説明

ビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィド、その製造方法、タイヤ用ゴム添加剤およびタイヤ用ゴム組成物

【課題】ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド等中のアルコキシ基等の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基が結合したポリスルフィドおよびその製造方法、混合時にアルコキシシリル基の加水分解物に起因する作業環境上の問題がないタイヤ用ゴム添加剤、タイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド等中のアルコキシ基等の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基が結合したポリスルフィド、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドとポリアルキレングリコールの加熱等によるその製法、ビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドのみまたはそれとポリアルキレングリコールの混合物からなるタイヤ用ゴム添加剤、それらを含有するタイヤ用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィド、その製造方法、該ビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドからなるタイヤ用ゴム添加剤、および、ビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドを含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。特には、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドにおいてアルコキシ基の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基が結合したポリスルフィド;ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドとポリアルキレングリコールを反応させてアルコキシ基をヒドロキシポリアルキレンオキシ基に置換することにより該ポリスルフィドを製造する方法;ビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドのみ、またはビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドとポリアルキレングリコールとからなるタイヤ用ゴム添加剤;さらには加硫してタイヤ、特にはそのトレッドを製造するのに有用なゴム組成物に関するものであり、タイヤ製造時における作業環境性が改善され、加硫するとウエットスキッド抵抗性と低燃費性の両方がバランスよく優れたゴムとなるタイヤ用ゴム組成物、特にはタイヤトレッド用ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドのようなビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドおよびその製造方法は、周知である(特許文献1(特開昭48-29726号公報)、特許文献2(特開昭50-108225号公報))。
ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドは、カーボンブラックやシリカフィラーを含有するゴム組成物の成分としても周知である(特許文献3(特開平8−259734号公報)、特許文献4(特開平9−227722号公報)、特許文献5(特開2001-31798号公報)。
【0003】
高い強度及び耐磨耗性を必要とするゴムタイヤ及び種々の工業用ゴム製品用に、カーボンブラックや沈降法シリカ、フュームドシリカ等の補強性充填剤およびシランカップリング剤を含む硫黄加硫ゴム組成物が従来知られている(特許文献5、特許文献6(特開2004−196937号公報))。
自動車等の空気入りタイヤ、特にはそのトレッドの製造に使用されるゴム組成物においては、湿潤な路面でのグリップ性(ウェットスキッド抵抗性)および低燃費性を向上させる新技術が求められている。ウェットスキッド抵抗性と低燃費性を両立すべくシリコーン・ビニル系ポリマー複合ゴム状粒子をシリカフィラー含有ゴム組成物に含有させることにより、加硫してなるゴムの0℃でのtanδが大きくなり、60℃でのtanδが小さくなることを見出して、ウェットスキッド抵抗性と低燃費性の両方がバランスよく優れたゴムとなるタイヤ用ゴム組成物、特にはタイヤトレッド用ゴム組成物が提案されている(特許文献6(特開2004−196937号公報))。
【0004】
一方、特許文献7(US2006/0036034A1, WO2006/019963A1)には、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドとアルカンジオールを反応することにより調製したビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドおよびそれらを含有するタイヤ用ゴム組成物が提案されている。
【0005】
しかし、上記の特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6に記載の発明では、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドのようなビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドは、シリカフィラーおよび有機ゴムと混合する際に、アルコキシシリル基の加水分解反応に伴いメタノールやエタノールといった低沸点アルコールが発生するので、ゴム組成物および加硫ゴムの生産現場において作業環境性に問題がある。上記の特許文献7の発明では、ビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドをシリカフィラーおよび有機系生ゴムと混合する際に、環状アルコキシシリル基の加水分解反応に伴い沸点がさほど高くないアルカンジオールが発生するので、ゴム組成物および加硫ゴムの生産現場において作業環境性に問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭48-29726号公報
【特許文献2】特開昭50-108225号公報
【特許文献3】特開平8−259734号公報
【特許文献4】特開平9−227722号公報
【特許文献5】特開2001−31798号公報
【特許文献6】特開2004−196937号公報
【特許文献7】US2006/0036034A1, WO2006/019963A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドまたはビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドにおいて、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド中のアルコキシ基またはビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド中の環状アルコキシ基の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基が結合したポリスルフィドであると、ゴム組成物の調製中にヒドロキシポリアルキレンオキシ基が加水分解しても沸点がきわめて高く揮発性がないに等しいポリアルキレングリコールしか発生しないので作業環境上の問題がないことを見出して、本発明に到達した。
【0008】
本発明の課題は、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド中のアルコキシ基またはビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド中の環状アルコキシ基の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基が結合したポリスルフィドおよびその製造方法を提供すること;有機系生ゴム、シリカフィラー、ビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドもしくはビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド等の混合時にアルコキシシリル基もしくは環状アルコキシシリル基の加水分解物に起因する作業環境上の問題がなく、加硫すると0℃でのtanδが大きく60℃でのtanδが小さく、ウェットスキッド抵抗性と低燃費性の両方がバランスよく優れ、且つ耐磨耗性に優れたゴムとなるタイヤ用ゴム添加剤を提供すること;有機系生ゴム、シリカフィラー、ビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドもしくはビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド等の混合時にアルコキシシリル基もしくは環状アルコキシシリル基の加水分解物に起因する作業環境上の問題がなく、加硫すると0℃でのtanδが大きく60℃でのtanδが小さく、ウェットスキッド抵抗性と低燃費性の両方がバランスよく優れ、且つ耐磨耗性に優れたゴムとなるタイヤ用ゴム組成物、特にはタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
「[1] 一般式(1):[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1) または一般式(1-1):[HO(RO)]SiRSRSi[(OR)OH] (1-1)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素原子数2〜4のアルキレン基、nは2または3、xは2〜8の整数である)で示されることを特徴とするビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィド。
[2] 一般式(2):(RO)SiRSRSi(OR (2)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、xは2〜8の整数である)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと
一般式(3): H(OROH (3)
(式中、Rは炭素原子数2〜4のアルキレン基、nは2または3である)で示されるポリアルキレングリコールをアルカリ金属アルコラート存在下で加熱することにより、一般式(2)で示されるアルコキシシリル基含有ポリスルフィド中の一般式(4):-ORで示されるアルコキシ基を一般式(5):-O(RO)H (式中、RとRとnは前記どおりである)で示されるヒドロキシポリアルキレンオキシ基に置換することを特徴とする
一般式(1):[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1)
(式中、RとRとxとnは前記どおりである)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドの製造方法。
[3] [2]記載の製造方法において、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド中のアルコキシ基の合計モル数を上回る一般式(3)で示されるモル数のポリアルキレングリコールを用いることを特徴とする、一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールとの混合物の製造方法。」に関する。
【0010】
本発明は、また、
「[4] 一般式(1):
[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3、xは2〜8の整数である)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドのみ、または一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3) :
H(OROH (3)
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3である)で示されるポリアルキレングリコールとの混合物からなることを特徴とするタイヤ用ゴム添加剤。
[5] 一般式(2):(RO)SiRSRSi(OR (2)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、xは2〜8の整数である)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと
一般式(3): H(OROH (3)
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3である)で示されるポリアルキレングリコール(ただし、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド中のアルコキシ基合計モル数を上回る一般式(3)で示されるモル数のポリアルキレングリコールを用いる)をアルカリ金属アルコラート存在下で加熱することにより、一般式(2)中の一般式(4):-ORで示されるアルコキシ基を一般式(5):-O(RO)H(式中、RとRとnは前記どおりである)で示されるヒドロキシポリアルキレンオキシ基に置換してなることを特徴とするタイヤ用ゴム添加剤。」に関する。
【0011】
本発明は、また、
「[6] (A)有機系生ゴム:100重量部、
(B)シリカフィラー:5.0〜150重量部、および
(C)[4]または[5]記載のタイヤ用ゴム添加剤:成分(B)の0.1〜50重量%
からなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
[7] (A)有機系生ゴム:100重量部、
(B)シリカフィラー:5.0〜150重量部、
(D)カーボンブラック:0.1〜80重量部、および
(C)[4]または[5]記載のタイヤ用ゴム添加剤:成分(B)と成分(D)合計量の0.1〜50重量%
からなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
[8] 有機系生ゴムがジエン系生ゴムであり、シリカフィラーが補強性シリカフィラーである[6]または[7]記載のタイヤ用ゴム組成物。
[9] ジエン系生ゴムが、スチレン/ブタジエン共重合体生ゴム、ポリブタジエン生ゴム、シス−ポリブタジエン生ゴム、スチレン/イソプレン共重合体生ゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエン共重合体生ゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体生ゴム、イソプレン生ゴム、天然生ゴムおよびこれらの混合物より成る群から選ばれ、補強性シリカフィラーが乾式法シリカまたは湿式法シリカである[8]記載のタイヤ用ゴム組成物。」に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドは、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドまたはビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドにおいてアルコキシ基または環状アルコキシシリル基の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基が結合した新規なシリル基含有ポリスルフィドである。有機系生ゴム、シリカフィラー等との混合時にアルコキシシリル基または環状アルコキシシリル基の加水分解に起因する作業環境上の問題がない。
本発明の製造方法によると、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドまたはビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドにおいてアルコキシ基または環状アルコキシシリル基の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基が結合した新規なシリル基含有ポリスルフィドを簡易に収率よく製造することができる。
本発明のタイヤ用ゴム添加剤は、有機生ゴム、シリカフィラー等との混合時にアルコキシシリル基または環状アルコキシシリル基の加水分解に起因する作業環境上の問題がない。本発明のタイヤ用ゴム添加剤は、有機系生ゴム、シリカフィラー等との混合物を加硫すると0℃でのtanδが大きく60℃でのtanδが小さく、ウェットスキッド抵抗性と低燃費性の両方がバランスよく優れ、且つ耐磨耗性に優れたゴムを与える。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、有機系生ゴム、シリカフィラー等の混合時にアルコキシシリル基の加水分解に起因する作業環境上の問題がなく、加硫すると0℃でのtanδが大きく60℃でのtanδが小さく、ウェットスキッド抵抗性と低燃費性の両方がバランスよく優れ、且つ耐磨耗性に優れたゴムを与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドは、
一般式(1): H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3、xは2〜8の整数である)で示されることを特徴とする。
このビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドは、一般式(1-1):
[HO(RO)]SiRSRSi[(OR)OH] (1-1)
で示すこともできる。
イオウ原子数が2〜8であるポリスルフィドの両端の硫黄原子に炭素原子数1〜6のアルキレン基が結合し、このアルキレン基の末端の炭素原子にトリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリル基が結合している。
【0014】
Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が例示される。プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基は、直鎖状が一般的であるが、分岐状や環状であってもよい。製造容易性の点でプロピレン基、ブチレン基が好ましい。
は炭素数2〜4のアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基がある。直鎖状が一般的であるが、プロピレン基とブチレン基は分岐状であってもよい。
はイオウ原子数が2〜8であるポリスルフィド残基であり、両端の硫黄原子に炭素原子数1〜6のアルキレン基が結合している。
【0015】
ビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドにおけるトリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル基の具体例として、トリ(ヒドロキシジエチレンオキシ)シリルエチル基、トリ(ヒドロキシジエチレンオキシ)シリルプロピル基、トリ(ヒドロキシジプロピレンオキシ)シリルプロピル基、トリ(ヒドロキシジブチレンオキシ)シリルプロピル基、トリ(ヒドロキシジエチレンオキシ)シリルブチル基、トリ(ヒドロキシジプロピレンオキシ)シリルヘキシル基がある。
【0016】
本発明の一般式(1):
[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3、xは2〜8の整数である)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドは、
一般式(2):(RO)SiRSRSi(OR (2)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R、xは前記どおりである)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと
一般式(3): H(OROH (3)
(式中、R、nは前記どおりである)で示されるポリアルキレングリコールをアルカリ金属アルコラート存在下で加熱することにより、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド中の一般式(4):-ORで示されるアルコキシ基を一般式(5):-O(RO)H(式中、RとRとnは前記どおりである)で示されるヒドロキシポリアルキレンオキシ基に置換することにより製造することができる。
【0017】
一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3)示されるポリアルキレングリコールは、上記反応の原料である。
一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドとして、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリプロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(トリプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(トリプロポキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(トリブトキシシリルブチル)テトラスルフィドが例示される。
【0018】
一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールは、繰り返し数が2または3のポリアルキレングリコールである。
ポリアルキレングリコールとして、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリブチレングリコールが例示される。
【0019】
アルカリ金属アルコラートは、ケイ素原子結合アルコキシ基の置換反応用の触媒である。ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシドが例示される。
【0020】
一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールのモル比は、一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールのモル数が、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド中のアルコキシ基合計モル数を上回ることが必要である。
一般式(3)で示されるモル数のポリアルキレングリコールのモル数が、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド中のアルコキシ基合計モル数と同一であるか、より少ないと、ポリアルキレングリコールの両方の水酸基が一般式(4):-ORで示されるアルコキシ基と交換されて、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールとが脱アルコール縮合して生成したブロック重合体となり、すなわち、3次元構造を持った固体状の重合体となり、有機系生ゴムやシリカフィラーに分散しにくくなるからである。
【0021】
こうした観点から、一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールのモル数が、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド中のアルコキシ基合計モル数の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍から3倍であることがより好ましい。
この場合、一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールとの混合物が生成するが、有機系生ゴムへの分散性が向上するので好都合である。意図的に固体のビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドを得る場合にはこの限りではない。
【0022】
一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールを反応させるときは、減圧下120〜180℃で、生成した一般式(6):HORで示されるアルコールを留去させながら4時間〜30分間行うことが好ましい。
アルコキシ基の交換反応触媒であるアルカリ金属アルコラートは、いわゆる触媒量を使用すればよい。具体的には一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド量の0.01〜10モル%が好ましく、0.1〜2モル%がより好ましい。アルカリ金属アルコラートは低級アルコールに溶解してから、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールに投入することが好ましい。
【0023】
上記反応による生成物は、主として、一般式(1):
[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3、xは2〜8の整数である)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドである。
ただし、一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールのモル数が、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド中のアルコキシ基合計モル数を上回るので、一般式(1):[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (式中、R、R、x、nは前記どおりである)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3):H(OROH (式中、R、nは前記どおりである)で示されるポリアルキレングリコールの混合物である。これら反応生成物は、そのままタイヤ用ゴム添加剤として使用可能である。
【0024】
本発明のタイヤ用ゴム添加剤は、
一般式(1):[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3、xは2〜8の整数である)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドのみ、または一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3) : H(OROH (3)
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3である)で示されるポリアルキレングリコールとの混合物からなることを特徴とする。
【0025】
タイヤ用ゴム添加剤である一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドおよびその製造方法は既に説明したとおりである。
また、タイヤ用ゴム添加剤である、一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3) で示されるポリアルキレングリコールの混合物中の一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3) で示されるポリアルキレングリコールは、すでに説明したとおりである。
【0026】
タイヤ用ゴム添加剤である一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3) で示されるポリアルキレングリコールの混合物は、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールを反応させる際に、一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールのモル数が、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド中のアルコキシ基合計モル数を上回ることにより容易に製造することができる。
一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3) で示されるポリアルキレングリコールの混合物中における、両者の比率は混合物が常温で液状となるモル比が好ましく、例えば、100:1.2〜100:12である。
【0027】
本発明のタイヤ用ゴム添加剤は、一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドからなり、ケイ素原子に結合したアルコキシ基または環状アルコキシシリル基の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基を含有しているため、有機系生ゴム、シリカフィラーなどとの混合時に1価低級アルコールおよびアルカンジオールのような揮発性の大きな有機化合物が発生しない。そのためゴム組成物調製時の作業環境性が良好である。
【0028】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の主成分である(A)有機系生ゴムは、一般に、単にゴムとも呼称され、加硫してゴム弾性体になり得る有機高分子化合物である。タイヤ、特にはそのトレッドに好適なものであれば、その種類は特に限定されない。かかる有機系生ゴムは高度に不飽和の有機高分子化合物、特にはジエン系高分子化合物であり、通常20〜450のヨウ素価を有する。
有機系生ゴムとして、スチレン/ブタジエン共重合体生ゴム、ポリブタジエン生ゴム、イソプレン/ブタジエン共重合体生ゴム、スチレン/イソプレン共重合体生ゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエン共重合体生ゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体生ゴム、ポリイソプレン生ゴム、天然生ゴム等の共役ジエン系生ゴム、クロロプレン生ゴム、部分水添したジエン系生ゴムが例示される。これら生ゴムの混合物であってもよい。
【0029】
本発明のゴム組成物に使用される(B)シリカフィラーおよび(D)カーボンブラックは、加硫して得られるゴムを補強するための充填剤である。シリカフィラーは、フュームドシリカ(乾式法シリカ)や沈降シリカ(湿式法シリカ)のような補強性シリカが好ましい。そのうちでも、有機ケイ素化合物(例えば、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランまたはオクタメチルテトラシクロシロキサン)で表面処理した疎水性の補強性シリカが好ましい。それらのBET法比表面積は100〜350m/gが好ましい。
カーボンブラックは、従来からゴムの補強用に使用されているカーボンブラックであればよく、例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックがある。カーボンブラックは、ペレット化されたもの、ペレット化されていない凝集塊のいずれでもよい。
【0030】
(B)シリカフィラーの配合量は、成分(A)100重量部あたり、5〜150重量部であり、好ましくは10〜100重量部であり、より好ましくは30〜90重量部である。
さらに(D)カーボンブラックを含有する場合は、(D)カーボンブラックは、成分(A)100重量部あたり0.1〜80重量部、好ましくは5〜50重量部である。ただし、成分(B)と成分(D)の合計量は、成分(A)100重量部あたり120重量部以下が好ましい。上記範囲より少ないと、ゴム強度が不十分となり、上記範囲より多いと、成分(A)との混練が困難になる。
【0031】
成分(C)の配合量は、成分(B)の0.1〜50重量%であり、好ましくは1.0〜30重量%であり、より好ましくは5.0〜30重量%であり、あるいは、成分(B)と成分(D)合計量の0.1〜50重量%であり、好ましくは1.0〜30重量%であり、より好ましくは5.0〜30重量%である。
成分(C)は、一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドが一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールに溶解した溶液の形で成分(A)、成分(B)と混合することが好ましい。成分(A)、成分(B)中への分散性が向上するからである。該溶液中の成分(C)の濃度は、30〜95重量%が適切である。
成分(C)の配合方法は、(1) 成分(C)をあらかじめ成分(B)と混合しておいて成分(A)と混合する方法、(2) 成分(A)と成分(B)の混合中に成分(C)を配合する方法が例示される。
【0032】
本発明のゴム組成物に使用される成分(C)中のビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドのうち特に好ましいものとして、以下の化合物が例示される。
[I] ビス[トリ(ヒドロキシジエチレンオキシ)シリルプロピル]ジスルフィド
式1:(HOCHCHOCHCHO)Si(CHSS(CHSi(OCHCHOCHCHOH)
[II] ビス[トリ(ヒドロキシジエチレンオキシ)シリルプロピル]テトラスルフィド
式2:(HOCHCHOCHCHO)Si(CHSSSS(CHSi(OCHCHOCHCHOH)
[III] ビス[トリ(ヒドロキシトリエチレンオキシ)シリルプロピル]ジスルフィド
式3:[HO(CHCHO)Si(CHSS(CHSi[(OCHCHOH]
【0033】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、必要に応じて、増量充填剤;有機繊維;ナフテン系プロセスオイル等の軟化剤;顔料;発泡剤;紫外線吸収剤;老化防止剤;酸化防止剤;スコーチ防止剤;ワックス等の添加剤を配合することができる。ゴム組成物中のこれらの添加剤の配合量は、タイヤ性能を阻害しなければ特に制限はなく、適宜必要量を選択する。
【0034】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、公知の製造方法により製造することができる。上記各成分を、例えば、バンバリーミキサー、2本ロール、ニーダミキサー、2軸押出機等の混練機に投入して、全成分が均一に混ざるように混練するとよい。混練中のゴム組成物の温度は120〜180℃位が好ましい。
【0035】
このゴム組成物を加硫してタイヤ、特にはトレッドを成形するには、2本ロール、2軸押出機等のミキサー中で、このゴム組成物にイオウ、不溶性イオウ、硫黄化合物等の加硫剤;酸化亜鉛、ステアリン酸等の加硫助剤;およびメルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)等のチアゾール系促進剤からなる加硫促進剤を必要に応じて配合する。配合中に昇温しすぎると加硫が始まるので、冷却しつつ配合することが好ましい。
ついで、加硫剤等を含有するゴム組成物を金型中で加熱成形する。金型成形等による1次加硫後に、必要に応じて2次加硫するとよい。
【0036】
成分(C)は、一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドからなり、ケイ素原子に結合したアルコキシ基の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基を含有しているため、成分(A)、成分(B)、成分(C)の混合あるいは成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)の混合の際に低級1価アルコールや低級アルカンジオールのような揮発性の大きな有機化合物が発生しない。そのためタイヤ用ゴム組成物調製時の作業環境性が良好である。
【0037】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を加硫することにより製造されるタイヤは、自動車用タイヤ、航空機用タイヤ、自転車用タイヤなどのいずれでもよいが、乗用車用タイヤ、トラック用タイヤ、レースカー用タイヤ、航空機用タイヤが好適である。
【実施例】
【0038】
以下に本発明の実施例および比較例を示す。実施例中、生成したジエチレングリコール溶液およびトリエチレングリコール溶液の29Si‐NMRは、JEOL JNM-EX400を用い、重クロロホルム中で、テトラメチルシランを内部標準として測定を行った。生成したジエチレングリコール溶液およびトリエチレングリコール溶液の13C‐NMRは、日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置JEOL JNM-EX400を用い、重クロロホルム中で、テトラメチルシランを内部標準として測定を行った。
ビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィド中のヒドロキシポリアルキレンオキシシリル基の存在は、29Si‐NMRおよび13C‐NMRチャート中のピークにより同定した。生成した溶液中のビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドの含有量は、使用した原料の比により算出した。含有量を示す%は重量%を意味する。
【0039】
[実施例1]
式:
【化1】

で示されるビス[トリ(ヒドロキシジエチレンオキシ)シリルプロピル]ジスルフィドの72%ジエチレングリコール溶液の調製;
撹拌機と温度計とコンデンサー付きのガラスフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド332.4g(0.70mol)、ジエチレングリコール668.6g(6.30mol)、およびソジウムエチラートの20%エタノール溶液2.38g(0.0070mol)を投入し、200mmHgに減圧しつつ、150℃で2時間撹拌した。2時間撹拌後、さらに減圧して生成したエタノールを留去して、上記溶液802.7g(収率99%)を得た。
【0040】
[実施例2]
式:
【化2】


で示されるビス[トリ(ヒドロキシジエチレンオキシ)シリルプロピル]テトラスルフィドの73%ジエチレングリコール溶液の調製;
撹拌機と温度計とコンデンサー付きのガラスフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド377.3g(0.70mol)、ジエチレングリコール668.4g(6.30mol)、ソジウムエチラートの20%エタノール溶液2.38g(0.0070mol)を投入し、200mmHgに減圧しつつ、150℃で2時間撹拌した。2時間撹拌後、さらに減圧して生成したエタノールを留去して、上記溶液852.2g(収率99%)を得た。
【0041】
[実施例3]
式:
【化3】


で示されるビス[トリ(ヒドロキシトリエチレンオキシ)シリルプロピル]ジスルフィドの71%トリエチレングリコール溶液の調製;
撹拌機と温度計とコンデンサー付きのガラスフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド47.5g(0.10mol)、トリエチレングリコール135.2g(0.90mol)、ソジウムエチラートの20%エタノール溶液0.34g(0.0010mol)を投入し、200mmHgに減圧しつつ、150℃で2時間撹拌した。2時間撹拌後、さらに減圧して生成したエタノールを留去して、上記溶液77.3g(収率99%)を得た。
【0042】
[実施例4、比較例1]
表1に示す成分からなる試験体A用ゴム組成物および試験体C用ゴム組成物を調製した。
【表1】

【0043】
各成分の詳細は下記表2のとおりである。
【表2】

【0044】
ゴム組成物調製時の混練条件は、下記のとおりである。
JIS K6299「ゴム試験用試料の作製方法」に準拠
混練条件(1段練り:密閉式混合機)
試験機:ラボプラストミル 100C100型
ロータ形状:B−600(バンバリー型,600cc)
ロータ回転数:50rpm
充填率:70%
設定温度:120℃
取り出し温度:150℃(最大)
練り時間:4分
(2段練り:練りロール機)
ロールサイズ:8”φ×18”
前ロール回転数:20rpm
前後ロール回転比:1:1.5
【0045】
上記ゴム組成物を下記条件で加硫した。
<加硫条件>
シート
試験体A:160℃×11分
試験体C:160℃×18分
ブロック
試験体A:160℃×16分
試験体C:160℃×23分
【0046】
上記試験体用ゴム組成物の特性および上記試験体用ゴム組成物を加硫して得たゴム(試験体Aと試験体C)の諸特性を下記条件で測定し、その結果を表3に示した。
<ゴム組成物とゴムの特性測定方法>
1.ムーニー粘度
JIS K6300「未加硫ゴム物性試験方法」に規定された方法に従って測定した。
測定温度:100℃
ダイ加硫試験A法
振幅±1°,振動数1.67Hz
2.伸び(%)
JIS K6251「加硫ゴムの引張試験方法」に規定された方法に従って測定した。
試験片形状:引張試験JIS 3号形
3.引裂き強度(N/mm)
JIS K6252「加硫ゴムの引裂試験方法」に規定された方法に従って測定した。
試験片形状:引裂試験 切込み無しアングル形(列理方向に直角)
4.硬さ(デュロメータ硬さ)
JIS K6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に規定された方法に従って測定した。
【0047】
5.磨耗容積(cm3
JIS K6264「加硫ゴムの磨耗試験方法」、アクロン磨耗試験A−2法に準拠して測定した。
荷重:44.1N(4.50kgf)
角度:10度
予備試験:500回
本試験:1000回
【0048】
6.tanδ
JIS K7244−4「プラスチック−動的機械特性の試験方法−第4部:引張振動−非共振法」に準拠して測定した。
測定項目:動的貯蔵弾性率 E’
:動的損失弾性率 E”
:損失正接 tanδ
試験片形状:1mm×5mm×30mm
測定モード:引張モード
測定周波数:10Hz
昇温速度:2℃/min
測定温度:0℃、60℃
動的ひずみ:0.1%
試験機:レオメトリックス社製 粘弾性測定装置 RSA−II
7.特性バランス
上記のtanδ(0℃)とtanδ(60℃)の比、(0℃/60℃)を示す。大きいほ
ど、タイヤバランス(ウェットスキッド性と低燃費性)が良い。
【0049】
上記試験体Aと試験体Cの測定結果を表3に示した。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドは、ゴム添加剤、特にはタイヤ用ゴム添加剤として有用である。
本発明の製造方法は、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドのアルコキシ基またはビス(環状アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド中の環状アルコキシ基の代わりにヒドロキシポリアルキレンオキシ基がケイ素原子に結合した新規なシリル基含有ポリスルフィドを簡易に収率よく製造するのに有用である。
本発明のタイヤ用ゴム添加剤は、タイヤ用ゴムの特性改良に有用である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、自動車用タイヤ、航空機用タイヤなどのタイヤの製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、実施例1で調製したジエチレングリコール溶液の29Si‐NMRのチャートである。
【図2】図2は、実施例1で調製したジエチレングリコール溶液の13C‐NMRのチャートである。
【図3】図3は、実施例2で調製したジエチレングリコール溶液の29Si‐NMRのチャートである。
【図4】図4は、実施例2で調製したジエチレングリコール溶液の13C‐NMRのチャートである。
【図5】図5は、実施例3で調製したトリエチレングリコール溶液の29Si‐NMRのチャートである。
【図6】図6は、実施例3で調製したトリエチレングリコール溶液の13C‐NMRのチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素原子数2〜4のアルキレン基、nは2または3、xは2〜8の整数である)で示されることを特徴とするビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィド。
【請求項2】
一般式(2):(RO)SiRSRSi(OR (2)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、xは2〜8の整数である)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと
一般式(3): H(OROH (3)
(式中、Rは炭素原子数2〜4のアルキレン基、nは2または3である)で示されるポリアルキレングリコールをアルカリ金属アルコラート存在下で加熱することにより、一般式(2)で示されるアルコキシシリル基含有ポリスルフィド中の一般式(4):-ORで示されるアルコキシ基を一般式(5):-O(RO)H (式中、RとRとnは前記どおりである)で示されるヒドロキシポリアルキレンオキシ基に置換することを特徴とする
一般式(1):[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1)
(式中、RとRとxとnは前記どおりである)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドの製造方法。
【請求項3】
請求項2の製造方法において、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィッド中のアルコキシ基の合計モル数を上回る一般式(3)で示されるモル数のポリアルキレングリコールを用いることを特徴とする、一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3)で示されるポリアルキレングリコールとの混合物の製造方法。
【請求項4】
一般式(1):[H(ORO]SiRSRSi[O(RO)H] (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3、xは2〜8の整数である)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドのみ、または一般式(1)で示されるビス[トリ(ヒドロキシポリアルキレンオキシ)シリルアルキル]ポリスルフィドと一般式(3) :
H(OROH (3)
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3である)で示されるポリアルキレングリコールとの混合物からなることを特徴とするタイヤ用ゴム添加剤。
【請求項5】
一般式(2):(RO)SiRSRSi(OR (2)
(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、xは2〜8の整数である)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィドと
一般式(3): H(OROH (3)
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2または3である)で示されるポリアルキレングリコール(ただし、一般式(2)で示されるビス[トリアルコキシシリルアルキル]ポリスルフィド中のアルコキシ基合計モル数を上回る一般式(3)で示されるモル数のポリアルキレングリコールを用いる)をアルカリ金属アルコラート存在下で加熱することにより、一般式(2)中の一般式(4):-ORで示されるアルコキシ基を一般式(5):-O(RO)H(式中、RとRとnは前記どおりである)で示されるヒドロキシポリアルキレンオキシ基に置換してなることを特徴とするタイヤ用ゴム添加剤。
【請求項6】
(A)有機系生ゴム:100重量部、
(B)シリカフィラー:5.0〜150重量部、および
(C)請求項4または請求項5記載のタイヤ用ゴム添加剤:成分(B)の0.1〜50重量%
からなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
(A)有機系生ゴム:100重量部、
(B)シリカフィラー:5.0〜150重量部、
(D)カーボンブラック:0.1〜80重量部、および
(C)請求項4または請求項5記載のタイヤ用ゴム添加剤:成分(B)と成分(D)合計量の0.1〜50重量%
からなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
有機系生ゴムがジエン系生ゴムであり、シリカフィラーが補強性シリカフィラーである請求項6または請求項7記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
ジエン系生ゴムが、スチレン/ブタジエン共重合体生ゴム、ポリブタジエン生ゴム、シス−ポリブタジエン生ゴム、スチレン/イソプレン共重合体生ゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエン共重合体生ゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体生ゴム、イソプレン生ゴム、天然生ゴムおよびこれらの混合物より成る群から選ばれ、補強性シリカフィラーが乾式法シリカまたは湿式法シリカである請求項8記載のタイヤ用ゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−184464(P2008−184464A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340821(P2007−340821)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【出願人】(500295461)ダウ コーニング コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】