説明

ビーム加工装置およびビーム観察装置

【課題】小型化が可能でかつコストの低減が可能なビーム加工装置を提供すること。
【解決手段】ビーム加工装置は、ワーク2の加工を行うためのビームを出射するビーム出射源と、ワーク2に向けてビームを出射する出射部25aを有しビーム出射源からワーク2に向かうビームが通過するビーム通過部材25と、ワーク2が固定される固定面6aを有し所定方向へ移動可能な固定部材6と、3次元方向に変形可能にかつ中空状に形成され、ビーム通過部材25が内部に配置される中空部材23とを備えている。中空部材23は、少なくとも、互いに接続される第1の中空部26と第2の中空部27とから構成されている。また、中空部材23の一端には開口部37が形成され、中空部材23の一端は固定面に当接するとともに、中空部材23の内部は真空状態とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビームを用いて加工対象物の加工を行うビーム加工装置、および、ビームを用いて観察対象物の観察を行うビーム観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工対象物(ワーク)に対する加工を行う加工装置として、集束イオンビームでワークを加工する集束イオンビーム加工装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、ワークに対する加工を行う加工装置として、電子ビームでワークを加工する電子ビーム加工装置も知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された集束イオンビーム加工装置では、集束イオンビームの散乱を防止するため、真空チャンバー内に配置されたステージ上にセットされたワークに対して集束イオンビームが照射され、ワークの加工が行われる。また、特許文献2に記載された電子ビーム加工装置でも同様に、電子ビームの散乱を防止するため、真空チャンバー内に配置されたステージ上にセットされたワークに対して電子ビームが照射され、ワークの加工が行われる。
【0004】
また、集束イオンビームを用いて観察対象物の観察を行う集束イオンビーム観察装置も知られている(たとえば、特許文献3参照)。また、一般に、電子ビームを用いて観察対象物の観察を行う電子ビーム観察装置も知られている。かかる集束イオンビーム観察装置や電子ビーム観察装置でも、真空チャンバー内に配置されたステージ上にセットされた観察対象物に対して集束イオンビームや電子ビームが照射されて、観察対象物の観察が行われる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−32154号公報
【特許文献2】特開2004−167536号公報
【特許文献3】特開平10−162766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の集束イオンビーム加工装置および特許文献2に記載の電子ビーム加工装置では、ワークがセットされるステージの全体が真空チャンバー内に配置されているため、真空チャンバーが大型化する。そのため、加工装置が大型化し、加工装置の製造コストが嵩む。また、真空チャンバーが大型化するため、加工装置のランニングコストが嵩む。また、従来の集束イオンビーム観察装置や電子ビーム観察装置においても、同様の問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、小型化が可能でかつコストの低減が可能なビーム加工装置およびビーム観察装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のビーム加工装置は、加工対象物の加工を行うためのビームを出射するビーム出射源と、加工対象物が固定される固定面を有し所定方向へ移動可能な固定部材と、加工対象物に向けてビームを出射する出射部を有しビーム出射源から加工対象物に向かうビームが通過するビーム通過部材と、3次元方向に変形可能にかつ中空状に形成され、ビーム通過部材が内部に配置される中空部材とを備え、中空部材は、少なくとも、互いに接続される第1の中空部と第2の中空部とから構成され、中空部材の一端には開口部が形成され、中空部材の一端は固定面に当接するとともに、中空部材の内部は真空状態とされることを特徴とする。
【0009】
本発明のビーム加工装置では、開口部が形成された中空部材の一端が固定面に当接しているため、固定面に固定された加工対象物を中空部材の内部に配置することができる。また、中空部材の内部が真空状態とされるため、加工対象物の周囲を局所的に真空状態とすることができる。したがって、従来のような大きな真空チャンバーが不要になる。その結果、本発明のビーム加工装置では、装置の小型化が可能になり、装置の製造コストを低減することが可能になる。また、加工対象物の周囲のみが局所的に真空状態となるため、加工装置のランニングコストを低減することが可能になる。
【0010】
また、本発明のビーム加工装置では、中空部材の内部は真空状態とされるため、固定面に当接する中空部材の一端は固定面を吸着する。また、中空部材が3次元方向に変形可能に構成されているため、移動する固定部材の動きに追従させて中空部材の一端側を変形させることが可能になる。すなわち、中空部材の内部を真空状態に保ったままで、移動する固定部材の動きに追従させて中空部材の一端側を変形させることが可能になる。その結果、本発明では、ビームの散乱等を防止するとともに、所定の加工部位を適切に加工することが可能になる。
【0011】
さらに、本発明のビーム加工装置では、中空部材は、少なくとも、互いに接続される第1の中空部と第2の中空部とから構成されているため、中空部材の変形の自由度を高めることができる。たとえば、ある方向での変形量が大きくなるように第1の中空部を形成し、他の方向での変形量が大きくなるように第2の中空部を形成することで、中空部材の変形の自由度を高めることができる。その結果、本発明では、広範囲にわたって、中空部材の一端側を固定部材の動きに追従して変形させることができ、加工対象物を広範囲で加工することが可能になる。
【0012】
本発明において、固定部材は、固定面がビームの出射方向に直交する方向に対して傾くように傾動可能に構成され、中空部材は、固定面の傾きに追従するように変形可能に構成されていることが好ましい。このように構成すると、様々な角度から加工対象物にビームを照射することが可能となり、加工対象物の複雑な加工が可能となる。
【0013】
本発明において、固定面は、平面状に形成されるとともに、固定部材は、固定面に直交する方向を回転軸の方向として回転可能に構成され、中空部材は、固定面に対向配置され固定部材とともに回転可能な回転部材と、回転部材を相対回転可能に保持する保持部材とを一端に備えることが好ましい。このように構成すると、回転部材と保持部材との作用によって、中空部材にねじれを生じさせることなく、加工対象物を回転させながら加工することが可能となり、加工対象物の複雑な加工が可能となる。特に、固定面がビームの出射方向に直交する方向に対して傾くように固定部材が傾動可能に構成され、固定面の傾きに追従するように中空部材が変形可能に構成されている場合には、ビームを用いて、加工対象物に曲面加工や球面加工等の複雑な3次元加工を行うことが可能になる。
【0014】
本発明において、中空部材は、溶接ベローズを備えていることが好ましい。このように構成すると、中空部材内の真空度を高くすることが可能になり、適切な加工を行うために高い真空度が必要となるビームを使用することが可能になる。
【0015】
本発明において、中空部材は、内周側にビーム通過部材が配置されるコイルバネと、コイルバネの外周面を覆うゴム製のカバーとを備えることが好ましい。このように構成すると、コイルバネによって、中空部材の潰れを防止することができるため、中空部材内の真空度を高くすることが可能になり、適切な加工を行うために高い真空度が必要となるビームを使用することが可能になる。また、このように構成すると、中空部材の変形量を大きくすることができ、広範囲にわたって、中空部材の一端側を固定部材の動きに追従させて変形させることができる。そのため、加工対象物を広範囲で加工することが可能になる。
【0016】
本発明において、出射部から出射されるビームは、たとえば、集束イオンビームである。この場合には、集束イオンビームを用いるビーム加工装置の小型化および装置の製造コスト、ランニングコストの低減が可能になる。また、集束イオンビームを用いた加工対象物の適切な加工が可能になる。
【0017】
また、上記の課題を解決するため、本発明のビーム観察装置は、観察対象物の観察を行うためのビームを出射するビーム出射源と、観察対象物が固定される固定面を有し所定方向へ移動可能な固定部材と、観察対象物に向けてビームを出射する出射部を有しビーム出射源から観察対象物に向かうビームが通過するビーム通過部材と、3次元方向に変形可能にかつ中空状に形成され、ビーム通過部材が内部に配置される中空部材とを備え、中空部材は、少なくとも、互いに接続される第1の中空部と第2の中空部とから構成され、中空部材の一端には開口部が形成され、中空部材の一端は固定面に当接するとともに、中空部材の内部は真空状態とされることを特徴とする。
【0018】
本発明のビーム観察装置では、開口部が形成された中空部材の一端が固定面に当接し、また、中空部材の内部が真空状態とされるため、観察対象物を中空部材の内部に配置するとともに、観察対象物の周囲を局所的に真空状態とすることができる。したがって、従来のような大きな真空チャンバーが不要になり、装置の小型化および装置の製造コスト、ランニングコストの低減が可能になる。
【0019】
また、本発明のビーム観察装置では、中空部材の内部は真空状態とされ、かつ、空部材が3次元方向に変形可能に構成されているため、固定面に当接する中空部材の一端が固定面を吸着した状態で、移動する固定部材の動きに追従させて中空部材の一端側を変形させることが可能になる。すなわち、中空部材の内部を真空状態に保ったままで、移動する固定部材の動きに追従させて中空部材の一端側を変形させることが可能になる。その結果、本発明では、ビームの散乱等を防止するとともに、所定の観察部位を適切に観察することが可能になる。
【0020】
さらに、本発明のビーム観察装置では、中空部材は、少なくとも、互いに接続される第1の中空部と第2の中空部とから構成されているため、中空部材の変形の自由度を高めることができる。その結果、本発明では、広範囲にわたって、中空部材の一端側を固定部材の動きに追従して変形させることができ、観察対象物を広範囲で観察することが可能になる。
【0021】
本発明のビーム観察装置において、固定部材は、固定面がビームの出射方向に直交する方向に対して傾くように傾動可能に構成され、中空部材は、固定面の傾きに追従するように変形可能に構成されていることが好ましい。このように構成すると、ビームを用いて、観察対象物の形状を様々な角度から観察することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明のビーム加工装置およびビーム観察装置では、装置の小型化およびコストの低減が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(ビーム加工装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるビーム加工装置1の概略構成を説明するための模式図である。なお、以下の説明では、図1の上を「上」、下を「下」、右を「右」、左を「左」、紙面手前を「前」、紙面奥を「後(後ろ)」とする。また、以下では、左右方向と前後方向とによって形成される平面をXY平面とする。
【0025】
本形態のビーム加工装置1は、所定の加工対象物(ワーク)2の加工を行うためのビームとして、集束イオンビーム(FIB(Focused Ion Beam))を用いて、ワーク2に対して除去加工等の微細な加工を行う加工装置である。このビーム加工装置1は、図1に示すように、FIBを出射するためのビーム出射源3および第1真空チャンバー4と、ワーク2へ照射されるFIBの拡散を防止するための拡散防止部5と、ワーク2が載置され固定される平面状の固定面6aを有する固定部材6とを備えている。なお、ビーム加工装置1は、大気圧中に配置されている。
【0026】
ビーム出射源3は、ガリウム(Ga)等の液体金属をイオン源としてイオンビームを出射する。また、ビーム出射源3は、第1真空チャンバー4の上端側に取り付けられており、ビーム出射源3から出射されたイオンビームは、第1真空チャンバー4の内部を通過する。第1真空チャンバー4の内部には、通過するイオンビームを集束させるための所定のイオン光学系(図示省略)等が配置されている。
【0027】
本形態では、第1真空チャンバー4の内部を通過したイオンビームは、第1真空チャンバー4の下端側から下方向に向かってFIBとして出射される。たとえば、20〜30kVに加速されたGaイオンビーム(すなわち、FIB)が出射され、スパッタリング現象を用いて、ワーク2の加工が行われる。本形態では、このFIBによって、ワーク2は、数百nmのレベルで加工される。なお、本形態のビーム加工装置1は、第1真空チャンバー4の内部を真空状態とするための真空ポンプ(図示省略)を備えている。
【0028】
拡散防止部5は、第1真空チャンバー4から出射されたFIBがワーク2に向かって通過する局所真空チャンバー9と、局所真空チャンバー9が内部に配置される第2真空チャンバー8と、第2真空チャンバー8および局所真空チャンバー9の内部を真空状態とするための第1ポンプ10および第2ポンプ11とを備えている。第2真空チャンバー8および局所真空チャンバー9は、第1真空チャンバー4の下端側に取り付けられており、第1真空チャンバー4から出射されたFIBは、第2真空チャンバー8および局所真空チャンバー9の内部を通過して、拡散防止部5の下端側でワーク2に照射される。
【0029】
第2真空チャンバー8は、図1に示すように、鍔部8aを有する鍔付きの略円筒状に形成されている。鍔部8aは、第2真空チャンバー8の上端に、径方向外側へ広がるように形成されており、鍔部8aが第1真空チャンバー4の下端に固定されている。
【0030】
上述のように、第2真空チャンバー8の内部には、局所真空チャンバー9が配置されている。具体的には、局所真空チャンバー9の上端が、第2真空チャンバー8の上端よりもわずかに下がった状態で、第2真空チャンバー8の内部に局所真空チャンバー9が配置されている。そのため、第2真空チャンバー8内における局所真空チャンバー9の上方には、第1空間17が形成されている。この第1空間17は、第1真空チャンバー4の内部に連通している。
【0031】
第2真空チャンバー8の下端には、局所真空チャンバー9を構成する後述の固定パイプ29の鍔部29bの上面が当接した状態で、固定されている。鍔部29bの上面と第2真空チャンバー8の下端との間には、後述のように、真空状態となる第1空間17(すなわち、第2真空チャンバー8の内部)への外部からの空気の流入を防止するためのシール部材(図示省略)が配置されている。
【0032】
また、第2真空チャンバー8には、後述のように、第1空間17等を真空状態とするための排気を行う排気孔8bが、第2真空チャンバー8の外周面から内周面に貫通するように形成されている。
【0033】
局所真空チャンバー9は、上述のように、第2真空チャンバー8の内部に配置されている。本形態では、第1真空チャンバー4から出射されるFIBは、第1空間17を通過した後、さらに、局所真空チャンバー9の内部を通過する。この局所真空チャンバー9の詳細な構成については後述する。
【0034】
第1ポンプ10および第2ポンプ11は、排気孔8bに接続された配管21を介して、第2真空チャンバー8の内部に接続されている。本形態の第1ポンプ10は、吸引容量は比較的小さいが、比較的高い真空到達度を得ることが可能なポンプであり、たとえば、ターボ分子ポンプである。また、第2ポンプ11は、吸引容量は大きいが、高い真空到達度を得ることができないポンプであり、たとえば、ロータリポンプである。
【0035】
固定部材6は、ワーク2を固定するためのチャック等の固定手段(図示省略)を備えている。この固定手段は、固定部材6の上面となる固定面6aに取り付けられている。また、固定部材6は、所定方向へ移動可能となっている。すなわち、固定部材6は、固定部材6を移動させる移動機構(図示省略)に取り付けられている。本形態の移動機構は、固定部材6を3次元方向に移動させるように構成されている。たとえば、移動機構は、上下方向、左右方向および前後方向のそれぞれに固定部材6を移動させるためのZ方向移動機構(図示省略)、Y方向移動機構(図示省略)およびX方向移動機構(図示省略)を備えるいわゆるXYZステージである。
【0036】
また、固定部材6は、固定面6aがFIBの出射方向(すなわち、上下方向)に直交する方向に対して傾くように傾動可能に構成されている。すなわち、固定部材6は、固定面6aがXY平面に対して傾くように、固定部材6を傾ける傾動機構(図示省略)に取り付けられている。たとえば、固定部材6は、左右方向または前後方向で、固定面6aがXY平面に対して傾くように、傾動機構(図示省略)に取り付けられている。あるいは、固定部材6は、左右方向および前後方向で、固定面6aがXY平面に対して傾くように、傾動機構に取り付けられている。なお、任意の方向で、固定面6aがXY平面に対して傾くように、固定部材6が傾動機構に取り付けられても良い。
【0037】
さらに、固定部材6は、固定面6aに直交する方向を回転軸の方向として回転可能に構成されている。すなわち、固定部材6は、固定面6aに直交する方向を回転軸の方向とする回転機構(図示省略)に取り付けられている。
【0038】
本形態では、移動機構の上に傾動機構が取り付けられ、傾動機構の上に回転機構が取り付けられ、回転機構の上に固定部材6が取り付けられている。そのため、ビーム加工装置1では、固定面6aに固定されたワーク2に対して、3次元の自由曲面の加工を行うことが可能である。なお、傾動機構の上に移動機構が取り付けられ、移動機構の上に固定部材6が取り付けられた回転機構が取り付けられる等、移動機構、傾動機構および回転機構の配置は任意に変えても良い。
【0039】
(局所真空チャンバーの構成)
図2は、図1に示す局所真空チャンバー9を上面側から示す斜視図である。図3は、図1に示す局所真空チャンバー9の平面図である。図4は、図3のE−E断面を示す断面図である。図5は、図4に示す中空部材23の変形状態を説明するための模式図である。
【0040】
局所真空チャンバー9は、図2〜図5に示すように、第1空間17を通過した後のFIBがワーク2に向かって通過するビーム通過部材25と、中空状に形成され、ビーム通過部材25が内部に配置される中空部材23と、略円板状に形成され、ビーム通過部材25の上端が固定される固定板28と、中空の管状に形成され、中空部材23の上端が固定される固定パイプ29とを備えている。
【0041】
ビーム通過部材25は、直線状にかつ円管状に形成された金属製のパイプである。このビーム通過部材25は、図4に示すように、上下方向を軸方向として、局所真空チャンバー9の内部に配置されている。また、ビーム通過部材25の下端部は、ワーク2に向けてFIBを出射する出射部25aとなっている。
【0042】
本形態の中空部材23は、互いに接続される第1の中空部26と第2の中空部27とを備えている。第1の中空部26と第2の中空部27とは上からこの順番で配置されている。また、第2の中空部27の下端には、固定部材6が回転したときの中空部材23のねじれを防止するための回転機構部22が取り付けられている。本形態では、図4に示すように、第1の中空部26の上下方向の長さは、第2の中空部27の上下方向の長さよりも長くなっている。また、第2の中空部27の外径は、第1の中空部26の外径よりも大きくなっている。
【0043】
第1の中空部26は、図4に示すように、複数のリング状の金属板を溶接することで形成される溶接ベローズ30と、溶接ベローズ30の上端に固定された鍔部材31と、溶接ベローズ30の下端に固定された鍔部材32とから構成されている。鍔部材31、32は、径方向の中心部に上下方向に貫通する貫通孔が形成された金属製の円板状部材である。鍔部材31の上面は、固定パイプ29に固定されている。また、鍔部材32の下面には、第2の中空部27が固定されている。
【0044】
ビーム通過部材25の大半部分は、第1の中空部26の内部に配置されている。また、ビーム通過部材25の外周面と第1の中空部26の内周面との間には、第2空間24が形成されている。
【0045】
第2の中空部27は、内周側にビーム通過部材25の下端側が配置される圧縮コイルバネ33と、圧縮コイルバネ33の上端が取り付けられる取付リング34と、圧縮コイルバネ33の下端が取り付けられる取付リング35と、圧縮コイルバネ33の外周面を覆うゴム製のカバー36とから構成されている。図4に示すように、第2の中空部27の内部は、第2空間24に連通している。
【0046】
取付リング34は、金属製のリング状部材であり、外周側に圧縮コイルバネ33の上端が取り付けられている。取付リング35も、金属製のリング状部材であり、外周側に圧縮コイルバネ33の下端が取り付けられている。また、取付リング35の下面側は、上面側よりも径の大きな拡径部35aとなっており、この拡径部35aの下面には、回転機構部22が取り付けられている。なお、取付リング35の内径は、取付リング34の内径よりも大きくなっている。
【0047】
カバー36は、上述のように、圧縮コイルバネ33の外周面を覆うとともに、取付リング34の上面も覆っている。また、カバー36の下端は、取付リング35の外周面から径方向へ窪むように形成された凹部に取り付けられている。また、取付リング34、35に取り付けられた圧縮コイルバネ33は、若干圧縮された状態で、カバー36の内部に配置されている。そのため、第2の中空部27に外力がかかっていないときには、圧縮コイルバネ33の付勢力と、カバー36の弾性変形に起因する弾性力とが釣り合った状態となって、第2の中空部27が所定の形状を維持している。なお、図4に示すように、カバー36が取付リング34と鍔部材32とに当接した状態で、取付リング34が鍔部材32の下面に固定されている。
【0048】
回転機構部22は、取付リング35の下面に固定される円板状の保持板15と、保持板15に対して相対回転可能となるように保持板15に保持される円板状の回転板16と、回転板16の下面に固定されたリング状のシール部材18と、保持板15と回転板16との間に配置されたリング状の2本のシール部材19とを備えている。本形態では、回転板16は、後述のように、固定面6aに対向配置され固定部材6とともに回転可能な回転部材であり、保持板15は、回転板16を相対回転可能に保持する保持部材である。
【0049】
保持板15には、径方向の中心部に上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔の径はたとえば、取付リング35の内径と同じ大きさとなっている。また、保持板15の上面は、拡径部35aの下面に固定されている。回転板16にも、径方向の中心部に上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔の径もたとえば、取付リング35の内径と同じ大きさとなっている。また、回転板16の上面は、保持板15の下面に当接し、回転板16の下面は、固定面6aに対向配置されている。本形態では、回転板16の下面と固定面6aとの間にはわずかな隙間が形成されている。
【0050】
上述のように、回転板16は、保持板15に対して相対回転可能となっている。具体的には、保持板15の下面に対して、回転板16の上面が摺動することで、回転板16が、保持板15に対して相対回転する。
【0051】
シール部材18は、たとえば、ゴム製のOリングである。このシール部材18は、図4に示すように、回転板16の下面よりも下側に突出しており、ワーク2の加工時に、後述のように、固定面6aに当接する。シール部材18は、固定面6aに当接することで、回転板16の内径側への外部からの空気の流入を防止する機能を果たしている。また、シール部材19は、保持板15と回転板16との間において、保持板15および回転板16の内径側への外部からの空気の流入を防止する機能を果たしている。
【0052】
上述のように、取付リング35はリング状の部材であり、また、保持板15および回転板16には、径方向の中心部に上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。そのため、図4に示すように、中空部材23の下端には、開口部37が形成されている。また、ワーク2の加工を行う際には、中空部材23の下端(具体的には、回転板16の下面に固定されたシール部材18)は、固定部材6の固定面6aに当接する。そのため、ワーク2の加工時には、ワーク2が第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部に配置される。なお、図4に示すように、出射部25aは、第2の中空部27の下端よりも上方に配置されており、ワーク2の加工時には、出射部25aとワーク2との間には所定の隙間が形成される。
【0053】
また、中空部材23の下端が固定面6aに当接した状態(すなわち、シール部材18が固定面6aに当接した状態)で、固定部材6が回転すると、保持板15の下面に対して、回転板16の上面が摺動して、回転板16は、固定部材6とともに回転する。そのため、固定部材6が回転する場合であっても、中空部材23のねじれを防止することができる。
【0054】
固定板28は、金属製の円板状部材である。この固定板28の径方向の中心部には、図2等に示すように、上下方向に貫通する貫通孔28aが形成されている。貫通孔28aは、第2空間24に連通している。また、貫通孔28aには、ビーム通過部材25の上端側を固定するための固定リブ28bが形成されている。
【0055】
固定パイプ29は、底付きかつ鍔付きの略円筒状に形成されており、底部29aを上側、鍔部29bを下側にした状態で配置されている。すなわち、底部29aの上面が固定板28の下面に当接した状態で固定板28の下面に固定され、底部29aの下面には、鍔部材31の上面が当接した状態で固定されている。また、底部29aの径方向の中心部には、ビーム通過部材25の上端側および固定リブ28bの一部が配置される貫通孔が上下方向に貫通するように形成されている。また、上述のように、鍔部29bの上面は、第2真空チャンバー8の下端に当接した状態で、第2真空チャンバー8の下端に固定されている。
【0056】
なお、固定パイプ29は、後述のように変形可能な中空部材23の過変形を防止する機能も果たしている。すなわち、中空部材23が必要以上に変形しないように、中空部材23の外周面が固定パイプ29の内周面に当接する。
【0057】
鍔部材31と底部29aとの間、および、底部29aと固定板28との間には、シール部材38が配置されている。このシール部材38は、後述のように、真空状態となる第2空間24への外部からの空気の流入を防止する機能を果たしている。
【0058】
上述のように、第1の中空部26は、溶接ベローズ30と鍔部材31、32とから構成されているため、所定範囲内で3次元のあらゆる方向に変形可能となっている。また、第2の中空部27は、圧縮コイルバネ33と取付リング34、35とカバー36とから構成されているため、所定範囲内で3次元のあらゆる方向に変形可能となっている。
【0059】
具体的には、本形態では、図5に示すように、3次元方向に移動可能でかつ傾動可能な固定部材6の動きに追従可能となるように、第1の中空部26の上端を支点として、中空部材23が変形可能となっている。すなわち、図5(B)に示すように、固定面6aとXY平面とが平行になった状態で、固定部材6が移動する場合であっても、また、図5(C)に示すように、固定面6aがXY平面に対して傾くように、固定部材6が傾動する場合であっても、第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部にワーク2を配置した状態で、固定部材6の動きに追従可能となるように、第1の中空部26の上端を支点として、中空部材23が変形可能となっている。なお、図5では、回転機構部22の図示を省略している。
【0060】
図1および図4に示すように、局所真空チャンバー9が第2真空チャンバー8の内部に配置された状態では、第1空間17とビーム通過部材25の内部とが連通している。また、この状態では、貫通孔28aを介して、第1空間17と第2空間24とが連通している。そのため、第1ポンプ10、第2ポンプ11が起動すると、第1空間17とビーム通過部材25の内部とが真空状態となる。また、第1ポンプ10、第2ポンプ11が起動すると、第2空間24も真空状態となる。すなわち、第1の中空部26の内部である第2空間24が真空状態になるとともに、第2空間24に連通する第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部も真空状態となる。
【0061】
(ワークの加工手順)
以上のように構成されたビーム加工装置1によるワーク2の加工手順の概略を以下に説明する。
【0062】
まず、ワーク2を固定部材6の固定面6aに固定する。その後、固定部材6を移動させてワーク2の位置合せを行う。その後、中空部材23の下端(具体的には、シール部材18)を固定面6aに当接させて、ワーク2を第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部に配置する。
【0063】
ワーク2の加工時には、ワーク2へ向かうFIBの拡散を防止するため、FIBの経路、第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部を真空状態とする必要がある。そのため、その後、図示を省略する真空ポンプを起動させて第1真空チャンバー4の内部を真空状態とする。また、第1ポンプ10、第2ポンプ11を起動させて、第1空間17、ビーム通過部材25の内部、第2空間24、第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部等を真空状態とする。第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部が真空状態となると、固定面6aに当接する中空部材23の下端は、固定面6aを吸着する。
【0064】
ここで、本形態では、第2ポンプ11、第1ポンプ10をこの順番で起動させて、FIBの拡散を防止するために必要な真空度まで、FIBの経路、第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部等を減圧する。
【0065】
その後、ビーム出射源3から出射され、第1真空チャンバー4の内部、第1空間17およびビーム通過部材25を通過したFIBを、出射部25aからワーク2に向かって照射する。すなわち、出射部25aから照射されるFIBをワーク2の加工部位に集束させて、ワーク2を加工する。
【0066】
また、必要に応じて、固定部材6を移動させてワーク2を加工する。たとえば、図5(B)に示すように、固定面6aとXY平面とを平行に保ったまま、固定部材6を移動させてワーク2を加工する。また、たとえば、図5(C)に示すように、固定面6aがXY平面に対して傾くように、固定部材6を傾動させてワーク2を加工する。また、固定部材6を回転させてワーク2を加工する。
【0067】
上述のように、固定部材6の動きに追従可能となるように、中空部材23が変形可能となっている。また、中空部材23の下端が固定面6aに当接した状態で、第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部が真空状態となっており、中空部材23の下端は固定部材6を吸着している。そのため、固定部材6を動かす場合であっても、中空部材23の下端側が固定部材6の動きに追従するように、中空部材23が変形する。なお、固定部材23が回転する場合であっても、上述のように、回転機構部22の作用によって、中空部材23のねじれが防止される。
【0068】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のビーム加工装置1では、ワーク2の加工時に、開口部37が形成された中空部材23の下端が固定面6aに当接しているため、固定面6aに固定されたワーク2を第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部に配置することができる。また、第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部が真空状態とされるため、ワーク2の周囲を局所的に真空状態とすることができる。したがって、従来のような大きな真空チャンバーが不要になる。その結果、本形態では、ビーム加工装置1の小型化が可能になり、装置の製造コストを低減することが可能になる。また、ワーク2の周囲のみを局所的に真空状態とすることができるため、ビーム加工装置1のランニングコストを低減することが可能になる。
【0069】
また、本形態では、ワーク2の加工時に、中空部材23の下端が固定面6aを吸着するとともに、中空部材23は、移動する固定部材6の動きに中空部材23の下端側が追従するように変形する。すなわち、第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部を真空状態に保ったままで、中空部材23の下端側が移動する固定部材6の動きに追従して変形する。そのため、本形態では、ワーク2の加工形状に応じて、固定部材6を動かす場合であっても、ワーク2の周囲を真空状態に保つことができる。その結果、FIBの拡散を防止して、ワーク2を適切に加工することができる。
【0070】
さらに、本形態では、中空部材23は、第1の中空部26と第2の中空部27とを備えている。そのため、中空部材23の変形の自由度を高めることができる。たとえば、本形態では、第1の中空部26の上下方向の長さは、第2の中空部27の上下方向の長さよりも長くなっているため、左右方向および前後方向での第1の中空部26の変形量が大きくなっており、第2の中空部27の外径は、第1の中空部26の外径よりも大きく、かつ、第2の中空部27は、圧縮コイルバネ33とゴム製のカバー36と等から構成されているため、XY平面に対する第2の中空部27の下端の傾斜量が大きくなっている。したがって、中空部材23の変形の自由度を高めることができ、広範囲にわたって、中空部材23の下端側を固定部材6の動きに追従して変形させることができる。その結果、ワーク2を広範囲で加工することが可能になる。
【0071】
本形態では、図5(C)に示すように、傾動する固定部材6の固定面6aの傾きに追従するように、中空部材23が変形可能となっている。そのため、様々な角度からワーク2にFIBを照射することができ、ワーク2に対して複雑な加工を行うことができる。また、本形態では、固定部材6が固定面6aに直交する方向を回転軸の方向として回転可能に構成され、かつ、中空部材23は、その下端に回転機構部22を備えている。そのため、中空部材23にねじれを生じさせることなく、ワーク2を回転させながら加工することができ、ワーク2に対して複雑な加工を行うことができる。
【0072】
特に、本形態のビーム加工装置1では、ワーク2を回転させながら、かつ、様々な角度からワーク2にFIBを照射することができるため、ワーク2に曲面加工や球面加工等の複雑な3次元加工を行うことができる。
【0073】
本形態では、第1の中空部26に、溶接ベローズ30を用いている。そのため、第1の中空部26の内部(すなわち、第2空間24)の真空度を高くすることができる。その結果、本形態では、適切な加工を行うために高い真空度が必要となるFIBを使用することができる。
【0074】
また、本形態では、第2の中空部27は、圧縮コイルバネ33とゴム製のカバー36と等から構成されている。そのため、圧縮コイルバネ33によって、第2の中空部27の径方向への潰れを防止することができ、第2の中空部27の内部の真空度を高くすることができる。その結果、本形態では、適切な加工を行うために高い真空度が必要となるFIBを使用することができる。また、第2の中空部27が、圧縮コイルバネ33とゴム製のカバー36と等から構成されているため、第1の中空部26と比較して、第2の中空部27の変形量を大きくすることができる。その結果、広範囲にわたって、中空部材23の下端側を固定部材6の動きに追従させて変形させることができ、ワーク2を広範囲で加工することが可能になる。
【0075】
(他の実施の形態)
上述した形態では、中空部材23は、溶接ベローズ30を利用した第1の中空部26と、圧縮コイルバネ33とゴム製のカバー36とを利用した第2の中空部27とが接続されて、構成されている。この他にもたとえば、溶接ベローズを利用した2個の中空部が互いに接続されて、中空部材が構成されても良い。また、圧縮コイルバネとゴム製のカバーとを利用した2個の中空部が互いに接続されて、中空部材が構成されても良い。
【0076】
上述した形態では、中空部材23は、互いに接続された2個の第1の中空部26と第2の中空部27とによって構成されている。この他にもたとえば、3個以上の中空部が互いに接続されて、中空部材が構成されても良い。たとえば、図6に示すように、第1の中空部26、第2の中空部27に加え、さらに別の中空部45が接続されて、中空部材43が構成されても良い。この場合には、中空部45は、第2の中空部27と同様に圧縮コイルバネとゴム製のカバーとを利用したものであっても良いし、第1の中空部26と同様に溶接ベローズを利用したものであっても良い。また、溶接ベローズを利用した3個の中空部が互いに接続されて、中空部材43が構成されても良いし、圧縮コイルバネとゴム製のカバーとを利用した3個の中空部が互いに接続されて、中空部材43が構成されても良い。なお、この場合であっても、中空部材43の下端には、回転機構部22が取り付けられている。
【0077】
また、中空部材は、溶接ベローズを利用したもの、あるいは、圧縮コイルバネとゴム製のカバーとを利用したには限定されない。たとえば、中空部材は、成型ベローズを利用したものであっても良い。また、中空部材の内部の真空度が低いのであれば、補強ワイヤー入りの樹脂製パイプを利用したものであっても良い。すなわち、中空部材の内部が真空状態になっても潰れてしまうことがなく、かつ、固定部材6の動きに追従可能となるように変形する管状部材であれば、中空部材として、本発明のビーム加工装置に用いることができる。
【0078】
上述した形態では、第2真空チャンバー8と局所真空チャンバー9とが別体で形成され、第2真空チャンバー8の内部に局所チャンバー9が配置されている。この他にもたとえば、第2真空チャンバー8の配置を省略して、局所真空チャンバー9を直接、第1真空チャンバー4に固定しても良い。この場合には、ビーム通過部材25の内部、第2空間24、第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部を真空状態とすることができるポンプを局所真空チャンバー9に接続すれば良い。
【0079】
上述した形態では、ビーム加工装置1は、ワーク2の加工を行うためのビームとしてFIBを用いているが、ビームは電子ビームであっても良い。また、ビームはレーザビームであっても良い。これらの場合であっても、上述した効果と同様の効果を得ることができる。また、上述した形態では、第1真空チャンバー4内に配置された所定のイオン光学系等によってFIBが生成されているが、ビーム出射源3から出射されるイオンビームがそのままワーク2に向けて出射されても良い。
【0080】
上述した形態では、本発明の実施の形態として、ビーム加工装置1の構成を説明しているが、ビーム加工装置1と同様の構成を、観察対象物の観察を行うビーム観察装置に適用することができる。すなわち、ビーム出射源3から出射されるFIBを用いて、固定部材6に固定される観察対象物の観察を行っても良い。
【0081】
このように、ビーム加工装置1と同様の構成が適用されるビーム観察装置では、ビーム加工装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、このビーム観察装置では、観察対象物を第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部に配置して、観察対象物の周囲を局所的に真空状態とすることができため、従来のような大きな真空チャンバーが不要になり、装置の小型化および装置の製造コスト、ランニングコストの低減が可能になる。また、固定面6aに当接する中空部材23の下端が固定面6aを吸着した状態で、中空部材23の下端側が移動する固定部材6の動きに追従して変形する。すなわち、第2の中空部27の内部および回転機構部22の内部を真空状態に保ったままで、中空部材23の下端側が移動する固定部材6の動きに追従して変形する。その結果、FIBの散乱を防止して、観察対象物を適切に観察することが可能になる。さらに、中空部材23が、第1の中空部26と第2の中空部27とから構成されているため、中空部材23の変形の自由度を高めることができ、広範囲にわたって、中空部材23の下端側を固定部材6の動きに追従して変形させることができる。その結果、観察対象物を広範囲で観察することが可能になる。
【0082】
また、傾動する固定部材6の固定面6aの傾きに追従するように、中空部材23が変形可能であるため、FIBを用いて、観察対象物の形状を様々な角度から観察することが可能になる。
【0083】
なお、中空部材23の下端には、必ずしも回転機構部22が取り付けられていなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態にかかるビーム加工装置の概略構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示す局所真空チャンバーを上面側から示す斜視図である。
【図3】図1に示す局所真空チャンバーの平面図である。
【図4】図3のE−E断面を示す断面図である。
【図5】図4に示す中空部材の変形状態を説明するための模式図である。
【図6】本発明の他の実施の形態にかかる中空部材の構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0085】
1 ビーム加工装置
2 ワーク(加工対象物)
3 ビーム出射源
6 固定部材
6a 固定面
15 保持板(保持部材)
16 回転板(回転部材)
23、43 中空部材
25 ビーム通過部材
25a 出射部
26 第1の中空部(中空部材の一部)
27 第2の中空部(中空部材の一部)
30 溶接ベローズ
33 圧縮コイルバネ(コイルバネ)
36 カバー
37 開口部
45 中空部(中空部材の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の加工を行うためのビームを出射するビーム出射源と、上記加工対象物が固定される固定面を有し所定方向へ移動可能な固定部材と、上記加工対象物に向けて上記ビームを出射する出射部を有し上記ビーム出射源から上記加工対象物に向かう上記ビームが通過するビーム通過部材と、3次元方向に変形可能にかつ中空状に形成され、上記ビーム通過部材が内部に配置される中空部材とを備え、
上記中空部材は、少なくとも、互いに接続される第1の中空部と第2の中空部とから構成され、
上記中空部材の一端には開口部が形成され、上記中空部材の一端は上記固定面に当接するとともに、上記中空部材の内部は真空状態とされることを特徴とするビーム加工装置。
【請求項2】
前記固定部材は、前記固定面が前記ビームの出射方向に直交する方向に対して傾くように傾動可能に構成され、
前記中空部材は、前記固定面の傾きに追従するように変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のビーム加工装置。
【請求項3】
前記固定面は、平面状に形成されるとともに、前記固定部材は、前記固定面に直交する方向を回転軸の方向として回転可能に構成され、
前記中空部材は、前記固定面に対向配置され前記固定部材とともに回転可能な回転部材と、上記回転部材を相対回転可能に保持する保持部材とを前記一端に備えることを特徴とする請求項1または2記載のビーム加工装置。
【請求項4】
前記中空部材は、溶接ベローズを備えることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のビーム加工装置。
【請求項5】
前記中空部材は、内周側に前記ビーム通過部材が配置されるコイルバネと、上記コイルバネの外周面を覆うゴム製のカバーとを備えることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のビーム加工装置。
【請求項6】
前記出射部から出射されるビームは、集束イオンビームであることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載のビーム加工装置。
【請求項7】
観察対象物の観察を行うためのビームを出射するビーム出射源と、上記観察対象物が固定される固定面を有し所定方向へ移動可能な固定部材と、上記観察対象物に向けて上記ビームを出射する出射部を有し上記ビーム出射源から上記観察対象物に向かう上記ビームが通過するビーム通過部材と、3次元方向に変形可能にかつ中空状に形成され、上記ビーム通過部材が内部に配置される中空部材とを備え、
上記中空部材は、少なくとも、互いに接続される第1の中空部と第2の中空部とから構成され、
上記中空部材の一端には開口部が形成され、上記中空部材の一端は上記固定面に当接するとともに、上記中空部材の内部は真空状態とされることを特徴とするビーム観察装置。
【請求項8】
前記固定部材は、前記固定面が前記ビームの出射方向に直交する方向に対して傾くように傾動可能に構成され、
前記中空部材は、前記固定面の傾きに追従するように変形可能に構成されていることを特徴とする請求項7記載のビーム観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−257929(P2008−257929A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96994(P2007−96994)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(392015365)株式会社平出精密 (10)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【Fターム(参考)】