説明

ピストンリングの合口位置のずれ検出方法、及びずれ検出装置

【課題】簡易かつ安価な手法により十分な検出精度を実現するピストンリングの合口位置のずれ検出方法、及びずれ検出装置を提供する。
【解決手段】ピストンリングの合口位置のずれ検出方法は、所定圧力のエア供給源から供給されたエアを、ボア(13)に対して固定されたエアノズル(16a)からピストンリングRの合口に向かって噴射したときの、エアノズル(16a)からのエアの流出量の変化を検出するステップと、そのとき検出した流出量の変化に応じてピストンリングRの合口位置のずれを検出するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンリングの合口位置のずれを検出するためのずれ検出方法、及びずれ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なピストンリングの面圧分布測定は、次のような手順で行なわれる。(a)測定用ボアの内部に配置されたピストンリングに対して一箇所の面圧測定を実施し、(b)測定用ボアの直上部に位置する回転用ボアの内部にピストンリングを移送し、(c)回転用ボアをその内部のピストンリングとともに所定角度だけ回転させ、(d)測定用ボアの内部に再度ピストンリングを移送する。
【0003】
このような手順をピストンリングがその中心軸回りに360°回転するまで繰り返すことでピストリング面圧分布を測定することができる。しかし、上記の手法では、ボア間の移送中にピストンリングがその中心軸回りに僅かに回転することで角度ずれが生じてしまい、有効な面圧分布を得ることができない虞がある。そのため、個々の面圧測定(上記の手順(a))に先立ち、ピストンリングの合口の位置がずれていないこと確認しておく必要がある。
【0004】
従来、ピストンリングの合口位置のずれを検出するためには、合口部にレーザ光線を照射したときの光線通過量をセンサで測定したり、ピストンリングの撮像をディジタル処理して合口を認識したりする方法が採用されている。
【0005】
これに関連して、以下の特許文献1には、合口部にレーザ光線を照射したときに該合口部を通過する光量に応じて該合口幅を算出する技術が提案されている。また、その他の関連する公知技術を開示する文献として以下の特許文献2〜4を挙げる。
【0006】
しかし、一般にレーザ光線を用いた検出方法は、レーザセンサ機器が高価であることや、レーザ光線の対人危険に対する保安対策が必要になること等から費用面で不利である。また、当該方法については、装置全体が大型化するため装置の設置場所が制限されるという問題点も指摘されている。
【0007】
また、撮像による合口を認識する方法については、撮像機器と画像処理機器が一般的に高価であるほか、撮影に必要な光源から発生する熱がワークや冶具等を熱膨張させて測定結果に悪影響を及ぼすという問題点が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−163569号公報
【特許文献2】特開平1−109229号公報
【特許文献3】特開平5−203439号公報
【特許文献4】特開平6−159508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、簡易かつ安価な手法により十分な検出精度を実現するピストンリングの合口位置のずれ検出方法、及びずれ検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るずれ検出方法は、ボアに装着されたピストンリングの合口位置のずれを検出するための検出方法であって、以下のようなステップ(1)(2)を含む。ここで、前記ステップ(1)は、所定圧力のエア供給源から供給されたエアを、前記ボアに対して固定されたエアノズルから前記ピストンリングの合口に向かって噴射したときの、前記エアノズルからのエアの流出量の変化を検出するステップであり、前記ステップ(2)は、上記ステップ(1)で検出した前記流出量の変化に応じて前記ピストンリングの合口位置のずれを検出するステップである。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係るずれ検出装置は、ボアに装着されたピストンリングの合口位置のずれを検出するための検出装置であって、以下のようなエアノズル、固定手段、及び検出手段を有する。ここで、前記エアノズルは、所定圧力のエア供給源から供給されたエアを前記ピストンリングの合口に向かって噴射し、前記固定手段は、前記エアノズルを前記ボアに対して固定し、前記検出手段は、前記ピストンリングの合口に向かって噴射されるエアの前記エアノズルからの流出量の変化を検出し、検出した前記流出量の変化に応じて前記ピストンリングの合口位置のずれを検出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るずれ検出方法は、ピストンリングの合口に向かって噴射されたエアのエアノズルからの流出量の変化を検出することにより合口位置のずれを検出するものである。よって、本発明によれば、簡易かつ安価な手法により、十分な精度でピストンリングの合口位置のずれ検出を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る面圧測定装置の全体構成を示す上面図である。
【図2】図1中のII−II面に沿った断面図である。
【図3】本実施形態に係る面圧測定装置の主要部の構成を示す上面図である。
【図4】図3中のIV−IV面に沿った断面図である。
【図5】本実施形態に係るずれ検出装置の全体構成を示す概略図である。
【図6】本実施形態に係るずれ検出装置のエアノズルの構成を示す上面図である。
【図7】図6中のX部を拡大して示す拡大図である。
【図8】本実施形態に係るずれ検出装置の固定手段の構成を示す上面図である。
【図9】図8中のIX−IX面に沿った断面図である。
【図10】図9のY部を拡大して示す拡大図である。
【図11】本実施形態に係るずれ検出装置の表示装置の構成を示す概略図である。
【図12】本実施形態に係る面圧分布測定システムの動作の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
<面圧測定装置>
先ず、本発明の一実施形態に係るピストンリング合口位置のずれ検出装置が適用されたピストンリングの面圧測定装置1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るピストンリングの面圧測定装置1の全体構成を示す上面図であり、図2は図1中のII−II面に沿った断面図である。また、図3は、図1の面圧測定装置1の主要部を拡大して示す上面図であり、図4は図3中のIV−IV面に沿った断面図である。
【0016】
各図に示されるように、面圧測定装置1は、面圧測定時に測定対象のピストンリングRが配置される測定用ボア11、測定用ボア11に配置された面圧測定センサ12、測定用ボア11の直上方に配置される回転用ボア13、ピストンリングRを昇降させることによりこれを両ボア11,13間で移送するための昇降機構14、回転用ボア13をその中心軸回りに回転させるための回転機構15、回転用ボア13内に配置されたピストンリングRの合口位置のずれを検出するためのずれ検出装置16を備えている。以下、これらの構成要素について詳細に説明する。
【0017】
測定用ボア11は、図2及び図4のように、その内径が測定対象のピストンリングRが適用されるシリンダボアの内径と等しい円筒形状を有している。そのため、測定用ボア11内に配置されたピストンリングRは、シリンダボア内に配置されたときと同様の面圧を測定用ボア11の内壁に作用させる。これにより、測定用ボア11内では、ピストンリングRがシリンダボア内に装着された状態が再現される。
【0018】
面圧測定センサ12は、一般的な接触式圧力センサであり、その先端に位置する圧力感知部により測定用ボア11内のピストンリングRの面圧を測定する。図4のように、面圧測定センサ12の圧力感知部は、測定用ボア11の周壁に穿設された通孔の内部に配置される。通常、1つの面圧測定装置1には1つの面圧測定センサ12が設けられるが、複数の面圧測定センサ12が設けられてもよい。
【0019】
回転用ボア13は、図3及び図4のように、測定用ボア12と内径が等しい円筒形状を有している。測定用ボア11内で面圧測定センサ12による一箇所の面圧測定が完了したら、測定対象のピストンリングRは昇降機構14により移送されてこの回転用ボア13内に配置される。
【0020】
昇降機構14は、図2及び図4のように、測定対象のピストンリングRを保持するための治具14a、ピストンリングRの装着/取外しのために治具14aを面圧測定装置1の内部と外部の間で昇降させる粗動昇降機構部14b、及び治具14aに装着されたピストンリングRを測定用ボア11と回転用ボア13の間で繰り返し昇降させる微動昇降機構部14cを備えている。ここで、粗動昇降機構部14b及び微動昇降機構部14bはいずれもエアシリンダ等の一般的な駆動機構である。
【0021】
回転機構15は、図1のように、回転用ボア13の外接するように配置され、モータ等の不図示の動力源により回転することで回転用ボア13を従動回転させる回転ローラ15a、及び回転ローラ15aに従動回転する回転用ボア13の回転位置を検出する回転位置検出エンコーダ15bを備えている。このような構成により、回転機構15は、回転用ボア13をその内部に配置されたピストンリングRとともに所定角度だけ回転させることができる。このときの回転角度は回転位置検出エンコーダ15bにより精密に制御される。なお、一般的な面圧分布測定におけるピストンリングの1回あたりの回転角度は5°〜10°程度である。
【0022】
ずれ検出装置16は、所定圧力のエア供給源から供給されたエアをピストンリングRの合口に向かって噴射するためのエアノズル16a(後述の図5、図6参照)、エアノズル16aを回転用ボア13に対して固定するための固定手段16b(後述の図8〜図10参照)、及びエアノズル16aから噴射されたエアの流出量の変化を検出することにより合口位置のずれを検出する検出手段16c(後述の図5参照)、及び検出手段16cによる検出結果を視覚的に表示するための表示手段16d(後述の図5、図11参照)を備えている。以下、図5〜図11を参照し、ずれ検出装置16の構成についてさらに詳細に説明する。
【0023】
<ずれ検出装置>
図5は、本実施形態に係るピストンリングの合口位置のずれ検出装置16の全体構成を示す概略図である。図5のように、ずれ検出装置16は、エア供給源からエアノズル16aに向かう流路上に検出手段16cが介在し、検出手段16cと表示手段16dが電気信号をやり取りするためのケーブルを介して接続された構成を有している。
【0024】
図6は、エアノズル16aの構成について説明するための上面図であり、図7は、図6中のX部を拡大して示す拡大図である。なお、図7中の(A)(B)は、ピストンリングRの合口位置がずれていない状態、及びピストンリングRの合口位置がずれている状態をそれぞれ表す。
【0025】
図6のように、エアノズル16aは、回転用ボアの周壁に穿設された通孔内に配置される。この通孔の内径は、エアノズル16aの当該通孔内での配置が微調整可能となるようにエアノズル16aの外径よりも若干大きくされる。ここで、図7(A)のように、ピストンリングRの合口位置とエアノズル16aの先端の噴射口の位置が一致している場合(すなわち、合口位置がずれていない場合)、エアノズル16aからのエア流出抵抗は小さいので、エアノズル16aからのエア流出量は大きくなる。他方、図7(B)のように、ピストンリングRの合口位置とエアノズル16aの噴射口の位置が一致していない場合(すなわち、合口位置がずれている場合)、エアノズル16aからのエア流出抵抗は大きくなるので、エアノズル16aからのエア流出量は小さくなる。
【0026】
図8は、固定手段16bの構成について説明するための上面図であり、図9は、図8中のIX−IX面に沿った断面図である。なお、各図中の(A)(B)は、後述の位置調整レバー16b3による位置調整前の状態、及び位置調整後の状態をそれぞれ表す。また、図10は、図9におけるY部を拡大して示す拡大図である。
【0027】
図8〜図10に示されるように、固定手段16bは、その中央部にエアノズル16aが貫通固定されており、回転用ボアの外壁に沿って曲げられた略プレート形状のノズル固定プレート16b1、ノズル固定プレート16b1を回転用ボア13の外壁に対して付勢するバネ16b2、及びノズル固定プレート16b3の一端に突設されたノズル位置調整レバー16b3を備えている。
【0028】
ここで、ノズル固定プレート16b1は、バネ16b2の付勢力により回転用ボアに対して固定されるが、その固定位置はノズル位置調整レバー16b3を介したユーザの操作により微調整されることができる。つまり、ユーザは位置調整レバー16b3をつまんでノズル固定プレート16b1を回転用ボア13の外壁に沿って摺動させることにより、回転用ボア13に対するエアノズル16aの噴射口の位置を微調整することができる。
【0029】
再び図5を参照して、検出手段16cの構成について説明する。検出手段16cは、エアノズル16aからのエア流出量の変化を検知することにより合口位置のずれを検出する。図5のように、検出手段16cは、差圧センサ16c1、及び流量調節弁16c2を備えている。ここで、差圧センサ16c1は、一般的な差圧センサであり、エア供給源から大気開放される第1流路P1内の圧力(p1)とエアノズル16aに向かう第2流路P2内の圧力(p2)の差圧を検出する。また、流量調節弁16c2は、第1流路P1の差圧センサ16c1よりも上流側に設けられており、第1流路P1を経由して大気開放されるエアの流量を調整する。
【0030】
以下、上記構成を有する検出手段16cによりエアノズル16aからのエア流出量の変化を検知する方法について説明する。
【0031】
先ず、ノズル位置調整レバー16b3を操作することにより回転用ボア13内のピストンリングの合口位置とエアノズル16aの噴射口位置を一致させる。これによりエアノズル16aの噴射口におけるエア流出抵抗が極小化される。続いて、流量調節弁16c2を調節することにより、以下の関係式(i)が成立するように各流路内の圧力p1,p2の圧力を設定する。
【0032】
p1−p2≦0 (i)
ここで、ピストンリングRの移送の結果、合口位置のずれが発生しなかった場合、エアノズル16aの噴射口におけるエア流出抵抗は変化しないので、エアノズル16aからのエア流出量も変化しない。そのため、上記関係式(i)が成立する状態が維持される。
【0033】
他方、ピストンリングRの移送の結果、合口位置のずれが発生した場合、エアノズル16aの噴射口におけるエア流出抵抗は増加するため、エアノズル16aからのエア流出量は減少する。その結果、上記関係式(i)は成立しなくなり、以下の関係式(ii)が成立するようになる。
【0034】
p1−p2>0 (ii)
以上のように、本実施形態に係る検出手段16cは、差圧センサ16c1を用いて第1流路P1と第2流路P2の差圧(p1−p2)の変化を検出することにより、エアノズル16aの噴射口におけるエア流出抵抗の変化、すなわちエアノズル16aからのエア流出量の変化を検出することができる。
【0035】
図11は、表示手段16dの一例を示す概略図である。本実施形態に係る表示装置16dは、一般的なインジケータであり、電源ボタンを含む各種操作ボタンに加えて、差圧センサ16c1により取得した差圧の測定値を表示するためのデジタルメータ、及び差圧レベルの変化を多段階(例えば、10段階)表示するためのLEDランプを備えている。このLEDランプは、高レベル(HIGH)側の5つのランプが赤色発光し、低レベル(LOW)側の5つのランプが緑色発光する。そこで、例えば、(i)の関係が成立するときには低レベル側のランプ(緑色)のみが点灯し、(ii)の関係が成立するときに高レベル側のランプ(赤色)のみが点灯するように予め表示装置16dを設定しておけば、ユーザは点灯中のLEDランプの色の変化を観察するだけでピストンリングRの合口位置のずれが生じたことを判別することができる。
【0036】
以下、上述した本実施形態に係る合口位置のずれ検出装置16の作用効果について説明する。
【0037】
本実施形態に係るずれ検出装置16は、ピストンリングRの合口に向かって噴射されたエアのエアノズル16aからの流出量の変化を検出することにより、ピストンリングRの合口位置のずれを検出するものである。そのため、ずれ検出装置16によれば、簡易且つ安価な手法により、十分な検出精度でピストンリングRの合口位置のずれ検出を実施することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る検出装置16は、第1流路P1と第2流路P2の間の差圧(p1−p2)の変化を検出することにより、エアノズル16aからのエア流出量の変化を検出する。そのため、検出装置16は、エアノズル16aからのエア流出量の変化の検出に、差圧センサ16c1を利用することができる。ここで、一般的に差圧センサは検出精度が高いので、ずれ検出装置16は、ピストンリングRの合口位置のずれをより高精度に検出することができる。
【0039】
また、本実施形態に係るずれ検出装置16は、回転ボア13に固定されたエアノズル16aの位置を微調整するためのノズル位置調整レバー16b3を備えている。そのため、ずれ検出装置16によれば、エアノズル16aの噴射口位置をピストンリングRの合口位置に一致させるための微調整が容易になり、ユーザにとって利便性が向上する。
【0040】
また、本実施形態に係るずれ検出装置16は、ずれ検出手段16cによる検出結果を視覚的に表示可能な表示手段16dを備えているので、ユーザは合口位置のずれが生じたことを容易に判別することができる。特に、表示手段16dとして、LEDランプを備えたインジケータを用いることで、ずれ検出手段16cが検出した合口位置のずれをLEDランプの点灯色の変化により表示することが可能になるので、ユーザにとっての利便性がさらに向上する。
【0041】
<面圧分布測定システム>
次に、上記の面圧測定装置1が適用された面圧分布測定システムについて説明する。本実施形態によれば、上記の面圧測定装置1と、その各部の動作を制御するための制御装置を組み合わせることで、ピストンリングの外周にわたる面圧分布を自動的に測定可能な面圧分布測定システムを構成することができる。
【0042】
以下、本実施形態に係る面圧分布測定システムによる面圧分布測定処理の手順についてフローチャートを参照しながら説明する。なお、上記の制御装置は、一般的なPCであり、面圧測定装置1の各部の制御のみならず、各種センサにより取得したデータの解析を含む各種動作を実行する。
【0043】
図12は、本実施形態に係る面圧分布測定システム(以下、単に「測定システム」ともいう)による面圧分布測定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
【0044】
先ず、測定システムは、測定対象のピストンリングRが装着されるまで待機する(S101のNO)。ここで、ピストンリングが装着された状態とは、図8(B)に示されるように回転用ボア13内に、ピストリングRの合口位置とエアノズル16aの噴射口位置が一致するようにピストンリングRが配置された状態である。そして、ピストンリングRが装着されたら(S101のYES)、測定システムは、昇降機構14によりピストンリングを測定用ボア11内に移送する。
【0045】
続いて、測定システムは、面圧測定センサ12により、測定用ボア11内に配置されたピストンリングRに対する面圧測定を実行する(S103)。このとき、面圧測定センサ12により取得された面圧の測定値は、制御装置の記憶部に格納される。
【0046】
続いて、測定システムは、制御装置により、全測定箇所に対する面圧測定が完了したか否かを判定する(S104)。より具体的に、制御装置は、回転機構15による回転用ボア13の累計回転角度が360°に達したか否かを判定する。
【0047】
ここで、全測定箇所に対する面圧測定が完了した場合(S104のYES)、測定システムは、制御装置により、記憶部に格納された面圧測定値に基づき、ピストンリングRの面圧分布を表すグラフを作成し、それをディスプレイ等に表示する(S105)。S105で作成されるグラフは、例えば、ピストンリングRの合口位置を角度0°としたときの各測定箇所の角度位置と、各測定箇所における面圧測定値の関係をプロットした円周グラフや直交グラフ等である。
【0048】
他方、全測定箇所に対する面圧測定が完了していない場合(S104のNO)、測定システムは、昇降機構14により、測定用ボア11内のピストンリングを回転用ボア13内に移送する(S106)。そして、測定システムは、ずれ検出装置16により、回転用ボア13内に配置されたピストンリングに対して合口位置のずれ検出を実施する(S107)。このときの具体的な手順は前述の通りである。そして、測定システムは、S107での検出結果に応じて、以下のように処理を分岐する。
【0049】
ここで、S107で合口位置のずれが検出された場合(S108のYES)、測定システムは、そのまま処理を続行しても有効な面圧分布の測定結果を得ることができないので、前述のようなグラフを作成・表示することなく、制御装置のディスプレイ等に所定のエラーメッセージを表示した後に(S110)、一連の処理を中止する(エンド)。
【0050】
他方、S107で合口位置のずれが検出されなかった場合(S107のNO)、回転機構14により、内部にピストンリングが配置された回転用ボア13を所定角度(例えば、10°)だけ回転させてから(S109)、前述のS102に戻り、全測定箇所に対する面圧測定が完了するまで前述の処理を繰り返す。
【0051】
以下、上述した本実施形態に係るピストンリングの面圧分布測定システムの作用効果について説明する。本実施形態に係る面圧分布測定システムは、前述したずれ検出装置16の作用効果に加えて、以下のような作用効果を奏する。
【0052】
本実施形態に係る面圧分布測定システムは、ピストンリングの面圧分布の自動測定処理において、ずれ検出装置16により合口位置の検出した場合には、ユーザに対してエラーメッセージを表示するとともに自動的に測定を中止する。そのため、本実施形態に係る面圧分布測定システムによれば、常に有効なピストンリング面圧分布の測定結果を得ることができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。例えば、上述した実施形態に係るずれ検出装置16及びそれが適用された面圧測定装置1は、主に、ピストンリング製造現場における品質確認のために利用されるが、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、本実施形態に係るずれ検出装置16及びそれが適用された面圧測定装置1は、ピストンリングを利用する自動車用エンジン等の製造現場におけるピストンリングの組付け装置等の動作確認を含む様々な目的で利用されることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 面圧測定装置、
11 測定用ボア、
12 面圧測定センサ、
13 回転用ボア、
14 昇降機構、
15 回転機構、
16 ずれ検出装置、
16a エアノズル、
16b 固定手段、
16b1 固定プレート、
16b2 バネ、
16b3 ノズル位置調整レバー、
16c ずれ検出手段、
16d 表示手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボアに装着されたピストンリングの合口位置のずれを検出するための検出方法であって、
所定圧力のエア供給源から供給されたエアを、前記ボアに対して固定されたエアノズルから前記ピストンリングの合口に向かって噴射したときの、前記エアノズルからのエアの流出量の変化を検出するステップ(1)と
前記ステップ(1)で検出した前記流出量の変化に応じて前記ピストンリングの合口位置のずれを検出するステップ(2)と、を含む検出方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)では、前記エア供給源から大気開放される流路内の圧力と、前記エア供給源から前記エアノズルに向かう流路内の圧力の差圧の変化を検出することにより、前記流出量の変化を検出することを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)では、差圧センサを用いて前記差圧の変化を検出することを特徴とする請求項2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記ステップ(2)での検出結果を表示装置に表示させるステップ(3)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の検出方法。
【請求項5】
前記表示装置は、前記ステップ(1)で検出した前記流出量の変化を表示可能なレベルインジケータを含むことを特徴とする請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
前記検出方法は、前記ピストンリングの面圧分布の自動測定を行なうための測定システムにおいて実行され、
前記測定システムは、前記ステップ(2)で合口位置のずれが検出されたときに、前記ピストンリングの面圧分布の自動測定を中止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載された検出方法。
【請求項7】
ボアに装着されたピストンリングの合口位置のずれを検出するための検出装置であって、
所定圧力のエア供給源から供給されたエアを前記ピストンリングの合口に向かって噴射するためのエアノズルと、
前記エアノズルを前記ボアに対して固定するための固定手段と、
前記ピストンリングの合口に向かって噴射されるエアの前記エアノズルからの流出量の変化を検出し、検出した前記流出量の変化に応じて前記ピストンリングの合口位置のずれを検出する検出手段と、を有することを特徴とする検出装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記エア供給源から大気開放される流路内の圧力と、前記エア供給源から前記エアノズルに向かう流路内の圧力の差圧の変化を検出することにより、前記流出量の変化を検出することを特徴とする請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記検出手段は、差圧センサを用いて前記差圧の変化を検出することを特徴とする請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記固定手段は、前記エアノズルを前記ボアに対して付勢することにより前記エアノズルを固定する付勢手段と、前記付勢手段による前記エアノズルの固定位置を調整するための位置調整手段と、を有することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の検出装置。
【請求項11】
前記検出手段による検出結果を表示するための表示手段をさらに有することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つに記載の検出装置。
【請求項12】
前記表示手段は、前記検出手段が検出した前記流出量の変化を表示可能なレベルインジケータを含むことを特徴とする請求項11に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−223679(P2010−223679A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69738(P2009−69738)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(509082086)株式会社京和システム (1)
【Fターム(参考)】