説明

ヒートシール性自己粘着シート

【課題】本発明は、透明性が優れ、接合界面に気泡の巻き込みが抑制され、万が一気泡が巻き込まれた場合でも透明性を損なうことなく容易に貼り直しができるリワーク性があり、しかも一旦貼付後は加熱処理により粘着強度を大幅に上昇することができる粘着剤およびこれを基材シート表面に形成したヒートシール性自己粘着シートを提供する。
【解決手段】ヒートシール性自己粘着シートは、基材シート層表面に、熱可塑性エラストマー及び可塑剤を含む粘着剤成分から成る粘着剤層を形成して成り、この粘着剤層を離型性シートの離型層表面に形成することによりシート状粘着剤を得る。そしてこれらのヒートシール性自己粘着シートを貼り付け、またはこのシート状粘着剤を介して物品を貼り付けた後、接着剤層および粘着剤層を含む部分を加熱することにより接着強度を強化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、テレビやパソコン、携帯電話などのディスプレイ画面などの保護することが求められる面(被保護面)を効率的に保護するのに好適に使用することができ、あるいは、POP広告、電気電子部品の仮留め材、検査容器のシール材、バーコードラベルとしても使用することができるヒートシール性自己粘着シートに関するものである。より具体的には、種々の被着面に対して、貼り付け・剥離を繰り返し行うことが可能なヒートシール性自己粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、保護が必要とされる面、被保護面を効率的に被覆するのに好適に使用することができるフィルムが求められている。
例えば、接着時の圧着力依存性が低く、低い圧力で圧着した場合でも、金属板を始めとする各種材料(被保護体)表面に容易に接着(仮着)することが出来ると共に、使用後の再剥離性にも優れる表面保護フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、低湿度でも帯電防止性能が低下せず、かつ内容物を視認できる程度の透明性を有する透明電導性ヒートシール材およびこれを用いたキャリアテープ蓋体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、貼合せ時に良好な接着性を有しつつ、貼り合わせ後の接着力の経時変化が非常に小さく、かつ実用的な耐候性を有する、基材上に感圧接着剤層を有する表面保護材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
更に、エポキシ化ジエン系ブロック共重合体と水添ジエン系ブロック共重合体を配合した重合体組成物からなる自己粘着性エラストマーシートが提案されているが、貼り付けの際のエアー残留問題が依然として残っている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
一方、近年における液晶テレビ、プラズマディスプレイパネル(PDP)テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話及び電子手帳等の普及に伴い、それらの被保護面(ディスプレイ画面)を効率的に保護するのに使用することができる表面保護フィルムの開発が求められてきている。このような表面保護フィルムにおいては、例えば、それらの画面を視認できる程度の透明性が求められる場合が多いほか、被保護面への接着性(接着強さや接着の容易さ)、外的負荷(例えば、引掻きや剥離)に対する抵抗性などが重要視される。
【0004】
また、一般的に、粘着層と基材層からなるフィルムは、広告文字及び/又は絵柄が着色されたフィルムを各種店頭のガラス等の被着面に貼り付ける態様なども提案されているが、この場合、貼り付けのレイアウトを変更しようとすると、剥離の際に粘着層が被着面に残存するため、その拭き取り・清浄が必要となり、手間がかかるばかりか、再貼り付けするための粘着性が低下し、繰り返して被着面へ適用することが困難であった。
以上のように、被着面が、種々の材料、例えば、プラスチック、金属、繊維、ガラスなどから構成され、種々の形状、例えば平面、曲面、凹凸面などの形状を有する場合であっても、貼り付け・剥離を容易にかつ繰り返して行うことができ、かつ、外観・耐久性の面でも優れたフィルムを提供することが望まれる。
しかしながら、上記のような貼付が容易なフィルムは、一面において容易に剥離し易いため、産業用途においては、貼付時は貼り直しを含めて容易に貼付ができるが、一旦貼り付け位置が確定後は容易に剥離されない程度の強固な接着強度が得られる粘着性シート及び粘着剤が望まれている。すなわち、貼り付け後に接着強度が顕著に増強できる粘着剤が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−139898号公報
【特許文献2】特開2001−348561号公報
【特許文献3】特開平8−245938号公報
【特許文献4】特開平8−81616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の要望に基づいてなされたものであり、即ち、貼り付けの際のエアー抜けに極めて優れ、透明性、貼合せ作業性に優れ、且つ貼り合わせ後は希望によりその接着強度を増強することができるヒートシール性自己粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の要旨は、基材シート表面に、熱可塑性エラストマー及び可塑剤を含む粘着剤成分から成る粘着剤層を形成して成ることを特徴とするヒートシール性自己粘着シートに存する。
本発明の第二の要旨は、離型性を有する基材シートの離型処理表面に、前記のヒートシール性自己粘着シートに使用可能な粘着剤層が形成されて成ることを特徴とするヒートシール性自己粘着シート状粘着剤に存する。
そして、本発明の第三の要旨は、被着体表面に、上記のヒートシール性自己粘着シートを貼り付け、または上記のシート状粘着剤を介して物品を貼り付けた後、接着剤層および粘着剤層を含む部分を加熱して接着強度を強化することを特徴とする基材シート又は物品の接着方法に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヒートシール性自己粘着シートは、貼り付けの際のエアー抜け速さおよび混入エアーの押出し性に極めて優れ、透明性、貼合せ作業性に優れることに加えて、被着面から剥離する際にも糊残りが効率的に防止される。
従って、本発明のヒートシール性自己粘着シートは、種々の被着面に対して、貼り付け・剥離を繰り返し行うことが容易である。更に、貼り付けの際に被着面との間に空気(エアー)が残留するのを効率よく防止することができ、所望の表面を得ることができる。
そして、さらに、上記のヒートシール性自己粘着シートを貼り付け、または上記のシート状粘着剤を介して物品を貼り付けた後、接着剤層および粘着剤層を含む部分を加熱することにより接着強度を増強することができる。また、上記のシート状粘着剤は、接着対象としての基材シートに転写することにより容易に即製のヒートシール性自己粘着シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における“自己粘着性”とは、被着面への貼り付けが、他の如何なる粘着剤を使用しなくとも、また、更なる圧力や熱をかけることなしに、粘着性シートの自重のみにより粘着できるフィルムの性質を意味する。
本発明のヒートシール性自己粘着シートは、前記自己粘着性のほか、基材シートを選択することにより、柔軟性、例えば、被着面に対して、一端から貼り付けを始めて、他端へと向かって貼り付けを進めることにより貼り付けを完了させることが可能である柔軟性を有することができる。例えば、本発明のヒートシール性自己粘着シートは、そのシート自体にかかる重力により生じる圧力のみで密に貼り付けを行うことができる程度の柔軟性を持たせることができるように調製することができる。
【0010】
本発明のヒートシール性自己粘着シート全体の厚さは、該シートに求められる耐久性・柔軟性などを考慮して適宜決定し得るが、例えば、1〜450μmであるのが好ましく、より好ましくは30〜275μmである。また、本発明のヒートシール性自己粘着シートは、例えば、被着面が、テレビやコンピュータのディスプレイ画面である場合には、それらを視認できる程度の透明性を有するのが好ましく、例えば、無色透明とすることができるが、場合により、有色透明又は不透明であってもよい。
一方、本発明のヒートシール性自己粘着シートを貼り付ける被着面としては、種々の材料から構成されるもの、例えば、プラスチック、金属、繊維、ガラスなどが挙げられる。また、かかる被着面は、種々の形状、例えば平面、曲面、凹凸面などの形状を有するものであってもよい。被着面の具体例としては、例えば、テレビ、コンピュータ、携帯電話及び電子手帳ディスプレイ画面、各種店頭のガラス等に貼り付けるPOP広告として、あるいは、各種製品容器に貼り付けるバーコードラベルとして用いることができる。
また、貼り付け後に加熱することにより接着強度を強化できる特性を利用して、ICチップやコンデンサ等の電気電子部品、各種検査容器、産業用機械にシート状材料などの部品を貼り付ける用途にも利用できる。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のヒートシール性自己粘着シートは、基材シート層表面に、希望により接着剤層を介して、熱可塑性エラストマー及び可塑剤を含む粘着剤成分から成る粘着剤層を形成して成る。
【0012】
本発明において、基材シートは、後述する粘着剤層と密着する面を有し、製品であるヒートシール性自己粘着シートを被着面に貼り付けた際に、該被着面を引掻き・剥離などの外的負荷から保護するように機能し得る。かかる基材シートとしては、特に限定されず、通常、従来のヒートシール性自己粘着シート又は表面保護フィルムにおいて用いられているものが使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂の他、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などを素材とするプラスチックフィルムや、紙類を挙げることができる。
【0013】
上記の基材シートの厚みは任意であり、適宜決定することができるが、例えば、10〜350μmであり、好ましくは25〜200μmであり、実用的には、必要な強度、柔軟性などを考慮して選択される。かかる基材シートの市販品として、例えば、ルミラー50T60(PETフィルム、易接着処理なし、東レ株式会社製)、エンブレット38SC(片面コロナ処理PETフィルム、ユニチカ株式会社製)、テオネックスQ51(PENフィルム、帝人デュポンフィルム株式会社製)等が挙げられる。
【0014】
上記の基材シートは、必要により、その片面、即ち、片面又は両面、好ましくは片面に、易接着処理、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理などを施すことができる。また、必要により、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び/又は電磁波防止剤などを含んでいてもよい。
【0015】
粘着剤成分
前記の粘着剤成分を構成する熱可塑性エラストマーとしては、種々のものを用いることができるが、例えば、スチレンモノマーユニットとゴムモノマーユニットからなるブロック共重合体が挙げられる。かかる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリスチレン−ポリブチレン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリイソプレン(SI)、ポリスチレン−ポリブチレン(SB)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック(SEP)などが挙げられ、中でも、SEBS、SEPSが好ましい。例えば、SEBSを用いる場合、その質量平均分子量は、例えば、20,000〜500,000であるのが好ましく、より好ましくは50,000〜350,000である。かかるエラストマーの市販品としては、例えば、クレイトンG1651(SEBS型、クレイトンポリマー社製)が好適に例示される。
【0016】
また、上記の前記の粘着剤成分を構成する可塑剤としては、その種類は特に制限されないが、可塑性エラストマーがポリスチレン相とゴム相を有する場合に、ゴム相に対する親和性が高いが、ポリスチレン相に対する親和性が低い、高分子量の化合物が適している。このような可塑剤としては、例えば、ナフテン系オイル又はパラフィン系オイルを用いることができる。本発明においては、ナフテン系オイル、パラフィン系オイルのいずれかを単独で用いることもできるが、これらを組み合せて用いることもできる。
【0017】
上記のナフテン系オイルとしては、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.83〜0.87であるのが好ましく、より好ましくは0.837〜0.868である。そして、その質量平均分子量が100〜1000であるのが好ましく、より好ましくは150〜450である。
【0018】
一方、パラフィン系オイルとしては、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.89〜0.91であるのが好ましく、より好ましくは0.8917〜0.9065である。そして、その質量平均分子量が100〜1000であるのが好ましく、より好ましくは150〜450である。
【0019】
上記の熱可塑性エラストマーと可塑剤との配合比は、特に制限されないが、例えば、10:90〜90:10とするのが好ましく、より好ましくは20:80〜80:20である。
【0020】
接着剤成分
上記の粘着剤層には、上記の粘着剤成分の他に、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分とする接着剤成分を配合することができる。かかる粘着剤成分の配合により、粘着剤層の基材シート層への密着性を向上する効果がある。
【0021】
上記の接着剤成分を構成するカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーなど、種々のものを用いることができる。ここで、カルボン酸変性は、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸、アクリル酸、プロピロル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びオレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、並びに、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸によるものであってもよい。脂肪族不飽和ジカルボン酸変性であるのが好ましく、最も好ましくは、マレイン酸変性である。
【0022】
このようなカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよく、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーであってもよい。この例としては、例えば、水素添加されたマレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマー(マレイン酸変性SEBSエラストマー)が挙げられる。また、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーとして、水素添加されたマレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを用いる場合、そのメルトインデックスが、例えば、200℃、5kgの条件下で、2.5〜25g/10分であるのが好ましく、より好ましくは3〜7g/10分である。
【0023】
また、上記の水素添加されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを用いる場合、水素添加率が実質的に100%であるのが好ましいが、本発明の効果が得られる限りにおいて100%未満であってもよい。また、カルボン酸変性SEBSを用いる場合、そのスチレン:エチレン+ブチレンの質量比は、例えば、10:90〜40:60であるのが好ましく、より好ましくは、20:80〜30:70である。更に、本発明においては、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーの酸価が、好ましくは2〜10である。酸価が3未満であると無色透明なフィルムとすることができ、一方、酸価が3〜10であると黄色がかったものとすることができる。
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーまたはその水素添加物の中で市場で入手されるものとして、例えば、タフテックM1911、M1913、M1943(以上、商品名、旭化成工業株式会社製)、およびFG−1901X(商品名、クレイトンポリマー社製品)などを挙げることができる。
架橋剤
【0024】
また、前記の接着剤層を構成する架橋剤としては、その種類は特に制限されず、例えば、前記カルボン酸変性熱可塑性エラストマーの種類などを考慮して適宜決定することができる。この架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が挙げられ、具体的には市販品として、日本ポリウレタン工業製のコロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI−TMPアダクト)、東洋インキ製造製BXX5134(アジリジン系架橋剤)、日本触媒製エポクロスRPS−1005(オキサゾリン系架橋剤)および三菱瓦斯化学製TETRAD−X、TETRAD−C(共にエポキシ系架橋剤)が挙げられる。
【0025】
前記の粘着剤層に接着剤成分を配合する場合、粘着剤層を構成する各成分の配合比は、熱可塑性エラストマーは通常25〜90質量%、好ましくは40〜80質量%であり、可塑剤が通常24〜88質量%、好ましくは36〜72質量%であり、その際、熱可塑性エラストマーと可塑剤との割合は質量比で5:95〜95:5とされる。また、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーは0〜75質量%、好ましくは20〜60質量%であり、これと併用される架橋剤は、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤との割合が質量比で通常100:1〜4:1、好ましくは50:1〜12:1となるように調節されるのが好ましい。
【0026】
前記の粘着剤層は、上記の粘着剤成分、あるいは粘着剤成分と接着剤成分を溶剤に溶解して粘着剤層塗布液とし、これを基材シート表面に、または後述のように粘着剤層と基材シート層との間に接着剤層を介在させる場合は先に基材シート表面に設けられた接着剤層表面に、または、シート状粘着剤を作製する場合は、離型性を有する基材シートの離型処理面に塗布し、乾燥して形成される。上記の粘着剤層塗布溶液には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び/又は電磁波防止剤などを含ませることができる。
【0027】
上記の溶剤としては上記の接着剤成分及び粘着剤成分をともに溶解でき且つ乾燥により除去できるものであれば特に限定されないが、例えばトルエン、テトラヒドロフラン(THF)が好適に使用できる。上記の塗布液の固形分濃度は、通常10〜40質量%とされる。また、上記の粘着剤層の厚さは、任意であるが、例えば、通常0.5〜100μm、好ましくは5〜75μmであり、より好ましくは15〜50μmであり、さらに好ましくは25〜50μmである。
【0028】
上記の塗布方法は、公知の方法を適用できるが、例えば、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、あるいはメイヤーバーなどを用いた塗布方法が挙げられる。そして、塗布後の乾燥条件は、通常80〜150℃の温風中で30秒〜2分、好ましくは100〜130℃の温風中で40秒〜1.5分である。
【0029】
本発明のヒートシール性自己粘着シートにおいては、前記の粘着剤層と基材シート層との間に接着剤層を介在させることができる。接着剤層を介在させることにより、上記の粘着剤層と基材シート層との間の密着性を向上させることができ、特に粘着剤層に接着剤成分を配合しない場合にその効果が顕著である。かかる接着剤層を構成する成分としては、その主成分が粘着剤層を構成する成分と相溶性が優れているカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと、それを架橋することができる架橋剤とを主成分とし、例えば、前記の粘着剤層に配合した接着剤成分を適用することができる。すなわち、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤との割合は、質量比で通常100:1〜4:1、好ましくは50:1〜12:1となるように調節したものが好適に使用される。かかる接着剤層を構成する接着剤成分には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び/又は電磁波防止剤などを含むことができる。中でも、帯電防止剤は添加するのが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば、日本油脂製のエレガン264waxなどを用いることができ、その含量は、接着層の質量をベースとして、0.1〜3.6質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.6〜1.8質量%である。このような割合で帯電防止剤を用いることにより、いわゆる「ゆずはだ」や、蓄電による引火の危険性を良好に防止することができる。
【0030】
上記の接着剤層は、上記の接着剤成分およびその他の添加剤を溶剤に溶解して接着剤層塗布液とし、これを基材シート表面に塗布し、乾燥して形成することができる。上記の溶剤としてはこの接着剤成分を溶解でき且つ乾燥により除去できるものであれば制限されないが、例えばトルエン、THFを使用することができる。かかる溶液の固形分濃度は通常5〜40質量%、好ましくは10〜25質量%とされる。また、上記の粘着剤層の厚さは、任意であるが、例えば、0.5〜50μmであり、好ましくは1〜15μmであり、実用的には2〜5μmであり、これにより、例えば、コスト面およびアンカー特性において所望の結果が得られる。上記の塗布方法は、公知の方法を適用できるが、例えば、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーターあるいはメイヤーバーなどを用いた塗布方法が挙げられる。そして、塗布後の乾燥条件は、通常80〜150℃の温風中で20〜60秒間、好ましくは100〜130℃の温風中で30〜50秒間である。この接着剤層を設けた場合は、粘着剤層はこの表面に形成される。
【0031】
以上のようにして得られたヒートシール性自己粘着シートの粘着剤層表面には、その表面の保護のため必要に応じて、離型層を被覆しておくのが好ましい。かかる離型層を有する剥離性シートとしては、例えば、表面をシリコーン処理したPETフィルム、表面をシリコーン処理した紙が実用的に挙げられるが、粘着剤層の粘着性の程度によっては、シリコーン処理などの離型性処理を施していないポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、フッ素フィルム、またはフッ素コートおよびアルキッドコートされたフィルム、その他のプラスチックフィルム面を被覆することもできる。
【0032】
本発明の第二の要旨のシート状粘着剤は、離型性を有する基材シートの離型処理表面に、前記のヒートシール性自己粘着シートに使用された粘着剤層塗布溶液を塗布し乾燥して粘着剤層を形成することにより得ることができる。
【0033】
上記の離型性を有する基材シートとしては、前記のヒートシール性自己粘着シートの粘着剤層の表面の被覆に使用できるものを使用することができる。また、シート状粘着剤の厚さは、特に限定されず、必要により適宜設定されるが、例えば、0.5〜100μm、好ましくは5〜75μmであり、より好ましくは15〜50μmであり、さらに好ましくは25〜50μmである。
【0034】
また、上記の粘着剤層塗布溶液の濃度、塗布方法、乾燥条件は前記のヒートシール性自己粘着シートの場合に準じて行うことができる。以上のようにして得られたシート状粘着剤の露出した粘着剤表面には、ヒートシール性自己粘着シートの場合と同様に、離型性シートを被覆しておくのが好ましい。
【0035】
なお、上記のヒートシール性自己粘着シート及びシート状粘着剤は、成分として接着剤成分が使用されている場合は、塗布乾燥後、必要により、40〜80℃で2〜6日間エージングさせるのが好ましい。
接着方法(加熱による効果)
【0036】
本発明においては、被着体表面に上記のヒートシール性自己粘着シートを貼り付けまたは上記のシート状粘着剤を介して物品を貼り付けた後、粘着剤層および接着剤層を含む部分を加熱することで接着強度を増強することができる。また、超音波融着、紫外線照射でも接着強度を増強する事ができる。すなわち、上記のヒートシール性自己粘着シート及びシート状粘着剤は、貼付時は、通常、例えば0.1N/cm以下のように容易に剥離できる程度の低い接着強度であり、貼り付け位置のずれ又は貼り付け界面に気泡が巻き込まれて貼り直しが必要な場合には容易に貼り直しができるが、一旦貼付が確定した場合は、必要により、粘着剤層および接着剤層を含む部分を加熱または紫外線照射により接着強度を、例えば0.5N/cm以上、好ましくは1.0N/cm以上に、強化することができる。上記の加熱条件は、粘着剤層の成分組成、被着体の素材の種類、希望する接着強度等により適宜設定され、被着体の素材の種類にもよるが、例えば、60℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。また、その加熱時間は、加熱温度にもよるが、通常1秒以上、好ましくは10分以上、さらに好ましくは1時間以上であり、加熱温度、粘着剤層の組成、被着体の素材の種類によっては24時間〜500時間以上とすることもできる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定される訳ではない。なお、得られた粘着性シートの各種評価は、以下の評価基準により行った。
【0038】
(密着強度)
評価対象の粘着性シートから幅25mm、長さ250mmの短冊形試験片を裁断し、この試験片をその基材シート層の裏面に幅25mmの両面粘着テープ(ニチバン ナイスタック)を介してアクリル板(三菱レイヨン製アクリライトL001)に貼付け、その粘着シート部の基材層と粘着剤層との間に剥離口を設け、分離された粘着剤層の端部を島津製作所製AUTOGRAPH AGS−50Dの掴み装置で掴み、JIS Z 0237号の粘着力試験方法に準じて、剥離角度90度法により、剥離速度毎分50mm条件で基材シート層と粘着剤層との界面の剥離強度を測定し、各3試験片の測定値の平均値を密着強度とした。なお、密着強度が大きくて測定時に上記の界面で剥離する前に粘着剤層が破断した場合は、「破断」と評価した。
【0039】
(エアー抜け速さ)
ループ式エアー抜け測定により行った。長さ90mm、幅40mmの大きさで厚さが125μmのPETシート(商品名:ルミラー125T60、東レ株式会社製)の長辺をループ状に丸めて指先で摘んで円周が90mmの筒を形成し、摘み部分が天になるように維持しつつその底部(中央)を、机上に広げた評価対象の粘着性シート上に接した後、摘んだ指先を離してPETシートが長さ方向に左右に広がり粘着性シートとの間の空気を排除しつつ接触して接着して行くとき、左右の部分(45mm長)の内、全部分が先に粘着剤層に接着した側の接着が完了するまでの時間t(秒)を測定し、45mm/t秒の式で算出される速度をエヤー抜け速さ(cm/秒)とした。
【0040】
(窓ガラスへの貼合作業性)
ヒートシール性自己粘着シートから剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ガラス板表面(平面)上に対して、前記フィルムの一端を最初に貼り付けておき、次第に他端へとその貼り付け面を拡大して貼り付けを行った。その際の作業性を下記の基準で評価した。
◎:気泡をかみ込むことなく、スムーズに貼合可能
○:気泡を僅かにかみ込むが、実用上は問題なし
×:気泡を多数かみ込み、貼合せが困難
【0041】
(粘着性シートの接着強度)
評価対象の粘着性シートの粘着剤面に、所定の被着体(アクリル板・三菱レイヨン製アクリライトL001、PETフィルム・厚さ25μmの東レルミラー25T60、又は厚さ50μmのPENフィルム・帝人デュポンフィルム株式会社製テオネックスQ51)を貼り合わせて積層シートとし、得られた積層シートから幅25mm、長さ250mmの短冊形試験片を裁断し、それぞれについて、別に、25℃環境下、80℃環境下で30分間、または140℃環境下で10分間それぞれ放置し、その後、25℃環境下において30分以上放冷した試験片について、粘着性シートの基材シートと被着体フィルムとの間に剥離口を設け、そのシートとフィルムとの間の剥離強度を、JIS Z 0237号の粘着力試験方法に準じて、島津製作所製AUTOGRAPH AGS−50Dを用い、それぞれについて剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で測定し、各3試験片の測定値の平均値を密着強度とした。
【0042】
[実施例1]
(粘着剤層)
SEBS系熱可塑性エラストマー(クレイトンG1651、スチレン/(エチレン+ブチレン)質量比33/67、クレイトンポリマー社製)50質量部と可塑剤(ナフテン系オイル(ナフテンオイルとパラフィンオイルの混合体)、平均分子量350、引火点220℃;流動点−25℃;比重0.8387)50質量部とをトルエン330質量部に溶解して粘着剤層用塗布液とした後、この塗布液を基材シートとしてのA4版大で厚さ50μmのルミラー50T60(東レ株式会社製、未処理PETフィルム)上にメイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが35μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層を形成し、この粘着剤層表面に剥離性シート(厚さ75μmのPETフィルムの表面にシリコーン処理したもの、商品名:SP−PET−03−75−BU、東セロ株式会社製)を貼り合わせ、本発明のヒートシール性自己粘着シートを得た。
得られたヒートシール性自己粘着シートについて、密着強度、エアー抜け速さ、窓ガラスへの貼合作業性および粘着性シートの接着強度を評価して、粘着剤層の主な処方と共に、表1に示した。
【0043】
[実施例2]
(接着剤層)
タフテックM1911(旭化成工業株式会社製、マレイン酸変性SEBS、メルトインデックス(200℃、5kg)3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比30:70、酸価2)100質量部を、トルエン670部中に、プロペラ撹拌機を使用して溶解した(固形分13%)。この溶液100質量部に対し、コロネートHL(日本ポリウレタン工業製、ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI-TMPアダクト、固形分75%)12部を常温にて混合して、接着剤層用塗布溶液を得た。この塗布溶液をメイヤーバーにて、基材シートであるA4版大の厚さ50μmのルミラー50T60(未処理PETフィルム、東レ株式会社製)表面に塗布し、120℃で40秒間乾燥して、厚さ3μmの接着剤層を形成した。
【0044】
(粘着剤層)
上記の接着剤層の表面に、実施例1の場合と全く同様にして粘着剤層用塗布液を塗布して厚さ35μmの粘着剤層を形成し、この粘着剤層表面に実施例1の場合と同様にして剥離性シートを貼り合わせ、本発明のヒートシール性自己粘着シートを得た。
得られたヒートシール性自己粘着シートについて、密着強度、エアー抜け速さ、窓ガラスへの貼合作業性および粘着性シートの接着強度を評価して、粘着剤層の主な処方と共に表1に示した。
【0045】
[実施例3]
(粘着剤層)
実施例1において、可塑剤として使用したオイルをパラフィン系オイル(質量平均分子量330)に代えた他は実施例1と全く同様にして粘着剤層用塗布液を調製し、この塗布液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成し、この粘着剤層表面に実施例1の場合と同様にして、剥離性シートを貼り合わせ、本発明のヒートシール性自己粘着シートを得た。
得られたヒートシール性自己粘着シートについて、密着強度、エアー抜け速さ、窓ガラスへの貼合作業性および粘着性シートの接着強度を評価して、粘着剤層の主な処方と共に、表1に示した。
【0046】
[実施例4]
(粘着剤層)
SEBS熱可塑性エラストマー(クレイトンG1651、スチレン/(エチレン+ブチレン)質量比33/67、クレイトンポリマー社製)50質量部と可塑剤(パラフィン系オイル、質量平均分子量330)50質量部とをトルエン274質量部に溶解し、さらに、接着性成分としてマレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価2、旭化成工業株式会社製)50質量部、コロネートHLの6質量部とを配合し、よく攪拌して粘着剤層用塗布液とした後、この塗布溶液を基材シートとしてのA4版大で厚さ50μmのルミラー50T60(未処理PETフィルム、東レ株式会社製)表面にメイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが35μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層を形成し、この粘着剤層表面に実施例1の場合と同様にして剥離性シートを貼り合わせた。これを45℃にて4日間エージングさせることにより、本発明のヒートシール性自己粘着シートを得た。
得られたヒートシール性自己粘着シートについて、密着強度、エアー抜け速さ、窓ガラスへの貼合作業性および粘着性シートの接着強度を評価して、粘着剤層の主な処方と共に、表1に示した。
【0047】
[実施例5]
SEPS熱可塑性エラストマー(クレイトンG1651、スチレン/(エチレン+ブチレン)質量比33/67、クレイトン社製)30質量部と可塑剤(パラフィン系オイル、質量平均分子量330)70質量部とをトルエン274質量部に溶解し、さらに、接着性成分としてマレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価が2、旭化成工業株式会社製)15質量部、コロネートHLの0.7質量部とを配合し、よく攪拌して粘着剤層用塗布液とした後、この塗布溶液を基材シートとしてのA4版大で厚さ50μmのルミラー50T60(東レ株式会社製、未処理PET)表面にメイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが35μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層を形成し、この粘着剤層表面に実施例1の場合と同様にして剥離性シートを貼り合わせた。これを45℃にて4日エージングさせることにより、本発明のヒートシール性自己粘着シートを得た。
得られたヒートシール性自己粘着シートについて、密着強度、エアー抜け速さ、窓ガラスへの貼合作業性および粘着性シートの接着強度を評価して、粘着剤層の主な処方と共に、表1に示した。
【0048】
[実施例6]
実施例5において、メイヤバーを用いて乾燥後の粘着剤層厚みを1μmとした以外は実施例5同様にサンプル作製を行い、得られたヒートシール性自己粘着シートについて、密着強度、エアー抜け速さ、窓ガラスへの貼合作業性および粘着性シートの接着強度を評価して、粘着剤層の主な処方と共に、表1に示した。
【0049】
[実施例7]
実施例5において、接着性成分として、マレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911)を15質量部、イソシアネート系硬化剤のコロネートHLを3.74質量部およびアジリジン系硬化剤のBXX5134(アジリジン系硬化剤、東洋インキ製造株式会社製)0.03質量部とに変更して配合した他は、実施例5と全く同様にして粘着剤層用塗布液を得、この粘着剤層用塗布液を同じ基材シートに塗布し、乾燥し、エージングして本発明のヒートシール性自己粘着シートを得た。
得られたヒートシール性自己粘着シートについて、密着強度、エアー抜け速さ、窓ガラスへの貼合作業性および粘着性シートの接着強度を評価して、粘着剤層の主な処方と共に、表1に示した。
【0050】
[実施例8]
実施例4で得た粘着剤層用塗布液を離型性シート(厚さ75μmのPETフィルムの表面にシリコーン処理したもの、商品名:SP−PET−01−75−BU、東セロ株式会社製)の離型性層表面にメイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが35μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層を形成し、この粘着剤層表面に実施例1の場合と同様にして同じ離型性シートを貼り合わせて、これを45℃にて4日エージングさせることにより、両面が離型性シートで被覆された本発明のシート状粘着剤を得た。
上記のシート状粘着剤の片面の離型性シートを剥離してその露出した粘着剤面を基材シートとしての厚さ50μmのPENフィルム・帝人デュポンフィルム株式会社製テオネックスQ51と貼り合せ、100℃×0.5時間加熱することにより、PENフィルムを基材シートとしたヒートシール性自己粘着シートを得た。
【0051】
[比較例1]
SKダイン1499(綜研化学製、アクリル系粘着剤、固形分30%)100質量部に対し、L−45(綜研化学製、イソシアネート系硬化剤、固形分45%)5.4部(不揮発分比100:8)を常温にて混合し、よく攪拌して粘着剤層用塗布液を得たこと以外は、実施例1と同様にしてこの粘着剤層用塗布液を同じ基材シートに塗布し、乾燥し、これを45℃にて4日エージングさせることにより粘着シートを得た。
得られたヒートシール性自己粘着シートについて、密着強度、エアー抜け速さ、窓ガラスへの貼合作業性およびPETフィルムに対する接着強度を評価して、粘着剤層の主な処方と共に、表1に示した。

【0052】
【表1】

【0053】
(結果の概要)
表1の結果から明らかなように、実施例によって作製された本発明のヒートシール性自己粘着シートは、従来の低粘着強度のアクリル系粘着剤の場合と比べて、貼付の際のエアー抜け速さ、窓ガラスへの貼合作業性が優れ、アクリル系樹脂板、PETフィルム及びPENフィルムへの貼付時の接着強度が小さく、貼り直しが容易である。そして、一旦貼付が確定した後は加熱処理により接着強度を顕著に増強することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のヒートシール性自己粘着シートは、基材シート表面に熱可塑性エラストマーと可塑剤とを含有する自己粘着性粘着剤層を形成して成り、室温環境下では、粘着剤層自体が小さい粘着力の自己粘着性であるため、接着面への気泡の巻き込みが少なく、且つ万が一気泡を巻き込んだり、貼付位置がずれていた場合には容易に剥離して貼り直しができ、しかも被着面への糊残りが無いため、貼り直しによる接着面の汚損および部品のロスを回避することができ、しかも、所定の位置に貼り付けが確定された後は、加熱処理することにより接着強度を顕著に強化させることができるため、ロスが少ない接着剤として使用でき、また、上記の粘着剤層を表面が離型性の基材シート上に形成して得られるシート状粘着剤は、接着対象としての基材シートに転写することにより容易に即製のヒートシール性自己粘着シートを得ることができ、産業上の効果は大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート表面に、熱可塑性エラストマーと可塑剤とを含む粘着剤成分から成る粘着剤層を形成して成ることを特徴とするヒートシール性自己粘着シート。
【請求項2】
粘着剤層が、粘着剤成分と、さらにカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを含む接着剤成分を含むことを特徴とする請求項1に記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項3】
基材シート層と粘着剤層との間に、接着剤成分から成る接着剤層を介在させて成ることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項4】
接着剤層の接着剤成分に、更に、帯電防止剤が配合されていることを特徴とする請求項3に記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーが、スチレンモノマーユニットとゴムモノマーユニットからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項6】
可塑剤がナフテン系オイル、パラフィン系オイル又はその組合せであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項7】
可塑剤の質量平均分子量が100〜1000であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項8】
接着剤成分が、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを、100:1〜4:1の質量比で含むことを特徴とする請求項2〜7のいずれか一つに記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項9】
架橋剤がイソシアネート系またはイミン系であることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一つに記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項10】
基材シートが、プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項11】
離型性を有する基材シートの離型処理表面に、請求項1から9までのいずれか一つに記載のヒートシール性自己粘着シートのものと同じ粘着剤層が形成されて成ることを特徴とするシート状粘着剤。
【請求項12】
粘着剤層の露出表面に離型性シートが被覆されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載のヒートシール性自己粘着シート。
【請求項13】
被着体表面に、請求項1から10、および離型性シートを剥離した12のいずれか一つに記載のヒートシール性自己粘着シートを貼り付け、または請求項11に記載のシート状粘着剤を介して物品を貼り付けた後、接着剤層および粘着剤層を含む部分を加熱して接着強度を強化することを特徴とする基材シート又は物品の接着方法。

【公開番号】特開2007−186649(P2007−186649A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7603(P2006−7603)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】