説明

ビニルエーテルコポリマーをベースとするポリマー領域を有する医療デバイス

本発明の一態様により、少なくとも1つのブロックコポリマーを含む1つまたは複数のポリマー領域を有する、植え込み可能または挿入可能な医療デバイスが提供される。ブロックコポリマーは、(a)少なくとも1つの高Tビニルエーテルモノマーを含む少なくとも1つの高T(ガラス転移温度)ポリマーブロックと、(b)少なくとも1つの低Tビニールエーテルモノマーを含む少なくとも1つの低Tポリマーブロックとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、医療デバイスに関し、より詳細にはポリマー領域を含む植え込み可能または挿入可能な医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
何年もの間、ポリマー物質を利用して制御された治療剤の放出が、様々な形態で存在してきた。例えば、治療剤送達のための多くの最新技術の医療デバイスは、1つまたは複数の治療剤のための貯蔵所として機能する生体安定性または生分解性のポリマーコーティングを有する。コーティングからの治療剤の放出速度を変更する方法は、治療剤の装填量変える、コーティングの親水性/疎水性のバランスを変えるために補助ポリマーを加える、ポリマー障壁層の使用、分解率(生分解性物質の場合)を変えることを含める。このような医療デバイスの例は、Boston Scientific(TAXUS)、Johnson&Johnson(CYPHER)およびその他から商業的に入手可能な薬剤溶離冠状動脈ステントを含める。
【0003】
多くのタイプのポリマー物質が医療デバイスに使用されてきた。例として、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)およびポリイソブチレン(PIB)をベースとしたブロックコポリマーを含む。PIBをベースとするブロックコポリマーは、優れた生体適合性および機械的特性を有し、この特性が、それらを医療デバイスの使用に極めて適したものにさせる。例えば、ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)などPIBをベースとするブロックコポリマーは、典型的にはリビングカチオン重合によって調製され、特に、治療剤を血管構造に送達しようとする場合に、医療デバイスコーティングに関して望ましい特性を有することが見出されている。これらは、中でも、強度、弾性、コーティングの順応性、血管適合性および生体安定性を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】パクリタキセルと、以下のポリマー:(a)本発明の一実施形態によるポリ(シクロヘキシルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−シクロヘキシルビニルエーテル)、(b)本発明の一実施形態によるポリ(t−ブチルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−t−ブチルビニルエーテル)、および(c)ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレントリブロックコポリマー(SIBS)の1つを含有するポリマーコーティングに関して、0.5重量パーセントのTween(登録商標)20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を含むPBSにおける時間関数としてのパクリタキセル放出を記載するグラフである。
【図2】本発明の一実施形態による、パクリタキセルと、ポリ(t−ブチルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−t−ブチルビニルエーテルとを含有するポリマーコーティングを有するステントのSEM顕微鏡写真である。
【図3】本発明の一実施形態による、パクリタキセルと、ポリ(t−ブチルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−t−ブチルビニルエーテルとを含有するポリマーコーティングを有するステントのSEM顕微鏡写真である。
【図4】本発明の一実施形態による、パクリタキセルと、ポリ(シクロヘキシルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−シクロヘキシルビニルエーテル)とを含有するポリマーコーティングを有するステントのSEM顕微鏡写真である。
【図5】本発明の一実施形態による、パクリタキセルと、ポリ(シクロヘキシルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−シクロヘキシルビニルエーテル)とを含有するポリマーコーティングを有するステントのSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記に記載するように、一態様において、本発明は、少なくとも1つのブロックコポリマーを含む1つまたは複数のポリマー領域を有する、植え込み可能または挿入可能な医療デバイスを提供する。ブロックコポリマーは、(a)少なくとも1つの高Tビニルエーテルモノマーを含む少なくとも1つの高T(ガラス転移温度)ポリマーブロックと、(b)少なくとも1つの低Tビニールエーテルモノマーを含む少なくとも1つの低Tポリマーブロックを含む。
【0008】
本明細書で使用されるように「ポリマー領域」は、1つまたは複数のタイプのポリマー、典型的には、少なくとも50重量パーセントのポリマー、少なくとも75重量パーセントのポリマー、またはそれ以上のポリマーを含有する領域である。
【0009】
本明細書で使用されるように「ポリマー」は、通常モノマーと称される1つまたは複数の構成単位の複数のコピー(典型的には5、10、25、50、100、250、500、1000またはそれ以上のコピー)を含む分子である。
【0010】
ポリマーは、例えば、環状、線形および分岐構造から選択され得るいくつかの構造を採ることができる。分岐構造は、星形構造(例えば、シード分子など3つ以上の鎖が、単一の分岐位置から発生する)、櫛形構造(例えば、1つの主鎖および複数の側鎖を有する構造)デンドリティック構造(例えば、樹枝状およびハイパーブランチポリマー)などを含む。
【0011】
本明細書で使用されるように「ホモポリマー」は、単一の構成単位の複数のコピーを含むポリマーである。「コポリマー」は、少なくとも2つの異なる構成単位の複数のコピーを含み、その例は、ランダム、統計学的、グラジエント、および反復的(例えば交互の)およびブロックコポリマーを含める。
【0012】
本明細書で使用されるように「ブロックコポリマー」は、例えば、1つの構成単位(すなわち、モノマー)が、1つのポリマーブロック内で見つかり、これは、別のポリマーブロック内では見られないことから、2つ以上の異なるポリマーブロックを含むコポリマーである。本明細書で使用されるように「ポリマーブロック」は、(例えば、5、10、25、50、100、250、500、1000またはそれ以上の単位の)構成単位の群である。ブロックは、分岐または非分岐であってよい。ブロックは、単一のタイプの構成単位(本明細書では「ホモポリマーブロック」とも称される)、または、例えば、ランダム、統計学的、グラジエント、および反復的(例えば、交互の)配置で設けられてよい複数のタイプの構成単位(本明細書では「コポリマーブロック」とも称される)を含むことができる。
【0013】
「低Tポリマーブロック」は、示差走査熱量測定法(DSC)などの多くの技術のいずれかによって測定されるように、体温を下回り、典型的には37℃から35℃、30℃、25℃、0℃、−25℃、−50℃またはそれ以下であるガラス転移温度を示す。「体温」は、治療される被験者に左右され、ヒトに関しては37℃が平均である。それらの低ガラス転移温度の結果として、低Tポリマーブロックは典型的には、周囲温度で弾性である。「低Tモノマー」は、ホモポリマー形態において、体温を下回り、より典型的には37℃から35℃、30℃、25℃、0℃、−25℃、−50℃またはそれ以下のガラス転移温度(T)を示すモノマーである。
【0014】
反対に、上昇した、または「高Tポリマーブロック」は、体温を超える、典型的には、37℃から40℃、45℃、50℃、60℃、75℃、100℃またはそれ以上のガラス転移温度を示すポリマーブロックである。「高Tモノマー」は、体温を超える、典型的には、37℃から40℃、45℃、50℃、60℃、75℃、100℃またはそれ以上のガラス転移温度(T)を示すモノマーである。
【0015】
このような構造の例は、(a)(HL)、(LH)およびH(LH)タイプの交互のブロックを有するブロックコポリマー、Lは、低Tポリマーブロックであり、Hは、高Tポリマーブロックであり、mは1以上の正の全ての数である、(b)X(LH)およびX(HL)など複数のアームの形状を有するブロックコポリマー、nは、2以上の正の全ての数であり、Xはハブ種(例えば、開始剤分子残基、前もって形成されたポリマー鎖が取り付けられる分子の残基等)である、を含める。ハブ種および他の非ポリマー鎖種は、ブロックコポリマーを形態学的に記載する際は、一般に無視される。例えば、X(LH)は一般に、HLHトリブロックコポリマーとして示される。通常コポリマー中に存在する非ポリマー鎖種の例は、キャップ分子、結合残基を含める。ブロックコポリマーの他の例は、1つのL鎖バックボーンおよび複数のH側鎖を有する櫛形コポリマー、ならびに1つのH鎖バックボーンおよび複数のL側鎖を有する櫛形コポリマーを含める。
【0016】
本発明の実施に関するビニルエーテルモノマーは、アルキル基が1から20の炭素原子を含有する、置換された、保護され置換された、および置換されていないシクロアルキルビニルエーテル、置換された、保護され置換された、および置換されていない線形アルキルビニルエーテル、ならびに置換された、保護され置換された、および置換されていない分岐アルキルビニルエーテルを含む。具体的な低Tビニルエーテルモノマーは、メチルビニルエーテル(T−31℃)、エチルビニルエーテル(T−43℃)、プロピルビニルエーテル(T−49℃)、ブチルビニルエーテル(T−55℃)、イソブチルビニルエーテル(T−19℃)、2−エチルヘキシルビニルエーテル(T−66℃)およびドデシルビニルエーテル(T−62℃)などのアルキルビニルエーテルを含む。具体的な高Tビニルエーテルモノマーは、tert−ブチルビニルエーテル(T88℃)およびシクロヘキシルビニルエーテル(T81℃)などのアルキルビニルエーテルを含む。本発明の実施に関するビニルエーテルモノマーはさらに、アリール基が、6から20の炭素原子を含有し得る、置換されたアリールビニルエーテル(例えば、クロロメチルまたはアルキル置換されたアリールビニルエーテル)、保護され置換されたアリールビニルエーテル(例えば、保護されたヒドロキシまたはアミンアリールビニルエーテル)、および置換されていないアリールビニルエーテル(例えば、フェニルビニルエーテル)を含む。
【0017】
本発明によるブロックコポリマーは、別のモノマーを有しても、または有さなくてもよい。例えば、ブロックコポリマーはさらに、中でも以下の(a)以下のアクリル酸およびその塩形態(例えば、アクリル酸カリウムおよびアクリル酸ナトリウム);アクリル酸無水物;アクリル酸アルキル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシルおよびアクリル酸ヘキサデシル)、アクリル酸アリールアルキル(例えば、アクリル酸ベンジル)、アクリル酸アルコキシアルキル(例えば、アクリル酸2−エトキシエチルおよびアクリル酸2−メトキシエチル)、アクリル酸ハロ−アルキル(例えば、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル)、およびアクリル酸シアノ−アルキル(例えば、アクリル酸2−シアノエチル)を含むアクリル酸エステル;アクリル酸アミド(例えば、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドおよびN,Nジメチルアクリルアミド)を含むアクリル酸エステル;および他のアクリル酸誘導体(例えば、アクリロニトリル)などのアクリル酸モノマー;(b)以下のメタクリル酸およびその塩(例えば、メタクリル酸ナトリウム);メタクリル酸無水物;メタクリル酸アルキル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸オクタデシル)、芳香族アクリレート(例えば、メタクリル酸フェニルおよびメタクリル酸ベンジル)、メタクリル酸ヒドロキシアルキル(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル)、メタクリル酸アミノアルキル(例えば、メタクリル酸ジエチルアミノエチルおよびメタクリル酸2−tert−ブチル−アミノエチル)、追加のメタクリレート(例えば、メタクリル酸イソボルニルおよびメタクリル酸トリメチルシリル)を含むメタクリル酸エステル(メタクリレート);および他のメタクリル酸誘導体(例えば、メタクリロニトリル)などのメタクリル酸モノマー;(c)以下の置換されていないビニル芳香族化合物(例えば、スチレンおよび2−ビニルナフタレン);ビニル置換芳香族化合物(例えば、α−メチルスチレン);環アルキル化ビニル芳香族化合物(例えば、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、および4−tert−ブチルスチレン)、環アルコキシル化ビニル芳香族化合物(例えば、4−メトキシスチレンおよび4−エトキシスチレン)、環ハロゲン化ビニル芳香族化合物(例えば、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、4−ブロモスチレンおよび4−フルオロスチレン)および環エステル置換ビニル芳香族化合物(例えば、4−アセトキシスチレン)を含む環置換ビニル芳香族化合物などのビニル芳香族化合物(すなわち、芳香族およびビニル部分を有するもの);(d)以下のビニルアルコール、ビニルエステル(例えば、安息香酸ビニル、安息香酸ビニル4−tert−ブチル、シクロヘキサン酸ビニル、ピバル酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルおよびビニルブチラール)、ビニルアミン(例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、およびビニルカルバゾール);ビニルハライド(例えば、塩化ビニルおよびフッ化ビニル);および他のビニル化合物(例えば、1−ビニル−2−ピロリドンおよびビニルフェロセン)などのビニルモノマー;(e)アセナフタレンおよびインデンなどの芳香族モノマー(上記のビニル芳香族モノマー以外);(f)以下のテトラヒドロフラン、トリメチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エピブロモヒドリン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシオクタンおよび1,2−エポキシデカンなどの環状エーテルモノマー;(g)エチレンマロネート、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどのエステルモノマー(上記に記載したエステルモノマー以外);(h)以下の置換されていないアルケンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、トランス−ブタジエン、4−メチルペンテン、1−オクテン、1−オクタデセン、および他のα−オレフィン、ならびにシス−イソプレンおよびトランス−イソプレン)、およびハロゲン化アルケンモノマー(例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、シス−クロロブタジエン、トランス−クロロブタジエンおよびテトラフルオロエチレン)などのアルケンモノマー;および(i)ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、メチルエチルシロキサン、メチルフェニルシロキサンおよびジフェニルシロキサンなどのオルガノシロキサンモノマーから選択されたモノマーをさらに有する(または有さない)場合がある。
【0018】
上記のコポリマーを形成するのに、リビングおよび非リビングの両方のカチオンおよびラジカル重合法を含めた多様な重合技術を使用することができる。したがって、上記に記載するポリイソブチレンベースのブロックコポリマーのような、これらのコポリマーは、リビングカチオン重合によって生成することができる。上記に記載するポリイソブチレン−ポリアルケンベースのブロックコポリマー、例えば、ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)のような、これらのポリマーは典型的には、弾性ブロックコポリマーである。さらに、ヒドロキシル基(例えば、シリル基保護されたヒドロキシアルキルビニルエーテルモノマーを使用して)など官能基または保護基によって、このようなポリマーの極性を変えることによって、潜在的に調整可能な治療上の放出を備えたポリマーを作成することができる。また、これらのポリマーは、飽和したポリマーバックボーンを有し、側基がエーテル基を含有するため、これらのポリマーは、生体安定性であると予想される。以下の実施例に見られるように、(a)冠状動脈ステント上に塗布することができ、(b)組成によって変化し得るパクリタキセル放出性能を有するポリビニル−エーテルベースのブロックコポリマーを形成することができることがわかる。以下のSEM画像で見られるように、ステントが拡張する際、ひび割れや破損が観察されなかったため、これらのコーティングの機械的特性も同様に許容範囲であることがわかる。
【0019】
本発明より有益な医療デバイスは、手順としての使用のため、またはインプラントとしてのいずれかで被験者の中に植え込まれるまたは挿入される多様な植え込み可能または挿入可能な医療デバイスを含む。例として、カテーテル(例えば、バルーンカテーテルなどの腎臓または血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、大静脈フィルタ)、ステント(冠状動脈血管ステント、大脳ステントなどの末梢血管ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆管ステント、気管ステント、胃腸管ステントおよび食道ステントを含む)、ステントグラフト、血管グラフト、血管アクセスポート、大脳動脈瘤フィラーコイルを含めた塞栓形成デバイス(例えばGuglilmi着脱式コイルおよび金属コイル)、ミクロスフィアまたは他の粒子、心筋プラグ、ペースメーカリード、左心室補助心臓およびポンプ、完全人工心臓、心臓弁、血管弁、組織バルキングデバイス、および軟骨、骨、皮膚および他の生体内組織再生用の組織工学スカフォルド、蝸牛インプラント、縫合糸、縫合糸アンカー、吻合クリップおよびリング、組織ステープル、手術箇所の結紮クリップ、カニューレ、金属ワイヤ結紮糸、骨グラフト、骨プレート、接合プロテーゼなどの整形外科用プロテーゼ、ならびに体内に植え込むまたは挿入するのに適したその他の種々の医療デバイスを含める。
【0020】
本発明の医療デバイスは、全身治療に使用される植え込み可能および挿入可能な医療デバイス、ならびに哺乳類のいずれかの組織または器官の局所治療に使用される医療デバイスを含める。非制限的な例は、腫瘍;心臓、冠状動脈および末梢血管系(全体的に「血管構造」と称される)、腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立線、膣、子宮および卵巣を含めた尿生殖器系、目、耳、背骨、神経系、肺、気管、食道、腸管、胃、脳、肝臓およびすい臓、骨格筋、平滑筋、胸部、皮膚組織、軟骨、歯および骨を含めた器官である。
【0021】
本明細書で使用されるように「治療」は、疾病または病状の予防、疾病または病状に関連する症状の緩和または排除、あるいは疾病または病状の実質的なまたは完全な排除を指す。好ましい被験体(「患者」とも称される)は、脊椎動物被験体であり、より好ましくは哺乳類被験体であり、より好ましくはヒト被験体である。本発明と併せて使用するための医療デバイスの具体例は、再狭窄を治療するために血管構造内に治療剤を送達する冠状動脈ステントおよび大脳ステントなどの血管ステントを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマー領域は、医療デバイス全体に対応する。他の実施形態において、ポリマー領域は、医療デバイスの1つまたは複数の部分に対応する。例えば、ポリマー領域は、1つまたは複数の医療デバイス構成要素の形態、医療デバイス内に組み込まれた1つまたは複数の繊維の形態、下層医療デバイス基板全体、またはその一部のみの上に形成された1つまたは複数のポリマー層の形態などであり得る。層は、多様な場所および多様な形状で(例えば、適切な用法またはマスキング技法を使用して、所望されるパターンで)、下層基板上に設けることができ、それらは異なる組成であってよい。本明細書で使用されるように、所与の材料の「層」は、その長さおよび幅の両方と比較して厚みが小さい、その材料の領域である。本明細書で使用されるように、層は平坦である必要はなく、例えば、下層基板の輪郭をたどる。層は、非連続的(例えば、パターン形成される)であってよい。用語「膜」、「層」および「コーティング」は、本明細書で互換可能に使用されてよい。
【0023】
下層基板として使用する材料は、ポリマー物質、セラミック物質、金属物質を含める。セラミック基板材料の具体例は、例えば、中でも以下のアルミニウム酸化物および遷移金属酸化物(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウムおよびイリジウムの酸化物)を含む金属酸化物;シリコン;窒化ケイ素、炭化ケイ素および酸化ケイ素(ガラスセラミックと称される場合もある)を含有するものなどシリコンベースのセラミック;リン酸カルシウムセラミック(例えば、ヒドロキシアパタイト); 炭素、および窒化炭素などの炭素ベースのセラミック様の物質の1つまたは複数を含有する物質から選択されてよい。
【0024】
金属基板材料の具体例は、例えば以下の金属(例えば、金、プラチナ、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、チタン、タンタル、タングステンおよびルテニウムなどの生体安定性金属およびマグネシウムなどの生体吸収性金属)、および鉄およびクロムを有する金属合金、(例えば、プラチナに富んだ放射線不透過性ステンレス鋼を含むステンレス鋼)、ニッケルおよびチタンを有する合金(例えば、ニチノール)、コバルト、クロムおよび鉄を有する合金(例えば、エルジロイ合金)含めたコバルトおよびクロムを有する合金、ニッケル、コバルトおよびクロムを有する合金(例えば、MP35N)、コバルト、クロム、タングステン およびニッケルを有する合金(例えば、L605)およびニッケルおよびクロムを有する合金(例えば、インコネル合金)を含めた金属合金の1つまたは複数を含有する物質から選択されてよい。
【0025】
ポリマー基板材料の具体例は、例えば、補助ポリマーとして以下に列記される1つまたは複数のポリマーを含有する物質から選択されてよい。
【0026】
いくつかの態様において、本発明のポリマー領域は、1つまたは複数の治療剤の放出を制御し、その場合、治療剤は、例えばポリマー領域の下および/またはその中に配置されてよい。このような「ポリマー放出領域」は、キャリア領域とバリア領域とを含む。「キャリア領域」により、治療剤をさらに有し、そこから治療剤が放出されるポリマー放出領域が示される。例えば、いくつかの実施形態において、キャリア領域は、医療デバイスの全体を構成する(例えば、ステント本体の形態で設けられる場合)。他の実施形態において、キャリア領域は、デバイスの一部のみに対応する(例えば、ステント本体など医療デバイスの基板を覆うコーティング)。「バリア領域」により、治療剤の供給源と、放出が意図される箇所との間に配置される領域が示される。例えば、いくつかの実施形態において、医療デバイスは、治療剤の供給源を囲繞するバリア領域で構成される。他の実施形態において、バリア領域は、治療剤の供給源の上に配置され、これは、医療デバイス基板の全体または一部の上に配置される。
【0027】
ポリマー放出領域を形成するポリマーまたは複数のポリマーの属性に加えて、治療剤放出プリフィールは、デバイス内のポリマー放出領域のサイズ、数および/または位置など他の要因によっても影響を受ける。例えば、本発明によるポリマーキャリア層およびバリア層の放出プロフィールは、これらの厚みおよび/または表面領域を変更することによって修正することができる。さらに、放出プロフィールを修正するために、複数のポリマー領域を採用することができる。例えば、同一のまたは異なる内容物(例えば、異なるポリマーおよび/または治療剤内容物)のいずれかを有する本発明の複数のキャリア層またはバリア層を、互いの上に重ねる(これにより、いくつかの実施形態において、キャリア層は、バリア層として作用することができる)、互いに対して水平に配置するなどが可能である。
【0028】
ステントなどの管状デバイス(例えば、レーザまたは機械的切断管、すなわち1つまたは複数の組まれた、織られた、または編まれたフィラメントなどを備えることができる)に関する具体例として、ポリマー放出層は、管腔面上、非管腔面上、管腔面と非管腔面の間の側面上(端部を含めた)に、デバイスの管腔または非管腔の長さに沿ってパターン形成されるなどして設けることができる。さらに放出層は、同一のまたは異なる治療剤の放出を制御することができる。したがって、例えば、同一の治療剤を、同一のまたは異なる速度で、医療デバイスの異なる場所から放出することが可能である。別の具体例として、その内側、すなわち管腔面に、第1生体活性薬剤(例えば、抗血栓剤)を含有する、またはその上に配置される第1放出層を有し、その外側、すなわち非管腔面に(ならびに所望であれば、その端部上に)、第1生体活性薬剤と異なる第2生体活性薬剤(例えば、抗増殖剤)を含有する、またはその上に配置される第2放出層を有する管状医療デバイス(例えば、血管ステント)を実現することが可能である。
【0029】
上記のポリマーに加えて、本発明と併せて使用するポリマー領域はまた、任意選択で、補助ポリマーを含有する。補助ポリマーの例は、多様なホモポリマーおよびコポリマー(反復、ランダム、統計学的、グラジエントおよびブロックコポリマーを含めた)を含み、これは、環状、線形、および分岐(例えば、ポリマーが、星、櫛、または樹木状の構造)であってよく、天然または人口であってよく、熱可塑性または熱硬化性であってよい。特定のポリマーは、以下の、1つまたは複数から選択されてよい。:ポリアクリル酸を含めたポリカルボン酸ポリマーおよびコポリマー;アセタールポリマーおよびコポリマー;アクリレートおよびメタクリレートポリマーならびにコポリマー(例えば、n−ブチルメタクリレート);酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、レーヨン、三酢酸レーヨン、ならびにカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースなどのセルロースエーテルを含めたセルロースポリマーおよびコポリマー;ポリオキシメチレンポリマーおよびコポリマー;ポリエーテルブロックイミドおよびポリエーテルブロックアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミドおよびポリエーテルイミドなどポリイミドポリマーおよびコポリマー;ポリアリールスルホンおよびポリエーテルスルホンを含めたポリスルホンポリマーおよびコポリマー;ナイロン6,6、ナイロン12、ポリカプロラクタムおよびポリアクリルアミドを含めたポリアミドポリマーおよびコポリマー;アルキド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アリール樹脂およびエポキシド樹脂を含めた樹脂;ポリカーボネート;ポリアクリロニトリル;ポリビニルピロリドン(架橋したもの、およびその他の方法);ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどのポリハロゲン化ビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレンコポリマー(例えば、Kraton(登録商標)Gシリーズポリマーとして入手可能なポリスチレン−ポリエチレン/ブチレン−ポリスチレン(SEBS)コポリマー)、スチレン−イソプレンコポリマー(例えば、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマーおよびスチレン−イソブチレンコポリマー(例えば、Pinchuckによる米国特許第6,545,097号に開示されるものなど、ポリイソブチレン−ポリスチレンおよびポリスチレンーポリイソブチレンーポリスチレンブロックコポリマー)を含むビニル芳香族アルキレンコポリマー、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、およびポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステルを含めたビニルモノマーのポリマーおよびコポリマー;ポリベンゾイミダゾール;いくつかの酸性基が亜鉛またはナトリウムイオン(一般にはイオノマーとして知られる)で中和され得るエチレンメタクリル酸コポリマーおよびエチレンアクリル酸コポリマー;ポリエチレンオキシド(PEO)を含めたポリアルキルオキシドポリマーおよびコポリマー;ポリテレフタル酸エチレン、およびラクチド(乳酸、ならびにd−ラクチド、l−ラクチド、およびメソ−ラクチドを含める)、イプシロン−カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸を含める)、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、パラジオキサノン、炭酸トリメチレン(およびそのアルキル誘導体)、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オンおよび6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン(ポリ(乳酸)およびポリ(カプロラクトン)のコポリマーが一具体例である)のポリマーおよびコポリマーなど脂肪族ポリエステルを含めたポリエステル;ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリアリールエーテルを含めたポリエーテルポリマーおよびコポリマー;ポリフェニレンスルフィド;ポリイソシアネート;ポリプロピレン、ポリエチレン(低密度および高密度、低分子量および高分子量)、ポリブチレン(ポリブト−1−エン、ポリイソブチレンなど)、ポリオレフィンエラストマー(例えば、サントプレーン(santoprene))、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ポリ−4−メチル−ペン−1−エン、エチレン−アルファ−オレフィンコポリマー、エチレン−メチルメタクリレートコポリマーおよびエチレン−酢酸ビニルコポリマーなどポリアルキレンを含めたポリオレフィンポリマーおよびコポリマー;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン)(FEP)、変性エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含めたフッ素化ポリマーおよびコポリマー;シリコーンポリマーおよびコポリマー;熱可塑性ポリウレタン(TPU);エラストマーポリウレタンおよびポリウレタンコポリマー(ポリエーテルをベースにした、ポリエステルをベースにした、ポリカーボネートをベースにした、脂肪族をベースにした、芳香族をベースにした、およびそれらの混合物であるブロックおよびランダムコポリマーを含み、商業的に入手可能なポリウレタンコポリマーの例は、Bionate(登録商標)、Carbothane(登録商標)、Tecoflex(登録商標)、Tecothane(登録商標)、Tecophilic(登録商標)、Tecoplast(登録商標)、Pellethane(登録商標)、Chronothane(登録商標)およびChronoflex(登録商標)を含む)などのエラストマー;p−キシリレンポリマー;ポリイミノカーボネート;ポリエチレンオキシド−ポリ乳酸コポリマーなどのコポリ(エーテル−エステル);ポリホスファジン;シュウ酸ポリアルキレン;ポリオキサアミドおよびポリオキサエステル(アミンおよび/またはアミド基を含有するものを含める);ポリオルトエステル;フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、エラスチン、キトサン、ゼラチン、スターチ、ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンを含めたポリペプチド、タンパク質、多糖類、および脂肪酸(およびそれらのエステル)などのバイオポリマー;ならびに上記のさらなるコポリマー。
【0030】
補助ポリマーは、多様な理由に備えて設けることができる。補助ポリマーは、あるとすれば、例えば、他の理由の中でも、治療剤の放出プロフィールを調整するためにポリマー領域をより親水性にするために導入される場合がある。
【0031】
さらなる任意選択の補助添加剤は、金属および非金属の無機粒子などの微粒子添加剤を含める。このような粒子は、例えば、本発明のポリマー領域の機械的または薬剤放出(薬剤が存在する場合)特性に影響を与えるために加えられてよい。好適な金属粒子は、例えば中でも、以下の、銀、金、プラチナ、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、チタン、タングステンおよびルテニウムなどのほぼ純粋な金属、ならびにコバルト−クロム合金、ニッケル−チタン合金(例えば、ニチノール)、鉄−クロム合金(例えば、少なくとも50%の鉄と少なくとも11.5%のクロムを含有するステンレス鋼)、コバルト−クロム−鉄合金(例えば、エルジロイ合金)およびニッケル−クロム合金(例えば、インコネル合金)などの金属合金から形成されるものを含める。好適な非金属粒子は、例えば以下の、リン酸カルシウムセラミック(例えば、ヒドロキシアパタイト);ガラスセラミック(例えば、バイオガラス)と称される場合もあるリン酸カルシウムガラス;非遷移金属酸化物(例えば、アルミニウム酸化物を含めた、周期律表の13、14および15族の金属の酸化物)および遷移金属酸化物(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、イリジウムなどを含む周期律表の3、4、5、6、7、8、9、10、11および12族の金属の酸化物)を含む金属酸化物、純粋なおよびドーピングされたカーボンなどカーボンベースの物質(例えばフラーレン、カーボンナノファイバ、単層壁、いわゆる少層壁、および複層壁のカーボンナノチューブ)、炭化ケイ素および窒化炭素;シリカ;ケイ酸アルミニウム、様々な官能化POSSおよび重合POSSを含めたかご型シルセスキオキサン(POSS)などモノマーケイ酸塩、モンモリロナイト、ヘクトライト、ヒドロタルサイト、バーミキュライトおよびラポナイトなど、粘土および雲母(任意選択で、挿入および/または剥離できる)を含めた合成または天然のケイ酸塩から形成されたものを含める。
さらに、別の任意選択の補助添加剤は、可塑剤および他の低分子量種を含める。
【0032】
上記に記載するように、本発明の医療デバイスはまた、任意選択で1つまたは複数の治療剤を含む。「治療剤」、「薬剤」、「薬学的な活性剤」、「薬学的な活性物質」および他の関連用語は、本明細書では互換可能に使用されてよい。これらの用語は、遺伝子治療剤、非遺伝子治療剤および細胞を含む。 本発明と併せて使用するための例示的な非遺伝子治療剤には、(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓剤、(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミンなどの抗炎症剤、(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻止することが可能なモノクローナル抗体、チミジンキナーゼ阻害剤などの抗悪性腫瘍剤/抗増殖剤/抗縮瞳剤(anti-miotic agents)、(d)リドカイン、ブピバカイン、ロピバカインなどの麻酔剤、(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、マダニ抗血小板ペプチド(tick antiplatelet peptides)などの抗凝固剤、(f)成長因子、転写活性化因子、翻訳促進因子などの血管細胞成長促進因子、(g)成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素とから成る2機能性分子、抗体と細胞毒素とから成る2機能性分子などの血管細胞成長阻害剤、(h)プロテインキナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)、(i)プロスタサイクリン類似体、(j)コレステロール降下剤、(k)アンジオポエチン、(l)トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントインなどの抗菌剤、(m)細胞毒性剤、細胞静止剤(cytostatic agents)、および細胞増殖作用因子、(n)血管拡張剤、(o)内在性血管作動性機構に干渉する剤、(p)モノクローナル抗体など白血球動員の阻害剤、(q)サイトカイン、(r)ホルモン、(s)ゲルダナマイシンを含めたHSP90タンパク質の阻害剤(すなわち、分子シャペロンまたはハウスキーピングタンパクであり、細胞の成長および生存に関与する他のクライアントタンパク質/シグナル伝達タンパク質の安定性および機能に必要とされる熱ショックタンパク質)、(t)アルファ受容体拮抗剤(ドキサゾシン、タムスロシンなど)、ベータ受容体作動薬(ドブタミン、サルメテロールなど)およびベータ受容体拮抗剤(アテノロール、メタプロロール、ブトキサミンなど)アンギオテンシン−II受容体拮抗剤(ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタンおよびテルミサルタンなど)および鎮痙薬(塩化オキシブチニン、フラボキセイト、トルテロジン、硫酸ヒオスシアミン、ジクロミンなど)、(u)bARLct阻害剤、(v)ホスホランバン(phospholanban)阻害剤、(w)Serca 2遺伝子/タンパク質、(x)アミノキノリン、例えばレシキモドおよびイミキモドなどイミダゾキノリンを含む免疫反応改変剤、(y)ヒト・アポリオタンパク(例えば、Al、AII、AIII、AIV、AVなど)を含む。
【0033】
非遺伝的治療剤の具体的な例は、中でも、パクリタキセル(例えば、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子、例えばABRAXANEなどタンパク質結合パクリタキセル粒子など、その微粒子形態を含める)、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT−578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、Resten−NG、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、ベータ遮断剤、bARKct阻害剤、ホスフォランバン阻害剤、Serca2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトアポリオプロテイン(例えばAI−AV)、成長因子(例えばVEGF−2)ならびに上記の誘導体を含む。
【0034】
本発明と併せて使用するための例示の遺伝的治療剤は、アンチセンスDNAおよびRNA、ならびに様々なタンパク質をコードするDNA(ならびに、タンパク質それ自体)を含む:(a)アンチセンスRNA、(b)欠陥のあるまたは欠損した内因性分子を置換するtRNAまたはrRNA、(c)酸性および塩基性の線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、内皮分裂促進成長因子、上皮成長因子、形質転換成長因子αおよびβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子ならびにインスリン様成長因子などの成長因子を含めた血管新生および他の因子、(d)CD阻害剤を含めた細胞周期阻害剤、および(e)チミジンキナーゼ(「TK」)、および細胞増殖の干渉に有用な他の剤。また、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、およびBMP−16を含めた骨形成タンパク質(「BMP」)のファミリーをコードするDNAも対象となる。現在のところ好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7のいずれかである。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、またはその組合せとして、単独でまたは他の分子と一緒に提供することができる。あるいはまたは付加的に、BMPの上流または下流の効果を誘導することができる分子を提供することもできる。そのような分子には、任意の「ヘッジホッグ」タンパク質、またはそれらをコードするDNAを含む。
【0035】
遺伝子治療薬剤の送達用ベクターには、アデノウイルス、guttedアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(Semliki Forest、Sindbisなど)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、自己複製能を有するウイルス(例えば、ONYX−015)やハイブリッドベクターなどのウイルスベクター;ならびに人工染色体およびミニ染色体、プラスミドDNAベクター(例えば、pCOR)、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフトコポリマー(例えば、ポリエーテル−PEIおよびポリ酸化エチレン−PEI)、中性ポリマーPVP、SP1017(SUPRATEK)、カチオン性脂質などの脂質、リポソーム、リポプレックス(lipoplex)、ナノ粒子や微小粒子などの非ウイルスベクターがあり、タンパク質導入ドメイン(PTD)などの標的配列を有するもの、および有さないものを含む。
【0036】
本発明と併せて使用する細胞は、全骨髄、骨髄由来の単核細胞、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉、造血、神経)、多能性幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞またはマクロファージを含めたヒト由来の細胞(自己または同種異系)、あるいは動物、細菌または菌類源由来の細胞(異種)を含め、所望であれば、対象とするタンパク質を送達するようにそれを遺伝子操作することができる。
【0037】
上記に列挙したものを除外する必要はないが、血管治療計画のための候補、例えば再狭窄を標的とする剤として、多くの治療剤が特定されている。このような薬剤は、本発明を実施するのに有用であり、以下の1つまたは複数を含む:(a)ジルチアゼムやクレンチアゼムなどのベンゾチアザピン(benzothiazapines)、ニフェジピン、アムロジピン、ニカルダピン(nicardapine)などのジヒドロピリジン、およびベラパミルなどのフェニルアルキルアミンを含めたCaチャネル遮断剤、(b)ケタンセリンやナフチドロフリルなどの5−HT拮抗剤、ならびにフルオキセチンなどの5−HT取込み阻害剤を含めたセロトニン経路調節剤、(c)シロスタゾールやジピリダモールなどのホスホジエステラーゼ阻害剤、フォルスコリンなどのアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、ならびにアデノシン類似体を含めた環状ヌクレオチド経路剤、(d)プラゾシンやブナゾシンなどのα拮抗剤、プロプラノロールなどのβ拮抗剤、およびラベタロールやカルベジロールなどのα/β拮抗剤を含めたカテコールアミン調節剤、(e)エンドセリン受容体拮抗剤、(f)ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、亜硝酸アミルなどの有機硝酸エステル/亜硝酸エステル、ニトロプルシドナトリウムなどの無機ニトロソ化合物、モルシドミンやリンシドミンなどのシドノンイミン、ジアゼニウムジオラート(diazenium diolates)やアルカンジアミンのNO付加体などのノノエート(nonoates)、低分子量のS−ニトロソ化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン、およびN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)および高分子量のS−ニトロソ化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖類、合成ポリマー/オリゴマー、および天然ポリマー/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)を含めたS−ニトロソ化合物、ならびにC−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物、およびL−アルギニンを含めた酸化窒素供与体/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリル、エナラプリルなどのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、(h)サララシンやロサルチン(losartin)などのATII−受容体拮抗剤、(i)アルブミンやポリエチレンオキシドなどの血小板粘着阻害剤、(j)シロスタゾール、アスピリン、およびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)、ならびにアブシキシマブ、エピチフィバチド(epitifibatide)、チロフィバンなどのGP IIb/IIIa阻害剤を含めた血小板凝集阻害剤、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、硫酸デキストランおよびβ−シクロデキストリンテトラデカサルフェート(β−cyclodextrin tetradecasulfate)などのヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−phe−L−プロピル−L−arg−クロロメチルケトン)、アルガトロバンなどのトロンビン阻害剤、アンチスタチン(antistatin)やTAP(マダニ抗凝固ペプチド:tick anticoagulant peptide)などのFXa阻害剤、ワルファリンなどのビタミンK阻害剤、ならびに活性化プロテインCを含めた凝固経路調節剤、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、スルフィンピラゾンなどのシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン(methprednisolone)、ヒドロコルチゾンなどの天然および合成コルチコステロイド、(n)ノルジヒドログアイレチン酸(nordihydroguairetic acid)やコーヒー酸などのリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエン受容体拮抗剤、(p)E−セレクチンおよびP−セレクチンの拮抗剤、(q)VCAM−1およびICAM−1相互作用の阻害剤、(r)PGE1やPGI2などのプロスタグランジン、およびシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト、ベラプロストなどのプロスタサイクリン類似体を含めたプロスタグランジンおよびそれらの類似体、(s)ビスホスホネートを含むマクロファージ活性化抑制剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチンなどのHMG−CoA還元酵素阻害剤、(u)魚油およびω−3脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンCおよびE、エブセレン、トランス−レチノイン酸、SOD模倣体などのフリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、(w)bFGF抗体やキメラ融合タンパク質などのFGF経路剤、トラピジルなどのPDGF受容体拮抗剤、アンギオペプチンやオクレオチド(ocreotide)などのソマトスタチン類似体を含むIGF経路剤、ポリアニオン性剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、TGF−β抗体などのTGF−β経路剤、EGF抗体、受容体拮抗剤、およびキメラ融合タンパク質などのEGF経路剤、サリドマイドやそれらの類似体などのTNF−アルファ経路剤、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベンおよびリドグレルなどのトロンボキサンA2(TXA2)経路調節剤、ならびにチロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン誘導体などのタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を含む様々な成長因子に影響を及ぼす剤、(x)マリマスタット、イロマスタット、メタスタットなどのMMP経路阻害剤、(y)サイトカラシンBなどの細胞運動阻害剤、(z)プリン類似体(例えば、塩素化プリンヌクレオシド類似体である、6−メルカプトプリンまたはクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、シタラビンおよび5−フルオロウラシル)、メトトレキセートなどの抗代謝剤、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に影響を及ぼす剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、EpoD、パクリタキセルおよびエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害剤(例えば、エンドスタチン、アンギオスタチン、およびスクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドールおよびスラミンを含めた抗増殖/抗悪性腫瘍剤、(aa)ハロフジノンまたは他のキナゾリノン誘導体およびトラニラストなどのマトリックス付着/形成経路阻害剤、(bb)VEGFおよびRGDペプチドなどの内皮化促進因子、および(cc)ペントキシフィリンなどの血液レオロジー調節因子。
【0038】
本発明を実施するのに有用な他の付加的治療剤はまた、参照によりその全開示が組み込まれる、NeoRx社に譲渡された米国特許第5,733,925号に開示される。
【0039】
治療剤が含まれる場合、広範な範囲の治療剤装填量を本発明の医療デバイスと併せて使用することができ、薬学的に有効な量は当業者によって容易に決定され、最終的には、例えば要因の中でも、治療されるべき病状、年齢、性別、患者の状態、治療剤の性質、ポリマー領域の性質および医療デバイスの性質による。
【0040】
本発明によりポリマー領域を形成するために多くの技術を利用することができる。
【0041】
例えば、いくつかの実施形態において、本発明のポリマー領域を形成するために熱可塑特性処理技法が使用される。これらの技法を使用して、まず、所望であれば任意の他の添加剤と共に、ポリマー領域を形成するポリマーを含有する溶融物を準備し、その後溶融物を冷却することによって、ポリマー領域を形成することができる。熱可塑性技法の例は、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、スピニング、真空形成およびカレンダリング、ならびにシート、繊維、ロッド、管および多様な長さの他の断面形状への押出し成形を含める。これらのおよび他の熱可塑処理技法を使用して、多様なポリマー領域を形成することができる。
【0042】
他の実施形態において、本発明のポリマー領域を形成するために、溶剤による技法が使用される。これらの技法を使用して、まず、所望であれば任意の他の添加剤と共に、ポリマー領域を形成するポリマーを含有する溶液を準備し、その後溶剤を排除することによってポリマー領域を形成することができる。最終的に選択される溶剤は、一般にポリマー領域を形成するポリマーおよび任意選択の添加剤を溶解する溶剤の能力、ならびに乾燥率、表面張力など他の要因に基づいて選択された1つまたは複数の溶剤種を含有する。溶剤技法の例は、中でも、溶剤キャスト法、スピンコーティング法、ウェブコーティング法、溶剤噴霧法、ディッピング法、空気懸濁を含む機械懸濁によるコーティングを含めた技法、インクジェット法、静電法およびこれらの工程の組み合わせを含む。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー領域を形成するために、溶液(溶剤による処理が採用される場合)またはポリマー溶融物(熱可塑処理が採用される場合)が基板に塗布される。例えば、基板は、ポリマー領域が塗布される植え込み可能または挿入可能な医療デバイスの全体またはその一部に対応することができる。これらの実施形態において、ポリマーは、シラン処理、パリレンなど不活性炭化水素処理またはプラズマ処理など接着促進剤の上に塗布されてもよい。基板はまた、例えば、凝固後ポリマー領域がそこから除去される鋳型などテンプレートであってよい。他の実施形態において、例えば、ファイバ紡糸(fiber spinning)、押出しまたは共押出し法では、基板の助けなしで、1つまたは複数のポリマー領域を形成することができる。より具体的な例では、ステント本体全体が押し出される。別の例では、ポリマー層は、ステント本体と共にステント本体の下に共押出しされる。別の例では、既存のステント本体の上にコーティング層を噴霧するまたは押し出すことによって、下層段本体の上にポリマー層が設けられる。さらに別のより具体的な例では、ステントは、金型内で鋳造される。
【0044】
ポリマー領域内に1つまたは複数の治療剤(および/または他の任意選択の添加剤)を設けることが望ましい場合、これらの薬剤が処理条件下で安定である限り、これらの治療剤は、ポリマー含有溶液またはポリマー溶融物の中に設けられ、ポリマーと共に同等に処理されてよい。
【0045】
あるいは、いくつかの実施形態において、治療剤および/または他の任意選択の添加剤は、ポリマー領域の形成後に導入されてよい。例えば、いくつかの実施形態において、治療剤および/または他の任意選択の添加剤は、溶剤中で溶解または分散され、結果として生じた溶液が、既に形成されたポリマー領域に接触する(例えば、ディッピング、噴霧など上記に記載の1つまたは複数の塗布技法を使用して)。
【0046】
上記に記載するように、本発明のいくつかの実施形態において、治療剤含有領域の上にバリア領域が設けられる。これらの実施形態において、ポリマーバリア領域は、例えば上記に記載の溶剤ベースの技法または熱可塑技法の一方を使用して、治療剤含有領域の上形成することができる。あるいは、既に形成されたポリマー領域を、治療剤含有領域の上に付着させることもできる。
実施例1 ポリ(t−ブチルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−t−ブチルビニルエーテル)の合成。
【0047】
例示の手順において、重合は、−80℃のヘキサン/塩化メチル(Hex/CH<sub>3</sub>C1, 60/60, v/v)中で、以下の濃度の以下の種を使用して行われる: t−ブチル−塩化ジクミル[tBuDiCumCl] =0.001M,2,6-ジ-tert-ブチルピリジン[DTBP]=0.004M,[TiCl<sub>4</sub>]=0.036M,ジトリルエチレン[DTE]=0.004M。−80℃でヘプタン中に浸漬された75mL試験管の中に、室温の10.55mLのヘキサン、−80℃の6.21mLのCHCl、−80℃のヘキサン中の0.89mLのDTBP原液(0.089M)、−80℃のMeCl中の1mLのtBuDiCumCl原液(0.02M)、および−80℃のHex/CHCl(60/40,v/v)中の1mLのTiCl原液(0.72M)が加えられる。約5分後、−80℃のHex/CHCl(60/40,v/v)中の1mLのDTE原液が加えられる。1時間後、−80℃のHex/CHCl(60/40,v/v)中の、本明細書ではTi(OIp)とも称される、2.65mLのTi[OCH(CH3)2]原液が試験管内に充填される。2分後、室温の1mLのイソブチルビニルエーテル(IBVE)が加えられる。重合の1時間後、1mLの反応混合物が、試験管から取り出され、PIBVE中央セグメントの分子量測定のために、2mLの事前に冷却されたメタノールでクエンチされる。(M=65.8kg/mol;M/M=1.14)。その後すぐに、1.06mLのTi(OIp)原液を試験管に加える。2分後、室温の0.5mLのt−ブチルビニルエーテル(tBVE)が加えられる。1時間後、反応物をクエンチするために、2mLの事前冷却されたメタノールが試験管内に充填される。真空内で浄化し乾燥させた後、トリブロックコポリマーは、1.31gの重量である(全モノマー変換率:81%;M=81.3kg/mol;M/M=1.19)。
実施例2 ポリ(シクロヘキシルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−シクロヘキシルビニルエーテル)の合成
例示の手順において、重合は、以下の濃度を使用して、−80℃のHex/CHCl,60/60,v/v中で、行われる:[tBuDiCumCl]=0.001M,[DTBP]=0.004M,[TiCl] =0.036M,[DTE]=0.004M。−80℃でヘプタン中に浸漬された75mL試験管の中に、室温の10.55mLのヘキサン、−80℃の6.21mLのCHCl、−80℃のヘキサン中の0.89mLのDTBP原液(0.089M)、−80℃のMeCl中の1mLのtBuDiCumCl原液(0.02M)、および−80℃のHex/CHCl(60/40,v/v)中の1mLのTiCl原液(0.72M)が加えられる。約5分後、−80℃のHex/CHC1(60/40,v/v)中の1mLのDTE原液が加えられる。1時間後、−80℃のHex/CHC1(60/40,v/v)中の、2.65mLのTi(OIp)原液が試験管内に充填される。2分後、室温の1.6mLのIBVEが加えられる。重合の1時間後、1mLの反応混合物が、試験管から取り出され、PIBVE中央セグメントの分子量測定のために、2mLの事前に冷却されたメタノールでクエンチされる。(M=61.7kg/mol;M/M=1.16)。後すぐに、1.31mLのTi(OIp)原液を試験管に加える。分後、室温の0.5mLのシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)が加えられる。1時間後、反応物をクエンチするために、2mLの事前冷却されたメタノールが試験管内に充填される。真空内で浄化し乾燥させた後、トリブロックコポリマーは、1.49gの重量である(全モノマー変換率:89%;M=77.6kg/mol;M/M=1.17)。
実施例3 コーティングされたステントからのパクリタキセル溶離
25重量パーセントのTHFおよび74重量パーセントのトルエン、0.25重量パーセントのパクリタキセルおよび0.75重量パーセントのポリマーを含むステントコーティング溶液が準備される。すべての溶液は、ポリマー、溶剤およびパクリタキセルを混ぜ、完全混合(例えば一晩中)し、フィルタリングすることによって調製される。以下のポリマー溶液が作成される:(1)0.25重量パーセントのパクリタキセルと、米国特許出願第20020107330号、およびタイトル”Drug delivery compositions and medical devices containing block copolymer”の米国特許第6,545,097号に記載されるように調製された0.75重量パーセントのポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレントリブロックコポリマー(SIBS)を含有する溶液;(2)0.25重量パーセントのパクリタキセルと、上記に記載するように調製された0.75重量パーセントのポリ(t−ブチルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−tert−ブチルビニルエーテル)を含有する溶液;(3)0.25重量パーセントのパクリタキセルと、上記に記載するように調製された0.75重量パーセントのポリ(シクロヘキシルビニルエーテル−b−イソブチルビニルエーテル−b−シクロヘキシルビニルエーテル)トリブロックコポリマーを含有する溶液。
【0048】
各溶液は、例えば、Schwarzの米国特許出願公開第2003/0236514号に記載されるように、噴霧コーティングによってコーティングされる。この方法では、溶液それぞれに対して、少なくとも5つのステントが形成される。
【0049】
パクリタキセル放出は、Sigma-Aldrichより入手可能なTween(登録商標)20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を0.5重量パーセント含有するPBS中で、時間関数として測定される。結果は、時間関数として放出される、ステント内のパクリタキセルの割合として提示され、これは、図1にグラフ式に示される。
【0050】
溶液(2)を使用して生成されたステントのSEM顕微鏡写真が図2および3に見られる。上記の溶液(3)を使用して生成されたステントのSEM顕微鏡写真は、図4および5に見られる。これらの顕微鏡写真は、コーティングが、耐久性があり、ひび割れやはく離など不適切なステントコーティングに関する通常の破損様態を示さないことを証明する。
【0051】
本明細書において、種々の実施形態が具体的に示され記載されるが、本発明の修正形態および変形形態は、上記の教義によって包含され、本発明の精神および目的とする範囲から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内にあることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー領域を有する医療デバイスであって、前記ポリマー領域が、(a)高Tビニルエーテルモノマーを含む高Tポリマーブロックと、(b)低Tビニールエーテルモノマーを含む低Tポリマーブロックとを含むブロックコポリマーを有し、前記医療デバイスが、被験者の体内に植え込み可能または挿入可能に適合される医療デバイス。
【請求項2】
前記コポリマーが、複数の高Tポリマーブロックを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記高Tポリマーブロックが、複数の異なる高Tビニルエーテルモノマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記高Tポリマーブロックが、1から20の炭素原子を有する高Tアルキルビニルエーテルモノマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記高Tポリマーブロックが、tert−ブチルビニルエーテルおよびシクロヘキシルビニルエーテルから選択された高Tビニルエーテルモノマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記コポリマーが、複数の低Tポリマーブロックを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記低Tポリマーブロックが、複数の異なる低Tビニルエーテルモノマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記低Tポリマーブロックが、1から20の炭素原子を有する低Tアルキルビニルエーテルモノマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記低Tポリマーブロックが、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、およびそれらの混合体から選択された低Tビニルエーテルモノマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記ブロックコポリマーが、分岐コポリマーである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記ブロックコポリマーが、線形コポリマーである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記ブロックコポリマーが、中央低Tポリマーブロックと、2つの高Tポリマーエンドブロックとを有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記ブロックコポリマーが、中央ポリ(イソブチルビニルエーテル)ブロックと、2つのポリ(シクロヘキシルビニルエーテル)エンドブロックとを有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記ブロックコポリマーが、中央ポリ(イソブチルビニルエーテル)ブロックと、2つのポリ(tert−ブチルビニルエーテル)エンドブロックとを有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記ポリマー領域が、少なくとも75重量パーセントの前記ブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記医療デバイスが、治療剤をさらに有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記治療剤が、前記ポリマー領域の下に配置される、請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記治療剤が、前記ポリマー領域の中に配置される、請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記ポリマー領域の上にバリア層が配置される、請求項18に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記治療剤が、抗血栓剤、抗増殖剤、抗炎症薬、抗移動剤、細胞外基質生成および組織化に作用する薬剤、抗腫瘍剤、抗分裂剤、麻酔薬、抗血液凝固剤、血管細胞成長促進剤、血管細胞成長抑制剤、コレステロール低下剤、血管拡張剤および内因性血管作用機構およびそれらの混合物から選択される、請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項21】
前記ポリマー領域が、前記ブロックコポリマーに加えて、補助ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項22】
前記ポリマー領域が、可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項23】
前記ポリマー領域が、無機粒子をさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項24】
前記ポリマー領域が、基板の上に配置される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項25】
前記ポリマー領域と前記基板の間に接着促進剤が配置される、請求項24に記載の医療デバイス。
【請求項26】
前記医療デバイスが、ガイドワイヤ、バルーン、大静脈フィルタ、カテーテル、ステント、ステントグラフト、血管グラフト、脳動脈瘤フィラーコイル、心筋プラグ、心臓弁、血管弁および組織工学スカフォルドから選択される、請求項1に記載の医療デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−537221(P2009−537221A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510987(P2009−510987)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/011376
【国際公開番号】WO2007/136574
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】