説明

ヒートラミネーション装置及び方法

【課題】環境負荷を少なくするために粘着性接着剤に替えて感熱性接着剤を使用することにより剥離紙を無くすことができるが、従来技術ではカバーフィルムを予熱するため印刷基材と接着後、ラミネートシートにカールが発生しやすくなり、現在は広くは使用されない。
【解決手段】発明者は、カバーフィルムと印刷基材を同時に加熱加圧し、接着し引き続いて一定時間接着温度ないし近接した温度に保持することによりカールをより少なくなることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱性接着層を有するカバーフィルムを基材にラミネートしてラミネートシートを製造する際におけるラミネートシートのカールを防止するヒートラミネーション装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本発明が用途と意図しているシール印刷分野ではカバーフィルムとして透明プラスチックフィルムを印刷基材にラミネートする方法として、粘着性接着剤を塗布したフィルムを使用するのが一般的である。しかしこの方法では、取り扱い上ラミネートされるまでは粘着性接着剤層を剥離紙で保護し、使用後、剥離紙は廃棄物として処理する必要があった。
【0003】
これに対して、一部ではカバーフィルムの表面にシリコン等の剥離層を形成し、セロファンテープ様にして粘着性接着剤層を剥離する方法や(例えば特許文献1)、感熱性接着層を有するカバーフィルムを使用する方法が実用化されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
しかし剥離紙を使用しないセロファンテープ様の方法では、剥離抵抗による作業性低下及び剥離層表面に印字が出来ない等の欠点がある。
【0005】
また感熱性接着層を有するカバーフィルムを使用する方法では、接着する際の加熱により、得られたラミネートシートがカールし、使用できる範囲に制限がある。
【0006】
現在、ヒートラミネーション方法により、カール防止に関する技術としては特許文献3に示される方法があり、シール印刷分野の一部で実用化されている。
【特許文献1】 特開平05−39462号 公報
【特許文献2】 特開平06−155579号 公報
【特許文献3】 特願2007−92480
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に示したヒートラミネーション方法はカバーフィルムを予熱し、感熱性接着層を粘着状態にした後基材と加圧接着させる。この方法では熱膨張係数の大きいプラスチックから成るカバーフィルムが予熱により膨張し伸びた状態で基材と接着固定されるため、得られたラミネートシートが冷却するに伴ってカバーフィルムが収縮しカールの要因になる。それ故カールを少なくするためには厳しい温度管理が要求され、またよりカールが少なく平滑性が求められる用途には十分な対応が出来ず、粘着性接着剤を使用する方法に替わって広範囲に使用されるまでには至っていない。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みて、ラミネートシートのカールの発生を効果的に防止できるようにしたヒートラミネーション装置並びに方法を実現することを目的とするものである。
【課題を解決する手段】
【0009】
そして、本発明は、上記目的を達成するための、第1の課題解決手段は、感熱性接着層を有する透明プラスチックフィルムからなるカバーフィルムをヒートロールにより加熱し、基材に接着させることによりラミネートシートを製造するヒートラミネーション装置であって、カバーフィルムを予熱することなく、基材とともにヒートロールと弾性ロールからなるニップ部に直接導き、基材に接着させる構成からなるヒートラミネーション装置。
【0010】
第2の課題解決手段としては、感熱性接着層を有する透明プラスチックフィルムからなるカバーフィルムをヒートロールにより加熱し、基材に接着させることによりラミネートシートを製造するヒートラミネーション方法であって、カバーフィルムを予熱することなく、基材とともにヒートロールと弾性ロールからなるニップ部に直接導き、基材に接着させるヒートラミネーション方法。
【0011】
第3の課題解決手段としては、カバーフィルムを基材に接着し、引き続いてヒートロールに巻き付けて接触させ、接着時の温度を保持する構成からなる[0009]に記載のヒートラミネーション装置。
【0012】
第4の課題解決手段としては、カバーフィルムを基材に接着し、引き続いてヒートロールに巻き付けて接触させ、接着時の温度を保持することからなる[0010]に記載のヒートラミネーション方法。
【0013】
第5の課題解決手段としては、カバーフィルムを基材に接着し、引き続いて弾性ロールに巻き付けながら、第2ヒートロールにより再度ニップして、十分な接着を確保する構成からなる[0009]に記載のヒートラミネーション装置。
【0014】
第6の課題解決手段としては、カバーフィルムを基材に接着し、引き続いて弾性ロールに巻き付けながら、第2ヒートロールにより再度ニップして、十分な接着を確保することからなる[0010]に記載のヒートラミネーション方法。
【発明の効果】
【0015】
上述したように本発明のヒートラミネーション装置及び方法によれば、カバーフィルムで保護された印刷等を施された基材からなるラミネートシートのカールを確実に抑制することが出来る。この効果は基材が連続した帯状材の場合であっても、また基材が所要の大きさにカットされた枚葉の場合でも発揮される。
【0016】
本発明で使用できるカバーフィルムの素材は、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、セロファン等、である。
【0017】
本発明で使用できる基材は印刷された又は印刷されていないポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム又は紙をベースにしたタック紙、及び紙単体等、である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態1を図1に基づいて、本発明の実施の形態2を図2に基づいて説明する。
【0019】
本発明の実施の形態1は、図1において、ロール状に巻かれたカバーフィルム1、カバーフィルムの感熱接着剤層2、カバーフィルム基材3で、印刷基材7、またヒートロール6と弾性ロール8とから成るニップ部N、ラミネートシートをヒートロール6に巻き付けるためのラミネートシート用ガイドロール9である。
【0020】
本発明の実施の形態2は、図2において、図1に加え第2ヒートロール10である。
なお、必要に応じ図3に示すようにラミネーション装置の前に設けたプレヒートロール11を使用することによりラミネート前の基材温度が一定となり、ラミネートシートのカールのバラツキを少なくすることが出来る。
【0021】
以下、上記構成の動作を説明する。図1において、ロール状に巻かれたカバーフィルム1から繰り出されたカバーフィルムは、ヒートロール6と弾性ロール8から成るニップ部Nに直接導かれ、カバーフィルムと印刷基材7が接着固定されラミネートシートを得る。引き続き該シートをガイドロール9によりヒートロール6に巻きつけ一定時間接着、ないしそれに近接する温度を保持しカールが抑えられたラミネートシートを得る。
【0022】
また必要に応じ、図2に示すように第2ヒートロール10を使用し、加熱加圧することによりラミネートシートの表面状態をより良好にすることが出来る。
【実施例1】
【0023】
図1に示した装置及び方法に基づいて製造した、ロール径200mmの金属製ヒートロール、表面をシリコンゴムで被覆したロール径200mmの弾性ロールを備えたラミネート装置を使用し、ヒートロール温度120℃、ラミネート速度毎分35mで、印刷基材としてタック加工されたPET12ミクロン、にフレキソ印刷したものを使用した。またカバーフィルムはPET12ミクロンに感熱接着剤として融点90℃のメタロセン触媒を使用した低融点ポリエチレン、15ミクロンを押出成形法で積層作成したものを使用した。ヒートロールの加熱は特許文献3で提唱した方法を採用した。また印刷基材は図3に基づいて製造したプレヒート装置を使用し、ロール温度80℃で加熱した。
【実施例2】
【0024】
図2に示した装置及び方法に基づいて製造した、ロール径200mmの金属製ヒートロール、表面をシリコンゴムで被覆したロール径200mmの弾性ロール及び、ロール径150mmの金属製第2ヒートロールを備えたラミネート装置を使用し、ヒートロール温度120℃、第2ヒートロール温度120℃、ラミネート速度毎分35mで、基材として84g/mコート紙を使用した。カバーフィルムはPET12ミクロンに感熱接着剤として融点90℃のメタロセン触媒を使用した低融点ポリエチレン、15ミクロンを押出成形法で積層作成したものを使用した。ヒートロールの加熱は特許文献3で提唱した方法を採用した。また印刷基材は図3に基づいて製造したプレヒート装置を使用し、ロール温度40℃で加熱した。
【0025】
従来の[0002]に記載した粘着性接着剤を使用した方法ではカールの大きさは5mm以下が一般的であるが、産業廃棄物が発生する。
また、[0005]並びに[0006]に記載したヒートラミネーション方法ではカール防止が十分ではなかった。
これに対して本発明では、産業廃棄物の発生もなく、カールの程度はラミネートシート末端の平面からの高さを測定し、5mm以下を確保できた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 本発明の実施形態の説明図である
【図2】 再ニップする実施形態の説明図である。
【図3】 基材をプレヒートする実施形態の説明図である
【符号の説明】
【0027】
1 ロール状に巻かれたカバーフィルム
2 カバーフィルムの感熱性接着層
3 カバーフィルム基材
4、5 ガイドロール
6 ヒートロール
7 印刷基材
7A 図柄
8 弾性ロール
N ニップ部
9 ラミネートシート用ガイドロール
10 第2ヒートロール
11 プレヒートロール
12 ガイドロール
A1 カバーフィルム繰り出し方向
B1 基材移動方向
C1 ラミネートシート移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱性接着層を有する透明プラスチックフィルムからなるカバーフィルムをヒートロールにより加熱し、印刷基材に接着させることによりラミネートシートを製造するヒートラミネーション装置であって、カバーフィルムを予熱することなく、印刷基材とともにヒートロールと弾性ロールからなるニップ部に直接導き、印刷基材に接着させることによりラミネートシートのカールを防止することを特徴とするヒートラミネーション装置。
【請求項2】
感熱性接着層を有する透明プラスチックフィルムからなるカバーフィルムをヒートロールにより加熱し、印刷基材に接着させることによりラミネートシートを製造するヒートラミネーション方法であって、カバーフィルムを予熱することなく、印刷基材とともにヒートロールと弾性ロールからなるニップ部に直接導き、印刷基材に接着させることによりラミネートシートのカールを防止することを特徴とするヒートラミネーション方法。
【請求項3】
カバーフィルムを印刷基材に接着し、引き続いてヒートロールに巻き付けて接触させ、接着時の温度を保持することを特徴とする請求項1に記載のヒートラミネーション装置。
【請求項4】
カバーフィルムを印刷基材に接着し、引き続いてヒートロールに巻き付けて接触させ、接着時の温度を保持することを特徴とする請求項2に記載のヒートラミネーション方法。
【請求項5】
カバーフィルムを印刷基材に接着し、引き続いて弾性ロールに巻き付けながら、第2ヒートロールにより再度ニップして、十分な接着を確保することを特徴とする請求項1に記載のヒートラミネーション装置。
【請求項6】
カバーフィルムを印刷基材に接着し、引き続いて弾性ロールに巻き付けながら、第2ヒートロールにより再度ニップして、十分な接着を確保することを特徴とする請求項2に記載のヒートラミネーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−23473(P2010−23473A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209358(P2008−209358)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(506364709)株式会社EFパッケージ (2)
【出願人】(508248391)
【Fターム(参考)】