説明

ビーム照射装置

【課題】 簡単な構成にて円滑にスキャン位置の制御を行い得るビーム照射装置を提供する。
【解決手段】 レンズの上下左右方向に静電容量型の変位センサーを配する。上下方向駆動時に、静電容量が飽和容量Ca、Cbに達したタイミングの駆動電流Ia、Ibを検出する。そして、次式から、上下方向の中立位置に位置づけるための駆動電流Iymと、単位駆動電流あたりにおける上下方向のレンズシフト量Δydを求める。
Iym=(Ia+Ib)/2
Δyd=(Da+Db)/(Ia−Ib)
同様に左右方向の駆動電流Izmおよびレンズシフト量Δzdを求める。求めた駆動電流Iym、Izm、レンズシフト量Δyd、Δzdをもとに目標領域に対する各方向の駆動電流を設定する。これにより、レーザ光を目標領域に正確に照射できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域にビームを照射するビーム照射装置に関し、特に、レンズアクチュエータによってビームをスキャンさせる際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光を照射して目標領域内の障害物を検出する検出装置が家庭用乗用車等に搭載されている。かかる検出装置は、レーザ光を目標領域内でスキャンさせ、その反射光の受光状態から障害物とそこまでの距離を検出するものである。
【0003】
かかる検出装置には、レーザ光をスキャンさせるための、いわゆるビーム照射装置が配備されている。ここで、レーザ光のスキャンは、ポリゴンミラーやレンズアクチュエータを用いたスキャン機構によって行われる。
【0004】
ポリゴンミラーを用いたスキャン機構は、ポリゴンミラーを回転させながら、レーザ光をポリゴンミラー側面に照射することによって、レーザ光をスキャンさせるものである。ポリゴンミラーは、断面多角形となっており、且つ、各側面にミラーが形成されている。ポリゴンミラーを回転させながらレーザ光を側面に照射することにより、各側面に対するレーザ光の入射角度が変化し、その反射光がポリゴンミラーの回転方向にスキャンされる。
【0005】
しかし、かかるスキャン機構では、ポリゴンミラーの回転軸に平行な方向にレーザ光をシフトさせるための構成が別途必要となる。また、ミラー面の平面精度やミラーの回転状態がスキャン性能に大きく影響するため、高精度の平面加工技術や、高性能モータの適用が必要となる。
【0006】
これに対し、レンズアクチュエータを用いたスキャン機構(たとえば特許文献1参照)では、レンズ駆動によってスキャンが行われるため、比較的簡単な構成にて、2次元方向のスキャン動作を実現できる。また、高精度の平面加工技術や高性能モータを適用する必要がないため、ポリゴンミラーを用いる場合に比べ、コストの低減を図ることができる。
【特許文献1】特開平11−83988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、レンズアクチュエータを用いたスキャン機構では、アクチュエータの経年変化等から、以下に示すように、目標位置に対しレーザ光を正確に位置づけることができなくなる惧れがある。
【0008】
たとえば、経年変化等によって、駆動電流とレンズシフト量の関係にずれが生じ、あるいは、レンズ中立位置にずれが生じると、目標領域にレーザ光を照射するための駆動電流をアクチュエータに印加しても、その目標位置からずれた位置にレーザ光が照射されてしまう。また、かかるビーム照射装置を車載用として搭載する場合には、運転状態に応じてレンズに相対的な外力が加わるため、同一の駆動電流を印加しても、外力の働きによってレンズが正規の位置からシフトし、その結果、レーザ光が目標位置からずれた位置に照射されてしまう。
【0009】
本発明は、このような問題を解消することを目的とするものであり、簡単な構成にて円滑に、スキャン位置の制御を行い得るビーム照射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み本発明は、それぞれ以下の特徴を有する。
【0011】
請求項1の発明は、ビーム照射装置において、光源と、前記光源からの光が入射されるレンズと、前記レンズを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータに駆動信号を供給するアクチュエータ駆動手段と、前記レンズが予め規定した位置に到達したことを検出する駆動位置検出手段と、前記アクチュエータ駆動手段によって前記レンズを一の駆動方向およびこれと反対の方向に駆動する駆動信号が前記アクチュエータに入力され、前記駆動位置検出手段によって前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したことが検出されたとき、前記各到達時における駆動信号の大きさをもとに、前記レンズを当該駆動方向の中立位置に位置付けるための駆動信号の大きさを取得する制御パラメータ取得手段とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のビーム照射装置において、前記制御パラメータ取得手段は、前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したときの駆動信号の大きさをSa、Sbとしたとき、前記レンズを当該駆動方向の中立位置に位置付けるための駆動信号の大きさSmを、Sm=(Sa+Sb)/2を演算することにより取得する、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のビーム照射装置において、前記駆動位置検出手段は、前記レンズ側に一体的に配された金属片と、この金属片と所定の間隔をおいて対向配置されたスペーサと、前記スペーサを介して前記金属片との間の静電容量の変化を検出する静電容量型センサーを備え、前記センサーによって静電容量が飽和したとき、前記レンズが前記規定位置に到達したと判別することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかに記載のビーム照射装置において、前記制御パラメータ取得手段は、前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したときの駆動信号の大きさと、前記一の駆動方向における前記規定位置から前記他の駆動方向における規定位置までの前記レンズの可動範囲の大きさから、当該駆動方向における前記レンズの駆動レスポンスをさらに取得することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4に記載のビーム照射装置において、前記制御パラメータ取得手段は、前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したときの駆動信号の大きさをSa、Sbとし、前記レンズの可動範囲の大きさをDとしたとき、当該駆動方向における単位駆動信号あたりのレンズシフト量Δdを、Δd=D/(Sa−Sb)として取得することを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、ビーム照射装置において、光源と、前記光源からの光が入射されるレンズと、前記レンズを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータに駆動信号を供給するアクチュエータ駆動手段と、前記レンズが予め規定した位置に到達したことを検出する駆動位置検出手段と、前記アクチュエータ駆動手段によって前記レンズを一の駆動方向およびこれと反対の方向に駆動する駆動信号が前記アクチュエータに入力され、前記駆動位置検出手段によって前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したことが検出されたとき、前記各到達時における駆動信号の大きさと、前記一の駆動方向における前記規定位置から前記他の駆動方向における規定位置までの前記レンズの可動範囲の大きさから、当該駆動方向における前記レンズの駆動レスポンスを取得する制御パラメータ取得手段とを有することを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項6に記載のビーム照射装置において、前記制御パラメータ取得手段は、前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したときの駆動信号の大きさをSa、Sbとし、前記レンズの可動範囲の大きさをDとしたとき、当該駆動方向における単位駆動信号あたりのレンズシフト量Δdを、Δd=D/(Sa−Sb)として取得することを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項6または7に記載のビーム照射装置において、前記駆動位置検出手段は、前記レンズ側に一体的に配された金属片と、この金属片と所定の間隔をおいて対向配置されたスペーサと、前記スペーサを介して前記金属片との間の静電容量の変化を検出する静電容量型センサーを備え、前記センサーによって静電容量が飽和したとき、前記レンズが前記規定位置に到達したと判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、その時々の環境、状態に応じたレンズ中立位置およびレンズ駆動レスポンスを適宜取得することができる。よって、レンズアクチュエータに経年変化等が生じても、これらの制御パラメータに基づきレンズアクチュエータに印加すべき駆動信号を設定することにより、ビームを目標位置に適正に位置づけることができる。
【0020】
また、駆動位置検出手段を、請求項3または8に示すように静電容量型にて構成すれば、簡易な構成にて円滑にレンズ位置を検出することができる。
【0021】
この他、本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、例示であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1に実施の形態に係るビーム照射装置の構成を示す。図示の如く、ビーム照射装置は、DSP(Digital Signal Processor)10と、DAC(Digital Analog Converter)20と、レーザ駆動部30と、アクチュエータ駆動部40と、ビーム照射ヘッド50と、静電容量検出部60と、比較部70を備えている。
【0023】
DSP10は、レーザ駆動部30およびアクチュエータ駆動部40を駆動制御するための信号をDAC20に出力する。また、比較部70から入力される信号をもとに、レンズアクチュエータ53(後述)の制御パラメータ(レンズレスポンス等)を算出するパラメータ演算ルーチン10aを有している。なお、パラメータ演算ルーチン10aの詳細は、追って説明する。
【0024】
DAC20は、DSP10から入力された制御信号をアナログ信号に変換してレーザ駆動部30およびアクチュエータ駆動部40に出力する。同時に、アクチュエータ駆動部40に出力する制御信号(駆動電流)を比較部70にも出力する。
【0025】
レーザ駆動部30は、DAC20から入力された制御信号(発光電流)に応じて、ビーム照射ヘッド50内の半導体レーザ51を駆動する。アクチュエータ駆動部40は、DAC20から入力された制御信号(駆動電流)に応じて、ビーム照射ヘッド50内のレンズアクチュエータ53を駆動する。
【0026】
ビーム照射ヘッド50は、半導体レーザ51と、アパーチャ52と、レンズアクチュエータ53を備えている。このうち、レンズアクチュエータ53は、上記従来例で示したレンズアクチュエータや、光ピックアップ装置(光ディスク装置用)に搭載されるレンズアクチュエータ等を用いて構成される。すなわち、コイルと磁石の間の電磁駆動力にてレンズを駆動するよう構成されている。レンズアクチュエータ53には、レンズを同図のY軸方向(上下スキャン方向)に駆動するための電磁回路系と、Z軸方向(左右スキャン方向)に駆動するための電磁回路系が配されている。
【0027】
さらに、レンズアクチュエータ53には、Y軸方向(上下スキャン方向)およびZ軸方向(左右スキャン方向)におけるレンズの変位量を検出するための構成が配されている。この構成については、追って詳述する。
【0028】
半導体レーザ51から出射されたレーザ光は、アパーチャ52によって所望の形状に整形された後、レンズアクチュエータ53に支持されたレンズに入射される。ここで、レンズは、同図のY−Z平面方向に変位可能となるよう、レンズアクチュエータ53によって支持されている。したがって、照射レンズを通過したレーザ光は、レンズアクチュエータ53の駆動に応じて、Y−Z平面方向に出射角度が変化する。これにより、目標領域におけるレーザ光の照射が行われる。
【0029】
図2(a)は、レンズの変位量を検出するための構成を示すものである。
【0030】
図示の如く、レンズには、レンズ中心からY方向(上下スキャン方向)およびZ方向(左右スキャン方向)の位置に4つの金属片Ma、Mb、Mc、Mdが装着されている。そして、それぞれの金属片に対向する位置に、スペーサ(スペーサ兼ストッパー)を介して、静電容量型の変位センサーが配されている。スペーサと変位センサーは、レンズアクチュエータ53の固定フレーム側に装着されている。なお、レンズが中立位置(デフォルト)にあるときの各金属片と各スペーサの間の距離Da、Db、Dc、Ddは同一の値をとるように予め設定されている。
【0031】
レンズ中心からY方向(上下スキャン方向)にある2つの金属片Ma、Mbがそれぞれスペーサに当接したときに変位センサーによって検出される静電容量(飽和容量)をCa、Cbとすると、この方向にレンズを駆動するための駆動電流と静電容量の間には図2(b)の関係がある。
【0032】
なお、図2(b)の右半分に示す静電容量の変化は、図2(a)の上側の金属片Maに対する静電容量の変化を示し、図2(b)の左半分に示す静電容量の変化は、図2(a)の下側の金属片Mbに対する静電容量の変化を示す。
【0033】
レンズ中心からZ方向(左右スキャン方向)にある2つの金属片Mc、Mdがそれぞれスペーサに当接したときに変位センサーによって検出される静電容量(飽和容量)Cc、Cdと、Z方向にレンズを駆動したときの駆動電流と金属片Mc、Mdに対する静電容量の関係も、図2(b)と同様の傾向を示す。
【0034】
図2(b)において、静電容量が飽和容量Ca、Cbに達したタイミングの駆動電流をIa、Ibとすると、レンズをY方向(上下スキャン方向)の中立位置に位置づけるための駆動電流Iymは次式で求まる。
Iym=(Ia+Ib)/2 …(1)
【0035】
同様に、静電容量が飽和容量Cc、Cdに達したタイミングの駆動電流をIc、Idとすると、レンズをZ方向(左右スキャン方向)の中立位置に位置づけるための駆動電流Izmは次式で求まる。
Izm=(Ic+Id)/2 …(2)
【0036】
また、単位駆動電流あたりにおけるY方向(上下スキャン方向)のレンズシフト量Δydは次式で求まる。
Δyd=(Da+Db)/(Ia−Ib) …(3)
【0037】
同様に、単位駆動電流あたりにおけるZ方向(左右スキャン方向)のレンズシフト量Δzdは次式で求まる。
Δzd=(Dc+Dd)/(Ic−Id) …(4)
【0038】
図1に示す比較部70は、静電容量検出部60から入力される静電容量値とDAC20から入力される駆動電流値をデジタル値に変換し、これらをもとに、静電容量が飽和容量Ca、Cb、Cc、Cdに達したタイミングの駆動電流値Ia、Ib、Ic、Idを検出する。そして、検出した駆動電流値Ia、Ib、Ic、IdをDSP10に入力する。
【0039】
DSP10は、入力された駆動電流値Ia、Ib、Ic、Idを内蔵メモリに格納するとともに、これらをもとに、パラメータ演算ルーチン10aにて上記式(1)〜(4)の演算を実行し、制御パラメータIym、Izm、Δyd、Δzdを取得する。そして、これらを内蔵メモリに格納し、さらに、これをもとに、レーザ光を目標位置に照射するに必要な駆動電流値を算出し、DAC20に出力する。これにより、アクチュエータ駆動部40に、目標位置に応じた駆動信号(駆動電流)が供給され、レーザ光が目標位置に照射される。
【0040】
図3に、上記制御パラメータIym、Izm、Δyd、Δzdを取得する際のフローチャートを示す。
【0041】
制御パラメータの取得処理が開始されると、まず、レンズアクチュエータ53にオフセット信号が印加され、レンズが中立位置に位置づけられる(S101)。ここで、先の演算処理により制御パラメータIym、Izmが取得されている場合には、Y方向およびZ方向のオフセット信号として、制御パラメータIym、Izmの値がそのまま用いられる。制御パラメータIym、Izmが未だ取得されていない場合には、DSP10の内蔵メモリに格納されているオフセット値が用いられる。
【0042】
次に、レンズの駆動方向がセットされ(S102)、その方向にレンズを駆動するための駆動電流がレンズアクチュエータ(S103)に印加される。ここで、S102における駆動方向は、上方向(Y軸プラス方向)、下方向(Y軸マイナス方向)、左方向(Z軸プラス方向)、右方向(Z軸マイナス方向)の何れかに設定される。
【0043】
しかして、レンズに駆動電流が印加されると、駆動方向の変位センサーによって検出される静電容量値が静電容量検出部60から比較部70に出力される(S104)。比較部70は、入力された静電容量値を参照して静電容量値が飽和したかを判別し(S105)、静電容量値が飽和したタイミングにてDAC20から入力される駆動電流値をDSP10に出力する。DSP10に入力された駆動電流値は、DSP10の内蔵メモリに格納される(S106)。これにより、S102にてセットされた方向における駆動電流値の取得処理が終了される。
【0044】
しかして、当該駆動方向の処理が終了すると、上下左右全ての駆動方向の処理が終了したかが判別され(S107)、終了していなければ、S101に戻り、次の駆動方向における処理が行われる。これにより、次の駆動方向における静電容量飽和時の駆動電流値DSO10の内蔵メモリに格納される。そして、全ての駆動方向における駆動電流値(Ia、Ib、Ic、Id)がDSP10の内蔵メモリに格納されると(S107:YES)、パラメータ演算部10aにて、駆動電流値(Ia、Ib、Ic、Id)が参照され、これらをもとに、上記式(1)〜(4)の演算が行われる(S108)。これにより、制御パラメータIym、Izm、Δyd、Δzdの値が取得される。取得された制御パラメータ値は、DSP10の内蔵メモリに格納される。
【0045】
なお、上下左右の各駆動方向における処理において、静電容量の計測(S104)が開始されると、開始時から一定期間、静電容量に変化が見られるかが比較部70において判別される(S109)。そして、静電容量が順調に変化していれば(S109:YES)、静電容量の計測が継続され(S110)、当該駆動方向における静電容量飽和時の駆動電流の取得処理が行われる。一方、静電容量が初めからあるいは途中から変化せず、または、その変化の度合いが閾値よりも鈍い場合には(S109:NO)、比較部70にてレンズアクチュエータ30の故障と判別され、判別結果がDSP10に入力される(S111)。これを受けて、DSP10は、駆動電流値の取得処理を中止する(S112)。このとき、例えば、異常を示すメッセージが表示部(図示せず)から出力される。
【0046】
図3に示す制御パラメータの取得処理は、たとえば、ビーム照射装置の動作開始時およびその後一定の間隔にて行われる。これにより、レンズアクチュエータ53に経年変化や環境変化が生じても、その時々の状態に応じた制御パラメータが取得される。よって、この制御パラメータを用いて目標領域に応じた駆動電流を求めれば、レーザ光を目標領域に適正に照射することができる。
【0047】
また、ビーム照射装置が乗用車等の移動体に搭載される場合には、走行方向の変化時や駆動・停止時等、レンズに外力が掛かるような場合に制御パラメータの取得処理を行えば、外力の印加があってもなおレンズを適正位置に位置づけることができ、さらに、直前の通常走行時と走行状態の変化開始時における制御パラメータ値を比較して、走行状態の変化期間における制御パラメータを予測するようにすれば、当該走行状態変化期間におけるビーム照射動作を円滑化することができる。
【0048】
なお、図3のフローチャートでは、上下左右の全ての方向における駆動電流Ia、Ib、Ic、Idを全て取得した後、制御パラメータの演算処理を行うようにしたが、上下方向または左右方向の何れかについて静電容量飽和時の駆動電流を取得したときにその方向における制御パラメータを演算し、その後、他方の方向について静電容量飽和時の駆動電流を取得したときにその方向における制御パラメータを演算するようにしても良い。
【0049】
なお、ビーム照射装置を乗用車等に搭載する場合には、上下方向よりも左右方向(水平方向)におけるスキャン精度が求められる。したがって、この場合には、左右方向の制御パラメータがより適正であるのが好ましい。
【0050】
この場合、まず、上下方向の処理を行って上下方向の制御パラメータIym、Δydを求め、求めたIymをY方向のレンズオフセット値(中立位置を与える駆動電流)として用いながら、左右方向の処理を行って左右方向の制御パラメータIzm、Δzdを求めるようにすると良い。こうすると、上下方向のレンズ中立位置を適正化した後に左右方向の制御パラメータの取得処理が行われるため、左右方向の制御パラメータIzm、Δzdをより適正化することができる。よって、左右方向のスキャン精度を高めることができる。
【0051】
図4に、この場合のフローチャートを示す。
【0052】
制御パラメータの取得処理が開始されると、まず、レンズアクチュエータ53にオフセット信号が印加され、レンズが中立位置に位置づけられる(S201)。ここで、先の演算処理により制御パラメータIym、Izmが取得されている場合には、Y方向およびZ方向のオフセット信号として、制御パラメータIym、Izmの値がそのまま用いられる。制御パラメータIym、Izmが未だ取得されていない場合には、DSP10の内蔵メモリに格納されているオフセット値が用いられる。
【0053】
次に、レンズが中立位置から上下方向(Y軸プラス方向、Y軸マイナス方向)に駆動され上下方向の制御パラメータIym、Δydが取得される(S202)。ここでは、図3のS103〜S106の処理がY軸プラス方向とY軸マイナス方向について行われ飽和静電容量Ia、Ibが取得される。そして、これらをもとに、上記式(1)および(3)の処理が行われ制御パラメータIym、Δydが取得される。取得された制御パラメータIym、ΔydはDSP10の内蔵メモリに格納される(S202)。
【0054】
しかして上下方向の制御パラメータIym、Δydが取得されると、再び、レンズアクチュエータ53にオフセット信号が印加され、レンズが中立位置に位置づけられる(S204)。ここでは、上下方向のオフセット信号として、先の上下方向の処理にて取得された制御パラメータIymが設定される。左右方向のオフセット信号には、先の上下方向の処理にて設定されたオフセット信号がそのまま設定される。
【0055】
そして、レンズが中立位置から左右方向(Z軸プラス方向、Z軸マイナス方向)に駆動され左右方向の制御パラメータIzm、Δzdが取得される(S205)。ここでは、上下方向における処理と同様、図3のS103〜S106の処理がZ軸プラス方向とZ軸マイナス方向について行われ飽和静電容量Ic、Idが取得される。そして、これらをもとに、上記式(2)および(4)の処理が行われ制御パラメータIzm、Δzdが取得される。取得された制御パラメータIzm、ΔzdはDSP10の内蔵メモリに格納される(S206)。
【0056】
ところで、上記では、レンズを光軸に対して上下左右方向に駆動してレーザ光をスキャンさせるタイプのアクチュエータを示したが、レンズを光軸に対して傾けることによりレーザ光をスキャンさせることもできる。この場合に、レンズを各方向に駆動して傾けたときの制御パラメータを駆動方向毎に求め、求めた制御パラメータを用いて、目標領域照射時の駆動電流を設定するようにすれば良い。
【0057】
たとえば、レンズを傾き方向に駆動するための4系統の電磁回路系によって、レンズ光軸を中心とする円を4等分する位置に個別に駆動力が印加される場合には、図5(b)に示すように、レンズ中心と駆動力の作用点を結ぶ線上に、それぞれレンズを挟むようにして一対の金属片を配備する。そして、図5(a)に示すように、各金属片に対向するようにしてスペーサ(ストッパ兼スペーサ)と変位センサーを配し、各作用点にレンズ光軸方向の駆動力を印加したときの静電容量を検出する。このとき、各作用点に駆動力を印加する電磁回路系には、オフセット信号を印加しておき、制御パラメータの取得位置に対応する作用点に駆動力を印加する電磁回路系に対してのみ駆動電流を変化させ、この作用点のみを、光軸方向(プラス方向、マイナス方向)に駆動する。
【0058】
そして、これにより取得される静電容量飽和時の駆動電流をプラス方向およびマイナス方向において取得し、これをもとに、上記式(1)(2)と同様の演算を行って、当該作用点においてレンズ中立位置を与える駆動電流と単位駆動電流あたりのレンズシフト量を取得する。かかる取得処理を、他の作用点においても行い、各作用点における制御パラメータを取得する。そして、取得した制御パラメータを用いて、目標位置にレーザ光を照射するために4系統の電磁回路系に印加すべき駆動電流を設定し、これを各電磁回路系に印加する。
【0059】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態に係るビーム照射装置の構成を示す図
【図2】実施の形態に係るレンズ変位量を検出するための構成を示す図
【図3】実施の形態に係る制御パラメータ取得時の処理フローチャート
【図4】他の実施の形態に係る制御パラメータ取得時の処理フローチャート
【図5】他の実施の形態に係るレンズ変位量を検出するための構成を示す図
【符号の説明】
【0061】
10 DSP
10a パラメータ演算ルーチン
50 ビーム照射ヘッド
51 半導体レーザ
53 レンズアクチュエータ
60 静電容量検出部
70 比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光が入射されるレンズと、
前記レンズを駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータに駆動信号を供給するアクチュエータ駆動手段と、
前記レンズが予め規定した位置に到達したことを検出する駆動位置検出手段と、
前記アクチュエータ駆動手段によって前記レンズを一の駆動方向およびこれと反対の方向に駆動する駆動信号が前記アクチュエータに入力され、前記駆動位置検出手段によって前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したことが検出されたとき、前記各到達時における駆動信号の大きさをもとに、前記レンズを当該駆動方向の中立位置に位置付けるための駆動信号の大きさを取得する制御パラメータ取得手段と、
を有することを特徴とするビーム照射装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御パラメータ取得手段は、前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したときの駆動信号の大きさをSa、Sbとしたとき、前記レンズを当該駆動方向の中立位置に位置付けるための駆動信号の大きさSmを、Sm=(Sa+Sb)/2を演算することにより取得する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記駆動位置検出手段は、前記レンズ側に一体的に配された金属片と、この金属片と所定の間隔をおいて対向配置されたスペーサと、前記スペーサを介して前記金属片との間の静電容量の変化を検出する静電容量型センサーを備え、前記センサーによって静電容量が飽和したとき、前記レンズが前記規定位置に到達したと判別する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかにおいて、
前記制御パラメータ取得手段は、前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したときの駆動信号の大きさと、前記一の駆動方向における前記規定位置から前記他の駆動方向における規定位置までの前記レンズの可動範囲の大きさから、当該駆動方向における前記レンズの駆動レスポンスをさらに取得する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御パラメータ取得手段は、前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したときの駆動信号の大きさをSa、Sbとし、前記レンズの可動範囲の大きさをDとしたとき、当該駆動方向における単位駆動信号あたりのレンズシフト量Δdを、Δd=D/(Sa−Sb)として取得する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの光が入射されるレンズと、
前記レンズを駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータに駆動信号を供給するアクチュエータ駆動手段と、
前記レンズが予め規定した位置に到達したことを検出する駆動位置検出手段と、
前記アクチュエータ駆動手段によって前記レンズを一の駆動方向およびこれと反対の方向に駆動する駆動信号が前記アクチュエータに入力され、前記駆動位置検出手段によって前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したことが検出されたとき、前記各到達時における駆動信号の大きさと、前記一の駆動方向における前記規定位置から前記他の駆動方向における規定位置までの前記レンズの可動範囲の大きさから、当該駆動方向における前記レンズの駆動レスポンスを取得する制御パラメータ取得手段と、
を有することを特徴とするビーム照射装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記制御パラメータ取得手段は、前記レンズが前記各駆動方向の規定位置に到達したときの駆動信号の大きさをSa、Sbとし、前記レンズの可動範囲の大きさをDとしたとき、当該駆動方向における単位駆動信号あたりのレンズシフト量Δdを、Δd=D/(Sa−Sb)として取得する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記駆動位置検出手段は、前記レンズ側に一体的に配された金属片と、この金属片と所定の間隔をおいて対向配置されたスペーサと、前記スペーサを介して前記金属片との間の静電容量の変化を検出する静電容量型センサーを備え、前記センサーによって静電容量が飽和したとき、前記レンズが前記規定位置に到達したと判別する、
ことを特徴とするビーム照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−301460(P2006−301460A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125780(P2005−125780)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】