説明

ビーズ送り装置

【課題】 収納管から所定の縫い位置へのビーズ状部材の送り出しを正確かつ安定的に行うことのできるビーズ送り装置の提供。
【解決手段】 ビーズ状部材を多数積層して収納している収納管から導かれた1個のビーズ状部材を支承板に支承させることなく支承板とは別途に用意された支持部材に支承させた上で、該支持部材を送り部材の前進及び後退動作に連動して支承板上を移動できるように設ける。支持部材は、送り部材の前進及び後退動作時に送り部材に対して相対的に移動可能に配置される。また、支持部材にはビーズ状部材を把持する把持手段を設けておき、送り部材と支持部材との相対的移動に連動してビーズ状部材の把持動作を行うようにした。これにより、ビーズ状部材を安定させた状態でかつ正確に収納管から縫い位置へと送り出すことができ、ミシンにおけるビーズ状部材の被縫着物への縫着を確実に行わせることができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーズ状部材を被縫製体に縫着するミシンにおいて、単体のビーズ状部材を多数積層して収納した収納管から所定の縫い位置に前記ビーズ状部材を1個ずつ送り出すビーズ送り装置に関する。特に、収納管から所定の縫い位置へのビーズ状部材の送り出しを正確かつ安定的に行うことのできるビーズ送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られたビーズ送り装置は、単体のビーズ状部材(以下、単にビーズと呼ぶ)を多数個積層した状態で収納可能な収納管と、前進及び後退動作によって前記収納管内にセットされているビーズを1個ずつ順に縫い位置に送り出す送りレバーと、前記ビーズを送り出す際にビーズを下方から支承すると共に前記送りレバーの動作を案内するための溝(溝部)が形成されてなる支承板とを備えている。このような従来知られたビーズ送り装置としては、例えば下記に示す特許文献1や特許文献2に記載された装置などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案公告CN201459405号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特開EP2228476号公報
【0004】
上記特許文献1に記載のビーズ送り装置では、支承板に送りレバーの前後動を案内する溝が形成されてなり、収納管に積層収納されているビーズは収納管下端の開口部から1個ずつが前記溝に嵌り込んだ状態で支承板に支承される。そして、この支承板の溝内にはバネの付勢によってビーズを挟み込んで把持(保持)する一対の係合爪を先端部に有した送りレバーが動作可能に設けられていることから、この送りレバーが前記溝内を前進動作することにより前記溝内で支承されている1個のビーズが前記一対の係合爪によって把持され、さらなる送りレバーの前進動作に応じて前記一対の係合爪によって把持された状態のままビーズは前記溝に案内されながら支承板上を滑るようにして縫い位置に送り出されるようになっている。
【0005】
一方、上記特許文献2に記載の装置においても、支承板にはビーズ及び送りレバーの前後動を案内するための溝が形成されてなり、この溝内には溝に沿って移動可能に送りレバーが設けられている。ただし、この装置では収納管に積層収納されたビーズは複数個が前記溝に嵌り込んだ状態で支承板に支承されるようになっており、前記送りレバーの前進動作によって溝内に支承されている複数個のビーズが前記溝に案内されながら支承板上を滑るようにして同時に移動され、そのうちの1個のみが縫い位置に送り出されるようになっている。なお、上記各装置において縫い位置に送り出された1個のビーズは、ミシンの縫針の縫い動作に従って被縫製体に縫着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来知られたビーズ送り装置では、支承板にビーズ及び送りレバーの前後動を案内するための溝が形成されており、収納管に積層収納されているビーズはこの支承板の溝に移動された後に、当該溝内を移動可能に設けられた送りレバーによって支承板上を滑らされるようにして1個ずつが縫い位置へと送り出されている。そのため、ビーズは送りレバーによって送り出される際に支承板(詳しくは溝部)との間で摩擦抵抗を受けることになる。この摩擦抵抗は、ビーズを送り出す際におけるビーズと溝の各部(例えば底面や側面等)との接触状態等によって大きくなったり小さくなったりするので、各ビーズ毎に異なり得る。そうであるならば、送りレバーを動作させるための駆動モータに係る負荷はビーズを送り出すときに係る前記摩擦抵抗の大きさによって変わることから、前記駆動モータに係る負荷は各ビーズ毎に増減することになる。
【0007】
そこで、従来のビーズ送り装置では、ビーズと前記溝の各部との摩擦抵抗がある程度大きい場合でもビーズを縫い位置に送り出すことのできるように、余裕を考慮した大きな駆動力を有する大型の駆動モータが必要とされていた。しかし、余裕を考慮していたとしても予期しないほどの大きい摩擦抵抗が生じ得ないとも限らず、そうした想定外の大きい摩擦抵抗が生じた場合には駆動モータが脱調してしまいビーズを送り出すことができなくなるので都合が悪い。また、従来のビーズ送り装置において一対の係合爪によってビーズを把持させる機構はバネの付勢によるものであった。そのために、何らかの理由によってビーズと前記溝の各部との摩擦抵抗が大きくなると(例えば、送り出しの途中でビーズが傾斜してしまい溝の底面と強く接触してしまうなど)、バネの付勢によってビーズを把持している一対の係合爪からビーズが外れてしまってビーズの送り出しを行えなくなることがある。このように、従来のビーズ送り装置はビーズの送り出しを正確かつ安定的に行うことができなかったが故に、被縫製体へのビーズの縫着が確実に行われないという問題が生じやすいものであった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、被縫製体へのビーズの縫着が確実に行われるように、ビーズを多数積層して収納してある収納管から所定の縫い位置へのビーズの送り出しを正確かつ安定的に行うことのできるビーズ送り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るビーズ送り装置は、支承板の上面を往復動作する送り部材の前進及び後退動作に従って、単体のビーズ状部材を多数積層して収納する収納管からミシンの縫針直下位置まで、該収納管内に収納されているビーズ状部材を1個ずつ送り出すビーズ送り装置において、前記収納管から導かれた1個のビーズ状部材を支承板上で支承する支持部材であって、該支持部材を前記送り部材の前進及び後退動作に連動して支承板上を移動可能に設けるとともに、該支持部材は前記送り部材の前進及び後退動作時に前記送り部材に対して相対的に移動可能に配置されてなるものと、前記支持部材に支承される1個のビーズ部材を把持する把持手段であって、前記送り部材と前記支持部材との相対的移動に連動して前記ビーズ状部材の把持動作を行うものとを備える。
【0010】
本発明によれば、ビーズ状部材を多数積層して収納している収納管から導かれた1個のビーズ状部材を支承板に支承させることなく支承板とは別途に用意された支持部材に支承させた上で、該支持部材を送り部材の前進及び後退動作に連動して前記支承板上を移動できるように設ける。ただし、前記支持部材は送り部材の前進及び後退動作時に送り部材に対して相対的に移動可能に配置されてなる。また、前記支持部材にはビーズ状部材を把持する把持手段を設けておき、前記送り部材と前記支持部材との相対的移動に連動して前記ビーズ状部材の把持動作を行うようにした。これにより、ビーズ状部材は支持部材に支承された状態で支持部材とともに収納管からミシンの縫針直下位置まで送り出されることになるので、ビーズ状部材は送り出されるときに従来のような支承板との間に生じ得る摩擦抵抗を受けることがなく、常にスムーズに送り出されることとなる。したがって、送り部材を駆動する駆動モータに係る負荷が各ビーズ状部材毎に異なることがなく、駆動モータを大型化しなくとも安定的にビーズ状部材の送り出しを行うことができる。また、送り部材の動作に連動してビーズ状部材を把持した状態で送り出しを行うようにしたことから、更にビーズ状部材を安定させた状態でかつ正確に送り出すことができ、ミシンにおけるビーズ状部材の被縫着物への縫着を確実に行わせることができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収納管から導かれた1個のビーズ状部材を支持部材に支承させて支持部材とともに送り出し、また該支持部材が送り部材に対して相対的に移動することに連動させて前記支持部材に支承されたビーズ状部材の把持動作を行うようにしたことから、収納管から所定の縫い位置へのビーズ状部材の送り出しを正確かつ安定的に行うことができるようになる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例に係るビーズ送りユニットを備えたミシンを示す右側面図である。
【図2】ビーズ送りユニットを示す正面図である。
【図3】ビーズ送りユニットにおけるビーズ送り機構の部分を拡大して示す側面図である。
【図4】ビーズ送り機構を示す分解斜視図である。
【図5】送りレバーが最も後退した状態におけるビーズ送り機構の要部を拡大して示す側面図及び平面略図である。
【図6】送りレバーが最も前進した状態におけるビーズ送り機構の要部を拡大して示す側面図及び平面略図である。
【図7】送りレバー後退時における把持爪の動作を説明するためのビーズ送り機構の要部を拡大して示す平面略図である。
【図8】送りレバー後退時における把持爪の動作を説明するためのビーズ送り機構の要部を拡大して示す平面略図である。
【図9】送りレバー後退時における把持爪の動作を説明するためのビーズ送り機構の要部を拡大して示す平面略図である。
【図10】本発明の第2実施例に係るビーズ送りユニットのビーズ送り機構を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の第1実施例に係るビーズ送りユニット(ビーズ送り装置)1を備えたミシンを正面右から見た右側面図を示し、Mはミシンヘッド、2は針棒ケース、3は針板である。ここに示す針棒ケース2は多針構成であって、複数の縫針4を備えている。ビーズ送りユニット1は針棒ケース2の左側面側及び/または右側面側にそれぞれ装着されるようになっており、本実施例では左側面側にのみビーズ送りユニット1を装着したミシンを例に示している。本実施例のようにビーズ送りユニット1を針棒ケース2の左側面側に装着する場合は、針棒ケース2内の複数の縫針4のうち最左側の縫針がビーズ縫い用の針として使用される。
【0015】
図2は、ビーズ送りユニット1を示す正面図である。図1及び図2に示すように、ビーズ送りユニット1は、針棒ケース2の左側面に当該ユニット1を装着するためのベース5と、このベース5に昇降可能に設けられた取付ベース6を備えている。前記ベース5の上方部にはエアシリンダ7が設けてあり、このエアシリンダ7の駆動によって取付ベース6は、図1及び図2に示すような被縫製物に対してビーズの縫い付けが行われる所定の下降位置と、それより上方に退避したビーズの縫い付けが行われない所定の退避位置(図示を省略)との間で昇降されるように、ベース5に沿って所定範囲を上下に往復動できるようになっている。
【0016】
前記取付ベース6の上方部には、当該取付ベース6を作業者が手動にて昇降させるときに把持する把持部8が設けてある。そして、ベース5の上方端には、取付ベース6をベース5に沿って退避位置に上昇させたときに前記把持部8と当接することによって、それ以上の上方への取付ベース6の移動を制限するストッパ9が固定配置してある。また、前記ストッパ9の配置位置に近いベース5側面には、ロック部材10が回動可能に設けてある。作業者は把持部8を持って手動で取付ベース6を退避位置まで上昇させた後に、前記ロック部材10を回動して前記把持部8と係合させることによって、退避位置まで上昇させた取付ベース6を当該位置から自然に下方へと下がることのないようにロックすることができるようになっている。
【0017】
取付ベース6の下端部には、収納管30から縫い位置へとビーズの送り出しを行うビーズ送り機構11が設けてある。図3は、ビーズ送りユニット1におけるビーズ送り機構11の部分を拡大して示す側面図である。この図3から明らかなように、取付ベース6の下端部にはL字状に形成された第1ブラケット12が固定してあり、この第1ブラケット12には第2ブラケット13が図2において左右の任意の位置に位置づけできるように位置調整可能に固定してある。この第2ブラケット13には、支持プレート14が前後(図3においては左右)の任意の位置に位置づけできるように位置調整可能に固定してある。そして、前記第2ブラケット13において正面を向くように直角に曲成された支持部13aには調整ネジ15がその軸心方向への移動不能に枢支してあり、この調整ネジ15のネジ部は支持プレート14に固定された案内部材16のネジ孔に螺合してある。
【0018】
こうした構成により、作業者により支持プレート14の固定が解除された状態で調整ネジ15が右回し又は左回しされると、支持プレート14は第2ブラケット13に対して前又は後に直線的に動かされることとなり、第2ブラケット13と支持プレート14との前後位置関係が調整されることとなる。また、第1ブラケット12に対する第2ブラケット13の固定位置を調整することで、第1ブラケット12と支持プレート14との左右位置関係が調整されることとなる。すなわち、支持プレート14は取付ベース6に対して第1ブラケット12及び第2ブラケット13を介して段階を経て取り付けられ、これら各ブラケット12,13との位置関係を調整することによって、ベース5に沿って昇降する取付ベース6を基準として前後・左右の任意の位置に位置づけできるようになっている。なお、本明細書においては、ビーズの送り出し方向の指向方向(図1及び図3においては図面右側、図2においては図面奥側)を「前」とする。
【0019】
前記支持プレート14の下方には支持ブロック17が設けてあり、該支持ブロック17の下端には収納管30から縫い位置までビーズBを送り出す送りレバー(送り部材;図4参照)23を載置する支承板18が水平に設けてある。さらに、支持プレート14には駆動モータ19が固定してあり、そのモータ軸19aには揺動アーム20が固定してある。
【0020】
次に、ビーズ送り機構11について説明する。図4は、ビーズ送り機構11を示す分解斜視図である。図4に示すように、一方の先端部が駆動モータ19のモータ軸19aに取り付けられる揺動アーム20の他方の先端部には、両端部が揺動アーム20の側面から突出した配置の連結ピン21が固定してある。そして、この連結ピン21の前記突出した両端部は、コ字状の連結部材22の両側壁に形成された係合凹部22aにそれぞれ嵌合してある。前記連結部材22は、支承板18上に載置された送りレバー23の上面に固定してある。この構成により、駆動モータ19の駆動によって揺動アーム20が所定角度範囲で往復揺動駆動されることに応じて、送りレバー23が前進及び後退駆動されるようになっている。
【0021】
支承板18の上面には、該支承板18上に載置された送りレバー23をスライド可能に左右側面から挟む位置に一対のガイド板28が固定してあり、この両ガイド板28によって送りレバー23の前進及び後退時の移動向き(水平方向)が規制されている。すなわち、送りレバー23はこの一対のガイド板28に案内されて支承板18上をスライドしながら前後動する(スライド移動)。こうした一対のガイド板28の厚みは送りレバー23の厚みより僅かに厚く設定してある。また、一対のガイド板28の先方部上面には、両ガイド板28に跨ってパイプ土台29が固定してある。このパイプ土台29によって、前進及び後退時における送りレバー23の上下方向(垂直方向)へのバタツキが抑制される。
【0022】
パイプ土台29にはビーズBを通す貫通孔29aが形成されており、該貫通孔29aには単体のビーズBを積層して収納する収納管30の下端に固定されている連結部材31を嵌合できるようになっている。一方、収納管30の中間部はブラケット32を介して取付ベース6に固定してある。したがって、収納管30は収納してあるビーズBが1個ずつ外部へと導き出される側である開口された下端部を支承板18上の所定位置(詳しくは貫通孔29aの配置位置)に固定することができるようになっており、送りレバー23の前進及び後退時においても収納管30は前記固定位置から動くことがない。
【0023】
送りレバー23において揺動アーム20を連結するための連結部材22が固定された側とは反対側の先端部には、前記貫通孔29aを介して収納管30から導かれてくる1個のビーズBを真直ぐに把持して支承板18上面に対して水平を維持した状態のまま縫い位置まで送り出せるように、送り出す対象のビーズBの一部が入り込む形状の凹部23aが形成してある。送りレバー23は、略中間部より前記凹部23aが形成される先方部分の厚みが薄くなるように2段階の厚みをもつ形状に形成してある。これにより、送りレバー23の支承板18に対向する底面の支承板18からの高さが略中間部を基準に異なることとなり、連結部材22が固定された側と比較して支承板18からの高さが高くなるが故に前記先方部分の下方にスペースを確保することができ、当該スペースに送りレバー23とは別途独立した支持部材24を支承板18との間に配置できるようにしている。なお、当該支持部材24は送りレバー23の前記スペースに配置された際に、送りレバー23の厚みある側の底面と支持部材24の底面とが段差のない1つの面を形成するようにその厚みが形成されている。
【0024】
支持部材24の前方には沈め部24aが設けられており、この沈め部24a上にて収納管30より導かれた1個のビーズBを支承するようになっている。すなわち、ビーズBを直接的に支承板18に支承させることのないように、支承板18上を送りレバー23と同様にスライド移動可能な支持部材24(より詳しくは沈め部24a)上にビーズBを支承させるようにしている。また、支持部材24の沈め部24a先端には縫針4の貫通を許容する凹部24bが形成してあり、支持部材24上にビーズBが支承された状態(より詳しくは、後述する一対の把持爪25によりビーズBが把持された状態)においては、支承されたビーズBの縫止孔が当該凹部24bの位置に一致する。
【0025】
前記沈め部24a上には、一対の把持爪(爪部)25が送りレバー23との間に挟み込まれるように設けてある。この一対の把持爪25はその先方にてビーズBを確実に把持(保持)することのできるように、ビーズBの外周に倣った円弧状に形成された2つの爪部が互いに対向する向きに配置されている。両把持爪25にはそれぞれ係合孔25aが形成してあるとともに、その外側にあたる外周が前記係合孔25aに向かって凹んだ形状となるように係合溝25bが形成してある。各把持爪25の係合孔25aには支持部材24に立設した第1ピン(第1部材)26が挿入されることにより、各把持爪25がそれぞれ係合孔25aを中心として回動可能に支持部材24に支持されるようになっている。また、各把持爪25の係合溝25bには、送りレバー23の先方部に立設した第2ピン(第2部材)27が係合される。上記構成によれば支持部材24は送りレバー23に対して固定された状態に取り付けられておらず、送りレバー23に対して微小な範囲であるが前後に相対的に移動可能になっている。さらに、そうするために、送りレバー23が最も後退した位置にあるときに、送りレバー23の底面の段差位置と支持部材24の後端面との間に隙間が空くように、送りレバー23の底面に形成される段差位置と支持部材24の長さとが決められる。
【0026】
支承板18には支持部材24へ移動抵抗を付与するマグネット(動作規制部材)37が図4に示す一対のガイド板28間の先方位置に配置されており、送りレバー23の前進及び後退動作の開始初期において、送りレバー23のみが先に移動開始して支持部材24は送りレバー23に遅れて移動開始されるようにしている。すなわち、前記マグネット37は、送りレバー23の動作時に支持部材24が送りレバー23の進行方向と同じ向きに動作されることを規制することによって、前進及び後退動作の開始初期において送りレバー23と支持部材24とを相対的に移動させるようにしている。送りレバー23と支持部材24とが相対的に移動している間は両把持爪25が回動されるようになっており、両把持爪25の回動が規制される(回動しない)と、送りレバー23と支持部材24とは両方共が同じ向きに同じ動作で移動する。上記把持爪25の回動動作については後述する(図5及び図6参照)。
【0027】
図3に示すように、駆動モータ19のモータ軸19aには規制部材33が固定してあり、支持プレート14には規制部材33と当接可能なストッパ34が固定してある。これにより、駆動モータ19のモータ軸19aの図3において反時計回りの回転が規制部材33及びストッパ34によって規制されることになる。図3には、駆動モータ19の駆動に従って規制部材33がストッパ34と当接した状態を想像線にて示しており、この想像線で示された位置が送りレバー23が最も前進した位置にあたる。
【0028】
また、モータ軸19aにはトーションバネ35が設けてあり、規制部材33を図3において時計回りの方向に付勢している。そして、支承板18の後方には送りレバー23及び連結部材22の後端と当接可能なストッパ36が固定してある。これにより、駆動モータ19のモータ軸19aの図3において時計回りの回転が、ストッパ36に送りレバー23及び連結部材22の後端が当接する位置に規制される。図3には、ストッパ36に送りレバー23及び連結部材22の後端が当接した状態を実線にて示しており、この実線で示された位置が送りレバー23が最も後退した位置にあたる。このように、送りレバー23は図3の想像線で示す位置と実線で示す位置との間を往復するように前進及び後退駆動される。
【0029】
ここで、上記構成のビーズ送りユニット1を備えたミシンにおいて、ビーズBを1個ずつ被縫製物(図示しない)に縫い着けるための作業について説明する。最初に、作業者は収納管30に単体ビーズBを積層した状態にセットする。この収納管30にセットするビーズBとしては、ビーズBの中心に形成された縫止孔に針金等を通して数百個の単体ビーズBが連なったものが挙げられる。この数百個のビーズBが連なったものを収納管30に挿入するときには、収納管30をビーズ送りユニット1から取り外し、ビーズBが数百個連なった状態のままで収納管30の上端の開口部から差し入れる。その後、数百個のビーズBを連ね合わせている各ビーズBの縫止孔に通された針金を収納管30の上端から引き抜いてから、収納管30をビーズ送りユニット1に取り付ける。これにより、数百個の単体ビーズBが収納管30内で互いに分離され積層状態にセットされる。
【0030】
収納管30及び連結部材31には、図4に示すような位置に収納管30内部まで貫通している孔31aが形成してあり、収納管30内に多数のビーズBをセットするのに先んじて当該孔31aに図示しないピンなどを予め挿しておけば、収納管30の下端からビーズBが抜け落ちることもないので収納管30へのビーズBのセット作業が容易に行える。そして、収納管30をビーズ送りユニット1に取り付けた後に孔31aに挿しておいたピンを外せばよい。なお、収納管30に多数のビーズBをセットした後に、これらの積層収納されたビーズBが1個ずつ縫い位置へと送り出されることに伴って、収納管30内に残された他のビーズBがスムーズに収納管30内を滑り落ちていくように、最上段のビーズBの上に錘を載せたりあるいはバネによって上方から下方に向けて押させたりするようにしてよい。
【0031】
収納管30内に多数のビーズBをセットし終わったら、ミシンを起動してビーズ送り機構11の駆動モータ19を駆動させることにより送りレバー23を前進及び後退駆動させて1個のビーズBを収納管30から縫い位置まで送り出させるとともに、ミシンヘッドMの縫い動作によって前記送り出された1個のビーズBを被縫製物に縫着させる。
【0032】
次に、本実施例に従うビーズ送り動作について図5〜図9に基づいて説明する。図5は、送りレバー23が最も後退した状態におけるビーズ送り機構11の要部を拡大して示す側面図及び平面略図である。図6は、送りレバー23が最も前進した状態におけるビーズ送り機構11の要部を拡大して示す側面図及び平面略図である。図7〜9は、送りレバー23後退時における把持爪25の動作を説明するためのビーズ送り機構11の要部を拡大して示す平面略図である。
【0033】
1個のビーズBを送り出す前の最初の時点(駆動モータ19はオフ状態)では、トーションバネ35の付勢力によって送りレバー23は図5に示す最も後退した位置にある。このとき、収納管30にセットされた多数のビーズBのうちの最下端に位置する1個のビーズBがパイプ土台29の貫通孔29aを通って支持部材24上に至るが、該支持部材24上においてビーズBを把持した状態のときに比べると少し開いた状態となっている一対の把持爪25の間であってかつ送りレバー23先端部の凹部23aの前方の位置にビーズBは支承される。
【0034】
この状態で駆動モータ19を駆動することにより、送りレバー23は図5右方向に前進する。前進当初は送りレバー23のみが移動して、支持部材24はマグネット37の磁力により移動しない。こうした送りレバー23と支持部材24との相対的移動に伴って、送りレバー23の第2ピン27により一対の把持爪25の係合溝25bが前方側に押されることによって一対の把持爪25は第1ピン26が挿入された係合孔25aを基準として内側に回動するので、支持部材24上のビーズBを挟み込んで把持(保持)した状態となる。
【0035】
その後は、ビーズBを把持することに伴い両把持爪25の回動動作が規制されるため、送りレバー23とともに支持部材24が移動して、図6に示す送りレバー23が最も前進した状態へと至る。この送りレバー23が最も前進した状態では、送り出されたビーズBの縫止孔が縫針4の針落ち上つまりは縫い位置(縫針直下位置)に合致する。これにより、下降する縫針4は送り出されたビーズBの縫止孔に嵌入されることになる。
【0036】
縫針4がビーズBの縫止孔に嵌入された後に、駆動モータ19を逆回転させて送りレバー23を後退させる。送りレバー23の後退開始直後は送りレバー23のみが移動して、支持部材24はマグネット37の磁力によって移動しない。これにより、図7に示すように、送りレバー23の第2ピン27により一対の把持爪25の係合溝25bが後方側に押されることによって一対の把持爪25は第1ピン26が挿入された係合孔25aを基準として外側に回動するので、挟み込んで把持していたビーズBを開放した状態となる。両把持爪25の外側への回動は互いの後方部が当接することで停止されるので、その後は送りレバー23とともに支持部材24は後退を始める。
【0037】
送りレバー23が支持部材24とともに更に後退して図8に示す位置に至ると、外側に回動した両把持爪25の外周面がガイド板28の内側にそれぞれ当接し、更なる送りレバー23の後退に伴って図9に示す後退位置まで両把持爪25が内側に回動する。この図9に示す後退位置の少し手前でビーズBを支承していた支持部材24がビーズBの後方まで後退し、ビーズBが被縫製物上に落下し、以降の縫い動作によってビーズBが被縫製物に縫い付けられる。なお、図7〜図9では図示していないが、送り出されたビーズBの縫止孔には縫針4が嵌入された状態となっている。そして、両把持爪25の外側面がガイド板28の内側に当接し少し開いた状態のまま、送りレバー23は図9に示す状態から図5に示す位置まで後退し、次のビーズBが支持部材24上に位置する。以降、上記動作を繰り返すことによって、収納管30から縫い位置へのビーズBの送り出しが1個ずつ次々と行われることとなる。
【0038】
以上のように、ビーズBを多数積層して収納している収納管30から導かれた1個のビーズBを支承板18に支承させることなく支承板18とは別途に用意された支持部材24に支承させる。その上で、ビーズBを支承する前記支持部材24を送りレバー23に連動して前進及び後退するようにしておき、ビーズBを支持部材24に支承した状態で支持部材24とともに送り出すようにしたことから、ビーズBは送り出されるときに摩擦抵抗を受けることがなく、常にスムーズに収納管30から縫い位置へと送り出されることとなる。これにより、送りレバー23を駆動する駆動モータ19に係る負荷が各ビーズB毎に異なることがなく、駆動モータ19を大型化しなくとも安定的にビーズBの送り出しを行うことができるようになる。また、支持部材24にビーズBを把持する把持爪25を設けておき、送りレバー23の動作に連動してビーズBを把持した状態で送り出しを行うようにしたことから、更にビーズBを安定させた状態でかつ正確に送り出すことができ、ミシンにおけるビーズBの被縫着物への縫着を確実に行わせることができるようになる。
【実施例2】
【0039】
次に、ビーズ送り機構の別の実施例について説明する。図10は本発明の第2実施例に係るビーズ送りユニットのビーズ送り機構を示す分解斜視図であり、ここでは先に説明した第1実施例と同じ構成のものには同番号を付してある。この図10に示すビーズ送り機構38は上記第1実施例と異なる構成として、支承板18にマグネット37を設ける代わりに送りレバー23の前後動向きに長い長孔39を形成してあり、また支持部材24の底面には該長孔39に係合する係合ピン40(長孔39と係合ピン40とからなる動作規制部材)が下方に向けて突出するように設けてある。これら以外の構成は上述の第1実施例に示したビーズ送り機構11(図4参照)と同様であることから、以下の説明ではそれらについての説明を省略している。
【0040】
この第2実施例にて示されるビーズ送り機構38では、送りレバー23を前進させると支持部材24も一緒に前進を始め、送りレバー23が最も前進した状態へ至る少し手前で、支持部材24の係合ピン40が支承板18の長孔39の前端に当接して支持部材24の前進が停止する。支持部材24の前進が停止しても送りレバー23は更に前進を続け、送りレバー23の更なる前進に応じて両把持爪25は内側に回動してビーズBを把持し、送りレバー23は最も前進した状態へと至る。すなわち、前記長孔39と係合ピン40は、送りレバー23の動作時に支持部材24が送りレバー23の進行方向と同じ向きに動作されることを規制することによって、送りレバー23と支持部材24とを相対的に移動させるようにしている。
【0041】
この送りレバー23が最も前進した状態のときに、両把持爪25が外側すなわちビーズBの把持を開放する方向へ回動するには、支持部材24が前進する必要がある。しかし、本実施例では支持部材24の係合ピン40が長孔39の前端に当接しているために、支持部材24がさらに前進することがない。これにより、送りレバー23が最も前進した状態のときに、縫糸の接触などによって両把持爪25にビーズBの把持を開放する方向へ回動させる外力が加わったとしても、両把持爪25が回動することがないので確実にビーズBが把持されることになる。
【0042】
一方、縫針4がビーズBの縫止孔に嵌入されてから送りレバー23の後退が始まると両把持爪25は回動可能となることから、両把持爪25はビーズBに押されて外側に回動する。そして、両把持爪25の外側への回動が停止すると支持部材24も一緒に後退を始め、送りレバー23とともに最も後退した状態へと至る。
【0043】
この第2実施例によれば、送りレバー23が最も前進した状態のとき、両把持爪25にビーズBの把持を開放する方向へ回動させる何らかの外力が加わったとしても、両把持爪25が回動することなくビーズBがより確実に把持されることとなり、ビーズBの縫着がより確実に行えることとなる。
【0044】
なお、両実施例において、ビーズBを把持する一対の把持爪25を回動する形態としたがこれに限らず、スライドするなど他の形態にてビーズBの把持を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ビーズ送り装置(ユニット)、2…針棒ケース、3…針板、4…縫針、5…ベース、6…取付ベース、7…エアシリンダ、8…把持部、9(34,36)…ストッパ、10…ロック部材、11(38)…ビーズ送り機構、12…第1ブラケット、13…第2ブラケット、14…支持プレート、15…調整ネジ、16…案内部材、17…支持ブロック、18…支承板、19…駆動モータ、19a…モータ軸、20…揺動アーム、21…連結ピン、22(31)…連結部材、22a…係合凹部、23…送りレバー、24…支持部材、24a…沈め部、24b…凹部、25…把持爪、25a…係合孔、26…第1ピン、27…第2ピン、28…ガイド板、29…パイプ土台、29a…貫通孔、30…収納管、32…ブラケット、33…規制部材、35…トーションバネ、37…マグネット、39…長孔、40…係合ピン、B…ビーズ、M…ミシンヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支承板の上面を往復動作する送り部材の前進及び後退動作に従って、単体のビーズ状部材を多数積層して収納する収納管からミシンの縫針直下位置まで、該収納管内に収納されているビーズ状部材を1個ずつ送り出すビーズ送り装置において、
前記収納管から導かれた1個のビーズ状部材を支承板上で支承する支持部材であって、該支持部材を前記送り部材の前進及び後退動作に連動して支承板上を移動可能に設けるとともに、該支持部材は前記送り部材の前進及び後退動作時に前記送り部材に対して相対的に移動可能に配置されてなるものと、
前記支持部材に支承される1個のビーズ部材を把持する把持手段であって、前記送り部材と前記支持部材との相対的移動に連動して前記ビーズ状部材の把持動作を行うものと
を備えるビーズ送り装置。
【請求項2】
前記把持手段は一対の爪部からなるものであって、該一対の爪部を回動可能に支持する第1部材と、前記送り部材と前記支持部材とが相対的に移動することに応じて前記第1部材に支持された一対の爪部を回動動作させる第2部材とをさらに備える請求項1に記載のビーズ送り装置。
【請求項3】
前記送り部材の前進及び後退動作時に、前記支持部材が前記送り部材の進行方向と同じ向きに動作されることを規制する動作規制部材をさらに具える請求項1又は2に記載のビーズ送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−183091(P2012−183091A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46318(P2011−46318)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000219749)東海工業ミシン株式会社 (55)
【Fターム(参考)】