説明

ビス打ち込み量調整具及びパネル取付工法

【課題】ビスの頭部を金属サンドイッチパネル等の施工対象物のビス打ち面に打ち込み過ぎることを防止することができるビス打ち込み量調整具と、このビス打ち込み量調整具を用いたパネル取付工法を提供する。
【解決手段】電動ドライバー1の回転軸にドライバービット2が取り付けられ、このドライバービット2にビス打ち込み量調整具3が装着されている。調整具3の内筒7の先端に台座6が設けられ、その先端側から鍔部6aが拡開している。内筒7の先端面は鍔部6aの前面から所定距離後退している。ビス4が対象物に打ち込まれ、台座6の鍔部6aが金属サンドイッチパネル20の表面に当たると、ドライバービット2がそれ以上前進し得なくなる。ビス4は、ビット部がビット係合溝4aに係合しなくなり、ビット2が空転する位置まで螺進して停止する。従って、木ビス4の頭頂面が金属サンドイッチパネル20の表面から少しだけ引っ込むようにビス打ちすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスの打ち込み量を適正とするために電動ドライバー等のドライバービットに装着されて使用されるビス打ち込み量調整具と、このビス打ち込み量調整具を用いたパネル取付工法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動ドライバーによってビスを対象物に打ち込む際にビス打ち込み深さを一定とするために、ドライバービットにビス打ち込み量調整具を装着して打ち込み作業を行うことが特開2000−42935号に記載されている。同号のビス打ち込み量調整具は、先端が鍔状に拡開する筒状体よりなるものである。ドライバービットはその先端がこの筒状のビス打ち込み量調整具の先端から所定の少量だけ突出している。この調整具はドライバービットに対しビット長手方向に移動しないように装着される。
【0003】
この調整具を備えたドライバービットを用いてビス打ち込み作業すると、ビス打ち込みに伴って調整具の先端面が対象物表面に接近し、遂には該先端面が対象物表面に面接触状態となることにより、ドライバービットがそれ以上前進しなくなる。このようにして、常にビスの打ち込み量を一定にすることが可能となる。
【特許文献1】特開2000−42935号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、金属の薄板(例えば、厚さ0.2〜0.3mm程度の鋼板)同士の間に発泡ウレタン等の発泡合成樹脂を介在させた積層構造の金属サンドイッチパネルが建築物の外装用材料として用いられている。上記のビス打ち込み量調整具を用いてこの金属サンドイッチパネルを建築躯体にビス留めする場合、ウレタン等の発泡合成樹脂が柔らかいため、鍔部がパネル表面に接した後も、ビスの打ち込みがすぐには終了せず、打ち過ぎ、大きな不陸が生じる。これは、調整具先端面が金属サンドイッチパネルの表面に接触するまでビスが打ち込まれると、該調整具とドライバービットはそれ以上前進しなくなるが、ドライバービット先端がビス頭部のビット係合溝に係合している間は、ビスがさらに進んでしまうためである。
【0005】
金属サンドイッチパネルの表面にこのように大きな不陸が生じると、該金属サンドイッチパネル上にタイル張りを施す際には、この不陸を埋めるためのパテの使用量が増えると共に、施工の手間もかかるようになる。
【0006】
本発明は、ビスの頭部を金属サンドイッチパネル等の施工対象物のビス打ち面に打ち込み過ぎることを防止することができるビス打ち込み量調整具と、このビス打ち込み量調整具を用いたパネル取付工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のビス打ち込み量調整具は、ドライバービットが後端側から挿入される内筒と、該内筒の先端側に外嵌した環状の台座と、を有し、該台座の先端面がビス打ち面に接触するビス打ち込み量調整具において、該台座の先端面がビス打ち面に当接してドライバービットが前進しなくなった後に、ドライバービット先端がビス頭部のビット係合溝に係合している間だけビスが進み、次いで該ビスが停止した状態においてビス頭部がビス打ち面を面一か又はそれよりも所定距離だけ凹陥するように該ドライバービットの先端が位置していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、該台座の先端面がビス打ち面に当接してドライバービットが前進しなくなった後に、ドライバービット先端がビス頭部のビット係合溝に係合している間にビスが進む距離の分だけ該内筒の先端面が該台座の先端面より後退していることが好ましい。
【0009】
また、この内筒の先端に、該ドライバービット先端に装着されたビスの頭部を磁気的に吸着するマグネットを備えることが好ましい。
【0010】
本発明では、この台座は、外方に拡開する鍔部が設けられており、台座の該先端面は該鍔部の前面であることが好ましい。
【0011】
本発明のパネル取付工法は、少なくとも前面が金属板からなり、該金属板の裏面に発泡材が取り付けられてなるパネルを建築躯体にビス留めするパネル取付工法において、本発明に係るビス打ち込み量調整具を用いて、ビスをパネルを通して建築躯体に打ち込むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のビス打ち込み量調整具にあっては、例えばビス頭部が金属サンドイッチパネルの表面などビス打ち面と面一か、又はそれから所定の微小距離だけ奥まった状態となるようにビス打ちすることができる。
【0013】
本発明では、ビス打ち時に内筒の先端面にビス頭部の頂面が当る場合には、該台座の先端面がビス打ち面に当接してドライバービットが前進しなくなった後に、ドライバービット先端がビス頭部のビット係合溝に係合している間にビスが進む距離の分だけ該内筒の先端面が該台座の先端面より後退していることが好ましい。
【0014】
この場合、内筒の先端に、該ドライバービット先端に装着されたビスの頭部を磁気的に吸着するマグネットを備えた場合には、ビスの頭部の頭頂面が内筒の先端面に面当り状に当接してマグネットに吸着保持されるので、ビスがマグネットにしっかりと保持される。また、ビスとドライバービットとが確実に一直線状となる。
【0015】
この台座に鍔部を設け、鍔部の前面を台座の先端面とした場合には、台座が前進して台座先端面がビス打ち面に当接したときに、台座とビス打ち面との接触面積が大きなものとなる。このため、台座のそれ以上の前進を確実に阻止することが可能となる。
【0016】
本発明のパネル取付工法によると、金属サンドイッチパネルなどにビス打ちする場合に、ビスを表面の金属板に打ち込み過ぎることが確実に防止されるため、不陸が殆ど発生しないようになる。このため、その後タイル張り施工する場合、不陸補修用のパテの使用量が減少すると共に、施工の手間も少なくて済むようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
【0018】
第1図は第1発明の実施の形態に係るビス打ち込み量調整具の断面図(第2図(B)のI−I線断面図)、第2図(A),(B)はそれぞれ第1図のA−A線、B−B線に沿う断面図、第3図はこのビス打ち込み量調整具の側面図、第4図は第3図のIV−IV矢視図、第5図はビス打ち込み量調整具に対するドライバービットの着脱方法を示す断面図、第6図はこのビス打ち込み量調整具の使用状態の斜視図、第7図(A),(B)はこのビス打ち込み量調整具の使用例を示す水平断面図である。
【0019】
電動ドライバー1の回転軸にドライバービット2が取り付けられ、このドライバービット2にビス打ち込み量調整具3が装着されている。このドライバービット2の先端をビス(この実施の形態では木ビス)4の頭頂面のビット係合溝4aに係合させてビス4を金属サンドイッチパネル20などの対象物に打ち込む。
【0020】
ドライバービット2には、後述するロックボール9が係合する周回溝2aが設けられている。
【0021】
ドライバービット2は、六角形棒状のものであり、両端にビス4のビット係合溝4aに係合するビット部(プラス形尖頭部)が形成されている。両端のビット部は同形であり、一方が摩耗しても他方を使用できるようにしてある。向きを逆にしてもドライバービット2に調整具3を装着できるようにするために、周回溝2aも2個設けられている。
【0022】
ビス打ち込み量調整具3は、ドライバービット2の貫挿を可能とする六角形の内孔を有する金属製の内筒7と、該内筒7の後端側に外嵌された、内筒7より短い長さの金属製の外筒8と、該内筒7の先端側に外嵌された環状の台座6とを主要構成体としている。
【0023】
内筒7にはボール保持孔7aが120°間隔で3個穿設されており、各ボール保持孔7aにロックボール9が合嵌されている。ボール保持孔7aは外方へ開拡状態に設けられている。即ち、ボール保持孔7aは、内筒7の内周側が小径であり、外周側に向って徐々に拡径するテーパ状である。最も内側にロックボール9が位置した際、該ロックボール9はボール保持孔7aから若干内方へ突出する。
【0024】
外筒8の内周面の周回凸部8aを第1図の如くロックボール9に重なる位置に配置した場合、ロックボール9は該外筒8に押されて求心方向に移動し、ボール保持孔7aから若干突出してドライバービット2の周回溝2aに係合する。これにより、ドライバービット2が内筒7に対し軸心線方向移動不能に係止される。
【0025】
外筒8は、その筒軸心線方向にスライド可能となっている。外筒8の後端側(電動ドライバー1側)の内周面と内筒7の外周面との間のスペースにコイルばね10が配置されている。内筒7の後端側の外周面には、ばねストッパリング11が装着されている。コイルばね10は該ばねストッパリング11に反力を得て外筒8を先端方向に付勢している。
【0026】
ボール保持孔7aよりも先端側(ビス側)の外周面にはリング状ストッパ12が装着されており、外筒8はコイルばね10に付勢されて該ストッパ12に当接している。
【0027】
このストッパ12への当接状態においては、周回凸部8aがロックボール9を内方へ押し込んでいる。
【0028】
外筒8を第5図の如く電動ドライバー1側へスライドさせると、周回凸部8aよりもビス側の周回凹部8bがロックボール9に対向し、ロックボール9が該周回凹部8b内へ退出しうるようになる。これにより、ドライバービット2が内筒7に挿抜可能となる。
【0029】
内筒7の先端側には環状のマグネット13が埋設されている。このマグネット13は、その先端面が内筒7の先端面と面一状となるように該内筒7に固着されている。このマグネット13の直径(外径)は、ビス4の頭頂部の直径と略等しいか、それよりも若干大きいものとなっている。具体的には、マグネット13の外径はビス頭頂部の直径の95〜130%程度が好ましい。
【0030】
内筒7の先端側に外嵌した台座6は、環状のものであり、その先端側から外向きに円板状鍔部6aが突設されている。この鍔部6aの前面よりも上記マグネット13の先端面が距離e(第3図)だけ後退している。この台座6はストッパ12に当接して位置決めされ、内筒7に対しロックボルト14(第3図)によって固定されている。
【0031】
この調整具3をドライバービット2に装着してビス打ちを行う場合、ビス4の頭頂部の全体がマグネット13に吸着保持されるため、ビス4とビット2とが正確に一直線になると共に、ビス4がぐらつくことがなく、ビス打ち作業を効率よく行うことができる。
【0032】
ビス4が対象物に打ち込まれ、台座6の鍔部6aが対象物表面に当たると、ドライバービット2がそれ以上前進し得なくなる。該ビット2の前進が停止した後も、該ビット2先端のビット部がビス4のビット係合溝4aに係合している間は、該ビス4が回転して螺進する。ビス4は、ビット部がビット係合溝4aに係合しなくなり、ビット2が空転する位置まで螺進して停止する。従って、ビス4は、対象物の表面から所定の距離だけ引込んだ位置まで螺じ込まれることになる。この「所定の距離」は、鍔部6aの前面からのビット2の突出長さによって一義的に定まるため、このビット2の鍔部6aの前面からの突出長さを一定とすることにより、多数のビスを均一深さにまで螺じ込むことができる。
【0033】
この鍔部6aの前面からのビット2の突出長さは、内筒7の先端面と鍔部6aの前面との距離、即ち、内筒7の先端面が鍔部6aの前面から後退する距離によって変わる。このため、ドライバービット2と内筒7とを同一機種のものとした場合、台座6として軸心線方向長さLの異なるものを用意しておき、ビス打ち込み深さを大きくしたいときにはLの小さい台座を内筒7に装着し、ビス打ち込み深さを小さくしたいときにはLの大きい台座を内筒7に装着すればよい。
【0034】
なお、台座6の鍔部6aが合成樹脂などの非磁性材料よりなる場合、鋼板に磁気的に吸着しないので、ビスを打ち込んだ後に鍔部6aを鋼板から容易に引き剥すことが可能となる。
【0035】
第7図(A),(B)は、この調整具3を装着した電動ドライバー1を用いて金属サンドイッチパネル20を間柱25にビス留めする工法及び構造を示す水平断面図である。
【0036】
この金属サンドイッチパネル20は、発泡ウレタン等の樹脂発泡体よりなる板状芯材21の両面に金属板(この場合は鋼板)22を接着したものである。
【0037】
間柱25の前面側に透湿防水シート26を張設した後、パネル20を当て、凹陥部20aから木ビス4を打つことにより、該パネル20を間柱25に固定する。この場合、台座6として軸心線方向長さLが適切なものを装着しておき、内筒7の先端面が鍔部6aの前面から後退する距離を適正に設定し、ドライバービット2の先端が鍔部6aの前面から突出する長さを適正に設定しておく。即ち、木ビス4の頭部の頂面が、打ち込み後に鋼板22の前面から0.5〜4mm程度引っ込むようにする。このようにビス打ちした後、木ビス4の頭部周囲に生じた凹所をパテ30で埋め、木ビス4の頂面もパテで覆う。その後、このパネル20の前面に接着剤27を塗着し、タイル28を貼り付ける。この場合、パネル20の前面に接着剤27を塗着するに際してビス頭部が引掛かることがなく、作業効率が向上する。また、ビス頭部が突出することに起因したタイル28の不陸も防止される。鋼板22の凹みが小さいので、パテの使用量が少なく、作業時間も短い。
【0038】
なお、厚さ35mmのウレタンの両面に厚さ0.27mmの鋼板を積層してなる金属サンドイッチパネルに対し、第1図〜第6図のようにして長さ65mmの木ビス4を打ち込んだ。この際、内筒7の先端面を鍔部6aの前面から1.7mm引き込ませ、ドライバービット2の先端を鍔部6aの前面から1.3mmだけ突出させた。この結果、木ビス4の頭頂面が鋼板から1.5mmだけ引っ込むようにビス打ちを行うことができた。
【0039】
上記説明では、金属サンドイッチパネルの上にタイル張りを施すものとしているが、金属サンドイッチパネルの上に塗装仕上げを施す場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1発明の実施の形態に係るビス打ち込み量調整具の断面図(図2(B)のI−I線断面図)である。
【図2】図1のA−A線、B−B線に沿う断面図である。
【図3】ビス打ち込み量調整具の側面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】ビス打ち込み量調整具に対するドライバービットの着脱方法を示す断面図である。
【図6】ビス打ち込み量調整具の使用状態の斜視図である。
【図7】ビス打ち込み量調整具の使用例を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 電動ドライバー
2 ドライバービット
3 ビス打ち込み量調整具
4 ビス
6 台座
6a 鍔部
7 内筒
8 外筒
13 マグネット
20 金属サンドイッチパネル
25 間柱
30 パテ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバービットが後端側から挿入される内筒と、
該内筒の先端側に外嵌した環状の台座と、
を有し、該台座の先端面がビス打ち面に接触するビス打ち込み量調整具において、
該台座の先端面がビス打ち面に当接してドライバービットが前進しなくなった後に、ドライバービット先端がビス頭部のビット係合溝に係合している間だけビスが進み、次いで該ビスが停止した状態においてビス頭部がビス打ち面を面一か又はそれよりも所定距離だけ凹陥するように該ドライバービットの先端が位置していることを特徴とするビス打ち込み量調整具。
【請求項2】
請求項1において、該台座の先端面がビス打ち面に当接してドライバービットが前進しなくなった後に、ドライバービット先端がビス頭部のビット係合溝に係合している間にビスが進む距離の分だけ該内筒の先端面が該台座の先端面より後退していることを特徴とするビス打ち込み量調整具。
【請求項3】
請求項2において、該内筒の先端に、該ドライバービット先端に装着されたビスの頭部を磁気的に吸着するマグネットを備えたことを特徴とするビス打ち込み量調整具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該台座は、外方に拡開する鍔部が設けられており、台座の該先端面は該鍔部の前面であることを特徴とするビス打ち込み量調整具。
【請求項5】
少なくとも前面が金属板からなり、該金属板の裏面に発泡材が取り付けられてなるパネルを建築躯体にビス留めするパネル取付工法において、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のビス打ち込み量調整具を用いて、ビスをパネルを通して建築躯体に打ち込むことを特徴とするパネル取付工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−21298(P2006−21298A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203505(P2004−203505)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】