説明

ピコプラチンのための経口製剤

ピコプラチンは、シスプラチンおよびカルボプラチン等の早期の有機白金系薬物に対して耐性を発現している悪性腫瘍を含めた、種々の型の悪性腫瘍の治療に有望な新世代の有機白金系薬物である。本発明は、有機白金系抗癌薬ピコプラチンのための製剤を提供する。自己乳化型組成物、安定化ナノ粒子組成物、固体分散体、および油中のナノ粒子懸濁液を、それらの製剤の調製のための方法と共に提供する。製剤は、ピコプラチンの単純な溶液、すなわち、水または生理食塩水等の中のピコプラチンと比べて、ピコプラチンの経口アベイラビリティーの改善をもたらすことができ、併用療法において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年7月16日に出願された米国仮特許出願第60/950,033号および2008年4月10日に出願された米国仮特許出願第61/043,962号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/950,033号および米国仮特許出願第61/043,962号は、両方とも「Oral Formulations for Picoplatin」と題し、それらの両方の全体が、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
ピコプラチンは、シスプラチンおよびカルボプラチン等の早期の有機白金系薬物に対して耐性を発現している悪性腫瘍を含めた、種々の型の悪性腫瘍の治療に有望な新世代の有機白金系薬物である。ピコプラチンは、小細胞肺癌、結腸直腸癌およびホルモン不応性前立腺癌を含めた、種々の種類の癌または腫瘍の治療において期待されている。
【0003】
構造的に、ピコプラチンは、
【0004】
【化1】

であり、シス−アミンジクロロ(2−メチルピリジン)白金(II)、あるいは[SP−4−3]−アミン(ジクロロ)(2−メチルピリジン)白金(II)と名付けられている。この化合物は、2価の白金の正方形の平面錯体であり、この錯体は四配位であり、3つの異なる配位子の型を有する。2つの配位子は、陰イオン性であり、2つは、中性である。したがって、ピコプラチン中の白金は、+2の電荷を担持するので、ピコプラチン自体は、中性の化合物であり、対イオンが存在する必要はない。名前「ピコプラチン」は、分子中のα−ピコリン(2−メチルピリジン)の存在を指し、この材料についての米国一般名(USAN)、英国一般名(BAN)および国際一般的名称(INN)である。ピコプラチンはまた、文献では、NX473、ZD0473およびAMD473とも呼ばれ、米国特許第5,665,771号、米国特許第6,518,428号、および米国特許出願第10/276,503号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピコプラチンは、静脈内(IV)投与による溶液として患者に提供されている。標準的な条件下におけるピコプラチンは、固体であり、水には溶解しにくい。ピコプラチンの水に対する比較的低い溶解性(約1mg/mL)から、100mg以上の範囲の全用量を患者に提供するためには、かなりの容量の液体を静脈から送達する必要がある(すなわち、100mgの用量を提供するためには、0.5mg/mLの濃度では、約200mLの液体をIV注入によって導入しなければならない)。癌患者の場合、典型的なヒトへの投与量は、1回の投与当たり約数百ミリグラムであり得、これを数週間毎に反復する場合があるので、この物質をIV経路によって投与する度に、かなりの容量の液体を患者に送達しなければならない。したがって、静脈内投与は、針を静脈内へ挿入する必要があること、および比較的大きな容量のピコプラチン溶液の注入を可能にするために患者が動けない期間が比較的長期に及ぶことから望ましくない。ピコプラチンは、経口のバイオアベイラビリティーがあるが、水に対する低い溶解性が、有効な経口剤形の調製に対する障害となっている。
【0006】
ピコプラチンはまた、加水分解の面で、特に特定の保管条件下では不安定であり、Aquo1およびAquo2として指定する2つの異性体の種への変換を受けることも見出されている。Aquo1およびAquo2の構造を、以下に示す。
【0007】
【化2】

【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、癌患者への経口投与に適応させたピコプラチンのための製剤を提供する。これらの製剤は、(a)ピコプラチンを含有する自己乳化型製剤、(b)複数の安定化ピコプラチンナノ粒子、(c)水分散性マトリックス材料中のピコプラチンの固体分散体、(d)中鎖トリグリセリドもしくは脂肪エステル中のナノ粒子ピコプラチン懸濁液、またはそれらの任意の組合せを含む。この製剤は、経口摂取された同等の用量の固体のピコプラチン、すなわち、錠剤中のピコプラチン等、または同等の用量の単純な溶液中のピコプラチン、すなわち、水もしくは生理食塩水中のピコプラチン等と比べて、ピコプラチンの経口アベイラビリティーの改善をもたらすことができる。
【0009】
本発明のある実施形態は、ピコプラチンの自己乳化型製剤に関する。自己乳化型製剤は、ピコプラチン、油および乳化剤、ならびに場合により第1の溶媒を含む。油の例として、中鎖トリグリセリド、脂肪エステル、または食用植物油、すなわち、落花生油、綿実油または大豆油等が挙げられる。乳化剤は、レシチン、ポリエチレングリコール(PEG)もしくは界面活性剤、またはそれらの任意の組合せであってよい。
【0010】
本発明による別の実施形態では、ピコプラチンの自己乳化型製剤を、溶媒法を使用して調製する方法を提供する。この方法は、ピコプラチンをDMSO以外の第1の溶媒中に溶解させて、ピコプラチン溶液を提供するステップと、次いで、油と、レシチン、PEGもしくは界面活性剤またはそれらの任意の組合せを含む乳化剤とを添加するステップと、次いで、第2の溶媒を添加して、当該ピコプラチン溶液、当該油および当該乳化剤を溶解させて、実質的に均一な第2の溶液を提供するステップと、次いで、当該均一溶液から、少なくとも第2の溶媒、および場合により第1の溶媒を蒸発させて、自己乳化型製剤を提供するステップとを含む。
【0011】
本発明の別の実施形態は、複数の安定化ピコプラチンナノ粒子を含む製剤に関する。ピコプラチンナノ粒子は、約1ミクロン未満の平均粒子直径を有し、これを安定化させて、凝集を阻害する。ピコプラチンナノ粒子は、カゼイン、カゼイン塩もしくはレシチン、またはそれらの任意の組合せを用いて安定化させることができる。
【0012】
別の実施形態では、安定化ピコプラチンナノ粒子製剤を調製する方法を提供し、この方法は、安定化剤と水性媒体とを高せん断条件下または微小溶液操作条件下で混合して、均一な分散液を得るステップと、次いで、固体のピコプラチンを添加するステップと、次いで、固体のピコプラチンの平均粒子サイズが約1ミクロン未満になるまで、もしくは結晶粒子が実質的に存在しなくなるまで、または両方の状態になるまで混合して、安定化ピコプラチンナノ粒子の懸濁液を提供するステップとを含む。この懸濁液は、凍結乾燥等によってさらに乾燥して、実質的に乾燥状態のピコプラチン製剤を得ることができる。
【0013】
本発明の別の実施形態は、水分散性マトリックス材料中のピコプラチンの固体分散体に関する。この水分散性マトリックス材料は、ペグ化されたモノ−またはジグリセリドを含むことができる。
【0014】
別の実施形態では、水分散性マトリックス材料中のピコプラチンの固体分散体を調製する方法を、融解法を使用して提供し、この場合、ピコプラチンを、マトリックス材料の融解物中に溶解させ、次いで、これを冷却して、固体分散体を提供する。
【0015】
別の実施形態では、中鎖トリグリセリド(MCT)油中または脂肪エステル、例えば、オレイン酸エチル中のピコプラチンのナノ分散液を提供する。ある実施形態では、MCT油中または脂肪エステル中のピコプラチンのナノ分散液を調製する方法を提供する。
【0016】
別の実施形態では、実質的に水溶性のカプセル殻を含む経口ピコプラチン製剤を提供し、この殻は、混合物中に約10〜60wt%のピコプラチンを含む実質的に乾燥状態の微細粒子材料を含む製剤を封入し、当該ピコプラチンは、実質的に水溶性、水分散性または水吸収性の炭水化物、および約5wt%までの有効量の潤滑剤(もしくは「滑沢剤」)との混合物中で、約10ミクロン未満の平均粒子直径の微粒子の物理的形態をとる。
【0017】
別の実施形態では、経口ピコプラチン製剤を提供し、この場合、剤形が、固体の芯、および当該芯の外側表面上の連続的なコーティングを含み、当該芯は、約10〜60wt%の微粒子ピコプラチン、実質的に水溶性、水分散性または水吸収性の炭水化物を含む、約40〜80wt%の充填剤、および約5wt%までの有効量の潤滑剤、ならびに場合により分散剤を含み、当該ピコプラチンは、約10ミクロン未満の平均粒子直径の微粒子であり、当該芯および/または当該コーティングは、酸化還元活性のある金属塩を実質的に含有しない。
【0018】
種々の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法を提供し、この方法は、本発明の経口製剤または本発明の方法によって調製した経口製剤を、癌に罹患している患者に、当該患者に有益な効果をもたらすために有効な量、頻度および治療期間で投与するステップを含む。患者は、化学療法を受けたことがない患者であっても、または以前に化学療法および/もしくは放射線療法を受けたことがある患者であってもよい。
【0019】
種々の実施形態では、癌は、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含めた肺癌、腎臓癌(kidney cancer)、膀胱癌、腎臓癌(renal cancer)、胃およびその他の消化管(GI)の癌、中皮腫、メラノーマ、腹膜リンパ上皮腫、子宮内膜癌、神経膠芽腫、膵臓癌、子宮頚癌、精巣癌、卵巣癌、結腸直腸癌、食道癌、子宮癌、子宮内膜癌、前立腺癌、胸腺癌、乳癌、頭頚部癌、肝臓癌、カポジ肉腫を含めた肉腫、カルチノイド腫瘍、その他の固形腫瘍、(非ホジキンリンパ腫、NHLを含めた)リンパ腫、白血病、骨に関連した癌、ならびに本明細書に引用する特許および特許出願に開示されているその他の癌であってよい。
【0020】
種々の実施形態では、経口製剤のある実施形態は、癌に罹患している患者に、当該患者に有益な効果をもたらすのに十分な用量、頻度および期間で反復して投与することができる。経口ピコプラチン製剤は、第2の抗癌剤または抗癌療法と併用して投与することができる。例えば、当該経口製剤は、癌の治療のために、X線またはγ線の照射、粒子ビーム照射、近接照射療法または放射性同位体療法等の放射線療法と併用して投与することができる。
【0021】
種々の実施形態では、当該経口製剤は、小型分子またはタンパク質等の分子の実体を含む第2の抗癌剤と共に投与することができる。第2の抗癌剤は、当該経口製剤中に含まれ、したがって、ピコプラチンと組み合わせて投与してもよく、または第2の抗癌剤とピコプラチンとを別々に投与してもよい。別々に投与する場合には、第2の抗癌剤は、実質的に同時、当該経口製剤の投与の前または後に投与することができる。第2の抗癌剤は、経口投与しても、または非経口、例えば、静脈内投与してもよい。例を以下に提供する。これらは、白金非含有抗癌剤または白金含有抗癌剤と呼ぶことができる。第2の抗癌剤の用量、投与頻度および期間は、患者に有益な効果をもたらすために有効であるように、ピコプラチンの用量、投与頻度および期間と組み合わせて提供することができる。
【0022】
本発明の別の実施形態では、本発明の製剤を、キットとして、すなわち、文書ラベル、タグ、コンパクトディスク、DVD、カセットテープ等の、当該製剤の患者への投与に関する指示材料と共に包装中に封入して提供する。例えば、指示材料は、薬物の規制を担当する政府機関によって承認されている製剤の使用を説明する/指示するラベルを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ピコプラチンに関するHPLC較正曲線を示す図である。
【図2】生理食塩水中の0.5mg/mLピコプラチン標準溶液のHPLCトレースを示す図である。
【図3】40℃において2日間脱イオン水中で保存した0.5mg/mLのピコプラチン溶液のHPLCトレースを示す図である。
【図4】下から上に、それぞれ40℃で2日間保存した、pH2、3、4、5、6のバッファー、生理食塩水および脱イオン水中の0.5mg/mLのピコプラチン溶液のHPLCトレースを示す図である。
【図5】中性水および様々なpH値のバッファー中のピコプラチンの溶解度を示すグラフである。
【図6】25℃における、0、1および2日後のピコプラチンの回収率(初期に対する%)を示す図である。
【図7】40℃における、0、1および2日後のピコプラチンの回収率(初期に対する%)を示す図である。
【図8】様々なpH値のバッファーを加えたジメチルスルホキシド(DMSO)中のピコプラチンの経時的安定性を示す図である。
【図9】25℃において4時間のN−メチルピロリドン(NMP)中のピコプラチンの代表的クロマトグラムを示す図である。上から下に、100%NMP中の0.5mg/mL、80%NMP入り生理食塩水中の0.5mg/mL、50%NMP入り生理食塩水中の0.5mg/mL、20%NMP入り生理食塩水中の0.5mg/mL、および生理食塩水中の0.5mg/mLの標準物質。
【図10】再構成溶液中のピコプラチンのHPLCクロマトグラムを示す図である。再構成溶液は、様々なNMP溶媒由来の凍結乾燥ピコプラチンに生理食塩水を加えることによって得た。上から下に、100%NMP由来、80%NMP入り生理食塩水由来、50%NMP入り生理食塩水由来、20%NMP入り生理食塩水由来および生理食塩水由来。
【図11】微粉化ピコプラチン粉末の熱重量/示差熱分析(TG/DTA)スキャンを示す図である。
【図12】カゼインナトリウム中のF50ピコプラチンナノ粒子の熱重量/示差熱分析(TG/DTA)スキャンを示す図である。
【図13】ピコプラチンナノ粒子の代表的HPLCクロマトグラムを示す図である。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLのナノ粒子および生理食塩水中の0.5mg/mLのピコプラチン標準物質。5.5分に1つの未知のピーク(Aquo1ではない)。
【図14】Gelucire50/15中のホットメルト後の代表的HPLCクロマトグラムを示す図である。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLのピコプラチン標準物質および生理食塩水中の0.5mg/mLのF51。
【図15】Gelucire50/15のホットメルトにおけるピコプラチンに関する代表的DSCを示す図である。上から下に、Gelucire50/1、Gelucire50/15のホットメルトにおける5%のピコプラチン、ピコプラチンAPI。
【図16】ホットメルトにおけるピコプラチンに関する代表的DSCを示す図である。上から下に、Gelucire50/15中の5%のピコプラチン、Gelucire50/15中の6%のピコプラチン、Compritol888ATO中の5%。
【図17】HPLCトレースを示す図であり、上から下に、中性生理食塩水中の0.5mg/mLの標準物質、MCT中のF73−ピコプラチン、MCTおよびPL90G中のF74−ピコプラチン、ならびにMCTおよびPolysorbate80中のF75−ピコプラチン。
【図18】図17のHPLCトレースを拡大した図である。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLの標準物質、MCT中のF73−ピコプラチン、MCTおよびPL90G中のF74−ピコプラチン、ならびにMCTおよびPolysorbate80中のF75−ピコプラチン。
【図19】代表的HPLCクロマトグラムを示す図である。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLの標準物質、オレイン酸エチルおよびPL90中のF77−ピコプラチン、MCT、PL90Gおよび生理食塩水中のF80−ピコプラチン。
【図20】拡大した代表的HPLCクロマトグラムを示す図である。上から下に、中性生理食塩水中の0.5mg/mLの標準物質、オレイン酸エチルおよびPL90中のF77−ピコプラチン、MCT、PL90Gおよび生理食塩水中のF80−ピコプラチン。
【図21】代表的HPLCクロマトグラムを示す図である。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLのピコプラチン標準物質、PL90およびEO入り生理食塩水中の0.5mg/mLのF81−ピコプラチン。
【図22】拡大した代表的HPLCクロマトグラムを示す図である。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLのピコプラチン標準物質、PL90およびEO入り生理食塩水中の0.5mg/mLのF81−ピコプラチン。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義:
本明細書で使用する場合、用語「ピコプラチン」は、構造を上記に示した有機白金系抗癌薬を指し、固体の形態または溶液もしくは分散液の形態をとる、ピコプラチンの任意の溶媒和化合物、水和物、または結晶多形を含む。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「製剤」は、ピコプラチンおよびその他の構成成分、すなわち、賦形剤、安定化剤、分散剤、界面活性剤等を含む、物質の組成物である。
【0026】
「自己乳化型」は、製剤が患者の消化管中等の水性媒体と接触すると、当該製剤が自発的に乳濁液を形成する製剤の特性を指す。
【0027】
「ナノ粒子」は、平均粒子直径が約1ミクロン(マイクロメートル、μm)未満である固体の粒子である。1ミクロンは、1,000ナノメートル(nm)である。
【0028】
「安定化」ナノ粒子は、安定化材料でコートされ、安定化コーティングを有しないピコプラチンのナノ粒子と比べて、凝集および分散性の喪失の傾向の低下を示すピコプラチンのナノ粒子である。
【0029】
「カゼイン」は、乳由来タンパク質であり、当技術分野で周知のように、典型的には、水性分散液中では球状である。「カゼイン塩」は、当該タンパク質中のカルボン酸基が、イオン化した形態で存在する、カゼインの塩の形態であり、例として、ナトリウム塩(「カゼインナトリウム」)がある。
【0030】
「微小溶液操作(microfluidization)」は、液状媒体中の微細粒子の分散液を調製するための技法であり、液状媒体の存在下でより粗い粒子を粉砕する。
【0031】
「高せん断混合法(High−shear mixing)」は、液状媒体中の微細粒子の分散液を調製するための技法であり、高せん断条件が、液状媒体の存在下でより粗い粒子をより微細な粒子に粉砕する。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「固体分散体」は、固体または半固体のマトリックス中の固体のピコプラチンの分散物を指す。固体分散体は、液体相または融解相において形成することができ、最終混合物は、固体または半固体の形態に凝固する。
【0033】
「水分散性」は、固体または半固体の材料が、水性媒体中に懸濁し得るが、水性媒体から自発的には相分離しないことを意味する。「水分散性」は、「水溶性」を含み、これは、水性媒体中に完全に溶解して、均一な溶液を形成する固体または半固体の材料を指す。本明細書で使用する場合、用語「マトリックス」は、少なくとも水中に分散可能であり、室温付近またはヒトの体温付近において固体である、その中にピコプラチンを分散させることができる有機材料を指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「油」は、水に不溶性であるか、または少なくとも部分的に水溶性であるにすぎず、水の存在下で分離相を形成することができる有機液体を指す。「油」の例には、中鎖トリグリセリドまたは中鎖モノ−もしくはジ−グリセリド等のグリセリド、あるいはヒマシ油がある。油の別の例には、脂肪エステル(fatty ester)がある。脂肪エステルは、脂肪酸のアルキルエステルを指す。例として、オレイン酸エチルが挙げられる。「MCT油」は、中鎖トリグリセリド油を指す。例として、カプリレート/カプレート(オクタン酸/デカン酸のトリグリセリド)であるMiglyol912等のMiglyolの商標下で販売されているMCT油が挙げられる。
【0035】
「ナノ分散液」は、液体中、例えば、MCT油中または脂肪エステル中の、1μm未満の平均粒子直径のピコプラチン粒子の分散液である。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「レシチン」は、当技術分野で周知のように、トリグリセリド、糖脂質およびホスファチジルコリン等のリン脂質の混合物である。レシチンは、卵または大豆に由来し得る。高ホスファチジルコリンレシチンは、比較的高いホスファチジルコリン(PC)含有量を有するレシチンである。したがって、低ホスファチジルコリンレシチンは、比較的低いPC含有量を有するレシチンである。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「界面活性剤」は、非混和性の液体間、すなわち、油と水との間等の界面張力を低下させ、水滴の表面張力を低下させ、当技術分野で周知のようなその他の界面活性特性を示す物質である。
【0038】
用語「重量平均分子量」は、当技術分野で周知であり、多分散系試料のポリマーの平均分子量を特徴付ける。
【0039】
「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、2つ以上の単位の、−CHCHO−反復単位で構成される高分子材料である。したがって、ジエチレングリコールおよびすべてのより大きなポリマーが、本明細書の意味ではポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、一方の末端もしくは両方の末端に遊離のOH基を有してもよく、または一方の末端もしくは両方の末端におけるエーテル基、例えば、メチルエーテルCHO−(CHCHO)−OCH等のその他の基を含んでもよい。そのようなエーテル末端を有するPEGはまた、「ポリエチレングリコールエーテル」とも呼ぶことができる。PEG−400は、約400DAの重量平均分子量を有するPEGである。PEG−8000は、約8000DAの重量平均分子量を有するPEGである。化合物は、「ペグ化され」得、このことは、化合物が少なくとも1つのPEG基を有することを意味し、このPEG基は、多様な方法で、すなわち、当該化合物によって開始されるエチレングリコールの重合、または当該化合物の、あらかじめ形成されたPEGとのカップリング等によって導入することができる。例えば、Gelucire(登録商標)は、ペグ化脂肪酸モノグリセリドであり、これは、グリセロール部分が、単一の脂肪酸部分と、1つまたは両方の残留遊離ヒドロキシル基上にPEG部分とを有することを意味する。
【0040】
「双極性非プロトン溶媒」は、水溶液中にプロトン源を含有しない溶媒であり(プロトン性溶媒の例には、エタノールがある)、これはまた、特徴が極性であり、典型的には、少なくとも部分的に水溶性である。非プロトン溶媒の例には、DMF、NMP、DMSO、DMAC等がある。「DMSO」は、ジメチルスルホキシドである。「NMP」は、N−メチルピロリドンである。「DMF」は、N,N−ジメチルホルムアミドである。「DMAC」は、N,N−ジメチルアセトアミドである。
【0041】
「Labrasol(登録商標)」は、約30%の、C8およびC10の脂肪酸のモノ−、ジ−およびトリグリセリドと、50%の、ポリエチレングリコール(PEG400)のモノ−およびジ−エステルと、20%の遊離のPEG400とで構成される混合物である。Labrasol(登録商標)は、界面活性特性を示す。
【0042】
「Cremophor RH40(登録商標)」は、45モルのエチレンオキシドと1モルの硬化ヒマシ油とを反応させることによって得られた非イオン性の可溶化剤および乳化剤である。Cremphor RH40(登録商標)の主要な構成要素は、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレートであり、これは、脂肪酸グリセロールポリグリコールエステルと一緒になって、生成物の疎水性部分を形成する。親水性部分は、ポリエチレングリコールおよびグリセロールエトキシレートからなる。
【0043】
「Cremophor ELP(登録商標)」は、ヒマシ油とエチレンオキシドとを1:35のモル比で反応させることによって作製された非イオン性の可溶化剤である。
【0044】
Gelucire44/14(CAS RN121548−04−7)およびGelucire50/13(CAS RN121548−05−8)を含めた「Gelucire(登録商標)」は、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂肪酸グリセリドである。例えば、Gelucire44/14は、ラウリン酸のペグ化グリセリドであり;Gelucire50/13は、ステアリン酸のペグ化グリセリドである。単語Gelucireの後の数字はそれぞれ、℃で示す融点、および親水性親油性バランス(HLB)値を指す。Gelucire化合物は、PEG1500(重量平均分子量1500DAのポリエチレングリコール)を用いてペグ化されている。
【0045】
「Polysorbate80」は、ソルビタンモノ−9−オクタデカノエートポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)誘導体を指し;これらは、医薬品中の乳化剤または分散剤として使用される、ポリオキシエチレンエーテルの複合体混合物としてよく知られている。
【0046】
「Phospholipon 90G」または「PL90G」(American Lecithin Products、Oxford、CT)は、リポソームの製造のためのレシチン、最低94%のホスファチジルコリンの商標名である。「Phospholipon 90H」または「PL90H」は、硬化PL90Gである。用語「PL90」は、これらの材料のいずれかを指す。
【0047】
「Vitamin E TPGS」は、化合物D−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000サクシネートを指す。
【0048】
「Compritol888」は、ベヘン酸グリセリルを指す。「ベヘン酸エステル」は、当技術分野で周知のように、ドコサン酸のエステルである。
【0049】
「ポロキサマー188」(CAS RN9003−11−6)は、約8400の重量平均分子量を有する、式HO(CO)(CO)(CO)Hのポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーである。
【0050】
「SPAN60」は、モノステアリン酸ソルビタンを指す。
【0051】
「Kollidon K90」(Hoechst、Germany)は、約90,000の分子量を有するポリビニルピロリドンを指す。
【0052】
「Miglyol812」(Sasol Germany GmbH、Witten、Germany)は、酸部分が、カプリル酸およびカプリン酸である中鎖トリグリセリドを指す。Miglyolは、本品およびMCT油のその他の種の源を同定する商標名である。
【0053】
「投与する」または「投与」は、医薬化合物を、それを必要とする患者に提供することを指す。「用量」は、単一の投与において提供される、活性医薬品成分(API)、この場合には、ピコプラチンの量である。投与「頻度」は、反復用量が処方される場合の薬品の投与される間隔を指す;例えば、薬品を1日1回投与することができる。「期間」は、反復用量が投与される経過時間を指す;例えば、当該ピコプラチンは、2週間の期間にわたり投与することができる。
【0054】
「抗癌性の薬剤を含む第2の薬剤」として、限定的なものではないが、タキサン(例えば、パクリタキセル(Taxol(登録商標))またはドセタキセル(Taxotere(登録商標))、チロシンキナーゼおよび/またはVEGFR阻害剤等の増殖因子受容体阻害剤(例えば、モノクローナル抗体:ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))もしくはセツキシマブ(Erbitux(登録商標))等);セファロタキシン(cephalotaxine)類似体(例えば、トポテカン(Hycamtin(登録商標));イリノテカン;9−アミノカンプトテシン;Rubitecan(登録商標);Exatecan(登録商標);XR−5000、XR−11576);代謝拮抗薬(例えば、カペシタビン(Xeloda)、ゲムシタビン、ロイコボリンを併用するもしくは併用しない5−FU、S1(ギメラシル/オテラシル/テガフール)、テガフール/ウラシル、メトトレキセート、またはチミジル酸シンターゼ阻害剤(Tomudex(登録商標)、ZA9331、LY231514(ペメトレキセド)));タンパク質キナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、ダサチニブ(Sprycel(登録商標))、ゲフィチニブ(ZD1839、Iressa(登録商標))、イマチニブ(Gleevac(登録商標))、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、AZD2171(Recentin(登録商標))としても知られているセジラニブ、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))またはスニチニブ(Sutent(登録商標)));アントラサイクリン(例えば、アムルビシン、ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、Doxil(登録商標));ビンカアルカロイド(例えば、ビノレルビン(Navelbine(登録商標))、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン);ポドフィロトキシン類似体(例えば、エトポシド、テニポシド);増殖因子阻害剤(例えば、PDGF、内皮GF、VEGF、EGFまたは肝細胞GFの阻害剤;例えば、GF−結合抗体またはGF受容体結合抗体);細胞周期キナーゼの阻害剤(CDK−2、CDK−4またはCDK−6等);細胞分裂阻害剤(タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、ヨードキシフェン(iodoxyfene);酢酸メゲストロール;アロマターゼ阻害剤、すなわち、アナストロゾール(ZD1033)、レトラゾール(letrazole)、ボラゾール(vorazole)、エキセメスタン等;抗アンドロゲン、すなわち、フルタミド、ヌルタミド(nulutamide)、ビカルタミド、酢酸シプロテロン等;LHRHアゴニストもしくはアンタゴニスト、すなわち、酢酸フォセレリン(foserelin acetate)もしくはループロリド(luprolide)等;テストステロンジヒドロレダクターゼ阻害剤、すなわち、フィナセチド(finasetide)等、メタロプロテイナーゼ(metalloproteinase)阻害剤、すなわち、マリマスタット等、またはuPAR阻害剤);アルキル化剤(例えば、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド(ifosphamide)、ニトロソウレア、カルムスチン、ロムスチン);あるいは放射線療法(例えば、X線、γ線、粒子ビーム、近接照射療法、放射性同位体)を挙げることができる。
【0055】
あるいは、追加の薬剤は、白金非含有物質であり、癌の合併症を治療するため、または少なくとも1つの癌症状の緩和を対象にもたらすために、例えば、シロリムスもしくはラパマイシン(Rapamune(登録商標))、デキサメタゾン(Decadron(登録商標))、パロノセトロンHCl(Aloxi(登録商標))、アプレピタント(Emend(登録商標))、オンダンセトロン(Zofran(登録商標))、またはグラニセトロン(Kytril(登録商標))を選択することができる。
【0056】
経口投与することができる抗癌性の薬剤の例を、以下の表1に列挙する。
【0057】
【表1−1】

経口投与して活性を得ることができる抗癌剤には、アルトレタミン(Hexalen(登録商標))、アルキル化剤;カペシタビン(Xeloda(登録商標))、代謝拮抗薬;ダサチニブ(Sprycel(登録商標))、TK阻害剤;エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、EGF受容体アンタゴニスト;ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、EGF阻害剤;イマチニブ(Gleevec(登録商標))、TK阻害剤;ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、EGFR阻害剤;レナリドマイド、(Revlimid(登録商標))、TNFアンタゴニスト;スニチニブ(Sutent(登録商標))、TK阻害剤;S−1(ギメラシル/オテラシル/テガフール)、代謝拮抗薬;ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、血管新生阻害剤;テガフール/ウラシル(UFT(登録商標)、Uftoral(登録商標))、代謝拮抗薬;テモゾロミド(Temodar(登録商標))、アルキル化剤;サリドマイド(Thalomid(登録商標))、血管新生阻害剤;トポテカン(注射用Hycamtin(登録商標)もしくはOral Hycamtin(登録商標))、ビノレルビン(Navelbine(登録商標))、有糸分裂阻害薬;セジラニブ(AZD2171、Recentin(登録商標))、VEGF阻害剤;および/またはボリノスタット(Zolinza(登録商標))、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤がある。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「放射線」または「放射線療法」は、癌患者を種々の形態の電離放射線を用いて治療することを指す。電離放射線は、分裂している細胞に対して、DNA複製および細胞分裂を妨げることによって強力に作用する。3つの主要な型の放射線療法として、外部ビーム放射線療法(EBRTもしくはXBRT)または遠隔療法、近接照射療法または密閉線源放射線療法、および非密閉線源放射線療法がある。これらの差は、放射線源の位置に関係する;外部とは、体外であり、一方、密閉線源放射線療法および非密閉線源放射線療法は、放射性物質を、内部的に送達させる。外部ビーム放射線療法には、X線等の光子のビーム、または陽子等の粒子のビームが関与することができる。外部ビーム放射線療法には、全身照射、または身体組織の画定された容積中にエネルギーを集中するために、複数の集束ビームを使用することのいずれかが関与することができる。近接照射療法には、種々の放射性同位体の密閉線源を身体組織内部に、当該線源を一定期間後に除去できる様式で埋め込むことが関与する。放射される放射線の型は、密閉線源中に含まれている放射性同位体の身元に依存し、光子(X線)であっても、または粒子(例えば、ベータ粒子)であってもよい。非密閉線源、例えば、放射標識した抗体等を使用する場合には、ここでも、放射線の性質は、使用する放射性同位体の身元に依存するが、封じ込めがないという事実に起因して、より短い範囲の粒子、すなわち、アルファ粒子およびオージェ電子等を有効に使用することができる。しかし、非密閉線源は典型的には、外科的に除去することができないことから、この放射性同位体の形態は、適切な時間枠内に、排泄され得るか、またはそうでなければ崩壊するものでなければならない。有用な同位体の例として、90Y、131Iおよび177Luが挙げられる。
【0059】
本発明は、癌患者への経口投与に適応させた抗癌薬ピコプラチンの製剤、およびそれらの製剤の調製方法に関する。本発明のある実施形態では、自己乳化型製剤が、ピコプラチンを、一相性の油性ビヒクル中に溶解させた状態で提供し、これは、消化管中で水性媒体に曝されると乳濁液を形成し、ピコプラチンを乳化油滴中で送達し、消化管からピコプラチンがより良好に吸収されて血流に入る可能性がある。自己乳化型製剤は、油(油性ビヒクル)を、製剤の自己乳化特性を援助する分散剤および界面活性剤と共に含むことができる。患者によって経口摂取されると、当該製剤は、消化管中で乳化することができる。当該製剤は、経口摂取された同等の用量の固体のピコプラチン、すなわち、錠剤中のピコプラチン等、または同等の用量の単純な溶液中のピコプラチン、すなわち、水もしくは生理食塩水中のピコプラチン等と比べて、ピコプラチンの経口アベイラビリティーの改善をもたらすことができる。
【0060】
自己乳化型ピコプラチン製剤のある実施形態は、油と、レシチン、界面活性剤、PEGまたはそれらの任意の組合せを含む乳化剤とを含むことができる。好ましくは、自己乳化型製剤は、少なくとも約10%w/wのピコプラチンを含むが、より少ない量のピコプラチン、例えば、5%w/wのピコプラチンを含んでよい。本発明の自己乳化型製剤はまた、ピコプラチンが少なくともわずかに溶解する第1の溶媒も含むことができる。ただし、第1の溶媒は、DMSOではない。以下に開示するように、ピコプラチンは、DMSO中では不安定であり、これはおそらく、ピコプラチンのDMSOによる酸化に起因する。第1の溶媒は、双極性非プロトン溶媒、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールエーテル、モノ−もしくはジ−グリセリドのポリエチレングリコール誘導体、あるいはそれらの任意の組合せであってよい。双極性非プロトン溶媒は、NMPであってよい。好ましくは、双極性非プロトン溶媒は、特にNMPである場合には、アミンの混入物質を実質的に含有しない。
【0061】
例えば、第1の溶媒は、モノ−またはジ−グリセリドのポリエチレングリコール誘導体、すなわち、Gelucire40/14(登録商標)またはGelucire50/13(登録商標)等であってよい。ピコプラチンは、Gelucireの融点、すなわち、Gelucire40/14の場合には40℃、またはGelucire50/13の場合には50℃を上回った温度に維持したGelucire中に溶解させることができる。次いで、融解させたGelucire中のピコプラチンの溶液を、第2の溶媒中で、その他の構成成分と混合して、実質的に均一な第2の溶液を形成することができる。Gelucire(モノ−グリセリドのポリエチレングリコール誘導体、すなわち、ペグ化モノグリセリド)は、それ自体が界面活性剤であり;したがって、第2の溶媒中で、ピコプラチンのGelucire溶液を油と混合し、それに続いて、第2の溶媒を除去することによって、本発明の自己乳化型製剤を提供することができ、この場合、Gelucireは、第1の溶媒および乳化剤の両方として働く。あるいはまた、レシチン、PEG、別の界面活性剤またはそれらの任意の組合せを、第2の溶媒と混合して、実質的に均一な溶液をもたらし、そこから、第2の溶媒を除去して本発明の自己乳化型製剤を提供することもできる。
【0062】
自己乳化型製剤は、油を含み、この場合、油は、中鎖トリグリセリド、ヒマシ油、中鎖モノ−グリセリド、中鎖ジ−グリセリド、食用植物油、すなわち、落花生油、綿実油もしくは大豆油等、またはそれらの任意の組合せである。あるいは、油は、グリセリド以外の油であってよく;例えば、この油は、炭化水素油またはシリコーン油であってよい。
【0063】
自己乳化型製剤は、乳化剤を含む。例えば、乳化剤は、レシチンを含有することができる。レシチンは、高ホスファチジルコリン含有レシチン、低ホスファチジルコリン含有レシチン、またはそれらの任意の組合せであってよい。
【0064】
乳化剤はまた、界面活性剤、すなわち、Labrasol(登録商標)(グリセリドとペグ化材料との混合物)、Cremophor RH40(登録商標)(ペグ化グリセリド)、Cremophor ELP(登録商標)(ペグ化グリセリド)、Gelucire44/14(登録商標)(ペグ化グリセリド)、Polysorbate80HP(登録商標)(ペグ化されたソルビタンの脂肪エステル)、もしくはVitamin E TPGS(ペグ化コハク酸トコフェロール)、またはそれらの任意の組合せ等を含むこともできる。Gelucireは、本発明の自己乳化型製剤の第1の溶媒および乳化剤の両方であり得る。
【0065】
本発明の自己乳化型製剤は、PEG400等のPEGを含有することができる。PEG化合物は典型的には、水溶性であるが、また、水性媒体中で疎水性材料を安定化させることもできる。
【0066】
同様に、自己乳化型製剤の調製方法も、本明細書において、本発明の実施形態として提供する。例えば、当該製剤を、ピコプラチンをDMSO以外の第1の溶媒中に溶解させて、ピコプラチン溶液を提供し、次いで、油と、レシチン、PEGもしくは界面活性剤またはそれらの任意の組合せを含む乳化剤とを添加し;次いで、第2の溶媒を添加して、当該ピコプラチン溶液、当該油および当該乳化剤を溶解させて、実質的に均一な第2の溶液を提供し;次いで、当該均一溶液から、少なくとも第2の溶媒、および場合により第1の溶媒を蒸発させることによって調製して、自己乳化型製剤を提供することができる。
【0067】
第1の溶媒は、双極性非プロトン溶媒、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールエーテル、モノ−もしくはジ−グリセリドのポリエチレングリコール誘導体、あるいはそれらの任意の組合せであってよい。双極性非プロトン溶媒は、NMPであってよい。好ましくは、双極性非プロトン溶媒は、特にNMPである場合には、アミンの混入物質を実質的に含有しない。ピコプラチンがDMSO中で不安定であることから、DMSOは、第1の溶媒としては適さない。バッチ製剤を調製するためには、あらかじめ選択された量のピコプラチンの溶液を第1の溶媒中に溶解させ、次いで、乳化剤を添加する。乳化剤は、レシチン、PEG、界面活性剤、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。油は、中鎖トリグリセリド、ヒマシ油、中鎖モノ−グリセリド、中鎖ジ−グリセリド、またはそれらの任意の組合せであってよい。レシチンは、高ホスファチジルコリン含有レシチン、低ホスファチジルコリン含有レシチン、またはそれらの任意の組合せであってよい。PEGは、PEG400であってよい。界面活性剤は、Labrasol、Cremophor RH40、Cremophor ELP、Gelucire44/14、Polysorbate80HP、もしくはVitamin E TPGS、またはそれらの任意の組合せであってよい。
【0068】
次いで、第2の溶媒を室温または室温付近で添加して、実質的に均一な第2の溶液を提供するが、何らかの加熱を使用して、すべての構成成分が溶解するのを援助してよい。次いで、第2の溶媒を、当該均一溶液から除去する。適切な第2の溶媒は、エタノールであり、これは、減圧下、室温または室温付近で除去することができるが、高温を使用してもよい。蒸発は、第1の溶媒もまた除去されるように継続することができるが、第1の溶媒またはその一部が、製剤中に残留してもよい。残留物が、本発明の自己乳化型製剤となり、これは、液体、固体または半固体であってよい。この材料を、硬質または軟質のゼラチンカプセル中に充填して、患者に投与することができる。自己乳化型製剤は、ピコプラチンの、患者の消化(GI)管中での溶解を援助し、したがって、純粋な固体として投与された同一用量のピコプラチンと比較した場合、血流への取込みの増強をもたらすように構成される。
【0069】
本発明の別の実施形態では、ピコプラチンの安定化ナノ粒子調製物を提供し、これは、大幅に増加した表面積を有し、したがって、固体の結晶ピコプラチンと比べて、溶解速度の改善をもたらす。ピコプラチンナノ粒子を、有機材料を用いて安定化させる。例えば、ピコプラチンナノ粒子は、カゼイン、カゼイン塩もしくはレシチンまたはそれらの任意の組合せを用いて安定化させることができる。カゼインおよびカゼイン塩は、乳中に見出されるタンパク質であり、これらには、水性媒体中の乳脂肪液滴を安定化させる働きがある。本発明の安定化ナノ粒子製剤では、カゼインもしくはカゼイン塩または両方が、サブミクロンサイズのピコプラチン粒子を安定化させ、粒子の再凝集を阻害することができる。また、レシチン等の脂質組成物を使用して、ピコプラチンナノ粒子を安定化させることもできる。好ましくは、当該製剤は、乾燥重量に基づいて、少なくとも約10%w/wのピコプラチンを含有するが、より少ない量のピコプラチン、例えば、乾燥重量に基づいて、少なくとも約5%w/wのピコプラチン、または中間にある重量を含んでよい。当該製剤は、経口摂取された同等の用量の固体のピコプラチン、すなわち、錠剤中のピコプラチン等、または同等の用量の単純な溶液中のピコプラチン、すなわち、水もしくは生理食塩水中のピコプラチン等と比べて、ピコプラチンの経口アベイラビリティーの改善をもたらすことができる。
【0070】
ピコプラチンナノ粒子は、高せん断混合法または微小溶液操作を含む工程によって調製することができる。固体のピコプラチン、例えば、結晶形態をとるピコプラチンを、水性媒体中で、カゼイン等の安定化剤と、微小溶液操作条件または高せん断条件を使用して、レーザー光散乱分光法によって決定される固体のピコプラチンの平均粒子直径が約1ミクロン未満となるまで、あるいは、偏光フィルターレンズを付けた光学顕微鏡を使用して、結晶ピコプラチンが大部分存在しないことが観察されるまで混合することができる。平均粒子直径は、さらにより小さくてもよく;例えば、ピコプラチンナノ粒子は、約0.5ミクロン未満;約0.25ミクロン未満;または約0.15ミクロン未満の平均粒子直径を有してよい。
【0071】
また、本発明のある実施形態は、安定化ピコプラチンナノ粒子の調製方法も提供する。この方法は、安定化剤と水性媒体とを高せん断条件下または微小溶液操作条件下で混合して、均一な分散液を得るステップと、次いで、固体のピコプラチンを添加するステップと、次いで、ピコプラチンの平均粒子サイズが約1ミクロン未満になるまで、もしくは結晶粒子が実質的に存在しなくなるまで、または両方の状態になるまでこれらの条件下で混合し続けて、安定化ピコプラチンナノ粒子の懸濁液を提供するステップとを含む。安定化剤は、カゼイン、カゼイン塩またはレシチンであってよい。平均ピコプラチン粒子直径は、約1ミクロン未満、または約0.5ミクロン未満、または約0.25ミクロン未満、または約0.15ミクロン未満であってよい。
【0072】
次いで、個体の材料を提供するために、安定化ピコプラチンナノ粒子の懸濁液を、例えば、凍結乾燥によって乾燥して、実質的に乾燥状態の固体を提供することができる。この方法によって、ゼラチンカプセル中に充填して、患者に経口投与することができる固形製剤を得ることができる。実質的に乾燥状態の固体のピコプラチン含有量は、少なくとも約10%w/w、または少なくとも約5%w/wであってよい。
【0073】
本発明の別の実施形態では、固体の水分散性材料(マトリックス)中の、固体のピコプラチンの分散体を提供する。本発明の固体分散体は、ピコプラチンを、水分散性マトリックス材料の融解物中に分散させ、次いで、冷却し、凝固させることを含む工程によって調製することができる。好ましくは、当該製剤は、少なくとも約10%w/wのピコプラチンを含有するが、より少ない量のピコプラチン、例えば、少なくとも約5%w/wのピコプラチンを含んでよい。水分散性マトリックス材料は、Gelucire50/13、Gelucire44/14、Poloxamer188、SPAN60、PEG−8000、Kollidon K−90、Vitamin E TPGS、もしくはCompritol888、またはそれらの任意の組合せを含むことができ、それらの定義は、本明細書に提供されている。GelucireおよびCompritolの材料は、ペグ化された脂肪酸のグリセリドである。Poloxamerは、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマーである。Spanは、ソルビタンのモノステアリン酸エステルであり、Kollidonは、ポリビニルピロリドンである。Vitamin E TPGSは、ペグ化コハク酸トコフェロールである。
【0074】
水分散性マトリックス材料は、少なくとも水中に分散可能であり、自発的には相分離せず、完全に水溶性であってもよい。マトリックス材料は、好ましくは、約20℃〜約37℃において固体である。水分散性マトリックス材料の融解物を、固体のピコプラチンを分散させる間、約40℃〜約160℃の温度に維持することができる。ピコプラチンを融解物中に分散させるステップには、ピコプラチンを融解物中に溶解させて、均一な融解物を提供することが含まれ得る。均一な融解物は、Gelucire50/13、Gelucire44/14、Compritol888、またはVitamin E TPGSを含むことができる。次いで、融解物を冷却し、凝固させて、本発明の固体分散体を提供する。当該製剤は、経口摂取された同等の用量の固体のピコプラチン、すなわち、錠剤中のピコプラチン等、または同等の用量の単純な溶液中のピコプラチン、すなわち、水もしくは生理食塩水中のピコプラチン等と比べて、ピコプラチンの経口アベイラビリティーの改善をもたらすことができる。
【0075】
本発明のある実施形態では、中鎖トリグリセリド(MCT油)中または脂肪エステル中のナノ粒子ピコプラチンの懸濁液を提供する。ナノ粒子ピコプラチンは、1ミクロン未満の平均粒子直径のピコプラチン粒子を、MCT油または脂肪エステル中に懸濁させて含む。ナノ粒子ピコプラチンは、組成物の約20重量%〜約70重量%を占めることができる。MCT油は、中鎖脂肪酸のトリグリセリドエステルであっても、または異なる中鎖脂肪酸の組合せのトリグリセリドエステルであってもよい。例えば、MCT油は、トリカプリルグリセリド(トリオクタノイルグリセリド)であってもよく、または混合性のカプリル/カプリン(オクタノイル/デカノイル)グリセリドであってもよい。MCT油の場合、すべての3つのグリセリンヒドロキシル基がアシル化されている。MCT油の例には、Miglyol812等のMiglyol銘柄(Sasol)のMCT油がある)。あるいは、ナノ粒子ピコプラチンの懸濁液は、脂肪エステルを含むことができる。例として、オレイン酸エチルがある。懸濁液は、レシチン、すなわち、リン脂質をさらに含有することができる。例として、銘柄Phospholipon90G(American Lecithin)がある。懸濁液は、ソルビタンエステル等の糖エステル界面活性剤をさらに含有することができる。例として、ソルビタンモノ−9−オクタデカノエートPEGエーテル(Sorbate80の銘柄名下で販売されている)がある。
【0076】
本発明のある実施形態は、ナノ粒子ピコプラチンの懸濁液の調製方法を提供し、この方法は、バルク形態のピコプラチンと、MCT油または脂肪エステルとを接触させるステップと、次いで、高せん断条件下で、平均ピコプラチン粒子直径が1ミクロン以下になるまで混合するステップとを含む。また、レシチン、Sorbate型の界面活性剤または両方が、高せん断混合の間に存在してもよく、または高せん断混合に続いて、それらを添加してもよい。ある実施形態では、高せん断混合に続いて、ピコプラチンナノ粒子を固体の形態として沈殿させてもよく、または遠心分離によって沈殿させ、上清液体の一部を除去して、上清液体のいくらかを除去する前よりもピコプラチン含有量の高いナノ粒子ピコプラチンの懸濁液を提供してもよい。
【0077】
別の実施形態では、実質的に水溶性のカプセル殻を含む経口ピコプラチン製剤を提供し、この殻は、混合物中に約10〜60wt%のピコプラチンを含む実質的に乾燥状態の微細粒子材料を含む製剤を封入し、当該ピコプラチンは、実質的に水溶性、水分散性または水吸収性の炭水化物、および約5wt%までの有効量の潤滑剤(もしくは「滑沢剤」)との混合物中で、約10ミクロン未満の平均粒子直径の微粒子の物理的形態をとる。カプセル殻は好ましくは、生分解性および/または消化できる材料、すなわち、硬質または軟質のゼラチン、PVA、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等で構成される。ピコプラチンは好ましくは、1〜5ミクロンの平均粒子直径を有する微粒子である。ピコプラチン微粒子は、例えば、ジェットミルによって微粉化してもよく、もしくは微結晶性材料であってもよく、例えば、沈殿によって調製することができ、もしくは凍結乾燥工程によって形成された微粒子であってもよく、またはこれら3つの工程を任意に組み合わせてもよい。ピコプラチン微粒子は、当該製剤の粉末の実質的にすべての粒子の内部に分散させることができる。当該経口ピコプラチン製剤は、約20〜55wt%のピコプラチンを含む実質的に乾燥状態の粉末、実質的に水溶性、水分散性または水吸収性の炭水化物、および約5wt%までの有効量の潤滑剤を、実質的に水溶性のカプセル殻中に封入して含むことができ、当該粉末中、ピコプラチンは、約10ミクロン未満の平均粒子直径の微粒子である。当該製剤はまた、有効量の分散剤も含むことができる。
【0078】
別の実施形態では、経口ピコプラチン製剤を提供し、この場合、剤形が、固体の芯、および当該芯の外側表面上の連続的なコーティングを含み、当該芯は、約10〜60wt%の微粒子ピコプラチン、実質的に水溶性、水分散性または水吸収性の炭水化物を含む、約40〜80wt%の充填剤、および約5wt%までの有効量の潤滑剤、ならびに場合により分散剤を含み、当該ピコプラチンは、約10ミクロン未満の平均粒子直径の微粒子であり、当該芯および/または当該コーティングは、酸化還元活性のある金属塩を実質的に含有しない。好ましくは、コーティングおよび芯の両方が、in vivoまたはin vitro(例えば、保管中)においてピコプラチンに対して有害であり得る酸化還元活性のある金属をいかなる量でも含有しない。コーティングは、芯のための保護被覆を形成し、内容物を酸素、光および反応性の化学物質による環境による分解から保護し、かつ剤形を取り扱う人員を細胞傷害性のピコプラチンから保護する。コーティングは、硬質もしくは軟質のいずれかのゼラチン;ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;糖、例えば、スクロース;またはヒトの消費に適した任意のその他の無毒性、水溶性材料を含むことができる。約10ミクロン未満の平均粒子直径を有するピコプラチン微粒子は好ましくは、約7ミクロン未満の平均粒子直径を有し、より好ましくは、約90%の個々の微粒子が約5ミクロン未満の直径を有するような粒子サイズ分布を示す。
【0079】
種々の実施形態では、本発明は、癌を治療するための方法を提供し、この方法は、発明の経口製剤または発明の方法によって調製した経口製剤を、癌に罹患している患者に、当該患者に有益な効果をもたらすために有効な量、頻度および治療期間で投与するステップを含む。患者は、化学療法を受けたことがない患者であっても、または以前に化学療法を受けたことがある患者であってもよい。
【0080】
用量、剤形、頻度および投与期間は、主治医が、当該医師の知識および経験、患者の体重、皮膚面積、疾患状況、身体の状態、ならびに用量、投与頻度および当該製剤を患者に投与する期間の選択に関係があると医師が判断することができる任意のその他の要因に基づいて決定することができる。
【0081】
種々の実施形態では、癌は、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含めた肺癌、腎臓癌(kidney cancer)、膀胱癌、腎臓癌(renal cancer)、胃およびその他の消化管(GI)の癌、中皮腫、メラノーマ、腹膜リンパ上皮腫、子宮内膜癌、神経膠芽腫、膵臓癌、子宮頚癌、精巣癌、卵巣癌、結腸直腸癌、食道癌、子宮癌、子宮内膜癌、前立腺癌、胸腺癌、乳癌、頭頚部癌、肝臓癌、カポジ肉腫を含めた肉腫、カルチノイド腫瘍、その他の固形腫瘍、(非ホジキンリンパ腫、NHLを含めた)リンパ腫、白血病、骨に関連した癌、ならびに本明細書に引用する特許および特許出願に開示されているその他の癌であってよい。
【0082】
本発明の別の実施形態では、有効量の白金非含有抗癌剤等の第2の薬剤と併用する薬剤を調製するために使用する本発明のピコプラチン組成物。第2の薬剤は、本発明の経口製剤の実施形態の投与に併せて、患者に共投与することができる。
【0083】
抗癌薬は、非白金系抗癌剤であってもよく、または白金系抗癌剤であってもよい。分子の実体を含む第2の抗癌剤または療法の例を、上記の表1中に示している。例えば、第2の抗癌剤は、非白金系抗癌剤であってもよく、または白金系抗癌剤であってもよい。
【0084】
「非白金系抗癌剤」とは、白金を含有しない、抗癌活性および/または抗細胞増殖活性を有する化合物を意味し、例えば、化合物または薬物を、以下のクラスのうちの1つから選択することができる。
【0085】
1.カンプトテシン類似体クラス化合物、すなわち、カンプトテシン関連構造を有し、トポイソメラーゼIを阻害する、任意の腫瘍細胞増殖阻害性化合物;または、トポイソメラーゼIIを阻害するポドフィロトキシン類似体クラス化合物;またはトポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼIIの両方の阻害剤であるカンプトテシン類似体クラス化合物。カンプトテシン類似体クラスの適切な化合物として、これらに限定されないが、純粋なトポイソメラーゼI阻害剤、すなわち、トポテカン、イリノテカン、9−アミノカンプトテシン、RubitecanおよびExatecan(DX−8951f)等;トポイソメラーゼIとトポイソメラーゼIIに対する混合性阻害剤、すなわち、XR−5000およびXR−11576等が挙げられ;純粋なトポイソメラーゼII阻害剤である、ポドフィロトキシン類似体クラスの適切な化合物として、これらに限定されないが、エトポシドおよびテニポシドが挙げられる。また、そのような化合物として、これらに限定されないが、WO93/09782およびその中で引用されている参照文献(これらは、参照により本明細書に組み込まれている)に請求または記載されている任意の腫瘍細胞増殖阻害性カンプトテシン類似体も挙げられる。トポテカン(その薬学的に許容できる塩、水和物および溶媒和化合物を含む)の調製、ならびにトポテカンおよび不活性な薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む経口および非経口の薬学的組成物の調製が、米国特許第5,004,758号および欧州特許出願公開EP0,321,122に広範に記載されている。
【0086】
2.タキサン、すなわち、タキソール(パクリタキセル)またはTaxotere(登録商標)(ドセタキセル)等。
【0087】
3.上皮増殖因子受容体−クラスIチロシンキナーゼ阻害剤を含む、増殖因子受容体−タンパク質−キナーゼ阻害剤等の増殖因子受容体阻害剤、例えば、Iressa(登録商標)(ZD1839もしくはゲフィチニブ)またはTarceva(登録商標)(もしくはエルロチニブ))、および増殖因子機能のその他の阻害剤。そのような増殖因子として、例えば、血小板由来増殖因子、内皮増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子および肝細胞増殖因子が挙げられ、それらの阻害剤には、増殖因子抗体および増殖因子受容体抗体、すなわち、例えば、Avastin(登録商標)またはベバシズマブ、およびErbitux(登録商標)またはセツキシマブ等、ならびにセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤がある。また、細胞周期キナーゼの阻害剤、すなわち、CDK−2、CDK−4およびCDK−6等も挙げられる。内皮増殖因子または血管内皮増殖因子の阻害剤は、少なくとも部分的に腫瘍血管新生を阻害することによって作用することができる。
【0088】
4.5−FU、S1、UFT、カペシタビン等の代謝拮抗薬;TomudexもしくはZD9331、またはLY231514(MTA、ペメトレキセド二ナトリウム)もしくはゲムシタビン、またはメトトレキセート等の葉酸代謝拮抗薬。
【0089】
5.ビノルレビン(vinolrebine)(Navelbine)、ビンクリスチン、ビンブラスチンまたはビンデシン等のビンカアルカロイド。
【0090】
6.国際特許出願公開WO97/22596、WO97/30035、WO97/32856、WO98/13354、WO00/21955およびWO00/47212に記載されているもの等の抗血管新生性化合物。
【0091】
7.メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド(ifosphamide)等のアルキル化剤、またはカルムスチンもしくはロムスチン等のニトロソウレア。
【0092】
8.ドキソルビシン、エピリビシン(epiribicin)、イダルビシン、アムルビシンまたはDoxil(登録商標)等のアントラサイクリン。
【0093】
9.Herceptin(トラスツズマブ)等の抗HER−neu化合物。
【0094】
10.細胞分裂阻害剤、すなわち、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、ヨードキシフェン(iodoxyfene))、黄体ホルモン作用物質(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトラゾール(letrazole)、ボラゾール(vorazole)、エキセメスタン)、抗黄体ホルモン作用物質、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン)、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、酢酸ゴセレリン、ループロリド(luprolide))、テストステロン5α−ジヒドロレダクターゼ阻害剤(例えば、フィナステリド)、ならびに抗侵入剤(例えば、マリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤、およびウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体機能の阻害剤)等。
【0095】
11.有糸分裂阻害薬、天然および合成。
【0096】
12.インターロイキンおよびTNF等のサイトカイン。
【0097】
13.ワクチン。
【0098】
14.mdr2等の取込み/流出調節物質。
【0099】
15.レスキュー剤。
【0100】
16.Caアンタゴニスト。
【0101】
また、それ自体では抗癌活性を示さない増強化剤、例えば、ロイコボリンも、本発明の方法において使用することができる。
【0102】
「白金系抗癌剤」は、その他の白金系物質、すなわち、BBR3464、サトラプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ヘプタプラチン(heptaplatin)またはオキサリプラチン等を含むことができ、これらは異なる作用様式または有用なプロフィールを有し、これらもまたピコプラチンと共に用いることができる。
【0103】
これらのカテゴリーは、当技術分野で認識されているクラスの抗癌剤、またはその他のクラスの活性を示す物質もしくはアジュバントの概要として示されているが、すべてを網羅する意図はない。
【0104】
第2の抗癌剤は、有効量で、経口ピコプラチン製剤と同時に、経口ピコプラチン製剤の投与の前に、または経口ピコプラチン製剤に続いて、類似または多種多様な投与スケジュールで患者に投与することができる。ただし、第2の抗癌剤は、経口ピコプラチン製剤と共に投与した場合の、患者に有益な効果をもたらすのに十分な用量、頻度および期間で投与される。ピコプラチン経口製剤は、少なくとも1つの白金系抗癌剤または非白金系抗癌剤と共に(それの前、後、またはそれと同時に)投与することができ、これらの抗癌剤は、経口投与してもまたは非経口投与してもよい。好ましくは、ピコプラチンは、第2の抗癌剤の投与と同時に(時を同じくしてもしくは重複して)、または第2の抗癌剤の投与の前に投与する。第2の抗癌剤を、ピコプラチンの前に投与してよい。第2の抗癌剤がタキサンである場合には、好ましくは、これを、ピコプラチンの前10〜20時間未満から約5分まで、例えば、ピコプラチンの前約1時間〜15分に投与する。
【0105】
ピコプラチンと追加の抗癌剤との間の相加効果が観察される場合があり、この場合、各物質の治療効果が合計されて、有効性が比例して増加する。ピコプラチンと追加の抗癌剤との間の相乗効果が観察される場合があり、この場合、治療の組み合わさった有効性が、それら2つの物質の有効性の合計よりも大きい。
【0106】
本発明の種々の実施形態では、利用する電離放射線は、X放射線、γ放射線またはβ放射線であってよい。電離放射線の投与量は、臨床放射線療法において使用するために知られている投与量である。使用する放射線療法として、例えば、γ線、X線の使用および/または放射性同位体からの放射線の直接的な送達が挙げられる。また、マイクロ波およびUV照射等のその他の形態のDNAを損傷する要因も本発明に含まれる。すべてのこれらの要因が、広い範囲の損傷を、DNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に起こす可能性が非常に高い。例えば、X線は、1日当たり1.8〜2.0Gyの用量で、週5日、5〜6週間投与することができる。通常、45〜60Gyの範囲で用量を分割する。単一のより大きな用量、例えば、5〜10Gyを、放射線療法のコースの一部として投与してよい。放射性同位体の投与量の範囲は、広く変動し、同位体の半減期、放射される放射線の型およびエネルギー、ならびに細胞による取込み速度に依存する。
【0107】
本出願は、出願PCT/US2008/008076、2008年6月27日出願、標題「Stabilized Picoplatin Dosage From」;出願PCT/US2008/001746、2008年2月8日出願、標題「Encapsulated Picoplatin」;出願PCT/US2008/001752、2008年2月8日出願、標題「Stabilized Picoplatin Oral Dosage From」;米国特許出願第10/276,503号、2003年9月4日出願、標題「Combination Chemotherapy」;米国特許出願第11/982,841号、2007年11月5日出願、標題「Use of Picoplatin to Treat Colorectal Cancer」;米国特許出願第11/935,979号、2007年11月6日出願、標題「Use of Picoplatin to Treat Prostate Cancer」;米国特許出願第11/982,839号、2007年11月5日出願、標題「Use of Picoplatin to Treat Small Cell Lung Cancer」;WO/98/045331、1998年4月3日出願、標題「Anti−VEGF Antibodies」;WO/96/040210、1996年6月7日出願、標題「Antibody and Antibody Fragments for Inhibiting the Growth of Tumors」に関係し;上記のすべての全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0108】
本出願はまた、米国特許出願第61/027,387号、2008年2月8日出願、標題「Use of Picoplatin and Bevacizumab to Treat Colorectal Cancer」;米国特許出願第61/027,382号、2008年2月8日出願、標題「Use of Picoplatin and Cetuximab to Treat Colorectal Cancer」;米国特許出願第61/027,360号、2008年2月8日出願、標題「Picoplatin and Amrubicin to Treat Lung Cancer」;および米国特許出願第61/034,410号、2008年3月6日出願、標題「Use of Picoplatin and Liposomal Doxorubicin Hydrochloride to Treat Ovarian Cancer」にも関係し;上記のすべての全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0109】
さらに、米国特許第7,060,808号、2006年6月13日発行、標題「Humanized anti−EGF receptor monoclonal antibody」;および米国特許第4,673,668号、1987年6月16日発行、標題「Aminonaphthacene derivatives」も参照により本明細書に組み込まれている。
【0110】
これらの特許および特許出願は、とりわけ、ピコプラチンと共に投与するために有用な物質、治療方法、投与計画および組成物を開示している。
【実施例】
【0111】
(実施例1)
ピコプラチンに関するHPLC法
条件:
カラム: Luna 5u C18(2)250×4.6mm
00G 4252 E0(Phenomenex)
移動相A: 脱イオン水中(「di水」)0.2%のTFA(v/v)
移動相B: メタノール HPLCグレード
流速: 1.0mL/分
検出波長: 267nm
カラム温度:35℃
試料温度: 25℃
実行時間: 25分
試料希釈剤:生理食塩水
【0112】
【表1−2】

(実施例2)
様々なpH値におけるピコプラチンの溶解度の確定
本試験の目的は、水溶液中のピコプラチンの溶解度を確定し、ピコプラチンの溶解度に関するpHの効果を測定することであった。
【0113】
【表2】

手順:
ピコプラチン(10mg)を、合計で10個の0.5mLのEppendorfのバイアルに秤量し、その後250μLのバッファーまたは水をピコプラチンに加えた。バイアルを1分間混合した。各バイアルに関してpHを測定した。その後バイアルを、25℃で16時間、暗所において振とう器にかけ、再度pHを測定した。この溶液を、0.45uM Spin Xフィルターで遠心ろ過し、その後50mgの各ろ液を、個別のHPLCバイアルに移した。1.5mLの0.9%NaCl溶液(生理食塩水)をHPLCバイアルに加え、その後HPLC分析をすぐに実施し、各試料の濃度を確定した。
【0114】
【表3】

(実施例3)
ピコプラチンのpH安定性プロフィールの確定
本試験の目的は、水溶液中のピコプラチンの安定性に関するpHの効果を確定し、水溶液中のピコプラチンの総合安定性を評価することであった。
【0115】
【表4】

手順:
ピコプラチン(10mg(+/−0.1mg)を5mLの容量フラスコに秤量し、その後生理食塩水を5mLの容量測定線まで加え、反転させることで試料を混合し、すべての固体を溶解し、2mg/mLのストック溶液を得た。その後、HPLCバイアル中の1.125mLのpH特定バッファーまたは脱イオン水または生理食塩水に、0.375mLのストック溶液を加え、これをボルテックスに10秒かけることによって混合し、0.5mg/mLの試験溶液を得た。各pHに関して2つのバイアルを作り、これを確認した。
【0116】
その後、試料をHPLC分析機に注入し、以下の順番:pH6、pH5、pH4、pH3、pH2、脱イオン水、生理食塩水で、各バイアルを1回分析した。
【0117】
その後、各溶液に関するバイアルの各対の一方を40℃の安定なチャンバーに移し、他方を25℃のチャンバーに移した。
【0118】
注入順序は、1および3日経過後、または試料が少なくとも20%分解するまで繰り返した。
【0119】
結果:
結果を以下の表V〜XIIIに示す。
【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

【0122】
【表7】

【0123】
【表8】

【0124】
【表9】

【0125】
【表10】

【0126】
【表12】

【0127】
【表13】

(実施例4)
有機溶媒中のピコプラチンの安定性の確定
本試験の目的は、ピコプラチンの自己乳化型ビヒクルへの溶解を容易にするために使用できる溶媒を調べることであった。
【0128】
溶媒選択基準:
− ピコプラチンを>20%w/wまたは200mg/mLに溶解する
− 揮発性−真空乾燥により除去可能
− クラス3または注射可能
− ピコプラチンと化学的に相溶性
【0129】
【表14】

手順:
ピコプラチン(20+/−2mg)を、一連の2mLのEppendorfのバイアルに秤量し、100mgの各溶媒をそれぞれ加え、その後、各試料を超音波処理して混合し、ピコプラチンを溶解した。ピコプラチンが溶解しなかった場合、さらなるアリコートの100mgの溶媒を加え(最大1.5gまで)、固体が完全に溶解するまで懸濁液を超音波処理した。各試料を、その後Speedvacにおいて低熱で一晩乾燥させ、溶媒を蒸発させ、その後200mgの脱イオン水を各バイアルに加えた。上清(500mg)を、各バイアルから個々のHPLCバイアルに移し、その後、0.5mLの使用する溶媒を加えた。
【0130】
結果:
結果を以下の表XVに示す。
【0131】
【表15】

(実施例5)
自己乳化型ビヒクル中のピコプラチンの溶解度の確定
本試験の目的は、油:ピコプラチンを10%w/wまで溶解できる界面活性剤系を見出すことであった。様々な試料の組成を、表XVIに示す。
【0132】
【表16】

手順:
ピコプラチンを、標的重量の+/−5%以内に秤量し、その後溶媒(例えば、DMSO USP)を加え溶解した。その後、油、レシチン、PEG400および界面活性剤を混合し、標的重量の+/−5〜10%にし、その後エタノールを加え均一にした。2種の溶液を組み合わせ、その後、残留溶媒が乾燥重量の1%未満になるまで真空乾燥した。乾燥製剤を、顕微鏡下で結晶について調べた。結晶が存在した場合、試料を遠心分離にかけて、結晶をペレットにした。その後、上清を10mg取り除き、5gの生理食塩水を加えた。薬剤濃度を、HPLCにより分析した。
【0133】
【表17】

(実施例6)
25℃における、DMSOおよびpHバッファー中のピコプラチンの分解
本試験の目的は、DMSOおよびpHバッファーまたは水の中のピコプラチンのプロフィールを得ることであった。
【0134】
【表18】

手順:
ピコプラチン(0.5mg+/−0.01)を、合計で7つの1.5mLのHPLCのバイアルに秤量した。DMSOおよび第2の溶媒を、個別の2mLのEppendorfのバイアルに秤量し、よく混合した。その後、1mLのDMSOと溶媒との混合物を、ピコプラチンを含むHPLCバイアルに移し、ボルテックスにより10秒間混合し、確実にすべての固体を溶解した。
【0135】
その後、試料をHPLCにより分析し、この順序を4〜5回または少なくとも20%のピコプラチンが分解するまで実施した。
【0136】
(実施例7)
ピコプラチンナノ粒子の調製
本試験の目的は、ピコプラチンの、ナノメートルサイズの、好ましくは非結晶性粒子を作製することであった。
【0137】
【表19】

手順:
大豆レシチンおよび脱イオン水を秤量し、その後、高せん断ミキサーを用いて混合し、均一な分散液を得た。ピコプラチンを加え、よく混合し、粒径がレーザー光散乱によって最小になるまで、または結晶粒子が消失するまで懸濁液を微小溶液操作した。その後、このナノ懸濁液を凍結乾燥し、乾燥粉末を得た。
【0138】
結果:
結果を以下の表XXに示す。
【0139】
【表20】

粒子表面積にして約400倍の増大に相当する、直径で約10から0.5ミクロンへの有意なサイズ減少を、微小溶液操作により得た。ピコプラチンが、微小溶液操作および凍結乾燥処理の後もその完全性(純度)を維持していることが見出された。さらに結晶化度の減少も明らかであった。
【0140】
(実施例8)
NMP中のピコプラチンの安定性の確定
本試験の目的は、25℃および5℃における、N−メチルピロリドン中のピコプラチンのプロフィールを明らかにすることであった。
【0141】
【表21】

【0142】
【表22】

手順:
2mLのEppendorfのバイアルに、2.000mgのピコプラチンを秤量し、800mgのNMPを加え、混合物をボルテックスにかけてピコプラチンを溶解させ、ストック溶液を得、その200mgを、合計で4つのEppendorfのバイアルに移した。適切な量の生理食塩水を加え、ボルテックスにより約10秒間よく混合し、その後500mgをHPLCバイアルに移し、HPLC分析を実施した。その後、溶液の残りを凍結乾燥器で液体がなくなるまで乾燥させ、500mgの生理食塩水を各バイアルに加え、ボルテックスにより20秒間よく混合し、500mgをHPLCバイアルに移した。0.5mg/mLの標準溶液を用いてHPLCを実施した。
【0143】
結果:
代表的なHPLCクロマトグラムを、図9および10に示す。
【0144】
(実施例9)
ピコプラチンナノ粒子製剤の最適化
本試験の目的は、微小溶液操作により、様々な安定剤を使用してナノ粒子を調製し、安定性を比較することであった。
【0145】
【表23】

手順:
レシチンPL、ピコプラチンおよび脱イオン水を50mLのファルコンチューブに秤量し、高せん断ミキサーにより、8000RPMで2分間、すべての固体が均一に分散するまで混合した。Zチャンバーを有する微小溶液操作装置を設定し、試料を約1100ストロークで処理した。それぞれ1gを、合計で約15の3mLのガラスのバイアルに移し、これらを凍結乾燥し、「凍結乾燥物」を得た。
【0146】
凍結乾燥物の1つのバイアルを、di水を加え、よく混合することによって再生し、「凍結乾燥後」の懸濁液を形成した。
【0147】
すべての試料に関して、(T=0)において以下の試験を実施した:顕微鏡写真200倍、レーザー光散乱(LLS)、HPLC(NSで0.5mg/mLに希釈)は、凍結乾燥後の試料だけに実施。
【0148】
結果
結果を以下の表XXIVに示す。
【0149】
【表24】

【0150】
【表25】

【0151】
【表26】

(実施例10)
5%カゼインナトリウム分散液中のピコプラチンナノ粒子の第2回分の調製
本試験の目的は、先の実験から得た結果を再生することおよび水の除去にロータリーエバポレーターの使用を試みることであった。
【0152】
【表27】

手順
100gの5%カゼインナトリウム分散液および100gの脱イオン水を、Erlenmeyerフラスコに秤量し、HCl/NaOHを使用してpHを6に調整した。溶液を、窒素ガスを用いて10分間拡散し、その後39.5gの分散液を100mLのErlenmeyerフラスコに移した。500mgのピコプラチンを加え、高せん断条件下で、8000RPMで5分間混合した。500mgの試料を、Zチャンバーを有する微小溶液操作装置で2200ストローク処理し、pHを記録した。試料の残りを、40℃においてロータリーエバポレーターで2時間乾燥させ、その後、25℃および150mTorrで16時間真空乾燥させた。残留物を、微粉末に粉砕し、その後ピコプラチン標準物質と同様にTG/DTAにより水分含有量を確定した。吸湿試験を、3つのHPLCバイアル中に10mgを配置し、それらをそれぞれ25℃/60%RH、30℃/65%RHおよび40℃/75%RHに一晩さらし続けることによって実施した。HPLC分析および顕微鏡検査を実施した。
【0153】
結果
図11は、微粉化ピコプラチン粉末の熱重量/示差熱分析(TG/DTA)スキャンを示す。
【0154】
図12は、カゼインナトリウム中のF50ピコプラチンナノ粒子の熱重量/示差熱分析(TG/DTA)のスキャンを示す。
【0155】
再生懸濁液中の粒径は、非結晶性カゼイン塩の大型の凝集体が存在し、これがレーザー光散乱測定を妨げたため測定できなかった。しかし顕微鏡検査により、ミクロンサイズ範囲の結晶粒子はほとんどないことが明らかになり、ピコプラチンがナノメートルサイズ(おそらく300〜400nm未満)を維持していたことが示唆された。
【0156】
【表28】

【0157】
【表29】

図13は、ピコプラチンナノ粒子の代表的なHPLCクロマトグラムを示す。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLのピコプラチンナノ粒子および生理食塩水中の0.5mg/mLのピコプラチン標準物質である。1つの未知のピークが5.5分にある(Aquo1ではない)。
【0158】
(実施例11)
ホットメルト法を使用したピコプラチンの固体分散体
本試験の目的は、ピコプラチンが分解することなく、固体マトリックス賦形剤の溶解溶液中にピコプラチンを溶解できるかどうかを確定することであった。本試験の第2の目的は、固体マトリックス形態をDSCにより結晶化度に関して検証することである。
【0159】
【表30】

手順:
選択した賦形剤を、3mLのガラスのバイアルに秤量し、その後ホットプレートを使用してマトリックス材料の融点より約5〜10℃高い温度に温めた。ピコプラチンを加え、混合物を約100℃で1時間、またはモノステアリン酸ソルビタン試料に関しては約150℃で撹拌した。その後試料を、冷却金属ブロックの上で急速に冷却した。
【0160】
観察結果:
ピコプラチンは、溶解Gelucire50/13中およびSPAN60中に溶解したが、PEG、ポロキサマーまたはKollidonには溶解されず、ピコプラチンは脂質により可溶性であることが示唆される。Gelucire50/13ピコプラチン混合物は、完全状態のピコプラチンを含むと思われるが、SPAN60ピコプラチン混合物は、熱で茶色に変色した。
【0161】
(実施例12−1)
ホットメルト法を使用したピコプラチンの固体分散体
本試験の目的は、Gelucire50/13中のピコプラチンの溶解度を確定し、さらに2種の低MP脂質を試みることである。
【0162】
【表31】

手順
選択した賦形剤およびピコプラチン(+/−2mg)を、HPLCのガラスのバイアルに秤量し、ボルテックスにかけ混合した。混合物を60℃に加熱し、完全に溶解し、撹拌し、ピコプラチンが完全に溶解したかどうかを確定するために観察した。試料を、F59からF66に関しては、60℃において1時間加熱し、F61からF66は、さらに80℃で30分間加熱した。その後、バイアルを冷却金属ブロックの中に置くことによって、試料を直ちに冷却した。
【0163】
(実施例12−2)
Gelucire50/13中のピコプラチンの溶解度
本試験の目的は、Gelucire50/13中のピコプラチンの溶解度が10%未満であることを確定することおよびさらに1種の脂質(Compritol888 ATO)を、5%で試験することであった。
【0164】
【表32】

手順:
脂質およびピコプラチン(+/−2mg)を、HPLCのガラスのバイアルに秤量し、ボルテックスにかけ混合した。その後、Miglyol油の入ったガラスのビーカーおよびそれを100℃に設定したホットプレートの上に配置した。すべての混合物を2時間(100℃)加熱し、時々ボルテックスにかけた。加熱後、バイアルを冷却金属ブロックの中に置くことによって、すべての試料を急速に冷却した。
【0165】
観察結果:
すべてが透明に変わった。F67およびF68の溶液は、他と比べてわずかにより透明であるように思われた。試料F51からF71の結果を以下の表XXXIIIおよびXXXIVに示す。
【0166】
【表33】

【0167】
【表34】

【0168】
【表35】

図14は、Gelucire50/15中のピコプラチンの代表的なHPLCトレースを示す。
【0169】
図15は、Gelucire50/15のホットメルトにおけるピコプラチンに関する代表的DSCを示す。上から下に、Gelucire50/1、Gelucire50/15のホットメルトにおける5%のピコプラチン、ピコプラチンAPI。
【0170】
図16は、ホットメルトにおけるピコプラチンに関する代表的DSCを示す。上から下に、Gelucire50/15中の5%のピコプラチン、Gelucire50/15中の6%のピコプラチン、Compritol888ATO中の5%。
【0171】
【表36】

(実施例13)
中鎖トリグリセリド(MCT)油中の50%w/wのピコプラチン懸濁液の調製
目的:
MCT油中の50%w/wのピコプラチンナノ懸濁液を調製すること
【0172】
【表37】

手順:
ピコプラチンを50mLのファルコンチューブに秤量し、MCT油をチューブに加えた(最終ピコプラチン濃度は5%w/wであった)。その後PL90またはPolysorbate80を加え、高せん断ミキサー(3分に設定したIKA@5)を使用して混合し、その後25000psiのM110EHおよびZチャンバーを使用して微小溶液操作を行い、サブミクロン粒子を得た。チャンバーを氷で冷やす。懸濁液は、処理の間40〜50℃より低く保つ。
【0173】
試料を取り出し、平均粒径をレーザー光散乱によって確定した。懸濁液を沈殿させ、上清を取り除き、約50%w/wの懸濁液を得た。2〜8℃において保存。顕微鏡下で観察し、T0および1日目に粒径を測定。7日目にHPLC(生理食塩水で0.5mg/mLに希釈)を実施。
【0174】
結果
【0175】
【表38】

【0176】
【表39】

図17は、HPLCトレースを示し、上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLの標準物質、MCT中のF73−ピコプラチン、MCTおよびPL90G中のF74−ピコプラチン、ならびにMCTおよびPolysorbate80中のF75−ピコプラチン。
【0177】
図18は、図17のHPLCトレースを拡大した図を示す。上から下に、NS中の0.5mg/mLの標準物質、MCT中のF73−ピコプラチン、MCTおよびPL90G中のF74−ピコプラチン、ならびにMCTおよびPolysorbate80中のF75−ピコプラチン。
【0178】
(実施例14)
MCTおよび油中の50%w/wのピコプラチン懸濁液の調製
目的:
最終濃度50%w/wの油中ピコプラチン懸濁液を調製すること。異なる粘度の油中における微小溶液操作効率を比較すること。
【0179】
【表40】

手順:
ピコプラチンを50mLのファルコンチューブに秤量。重量を記録。油およびPL90を加える。重量を記録。高せん断ミキサー、IKA@5を3分間に設定して使用し、混合。
【0180】
Zチャンバーを200パス使用して微小溶液操作。パス番号および最終粒径を記録。試料を沈殿させ、上清の試料重量の90%を取り除き、50%w/wの懸濁液を得た。純度に関してHPLCを実施。2〜8℃に保存。
【0181】
結果:
F76は、大型の凝集体を形成し、微小溶液操作ができなかった。しかし、追加量のPL90(倍量)を加えた少量の試料を検査し、より小型の粒子が存在すると思われ、おそらく微小溶液操作が可能と思われる。次回の試験において試験する。
【0182】
F79は、大型の凝集体を形成し、微小溶液操作ができなかった。
【0183】
F78は、ワックス状の半固体になり、したがって高せん断または微小溶液操作のどちらによっても処理できなかった。
【0184】
F77は、微小溶液操作できた唯一の製剤であった。200パスの微小溶液操作後の粒径は、LLSによると919nmである。
【0185】
【表41】

(実施例15)
MCT油中の50%w/wのピコプラチン懸濁液の調製
目的
最終濃度50%w/wの油中ピコプラチン懸濁液を調製すること。生理食塩水を用いた微小溶液操作効率を試験すること。
【0186】
【表42】

手順:
ピコプラチンを50mLのファルコンチューブに秤量。重量を記録。油、PL90およびN.S.を加える。重量を記録。高せん断ミキサー、IKA@5を3分間に設定して、混合。Zチャンバーを200パス使用して微小溶液操作。最終粒径を記録。試料を沈殿させ、上清の試料重量の90%を取り除き、50%w/wの懸濁液を得た。純度に関してHPLCを実施。2〜8℃に保存。
【0187】
結果:
F80は、微小溶液操作が可能であった。200パスの微小溶液操作後の粒径は、LLSによると554nmである。
【0188】
【表43】

図19は、代表的HPLCクロマトグラムを示す。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLの標準物質、オレイン酸エチルおよびPL90中のF77−ピコプラチン、MCT、PL90Gおよび生理食塩水中のF80−ピコプラチン。
【0189】
図20は、拡大した代表的HPLCクロマトグラムを示す。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLの標準物質、オレイン酸エチルおよびPL90中のF77−ピコプラチン、MCT、PL90Gおよび生理食塩水中のF80−ピコプラチン。
【0190】
(実施例16)
オレイン酸エチル中の50%w/wのピコプラチン懸濁液の調製
目的
ピコプラチン:PL90の比が1:1(wt)の、最終濃度50%w/wのオレイン酸エチル中ピコプラチン懸濁液を調製すること。
【0191】
【表44】

手順:
ピコプラチンを50mLのファルコンチューブに秤量。重量を記録。油およびPL90を加える。重量を記録。高せん断ミキサー、IKA@5を3分間に設定して使用し、混合。
【0192】
Zチャンバーを2000ストローク使用して微小溶液操作。パス番号および最終粒径を記録。試料を沈殿させ、上清の21g(試料重量の90%)を取り除き、50%w/wの懸濁液を得た。純度に関してHPLCを実施。2〜8℃に保存。
【0193】
結果:
F81は、微小溶液操作が可能である。200パスの微小溶液操作後の粒径は、LLSによると586nmである。
【0194】
【表45】

図21は、代表的HPLCクロマトグラムを示す。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLのピコプラチン標準物質、PL90およびEO入り生理食塩水中の0.5mg/mLのF81−ピコプラチン。
【0195】
図22は、拡大した代表的HPLCクロマトグラムを示す。上から下に、生理食塩水中の0.5mg/mLのピコプラチン標準物質、PL90およびEO入り生理食塩水中の0.5mg/mLのF81−ピコプラチン。
【0196】
【表46】

すべての刊行物、特許および特許出願が、参照により本明細書に組み込まれている。ここまでの明細書において、本発明を、その特定の好ましい実施形態に関連させて説明してきたが、多くの詳細は、例示の目的で記載されており、当業者には、本発明には追加の実施形態が実現可能であり、本明細書に記載する詳細の特定のものは、本発明の基本的な原理から逸脱することなく大きく変化させることができることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピコプラチンの経口投与に適応させたピコプラチン製剤であって、
(a)ピコプラチンを含有する自己乳化型製剤であって、前記ピコプラチンが、ナノ粒子もしくはマイクロ粒子の形態である製剤、
(b)複数の安定化ピコプラチンナノ粒子、
(c)水分散性マトリックス材料中のピコプラチンの固体分散体、または
(d)油中のナノ粒子ピコプラチン懸濁液、
あるいはそれらの任意の組合せ
を含む製剤。
【請求項2】
ピコプラチンを含有する前記自己乳化型製剤であって、溶媒法によって調製される製剤;前記複数のピコプラチンナノ粒子であって、カゼインもしくはカゼイン塩を用いて安定化され、微小溶液操作もしくは高せん断混合法によって調製されるナノ粒子;前記水分散性マトリックス材料中のピコプラチンの固体分散体であって、ホットメルト法によって調製される分散体;または前記油中のナノ粒子ピコプラチン懸濁液であって、前記油が、中鎖トリグリセリド、もしくは脂肪エステルを含む懸濁液、あるいはそれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
ピコプラチンを含有する自己乳化型製剤を含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記自己乳化型製剤が、溶媒法によって調製される、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記自己乳化型製剤が、油と、レシチン、界面活性剤、PEGまたはそれらの任意の組合せを含む乳化剤とを含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項6】
前記自己乳化型製剤が、少なくとも約10%w/w、または少なくとも約5%w/wのピコプラチンを含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
第1の溶媒をさらに含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記第1の溶媒が、双極性非プロトン溶媒、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、モノ−もしくはジ−グリセリドのポリエチレングリコール誘導体、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記第1の溶媒が、モノ−またはジ−グリセリドのポリエチレングリコール誘導体を含む、請求項7に記載の製剤。
【請求項10】
前記油が、中鎖トリグリセリド、ヒマシ油、中鎖モノグリセリド、中鎖ジグリセリド、食用植物油、落花生油、綿実油もしくは大豆油、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項11】
前記レシチンが、高ホスファチジルコリン含有レシチン、低ホスファチジルコリン含有レシチン、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項12】
前記PEGが、PEG−400を含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項13】
前記界面活性剤が、Labrasol、Cremophor RH40、Cremophor ELP、Gelucire44/14、Polysorbate80HP、Phospholipon90GもしくはVitamin E TPGS、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項14】
ピコプラチンをDMSO以外の第1の溶媒中に溶解させて、ピコプラチン溶液を提供するステップと、次いで、油および乳化剤を添加するステップであって、前記乳化剤が、レシチン、PEGもしくは界面活性剤またはそれらの任意の組合せを含むステップと;次いで、第2の溶媒を添加して、ピコプラチン溶液、前記油および前記乳化剤を溶解させて、実質的に均一な第2の溶液を提供するステップと;次いで、前記実質的に均一な第2の溶液から、少なくとも前記第2の溶媒、および場合により前記第1の溶媒を蒸発させて、前記自己乳化型製剤を提供するステップとを含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の製剤の調製方法。
【請求項15】
前記第1の溶媒が、双極性非プロトン溶媒、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、モノ−もしくはジ−グリセリドのポリエチレングリコール誘導体、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の溶媒が、モノ−またはジ−グリセリドのポリエチレングリコール誘導体を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の溶媒が、エタノール等の低級アルカノールを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記油が、中鎖トリグリセリド、ヒマシ油、中鎖モノグリセリド、中鎖ジグリセリド、食用植物油、落花生油、綿実油もしくは大豆油、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記レシチンが、高ホスファチジルコリン含有レシチン、低ホスファチジルコリン含有レシチン、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記PEGが、PEG−400を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記界面活性剤が、Labrasol、Cremophor RH40、Cremophor ELP、Gelucire44/14、Gelucire50/13、Polysorbate80HPもしくはVitamin E TPGS、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記ピコプラチンが、前記自己乳化型製剤の少なくとも約10%w/w、または少なくとも約5%w/wを構成する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
癌治療を必要とする患者の癌を治療する方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の自己乳化型製剤、または請求項14から22のいずれか一項に記載の方法によって調製される製剤を、前記患者に有益な効果をもたらすのに十分な用量、頻度および期間で前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項24】
複数の安定化ピコプラチンナノ粒子を含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項25】
前記ピコプラチンナノ粒子が、カゼイン、カゼイン塩もしくはレシチン、またはそれらの任意の組合せを用いて安定化される、請求項24に記載の製剤。
【請求項26】
前記ピコプラチンナノ粒子が、高せん断混合法または微小溶液操作を含む工程によって調製される、請求項24に記載の製剤。
【請求項27】
乾燥重量に基づいて、少なくとも約10%w/wの前記ピコプラチンを含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
前記ピコプラチンナノ粒子が、約1ミクロン未満の平均粒子直径を有する、請求項24から26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項29】
前記ピコプラチンナノ粒子が、約0.5ミクロン未満の平均粒子直径を有する、請求項24から26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項30】
前記ピコプラチンナノ粒子が、約0.25ミクロン未満の平均粒子直径を有する、請求項24から26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項31】
前記ピコプラチンナノ粒子が、約0.15ミクロン未満の平均粒子直径を有する、請求項24から26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
安定化剤と水性媒体とを、高せん断条件もしくは微小溶液操作条件、またはその両方の下で混合して、均一な分散液を得るステップと、次いで、固体のピコプラチンを添加するステップと、次いで、前記ピコプラチンの平均粒子サイズが約1ミクロン未満になるまで、もしくは結晶粒子が実質的に存在しなくなるまで、またはその両方の状態になるまで混合して、安定化ピコプラチンナノ粒子の懸濁液を提供するステップとを含む、請求項24に記載の製剤の調製方法。
【請求項33】
前記安定化剤が、カゼインもしくはカゼイン塩、またはレシチンを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記カゼイン塩が、カゼインナトリウムを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記懸濁液を凍結乾燥して、前記安定化ピコプラチンナノ粒子の実質的に乾燥状態の粉末を得るステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記ピコプラチンが、少なくとも約10%w/wの前記実質的に乾燥状態の粉末を構成する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
癌治療を必要とする患者の癌を治療する方法であって、請求項1、2もしくは24から31のいずれか一項に記載の安定化ピコプラチンナノ粒子を含む製剤、または請求項32から36のいずれか一項に記載の方法によって調製される製剤を、前記患者に有益な効果をもたらすのに十分な用量、頻度および期間で前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項38】
水分散性マトリックス材料中のピコプラチンの固体分散体を含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項39】
前記ピコプラチンを、前記水分散性マトリックス材料の融解物中に分散させ、次いで、冷却し、凝固させることを含む工程によって調製される、請求項38に記載の製剤。
【請求項40】
少なくとも約10%w/wのピコプラチンを含む、請求項38または39に記載の製剤。
【請求項41】
前記水分散性マトリックス材料が、Gelucire50/13、Gelucire44/14、Poloxamer188、SPAN60、PEG−8000、Kollidon K−90、Vitamin E TPGSもしくはCompritol888、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項38または39に記載の製剤。
【請求項42】
前記マトリックス材料が、少なくとも約20℃、または少なくとも約37℃の温度まで固体である、請求項38または39に記載の製剤。
【請求項43】
前記水分散性マトリックス材料の前記融解物が、約40℃〜約160℃の温度にある、請求項39に記載の製剤。
【請求項44】
前記ピコプラチンを前記融解物中に分散させる前記ステップが、前記ピコプラチンを前記融解物中に溶解させることを含む、請求項39に記載の製剤。
【請求項45】
前記マトリックス材料が、Gelucire50/13、Gelucire44/14、Compritol888またはVitamin E TPGSを含む、請求項44に記載の製剤。
【請求項46】
水分散性マトリックス材料を高温で融解させるステップと、次いで、固体のピコプラチンを融解物中に分散させて、分散させたピコプラチン組成物を提供するステップと、次いで、前記組成物を冷却して、前記ピコプラチンの固体分散体を提供するステップとを含む、請求項38または39に記載の製剤の調製方法。
【請求項47】
前記ピコプラチンを前記マトリックス中に分散させる前記ステップが、前記ピコプラチンを前記マトリックス中に溶解させることを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記製剤が、少なくとも約10%w/wのピコプラチンを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記高温が、約40℃〜約160℃である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
分散が、ボルテックスによる混合を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物を前記冷却することが、前記組成物を、室温付近またはヒトの体温付近まで冷却することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
癌治療を必要とする患者の癌を治療する方法であって、請求項1、2もしくは38から45のいずれか一項に記載の水分散性マトリックス材料中のピコプラチンの固体分散体、または請求項46から51のいずれか一項に記載の方法によって調製される製剤を、前記患者に有益な効果をもたらすのに十分な用量、頻度および期間で前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項53】
中鎖トリグリセリド中または脂肪エステル中のピコプラチンのナノ粒子懸濁液を含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項54】
約20%〜約70%w/wのピコプラチンを含む、請求項53に記載の製剤。
【請求項55】
前記ピコプラチンの、前記中鎖トリグリセリドまたは前記脂肪エステル中での高せん断混合法による微小溶液操作を含む工程によって調製される、請求項53に記載の製剤。
【請求項56】
前記中鎖トリグリセリドが、カプリン酸、カプリル酸、またはそれらの組合せのトリグリセリドである、請求項53に記載の製剤。
【請求項57】
前記中鎖トリグリセリドが、Miglyol MCTである、請求項53に記載の製剤。
【請求項58】
レシチンをさらに含む、請求項53に記載の製剤。
【請求項59】
前記レシチンが、Phospholipon90Gである、請求項58に記載の製剤。
【請求項60】
ソルビタンモノ−9−オクタデカノエートPEGエーテルをさらに含む、請求項53に記載の製剤。
【請求項61】
Polysorbate80をさらに含む、請求項53に記載の製剤。
【請求項62】
固体のピコプラチンと中鎖トリグリセリドまたは脂肪エステルを合わせるステップと、次いで、高せん断混合を含む条件下で、前記ピコプラチンを前記中鎖トリグリセリドまたは脂肪エステル中に分散させて、前記ナノ粒子分散液を提供するステップとを含み、前記ピコプラチンが、前記中鎖トリグリセリドまたは脂肪エステルの約20%〜約70%w/wを構成する、請求項53に記載の製剤の調製方法。
【請求項63】
レシチンをさらに合わせるステップを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
ソルビタンモノ−9−オクタデカノエートPEGエーテルをさらに合わせるステップを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
高せん断混合後に、前記分散液をある期間沈殿させ、次いで、上清液体を除去して、ピコプラチンの濃縮されたナノ粒子分散液を提供するステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
癌治療を必要とする患者の癌を治療する方法であって、請求項53から61のいずれか一項に記載の水分散性マトリックス材料中のピコプラチンの固体分散体、または請求項62から65のいずれか一項に記載の方法によって調製される製剤を、前記患者に有益な効果をもたらすのに十分な用量、頻度および期間で前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項67】
前記癌が、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含めた肺癌、腎臓癌、膀胱癌、腎臓癌、胃およびその他の消化管(GI)の癌、中皮腫、メラノーマ、腹膜リンパ上皮腫、子宮内膜癌、神経膠芽腫、膵臓癌、子宮頚癌、精巣癌、卵巣癌、結腸直腸癌、食道癌、子宮癌、子宮内膜癌、前立腺癌、胸腺癌、乳癌、頭頚部癌、肝臓癌、カポジ肉腫を含めた肉腫、カルチノイド腫瘍、その他の固形腫瘍、(非ホジキンリンパ腫、NHLを含めた)リンパ腫、白血病、または骨に関連した癌である、請求項23、37、52または66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
有効量の第2の抗癌剤の前記患者への投与をさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記第2の抗癌剤が、タキサン、チロシンキナーゼおよび/もしくは増殖因子受容体阻害剤、セファロタキシン類似体、代謝拮抗薬、タンパク質キナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン類似体、増殖因子阻害剤、細胞周期キナーゼの阻害剤、細胞分裂阻害剤、アルキル化剤または放射線、あるいはそれらの組合せを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
癌治療を必要とする患者の癌の治療における、請求項1、2、3、24、38もしくは53のいずれか一項に記載の製剤、または請求項14、32、46もしくは62に記載の方法のいずれか1つによって調製される製剤の使用。
【請求項71】
前記癌が、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含めた肺癌、腎臓癌、膀胱癌、腎臓癌、胃およびその他の消化管(GI)の癌、中皮腫、メラノーマ、腹膜リンパ上皮腫、子宮内膜癌、神経膠芽腫、膵臓癌、子宮頚癌、精巣癌、卵巣癌、結腸直腸癌、食道癌、子宮癌、子宮内膜癌、前立腺癌、胸腺癌、乳癌、頭頚部癌、肝臓癌、カポジ肉腫を含めた肉腫、カルチノイド腫瘍、その他の固形腫瘍、(非ホジキンリンパ腫、NHLを含めた)リンパ腫、白血病、または骨に関連した癌を含む、請求項70に記載の使用。
【請求項72】
前記患者が、第2の抗癌剤を投与される、請求項70または71に記載の使用。
【請求項73】
前記第2の抗癌剤が、タキサン、チロシンキナーゼおよび/もしくは増殖因子受容体阻害剤、セファロタキシン類似体、代謝拮抗薬、タンパク質キナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン類似体、増殖因子阻害剤、細胞周期キナーゼの阻害剤、細胞分裂阻害剤、アルキル化剤または放射線、あるいはそれらの組合せを含む、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
癌治療を必要とする患者の癌の治療において、有効量の第2の抗癌剤と組み合わせて使用するための、ピコプラチンおよび担体を含む経口製剤であって、
(a)ピコプラチンを含有する自己乳化型製剤であって、前記ピコプラチンが、ナノ粒子またはマイクロ粒子の形態である製剤、
(b)複数の安定化ピコプラチンナノ粒子、
(c)水分散性マトリックス材料中のピコプラチンの固体分散体、
(d)油中のナノ粒子ピコプラチン懸濁液、ならびに
(e)実質的に水溶性のカプセル殻であって、約10〜60wt%の微粒子ピコプラチン、実質的に水溶性、水分散性または水吸収性の炭水化物、および約5wt%までの有効量の潤滑剤を含む実質的に乾燥状態の粉末を含む製剤を封入するカプセル殻
からなる群から選択される製剤。
【請求項75】
前記癌が、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含めた肺癌、腎臓癌、膀胱癌、腎臓癌、胃およびその他の消化管(GI)の癌、中皮腫、メラノーマ、腹膜リンパ上皮腫、子宮内膜癌、神経膠芽腫、膵臓癌、子宮頚癌、精巣癌、卵巣癌、結腸直腸癌、食道癌、子宮癌、子宮内膜癌、前立腺癌、胸腺癌、乳癌、頭頚部癌、肝臓癌、カポジ肉腫を含めた肉腫、カルチノイド腫瘍、その他の固形腫瘍、(非ホジキンリンパ腫、NHLを含めた)リンパ腫、白血病、または骨に関連した癌を含む、請求項74に記載の経口製剤。
【請求項76】
前記第2の抗癌剤が、タキサン、増殖因子受容体阻害剤、セファロタキシン類似体、代謝拮抗薬、タンパク質キナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン類似体、アルキル化剤、もしくは放射線、またはそれらの組合せを含む、請求項74または75に記載の経口製剤。
【請求項77】
前記第2の抗癌剤が、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ベバシズマブ、セツキシマブ、エルロチニブ、スニチニブ、ゲムシタビン、ロイコボリンと併用するもしくは併用しない5−フルオロウラシル、ビノレルビン、アムルビシン、ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン、Doxil(登録商標)、放射線、またはそれらの組合せを含む、請求項74または75に記載の経口製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2010−533714(P2010−533714A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517010(P2010−517010)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/008669
【国際公開番号】WO2009/011861
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(398003681)ポニアード ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】