説明

ヒートシール可能なフィルター材料

【課題】ティ−バッグ等に用いるフィルター材料において、ヒートシール能力が優れ且つヒートシールの縫い目強さを十分に有するフィルター材料を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのヒートシール不可能な第1層、及び合成材料の繊維からなり、かつ接着促進剤として無水マレイン酸官能基とグラフト重合したポリオレフィンを含む少なくとも1つのヒートシール可能な第2層を含むフィルター材料において、第1層と第2層とを互いに部分的に浸透することにより製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥状態及び湿潤状態において、ヒートシール後のシールの縫い目強さが優れており、少なくとも1つのヒートシールが不可能な繊維材料の層、及び合成材料からなり、かつ接着促進剤を含むヒートシール可能な第2の層を含む、ヒートシール可能なフィルター材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱湯でお茶を入れるために、お茶又は他の物品を袋にパックして使用することが知られている。ヒートシール可能な合成材料又はヒートシール可能な合成繊維の第2層は、高速包装機でヒートシールすることによって袋を閉じるのに用いる。合成材料又は合成繊維として使用できるものには、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体、また各種のポリエステルがある。
【0003】
これらの袋の材料は、ペーパー・マシンにおける湿潤状態での工程、織機における乾燥状態での工程又は支持層上に重合繊維を敷くことによるメルト−ブローン工程を用いて既知の方法で製造することができる。
【0004】
材料の第1層の坪量は、一般的には8から40g/mの範囲内であり、好ましくは10から20g/mまでの範囲内である。重合体繊維である第2層の坪量は、1から15g/mまでの範囲内であり、好ましくは1.5から10g/mまでの範囲内である。
【0005】
紅茶バッグ用のヒートシール可能な紙がEP-A-0 380 127に記述されており、その紙は、坪量が10から15g/mであり、ヒートシールのためにポリプロピレン及び/又はポリエチレン及び/又は塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体などの重合体が供給されている。
【0006】
特に紅茶バッグ及びコーヒーバッグ又はフィルターを生産するための、坪量が8から40g/mまでの間であるフィルター材料がEP-A-0 656 224に記述されており、ヒートシール可能な層は、重合体繊維、好ましくはポリプロピレン又はポリエチレンから成り、その層は、高温状態で天然繊維から成る第1層の上に敷かれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、ヒートシール可能なフィルター材料は、ヒートシールにより形成されたシールの縫い目が様々な用途に対して十分に強固ではないという不利益がある。
【0008】
いくつかの事例では、それらは、まだ包装機上にある間に、あるいは沸騰水に触れた後に再び開く。
【0009】
このことの1つの理由は、高速包装機上で充填しヒートシールしたティーバッグの生産を、1分間に約1000バッグというサイクル時間で行うからである。
【0010】
ヒートシールのロールは、通常150から230℃の温度で、0.1秒以下のサイクル時間でバッグをシールする。これらの短いサイクル時間の終わりには、作製されたシールの縫い目を、中身が漏れることがないように堅く閉じなければならない。しかしながら、この通りにならないことは頻繁にある。
【0011】
シールの縫い目強さが不十分であるもう1つの理由は、ティーバッグの形状は、消費者の需要に合わせられているからであり、現在、ますます注目を引いている円形の例がある。この円形のティーバッグは、同じ水準で充填するのに従来の長方形のバッグの約半分であるシールの縫い目幅を有し、そのことは、開く危険性を高めている。
【0012】
ヒートシールが使用可能な繊維の部分を、フィルター材料の総評量に基づいて、50%以上となるように増加することによってシールの縫い目強さを高めようとすると、フィルター材料の強さや剛性などの機械的なプロパティが減少する。さらに、ヒートシール可能な重合体繊維の部分を増加することにより、フィルター材料の障壁のプロパティは増加し、このことにより紅茶の抽出がはっきりと抑えられる。しかしながら、これらのプロパティは滑らかなパッキング操作に必要であるので、このアプローチによって、フィルター材料は、優れたヒートシール能力並びに乾燥状態及び湿潤状態における十分なシールの縫い目強さを有することにならない。
【0013】
本発明の目的は、ヒートシール能力が優れており、乾燥状態及び湿潤状態においてシールの縫い目強さが十分にあり、上述した従来の技術の不利益を克服するフィルター材料を提供することにある。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、そのようなフィルター材料を製造する工程について説明することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ここで、驚いたことに、接着促進剤を用いることにより、ヒートシール能力及びシールの縫い目強さに関して優れたプロパティを提供するヒートシール可能なフィルター材料が提供されるということを発見した。
【0016】
従って、本発明は、少なくとも1つのヒートシールが不可能な第1層、並びに合成材料の繊維及び接着促進剤を含む少なくとも1つのヒートシール可能な第2層を含むフィルター材料を提供する。
【0017】
接着促進剤を、合成材料の繊維を含むヒートシール可能な層に用いることにより、本発明によるフィルター材料には、適した装置を用いるという手段により、本発明による前記フィルター材料(上記の)から形成されるヒートシールの縫い目は熱水に対する安定性が高いというプロパティが与えられる。
【0018】
ここで用いられる、本発明の目的における熱水に対する安定性とは、本発明に従って前記フィルター材料から製造されるフィルターバッグのヒートシ−ルの縫い目が4分間煎じた後でもまだ無傷であるいうことを意味するとして解する。
【0019】
好ましい実施態様では、本発明による前記フィルター材料を、超音波処理によりヒートシールすることが可能である。
【0020】
いかなる理論に拘束されることなく、本発明の発明者らは、接着促進剤を用いることにより、少なくとも1つの第1層の上に敷かれる前記ヒートシール可能な繊維が入るのは接着ボンドだけでなく、少なくとも1つのヒートシール不可能な第1層の繊維材料との化学結合にもまた入ると考えている。このことにより強度が増大し、ヒートシール能力及びシールの縫い目強さに関して、得られたフィルター材料のプロパティが優れたものとなる。
【0021】
本発明による使用に好ましい接着促進剤は、修飾されたポリオレフィン(特にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体など)であり、特にマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,βが個々に不飽和化されているジカルボン酸、又はそれらの無水物、エステル、アミド及びイミドの群から選ばれた少なくとも1つのモノマーとグラフト重合している。有用な接着促進剤には、さらにアクリル酸、メタクリル酸等のα,βが個々に不飽和化されたカルボン酸及び/又は亜鉛もしくはナトリウムとのそれらの金属塩及び/又はそれらのアルキル(C−C)エステルとエチレンの共重合体が挙げられ、それらは同様に、特にマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,βが個々に不飽和化されたジカルボン酸、又はそれらの無水物、エステル、アミド及びイミドの群から選ばれた少なくとも1つのモノマーとグラフト重合している可能性がある。有用な接着促進剤には、さらにポリオレフィン(特にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体又はエチレン−α−オレフィン共重合体など)が挙げられ、それらは、アクリル酸、メタクリル酸等のα,βが個々に不飽和化されたカルボン酸及び/又は亜鉛もしくはナトリウムとそれらの金属塩及び/又はそれらのアルキル(C−C)エステルとエチレンとの共重合体とグラフト重合している。本発明のために特に有用な接着促進剤は、α,βが個々に不飽和化されたジカルボン酸無水物、特に無水マレイン酸とグラフト重合したポリオレフィン(特にエチレン−α−オレフィン共重合体)である。
【0022】
本発明に従って用いられる前記接着促進剤は、好ましくは0.1から5重量%、特に0.2から2重量%のα,βが個々に不飽和化されたジカルボン酸の遊離官能基、例えば無水マレイン酸基を含む。
【0023】
本発明による前記フィルター材料中に含まれる前記接着促進剤の量は、合成材料の繊維を含む少なくとも第2のヒートシール可能な層の重量に基づいて、典型的には2から25重量%までの範囲内、好ましくは、5から20重量%までの範囲内、さらに好ましくは5から15%までの範囲内である。
【0024】
本発明の1つの実施態様では、合成材料の繊維を含む少なくとも1つのヒートシール可能な第2層のための開始材料は、例えばDE 197 19 807 A1又はDE 102 06 926 A1に記述されているように、天然もしくは合成繊維及び生分解性の熱分解性プラスチック重合体からの繊維でよい。
【0025】
本発明のさらなる実施態様では、合成材料繊維を含む少なくとも1つのヒートシール可能な第2層のための開始材料は、天然もしくは合成繊維からの繊維、及び例えばポリプロピレンもしくはポリエチレンもしくはその混合物等のポリオレフィン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体又はポリエステル由来の無極性疎水性重合体でもよい。
【0026】
合成材料の繊維を含む少なくとも1つの前記ヒートシール可能な第2層のみならず、本発明による前記フィルター材料は、好ましくは天然繊維及び/又はセルロース誘導体繊維である少なくとも1つの層も含む。
【0027】
前記フィルター材料において、これらの天然繊維及び/又はセルロース誘導体繊維が占める割合は、既に製造されたフィルター材料の紙の重量に基づいて、典型的には前記フィルター材料のうち50から99.95重量%までの範囲内、好ましくは65から99.9重量%までの範囲内、好ましくは80から99.5重量%までの範囲内である。
【0028】
本発明のために有用な天然繊維には、麻、マニラ麻、ジュート、サイザル麻等の当業者に知られている天然繊維及び繊維が長い木材パルプも挙げられる。
【0029】
本発明のために有用なセルロース誘導体繊維は、再生セルロースから成る繊維でもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明による前記フィルター材料及びそれらの製造の実施態様についてさらに詳しく説明する。
【0031】
一般に、前記ヒートシール可能な材料から成る繊維及び前記接着促進剤のみならず、本発明による前記フィルター材料は、天然素材を含み、好ましくは天然素材から成る少なくとも1つのさらなる成分を含む。
【0032】
従って、この本発明の好ましい実施態様では、本発明による前記フィルター材料は、2つ以上の異なる成分の層から製造され、少なくとも1つの層は天然繊維を含み、1つの層は、ヒートシール可能な材料の繊維と接着促進剤の混合物を含み、それゆえに、少なくとも2つの層は、前記フィルター材料の製造後、互いに部分的に浸透することができる。前記層の相互浸透の程度は、前記フィルター材料の製造工程を通じて調整することができ、例えば、ペーパー・マシンを用いた場合、スクリーン上で脱水する程度を調整することにより可能である。
【0033】
本発明による前記フィルター材料をペーパー・マシンで製造する場合、第2層は通常、天然繊維の混合物、合成材料の繊維及び接着促進剤を含む。この混合物を、ペーパー・マシンで、天然繊維の第1層の上に敷くことができ、それ故に紙の層だけでなく、互いに融合することができる。
【0034】
本発明による前記フィルター材料をメルトブローン工程によって製造する場合、第2層は通常、合成材料の繊維及び接着促進剤を含む。この繊維の混合物を、天然繊維の第1層の上にメルトブローンすることが可能であり、それ故に紙の層だけでなく、互いに融合することができる。
【0035】
前記フィルター材料の第1層の坪量は、通常8から40g/mまでの間であり、好ましくは10から20g/mまでの範囲内である。DIN ISO 9237の通気度は、300から4000l/m・sまでの範囲内であり、好ましくは500から3000l/m・sまでの範囲内である。
【0036】
前記フィルター材料の第2層の坪量は通常、1から15g/mまでの間であり、好ましくは1.5から10g/mまでの範囲内である。
【0037】
前記フィルター材料の第1層(天然繊維及び/又は再生セルロース繊維を含み、好ましくはそれらから成る)は、湿潤強度を有するように構成されるのが好ましい。
【0038】
本発明による第1層(天然繊維及び/又は再生セルロース繊維を含み、好ましくはそれらから成る)には、通常は麻、マニラ麻、ジュート、サイザル麻及び他の繊維が長い木材パルプ等の既知の天然繊維を用い、好ましくはその混合物及び/又は再生セルロース繊維も用いる。
【0039】
少なくとも一つのヒートシール可能な第2層は、ヒートシール可能な材料及び接着促進剤から成る繊維を含み、又はその繊維から成る。第2層は、特に本発明による前記フィルター材料を、ペーパー・マシンで製造する場合、上記の構成成分だけでなく特に天然繊維といったさらなる構成成分を含むことが好ましく、3分の1が天然繊維、3分の2がヒートシール可能な重合体の繊維である比率で混合することが好ましい。
【0040】
本発明によるフィルター材料は、例えばティーバッグ、コーヒーバッグ又は紅茶もしくはコーヒーのフィルターを製造するために用いることが可能である。
【0041】
上述したように、本発明による前記フィルター材料を製造する工程は、第2層の前記ヒートシール可能な繊維は、前記第1層に部分的に浸透し、従って前記第1層の繊維、好ましくは前記第1層の天然繊維を、例えば前記ペーパー・マシンでの乾燥操作の最中に、溶融状態で包むことによって制御される。しかしながら、本発明によると、濾過のために必要な細孔は塞がないようにする。
【0042】
本発明により用いることが可能な製造工程を、2層のフィルター材料を例として、図を参照してさらに詳しく説明する。
【0043】
図1は、例としてペーパー・マシンを用いた天然繊維及び合成繊維から本発明のフィルター材料を製造する際の各種の段階を示す概括的な概念図である。
【0044】
図1は、本発明による前記フィルター材料の製造を示す概念図である。図1a)は、天然繊維1から成る第1の繊維層の形成体及びヒートシール可能な合成繊維2を含む第2の繊維層の形成体を表す。繊維2を含む第2層の形成は、天然繊維1より形成される第1層の上に敷くことにより生じる。図でそれらを識別するために、天然繊維1を水平な線の網掛けで示し、ヒートシール可能な繊維2をほぼ垂直な線の網掛けで示す。
【0045】
図1b)は、前記2層、特に繊維2を含む第2層を上述したように脱水することにより、2層の部分的な相互浸透がどのように成し遂げられて、その結果、合成繊維2は、最後には前記天然繊維1の間に入ることを示す。
【0046】
さらなる製造段階において、相互に部分的に浸透している層1及び層2を乾燥し、かつその乾燥過程において合成繊維2が溶融して、少なくとも部分的に繊維1を包むようにそれを囲むに至るようにする。このようにして、前記フィルター材料がヒートシール可能となるようにする(図1c)。
【0047】
図2は、本発明によるフィルター材料を製造するのに用いることが可能であるペーパー・マシンの基本構造を示す。サスペンション“A”は、細かくした天然繊維及び水から形成される。さらに、サスペンション“B”は、ヒートシール可能な材料の繊維と接着促進剤の混合物、並びに例えば天然繊維である任意の他の繊維並びに水より製造される。
【0048】
これらの2つのサスペンションA及びBを、各々の容器(3及び4)からヘッドボックスを経てペーパー・マシンに送る。それは、いくつかの脱水室(6,7及び8)を通って循環しているスクリーン(5)を不可欠なものとして備えている。
【0049】
適した配管及び揚水手段(図に表していない)は、サスペンションAを、最初の2つの脱水室6の上にあるスクリーン5の上に通し、脱水室6及び脱水ラインを通して水を吸い取るように用いられる。前記工程において、天然繊維1の第1層は、動いているスクリーン5の上で製造される。スクリーン5が脱水室7を通って動き続ける時、第2のサスペンションBが供給され、合成繊維の第2層を、脱水室7の上にある第1層の上に敷く。その過程で、前記脱水ラインを通じて脱水する。前記重ねられた2つの繊維層を有する前記スクリーン5がさらに移動するうちに、脱水室8の上で脱水操作が行われ、2つの層は、互いに部分的に浸透するようになる。浸透の程度は、脱水の程度を適切に調整することによって変えることが可能である。
【0050】
製造した材料9は、天然繊維及び重合体繊維から成り、次に前記スクリーンから離れ、乾燥操作に送られる。この乾燥操作は、各種の方法、例えば接触乾燥又は貫流乾燥により達成することができる。
【0051】
要素10は、適当な乾燥要素を概略的に図示したものに過ぎない。
【0052】
図2は、数字10を参照することにより、3つの乾燥シリンダーを特定し、これらのシリンダーを経て、製造された紙のウェブを接触乾燥する。しかしながら、合成した紙のウェブを1つのシリンダーのみに通し、このシリンダーに前記ウェブをのせずに、熱い空気で乾燥することも実施可能である。
【0053】
前記2層の繊維材料を熱することにより、混合した層9の中の合成繊維2は溶ける。それらは、乾燥装置からの出口で再凝固するので、前記合成繊維は、前記天然繊維を少なくとも部分的に包むに至り、ロール11に巻き上げられる。
【0054】
驚くべきことに、本発明による前記フィルター材料のシールの縫い目強さを、熱処理によりさらに改善することが可能であることが本発明によって確定された。
【0055】
本発明による1つの実施態様では、前記フィルター材料をすでに製造した後に更に熱処理を行う最中に、前記熱処理を行うことが可能である。
【0056】
前記のさらなる熱処理は、150から200℃までの範囲内、好ましくは150から175℃までの範囲内の温度で有利に行われる。そのような熱処理は通常、1から10分までの範囲の間、好ましくは2から5分までの範囲の間で行われる。
【0057】
しかしながら、本発明によって、本発明による前記フィルター材料のシールの縫い目強さを、ペーパー・マシンによる製造中に、乾燥装置(例えば前記乾燥シリンダー又は貫流乾燥機)における温度を上昇することにより改善することが可能である。
【0058】
本発明による前記フィルター材料は、さらにメルトブローン工程により製造することができる。前記メルトブローン工程を2層フィルター材料に関して説明する。
【0059】
第2層を形成する重合体と接着促進剤の混合物の形状がチップの形態である場合、まだ熱くて粘着性のあるうちに、それを基材の上に、例えば天然繊維から成る紙のうえに敷かれる繊維になるようにメルトブローンすることができる。
【0060】
この操作は、従来の技術(例えば、EP-A-0 656 224,DE-A-197 19 807)に記載されているが、それでもなお、前記工程の原理を図3に表し、それについて簡単に説明する。
【0061】
乾燥チップ12を押出機13へ運搬し、そこで乾燥チップ12を溶融し、繊維を形成するために必要とされる温度まで加熱する。次にこの溶融され、加熱された混合物はMBダイ14に到達する。このダイには多数の小さい孔があり、それらの孔を通じて前記溶融した重合体混合物をプレスし、引き伸ばして繊維を形成する。これらの繊維15は、直接このダイの下の高速空気流中に出てきて、この気流はそれらをさらに細くして異なる長さにせん断し、捕集表面、例えばアスピレータロール17にのっている天然繊維の紙16上に敷かれる。これらの繊維はまだ熱く、粘着性のある状態なので、それらは、前記紙の天然繊維に接着する。それから前記素材は、冷却した状態で巻取機18により巻き上げられる。これらのメルトブローンされた繊維の直径は、2から7μmまでの間である。図3は、メルトブローン工程の配置図である。
【0062】
本発明を、実施例を参照することによりさらに詳しく説明する。これらの実施例は、本発明を決して限定するものではない。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
市販されているポリプロピレン(PP)チップ(Borealis 400, フランスのBolealisより)を、0.5%の無水マレイン酸官能基を含む市販のポリプロピレン(Polybond 3150,ドイツのVeloxより)が5%の比率となるように混合した。
【0064】
前記開始材料を、上述した通りにメルトブローンして繊維を形成し、まだ熱くて粘着性のある状態のうちに天然繊維のウェブの上に敷いた。
【0065】
得られた前記メルトブローンした繊維の典型的な直径は2から7μmまでの間であった。
【0066】
結果:
1.PP繊維95%、0.5%無水マレイン酸基を含むポリプロピレン5%。
ウェブ 17.0g/m(3.5g/mの重合体及び13.5g/mの天然繊維を有する)
シールの縫い目強さ:
縦方向=2.60N/15mm
横方向=2.08N/15mm
2.PP繊維100%
ウェブ 17.0g/m(3.5g/mの重合体及び13.5g/mの天然繊維を有する)
シールの縫い目強さ:
縦方向=1.48N/15mm
横方向=1.32N/15mm
【0067】
シールの縫い目強さを測定する方法(Bruggerに従って):
以下のパラメータを用いて、2つの幅15mmのストリップを、重合体のヒートシール層で向かい合わせにしてシールした:
温度:210℃;時間:0.5秒;圧力:36.2psi。
次に市販のINSTRON機器を用いて、1分間あたり20mmの割合で伸張した時にシールの縫い目を破るのに必要とされる幅15mmのストリップあたりの力を決定した。
【0068】
(実施例2)
フィルターペーパーを製造するために傾斜したワイヤーを備える実験工場を用いて、PP繊維と無水マレイン酸基(1%の無水マレイン酸)を有するポリプロピレン接着促進剤を含む18g/mのヒートシール可能なフィルター材料を上記のように製造した。
【0069】
市販のPP繊維のみを含む18g/mのヒートシール可能なフィルター材料を同様に製造し、比較する。
【0070】
実験工場の概要:
前記工場は2つのヘッドボックスを有し、その2つのヘッドボックスは、1つは天然繊維の層のためであり、もう1つはヒートシールする重合体の層のためのものである。前記2層フィルター材料を、傾斜したワイヤーにて形成して脱水し、次に乾燥シリンダーにて150℃から170℃の条件で乾燥し、それから巻き上げた。
【0071】
機械のスピードは、約40cmの紙の幅に対して5m/minである。
【0072】
サンプル1の結果:
1.ヒートシール層:PP繊維93%、1%無水マレイン酸基を有する上記接着促進剤7%
4.4g/m
針葉樹パルプ:1.6g/m 合計6g/m
2.基層:8.3g/mの針葉樹パルプと3.7g/mの再生セルロース繊維
合計12g/m
フィルター材料の総重量:18g/m
シールの縫い目強さ:
縦方向:2.51N/15mm
【0073】
サンプル2の結果:
1.ヒートシール層:市販のPP繊維100%
4.4g/m(繊維の線密度:2.2dtex,繊維の長さ2.2mm)
針葉樹パルプ:1.6g/m 合計:6g/m
2.基層:上記の繊維
シールの縫い目強さ:
縦方向:1.97N/15mm
【0074】
前記フィルター材料のサンプルの両方とも、湿潤強度を有する。
【0075】
これらのサンプルのシールの縫い目強さを、RDM機器を用いて決定した。
【0076】
シールの縫い目強さを測定する方法(RDMに従って):
以下のパラメータを用いて、2つの幅15mmのストリップを、重合体のヒートシール層で向かい合わせにしてシールした:
温度:210℃;時間:0.5秒;圧力:43.5psi。
次に市販のINSTRON機器を用いて、1分間あたり20mmの割合で伸張した時にシールの縫い目を破るのに必要とされる幅15mmのストリップあたりの力を決定した。
【0077】
(実施例3)
93%のPP繊維及び7%の1%無水マレイン酸基を有する上記接着促進剤を含むフィルター材料(サンプル1)及び100%の市販のPP繊維を含むフィルター材料(サンプル2)を、それらの製造後に乾燥室で150℃及び175℃の温度で5分間、さらに熱処理した。その後、シールの縫い目強さを上記の方法により測定した。
【0078】
結果:
サンプル1:150℃/5min:3.46N/15mm
175℃/5min:3.95N/15mm
サンプル2:150℃/5min:2.23N/15mm
175℃/5min:2.32N/15mm
【0079】
驚くべきことに、接着促進剤を添加したサンプル1は、接着促進剤を添加しなかったサンプル2の縫い目強さより高い増加率となり、サンプル2の縫い目強さは、ほぼ誤差範囲内で変わりはなかった。
【0080】
このことにより、従来の紙の製造工程中にさらに熱処理をすることは、本発明による前記ウェブのシールの縫い目強さを改善する方法となることが示される。
【0081】
(実施例4)
フィルター材料を、適したペーパー・マシンで上記のように製造した。
【0082】
結果:
サンプル1
−ヒートシール層:1%の無水マレイン酸基を含む上記接着促進剤7%を有するPP
繊維33.3%
PPから成る合成パルプ33.6%
針葉樹の繊維33.1%
7.4g/m
−基層:針葉樹の繊維63.3%
再生セルロース繊維36.4%
9.0g/m
サンプル1の総重量:16.4g/m
縦方向のシールの縫い目強さ:2.2N/15mm
横方向のシールの縫い目強さ:1.8N/15mm
【0083】
サンプル2
−ヒートシール層:市販の2.2dtex/4.6mmであるPP繊維33.3%
PPから成る合成パルプ33.6%
針葉樹の繊維33.1%
7.4g/m
−基層:針葉樹の繊維63.6%
再生セルロース繊維36.4%
9.0g/m
サンプル2の総重量:16.4g/m
縦方向のシールの縫い目強さ:2.0N/15mm
横方向のシールの縫い目強さ:1.5N/15mm
【0084】
前記ペーパー・マシンのスピードは、サンプル1及びサンプル2に対して290m/minであった。
【0085】
この試験では、接着促進剤を加えることにより、シールの縫い目強さ(サンプル1)が改善されることをもう一度確認した。
【0086】
前記サンプル1の15mm幅のストリップをシールした後に破って(Bruggerの測定方法参照)顕微鏡検査を行ったところ、驚くべきことに、接着促進剤がないサンプル2の場合ではシールした重合体層が裂けたが、サンプル1はそうではなく、紙が裂けていたことが示された。
【0087】
このことは、接着促進剤を使用することにより、本発明によるフィルター材料のシールの縫い目強さが明らかに改善されることを再び確証している。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明による前記フィルター材料の製造を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明によるフィルター材料を製造するのに用いることが可能であるペーパー・マシンの基本構造を示す。
【図3】図3は、メルトブローン工程の配置図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティーバッグ、コーヒーバッグ又は紅茶もしくはコーヒーフィルターを製造するためのフィルター材料であって、天然繊維及び/又はセルロース誘導体繊維からなる少なくとも1つのヒートシールが不可能な第1層、及び合成材料の繊維からなり、かつ接着促進剤として無水マレイン酸官能基とグラフト重合したポリオレフィンを含む少なくとも1つのヒートシール可能な第2層からなり、フィルター材料の製造後に前記少なくとも1つの第1層と前記少なくとも1つの第2層が互いに部分的に浸透することを特徴とする、フィルター材料。
【請求項2】
前記接着促進剤は、合成材料の繊維からなる少なくとも1つのヒートシール可能な層の重量に基づいて、前記フィルター材料中に2から25重量%含まれることを特徴とする、請求項1記載のフィルター材料。
【請求項3】
少なくとも1つの合成材料の繊維からなるヒートシール可能な前記第2層は、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体又はポリエステルから成ることを特徴とする、請求項1又は2記載のフィルター材料。
【請求項4】
ヒートシール不可能な前記第1層は、天然繊維から成り、湿潤強度を有するように構成されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1つの請求項に記載のフィルター材料。
【請求項5】
ヒートシール不可能な前記第1層は、8から40g/mまでの間の坪量を有し、300から4000l/m・sまでのDIN ISO 9237の通気度を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1つの請求項に記載のフィルター材料。
【請求項6】
少なくとも1つのヒートシール可能な前記第2層は、1から15g/mまでの坪量を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つの請求項に記載のフィルター材料。
【請求項7】
合成材料の繊維を含む少なくとも1つのヒートシール可能な層の重量に基づいて、2から25重量%の接着促進剤を用いる湿潤状態での工程中においてフィルター材料を製造することを特徴とする、請求項1記載のフィルター材料の製造方法。
【請求項8】
その後の乾燥操作を、150から200℃までの温度で行うことを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
ヒートシール可能な材料の繊維と接着促進剤を、合成材料の繊維からなる少なくとも1つのヒートシール可能な層の重量に基づいて、前記接着促進剤の量が2から25重量%となるように混合したものを、メルトブローン工程中に天然繊維の第1層上に敷くことを特徴とする、請求項1記載のフィルター材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−46199(P2009−46199A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−212974(P2008−212974)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【分割の表示】特願2003−273626(P2003−273626)の分割
【原出願日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【出願人】(502334641)パピエルファブリク シェーラー アンド ホエッシェ ゲーエムベーハー アンド コムパニイ カーゲー (1)
【Fターム(参考)】