説明

ビスオキセタンエーテル化合物およびその製法、ならびにそれを用いた光導波路

【課題】厚膜形成性,硬化性,耐熱性等に優れた重合体を作製可能とする新規化合物およびその製法、ならびにそれを用いた光導波路を提供する。
【解決手段】特定のビスオキセタンエーテル化合物。この化合物は特定のフェノール類を出発原料として、セシウム塩によりセシウムフェノラート化し、次いで、スルホン酸エステルと反応させて製造される。さらに、基板1と、その基板1上に形成されたクラッド層2とを備え、上記クラッド層2中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア部3が形成されてなる光導波路であって、上記クラッド層2およびコア部3の少なくとも一方が、上記ビスオキセタンエーテル化合物を含有する樹脂組成物によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン重合が可能なオキセタン環を有するビスオキセタンエーテル化合物およびその製法、ならびにそれを用いた光導波路に関するものである。詳しくは、その化合物を用いた光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂等が、耐熱性,機械特性,低吸水性,塗膜平坦性および密着性等に優れるビスオキセタンエーテル化合物およびその製法、ならびにそれを用いた光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オキセタン化合物は、光開始カチオン重合または硬化が可能なモノマーとして、近年注目されている化合物であり、多くの単官能性および多官能性のオキセタン化合物が開発され、それに伴い種々のオキセタン化合物の合成法が提案されている。
【0003】
上記オキセタン化合物として、例えば、特許文献においても、下記の一般式(4)で表されるオキセタン化合物が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【化1】

【0005】
さらに、下記の一般式(5)および一般式(6)で表されるオキセタン環を有するビフェニル誘導体も提案されている(特許文献2および3参照)。
【0006】
【化2】

【0007】
【化3】

【0008】
そして、上記のような化合物は、通常、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等のアルカリ金属を塩基とし、その存在下で、オキセタンスルホン酸エステルと、それに対応する二価フェノール化合物とを合成することにより得られる。また、その合成の際には、化合物の収率を高めるため、必要に応じて、四級アンモニウム塩等の相間移動触媒も用いられる。さらに、上記オキセタン化合物は、従来から、耐熱性や密着性等を高めるために塗料や接着剤等の材料に利用されているが、近年においては光導波路の形成材料として利用することも提案されている(特許文献4および5参照)。光導波路は、光導波路デバイス、光集積回路、光配線基板に組み込まれており、光通信、光情報処理、その他一般光学の分野で広く用いられている。
【特許文献1】特開平6−16804号公報
【特許文献2】特開平11−106380号公報
【特許文献3】特開2001−31665公報
【特許文献4】特開2000−356720公報
【特許文献5】特開2003−147045公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記オキセタン化合物のうち、ビフェニル誘導体は、低粘度であり、例えば、基板上に膜形成する際には厚膜形成性に難点を有する。また、2官能性であるため硬化に時間を要するという欠点もある。さらに、これ以外のオキセタン化合物に関しても、所望の厚膜形成性や硬化性等を得ることが難しいといった問題がある。
【0010】
また、このような従来のオキセタン化合物を、例えば光導波路の形成材料に用いた場合、安定して同一の形状に硬化作製し難いことから、導波路特性が安定せず、さらに、簡便に厚膜形成ができない等の問題もみられる。
【0011】
さらに、従来のオキセタン化合物の合成方法は、定量的にオキセタニル基の導入が進行せず、目的とするオキセタン化合物の収率が低い等の問題もある。また、未反応水酸基を有する化合物が副生成物として生じるため、目的とするオキセタン化合物を得るまでに煩雑な操作を伴うことも多い。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、厚膜形成性,硬化性,耐熱性等に優れた重合体を作製可能とする新規なビスオキセタンエーテル化合物およびその製法、ならびにそれを用いた光導波路の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の一般式(1)で表されるビスオキセタンエーテル化合物を第1の要旨とする。
【化4】

【0014】
また、本発明は、上記第1の要旨のビスオキセタンエーテル化合物の製法であって、下記の一般式(2)で表されるフェノール類を、セシウム塩によりセシウムフェノラート化し、次いで、下記の一般式(3)で表されるスルホン酸エステルと反応させるビスオキセタンエーテル化合物の製法を第2の要旨とする。
【化5】

【化6】

【0015】
さらに、本発明は、基板と、その基板上に形成されたクラッド層とを備え、上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア部が形成されてなる光導波路であって、上記クラッド層およびコア部の少なくとも一方が、上記第1の要旨のビスオキセタンエーテル化合物を含有する樹脂組成物によって形成されている光導波路を第3の要旨とする。
【0016】
すなわち、本発明者らは、耐熱性,機械特性等に優れ、塗料,コーティング材料,接着剤,レンズ,光導波路等の材料として有効に利用することができる重合物を作製可能とするオキセタン化合物を求め、鋭意検討を重ねた。そして、特殊な構造を有する様々な化合物を合成し、実験を重ねた結果、上記一般式(1)で表される新規なビスオキセタンエーテル化合物を用いると、上記のような所期の目的が達成されることを突き止め、本発明に到達した。すなわち、上記新規な化合物の有するオキセタン環により、速硬化性を有し、かつ硬化物が高密度なネットワーク構造を形成することから優れた耐熱性等を有することとなる。また、上記新規な化合物は、高粘度であり、厚膜形成する際に有利となり、特に光導波路(クラッド層やコア部)の形成材料に用いたときに、安定して同一の形状に硬化作製しやすくなるため導波路特性が安定する等の作用効果が得られることとなる。一方、本発明者らは、上記新規な化合物を高収率で合成することが可能な合成方法に関しても研究を重ねた。その結果、上記一般式(2)で表されるフェノール類と、上記一般式(3)で表される3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのスルホン酸エステルとを、特に、塩基としてセシウム塩を用い、所定の条件で反応させた結果、目的とする上記新規な化合物を高収率で合成することができるようになることも突き止めた。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明は、上記一般式(1)で表される、新規なビスオキセタンエーテル化合物に係るものである。この化合物は高粘度であり、容易に厚膜形成が可能となる。また、その分子中のオキセタン環により、光または熱によって迅速に硬化するという性質を有する。したがって、本発明のビスオキセタンエーテル化合物を用いた光硬化性樹脂組成物や熱硬化性樹脂組成物は、硬化性,耐熱性,靱性および機械特性に優れ、また低吸水性,塗膜平坦性および密着性も高く、さらにその反応性の高さにより重合開始剤の使用を低減することができることから、透明性も高く、例えば、塗料,コート材,接着剤,光学レンズ,光導波路等の形成材料として有用である。
【0018】
そして、上記ビスオキセタンエーテル化合物を合成する際に、特定のオキセタンスルホン酸エステルと、特定のフェノール類とを、塩基としてセシウム塩を用い、所定の条件で反応させることにより、上記化合物を、煩雑な操作を伴うことなく、高収率で合成することができる。
【0019】
さらに、光導波路におけるクラッド層およびコア部の少なくとも一方が、上記一般式(1)で表されるビスオキセタンエーテル化合物を含有する樹脂組成物によって形成されているときには、安定して同一の形状に硬化作製しやすく、安定した導波路特性等を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明のビスオキセタンエーテル化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物であり、1分子中に2個のオキセタン環を有する構造を備えている。なお、一般式(1)において、R3 は、下記に示すように、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などがあげられるが、好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0022】
【化7】

【0023】
上記一般式(1)で表されるビスオキセタンエーテル化合物は、下記の一般式(2)で表されるフェノール類と、下記の一般式(3)で表される3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのスルホン酸エステルと、塩基とを合成原料とし、これらを反応させることにより製造することができる。
【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

【0026】
ここで、上記塩基としては、従来公知のアルカリ金属(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等)を用いてもよいが、本発明では、特に、上記塩基としてセシウム塩を用いたときに、上記ビスオキセタンエーテル化合物を、煩雑な操作を伴うことなく高収率で合成することができるようになるため、好ましい。この場合、各原料の合成は、例えば、(i) フェノール類を、セシウム塩によりセシウムフェノラート化し、次いで、オキセタンスルホン酸エステルと反応させたり、(ii)オキセタンスルホン酸エステルとフェノール類とを、セシウム塩存在下で反応させたりすることにより行う。好ましくは、上記(i) の手順に従って行う。そして、上記合成は、通常、有機溶媒(反応溶媒)中で行われ、反応終了後、その反応液中に水等を加え、水相と有機相とにし、その有機相からの抽出により、目的とするビスオキセタンエーテル化合物を得ることができる。
【0027】
上記セシウム塩としては、例えば、炭酸セシウム、水酸化セシウム、フッ化セシウム、蟻酸セシウム等があげられる。なかでも、目的とするビスオキセタンエーテル化合物を、より高収率で得ることができる点から、炭酸セシウムが好ましく用いられる。
【0028】
そして、上記セシウム塩の使用量は、上記一般式(2)で表されるフェノール類のフェノール性水酸基1モルに対して0.8〜2.0モルに設定することが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5モルの範囲である。
【0029】
上記一般式(2)で表されるフェノール類は、下記の一般式(2a)または下記の一般式(2b)に場合分けされる。
【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
上記一般式(2a)で表されるフェノール類の具体例としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0033】
また、上記一般式(2b)で表されるフェノール類の具体例としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アガマンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロ[ 5,2,1,0] デカン等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0034】
そして、上記のようなフェノール類とともに用いられる、前記一般式(3)で表される3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのスルホン酸エステルの具体例としては、2−(3−オキセタニル)プロピルメシレート、2−(3−オキセタニル)プロピルフェニルスルホニレート、2−(3−オキセタニル)プロピルトシレート、2−(3−オキセタニル)ブチルメシレート、2−(3−オキセタニル)ブチルトシレート等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0035】
なお、上記一般式(3)で表される3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのスルホン酸エステルは、例えば、オーガニックシンセシス vol.1〔Organic Synthesis ,Collective vol.1,pp.145(1941)〕に記載の方法に準じて合成することができる。
【0036】
さらに、上記一般式(3)で表される3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのスルホン酸エステルの使用量は、上記一般式(2)で表されるフェノール類のフェノール性水酸基1モルに対して1.5〜2.0モルに設定することが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5モルの範囲である。
【0037】
そして、本発明のビスオキセタンエーテル化合物の製造時において、その合成の際の反応温度は、0〜120℃に設定することが好ましく、より好ましくは60〜100℃の範囲である。また、セシウム塩により予めフェノール類をセシウムフェノラート化する場合、そのセシウムフェノラート化の際の反応温度は、0〜120℃に設定することが好ましく、より好ましくは40〜100℃の範囲である。そして、これら反応の際の圧力は、特に限定するものではなく、常圧、加圧、減圧のいずれでもよい。また、反応雰囲気は、窒素雰囲気でも空気雰囲気でもよく、特に制限されない。
【0038】
なお、本発明のビスオキセタンエーテル化合物を合成する際に、必要に応じて、ナトリウム,カリウム等のアルカリ金属、水素化リチウム,水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩等を、合成原料として適宜に加えても良い。
【0039】
また、必要に応じて、水相−有機相間の相間移動触媒として、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩等を加えてもよい。上記四級アンモニウム塩としては、特に限定されるものではなく、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB),テトラエチルアンモニウムブロミド等のテトラアルキルアンモニウムハライドや、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等のアラルキルトリアルキルアンモニウムハライド等があげられる。また、上記四級ホスホニウム塩も、特に限定されるものではなく、例えば、テトラフェニルホスホニウムブロミド等のテトラアリールホスホニウムハライド等があげられる。
【0040】
さらに、本発明のビスオキセタンエーテル化合物を製造する際には、前述のように、通常、反応溶媒が用いられる。この反応溶媒は、特に限定はないが、例えば、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、エーテル(テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等)、非プロトン性極性溶媒(N−メチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)等が好適に用いられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0041】
これらの各原料により合成し得られたビスオキセタンエーテル化合物は、前述のように、通常、その反応液中に水や酢酸エチルを加え、水相と有機相とに分液し、その有機相を抽出したものを、無水硫酸マグネシウム等で乾燥することにより、回収することができる。
【0042】
そして、このようにして得られる本発明のビスオキセタンエーテル化合物は、塗料,コーティング材料,接着剤,レンズ,光導波路等を構成する光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂の材料として、有効に利用することができる。
【0043】
なかでも、光導波路、詳しくは、図1に示すように、基板1と、その基板1上に形成されたクラッド層2とを備え、上記クラッド層2中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア部3が形成されてなる光導波路において、上記クラッド層2およびコア部3の少なくとも一方を、上記ビスオキセタンエーテル化合物を含有する樹脂組成物によって形成するときに、高粘度となり、厚膜形成する際に有利となる。さらに、安定して同一の形状に硬化作製しやすく導波路特性が安定する等の作用効果も得られる。なお、上記クラッド層2は、コア部3よりも屈折率を小さくすることが必要である。
【0044】
また、上記クラッド層2およびコア部3の少なくとも一方が、本発明のビスオキセタンエーテル化合物とともに、エポキシ基またはビニルエーテル基を有する化合物とを含有する樹脂組成物によって形成されている場合、耐熱性や耐湿性に優れた硬化物を得ることができ、また、露光感度の向上も図られるため、好ましい。ここで、上記エポキシ基を有する化合物としては、本発明の式(1)で表される化合物と相溶性を示すものであればいずれも使用できる。具体的には、エポキシ基を1個有するエポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル及びブチルグリシジルエーテル等があり、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンテトラグリシジルエーテル、脂環式エポキシ基を有する化合物として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサンの付加物等が好ましく用いられる。また、上記ビニルエーテル基を有する化合物としては、本発明の式(1)で表される化合物と相溶性を示すものであればいずれも使用できる。具体的には、ビニルエーテル基を1個有する化合物としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等があげられる。ビニルエーテル基を2個以上有する化合物としては、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル及びノボラック型ジビニルエーテル等が好ましく用いられる。そして、これら化合物は、単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0045】
そして、上記光導波路は、例えば、図2に示すような工程により製造することができる。すなわち、図2の(a)に示すように、まず基板1を準備し、(b)に示すように、その基板1面にアンダークラッド層2a(クラッド層2の下方部分)を形成する。ついで、(c)に示すように、上記アンダークラッド層2a上にコア部3形成用の樹脂組成物からなる層3’を形成する。そして、(d)に示すように、この樹脂組成物層3’面上に、所定パターン(光導波路パターン)を露光させるためのフォトマスク9を配設し、このフォトマスク9を介して紫外線を照射し、さらに加熱処理を行う。その後、上記樹脂組成物層3’の未露光部分を現像液を用いて溶解除去し、(e)に示すようにコア部3を形成する。そして、(f)に示すように、上記コア部3上にオーバークラッド層2b(クラッド層2の上方部分)を形成する。これにより、目的とする光導波路を得ることができる。
【0046】
なお、上記基板1上の各層は、スピンコート、コーター等の従来公知の方法で形成することができる。また、上記光導波路は、基板1を剥離除去することにより、フィルム状光導波路とすることも可能である。このような構成にした場合、可撓性に優れるようになる。
【0047】
このようにして得られた光導波路は、例えば、直線光導波路、曲がり光導波路、交差光導波路、Y分岐光導波路、スラブ光導波路、マッハツェンダー型光導波路、AWG型光導波路、グレーティング、光導波路レンズ等として用いることができる。また、これら光導波路を用いた光素子としては、波長フィルタ,光スイッチ,光分岐器,光合波器,光合分波器,光アンプ,波長変換器,波長分割器,光スプリッタ,方向性結合器、さらにはレーザダイオードやフォトダイオードをハイブリッド集積した、光伝送モジュール等があげられる。
【0048】
つぎに、実施例について説明する。
【0049】
まず、実施例に先立ち、3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのスルホン酸エステルである、2−(3−オキセタニル)ブチルトシレートを、以下のようにして合成した。
【0050】
〔2−(3−オキセタニル)ブチルトシレートの合成〕
温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下漏斗を備えた2000mlの三口ナスフラスコに、p−トルエンスルホン酸クロライド190.65g(1.0mol)、テトラメチルアンモニウムブロミド32.24g(0.1mol)及びトルエン400mlを加え、氷浴中で攪拌しながら5℃まで冷却した。これに3−エチル−ヒドロキシメチルオキセタン116.16g(1.0mmol)を加えた後、35重量%水酸化ナトリウム水溶液130mlを滴下漏斗により30分間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま同温で上記フラスコを1時間攪拌した後、更に室温で16時間攪拌した。反応終了後、上記フラスコ内に水800mlを加えて激しく攪拌し、その後、放置して、水相と有機相に分離した。この有機相を水400mlでさらに洗浄し、無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥した。その後、硫酸マグネシウムを濾別し、濾液を濃縮した。このようにして得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により分離精製し、目的物である無色液体、すなわち、2−(3−オキセタニル)ブチルトシレートを243.3g(収率90%)得た。
【実施例1】
【0051】
温度計、冷却管及び攪拌装置を備えた200mlの三口フラスコに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン5.37g(20mmol)と、N−メチル−2−ピロリドン25mlとを入れ、窒素雰囲気下80℃に加熱しながら完全に溶けるまで攪拌した。溶解後、炭酸セシウム15.64g(48mmol)を加え、さらに30分攪拌した。そこに、先に合成した2−(3−オキセタニル)ブチルトシレート17.84g(66mmol)を加え、窒素雰囲気下80℃で20時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したのち、酢酸エチル100mlと蒸留水50mlとを加え、その後放置し、水相と有機相に分離した。このように分離した有機相を抽出し、これを水でさらに洗浄し、無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。その後、硫酸マグネシウムを濾別し、さらに溶媒を留去することにより、反応粗生成物を得た。
【0052】
このようにして得られた粗生成物は、薄層クロマトグラフィーで分析したところ、1つのスポットのみ確認された。また、この粗生成物を酢酸エチルよって再結晶することにより、白色固体9.20g(収率99%)を得た。そして、その化合物の純度を液体クロマトグラフィーにより調べたところ、98%以上の純度であった。
【0053】
そして、このようにして得られた化合物は、 1H−NMRおよび13C−NMR(ともに日本電子社製)を用いて分析し得られた以下の結果より、下記の構造式(7)で表される1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕シクロヘキサンであることが確認された。
【0054】
1H−NMR(DMSO−d6 、400MHz):δ(ppm);0.87(t、J=7.6Hz、6H、CH3 )、1.44(br、6H、CH2 )、1.76(q、J=7.6Hz、4H、CH2 )、2.19(br、4H、CH2 )、4.02(s、4H、CH2 )、4.31(d、J=6.0Hz、4H、CH2 )、4.41(d、J=6.0Hz、4H、CH2 )、6.87(d、J=8.8Hz、4H、Ar)、7 .18(d、J=8.8Hz、4H、Ar)
13C−NMR(DMSO−d6 、100MHz):δ(ppm);7.96、22.46、25.77、26.15、36.41、42.42、44.31、69.96、76.74、114.10、127.65、140.79、156.21
【0055】
【化12】

【実施例2】
【0056】
温度計、冷却管及び攪拌装置を備えた200mlの三口フラスコに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン6.53g(20mmol)と、N−メチル−2−ピロリドン25mlとを入れ、窒素雰囲気下80℃に加熱しながら完全に溶けるまで攪拌した。溶解後、炭酸セシウム15.64g(48mmol)を加え、さらに30分攪拌した。そこに、先に合成した2−(3−オキセタニル)ブチルトシレート11.90g(44mmol)を加え、窒素雰囲気下80℃で20時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したのち、酢酸エチル100mlと蒸留水50mlとを加え、その後放置し、水相と有機相に分離した。このように分離した有機相を抽出し、これを水でさらに洗浄し、無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。その後、硫酸マグネシウムを濾別し、さらに溶媒を留去することにより、反応粗生成物を得た。
【0057】
このようにして得られた粗生成物は、薄層クロマトグラフィーで分析したところ、1つのスポットのみ確認された。また、この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/アセトン)により分離精製し、無色透明の液体10.27g(収率98%)を得た。そして、その化合物の純度を液体クロマトグラフィーにより調べたところ、99%以上の純度であった。
【0058】
そして、このようにして得られた化合物は、 1H−NMRおよび13C−NMR(ともに日本電子社製)を用いて分析し得られた以下の結果より、下記の構造式(8)で表される1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕デカンであることが確認された。
【0059】
1H−NMR(DMSO−d6 、400MHz):δ(ppm);0.83(t、J=7.2Hz、6H、CH3 )、0.86(t、J=7.2Hz、3H、CH3 )、1.22(br、m、14H、CH2 )、1.76(q、J=7.6Hz、4H、CH2 )、1.97(q、J=7.6Hz、2H、CH2 )、3.78(br、t、J=8.0Hz、1H、CH)、4.02(s、4H、CH2 )、4.31(d、J=5.6Hz、4H、CH2 )、4.40(d、J=6.0Hz、4H、CH2 )、6.87(d、J=8.8Hz、4H、Ar)、7 .16(d、J=8.4Hz、4H、Ar)
13C−NMR(DMSO−d6 、100MHz):δ(ppm);7.93、13.83、22.02、26.15、27.48、28.60、28.86、28.90、31.23、35.14、42.42、48.82、70.05、76.73、114.28、128.29、137.94、156.85
【0060】
【化13】

【実施例3】
【0061】
温度計、冷却管及び攪拌装置を備えた200mlの三口フラスコに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン5.97g(20mmol)と、N−メチル−2−ピロリドン20mlとを入れ、窒素雰囲気下80℃に加熱しながら完全に溶けるまで攪拌した。溶解後、炭酸セシウム15.64g(48mmol)を加え、さらに30分攪拌した。そこに、先に合成した2−(3−オキセタニル)ブチルトシレート11.90g(44mmol)を加え、窒素雰囲気下80℃で20時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したのち、酢酸エチル100mlと蒸留水50mlとを加え、その後放置し、水相と有機相に分離した。このように分離した有機相を抽出し、これをさらに、水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。その後、硫酸マグネシウムを濾別し、さらに溶媒を留去することにより、反応粗生成物を得た。
【0062】
このようにして得られた粗生成物は、薄層クロマトグラフィーで分析したところ、1つのスポットのみ確認された。また、この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/アセトン)により分離精製し、白色固体9.51g(収率96%)を得た。
【0063】
そして、このようにして得られた化合物は、 1H−NMRおよび13C−NMR(ともに日本電子社製)を用いて分析し得られた以下の結果より、下記の構造式(9)で表される1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕−2−エチルヘキサンであることが確認された。
【0064】
1H−NMR(DMSO−d6 、400MHz):δ(ppm);0.73(t、J=7.2Hz、3H、CH3 )、0.76(t、J=6.8Hz、3H、CH3 )、0.86(t、J=7.6Hz、6H、CH3 )、1.21(br、m、8H、CH2 )、1.75(q、J=7.6Hz、4H、CH2 )、2.26(br、s、1H、CH)、3.61(d、J=11.2Hz、1H、CH)、4.01(s、4H、CH2 )、4.30(d、J=6.0Hz、4H、CH2 )、4.39(d、J=6.0Hz、4H、CH2 )、6.85(d、J=8.0Hz、4H、Ar)、7 .24(d、J=8.8Hz、4H、Ar)
13C−NMR(DMSO−d6 、100MHz):δ(ppm);7.97、9.20、13.86、21.85、22.46、26.16、27.39、28.72、42.42、42.44、53.40、70.04、76.75、114.37、128.61、137.59、137.62、156.73
【0065】
【化14】

【実施例4】
【0066】
温度計、冷却管及び攪拌装置を備えた200mlの三口フラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アガマンタン6.41g(20mmol)と、N−メチル−2−ピロリドン90mlとを入れ、窒素雰囲気下80℃に加熱しながら完全に溶けるまで攪拌した。溶解後、炭酸セシウム15.64g(48mmol)を加え、さらに30分攪拌した。そこに、先に合成した2−(3−オキセタニル)ブチルトシレート11.90g(44mmol)を加え、窒素雰囲気下80℃で20時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したのち、700mlの水に反応混合物を少しずつ加えて攪拌し、濾過した。その残渣を水でさらに洗浄し、乾燥させることにより、反応粗生成物を得た。
【0067】
このようにして得られた粗生成物は、薄層クロマトグラフィーで分析したところ、1つのスポットのみ確認された。また、これを再結晶にて精製し、白色固体7.66g(収率74%)を得た。
【0068】
そして、このようにして得られた化合物は、 1H−NMRおよび13C−NMR(ともに日本電子社製)を用いて分析し得られた以下の結果より、下記の構造式(10)で表される2,2−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕アガマンタンであることが確認された。
【0069】
1H−NMR(CDCl3 、400MHz):δ(ppm);0.89(t、J=7.2Hz、6H、CH3 )、1.76(m、12H、CH、CH2 )、2.04(d、J=12.0Hz、4H、CH2 )、3.19(br、s、2H、CH)、3.97(s、4H、CH2 )、4.43(d、J=6.0Hz、4H、CH2 )、4.51(d、J=5.6Hz、4H、CH2 )、6.79(d、J=8.8Hz、4H、Ar)、7.30(d、J=8.8Hz、4H、Ar)
13C−NMR(CDCl3 、100MHz):δ(ppm);8.17、26.67、27.57、32.06、33.31、38.05、43.12、49.38、69.93、78.15、114.38、126.62、141.32、155.96
【0070】
【化15】

【実施例5】
【0071】
温度計、冷却管及び攪拌装置を備えた200mlの三口フラスコに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン6.21g(20mmol)と、N−メチル−2−ピロリドン35mlとを入れ、窒素雰囲気下80℃に加熱しながら完全に溶けるまで攪拌した。溶解後、炭酸セシウム15.64g(48mmol)を加え、さらに30分攪拌した。そこに、先に合成した2−(3−オキセタニル)ブチルトシレート11.90g(44mmol)を加え、窒素雰囲気下80℃で20時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したのち、酢酸エチル100mlと蒸留水50mlとを加え、その後放置し、水相と有機相に分離した。このように分離した有機相を抽出し、これをさらに、水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。その後、硫酸マグネシウムを濾別し、さらに溶媒を留去することにより、反応粗生成物を得た。
【0072】
このようにして得られた粗生成物は、薄層クロマトグラフィーで分析したところ、1つのスポットのみ確認された。また、この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/アセトン)により分離精製し、白色固体10.07g(収率99%)を得た。
【0073】
そして、このようにして得られた化合物は、 1H−NMRおよび13C−NMR(ともに日本電子社製)を用いて分析し得られた以下の結果より、下記の構造式(11)で表される1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンであることが確認された。
【0074】
1H−NMR(CDCl3 、400MHz):δ(ppm);0.38(s、3H、CH3 )、0.91(m、13H、CH2 、CH3 )、1.14(t、J=14.0Hz、1H、CH2 )、1.38(d、J=12.8Hz、1H、CH2 )、1.83(q、J=7.6Hz、2H、CH2 )、1.86(q、J=7.6Hz、2H、CH2 )、1.91(d、J=13.6Hz、1H、CH2 )、1.99(br、m、1H、CH)、2.42(d、J=13.6Hz、1H、CH2 )、2.65(d、J=14.0Hz、1H、CH2 )、4.01(d、J=16.0Hz、4H、CH2 )、4.44(d、J=6.4Hz、2H、CH2 )、4.45(d、J=6.8Hz、2H、CH2 )、4.51(d、J=6.0Hz、2H、CH2 )、4.56(d、J=5.6Hz、CH2 )、6.76(d、J=8.8Hz、4H、Ar)、6.82(d、J=8.8Hz、4H、Ar)、7.11(d、J=8.8Hz、4H、Ar)、7.23(d、J=8.8Hz、4H、Ar)
13C−NMR(DMSO−d6 、100MHz):δ(ppm);7.96、8.01、22.52、25.10、26.13、26.18、26.82、31.88、34.55、42.41、42.45、44.07、45.31、47.28、48.37、69.94、69.99、76.68、76.75、113.85、113.90、126.46、128.05、139.00、145.10、156.05、156.11
【0075】
【化16】

【実施例6】
【0076】
温度計、冷却管及び攪拌装置を備えた200mlの三口フラスコに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロ[ 5,2,1,0] デカン6.41g(20mmol)と、N−メチル−2−ピロリドン25mlとを入れ、窒素雰囲気下80℃に加熱しながら完全に溶けるまで攪拌した。溶解後、炭酸セシウム15.64g(48mmol)を加え、さらに30分攪拌した。そこに、先に合成した2−(3−オキセタニル)ブチルトシレート11.90g(44mmol)を加え、窒素雰囲気下80℃で20時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したのち、酢酸エチル100mlと蒸留水50mlとを加え、その後放置し、水相と有機相に分離した。このように分離した有機相を抽出し、これを水でさらに洗浄し、無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。その後、硫酸マグネシウムを濾別し、さらに溶媒を留去することにより、反応粗生成物を得た。
【0077】
このようにして得られた粗生成物は、薄層クロマトグラフィーで分析したところ、1つのスポットのみ確認された。また、この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/アセトン)により分離精製し、白色固体9.3g(収率90%)を得た。そして、その化合物の純度を液体クロマトグラフィーにより調べたところ、99%以上の純度であった。
【0078】
そして、このようにして得られた化合物は、 1H−NMRおよび13C−NMR(ともに日本電子社製)を用いて分析し得られた以下の結果より、下記の構造式(12)で表される9,9−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕−トリシクロ[ 5,2,1,0] デカンであることが確認された。
【0079】
1H−NMR(CDCl3 、400MHz):δ(ppm);0.90(dt、J=2.0Hz、J=7.6Hz、6H、CH3 )、1.42(d、J=10.0Hz、1H、CH)、1.50(d、J=10.4Hz、2H、CH)、1.61(d、J=5.2Hz、1H、CH)、1.81−1.86(m、8H、CH2 )、2.25(m、4H、CH2 )、2.87(s、2H、CH2 )、3.99(d、J=2.0Hz、4H、CH2 )、4.44(d、J=6.0Hz、4H、CH2 )、4.52(d、J=2.4Hz、2H、CH2 )、4.53(d、J=2.8Hz、2H、CH2 )、6.77(d、J=3.2Hz、2H、Ar)、6.79(d、J=3.2Hz、2H、Ar)、7.17(d、J=8.4Hz、2H、Ar)、7.22(d、J=8.8Hz、2H、Ar)
13C−NMR(CDCl3 、100MHz):δ(ppm);8.22、26.72、27.29、31.94、32.15、32.45、42.44、42.48、43.19、43.45、47.95、49.41、54.40、70.04、70.09、78.22、78.24、113.91、114.04、127.97、128.73、141.29、145.34、156.11、156.36
【0080】
【化17】

【実施例7】
【0081】
以下のようにして、アンダークラッド層,コア部およびアンダークラッド層を形成し、光導波路を作製した(図1参照)。そして、その光導波路に対する評価を、以下のようにして行った。
【0082】
〔アンダークラッド層の形成〕
まず、実施例2で得られた1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕デカン70重量部(以下、「部」と略す)と、脂環式エポキシである3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P)30部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、クラッド層形成用の重合性組成物Aを調製した。つぎに、ガラス基板(5cm×5cm×厚み2mm)を準備し、その表面に、上記重合性組成物Aをスピンコート法により塗布し、100℃で5分乾燥させた。そして、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き100℃にて30分加熱処理することにより、アンダークラッド層を形成した(図2(b)参照)。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計にて測定したところ、30μmであった。また、上記アンダークラッドの屈折率は波長633nmにおいて1.527であった。
【0083】
〔コア部の形成〕
次に、実施例2で得られた1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕デカン90部と、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(エポキシ当量320)10部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、コア部形成用の重合性組成物Bを調製した。そして、スピンコート法により、上記重合性組成物Bを前記アンダークラッド層上に塗布した(図2(c)参照)。そして、この塗布層を、150℃で20分乾燥させ、さらにその上に、50μm幅の直線光導波路パターンが描画された合成石英系のクロムマスク(フォトマスク)を配設し(図2(d)参照)、このクロムマスクを介してコンタクト露光法にて2000mJ/cm2 の照射量の紫外線を照射し、さらに、150℃にて30分間加熱処理を行った。その後、未照射部を除去するため、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像を行い、さらに150℃で30分加熱することにより、コアパターンを形成した(図2(e)参照)。測長顕微鏡によりコア形状を測定したところ、幅50μm、高さ50μmの方形の断面形状を有するコアパターンとなっていた。また、このようにして形成されたコア部の屈折率は、波長633nmにおいて1.547であった。
【0084】
〔オーバークラッド層の形成〕
アンダークラッド層形成時に調製した重合性組成物Aと同じものを、上記コア部およびアンダークラッド層上にスピンコート法により塗布した。つぎに、100℃で5分乾燥させ、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き150℃にて60分加熱処理することにより、オーバークラッド層を形成した(図2(f)参照)。このようにして、比屈折率Δ=1 .3%の光導波路を作製した。
【0085】
〔評価〕
上記光導波路を、ダイシング装置(ディスコ社製モデル522)を用いて10cmの長さに切り出し、端面処理を行った。そして、光導波路の断面形状を測長顕微鏡により観察したところ、アンダークラッド層の厚みが30μm、コア部が50μm×50μm、オーバークラッド層の厚みが70μmの埋め込み型マルチモード光導波路となっていることを確認した。そして、この光導波路に対し、波長850nmのレーザー光を用いて常法のカットバック法により光伝搬損失を測定したところ、0.07dB/cmであった。また、本導波路は、基板から剥離することでフィルム状導波路とすることが可能であった。そして、このフィルム状導波路は、R=20mmの曲げに対しても損失低下は観察されず、また、R=5mmの曲げが可能など、フレキシブル性も良好であった。
【実施例8】
【0086】
以下のようにして、アンダークラッド層,コア部およびアンダークラッド層を形成し、光導波路を作製した(図1参照)。そして、その光導波路に対する評価を、以下のようにして行った。
【0087】
〔アンダークラッド層の形成〕
まず、実施例1で得られた1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕シクロヘキサン70部と、脂環式エポキシである3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P)30部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、クラッド層形成用の重合性組成物Cを調製した。つぎに、Si基板(5cm×5cm×厚み2mm)を準備し、その表面に、上記重合性組成物Cをスピンコート法により塗布し、100℃で5分乾燥させた。そして、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き100℃にて30分加熱処理することにより、アンダークラッド層を形成した(図2(b)参照)。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計にて測定したところ、30μmであった。また、上記アンダークラッドの屈折率は波長633nmにおいて1.539であった。
【0088】
〔コア部の形成〕
次に、実施例1で得られた1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕シクロヘキサン90部と、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(エポキシ当量320)10部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、コア部形成用の重合性組成物Dを調製した。そして、スピンコート法により、上記重合性組成物Dを前記アンダークラッド層上に塗布した(図2(c)参照)。そして、この塗布層を、150℃で20分乾燥させ、さらにその上に、50μm幅の直線光導波路パターンが描画された合成石英系のクロムマスク(フォトマスク)を配設し(図2(d)参照)、このクロムマスクを介してコンタクト露光法にて2000mJ/cm2 の照射量の紫外線を照射し、さらに、150℃にて30分間加熱処理を行った。その後、未照射部を除去するため、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像を行い、さらに150℃で30分加熱することにより、コアパターンを形成した(図2(e)参照)。測長顕微鏡によりコア形状を測定したところ、幅50μm、高さ50μmの方形の断面形状を有するコアパターンとなっていた。また、このようにして形成されたコア部の屈折率は、波長633nmにおいて1.562であった。
【0089】
〔オーバークラッド層の形成〕
アンダークラッド層形成時に調製した重合性組成物Cと同じものを、上記コア部およびアンダークラッド層上にスピンコート法により塗布した。つぎに、100℃で5分乾燥させ、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き150℃にて60分加熱処理することにより、オーバークラッド層を形成した(図2(f)参照)。このようにして、比屈折率Δ=1 .5%の光導波路を作製した。
【0090】
〔評価〕
上記光導波路を、ダイシング装置(ディスコ社製モデル522)を用いて10cmの長さに切り出し、端面処理を行った。そして、光導波路の断面形状を測長顕微鏡により観察したところ、アンダークラッド層の厚みが30μm、コア部が50μm×50μm、オーバークラッド層の厚みが70μmの埋め込み型マルチモード光導波路となっていることを確認した。そして、この光導波路に対し、波長850nmのレーザー光を用いて常法のカットバック法により光伝搬損失を測定したところ、0.08dB/cmであった。
【実施例9】
【0091】
以下のようにして、アンダークラッド層,コア部およびアンダークラッド層を形成し、光導波路を作製した(図1参照)。そして、その光導波路に対する評価を、以下のようにして行った。
【0092】
〔アンダークラッド層の形成〕
まず、実施例3で得られた1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕−2−エチルヘキサン70部と、脂環式エポキシである3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P)30部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、クラッド層形成用の重合性組成物Eを調製した。つぎに、ガラス基板(5cm×5cm×厚み2mm)を準備し、その表面に、上記重合性組成物Eをスピンコート法により塗布し、100℃で5分乾燥させた。そして、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き100℃にて30分加熱処理することにより、アンダークラッド層を形成した(図2(b)参照)。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計にて測定したところ、30μmであった。また、上記アンダークラッドの屈折率は波長633nmにおいて1.529であった。
【0093】
〔コア部の形成〕
次に、実施例3で得られた1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕−2−エチルヘキサン90部と、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(エポキシ当量320)10部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、コア部形成用の重合性組成物Fを調製した。そして、スピンコート法により、上記重合性組成物Fを前記アンダークラッド層上に塗布した(図2(c)参照)。そして、この塗布層を、150℃で20分乾燥させ、さらにその上に、50μm幅の直線光導波路パターンが描画された合成石英系のクロムマスク(フォトマスク)を配設し(図2(d)参照)、このクロムマスクを介してコンタクト露光法にて2000mJ/cm2 の照射量の紫外線を照射し、さらに、150℃にて30分間加熱処理を行った。その後、未照射部を除去するため、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像を行い、さらに150℃で30分加熱することにより、コアパターンを形成した(図2(e)参照)。測長顕微鏡によりコア形状を測定したところ、幅50μm、高さ50μmの方形の断面形状を有するコアパターンとなっていた。また、このようにして形成されたコア部の屈折率は、波長633nmにおいて1.550であった。
【0094】
〔オーバークラッド層の形成〕
アンダークラッド層形成時に調製した重合性組成物Eと同じものを、上記コア部およびアンダークラッド層上にスピンコート法により塗布した。つぎに、100℃で5分乾燥させ、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き150℃にて60分加熱処理することにより、オーバークラッド層を形成した(図2(f)参照)。このようにして、比屈折率Δ=1 .4%の光導波路を作製した。
【0095】
〔評価〕
上記光導波路を、ダイシング装置(ディスコ社製モデル522)を用いて10cmの長さに切り出し、端面処理を行った。そして、光導波路の断面形状を測長顕微鏡により観察したところ、アンダークラッド層の厚みが30μm、コア部が50μm×50μm、オーバークラッド層の厚みが70μmの埋め込み型マルチモード光導波路となっていることを確認した。そして、この光導波路に対し、波長850nmのレーザー光を用いて常法のカットバック法により光伝搬損失を測定したところ、0.09dB/cmであった。また、本導波路は、基板から剥離することでフィルム状導波路とすることが可能であった。そして、このフィルム状導波路は、R=20mmの曲げに対しても損失低下は観察されず、また、R=5mmの曲げが可能など、フレキシブル性も良好であった。
【実施例10】
【0096】
以下のようにして、アンダークラッド層,コア部およびアンダークラッド層を形成し、光導波路を作製した(図1参照)。そして、その光導波路に対する評価を、以下のようにして行った。
【0097】
〔アンダークラッド層の形成〕
まず、実施例4で得られた2,2−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕アガマンタン70部と、脂環式エポキシである3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P)30部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、クラッド層形成用の重合性組成物Gを調製した。つぎに、ガラス基板(5cm×5cm×厚み2mm)を準備し、その表面に、上記重合性組成物Gをスピンコート法により塗布し、100℃で5分乾燥させた。そして、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き100℃にて30分加熱処理することにより、アンダークラッド層を形成した(図2(b)参照)。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計にて測定したところ、30μmであった。また、上記アンダークラッドの屈折率は波長633nmにおいて1.530であった。
【0098】
〔コア部の形成〕
次に、実施例4で得られた2,2−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕アガマンタン90部と、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(エポキシ当量320)10部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、コア部形成用の重合性組成物Hを調製した。そして、スピンコート法により、上記重合性組成物Hを前記アンダークラッド層上に塗布した(図2(c)参照)。そして、この塗布層を、150℃で20分乾燥させ、さらにその上に、50μm幅の直線光導波路パターンが描画された合成石英系のクロムマスク(フォトマスク)を配設し(図2(d)参照)、このクロムマスクを介してコンタクト露光法にて2000mJ/cm2 の照射量の紫外線を照射し、さらに、150℃にて30分間加熱処理を行った。その後、未照射部を除去するため、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像を行い、さらに150℃で30分加熱することにより、コアパターンを形成した(図2(e)参照)。測長顕微鏡によりコア形状を測定したところ、幅50μm、高さ50μmの方形の断面形状を有するコアパターンとなっていた。また、このようにして形成されたコア部の屈折率は、波長633nmにおいて1.551であった。
【0099】
〔オーバークラッド層の形成〕
アンダークラッド層形成時に調製した重合性組成物Gと同じものを、上記コア部およびアンダークラッド層上にスピンコート法により塗布した。つぎに、100℃で5分乾燥させ、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き150℃にて60分加熱処理することにより、オーバークラッド層を形成した(図2(f)参照)。このようにして、比屈折率Δ=1 .4%の光導波路を作製した。
【0100】
〔評価〕
上記光導波路を、ダイシング装置(ディスコ社製モデル522)を用いて10cmの長さに切り出し、端面処理を行った。そして、光導波路の断面形状を測長顕微鏡により観察したところ、アンダークラッド層の厚みが30μm、コア部が50μm×50μm、オーバークラッド層の厚みが70μmの埋め込み型マルチモード光導波路となっていることを確認した。そして、この光導波路に対し、波長850nmのレーザー光を用いて常法のカットバック法により光伝搬損失を測定したところ、0.08dB/cmであった。また、本導波路は、基板から剥離することでフィルム状導波路とすることが可能であった。そして、このフィルム状導波路は、R=20mmの曲げに対しても損失低下は観察されず、また、R=5mmの曲げが可能など、フレキシブル性も良好であった。
【実施例11】
【0101】
以下のようにして、アンダークラッド層,コア部およびアンダークラッド層を形成し、光導波路を作製した(図1参照)。そして、その光導波路に対する評価を、以下のようにして行った。
【0102】
〔アンダークラッド層の形成〕
まず、実施例5で得られた1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン70部と、脂環式エポキシである3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P)30部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、クラッド層形成用の重合性組成物Iを調製した。つぎに、ガラス基板(5cm×5cm×厚み2mm)を準備し、その表面に、上記重合性組成物Iをスピンコート法により塗布し、100℃で5分乾燥させた。そして、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き100℃にて30分加熱処理することにより、アンダークラッド層を形成した(図2(b)参照)。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計にて測定したところ、30μmであった。また、上記アンダークラッドの屈折率は波長633nmにおいて1.538であった。
【0103】
〔コア部の形成〕
次に、実施例5で得られた1,1−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン90部と、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(エポキシ当量320)10部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、コア部形成用の重合性組成物Jを調製した。そして、スピンコート法により、上記重合性組成物Jを前記アンダークラッド層上に塗布した(図2(c)参照)。そして、この塗布層を、150℃で20分乾燥させ、さらにその上に、50μm幅の直線光導波路パターンが描画された合成石英系のクロムマスク(フォトマスク)を配設し(図2(d)参照)、このクロムマスクを介してコンタクト露光法にて2000mJ/cm2 の照射量の紫外線を照射し、さらに、150℃にて30分間加熱処理を行った。その後、未照射部を除去するため、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像を行い、さらに150℃で30分加熱することにより、コアパターンを形成した(図2(e)参照)。測長顕微鏡によりコア形状を測定したところ、幅50μm、高さ50μmの方形の断面形状を有するコアパターンとなっていた。また、このようにして形成されたコア部の屈折率は、波長633nmにおいて1.561であった。
【0104】
〔オーバークラッド層の形成〕
アンダークラッド層形成時に調製した重合性組成物Iと同じものを、上記コア部およびアンダークラッド層上にスピンコート法により塗布した。つぎに、100℃で5分乾燥させ、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き150℃にて60分加熱処理することにより、オーバークラッド層を形成した(図2(f)参照)。このようにして、比屈折率Δ=1 .5%の光導波路を作製した。
【0105】
〔評価〕
上記光導波路を、ダイシング装置(ディスコ社製モデル522)を用いて10cmの長さに切り出し、端面処理を行った。そして、光導波路の断面形状を測長顕微鏡により観察したところ、アンダークラッド層の厚みが30μm、コア部が50μm×50μm、オーバークラッド層の厚みが70μmの埋め込み型マルチモード光導波路となっていることを確認した。そして、この光導波路に対し、波長850nmのレーザー光を用いて常法のカットバック法により光伝搬損失を測定したところ、0.08dB/cmであった。また、本導波路は、基板から剥離することでフィルム状導波路とすることが可能であった。そして、このフィルム状導波路は、R=20mmの曲げに対しても損失低下は観察されず、また、R=5mmの曲げが可能など、フレキシブル性も良好であった。
【実施例12】
【0106】
以下のようにして、アンダークラッド層,コア部およびアンダークラッド層を形成し、光導波路を作製した(図1参照)。そして、その光導波路に対する評価を、以下のようにして行った。
【0107】
〔アンダークラッド層の形成〕
まず、実施例6で得られた9,9−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕−トリシクロ[ 5,2,1,0] デカン70部と、脂環式エポキシである3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P)30部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、クラッド層形成用の重合性組成物Kを調製した。つぎに、ガラス基板(5cm×5cm×厚み2mm)を準備し、その表面に、上記重合性組成物Kをスピンコート法により塗布し、100℃で5分乾燥させた。そして、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き100℃にて30分加熱処理することにより、アンダークラッド層を形成した(図2(b)参照)。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計にて測定したところ、30μmであった。また、上記アンダークラッドの屈折率は波長633nmにおいて1.531であった。
【0108】
〔コア部の形成〕
次に、実施例6で得られた9,9−ビス〔4−[ 2−(3−オキセタニル)] ブトキシフェニル〕−トリシクロ[ 5,2,1,0] デカン90部と、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(エポキシ当量320)10部と、4,4−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーバイド溶液1部とを、シクロヘキサノンに溶解し、コア部形成用の重合性組成物Lを調製した。そして、スピンコート法により、上記重合性組成物Lを前記アンダークラッド層上に塗布した(図2(c)参照)。そして、この塗布層を、150℃で20分乾燥させ、さらにその上に、50μm幅の直線光導波路パターンが描画された合成石英系のクロムマスク(フォトマスク)を配設し(図2(d)参照)、このクロムマスクを介してコンタクト露光法にて2000mJ/cm2 の照射量の紫外線を照射し、さらに、150℃にて30分間加熱処理を行った。その後、未照射部を除去するため、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像を行い、さらに150℃で30分加熱することにより、コアパターンを形成した(図2(e)参照)。測長顕微鏡によりコア形状を測定したところ、幅50μm、高さ50μmの方形の断面形状を有するコアパターンとなっていた。また、このようにして形成されたコア部の屈折率は、波長633nmにおいて1.552であった。
【0109】
〔オーバークラッド層の形成〕
アンダークラッド層形成時に調製した重合性組成物Kと同じものを、上記コア部およびアンダークラッド層上にスピンコート法により塗布した。つぎに、100℃で5分乾燥させ、2000mJ/cm2 の照射量にて全面に紫外線を照射し、引き続き150℃にて60分加熱処理することにより、オーバークラッド層を形成した(図2(f)参照)。このようにして、比屈折率Δ=1 .4%の光導波路を作製した。
【0110】
〔評価〕
上記光導波路を、ダイシング装置(ディスコ社製モデル522)を用いて10cmの長さに切り出し、端面処理を行った。そして、光導波路の断面形状を測長顕微鏡により観察したところ、アンダークラッド層の厚みが30μm、コア部が50μm×50μm、オーバークラッド層の厚みが70μmの埋め込み型マルチモード光導波路となっていることを確認した。そして、この光導波路に対し、波長850nmのレーザー光を用いて常法のカットバック法により光伝搬損失を測定したところ、0.09dB/cmであった。また、本導波路は、基板から剥離することでフィルム状導波路とすることが可能であった。そして、このフィルム状導波路は、R=20mmの曲げに対しても損失低下は観察されず、また、R=5mmの曲げが可能など、フレキシブル性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のビスオキセタンエーテル化合物は、光硬化性樹脂組成物や熱硬化性樹脂組成物の構成成分として用いられ、これら樹脂組成物は、例えば、塗料,コート材,接着剤,光学レンズ,光導波路等の各種形成材料等に用いられる。また、上記光導波路としては、例えば、直線光導波路、曲がり光導波路、交差光導波路、Y分岐光導波路、スラブ光導波路、マッハツェンダー型光導波路、AWG型光導波路、グレーティング、光導波路レンズ等があげられる。そして、上記光導波路を用いてなる光素子としては、波長フィルタ,光スイッチ,光分岐器,光合波器,光合分波器,光アンプ,波長変換器,波長分割器,光スプリッタ,方向性結合器、さらにはレーザダイオードやフォトダイオードをハイブリッド集積した、光伝送モジュール等があげられる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の光導波路の一例を示す横断面図である。
【図2】本発明の光導波路の製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0113】
1 基板
2 クラッド層
3 コア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるビスオキセタンエーテル化合物。
【化1】

【請求項2】
請求項1記載のビスオキセタンエーテル化合物の製法であって、下記の一般式(2)で表されるフェノール類を、セシウム塩によりセシウムフェノラート化し、次いで、下記の一般式(3)で表されるスルホン酸エステルと反応させることを特徴とするビスオキセタンエーテル化合物の製法。
【化2】

【化3】

【請求項3】
上記セシウム塩が、炭酸セシウムである請求項2記載のビスオキセタンエーテル化合物の製法。
【請求項4】
基板と、その基板上に形成されたクラッド層とを備え、上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア部が形成されてなる光導波路であって、上記クラッド層およびコア部の少なくとも一方が、請求項1記載のビスオキセタンエーテル化合物を含有する樹脂組成物によって形成されていることを特徴とする光導波路。
【請求項5】
上記クラッド層およびコア部の少なくとも一方が、請求項1記載のビスオキセタンエーテル化合物と、エポキシ基またはビニルエーテル基を有する化合物とを含有する樹脂組成物によって形成されている請求項4記載の光導波路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−70321(P2007−70321A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262237(P2005−262237)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】