説明

ヒータ装置

【課題】本発明の目的は、電気二重層コンデンサの容量を小さくし、かつ従来と同様に加熱ヒータを加熱できるヒータ装置を提供することにある。
【解決手段】ヒータ装置10は、加熱ヒータ12、電気二重層コンデンサ14、加熱ヒータ12に取り付けられたタップ16、およびタップ16に取り付けられたスイッチS1,S2,S3を備える。タップ16に接続されたスイッチS1,S2,S3を切り替えることによって、加熱ヒータ12の抵抗値を調節する。制御部24は、電流値の低下に応じて加熱ヒータ12の抵抗値を下げるようにスイッチS1,S2,S3を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機のドラムなどの被加熱体を加熱するヒータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機を使用する場合、加熱ヒータでドラムを加熱する必要がある。常時、加熱ヒータでドラムを加熱しているとエネルギーロスが大きい。そのため、複写機の電源がオンであっても、長時間使用されなければドラムの加熱を中止し、使用時に再び加熱をおこなう省電力機能が普及されている。
【0003】
しかし、省電力機能によってドラムが冷えると、再び複写機を使用するときには、ドラムを早急に加熱する必要がある。例えば、緊急に書類の複写が必要になった場合、ドラムの加熱に時間をかけることはできない。したがって、複写機の省電力機能を利用せず、常時、ドラムを加熱している場合がある。
【0004】
そこで、図4に示すように、予め電気二重層コンデンサ14に電気エネルギーを充電しておき、ドラム20の加熱をその電気エネルギーで補助する装置30が下記の特許文献1に開示されている。この補助により、ドラム20の加熱を早くすることができる。具体的には、電気二重層コンデンサ14は、20F/2.5V、内部抵抗5mΩ以下、直径35mm、長さ120mmであり、40本直列接続することで100Vのモジュールとなる。加熱ヒータは、主発熱部材18と補助発熱部材12bから構成される。主発熱部材は18、電源から電力供給される100V、1200Wのハロゲンヒータである。補助発熱部材12bは、電気二重層コンデンサ14から電力供給される100V、1000Wと100V、700Wのハロゲンヒータから構成される。
【0005】
例えば、直径40mm、厚さ0.7mmのドラム20であれば、主発熱部材18の1200Wの電力であれば加熱に約30秒かかる。主発熱部材18と補助発熱部材12bの両方から合計2900Wの電力が供給されることで、約10秒で加熱できる。
【0006】
補助発熱部材12bの仕様は、上記のように100V、1700Wである。100V印加時の電流は17Aである。17Aの電流で100Vに充電された20Fの電気二重層コンデンサ14を1秒間放電させると、0.85Vの電圧降下が生じる。したがって、1秒間の消費エネルギーは1693Jとなる。この要領で電気二重層コンデンサ14が放電することによる電圧降下を加味して10秒間に補助発熱部材12bに供給されるアシストエネルギーの総量は、約15700Jとなる。この場合の補助発熱部材12bに対する補助加熱を表1に示す。表1より、時間とともに補助発熱部材12bに対する電圧・電流などが低下し、アシストエネルギーも徐々に低下していくことがわかる。
【0007】
【表1】

【0008】
ここで、15700Jのエネルギーが必要な電気二重層コンデンサ14の容量は、0.5CVより、3.14Fである。ここで、Cは容量、Vは電圧である。実際に必要な電気二重層コンデンサ14の容量よりも遙かに大きな容量の電気二重層コンデンサ14を使用していることとなる。この理由としては以下のようになる。
【0009】
上記の3.14Fの容量の電気二重層コンデンサ14を使用するとする。10秒間で100%の電気エネルギーを放電させるとすると、放電直後は電流が100Aになる。補助発熱部材12bは100Vで10000Wとなる。このような巨大出力の補助発熱部材12bをドラム20に組み込むことは不可能である。この場合の補助加熱を表2に示す。
【0010】
【表2】

【0011】
また、上述した20Fの半分の10Fの電気二重層コンデンサ14であっても3.14Fの倍以上もある。10秒間で14515Jのエネルギーしか補助発熱部材12bに供給できず、10秒間でドラム20の補助加熱が完了できない(表3参照)。したがって、ドラム20の加熱が完了するために10秒以上かかる。
【0012】
【表3】

【0013】
以上のことをまとめると、電気二重層コンデンサ14は、蓄電量の低下に比例して端子電圧が低下する。ヒータのような発熱部材に電気エネルギーを供給する場合、端子電圧の低下による電力供給の低下を保証するため、必要以上に大きな容量の電気二重層コンデンサ14を使用する必要が生じている。
【0014】
また、電気二重層コンデンサ14の容量を小さくすると、発熱部材12bの通電電流の最大値が大きくなる。そのため、発熱部材12bの大容量化が必要になり、ドラム20への組み込みが困難になる。
【0015】
【特許文献1】特開2006−58732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、電気二重層コンデンサの容量を小さくし、かつ従来と同様に加熱ヒータを加熱できるヒータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のヒータ装置は、加熱ヒータと、前記加熱ヒータに電流を流すための電源となる電気二重層コンデンサと、前記加熱ヒータに取り付けられたタップと、前記タップに接続され、加熱ヒータの抵抗値を調節するスイッチとを備える。電気二重層コンデンサに充電された電気エネルギーを使用して加熱ヒータに電流を流し、加熱する。加熱ヒータにタップを接続し、タップに取り付けられたスイッチを切り替えることによって加熱ヒータに流れる電流を調節する。
【0018】
前記加熱ヒータに流れる電流値を計測する電流計測部と、前記電流値に応じてスイッチの切り替えをおこなう制御部とを備える。スイッチの切り替えは電流計測部が計測した電流値に基づいておこなう。
【0019】
前記制御部は、前記電流値の低下に応じて加熱ヒータの抵抗値を下げるようにスイッチを切り替える。加熱ヒータの抵抗値を下げることにより、電流値が高くなる。
【0020】
前記電気二重層コンデンサの端子電圧を計測し、前記端子電圧に応じてスイッチの切り替えをおこなう制御部を備える。電流ではなく、電気二重層コンデンサの端子電圧を計測してスイッチの切り替えをおこなう。
【0021】
前記制御部は、前記端子電圧の低下に応じて加熱ヒータの抵抗値を下げるようにスイッチを切り替える。加熱ヒータの抵抗値を下げることにより、電流値が高くなる。
【0022】
前記加熱ヒータは、複写機のドラムを加熱する。複写機のスタート時にドラムの加熱を補助する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のヒータ装置は、スイッチの切り替えにより加熱ヒータに流れる電流を調節するため、電気二重層コンデンサの容量を小さくしても、従来と同じ加熱をおこなうことができる。したがって、電気エネルギーの利用効率がよい。また、複写機にヒータ装置を搭載した場合、電気二重層コンデンサの設置スペースを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明について図面を用いて説明する。ヒータ装置は、複写機のスタート時の加熱を補助するものである。
【0025】
図1のヒータ装置10は、加熱ヒータ12、電気二重層コンデンサ14、加熱ヒータ12に取り付けられたタップ16、およびタップ16に取り付けられたスイッチS1,S2,S3を備える。
【0026】
加熱ヒータ12は、ハロゲンヒータやセラミックヒータなどが用いられる。加熱ヒータ12は、複写機のスタート時に主加熱ヒータ18を補助するためのものである。すなわち、加熱ヒータ12は複写機のスタート時にドラム20の加熱を補助する。
【0027】
電気二重層コンデンサ14は、加熱ヒータ12に電流を流すための電源となる。主加熱ヒータ18は、電源26から得られる電力で電流が流れる。
【0028】
加熱ヒータ12には、複数のタップ16が接続されている。タップ16に接続されたスイッチS1,S2,S3を切り替えることによって、加熱ヒータ12の抵抗値を調節することができる。図1ではタップ16の数を3個にしているが、適宜変更可能である。
【0029】
加熱ヒータ12に流れる電流値によってスイッチS1,S2,S3の切り替えを制御する。そのための構成として、加熱ヒータ12に流れる電流の値を計測する電流計測部22と、電流値に応じてスイッチS1,S2,S3を切り替える制御部24とを備える。
【0030】
電流計測部22は、ホールCTやシャント抵抗を使用して電流を計測するものである。図1ではホールCTを示している。電流を計測する箇所は、図1で示すような加熱ヒータ12の端部に限定されず、適宜変更可能である。
【0031】
制御部24は、電流値に応じて切り替え信号を出力する回路である。スイッチS1,S2,S3は、機械的な接続の切り替えをおこなうリレーまたは電気的なオン・オフが可能なFETである。制御部24からの切り替え信号によってスイッチS1,S2,S3のオン・オフが切り替えられる。
【0032】
電気二重層コンデンサ14の端子電圧は、充電量に比例する。加熱ヒータ12で電気エネルギーが使用されることによって、徐々に端子電圧が低下する。したがって、制御部24は、電流値の低下に応じて加熱ヒータ12の抵抗値を下げるようにスイッチS1,S2,S3を切り替える。抵抗値が下がることにより、再び電流値を上げることができる。電流値が上がることにより、ドラム20に与えるエネルギーを増加できる。具体的な内容については後で説明する。
【0033】
その他、複写機に接続された電源26から電気二重層コンデンサ14を充電するための充電回路28、複写機がオンになったときに加熱ヒータ12および主加熱ヒータ18をオンにするためのスイッチS4,S5を備える。
【0034】
次に、ヒータ装置10で補助加熱が可能であることを説明する。具体的に、電気二重層コンデンサ14の仕様は13F/100Vである。加熱ヒータ12の抵抗は5.88Ω、最大電流17Aである。タップ16の数を3個にし、加熱ヒータ12は図2のように抵抗R1〜R4に分割される。この条件で10秒間に加熱ヒータ12に供給されるエネルギーを表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
表4に示すように、電気二重層コンデンサ14の蓄電エネルギーは徐々に低下するが、3秒、6秒、9秒でスイッチS1,S2,S3の切り替えをおこなって、加熱ヒータ12の抵抗値を下げている。抵抗値が下がることにより、再び加熱ヒータ12に流れる電流の値を最大値(17A)まで高めている。表4より、加熱ヒータ12に供給されたアシストエネルギーの総和は15708Jである。20Fの電気二重層コンデンサ14を使用した従来技術(表1)よりも少し大きいエネルギーが加熱ヒータ12に供給されている。すなわち、従来よりも小容量の電気二重層コンデンサ14で従来と同じ補助加熱が可能である。
【0037】
さらに、表4の条件とほぼ同じにして、加熱ヒータ12に流れる電流を18Aに上げ、電気二重層コンデンサ14の容量を10Fに下げたときの加熱の状態を表5に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
表5の場合、加熱ヒータ12に供給されるエネルギーの総量は15890Jである。加熱ヒータ12に1Aだけ高い電流を流しても耐えられるのであれば、10Fの電気二重層コンデンサ14であっても10秒間の補助加熱が可能である。
【0040】
以上のように、本発明は加熱ヒータ12にタップ16を接続して抵抗値が切り替えられるようにすることにより、小さな容量の電気二重層コンデンサ14で従来と同じだけの補助加熱が可能となる。電気二重層コンデンサ14の容量および形状を小さくすることができ、複写機への搭載スペースを縮小できる。エネルギーの利用効率もよく、環境への負荷が小さくなる。
【0041】
以上、本発明について実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。加熱ヒータ12に流れる電流を計測するのではなく、電気二重層コンデンサ14の端子電圧を計測してスイッチS1,S2,S3の切り替えをおこなってもよい(図3)。この場合、電気二重層コンデンサ14の端子電圧を計測し、端子電圧に応じてスイッチS1,S2,S3の切り替えをおこなう制御部24bを備える。制御部24bは、電圧計と信号発信器とを備える回路である。電気二重層コンデンサ14の端子電圧は徐々に低下するため、所定の電圧になったときにスイッチS1,S2,S3の切り替えをおこなう。
【0042】
また制御部24bは、端子電圧の低下に応じて加熱ヒータ12の抵抗値を下げるようにスイッチS1,S2,S3を切り替える。電気二重層コンデンサ14の放電によって加熱ヒータ12に流れる電流値が下がるため、端子電圧が低下したときに加熱ヒータ12の抵抗値を小さくして、加熱ヒータ12に流れる電流を高める。スイッチS1,S2,S3の切り替えをおこなったときに、加熱ヒータ12に流れる電流が最大値になるようにする。
【0043】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のヒータ装置の構成を示す図である。
【図2】補助加熱をおこなうための等価回路を示す図である。
【図3】電気二重層コンデンサの端子電圧を計測する場合の等価回路を示す図である。
【図4】従来のヒータ装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10:ヒータ装置
12:加熱ヒータ
14:電気二重層コンデンサ
16:タップ
18:主加熱ヒータ
20:ドラム
22:電流計測部
24:制御部
26:電源
28:充電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ヒータと、
前記加熱ヒータに電流を流すための電源となる電気二重層コンデンサと、
前記加熱ヒータに取り付けられたタップと、
前記タップに接続され、加熱ヒータの抵抗値を調節するスイッチと、
を備えたヒータ装置。
【請求項2】
前記加熱ヒータに流れる電流値を計測する電流計測部と、
前記電流値に応じてスイッチの切り替えをおこなう制御部と、
を備えた請求項1のヒータ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電流値の低下に応じて加熱ヒータの抵抗値を下げるようにスイッチを切り替える請求項2のヒータ装置。
【請求項4】
前記電気二重層コンデンサの端子電圧を計測し、前記端子電圧に応じてスイッチの切り替えをおこなう制御部を備えた請求項1のヒータ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記端子電圧の低下に応じて加熱ヒータの抵抗値を下げるようにスイッチを切り替える請求項4のヒータ装置。
【請求項6】
前記加熱ヒータは、複写機のドラムを加熱する請求項1乃至5のいずれかのヒータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−21018(P2010−21018A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180512(P2008−180512)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】