20には、トルクが発生するので、表示パネル2が急速に回転するのを防止することができる。そして、好みの角度になったら、アーム4を図面下方に引っ張ってシャフト20の回転を規制し、この角度に表示パネル2を再びロックして、図7の状態にすることができる。
【0029】
この実施形態において、シャフト20を一対のロックプレート50によって、その外周面の二方向から回転を規制することとしているので、確実にその規制が可能となる。また、シャフト20の回転の規制を外歯41と内歯51との噛み合わせによって実現しているので、シャフト20の回転をより確実におこなうことができる。外歯41と内歯51との噛み合わせによって回転を規制することによって、スプリング60の付勢力を大きくしなくてもよい。この実施形態では、外歯、内歯およびスプリングによってこの発明のロック機構を形成している。
【0030】
この実施形態において、シャフト20にトルクを発生させるトルク発生機構として、摩擦用ワッシャ32および35を用いているが、これらの機構に限られることなく、例えば、流体を用いた回転ダンパ等を用いることもできる。また、ロック機構として、ロックプレート50とシャフト20との間の摩擦力を大きくすることによって、シャフト20の回転を規制することも考えられる。
【符号の説明】
【0031】
1 ヒンジ機構
10 ケーシング
17 ガイド穴
20 シャフト
32 摩擦用ワッシャ
35 摩擦用ワッシャ
40 リング部材
43 外歯
50 ロックプレート
51 内歯
53 支軸
54 基端部
55 先端部
56 中間部
58 カム穴
58a 傾斜部
58b 第1保持部(ピン保持部)
58c 第2保持部(ピン保持部)
60 スプリング(付勢手段)
70 作動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシングに回転可能に保持されるシャフトとを含むヒンジ装置において、
前記シャフトの回転を規制するロック機構を含み、
前記ロック機構は、前記シャフトの周面に位置する一対のロックプレートと、前記ロックプレートを前記シャフト側へと付勢する付勢手段と、前記ケーシングに形成され前記シャフトに向かって延びるガイド穴を摺動可能な作動ピンとを含み、
一対の前記ロックプレートは、支軸を介して揺動可能に前記ケーシングに取付けられた基端部と、前記基端部の反対側に位置する先端部と、前記基端部と先端部との間に位置し前記シャフトに接触してその回転を規制する中間部と、前記先端部に形成され前記作動ピンが挿入されるカム穴とを含み、
前記作動ピンが前記ガイド穴に沿って直線運動をすると、前記カム穴を介して前記ロックプレートが前記付勢手段の付勢に抗して揺動運動をし、前記シャフトから離間されることを特徴とする前記ヒンジ装置。
【請求項2】
前記シャフトの回転に対してトルクを発生させるトルク発生機構をさらに含む請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記トルク発生機構は、前記ケーシング内において前記シャフトに相対回転不能に取付けられたリング部材と、前記リング部材と前記ケーシングとの間に取付けられた摩擦用ワッシャとを含む請求項1または2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記シャフトの外周面に形成された外歯と、前記ロックプレートに形成された前記外歯に噛み合う内歯とを含む請求項1〜3のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記カム穴は、前記支軸と前記作動ピンとを結ぶ仮想中心線に対して傾斜する傾斜部と、前記傾斜部の両端において前記作動ピンを保持するピン保持部とを含み、一対の前記ロックプレートに形成された前記傾斜部は、互いに交差して前記作動ピンが挿入される請求項1〜4のいずれかに記載のヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−102629(P2011−102629A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258381(P2009−258381)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000152169)株式会社栃木屋 (50)
【Fターム(参考)】