ビフィズス菌の増殖及び生存を改善するアラビアガムの使用
本発明は、発酵食品、特に発酵乳製品の製造の一部であるビフィズス菌の増殖及び生存を改善する、場合によっては含硫アミノ酸との組合せでのアカシアガム(すなわち、アラビアガム)の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵食品の製造に関与するビフィズス菌の増殖及び生存を改善する、単独又は含硫アミノ酸との組合せでのアカシアガム(すなわち、アラビアガム)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビフィズス菌は、近年、各種食品、特に発酵乳製品の製造で最も一般的に使用されているプロバイオティック微生物の1つである。
【0003】
プロバイオティクスは、「適量消費すると宿主に健康上の利益を授ける、生きた微生物」と定義される(食品中のプロバイオティクスの健康特性及び栄養特性の評価に関するFAO/WHOの専門家による混成協議会の報告、2001)。この定義は、その有益な効果の発揮には、関連微生物が、消費される準備が整っている製品中に十分量存在する必要があることを示す。この量は概して、少なくとも107cfu/mlに等しい必要があると考えられる。したがって、プロバイオティック細菌を含有する食品の製造、充填及び貯蔵時にプロバイオティック細菌の生存率を維持することが、これらの製品の質の不可欠な要素となっている。
【0004】
食品部門で最も汎用されているビフィズス菌の種は、Bifidobacterium adolescentis、B.bifidum、B.breve、B.longum、B.animalis及びB.infantisである。
【0005】
発酵食品を製造する状況において、ビフィズス菌は、単独で使用してもよいが、官能的理由及び/又は技術的理由から、他の乳酸菌と組み合わせることが最も多い。ヨーグルト発酵体(ferments)(L.Bulgaricus及びS.thermophilus)と組み合わせることが特に頻繁である。既に発酵した製品に添加してもよく、又はより一般的には、発酵する基質の接種時に他の乳酸菌と混合してもよい。
【0006】
食品の製造を実施する条件下では、ビフィズス菌の増殖はしばしば緩徐であり、さらに、発酵終了時、消費までの製品の全貯蔵期間にわたる十分なビフィズス菌個体数の維持が難しいことが多い。これらの問題は、ビフィズス菌を他の乳酸菌と組み合わせると増大する可能性がある。混合培養物中でのビフィズス菌の競争力が低いため、ビフィズス菌は、他の乳酸発酵体が存在すると、単独で培養した場合よりも増殖が緩徐になることが多く、そうでなくとも、とりわけ、他の乳酸菌の中には、何よりも乳酸を生産し続けるものがあるため、特に、発酵製品の貯蔵時の生存が概してより劣っている。後酸性化(post-acidification)として知られているこの現象は、同一製品中に存在するビフィズス菌の生存率に影響を及ぼす。
【0007】
こうした背景から、ビフィズス菌の増殖を刺激すると共に、生存率を増加させること、好ましくは、これらのビフィズス菌と組み合わせる乳酸菌の増殖及び生存率に対する(正又は負の)効果をほとんど又は全く誘発せずにビフィズス菌の増殖を刺激すると共に、生存率を増加させることが望まれていると考えられる。
【0008】
本発明者らは、発酵製品の製造時にアラビアガムを使用することにより、これらの結果を達成することができることを発見した。
【0009】
アラビアガムは、或る特定種のアカシアの幹又は枝の傷の滲出によって生産される。高度に分枝し、分子量が大きく、水溶性の多糖である。食品添加物として使用するアラビアガム(E414)は、Acacia seyal又はAcacia senegalのみから得られる。
【0010】
プロバイオティック細菌(各種ビフィズス菌及びLactobacillus paracasei)を封入して、プロバイオティック細菌を乾燥時の加熱及び脱水から守るため、またプロバイオティック細菌の生存率並びに胃液及び胆汁に対する耐性を改善するために、アラビアガムを使用することが提案されている(Lian他 2002;Lian他 2003;Hsiao他 2004;Desmond他 2002)。
【0011】
ヒトでは1日当たり10gの量のアラビアガムを摂取することにより、便中のビフィズス菌及びバクテロイデス属の個体数が増加し得ることも報告されており、より最近では、同様の研究により、1日当たりアラビアガムを10g〜15g摂取した後、乳酸菌、主にビフィズス菌及び乳酸桿菌の総個体数が増加することが述べられている(Wyatt他 1986;Cherbut他 2003)。
【0012】
本発明者らは、ビフィズス菌を単独で又は他の乳酸菌と共に含有する培養物にアラビアガムをin vitroで添加すると、発酵時にビフィズス菌の増殖が刺激されると共に、発酵製品の貯蔵時のそれらの寿命が増加し、他方で、他の乳酸菌が存在しても、その増殖及び生存率にはほどんど又は全く影響しないことを発見した。本発明者らはさらに、システインをさらに添加すると、ビフィズス菌に対する、特に保存時のビフィズス菌の生存に対するアラビアガムの特定の効果がかなり増大することを観察した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主題は、1つ又は複数のビフィズス菌の株を含有する発酵生鮮食品の保存中のビフィズス菌の生存率を増加させる方法であって、充填終了前に、アラビアガムを上記食品に添加することを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、上記食品は、ビフィズス菌以外の1つ又は複数の乳酸菌の株をさらに含有する。
【0015】
本発明の別の好ましい実施の形態によれば、上記方法は、充填終了前に、少なくとも1つの含硫アミノ酸(システイン又はメチオニン)、好ましくはシステインを上記食品に添加することをさらに含む。
【0016】
ここで、「発酵食品」は、乳酸菌を含む発酵体による適切な食品基質の発酵により得られ、且つこれらの乳酸菌が生きた状態にある製品と定義される。この製品は、発酵に関与せず、発酵終了時に添加した生きた乳酸菌も含有してもよく、適宜、乳酸菌以外の食品製造で使用することができる微生物、例えば、酢酸菌属又は酵母も含有してもよい。「生鮮」という用語は、この製品が、発酵後、凍結乾燥又は乾燥等のいかなる処理にもかけられていないことを示す。概して、生鮮製品は冷蔵で保存される。
【0017】
「充填終了」は、発酵製品を消費まで貯蔵する容器に封をする時間と定義する。
【0018】
本発明を実施するための適切な食品基質はすべて、通常、ビフィズス菌を含有する発酵食品の生産に使用することができるものである。
【0019】
それらは、例えば、乳基質(牛乳、山羊乳、羊乳若しくは馬乳であってもよく、又は乳をヒトの消費に使用することができる任意の他の哺乳類由来の乳であってもよい)であってもよく、この乳は、必要に応じて、特にそのタンパク質及び脂肪の組成を制御することができる各種処理(クリーム分離、限外濾過、濃縮又は希釈、及び乳画分の添加等)にかけられていてもよく、これはまた、粉乳若しくは乳画分若しくは乳タンパク質が濃縮された乳から再構成した乳及び/又は乳タンパク質加水分解物であってもよい。
【0020】
これはまた、植物基質、例えば、果汁又は野菜汁、豆乳、コムギ、オートムギ及びトウモロコシ等の穀類系の基質であってもよい。
【0021】
これはまた、これらの基質の2つ以上の混合物(複数可)であってもよい。
【0022】
これはまた、脂肪系フィリング等の基質であってもよい。
【0023】
適宜、上記食品基質には、各種物質、例えば、食感改良(texturing)剤、風味増強剤及び着香料等が補充される。
【0024】
通常、選択した細菌を接種する前に、潜在的な汚染菌を破壊するために、上記基質を、例えば、90℃〜95℃で5分間〜10分間加熱処理する。
【0025】
本発明を実施するために使用するビフィズス菌株(複数可)は、食品の調製に通常使用される上述したビフィズス菌種から選択してもよい。異なる種のビフィズス菌株を組み合わせることも可能である。好ましい種は、特にBifidobacterium animalis、特に亜種のBifidobacterium animalis animalis及びBifidobacterium animalis lactisである。例として、Bifidobacterium animalis lactis CNCM 1−2494株を挙げることができる。
【0026】
ビフィズス菌の他の好ましい種は、B.lactis BB12(CHR Hansen)、B.longum BB536(森永乳業)、B.breve CNCM I−2219(Danone)、B.breve YIT 4014(ヤクルト)、B.infantis 35624(Proctor & Gamble)である。
【0027】
乳酸菌(複数可)の他の株も、食品の調製に通常使用されるものから選択され得る。
【0028】
それらの選択は、得ることが望ましい発酵製品のタイプによって決まる。
【0029】
非限定的な例として、
乳酸桿菌、例えば、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus reteri、Lactobacillus helveticus及びLactobacillus plantarum等、
適宜、他の種の乳酸桿菌と組み合わせてもよい、ヨーグルト発酵体、すなわち、Streptococcus thermophilus及びLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、
概して、ロイコノストック属、ラクトコッカス属及び酢酸菌属の細菌、並びにクルイベロミセス属及びサッカロミセス属の酵母と組み合わせられる、Lactobacillus Kefiriを含有する、ケフィア発酵体、
特にチーズの製造に使用する中温菌、例えば、Lactococcus cremoris、Lactococcus lactis、Lactococcus diacetylactis及びロイコノストック属
を挙げることができる。
【0030】
Acacia senegal又はAcacia seyal由来のアラビアガム、例えば、それぞれ、CNIという企業によりFIBREGUM(登録商標)P及びFIBREGUM(登録商標)Bという名称で販売されているもの又はKerry ingredientsという企業により若しくはALFRED L. WOLFF GmbHという企業によりQuick Gum(登録商標)という商標で販売されているものを使用することも可能である。
【0031】
含硫アミノ酸(複数可)は、好ましくは、COMPAGNIE GERVAIS DANONE名義で2006年7月11日に出願された国際出願PCT/FR2006/001688号明細書に記載の様式に従って、遊離形態で使用され、COMPAGNIE GERVAIS DANONE名義で2006年7月13日に出願された仏国特許出願公開第0606421号明細書に記載のものと同様の、システイン塩基を含有する顆粒を使用することも可能である。
【0032】
最終製品(すなわち、発酵及び充填した製品)中のアラビアガムの量は、概して約0.1重量%〜約3重量%、好ましくは約0.2重量%〜約1重量%である。最終製品中の含硫アミノ酸(複数可)の量は、約5mg/l〜約50mg/lの範囲である可能性があり、概して約5mg/l〜約20mg/l、好ましくは約5mg/l〜約15mg/l、有利には約5mg/l〜約10mg/lである。
【0033】
使用するアラビアガムの量は、有利には、最終製品の所望のタンパク質含量、又はそうでなければ含硫アミノ酸(複数可)の添加に応じて調整され得る。
【0034】
製品のタンパク質含量が3.4%以上である場合、好ましくは最終製品中の量が0.5%以上となるように、アラビアガムを単独で使用してもよく、最終製品中のアラビアガムの量が0.5%未満となることが望ましい場合は、含硫アミノ酸(複数可)も添加することが好ましい。
【0035】
製品のタンパク質含量が3.4%未満である場合、概して、特にビフィズス菌の生存に対する最適な効果を得るために、アカシアガム及び含硫アミノ酸(複数可)の組合せを使用することが好ましい。
【0036】
ビフィズス菌の生存率に対する所望の効果を得るために、充填終了前の製品の製造時の任意の時間に、アラビアガムを、含硫アミノ酸(複数可)と同様に、一緒に又は別個に、また一度に又は幾つかの画分で添加してもよい。
【0037】
本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、当該方法は、1つ又は複数のビフィズス菌株によって、又はそうでなければ、ビフィズス菌以外の1つ又は複数の乳酸菌の1つ又は複数の株と組み合わせて、食品基質を発酵させる工程を含む。
【0038】
この場合、ビフィズス菌の増殖を刺激するために、この発酵の前に、アラビアガムの合計量の少なくとも一部、及び必要に応じて含硫アミノ酸(複数可)の合計量の少なくとも一部の添加を実施する。最終製品中の想定されるアラビアガムの量が0.5%未満である場合、全アラビアガムを発酵前に添加することが好ましく、最終製品中の想定されるアラビアガムの量が0.5%〜1%である場合、発酵前に添加するアラビアガムの量は、好ましくは使用する合計量の50%〜100%であり、最終製品中の想定されるアラビアガムの量が1%より多い場合、発酵前に添加するアラビアガムの量は、好ましくは使用する合計量の20%〜100%である。同様に、最終製品中の想定される含硫アミノ酸(複数可)の量は、5mg/l〜約10mg/lであり、発酵前に添加する含硫アミノ酸(複数可)の量は、好ましくは使用する合計量の80%〜100%であり、最終製品中の想定される含硫アミノ酸(複数可)の量が10mg/lより多い場合、発酵前に添加する含硫アミノ酸(複数可)の量は、好ましくは使用する合計量の20%〜100%である。
【0039】
この実施の形態の特に有利な特徴によれば、仏国特許出願公開第0606421号明細書に記載されているようにシステイン塩基を含有し、且つ使用するビフィズス菌株のうち少なくとも1つを含有する顆粒の形態で、使用する含硫アミノ酸の少なくとも一部を細菌の接種時に添加する。
【0040】
本発明による方法は、乳酸菌の異なる組合せ、及び/又は異なる性質の食品基質を使用して別個に実施される幾つかの発酵工程を含み得る。概して、これらの発酵工程を並行して実施した後、それらの製品を混合する。これらの別個の発酵のうちの1つは、ビフィズス菌を含まない発酵体を使用することが可能である。この場合、アラビアガム又はアラビアガム/含硫アミノ酸(複数可)の組合せの存在下で発酵を実施する必要はないが、発酵品の混合物中に存在するように、発酵の前、途中又は後に、アラビアガムを、含硫アミノ酸(複数可)と同様に、一緒に又は別個に添加することが可能である。
【0041】
本発明の方法の状況において、食品基質の接種に使用するビフィズス菌の量は、基質1ml当たり、約106CFU〜約2×107CFUである。ビフィズス菌は、他の乳酸菌と一緒に基質の発酵に使用する場合、使用する種菌中に存在する細菌個体数の概して約20%〜約75%、好ましくは約30%〜約50%、特に好ましい様式では、約35%〜約40%である。
【0042】
発酵及び充填の直後(すなわち、発酵の終了後4時間以内)の最終製品中のビフィズス菌の量は、製品1ml当たり、少なくとも1×108CFU、好ましくはほぼ2×108CFU〜109CFUである。
【0043】
ビフィズス菌を他の乳酸菌で発酵した製品に添加する場合、添加する量はまた、製品1ml当たりの個体数が同様に少なくとも1×108CFU、好ましくはほぼ2×108CFU〜109CFUとなるように調整される。
【0044】
本発明による方法は、多種多様な発酵生鮮品の製造に使用することができ、このタイプの製品を調製する慣習的な態様を変更することなく、又はほんの僅かに変更した後に使用してもよい。
【0045】
図1〜図5は、非限定的な例を用いて、各種発酵乳製品の調製の文脈における本発明の方法の使用を概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】撹拌型ヨーグルトタイプの発酵製品の調製を概略的に示す。
【図2】飲むヨーグルトタイプの発酵製品の調製を概略的に示す。
【図3】ヨーグルト発酵体及びケフィア発酵体を含有する発酵製品の調製を概略的に示す。
【図4】ヨーグルト発酵体及びチーズ製造で使用する発酵体を含有する発酵製品の調製を概略的に示す。
【図5】固形ヨーグルトタイプの発酵製品の調製を概略的に示す。
【図6】時間に応じたビフィズス菌の生存の変化を示す。
【図7】時間に応じたビフィズス菌個体数のモニタリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の主題はまた、本発明による方法によって得ることができる、発酵食品、特に発酵乳製品及び/又は植物基質系製品である。
【0048】
本発明の主題はまた、シリアルバー及びクリームビスケットの組成に含入することができる脂肪系フィリングの形態で提供される発酵食品である。
【0049】
本発明による発酵食品は、0.1重量%〜3重量%、好ましくは0.2重量%〜1重量%のアラビアガムを含有し、有利には約5mg/l〜約50mg/lの含硫アミノ酸(複数可)、好ましくはシステインも含有する。
【0050】
それらはまた、発酵及び充填の直後、製品1ml当たり、少なくとも1×108CFU、好ましくはほぼ2×108CFU〜109CFUのビフィズス菌を含有する。4℃〜10℃で28日保存した後、発酵終了時に存在するビフィズス菌のうち少なくとも40%が、上記製品中で依然として生存していることが好ましい。
【0051】
特に好ましい製品は、0.2重量%〜1重量%のアラビアガム及び5mg/l〜10mg/lのシステインを含有する。4℃〜10℃で35日保存した後、発酵終了時に存在するビフィズス菌のうち少なくとも30%が、上記製品中で依然として生存している。特に好ましい様式において、製品は、2%〜3.5%のタンパク質を含有する飲むヨーグルトタイプの発酵乳製品である。
【0052】
本発明は、以下に続くさらなる説明の助けを借りてより明確に理解されるが、当該説明は、ヨーグルト発酵体の存在下で培養するビフィズス菌の増殖を刺激し、生存を増加させる本発明による方法の使用を例示する非限定的な実施例に言及する。
【実施例】
【0053】
実施例1:乳製品中のビフィズス菌の増殖及び生存に対するアカシアガムの効果
実験プロトコル
実験法に選択した処方は、粉乳の再構成によって得られるタンパク質含量4.4%及び脂肪含量3.5%の乳である。通常、ビフィズス菌の個体数が少ない処方である。
【0054】
2つの用量のアカシアガム(FIBREGUM(登録商標)B)について検討した:最終製品中0.5重量%及び1重量%。アカシアガムは再構成時に含入する。再構成時間は1時間である。
【0055】
アカシアガムを補充した乳を、以下のプロトコル:
55℃への予備加熱、
95℃で6分間の殺菌
40℃への予備冷却、4℃への冷却
に従って加熱処理した。
【0056】
次いで、乳を使用する(この24時間以内)まで4℃で貯蔵した。
接種の準備:
接種40分前、乳を38℃に温度調整する。
【0057】
接種には、以下の種菌を使用する:
Streptococcus thermophilus+Lactobacillus delbrueckii ssp. Bulgaricus+Bifidobacterium animalis ssp lactis(CNCM:I−2494)(量は、Streptococcus thermophilusが5×106CFU/ml、Lactobacillus bulgaricusが5×106CFU/ml、Bifidobacterium animalisが1×107CFU/ml)。
【0058】
接種後、乳を再度38℃の水浴に浸漬する。カード形成(curd settling)pHとなる(4.8)までCINAC(登録商標)システム(YSEBAERT)を使用して発酵をモニタリングする。
カード形成、スムージング、充填:
pH=4.8で、500μmのメッシュを有するフィルタを用いて、発酵乳をスムージングし、20℃に冷却する(6リットル/時間)。次いで、125mlの容器に充填した後、一晩冷却トンネル(4℃)に入れる。翌朝、容器を10℃に移し、D28まで微生物学的モニタリングを行う。計数は、Grand他, 2003に記載のジクロキサシリン法に従って、3連(1回の試験当たり3回の測定)で行う。
結果
D1、D14及びD28のBifidobacterium animalisの個体数を示す表1、D14及びD28での生存の割合をまとめる表2、並びに時間に応じたビフィズス菌の生存の変化を示す図6により、結果を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
これらの結果から、1%アカシアガム存在下でD+28の細菌個体数の生存が改善されることが明確に示される(対照試験及びアカシア試験のD+1の個体数は、統計的には異ならない)。
【0062】
アカシアガム0.5%では効果が低くなる(結果は示さない)が、有意性は保たれる。
実施例2:乳製品中のビフィズス菌の増殖及び生存に対する、アカシアガム及びシステインの組合せの効果
実験プロトコル
上記実施例1で説明したように、飲むヨーグルト(タンパク質2.8%)を粉乳の再構成によって製造し、0.8(重量)%のアカシアガムを補充する。このタイプの製品を試験に選択するのは、貯蔵時のビフィズス菌の個体数を維持する点で最大の問題を投げかける製品であるためである。アカシアガムを補充した再構成乳を、上記実施例1で説明したように加熱処理し、均質化する(150bar〜200bar)。
【0063】
38℃〜40℃へ冷却した後、Streptococcus thermophilus及びLactobacillus delbrueckii ssp. Bulgaricusを、Streptococcus thermophilusは5×106CFU/ml、Lactobacillus bulgaricusは5×106CFU/mlの量で添加する。Bifidobacterium animalis ssp lactis I−2494を、システインを補充したか、又は補充していない、仏国特許出願公開第0606421号明細書に記載されているもの等、直接接種するための発酵体の形態で添加する。使用する補充発酵体は、1.92×107CFU/mlのBifidobacterium animalis及び6.9mg/lのシステインに相当する。
【0064】
接種後、発酵を38℃で実施し、カード形成pHとなる(4.3<pH<4.4)までCINAC(登録商標)システム(YSEBAERT)を使用してモニタリングする。
【0065】
取り出し(drawing off)及び10℃〜20℃での冷却によってカードを形成した後、撹拌する。
【0066】
次いで、製品を容器に充填した後、冷却トンネル(4℃)に入れる。
【0067】
次いで、個体数を、15℃で2時間貯蔵して計測した後、10℃で2日、8日、14日、28日及び37日貯蔵して計測する。
結果
時間に応じたビフィズス菌個体数のモニタリングを示す下記表3及び図7により、結果を示す。
【0068】
これらの結果からは、ビフィズス菌の増殖に対する、アカシアガム及びアカシアガム+システインの組合せの非常に顕著な効果が示される。アカシアガム+システインの組合せの場合、保存時のビフィズス菌の生存に対する特に顕著な効果がさらに観察される。
【0069】
【表3】
【0070】
2.7%のタンパク質を含有し、0.8%のアカシアガムを含有し、且つ1.90×107CFU/mlのbifidobacteria animalis及び7mg/lのシステインの添加に相当するシステインを補充した発酵体を接種した製品を用いて、同一の実験を繰り返した。
【0071】
結果を表4で示す。
【0072】
これらの結果から、ビフィズス菌の生存に対する、アカシアガム、とりわけ、アカシアガム+システインの組合せの効果が認められる。接種から52日後、生存しているビフィズス菌は実際、アカシアガムを補充した製品では対照製品の2倍、またアカシアガム及びシステインを補充した製品では対照製品の10倍である。
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵食品の製造に関与するビフィズス菌の増殖及び生存を改善する、単独又は含硫アミノ酸との組合せでのアカシアガム(すなわち、アラビアガム)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビフィズス菌は、近年、各種食品、特に発酵乳製品の製造で最も一般的に使用されているプロバイオティック微生物の1つである。
【0003】
プロバイオティクスは、「適量消費すると宿主に健康上の利益を授ける、生きた微生物」と定義される(食品中のプロバイオティクスの健康特性及び栄養特性の評価に関するFAO/WHOの専門家による混成協議会の報告、2001)。この定義は、その有益な効果の発揮には、関連微生物が、消費される準備が整っている製品中に十分量存在する必要があることを示す。この量は概して、少なくとも107cfu/mlに等しい必要があると考えられる。したがって、プロバイオティック細菌を含有する食品の製造、充填及び貯蔵時にプロバイオティック細菌の生存率を維持することが、これらの製品の質の不可欠な要素となっている。
【0004】
食品部門で最も汎用されているビフィズス菌の種は、Bifidobacterium adolescentis、B.bifidum、B.breve、B.longum、B.animalis及びB.infantisである。
【0005】
発酵食品を製造する状況において、ビフィズス菌は、単独で使用してもよいが、官能的理由及び/又は技術的理由から、他の乳酸菌と組み合わせることが最も多い。ヨーグルト発酵体(ferments)(L.Bulgaricus及びS.thermophilus)と組み合わせることが特に頻繁である。既に発酵した製品に添加してもよく、又はより一般的には、発酵する基質の接種時に他の乳酸菌と混合してもよい。
【0006】
食品の製造を実施する条件下では、ビフィズス菌の増殖はしばしば緩徐であり、さらに、発酵終了時、消費までの製品の全貯蔵期間にわたる十分なビフィズス菌個体数の維持が難しいことが多い。これらの問題は、ビフィズス菌を他の乳酸菌と組み合わせると増大する可能性がある。混合培養物中でのビフィズス菌の競争力が低いため、ビフィズス菌は、他の乳酸発酵体が存在すると、単独で培養した場合よりも増殖が緩徐になることが多く、そうでなくとも、とりわけ、他の乳酸菌の中には、何よりも乳酸を生産し続けるものがあるため、特に、発酵製品の貯蔵時の生存が概してより劣っている。後酸性化(post-acidification)として知られているこの現象は、同一製品中に存在するビフィズス菌の生存率に影響を及ぼす。
【0007】
こうした背景から、ビフィズス菌の増殖を刺激すると共に、生存率を増加させること、好ましくは、これらのビフィズス菌と組み合わせる乳酸菌の増殖及び生存率に対する(正又は負の)効果をほとんど又は全く誘発せずにビフィズス菌の増殖を刺激すると共に、生存率を増加させることが望まれていると考えられる。
【0008】
本発明者らは、発酵製品の製造時にアラビアガムを使用することにより、これらの結果を達成することができることを発見した。
【0009】
アラビアガムは、或る特定種のアカシアの幹又は枝の傷の滲出によって生産される。高度に分枝し、分子量が大きく、水溶性の多糖である。食品添加物として使用するアラビアガム(E414)は、Acacia seyal又はAcacia senegalのみから得られる。
【0010】
プロバイオティック細菌(各種ビフィズス菌及びLactobacillus paracasei)を封入して、プロバイオティック細菌を乾燥時の加熱及び脱水から守るため、またプロバイオティック細菌の生存率並びに胃液及び胆汁に対する耐性を改善するために、アラビアガムを使用することが提案されている(Lian他 2002;Lian他 2003;Hsiao他 2004;Desmond他 2002)。
【0011】
ヒトでは1日当たり10gの量のアラビアガムを摂取することにより、便中のビフィズス菌及びバクテロイデス属の個体数が増加し得ることも報告されており、より最近では、同様の研究により、1日当たりアラビアガムを10g〜15g摂取した後、乳酸菌、主にビフィズス菌及び乳酸桿菌の総個体数が増加することが述べられている(Wyatt他 1986;Cherbut他 2003)。
【0012】
本発明者らは、ビフィズス菌を単独で又は他の乳酸菌と共に含有する培養物にアラビアガムをin vitroで添加すると、発酵時にビフィズス菌の増殖が刺激されると共に、発酵製品の貯蔵時のそれらの寿命が増加し、他方で、他の乳酸菌が存在しても、その増殖及び生存率にはほどんど又は全く影響しないことを発見した。本発明者らはさらに、システインをさらに添加すると、ビフィズス菌に対する、特に保存時のビフィズス菌の生存に対するアラビアガムの特定の効果がかなり増大することを観察した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主題は、1つ又は複数のビフィズス菌の株を含有する発酵生鮮食品の保存中のビフィズス菌の生存率を増加させる方法であって、充填終了前に、アラビアガムを上記食品に添加することを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、上記食品は、ビフィズス菌以外の1つ又は複数の乳酸菌の株をさらに含有する。
【0015】
本発明の別の好ましい実施の形態によれば、上記方法は、充填終了前に、少なくとも1つの含硫アミノ酸(システイン又はメチオニン)、好ましくはシステインを上記食品に添加することをさらに含む。
【0016】
ここで、「発酵食品」は、乳酸菌を含む発酵体による適切な食品基質の発酵により得られ、且つこれらの乳酸菌が生きた状態にある製品と定義される。この製品は、発酵に関与せず、発酵終了時に添加した生きた乳酸菌も含有してもよく、適宜、乳酸菌以外の食品製造で使用することができる微生物、例えば、酢酸菌属又は酵母も含有してもよい。「生鮮」という用語は、この製品が、発酵後、凍結乾燥又は乾燥等のいかなる処理にもかけられていないことを示す。概して、生鮮製品は冷蔵で保存される。
【0017】
「充填終了」は、発酵製品を消費まで貯蔵する容器に封をする時間と定義する。
【0018】
本発明を実施するための適切な食品基質はすべて、通常、ビフィズス菌を含有する発酵食品の生産に使用することができるものである。
【0019】
それらは、例えば、乳基質(牛乳、山羊乳、羊乳若しくは馬乳であってもよく、又は乳をヒトの消費に使用することができる任意の他の哺乳類由来の乳であってもよい)であってもよく、この乳は、必要に応じて、特にそのタンパク質及び脂肪の組成を制御することができる各種処理(クリーム分離、限外濾過、濃縮又は希釈、及び乳画分の添加等)にかけられていてもよく、これはまた、粉乳若しくは乳画分若しくは乳タンパク質が濃縮された乳から再構成した乳及び/又は乳タンパク質加水分解物であってもよい。
【0020】
これはまた、植物基質、例えば、果汁又は野菜汁、豆乳、コムギ、オートムギ及びトウモロコシ等の穀類系の基質であってもよい。
【0021】
これはまた、これらの基質の2つ以上の混合物(複数可)であってもよい。
【0022】
これはまた、脂肪系フィリング等の基質であってもよい。
【0023】
適宜、上記食品基質には、各種物質、例えば、食感改良(texturing)剤、風味増強剤及び着香料等が補充される。
【0024】
通常、選択した細菌を接種する前に、潜在的な汚染菌を破壊するために、上記基質を、例えば、90℃〜95℃で5分間〜10分間加熱処理する。
【0025】
本発明を実施するために使用するビフィズス菌株(複数可)は、食品の調製に通常使用される上述したビフィズス菌種から選択してもよい。異なる種のビフィズス菌株を組み合わせることも可能である。好ましい種は、特にBifidobacterium animalis、特に亜種のBifidobacterium animalis animalis及びBifidobacterium animalis lactisである。例として、Bifidobacterium animalis lactis CNCM 1−2494株を挙げることができる。
【0026】
ビフィズス菌の他の好ましい種は、B.lactis BB12(CHR Hansen)、B.longum BB536(森永乳業)、B.breve CNCM I−2219(Danone)、B.breve YIT 4014(ヤクルト)、B.infantis 35624(Proctor & Gamble)である。
【0027】
乳酸菌(複数可)の他の株も、食品の調製に通常使用されるものから選択され得る。
【0028】
それらの選択は、得ることが望ましい発酵製品のタイプによって決まる。
【0029】
非限定的な例として、
乳酸桿菌、例えば、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus reteri、Lactobacillus helveticus及びLactobacillus plantarum等、
適宜、他の種の乳酸桿菌と組み合わせてもよい、ヨーグルト発酵体、すなわち、Streptococcus thermophilus及びLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、
概して、ロイコノストック属、ラクトコッカス属及び酢酸菌属の細菌、並びにクルイベロミセス属及びサッカロミセス属の酵母と組み合わせられる、Lactobacillus Kefiriを含有する、ケフィア発酵体、
特にチーズの製造に使用する中温菌、例えば、Lactococcus cremoris、Lactococcus lactis、Lactococcus diacetylactis及びロイコノストック属
を挙げることができる。
【0030】
Acacia senegal又はAcacia seyal由来のアラビアガム、例えば、それぞれ、CNIという企業によりFIBREGUM(登録商標)P及びFIBREGUM(登録商標)Bという名称で販売されているもの又はKerry ingredientsという企業により若しくはALFRED L. WOLFF GmbHという企業によりQuick Gum(登録商標)という商標で販売されているものを使用することも可能である。
【0031】
含硫アミノ酸(複数可)は、好ましくは、COMPAGNIE GERVAIS DANONE名義で2006年7月11日に出願された国際出願PCT/FR2006/001688号明細書に記載の様式に従って、遊離形態で使用され、COMPAGNIE GERVAIS DANONE名義で2006年7月13日に出願された仏国特許出願公開第0606421号明細書に記載のものと同様の、システイン塩基を含有する顆粒を使用することも可能である。
【0032】
最終製品(すなわち、発酵及び充填した製品)中のアラビアガムの量は、概して約0.1重量%〜約3重量%、好ましくは約0.2重量%〜約1重量%である。最終製品中の含硫アミノ酸(複数可)の量は、約5mg/l〜約50mg/lの範囲である可能性があり、概して約5mg/l〜約20mg/l、好ましくは約5mg/l〜約15mg/l、有利には約5mg/l〜約10mg/lである。
【0033】
使用するアラビアガムの量は、有利には、最終製品の所望のタンパク質含量、又はそうでなければ含硫アミノ酸(複数可)の添加に応じて調整され得る。
【0034】
製品のタンパク質含量が3.4%以上である場合、好ましくは最終製品中の量が0.5%以上となるように、アラビアガムを単独で使用してもよく、最終製品中のアラビアガムの量が0.5%未満となることが望ましい場合は、含硫アミノ酸(複数可)も添加することが好ましい。
【0035】
製品のタンパク質含量が3.4%未満である場合、概して、特にビフィズス菌の生存に対する最適な効果を得るために、アカシアガム及び含硫アミノ酸(複数可)の組合せを使用することが好ましい。
【0036】
ビフィズス菌の生存率に対する所望の効果を得るために、充填終了前の製品の製造時の任意の時間に、アラビアガムを、含硫アミノ酸(複数可)と同様に、一緒に又は別個に、また一度に又は幾つかの画分で添加してもよい。
【0037】
本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、当該方法は、1つ又は複数のビフィズス菌株によって、又はそうでなければ、ビフィズス菌以外の1つ又は複数の乳酸菌の1つ又は複数の株と組み合わせて、食品基質を発酵させる工程を含む。
【0038】
この場合、ビフィズス菌の増殖を刺激するために、この発酵の前に、アラビアガムの合計量の少なくとも一部、及び必要に応じて含硫アミノ酸(複数可)の合計量の少なくとも一部の添加を実施する。最終製品中の想定されるアラビアガムの量が0.5%未満である場合、全アラビアガムを発酵前に添加することが好ましく、最終製品中の想定されるアラビアガムの量が0.5%〜1%である場合、発酵前に添加するアラビアガムの量は、好ましくは使用する合計量の50%〜100%であり、最終製品中の想定されるアラビアガムの量が1%より多い場合、発酵前に添加するアラビアガムの量は、好ましくは使用する合計量の20%〜100%である。同様に、最終製品中の想定される含硫アミノ酸(複数可)の量は、5mg/l〜約10mg/lであり、発酵前に添加する含硫アミノ酸(複数可)の量は、好ましくは使用する合計量の80%〜100%であり、最終製品中の想定される含硫アミノ酸(複数可)の量が10mg/lより多い場合、発酵前に添加する含硫アミノ酸(複数可)の量は、好ましくは使用する合計量の20%〜100%である。
【0039】
この実施の形態の特に有利な特徴によれば、仏国特許出願公開第0606421号明細書に記載されているようにシステイン塩基を含有し、且つ使用するビフィズス菌株のうち少なくとも1つを含有する顆粒の形態で、使用する含硫アミノ酸の少なくとも一部を細菌の接種時に添加する。
【0040】
本発明による方法は、乳酸菌の異なる組合せ、及び/又は異なる性質の食品基質を使用して別個に実施される幾つかの発酵工程を含み得る。概して、これらの発酵工程を並行して実施した後、それらの製品を混合する。これらの別個の発酵のうちの1つは、ビフィズス菌を含まない発酵体を使用することが可能である。この場合、アラビアガム又はアラビアガム/含硫アミノ酸(複数可)の組合せの存在下で発酵を実施する必要はないが、発酵品の混合物中に存在するように、発酵の前、途中又は後に、アラビアガムを、含硫アミノ酸(複数可)と同様に、一緒に又は別個に添加することが可能である。
【0041】
本発明の方法の状況において、食品基質の接種に使用するビフィズス菌の量は、基質1ml当たり、約106CFU〜約2×107CFUである。ビフィズス菌は、他の乳酸菌と一緒に基質の発酵に使用する場合、使用する種菌中に存在する細菌個体数の概して約20%〜約75%、好ましくは約30%〜約50%、特に好ましい様式では、約35%〜約40%である。
【0042】
発酵及び充填の直後(すなわち、発酵の終了後4時間以内)の最終製品中のビフィズス菌の量は、製品1ml当たり、少なくとも1×108CFU、好ましくはほぼ2×108CFU〜109CFUである。
【0043】
ビフィズス菌を他の乳酸菌で発酵した製品に添加する場合、添加する量はまた、製品1ml当たりの個体数が同様に少なくとも1×108CFU、好ましくはほぼ2×108CFU〜109CFUとなるように調整される。
【0044】
本発明による方法は、多種多様な発酵生鮮品の製造に使用することができ、このタイプの製品を調製する慣習的な態様を変更することなく、又はほんの僅かに変更した後に使用してもよい。
【0045】
図1〜図5は、非限定的な例を用いて、各種発酵乳製品の調製の文脈における本発明の方法の使用を概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】撹拌型ヨーグルトタイプの発酵製品の調製を概略的に示す。
【図2】飲むヨーグルトタイプの発酵製品の調製を概略的に示す。
【図3】ヨーグルト発酵体及びケフィア発酵体を含有する発酵製品の調製を概略的に示す。
【図4】ヨーグルト発酵体及びチーズ製造で使用する発酵体を含有する発酵製品の調製を概略的に示す。
【図5】固形ヨーグルトタイプの発酵製品の調製を概略的に示す。
【図6】時間に応じたビフィズス菌の生存の変化を示す。
【図7】時間に応じたビフィズス菌個体数のモニタリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の主題はまた、本発明による方法によって得ることができる、発酵食品、特に発酵乳製品及び/又は植物基質系製品である。
【0048】
本発明の主題はまた、シリアルバー及びクリームビスケットの組成に含入することができる脂肪系フィリングの形態で提供される発酵食品である。
【0049】
本発明による発酵食品は、0.1重量%〜3重量%、好ましくは0.2重量%〜1重量%のアラビアガムを含有し、有利には約5mg/l〜約50mg/lの含硫アミノ酸(複数可)、好ましくはシステインも含有する。
【0050】
それらはまた、発酵及び充填の直後、製品1ml当たり、少なくとも1×108CFU、好ましくはほぼ2×108CFU〜109CFUのビフィズス菌を含有する。4℃〜10℃で28日保存した後、発酵終了時に存在するビフィズス菌のうち少なくとも40%が、上記製品中で依然として生存していることが好ましい。
【0051】
特に好ましい製品は、0.2重量%〜1重量%のアラビアガム及び5mg/l〜10mg/lのシステインを含有する。4℃〜10℃で35日保存した後、発酵終了時に存在するビフィズス菌のうち少なくとも30%が、上記製品中で依然として生存している。特に好ましい様式において、製品は、2%〜3.5%のタンパク質を含有する飲むヨーグルトタイプの発酵乳製品である。
【0052】
本発明は、以下に続くさらなる説明の助けを借りてより明確に理解されるが、当該説明は、ヨーグルト発酵体の存在下で培養するビフィズス菌の増殖を刺激し、生存を増加させる本発明による方法の使用を例示する非限定的な実施例に言及する。
【実施例】
【0053】
実施例1:乳製品中のビフィズス菌の増殖及び生存に対するアカシアガムの効果
実験プロトコル
実験法に選択した処方は、粉乳の再構成によって得られるタンパク質含量4.4%及び脂肪含量3.5%の乳である。通常、ビフィズス菌の個体数が少ない処方である。
【0054】
2つの用量のアカシアガム(FIBREGUM(登録商標)B)について検討した:最終製品中0.5重量%及び1重量%。アカシアガムは再構成時に含入する。再構成時間は1時間である。
【0055】
アカシアガムを補充した乳を、以下のプロトコル:
55℃への予備加熱、
95℃で6分間の殺菌
40℃への予備冷却、4℃への冷却
に従って加熱処理した。
【0056】
次いで、乳を使用する(この24時間以内)まで4℃で貯蔵した。
接種の準備:
接種40分前、乳を38℃に温度調整する。
【0057】
接種には、以下の種菌を使用する:
Streptococcus thermophilus+Lactobacillus delbrueckii ssp. Bulgaricus+Bifidobacterium animalis ssp lactis(CNCM:I−2494)(量は、Streptococcus thermophilusが5×106CFU/ml、Lactobacillus bulgaricusが5×106CFU/ml、Bifidobacterium animalisが1×107CFU/ml)。
【0058】
接種後、乳を再度38℃の水浴に浸漬する。カード形成(curd settling)pHとなる(4.8)までCINAC(登録商標)システム(YSEBAERT)を使用して発酵をモニタリングする。
カード形成、スムージング、充填:
pH=4.8で、500μmのメッシュを有するフィルタを用いて、発酵乳をスムージングし、20℃に冷却する(6リットル/時間)。次いで、125mlの容器に充填した後、一晩冷却トンネル(4℃)に入れる。翌朝、容器を10℃に移し、D28まで微生物学的モニタリングを行う。計数は、Grand他, 2003に記載のジクロキサシリン法に従って、3連(1回の試験当たり3回の測定)で行う。
結果
D1、D14及びD28のBifidobacterium animalisの個体数を示す表1、D14及びD28での生存の割合をまとめる表2、並びに時間に応じたビフィズス菌の生存の変化を示す図6により、結果を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
これらの結果から、1%アカシアガム存在下でD+28の細菌個体数の生存が改善されることが明確に示される(対照試験及びアカシア試験のD+1の個体数は、統計的には異ならない)。
【0062】
アカシアガム0.5%では効果が低くなる(結果は示さない)が、有意性は保たれる。
実施例2:乳製品中のビフィズス菌の増殖及び生存に対する、アカシアガム及びシステインの組合せの効果
実験プロトコル
上記実施例1で説明したように、飲むヨーグルト(タンパク質2.8%)を粉乳の再構成によって製造し、0.8(重量)%のアカシアガムを補充する。このタイプの製品を試験に選択するのは、貯蔵時のビフィズス菌の個体数を維持する点で最大の問題を投げかける製品であるためである。アカシアガムを補充した再構成乳を、上記実施例1で説明したように加熱処理し、均質化する(150bar〜200bar)。
【0063】
38℃〜40℃へ冷却した後、Streptococcus thermophilus及びLactobacillus delbrueckii ssp. Bulgaricusを、Streptococcus thermophilusは5×106CFU/ml、Lactobacillus bulgaricusは5×106CFU/mlの量で添加する。Bifidobacterium animalis ssp lactis I−2494を、システインを補充したか、又は補充していない、仏国特許出願公開第0606421号明細書に記載されているもの等、直接接種するための発酵体の形態で添加する。使用する補充発酵体は、1.92×107CFU/mlのBifidobacterium animalis及び6.9mg/lのシステインに相当する。
【0064】
接種後、発酵を38℃で実施し、カード形成pHとなる(4.3<pH<4.4)までCINAC(登録商標)システム(YSEBAERT)を使用してモニタリングする。
【0065】
取り出し(drawing off)及び10℃〜20℃での冷却によってカードを形成した後、撹拌する。
【0066】
次いで、製品を容器に充填した後、冷却トンネル(4℃)に入れる。
【0067】
次いで、個体数を、15℃で2時間貯蔵して計測した後、10℃で2日、8日、14日、28日及び37日貯蔵して計測する。
結果
時間に応じたビフィズス菌個体数のモニタリングを示す下記表3及び図7により、結果を示す。
【0068】
これらの結果からは、ビフィズス菌の増殖に対する、アカシアガム及びアカシアガム+システインの組合せの非常に顕著な効果が示される。アカシアガム+システインの組合せの場合、保存時のビフィズス菌の生存に対する特に顕著な効果がさらに観察される。
【0069】
【表3】
【0070】
2.7%のタンパク質を含有し、0.8%のアカシアガムを含有し、且つ1.90×107CFU/mlのbifidobacteria animalis及び7mg/lのシステインの添加に相当するシステインを補充した発酵体を接種した製品を用いて、同一の実験を繰り返した。
【0071】
結果を表4で示す。
【0072】
これらの結果から、ビフィズス菌の生存に対する、アカシアガム、とりわけ、アカシアガム+システインの組合せの効果が認められる。接種から52日後、生存しているビフィズス菌は実際、アカシアガムを補充した製品では対照製品の2倍、またアカシアガム及びシステインを補充した製品では対照製品の10倍である。
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のビフィズス菌の株を含有する発酵生鮮食品の保存中にビフィズス菌の生存率を増加させる方法であって、充填終了前に、アラビアガムを前記食品に添加することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記食品が、ビフィズス菌以外の1つ又は複数の乳酸菌の株をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
充填終了前に、少なくとも1つの含硫アミノ酸を前記食品に添加することをさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記含硫アミノ酸がシステインであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アラビアガムを、前記食品中での最終濃度が約0.1重量%〜約3重量%となるように添加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記含硫アミノ酸(複数可)を、最終濃度が約5mg/l〜約50mg/lとなるように添加することを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
必要に応じて前記ビフィズス菌以外の少なくとも1つの乳酸菌の株と組み合わせた前記1つ又は複数のビフィズス菌株を含む発酵体による適切な食品基質の発酵工程を含み、且つ該発酵工程の前に、前記ビフィズス菌の増殖を刺激するために、前記アラビアガムの合計量の少なくとも一部、及び必要に応じて含硫アミノ酸の合計量の少なくとも一部の添加を実施することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記発酵製品が、少なくとも1つのBifidobacterium animalis株を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ビフィズス菌以外の前記乳酸菌が、1つ又は複数のStreptococcus thermophilus株及び1つ又は複数のLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus株を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、発酵食品。
【請求項11】
発酵乳製品であることを特徴とする、請求項10に記載の発酵食品。
【請求項12】
発酵植物基質系の製品であることを特徴とする、請求項10に記載の発酵食品。
【請求項13】
脂肪系フィリングであることを特徴とする、請求項10に記載の発酵食品。
【請求項1】
1つ又は複数のビフィズス菌の株を含有する発酵生鮮食品の保存中にビフィズス菌の生存率を増加させる方法であって、充填終了前に、アラビアガムを前記食品に添加することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記食品が、ビフィズス菌以外の1つ又は複数の乳酸菌の株をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
充填終了前に、少なくとも1つの含硫アミノ酸を前記食品に添加することをさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記含硫アミノ酸がシステインであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アラビアガムを、前記食品中での最終濃度が約0.1重量%〜約3重量%となるように添加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記含硫アミノ酸(複数可)を、最終濃度が約5mg/l〜約50mg/lとなるように添加することを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
必要に応じて前記ビフィズス菌以外の少なくとも1つの乳酸菌の株と組み合わせた前記1つ又は複数のビフィズス菌株を含む発酵体による適切な食品基質の発酵工程を含み、且つ該発酵工程の前に、前記ビフィズス菌の増殖を刺激するために、前記アラビアガムの合計量の少なくとも一部、及び必要に応じて含硫アミノ酸の合計量の少なくとも一部の添加を実施することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記発酵製品が、少なくとも1つのBifidobacterium animalis株を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ビフィズス菌以外の前記乳酸菌が、1つ又は複数のStreptococcus thermophilus株及び1つ又は複数のLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus株を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、発酵食品。
【請求項11】
発酵乳製品であることを特徴とする、請求項10に記載の発酵食品。
【請求項12】
発酵植物基質系の製品であることを特徴とする、請求項10に記載の発酵食品。
【請求項13】
脂肪系フィリングであることを特徴とする、請求項10に記載の発酵食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2010−505390(P2010−505390A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529736(P2009−529736)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001598
【国際公開番号】WO2008/040872
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(506213289)コンパニ・ジェルベ・ダノン (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001598
【国際公開番号】WO2008/040872
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(506213289)コンパニ・ジェルベ・ダノン (2)
【Fターム(参考)】
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