説明

ピストンリング

【課題】本発明は、ピストンのピストンリング溝とピストンリングとの隙間に堆積したデポジットをより確実に除去することができる技術の提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、上記した課題を解決するために、ピストンリングの外周面から内周面の手前に至る第1凹部と、ピストンリングの内周面から外周面の手前に至る第2凹部とをピストンリングの表面に設けることにより、ピストンリング表面とリング溝との隙間に付着又は堆積したデポジットをより確実に除去することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンに装着されるピストンリングに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に使用されるピストンの外周面には、周方向に延在する環状のリング溝が形成されている。リング溝には、合口を有する環状のピストンリングが装着される。このようなピストンリングとしては、ピストンリングの内周面又は上端面に凹凸を設けたものが知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−185865号公報
【特許文献2】特開平01−242873号公報
【特許文献3】特開昭63−090084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リング溝とピストンリングとの間には隙間が生じるため、該隙間にデポジットが堆積する可能性があった。前記した隙間にデポジットが堆積すると、ピストンリングのシール性能が低下する可能性がある。
【0005】
これに対し、上記した従来の技術によれば、ピストンリングが回転した際に該ピストンリングの凹凸によってデポジットが掻き落とされる。しかしながら、ピストンリングにおける凹凸が設けられていない部分と対向する隙間に堆積したデポジットは、掻き落とされずに残留する可能性がある。たとえば、ピストンリングの内周面に凹凸が設けられた場合は、ピストンリングの外周面寄りの部分と対向する隙間に堆積したデポジットが残留する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ピストンのピストンリング溝とピストンリングとの隙間に堆積したデポジットをより確実に除去することができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するために、ピストンリングの上端面(表面)において、径方向(ピストンリングの幅方向)の外周面側が開口し且つ内周面側が閉塞された第1凹部と、径方向の外周面側が閉塞され且つ内周面側が開口した第2凹部と、を設けるようにした。
【0008】
言い換えると、本発明に係わるピストンリングの表面には、ピストンリングの幅方向において外周面から内周面の手前に至る第1凹部と、ピストンリングの幅方向において内周面から外周面の手前に至る第2凹部と、が設けられることになる。
【0009】
このような構成によれば、ピストンリングの表面とリング溝との隙間に堆積したデポジットのうち、ピストンリングの外周面寄りに堆積したデポジットは、ピストンリング表面と第1凹部との段差(凹凸)により掻き落とされる。また、ピストンリングの表面とリング溝との隙間に堆積したデポジットのうち、ピストンリングの内周面寄りに堆積したデポジットは、ピストンリング表面と第2凹部との段差(凹凸)により掻き落とされる。その
結果、ピストンリングの表面とリング溝との間に堆積したデポジットがより確実に掻き落とされることになる。
【0010】
なお、ピストンリング表面とリング溝との隙間に堆積したデポジットを除去する他の構成としては、ピストンリングの幅方向において内周面から外周面に至る凹部(内周面側及び外周面側の双方が開口した凹部)を設ける方法も考えられる。この方法によれば、ピストンリングの幅方向の全域においてデポジットを掻き落とすことができる。しかしながら、凹部を介してブローバイガスが漏れる可能性がある。
【0011】
これに対し、本発明に係わる第1凹部及び第2凹部は、ピストンリングの外周面から内周面まで貫通していないため、第1凹部及び第2凹部を介してブローバイガスが漏れる事態を回避することができる。
【0012】
したがって、本発明のピストンリングによれば、ブローバイガスの漏れを回避しつつ、デポジットをより確実に掻き落とすことができるという優れた効果を得ることができる。
【0013】
本発明において、ピストンリング表面には、第1凹部と第2凹部とがそれぞれ複数設けられるようにしてもよい。その際、第1凹部と第2凹部は、ピストンリングの周方向において交互に配置されることが好ましい。このような構成によれば、内燃機関の運転時にピストンリングの回転量(周方向への回転量)が少量であっても、ピストンリング表面とリング溝との隙間に堆積したデポジットを除去することが可能になる。
【0014】
ところで、上記したピストンリングが適用された内燃機関において、ピストンとピストンリングとの温度差が拡大すると、ピストンリングに比してピストンの膨脹量が多くなる。その場合、気筒の軸方向(シリンダ軸方向)におけるリング溝の大きさは、シリンダ軸方向におけるピストンリングの大きさ(ピストンリングの厚さ)に対して十分に大きくなる。その結果、ピストンリングの表面とリング溝との隙間が拡大する。
【0015】
ピストンリング表面とリング溝との隙間が拡大した場合は、前記した第1凹部及び第2凹部によりデポジットを除去しきれない可能性がある。これに対し、本願発明者は、ピストンリングからウォータジャケットへ放熱される熱量を減少させることにより、ピストンとピストンリングとの温度差が縮小される事項に着目した。
【0016】
そこで、本発明は、上記したピストンリングが適用された内燃機関の冷却システムにおいて、気筒の周囲に配置されたウォータジャケットと、ウォータジャケットへ供給される冷却水量を調整する調整装置と、ウォータジャケットに対する冷却水の供給を間欠的に停止させるように調整装置を制御する制御部と、備えるようにした。
【0017】
ウォータジャケット内を流れる冷却水は、ラジエータやサーモスタットバルブなどを含むシステムによって略一定の温度に保たれる。そのため、ピストンリングの温度も略一定に保たれると考えられる。一方、ピストンは、気筒内(燃焼室内)で発生する熱を直接受ける。そのため、気筒内で発生した熱量が多くなると、ピストンの温度が上昇し、ピストンとピストンリングとの温度差が拡大する。
【0018】
これに対し、ウォータジャケットに対する冷却水の供給が停止されると、ピストンリング及びウォータジャケット内の冷却水は、ピストンから放熱される熱を受けて昇温する。そのため、ピストンとピストンリングとの温度差が縮小する。ただし、ウォータジャケットに対する冷却水の供給が連続的に停止されると、ピストンやピストンリングの過熱を招く可能性がある。
【0019】
そこで、本発明の内燃機関の冷却システムは、ウォータジャケットに対する冷却水の供給を間欠的に停止させるようにした。このような方法によれば、ピストンやピストンリングの過熱を回避しつつ、ピストンとピストンリングとの温度差の拡大を抑制することができる。その結果、ピストンリング表面とリング溝との隙間に堆積したデポジットをより確実に除去することが可能になる。
【0020】
なお、制御部は、予め定められた一定期間(たとえば、内燃機関を搭載した車両が一定距離を走行するために要する期間、又は予め定められた一定時間が経過するために要する期間など)毎に冷却水の供給を停止させてもよいが、気筒内で発生した熱量の積算値が一定値を超える毎に冷却水の供給を停止させてもよい。ここでいう「一定値」は、ピストンとピストンリングとの温度差が許容範囲(ピストンリング表面とリング溝との隙間がデポジットを除去可能な大きさに収まる範囲)を超えると考えられる値から所定のマージンを差し引いた値である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ピストンのリング溝とピストンリングとの隙間に堆積したデポジットをより確実に除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。
【図2】ピストンの構成を示す図である。
【図3】トップリングの平面図である。
【図4】図3中のA−A’断面を示す図である。
【図5】図3中のB−B’断面を示す図である。
【図6】ピストンとシリンダボア壁面との間の空間の圧力変化を示す図である。
【図7】ピストンとシリンダボア壁面との間の空間の拡大図である。
【図8】内燃機関の冷却システムを示す図である。
【図9】トップリングとトップリング溝との隙間の大きさを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0024】
図1は、本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、複数の気筒(シリンダ)2を有する圧縮着火式の内燃機関(ディーゼルエンジン)である。なお、図1においては、複数の気筒2のうち、1つの気筒2のみが示されている。
【0025】
内燃機関1の各気筒2には、ピストン3がシリンダ軸方向へ摺動自在に装填されている。ピストン3は、図示しないクランクシャフトとコネクティングロッド4を介して連結されている。
【0026】
ピストン3の頂面には、略円柱状に窪んだ燃焼室30が形成されている。また、ピストン3の外周面には、図2に示すように、3本の環状溝31,32,33が形成されている。3本の環状溝31,32,33のうち、最も上死点寄り(図2中の最も上)に位置する環状溝31は、トップリング5を嵌合させるための溝である(以下、環状溝31を「トップリング溝31」と記す)。3本の環状溝31,32,33のうち、トップリング溝31の直下に位置する環状溝32は、セカンドリング6を嵌合させるための溝である(以下、環状溝32を「セカンドリング溝32」と記す)。3本の環状溝31,32,33のうち、最も下死点寄り(図2中の最も下)に位置する環状溝33は、オイルリング7を嵌合さ
せるための溝(以下、環状溝33を「オイルリング溝33」と記す)。
【0027】
ここで、本実施例におけるトップリング5の構成について図3乃至5に基づいて説明する。図3は、トップリング5の平面図である。図4は、図3中のA−A’断面を示す図である。図5は、図3中のB−B’断面を示す図である。
【0028】
トップリング5の表面(上死点側に位置する面)5aには、複数の第1凹部50と複数の第2凹部51とが周方向へ交互に配置されている。第1凹部50は、図4に示すように、トップリング5の外周面5bから内周面5cの手前に至る略半円状の窪みである。言い換えると、第1凹部50は、トップリング5の外周面側が開口し且つ内周面側が閉塞された窪みである。一方、第2凹部51は、図5に示すように、トップリング5の内周面5cから外周面5bの手前に至る略半円状の窪みである。言い換えると、第2凹部51は、トップリング5の内周面側が開口し且つ外周面側が閉塞された窪みである。
【0029】
ところで、トップリング5の表面5aとトップリング溝31との間には、トップリング5のスティックを防止するために若干の隙間(クリアランス)が設けられる。しかしながら、図6に示すように、膨張行程の後半においてトップリング5とセカンドリング6との間の空間(図7中のV2を参照)の圧力P2がトップリング5より上死点側の空間(図7中のV1を参照)の圧力(筒内圧)P1より高くなる可能性がある。そのような場合は、トップリング5がトップリング溝31内において浮き上がるため、ブローバイガスの漏れやオイル上がりなどを生じる可能性がある。
【0030】
このような問題に対し、トップリング5の表面5aとトップリング溝31との隙間、言い換えればシリンダ軸方向におけるトップリング溝31の寸法を小さくする方法が考えられるが、少量のデポジットの付着又は堆積によりトップリング5のスティックが発生するという問題がある。
【0031】
これに対し、本実施例のトップリング5によれば、該トップリング5が周方向へ回転した際に、トップリング5の表面5aと第1凹部50との段差(凹凸)、及びトップリング5の表面5aと第2凹部51との段差(凹凸)により、トップリング5の表面5aとトップリング溝31との間に付着又は堆積しているデポジットが掻き落とされるようになる。
【0032】
その際、トップリング5の表面5aとトップリング溝31の隙間に堆積したデポジットのうち、トップリング5の外周面寄りに存在するデポジットは、トップリング5の表面5aと第1凹部50との段差(凹凸)により掻き落とされる。一方、トップリング5の表面5aとトップリング溝31の隙間に堆積したデポジットのうち、トップリング5の内周面寄りに存在するデポジットは、トップリング5の表面5aと第2凹部51との段差(凹凸)により掻き落とされる。
【0033】
したがって、トップリング5の幅方向において外周面から内周面に至る全領域のデポジットを除去することが可能となる。さらに、複数の第1凹部50と複数の第2凹部51がトップリング5の周方向へ交互に配置されるため、トップリング5の周方向への回転量が少ない場合であっても、デポジットをより確実に除去することが可能となる。
【0034】
また、第1凹部50及び第2凹部51は、トップリング5の外周面から内周面まで貫通していないため、第1凹部50及び第2凹部51を介してブローバイガスが漏れたり、圧縮圧力が漏れたり、或いはオイル上がりが発生する事態を回避することもできる。
【0035】
以上述べた実施例によれば、ブローバイガスの漏れ、圧縮圧力の漏れ、或いはオイル上がりなどを回避しつつ、トップリング5の表面5aとトップリング溝31との隙間に付着
又は堆積したデポジットをより確実に除去することができる。その結果、トップリング5のスティックをより確実に防止することが可能になる。
【0036】
なお、本実施例では、第1凹部50及び第2凹部51が略半円状に形成される例について述べたが、第1凹部50及び第2凹部51がトップリング5の外周面から内周面まで貫通しない限り如何なる形状であってもよい。ただし、第1凹部50及び第2凹部51が多角形に形成された場合は角部に応力が集中し易くなる。よって、トップリング5の耐久性の低下を抑制するうえでは、略半円状が好ましいと言える。
【0037】
また、本実施例では、第1凹部50及び第2凹部51がトップリング5のみに設けられる例について述べたが、トップリング5に加えセカンドリング6にも設けられてもよい。その場合、セカンドリング6とセカンドリング溝32との間に付着又は堆積したデポジットについてもより確実に除去することが可能なる。
【0038】
<応用例>
次に、前述したトップリング5が適用される内燃機関の冷却システムについて述べる。図8は、内燃機関の冷却システムの概略構成を示す図である。図8において、前述した実施例と同等の構成要素には同一の符号が付されている。
【0039】
図8において、内燃機関1には、気筒2を包囲する環状のウォータジャケット100が形成されている。ウォータジャケット100は、ウォータポンプ101と冷却水通路102を介して連通しており、ウォータポンプ101から吐出された冷却水が供給されるようになっている。
【0040】
前記した冷却水通路102の途中には、該冷却水通路102の通路断面積を変更する調整弁103が設けられている。調整弁103は、冷却水通路102の通路断面積を連続的又は段階的に変更する弁機構であってもよく、或いは冷却水通路102の遮断と導通とを切り換える開閉弁であってもよい。なお、調整弁103は、本発明に係わる調整装置の一実施態様である。
【0041】
前記した調整弁103は、ECU15によって電気的に制御されるようになっている。ECU15は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどを備えた電子制御ユニットである。ECU15には、クランクポジションセンサ18、アクセルポジションセンサ19、車輪速センサ20などの各種センサの出力信号が入力されるようになっている。
【0042】
クランクポジションセンサ18は、クランクシャフトの回転位置に相関する電気信号を出力するセンサである。アクセルポジションセンサ19は、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)に相関する電気信号を出力するセンサである。車輪速センサ20は、内燃機関1を搭載した車両の車輪の回転速度に相関する電気信号を出力するセンサである。
【0043】
ECU15は、上記した各種センサの出力信号をパラメータとして、燃料噴射制御などの既知の制御を行うとともに、調整弁103の制御を行う。以下、本実施例における調整弁103の制御方法について述べる。
【0044】
ピストン3とトップリング5との温度差が小さい場合は、図9中(a)に示すように、トップリング5の表面5aとトップリング溝31との隙間は小さくなる。一方、ピストン3とトップリング5との温度差が大きい場合は、図9中(b)に示すように、トップリング5の表面5aとトップリング溝31との隙間が大きくなる。
【0045】
ここで、図9中(b)に示したように、トップリング5の表面5aとトップリング溝3
1との隙間が大きくなると、該隙間に付着又は堆積しているデポジットが前述した第1凹部50及び第2凹部51によって除去されなくなる可能性がある。
【0046】
そこで、本実施例では、ECU15は、調整弁103を間欠的に閉弁(冷却水通路102を遮断)させることにより、ピストン3とトップリング5との温度差の拡大を抑制するようにした。
【0047】
トップリング5の熱は、シリンダボア壁面を介してウォータジャケット100内の冷却水へ放熱される。ウォータジャケット100を流れる冷却水の温度は、ラジエータやサーモスタットなどのシステムによって略一定の温度に保たれる。そのため、トップリング5の温度も略一定の温度に保たれる。
【0048】
一方、ピストン3は、気筒2内(燃焼室)で発生した熱を直接受ける。その際、ピストン3が受けた熱の一部は、トップリング5やセカンドリング6などを介してシリンダボア壁面へ放熱される。しかしながら、燃焼室で発生する熱量が多くなると、ピストン3の受熱量が放熱量を上回るため、ピストン3の温度が上昇する。
【0049】
よって、燃焼室で発生する熱量が多くなるときは、ピストン3とトップリング5との温度差拡大を抑制することが望ましい。これに対し、ウォータポンプ101からウォータジャケット100に対する冷却水の供給が停止されると、トップリング5及びウォータジャケット100内の冷却水は、ピストン3から放熱される熱を受けて昇温する。そのため、ピストン3とトップリング5との温度差拡大が抑制される。
【0050】
ただし、燃焼室内で発生する熱量が多いときに、ウォータジャケット100に対する冷却水の供給が連続的に停止されると、ピストン3やトップリング5などの過熱を招く可能性がある。
【0051】
そこで、本実施例では、ECU15は、調整弁103を間欠的に閉弁(冷却水通路102を遮断)させることにより、ピストン3とトップリング5との温度差拡大を抑制するようにした。
【0052】
具体的には、ECU15は、車両が一定距離を走行する度に調整弁103を遮断させるようにしてもよい。その際、ECU15は、車輪速センサ20の出力信号から車両の走行距離を演算し、算出された走行距離が一定距離に達する度に調整弁103を閉弁させればよい。
【0053】
なお、調整弁103が閉弁される期間は、ピストン3とトップリング5との温度差が適正範囲(たとえば、トップリング5の表面5aとトップリング溝31との隙間がデポジットを除去可能な大きさに収まる範囲)に収束するまでに要する期間、言い換えると、ピストン3とトップリング5との温度差が適正範囲に収まる程度にトップリング5及び冷却水の温度が上昇するまでに要する時間に相当し、予め実験などを利用した適合作業によって求めておくものとする。
【0054】
このように調整弁103が制御されると、ピストン3やトップリング5の過熱を回避しつつ、ピストン3とトップリング5との温度差拡大を抑制することができる。その結果、トップリング5の表面5aとトップリング溝31との隙間に付着又は堆積しているデポジットをより確実に除去することが可能になる。
【0055】
なお、ECU15は、予め定められた一定時間が経過する度に調整弁103を閉弁させてもよく、或いは燃焼室で発生する熱量の積算値が一定量に達する度に調整弁103を閉
弁させてもよい。ここでいう「一定量」は、ピストン3とトップリング5との温度差が適正範囲を超えると考えられる値から所定のマージンを差し引いた値である。
【0056】
また、調整弁103の間欠的な閉弁は、内燃機関1の運転状態に関わらず実行されてもよいが、燃焼室で発生する熱量が多くなる高負荷運転時(たとえば、燃料噴射量が予め定められた基準量を超えるとき)のみ実行されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 内燃機関
2 気筒
3 ピストン
4 コネクティングロッド
5 トップリング
5a 表面
5b 外周面
5c 内周面
6 セカンドリング
7 オイルリング
15 ECU
18 クランクポジションセンサ
19 アクセルポジションセンサ
20 車輪速センサ
30 燃焼室
31 トップリング溝
32 セカンドリング溝
33 オイルリング溝
50 第1凹部
51 第2凹部
100 ウォータジャケット
101 ウォータポンプ
102 冷却水通路
103 調整弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの外周面に形成されたリング溝に取り付けられるピストンリングであって、
前記ピストンリングの表面に設けられ、ピストンリングの外周面から内周面の手前にかけて径方向に延在する第1凹部と、
前記ピストンリングの表面に設けられ、ピストンリングの内周面から外周面の手前にかけて径方向に延在する第2凹部と、
を備えるピストンリング。
【請求項2】
請求項1において、前記第1凹部と前記第2凹部とをそれぞれ複数備え、
前記第1凹部と前記第2凹部とは、前記ピストンリングの周方向において交互に配置されるピストンリング。
【請求項3】
請求項1に記載のピストンリングが取り付けられるピストンと、
前記ピストンを摺動自在に収容する気筒と、
前記気筒の周囲に配置されるウォータジャケットと、
を備えた内燃機関の冷却システムであって、
前記ウォータジャケットへ供給される冷却水量を調整する調整装置と、
前記ウォータジャケットに対する冷却水の供給を間欠的に停止させるように記調整装置を制御する制御部と、
を備える内燃機関の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−241879(P2011−241879A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113364(P2010−113364)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】