説明

ビニル基および極性基含有プロピレン系共重合体及びそれを用いる重合体の製造方法。

【課題】極性基含有プロピレン系共重合体を提供する。
【解決手段】極性基含有プロピレン系共重合体を、プロピレン単位50〜99.9モル%、下記一般式(C)で表される単位0〜49.9モル%、下記一般式(D)で表される単位0.1〜50モル%を含有し、末端ビニル基を有し、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であるものとする。
一般式(C):
【化1】


一般式(D):
【化2】


(これらの式中、nは1〜20、Xは−OH、−COOH、−SOOH又は−SOOOH基)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル基および極性基含有プロピレン系共重合体、及びそれを用いる重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、機械的物性、成形性、化学的安定性に優れ、コストパフォーマンス上も非常に優秀であることから、最も重要なプラスチック材料の一つとして多くの分野で使用されている。しかし、化学的に安定である反面、無極性のため接着性や染色性に劣ることや他のプラスチック材料との混和性が悪い等の問題がある。この問題を解決するために極性基を導入したプロピレン系共重合体を製造しようと多くの試みがなされている。
【0003】
まず最初には、特開昭55−98209号、特開平3−177403号、特開平6−172447号、特開平8−53516号の各公報等にて、極性基含有モノマーをZieglar−Natta触媒の存在下で直接重合することが提案された。ただし、Zieglar−Natta触媒は、酸素等のルイス塩基との親和性が非常に高くこれらと反応して失活してしまうために、有機アルミニウムをはじめとするルイス酸で極性基を保護して重合に用いられた。しかし、この方法でも極端に多くのルイス酸を必要とすることや重合活性の極端な低下が起こる等の問題があった。
【0004】
次に、特開昭55−165907号公報、Kim,I.;Shin,Y.S;Lee,J.K. J.Polym.Sci.,PartA: Polym.Chem.2000,38,1590等で非共役ジエンを共重合する方法が提案された。これは、一方のオレフィン部分で付加重合を行い、側鎖に残存するもう一方のオレフィン部分を後変性するものである。この方法は、ジエンの両方のオレフィン部分が分子内や分子間で重合を起こしてしまい、環化や架橋によるゲル化を引き起こし所望のプロピレン系共重合体が得られないといった問題があった。
【0005】
さらに、特開平4−1210号、特開平4−93305号、特開平4−218514号の各公報等ではアルケニルボランやアルケニルシランを共重合し、その後酸化分解して水酸基が導入された共重合体を得る方法が提案されている。しかし、ボランの場合にはアルケニルボランを得るための反応剤が高価であることや反応溶媒としてテトラハイドロフラン等の非プロトン性極性溶媒が必要であり、重合反応への持ち込みには高度な溶媒除去を要するという問題がある。シランの場合にも酸化分解反応で過酷な反応条件を必要とする等の課題がある。
【0006】
ところで、近年、酸素親和性の低い後周期の遷移金属錯体を用いることで極性モノマーを保護基なしで直接重合しようとする試みがなされている。例えば、Brookhartらは、パラジウム錯体でオレフィンとアルキルアクリレートの共重合体を得ている(Brookhart, M.J.Chem.Soc. 1996, 118,267−268)。また、Grubbsらは、ニッケルのキレート型錯体を開発している(Grubbs,R. Science 2000,287,460−462)。ただし、これらはエチレンとの共重合であり、プロピレンをはじめとするα−オレフィンの系では、共重合性能や立体規則性の観点から極性モノマーの直接共重合は極めて難しい状況にある。
そこで、極性基を含有する立体規則性プロピレン系共重合体を安価で簡便に製造する方法が求められていた。
一方、末端に二重結合を有する立体規則性プロピレン重合体は、ポリプロピレンに長鎖分岐を入れるためのマクロマーとしてその製造技術が求められていた。Macromolecules 28,2,437(1995)では、TiClとオクテニル亜鉛とジエチルアルミニウムクロリドにより、末端にオクテニル基が入ったポリプロピレンの製造を行っている。しかしながら、オクテニル亜鉛は、それ自身の製造方法が複雑であり、工業的には簡易的に製造できる技術が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記問題点及び技術課題を解決できる極性基含有プロピレン系共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような状況に鑑みて検討した結果、トリアルケニルアルミニウム化合物をプロピレンと共重合させ、末端にアルケニル基を有するプロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体を得た。また、重合中にマクロマーとしての役割も示して長鎖分岐ポリプロピレンを有するプロピレン共重合体の生成の道が示された。さらに、これに酸化分解をはじめとする後反応を施すことにより、簡便に末端にビニル基を有しかつ極性基を含有するプロピレン系共重合体を製造し得ることを見出した。さらに、この方法で製造された極性基を含有するプロピレン系共重合体は、それから、後反応の調節により新規のコモノマー構造を持つ共重合体が得られることを見出した。本発明はこれらの知見により完成された。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン単位を50〜99.9モル%、下記一般式(C)で表される単位を0〜49.9モル%、下記一般式(D)で表される単位を0.1〜50モル%含有し、末端ビニル基を有し、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とするビニル基および極性基含有プロピレン系共重合体が提供される。
一般式(C):
【化1】

(式中、nは1〜20の整数を示す。)
一般式(D):
【化2】

(式中、nは1〜20の整数、Xは−OH、−COOH、−SOOH又は−SOOOH基を示す。)
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、プロピレン単位を50〜99.9モル%、下記一般式(C)で表される単位を0〜49.9モル%、下記一般式(D)で表される単位を0.1〜50モル%含有し、末端が下記一般式(E)で表される構造を有し、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とするビニル基および極性基含有プロピレン系共重合体が提供される。
一般式(C):
【化3】

(式中、nは1〜20の整数を示す。)
一般式(D):
【化4】

(式中、nは1〜20の整数、Xは−OH、−COOH、−SOOH又は−SOOOH基を示す。)
一般式(E):
CH=CH−(CH
(式中、nは1〜20の整数)
これらの発明におけるビニル基および極性基含有プロピレン系共重合体を単に極性基含有プロピレン系共重合体ともいう。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明に記載の共重合体をマクロマーとし、これを重合または共重合する重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、新規なコモノマー構造を持つ、末端ビニル基を有するプロピレン−アルケニルアルミニウム共重合体をさらに変換させて得られる極性基含有プロピレン系共重合体を与え、それらは高価な試薬や過酷な反応条件を用いることなく、製造できる。極性基として、水酸基、カルボキシル基、スルフィニル基などが適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の極性基含有プロピレン系共重合体は、トリアルケニルアルミニウム化合物とプロピレンを触媒の存在下で共重合させ、得られた共重合体を分解剤と反応させることによって製造することができる。
【0014】
1.トリアルケニルアルミニウム化合物
トリアルケニルアルミニウム化合物は、好ましくは、下記一般式(A)で表される。
一般式(A):
[CH=CH−(CH−Al
【0015】
一般式(A)中、nは1〜20の整数であり、好ましくは2〜12の整数であり、より好ましくは3、4、6、8、又は10である。3個あるアルケニル基は、nが2〜20を満たす限り、同一でも異なっていてもよい。
一般式(A)の具体的化合物としては、例えば、トリプロペニルアルミニウム、トリブテニルアルミニウム、トリペンテニルアルミニウム、ペンテニルジブテニルアルミニウム、トリヘキセニルアルミニウム、ヘキセニルジプロペニルアルミニウム、トリオクテニルアルミニウム、ジオクテニルプロペニルアルミニウム、トリデセニルアルミニウム、デセニルジブテニルアルミニウム、ドデセニルジブテニルアルミニウム、ウンデセニルジオクテニルアルミニウム等を例示することができる。この中で好ましくは、トリプロペニルアルミニウム、トリブテニルアルミニウム、トリヘキセニルアルミニウム、トリオクテニルアルミニウム、ジオクテニルブテニルアルミニウム、オクテニルジヘキセニルアルミニウム、トリデセニルアルミニウムである。
【0016】
上記トリアルケニルアルミニウム化合物の製造法は、公知であり、既知の多くの方法、例えば、非共役ジエンのハイドロアルミネーション反応、アルケニルハライドと有機アルミニウム化合物のクロスカップリング反応、アルケニルリチウムやアルケニルマグネシウムといった有機金属化合物と有機アルミニウム化合物とのトランスメタル化反応等がある。この中で好ましい方法は、非共役ジエンのハイドロアルミネーション反応であり、非共役ジエンとトリアルキルアルミニウムを高温条件下で反応させて、トリアルケニルアルミニウム化合物を製造できる。
【0017】
2.プロピレンとトリアルケニルアルミニウム化合物の共重合
(1)触媒
プロピレンとトリアルケニルアルミニウム化合物の共重合体を得るために用いる触媒は、特に限定はされないが、通常プロピレンの重合に用いられる配位アニオン型の触媒のなかで末端にビニル基を導入するために、有機アルミニウムへの連鎖移動あるいは活性化機構に有機アルミニウムによるアルケニル化反応を伴うタイプの配位重合向けの触媒を使用することができる。
例えば、マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須とする固体触媒成分や、メタロセン触媒を使用することが出来る。この中でもトリアルケニルアルミニウム化合物の共重合性や得られたビニル基含有共重合体がマクロマーとしてさらに重合する、いわゆる長鎖分岐含有プロピレン共重合体の製造の観点からメタロセン触媒を使用することが好ましい。末端に、通常は片末端に、ビニル基を有する共重合体を収率良く得るという観点からは、有機アルミニウムへの連鎖移動が優先的に起こることが重要であり、その観点からはマグネシウム、チタン、ハロゲンを必須として含有する固体触媒成分からなる触媒を用い、無水素条件下比較的高い温度で重合することが好ましい。
【0018】
ここでメタロセン触媒とは、下記の成分(a)と成分(b)、必要に応じて成分(c)からなるものである。
成分(a):共役五員環配位子を少なくとも1個有する周期表4〜6族の遷移金属化合物
成分(b):成分(a)を活性化させる活性化剤であり、下の(b−1)から(b−4)が挙げられる。
(b−1)アルミニウムオキシ化合物
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換可能なイオン性化合物
(b−3)ルイス酸
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム
以下、成分(a)、成分(b)、及び成分(c)について説明する。
【0019】
成分(a):共役五員環配位子を少なくとも1個有する周期表4〜6族の遷移金属化合物
成分(a)は、以下の一般式(1)で表されるメタロセン遷移金属化合物である。
Q(C4−a)(C4−b)MeXY …式(1)
[式(1)中、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、R、Rは水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基を示す。]
【0020】
一般式(1)で表されるメタロセン遷移金属化合物において、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン或いはオリゴシリレン基、または炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基、等が例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なってもよく、次のものを示す。水素、ハロゲン、炭化水素基、または、酸素、窒素、或いは、ケイ素を含有する炭化水素基、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基等を例示することができる。
【0021】
、Rは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基等が例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基、等を典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、特に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したR、Rは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
【0022】
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
【0023】
上記成分(a)の中で、本発明のプロピレン系重合体の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基或いはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレン基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、或いはゲルミレン基で架橋された2,4位置換インデニル基、2,4位置換アズレン基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
【0024】
成分(b):(b−1)アルミニウムオキシ化合物、(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン化合物(ただしルイス酸を除く)、(b−3)ルイス酸、及び(b−4)イオン交換性層状珪酸塩から選ばれる1種以上の成分である。(b−1)、(b−2)、(b−3)、(b−4)についての具体的な化合物の製造方法については、特開平6−239914号、特開平8−208733号、特開平10−226712号の各公報に例示された化合物や製造方法等を挙げることができる。
【0025】
具体的な化合物としては、例えば、成分(b−1)としては、1種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られるメチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、2種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られるメチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサンが挙げられる。また、トリアルキルアルミニウムとアルキルボロン酸の反応物も使用することができる。アルキルボロン酸としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸等のアルキルボロン酸を挙げることができる。
【0026】
成分(b−2)としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを挙げることができ、(b−3)としては、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを挙げることができる。
【0027】
成分(b−4)としては、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよく、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等の化学処理が施されていることが好ましい。
【0028】
成分(c):有機アルミニウム化合物
成分(c)は、有機アルミニウム化合物であり、必要に応じて用いられる。
有機アルミニウム化合物の例としては、下記一般式(2)で表される化合物である。
AlR3−a …式(2)
(式(2)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Pは水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数である。)
一般式(2)で示される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、またはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシド等のハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。またこの他、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン類等も使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0029】
さらに、好適に用いられるメタロセン触媒は、所望のアイソタクチック特異性及びシンジオタクチック特異性を発現させるものが好ましい。
また、コモノマーとしてトリアルケニルアルミニウム化合物を使用するため、活性化剤として用いる(b−1)アルミニウムオキシ化合物を除いて、他の有機アルミニウムを全く使用しない重合法も可能である。すなわち、トリアルケニルアルミニウム化合物はコノモマーとしても、成分(c)の有機アルミニウムとしても作用する。
【0030】
一方、マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須とし含有する固体触媒成分は、公知であり、公知の触媒成分が使用可能である。
固体触媒成分のマグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、マグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド、マグネシウムオキシハライド、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムハライド、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムのカルボン酸塩等が挙げられる。これらの中でもマグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム等のMg(OR2−p( ここで、Rは炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度のものであり、Xはハロゲンを示し、pは0≦p≦2である。)で表されるマグネシウム化合物が好ましい。
【0031】
また、チタン源となるチタン化合物としては、一般式Ti(OR4−q(ここで、Rは炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度のものであり、Xはハロゲンを示し、qは0≦q≦4である。)で表される化合物が挙げられる。具体例としては、例えば、TiCl、TiBr、Ti(OC)Cl、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Ti(O−i−C)Cl、Ti(O−n−C)Cl、Ti(O−n−CCl、Ti(OC)Br、Ti(OC)(O−n−CCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OC)Cl、Ti(O−i−CCl、Ti(OC11)Cl、Ti(OC13)Cl、Ti(OC、Ti(O−n−C、Ti(O−n−C、Ti(O−i−C、Ti(O−n−C13、Ti(O−n−C17、Ti(OCHCH(C)C等が挙げられる。
また、TiX(ここで、Xはハロゲンである。)に後述する電子供与体を反応させた分子化合物をチタン源として用いることもできる。そのような分子化合物の具体例としては、TiCl・CHCOC、TiCl・CHCO、TiCl・CNO、TiCl・CHCOCl、TiCl・CCOCl、TiCl・CCO、TiCl・ClCOC、TiCl・CO等が挙げられる。
また、TiCl(TiClを水素で還元したもの、アルミニウム金属で還元したもの、あるいは有機金属化合物で還元したもの等を含む)、TiBr、Ti(OC)Cl、TiCl、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド等のチタン化合物の使用も可能である。これらのチタン化合物の中でもTiCl、Ti(OC、Ti(OC)Cl等が好ましい。
【0032】
ハロゲンは、上述のマグネシウムおよび(または)チタンのハロゲン化合物から供給されるのが普通であるが、他のハロゲン源、例えばAlCl等のアルミニウムのハロゲン化物、BCl等のホウ素のハロゲン化物、SiCl等のケイ素のハロゲン化物、PCl、PCl等のリンのハロゲン化物、WCl等のタングステンのハロゲン化物、MoCl等のモリブデンのハロゲン化物といった公知のハロゲン化剤から供給することもできる。触媒成分中に含まれるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの混合物であってもよく、特に塩素が好ましい。
【0033】
立体規則性を高めるために、電子供与体を共存使用することが可能である。このような電子供与体の例としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸類のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類のような含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネートのような含窒素電子供与体、スルホン酸エステルのような含硫黄電子供与体などを例示することができる。
【0034】
より具体的には、(イ)メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素数1ないし18のアルコール類、(ロ)フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、ナフトールなどのアルキル基を有してよい炭素数6ないし25のフェノール類、(ハ)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどの炭素数3ないし15のケトン類、(ニ)アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素数2ないし15のアルデヒド類、(ホ)ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、ステアリン酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロへキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、安息香酸セロソルブ、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ−ブチロラクトン、α−バレロラクトン、クマリン、フタリドなどの有機酸モノエステル、または、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、コハク酸ジエチル、酒石酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、1、2−シクロヘキサンカルボン酸ジエチル、炭酸エチレン、ノルボルナンジエニル−1、2−ジメチルカルボキシラート、シクロプロパン−1、2−ジカルボン酸−n−ヘキシル、1、1−シクロブタンジカルボン酸ジエチルなどの有機酸多価エステルの炭素数2ないし20の有機酸エステル類、(ヘ)ケイ酸エチル、ケイ酸ブチルなどのケイ酸エステルのような無機酸エステル類、(ト)アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリド、塩化フタロイル、イソ塩化フタロイルなどの炭素数2ないし15の酸ハライド類、(チ)メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジフェニルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2’−ジメトキシビフェニル、2,2’−ジメトキシビナフチルなどの炭素数2ないし30のエーテル類、(リ)酢酸アミド、安息香酸アミド、トルイル酸アミド、尿素、などの酸アミド類、(ヌ)メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、トリベンジルアミン、アニリン、ピリジン、ピコリン、テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類、(ル)アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類、(ヲ)2−(エトキシメチル)−安息香酸エチル、2−(t−ブトキシメチル)−安息香酸エチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−s−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルなどのアルコキシエステル化合物類、(ワ)2−ベンゾイル安息香酸エチル、2−(4’−メチルベンゾイル)安息香酸エチル、2−ベンゾイル−4,5−ジメチル安息香酸エチルなどのケトエステル化合物類、(カ)ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸イソプロピル、p−トルエンスルホン酸−n−ブチル、p−トルエンスルホン酸−s−ブチルなどのスルホン酸エステル類等を挙げることができる。これらの電子供与体は、二種類以上用いることができる。これらの中で好ましいのは有機酸エステル化合物、酸ハライド化合物およびジエーテル化合物であり、特に好ましいのはフタル酸ジエステル化合物、フタル酸ジハライド化合物、置換コハク酸エステル、1,3−ジエーテル化合物である。
【0035】
重合に際しては、必要に応じて有機アルミニウム並びに重合時添加の電子供与性化合物を使用することが可能である。
有機アルミニウムとしては、R3−rAlX(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子であり、Xはハロゲン、ヒドリド、アルコキシ基であり、rは0≦r<3である。)で表されるものがある。
具体的には、(イ)トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、(ロ)ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、(ハ)ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、(ニ)ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド等が挙げられる。
これらは複数併用することも可能である。例えば、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムエトキシドの併用、ジエチルアルミニウムモノクロライドとジエチルアルミニウムエトキシドとの併用、エチルアルミニウムジクロライドとエチルアルミニウムジエトキシドとの併用、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムエトキシドとジエチルアルミニウムモノクロライドとの併用等が挙げられる。
また、このような有機アルミニウムを用いずに、本特許のコモノマーとして用いるトリアルケニルアルミニウム化合物を重合用有機アルミニウム化合物として用いることが可能である。但し、実際に本特許の目的の末端ビニル基含有プロピレン共重合体を効率よく製造するためには、トリアルケニルアルミニウム化合物以外の有機アルミニウムは使用しないことが好ましい。
【0036】
また、立体規則性を高めるために使用する電子供与性化合物としては、アルコキシ珪素化合物やジエーテル化合物が一般的である。アルコキシ珪素化合物としては、一般式RSi(OR4−m(ここで、RおよびRは炭素数が1以上の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、mは0≦m<4である。)で表される具体例としては、(イ)(CHCSi(CH)(OCH、(CHCSi(CH(CH)(OCH、(CHCSi(CH)(OC、(CHCSi(C)(OCH、(CHCSi(n−C)(OCH、(CHCSi(n−C13)(OCH、(CCSi(CH)(OCH、(CH)(C)CHSi(CH)(OCH、((CHCHCHSi(OCH、(C)(CHCSi(CH)(OCH、(C)(CHCSi(CH)(OC、(CHCSi(OCH、(CHCSi(OC、(CH)(C)CHSi(OCH、(CHCH(CHCSi(CH)(OCH、((CHC)Si(OCH、(C)(CHCSi(OCH、(C)(CHCSi(OC、(CHCSi(OC(CH)(OCH、((CHCH)Si(OCH、((CHCH)Si(OC、(CSi(OCH、(CSi(OC、(C)(CH)Si(OCH、(C)((CHCHCH)Si(OCH、(C11)Si(CH)(OCH、(C11Si(OCH、(C11)((CHCHCH)Si(OCH、((CHCHCH)((C)(CH)CH)Si(OCH、((CHCHCH)((CHCH)Si(OC11、HC(CHC(CHSi(CH)(OCH、HC(CHC(CHSi(CH)(OC、HC(CHC(CHSi(OCH、(CHCSi(OCH(CH)(OCH、(CHCSi(OC(CH)(OCH等のアルキルアルコキシケイ素化合物、(ロ)ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(2−メチル−ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(3−メチル−ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ピペリジノ)ジメトキシシラン、ビス(2−メチル−ピペリジノ)ジメトキシシラン、ビス(3−メチル−ピペリジノ)ジメトキシシラン、ビス(4−メチル−ピペリジノ)ジメトキシシラン、ビス(2、2、6、6−テトラメチル−ピペリジノ)ジメトキシシラン、ビス(2、6−ジメチル−ピペリジノ)ジメトキシシラン、ビス(デカヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン等のアミノ基を含むケイ素化合物、(ハ)(n−CO)Si(OCH、(i−CO)Si(OCH、(t−CO)Si(OCH、(sec−CO)Si(OCH、(n−CO)Si(OCH、(i−CO)Si(OCH、(n−CO)(n−CO)Si(OCH、(i−CO)(n−CO)Si(OCH、(n−CO)(t−CO)Si(OCH、(t−CO)(n−CO)Si(OCH、(sec−CO)(i−CO)Si(OCH等のテトラアルコシキケイ素化合物が挙げられる。
これらの中で好ましいのは、(CHCSi(CH)(OCH、(CHCSi(CH(CH)(OCH、(CHCSi(CH)(OC、(CHCSi(C)(OCH、(CHCSi(n−C)(OCH、(CHCSi(n−C13)(OCH、(CSi(OCH、(CSi(OC、(C11)Si(CH)(OCH、(C11Si(OCH等が挙げられる。
【0037】
ジエーテル化合物の例としては、1,3−ジエーテル、1,2−ジメトキシシクロヘキサン、2,2’−ジメチルビスナフチルエーテル、等が例示される。具体的には、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2’−ジメトキシビフェニル、2,2’−ジメトキシビナフチルなどが例示される。
【0038】
(2)重合方法
共重合に際して、反応系中の各モノマーの量比は、経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも便利であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
共重合では後述の一般式(B)で表される単位、即ちトリアルケニルアルミニウム化合物単位を最大50モル%導入することを目的としている。ここでこの様なトリアルケニルアルミニウム化合物単位を多量に含有する共重合体を得るための原料仕込み比を説明する。この仕込み比は重合反応に使用する触媒の共重合性やトリアルケニルアルミニウム化合物の鎖長(炭素数)によって変化する。一般的に鎖長が長くなるとプロピレンに対する共重合性が低下する傾向にある。トリアルケニルアルミニウム化合物単位を最大50モル%導入するためのプロピレンとトリアルケニルアルミニウム化合物のモル比は、1:0.001〜1:10であり、好ましくは1:0.001〜1:5であり、より好ましくは1:0.001〜1:2である。
【0039】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるスラリー法、或いはトリアルケニルアルミニウム化合物を溶媒とするスラリー法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いない気相法などが採用出来る。また、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。スラリー重合の場合には、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独または混合物が用いられる。重合温度は0〜200℃であり、また分子量調節剤として補助的に水素を用いることが出来る。重合圧力は0〜50kg/cmGの範囲で実施可能である。
【0040】
3.プロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体
上記共重合で得られるプロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体は、プロピレンから導かれる構造単位中に、下記一般式(B)で表されるトリアルケニルアルミニウム化合物由来の構造単位がランダムに分布し、かつ、末端に下記一般式(E)で表される末端ビニル基含有構造を有するものである。
【0041】
一般式(B)
【0042】
【化5】

(式中、nは1〜20の整数を示す。)
【0043】
一般式(E):
CH=CH−(CH
(式中、nは1〜20の整数)
【0044】
プロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体の構造中、プロピレン単位は50〜99.9モル%、好ましくは60〜99.9モル%、より好ましくは65〜99.9モル%であり、一般式(B)で表される単位は0.1〜50モル%、好ましくは0.1〜40モル%、より好ましくは0.1〜35モル%である。トリアルケニルアルミニウム由来の構造単位が0.1モル%未満の場合には、ジアルケニルアルミニウム基を極性基に変換した場合の効果(染色性、接着性等の改善)が得られ難い。また、50モル%を超える場合には、ポリプロピレン本来の性能を出せないという問題がある。また、末端ビニル基含有構造は、通常は、片方にのみ有する。
【0045】
ところで、最終極性基含有プロピレン系共重合体の用途によってはトリアルケニルアルミニウム由来の構造単位量の好ましい範囲が異なる場合がある。自動車材料や工業部品等の剛性や耐熱性を要求される用途に関しては、一般式(B)で表される単位の含有量は、大き過ぎないことが好ましく、0.1〜5モル%、より好ましくは、0.1〜3モル%である。5モル%を超える場合には、結晶性の低下をおこし剛性や耐熱性に悪影響を与えるからである。ところが、軟質材料や樹脂添加剤として使用する場合には、一般式(B)で表される単位の含有量が大きいことが好適であり、一般式(B)で表される単位の含有量は、20〜50モル%、好ましくは20〜40モル%、より好ましくは20〜35モル%である。
【0046】
また、プロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体は、アイソタクチック、シンジオタクチック等の立体規則性を有していることが好ましい。特に好ましくは、13C−NMRの吸収スペクトルにおいてプロピレン単位のメチル基に帰属するピークの内、20.9ppm付近に観測されるピークの強度がプロピレン単位に帰属する全メチル基のピーク強度の0.5以上を示すアイソタクチック構造を持つか、13C−NMRの吸収スペクトルにおいてプロピレン単位のメチル基に帰属するピークの内、20.2ppm付近に観測されるピークの強度がプロピレン単位に帰属する全メチル基のピーク強度の0.5以上を示すシンジオタクチック構造を持つことである。この割合が0.5未満の場合には製品のべたつき等が発生して問題となる。
【0047】
トリアルケニルアルミニウム化合物由来単位の含有量と、立体規則性の決定に関しては、13C−NMRを用いて決定する。測定条件は以下の通りである。
NMR装置:日本電子製JEOL−La−500、測定温度:120℃、溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d、パルス角度:45゜、スキャン回数:1000、パルス間隔7秒。各吸収スペクトルの化学シフトの決定に関しては、1,1,2,2−テトラクロロエタンを内部標準として決定する。1,1,2,2−テトラクロロエタンの化学シフトは74.47ppmとする。
【0048】
プロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体は、非常に不安定であり、空気中の水分や酸素等で容易に分解を起こす。そこで、重合生成物を窒素雰囲気下で、メタノールと反応させ、炭素−アルミニウムの結合を炭素−水素の結合に変換して、プロピレン由来のメチル基(16〜23ppm付近)とアルケニルジアルキルアルミニウム由来のメチル基(12〜15ppm付近)の吸収スペクトルの面積比からトリアルケニルアルミニウム単位の共重合量の同定を行う。
【0049】
プロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体の分子量は、重量平均分子量で1,000〜1,000,000、好ましくは3,000〜800,000、更に好ましくは、5,000〜600,000である。また、重量平均分子量と数平均分子量の比は特に制限がなく、重合条件によって広い範囲のものが製造出来るが、一般的に2〜8程度である。
なお、重量平均分子量と数平均分子量は、以下の様にして測定する。すなわち、ウォーターズ社製150Cを用いて、ゲルパーミエーショングロマトグラフィーの手法により測定を行う。条件は測定温度:140℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、カラム:Shodex 80M/S 2本、分子量の算出は標準ポリスチレンから決定する。
【0050】
プロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体の融点は、特に限定はされないが、一般的に70〜165℃であり、融解熱は10〜120(J/g)である。
融点と融解熱の測定方法は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製DSC−220)を使用し、シート状にしたサンプル片5mgをアルミパンに詰め、室温から一旦220℃まで昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で−40℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度(℃)を融点とし、このピークの熱量を融解熱(J/g)とする。
【0051】
4.極性基含有プロピレン系共重合体
本発明の極性基含有プロピレン系共重合体について具体的に説明する。極性基含有プロピレン系共重合体は、上記で得られたプロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体を各種の分解剤と反応させることによって製造できる。すなわち、該共重合体中のジアルケニルアルミニウム基(炭素−アルミニウム結合)を炭素−極性基の結合に変換することで得られる。
分解剤との反応は、低分子有機アルミニウム化合物と無機化合物との反応に関する既知の方法に準じて実施することができる。分解剤としては、酸素、過酸化物、二酸化炭素、二酸化イオウ又は三酸化イオウ等のイオウ酸化物などが挙げられる。
【0052】
具体的には、酸素や過酸化物と接触させその後加水分解することにより、ジアルケニルアルミニウムを水酸基に変換することが可能であり、水酸基含有のプロピレン系共重合体が得られる。水酸基への変換については、R.Rienacker and G. Ohloff,Angew.chem.,1961,73,240、P.Tesseire and M. Plattier, Recherches,1963,13,34 [Chem.abstr.,1964,60,15915]等の文献が必要により参照できる。また、二酸化炭素と接触させ、その後加水分解することにより、ジアルケニルアルミニウム基をカルボキシル基に変換することが可能であり、カルボキシル基含有のプロピレン系共重合体が得られる。カルボキシル基への変換については、K.Zieglar, F.Krupp,K.Weyer and W.Larbig,LiebugsAnn.Chem.,1960,629,251等の文献が必要により参照できる。更に、二酸化硫黄、三酸化硫黄と接触させ、その後加水分解することにより、それぞれ、ジアルケニルアルミニウム基をスルフィニル(SOOH)基、スルフォニル(SOOOH)基に変換することが可能であり、これらの極性基を含有するプロピレン系共重合体が得られる。これについてもK.Zieglar,F.Krupp, K.Weyer and W.Larbig, Liebugs Ann.Chem.,1960,629,251、A.J.Kunchin, L.I.Akhmetov, V.P.Yur’ev and G.A.Tolstikov, J.Gen.Chem.USSR(Engl.Transl.),1978,48,420、A.J.Rutkowski and A.F.Turbak, US Pat.3121737 [Chem.abstr.,1964,60,10550]等が必要により参照できる。
【0053】
上記のようにして得られる本発明の極性基含有プロピレン系共重合体は、プロピレンから導かれる構造単位中に、一般式(C)、一般式(D)で表される構造単位がランダムに分布し、末端に、通常は片末端に、一般式(E)で表される、末端ビニル基を有するアルケニル構造を有するものである。
【0054】
一般式(C):
【0055】
【化6】

(式中、nは1〜20の整数を示す。)
【0056】
一般式(D):
【0057】
【化7】

(式中、nは1〜20の整数、Xは−OH、−COOH、−SOOH又は−SOOOH基を示す。)
【0058】
一般式(E):
CH=CH−(CH
(式中、nは1〜20の整数)
【0059】
ところで、上記分解反応において、ジアルケニルアルミニウム基を極性基に変換する割合は、必ずしも100%である必要はない。必要に応じて、炭素−アルミニウム結合を単純に加水分解した(炭素−水素結合に変換した)一般式(C)の構造を持つ成分を含有させることができる。
【0060】
このような部分的な分解をする方法としては、酸素や二酸化炭素とプロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体を接触させる際に、アルコールや水等を混入させること、酸素や二酸化炭素をトリアルケニルアルミニウムの含有量以下(当量以下)で接触させること、反応時の温度や時間などを変更することで達成することが可能である。
【0061】
本発明の極性基含有プロピレン系共重合体は、プロピレン単位を50〜99.9モル%、好ましくは60〜99.9モル%、より好ましくは65〜99.9モル%、一般式(C)で表される単位を0〜49.9モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜30モル%、一般式(D)で表される単位を0.1〜50モル%、好ましくは0.1〜40モル%、より好ましくは0.1〜35モル%含む。一般式(D)で表される構造単位が0.1モル%未満の場合には、染色性や接着性等の極性基の効果が得られない。また、50モル%を超える場合には、ポリプロピレン本来の性能を出せないという問題がある。一般式(D)において、好ましいnは2〜6であり、Xは水酸基OHである。
【0062】
ところで、一般式(C)で表される構造単位の含有量は、本共重合体の結晶性に大きく影響する。このため一般式(C)で表される構造単位の含有量は、用途によって好ましい範囲が異なる。自動車材料や工業部品等の剛性や耐熱性を要求される用途に関しては、一般式(C)で表される単位の含有量は大きすぎないことが好ましく20モルmol%以下、より好ましくは10モル%以下である。20モル%を超える場合には、結晶性の低下をおこし剛性や耐熱性に悪影響を与える。しかし、軟質材料や樹脂添加剤として使用する場合には、一般式(C)で表される単位の含有量が大きいことが好適であり、一般式(C)で表される単位の含有量は、20〜50モル%、好ましくは20〜40モル%である。
【0063】
一般式(C)、一般式(D)で表される構造単位の含有量は、前述の13C−NMRの測定条件と同様にして、プロピレン由来のメチル基(16〜23ppm)、一般式(C)で表される構造単位由来のメチル基(12ppm付近)、一般式(D)で表される構造単位由来のメチル基(40ppm以上)、ただし、カルボキシル基の場合にはカルボキシル基の炭素、の吸収スペクトルの面積比から各単位の含有量を同定する。
【0064】
さらに、本発明の極性基含有プロピレン系共重合体の分子量は、プロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体で記述した範囲の分子量、融点、融解熱を持つことが好ましい。
【0065】
なお、上記プロピレン−トリアルケニルアルミニウム共重合体、並びに本発明の極性基含有プロピレン系共重合体は、マクロマーとして用い、これを重合または共重合することにより、さらに種々の特性を有する共重合体を製造することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の測定及び反応原料・助剤は下記の通りである。また、本実施例における全ての反応は精製窒素雰囲気下で実施した。
【0067】
1.物性の測定法
(1)融点の測定及び融解熱の測定
セイコーインスツルメンツ社製DSC−220を使用し、シート状にしたサンプル片5mgをアルミパンに詰め、室温から一旦220℃まで昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で−40℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度(℃)を融点とし、このピークの熱量を融解熱とした。
(2)分子量及び分子量分布の測定
ウォーターズ社製150Cを用いて、ゲルパーミエーショングロマトグラフィーの手法により測定した。条件は測定温度:140℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、カラム:Shodex 80M/S 2本、分子量の算出は標準ポリスチレンから決定した。
(3)反応生成物、トリアルケニルアルミニウム、一般式(B)、(C)、(D)の構造
H−NMRによる測定:日本電子製JEOL−La−300を用いて、室温条件下で、パルスフーリエ変換法にて実施した。
13C−NMRによる測定:日本電子製JEOL−La−500、測定温度:120℃、溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d、パルス角度:45゜、スキャン回数:1000、パルス間隔7秒にて実施した。
ガスクロマトグラフィーによる測定:GLサイエンス社製GC−353を用い、注入試料:1μml、インジェクション温度:250℃、検出器:FID、検出器温度、カラム温度:40℃で測定。反応混合物の組成の同定は、オーセンティックサンプルの保持時間との比較とクロマトグラムのピーク面積から算出した。
【0068】
2.原料、助剤
(1)プロピレン:東燃化学社製プロピレンを60℃で酸化マンガン、モレキュラシーブ4Aの充填塔を通して精製した。
(2)1,7−オクタジエン:東京化成社製を水素化カルシウムを用いて脱水し、更に蒸留した。
(3)トルエン:水素化カルシウムを用いて脱水し、更に蒸留した。
(4)窒素、アルゴン:酸化マンガン、モレキュラシーブ4Aの充填塔を通して、微量の酸素と水分を除去した。
(5)ジイシブチルアルミニウムハイドライド:東ソーファインケム社製をそのまま使用した。
(6)メタロセン錯体:
(i)メタロセン−1:rac−ジメチルシリルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド;rac−MeSi[2−Me(Ind)]ZrClは、ボルダーサイエティフィックカンパニー社製をそのまま使用した。
(ii)メタロセン−2:ジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド;PhC[(Cp)(9−Flu)]ZrClは、ボルダーサイエティフィックカンパニー社製をそのまま使用した。
(7)トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;[PhC][B(C]:旭硝子社製をそのまま使用した。
【0069】
(8)マグネシウム、チタン、ハロゲン含有固体触媒成分:下記のようにして調製して使用した。
0.5Lの撹拌付きガラス反応器に塩化マグネシウム17.2g(0.18モル)と四塩化チタン43ml(0.31モル)を混合し、100℃で2時間反応した。反応終了後上澄みを抜き出し、250mlのヘキサンで数回洗浄し、過剰の四塩化チタンを取り除き、室温下減圧乾燥することで目的のマグネシウム、チタン、ハロゲン含有固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中には0.9重量%のチタンを含有していた。
【0070】
(9)トリオクテニルアルミニウム(TOTNA):下記のようにして調製して使用した。
50mlの攪拌機付きガラス反応器に、1,7−オクタジエン(14ml:0.11mol)とトリイソブチルアルミニウム(7.5ml:0.0168mol)を加え120℃で6時間反応させた。その後、残存する1,7−オクタジエンを減圧除去して反応生成物を得た。本反応生成物はガスクロマトグラフィーとNMRで分析をした。0.5mlの反応生成物を2mlのメタ−キシレン(内部標準)で希釈し、その後、蒸留水と塩酸を加えて分解して分析に用いた。
その結果、全て(100%)アルケニル由来の1−オクテンであったことからトリオクテニルアルミニウムが定量的に生成していることを確認した。
【0071】
製造例1
200mlの攪拌機付きガラス反応器に、トルエンとトリオクテニルアルミニウム(TOTNA)0.0005molを加えた、ここでトルエンの添加量は、トリオクテニルアルミニウムとトルエンの体積が100mlとなるように調整して加えた。反応器内を40℃とした。ここで、プロピレンを流通させ、内圧が1atmとなるようにプロピレンを溶解させた。ここで、[PhC][B(C]を12μmol、rac−MeSi[2−Me(Ind)]ZrClを12μmolとなるようにトルエン溶液として添加し、40℃の温度で30分間重合を実施した。重合中は、ガスフローメーターでプロピレンの圧を1atmで維持した。30分後、少量のメタノール・塩酸を直接添加して重合反応を終了させた。反応生成物はろ別し、60℃で6時間減圧乾燥させ、共重合体2.2gを得た。この共重合体の数平均分子量(Mn)は11.3×10、分子量分布(Mw/Mn)は2.2、融点(Tm)は132℃、ビニル基含量は0.1mol%であった。製造例1で得られたポリマーのビニル基は、図1(b)で示される。
【0072】
製造例2〜3
添加するトリオクテニルアルミニウム(TOTNA)の添加量を表1のように変更した以外は、製造例1と同様の操作を実施した。得られた共重合体の収量及びポリマーの物性を表1に示す。
また、製造例2のポリマーの13C−NMRの吸収スペクトルと帰属を図2(a)に示した。この共重合体は、アイソタクチック構造を有するものであり、13C−NMRの吸収スペクトルにおいてプロピレン単位のメチル基に帰属するピークの内、20.9ppm付近に観測されるピークの強度は、プロピレン単位に帰属する全メチル基のピーク強度の0.94であった。
さらに、製造例3で得られたポリマーのビニル基は、図1(c)で示される。
【0073】
製造例4〜6
製造例1で使用したrac−MeSi[2−Me(Ind)]ZrClをPhC[(Cp)(9−Flu)]ZrClに変更し、トリオクテニルアルミニウム(TOTNA)の添加量を表1のように変更した以外は、製造例1と同様の操作を実施した。得られた共重合体の収量及びポリマーの物性を表1に示す。また、製造例6で得られたポリマーの13C−NMRの吸収スペクトルと解析結果を図3(a)に示す。
この共重合体は、シンジオタクチック構造を有するものであり、13C−NMRの吸収スペクトルにおいてプロピレン単位のメチル基に帰属するピークの内、20.2ppm付近に観測されるピークの強度は、プロピレン単位に帰属する全メチル基のピーク強度の0.84であった。
【0074】
製造例7〜8
メタロセン触媒を用いる代わりに、マグネシウム、チタン、ハロゲンからなる固体触媒成分を用いる以外はすべて製造例1に従って重合した。
すなわち、200mlの攪拌機付きガラス反応器に、トルエンとトリオクテニルアルミニウム(TOTNA)0.00018mol、及び0.00054molを加えた。ここでトルエンの添加量は、トリオクテニルアルミニウムとトルエンの体積が100mlとなるように調整して加えた。反応器内を40℃とした。次いで、マグネシウム、チタン、ハロゲンからなる固体触媒成分48mg(固体触媒中のTiとして8.9マイクロモル)を導入し、40℃の温度で30分間重合を実施した。重合中はガスフローメーターでプロピレンの圧を1atmで維持した。30分後、少量のメタノール・塩酸を直接添加して重合反応を終了させた。反応生成物はろ別し、60℃で6時間減圧乾燥させ、共重合体を得た。この共重合体の重量と物性は表1に示す。
アイソタクチック構造とアタクチック構造を有するこのポリマーは、以下の方法で分離した。すなわち、重合で得られた1gのポリマーを200mlのフラスコに入れ、100mlのキシレンに溶解し、窒素下120℃に加熱した。加熱溶解後ゆっくり室温に戻し、固体部分をフイルター濾過し、ヘキサンで数回洗浄し完全にキシレンを抜いた後、乾燥してアイソタクチックポリマーを得た。一方、室温キシレン可溶性部分は、過剰のメタノール中で析出し回収した。得られた各固体は減圧下60℃で6時間乾燥し、その後の各種分析に利用した。結果を表1に示す。なお、融解熱、ビニル基含量、一般式(B)で表される単位の含量は、アイソタクチック構造のポリマー(IP)とアタクチック構造のポリマー(AP)について別個に測定し、その値を表1に、(IPの値/APの値)のように示した。
【0075】
実施例1
製造例1と全く同一の重合条件で、プロピレンとトリオクテニルアルミニウムの共重合を30分行ったのち、メタノール・塩酸で分解する前に、乾燥酸素200ml/分を室温で1.5時間導入した。その後、塩酸・メタノールで有機アルミニウム結合を分解し、反応生成物をろ別し、60℃で6時間減圧乾燥させた結果、水酸基含有プロピレン系共重合体を得た。この共重合体の水酸基の含量は0.3モル%であったことから、ほぼすべての有機アルミニウムの付いた分枝が末端水酸基に変換されたと推定される。
【0076】
実施例2〜8
実施例1と同様の方法で、製造例2〜8と各々同一の条件で重合し、乾燥酸素処理した後、各ポリマーの水酸基を測定した。その結果を表2に示す。
実施例2のポリマーの13C−NMRの吸収スペクトルと解析結果を図2(b)に、実施例6のポリマーの13C−NMRの吸収スペクトルと解析結果を図3(b)に示す。
また、実施例7のポリマーの13C−NMRの吸収スペクトルと解析結果を図4に示す(図4(a)はアタクチックポリマー、(b)はアイソタクチックポリマーである)。
なお、表2において、一般式(D)単位の量は、オクテニルアルミニウム分枝鎖を酸素分解+塩酸・メタノール分解して得られたものを示し、一般式(C)単位の量は、オクテニルアルミニウム分枝鎖を酸素分解した際に酸素が挿入せず、その後の塩酸・メタノール処理で末端がCHになったものを示し、プロピレン単位の量は、プロピレン由来のプロパン末端を示し、OH化比率は、オクテニルアルミニウム分子鎖が水酸基に変換した割合を示す。
また、メタロセン系で見えるビニル以外の末端は、連鎖移動の仕方の違いで発生する。この場合、一部はベータ水素引き抜きによりビニリデンになるケースも観測された。3置換オレフィンは、メタロセン特有の水素発生に関連し、本ポリマー末端とは関連性は低いと推定される。
【0077】
参考例1、2
製造例1、4において、トリオクテニルアルミニウムの代わりに、トリイソブチルアルミニウム(0.0017mol)を加え、その他は製造例1、4と同様の操作を行い、プロピレン単独重合体8.0gを得た。このポリマーの物性を表1に示す。末端ビニル基は存在しなかった(図1(a)参照)。
【0078】
参考例3、4
実施例2、5において、トリオクテニルアルミニウムの代わりに、トリイソブチルアルミニウム(0.0017mol)を加え、その他は実施例2、5と同様の操作を行った。このポリマーの物性を表2に示す。このポリマーにはプロピレン単位しか検出されなかった。
【0079】
参考例5、6
マグネシウム、チタン、ハロゲンを含有する固体触媒成分を用いた重合としてトリオクテニルアルミニウムの代わりにトリイソブチルアルミニウム0.02モルを用いる以外は、製造例8、実施例8と同様にして実施した。結果を表1、表2に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】製造例1、3の共重合体及び参考例1のプロピレン単独重合体のH−NMRスペクトル及び解析結果である。
【図2】製造例2の共重合体及び実施例2のプロピレン系共重合体の13C−NMRスペクトル及び解析結果である。
【図3】製造例6の共重合体及び実施例6のプロピレン系共重合体の13C−NMRスペクトル及び解析結果である。
【図4】実施例7のプロピレン系共重合体の13C−NMRスペクトル及び解析結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単位を50〜99.9モル%、下記一般式(C)で表される単位を0〜49.9モル%、下記一般式(D)で表される単位を0.1〜50モル%含有し、末端ビニル基を有し、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とするビニル基および極性基含有プロピレン系共重合体。
一般式(C):
【化1】

(式中、nは1〜20の整数を示す。)
一般式(D):
【化2】

(式中、nは1〜20の整数、Xは−OH、−COOH、−SOOH又は−SOOOH基を示す。)
【請求項2】
プロピレン単位を50〜99.9モル%、下記一般式(C)で表される単位を0〜49.9モル%、下記一般式(D)で表される単位を0.1〜50モル%含有し、末端が下記一般式(E)で表される構造を有し、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とするビニル基および極性基含有プロピレン系共重合体。
一般式(C):
【化3】

(式中、nは1〜20の整数を示す。)
一般式(D):
【化4】

(式中、nは1〜20の整数、Xは−OH、−COOH、−SOOH又は−SOOOH基を示す。)
一般式(E):
CH=CH−(CH
(式中、nは1〜20の整数)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の共重合体をマクロマーとし、これを重合または共重合する重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−2261(P2007−2261A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237298(P2006−237298)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【分割の表示】特願2002−248331(P2002−248331)の分割
【原出願日】平成14年8月28日(2002.8.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成14年3月11日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第81春季年会 講演予稿集 1」に発表
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】