説明

ヒートローラ加熱制御装置およびその熱現像装置

【課題】 熱現像装置の加熱ローラの表面温度を簡単で確実でしかも低廉な温度センサ検出できる熱現像装置を提供する。
【解決手段】 加熱手段が配設された搬送路に沿って感光性熱現像記録材料を搬送手段で搬送しながら、その加熱手段によって感光性熱現像記録材料を加熱してそこに記録された潜像を顕像化する熱現像装置において、加熱手段としてヒートローラを用い、このヒートローラ表面の一部に所定の温度で反射率が変化する対温度反射率変化部材を設け、その対温度反射率変化部材の反射率の変化によってヒートローラが所定の温度に達したことを判断する温度到達判断手段と、その温度到達判断手段の判断結果に従いヒートローラの加熱手段を一定に制御するもので、その対温度反射率変化部材として示温材料を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱現像装置に関し、特にその中に用いられるヒートローラの簡易な加熱制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医療用イメージャーと称される画像形成装置は、CTやMRI等の医療用測定機によって測定された画像から可視像のプリントを作成する。画像形成装置では、PETフィルム等の支持体上に感光熱現像性の画像形成層を形成してなる感光性熱現像記録材料(以下、「記録材料」とも称す。)が用いられ、MRI等の画像データ供給源から供給された画像データに応じて変調した光ビームで、この感光性熱現像記録材料を像様に露光して潜像を記録する。その後、露光済の感光性熱現像記録材料を、内蔵した熱現像部により加熱現像して発色させ、ハードコピーとして出力がなされる。
【0003】
この種の画像形成装置は、基本的に、記録材料の搬送方向順に、記録材料供給部と、画像露光部と、熱現像部とを有して構成される。記録材料供給部は、マガジンから記録材料を取り出して、記録材料を搬送方向下流に供給する。画像露光部は、光ビーム走査露光によって記録材料を像様に露光する。熱現像部は、加熱手段としての例えば加熱ドラムを有し、記録材料を加熱することにより、熱現像を行って潜像を可視像とする。即ち、熱現像部に搬入された記録材料は、加熱ドラムと無端ベルトとの間で挟持されながら搬入され、加熱ドラムの熱によって熱現像されて、露光によって記録された潜像が可視像となる。つまり、記録材料は、加熱ドラムによって片面側からのみ加熱された。
【0004】
ところで、MRI等の画像データ供給源から供給された画像データに応じて変調した光ビームで記録材料を像様に露光して潜像を記録する方法では、一般に片面に画像形成層の設けられた記録材料(片面感光フィルム)が用いられる。従って、記録材料への熱現像も、上記の従来例に示したように、画像形成層の設けられた片面のみが加熱の対象となっていた。また、片面感光フィルムが用いられる熱現像部(熱現像装置)であっても、画像形成層の設けられていない面側からも加熱を行う場合(画像形成層の設けられていない面側に補助熱源を有するもの)もあったが、その温度制御は片面のみに設けられた画像形成層を補助的に加熱制御するためのものであり、両面を必ずしも加熱しなければならない必然性はなかった。
【0005】
一方、X線管と記録材料との間に、被写体を置き、被写体を透過させたX線で記録材料に潜像を記録する方法では、支持体の両面に画像形成層を設けた記録材料(両面感光フィルム)が用いられる。両面感光フィルムは、撮影時、蛍光増感紙が表裏に配置されてカセッテに収容される。蛍光増感紙はX線が当たると蛍光を発する。両面感光フィルムでは、この蛍光によって感光する。
【0006】
しかしながら、画像形成層が表裏に設けられた記録材料では、従来の片面のみを加熱する熱現像装置を用いた場合、非加熱側の画像形成層に対する熱の伝わりが遅れることになる。このような現像遅れが生じると、画像形成層の色が茶色等に変色する色調ずれが生じた。また、非加熱側の画像形成層に十分な熱が伝わらないと、現像が不十分となり、濃度が薄くなる濃度変動も生じた。
したがって、両面均一な熱現像を可能にできる熱現像装置を開発し、色調ずれ、濃度変動の防止を図ることが要求されている。
【0007】
そこで、本出願人は、これらの要求を満たす熱現像装置を先に開発した。
図1は本発明に係る熱現像装置の第1の実施形態を表す構成図、図2は感光性熱現像記録材料の断面図である。
この実施の形態による熱現像装置100は、感光性熱現像記録材料(記録材料)Aを加熱し、画像形成層に記録された潜像を顕像化する。熱現像装置100に用いられる記録材料Aは、図2に示す支持体A1の一方の面(例えば表面)と他方の面(例えば裏面)との双方に本発明の前提となっている感光材料が塗布された画像形成層A2、A2が設けられている。
【0008】
熱現像装置100では、記録材料Aの第1面と第2面との双方に図示しない蛍光増感紙が配置されるような両面感光フィルムである記録材料Aが使用可能となる。蛍光増感紙はX線が当たると励起して蛍光を発するものである。第1面と第2面とに設けられたそれぞれの画像形成層A2、A2は、蛍光増感紙からの蛍光によって少ないX線量で感光する。なお、この記録材料Aについては後に詳述する。
【0009】
画像形成層A2に潜像の形成された記録材料Aは、通常、一枚ずつカセッテに収容されており、X線量で感光後、カセッテごと運ばれ、暗室に配置されている熱現像装置100まで持ち込まれる。暗室でカセッテから取り出された記録材料Aは熱現像装置100の手差し用トレイ102に操作者によって供給される。
明室で操作したいときは、熱現像装置100にカセット収納口を設けておき、カセット収納口にカセッテを収納することで、カセッテの開閉蓋が自動的に開かれ、吸盤等を用いた取出手段によって、カセッテ内に収容された記録材料Aが取り出されるようにしてもよい。
【0010】
このようにして装置内に取り込まれた記録材料Aは、ニップローラ対104を経て搬送方向の下流に位置する熱現像部106へ搬送される。なお、ニップローラ対104と熱現像部106との間には、取出した記録材料Aを搬送方向と直交する方向に位置合わせして、下流の熱現像部106における記録材料Aの位置合わせをする幅寄せ部を設けておくと良い。
【0011】
熱現像部106は搬送方向に直列配置される4機の加熱・搬送手段106a〜106dで構成され、記録材料Aがここを通過することにより加熱され、熱現像を行って潜像を可視像となる。熱現像部106で加熱により現像された記録材料Aは、搬送方向下流にある金属ローラ対による徐冷・冷却部108で徐冷・冷却された後、トレイ110に排出される。
【0012】
熱現像部106に設けられる搬送・加熱手段としては、
(1)加熱ドラムの周面と、該加熱ドラムの周面に接するようにして一部を周設させた無端ベルトとの間で、記録材料の搬送路を形成し、加熱ドラムを回転させることによって、搬送路の記録材料を搬送するとともに、その間に加熱ドラムの熱によって記録材料の熱現像を行ったり(第1の熱現像方法)、
また、(2)平板状のプレートヒータと、該プレートヒータの上方に、該プレートヒータの長手方向に並べて配置した複数個の加熱ローラとによって記録材料の搬送路を形成するとともに、該搬送路の入口と出口に搬送ローラ対をそれぞれ配設し、入口の搬送ローラ対によって記録材料を搬送路内に搬送し、出口ローラ対によって、搬送路内の記録材料を搬送路から排出し、その間に、加熱ローラおよびプレートヒータの熱によって記録材料の熱現像を行ったり(第2の熱現像方法)、
さらには、(3)円弧状に形成したプレートヒータと、そのプレートヒータの内面側に、プレートヒータに沿って配設した複数個の加熱ローラとによって円弧状の搬送路を形成するとともに、該搬送路の入口と出口に搬送ローラ対をそれぞれ配設し、入口の搬送ローラ対によって記録材料を搬送路内に搬送し、出口ローラ対によって、搬送路内の記録材料を搬送路から排出し、その間に、加熱ローラおよびプレートヒータの熱によって記録材料の熱現像を行なうこと(第3の熱現像方法)などが考えられている。
【0013】
そして、これらの加熱ローラや加熱ドラム、プレートヒータにはそれぞれ温度センサが設けられていて、温度センサの検出した温度に基づいて加熱ローラや加熱ドラム、プレートヒータの内部に設けられたヒータの温度制御をして、それぞれの表面温度を一定に制御している。ところで、これら加熱ローラや加熱ドラム、プレートヒータの温度制御は複雑なシーケンス制御ではなくて、ある決まった基準温度か2〜3の基準温度で制御すればよいのであって、したがって広範囲に亘って温度を正確に検出する能力のある高価な温度センサを必要としていない。
【0014】
特許文献1記載の発明では、ある基準温度に達したかどうかを検出するものとして、その請求項8において「渦電流式減速装置のドラム表面に可逆性の示温塗料を塗布し、この示温塗料の色がドラムの許容上限温度の直前の温度に対応した色に変化したことを画像センサにて検知する」といった温度検知装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−223598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1記載の温度検知装置では、画像センサによる画像判別手順が必要となり、画像センサによる画像判別は複雑で時間がかかり、また画像センサが高価であるという欠点があった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、熱現像装置の加熱ローラや加熱ドラム、プレートヒータの表面温度を簡単で確実でしかも低廉な温度センサ検出できる熱現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ヒートローラ加熱制御装置に係り、搬送路に加熱手段を配設し、該搬送路に沿って感光性熱現像記録材料を搬送手段で搬送しながら、前記加熱手段によって感光性熱現像記録材料を加熱して該感光性熱現像記録材料に記録された潜像を顕像化する熱現像装置において、前記加熱手段としてその表面を一定の温度に制御しているヒートローラを用い、当該ヒートローラ表面の一部に所定の温度で反射率が変化する対温度反射率変化部材を設け、その対温度反射率変化部材の反射率の変化によって前記ヒートローラが所定の温度に達したことを判断する温度到達判断手段と、その温度到達判断手段の判断結果に従い前記ヒートローラの加熱手段を制御することを特徴としている。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のヒートローラ加熱制御装置において、前記対温度反射率変化部材が示温材料によって構成されることを特徴としている。
請求項3記載の発明は、請求項1記載のヒートローラ加熱制御装置において、前記対温度反射率変化部材が、磁性粉体を内包するマイクロカプセルと当該マイクロカプセルに近接配置されて温度に依存して透磁率が変化する磁石とを備えたことを特徴としている。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のヒートローラ加熱制御装置において、温度到達判断手段を、前記対温度反射率変化部材に照射光を発射する照射体と、前記対温度反射率変化部材からの反射光を受光する受光体とで構成し、前記受光体の受光量変化で前記ヒートローラが所定の温度に達したことを判断することを特徴としている。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載のヒートローラ加熱制御装置において、前記対温度反射率変化部材を複数個設け、各対温度反射率変化部材の反射率の変化する温度がそれぞれ異なっていることを特徴としている。
請求項6記載の発明は、請求項5記載のヒートローラ加熱制御装置において、装置の立ち上げ時に前記加熱ローラの表面温度が第1の温度t1に達するまでは高パワーを与え、前記第1温度t1を超えると前記高パワーより低い定常パワーを与え、前記加熱ローラの表面温度が第2の温度t2(t1<t2)を超えたら定常パワーをオフし、前記第2温度t2を下回ったら再び定常パワーをオンすることで急速加熱制御を行う熱現像装置であって、複数の前記対温度反射率変化部材の反射率の互いに異なる温度の一方を前記第1温度t1とし、他方を前記第2温度t2としたことを特徴としている。
請求項7記載の発明は、請求項5記載のヒートローラ加熱制御装置熱現像装置において、前記加熱ローラの表面温度が第3の温度t3を超えてもパワーをオンし続け、第4の温度t4(t3<t4)を超えたらパワーをオフし、次に前記加熱ローラの表面温度が下がって前記第4の温度t4を下回ってもパワーをオフし続け、前記第3の温度t3を下回ったら再びパワーをオンすることによって温度制御のハンチングを防止する熱現像装置であって、複数の前記対温度反射率変化部材の反射率の互いに異なる温度の一方を前記第3温度t3とし、他方を前記第4温度t4としたことを特徴としている。
請求項8記載の発明は、請求項5記載のヒートローラ加熱制御装置において、装置待機時には前記加熱ローラの表面温度が第5の温度t5を維持するように温度t5を基準にオン・オフ制御をし、使用時に前記加熱ローラの表面温度が第6の温度t6(t5<t6)を維持するように温度t6を基準にオン・オフ制御をする待機制御可能な熱現像装置であって、複数の前記対温度反射率変化部材の反射率の互いに異なる温度の一方を前記第5温度t5とし、他方を前記第6温度t6としたことを特徴としている。
請求項9記載の発明は、ヒートローラ加熱制御装置に係り、請求項6〜8記載の各発明を組み合わせた制御を行うことを特徴としている。
【0020】
請求項10記載の発明は、熱現像装置に係り、搬送路に加熱手段を配設し、該搬送路に沿って感光性熱現像記録材料を搬送手段で搬送しながら、前記加熱手段によって感光性熱現像記録材料を加熱して該感光性熱現像記録材料に記録された潜像を顕像化する熱現像装置において、前記加熱手段としてその表面を一定の温度に制御しているヒートローラを用い、当該ヒートローラ表面の一部に請求項2又は3記載の対温度反射率変化部材を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
このような構成により、従来技術では示温材料の色変化を画像センサで読取り異常となった温度を識別するものであったのに対し、本発明では示温材料の色変化による反射率の変化を反射式センサで読取るものであるので、画像センサよりも反射式センサの方が安価であり、しかも識別までの時間が短縮でき、故障しにくいシステムとなる。
また、その検出した信号の用途も各種の制御タイプの熱現像装置にそれぞれ適用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係る各実施例について図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図3は本発明に係る実施例1を加熱ローラへ適用した例を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は実施例1で使用する示温材料の温度−反射率特性図である。
図においてRは回転する加熱ローラで、筒状をしており、内部の中心軸に沿ってヒータ(図示なし)が埋設されており、外部から加熱制御装置によってこのヒータに供給する電流をオン・オフすることで加熱制御している。この加熱ローラRが前記平板状のプレートヒータや円弧状プレートヒータと対向して配置され、記録媒体が加熱ローラRと平板状のプレートヒータや加熱ローラRと円弧状プレートヒータとの間を搬送されている間に所定の温度に加熱される。
なお、図3では加熱ローラRの例で示しているが、上述の加熱ドラムであっても実施例1が同じように適用されることは言うまでもない。
【0024】
11は本発明によりローラRの円周上の記録材料の搬送に邪魔にならない位置に(あるいはその全周に)に取り付けられた示温材料である。示温材料11の温度−反射率特性は図3(c)に示すように、ある温度t1を境に反射率が急変する特性を有し、ここでは反射率約90%から約10%まで低下する特性を示している。示温材料としては、所定温度以上になると不透明となる物質が用いられ、具体例としては、例えばパラフィン、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステルおよび高級アルコールなどの熱により融解する物質が挙げられる。これらの示温材料は、その融点が目的の所定温度の近辺にあるものであって、融解又は軟化して液状となりカバー部の透明性を低下させて不透明になるからである。
【0025】
フォトカプラ12は、発光体121(図3(b))と受光体122とから構成されている。発光体121から示温材料11の上に発射された光が示温材料11で反射されたあと、その反射光を受光体122で受光するシステムである。
そこで、加熱ローラRが加熱されながら回転しているとき、加熱ローラRの表面温度が温度t1よりも低いうちは、示温材料11は図3(c)のように反射率が大きいので(図3−a−イ参照)、フォトカプラ12の受光体122は十分な光量を受光している。受光体122が十分な光量を受光しているときは加熱を行うようにしているので、この間は加熱が続けられる。やがて加熱ローラRの表面温度が温度t1を超えると示温材料11の反射率が急変して降下するので、フォトカプラ12の受光体122は十分な光量を受光できず(図3−a−ロ参照)、これによって加熱ローラRの表面温度が温度t1を超えたとの判定を行なうものである。
【0026】
次にこの装置を用いた制御例について説明する。
装置の加熱ローラの表面温度を所定温度t1に制御したいとき、温度t1で反射率の変わる示温材料11を加熱ローラRに設けておく。そして反射率が高いときは、加熱ローラRに加熱パワーを与えるように制御すれば、温度t1を超えるまでは加熱ローラRに加熱パワーを与えるので、加熱ローラRの表面温度が上昇する。そして、加熱ローラRの表面温度が温度t1を超えたら示温材料11の反射率が変わり、反射率が低いときは、加熱ローラRに加熱パワーを与えないように制御しているから、加熱ローラRの加熱パワーをオフにする。これによって、加熱ローラRの表面温度は降下し始め、そして温度t1を下回ったら示温材料11の反射率が再び大きくなるので、パワーをオンするようになる。このことを繰り返すことで、加熱ローラRの表面温度を所定温度t1に制御することが簡単にできるようになる。
このように、実施例1によれば、示温材料11の反射率をフォトカプラ12で検出することで、反射率の急変したときに加熱ローラRの表面温度が所定温度t1を超えたことが簡単に判るので、表面温度を簡単で確実でしかも低廉な温度センサで検出できるようになる。
【実施例2】
【0027】
以上は、反射率を変える手法として示温材料を用いたが、その他、「磁性粉体内蔵マイクロカプセル+温度によって磁力が急変する磁石」を用いる方法がある。
図4は本発明に係る実施例2を加熱ローラへ適用した例を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は実施例2で使用する磁性粉体封入マイクロカプセルの温度−反射率特性図である。
図においてRは回転する加熱ローラであり、図3と原則同じものであるので、重複説明は省略する。ここでは加熱ローラRの例で示しているが、勿論上述の加熱ドラムであっても同じである。
21は加熱ローラRの上の所定部位(記録媒体の搬送の邪魔にならない箇所)に本発明により取り付けられた磁性粉体封入マイクロカプセルである。
磁性粉体封入マイクロカプセル21は内部に磁性粉体が封入されており、その磁性粉体が磁力によって一方向に引き寄せられると色(白⇔黒)が変化する(したがって反射率も変化する)という性質を有している。
22は磁性粉体封入マイクロカプセル21に近接配置された温度依存性磁石で、ここでは加熱ローラRの内部に設けている。23は磁性粉体封入マイクロカプセル21を中心に温度依存性磁石22の反対側に設けられた永久磁石である。
温度依存性磁石22は、温度−反射率特性は図4(c)に示すように、ある温度t2を境に反射率が急変する特性を有し、ここでは反射率約90%から約10%まで低下する特性を示している。このような温度依存性磁石22は、鉄、ニッケル、コバルトを調合して作成して、磁性を失う温度であるキュリー温度を低く設定したものであり、キュリー温度は、鉄の調合比率を変化することにより容易に設定することができ、例えば電磁軟鉄のキュリー温度が900℃程度であるのに対し、温度依存性磁石では100℃程度に設定することも可能である。
【0028】
フォトカプラ12は、発光体121(図4(b))と受光体122とから構成されている。発光体121から磁性粉体封入マイクロカプセル21の上に発射された光が磁性粉体封入マイクロカプセル21で反射されたあと、その反射光を受光体122で受光するシステムである。
そこで、加熱ローラRの表面温度が温度t2(図4(c))より低いときは、温度依存性磁石22の磁力が働き、温度依存性磁石22の磁力の方が永久磁石の磁力よりもマイクロカプセル21内の磁性粉体にとっては強く作用するので、磁性粉体はマイクロカプセル21の内部で温度依存性磁石22の側に引き寄せられる(つまり、表面側から磁性粉体が遠ざかる)ため、白色(高透明度)となる。したがって、このときはフォトカプラ12の受光体122は十分な反射光量を受光している(図4−a−イ参照)。
次に、加熱ローラRの表面温度が温度t2を超えると、温度依存性磁石22の磁力が激減するため、磁性粉体は今度は永久磁石23の磁力に引き寄せられるので、磁性粉体はマイクロカプセル21の表面に集まり、黒くなる(透明度が激減する)。したがって、フォトカプラ12の受光体122は十分な反射光量を受光しなくなり(図4−a−ロ参照)、これによって加熱ローラRの表面温度が温度t1を超えたとの判定を行なうものである。
この装置の制御例については、示温材料11の場合と同じように行うことができるので、重複説明は省略する。
【0029】
以上のように、本発明によれば、前者は液晶相変化による色差で温度判定、後者は磁石の磁力差によるマイクロカプセル色差で温度判定するものであり、いずれも反射率の差は検出し易いので、反射率(色)の変化が明確に検出でき、したがって正確な温度変化が(色変化を高価な画像センサで読取るといった複雑で時間のかかる従来のシステムと比べて)簡単なシステムで判別できることとなる。
【実施例3】
【0030】
図5は本発明の実施例3で、実施例1又は実施例2の対温度反射率変化部材を複数個用いて制御するもので、(a)〜(c)は加熱ローラRの表面温度がそれぞれ異なる(aの温度<bの温度<cの温度)場合を示している。
図において、加熱ローラRの軸方向隅に示温材料51aおよび51bが取り付けられている。そして、示温材料51aおよび51bのそれぞれの温度対磁気特性は図6の51aおよび51bに示すようにそれぞれ異なり、示温材料51aの反射率変化温度t11は示温材料51bの反射率変化温度t12より低く選定してある。12aおよび12bはそれぞれフォトカプラで、フォトカプラ12aは示温材料51aからの反射光を、フォトカプラ52bは示温材料51bからの反射光をそれぞれ検出している。
【0031】
次に、この装置を用いた実施例3の制御について説明する。
装置のたち上げ時の、加熱ローラRの表面温度が第1の低い温度t11に達するまでは、示温材料51aおよび51bは共に図6の温度−反射率特性曲線により高反射率となっているので、フォトカプラ12a、12bは十分な反射光を受光し、そしてフォトカプラ12aおよび12bが共に受光の場合は高パワーを加熱ローラRに与えるようにしているので、したがってこの場合、加熱ローラRに高パワーを与え、加熱ローラRは急速に高速加熱される。
そして、加熱ローラRの表面温度が温度t11を超えると、示温材料51aは図6の温度−反射率特性曲線により低反射率となるので、フォトカプラ12aは反射光を受光しなくなる。そしてフォトカプラ12aが不受光でかつフォトカプラ12bが受光の場合は、低いパワーを加熱ローラRに与えるようにしているので、これ以降は加熱ローラRは緩やかに加熱される。
さらに、加熱ローラRの表面温度が第2の温度t12を超えたら、示温材料51bも図6の温度−反射率特性曲線により低反射率となるので、フォトカプラ12bも反射光を受光しなくなる。そしてフォトカプラ12aおよび12bが共に受光しないときは加熱ローラRへのパワーをオフするようにしているので、これ以降は加熱ローラRへパワーは与えられなくなり、加熱ローラRの表面温度は降下し始める。
そして、加熱ローラRの表面温度が前記温度t12を下回ったら、フォトカプラ12aが不受光でかつフォトカプラ12bが受光となるので、再び低いパワーが加熱ローラRに与えられるようになり、加熱ローラRは緩やかに加熱される。
以後、温度制御は加熱ローラRの表面温度が温度t12を境に、これを超えればオフ、下回ればオン制御が繰り返されてゆくことになり、これによって加熱ローラRの表面温度は温度t12に維持されることとなる。
【0032】
このように、実施例3によれば、実施例1又は2記載の対温度反射率変化部材を2個用い、そのうち1個によって装置の立ち上げ時に温度t11まで急速加熱をし、それ以降は緩やかに加熱し、最終的に別の1個によって第2の温度t12を中心にオン・オフ制御される。このように対温度反射率変化部材を2個で急速加熱制御を簡単なシステムで行うことができるようになる。
【実施例4】
【0033】
同じく、図5および図7を用いて、本発明の実施例4を説明する。
実施例4では、用いる示温材料51aおよび51bのそれぞれの温度対磁気特性は図7の51aおよび51bに示すようにそれぞれ異なっているが、その反射率変化温度t13と反射率変化温度t14の温度差は狭く選定してある。
そして、(1)加熱ローラRの表面温度が温度t13以下のときは加熱ローラRを加熱し、(2)温度t13〜温度t14の間にきた場合は、(a)それまで加熱を続けていたときは加熱ローラRを加熱しつづけ、(b)非加熱であったときは非加熱をつづける。(3)加熱ローラRの表面温度が温度t14を超えたときは加熱ローラRを非加熱とする、制御を行わせるようにしている。
そこで、今、装置が運転され、加熱ローラRの表面温度が第3の温度t13を超えてもそれまで加熱していたからパワーをオンし続け、第4の温度t14を超えたらパワーをオフする。そうして加熱ローラRの表面温度が下がって前記第4の温度t4を下回ってもそれまで非加熱であったからパワーをオフし続け、遂に第3の温度t13を下回ったら再びパワーをオンする。
このような制御によって所定温度を挟んでオン・オフがゆっくり行われるようになり、所定温度を中心としたオン・オフが頻繁に行われるいわゆる制御ハンチングを防止することができる。
【0034】
このように、実施例4によれば、実施例1又は2記載の対温度反射率変化部材を2個用い、そのうち1個によって温度t14までオン(加熱)制御をし、それ以降はオフにして加熱を止め、別の1個によって温度t13になったら再びオン(加熱)制御に入るといったハンチング防止の温度制御を簡単なシステムで行うことができるようになる。
【実施例5】
【0035】
同じく、図5および図6を用いて、本発明の実施例5を説明する。
実施例5は待機制御可能な熱現像装置を実現するもので、装置待機時には温度t11を基準にオン・オフ制御をし、使用時に温度t12(t11<t12)を基準にオン・オフ制御をさせるものである。
このように、実施例5によれば、実施例1又は2記載の対温度反射率変化部材を2個用い、そのうち1個によって装置待機時の温度t11が維持されるようにオン・オフ制御をさせ、使用時に温度t12が維持されるようにオン・オフ制御をさせることで、待機制御可能な熱現像装置を簡単なシステムで行うことができるようになる。
【実施例6】
【0036】
本発明の実施例6は上記実施例3〜5の組み合わせに係るもので、実施例3と4の組み合わせによって、立ち上げ時の急速加熱制御と定常時の加熱制御とをそれぞれの基準温度を中心としたハンチングが生じない制御をすることができるようになる。
また、実施例3と5の組み合わせによって、立ち上げ時の急速加熱制御ができると共に、暫時の不使用時に待機状態させるので次の使用時には速やかに運転移行できるようになる。
また、実施例4と5の組み合わせによって、不使用時に待機状態と使用時の各加熱制御とをそれぞれの基準温度を中心としたハンチングが生じない制御をすることができるようになる。
また、実施例3と4と5の組み合わせによって、立ち上げ時の急速加熱制御と定常時の加熱制御、および不使用時の待機状態の加熱制御とをそれぞれの基準温度を中心としたハンチングが生じない制御をすることができるようになる。
【0037】
以上の各実施例では、対温度反射率変化部材として示温材料を用いた例で説明してきたが、本発明はもちろんこれに限定されるものではなく、図4に示した「磁性粉体を内包するマイクロカプセルとこのマイクロカプセルに近接配置されて温度に依存して透磁率が変化する磁石」とから成る温度検知システムを用いることができることは言うまでもない。
【0038】
また、以上の各実施例では、加熱ローラに適当した例で説明してきたが、本発明はもちろん加熱ローラに限定されるものではなく、加熱ドラム、加熱ベルト、プレートヒータ等の温度の変化する部品の温度制御に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る熱現像部を備えた熱現像装置の全体構成図である。
【図2】本発明に用いられる熱現像装置用の記録材料の断面図である。
【図3】本発明に係る実施例1を加熱ローラへ適用した例を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は実施例1で使用する示温材料の温度−反射率特性図である。
【図4】本発明に係る実施例2を加熱ローラへ適用した例を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は実施例2で使用する磁性粉体封入マイクロカプセルの温度−反射率特性図である。
【図5】本発明に係る実施例3で、実施例1および2の対温度反射率変化部材を複数個用いて制御するものであり、(a)〜(c)は加熱ローラRの表面温度がそれぞれ異なる(a<b<c)場合を示している。
【図6】本発明の実施例3で使用する示温材料の温度−反射率特性図である。
【図7】本発明の実施例4で使用する示温材料の温度−反射率特性図である。
【符号の説明】
【0040】
100 熱現像装置
102 手差し用トレイ
104 ニップローラ対
106 熱現像部
108 徐冷・冷却部
110 排出トレイ
A 記録材料(感光性熱現像記録材料)
11、51a、51b 示温材料
12、12a、12b フォトカプラ
121 発光体
122 受光体
21 磁性粉体封入マイクロカプセル
22 温度依存性磁石
23 永久磁石
R 加熱ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段としてその表面を一定の温度に制御しているヒートローラを用い、当該ヒートローラ表面の一部に所定の温度で反射率が変化する対温度反射率変化部材を設け、その対温度反射率変化部材の反射率の変化によって前記ヒートローラが所定の温度に達したことを判断する温度到達判断手段と、その温度到達判断手段の判断結果に従い前記ヒートローラの加熱手段を制御することを特徴とするヒートローラ加熱制御装置。
【請求項2】
前記対温度反射率変化部材は示温材料によって構成されることを特徴とする請求項1記載のヒートローラ加熱制御装置。
【請求項3】
前記対温度反射率変化部材は、磁性粉体を内包するマイクロカプセルと当該マイクロカプセルに近接配置されて温度に依存して透磁率が変化する磁石とを備えたことを特徴とする請求項1記載のヒートローラ加熱制御装置。
【請求項4】
温度到達判断手段を、前記対温度反射率変化部材に照射光を発射する照射体と、前記対温度反射率変化部材からの反射光を受光する受光体とで構成し、前記受光体の受光量変化で前記ヒートローラが所定の温度に達したことを判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のヒートローラ加熱制御装置。
【請求項5】
前記対温度反射率変化部材を複数個設け、各対温度反射率変化部材の反射率の変化する温度がそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のヒートローラ加熱制御装置。
【請求項6】
装置の立ち上げ時に前記加熱ローラの表面温度が第1の温度t1に達するまでは高パワーを与え、前記第1温度t1を超えると前記高パワーより低い定常パワーを与え、前記加熱ローラの表面温度が第2の温度t2(t1<t2)を超えたら定常パワーをオフし、前記第2温度t2を下回ったら再び定常パワーをオンすることで急速加熱制御を行う熱現像装置であって、複数の前記対温度反射率変化部材の反射率の互いに異なる温度の一方を前記第1温度t1とし、他方を前記第2温度t2としたことを特徴とする請求項5記載のヒートローラ加熱制御装置。
【請求項7】
前記加熱ローラの表面温度が第3の温度t3を超えてもパワーをオンし続け、第4の温度t4(t3<t4)を超えたらパワーをオフし、次に前記加熱ローラの表面温度が下がって前記第4の温度t4を下回ってもパワーをオフし続け、前記第3の温度t3を下回ったら再びパワーをオンすることによって温度制御のハンチングを防止する熱現像装置であって、複数の前記対温度反射率変化部材の反射率の互いに異なる温度の一方を前記第3温度t3とし、他方を前記第4温度t4としたことを特徴とする請求項5記載のヒートローラ加熱制御装置。
【請求項8】
装置待機時には前記加熱ローラの表面温度が第5の温度t5を維持するように温度t5を基準にオン・オフ制御をし、使用時に前記加熱ローラの表面温度が第6の温度t6(t5<t6)を維持するように温度t6を基準にオン・オフ制御をする待機制御可能な熱現像装置であって、複数の前記対温度反射率変化部材の反射率の互いに異なる温度の一方を前記第5温度t5とし、他方を前記第6温度t6としたことを特徴とする請求項5記載のヒートローラ加熱制御装置。
【請求項9】
請求項6〜8記載の各発明を組み合わせた制御を行うことを特徴とするヒートローラ加熱制御装置。
【請求項10】
搬送路に加熱手段を配設し、該搬送路に沿って感光性熱現像記録材料を搬送手段で搬送しながら、前記加熱手段によって感光性熱現像記録材料を加熱して該感光性熱現像記録材料に記録された潜像を顕像化する熱現像装置において、
前記加熱手段としてその表面を一定の温度に制御しているヒートローラを用い、当該ヒートローラ表面の一部に請求項2又は3記載の対温度反射率変化部材を設けたことを特徴とする熱現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−318829(P2006−318829A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141844(P2005−141844)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】