説明

ビタミン製剤

【課題】ビタミンB1誘導体を安定化させ、変色及び含量低下を抑制したビタミン製剤を提供する。
【解決手段】ビタミン製剤はフルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドとを含む。アスコルビン酸2−グルコシドの割合は、総量100質量部中6〜90質量部であり、フルスルチアミン又はその塩1質量部に対して0.01〜20質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸類(ビタミンC類)とを含む製剤及びその製造方法、並びに製剤成分の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB1類であるフルスルチアミン塩酸塩はその優れた吸収性により、生物学的利用能の高いビタミンB1類として、数多くの医薬品、医薬部外品に配合されている。一方、ビタミンC類に属するアスコルビン酸類はビタミン補給効果、抗酸化効果、抗疲労回復効果、しみ・そばかす緩和効果などを有するビタミン類であり、アスコルビン酸類もまた数多くの医薬品、医薬部外品に配合されている。しかし、ビタミンB1類とビタミンC類は配合性が悪いことが知られており、その製剤においては、薬物の分解、製剤の変色を引き起こしやすく、その製剤化には工夫が必要である。
【0003】
例えば、特開昭61−257923号公報(特許文献1)には、ビタミンB1塩もしくはビタミンB1誘導体とシクロデキストリンとを含有する顆粒とビタミンCとを含有する固形状医薬組成物が開示され、ビタミンB1及びビタミンCを安定化でき着色変化も減少できることが記載されている。この特許文献1には、ビタミンCの量がビタミンB1の約1〜50倍量であり、ビタミンB1は全量に対して約0.1〜50重量%であることが記載され、実施例では、スルフルチアミン5mg及びL−アスコルビン酸(ビタミンC)100mgを含む錠剤(全量500mg)などの処方が記載されている。
【0004】
特開2001−10955号公報(特許文献2)には、アスコルビン酸、ビタミンB1及びビオチンから選択された少なくとも一種とスクラロースとを含む内服液剤組成物が開示されている。
【0005】
近年、アスコルビン酸類として、アスコルビン酸2−グルコシド(AA2G)が開発された。アスコルビン酸2−グルコシドはアスコルビン酸の不安定要因である2位の水酸基がグルコースで修飾された分子構造を有しているため、安定性が極めて高いことが知られている。また、アスコルビン酸2−グルコシドは小腸、腎臓など生体内の各組織に存在するα−グルコシダーゼにより加水分解されてアスコルビン酸を遊離し、生体内でビタミンCとしての生理作用を発揮することも明らかとなっている(三皷仁志, 新規指定添加物L-アスコルビン酸2−グルコシドの特性と用途, FFIジャーナル, 211, 435-444(2006))。
【0006】
アスコルビン酸2−グルコシドの利用方法として、特開2007−63177号公報(特許文献3)には、ヒアルロン酸とL−アスコルビン酸に換算したときのL−アスコルビン酸類(L−アスコルビン酸2−グルコシドなど)との配合割合が、質量比で1:4乃至4:1である美肌用の経口摂取用組成物が開示され、この組成物は、さらに、コンドロイチン硫酸及び/又はグルコサミンを含有してもよいことも記載されている。また、経口摂取用組成物は、ビタミンB1、ビタミンB2などを含んでもよいことも記載され、実施例では、L−アスコルビン酸2−グルコシド50質量部及びチアミン0.01質量部を含む経口摂取用組成物(総量約980質量部)が記載されている。
【0007】
特開2006−320223号公報(特許文献4)には、チアミン類、及びビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを含有するビタミンC強化チアミン類含有食品が開示され、ビタミンC強化チアミン類含有組成物に配合するビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用い、ビタミンC強化チアミン類含有組成物の熱及び/又は光に起因する異臭発生を抑制する方法も開示されている。この文献には、チアミン類としては、チアミンの他、フルスルチアミン、オクトチアミンなども記載され、食品に限らず、ビタミンC強化チアミン類含有経口組成物(ビタミンC強化チアミン類含有医薬品など)を調製することができ、この場合のアスコルビン酸グルコシドの配合割合は、組成物(医薬品など)100重量%あたり0.001〜5重量%であることも記載されている。さらに、実施例では、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩を用いた例が記載されている。
【0008】
米国特許出願公報US 2004/0156923 A1(特許文献5)には、オイルケーキ成分と、グルコサミン成分と、酸成分と、ミネラル成分と、ビタミン成分と、機能性食品成分とを含む栄養補助食品組成物が開示され、酸成分としてアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸グルコジトなどが記載され、ビタミン成分としてチアミンが記載されている。この文献には、アスコルビン酸ナトリウム100g、チアミン塩酸(87.4%)11.362gを含む組成物(全量880g)なども記載されている。
【0009】
WO 2006/022174 A1(特許文献6)には、アスコルビン酸2−グルコシドを有効成分とする褐変抑制剤とこれを利用した褐変抑制方法が開示されている。この文献には、褐変抑制剤として、組成物100質量部に対してアルコルビン酸2−グルコシドをアスコルビン酸に換算して約0.0001質量部以上、望ましくは約0.001〜10質量部、さらに望ましくは約0.04〜5質量部配合したものが好適であり、組成物100質量部に対して10質量部以上配合しても、褐変抑制効果に差異はないとされている。また、ビタミンEなどの抗酸化作用の強い成分を併用してもよいことも記載されている。
【0010】
しかし、フルスルチアミン塩酸塩の安定化について具体的には記載されていない。また、ビタミンC類(アスコルビン酸2−グルコシドなど)との併用によりビタミンB1類の種類によっては、長期間に亘る保存により、形態変化を生じ、粉末状の形態がアメ状に溶融固化した形態となり、形態安定性を損なう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−257923号公報(特許請求の範囲、第3頁右下欄、実施例)
【特許文献2】特開2001−10955号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2007−63177号公報(特許請求の範囲、段落[0017]及び実施例)
【特許文献4】特開2006−320223号公報(特許請求の範囲、段落[0019][0025]、実施例)
【特許文献5】US 2004/0156923 A1(特許請求の範囲、段落[0068][0091])
【特許文献6】WO 2006/022174 A1(特許請求の範囲、段落[0009][0011])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ビタミンB1類とビタミンC類とを含み、ビタミンB1類及びビタミンC類が安定化したビタミン製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、変色及び含量低下を抑制できるビタミン製剤、およびビタミンB1類を安定化する方法を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、ビタミンB1類とビタミンC類とを併用しても形態変化を防止できる組成物(又はビタミン製剤)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、ビタミンB1類とビタミンC類とを含む製剤の安定化において、ビタミンB1類としてのフルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸類(ビタミンC類)としてのアスコルビン酸2−グルコシドとを用いると、フルスルチアミン又はその塩が安定化し、製剤の変色及び含量低下を防止できること、特に、前記特許文献(特許文献6など)に開示の範囲とは異なる含有量でアスコルビン酸2−グルコシドを用いると、褐変及び含量低下を著しく抑制できること、フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドとを組み合わせて併用すると、長期間に亘り保存しても、これらの各成分の形態変化を防止でき、粒子状、粉末状などの形態を保持でき安定化することを見いだし、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明のビタミン製剤は、フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドとを含む。アスコルビン酸2−グルコシドの含有量は、製剤の総量100質量部中に6〜90質量部程度であってもよい。また、フルスルチアミン又はその塩1質量部に対するアスコルビン酸2−グルコシドの割合は、0.01〜20質量部程度であってもよい。より具体的には、ビタミン製剤は、総量100質量部中にアスコルビン酸2−グルコシド8〜85質量部を含み、フルスルチアミン又はその塩1質量部に対してアスコルビン酸2−グルコシド0.1〜10質量部を含んでいてもよい。
【0017】
本発明は、製剤に、フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドとを含有させ、ビタミン製剤を製造する方法、およびフルスルチアミン又はその塩を含む製剤にアスコルビン酸2−グルコシドを含有させ、フルスルチアミン又はその塩を安定化させる方法も包含する。
【0018】
本発明では、フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドのうち、少なくとも1つの成分を造粒することなく、製剤中に、フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドとが接触する形態(例えば、粉末状混合物の形態)で含有されていても、フルスルチアミン又はその塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)を安定化でき、各成分を粒子状又は粉末状の形態で維持できる。さらに、本発明の製剤は、ヒアルロン酸、スクラロース、グルコサミンを含まなくてもよく、コンドロイチン硫酸は必ずしも必要ではない。本発明の製剤はこのような成分を含まなくても高い安定性を示す。
【0019】
本発明は、フルスルチアミン又はその塩に限らず、他のジスルフィド型ビタミンB1誘導体にも適用できる。
【0020】
なお、本明細書において、「製剤」とは、専らヒトの疾患の予防及び/又は治療に用いる「医薬組成物」に限らず、広く栄養補助食品(サプリメントなど)などの用途にも適用できる組成物を意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体であるフルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドとを含むため、ビタミンB1誘導体及びビタミンC類が安定化したビタミン製剤を得ることができる。また、製剤の変色(褐変など)を抑制できると共に、フルスルチアミン又はその塩及びアスコルビン酸2−グルコシドの含量低下を抑制でき、フルスルチアミン又はその塩を安定化できる。しかも、長期間に亘り保存しても、フルスルチアミン又はその塩及びアスコルビン酸2−グルコシドが塊状に固まることがなく、粒子状、粉末状などの形態を保持できる。そのため、保存安定性(又は保管性)、取り扱い性、及び製剤の生産効率を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のビタミン製剤(配合剤)は、ビタミンB1類としてフルスルチアミン又はその塩を含み、アスコルビン酸類(ビタミンC類)としてアスコルビン酸2−グルコシドを含む。
【0023】
フルスルチアミンの塩としては、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、有機酸塩(例えば、酢酸塩、クエン酸塩など)などが例示できる。これらのフルスルチアミン又はその塩は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのフルスルチアミン又はその塩のうち、フルスルチアミン塩酸塩などが好ましく使用される。フルスルチアミン又はその塩は、基−S−S−R(Rは2−(オキソラン−2−イル)エチル基を示す)を有するジスルフィド型ビタミンB1誘導体に属し、ジスルフィド結合を有するため、他の成分と共存すると不安定化し易く、変色(褐変など)や含量低下を招きやすい。
【0024】
アスコルビン酸2−グルコシドは、アスコルビン酸の2位のヒドロキシル基がグルコースで修飾された化合物であり、加水分解によりアスコルビン酸を遊離し、生体内でビタミンCとしての生理活性を示す。アスコルビン酸類と配合すると不安定化するフルスルチアミン又はその塩であっても、アスコルビン酸2−グルコシド類と組み合わせることによりフルスルチアミン又はその塩を安定化できる。また、フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシド類とを併用すると、これらの成分のうち少なくとも一方の成分、特に双方の成分の形態を長期間に亘り安定して維持できる。すなわち、比較例に記載のように、ビタミンB1誘導体であるビスイブチアミン(粉末状)とアスコルビン酸2−グルコシド類(粉末状)とを併用し、両者の粉末混合物を保存(例えば、室温、特に加温下で保存)すると、粉末状ビスイブチアミンと粉末状アスコルビン酸2−グルコシド類とが褐色に変色するとともに、融着してアメ状の1つの塊となり、取り扱い性を大きく低下させる。このような現象は、ビスイブチアミンとアスコルビン酸2−グルコシド類とを含む製剤においても生じる。これに対して、本発明では、粉末状フルスルチアミン又はその塩と粉末状アスコルビン酸2−グルコシド類とを混合して混合物の形態(又は両成分が接触した状態)で保存(例えば、室温、特に加温下で保存)しても、着色又は変色することがないだけでなく、粉末状の形態を長期間に亘り維持でき、形態変化を生じることがない。そのため、フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシド類とを粉末混合物の形態で安定に保存でき、保存性、取り扱い性及び製剤の生産性を向上できる。
【0025】
アスコルビン酸2−グルコシドの含有量は、製剤の総量100質量部中、6〜90質量部(例えば、8〜85質量部)、好ましくは10〜85質量部(例えば、20〜85質量部)、さらに好ましくは25〜85質量部(例えば、30〜80質量部)程度である。アスコルビン酸2−グルコシドの含有量は、製剤の総量100質量部中、20〜75質量部(例えば、25〜70質量部)、特に25〜65質量部(例えば、30〜60質量部)程度である場合が多い。
【0026】
前記フルスルチアミン又はその塩に対するアスコルビン酸2−グルコシドの割合は、フルスルチアミン又はその塩1質量部に対して0.01〜20質量部程度の範囲から選択でき、0.1〜15質量部(例えば、0.3〜12質量部)、好ましくは0.5〜10質量部(例えば、0.7〜8質量部)、さらに好ましくは1〜7質量部(例えば、2〜7質量部)程度である。アスコルビン酸2−グルコシドの割合は、フルスルチアミン又はその塩1質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部(例えば、0.5〜5質量部)、さらに好ましくは1〜5質量部(例えば、2〜5質量部)、特に2.5〜4.5質量部程度であってもよい。
【0027】
フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシド(アスコルビン酸換算)との総量は、製剤全体に対して6〜93重量%程度の範囲から選択でき、通常、10〜80重量%、好ましくは15〜60重量%程度であってもよい。
【0028】
本発明では、フルスルチアミン又はその塩に代えて、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体にも適用できる。すなわち、本発明の製剤は、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体とアスコルビン酸2−グルコシドとを含むビタミン製剤であってもよい。
【0029】
ジスルフィド型ビタミンB1誘導体としては、プロスルチアミン、オクトチアミン、ビスベンチアミン、チアミンジスルフィドなどが挙げられる。これらのビタミンB1誘導体は塩(塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩などの無機酸塩、酢酸塩などの有機酸塩)の形態であってもよい。これらのビタミンB1誘導体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのビタミンB1誘導体のうち、プロスルチアミン、オクトチアミン、ビスベンチアミン又はそれらの塩が好ましく使用される。特に、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体のうち、基−S−S−R(Rはプロピル基などのアルキル基、又は置換基を有するアルキル基((3−アセチルチオキシ−3−(4−メトキシカルボニルブチル)プロピル基など)を示す)を有するビタミンB1誘導体、例えば、プロスルチアミン、オクトチアミンが好ましく使用される。ジスルフィド型ビタミンB1誘導体、なかでも前記基−S−S−Rを有するジスルフィド型ビタミンB1誘導体は、前記フルスルチアミン又はその塩と同様に、ジスルフィド結合を有するため、他の成分と共存すると不安定化し易く、変色(褐変など)や含量低下を招きやすい。
【0030】
不安定な前記ジスルフィド型ビタミンB1誘導体であっても、アスコルビン酸2−グルコシドと組み合わせて併用することにより、ビタミンB1誘導体を安定化できる。また、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体とアスコルビン酸2−グルコシドとを併用することにより、加温して保存しても、長期間に亘り各成分の形態の安定化も期待できる。
【0031】
フルスルチアミン又はその塩と前記ジスルフィド型ビタミンB1誘導体とを併用する場合、両者の割合(質量比)は、例えば、前者/後者=1/0.01〜1/10、好ましくは1/0.05〜1/5、さらに好ましくは1/0.1〜1/1程度であってもよい。
【0032】
ジスルフィド型ビタミンB1誘導体1質量部に対するアスコルビン酸2−グルコシドの割合は、前記フルスルチアミン又はその塩に対する割合と同様であってもよい。すなわち、前記ジスルフィド型ビタミンB1誘導体に対するアスコルビン酸2−グルコシドの割合は、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体1質量部に対して0.01〜20質量部程度の範囲から選択でき、0.1〜15質量部(例えば、0.3〜12質量部)、好ましくは0.5〜10質量部(例えば、0.7〜8質量部)、さらに好ましくは1〜7質量部(例えば、2〜7質量部)程度である。アスコルビン酸2−グルコシドの割合は、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体1質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部(例えば、0.5〜5質量部)、さらに好ましくは1〜5質量部(例えば、2〜5質量部)、特に2.5〜4.5質量部程度であってもよい。
【0033】
ビタミンB1誘導体とジスルフィド型ビタミンB1誘導体とアスコルビン酸2−グルコシド(アスコルビン酸換算)との総量も、製剤全体に対して6〜93重量%程度の範囲から選択でき、通常、10〜80重量%、好ましくは15〜60重量%程度であってもよい。
【0034】
なお、本発明のビタミン製剤において、ビタミンB1誘導体をシクロデキストリンなどで予め造粒又は顆粒とする必要はなく、ビタミンB1誘導体とアスコルビン酸2−グルコシドとを製剤中に含有させても、ビタミンB1誘導体を有効に安定化できる。また、還元性の小さなビタミンB1誘導体であっても、ビタミンB1誘導体を有効に安定化できる。すなわち、フルスルチアミン又はその塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)とアスコルビン酸2−グルコシドのうち、少なくとも1つの成分を造粒することなく、製剤中に、フルスルチアミン又はその塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)とアスコルビン酸2−グルコシドとが接触する形態(例えば、担体成分を含んでいてもよく、これらの成分の粉末状混合物の形態)で含有されていても、フルスルチアミン又はその塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)を安定化できる。そのため、結合剤、賦形剤などを用いて、フルスルチアミン又はその塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)とアスコルビン酸2−グルコシドとの粉末混合物を造粒しても、安定な固形製剤を得ることができる。従って、本発明は、フルスルチアミン又はその塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)とアスコルビン酸2−グルコシドとを粒子状又は粉末状の形態で維持し、形態変化を防止する組成物及び防止方法をも包含する。
【0035】
本発明の製剤は、フルスルチアミン又はその塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)及びアスコルビン酸2−グルコシドに加えて、他の生理活性又は薬理活性成分、例えば、ビタミン類、解熱鎮痛薬、抗炎症薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬又は気管支拡張薬、抗アレルギー薬、副交感神経遮断薬、交感神経興奮薬又はα受容体刺激薬、消炎薬又は消炎酵素薬、中枢神経興奮薬、胃腸薬(制酸薬又は粘膜保護薬、健胃薬、消化薬を含む)、止瀉薬、生薬、アミノ酸類、ミネラル類などを含んでいてもよい。また、本発明の製剤は、γ−オリザノール、オロチン酸、ヨクイニン、グルクロン酸類(グルクロン酸、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミドなど)、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどを含んでいてもよい。これらの成分は単独で又は組み合わせて使用できる。
【0036】
ビタミン類は、水溶性ビタミン類又は脂溶性ビタミン類のいずれであってもよい。ビタミン類としては、ビタミンB1類(塩酸チアミン、硝酸チアミン、塩酸ジセチアミン、シコチアミン、ベンフォチアミン、ビスイブチアミンなど)、ビタミンB2類(リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムなどのリボフラビン類など)、ビタミンB6類(ピリドキシン、ピリドキサールなどのピリドキシン類又はその塩(塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサールなど))、ニコチン酸類(ニコチン酸、ニコチン酸アミドなど)、ビタミンB12類(メコバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミンなどのコバラミン類又はその塩(塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミンなど))、葉酸、パントテン酸類(パンテノール、パントテン酸又はその塩(パントテン酸カルシウム、パントテン酸カルシウムタイプSなど))、ビタミンC類(アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなど)、ビタミンA類(酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ビタミンA油、肝油、強肝油など)、ビタミンD類(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなど)、ビタミンE類(d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、酢酸d−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロールなど)、ビオチン、ビタミンK、ビタミンP(ヘスペリジンなど)などが挙げられる。これらのビタミン類も単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、複合ビタミン剤を形成してもよい。
【0037】
解熱鎮痛薬として、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、サリチルアミド、サリチル酸メチル、サリチル酸ナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、アンフェナクナトリウム、インドメタシンファルネシル、メフェナム酸、フルフェナム酸、ピロキシカムなどが挙げられる。
【0038】
鎮咳去痰薬として、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、塩酸メチルエフェドリン、ノスカピン、塩酸メチルシステイン、塩酸エチルシステイン、カルボシステインなどが挙げられる。
【0039】
抗喘息薬又は気管支拡張薬には、例えば、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、エフェドリン、塩酸エフェドリン、エピネフリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、硫酸サルブタモール、塩酸プロカテロール、塩酸イソプレナリン、硫酸イソプロテレノール、塩酸メトキシフェナミン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、フマル酸フォルモテロール、塩酸ツブロブテロール、臭化水素酸フェノテロール、塩酸プロカテロール、塩酸プルブテロール、塩酸クレンブテロール、塩酸マブテロールコリンテオフィリン、プロキシフィリンなどが含まれる。
【0040】
抗アレルギー薬としては、例えば、フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、フマル酸エメダスチン、塩酸エピナスチン、エバスチン、塩酸ジフェンヒドラミン、フマル酸クレマスチン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、プランルカスト水和物、ザフィルルカスト、モンテルカストカルシウム、トシル酸スプラタスト、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、レピリナスト、イブジラスト、タザノラスト、ペミロラストカリウムなどが例示できる。
【0041】
副交感神経遮断薬としては、例えば、天然アルカロイド類(例えば、ベラドンナ総アルカロイド、ベラドンナエキス、アトロピン、スコポラミン、ロートエキス、ダツラエキスなど)、天然アルカロイド誘導体、ヨウ化イソプロパミド、臭化メチルベナクチジウム、臭化プロパンテリンなどが例示できる。
【0042】
交感神経興奮薬又はα受容体刺激薬としては、例えば、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸エフェドリン、ノルエピネフリン、硝酸ナファゾリン、ジャイロメタゾリン、ミドドリン、メトキサミン、塩酸テトラヒドロゾリンなどが例示できる。
【0043】
消炎薬又は消炎酵素薬としては、例えば、塩化リゾチーム、セラペプターゼ、トラネキサム酸、アズレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0044】
中枢神経興奮薬としては、例えば、カフェイン類又はキサンチン類(例えば、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェインサイレート、カフェイン(1水和物)など)などが例示できる。
【0045】
胃腸薬として、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、アミノ酢酸、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、ロートエキス、アロエ、ウイキョウ、ウコン、オウバク、オウレン、加工大蒜、コウジン、コウボク、ショウキョウ、センブリ、ケイヒ、ダイオウ、チクセツニンジン、チンピ、トウヒ、ニガキ、ニンジン、ハッカ、ホップ、ウイキョウ油、ケイヒ油、ショウキョウ油、トウヒ油、ハッカ油、レモン油、L−メントール、塩酸ベタイン、塩化カルニチン、乾燥酵母、でんぷん消化酵素、たん白消化酵素、脂肪消化酵素、繊維素消化酵素、ウルソデスオキシコール酸、胆汁末などが例示できる。
【0046】
止瀉薬としては、アクリノール、塩化ベルべリン、グアヤコール、クレオソート、次サリチル酸ビスマス、次硝酸ビスマス、次炭酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、タンニン酸、カオリン、ペクチン、薬用炭、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、塩酸パパベリン、アミノ安息香酸エチル、アズレンスルホン酸ナトリウム、アルジオキサ、L−グルタミン、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、メチルメチオニンスルホニウムクロライド、ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0047】
生薬としては、アカメガシワ、アセンヤク、アセンヤク末、アマチャ、アマチャ末、アロエ、アロエ末、アンソッコウ、イレイセン、インチンコウ、インヨウカク、ウイキョウ、ウイキョウ末、ウコン、ウヤク、ウワウルシ、エイジツ、エイジツ末、エンゴサク、オウギ、オウゴン、オウゴン末、オウセイ、オウバク、オウバク末、オウレン、オウレン末、オンジ、オンジ末、カゴソウ、カシュウ、ガジュツ、カッコン、カノコソウ、カノコソウ末、カロコン、カンキョウ、カンゾウ、カンゾウ末、カンテン、カンテン末、キキョウ、キキョウ末、キクカ、キササゲ、キジツ、キョウカツ、キョウニン、クコシ、クジン、クジン末、ケイガイ、ケイヒ、ケイヒ末、ケツメイシ、ケンゴシ、ゲンチアナ、ゲンチアナ末、ゲンノショウコウ、ゲンノショウコウ末、コウカ、コウジン、コウブシ、コウブシ末、コウボク、コウボク末、ゴオウ、ゴシツ、ゴシュユ、ゴボウシ、ゴミン、コメデンプン、コロンボ、コロンボ末、コンズランゴ、サイコ、サイシン、サフラン、サンキライ、サンキライ末、サンシシ、サンシシ末、サンシュユ、サンショウ、サンショウ末、サンソウニン、サンヤク、サンヤク末、ジオウ、シゴカ、ジコッピ、シコン、シツリシ、シャクヤク、シャクヤク末、ジャショウシ、シャゼンシ、シャゼンソウ、ジュウヤク、シュクシャ、シュクシャ末、ショウキョウ、ショウキョウ末、ショウズク、ショウマ、シンイ、セッコウ、セネガ、セネガ末、センキュウ、センキュウ末、センコツ、センソ、センナ、センナ末、センブリ、センブリ末、ソウジュツ、ソウジュツ末、ソウハクヒ、ソボク、ソヨウ、ダイオウ、ダイオウ末、ダイソウ、タクシャ、タクシャ末、チクセツニンジン、チクセツニンンジン末、チモ、チョウジ、チョウジ末、チョウトウコウ、チョレイ、チョレイ末、チンピ、テンマ、テンモンドウ、トウガシ、トウガラシ、トウガラシ末、トウキ、トウキ末、トウニン、トウニン末、トウヒ、トコン、トコン末、トチュウ、トラガント、トランガント末、ニガキ、ニガキ末、ニンジン、ニンジン末、ニンドウ、バイモ、バクモンドウ、ハチミツ、ハッカ、ハマボウフウ、ハンゲ、ビャクシ、ビャクジュツ、ビャクジュツ末、ビワヨウ、ビンロウジ、ブクリョウ、ブクリョウ末、ブシ、ブシ末、ベラドンナコン、ヘンズ、ボウイ、ボウコン、ボウフウ、ボタンピ、ボタンピ末、ホミカ、ボレイ、ボレイ末、マオウ、マクリ、マシニン、モクツウ、モッコウ、ヤクチ、ユウタン、ヨクイニン、ヨクイニン末、リュウコツ、リュウタン、リュウタン末、リョウキョウ、レンギョウ、レンニク、ロジン、ロートコンなどが挙げられる。
【0048】
アミノ酸類としては、L−システイン、アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロシン、タウリンなどが挙げられる。
【0049】
本発明では、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体を含む製剤にアスコルビン酸2−グルコシドを含有させることにより、ジスルフィド型ビタミンB1誘導体を安定化させることができ、製剤の変色及び活性成分(ジスルフィド型ビタミンB1誘導体など)の含量低下を有効に防止できる。
【0050】
本発明の製剤は、製剤の形態に応じて慣用の方法により、フルスルチアミン又その塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)とアスコルビン酸2−グルコシドとを含有させることにより製造できる。本発明の製剤は、種々の形態、例えば、固形剤(散剤、細粒又は顆粒剤、丸剤、錠剤(素錠又は裸錠)、カプセル剤、フィルムコーティング錠(糖衣錠)などのフィルムコーティング剤など)、半固形剤(クリーム剤、ゼリー剤、軟膏剤、ゲル剤、ゲルクリーム剤、グミ剤など)及び液剤(液剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、内服液剤(いわゆるドリンク剤)など)の形態であってもよい。また、製剤は、用事溶解型のドライシロップ剤、発泡剤などであってもよい。錠剤としては、素錠、フィルム錠、糖衣錠、薄層糖衣錠、シュガーレス薄層糖衣錠、口腔内速崩壊錠、チュアブル錠、チョコレート剤などが挙げられる。また、錠剤は、二層錠、三層錠、有核錠などであってもよく、顆粒剤又は細粒剤含有の錠剤などであってもよい。カプセル剤としては、硬カプセル剤、軟カプセル剤などが挙げられる。さらに、本発明の製剤は、経口投与製剤(内用剤など)であってもよく、非経口投与製剤(貼付剤などの外用剤など)であってもよい。本発明のビタミン製剤は経口投与の固形製剤である場合が多い。
【0051】
本発明の製剤は、製剤の形態に応じて種々の担体成分又は添加剤を利用できる。固形製剤において、担体成分又は添加剤としては、賦形剤、結合剤及び崩壊剤のうち少なくとも一種を使用する場合が多い。
【0052】
賦形剤としては、例えば、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトールなどの糖アルコール、精製白糖、白糖、トレハロース、乳糖、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、ブドウ糖、麦芽糖などの糖類、コーンスターチ、結晶セルロース、粉末セルロース、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素などが挙げられる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム末、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポビドン(PVP)、ビニルピロリドン共重合体(コポリビドン)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル酸系高分子、プルラン、デキストリン、アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、トラガント末、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)などが挙げられる。崩壊剤としては、例えば、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、コーンスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化デンプンなどが挙げられる。
【0053】
製剤において、さらに他の添加剤、例えば、滑沢剤、流動化剤、着色剤、pH調節剤、甘味剤、香料、防腐剤などを使用してもよい。他の担体成分又は添加剤としては、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、マクロゴール6000など)、流動化剤(例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、カオリンなど)、抗酸化剤(例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、クエン酸など)、保存剤(パラオキシ安息香酸エステル類など)、着色剤(例えば、リボフラビン、ビタミンB12、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色1号、食用青色2号、銅クロロフィルナトリウム、銅クロロフィルなど)、pH調節剤(例えば、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸カルシウム、リン酸、リン酸二カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、甘味剤(例えば、ショ糖、マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸ジカリウム、アセスルファームK、スクラロースなど)、香料(例えば、L−メントール、ハッカ油、ユーカリ油、オレンジ油、チョウジ油、テレビン油、ウイキョウ油、バニリンなど)、界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンなど)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類、ショ糖脂肪酸エステルなど)、可塑剤(クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチン、セタノールなど)、矯味剤又は着香剤(メントールなど)、吸着剤、防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0054】
固形剤は必要に応じて、HPC、HPMC、ポビドンなどの水溶性基剤(又は高分子)、エチルセルロースなどの不溶性基剤(又は高分子)、腸溶性基剤、胃溶性基剤、糖類などでコーティングしてもよい。
【0055】
固形剤は慣用の方法で製造できる。前記活性成分と担体成分とを混合して粉剤を調製してもよく、通常、活性成分と担体成分とを造粒し、必要により造粒物を整粒して粒剤(細粒剤又は顆粒剤)を調製するか、又は造粒物を含む混合物(特に、造粒物と担体成分との混合物)を打錠することにより裸錠を調製できる。カプセル剤は前記粒剤をカプセルに充填することにより調製できる。
【0056】
造粒は、慣用の方法、例えば、撹拌造粒法、流動層造粒法、押出造粒法、乾式造粒法などで行うことができる。好ましい造粒法は流動層造粒法である。造粒においては、活性成分と担体成分とを、結合剤を含む溶液を用いて造粒する場合が多く、例えば、活性成分と担体成分との流動層に結合剤を含む溶液を噴霧することにより造粒できる。コーティング製剤は、フィルムコーティング機を用いて、コーティング基剤を含有するコーティング剤を未コーティング製剤(素顆粒、素錠など)に噴霧することにより得ることができる。
【0057】
液剤において、担体成分としては、水性媒体(精製水、エタノール含有精製水など)、アルコール類(エタノール、グリセリンなど)、水溶性高分子などが利用できる。担体成分としては、精製水、エタノール含有精製水などを用いる場合が多い。半固形製剤の担体成分としては、油性基剤(植物油などの脂質、ワセリン、流動パラフィンなど)、親水性基剤(乳剤性基剤)などが利用できる。また、添加剤としては、崩壊助剤、抗酸化剤又は酸化防止剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、溶解補助剤、増粘剤、pH調整剤又は緩衝剤、防腐剤又は保存剤(パラベン類など)、殺菌剤又は抗菌剤、帯電防止剤、矯味剤又はマスキング剤(例えば、甘味剤など)、清涼化剤、着色剤、矯臭剤又は香料などが挙げられる。
【0058】
液剤は、各成分を担体成分に溶解又は分散させ、必要により濾過又は滅菌処理し、所定の容器に充填することにより調製できる。半固形製剤も慣用の方法、例えば、各成分と担体成分とを混合し、必要により滅菌処理し、所定の容器に充填したり、基材に塗布することにより調製できる。
【0059】
なお、本発明の製剤は、ヒアルロン酸、スクラロース、グルコサミンなどを含んでいてもよいが、ヒアルロン酸、スクラロース、グルコサミンを含まない場合が多い。また、コンドロイチン硫酸を含んでいてもよいが、本発明では必ずしも必要ではない。本発明の製剤はこのような成分を含まなくても高い安定性を示す。
【0060】
本発明の製剤は、哺乳類に適用でき、ヒトに投与するのに適している。本発明の製剤の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与経路などに応じて選択でき、フルスルチアミン又はその塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)の単位投与量は、例えば、1〜300mg(例えば、10〜250mg)、好ましくは50〜200mg、さらに好ましくは75〜150mg程度であってもよい。また、アスコルビン酸2−グルコシドの単位投与量は、アスコルビン酸換算で、例えば、10〜1000mg(例えば、25〜750mg)、好ましくは50〜600mg、さらに好ましくは100〜500mg程度であってもよい。
【0061】
フルスルチアミン又はその塩(又はジスルフィド型ビタミンB1誘導体)及びアスコルビン酸2−グルコシド(アスコルビン酸換算)の投与量は、1日あたり、20〜1500mg、好ましくは50〜1000mg(例えば、75〜750mg)、さらに好ましくは100〜750mg(例えば、150〜600mg)程度であってもよい。
【0062】
本発明の製剤は、1日当たり1回又は複数回(例えば、2〜6回)に分けて投与できる。
【実施例】
【0063】
以下に、試験例及び実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0064】
[試験例1〜4]
ビタミンC類としてのアスコルビン酸2−グルコシド(AA2G)又はアスコルビン酸(AsA)と、ビタミンB1類としてのフルスルチアミン塩酸塩(TTFD-HCL)とを、表1に示す量的割合で秤量し、乳鉢にて乾式混合し、散剤を得た。
【0065】
外観安定性
試験例1〜4の散剤をガラス瓶に収容し、40℃75%RHでガラス瓶開栓状態で2週間保存し、保存後の外観変化をカラーコンピュター(S&Mカラーコンピュター、スガ試験機)により測定し、色差(ΔE)で評価した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
VC類の割合1:組成物100質量部に対するVC類の割合
VC類の割合2:TTFD−HCL 1質量部に対するVC類の割合
VC類:ビタミンC類
AA2G:アスコルビン酸2−グルコシド
AsA:アスコルビン酸
ΔE(AA2G):AA2Gを含む散剤の色差ΔE値
ΔE(AsA):AsAを含む散剤の色差ΔE値
表1から明らかなように、VC類としてアスコルビン酸を配合すると、そのΔEは10以上であり、変色が著しいのに対して、VC類としてアスコルビン酸2−グルコシドを配合すると、そのΔEは4以下であり、変色がほとんどなく、変色を著しく抑制できる。なお、試験例1において、AA2G 100mgに代えて、AA2G 10(mg)ではΔE(AA2G)1.4であり、AA2G 50(mg)ではΔE(AA2G)1.9であり、AA2G 20000(mg)ではΔE(AA2G)2.0であり、VC類としてアスコルビン酸の代わりにアスコルビン酸2−グルコシドを配合することで、変色を著しく抑制できる。これらの結果から、組成物全体100質量部に対してAA2Gの割合が6〜90質量部、TTFD−HCL 1質量部に対してAA2Gの割合が0.1〜15質量部(例えば、0.1〜5質量部)において、変色を著しく抑制できる。
【0068】
[試験例5]
ビタミンC類としてのアスコルビン酸2−グルコシド(AA2G)又はアスコルビン酸(AsA)と、ビタミンB1類としての硝酸チアミン(VB1)とを表2に示す量的割合で秤量し、乳鉢にて乾式混合し、散剤を得た。そして、試験例1〜4と同様に外観安定性を評価した。
【0069】
【表2】

【0070】
表2から明らかなように、ビタミンB1類として硝酸チアミンを用い、VC類としてAsAを配合すると、そのΔEは21.6であり、変色が著しく、VC類としてAA2Gを配合しても、そのΔEは15.5で、変色を著しく抑制することはできない。
【0071】
[試験例6]
ビタミンC類としてアスコルビン酸2−グルコシド(AA2G)又はアスコルビン酸(AsA)と、ビタミンB1類中のジスルフィド型ビタミンB1誘導体であるビスイブチアミン(Bis)とを表3に示す量的割合で秤量し、乳鉢にて乾式混合し、散剤を得た。そして、試験例1〜5と同様に外観安定性を評価した。
【0072】
【表3】

【0073】
ΔE(AA2G):括弧( )内は保存後の形態を示す
ΔE(AsA):括弧( )内は保存後の形態を示す
表3から明らかなように、ビタミンB1類としてビスイブチアミンを用い、VC類としてAsAを配合すると、そのΔEは60.4であり、変色が極めて著しく、VC類としてAA2Gを配合しても、そのΔEは43.8で、変色を著しく抑制することはできない。さらには、試験例6では、40℃75%RHで開栓して2週間保存すると、いずれもペースト状となり、試験例1〜5では起きなかった形態変化を起こした。なお、ビスイブチアミンのみを40℃75%RHで開栓して2週間保存しても、形態変化は起こさず(白色粉末)、ΔEは1.2であった。
【0074】
[試験例7]
製剤例1(錠剤)
アスコルビン酸2−グルコシド 250g、フルスルチアミン塩酸塩 54.6g、結晶セルロース(セオラスPH101、旭化成)110.6gを流動層造粒機(LAB−1、パウレック)にて、6%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)水溶液240gを噴霧することにより、造粒し、乾燥後、整粒機(パワーミル、スクリーン径1.5mm)にて整粒した。得られた整粒末343.7gに結晶セルロース(セオラスPH101、旭化成)19.2g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH31、信越化学)19.2g、ステアリン酸マグネシウム(軽質、植物性、太平化学産業)1.9gをタンブラー混合機(15L)にて回転数30rpmで、3分間混合し、混合末とした。得られた混合末をロータリー式打錠機(コレクト19K、菊水製作所)にて8.5mmφ、7Rの杵を用い、回転数20rpm、打錠圧7kNで打錠し、素錠(質量240mg、厚み4.6mm)を得た。得られた素錠の平衡相対湿度(ERH)は27.0%であった。
【0075】
比較例1
アスコルビン酸2−グルコシドに代えてアスコルビン酸を用いる以外、製剤例1と同様にして素錠(質量240mg、厚み4.6mm)を得た。得られた素錠の平衡相対湿度(ERH)は27.2%であった。
【0076】
薬物含量安定性
製剤例1及び比較例1の素錠を60℃でガラス瓶に密栓保存し、保存後の素錠中のフルスルチアミン塩酸塩含量をHPLC法にて測定し、フルスルチアミン塩酸塩残存率(%)を算出した。結果を表4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
表4から明らかなように、アスコルビン酸の代わりにアスコルビン酸2−グルコシドを配合すると、フルスルチアミン塩酸塩を著しく安定化できる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の製剤は、肉体疲労、精神疲労、眼精疲労、白内障、神経痛、筋肉痛、関節痛(腰痛、肩こり、五十肩など)、首すじのこり、リウマチ、手足のしびれ、末梢神経炎、末梢神経麻痺、糖尿病性神経症、心筋代謝障害、便秘、胃腸運動障害、術後腸管麻痺、脚気、痔、しみ、そばかす、日焼け・かぶれによる色素沈着、歯茎からの出血、鼻出血、免疫機能疾患、神経機能疾患などを予防又は治療、緩和するのに有効である。また、肉体疲労時、病中病後、食欲不振、栄養障害、発熱性消耗疾患、産前産後、妊娠・授乳期、病中・病後の体力低下時、発育期、老年期、甲状腺機能亢進症、ウエルニッケ脳症、精神的・心理的変調(集中力欠如、神経質、不眠症、非強調性)などにおけるビタミンB類及びビタミンC類の補給、栄養補給、滋養強壮、虚弱体質に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルスルチアミン又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドとを含むビタミン製剤。
【請求項2】
総量100質量部中にアスコルビン酸2−グルコシド6〜90質量部を含む請求項1記載のビタミン製剤。
【請求項3】
フルスルチアミン又はその塩1質量部に対してアスコルビン酸2−グルコシド0.01〜20質量部を含む請求項1又は2記載のビタミン製剤。
【請求項4】
総量100質量部中にアスコルビン酸2−グルコシド8〜85質量部を含み、フルスルチアミン塩酸塩1質量部に対してアスコルビン酸2−グルコシド0.1〜10質量部を含む請求項1〜3のいずれかに記載のビタミン製剤。
【請求項5】
フルスルチアミン又はその塩を含む製剤にアスコルビン酸2−グルコシドを含有させ、フルスルチアミン又はその塩を安定化させる方法。

【公開番号】特開2011−68614(P2011−68614A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222165(P2009−222165)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】