説明

ヒートシール用スパンボンド不織布およびそれを用いたフィルター

【課題】
袋状に加工するために十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、かつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布およびそれを用いたフィルターを提供する。
【解決手段】
芯成分がポリエチレンテレフタレート樹脂を原料とし、鞘成分がポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびその共重合体からなる群から選ばれたいずれかの樹脂を原料とする芯鞘型複合繊維からなる不織布であって、鞘成分の樹脂の融点が180〜230℃の範囲にあり、芯鞘型複合繊維の鞘成分の比率が20〜70vol%の範囲にあり、かつ不織布の単位目付あたりの5%伸長時応力が0.6〜1.6の範囲にあり、不織布の180℃の温度における乾熱面積収縮率が0〜5.0%の範囲にあることを特徴とするヒートシール用スパンボンド不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状に加工するのに十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、なおかつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布およびそれを用いたフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は、その優れた性能と高生産性を特徴として従来の織編物の代替用途から、織編物では対応できない機能的用途まで幅広く用いられ、著しい発展を示している。不織布は、その製法により種々に分類することができるが、代表的なものとしてはスパンボンド不織布等の長繊維不織布や、短繊維をシート化しニードルパンチや接着剤等で接合した短繊維不織布等が知られている。
【0003】
スパンボンド不織布は、短繊維不織布に比べて生産性が高く、また不織布を構成する繊維がフィラメントであり、これらを熱圧着して得られる不織布は、引張強度や引裂強度が大きいという特徴があることから、高強度が要求される産業資材用途に広く用いられている。
【0004】
しかしながら、このようなスパンボンド不織布において、構成繊維がポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等の単成分の樹脂からなる繊維で構成される場合、不織布強力は優れているものの、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂の融点は一般的に高いものが多く、ヒートシール性等を要する用途には好適に用いることができるとは言えない。
【0005】
一方、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂からなる繊維で構成されたスパンボンド不織布は、一般的に融点が低いものが多いため、ヒートシール性に優れ、かつ柔軟性も有することが知られているが、これらポリオレフィン樹脂からなる繊維は、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂からなる繊維に比べて、繊維強力が小さいためスパンボンド不織布としての強力も小さく、それに従い、ヒートシール部の強力も小さくなるという問題があった。
【0006】
また、芯成分がポリエステル樹脂を原料とし、鞘成分がポリオレフィン樹脂を原料とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布は、ポリエステル樹脂あるいはポリアミド樹脂単成分からなる繊維により構成されるスパンボンド不織布に比べて強力は小さいものの、ポリオレフィン樹脂単成分からなる繊維により構成されるスパンボンド不織布に比べて強力が大きく、ヒートシール性に優れることがよく知られている(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、芯成分がポリエステル樹脂を原料とし、鞘成分がポリオレフィン樹脂を原料とする芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布は、鞘成分のポリオレフィン樹脂の融点が一般的に170℃以下と低いため、例えば、その温度が180℃以上にも達する油中や、自動車をはじめとする機械内部などの高温条件下では熱収縮による変形や、ポリオレフィン樹脂の融解などが発生し、使用に耐えるものではないという欠点があった。
【0008】
また、芯成分が融点180〜300℃のポリエステル樹脂を原料とし、鞘成分が融点110〜220℃の低融点ポリエステル樹脂を原料とする芯鞘型複合繊維からなる長繊維不織布は、熱接着性が高くフィルターなどの分離膜の支持体に好適であることが知られている(特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、イソフタル酸を共重合成分として含むポリエチレンテレフタレート樹脂に代表される低融点ポリエステルを鞘成分として用いた芯鞘型複合繊維からなる長繊維不織布は、熱接着性が大きいため、熱成型性やヒートシール性に優れるという特徴を有する反面、シートの風合いが硬くなる傾向があり、袋状にし内部に固体、粒体、粉体あるいはゲル体などを入れた際にその内容物の形状に追随しないため、使用中に内容物が傷んだり、袋が破れるなどの問題があった。
【特許文献1】特公平8−14069号公報
【特許文献2】特開2003−306863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、袋状に加工するのに十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、なおかつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布およびそれを用いたフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0012】
すなわち、本発明のヒートシール用スパンボンド不織布は、芯成分がポリエチレンテレフタレート樹脂を原料とし、鞘成分がポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびその共重合体からなる群から選ばれたいずれかの樹脂を原料とする芯鞘型複合繊維からなる不織布であって、該鞘成分の樹脂の融点が180〜230℃の範囲にあり、該芯鞘型複合繊維の鞘成分の比率が20〜70vol%の範囲にあり、かつ該不織布の単位目付あたりの5%伸長時応力が0.6〜1.6の範囲にあり、該不織布の180℃の温度における乾熱面積収縮率が0〜5.0%の範囲にあることを特徴とするヒートシール用スパンボンド不織布である。
【0013】
また、本発明のヒートシール用スパンボンド不織布の好ましい態様のひとつは、前記の鞘成分樹脂が3〜50モル%の範囲で共重合成分を含むことである。
【0014】
さらにまた、本発明のヒートシール用スパンボンド不織布の好ましい態様のひとつは、前記の芯鞘型複合繊維の単繊維繊度が0.5〜5.0dtexであり、前記の不織布の目付が20〜200g/mの範囲にあることである。
【0015】
さらにまた、本発明のヒートシール用スパンボンド不織布の好ましい態様のひとつは、ヒートシール強力が30N/5cm以上であることである。
【0016】
本発明のヒートシール用スパンボンド不織布は、袋状物やフィルターの材料として好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、袋状に加工するに十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、なおかつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布が得られる。本発明のヒートシール用スパンボンド不織布を用いて、強度が大きく、柔軟性と耐熱性に優れ、風合いが柔らかな袋状物やフィルターを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のヒートシール用スパンボンド不織布は、溶融したポリマーをノズルから押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸した後、移動コンベア上に繊維を捕集してウェブとし、さらに連続的に熱接着、絡合等を施すことにより一体化してシートとなす、いわゆるスパンボンド法により製造することができる。
【0019】
本発明のヒートシール用スパンボンド不織布を構成する繊維は、芯成分がポリエチレンテレフタレート樹脂を原料とし、鞘成分がポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびその共重合体からなる群より選ばれたいずれかの樹脂を原料とする芯鞘型複合繊維である。
【0020】
芯鞘型複合繊維の芯部に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂は、その融点が230〜280℃の温度範囲にあり、かつ鞘成分の樹脂の融点との差が30℃以上あることが好ましい。さらに好ましくは、ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点は240〜270℃の範囲で、鞘成分の樹脂の融点との差は40℃以上のポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0021】
ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点が230℃未満の場合、鞘成分の樹脂との融点の差が小さくなるため、ヒートシールした際に芯部のポリエチレンテレフタレート樹脂も熱により軟化し、繊維強度の低下に繋がったり、シートの乾熱面積収縮率の増大に繋がることがある。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点が280℃を超える場合、紡糸温度を高温にする必要があり、鞘成分樹脂の熱劣化、ひいては紡糸性の悪化に繋がることがある。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点が230〜280℃の温度範囲にあっても、鞘成分樹脂の融点との差が30℃未満であると、ヒートシール強力が低下する傾向がある。
【0022】
芯鞘型複合繊維の芯部に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂は、20モル%以下の割合で、他のエステル結合の形成可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物としては、例えば、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸およびセバシン酸などのジカルボン酸類が挙げられ、一方、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどを挙げることができるが、共重合成分はこれらに限定されるものではない。
【0023】
また、芯鞘型複合繊維の芯部に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂は、50vol%以下の割合で他のポリエステル系樹脂を含む混合物であってもよい。この場合、他のポリエステル系樹脂は、袋状に加工するに十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、なおかつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布が得ることができれば特に限定されるものではない。このような他のポリエステル系樹脂として、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリトリメチレンテレフタレート樹脂等が好ましく用いられる。
【0024】
またさらに、芯鞘型複合繊維の芯部に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂には、チタン、鉄、銅、銀、亜鉛、錫、ニッケル、マグネシウム、タングステン、モリブテン、ゲルマニウムおよびジルコニウム等の金属元素の酸化物または炭化物を添加してもよい。これらの酸化物や炭化物の添加量は、袋状に加工するのに十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、なおかつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布が得ることができれば特に限定されるものではないが、0.05〜5vol%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3vol%である。
【0025】
滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、抗菌剤、防黴剤、耐候剤、艶消剤および着色顔料なども、必要に応じて添加することができる。
【0026】
本発明で用いられる芯鞘型複合繊維の鞘成分は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびその共重合体からなる群より選ばれたいずれかの樹脂からなり、該鞘成分の樹脂の融点は180〜230℃であり、好ましくは190〜220℃であり、さらに好ましくは195〜215℃である。
【0027】
該鞘成分の樹脂の融点が180℃未満であると、その芯鞘型複合繊維およびそれからなるスパンボンド不織布は、例えば、その温度が180℃以上にも達する油中など、高温条件下では該鞘成分樹脂が溶け出したり、該鞘成分樹脂が溶け出さずともシートの乾熱面積収縮率が増大することにより変形し、使用に耐えないものとなる恐れがある。また、該鞘成分樹脂の融点が230℃を超える場合、袋やフィルターとして使用するのに十分なヒートシール強力を発現させるにはシール温度を高温にする必要がありシール加工性およびエネルギーロスの面で好ましくなく、さらに得られるヒートシール強力も低下するため好ましくない。
【0028】
芯鞘型複合繊維の鞘部に用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂は、3〜50モル%の範囲で共重合成分を含むことが好ましく、8〜40モル%の範囲で共重合成分を含むことがさらに好ましい。
【0029】
鞘部に用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂に含まれる共重合成分が3モル%未満であっても、鞘成分の融点が180〜230℃の範囲にあり、使用するに十分なヒートシール強力を有していれば袋やフィルターとして用いることができるが、芯成分のポリエチレンテレフタレート樹脂との融点差を保ち、より高いヒートシール性能を発現させるためには、鞘部に用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂は3モル%以上の共重合成分を含むことが好ましい。
【0030】
一方、鞘部に用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂の含む共重合成分の量が50モル%を超える場合、該共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点が低くなり過ぎ、得られる芯鞘型複合繊維およびそれからなるスパンボンド不織布が高温下で使用に耐えないものとなる場合や、また融点が低くなり過ぎずとも得られるスパンボンド不織布の柔軟性が損なわれる傾向にある。
【0031】
芯鞘型複合繊維の鞘部に用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂に含まれる共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸およびセバシン酸などのジカルボン酸類が挙げられ、一方、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが好ましく用いられるが、得られる共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点が180〜230℃の温度範囲にあれば、これらに限定されるものではない。
【0032】
また、芯鞘型複合繊維の鞘部に用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂は、50vol%以下の割合で他のポリエステル系樹脂を含む混合物であってもよい。この場合、他のポリエステル系樹脂は、袋状に加工するに十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、なおかつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布が得ることができれば特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリトリメチレンテレフタレート樹脂等が好ましく用いられる。
【0033】
またさらに、芯鞘型複合繊維の鞘部に用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂には、チタン、鉄、銅、銀、亜鉛、錫、ニッケル、マグネシウム、タングステン、モリブテン、ゲルマニウムおよびジルコニウム等の金属元素の酸化物または炭化物を添加してもよい。これらの酸化物や炭化物の添加量は、袋状に加工するのに十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、なおかつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布が得ることができれば特に限定されるものではない。
【0034】
滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、抗菌剤、防黴剤、耐候剤、艶消剤および着色顔料なども、必要に応じて添加することができる。
【0035】
芯鞘型複合繊維の鞘部に用いられるポリトリメチレンテレフタレート樹脂は、3〜50モル%の範囲で共重合成分を含むことが好ましく、8〜40モル%の範囲で共重合成分を含むことがさらに好ましい。
【0036】
鞘部に用いられるポリトリメチレンテレフタレート樹脂に含まれる共重合成分が3モル%未満であっても、鞘成分の融点が180〜230℃の範囲にあり、使用するに十分なヒートシール強力を有していれば袋やフィルターとして用いることができるが、芯成分のポリエチレンテレフタレート樹脂との融点差を保ち、より高いヒートシール性能を発現させるためには、鞘部に用いられるポリトリメチレンテレフタレート樹脂は3モル%以上の共重合成分を含むことが好ましい。
【0037】
一方、鞘部に用いられるポリトリメチレンテレフタレート樹脂の含む共重合成分の量が50モル%を超える場合、該共重合ポリトリメチレンテレフタレート樹脂の融点が低くなり過ぎ、得られる芯鞘型複合繊維およびそれからなるスパンボンド不織布が高温下で使用に耐えないものとなる場合や、また融点が低くなり過ぎずとも得られるスパンボンド不織布の柔軟性が損なわれる傾向にある。
【0038】
芯鞘型複合繊維の鞘部に用いられるポリトリメチレンテレフタレート樹脂に含まれる共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸およびセバシン酸などのジカルボン酸類が挙げられ、一方、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが好ましく用いられるが、得られる共重合ポリトリメチレンテレフタレート樹脂の融点が180〜230℃の温度範囲にあれば、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、芯鞘型複合繊維の芯部に用いられるポリトリメチレンテレフタレート樹脂は、50vol%以下の割合で他のポリエステル系樹脂を含む混合物であってもよい。この場合、他のポリエステル系樹脂は、袋状に加工するのに十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、なおかつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布が得ることができれば特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂等が好ましく用いられる。
【0040】
またさらに、芯鞘型複合繊維の鞘部に用いられるポリトリメチレンテレフタレート樹脂には、チタン、鉄、銅、銀、亜鉛、錫、ニッケル、マグネシウム、タングステン、モリブテン、ゲルマニウムおよびジルコニウム等の金属元素の酸化物または炭化物を添加してもよい。これらの酸化物や炭化物の添加量は、袋状に加工するのに十分なヒートシール性を有し、かつ柔軟性に優れ、なおかつ耐熱性に優れたヒートシール用スパンボンド不織布が得ることができれば特に限定されるものではない。
【0041】
滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、抗菌剤、防黴剤、耐候剤、艶消剤および着色顔料なども、必要に応じて添加することができる。
本発明で用いられる芯鞘型複合繊維の鞘成分の比率は、20〜70vol%であり、好ましくは30〜60vol%、さらに好ましくは35〜55vol%である。
【0042】
鞘成分の比率が20vol%未満であると、得られるスパンボンド不織布をヒートシール加工した際、十分なヒートシール強力を得ることができず好ましくない。また、鞘成分比率が70vol%を超える場合、得られる芯鞘複合繊維の強度低下、ひいてはスパンボンド不織布の強力低下に繋がるため好ましくない。
【0043】
本発明のヒートシール用スパンボンド不織布の単位目付あたりの5%伸長時応力は、0.6〜1.6であり、好ましくは0.7〜1.5、さらに好ましくは0.8〜1.4である。
単位目付あたりの5%伸長時応力が0.6未満であると、スパンボンド不織布にコシが無くなり、ヒートシール加工する際に加工性が悪化するため好ましくない。また、単位目付あたりの5%伸長時応力が1.6を超える場合、スパンボンド不織布の風合いが硬く、袋状にし内部に固体、粒体、粉体あるいはゲル体などを入れた際にその内容物の形状に追随せず、使用中に内容物が傷んだり、または袋が破れる恐れがあるため好ましくない。特にヒートシール加工する際、シール部分以外も熱の影響を受けるため、シートは全体的に風合いが硬くなることが多い。このことからも本発明のヒートシール用スパンボンド不織布の単位目付あたりの5%伸長時応力は、0.6〜1.6の範囲にあることが必要である。
【0044】
単位目付あたりの5%伸長時応力が0.6〜1.6であるヒートシール用スパンボンド不織布は、例えば、鞘部の樹脂の共重合成分を50モル%以下とし、かつ単繊維繊度を0.5〜5.0デシテックスとすることにより好適に製造することができる。
【0045】
また、本発明のスパンボンド不織布の180℃の温度における乾熱面積収縮率は、0〜5.0%であり、好ましくは0〜4.0%、さらに好ましくは0〜3.5%である。
【0046】
180℃における乾熱面積収縮率が0%未満、すなわち面積が増大する場合、ヒートシール加工する際にシートが変形し加工性が劣ったり、袋状にし薬剤等を内包しフィルターとして高温中で使用する際に、変形により内包物が漏出する恐れがあるため好ましくない。また、180℃における乾熱面積収縮率が5.0%を超えると、ヒートシール加工する際にシートが変形し加工性が劣ったり、袋やフィルターとして高温中で使用する際にシートの収縮に起因する変形が生じ、フィルター性能が低下するなどの恐れがあるため好ましくない。
【0047】
乾熱面積収縮率が0〜5.0%であるヒートシール用スパンボンド不織布は、例えば、芯部に融点が230〜280℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、かつ鞘成分の樹脂の融点を180〜230℃の範囲とすることにより好適に製造することができる。
【0048】
本発明で用いられる芯鞘型複合繊維の単繊維繊度は、0.5〜5.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.7〜4.0dtexである。
【0049】
単繊維繊度が0.5dtex未満の場合は、繊維強力の低下、ひいてはスパンボンド不織布の強力の低下に繋がることがある。また、単繊維繊度が5.0dtexを超える場合は、スパンボンド不織布がごわついて柔軟性に欠けたり、スパンボンド不織布を袋状にして内部に固体、粒体、粉体あるいはゲル体などを入れた際に、その内容物が漏れ出したりする恐れがある。
【0050】
本発明のヒートシール用スパンボンド不織布は、その目付が20〜200g/mの範囲にあることが好ましく、30〜170g/mの範囲にあることがさらに好ましい。
【0051】
ヒートシール用スパンボンド不織布の目付が20g/m未満であると、スパンボンド不織布の強力やヒートシール強力が小さく、袋状にした際に破れたりするなど使用に耐えないものとなる恐れがある。また、目付が200g/mを超える場合は、袋として使用する際にもコスト高になり、さらには例え単位目付あたりの5%伸長時応力が0.6〜1.6の範囲にあっても風合いは硬くなる傾向にある。
【0052】
本発明のヒートシール用スパンボンド不織布のヒートシール強力は、30N/5cm以上であることが好ましく、40N/5cm以上であることがさらに好ましい。
ヒートシール強力が30N/5cm未満であると、ヒートシール加工した後に袋やフィルターとして使用する際に、シール部分が剥がれるなどの恐れがある。また、ヒートシール強力の上限については特に限定するところではないが、袋やフィルターとして使用するに30乃至40N/5cm以上であれば十分であり、例えば、100N/5cm以上である必要はない。ヒートシール強力が30N/5cm以上のヒートシール用スパンボンド不織布は、芯鞘型複合繊維の芯部に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂の融点を230〜280℃の温度範囲とし、かつ鞘成分の樹脂の融点との差を30℃以上とすることにより好適に製造することができる。
本発明のヒートシール用スパンボンド不織布は、溶融したポリマーをノズルから押し出した芯鞘複合繊維を、エジェクターにより高速吸引ガスで吸引延伸した後、移動コンベア上に延伸された繊維を捕集してウェブとし、さらに連続的に熱接着や絡合等を施すことにより一体化してシート状とする、いわゆるスパンボンド法により得ることができる。本発明のヒートシール用スパンボンド不織布は、具体的には、実施例に示したように、芯鞘型複合繊維を吐出させシート状とすることにより得ることができる。
【0053】
本発明のヒートシール用スパンボンド不織布は、それを用いて袋状物やフィルターを製造することができる。
【0054】
本発明における袋状物とは、何ら限定されるものではないが、食用油不純物吸着剤袋、乾燥剤袋、酸化防止剤袋、脱臭剤袋、防虫剤袋、冷却剤袋、保温剤袋、発熱剤袋、使い捨てカイロ袋、防滑剤袋、ロジンバッグおよびティーバッグなどのようにヒートシール加工により袋状に加工され薬剤等を内包してなる袋や、商品包装用袋、食品包装用袋、花卉包装用袋、手提げ袋、巾着袋、コンパクトディスクケース、カードケースおよび名刺入れなどのようにヒートシール加工により袋状に加工されたもののことである。
【0055】
また、本発明におけるフィルターとは、何ら限定されるものではないが、掃除機用フィルター、空調機用フィルター、空気清浄機用フィルター、集塵機用フィルター、自動車エンジン用フィルター、自動車用キャビンフィルター、食用油フィルター、工業用油フィルターおよび液体フィルターなどであり、ヒートシール加工により袋状、プリーツ状あるいはハニカム状に加工されたもののことである。
【0056】
本発明におけるフィルターは、ヒートシール加工により袋状にしたのち内部に食用油不純物吸着剤、乾燥剤、酸化防止剤、脱臭剤、防虫剤、冷却剤、保温剤、発熱剤、防滑剤、松脂および炭酸マグネシウムなどの薬剤を含んだものでもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。なお、下記実施例における各特性値は、次の方法で測定したものである。
【0058】
(1)融点(℃)
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を小数点以下第1位まで読み取り、小数点以下第1位を四捨五入した値を融点とした。
【0059】
(2)単繊維繊度(dtex)
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維直径を測定し、平均値から繊維径を算出、これをポリマーの密度で補正し、繊度を算出した。算出値の小数点以下第2位を四捨五入した。
【0060】
(3)目付(g/m
JIS L 1906(2000年版)の5.2に基づいて、縦方向30cm×横方向30cmの試料を3点採取し、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、得られた値の小数点以下第1位を四捨五入したものを不織布の目付<A>とした。
【0061】
(4)縦方向と横方向の5%伸長時応力の平均値(N/5cm)
JIS L 1906(2000年版)の5.3.1に基づいて、5cm×30cmのサンプルについて、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件で、縦方向および横方向それぞれ5点の測定を実施し、得られた強伸度曲線から5%伸長時の強力を読み取り、その平均値の少数点以下第2位を四捨五入した値を縦方向と横方向の5%伸長時応力の平均値<B>とした。なお、測定に用いた試料はそれぞれ5cm×30cmのサイズであらかじめ目付を測定し、上記(3)で測定した同じ試料の目付との差が±2%以内であるもののみを5%伸長時応力の測定に用いた。
【0062】
(5)単位目付あたりの縦方向と横方向の5%伸長時応力の平均値:<B/A>
上記(4)記載の縦方向と横方向の5%伸長時応力の平均値<B>を、上記(3)記載の目付<A>で除した値の小数点以下第3位を四捨五入したものを単位目付あたりの縦方向と横方向の5%伸長時応力の平均値<B/A>とした。
【0063】
(6)乾熱面積収縮率(%)
JIS L 1906(2000年版)の5.9.1に基づいて、縦方向25cm×横方向25cmの試料を3点採取、それぞれの試料について縦、横それぞれ3箇所に正確に20cmの長さを表す印を付けた後、180±2℃の恒温乾燥機内に縦方向に鉛直になるように5分間吊り下げた。機内から取り出したサンプルについて、印を付けた縦、横方向それぞれ3箇所の長さを0.1mmまで測定し、次式によって計算し、小数点以下第2位を四捨五入したものを乾熱面積収縮率とした。
乾熱面積収縮率(%)={1−(L/L)(L/L)}×100
ここで、L:加熱後の試験片の縦方向の3線の長さの合計(mm)
:加熱前の試験片の縦方向の3線の長さの合計(mm)
:加熱後の試験片の横方向の3線の長さの合計(mm)
:加熱前の試験片の横方向の3線の長さの合計(mm)
である。
【0064】
(7)ヒートシール強力(N/5cm)
試料から採取したシート縦方向11cm×シート横方向5cmの短冊状の試験片2枚を重ね合わせ、その重ね合わせた短冊状試験片の片側の端部1cm×5cmの部分を富士インパルス社製マイコン制御温度コントロールシーラーOPL−200−10を用い、加熱時間1.6秒、冷却時間2.0秒の条件で接着した。シール圧力は、シール圧力調整ナットを調整し、「袋の厚さが0.1〜0.5mmのとき」に目盛りを合わせた。接着温度は、100〜240℃の範囲とし、下記方法により測定したヒートシール強力が最大値をとる温度をそのサンプルの接着温度とした。ただしシートが溶融しシーラーに付着するなど、接着によりシートに明らかな損傷が確認された場合は除外した。
【0065】
片側の端部を接着したサンプルについて、定速伸長形引張試験機を用いて接着していない側の端部をそれぞれつかみ、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/minの条件で接着部分を引き剥がすように両側から引っ張り、引き剥がれるまでの間にかかった最大強力を測定した。シート幅方向に3点測定し、得られた3点の平均値の小数点以下第2位を四捨五入した値を縦方向のヒートシール強力とした。サンプルの接着部分が引き剥がれずその他の部分が破断した場合は、その破断時の強力値を採用した。
【0066】
シート横方向11cm×シート縦方向5cmの試験片を用いて横方向のヒートシール強力についても同様に測定し、縦方向と横方向のヒートシール強力の平均値の小数点以下第2位を四捨五入した値をヒートシール強力とした。
【0067】
(実施例1)
融点が255℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分の原料とし、共重合成分としてイソフタル酸を10モル%含有し、融点が211℃であるポリブチレンテレフタレート樹脂を鞘成分の原料とし、芯成分の原料は295℃の温度で、また鞘成分の原料は260℃の温度でそれぞれ溶融した後、口金温度295℃で細孔から芯鞘比(体積比)50/50の芯鞘糸として紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4600m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が13%で温度190℃のエンボスロールと、温度180℃のフラットロールで、圧力60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度が1.5dtexで、目付が50g/mの不織布を製造した。ヒートシール強力を測定する際の接着温度は、200℃であった。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2)
融点が255℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分の原料とし、共重合成分としてイソフタル酸を10モル%含有し、融点が211℃であるポリブチレンテレフタレート樹脂を鞘成分の原料とし、芯成分の原料は295℃の温度で、また鞘成分の原料は260℃の温度でそれぞれ溶融したのち、口金温度295℃で細孔より芯鞘比(体積比)50/50の芯鞘糸として紡出したのち、エジェクターにより紡糸速度4600m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が13%で温度190℃のエンボスロールと、温度180℃のフラットロールで、圧力60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度が1.2dtexで、目付が80g/mの不織布を製造した。ヒートシール強力を測定する際の接着温度は、200℃であった。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例3)
融点が255℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分の原料とし、共重合成分としてイソフタル酸を10モル%含有し、融点が211℃であるポリブチレンテレフタレート樹脂を鞘成分の原料とし、芯成分の原料は295℃の温度で、また鞘成分原料は260℃の温度でそれぞれ溶融したのち、口金温度295℃で細孔より芯鞘比(体積比)50/50の芯鞘糸として紡出したのち、エジェクターにより紡糸速度4600m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が13%で温度190℃のエンボスロールと、温度180℃のフラットロールで、圧力60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度が1.5dtexで、目付が170g/mの不織布を製造した。ヒートシール強力を測定する際の接着温度は、200℃であった。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例4)
融点が255℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分の原料とし、共重合成分としてイソフタル酸を10モル%含有し、融点が211℃であるポリブチレンテレフタレート樹脂を鞘成分の原料とし、芯成分の原料は295℃の温度で、また鞘成分原料は260℃の温度でそれぞれ溶融したのち、口金温度295℃で細孔より芯鞘比(体積比)60/40の芯鞘糸として紡出したのち、エジェクターにより紡糸速度3700m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が13%で温度190℃のエンボスロールと、温度180℃のフラットロールで、圧力60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度が2.5dtexで、目付が50g/mの不織布を製造した。ヒートシール強力を測定する際の接着温度は、200℃であった。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例5)
融点が255℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分の原料とし、共重合成分としてイソフタル酸を15モル%含有し、融点が200℃であるポリトリメチレンテレフタレート樹脂を鞘成分の原料とし、芯成分の原料は295℃の温度で、また鞘成分原料は250℃の温度でそれぞれ溶融したのち、口金温度295℃で細孔より芯鞘比(体積比)40/60の芯鞘糸として紡出したのち、エジェクターにより紡糸速度4600m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が13%で温度180℃のエンボスロールと、温度170℃のフラットロールで、圧力60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度が1.5dtexで、目付が30g/mの不織布を製造した。ヒートシール強力を測定する際の接着温度は、190℃であった。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例6)
融点が255℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分の原料とし、共重合成分を含有しない、融点が226℃であるポリブチレンテレフタレート樹脂を鞘成分の原料とし、芯成分の原料は295℃の温度で、また鞘成分の原料は260℃の温度でそれぞれ溶融したのち、口金温度295℃で細孔より芯鞘比(体積比)60/40の芯鞘糸として紡出したのち、エジェクターにより紡糸速度4100m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が13%で温度190℃のエンボスロールと、温度180℃のフラットロールで、圧力60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度が1.8dtexで、目付が50g/mの不織布を製造した。ヒートシール強力を測定する際の接着温度は、200℃であった。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
得られた不織布の特性は、表1に示したとおりであるが、実施例1〜6の不織布はいずれも柔軟性の指標となる単位目付あたりの5%伸長時応力において、良好な値を示していた。また、実施例1〜6の不織布は、乾熱面積収縮率が0〜5.0%の範囲にあるため、温度が180℃以上にも達する油中など、高温条件下での使用にも十分耐えうる耐熱性を有しており、さらに実施例1〜6の不織布はいずれもそのヒートシール強力値からヒートシール性に優れていることがわかり、袋状に加工するに十分なヒートシール性を有していた。
【0075】
(比較例1)
融点が264℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分の原料とし、融点が129℃であるポリエチレン樹脂を鞘成分の原料とし、芯成分の原料は295℃の温度で、また鞘成分原料は180℃の温度でそれぞれ溶融したのち、口金温度285℃で細孔より芯鞘比(体積比)50/50の芯鞘糸として紡出したのち、エジェクターにより紡糸速度3000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が13%で温度110℃のエンボスロールと、温度100℃のフラットロールで、圧力60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度が3.6dtexで、目付が50g/mの不織布を製造した。ヒートシール強力を測定する際の温度は、180℃であった。結果を表2に示す。
【0076】
(比較例2)
融点が255℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分の原料とし、共重合成分としてイソフタル酸を11モル%含有し、融点が232℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を鞘成分の原料とし、芯成分の原料は295℃の温度で、また鞘成分の原料は270℃の温度でそれぞれ溶融したのち、口金温度300℃で細孔より芯鞘比(体積比)80/20の芯鞘糸として紡出したのち、エジェクターにより紡糸速度4400m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が13%で温度180℃のエンボスロールと、温度170℃のフラットロールで、圧力60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度が1.9dtexで、目付が45g/mの不織布を製造した。ヒートシール強力を測定する際の温度は、210℃であった。結果を表2に示す。
【0077】
(比較例3)
融点が255℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分の原料とし、共重合成分を含有しない、融点が226℃であるポリブチレンテレフタレート樹脂を鞘成分の原料とし、芯成分の原料は295℃の温度で、また鞘成分の原料は260℃の温度でそれぞれ溶融したのち、口金温度295℃で細孔より芯鞘比(体積比)90/10の芯鞘糸として紡出したのち、エジェクターにより紡糸速度4100m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、凸部の面積が13%で温度190℃のエンボスロールと、温度180℃のフラットロールで、圧力60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度が1.8dtexで、目付が50g/mの不織布を製造した。ヒートシール強力を測定する際の温度は、200℃であった。結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
得られた不織布の特性は、表2に示したとおりであるが、比較例1の不織布は構成する繊維の鞘成分に融点が129℃のポリエチレン樹脂を原料として用いているため、柔軟性およびヒートシール性には優れるものの、乾熱面積収縮率が6.2%と高く、温度が180℃以上にも達する油中など、高温条件下での使用には耐えられるものではなかった。また、比較例2の不織布は、構成する繊維の鞘成分に融点が232℃である共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を原料として用いているため、耐熱性には優れるものの、柔軟性およびヒートシール性に劣り、袋やフィルターとして用いるヒートシール用スパンボンド不織布としては、適さないものであった。また、比較例3の不織布は、構成する繊維の鞘成分比率が10vol%であるため、ヒートシール性に劣り、袋やフィルターとして用いるヒートシール用スパンボンド不織布としては適さないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のヒートシール用スパンボンド不織布は、ヒートシール加工により袋状に加工された袋状物や、掃除機用フィルター、空調機用フィルター、空気清浄機用フィルター、集塵機用フィルター、自動車エンジン用フィルター、自動車用キャビンフィルター、食用油フィルター、工業用油フィルターおよび液体フィルターなどの各種のフィルターに適用でき、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分がポリエチレンテレフタレート樹脂を原料とし、鞘成分がポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびその共重合体からなる群から選ばれたいずれかの樹脂を原料とする芯鞘型複合繊維からなる不織布であって、該鞘成分の樹脂の融点が180〜230℃の範囲にあり、該芯鞘型複合繊維の鞘成分の比率が20〜70vol%の範囲にあり、かつ該不織布の単位目付あたりの5%伸長時応力が0.6〜1.6の範囲にあり、該不織布の180℃の温度における乾熱面積収縮率が0〜5.0%の範囲にあることを特徴とするヒートシール用スパンボンド不織布。
【請求項2】
鞘成分の樹脂が、3〜50モル%の範囲で共重合成分を含むことを特徴とする請求項1記載のヒートシール用スパンボンド不織布。
【請求項3】
芯鞘型複合繊維の単繊維繊度が0.5〜5.0dtexの範囲であり、不織布の目付が20〜200g/mの範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載のヒートシール用スパンボンド不織布。
【請求項4】
ヒートシール強力が30N/5cm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒートシール用スパンボンド不織布。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のヒートシール用スパンボンド不織布からなる袋状物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のヒートシール用スパンボンド不織布からなるフィルター。

【公開番号】特開2006−138046(P2006−138046A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330274(P2004−330274)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】