説明

ビフィドバクテリウム・ロンガムATCCBAA−999(BL999)及び体重コントロール

本発明は概して、体重管理の分野に関する。本発明は、例えば、体重管理の支援、体重減少の促進及び/又は肥満の治療のための、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は概して、体重管理の分野に関する。本発明は、例えば、体重管理の支援、体重減少の促進及び/又は肥満の治療のための、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA−999の使用に関する。
【0002】
過去数十年の間に、肥満の有病率は世界中で増加し流行の域に達している。世界中でおよそ10億の人々が過体重又は肥満の状態にあり、死亡、移動及び経済的コストを増加させている。肥満は、エネルギー摂取量がエネルギー消費量よりも高く、余剰エネルギーが主に脂肪として脂肪組織に貯蔵されると発症する。体重の減少及び体重増加の予防は、エネルギー摂取量又はバイオアベイラビリティを減少させること、エネルギー消費量を増加させること及び/又は脂肪としての貯蔵を減少させることにより達成し得る。肥満は、糖尿病、アテローム性動脈硬化、変性疾患、気道疾患及びある種の癌を含む一連の慢性疾患と関係があるので、健康に対する深刻な脅威である。
【0003】
最近、腸内フローラの改変が肥満と関係付けられている。腸内フローラの変化は、腸管微生物叢の代謝能に影響し、結果として食物からのエネルギー回収能力を高めることが、肥満マウスにおいて示されている(Turnbaugh PJ,Ley RE,Mahowald MA,Magrini V,Mardis ER,Gordon JI.An obesity−associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest.Nature.2006;Ley RE,Turnbaugh PJ,Klein S,Gordon JI.Microbial ecology:human gut microbes associated with obesity.Nature.2006)。そのような腸管微生物叢の改変は、肥満の病態生理に寄与するといわれている。食品又は栄養補助食品に存在する有益な細菌であるプロバイオティクスは、腸内微生物叢を改変することが知られている(Fuller R & Gibson GR.Modification of the intestinal microflora using probiotics and prebiotics.Scand J.Gastroenterol.1997)。
【0004】
ある種のプロバイオティクスは肥満に有効であることが知られているが、これらの効果は概して菌株特異的であるように思われる。
【0005】
例えば、欧州特許第1974734号には、幼児が後年において過体重又は肥満を発症するリスクを軽減するための医薬又は治療用栄養組成物の製造における、ビフィズス菌増殖性の初期腸内微生物叢の発現を促進可能なプロバイオティクス細菌、例えばビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の使用が開示されている。幼児は年齢12カ月未満の子供であり、4歳で効果が見られる。
【0006】
即効性のある体重減少効果を特に成体において有するプロバイオティクス菌株が利用可能となるのが望ましいであろう。
【0007】
そこで、本発明は、現在の技術水準を改善すること、特に、効果的、容易に入手可能、低価格で、投与するのに安全で望ましくない副作用のない細菌株を含み、体重管理の支援及び肥満の治療又は予防に使用可能であり、即効性を特に成体において有する組成物を提供することを目的とした。
【0008】
この目的は、本願の独立請求項の発明により達成される。
【0009】
本発明者らは、予想外にも、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999(BL999)株によりこの目的が達成されることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明者らは、予想外にも、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999(BL999)が、幼児において後年の肥満を予防するために使用できるだけでなく、成体において肥満及び関連代謝異常の治療又は予防及び/又は体重管理の支援のためにも使用でき、同時に即効性を有することを見出した。
【0011】
即効性とは、例えば実施例に記載の実験において約1〜4週間で体重に対する効果が現れることを意味する。
【0012】
ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999(BL999)は、専門供給業者から商業的に入手可能であり、例えば日本の森永乳業株式会社から商標BB536の下に入手することができる。
【0013】
ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999(BL999)は、任意の適当な方法で培養することができる。この菌は、例えば凍結乾燥形態又は噴霧乾燥形態で製品に加えることができる。
【0014】
本発明の一実施形態は、成熟したヒト及び/又は動物における体重減少及び/又は体重維持を支援するための組成物であって、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含有する組成物である。
【0015】
本発明はまた、成熟したヒト及び/又は動物における体重減少及び/又は体重維持を支援するための組成物の調製のための、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の使用に関する。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、体重減少を促進するための組成物の調製のための、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の使用である。
【0017】
本発明のさらなる実施形態は、体重管理を支援するための組成物の調製のための、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の使用である。
【0018】
本発明の枠内の組成物は、特に長期間の適用に有益である。本発明者らは、動物モデルにおいて、本明細書に記載の組成物で処置したマウスは、高カロリー食を摂食させた場合、対照マウスより体重増加が有意に小さいことを示している。実際、本発明の組成物で処置したマウスはむしろ体重が減少する。観察された効果は即効性があり1週間以内に観察されたが、この効果は組成物を長く投与するほど顕著であった。実験は約2週間続けられ、観察された効果は時間と共に増加した。
【0019】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、及び/又は少なくとも8週間投与される。
【0020】
本明細書において、下記の語の意味は下記のとおりである。
【0021】
「ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999」という語は、当該細菌そのもの、当該細菌を有する細胞増殖培地、又はビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999が培養された細胞増殖培地を包含するものとする。ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999は、生菌、非複製性細菌又はそれらの混合物として存在し得る。
【0022】
「成熟した」とは、生物が生殖可能である年齢又は段階である。ヒトの場合、成熟過程は思春期と称される。
【0023】
「ボディマス指数」又は「BMI」は、重量(Kg)を身長(m)の2乗で除した比率を意味する。
【0024】
「過体重」は、成人については、25〜30のBMIを有することと定義する。
【0025】
「肥満」は、動物(特に、ヒトやその他の哺乳動物)の脂肪組織に貯蔵されるエネルギーの量が、一定の健康状態又は死亡率上昇がもたらされる程度にまで増加した状態である。「肥満」は、成人については、30より大きいBMIを有することと定義する。
【0026】
「プロバイオティクス」とは、宿主の衛生又は健康に有益な効果を及ぼす微生物細胞の調製物又は微生物細胞の成分を意味する(Salminen S,Ouwehand A.Benno Y.ら,“Probiotics:how should they be defined”,Trends Food Sci.Technol.1999:10 107〜10)。
【0027】
「プレバイオティクス」とは、腸内のプロバイオティクス細菌の増殖を促進する食物を意味する。
【0028】
「食品用細菌」とは、食品に使用され、食品用として一般に安全と認められている細菌を意味する。
【0029】
本発明における「体重減少」とは全体重の減少のことである。体重減少は、例えば、フィットネス、健康及び/又は外見を改善しようとする際の全ボディマスの減少を指す。
【0030】
「体重管理」又は「体重維持」は全体重の維持に関する。体重管理は、例えば、正常とされる18.5〜25の範囲にBMIを維持することに関する。
【0031】
本発明の組成物は、例えば過体重又は肥満のヒト又は動物に投与される。
【0032】
本発明の組成物は、保護親水コロイド(例えば、ゴム、タンパク質、加工デンプン)、結合剤、膜形成剤、カプセル化剤/材料、壁/シェル材、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、蝋、レシチン等)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物(co−compound)、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、矯味剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤及び抗菌剤をさらに含有してもよい。また、本発明の組成物は、公知の医薬品添加物、アジュバント、賦形剤及び希釈剤(例えば、水、ゼラチン、植物性ガム、リグニンスルホン酸塩、タルク、糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、香味料、保存料、安定剤、乳化剤、緩衝液、滑沢剤、着色料、湿潤剤、充填剤。これらに限定されるわけではない。)をさらに含有してもよい。いずれの場合も、このような追加成分は、投与対象の個体への適合性を考慮して選択される。
【0033】
組成物は完全栄養調製乳であってもよい。
【0034】
本発明の組成物はタンパク質源を含んでもよい。
【0035】
任意の適当な食餌性タンパク質、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、食肉タンパク質、卵タンパク質等);植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、エンドウ豆タンパク質等);遊離アミノ酸の混合物;又はそれらの組合せを使用することができる。乳タンパク質(例えば、カゼイン、ホエー)及び大豆タンパク質が特に好ましい。
【0036】
タンパク質は、インタクトなタンパク質、タンパク質の加水分解物、又はインタクトなタンパク質とタンパク質の加水分解物との混合物であってもよい。例えば、牛乳アレルギーを起こすリスクがあると考えられる動物に対しては、タンパク質の部分加水分解物(加水分解度:2〜20%)を与えることが望ましい。タンパク質の加水分解物が必要な場合、加水分解は必要に応じて公知の方法で行うことができる。例えば、ホエータンパク質の加水分解物は、一つ又は複数のステップでホエー画分を酵素で加水分解することによって調製できる。出発物質として使用するホエー画分にラクトースが実質的に含まれない場合、タンパク質は、加水分解の過程でリジンの損失を受けにくくなることが見出されている。このことにより、リジンの損失の程度を、総リジンの約15重量%からリジンの約10重量%未満へ減少させることができる。例えば、リジンの約7重量%に減少させて、タンパク質源の栄養価を大幅に改善することができる。
【0037】
本発明の組成物は炭水化物源及び脂肪源を含有してもよい。
【0038】
組成物が脂肪源を含有する場合、脂肪源は、好ましくは、該組成物のエネルギーの5〜40%(例えば20〜30%)を供給する。適当な脂肪プロファイルは、キャノーラ油、コーン油及び高オレイン酸ヒマワリ油のブレンドを用いて得ることもできる。
【0039】
炭水化物源を組成物に添加してもよい。
【0040】
炭水化物源は、好ましくは、該組成物のエネルギーの40〜80%を供給する。任意の適当な炭水化物、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固形物、マルトデキストリン及びそれらの混合物を使用することができる。必要に応じて食物繊維をさらに添加してもよい。食物繊維は、酵素で消化されずに小腸を通過し、天然の増量剤及び緩下剤として機能する。食物繊維は水溶性でも不溶性でもよいが、一般には両者のブレンドが好ましい。食物繊維の適当な供給源としては、例えば、大豆、エンドウ豆、燕麦、ペクチン、グアーガム、アラビアゴム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、シアリルラクトース及び動物乳由来のオリゴ糖が挙げられる。好ましい繊維ブレンドは、イヌリンとそれよりも短鎖のフラクトオリゴ糖との混合物である。好ましくは、繊維が存在する場合、繊維含有量は、摂取される組成物1L当たり2〜40g、より好ましくは4〜10gである。
【0041】
本発明の組成物は、政府機関(USRDA等)の推奨に従って、ミネラル及び微量栄養素(微量元素、ビタミン等)をさらに含有してもよい。
【0042】
必要に応じて少なくとも1種の食品用乳化剤(例えば、モノ−及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチン、モノ−及びジグリセリド)を組成物に組み込んでもよい。同様に、適当な塩及び安定剤を含んでもよい。
【0043】
本発明の組成物は、好ましくは経口又は経腸投与可能なものである。例えば、ミルク又は水で戻す粉末の形態のものである。
【0044】
好ましくは、組成物は、粉末の形態、例えば貯蔵安定粉末の形態で提供される。貯蔵安定性は、例えば、組成物を0.2未満、例えば0.19〜0.05、好ましくは0.15未満の水分活性とすることによって得ることができる。
【0045】
水分活性又はaは、系内の水のエネルギー状態の大きさである。水分活性は、水の蒸気圧を同じ温度の純水の蒸気圧で除したものとして定義される。したがって、純粋な蒸留水の水分活性はちょうど1である。
【0046】
上述の組成物は、任意の適当な方法で調製できる。例えば、組成物は、タンパク質、炭水化物源及び脂肪源を適当な比率でブレンドすることによって調製できる。乳化剤を使用する場合には、乳化剤はこの時点で含ませてもよい。ビタミン及びミネラルはこの時点で添加し得るが、通常は、熱分解を避けるために後で添加される。任意の脂溶性ビタミン、乳化剤等を、ブレンド前に脂肪源に溶解させてもよい。次いで、水、好ましくは逆浸透にかけた水をその中に混合して液体混合物を形成することができる。成分の分散を促進する上で、水の温度は約50℃〜約80℃が好都合である。商業的に入手可能な液化剤を用いて液体混合物を形成してもよい。次いで、液体混合物を例えば2段階で均質化する。
【0047】
液体混合物は、次いで、細菌量を減少させるために熱処理してもよく、液体混合物を、例えば、約80℃〜約150℃の温度で約5秒〜約5分急速に加熱することによって処理してもよい。この処理は、蒸気噴射、オートクレーブ又は熱交換器(例えば平板熱交換器)により行ってもよい。
【0048】
次いで、液体混合物を約60℃〜約85℃に、例えばフラッシュ冷却により冷却してもよい。液体混合物は、次いで再び均質化してもよく、例えば2段階で、1段階目は約10MPa〜約30MPa、2段階目は約2MPa〜約10MPaで均質化してもよい。均質化した混合物は、熱に敏感な成分(例えば、ビタミン、ミネラル)を添加するためにさらに冷却してもよい。均質化した混合物のpH及び固形分含有量は、この時点で調整するのが好都合である。
【0049】
均質化した混合物は、適当な乾燥装置、例えば噴霧乾燥器又は凍結乾燥器に移されて粉末に変換される。粉末の水分含有量は約5重量%未満とすべきである。
【0050】
ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999は、任意の適当な方法で培養することができ、組成物に添加するために、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥によって調製できる。ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の適当な培養方法は当業者には公知である。或いは、栄養調製乳、乳児用調製乳等の食品への添加用として既に適当な形態に調製された細菌調製物を専門の供給業者から購入することもできる。プロバイオティクス細菌は、調製乳に、適当な量、好ましくは10〜1012cfu/g粉末、より好ましくは10〜1012cfu/g粉末で添加し得る。
【0051】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物で処置されるヒトは少なくとも16歳である。
【0052】
本発明の組成物で処置される動物が例えばイヌ又はネコである場合、イヌ又はネコは例えば少なくとも2歳である。
【0053】
組成物は医薬組成物であってもよい。医薬組成物において、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の投与量は医師の推奨に従って慎重に調整し得る。
【0054】
組成物はまた、食品又は飲料であってもよい。食品として、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の有益な効果は誰でも享受可能である。したがって、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999は、例えば体重管理の支援のために誰でも容易に使用できる。肥満の治療又は予防はより早い段階で開始し得る。さらに、食品において、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999はより美味しく摂取し得る。本発明に適用可能な食品の例は、ヨーグルト、乳、調味乳、アイスクリーム、即席デザート、(例えばミルク又は水による)再溶解用粉末、チョコレート乳飲料、麦芽飲料、即席料理、ヒト用のインスタント料理又は飲料、或いはペット又は家畜用の完全食又は部分食となる食品組成物である。
【0055】
したがって、本発明の組成物はヒト、ペット又は家畜用の食品であってもよい。
【0056】
組成物は、特に、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ又は家禽類からなる群より選択される動物用であってもよい。
【0057】
好ましい実施形態において、組成物は、成体の動物用、特に成体のヒト用の食品である。
【0058】
本発明の組成物は、少なくとも1種の他の食品用細菌又は酵母を含んでもよい。食品用細菌はプロバイオティクス細菌であってもよく、好ましくは、乳酸菌、ビフィズス菌、プロピオン酸菌又はそれらの混合物からなる群より選択される。
【0059】
プロバイオティクス細菌は、確立されたプロバイオティクス特性を有する任意の乳酸菌又はビフィズス菌であってもよい。プロバイオティクス細菌は、例えば、ビフィズス菌増殖性の腸内微生物叢の発現を促進する能力も有するものであってもよい。適当なプロバイオティクスのビフィズス菌株としては、特にデンマークのChristian Hansen companyにより商標Bb12の下に販売されているビフィドバクテリウム・ラクチス(Bifidobacterium lactis)CNCM I−3446、Daniscoにより商標Bb−03の下に販売されているビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)菌株、Morinagaにより商標M−16Vの下に販売されているビフィドバクテリウム・ブレーベ菌株、及びInstitut Rosell(Lallemand)により商標R0070の下に販売されているビフィドバクテリウム・ブレーベ菌株が挙げられる。適当なプロバイオティクスの乳酸菌とビフィズス菌との混合物を使用してもよい。
【0060】
食品用酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)及び/又はサッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)が使用可能である。
【0061】
本発明の好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも1種のプレバイオティクスをさらに含有する。プレバイオティクスは、腸内で特定の食品用細菌、特にプロバイオティクス細菌の増殖を促進できるので、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の効果を増強することができる。さらに、例えば消化に好ましい影響を及ぼすプレバイオティクスもある。
【0062】
好ましくは、プレバイオティクスはオリゴ糖からなる群より選択され、任意選択で、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ダイズ及び/又はイヌリン、食物繊維、又はそれらの混合物を含有する。
【0063】
組成物は、少なくとも1種のプレバイオティクスを、例えば組成物の乾燥重量の0.3〜10%含有する。プレバイオティクスは、1つ又は一定数の大腸内細菌の増殖及び/又は活性を選択的に刺激することによって宿主に有益な影響を及ぼし、そうして宿主の健康を改善する非消化性の食品成分である。そのような成分は胃又は小腸では分解・吸収されず大腸にそのまま移行し、大腸において有益な細菌による選択的な発酵を受けるという意味で非消化性である。
【0064】
プレバイオティクスのさらなる例としては、特定のオリゴ糖、例えば、フラクトオリゴ糖(FOS)及びガラクトオリゴ糖(GOS)が挙げられる。プレバイオティクスの組合せを使用してもよく、例えば、10%短鎖フラクトオリゴ糖入り90%GOS(例えば商標ラフチロース(Raftilose)(登録商標)の下に販売されている製品)又は10%イヌリン入り90%GOS(例えば商標ラフチリン(Raftiline)(登録商標)の下に販売されている製品)が使用可能である。
【0065】
特に好ましいプレバイオティクスは、ガラクトオリゴ糖とN−アセチル化オリゴ糖とシアリル化オリゴ糖との混合物であって、N−アセチル化オリゴ糖がオリゴ糖混合物の0.5〜4.0%を構成し、ガラクトオリゴ糖がオリゴ糖混合物の92.0〜98.5%を構成し、シアリル化オリゴ糖がオリゴ糖混合物の1.0〜4.0%を構成する混合物である。この混合物を、以下「CMOS−GOS」と称する。好ましくは、本発明に従って使用される組成物は、乾物ベースで2.5〜15.0wt%のCMOS−GOSを含有する(但し、組成物は、少なくとも0.02wt%のN−アセチル化オリゴ糖、少なくとも2.0wt%のガラクトオリゴ糖、及び少なくとも0.04wt%のシアリル化オリゴ糖を含む)。
【0066】
適当なN−アセチル化オリゴ糖としては、GalNAcα1,3Galβ1,4Glc及びGalβ1,6GalNAcα1,3Galβ1,4Glcが挙げられる。N−アセチル化オリゴ糖は、グルコサミニダーゼ及び/又はガラクトサミニダーゼを、N−アセチルグルコース及び/又はN−アセチルガラクトースに作用させることによって調製できる。同様に、N−アセチル−ガラクトシルトランスフェラーゼ及び/又はN−アセチル−グリコシルトランスフェラーゼを同じ目的のために使用し得る。N−アセチル化オリゴ糖は、個々の酵素(組換え又は天然)を使用する発酵技術及び/又は微生物発酵により製造してもよい。後者の場合、微生物は、天然の酵素及び基質を発現するものであっても、操作により個々の基質及び酵素を産生するものであってもよい。単一微生物培養又は混合培養を使用してもよい。N−アセチル化オリゴ糖の形成は、DP=1以上の任意の重合度(DP)からアクセプター基質により開始することができる。他の選択肢は、Wrodnigg,T.M.;Stutz,A.E.(1999)Angew.Chem.Int.Ed.38:827〜828に記載されているように、ケトヘキソース(例えばフルクトース)の遊離体又はオリゴ糖(例えばラクチュロース)への結合体を、N−アセチルヘキソサミン又はN−アセチルヘキソサミン含有オリゴ糖に化学的に変換することである。
【0067】
適当なガラクトオリゴ糖としては、Galβ1,6Gal、Galβ1,6Galβ1,4Glc、Galβ1,6Galβ1,6Glc、Galβ1,3Galβ1,3Glc、Galβ1,3Galβ1,4Glc、Galβ1,6Galβ1,6Galβ1,4Glc、Galβ1,6Galβ1,3Galβ1,4Glc、Galβ1,3Galβ1,6Galβ1,4Glc、Galβ1,3Galβ1,3Galβ1,4Glc、Galβ1,4Galβ1,4Glc及びGalβ1,4Galβ1,4Galβ1,4Glcが挙げられる。合成されたガラクトオリゴ糖,例えばGalβ1,6Galβ1,4Glc、Galβ1,6Galβ1,6Glc、Galβ1,3Galβ1,4Glc、Galβ1,6Galβ1,6Galβ1,4Glc、Galβ1,6Galβ1,3Galβ1,4Glc、Galβ1,3Galβ1,6Galβ1,4Glc、Galβ1,4Galβ1,4Glc、Galβ1,4Galβ1,4Galβ1,4Glc及びそれらの混合物は、商標ビビナル(Vivinal)(登録商標)及びElix’or(登録商標)の下に商業的に入手可能である。オリゴ糖の他の供給業者は、Dextra Laboratories、Sigma−Aldrich Chemie GmbH及びKyowa Hakko Kogyo Co.,Ltdである。或いは、特異的なグリコシルトランスフェラーゼ、例えばガラクトシルトランスフェラーゼを用いて中性オリゴ糖を生成させてもよい。
【0068】
適当なシアリル化オリゴ糖としては、NeuAcα2,3Galβ1,4Glc及びNeuAcα2,6Galβ1,4Glcが挙げられる。これらのシアリル化オリゴ糖は、クロマトグラフィー又は濾過技術により天然源(例えば動物の乳)から単離できる。或いは、シアリル化オリゴ糖は、酵素ベースの発酵技術(組換え酵素又は天然酵素)又は微生物発酵技術により特異的なシアリルトランスフェラーゼを用いて生物工学的に製造してもよい。後者の場合、微生物は、天然の酵素及び基質を発現するものであっても、操作により個々の基質及び酵素を産生するものであってもよい。単一微生物培養又は混合培養を使用してもよい。シアリルオリゴ糖の形成は、DP=1以上の任意の重合度(DP)からアクセプター基質により開始することができる。
【0069】
本発明の利点の1つは、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999が生菌としても不活性化細菌種としても有効なことである。したがって、生菌が存在できなくなる条件下であっても、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の有効性は失われない。
【0070】
しかし、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の少なくとも一部は組成物中で生存しているのが好ましく、生存した状態で腸に到達するのが好ましい。これにより、腸内でコロニーを形成し、増殖によりその有効性を高めることができる。
【0071】
しかし、特別な無菌食品又は医薬品については、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999は組成物中で生存していないのが好ましいこともあり得る。したがって、本発明の一実施形態において、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の少なくとも一部は組成物中で生存していない。
【0072】
ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999は任意の濃度で有効である。ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999が生存した状態で腸に到達した場合、理論的には、単一細菌であってもコロニー形成及び増殖により強力な効果が達成され得る。
【0073】
しかし、医薬組成物の場合、医薬の1日用量は、10〜1012cfuのビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含有するのが一般に好ましい。ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の特に適切な1日用量は10〜1011コロニー形成単位(cfu)、より好ましくは10〜1010cfuである。
【0074】
不活性化ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の場合、医薬組成物の1日用量は10〜1012細胞のビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含有するのが一般に好ましい。ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の特に適切な1日用量は10〜1011細胞、より好ましくは10〜1010細胞である。
【0075】
食品組成物の場合、食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1012cfuのビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含有するのが一般に好ましい。ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の特に適切な量は、食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1011cfu、より好ましくは食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1010cfuである。
【0076】
不活性化ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の場合、食品組成物は食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1012細胞のビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含有するのが一般に好ましい。ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の特に適切な量は、食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1011細胞、より好ましくは食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1010細胞である。
【0077】
組成物中のビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の1日用量は、処置される個々のヒト又は動物に応じて異なる。考慮すべき重要なファクターとしては、年齢、体重、性別及び健康状態が挙げられる。
【0078】
例えば、組成物中のビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の典型的な1日用量は、1日当たり10〜1012cfu及び/又は細胞、好ましくは1日当たり10〜1010cfu及び/又は細胞、好ましくは1日当たり10〜10cfu及び/又は細胞である。
【0079】
本発明のビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999含有組成物はまた、体重減少及び/又は体重維持を支援するために使用できる。
【0080】
適正な体重、特に身体において許容可能な重量パーセントの脂肪を確立・維持することは代謝異常を治療又は予防する上で重要なステップであるので、本発明のビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999含有組成物はさらに、代謝異常を治療又は予防するために使用できる。
【0081】
特に、本発明のビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999含有組成物は、糖尿病、高血圧及び/又は心血管疾患の治療又は予防に使用でき、それ故、多くの国々、特に先進国の人々の健康に重大な貢献を成し得る。
【0082】
したがって、代謝異常は、例えば、糖尿病、高血圧、心血管疾患及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0083】
本発明の組成物は、代謝異常の治療又は予防のためのものであってもよい。
【0084】
本明細書に記載の本発明の特徴はすべて、開示された本発明の範囲から逸脱することなく自由に組み合わせ可能であることは、当業者には理解されよう。
【0085】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の実施例及び図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】B.ロンガムATCC BAA−999で処置したマウス(白色四角)の体重減少を、対照マウス(黒色三角)と比較して示したものである。
【図2】B.ロンガムATCC BAA−999を投与されたマウスの7週目の低い体重増加(白色パネル)を、対照マウスと比較して示したものである。
【図3】B.ロンガムATCC BAA−999で処置したマウスにおける骨格筋リン酸化AMPキナーゼ(pAMPk)レベルの誘導を、対照マウスと比較して示したものである。
【実施例】
【0087】
高脂肪食を与えたAKRマウスの体重変化を7週間追跡した。最後の2週間、マウス(n=10/群)を、1日1回のB.ロンガムATCC BAA−999(10cfu/日)によるプロバイオティクス強制投与群又はプラセボ(MRS)強制投与群に無作為に割り当てた。プロバイオティクスを投与されたマウスは、MRSの強制投与を受けたマウスと比較して体重増加の低下を経験する(図1)。7週目に測定した体重増加(図2、白色パネル)は、処置マウスが対照マウスと比較して低かった(図2)。骨格筋の代謝解析により、B.ロンガムATCC BAA−999で処置したマウスではpAMPk活性が上昇していることが明らかになった(図3)。これらのデータは、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999が脂肪及び骨格筋組織に対する代謝効果の誘導を通じて体重コントロールに有意な効果を及ぼすことを示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟したヒト及び/又は動物における体重減少及び/又は体重維持を支援するための組成物であって、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含有する組成物。
【請求項2】
ヒト又は動物は過体重又は肥満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヒトは少なくとも16歳であり、好ましくは成体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
医薬組成物、飲料又は食品である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の他の食品用細菌及び/又は酵母を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
食品用細菌は、乳酸菌、ビフィズス菌、プロピオン酸菌又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のプレバイオティクスをさらに含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
プレバイオティクスはオリゴ糖からなる群より選択され、任意選択で、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ダイズ及び/又はイヌリン、食物繊維、又はそれらの混合物を含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の少なくとも一部は組成物中で生存している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999の少なくとも一部は組成物中で生存していない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
1日用量当たり10〜1012cfuのビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含有する医薬組成物、又は1日用量当たり10〜1012細胞のビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含有する医薬組成物である、請求項4〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1012cfuのビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含む食品、又は食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1012細胞のビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999を含む食品である、請求項4〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
肥満の治療又は予防のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
脂肪量の増加を抑制する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
代謝異常の治療又は予防のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−506631(P2013−506631A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531354(P2012−531354)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064348
【国際公開番号】WO2011/039176
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】