説明

ヒータ装置

【課題】 ヒータ装置において、水分による絶縁低下に対する対策手法としてマグネシア粉末にシリコーン樹脂を混合する方法があるが、マグネシア自体の吸湿による絶縁低下は防止できても、マグネシア粉末間に侵入した水分はそのまま残り、残った水分の量が増えると絶縁低下を招くといった問題点を解決することを目的とする。
【解決手段】 シース内に無機絶縁粉体を充填して発熱線を収容し、シースの両端にスリーブを連結し、前記発熱線の端部をシースの両端に位置させ、発熱線の端部に非発熱線を接続して非発熱線の他端はスリーブ外に位置させたヒータ装置において、スリーブ内に吸湿絶縁粉体を収容したヒータ装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶やプラズマディスプレーなどを製造する装置などに使用するヒータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のヒータ装置の全体の縦断面図を示す。
【0003】
ヒータ装置1は、発熱部1−1と、発熱部1−1の両端に接続する非発熱線1−14、非発熱線1−24と、非発熱線1−14、非発熱線1−24のそれぞれの外端に接続するリード線1−7、リード線1−17とよりなる。発熱部1−1はシース1−4内に充填した無機絶縁粉体1−2内に発熱線1−3を収容する。
【0004】
非発熱線1−14は長さL3で、発熱線1−3と非発熱線1−14とは接続部1−100で接続され、スリーブ1−5の外端部には充填したシール部1−9が形成されている。リード線1−7はリード芯線1−6がリード被覆1−8で被覆されている。
【0005】
非発熱線1−24は長さL4で、発熱線1−3と非発熱線1−24とは接続部1−200で接続され、スリーブ1−15の外端部には充填したシール部1−19が形成されている。リード線1−17はリード芯線1−16がリード被覆1−18で被覆されている。
【0006】
ヒータ装置1の発熱部1−1の長さはL1である。
【0007】
ヒータ装置1の発熱部1−1において、ニクロムやニッケルなどの材質の発熱線1−3は、マグネシアなどの無機絶縁粉体1−2を充填したステンレス鋼などの材質の円筒状のシース1−4の中に置かれる。
【0008】
発熱線1−3の一端は、溶接などによって電気的に、ニッケルや銅などの材質の非発熱線1−14に接続される。非発熱線1−14も、無機絶縁粉体1−2を充填したシース1−4の中に置かれる。発熱線1−3と非発熱線1−14の接続部1−100は、シース1−4の内部にあって、非発熱長さL3を有する。
【0009】
したがって、スリーブ1−5は接続部1−100から十分な距離だけ離れていて、発熱線1−3からの熱が伝達しにくい。ステンレス鋼などの材質の円筒状のスリーブ1−5は、溶接などで隙間なくシース1−4に接合される。
【0010】
非発熱線1−14は、スリーブ1−5の端で、ガラスやエポキシ、テフロン(登録商標)などの材質のシール部1−9によって封じられ、周囲環境の水蒸気などがスリーブ1−5内部に入らないようになっている。非発熱線1−14は、ゴムなどの絶縁剤のリード被覆1−8で被覆されたリード線1−7の銅やニッケルなどのリード芯線1−6に、溶接や銀ロウなどで接続される。
【0011】
発熱線1−3の他端は、溶接などによって電気的に、ニッケルや銅などの材質の非発熱線1−24に接続される。非発熱線1−24も、無機絶縁粉体1−2を充填したシース1−4の中に置かれる。発熱線1−3と非発熱線1−24の接続部1−200は、シース1−4の内部にあって、非発熱長さL4を有する。
【0012】
したがって、スリーブ1−15は接続部1−200から十分な距離だけ離れていて、発熱線1−3からの熱が伝達しにくい。ステンレス鋼などの材質のスリーブ1−15は、溶接などで隙間なくシース1−4に接合される。
【0013】
非発熱線1−24は、スリーブ1−15の端で、ガラスやエポキシ、テフロン(登録商標)などの材質のシール部1−19によって封じられ、周囲環境の水分などがスリーブ1−15内部に入らないようになっている。非発熱線1−24は、ゴムなどの材質のリード被覆1−18で被覆されたり、リード線1−17のニッケルや銅などのリード芯線1−16に、溶接や銀ロウなどで接続される。
【0014】
このような構造のヒータ装置1では、特に発熱部1−11の長さL1が5メートル以上のように長い場合、その箇所に充填された無機絶縁粉体1−2に含まれる微量な水分が通電によって温度が上昇することにより蒸発し、温度が高い発熱部からシース1−4の内部を移動して温度の低いスリーブ1−5の中の無機絶縁粉体1−2まで移動して凝縮することが経験的にあった。
【0015】
同じく、無機絶縁粉体1−2に含まれる微量な水分が、通電によって温度が上昇することにより蒸発し、温度が高い発熱部から、シース1−4の内部を反対方向に移動して、温度の低いスリーブ1−15の中の無機絶縁粉体1−2まで移動して凝縮することが経験的あった。
【0016】
加熱長さL1が長いと、発熱部1−11の中の無機絶縁粉体1−2の総量が多くなり、それだけ含まれる水分の量が多いことになる。
【0017】
ここで、発熱線1−3は 高い電気抵抗を持ち発熱しやすい。非発熱線1−14や非発熱線1−24は、低い電気抵抗を持ち発熱しにくい。非発熱長さL3や非発熱長さL4が例えば50センチ以上あると、スリーブ1−5やスリーブ1−15の中の無機絶縁粉体1−2で低温になり、移動してきた水蒸気が凝縮するとスリーブ1−5やスリーブ1−15の内部でシース1−4と非発熱線1−24の間の絶縁抵抗が低下する。
【0018】
水分による絶縁低下に対する従来の対策手法として、特開2006−134671に示されるような、マグネシア粉末にシリコーン樹脂を混合する方法がある。これはシリコーン樹脂の熱処理などにより、マグネシア表面にシリコーン被膜を作り、水分がマグネシアに吸湿されるのを防ぐものであるが、この方法では、マグネシア自体の吸湿による絶縁低下は防止できるが、マグネシア粉末間に侵入した水分はそのままに残り、残った水分の量が増えると絶縁低下を招くという問題がある。
【特許文献1】特開2006−134671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ヒータ装置において、水分による絶縁低下に対する対策手法としてマグネシア粉末にシリコーン樹脂を混合する方法があるが、マグネシア自体の吸湿による絶縁低下は防止できても、マグネシア粉末間に侵入した水分はそのまま残り、残った水分の量が増えると絶縁低下を招くといった問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記の事情に鑑み、マグネシア自体の吸湿による絶縁低下は防止できるが、マグネシア粉末間に侵入した水分はそのままに残り、残った水分の量が増えると絶縁低下を招くという問題を解決すべく、シース内に無機絶縁粉体を充填して発熱線を収容し、シースの両端にスリーブを連結し、前記発熱線の端部をシースの両端に位置させ、発熱線の端部に非発熱線を接続して非発熱線の他端はスリーブ外に位置させたヒータ装置において、スリーブ内に吸湿絶縁粉体を収容したヒータ装置とした。
【0021】
また、本発明は、具体的には発熱線の長さが5メートル以上であるヒータ装置とした。
【0022】
さらに、本発明は、具体的にはスリーブの端末のシール部がガラスであるヒータ装置とした。
【0023】
さらにその上に、本発明は、具体的には発熱線が1芯又は2芯であるヒータ装置とした。
【0024】
また、本発明は、具体的には非発熱線の長さが50センチメートル以上であるヒータ装置とした。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、シース内に無機絶縁粉体を充填して発熱線を収容し、シースの両端にスリーブを連結し、前記発熱線の端部をシースの両端に位置させ、発熱線の端部に非発熱線を接続して非発熱線の他端はスリーブ外に位置させたヒータ装置において、スリーブ内に吸湿絶縁粉体を収容したヒータ装置としたので、絶縁低下の原因となる水分をスリーブ内部の無機絶縁粉体の中に混ぜたシリカゲルなどの吸湿材で吸収して、絶縁低下を防止することができる。
【0026】
また、本発明は、具体的には発熱線の長さが5メートル以上であるヒータ装置とした。
【0027】
さらに、本発明は、具体的にはスリーブの端末のシール部がガラスであるヒータ装置とした。
【0028】
さらにその上に、本発明は、具体的には発熱線が1芯又は2芯であるヒータ装置とした。
【0029】
また、本発明は、具体的には非発熱線の長さが50センチメートル以上であるヒータ装置とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、上記のような絶縁低下の原因となる水分を、スリーブ内部の無機絶縁粉体の中に混ぜたシリカゲルなどの吸湿材で吸収して、絶縁低下を防止することにある。
【0031】
本発明を図2のヒータ装置の全体の縦断面図により説明する。
【0032】
ヒータ装置2は、発熱部2−1と、発熱部2−1の両端に接続する非発熱線2−14、非発熱線2−24と、非発熱線2−14、非発熱線2−24のそれぞれの外端に接続するリード線2−7、リード線2−17とよりなる。
【0033】
発熱部2−1はシース2−4内に充填した無機絶縁粉体2−2内に発熱線2−3を収容する。
【0034】
非発熱線2−14は長さL5で、発熱線2−3と非発熱線2−14は長さL5で、発熱線2−3と非発熱線2−14とは接続部2−100で接続され、スリーブ2−5の外端部には充填したシール部2−9が形成されている。リード線2−7はリード芯線2−6がリード被覆2−8で被覆されている。スリーブ2−5には吸湿絶縁粉体2−20が収容されている。
【0035】
非発熱線2−24は長さL6で、発熱線2−3と非発熱線2−24とは接続部2−200で接続され、スリーブ2−15の外端部には充填したシール部2−19が形成されている。リード線2−17はリード芯線2−16がリード被覆2−18で被覆されている。スリーブ2−15には吸湿絶縁粉体2−30が収容されている。
【0036】
ヒータ装置2の発熱部2−1の長さはL2である。
【0037】
発熱部2−1において、ニクロムやニッケルなどの材質の発熱線2−3は、マグネシアなどの無機絶縁粉体2−2を充填した、ステンレス鋼などの材質の円筒状のシース2−4の中に置かれる。
【0038】
発熱線2−3の一端は、溶接などによって電気的に、ニッケルや銅などの材質の非発熱線2−14に接続される。非発熱線2−14も、無機絶縁粉体2−2を充填したシース2−4の中に置かれる。発熱線2−3と非発熱線2−14の接続部2−100は、シース2−4の内部にあって、非発熱長さL5を有する。したがって、スリーブ2−5は接続部2−100から十分な距離だけ離れていて、発熱線2−3からの熱が伝達しにくい。ステンレス鋼などの材質の円筒状のスリーブ2−5は、溶接などでシース2−4に隙間なく接合される。非発熱線2−14は、電気絶縁性を持つ吸湿粉体2−20を充填したスリーブ2−5の端で、ガラスやエポキシ、テフロン(登録商標)などの材質のシール部2−9によって封じられ、周囲環境の水分などが内部に入らないようになっている。非発熱線2−14は、ゴムなどの材質のリード被膜2−8で被覆されたリード線2−7のニッケルや銅のリード芯線2−6に、溶接や銀ロウなどで接続される。
【0039】
発熱線2−3の他端は、溶接などによって電気的に、ニッケルや銅などの材質の非発熱線2−24に接続される。非発熱線2−24も、無機絶縁粉体2−2を充填したシース2−4の中に置かれる。発熱線2−3と非発熱線2−24の接続部2−200は、シース2−4の内部にあって、非発熱長さL6を有する。したがって、スリーブ2−15は接続部2−200から十分な距離だけ離れていて、発熱線2−3からの熱が伝達しにくい。ステンレス鋼などの材質のスリーブ2−15は、溶接などでシース2−4に隙間なく接合される。非発熱線2−24は、電気絶縁性を持つ吸湿粉体2−30を充填したスリーブ2−15の端で、ガラスやエポキシ、テフロン(登録商標)などの材質のシール部2−19によって封じられ、周囲環境の水分などが内部に入らないようになっている。非発熱線2−24は、ゴムなどの材質のリード被膜2−18で被覆されたリード線2−17のリード芯線2−16に、溶接や銀ロウなどで接続される。
【0040】
ここで、発熱線2−3は、高い電気抵抗を持ち、発熱しやすい。非発熱線2−14や非発熱線2−24は低い電気抵抗を持ち、発熱しにくい。
【0041】
このような構造のヒータ装置2では、特に発熱部2−11の中さL2が5メートル以上のように長い場合、その箇所に充填された無機絶縁粉体2−2に含まれる微量な水分が、通電によって温度が上昇することにより蒸発し、温度が高い加熱部から、シース2−4の内部を移動して、温度の低いスリーブ2−5の中の吸湿粉体2−20まで移動しても、凝縮せずに吸湿粉体2−20に吸着される。
【0042】
同じく、無機絶縁粉体2−2に含まれる微量な水分が、通電によって温度が上昇することにより蒸発し、温度が高い発熱部からシース2−4の内部を反対方向に移動して、温度の低いスリーブ2−15の中の吸湿粉体2−30まで移動しても、凝縮せずに吸湿粉体2−30に吸着される。
【0043】
スリーブ2−5やスリーブ2−15の中の吸湿粉体2−20や吸湿粉体2−30で、移動してきた水分が吸着されると、スリーブ2−5やスリーブ2−15の内部でシース2−4と非発熱線2−14や非発熱線2−24の間の絶縁抵抗が低下しない。
【0044】
非発熱長さL5や非発熱長さL6が例えば50センチ以上あると、発熱線2−3から距離が離れ、スリーブ2−5やスリーブ2−15では温度が十分低下している。そのような場合に、水蒸気の吸湿粉体2−20、吸湿粉体2−30での吸湿効果は大きい。
【0045】
ここで、スリーブ2−5、スリーブ2−15の内部に充填された吸湿粉体2−10や吸湿粉体2−20は、シリカゲル粉体でもよいし、そのほかの電気絶縁の良い吸湿粉体でもよい。また、マグネシアやシリカなどの無機絶縁粉体に一定量のシリカゲル等の吸湿粉体を混ぜたようなものでもよい。
【0046】
また、スリーブ2−5、スリーブ2−15の内部の絶縁材全体を吸湿粉体とするのではなく、通電時、スリーブの発熱部に近い部分が高温となり、水分の凝縮の恐れがない場合は、図3のように発熱部に近い部分の絶縁材は発熱部2−1と同じ無機絶縁粉体2−2としてもよい。
【0047】
さらに、図4のように、吸湿粉体または無機絶縁粉体にシリカゲル等の吸湿粉体2−10を混ぜた粉体をスリーブの中間位置に設けてもよい。なお、図3、図4は図2の左側スリーブ部を図示しているが、右側スリーブ部も同様である。
【0048】
シール部2−9やシール部2−19の材質は、ガラスやエポキシ、あるいはテフロン(登録商標)であってもよい。
【0049】
シース部2−4は、ここでは一体形状のパイプのような形状で示されているが、いくつかの短いパイプを互いに溶接して長くしたパイプのような構造でも構わない。
【0050】
ここで、ヒータ装置2は、発熱線2−3が一本だけシース2−4の内部にあり、シース2−4の両端にスリーブ2−5やスリーブ2−15が接続される、いわゆる1芯両端子タイプであるが、シース内部に2本の発熱線を有し、ヒータの片方の端で発熱線はシースと絶縁されたまま折り返し、ヒータのもう一方の端だけにスリーブがあって、リード線2本と発熱線2本が各々接続されるいわゆる2芯片端子タイプであっても構わない。そのときは、吸湿粉体は一つのスリーブの中だけにある。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、シース内に発熱線を収容したヒータ装置について述べたが、シース内に熱電対素線を収容した測温装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来のヒータ装置の全体の縦断面図である。
【図2】ヒータ装置の全体の縦断面図である。
【図3】図2の左側スリーブ部の要部断面図である。
【図4】図2の右側スリーブ部の要部断面図である。
【符号の説明】
【0053】
2−4…シース
2−2…無機絶縁粉末
2−3…発熱線
2−5,2−15…スリーブ
2−14,2−24…非発熱素線
2−20,2−30…吸湿粉体(吸湿絶縁粉体)
2−9,2−19…シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シース内に無機絶縁粉体を充填して発熱線を収容し、シースの両端にスリーブを連結し、前記発熱線の端部をシースの両端に位置させ、発熱線の端部に非発熱線を接続して非発熱線の他端はスリーブ外に位置させたヒータ装置において、スリーブ内に吸湿絶縁粉体を収容したヒータ装置。
【請求項2】
発熱線の長さが5メートル以上である請求項1記載のヒータ装置。
【請求項3】
スリーブの端末のシール部がガラスである請求項1記載のヒータ装置。
【請求項4】
発熱線が1芯又は2芯である請求項1記載のヒータ装置。
【請求項5】
非発熱線の長さが50センチメートル以上である請求項1記載のヒータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−123775(P2008−123775A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304894(P2006−304894)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000140454)株式会社岡崎製作所 (34)
【Fターム(参考)】