説明

ビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法、システムおよびコンピュータプログラム

【解決手段】ビルディングのサーモグラフィック画像を使用して、ビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法であって、画像は、予め決められた角度、好ましくは、ビルディングに直角な方向から撮影され、画像の複数の領域における温度を決定するために画像を自動的に解析し、予め決められた温度以上の画像の領域に対応する場所の実際のサイズを決定し、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するために、その場所のサイズを使用することを特徴とするビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外サーモグラフィ技術を用いたビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法、システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
イギリスにおけるエネルギーおよび二酸化炭素の使用は、現在、4つの標準的なモデル、Standard Assessment Procedure 2005 (SAP2005)、Reduced Standard Assessment Procedure(RdSAP)、National Home Energy Rating(NHER)、および、Simplified Building Energy Model(SBEM)のいずれかを使用して計算されている。これらは、建築計画や現地での観測からもたらされた理論的なデータに依存している。記録されている典型的なデータは、壁構造や暖房システム、床面積、建設場所などである。これらのモデル導かれる結果は、建築物のエネルギー消費の見積り、および、関連した費用、二酸化炭素の放出量の詳細の列挙である。
【0003】
SAP2005は、基本的に、燃料と電力とを保全するために求められるイギリスの建築基準に対する新築の住居の適合性を検査するために用いられてきた。開始時期は、2006年4月6日(England & Wales:L1 Approved Document)、2006年11月1日(Northern Ireland Technical Booklet F1)、および、2007年5月1日(Scotland Technical Handbook 6, Domestic)である。イギリスの新しい法律である建物のエネルギー性能に関する指針(Energy Performance of Buildings Directive:EPBD)および住宅情報パック(Home Information Pack:HIPs)は、全てのイギリスの建物は、個々の建物に由来するエネルギー効率およびエネルギー等級の評価を受けなければならないと定めている。その算定は、RdSAPの評価モデルに基づいている。
【0004】
これらの知られている評価モデルの限界は、100%の精度で100%設計通りに、建物が建てられたと仮定しているところにある。建設者の正確性が欠如した、断熱材の隙間や下手な細部の合わせ等の、如何なる建物の欠陥に対しても許容範囲を与えていない。現在、建物の建築の質を評価する唯一の方法は、空気の漏れまたは浸透の検査(Air Leakage/Permeability Test)、ファイバスコープを用いた挿入または破壊検査、または、構造を透過する熱流検査を用いるものである。空気浸透検査は、イングランドおよびウェールズにおける燃料保全基準のパートL、および、スコットランドの建築基準のパートJに含まれている。しかしながら、この検査は、合格/不合格の認証を与えるのみであり、空気漏れの場所を示すものではない。これは、建物の中で煙発生器を使用することにより克服することができる。これは短い時間で済むが、空気漏れの最も大きな場所を明らかにする訳でもなく、構造上、断熱が失われた場所を明らかにする訳でもない。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、ビルディングからの熱損失を決定する方法が提供される。その方法は、予め決められた角度、好ましくは、ビルディングに対して直角な方向から撮影されたビルディングのサーモグラフィック画像を用意すること、その画像の複数の領域に対応する温度を決定するために画像を自動的に解析すること、および、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するために、決定された温度と対応する領域のサイズの情報とを使用すること、を含んでいる。
【0006】
ビルディングのサーモグラフィック画像を撮影して解析することにより、その建物にアクセスすることなく、また、破壊的もしくは侵入性の検査方法を使用することなく、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれか、そして、エネルギーコストを決定することができる。これにより、理論的な設計性能よりもはるかに正確な、個別の建物におけるエネルギー消費の見積もりを得ることができる。
【0007】
その方法は、例えば、画像が撮像された時刻における、信頼できる環境条件を捕捉すること、または、記録することを含むことができる。
【0008】
その画像は、次の条件下で撮像されるだろう。10m/s以下の風速、測定前の少なくとも24時間の間、何も検知されないこと、測定中に何も検知されないこと、太陽熱が確実に分散されるように日没後に撮像されること、そして、知らされるか、またはモニターされている内部の平均温度が、例えば、21℃となって測定が行われる前に、建物内部の熱源が少なくとも最短時間、例えば、1時間の間、活動していることである。
【0009】
その方法は、画像を自動的に解析する前に、撮影された画像の対象外の領域の除去を含むことができる。対象外の領域の除去は、検査されている建物における対象となる温度範囲外の温度値を、除去する領域に割り当てることを含むことができる。その温度値は、90C以上とすることができ、例えば、100Cとすることができる。
【0010】
予め決められた温度または温度範囲が、予め決められた色に割り当てられたサーモグラフィック画像を表示することができる。これにより、現実の実生活におけるビルディングからの熱損失を絵的に示すことができる。
【0011】
その方法は、画像内の領域に対応した温度を算定すること、対象となる画像に対応した温度をカバーする複数の温度範囲を決定すること、そして、それぞれの温度範囲に色を指定することを含んでいる。画像に記録された温度範囲は、予め決められた色の数、例えば、それぞれの色が32段階の変化を持った8色に分けることができる。32段階の変化を持った8色を使用すると、色の総数は256になる。そして、個々の画像に、色の階調を持たせることができる。
【0012】
その方法は、画像のサイズを実際のサイズに変換するための倍率を決めるために、その画像のサイズと、画像に写されている光景の実際のサイズと、を使用すること、および、ビルディングからの、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決めるために、倍率と画像中の領域の温度とを使用すること、を含むことができる。
【0013】
その方法は、撮影された画像の個々の画素に対応した領域の実際のサイズを決定することを含むことができる。
【0014】
熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決めることは、予め決められたレベル以上の温度であるビルディングの領域の実際のサイズを決めることを含むことができる。
【0015】
その方法は、予め決められたレベル以上の領域を決定するために、画像に等温線を設けることを含むことができる。予め決められたレベルは、ビルディングの平均温度とすることができる。
【0016】
その方法は、画像中の領域に対応した温度を算定すること、そして、対象となる画像に対応する温度をカバーする複数の温度範囲を決めることを含むことができる。
【0017】
その方法は、捕捉されたデータから、測定された温度を記録することを含むことができる。測定された温度は、平均温度を決めるために平均されるだろう。平均温度は、平均以上の熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを示す画像中の領域を決定するために使用することができる。そして、測定された温度のヒストグラムを設けることができる。
【0018】
その方法は、画像を複数の色で表示することができ、予め決められた温度または温度範囲に予め決められた色が割り当てられる。
【0019】
ビルディングに関して記憶され、または、知られた情報は、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するために使用することができる。
【0020】
決定された熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかは、ビルディングのエネルギーコストを計算するために使用される。
【0021】
本発明の別の側面によれば、ビルディングからの熱損失を決定するシステムが提供される。そのシステムは、予め決定された角度、好ましくは、ビルディングに垂直な方向からビルディングのサーモグラフィック画像を撮影する手段と、画像の複数の領域に対応した温度を決定するために画像を自動的に解析する手段と、決定された温度および対応する領域のサイズの情報を用いて、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定する手段と、を備えている。
【0022】
さらに、本発明の別の側面によれば、予め決まられた角度から、好ましくは、ビルディングに垂直な方向から撮影された、ビルディングのサーモグラフィック画像を用いて、ビルディングからの熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するためのプログラムが提供される。そのプログラムは、好ましくは、データ担体またはコンピュータで判読可能な媒体に記録され、コンピュータプログラムは、画像中の領域の温度を決定するために画像を自動的に解析し、予め決められた温度以上の画像領域に対応する場所の実際のサイズを決定し、ビルディングからの熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するために、決定されたサイズを使用するコードまたは命令を含んでいる。
【0023】
コンピュータプログラムは、画像を自動的に解析する前に、撮影された画像の対象とならない領域を除くためのコードまたは命令を含んでいる。望まない領域を除去することには、調査対象のビルディングにおける対象となる温度範囲外の温度値を指定することを含むことができる。その温度値は、90C以上であり、例えば、100Cとすることができる。
【0024】
コンピュータプログラムは、予め決められた温度または温度範囲に対して、予め決められた色を割り振ったサーモグラフィック画像を表示するためのコードまたは命令を含むことができる。
【0025】
コンピュータプログラムは、画像の複数の領域に対応した温度を算定し、対象画像に対応した温度をカバーする複数の温度範囲を決定し、そして、それぞれの温度範囲に色を指定するためのコードまたは命令を含むことができる。画像に記録された温度範囲は、予め決められた色の数、例えば、それぞれの色が32のバリエーションを持つ8色に分割される。32のバリエーションを持つ8色が使用された場合、色の総数は256となる。そして、それぞれの画像には、色の階調が付される。
【0026】
コンピュータプログラムは、画像サイズを実際の場所のサイズに変換するための倍率を決定するために、画像のサイズと、その画像に写されている実際の光景のサイズと、を使用し、そして、ビルディングからの熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するために、その倍率と、その画像における複数の領域の温度と、を使用するためのコードまたは命令を含むことができる。
【0027】
熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定することは、予め決められたレベル以上の温度となっているビルディングの領域の実際のサイズを決定することを含むだろう。
【0028】
コンピュータプログラムは、予め決められたレベル以上の領域を決定するために、画像中に等温線を形成するためのコードまたは命令を含むことができる。予め決められたレベルは、ビルディングの平均温度とすることができる。
【0029】
コンピュータプログラムは、画像中の領域の温度を算出し、対象画像に対応する温度をカバーする複数の温度範囲を決定するためのコードまたは命令を含むことができる。
【0030】
コンピュータプログラムは、捕捉されたデータから測定された温度を記録するためのコードまたは命令を含むことができる。測定された温度は、平均温度を決定するために平均される。平均温度は、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかの平均以上を示す画像の領域を決定するために用いることができる。測定された温度のヒストグラムも作成されるだろう。
【0031】
コンピュータプログラムは、予め決められた温度または温度範囲が予め決められた複数の色に色分けされた画像を表示するためのコードまたは命令を含むことができる。
【0032】
ビルディングに関する、記憶された、または、知られた情報は、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するために用いられるだろう。そして、決定された熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかは、そのビルディングのエネルギーコストを算出するために使用される。
ここでは、以下の図を参照して、本発明の様々な側面が例示されて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】例示された家屋のサーモグラフィック画像である。
【図2】ビルディングのサーモグラフィック画像を撮影するためのサーモグラフィックカメラのレイアウト図である。
【図3】対象外の領域を除いた図1の画像である。
【図4】図3の画像における画像データのヒストグラムである。
【図5】等温線の最小値および最大値が示された図4のヒストグラムである。
【図6】5Cから6.8Cの等温線が設けられた図3の画像である。
【図7】ビルディングの実際の領域に撮影された画像領域を対応づける方法を表示している。
【図8】ビルディングの実際の領域に撮影された画像領域を対応づける方法の具体例を表示している。
【図9】図8の例における実際の処理画像である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、ビルディングからのエネルギー損失を定量化する技術を提供する。これは、対象となるそれぞれの建物に対する固有の評価を用いて実行する。その評価は、3つの異なる領域に分類することができる。理論データの収集、サーモグラフィックデータの収集、および、ソフトウェアによるエネルギー算定である。次に、それぞれの領域について説明する。
【0035】
理論データの収集は、様々な異なるレベルにおいて実施することができる。最も精度の高い結果に対して、SAP2005の全データが使用される。その計算方法の詳細は、「The Government’s Standard Assessment Procedure for Energy Rating of Dwelling」2005年度版に見られ、その内容は、参考文献として援用される。精度の低いものに対しては、RdSAPモデルを適用することができる。これには、「The Government’s Standard Assessment Procedure for Energy Rating of Dwelling」2005年度版のAppendix Sに記載された「Reduced Data SAP for existing buildings」を参照する。その内容も、参考文献として援用される。他の専用モデルも要求される精度レベルに応じて使用することができる。エネルギー等級は、「The Government’s Standard Assessment Procedure for Energy Rating of Dwelling」2005年度版のAppendix S:「Reduced Data SAP for existing buildings」の表15:各等級の幅(Rating Bands)から決められ、その内容は、参考文献として援用される。このデータは、建築計画を介して、または、現地調査により収集することができる。商業用ビルディングに対しては、SAP2005モデルとおなじベースに基づいて、SBEMモデルを使用することもできる。さらに、このモデルの詳細は、ウェッブサイト(www.ncm.bre.co.uk)から入手することもできる。
【0036】
図1は、実例の家屋におけるサーモグラフィック画像を示している。この画像を製作するために、赤外線サーモグラフィックカメラを使用し、建物から放出される赤外線放射を捕える。映像を記録した時間における確かな環境条件を知っておかねばならない。例えば、理想的には、次のような条件の下で映像を撮影する。風速10m/s以下であること、少なくとも測定前の24時間の間、何も感知されないこと、測定中に何も感知されないこと、太陽熱が確実に分散するように、日没後、少なくとも1.5時間経ってから撮影されること、そして、平均21℃の内部温度で測定する前に、少なくとも1時間、建物内部の暖房が動いていることである。
【0037】
それぞれの熱画像は、次の仕様にしたがって撮影される。すなわち、測定対象の建物の輪郭が明確に見えることが要求され、図2に示すように、対象となる建物に対して垂直な方向から画像が撮影されなければならず、そして、可能な限り画像フレームが満たされる高さで検査されるべきである。さらに、現地における撮影時の風速、湿度、外気温、内部の温度、材料の放射率、対象物からの距離、GPS上の位置および住所も記録されなければならない。記録された画像は、任意の形式で保存され、固有のファイル名が割り当てられ、GPSデータが付けられ、そして、エネルギー計算のソフトウェアを含んだコンピュータにコピーされる。
【0038】
ソフトウェアは、4つの異なるステップにおいて、エネルギーの損失を決定する。画像の準備、画像の自動解析、建築データの入力、および、サーモグラフィックによるエネルギー計算である。画像の準備の段階では、それぞれのサーモグラフィック画像に対応したデータが、画像処理プログラムにロードされる。必要のない領域は、ユーザによってマニュアルで識別され除去される。これらの領域の除去は、様々な方法で行うことができる。1つの方法は、不用な領域のデータを100Cに書き換えて、建物について記録されたデータの範囲外とすることである。これは、後の如何なる計算からも除外できる効果的な方法である。そして、新しく処理された画像が保存される。不用な領域には、窓やドア、計算に含まれない隣接する建物などが含まれるだろう。そして、このデータは、CSVファイル形式(すなわち、カンマで区切られた値)に変換される。そこでは、個々の画素のそれぞれの温度が、所定の温度値に振り分けられている。その温度値は、カメラによって計算された画像の中に、既に保存されている。
【0039】
画像が準備されたら、自動的な画像解析が始まる。最初に、CSVファイルに記録された温度のヒストグラムが作られる。ソフトウェアは、温度範囲の全体を評価し、それぞれの温度に色を対応させる。画像内における典型的な領域には、近似的に8Cを対応させることができる。8つの色を用いて、それぞれの色ごとに1Cを割り当てる。これにより、画像中に温度領域を効果的に設定することができる。CSVファイルの新しい絵的な様式は、除外された領域を黒く表示し、他の領域をカラーで表示する。そして、その色は、図3に示すように、それらの領域の温度に依存している。サーモグラフィック画像には、自動的に等温線が設けられる。これは、図4に示すように、それぞれがサーモグラフィック画像の0.1℃に相当する400のポイントに分けられたヒストグラムを作ることによって実行される。そして、平均温度Thist(mean)が、ヒストグラム全体に対して計算される。ヒストグラム中の10ポイントに対応する選択された温度範囲内の領域に対する平均温度Tregion(mean)も計算される。
【0040】
右から左に作業が進められ、ヒストグラム全体の平均であるThist(mean)の20%以内におけるそれぞれの領域平均Tregion(mean)が選択され、そして、ヒストグラムImidのイメージ中心となる。そのImidの値から両側にシフト値が設けられる。シフト値は、左側に10のヒストグラムポイントと、右側に30のヒストグラムポイントのIwindowである。そして、この領域における平均温度Twindow(mean)が計算される。これは、最小の等温値Isominに等しい。図5に示すように、全体のヒストグラムに渡って、標準偏差値、例えば、2.2がTwindow(mean)に加えられる。この値が、最大の等温値Isomaxとなる。最大および最小の等温値の中の画素は、作為的に色づけされて数えられる。そして、データは、記録され、特定の画像ファイルに対応付けられる。図6は、5と6.8Cの間に等温線が適用された画像を示している。IsominおよびIsomaxの値の範囲における領域のみが異常として扱われている。
【0041】
ソフトウェアは、それぞれの画像に保存されているデータを読み取り、画像が撮影された時の条件に関係付ける。それらは、目標物までの距離、使用されたレンズ、そして、画像の解像度である。このデータを基に、単純な三角法を用いて画像全体の面積を決めることができ、画像内の個々の画素の面積を決めることができる。図7は、画像の面積を決定する方法を示している。それぞれの異常領域の全体の面積をm単位で与えるために、異常として区別される温度範囲のそれぞれの画素数に画素面積が乗じられる。
【0042】
調査されているビルディングに関して記録されるデータは、求められるレベル、例えば、SAP2005に適合するデータまたはRdSAPの精度を持ってソフトウェアに入力される。データの入力が完了すると、ソフトウェアは、その建物に関するエネルギー使用量、コストおよび年間のCO排出量の見積りを出力する。サーマル画像の異常温度に含まれる温度範囲に基づいて、現実のu値の理論的な増分を決定することができる。この新しいu値は、エネルギー計算のためのデータを代替し、その壁に増大したu値が適用される建物の、エネルギー消費、コストおよび年間のCO排出量を導出する。このプロセスは、個々の異常温度範囲に対して繰り返され、新しいu値が適用されたこれらの壁のエネルギー消費、コストおよび年間のCO排出量を与える。そして、これらの新しいコストは、建物の壁の総面積で個別に除され、ユーザが支払ったエネルギー価格に基づいてエネルギーの消費量およびコストを与える。CO排出量は、年間の単位m当たりのエネルギー使用量にCO排出係数を乗じて計算される。
【0043】
サーモグラフィックのエネルギー計算では、決定された個々の区別できる異常面積に、関連したコストが乗じられる。これらの異常領域の全体の面積は、合算され、建物の壁の総面積から差し引かれる。そして、残りの面積からエネルギー使用量、コストおよびCO排出量が再計算される。このデータは、jpeg画像に付加される。全ての低質な面積は、設計に基づく壁の総面積から差し引くことができ、構造の異なる2つの壁領域を与える。すなわち、壁の総面積を100mとして、認識された低質な壁の面積を10mとすれば、100m−10m=90mで、設計どおりの壁は90mとなる。この計算は、上記の通りに決定された、それぞれの区別できる温度領域に対しても実施することができる。この新しい面積のデータは、分離された壁の面積として、SAPの計算に入力することができ、そして、新しいSAPの等級が計算される。この新しいSAPの等級は、SAP2005の計算と比較することができ、A〜Gの間のエネルギー等級を決めることができる。そして、建物のエネルギー使用量の推定にも使用することができる。この画像は、表計算ソフトに自動的に転送され、エネルギーデータがGPS上の位置と共に抽出され、近接したセルに表示される。
【0044】
具体的な例として、図1および図3、図6に示す架空のタウンハウスを考えてみる。これは、Aberdeenにあり、燃料費が4.14ペンスのガスを主に使用し、次のような特性を有している。
壁構造:中空レンガで覆われた構造
SAP計算による年間暖房コスト=£256(SAP Calc 1 Worksheet 参照)
壁面積=201.54m
U値=0.37
コスト/m=256/201.54=£1.27
【0045】
断熱が失われた場所:中空レンガで覆われていない構造
SAP計算による年間暖房コスト=£584(SAP Calc 2 Worksheet参照)
壁面積=201.54m
U値=1.64
コスト/m=584/201.54=£2.90
【0046】
断熱性の良い壁と断熱性の無い壁との間のコストの相違
コスト差/m=£1.63
【0047】
異常温度の画素数=5548
目標物までの距離=35m
使用レンズ=23°
【0048】
図8は、建物の大きさを示しており、画像の面積が計算される方法を示している。さらなる画像情報は、図9に示されている。これを使って次のように導出される。
画素面積=0.0019394m
等価な全体の面積=10.76m
注目されている領域の断熱性が0%であり、u値が1.64である場合、
追加されるエネルギー=423.7kWh/年
423.7×£0.0414=£17.54
注目されている領域の断熱性が0%であり、u値が1.64である場合には、
追加されるコスト=£17.54
【0049】
本発明は、建物にアクセスすることなしに、そして、破壊的でなく、または、侵入的な検査手段を用いることなく、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するため、そして、そのエネルギーコストを決定するための単純で効果的な方法を提供する。それは、また、理論的な設計特性よりも正確な、個々の建物のエネルギー消費の見積りも導出する。
【0050】
当業者であれば、本発明の範囲において開示された構成の変形が可能であることを認めるであろう。上記の説明は、具体的な実施例の例示だけであり、その範囲を限定するものではない。そして、説明された作用の意味ある変更なしに小さな変更が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた角度、好ましくは、ビルディングに直角な方向から撮影された前記ビルディングのサーモグラフィック画像を使用して、前記ビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法であって、
前記画像の複数の領域における温度を決定するために前記画像を自動的に解析し、
予め決められた温度以上の前記画像の領域に対応する場所の実際のサイズを決定し、
熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するために、前記場所のサイズを使用することを特徴とするビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項2】
前記画像のサイズを実際のサイズに変換するための倍率を決めるために、前記画像のサイズと、前記画像に写されている光景の実際のサイズと、を使用し、
前記ビルディングからの熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決めるために、前記倍率および前記画像中の前記領域の温度を使用することを特徴とする請求項1記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項3】
前記画像のそれぞれの画素に対応した領域の実際のサイズを決定すること特徴とする請求項1または2に記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項4】
前記ビルディングにおける予め決められたレベル以上の温度である領域の実際のサイズを決めることにより、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項5】
予め決められた前記レベル以上の領域を決定するために、前記画像に等温線を設けることを特徴とする請求項4記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項6】
予め決められた前記レベルは、前記ビルディングの平均温度であること特徴とする請求項4または5に記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項7】
前記画像を自動的に解析する前に、前記画像の複数の領域を除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項8】
除去されなければならない前記領域に、検査されている前記ビルディングにおける対象温度範囲の外の温度値を割り当てることを特徴とする請求項7記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項9】
前記温度値は、50C以上であり、好ましくは90C、例えば、100Cであることを特徴とする請求項8記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項10】
前記画像の複数の領域に対応した温度を算定し、
対象となる前記画像に対応する温度をカバーする複数の温度範囲を決めることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項11】
捕捉されたデータから計測された前記温度を記録することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項12】
前記温度のヒストグラムを設けることを特徴とする請求項11記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項13】
平均温度を決めるために、前記温度を平均することを特徴とする請求項11または12に記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項14】
平均以上の熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを示す前記画像の複数の領域を決定するために、前記平均温度を使用することを特徴とする請求項13記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項15】
予め決められた温度または温度範囲が、予め決められた色に割り当てられ、
前記画像を複数の色で表示することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項16】
熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定するために、前記ビルディングに関する情報を使用することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項17】
前記ビルディングの前記エネルギーコストを計算するために、決定された前記熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを使用することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1つに記載のビルディングの熱またはエネルギー損失を決定する方法。
【請求項18】
好ましくはコンピュータをベースとする、または、コンピュータに実行されるビルディングからの熱損失を決定するシステムであって、
予め決定された角度、好ましくは、前記ビルディングに垂直な方向から前記ビルディングのサーモグラフィック画像を撮影する手段と、
前記画像の複数の領域に対応した温度を決定するために、前記画像を自動的に解析する手段と、
決定された前記温度および対応する前記領域のサイズの情報を用いて、熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれかを決定する手段と、
を備えたことを特徴とするビルディングからの熱損失を決定するシステム。
【請求項19】
予め決められた角度から、好ましくは、ビルディングに垂直な方向から撮影された、前記ビルディングのサーモグラフィック画像を用いて前記ビルディングの熱またはエネルギーの損失を決定するためのプログラムであって、好ましくは、データ担体またはコンピュータで判読可能な媒体に記録され、
前記画像の複数の領域の温度を決定するために、前記画像を自動的に解析し、
予め決められた温度以上の前記画像の領域に対応する場所の実際のサイズを決定し、
前記ビルディングからの熱およびエネルギーの損失、または、そのいずれか決定するために、決定された前記サイズを使用するためのコードまたは命令を含んでいることを特徴とするビルディングの熱またはエネルギーの損失を決定するためのコンピュータプログラム。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1つに記載のビルディングの熱またはエネルギーの損失を決定するための方法を実行するためのコンピュータプログラムであって、好ましくは、データ担体またはコンピュータで判読可能な媒体に記録されたことを特徴とするビルディングの熱またはエネルギーの損失を決定するためのコンピュータプログラム。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−508191(P2011−508191A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537505(P2010−537505)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004053
【国際公開番号】WO2009/074783
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(510162458)アイアールティ サーベイズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】