説明

ビニルエーテルモノマーを含む混合物から作製されたポリマー

本発明は、光電子部品、例えば、OLED、太陽電池、光学センサおよび液晶ディスプレイの封止、封入、接着もしくはコーティングのための、または液晶の配向のための硬化性混合物に関する。該混合物は、合計で少なくとも50重量%のビニルエーテルを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子部品、例えば、OLED、太陽電池、光学センサおよび液晶ディスプレイの封止、封入、接着もしくはコーティングのための、または液晶の配向のための硬化性混合物に関する。該混合物は、高い比率の重合性ビニルエーテルモノマーと、さらなる添加剤とを含む。
【背景技術】
【0002】
新規のディスプレイ技術、例えばOLED(有機発光ダイオード)は、CRT(陰極線管)またはLCDなどのディスプレイと比較して多くの利点を提示する。しかし、OLED技術はまた、有機物質が水分および酸素に非常に敏感に反応するという、いくつかの課題も含む。同じことが、例えば「電子ペーパー」などの同様の用途、または照明目的でのOLEDの使用にも当てはまる。したがって、水分および酸素に対して活性な構造を効果的に保護することが、携帯電話、MP3プレイヤーなどにおけるOLEDディスプレイの使用に重要である。新規のディスプレイ技術、例えばOLEDは、省電力の携帯電話ディスプレイやTV画面にまで道を開く。部品は、常套的なLEDと同様に、半導体層の自己発光アレンジメントからなるが、個々の層は主に有機物質からなる。しかし、OLEDの極めて敏感な構造は、さもなければ分解するため、水分に対して保護されなければならない。用いられる有機および金属物質は、水分および酸素に非常に敏感に反応する。これは、発光ポリマーおよびさらには陰極材料−多くの場合にはカルシウムまたはバリウム−の両方が攻撃されて破壊されるという事実によるものである。このため、部品は、酸素および水分に対して完全かつ耐久的に保護されなければならない。ディスプレイデバイス内の空気に敏感な構造の寿命は、封入の品質、より正確には水および酸素の部品内部への浸透に対する保護に依存する。
【0003】
保護のために、部品は、例えば、2枚のガラス板の間で封入される、すなわち、OLED層構造が第1基板において保護され、この基板に、カバーガラス(第2基板)が、OLED構造のエッジに沿って塗布される接着剤によって接着される。このタイプの封入を、以下、「エッジ封入(edge encapsulation)」と称する。
【0004】
エッジ封入の場合、最大許容浸透は、とりわけ、ディスプレイのサイズに依存する。なぜなら、(OLED)表面積が、水分が進入して通る可能性があるディスプレイ周辺と比較して、ディスプレイサイズの増大とは不均衡に迅速に増大するからである。水の浸透速度(または「水蒸気透過速度」=WVTR)は、g/m2*dで一般に測定される。これは、1mの面積および1mmの厚さを有する接着剤層を1日にどのぐらいのグラムの水が通過するかを示す。エッジ接着されたOLEDディスプレイでは、10−1〜10−2g/m2*dのWVTR値が理論的に望ましい。技術的意味での水の取り込みが、内側の活性なOLEDの表面積をベースとするとき、10−6〜10−7の値がWVTRに引用される。一般に、進入する水と迅速に結合する乾燥剤としても公知であるゲッタ部は、OLED構造とエッジ封入カバーとの間の空間に導入される。
【0005】
さらに、部品内への酸素の進入が損傷を与える。この現象は、「酸素透過速度」によって特徴付けられる。実際には、この速度は、別個には記録されない。周囲媒体が空気からなると思われる。試験においては、増大する負荷の値に対して大気の湿度および温度が調整される。
【0006】
代替的には、接着剤がOLED基板の全面に塗布されてもよい。これは、「全域封入(full−area encapsulation)」として公知である。この場合、目的は、これらの材料が、硬化の前であっても硬化の間にも、部品の構造、特に、陰極および発光ポリマーを攻撃せず、また、これらに悪影響を与えないことを確実にすることである。
【0007】
部品内に導入される本発明による材料は、全域封入の場合のように、水および酸素結合材料がまたこのようにして一体化され、ひいては部品内部の追加のゲッタ部品を無用にする、または、それらの作用を増加させることができるという利点をさらに有する。
【0008】
全域封入は、基板およびカバーが、全域にわたって接着されるとき、非常に強い機械的ユニットを形成し、日常使用での負荷に関して、同じ厚さのエッジ封入された部品よりも優れているという利点をさらに有する。換言すると、所与の許容される機械的負荷に対して、全域封入された部品を用いてはるかにより大きなユニットを達成することができる。例えば、エッジ封入された部品の場合には、限定されたサイズの部品しか製造できない。このことは、例えば封入された部品への屈曲負荷が、敏感なエッジ領域においてのみ吸収されなければならないということを考慮すると、理解することができる。
【0009】
より最近のOLEDは、発生した光が陰極を通って出るように、透明な陰極によって設計されている(トップエミッション)。この場合、基板と封入カバーとの間のギャップが、エッジ封入方法において不利である。したがって、全域封入のための透明な材料に対する需要が明確に示されている。
【0010】
エッジ封入と全域封入との組合せも有用である。極めて狭い接着剤ギャップを有するエッジ封入は、エッジにおける良好な拡散バリアの要件を満たし、全域封入は、内部で陰極をさらに保護して、水および酸素結合材料(ゲッタ)を収容することもできる。かかる場合において、全域封入の材料は、充填材料として公知である。OLEDは、「充填されている」。基板およびカバーは、理想的には全体に密閉されており、これらの表面を介しての長期継続的な攻撃が起こり得ないことを意味している。
【0011】
低い浸透に加えて、同様に考慮されなければならない第2の重要なパラメータが存在する。接着剤を介しての酸素または水の拡散に加えて、接着剤とガラスとの間の界面に沿った拡散も起こり得る。この拡散は、接着剤を介しての浸透にあまり依存しないが、代わりに、接着剤または接着剤のある一定の成分のガラスへの物理吸着または化学吸着に起因した良好な接着に依存する。ここで重要なのは、初期強度だけでなく、代わりに特に接着剤接着の長期強度である。例えば、85℃/相対大気湿度85%において500時間曝露した後でも、接着は、拡散がガラスと接着剤との間の界面で起こらないように、依然として十分に高くなければならない。
【0012】
これまでのUV硬化生成物は、最低限可能な水分浸透性の要件に十分に取り組んでいなかった。問題は、硬化の間の例えばアクリレートの収縮、および最善の結果を得るために不活性ガス下で物質を処理する必要性によっても引き起こされる。この観点から、これらは、エポキシドよりも劣っている。
【0013】
バリア層は、LCD(液晶ディスプレイ)の封入にも必要とされており、ここでは、バリア層が機能部を互いに安定に連結するとともに、他の機能、例えば、空気および水分に対する拡散バリア、定義された光学特性による透明性なども実現させる。特に、液晶混合物の付近において、用いられる組成物は、光電子平衡に悪影響を与える場合があるため、いかなるときでも有害構成成分を放出してはならない。特殊応用は、ODF法(液晶滴下法)であり、封止材料と液晶混合物との間の接触面積が比較的大きい。さらに、封止材料は、一般にまだ完全には硬化されない。硬化前およびさらには重合後の処理において、接着剤および封止組成物は、液晶内への特に低い溶解性、さらには液晶内への特に低い拡散、ならびに逆に液晶から接着剤および封止組成物内への特に低い拡散を有することが必要とされる。さもなければ電気光学挙動における不利な変化が起こる場合がある。
【0014】
これまでに用いられた封止接着剤材料は、アクリレートに加えて、重合性基としてオキセタン(WO 2006/107803 A2)およびエポキシドを主に含む。WO 2007/111606 A1明細書には、接着剤バリア材料としての使用のための、ビニルエーテルを含めた種々の反応性モノマーが記載されている。最大で10%のビニルエーテルが、純粋なグリシジルエーテルと比較して改善したバリア特性が達成されることなく、ビスフェノールFのビスグリシジルエーテルに添加された。
【0015】
エポキシドの中でも、ビスフェノールAおよび1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、ならびにシクロヘキサンエポキシドに特に言及することができる。これらは、多塩基性アミンと一緒にしばしば重合される。求核性アミンまたはプロトン誘導硬化の場合およびさらにはカチオンUV硬化の場合の両方において、オキセタンおよびエポキシドは、(光)電子部品の電極に不活性であるヒドロキシル含有生成物を形成する。かかる基を含有するテロマーの生成は、特に不利である。例えば、OLEDの陰極材料は、これにより大幅に影響される。したがって、従来の接着剤は、OLED部品の表面と十分に適合しない。
【0016】
液晶特性を有する重合性材料が、WO 2005/040307明細書においてバリア材料として提案されている。例えば、アクリレート基を含有する液晶モノマーが用いられている。しかし、アクリレートは、重合において高度に収縮することが知られている。
【0017】
接着剤は、通常は開始剤および増感剤の添加によって、フリーラジカルによってカチオン的または求核的に硬化される一般には光もしくはUV硬化または熱硬化モノマーである。先行技術では、UV光によって迅速に硬化され得るエポキシドをベースとする混合物がこれまで用いられてきた。封入の典型的なプロセスシーケンスは、部品の機能のための機能的構造を既に有している第1基板、典型的には部品の後方内部への接着剤の塗布を含む。接着剤は、「エッジ封入」として構造の周囲に、または「全域封入」として全面にわたって塗布される。これは、ニードルディスペンサ、インクジェット印刷、またはスクリーン印刷によって実施され得る。続いて第2基板がカバーとして押圧され、ここで、塗布された接着剤が2枚の基板の間の接触面および接着促進剤として機能する。そして、2枚の基板は、これらの間にある部品の機能的要素を包囲し、該位置において接着剤の完全な硬化によって互いに対して恒久的に固定される。数秒から数分後には、接着剤は、部品をさらに処理することができるように強固であるべきである。
【0018】
例えば、印刷による材料塗布の場合、粘性、チクソ性および基板濡れ性に関して、本発明による新規組成物の処理特性の要件に特定的に影響することが可能であるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
要約すると、以下の特性が、電子部品に(例えば、OLEDまたはLCDに)効率的な封入組成物にとって重要である:
−接着剤を介しての水蒸気および酸素の透過の低下のための低いWVTRまたはOTR(「酸素透過速度」)値
−接着剤のガラスへの非常に良好な接着、ならびに接着剤とガラスとの間の界面に沿った、水蒸気および酸素の透過の低下のための接着剤接着の良好な長期強度および耐湿性、ならびに
−大量生産のための速く高度に自動化されたプロセスへの優れた適性。
−接着剤組成物は、硬化の前、間および後にいずれのガスまたは残存物質も放出すべきでなく、隣接材料、特に陰極および発光ポリマーに完全に不活性であるべきである。この点において、ポリマー内に組み込まれずに拡散し得る硬化剤(開始剤および増感剤)の濃度が低く保たれることが望ましい。
−接着剤組成物は、硬化の間および後に、実質的に寸法安定性かつ体積安定性(収縮しない)であるべきである。
−硬化は、高温の使用を伴わず(<約90℃)、短い露光時間の後に、完全な成功を有利にもたらすべきである。
−材料は、トップおよびボトムエミッションの場合での使用のために、ならびに実験室および製造での品質管理のために、有利には透明であるべきである。
−ある一定の生産条件下で、熱による後重合が可能であることが有利である。なぜなら、遮られた領域もまた、これにより、硬化性であるからである。これにより、部品の技術的設計において、さらなる設計の自由がもたらされる。
【0020】
さらなる課題は、ガラスへの代替としてプラスチック基板の使用が増大していることである。プラスチック基板は、異なる表面性質を有し、適応した接着剤系を必要とする。プラスチック基板は、ガラスよりも可撓性であり、フレキシブルディスプレイの製造を可能にする。かかる用途のために、脆性でない、高い接着性を有する比較的可撓性の接着剤が有利である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によると、ディスプレイまたは照明部品での使用のための接着剤としてのモノマー組成物およびさらにはこれから得られるポリマー組成物の両方の特性について、先に概説した要件に好適である新規材料が見出された。
【0022】
これらの接着剤組成物は、多くの現在利用可能な製品とは対照的に、ディスプレイにおいて用いられる機能性材料に非常に高度に適合するという事実によって区別される。これらの完全な機能的能力は、光硬化によって一般に達成される。これにより、大量生産において短いプロセス時間が可能になり、したがって、大幅なコスト削減をもたらす。該組成物は、水蒸気に対して高いバリア作用を有する。該組成物は、バリア作用に有利であると証明されている高い親油性または疎水性を有するように設計され得る。記載されている材料は、フッ素化されていてもよく、これにより疎水性をサポートする。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を以下により詳細に記載する。本発明は、一実施形態において、本発明の最も広い意味において接着剤として好適である組成物を包含する。本発明による組成物は、式−O−CH=CHの1個または複数の基および少なくとも1個の炭素環式基を含有する1種または複数のビニルエーテルモノマーと、
a)式Iaのビニルエーテル化合物(以下参照)または
b)1000〜10,000の分子量を有するポリマー性炭化水素および/もしくは式Ibの化合物を含む親油性の非重合性成分(以下参照)
から選択される少なくとも一方のさらなる成分とを含み、ビニルエーテルおよびフルオロビニルエーテルの一緒になった全含量は、少なくとも50重量%である。
【0024】
本発明の実施形態によると、本発明による組成物は、構造Iaの1種または複数のビニルエーテルモノマーを含み、これにより、標準の市販のビニルエーテル(例えばVEctomer(商標))の特性がかなり改善される。さらなる添加剤として、ゲッタおよび/または親油性のマイクロドメイン形成物質が混合され得る。エポキシドまたはグリシジルエーテル誘導体をビニルエーテル混合物に添加することで、OLEDおよびLCDの機能を低下するアミン添加を必要としない連続硬化のための接着性組成物の生成を可能にする。用いられる光開始剤は、ヨードニウムまたはスルホニウムタイプのいわゆるカチオン重合開始剤である。例えば、N−アルキルマレイミドなどの電子不足二重結合を含有する受容体が、供与体特性を有するビニルエーテルに化学量論量で添加されると、光開始剤を用いなくても照射により重合するEDA(電子−供与体−受容体)系がインサイチュで形成される。このフリーラジカル重合は、「フリーラジカル」光開始剤、例えば、アシルホスフィンオキサイドまたはベンゾイル構造を有するいわゆるIrgacure(商標)製品の添加によって加速され得る。この新規の、マレイミドとの共重合は、ビニルエーテル基のフッ素置換によって、開始剤を用いることなく進行し、その結果、分解生成物または開始剤の残留物に起因した接着剤組成物の品質の低下が回避される。
【0025】
本発明によるビニルエーテルIaは、以下に示す構造を有する:
【0026】
【化1】

式中、
、m、mは、0、1または2を示し、ここで、m+m+m=2〜6であり;
、R、Rは、互いに独立して、H、1〜15個のC原子を有するフッ素化されたまたは置換されていない直鎖または分枝状のアルキル基、(ここで、さらに、これらの基における1個または複数の非末端CH基は、それぞれ、OまたはS原子が互いに直接連結しないように、互いに独立して、−CH=CH−、−(CO)−、−O−または−S−によって置き換えられていてよい)、F、Clを示し;
p1、p3、n1、n3は、0、1、2、3、4または5を示し、ここで、p1+n1=0〜5であり、p3+n3=0〜5、好ましくは0または2であり;
p2、n2は、0、1、2、3または4を示し、ここで、p2+n2=0〜4、好ましくは0または2であり;
ここで、p1+p2+p3≧1であり;
Xは、Q−O−CH=CH、Q−O−CH=CFまたはQ−O−CF=CF、好ましくは−Q−O−CH=CHを示し;
Qは、単結合または−CH−またはC〜C10アルキレン基を示し、ここで、このアルキレン基における1個または複数のCH基が、O原子が隣接しないように、−O−もしくは−S−によって置き換えられていてよく、好ましくは単結合または−CH−を示し;
、A、Aは、それぞれ、互いに独立して、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキシレン基、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキセニレン基、1,2−、1,3−もしくは1,4−フェニレン基(それぞれにおいて1〜2個のCHがOによって置き換えられていても、1〜2個の=CH−が=N−によって置き換えられていてもよい)、またはスピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル基、好ましくは1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基を示し;
、Zは、それぞれ、互いに独立して、単結合、−CHCH−、3〜6個のC原子を有するアルキレン基、−CFCF−、−CHO−、−CFO−、−OCH−、−OCF−、−C≡C−、好ましくは単結合を示し;
ここで、Xが式−OCH=CHの基を表し、A、AまたはAがフェニレン基に結合している場合、それぞれの場合においてXに対してオルト位にある各A基は、水素によって置換されていない。この場合、ベンゼン環のXに対するオルト位は、F、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、Xまたは隣接する環(A、AもしくはAまたはZ、Z)、好ましくはFによって好ましくは置換されている。
【0027】
式Iaの好ましい化合物は、以下から選択される:
【0028】
【化2】

式中、RおよびXは、先に定義した通りである。
【0029】
シクロヘキサン環は、Iaおよびサブ式に関してトランス配置を好ましくは有する。
【0030】
さらに、先に言及したカテゴリーには含まれない、最大で20重量%、好ましくは0〜10重量%のさらなるビニルエーテル成分が添加されてよい。これらは、主として、環系を有さない鎖状化合物である。好適な化合物は、例えば、ドデシルビニルエーテル(K)、すなわち、より一般的には、長鎖アルコール(C14〜C22)のビニルエーテル、さらには、単純なジカルボン酸、例えば、グルタル酸またはアジピン酸のビニルオキシアルキルエーテル(特に、4−ビニルオキシブチル)である。
【0031】
本発明による組成物のための他のビニルエーテル化合物は、好ましくはシクロヘキサン環、ベンゼン環、またはよりまれにはナフタレン環を含めた、少なくとも1個の炭素環式環を有する物質から選択される。これらの環は、好ましくは二置換されており、すなわち末端ではない。これらの化合物は、15〜30個のC原子を好ましくは含有し、ビニルエーテル基および炭化水素構造部の他には、エーテルまたはエステルなどの機能しか有さない。非常に特には1,4−置換シクロヘキサン誘導体を含めた、シクロヘキサン誘導体が特に好ましい。
【0032】
好適なシクロヘキサン誘導体は、以下の式を有する:
【0033】
【化3】

ここで、
kは、0、1またはそれを超え、好ましくは1を示し、
は、1〜15個のC原子を有するフッ素化されたまたは置換されていない直鎖または分枝状のアルキル基{ここで、さらに、これらの基における1個または複数の非末端CH基は、それぞれ、互いに独立して、−CH=CH−、−(CO)−、−O(CO)−、−(CO)O−または−O−によって、O原子が互いに直接連結しないように置き換えられていてよく、ここで、1個の末端CH基は、フェニル(CH、Cl、F、OCH、−(CO)CHによって場合により置換されている)}、さらにはFまたはClを示す。
【0034】
ビニルエーテル基を含有する1,4−置換シクロヘキサン誘導体の好適な例は、以下の公知の成分である:
【0035】
【化4】

さらなる可能なビニルエーテル成分は以下である:
ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]イソフタレート F
ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレート I
トリス[4−(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート NQV
ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレート L
先に言及したビニルエーテル成分の中でも、成分C、D、F、IおよびNQV、特にCおよびDが好ましい。成分Dは、特にベース材料として、すなわち、30〜95重量%の範囲で好適である。成分Dは、ベース材料として用いられるとき、ビニルエーテル成分の好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは70〜95重量%を表す。
【0036】
ビニルエーテルおよびフルオロビニルエーテルの一緒になった全含量は、1重量%未満の硬化剤が使用されるとき、最大で約100重量%である。全含量は、好ましくは70重量%より多く、特に好ましくは80重量%より多い。ビニルエーテルおよびフルオロビニルエーテルの量は、マレイミドとの共重合が望ましいときかなり少なくなる(以下参照)。選択された条件下でマレイミドまたは重合する他のコモノマーが存在しないとき、ビニルエーテルおよびフルオロビニルエーテルの全含量は、好ましくは80重量%より多く、特に好ましくは85重量%より多い。
【0037】
1000〜10,000の間の平均分子量を有するポリマー性炭化水素、例えば、商業用ポリブタジエンまたはポリ−α−ピネンなどとは別に、炭化水素、例えば、スクアレンなどを、バリア形成ミクロ相の形成のために添加することもできる。
【0038】
一般式Ib
【0039】
【化5】

ここで
、Rは、互いに独立して、C〜C10アルキルを示し、ここで、1個または複数のCH基が−CH=CH−基によって置き換えられていてよく、またはHがFによって置き換えられていてよく、
、Aは、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキシレン基、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキセニレン基または1,2−、1,3−もしくは1,4−フェニレン基を示し、
は、単結合、(−CH−)、−CH=CH−、−CF−CF−、−C≡C−、−OCF−または−CFO−を示し、ここでr=1〜6である;
の環状炭化水素の本発明による添加も特に成功裏であることが証明された。
【0040】
Ibにおいて、好ましくは、互いに独立して:
、Aは、互いに独立して、1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基を示し、
、Rは、互いに独立して、C〜C10アルキルまたはC〜C10アルケニルを示し、
は、単結合または−CHCH−を示す。
【0041】
式Ibの化合物は、最大で25重量%の量で、好ましくは最大で15重量%の量で添加される。これらの炭化水素Ibをビニルエーテル混合物に対して最大で25%の比率で添加することで、化合物Iaの比率を0%まで低下することができる接着剤を得ることが可能になる。炭化水素は非極性であるため、撥水作用を有する。炭化水素はビニルエーテルと共重合して、拡散バリアとして作用する、極めて微細に分割された液滴を形成する。
【0042】
式IaおよびIbの化合物の全体量は、好ましくは3から25重量%の間で変動する。全含量は5〜15重量%が特に好ましい。
【0043】
水および酸素の進入に対する保護のために、200nm未満の寸法を有し、結晶、アモルファス、無機または有機の性質を有するミクロ相がポリマー内にしばしば導入される。これらのミクロ相は、物理吸着(例えばゼオライト、アエロジル)または化学吸着(例えば、CaO、BaO)を介して作用するとき、ゲッタとして公知であり、ベースポリマーに対して相対的な拡散バリアとして作用し、したがって、バリア(例えばポリブタジエン、ポリ−α−ピネン、SiO単分散球)として公知である。親油性のモノマー性炭化水素、例えば、スクアレン、またはアルキルもしくはアルキレン置換基を含有する二環式から三環式液晶も、ミクロ相の重合および形成の間の接着剤組成物の分離によるバリア形成ミクロ相の形成に好適である。
【0044】
ガラス界面における接着剤材料の強い接着による例えば水の有害な拡散プロセスを最小限にするために、共反応性アルコキシシランが約5%付近の量で添加され得る。これらは、アルコキシシラン基とガラス表面のSi−OH基との反応によって誘発される理想的には化学吸着によって、アルコール形成を伴って、ガラス表面に接着し、ガラス表面を、接着剤組成物のモノマーと共重合する第2反応性基を介して接着剤材料に連結させる。言及することができるエポキシ接着剤の共反応性例は、グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0045】
エポキシドは、特に、さらなる添加剤として興味深い。無害のビニルエーテルによる希釈もまた、エポキシド含有混合物を、OLED陰極に比較的適合性にする。添加剤としてのエポキシドは、ビニルエーテルと異なる重合挙動を有するため、硬化した材料に改善された靱性を付与し、連続硬化の可能性を広げる(以下参照)。したがって、本発明の実施形態において、30重量%超、好ましくは40重量%超のビニルエーテル(末端基−O−CH=CH)および20から55重量%の間のエポキシドを含む組成物が開示される。エポキシド対ビニルエーテルの重量比は、1.5を超えるべきではない。重量比は、好ましくは0.5から1.2の間である。この実施形態におけるビニルエーテルおよびフルオロビニルエーテルの一緒になった全含量は、特に好ましくは50重量%超である。好ましい重合開始剤は、他の実施形態に対応する。
【0046】
好ましい実施形態において、本発明による組成物は、アクリレートモノマーを含まない。このようにして得られる材料は、一般に、硬化の際に収縮をほとんど示さない。にもかかわらず、他の技術的理由のために、ある比率のアクリレートが有利である場合がある。これらの利点は、用途に応じて検討されるべきである。
【0047】
接着剤は、UV光を用いて基板ガラスを通して一般に露光されて、硬化される。数秒または数分後には、接着剤は、強固になり、OLED構造をさらに処理することができる。
【0048】
連続硬化
組成物が複数のプロセスステップで重合されるとき、重合は、最も簡単な場合には前重合および後重合に分割される(連続硬化)。
【0049】
このタイプの手順は、組成物が適用部位に残存してその形状を保持するように前重合によって増加された粘性を液状または粘性組成物に与える可能性を広げる。この段階では、接着剤特性は依然として非常に高く、部品の接着が依然として可能であることを意味している。塗布された組成物の付近において全ての部品を組み合わせた後でのみ、耐久性の接着が、後重合において生成される固体ポリマーの形態としてもたらされる。
【0050】
基板の両面のコーティングもまた、非極性モノマー成分が気相の側に向かって好ましくは拡散するため、特に連続硬化の場合において有利であり得るが、比較的極性の構成成分が、極性基板に物理吸着または化学吸着され、後者が、単一のコーティングの場合よりも基板側へのより良好な接着を達成することを意味している。
【0051】
さらなるプロセスステップ、例えば、組成物の付近での物質の適用、(半)導体、フィルタなどの印刷、またはカバー基板の適用などが、前重合と後重合との間に実施されてよい。好ましくは、液晶ディスプレイデバイスの基板の第1表面に塗布された組成物の前重合の後に、液晶混合物が後のステップにおいてこの第1表面に塗布される。続いてデバイスは、対向する第2基板の適用によって封止され、後重合によって固体化される。組成物は、基板間の接着剤としてここでは役立ち得る。同時に、組成物はまた、分離線の発生またはディスプレイデバイスの個別領域(例えばピクセル)の画定にも役立ち得る。後者の場合には、組成物が、好ましくは印刷技術によって、三次元構造の形態で堆積され前硬化される。本発明の実施形態において、液晶混合物は、小さな液滴の形態でこれらの構造内に導入される。この技術は、「液晶滴下」(ODF)として、液晶ディスプレイの分野の当業者に基本的によく知られている。
【0052】
最も広い意味において、連続硬化もまた、接着すべき部品の全ての領域に硬化用のUV放射線が到達可能でない場合、有利に使用され得る。例えば、陰極は、下部層を遮る層であり、したがってUV硬化に悪影響を与える。かかる場合には、製造プロセスに起因した部品の陰の領域を後重合することができる追加の熱重合が有利である。
【0053】
連続硬化の原則は:
1)別個のプロセスステップにおいて、異なる硬化原則、例えば、放射線硬化および熱硬化、またはその逆;
2)異なる反応時間を有する異なる材料、例えば、ビニルエーテルの放射線硬化には短い反応時間、およびエポキシドの放射線硬化にはかなり長い反応時間;
3)波長に対して異なる感度を有する光硬化材料/混合物
であってよい。
【0054】
連続硬化のための組成物
本発明の好ましい実施形態において、請求項1による組成物は、2種の異なる硬化系、熱系および光化学系、または異なる波長の光をベースとする2種の光化学系を含む。各場合において、これらの系に合う種々のモノマーが存在していてよい。組成物は、ここでは、ビニルエーテルおよびエポキシド、特にジグリシジルエーテル(ビスエポキシド、実施例部を参照されたい)を好ましくは含む。対応する種々の硬化剤が存在していてよい。したがって、組成物は、光硬化に加えて熱硬化ステップに好ましくは付される。組成物は、光化学的に重合され得るビニルエーテル成分をさらに含む。したがって、組成物は、少なくとも90%のこれらのエポキシド化合物をベースとする従来の接着剤系よりも低い含量のジグリシジルエーテルを含む。より低い含量のエポキシドは、ポリマーが、より少ない末端ヒドロキシル基を含有することを意味する。さらに、親油性および蒸気不浸透性が、ビニルエーテルによってかなり増大される。最終的に、該系は、制御可能な2段階硬化(連続硬化)を可能にする。
【0055】
PS−VAのための使用
「ポリマー安定化垂直配向」(PS−VA)法は、負の誘電異方性を有する液晶材料(LC材料)の垂直配向のための重合性材料の接着機能を用いる(特開平10−036847号、EP 1 170 626 A2、EP 1 378 557 A1、EP 1 498 468 A1、US 2004/0191428 A1、US 2006/0066793 A1およびUS 2006/0103804 A1の明細書を参照されたい)。VA−LC材料は、垂直前配向(VA)に一般に付される。ポリマー安定化前配向(PS−VA)のために、対応するLC混合物は、接着剤のモノマー成分と混合されて、LCディスプレイの既に接着された電極または接着されていない電極の間で20〜50Vの電圧で垂直に配向される。配向の間、混合物は照射され、光重合性モノマーは、重合の間の分離に起因して垂直のポリマーカラムを形成し、これらのカラムは低電圧においても垂直配向を維持する。
【0056】
したがって、本発明の実施形態において、組成物は、ポリマー安定化液晶組成物のための添加剤として用いられる。したがって、最終生成物は、PS−VAディスプレイデバイスにおける配向ポリマーとしての組成物の使用を包含する。ビニルエーテルポリマーの添加量は、好ましくは0.3〜3重量%であり、20重量%の含量の重合性LCモノマー(ビニルエーテル、エポキシド誘導体)が好ましい。
【0057】
重合開始剤
組成物の重合は、カチオン重合開始剤の存在下で好ましくは実施される。かかる開始剤系は、公知であり、例えば、トリアリールスルホニウム塩またはジアリールヨードニウム塩を含む。トリアリールスルホニウム塩が特に好ましい。実施例部において言及する[Ph−Ph−S−Ph−SPh][SbF形態の触媒が特に非常に好ましい。アンチモネートの代わりに同様に好適である対イオンは、ヘキサフルオロホスフェートアニオンである。
【0058】
前記物質は、種々の具体的な形態(実施例を参照されたい)で当業者に公知であり、市販されている。開始剤を改善するために、増感剤が添加されてもよい。開始は、1つのタイプの光、特にUVを用いて好ましくは実施される。用いられる光開始剤系は、組成物の共成分によって、または用いられるディスプレイカバーガラスによって完全に吸収されない光のスペクトルにおいて活性を有するように一般には適合される。
【0059】
組成物はまた、熱重合開始剤、例えば、酸性開始剤などを含んでもよい。かかる添加剤は、当業者によく知られている。一般には、電子部品の熱負荷が回避される。しかしながら、光開始剤に加えて熱開始剤を使用することで、重合速度の特定の要件を満たすことを可能にする。例えば、種々のタイプの開始剤の組合せにより、組成物の多段階硬化(連続硬化)を達成することができる。このシーケンスは、個々のプロセスステップにおける熱および光の使用によって制御される。
しかし、先に言及したカチオン光開始剤からのインサイチュでの光化学的なプロトン生成は、熱硬化の前の第1ステップにおける組み合わされた光化学/熱連続硬化において好ましい。形成されたプロトンは、α位の炭素上でのカルボカチオンの形成によって、ビニルエーテル基のβ炭素原子をプロトン化する。これにより、再びα−カルボカチオンの形成によって、β位においてさらなるビニルエーテル分子をアルキル化する。このステップの繰り返しを通して、重合の初期段階において、さらなるモノマーおよび熱的に活性な中間体によって包囲されるポリマーが形成される。これらの中間体は、恐らくは、ビニルエーテルの残存カルボカチオンもしくはπ−電子錯体、またはエポキシドのσ−プロトン付加物、すなわち、そのオニウムカチオンであり、カルボカチオンに熱的に変換され、次いで残存モノマーと反応する。
【0060】
2ステップ重合のさらなる可能性は、波長依存的に機能する2種以上の光開始剤からなる開始剤系である。時間的に隔たりがある重合ステップは、このようにして達成することもできる。
【0061】
マレイミドとのコポリマー
本発明のさらなる実施形態によると、組成物は、1種または複数のマレイミド化合物(以下の用語の定義を参照されたい)をさらに含む。好ましい誘導体は、好ましくはN−アルキルマレイミドを含めたN−置換誘導体である。マレイミドは、組成物中のビニルエーテル化合物の量に対して化学量論量で、すなわち、最大で50mol%で好ましくは使用される。一般に、硬化の間にビニルエーテルとのコポリマーが形成される。本発明のこの実施形態において、カチオン重合開始剤は一般に省略される。このタイプのカチオン開始剤は、ビニルエーテルのモル比率がマレイミドに対して優勢であるとき、有利に添加され得る。ビニルエーテルとマレイミドとの共重合は、フリーラジカル開始剤によってさらに加速され得る。
【0062】
本発明のこの実施形態において使用されるビニルエーテル成分は、好ましくは以下の化合物:
1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(C)
4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチルベンゾエート(D)
トリス[4−(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート(NQV)
【0063】
【化6】

ならびに、構造式Iaの化合物、例えば式Iaのビシクロヘキシル化合物、例えば、
【0064】
【化7】

などである。
【0065】
特に非常に好ましくは、複数のこれらの化合物の組合せ、特に、少なくとも成分DおよびCの組合せである。CとDとの比は、硬化した組成物の所望の硬度に応じて変動され得る。70〜99mol%の範囲のD対Cのモル比が好ましい。最終硬度は、Dに比べてCの比率が増大するにしたがって増大する。反対に、Dの比率が増大すると、接着特性が向上する。
【0066】
この実施形態において、組成物はまた、式:
【0067】
【化8】

[式中、アルキルは、1〜6個のC原子を有し、エチル、n−プロピルまたはn−ペンチルを好ましくは示す]
の化合物から好ましくは選択される、化学量論的に定義された比率の式Iaの化合物も含む。
【0068】
式Iaまたはサブ式の化合物の比率は、ビニルエーテル化合物の全含量を基準にして好ましくは3〜30mol%である。
【0069】
使用されるマレイミドの好ましい比率は、ビニルエーテル成分を基準にして最大で50mol%である。
【0070】
マレイミドが共成分として用いられるとき、フッ素化ビニルエーテルを共重合することもできる。フッ素化ビニルエーテルは、例えば、式−O−CH=CFの末端基を含有し(例えば、CCU−3−OXFなど)、または式−O−CF=CFの末端基を含有する(例えば、CCU−5−OWFなど)。
【0071】
マレイミドを含む組成物は、開始剤の添加によらずに一般には光化学的に硬化され得る。したがって、ポリマーは、開始剤の残留物によって誘発されるいずれの副生成物も本質的に放出しない。これは、敏感な接着部品の寿命を増大させる。UV硬化のために、例えば、FeドープHg中圧ランプの放射線を用いることができる(付録の図面1を参照のこと)。
【0072】
ビニルエーテル化合物Iaの調製
特に構造Iaのビニルエーテルまでの多数の合成経路が、DE 19959721A1明細書に原則として記載されている。
【0073】
ビニルエーテルの単なる供給のために以下に示す方法が挙げられる。
−触媒としての(Ir(cod)Cl)および酢酸ビニルによるアルコールおよびフェノールのビニル交換反応(Y.Ishiiら、Org.Synth.、2005、82、55頁およびJ.Am.Chem.Soc.、2002、124、1590頁)。
−自動置換トリフルオロビニルエーテルの合成(およびその熱二量体化または連鎖重合)のためのスズキカップリング(D.W.Smith,Jr.ら、Polymer Preprints、2004、45、91頁)。
−ハロアルキルビニルエーテルを用いたフェノール/アルコールのアルキル化によるアルコキシビニルエーテルは、証明された収束合成原則を示す(J.V.Crivelloら、J.Polym.Science:Polymer Chem.Edition、1983、21、1785頁)。
【0074】
末端基−OCH=CFおよび−OCF=CFを含有するフッ素化ビニルエーテルの調製は、DE 19647991、DE102008004062、DE 09650634およびDE 4217248の明細書に記載されている。
【0075】
デバイス、使用およびプロセス
したがって、本発明は、本発明による組成物によってエッジにおいてまたは全域にわたって封止、封入またはコーティングされている光電子デバイスに関する。このデバイスは、好ましくはディスプレイデバイス、例えば、LCDまたはOLEDディスプレイである。特に好ましくは、水または酸素に敏感な部品を有するディプレイである。
本発明は、構造の2つの隣接する層が組成物によって全域にわたって互いに接着されているデバイスに特に好適である。全域にわたって、格子形態で塗布され、格子、線、または点で局所的に表面にわたって分布されている接着剤を含んでいてもよい。
【0076】
本発明は、二次元基板および(好ましくは透明の)カバー層を含む複数の層からなる光電子デバイスの製造方法であって、以下のプロセスステップ:
i)請求項1〜9のいずれか1項に記載されている組成物を基板および/またはカバー層に塗布するステップと、
ii)二次元基板および(透明の)カバー層を組成物がそれらの間に位置されるように連結させるステップと、
iii)組成物を完全硬化するステップと
を含む製造方法にさらに関する。
【0077】
変形例において、ステップi)は、塗布後に、好ましくは(UV)光照射による第1硬化(前硬化)を既に含む。次いで、ステップiii)において、i)で開始される硬化が、好ましくは加温または再照射によって、特に、加温によって継続される。
【0078】
組成物の照射は、デバイスの透明のカバー層を通して好ましくは実施される。
【0079】
用語の定義
ビニルエーテルモノマーは、式−O−CH=CHの少なくとも1個の基を含有する有機化合物である。かかる化合物は、好ましくは1、2または3個、よりまれには4個のかかるビニルエーテル基を含有する。
【0080】
本発明において意味するゲッタは、水または酸素に吸着または化学的に結合する物質である。このタイプの水および酸素結合材料は、例えば、CaOなどに化学的に結合していても、ゼオライト、エアロジルまたはSiO粒子に物理的に結合していてもよい。サイズは、材料がディスプレイデバイスの透明部に用いられるとき、光学特性により最大でも200nmであるべきである。粒子サイズがより大きい場合には、特性が有利でない組成物のヘイズが粒子に起因して生ずる。
【0081】
本発明において意味するエポキシドは、1個または複数のオキシラン環を含有する重合性化合物である。オキシラン環は、メチレンオキシ基、すなわち、いわゆるグリシジルエーテルを介して好ましくは結合される。特に好ましくはビスグリシジルエーテルである。公知の例は、ビスフェノールAのビスグリシジルエーテル(BADGE)およびビスフェノールFのビスグリシジルエーテル(BFDGE)、
【0082】
【化9】

または1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルである。
【0083】
さらなるクラスのエポキシドは、3,4−エポキシシクロヘキシル化合物である。両方のクラスのエポキシドが工業的に使用され、多様なバリエーションで市販されている。
【0084】
本発明において意味する充填剤は、組成物に不溶な固体である。該充填剤は、無機物質からしばしばなり、いくつかのいわゆるゲッタ材料も含む。
【0085】
上記および下記の重量パーセント(重量%)のデータは、固体として組成物中に存在するいずれの充填剤の比率も含まない(例えば、5部の組成物+1部の、例えば、無機固体、例えば二酸化ケイ素からなる充填剤の変形例)。したがって、重量パーセントのデータは、狭義で組成物の有機相に関する。
【0086】
本発明において意味するマレイミド化合物は、マレイミド(ピロール−2,5−ジオンまたはマレイミドとしても公知)およびその誘導体である。N−アルキルマレイミド(マレイミド)は、式IIIの化合物である:
【0087】
【化10】

式中、Rは、C〜C10−アルキル基を示す。Rは、好ましくは、1〜6個のC原子を有する低級アルキル基である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】FeドープHg中圧ランプの発光スペクトルを示す図である。図は、用いたUVランプのスペクトルを示す。横軸には波長が200から600nmまで線状にプロットされ、縦軸には相対的なスペクトル強度が%(0〜40%)でプロットされている。
【実施例】
【0089】
用いたビニルエーテル
1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル C
4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチルベンゾエート(Vectomer 3040(商標)) D
(供給元:Aldrich番号49,645−6)
ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]イソフタレート(Vectomer 4010(商標)) F
ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレート(Vectomer 4040(商標)) I
ドデシルビニルエーテル K
トリス[4−(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート(Vectomer 5015(商標)) NQV
式Ia:
【0090】
【化11】

【0091】
【化12】

に該当するビニルエーテル。
【0092】
開始剤(硬化剤)
別途注記しない限り、使用された「UV硬化剤」は、以下の仕様を有する光開始剤である:
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、プロピレンカーボネート中50重量%、Aldrich番号654027。
【0093】
活性物質は、塩[Ph−Ph−S−Ph−SPh][SbFから本質的になる。
示した量は、希釈溶液に関する。開始剤の実際の量は50重量%である。
【0094】
Degacure(商標)K185(Degussa)、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェートは、その構造において、先に言及したスルホニウム硬化剤に相当するが、アンチモネートの代わりの対イオンとしてヘキサフルオロホスフェートアニオンを含有するため、アンチモネート誘導体と同じ効率を実質的に有しながら毒性がより低い。したがって、これは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのポリマーをベースとする毒性学的に許容される食品包装の製造のための光開始剤(Degacure(商標)K128=Uvacure(商標)1500)として好適であり、生産規模での使用においてアンチモネートよりも好ましい。
【0095】
例として、灰色の着色を引き起こす可能性があるが、OLED陰極に適合する硬化剤Oman071(商標)がさらに挙げられる。これも連続硬化に好適である。
【0096】
Oman071(商標)(ABCR):p−(オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート。
【0097】
本発明による式Ibに類似する添加剤は、例えば、環状炭化水素CC−3−V1およびCC−3−Vである:
【0098】
【化13】

モノマー性炭化水素(例えばスクアレン)またはポリマー性炭化水素、例えば、ポリブタジエンまたはポリ−α−ピネンもまた、比率の化合物Iaを含むビニルエーテル混合物に添加されてよい。
【0099】
N−プロピルマレイミド(MPr)
商業用マレイミドのシリーズの中でN−アルキルマレイミドは、光開始剤なしの重合に必要である、比較的少ない、化学量論的に必要な量のビニルエーテルに溶解する好適な代表例である。N−プロピルマレイミドのビニルエーテルD中への特に良好な溶解性が注記されている。硬化時間は、1〜2分の範囲である。
【0100】
手動試験による接着の決定:
ソーダ石灰ガラスまたはホウケイ酸ガラスのいずれかの、50×50mm、厚さ0.7mmの2枚のガラス板を、約10mmの突起部がオフセット側に生ずるように互いにオフセットに接着させる。突起部には1枚のガラス板のみが存在する。ガラス板を突起部によって両手で屈曲させることによって負荷をかけることができる。手動屈曲によって板を分解させることができないとき、硬化はポジティブであると評価される。硬化が十分でないため、または接着が十分でないときは接着が脆弱に反応するため、手動負荷による分離が生じる。次いで、接着剤とガラスとの間の接着が分離する。この試験での接着剤層は、粘性に応じて、0.1から0.3mmの間である。
【0101】
照射
85mW/cmの電力を有するHg中圧ランプを用いる。該ランプは、275から450nmの間のUV放射線および可視領域においてより低い領域を有する(図1を参照されたい)。
【0102】
一般の混合物実施例
百分率データは、別途示さない限り、重量パーセントに関する。示した実施例は、示した%比率以外のさらなる固体充填剤を含まない。
【0103】
ビニルエーテルをベースとする親油性組成物の混合物実施例
以下の組成物(実施例1〜5)は、該手動試験において強い接着を形成する。成分CC−3−V1は、重合されない。露光時間は、約85mW/cmで約5〜30秒である。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【0109】
【表6】

【0110】
【表7】

【0111】
【表8】

【0112】
【表9】

マレイミド(MPr)との混合物
混合物を、示したUVランプを用いて1〜2分間露光する。
【0113】
【表10】

【0114】
【表11】

OLED部品における陰極適合性の決定:
モノマーである接着剤組成物を脱気せず、保護ガスを用いることなく混合し、次いでグローブボックス内に導入し、約0.5mmの厚さのOLED陰極に適用し、カバーガラスを押圧しない。硬化後、OLEDを保護ガス下で電気的に取り扱い、それらの発光画像を、あらゆる陰極損傷に関して評価する。光開始剤の含量を、陰極との適合性を実証するために高くなるように意図的に選択した。
【0115】
用いた陰極は、アルミニウムタイプでフッ化リチウムからなった。
【0116】
材料「D」およびN−プロピルマレイミドの精製後、信頼できる良好な結果が得られる。材料Dを、好適な有機溶媒を用いた、シリカゲルを通した濾過によるクロマトグラフィによって精製する。マレイミドMPrを真空蒸留によって精製する。
【0117】
以下に示す実施例は、全てが、陰極およびソーダ石灰ガラスにおいて良好な濡れ性を示す。
【0118】
OLEDアレンジメントの品質を、接着剤組成物の塗布後、重合後、および72時間の発光操作後に、処理されていないアレンジメントと比較する。OLEDアレンジメントの光出力を、各場合において、輝度と、欠陥のある暗い領域の発生とに関して試験する。
【0119】
発光画像によって、損傷されていないと見られる陰極を、以下の組成物によって得る:
【0120】
【表12】

【0121】
【表13】

【0122】
【表14】

【0123】
【表15】

【0124】
【表16】

【0125】
【表17】

連続硬化の実施例
実施例1と類似の手順を、露光を5秒のみにして実施する。露光を、顕著であるが不完全な硬化が露光直後に観察されるように選択した。UV光によって励起されるサンプルが後に完全に硬化する能力を有するという事実に注意を向けた。さらに、より完全な硬化のために少なくとも5秒のUV光による硬化時間を目標とした。より短い硬化時間は完了が困難であると認められた。処理、硬度および接着に関する最適化が要件に応じてなお可能である。
【0126】
【表18】

【0127】
【表19】

【0128】
【表20】

【0129】
【表21】

【0130】
【表22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式−O−CH=CHの1個または複数の基および少なくとも1個の炭素環式基を含有する1種または複数のビニルエーテルモノマーと、
a)式Iaのビニルエーテル化合物:
【化1】

[式中、
、m、mは、0、1または2を示し、ここで、m+m+m=2〜6であり;
、R、Rは、互いに独立して、H、1〜15個のC原子を有するフッ素化されたまたは置換されていない直鎖または分枝状のアルキル基、(ここで、さらに、これらの基における1個または複数の非末端CH基は、それぞれ、OまたはS原子が互いに直接連結しないように、互いに独立して、−CH=CH−、−(CO)−、−O−または−S−によって置き換えられていてよい)、F、Clを示し;
p1、p3、n1、n3は、0、1、2、3、4または5を示し、ここで、p1+n1=0〜5であり、p3+n3=0〜5であり;
p2、n2は、0、1、2、3または4を示し、ここで、p2+n2=0〜4であり;
ここで、p1+p2+p3≧1であり;
Xは、Q−O−CH=CH、Q−O−CH=CFまたはQ−O−CF=CFを示し;
Qは、単結合または−CH−またはC〜C10アルキレン基を示し、ここで、このアルキレン基における1個または複数のCH基が、O原子が隣接しないように、−O−もしくは−S−によって置き換えられていてよく;
、A、Aは、それぞれ、互いに独立して、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキシレン基、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキセニレン基、1,2−、1,3−もしくは1,4−フェニレン基(それぞれにおいてCHがOによって置き換えられていても、=CH−が=N−によって置き換えられていてもよい)、またはスピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル基を示し;
、Zは、それぞれ、互いに独立して、単結合、−CHCH−、3〜6個のC原子を有するアルキレン基、−CFCF−、−CHO−、−CFO−、−OCH−、−OCF−、−C≡C−を示し;
ここで、Xが式−OCH=CHの基を表し、A、AまたはAがフェニレン基に結合している場合、Xに対してオルト位にある各A基は、水素によって置換されていない];
あるいは
b)1000〜10,000の分子量を有するポリマー性炭化水素および/もしくは式Ibの化合物を含む親油性の非重合性成分:
【化2】

[式中、
、Rは、互いに独立して、C〜C10アルキルを示し、ここで、1個または複数のCH基が−CH=CH−基によって置き換えられていてよく、またはHがFによって置き換えられていてよく、
、Aは、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキシレン基、1,2−、1,3−もしくは1,4−シクロヘキセニレン基または1,2−、1,3−もしくは1,4−フェニレン基を示し、
は、単結合、(−CH−)、−CH=CH−、−C≡C−、−CF−CF−、または−CFO−を示し、ここでr=1〜6である];
から選択されるさらなる成分とを含み、ビニルエーテルおよびフルオロビニルエーテルの一緒になった全含量は、少なくとも50重量%である、組成物。
【請求項2】
ビニルエーテルおよびフルオロビニルエーテルの一緒になった全含量が、少なくとも70重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
最大で25重量%の、式Iaの1種または複数のビニルエーテル化合物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
最大で25重量%の、式Ibの1種または複数の化合物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
最大で50重量%の重合性エポキシドを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
トリアリールスルホニウム塩から好ましくは選択される、カチオン重合のための開始剤を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
最大で45重量%のジフルオロ−および/またはトリフルオロビニルエーテルを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
最大で40重量%のマレイミドを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
粘性、チクソ性および/または表面張力に影響するための添加剤を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
重合によって硬化されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1から10に記載の組成物によってエッジにおいてまたは全域にわたって封止、封入またはコーティングされていることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項12】
OLED素子を含有することを特徴とする、請求項11に記載の光電子デバイス。
【請求項13】
複数の層からなる請求項11または12に記載の光電子デバイスあって、隣接する少なくとも2層が組成物によって全域にわたって互いに接着されていることを特徴とする、光電子デバイス。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物の、光電子部品における接着剤、コーティングまたは封止組成物としての使用。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物の、VAディスプレイデバイスにおける配向ポリマーとしての使用。
【請求項16】
二次元基板およびカバー層を含む複数の層からなる光電子デバイスの製造方法であって、以下のプロセスステップ:
i)請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物を基板および/またはカバー層に塗布し、場合により第1硬化するステップと、
ii)二次元基板およびカバー層を、組成物がそれらの間に位置されるように連結させるステップと、
iii)組成物を完全硬化するステップと
を含む製造方法。
【請求項17】
ステップiii)における完全硬化が、透明のカバー層を通した組成物の照射および/またはデバイスの熱処理によって実施されることを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−520904(P2012−520904A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500101(P2012−500101)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001170
【国際公開番号】WO2010/105730
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】