説明

ビス−及びトリス(シリルオルガノ)アミンの製造方法

本発明の対象は、一般式(2)H−NR3−R4SiR’’3-m5mの(アミノオルガニル)シランと、一般式(3)R’3-n1nSi−R2−Xの(ハロゲンオルガニル)シランとの反応による、一般式(1)R’3-n1nSi−R2−NR3−R4−SiR’’3-m5mのシリルオルガノアミンの製造方法であって、前記式中、R’、R’’、R1、R2、3、4、R5、X、m、及びnは請求項1に記載の意味を有し、前記反応が、以下の工程:a)一般式(3)の(ハロゲンオルガニル)シランと、一般式(2)の(アミノオルガニルシラン)を、0〜250℃で反応させる工程、ここで一般式(1)のシリルオルガノアミンの他に副生成物として、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランのハロゲン化アンモニウムが形成され、b)塩基(B)を添加する工程、ここで完全な、又は部分的な塩交換が起こり、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランが再度放出され、塩基(B)のハロゲン化物が形成され、この塩基(B)のハロゲン化物は最高200℃の温度で液体であり、c)形成される塩基(B)の液体ハロゲン化物を分離する工程、を含む製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(アミノオルガニル)シランと(ハロゲンオルガニル)シランとの反応による、ビス及びトリス(シリルオルガノ)アミンの製造方法に関する。
【0002】
従来技術から、ビス及びトリス(シリルオルガノ)アミンを製造するための様々な方法が知られている。
【0003】
US 6242627 B1は、コバルトスポンジを用いたシアノオルガノシランの水素化を記載している。ここで形成されるのは主に、アミノアルキルシランである。副生成物として、ビスシリルアルキルアミンも生じる。圧力下で発火性が高い水素を用いるためには、安全性に対する高い要求が必要となる。
【0004】
同じことが以下の方法にも当てはまる:
US 6417381 B1では、好適にはビス(シリルオルガニル)シランを製造するため、遷移金属触媒を用いたシアノオルガノシランの水素化が利用されている。
【0005】
US 2930809は、アンモニア存在下での遷移金属触媒を用いたシアノオルガノシランの水素化を記載しており、ここでとりわけビス(シリルオルガニル)シランが発生する。
【0006】
EP 167887 B1は、シアノオルガノシラン及びアミノアルキルシランから出発し、水素を用いた遷移金属触媒存在下でのビスシリルアルキルアミンの適切な製造を記載している。
【0007】
EP 531948 B1は、酸化パラジウム触媒を用いたアミノアルキルシランの反応を記載しており、ここでは対称性のビス及びトリシリルアルキルアミンが製造される。ここでは激しい条件が必要となり(200℃/6時間)、モノ−、ビス−、及びトリス置換生成物の混合物がそれぞれ得られる。
【0008】
EP 709391 B1は、ビスアリルアミンをトリアルコキシシランによりヒドロシリル化して、ビスシリルオルガニルアミンにすることを記載している。不利となるのは、高価なヒドロシリル化触媒を用いるほかに、一部毒性の高い出発材料を使用することであり、これにより高い安全コストが必要となる。
【0009】
EP 849271 B1は、クロロオルガニルシランから出発して、アンモニアにより相応する第一級アミノオルガニルシランを製造することを記載しており、ここでは副生成物としてジ及びトリ置換生成物も得られる。この反応は、オートクレーブの使用と、激しい反応条件を必要とする。これに加えて目的生成物は、常にモノ−、ジ−、及びトリ置換生成物との混合物で得られ、分子中に様々なシリル基を有するシリルオルガニル置換されたアミンは、この方法では適切に手に入らない。この方法の欠点は実際にまた、その際にハロゲン化アンモニウムが定量で副生成物として形成され、固体として分離しなければならないことである。このような大量の固体分離は、時間、ひいてはコストもかかる上、相応する設備、例えば出力強度や高い遠心力を利用可能にする生産装置をさらに必要とする。しかしながらこのことは、多くの装置、とりわけたいていの多目的装置、例えば典型的にはファインケミカルの製造に使用されるものには、あてはまらない。
【0010】
ここで例えばUS 6452033 Aは、相応するクロロ官能性オルガノシランとエチレンジアミンとの反応による、アミノエチルアミノオルガニル−トリオルガニルシランの製造を記載しており、ここで上記相分離は、塩化水素分離のために様々なやり方で用いられる。
【0011】
しかしながらこの方法の欠点は、エチレンジアミン単位を有するシランに限られることである。
【0012】
この方法で有利なのは、クロロオルガニルシランの高い利用性のみであり、これは例えばアルキルシランの光塩素化により、又はSi−H含有化合物を用いた相応するハロゲン置換オレフィンのヒドロシリル化によって得られ、例えば合成のための中間生成物として、多くの有機官能性シランに使用される。
【0013】
従来技術の欠点をもはや有さない方法を開発することが課題であった。
【0014】
本発明の対象は、一般式(2)
【化1】

の(アミノオルガニル)シランと、一般式(3)
【化2】

の(ハロゲンオルガニル)シランとの反応による、一般式(1)
【化3】

のシリルオルガノアミンの製造方法であって、
前記式中、
R’、R’’は、それぞれ1〜10個のC原子を有するアルコキシ基であり、
1、R5は、1〜10個のC原子を有する炭化水素基であり、
2は、1〜10個のC原子を有する二価の炭化水素基であり、この炭化水素鎖はカルボニル基、カルボキシ基、酸素原子、又は硫黄原子によって中断されていてよく、
4は、1〜10個のC原子を有する二価の炭化水素基であり、この炭化水素鎖はカルボニル基、カルボキシ基、酸素原子、硫黄原子、NH、又はNR8基によって中断されていてよく、ここでR8は、R1、R5と同じ意味を有し、
3は水素、1〜10個のC原子を有する炭化水素基、又は一般式
【化4】

の基であり、
ここで、R6は、R1及びR5と同じ意味を有し、
7は、R2及びR4と同じ意味を有し、
R’’’は、R’及びR’’と同じ意味を有し、
m、n、oは相互に独立して、0、1、2、又は3であり、
Xは塩素、臭素、又はヨウ素であり、
前記反応が、以下の工程:
a)一般式(3)の(ハロゲンオルガニル)シランと、一般式(2)の(アミノオルガニルシラン)を、0〜250℃で反応させる工程、ここで一般式(1)のシリルオルガノアミンの他に副生成物として、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランのハロゲン化アンモニウムが形成され、
b)塩基(B)を添加する工程、ここで完全な、又は部分的な塩交換が起こり、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランが再度放出され、塩基(B)のハロゲン化物が形成され、この塩基(B)のハロゲン化物は最高200℃の温度で液体であり、
c)形成される塩基(B)の液体ハロゲン化物を分離する工程、
を含む、前記製造方法である。
【0015】
一般式(2)の(アミノオルガニル)シランのハロゲン化アンモニウムはこの際、典型的には不溶性の固体として沈殿し、工程b)で塩基(B)の添加後、再度溶解し、ここで基本的に塩基(B)のハロゲン化物を含む別個の液相が形成され、この液相はその後に工程c)で分離される。
【0016】
一般式(3)の(ハロゲンオルガニル)シランに対して、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランは、好適には過剰量で、すなわち1.1:1〜100:1、好ましくは1.5:1〜50:1、特に好ましくは2:1〜20:1、とりわけ3:1〜10:1のモル比で使用する。一般式(3)のシランに対して、塩基(B)は好適には、0.5:1〜10:1、好ましくは0.7:1〜5:1、特に好ましくは0.8:1〜2:1、とりわけ0.9:1〜1.0:1のモル比で使用する。
【0017】
炭化水素基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、飽和又は不飽和、分枝状又は非分枝状、置換又は非置換であってよい。
【0018】
炭化水素基R1、R3、R5、R6はアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基;オクチル基、例えばn−オクチル基、及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、例えばn−ノニル基;デシル基、例えばn−デシル基;ドデシル基、例えばn−ドデシル基;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、及び10−ウンデセニル基;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基、並びにヘテロ原子、例えばN、O、S、Pにより結合されたこれらの組み合わせである。炭化水素基R1、R3、R5、R6は好ましくは、1〜6個、とりわけ1〜3個のC原子を有する。R1、R5、R6は好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、ベンジル基、又はアリル基である。
【0019】
基R3は好適には、R1、R5、R6の好ましい基から、並びにさらに水素、シクロヘキシル基、又はフェニル基、又は一般式
【化5】

の基から選択される。特に好ましくは、基R3は水素である。
【0020】
基R’、R’’、R’’’は好適には、OR1の意味を有する。基R’、R’’、R’’’は好適には相互に独立して、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、又はアリルオキシ基である。特に好ましくは、基R’、R’’、R’’’は同一である。
【0021】
基R2、R4、R7は好ましくは、1〜6個のC原子を有する二価の炭化水素基、とりわけメチレン基、エチレン基、及びプロピレン基であり、特に好ましいのはメチレン基とプロピレン基である。
【0022】
基Xは好適には塩素又は臭素、とりわけ塩素である。
【0023】
m、n、oは相互に独立して好ましくは0、1、又は2であり、特に好ましくは0又は1である。
【0024】
原則的に工程a)とb)は連続して、又は同時に行うことができる。同様に時間をずらした実施も考えられ、工程b)、すなわち塩基(B)の添加を、工程a)の開始後ではあるがまだその終了後ではない時に始める。しかしながら、本発明による方法において遊離NH基若しくはNH2基を有する塩基(B)を使用する場合には、工程b)、例えばオリゴアミンの添加は、好ましくは工程a)での反応後に行う。方法工程b)において、既に<150℃、特に好ましくは<100℃、若しくは<90℃の温度で液体の塩を形成する塩基(B)を使用するのが好ましい。
【0025】
本発明による方法の工程a)は好適には、50〜250℃の温度で行う。経済的に重要な反応時間と、可能な限り僅かな副生成物につながる反応との間の譲歩を達成するため、50〜220℃、とりわけ80〜150℃の温度が特に有利と実証されている。工程a)はたいてい発熱性であるため、この工程は冷却下で行うのが好ましい。
【0026】
本発明による方法の工程b)及びc)は好ましくは、0〜250℃の温度、好ましくは20〜150℃の温度、特に好ましくは50〜100℃の温度で行う。工程b)及びc)の間の温度は好ましくは、好適には30℃、特に好ましくは20℃の温度範囲内で一定に保つ。工程b)はたいてい発熱性であるため、この工程は冷却下で行うのが好ましい。
【0027】
反応工程全体は好適には、保護ガス下、例えば窒素又はアルゴン下で行う。
【0028】
本発明の好ましい実施態様では本発明による方法はまた、さらに1つ又は複数の以下の付加的な方法工程を有していてよい;a1)一般式(2)のアミンを工程a)で過剰量で使用した場合、この過剰量は工程b)でさらに塩基(B)を添加する前に完全に、又は部分的に分離することができる。この分離は好適には、蒸留により行う。この措置は好適には、有機相中の1つ若しくは複数の各塩の溶解性を減少させるために役立つ。
【0029】
d)1つ又は複数の非極性溶剤(L)の、生成物含有相への添加
ここで付加的な溶剤(L)の添加は、方法工程)、a)、a1)、b)、及びc)の間、又はこれらの後に行うことができる。この措置は好適には、有機相中の1つ若しくは複数の各塩の溶解性を減少させるために役立つ。方法工程c)の後に非極性溶剤の添加を行う場合、この工程で沈殿する塩は好適には付加的な分別工程、例えば濾過で分離する。ただし、ここで分離すべき塩の量は、工程c)におけるもともとの塩量と比較して非常に僅かであり、これに応じてその分離は容易である。非極性溶剤の添加を工程c)の前、又はその間に行う場合、生成相からの各塩は基本的に塩基(B)のハロゲン化物から成る液相に追い込み(draengen)、このハロゲン化物と一緒に分離する。
【0030】
e)一般式(1)の生成物の蒸留分離若しくは精製、並びに工程a)で場合により過剰量で使用される、また工程b)で塩交換の際に放出される一般式(2)の(アミノオルガニル)シランの蒸留分離若しくは精製
この分画蒸留では、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランが好適には直接充分に高い純度で得られ、これによりさらなる後処理無しで次の反応サイクルで再度使用できる。一般式(1)の生成物もまた、相応する蒸留では好適には直接、充分な純度で得られる。
【0031】
一般式(1)のシリルオルガノアミン中に基R’、R’’、又は場合によりR’’’が少なくとも1つ存在する場合、そしてR3が水素であり、かつ同時に2つの基R2又はR4のうち少なくとも1つの基が少なくとも3つの炭素原子を有する炭化水素鎖から成っていれば、シリルオルガノアミンはとりわけ高められた温度及び真空下、つまり例えば蒸留の際に現れる条件で、NH基によるアルコキシ基の分子間又は分子内置換につながり、Si−N結合を有するオリゴマー及び環を形成する傾向がある。とりわけ、一般式(1)の目的生成物から形成される、一般式(4a)及び(4b)
【化6】

のアザシラ環(Azasilacyclen)は、蒸留物に濃縮されて、又はそれどころか定量的に形成させることができる。p及びqは、0、1、又は2の意味を有する。しかしながら、アルコールR’−H、R’’−H、又はR’’’−Hをその都度添加することにより、環状構造を一般式(1)の目的生成物へと開環させることができる。Si−N結合の反応性が高いため、通常は環に対して化学量論のアルコールを添加すれば充分であり、これにより過剰のアルコールによる一般式(1)のシリルオルガノアミンの汚染を避けることができる。アザシラ環不含の、若しくはアザシラ環が少ない一般式(1)の目的生成物を得るためには、過剰のアルコールを蒸留した反応生成物に添加し、その過剰量を反応終了後、蒸留条件よりも穏やかな条件下で一般式(1)のシリルオルガノアミンから留去することができ、これにより再環化は充分に避けられる。一般式(1)のシリルオルガノアミンから形成されるアザシラ環とアルコールとの開環反応は通常、穏和な条件下で10〜100℃の温度範囲、好適には15〜50℃の範囲で進行し、最適な反応条件はそれぞれの場合で予備試験によって容易に測定できる。基R’’が一般式(2)の(アミノオルガニル)シラン中に少なくとも1つ存在し、基R4が少なくとも3個の原子を有する自由に動く鎖から成っていれば、これはとりわけ高められた温度で真空下、つまり例えば蒸留の際に現れる条件で、NH基によるアルコキシ基又はアシルオキシ基の分子間又は分子内置換につながり、Si−N結合を有するオリゴマー及び環を形成する傾向がある。とりわけ、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランから形成された一般式(5)のアザシラ環は、蒸留物中で濃縮、又はそれどころか定量的に形成可能である。rは、0、1、又は2の意味を有する。
【化7】

【0032】
しかしながらアルコールR’’−Hをその都度添加することにより、環状構造は一般式(2)の(アミノオルガニル)シランに再度開環させることができる。Si−N結合の反応性が高いため、通常は環に対して化学量論のアルコールを添加すれば充分であり、これにより過剰のアルコールによる一般式(2)の(アミノオルガニル)シランの汚染を避けることができる。アザシラ環不含の、若しくはアザシラ環が少ない一般式(2)の(アミノオルガニル)シランを得るためには、過剰のアルコールを、蒸留した原料に添加し、その過剰量を反応終了後、蒸留条件よりも穏やかな条件下で一般式(2)の(アミノオルガニル)シランから留去することができ、これにより再環化は充分に避けられる。一般式(2)の(アミノオルガニル)シランから形成されるアザシラ環とアルコールとの開環反応は通常、穏やかな条件下で10〜100℃の温度範囲、好適には15〜50℃の範囲で進行し、最適な反応条件はそれぞれの場合で予備試験によって容易に測定できる。
【0033】
工程c)における相分離の際に塩基(B)の残分が有機相に残っているのであれば、この基を同様に蒸留により分離するのが好ましい。同じことが、場合により工程d)で付加的に添加される溶剤(L)に当てはまる。
【0034】
この際にすべての成分、とりわけ一般式(1)の生成物、一般式(2)の(アミノオルガニル)シラン、並びに場合により塩基(B)、並びに溶剤(L)を、一回の分画蒸留により相互に分離できる。これは同様に、複数回の別個の蒸留工程で行うことができる。よって例えばまず、低沸点成分、例えば溶剤(L)及び塩基(B)を有する前留出物の留去後に、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランのみを蒸留により除去し、この際に未精製生成物がまず蒸留塔底に残り、そして引き続き別個の蒸留工程又は薄膜蒸発工程で精製する。
【0035】
f)工程c)における相分離後の生成物含有相へのアンモニアの付加的な添加、及び発生するハロゲン化アンモニウムの分離
この措置はとりわけ、目的生成物中のハロゲン化物低減に適していることがある。
【0036】
g)工程c)における相分離後の、アルカリ金属アルコラート、好適にはナトリムアルコラート若しくはカリウムアルコラート、又はアルカリ金属リン酸塩、好適にはリン酸ナトリウム若しくはリン酸カリウム、若しくはそれぞれのリン酸水素塩若しくはリン酸二水素塩の、生成物含有相への付加的な添加、及び生成するアルカリ金属ハロゲン化物の分離
この措置はとりわけ、目的生成物中のハロゲン化物低減に適していることがある。
【0037】
h)工程c)での相分離後の生成物含有相への、ポリマー性ポリアミンの付加的な添加この措置は、場合により残分をハロゲン化合物、とりわけイオン性ハロゲン化合物に結合させるのに役立つことがあり、これにより一般式(1)の生成物を最終的に蒸留する際に(工程e参照)ほぼ蒸留塔底に残っている生成物、及び相応するハロゲン化物が少ない生成物が得られる。
【0038】
i)工程a)で場合により過剰で使用される、並びに工程b)で放出される一般式(2)の(アミノオルガニル)シランの回収若しくは再生
一般式(2)の(アミノオルガニル)シランが極めて、又は少なくとも一部、単純な蒸留(工程e)に比較して)充分なきれいさ(Sauberkeit)で得られるのであれば、邪魔になる生成物、副生成物、又は工程b)で添加される塩基B)の残分は1つ又は複数のさらなる精製工程で分離できる。例示的に挙げられるのは、
・第一の蒸留(工程e))後の、なお不充分にきれいな(アミノオルガニル)シラン画分のさらなる蒸留精製工程、
・工程c)後の生成物含有相への、又は、工程e)で蒸留された(アミノオルガニル)シラン画分への、脂肪族ケトン又はアルデヒドのさらなる添加
である。これらの措置は、工程b)で添加される塩基(B)が、第一級アミノ基を有する化合物であれば、これらの相になお含まれている塩基(B)の残分を相応するイミンに移行させるのに役立つ。後者はしばしば、蒸留により比較的容易に生成物から、及びとりわけ過剰で使用され、かつ/又は工程b)で再度放出される一般式(2)の(アミノオルガニル)シランから、塩基(B)自体として分離できる。
【0039】
l)工程b)で使用される塩基(B)の回収は好適には、形成された塩基のハロゲン化物を、強塩基、例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩などで塩交換することによって行う。この際、それぞれの塩基は固まりで(in Substanz)、又は水溶液、若しくは非水溶液で、又は懸濁液で使用可能である。水溶液を用いる場合、及び/又は反応の際に水が放出される場合、水は好適には蒸留によって塩基(B)から分離する。ここでエチレンジアミンを塩基(B)として用いる場合、この蒸留分離は好適にはエチレンジアミンと水が共沸を形成しないほど高い圧力で行う。
【0040】
塩基(B)が化合物、例えばそれ自体一般式(3)の(ハロゲンオルガニル)シランに対して反応性のアミンである場合、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランは、上述の方法工程により、好適には一般式(2)の(アミノオルガニル)シラン中の塩基(B)の含分が、それぞれ質量に対して3%未満、好ましくは1%未満、及び特に0.5%未満になるまで精製する。
【0041】
1つの変法では工程d)で、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランの沸点を下回るが、塩基(B)の沸点を上回る溶剤(L)を使用し、これにより場合により存在する有機相中の塩基(B)の残分は溶剤(L)と一緒に除去でき、引き続き蒸留により、好ましくは塩基(B)の含分が低い一般式(2)の(アミノオルガニル)シランが得られる(工程e))。
【0042】
この方法はもちろん非連続的に、例えば撹拌槽で、また連続的に行うこともできる。例えば、工程a)、b)、並びに場合によりさらなる工程(上記参照)を撹拌反応器、又は撹拌槽カスケードで連続的に行うことができる。ここで各物質は一緒に、又は好ましくは連続して供給し、混合する。これに続く連続的な相分離(工程c))のためにはまた、適切な方法、例えば静置槽若しくは沈殿槽、デカンタなどの使用が公知であり、文献に多く記載されている。
【0043】
好ましい実施態様では塩基(B)として、一般式(1)の生成物、環化生成物である一般式(4a)若しくは(4b)のアザシラ環、また一般式(2)の(アミノオルガニル)シランと沸点が少なくとも40℃、好適には少なくとも60℃、及び特に好適には少なくとも90℃異なる化合物を選択し、これにより工程c)における相分離の際に有機相中に残っている塩基(B)の残分は、一般式(1)若しくは(4a)若しくは(4b)からも、また一般式(2)の(アミノオルガニル)シランからも、蒸留によって充分良好に分離することができる。
【0044】
塩基(B)として好ましくは、エチレンジアミン単位又はプロピレンジアミン単位を含有するオリゴアミン(O)を使用する。オリゴアミン(O)は好適には1〜20個、とりわけ1〜10個のエチレンジアミン単位又はプロピレンジアミン単位を有する。
【0045】
好ましいオリゴアミン(O)は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジアザビシクロオクタン、ペンタメチルジエチレントリアミン、プロピレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンである。
【0046】
特に好ましくは、エチレンジアミンを塩基(B)として使用する。よって本発明による方法でエチレンジアミンは、以下の意想外の特性の組み合わせを示す:
・エチレンジアミンの添加は、一般式(3)の(ハロゲンオルガニル)シランの量に対して、特に好ましい0.8〜2当量というエチレンジアミン量で添加した場合にのみ、すでに工程b)で、それからほぼ完全な塩交換につながる。
・充分な塩交換により得られる塩相は、融点が約80℃である。
・液体の塩相は、既に数分後に完全に有機相から分離でき、よって相分離に必要な高コストの時間が長くかからずに分離できる。
【0047】
とりわけ反応体中に加水分解基、R’、R’’、及び場合によりR’’’が存在する場合、水の存在は一般式(1)の生成物の収率を下げる不所望の副反応(加水分解、縮合)につながる可能性がある。従って各成分、とりわけ使用塩基(B)及び場合により使用される溶剤(L)の水含分は、それぞれ質量に対して好適には0〜20,000ppm、好ましくは0〜5,000ppm、特に好ましくは0〜2,000ppmである。
【0048】
本発明による方法により、容易な方法で一般式(1)のシリルオルガノアミンを、良好〜非常に良好な収率で得ることができる。この方法は大規模工業でも容易であり、危険なく反応可能である。
【0049】
本発明によれば以下の一般式(1)のシリルオルガノアミンが手に入る:
【化8】

【0050】
本発明による方法では、様々なアルコキシ基を分子に導入することができる(例えばメトキシ基及びエトキシ基):この場合には、製造工程の間、又は一般式(1)の目的生成物の貯蔵時にアルコキシ基交換が起こり混合物が形成されて、このことは非常に望ましいことがある。
【0051】
本発明により製造された一般式(1)のビス−及びトリス(シリルオルガノ)アミンの純度(目的生成物の合成又は蒸留の際に形成される一般式(4a)又は(4b)のアザシラ環を含む)は、好適には少なくとも85%、特に好適には少なくとも95%である。この生成物の純度は任意の後続の蒸留工程e)によって、95%超に上昇できる。
【0052】
本発明による方法は従来技術に対して、副生成物として生成する一般式(2)の(アミノオルガニル)シランアンモニウム塩の主含分を固体として分離しなくてよいという利点を有し、この固体分離は工業的な規模では、とりわけ結晶性が悪いアンモニウム塩の場合にはたいていコストがかかり、高価である。その上、いわゆる多目的装置の多くは、これほど多くの固体量を分離するために充分な性能を有する装置要素を備えていない。塩交換により、容易に2つの液相を相互に分離できる。さらに、付加的に使用される溶剤による、フィルターケーキの洗浄工程が不要である。同時に、一般式(2)に記載の(アミノオルガニル)シラン最適な過剰量の使用により、副生成物の形成が著しく減少できる。加えて本発明による方法が、工程a)で相応するアンモニウム塩の形成に消費されていたであろう一般式(2)の高価な(アミノオルガニル)シランを、通常比較的安価な塩基(B)、例えばエチレンジアミンによる塩交換によって回収でき、これによってその再利用を可能にすることに適していることは特筆に値する。
【0053】
前記式の全ての前記の記号は、それらの意味を、それぞれ互いに無関係に有する。全ての式中でケイ素原子は四価である。
【0054】
以下の実施例では、それぞれ他に記載がない場合、全ての量および百分率記載は質量に対するものであり、かつ全ての圧力は0.10MPa(絶対)である。
【0055】
実施例
実施例1
ビス−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミンの製造
還流冷却器、KPG撹拌機、温度計を備えた4lの四ツ口フラスコ内で、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Wacker Chemie AGからGeniosil(登録商標)GF 96という名称で市販で購入できる)2300gを130℃に加熱し、120分以内に撹拌しながら、3−クロロプロピルトリメトキシシラン(Wacker Chemie AGからGeniosil(登録商標)GF 16という名称で市販で購入できる)864gと混合した。添加終了後さらに4時間、130℃で撹拌した。温度を引き続き110℃に下げ、10分以内に撹拌しながらエチレンジアミン392gを混合物に入れ、この際に相分離が起こった。同じ温度に保ちながら60分間、後撹拌し、それによって比較的重い塩酸エチレンジアミン相を分離した。上の相を30cmのビグリューカラムにより分画蒸留した。ガスクロマトグラフィーによれば、ビス−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン77.4%の他に、環化生成物(=1,1−ジメトキシ−1−シラ−2−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−アザシクロペンタン)22%を含む混合物1200gが得られた。メタノールを27.5g添加後、30分間200℃で撹拌した。ビス−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン1227gが得られ、その純度はガスクロマトグラフィーによれば98.4%と測定された(収率は理論値の81%)。全塩素含分は8質量ppmであった。
【0056】
実施例2
ビス−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)トリメトキシシリルメチルアミンの製造
還流冷却器、KPG撹拌機、温度計を備えた500mlの四ツ口フラスコ内で、ビス−(3−(トリメトキシシリル)プロピルアミン(実施例1からの生成物)350gを120℃に加熱し、90分以内に撹拌しながら、クロロメチルトリメトキシシラン70gと混合した。添加終了後に温度を105℃に下げ、5分以内に撹拌しながらエチレンジアミン30gを混合物に入れ、この際に相分離が起こった。同じ温度に保ちながら30分間、後撹拌し、それによって比較的重い塩酸エチレンジアミン相を分離した。上の相を二段階薄膜蒸留器で蒸留した。ビス−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン198g(回収率94%)が93%の純度で、そしてビス−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)トリメトキシシリルメチルアミン169g(収率95%)が得られ、その純度はガスクロマトグラフィーによれば95.4%と測定された。
【0057】
実施例3
ビスー((トリメチルシリル)メチル)トリエトキシシリルメチルアミンの製造
還流冷却器、KPG撹拌機、温度計を備えた250mlの四ツ口フラスコ内で、ビス−((トリメチルシリル)メチル)アミン*)40gを140℃に加熱し、30分以内に撹拌しながら、クロロメチルトリエトキシシラン21gと混合し、60分間、後撹拌した。この後温度を100℃に下げ、3分以内に撹拌しながらエチレンジアミン20gを混合物に入れ、この際に相分離が起こった。同じ温度に保ったまま20分さらに撹拌し、ここで50℃に冷却し、これによって比較的重い塩酸エチレンジアミン相を分離した。上の相を蒸留塔無しで画分蒸留した。ビス−((トリメチルシリル)メチル)アミン19.8gが純度97.2%で(回収率95%)、そしてビス−((トリメチルシリル)メチル)−トリエトキシシリルメチルアミンが23.2g(収率85%)得られ、その純度は97.5%と測定された。生成物の塩化物値は、88質量ppmであった。*)George, P. D.; Elliott, J. R. General Elec. Co., Schenectady, NY, Journal of the American Chemical Society (1955), 77 3493-8により入手可能。
【0058】
実施例4
フェニル−(3−トリメトキシシリルプロピル)−(ジメトキシ)メチルシリルメチルアミンの製造
還流冷却器、KPG撹拌機、温度計を備えた1000mlの四ツ口フラスコ内で、N−フェニル(ジメトキシ)メチルシリルメチルアミン455gを120℃に加熱し、60分以内に撹拌しながら、3−クロロプロピルトリメトキシシラン169gと混合した。60分間、後撹拌した。この後温度を105℃に下げ、10分以内に撹拌しながらエチレンジアミン90g、及びo−キシレン50gを混合物に入れ、この際に相分離が起こった。同じ温度に保ったまま30分さらに撹拌し、ここで70℃に冷却し、これによって比較的重い塩酸エチレンジアミン相を分離した。上の相に、20℃で粘度が5Pasのポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標) G20 水不含(BASF AG))6gと混合し、低沸点成分(主にo−キシレン、真空〜100℃/10mbar)を取り除いた後、二段階薄層蒸発器で真空中で蒸留した。第一工程でN−フェニル−ジメトキシメチルシリルメチルアミン223g(回収率91%)が純度95.8%で得られた。第二工程では、フェニル−(3−トリメトキシシリルプロピル)−トリメトキシシリルメチルアミン312gが蒸留された(収率91%)。塩化物値は、<3質量ppmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(2)
【化1】

の(アミノオルガニル)シランと、一般式(3)
【化2】

の(ハロゲンオルガニル)シランとの反応による、一般式(1)
【化3】

のシリルオルガノアミンの製造方法であって、
前記式中、
R’、R’’は、それぞれ1〜10個のC原子を有するアルコキシ基であり、
1、R5は、1〜10個のC原子を有する炭化水素基であり、
2は、1〜10個のC原子を有する二価の炭化水素基であり、この炭化水素鎖はカルボニル基、カルボキシ基、酸素原子、又は硫黄原子によって中断されていてよく、
4は、1〜10個のC原子を有する二価の炭化水素基であり、この炭化水素鎖はカルボニル基、カルボキシ基、酸素原子、硫黄原子、NH、又はNR8基によって中断されていてよく、ここでR8は、R1、R5と同じ意味を有し、
3は水素、1〜10個のC原子を有する炭化水素基、又は一般式
【化4】

の基であり、
ここで、
6は、R1及びR5と同じ意味を有し、
7は、R2及びR4と同じ意味を有し、
R’’’は、R’及びR’’と同じ意味を有し、
m、n、oは相互に独立して、0、1、2、又は3であり、
Xは塩素、臭素、又はヨウ素であり、
前記反応が、以下の工程:
a)一般式(3)の(ハロゲンオルガニル)シランと、一般式(2)の(アミノオルガニルシラン)を、0〜250℃で反応させる工程、ここで一般式(1)のシリルオルガノアミンの他に副生成物として、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランのハロゲン化アンモニウムが形成され、
b)塩基(B)を添加する工程、ここで完全な、又は部分的な塩交換が起こり、一般式(2)の(アミノオルガニル)シランが再度放出され、塩基(B)のハロゲン化物が形成され、この塩基(B)のハロゲン化物は最高200℃の温度で液体であり、
c)形成される塩基(B)の液体ハロゲン化物を分離する工程、
を含む、前記製造方法。
【請求項2】
一般式(2)の(アミノオルガニル)シランを、一般式(3)の(ハロゲンオルガニル)シランに対して1.5:1〜50:1のモル比で使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩基(B)を、一般式(3)のシランに対して0.7:1〜10:1のモル比で使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Xが塩素である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
方法工程(b)でハロゲン化水素酸塩を形成する塩基(B)を使用し、前記ハロゲン化水素酸塩は<200℃の温度で既に液体を形成する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
塩基(B)として、1〜20個のエチレンジアミン単位又はプロピレンジアミン単位を有するオリゴアミン(O)を使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
エチレンジアミンを塩基(B)として使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−516296(P2012−516296A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546776(P2011−546776)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050576
【国際公開番号】WO2010/086254
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】